説明

給紙装置、画像読取装置、給紙方法、及びプログラム

【課題】 ジャムの発生を検知するための新しい枠組みを提供する。
【解決手段】 画像読取装置は、給紙装置を備える。この給紙装置は、用紙搬送路で発生する音を検知するマイクを有し、このマイクにより検知された音の信号を前処理し、前処理された音信号と、音の強度に関する基準値と、音の継続時間に関する基準値とに基づいて、用紙のジャムを検知する。前処理は、音の信号の外形を抽出するための処理である。音の強度と、音の継続時間とに基づいてジャムを検知するため、検知精度の向上が期待できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置や印刷装置において発生するジャムを検知する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像読取装置や印刷装置では、原稿用紙や印刷用紙が搬送路上を移動する際に用紙分離ローラや搬送ローラ等の部品に引っ掛かり、ジャム(紙詰まり)が発生する場合がある。ジャムが発生した場合、詰まった用紙が破損するだけでなく、装置自体も損傷するおそれがあるため、画像読取装置や印刷装置には、ジャムを検知し、装置の動作を停止する機能が備えられている。
例えば、下記特許文献1には、イメージスキャナやファックス等の原稿送出装置において、モータ駆動回路の駆動出力信号と所定のしきい値信号とを比較し、駆動出力信号がしきい値信号よりも大きい場合は、モータが過負荷状態のペーパジャムであると判断し、モータの回転を停止させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05−058507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記文献に記載の技術を用いた場合でも、ジャムであると判断したタイミングでは、用紙に既に駆動負荷がかかっている状態(紙詰まり状態)であるため、用紙や装置が損傷するおそれがある。
本発明は、ジャムの発生を検知するための新しい方式を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の給紙装置は、用紙搬送路で発生する音を検知するマイクと、前記マイクにより検知された音の信号を前処理する前処理手段と、前記前処理された音信号と、音の強度に関する基準値と、音の継続時間に関する基準値とに基づいて、用紙のジャムを検知するジャム検知手段とを有する。
【0006】
本発明の実施態様では、前記音の強度に関する基準値が大きいほど、前記継続時間に関する基準値が小さくなるように、それぞれの基準値が設定されている。
本発明の別の実施態様では、前記前処理は、音信号の外形抽出処理である。
また別の実施態様では、前記マイクは、用紙分離手段(用紙分離ローラなど)の近傍に設置されているのが望ましい。
さらにまた別の実施態様では、前記マイクは、画像読取装置又は印刷装置の筐体表面の一部を壁面の一部とする空洞内に設置されている。この場合において、前記空洞の壁面の一部に対応する前記筐体表面の一部には、触れると給紙動作が停止する旨が表示されていると好適である。
【0007】
本発明の画像読取装置は、上記いずれかの給紙装置を備えることを特徴とする。すなわち、画像読取装置は、用紙搬送路と、この用紙搬送路を搬送された用紙から画像を読み取る画像読取手段と、前記用紙搬送路で発生する音を検知するマイクと、前記マイクにより検知された音の信号を前処理する前処理手段と、前記前処理された音信号と、音の強度に関する基準値と、音の継続時間に関する基準値とに基づいて、用紙のジャムを検知するジャム検知手段とを有する。本発明の別の実施形態では、前記マイクは、前記画像読取装置の筐体表面の一部を壁面の一部とする空洞内に設置されている。また別の実施形態では、前記空洞を構成する部材と、この部材に接する他の部材との間に、緩衝材をさらに有する。
本発明の給紙方法は、用紙搬送路で発生する音を検知するステップと、前記マイクにより検知された音の信号を前処理するステップと、前記前処理された音信号と、音の強度に関する基準値と、音の継続時間に関する基準値とに基づいて、用紙のジャムを検知するステップとを含む。
本発明のプログラムは、上記給紙方法を画像読取装置に実行させるコンピュータプログラムである。
【0008】
なお、本発明において、手段とは、単に物理的手段を意味するものではなく、その手段が有する機能をソフトウェアによって実現する場合も含む。また、1つの手段や装置が有する機能が2つ以上の物理的手段や装置により実現されても、2つ以上の手段や装置の機能が1つの物理的手段や装置により実現されても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、音に基づいてジャムや衝撃を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施形態の画像読取装置の構成を模式的に示す図である。
【図2】給紙装置の機能構成を示す図である。
【図3】異常検知処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】画像読取装置の変形例を示す図である。
【図5】画像読取装置の変形例を示す図である。
【図6】画像読取装置の変形例を示す図である。
【図7】画像読取装置の変形例を示す図である。
【図8】画像読取装置の上面を模式的に例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態として、ジャムの発生を検知するための新しい枠組みを適用した画像読取装置(いわゆるスキャナ装置)について、図面を参照して説明する。
図1は、第1実施形態の画像読取装置1の全体構成を模式的に示す。
画像読取装置1は、原稿用紙が通る用紙搬送路2の上流側から順に、用紙ホッパ3と、給紙装置4と、用紙搬送ローラ5と、画像読取ユニット6と、用紙搬送ローラ7と、用紙スタッカ8と、各構成要素の動作を制御する制御部(図示省略)とを有する。
画像読取装置1は、従来の画像読取装置と同様に、用紙ホッパ3に据え置かれた原稿用紙を、給紙装置4が1枚ずつ筐体内へ送り込み、用紙搬送ローラ5、原稿用紙をスキャンする画像読取ユニット6、用紙搬送ローラ7の順に用紙搬送路2に沿って搬送し、筐体外の用紙スタッカ8に排出するように構成される。画像読取ユニット6は、上記のように用紙搬送路2に沿って搬送される原稿用紙から、画像を読み取る。
制御部は、従来の画像読取装置と同様に、CPU、ROM,RAM、及び通信装置等の構成要素を含む。
【0012】
画像読取装置1が従来の画像読取装置と異なる点は、給紙装置4が、原稿用紙が用紙搬送路2上を流れる際に生ずる音に基づいて、ジャム(紙詰まり)等の異常を検知する機能を有する点である。
かかる機能を実現するため、給紙装置4は、従来と同様の給紙機構(用紙分離パッド10及び用紙分離ローラ11)のほか、用紙搬送路2で発生する音を検知するマイク12と、マイク12を囲うように配置される遮音室13と、情報処理によりジャム等の異常の発生を検知する演算部(図示省略)とを有する。
【0013】
マイク12は、ジャムの発生し易い場所(例えば、用紙分離ローラ11など)からの音を集音するため、その場所(本実施形態では、用紙分離ローラ11)の近傍に配置するのが望ましい。また、周知のマイクを採用することができるが、無指向性のものを用いるより、指向性の高いものを音の発生し易い場所へ向けて配置したほうが、原稿用紙からの音をより効率的に集めることができる。
【0014】
遮音室13は、マイク12が搬送路2上を搬送される原稿用紙からの音とは異なる音(例えば、筐体外部の音)を検知するのを抑制するため、マイク12が筐体内(特に、搬送路2付近)に剥き出しにならないように構成し、さらに遮音性の高い部材を用いて構成するのが望ましい。
【0015】
給紙装置4の演算部は、CPU、ROM,及びRAM等の情報処理に必要な構成要素を含む。演算部の詳細については、図2を参照して後述する。
【0016】
図2は、給紙装置4の演算部の機能構成を示す。
給紙装置4の演算部は、基準値データ記憶手段21、A/D変換手段22、信号増幅手段23、前処理手段24、ジャム検知手段25、及びFB制御手段26を備える。基準値データ記憶手段21は、例えばROMやRAM等の記憶装置を用いて機能的に実現される。また、A/D変換手段22、信号増幅手段23、前処理手段24、ジャム検知手段25、及びFB制御手段26は、例えばCPUがROMやRAM等の記憶装置からRAM上に所定のプログラムを読み出して実行することにより機能的に実現される。以下、各手段の機能について説明する。
【0017】
基準値データ記憶手段21は、搬送路2上を搬送される原稿用紙から生ずる音の信号を照合することにより、ジャム等の異常の発生を検知するための基準値となるデータを格納する。第1実施形態では、基準値データ記憶手段21は、音の強度に関する基準値と音の継続時間に関する基準値の組み合わせを、少なくとも2組格納する。以下、基準値の組み合わせを「閾値セット」と称する。
具体的には、2組の閾値セットは、音の強度に関する基準値が大きいほど、継続時間に関する基準値が小さくなるように、それぞれの基準値が設定されている。例えば、第1の閾値セットは、音の強度に着目した基準値の組み合わせであり、継続時間に関する基準値は極めて小さく設定される(瞬間的な値に設定される)。また、第2の閾値セットは、音の継続性に着目した基準値の組み合わせであり、音の強度に関する基準値は、第1の閾値セットで用いたものより小さく、音の継続時間に関する基準値は、第1の閾値セットで用いたものより大きく設定される。
【0018】
A/D変換手段22は、マイク12から出力されたアナログ信号(例えば、電圧の信号)をデジタル信号に変換する。
信号増幅手段23は、A/D変換された音信号に対して増幅処理を施す。
【0019】
前処理手段24は、マイク12により検知された音の信号(より詳細には、A/D変換及び増幅処理されたデジタル信号)を前処理する。例えば、前処理として、音信号に対し、絶対値処理、2乗処理、ビット処理、包絡線処理、ローパスフィルタ処理、平均処理、平滑化処理等の処理を施すことにより、以後の処理の高速化を図ることができる。なお、包絡線処理、ローパスフィルタ処理、平均処理、平滑化処理等の処理を施すことにより、音信号の外形を抽出することができる。
【0020】
ジャム検知手段25は、前処理された音信号と、音の強度に関する基準値と、音の継続時間に関する基準値とに基づいてジャムを検知する。
具体的には、ジャム検知手段25は、外形抽出された音信号と第1の閾値セットとを照合し、第1の閾値セットのうちの音の強度に関する基準値より大きな強度の音が生じているかどうかに基づいて、ジャムや過度の衝撃等の異常を検知する。また、ジャム検知手段25は、外形抽出された音信号と第2の閾値セットとを照合し、第2の閾値セットのうちの音の強度に関する基準値より大きな強度の音が、継続時間に関する基準値より長く継続して発生したかどうかに基づいて、ジャムを検知する。なお、第1の閾値セットには継続時間に関する基準値が含まれるが、極めて短い時間が設定されるため、実際的には考慮しなくてもよい。
【0021】
FB制御手段26は、ジャムや過度の衝撃等の異常が検知された場合、給紙装置4や画像読取装置1に対し、動作を停止させるための指示信号を出力するなどのフィードバック処理を実行する。
【0022】
図3は、画像読取装置1(より詳細には給紙装置4の演算部)による異常検知処理の流れを示すフローチャートである。以下、図3等を参照して、かかる処理の内容を説明する。なお、本明細書において、フローチャート等に示す各工程(符号が付与されていない部分的な工程を含む)は処理内容に矛盾を生じない範囲で任意に順番を変更して又は並列に実行することができる。
【0023】
画像読取装置1が作動し、用紙ホッパ3から原稿用紙の供給が開始されると、A/D変換手段22は、マイク12が検知した音の信号をデジタル信号に変換し(S31)、信号増幅手段23は、該デジタル信号を増幅処理する(S32)。
そして、前処理手段24は、A/D変換及び増幅処理が施された音信号を前処理し、音信号の外形を抽出する(S33)。
【0024】
次に、ジャム検知手段25は、前処理された音信号と、複数の閾値(第1実施形態では、2つの閾値セット)とに基づいて、ジャムの発生の有無を判定する(S34)。
具体的には、ジャム検知手段25は、外形抽出された音信号のうち、所定期間(例えば、過去1.0秒間など)における音信号と第1の閾値セットとを照合し、第1の閾値セットのうちの音の強度に関する基準値より大きな強度の音が生じているかどうかを判定する。また、ジャム検知手段25は、かかる所定期間における音信号と第2の閾値セットとを照合し、第2の閾値セットのうちの音の強度に関する基準値より大きな強度の音が、継続時間に関する基準値(例えば、0.5秒間)より長く継続して発生したかどうかを判定する。
【0025】
そして、FB制御手段26は、ジャム検知手段25による判定処理(S34)の結果、出力が過大である場合、すなわち第1の閾値セットのうちの音の強度に関する基準値より大きな強度の音が生じた場合(S35の判断がYesの場合)、フィードバック処理を実行する(S36)。なお、出力が過大な場合には、ジャムが発生し又は過大な衝撃を受けたと考えられる。
【0026】
或いはFB制御手段26は、出力は過大ではない場合(S35の判断がNoの場合)において、ある程度の強度の音が継続して発生した、すなわち第2の閾値セットのうちの音の強度に関する基準値より大きい強度の音が、継続時間に関する基準値より長く継続して発生した場合(S37の判断がYesの場合)、フィードバック処理を実行する(S38)。この場合、ジャムが発生したと考えられる。
【0027】
フィードバック処理(S36、S38)の例としては、原稿用紙の搬送を停止するために用紙分離ローラ11(図1参照)を駆動するモータを停止させたり、原稿用紙を取り出し易いように用紙分離ローラ11を逆回転させ若しくは用紙分離パッド10と用紙分離ローラ11とを離間する方向へ退避させ(この場合には、退避機構を設けておくのがよい。)るための指示信号を出力することが考えられる。或いは、ジャムや衝撃等の異常が発生したことを示すメッセージをユーザに提示する(例えば、画像読取装置1の液晶モニタに表示する)ための指示信号を出力することが考えられる。これにより、画像読取装置1(或いは給紙装置4)は、指示信号に応じて動作する。
【0028】
なお、前述のジャム検知手段25による処理(S34)及びFB制御手段26による判断処理(S35、S37)は、所定の時間間隔で並列的に実行するのが望ましい。かかる所定の時間間隔は、例えば、第2の閾値セットのうちの音の継続時間に関する基準値より短い時間を用いることが考えられる。これにより、モニタリングされない時間が生じず、ジャムや衝撃等の異常の発生状況を継続的にモニタリングすることができる。
【0029】
以上のように、本実施形態の画像読取装置1によれば、音に基づいてジャムや衝撃を検知することができ、さらにフィードバック処理を実行することにより、原稿用紙の給紙を停止し又は原稿用紙を逆流させるなどして、原稿用紙及び画像読取装置1の損傷を抑止することができる。
ここで、衝撃を検知できるメリットについて説明する。例えば、画像読取装置1(より詳細には給紙装置4)は、音の継続時間に関する基準値を加味することにより、原稿用紙の突入時に生ずる撥音(“パチンッ”という音)と、ジャムによって生ずる音とを区別することができる。また、画像読取装置1は、複数の閾値セットを有することにより、ジャムが確実と判断できるような大きな音を検知した場合には、より早期に用紙搬送を停止させることができると共に、音の継続時間を加味することで、しわを有する原稿用紙が正常に搬送されるときの音と、ジャム発生時の音とを区別できる。
【0030】
以上、本発明の第1実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されることなく種々に変形して適用することが可能である。
[変形例]
第1実施形態では、給紙装置4の演算部が異常検知処理に必要なCPU、ROM、及びRAM等の構成要素を有し、ジャム検知処理を実行しているが、画像読取装置1の制御部がジャム検知処理を実行してもよいし、演算部と制御部が連携してジャム検知処理を実行してもよい。
図4〜図7は、第1実施形態で説明した画像読取装置1の変形例として、給紙装置41を有する画像読取装置42、給紙装置51を有する画像読取装置52、給紙装置61を有する画像読取装置62、及びしわ延ばし機構71を有する画像読取装置72を示す。なお、図4〜図7に示す構成要素のうち、図1に示す構成要素と同じ符号が付されているものは、第1実施形態で説明したのと同様の機能及び構成を有する。
【0031】
画像読取装置42(図4)が第1実施形態の画像読取装置1と異なる点は、遮音室43を構成する部材と、この部材に接する他の部材との間に緩衝材44が設けられている点である。より具体的には、給紙装置41の遮音室43を構成する部材のうち、搬送路2、用紙分離パッド10、及び用紙分離ローラ11付近の部材(遮音室43の上部を成す部材)と他の部材との間に緩衝材44が設けられている点である。これにより、遮音室43が用紙分離パッド10や用紙分離ローラ11等の部品と接触した際に過大な衝撃音が生ずるのを抑制することができる。これにより、ジャムや衝撃の誤検知を抑制することができる。
【0032】
画像読取装置52(図6)が第1実施形態の画像読取装置1と異なる点は、給紙装置51の遮音室53の壁面の一部が、画像読取装置52の筐体表面の一部を成すように構成されている点、及び該筐体表面の一部がFB指示部55を構成する点である。また、FB指示部55には、図8に例示するように、叩いたり、殴打するなどして強く触れることにより、フィードバック制御が実行される旨を表示しておくことが考えられる。これにより、ジャムが発生した場合又は発生すると思われる場合に、ユーザがFB指示部55に強く触れることにより、ユーザによる接触で生じた音に基づいて、給紙装置51がフィードバック制御を実行し、原稿用紙及び画像読取装置51の損傷を抑制することができる。
【0033】
また、図5に示すように、マイク12を下向きに配置することにより、搬送路2から原稿用紙の紙粉等の粉塵がマイク12の先端付近に溜まるのを回避し、集音性能の低下を防ぐことができる。
【0034】
画像読取装置62(図5)が第1実施形態の画像読取装置1と異なる点は、給紙装置61の遮音室63が搬送路2より上方に配置され、且つ遮音室63の開口が用紙分離部(用紙分離パッド10及び用紙分離ローラ11の下流側)へ向けて(下に向けて)配置されている点である。これにより、図5の例と同様に、搬送路2から原稿用紙の紙粉等の粉塵がマイク12の先端付近に溜まるのを回避し、集音性能の低下を防ぐことができる。
【0035】
画像読取装置72(図7)が第1実施形態の画像読取装置1と異なる点は、給紙装置73が、用紙分離ローラ11より上流側(搬送路2の上流側)にしわ延ばし機構71を有する点である。しわ延ばし機構71は、例えば一対のローラであり、用紙ホッパ3から供給される原稿用紙を挟み込むように回転し、原稿用紙のしわを延ばすように動作する。これにより、原稿用紙のしわが原因で生ずる音に基づいて、給紙装置73がジャムの発生を誤検知するのを抑制することができる。
【0036】
また、前述の又は後述のいずれかの変形例において、用紙分離ローラ11より上流側(搬送路2の上流側)に、原稿用紙のしわの程度(しわの高さ、長さ、本数、又は範囲など)を判別する機構を設け、得られたしわの程度を示す情報に応じて閾値セットの内容を変更したり、異常検知処理(図3を参照して説明した処理)を実行するかどうか(ON/OFF)を切り替えてもよい。例えば、しわの程度が予め設定した閾値を超えている場合には、しわに起因して生ずる音に基づいてジャムの発生を誤検知してしまうおそれがあるため、異常検知処理の実行をOFFにすることが考えられる。
【0037】
また、第1実施形態における画像読取装置1において、遮音室13の外側(画像読取装置1の外側でもよいし、内側でもよい)に、さらにマイクを設け、ジャムや衝撃の発生時に生ずる音とは異なる音をノイズとして検知し、遮音室13内のマイク12が検知した音からノイズを除去するようにしてもよい。これにより、ジャムや衝撃等の異常の発生をより高精度に検知することができる。
【0038】
また、第1実施形態における画像読取装置1において、ユーザの声に基づいてフィードバック処理(図3のS36,S38の処理)が実行されるように、専用のマイクを画像読取装置1の筐体に取り付けたり、画像読取装置1の筐体に、遮音室13(より詳細には、マイク12)へ通じる穴を設けてもよい。これにより、何らかの異常を察知したユーザが発する声に基づいてフィードバック処理を実行することができる。
【0039】
また、第1の実施形態では、2組の閾値セットに用いた音の強度に関する2つの基準値はそれぞれ異なる値であるが、2組の閾値セットに用いる音の強度に関する2つの基準値を同じ値とし、照合対象となる前処理後の音信号のゲインを変えるようにしてもよい。このように、音の強度に関する基準値を複数設ける代わりに、音信号のゲインを変化させることは、複数の基準値を設けることと実質的に等価であり、本発明の技術的範囲に含まれうる。
【0040】
また、本発明の給紙装置4,41,51,61,73は、画像読取装置1,42,52,62,72だけでなく、印刷装置やファックス装置など、筐体内を用紙が1枚ずつ搬送される機器に適用することができる。
なお、上記のいずれかの変形例は、矛盾のない範囲で組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1,42,52,62,72…画像読取装置、2…用紙搬送路、3…用紙ホッパ、4,41,51,61,73…給紙装置、5…用紙搬送ローラ、6…画像読取ユニット、7…用紙搬送ローラ、8…用紙スタッカ、10…用紙分離パッド、11…用紙分離ローラ、12…マイク、13…遮音室、21…基準値データ記憶手段、22…A/D変換手段、23…信号増幅手段、24…前処理手段、25…ジャム検知手段、26…FB制御手段、44…緩衝材、55…FB指示部、71…しわ延ばし機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙搬送路で発生する音を検知するマイクと、
前記マイクにより検知された音の信号を前処理する前処理手段と、
前記前処理された音信号と、音の強度に関する基準値と、音の継続時間に関する基準値とに基づいて、用紙のジャムを検知するジャム検知手段と
を有する給紙装置。
【請求項2】
前記音の強度に関する基準値が大きいほど、前記継続時間に関する基準値が小さくなるように、それぞれの基準値が設定されている
請求項1に記載の給紙装置。
【請求項3】
前記前処理は、音信号の外形を抽出する外形抽出処理である
請求項1又は2に記載の給紙装置。
【請求項4】
前記用紙搬送路において搬送される用紙を他の用紙から分離する用紙分離手段
をさらに有し、
前記マイクは、前記用紙分離手段の近傍に設置されている
請求項1乃至3のいずれかに記載の給紙装置。
【請求項5】
用紙搬送路と、
この用紙搬送路を搬送された用紙から画像を読み取る画像読取手段と、
前記用紙搬送路で発生する音を検知するマイクと、
前記マイクにより検知された音の信号を前処理する前処理手段と、
前記前処理された音信号と、音の強度に関する基準値と、音の継続時間に関する基準値とに基づいて、用紙のジャムを検知するジャム検知手段と
を有する画像読取装置。
【請求項6】
前記マイクは、前記画像読取装置の筐体表面の一部を壁面の一部とする空洞内に設置されている
請求項5に記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記空洞の壁面の一部に対応する前記筐体表面の一部には、触れると前記用紙搬送路における搬送動作が停止する旨が表示されてなる
請求項6に記載の画像読取装置。
【請求項8】
前記空洞を構成する部材と、この部材に接する他の部材との間に、緩衝材
をさらに有する請求項6に記載の画像読取装置。
【請求項9】
用紙搬送路で発生する音をマイクで検知するステップと、
前記マイクにより検知された音の信号を前処理するステップと、
前記前処理された音信号と、音の強度に関する基準値と、音の継続時間に関する基準値とに基づいて、用紙のジャムを検知するステップと
を含む給紙方法。
【請求項10】
マイクにより検知された音の信号を前処理するステップと、
前記前処理された音信号と、音の強度に関する基準値と、音の継続時間に関する基準値とに基づいて、用紙のジャムを検知するステップと
をコンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−193040(P2012−193040A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60235(P2011−60235)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000136136)株式会社PFU (354)
【Fターム(参考)】