説明

給紙装置および印刷機

【課題】枚葉紙の左右方向位置の自動設定作業を迅速かつ確実に行うことができ、適正な給紙が行える給紙装置および印刷機を提供することをその課題とする。
【解決手段】枚葉紙Pの左右方向位置の自動設定作業について、中央へ移動するセンサSが給紙台52と接触すると、給紙台52は接触したセンサSとは反対側へ移動する。この給紙台52とセンサSの移動について、例えば、給紙台52がモータM1の故障等により移動できなくなった場合、中央へ移動しようとするセンサSが給紙台52上の枚葉紙Pに接触し、過負荷を受けて破損する可能性があるが、枚葉紙Pと接触して過負荷を受けたセンサSは枚葉紙Pから退避するべく、センサSの保持部材65が支点Oを中心に回動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷機に搭載され、枚葉紙が積載される給紙装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
印刷機に搭載される給紙装置の給紙台にはパレットを介して枚葉紙が積載されており、この給紙装置からフィーダーボードを介して印刷機内に枚葉紙が供給される。給紙台への枚葉紙の積載については、スキッドと呼ばれる、予め枚葉紙が積載されているパレットを給紙台に載置する場合が多く、このスキッドの輸送等において枚葉紙の搬送方向に直行する左右方向へのずれがよく発生する。このため給紙装置には、積載された枚葉紙のずれに対応すべく、枚葉紙の左右に配置されたセンサを用いて、枚葉紙の左右方向の位置設定を印刷前に自動で行う機能が搭載されている。
【0003】
このセンサについては、特許文献1に開示されるように光電センサや超音波センサ等の非接触式センサが採用されることがある。しかしながら、非接触式のセンサを用いた場合、センサと積載された枚葉紙との間に障害物が介在した場合に誤検知となり、適正な左右方向位置設定ができなくなる可能性がある。他に、用紙の種類や枚葉紙の積層状態(ずれ等)、サイドブロアと呼ばれるエア供給手段による紙さばき状態(エアにより紙がばたつく状態)によっても誤検知が起きやすい。また、非接触式センサは一般に精度が悪く、精度を上げようとすると、非常に高価になってしまうという問題もある。
【0004】
このため、センサは接触式が好ましく、特許文献2には接触式センサを用いて枚葉紙の左右方向位置の設定を自動で行う技術の開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−28628号公報
【特許文献2】特開2004−315100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2の構成では、センサが紙を検知する都度、パイル台や左右のガイド板の移動が停止するよう制御されている。これは、センサが接触式であるため、パイル台やガイド板の破損防止の目的によるものと思われるが、結果的に左右方向位置設定作業に時間がかかってしまうという問題がある。また、予め左右のガイド板を所定位置に配置しなければならないという手間もあり、改善の余地があった。
【0007】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的は、枚葉紙の左右方向位置の自動設定作業を迅速かつ確実に行うことができ、適正な給紙が行える給紙装置および印刷機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る給紙装置は上記目的を達成するため、枚葉紙を積載可能であり、枚葉紙の搬送方向に直行する左右方向に移動可能な給紙台と、該給紙台の左右方向両側へ少なくとも一対設けられ、左右方向に移動可能で、枚葉紙に接触することにより検知信号を出力するセンサと、該給紙台及び該センサの移動を制御する制御部とを備え、該制御部は、印刷機の運転前に該給紙台を左右方向における所定の位置に自動設定可能な給紙装置において、該センサは中央への移動で過負荷を受けた時に枚葉紙と離間する方向に退避可能であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る印刷機は、請求項1記載の給紙装置と、該給紙装置から給紙される枚葉紙を搬送するフィーダーボードと、該フィーダーボードから搬送される枚葉紙を印刷する印刷部と、該印刷部により印刷された印刷物を排紙する排紙部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る給紙装置によれば、各部品の破損等を起こすことなく、枚葉紙の搬送方向における左右方向位置の自動設定作業を迅速かつ確実に行うことができ、適正な給紙を行うことができる給紙装置を得ることが可能となる。
【0011】
また、前記のような給紙装置を備えた印刷機を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る給紙装置を備えた印刷機の一実施形態の概略構成を示す図である。
【図2】本発明に係る給紙装置を搬送方向上流から見た図である。
【図3】図2のA部拡大図である。
【図4】制御部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、図1において、実質的に同様の構成、作用を有する部品には同じ参照符号を付してある。
【0014】
図1に示す印刷機は、給紙装置20、印刷部30及び排紙部40を備えている。給紙装置20は、フィーダーボード5を介して枚葉紙Pを印刷部30に供給することができる。印刷部30は、給紙装置20から供給される枚葉紙Pを印刷することができ、複数の印刷ユニット(ここでは4台の印刷ユニット30a〜30d)を備えている。また、排紙部40は、印刷部30にて印刷された印刷物Qを排紙することができる。この印刷機では、給紙装置20から枚葉紙Pが印刷部30に供給され、当該供給された枚葉紙Pが印刷部30における各印刷ユニット30a〜30dにて印刷された後、当該印刷された印刷物Qが排紙部40にて排紙される。
【0015】
給紙装置20は複数の枚葉紙Pを収容することができるものであり、上端の枚葉紙Pから1枚ずつ引き出し、フィーダーボード5を介して枚葉紙Pを印刷部30に向けて矢印Z方向に搬送することができるものである。これにより、枚葉紙Pを印刷部30に供給することができる。給紙装置20の詳細は後述する。
【0016】
印刷部30の各印刷ユニット30a〜30dは、それぞれ版胴1、ゴム胴2及び圧胴3を主要構成要素の一組として構成されるものである。印刷ユニット30aにおける4aは給紙胴であり、印刷ユニット30b〜30dにおける4はいずれも渡し胴である。
【0017】
各印刷ユニット30a〜30dにおいて、版胴1には印刷用の版(図示を省略)が配設される。この版には図示しないインキローラ群及び給水装置からインキ及び水が供給され、版に従ってインキがゴム胴2に転写される。そしてゴム胴2に転写されたインキがゴム胴2及び圧胴3に挟持されつつ搬送されてくる枚葉紙Pにさらに転写される。これにより、給紙装置20から供給される枚葉紙Pに対してそれぞれに設けられた版に対応して印刷を行うことができる。
【0018】
排紙部40は、搬送部41及び収容部42を備えている。この排紙部40では、印刷ユニット30dの圧胴3にて搬送されてくる印刷物Qは、先端部が搬送部41の保持部(図示省略)に保持され、搬送部41の図中略下側面に沿って搬送されて収容部42に送られる。収容部42は、搬送部41にて搬送されてきた印刷物Qを収容することができる。
【0019】
図2は本発明に係る給紙装置を搬送方向上流から見た図であり、図3は図2のA部拡大図である。給紙装置20は四本のフレーム91を有し、各フレーム91はステー61で連結されている。給紙台52には枚葉紙Pが積載されたパレット51が載置されている。
【0020】
フレーム91に固定された図示しないサブフレームには、モータM1が設けられている。モータM1のモータ軸に連結するネジ軸58は該サブフレームに設けられたハウジング60内で回転可能となっている。ネジ軸58に螺合するブロック59がハウジング60内に設けられており、ネジ軸58の回転により、ブロック59は図2中左右方向に移動する。
【0021】
図2、3に示す通り、ブロック59はレール55に固定されている。また、ネジ軸58にはスプロケット57が固定されており、ネジ軸58の回転に伴ってスプロケット57も回転する。スプロケット57の回転に伴い、これに懸架されたチェーン56も回転する。
【0022】
スプロケット57、ネジ軸58、ブロック59、ハウジング60は図2中下方にも設けられており、スプロケット57、57間にチェーン56が懸架されている。よってモータM1の回転によりスプロケット57、57、ネジ軸58、58が回転すると、ブロック59、59がレール55を伴って図2中左右へ移動することとなる。これにより、給紙台52は搬送方向に直行する左右方向に移動可能となっている。
【0023】
給紙台51に植設された図示しない4本のボルトにはチェーンの一端が固定されている。各チェーンはフレーム91に設けられた図示しないスプロケットを介して、それぞれ他端がモータに連係されており、モータの正逆駆動によって給紙台52は昇降するよう構成されている。給紙台52の図2中右端部にはブラケット53が固定されており、ブラケット53にはローラ54、54が回転可能に設けられる。ローラ54、54はレール55を狭持するよう配置されている。よって給紙台52はローラ54とレール55の案内により昇降することとなる。
【0024】
図2、3に示す通り、給紙台52上の枚葉紙Pを左右両側から挟むように、一対のセンサSが設けられている。具体的に、ステー61の上部には、左右一対のモータM2、M2が固定されている。モータM2のネジ軸62と螺合するブロック63にはアーム64が取付けられている。
【0025】
よって、モータM2を回転させるとアーム64を伴ってブロック63が左右移動する。なお、モータM2によるセンサSの移動速度は、前述のモータM1による給紙台52の移動速度よりも遅く設定されている。アーム64には保持部材65が支点Oを中心に回動可能に設けられている。これが本発明におけるセンサSの退避機構である。図2中右側の保持部材65は図示しないバネにより常時時計方向に付勢されている。図2中右側の保持部材65について、実線で示す位置が保持部材65の時計方向の回動端である。なお、図2中左側の保持部材65は反時計方向に付勢されている。
【0026】
保持部材65にはセンサ本体68が取付けられている。センサ本体68のアンテナ部69の先端には板バネ部材70がビス92により固定されており、該板バネ部材70の先端には検知コロ71が固定されている。保持部材65の一端には延出部材66が固定されており、延出部材66の先端にはアースネジ67が設けられている。
【0027】
このセンサ本体68は常に高周波を発振しており、アンテナ部に導電体が接触すると発振回路の定数が変化して発振が停止し、スイッチング回路が動作して出力信号を出すタイプのタッチ式リミットスイッチである。よってスイッチの動作力が不要であり、また微少変位を検出することができる。
【0028】
具体的には検知コロ71が枚葉紙Pに接触することにより図3中右方向に回動し、板バネ部材70がアースねじ67に接触してセンサ本体68は出力信号を出すこととなる。なお、アースねじ67を延出部材66に対して螺進させて板バネ部材70との間隔を変化させることにより、センサSの検知距離(感度)を調節できるようになっている。
【0029】
給紙台52の搬送方向前方には図示しないフロントガイドが設けられており、枚葉紙Pの前端がこのフロントガイドに当接することにより、枚葉紙Pの搬送方向の位置決めが行われる。
【0030】
また、給紙装置20には、給紙台52上の上端の枚葉紙を吸引保持してフィーダーボード5へ供給する、図示しないフィーダーヘッドが設けられている。
【0031】
図4は本発明に係る給紙装置の制御部80の構成を示す概略ブロック図であり、前述の給紙台52を左右移動させるモータM1、センサSを左右移動させるモータM2、印刷機の各種操作が可能な操作モニタ85、制御部80により構成されている。制御部80は演算処理等を行うマイクロプロセッサ81(シーケンサでもよい)、データ及び所定のプログラム(演算式あるいはテーブル等)を記憶するROM82、機械回転数等に関する種々の情報を記憶可能なRAM83、マイクロプロセッサ81と制御部80外部に設けられた装置との間における各種信号のやりとりを仲介するインターフェイス84等を用いて構成されている。
【0032】
給紙装置における枚葉紙Pの左右方向位置の自動設定動作について説明する。給紙台52にパレット51を介して枚葉紙Pを積載した後、作業者が操作モニタ85の図示しない給紙装置自動設定ボタンを押すと、制御部80の指示でモータM2、M2の駆動により左右のセンサS、Sはそれぞれ枚葉紙Pから離間する方向、すなわち両端部へ移動し停止する。なお、センサSの両端への移動は、前回の印刷作業終了時に行っておいてもよい。
【0033】
次に給紙台52が図示しないモータ、チェーンの作用により上昇し、所定高さに達すると停止する。次に操作モニタ85のボタン操作によりセンサS、Sが中央への移動を開始する。そしてどちらかのセンサSの検知コロ71が給紙台52に積載された枚葉紙Pに接触すると、板バネ部材70がビス92でアンテナ部69に固定された部分を中心に、両端側(図2中右側の板バネ部材70は反時計方向、左側の板バネ部材70は時計方向)へ回動する。
【0034】
そして板バネ部材70がアースネジ67に接触すると、前述の通り、センサ本体68の発振回路の定数が変化してセンサSは出力信号を発生する。するとモータM1が回転し、給紙台52は接触したセンサSと反対の方向に移動する。そして枚葉紙Pが反対側のセンサSに接触して出力信号を発生すると、モータM1は先程とは逆方向に回転し、給紙台52は先程の移動方向とは反対の方向に移動する。
【0035】
この時、両方のセンサS、Sは中央への移動を続けているので、給紙台52の左右移動が繰り返される。フィーダーボード5上の左右方向に一対設置されている図示しない引き針のうち、印刷作業に使う引き針側のセンサSは、搬送方向における左右位置がその引き針のある位置に合致した位置で停止するよう構成される。そして前述の給紙台52の左右移動が繰り返された後、反引き針側のセンサSは、引き張り側のセンサSとの距離が、使用される枚葉紙Pに応じて決められた所定距離に達すると停止する。この所定距離は枚葉紙Pの左右幅方向長さに所定長さを加えたものであるので、両方のセンサS,Sは給紙台52を検知しなくなった状態で停止する。両方のセンサS,Sが枚葉紙Pを検知しなくなった所で制御部80は給紙台52を停止させて枚葉紙Pの左右方向位置の自動設定作業が終了する。
【0036】
この給紙台52とセンサSの移動について、例えば、給紙台52がモータM1の故障等により移動できなくなった場合、中央へ移動しようとするセンサSが給紙台52上の枚葉紙Pに接触し、過負荷を受けて破損する可能性があるが、枚葉紙Pと接触して過負荷を受けたセンサSは枚葉紙Pから退避するべく、検知した状態のままセンサSの保持部材65が支点Oを中心に回動するので、このような破損のおそれがない。
【0037】
なお、センサSが検知したにもかかわらず給紙台52が反対方向に移動しない場合、制御部80は異常動作としてセンサS、給紙台52の駆動源であるモータM1,M2を非常停止させるようにすれば、より安全である。この場合、給紙台52の移動をポテンショメータあるいはエンコーダ等により把握する必要がある。
【0038】
また、モータM2によるセンサSの移動速度は、モータM1による給紙台52の移動速度よりも遅く設定されているので、センサSが重量のある給紙台52上の枚葉紙Pに当接して過負荷を受けながら移動して破損するといったことがなく、更に安全性が向上する。
【0039】
この左右方向位置の自動設定作業が終了した後、印刷作業が行われる。印刷作業において、積載される枚葉紙Pがそれぞれ左右方向にずれていた場合、センサSの検知によりモータM1が駆動して、給紙台52は左右移動を繰り返す。
【0040】
尚、本発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、前述の実施形態では、センサSが回動退避するように構成していたが、平行移動して退避する構成としてもよい。いずれにせよ、枚葉紙Pの左右方向位置の自動設定作業のためのセンサSの移動機構とは別に、センサSの退避機構を設けることが本発明の要旨である。
【0041】
また、前述の実施形態では、枚葉オフセット印刷機であったが、これに限定されず、枚葉紙の給紙装置を使用する印刷機であればグラビア印刷機やフレキソ印刷機のようなものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係る給紙装置および印刷機は、枚葉紙を給紙搬送する給紙装置及び印刷機において極めて有用である。
【符号の説明】
【0043】
20…給紙装置、52…給紙台、53…ブラケット、54…ローラ、55…レール、56…チェーン、57…スプロケット、58…ネジ軸、59…ブロック、60…ハウジング、61…ステー、62…ネジ軸、63…ブロック、64…アーム、65…保持部材、66…延出部材、67…アースネジ、68…センサ本体、69…アンテナ部、70…板バネ部材、71…検出コロ、80…制御部、85…操作モニタ、91…フレーム、M1…モータ、M2…モータ、S…センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枚葉紙を積載可能であり、枚葉紙の搬送方向に直行する左右方向に移動可能な給紙台と、該給紙台の左右方向両側へ少なくとも一対設けられ、左右方向に移動可能で、枚葉紙に接触することにより検知信号を出力するセンサと、該給紙台及び該センサの移動を制御する制御部とを備え、該制御部は、印刷機の運転前に該給紙台を左右方向における所定の位置に自動設定可能な給紙装置において、
該センサは中央への移動で過負荷を受けた時に枚葉紙と離間する方向に退避可能であることを特徴とする給紙装置。
【請求項2】
請求項1記載の給紙装置と、該給紙装置から給紙される枚葉紙を搬送するフィーダーボードと、該フィーダーボードから搬送される枚葉紙を印刷する印刷部と、該印刷部により印刷された印刷物を排紙する排紙部と、を備えたことを特徴とする印刷機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−246136(P2012−246136A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121777(P2011−121777)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000006943)リョービ株式会社 (471)
【Fターム(参考)】