給電系統における漏洩電流測定装置及び漏洩電流測定方法
【課題】交流/直流変換装置から導出される直流給電線、直流装置や負荷装置の電圧印加部分と接地部分間の絶縁抵抗を通じて流れる故障電流と対地静電容量を通じて流れる漏洩電流を正確に測定する。
【解決手段】処理演算部16は、交流給電線2の線間電圧、零相変流器9が給電電源から交流/直流変換装置3、直流給電線4から負荷装置5へ流れる電流のベクトル和として検出した零相電流I0を分流器10により分流した交流電流Iaoを信号処理し、入力電圧と交流電流Iaoとの位相差を計測する信号処理部13と、演算部14を備える。演算部は、交流電流Iaoの入力電圧に対する位相角θを演算し、位相角θと交流電流Iaoの値とから入力電圧に対する有効成分Aと無効成分Bを算出し、その実効値から、対地漏洩コンダクタンス7を経由して流れる各電流の絶対値の合計の故障電流Igrの値及び対地静電容量6を経由して流れる漏洩電流Igcを演算する。
【解決手段】処理演算部16は、交流給電線2の線間電圧、零相変流器9が給電電源から交流/直流変換装置3、直流給電線4から負荷装置5へ流れる電流のベクトル和として検出した零相電流I0を分流器10により分流した交流電流Iaoを信号処理し、入力電圧と交流電流Iaoとの位相差を計測する信号処理部13と、演算部14を備える。演算部は、交流電流Iaoの入力電圧に対する位相角θを演算し、位相角θと交流電流Iaoの値とから入力電圧に対する有効成分Aと無効成分Bを算出し、その実効値から、対地漏洩コンダクタンス7を経由して流れる各電流の絶対値の合計の故障電流Igrの値及び対地静電容量6を経由して流れる漏洩電流Igcを演算する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ある一定の区域に設置された空調機器や照明機器等のエネルギー変換装置と、このエネルギー変換装置にエネルギーを供給する発電機器やコゼネレーシヨン機器等のエネルギー供給装置と、このエネルギー供給装置から供給されるエネルギーを蓄積し更には蓄積されたエネルギーの供給を行うエネルギー貯留供給装置及び電気自動車の充放電端末等のエネルギー受給装置をを一括連携する給電装置の電圧印加部分から接地部分へ流れる漏洩電流を測定する漏洩電流測定装置及び漏洩電流測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人が居住する住居、人の働くビルデングなどの建物、これら住居や建物を含む複合体から構成される地域などの一定の区域内に配置された空調機器や照明機器等の電気熱負荷に、この区域内に設置した発電機器やコゼネレーシヨン機器を含むエネルギー供給装置から電力や熱を供給するようにしたエネルギー供給システムが用いられている。
【0003】
この種のエネルギー供給システムにおいては、エネルギー供給装置により生成されるエネルギーを蓄積する蓄電蓄熱手段を設け、電気熱負荷により消費されない余分のエネルギーを蓄電蓄熱手段に蓄積しておき、必要に応じて蓄電蓄熱手段に蓄積されたエネルギーを電気熱負荷に供給することにより、エネルギー供給装置で生成されるエネルギーの有効利用を図るようにしたものが提案され、用いられている。
【0004】
また、エネルギー供給システムに商用電源を接続することにより、エネルギー変換機器の特性に応じてエネルギー供給装置から供給されるエネルギーと商用電源を選択して供給することにより、エネルギーコストの削減を図るようにしたシステムも用いられている。
【0005】
そして、エネルギー供給システムに商用電源を接続することにより、エネルギー供給装置により生成される電力の余分を電力会社に販売し、エネルギー供給装置の運転コストの削減を図るようにしたシステムも用いられている。
【0006】
最近では、上述したようなエネルギー供給システムを構成する電気熱負荷及びこの電気熱負荷にエネルギーを供給するエネルギー供給装置、更には蓄電蓄熱手段を含む各装置を給電線と情報ラインとにより一括連携して制御することにより、一定の区域全体のエネルギーの受給の最適化を実現するようにしたいわゆるスマートハウス、スマートビル、あるいはスマートグリットと称されるシステム(以下、総称してスマートグリットという。)が提案されている。
【0007】
上述したエネルギー供給システムにおいて、エネルギー供給装置から電源が供給される給電線には交流方式が広く用いられるが、発電機器を構成する太陽光発電や燃料電池の発電は直流により行われ、電気熱負荷であるLED電灯等は直流電流で駆動される。また、蓄電池への蓄電は、直流で行われる。そのため、交流電流が供給される給電線と直流駆動する機器とを接続するために、交流/直流変換装置又は直流/交流変換装置を接続する必要がある。この変換装置は、多数のダイオードやスイッチング素子を備え、これらの素子を含む変換装置の変換損失が大きな問題になっている。この交流電流と直流電流との変換損失を減らし、また、近年急激に増加している直流で駆動される電気自動車の充放電端末を充電放電スタンドに直接接続するため、更にはスマートグリットを構成するエネルギー変換機器を含む各構成要素に直接給電するため、直流給電方式に加えて、交流及び直流いずれの電流での給電を可能にしたハイブリッド給電方式が増加する傾向にある。
【0008】
ところで、従来、電路及び電気機器の絶縁状態を調べる方法として、被測定部分を停電させて、絶縁抵抗計で絶縁抵抗を測定する方法が広く用いられている。このような方法は、情報処理用の機器を含む多様な機器を構成要素に含むスマートグリットや連続操業が要求される工場等のように停電が許されないシステムに適用することができない。
【0009】
特に、交流から変換された直流が給電される直流給電線には、交流駆動される交流機器や電力会社の交流電源との接続のためのインバータやコンバーターなどのダイオードやスイッチング素子(以下、スイッチング素子等という。)が多く接続される可能性がある。このような電気系統において、絶縁抵抗中を流れる故障電流を測定する場合には、この系統を構成するスイッチング素子等を、絶縁抵抗の測定時に印加される高電圧から保護するため、これらスイッチング素子等の部分を切り離して測定する必要があり、停電手続きや、その結線の開放、再接続などに多くの手間と時間とを必要としている。
【0010】
そこで、交流給電方式を採用したスマートグリットを停電させることなく、活線のまま給電線及び装置の絶縁状態を調べる技術が提案され、用いられている。この種の技術として、零相変流器を用いて、交流電路及び負荷装置の電圧印加部分から接地部分へ流れる電流である零相電流I0を、零相変流器と電流センサーとを組み合わせて検知するようにしたものがある。この零相変流器によって検出される零相電流I0は、電路及び負荷装置の電圧印加部分と接地部分間の絶縁抵抗を介して流れる漏洩電流Igr(以下、この電流を故障電流Igrという。)と、この電圧印加部分と接地部分間に存在する対地静電容量を介して流れる漏洩電流Igc(以下、この電流を漏洩電流Igcという。)とのベクトル和で構成されている。
【0011】
これらの技術のうち、現在実用化されている200V級三相3線のうちの1線が接地されている給電方式(以下、Δ方式という。)での故障電流Igrを測定する技術は、この給電方式及び単相給電方式の計測は可能であるが、直流給電系統やそれから給電されている装置や、スイッチング素子等が使用されている装置、更には系統の計測は困難とされている。
【0012】
また、直流装置とそれに給電する直流給電線は、直流電流センサーを用いて直流の故障電流Igrを検出しているが、これの計測のために正極と負極又は交流側の給電線を一括した零相変流器を通じて計測するため、万一、正極と負極が同時に漏電を起こしたときには正極及び負極の故障電流Igrが互いに打ち消しあい、正常な故障電流値Igrの計測が困難となる。
【0013】
また、スマートグリットに連携する電力会社などの給電用変圧器の結線方式とその端子の接地方式、給電用変圧器から導出される給電線の方式によっては、その直流給電線の対地直流電圧に交流電圧が重畳することがあり、直流センサーを用いた故障電流Igrの検出が困難であり、特に近年ヨーロッパ規格として制定されている電圧印加部分と接地部分間に通常存在する対地静電容量を介して流れる漏洩電流Igcの検出が困難である。
【0014】
また、海外などで標準給電方式として広く用いられている2線のうち1線が接地してある単相給電線と直流電圧を発生する太陽光発電素子とを連携するパワーコンデイショナー装置には、単相給電線に挿入された零相変流器によって零相電流を検出し、その波形を処理して、故障電流Igrと漏洩電流Igcを検出する方法が提案されている。しかし、この方法では、正極故障電流と負極故障電流との差が故障電流Igrとして検出されるため、正極と負極が同時に故障したときには過小な故障電流Igrを検出し、また直流電流に交流電流が重畳しているため特殊なセンサーを必要とし、信号の処理工程も複雑となるばかりか、スイッチング素子等による高調波電圧などの影響によって測定精度が劣る問題点がある。
【0015】
なお、この種の漏洩電流計測の先行技術として、特開2008−170330号公報(特許文献1)に記載されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2008−170330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上述したような実情に鑑み、本発明は、電力会社などの給電線に1箇所で連携したスマートグリットの直流給電線、この直流給電線に接続された直流駆動される直流装置やスイッチング素子等を経由する交流電流で駆動される負荷装置、給電装置、発電装置、コゼネレーシヨン装置などの電圧印加部分から接地部分へ対地絶縁抵抗を通じて流れる漏洩電流Igr(以下、故障電流Igrという。)と、電圧印加部分と接地部分間に通常存在する対地静電容量を介して流れる漏洩電流Igc(以下、漏洩電流Igcという。)と、故障電流Igrと漏洩電流Igcとの合成電流である零相電流I0(以下、零相電流I0という。)とを運転状態のままで検出することができる漏洩電流測定装置及びその測定方法を提供することを目的とする。
【0018】
そして、本発明は、スマートグリットに連携する電力会社等の商用電源を供給する給電用変圧器の結線方式とその端子の接地方式、それに給電用変圧器から導出される給電線の方式とによって、その直流給電線の対地直流電圧に交流電圧が重畳することがあり、この対地直流電圧に交流電圧が重畳している際に、直流給電線及び直流給電線に接続された直流装置及びスイッチング素子等を経由する交流電流で動作する各種の交流装置に発生する故障電流Igrと漏洩電流Igcとを運転状態のまま検出する装置及び方法を提供することを目的とする。
【0019】
また、本発明は、直流電流と交流電流とが重畳している故障電流Igrの実効値を検出する装置及び方法を提供することを目的とする。
【0020】
更に、本発明は、正極及び負極が同時に漏電を起こしたときに、正極及び負極各々の故障電流の絶対値を合計した故障電流の合計電流を検出する漏洩電流測定装置及びその測定方法を提供することを目的とする。
【0021】
そして、本発明においては、スマートグリットと連携する電力会社等の給電用変圧器の結線方式とその端子の接地方式、それに給電用変圧器から導出される給電線の方式とによって対地直流電圧に重畳している交流電圧の大きさや位相などの状態が異なり、且つその状態は理論的に明確なものであるので、上述した各々の方式についての漏洩電流測定装置及びその測定方法を提供することを目的とする。
【0022】
また、直流給電線に接続されたスイッチング素子等を経由する交流の負荷装置、給電装置、発電装置、コゼネレーシヨン装置などは、そのスイッチング素子等の作動時に対地電圧に多くの高調波電圧を発生させるため、測定時これら対地電圧の入力は誤差増大の原因となる。
【0023】
そこで、本発明は、給電用変圧器から導出される給電線の波形が安定している線間電圧のみを入力する方式を採用し、電力会社などの交流給電線からスマートグリットの直流給電線やそれに接続された種々の装置から大地へ漏洩し、大地から電力会社などの給電変圧器端子の接地線へと貫流する漏洩電流を、その貫流するいずれの部分でも計測が可能な漏洩電流測定装置及び測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上述したような課題を解決するため本発明は、電力会社などがスマートグリットへ給電するさいに設置する給電変圧器の低電圧側巻線である二次側巻線から導出された交流給電線部分又は漏洩電流が貫流する部分に漏洩電流測定装置を設置し、交流給電線に接続された交流/直流変換装置の直流給電端子から導出された直流給電線に接続される太陽光発電装置や燃料電池などの発電装置、LED照明装置、電気自動車の充電放電端子、蓄電池などの直流装置、更には、スイッチング素子等を経由して接続される交流電動機や交流駆動機器などの交流負荷装置、風力発電装置等の交流発電装置、コゼネレーシヨン装置などの対地漏洩電流を測定し、この電流と入力した交流給電線の線間電圧とを対比することによって、故障電流Igr、漏洩電流Igcを導出し、零相電流I0を演算する。
【0025】
ところで、交流電流の給電は、単相又は三相の給電線を介して行われる。そして、交流で給電される電流は、交流/直流変換装置により直流に変換され、直流で駆動される各種の直流機器や直流装置、更には直流給電される給電端子に給電される。これら直流機器や直流装置、更には給電端子は、交流/直流変換装置から導出される正極及び負極の直流給電線に接続される。したがって、交流給電線と直流給電線とは、交流/直流変換装置の半導体素子を介して接続されている。そして、上記給電方式では、給電用変圧器の結線方式とその端子の接地方式とによっては、2本又は3本の交流給電線の電圧の中心点である電気的中性点の対地電圧が0でない場合がある。ここに、電気的中性点は、単相給電では2本の交流給電線電圧差の中心点になり、ベクトルで示すときに2本の給電線電圧差ベクトルの0.5倍のベクトル先端の点になり、三相の給電方式では3本の交流給電線電圧の中心点になり、ベクトルで示すときに3本の交流給電線電圧差ベクトルで描かれる三角形の重心になる。
【0026】
一方、これらの交流給電線に、スイッチング素子等を経由して接続されている直流給電線の電気的中性点は、2本の直流給電線電圧差の中心点となり、この直流給電線と交流給電線とは、電気的に対称に配置されたスイッチング素子等を経由して接続されているので、両者の電気的中性点は一致する。ここで、交流給電線電気的中性点の対地交流電圧をEoとするとき(以下、この電圧Eoを重畳電圧Eoという。)は、この重畳電圧Eoが直流給電線電圧に重畳する。
【0027】
上述の直流給電電圧に重畳電圧Eoが重畳する給電用変圧器の結線方式と、その端子の接地方式と、更に給電用変圧器から導出される給電線の方式の一例として挙げられる一般家庭に引き込まれた線間電圧Eが105Vの交流単相給電線は、給電用単相変圧器の二次側巻線の中点が接地してある105V巻線と接地中点と105V巻線から構成される単相3線式給電用変圧器(以下単三方式という)の接地中点端子と他のいずれかの端子に接続されている。そして、105Vの交流単相給電線は、2本の給電線うちの1本が接地された0電位で、他の1本の対地電圧が105Vとなり、この電圧の半分の0.5Eにあたる対地電圧52.5Vの点が105Vの交流単相給電線の電気的中性点の対地電圧となり、この対地電圧52.5Vが重畳電圧Eoの値となる。
【0028】
このときの直流給電最大電圧は、実効値である交流給電電圧Eの波高値であるこの電圧Eの√2倍に相当する148Vになるので、この直流給電最大電圧の中点にあたる電気的中性点に対しては正極線が直流給電最大電圧の0.5倍である+74Vであり、負極線が−74Vであり、交流給電線電気的中性点がこの直流給電線電気的中性点に一致するので、直流給電線の両極線に重畳電圧Eoである52.5Vの対地交流電圧が重畳する。
【0029】
給電線2本のうちの1本が接地された単相交流給電線の線間電圧をEとするとき、直流給電線の最大電圧は、この線間電圧Eの√2倍であり、直流電気的中性点に対する正極線、負極線の電圧は、それぞれ直流給電線の最大電圧の+0.5倍、−0.5倍にあたる線間電圧Eの+0.5√2倍、−0.5√2倍となり、この両極線に線間電圧Eの0.5倍の重畳電圧Eoも同時に印加される。このように、これらの線間電圧Eと重畳電圧Eoは、給電用変圧器の結線方式とその端子の接地方式、それに給電用変圧器から導出される給電線の方式による一定の関係を保っている。本発明は、これらの関係を利用して上述した技術課題を解決し得る漏洩電流測定装置及び測定方法を構成したものである。
【0030】
更に、上述したような技術課題を解決するために提案される本発明に係る漏洩電流測定装置及び測定方法では、線間電圧Eの単相又は3相交流給電線の電気的中性点の対地電圧である重畳電圧Eoの存在が必要である。この重畳電圧Eoは、交流給電線の線間電圧Eのm倍になり、この倍数m及び両電圧E,Eoの位相差は、給電用変圧器結線方式とその端子の接地方式それに給電用変圧器から導出される給電線の方式から定まる。
【0031】
そして、交流給電線にはスイッチング素子等で構成される交流/直流変換装置が接続され、この変換装置から導出される直流給電線の線間電圧Edは最大値で交流給電線の線間電圧Eの√2倍で、直流給電線の電気的中性点に対する正、負極線の各直流電圧Ep,Enは、それぞれ直流給電線の線間電圧Edの+0.5倍、−0.5倍に相当し、正極線の直流電圧Epは交流給電線線間電圧Eの+0.5√2倍、負極線の直流電圧Enは交流給電線線間電圧Eの−0.5√2となり、これら正、負極線に交流の重畳電圧であるEoが重畳する。なお、この直流給電線の線間電圧Edは、故障電流の最大状態を算出するため、交流給電線線間電圧Eの√2倍とする。
【0032】
以上のように、直流給電線電圧Ed及び重畳電圧Eoは、いずれも交流給電線の線間電圧Eによって決まる。直流給電線及びそれに接続された各装置の正極、負極には対地直流電圧Ep,Enが印加され、両極にはそれら直流電圧に交流重畳電圧Eoが重畳して印加される。
【0033】
このときの対地漏洩電流を求める方法として、交流重畳電圧Eoのみ印加した交流対地漏洩電流(以下、交流重畳電流という。)と、対地直流電圧Ep,Enを印加したときに正極、負極からの対地漏洩電流である直流故障電流とを求め、その後重畳の理を用いて両電流を重畳するのが一般的な方法であるが、直流故障電流は、漏洩電流Igcを含まず、前述したように、正極故障電流と負極故障電流との差が直流故障電流として検出されるので、正極と負極とが同時故障したときには過小な電流を故障電流として検出するという致命的な問題点がある。
【0034】
これに対し交流重畳電流は、重畳の理によって、正極、負極に同時に交流重畳電圧Eoを印加するとして計算するので、交流重畳電流には正極漏洩電流と負極漏洩電流の和としての漏洩電流Igcと、正極故障電流と負極故障電流の絶対値の和とした故障電流とをベクトル的に合計したものになる。
【0035】
そして、交流重畳電流と交流給電線の線間電圧Eとの位相を比較することにより、上記交流重畳電流から、上記漏洩電流Igcと上記故障電流Igrの値を求めることができる。
【0036】
さらに前述のように、交流給電線の線間電圧Eと重畳電圧Eo、直流給電線電圧Ed、さらには正極、負極の対地直流電圧Ep,Enの関係が明らかにされており、この関係を利用して、交流重畳電流から求めた故障電流Igrの値から、正極、負極にそれぞれ対地直流電圧Ep,Enを印加した場合の正極故障電流と負極故障電流の絶対値の和である直流故障電流の値を算出することができる。
【0037】
上述の直流故障電流算出値の二乗と前述の交流重畳電流から求めた故障電流の二乗とを加算、開平すれば実効値として重畳させた故障電流Igrを求めることができる。
【0038】
この故障電流Igrの二乗と上記漏洩電流Igcの二乗とを加算、開平すればベクトル和としての零相電流I0の実効値を求めることができる。
【0039】
また、単相又は三相交流給電線又は正極及び負極の直流給電線を一括した合計電流である零相電流I0は、零相変流器によって検出されるが、この零相電流I0は正極、負極の対地直流電圧Ep,Enによる直流故障電流に交流重畳電流が重畳されており、前述のように、計測が必要である交流重畳電流は零相電流I0から交流フイルタによって分離することができる。
【0040】
次に、以上述べた手段の妥当性について、数式を用いて理論的に説明する。
【0041】
さて、直流給電線には各種の直流装置若しくは設備が接続される他、スイッチング素子等で構成される直流/交流変換装置を経由して交流装置若しくは設備が接続されているが、これらの装置若しくは設備はスイッチング素子等を経由して電気的に直流給電線に接続されているので、これら直流給電線に接続された装置と直流給電線とを合計しての正極線、負極線の対地絶縁コンダクタンスをそれぞれGp,Gnとし、対地静電容量をそれぞれCp,Cnとする。
【0042】
この対地絶縁コンダクタンスGp,Gn、対地静電容量Cp,Cnには、前述した正、負極線直流電圧と交流の重畳電圧とが印加されるので、対地漏洩電流Igcを求めるに当たっては、重畳の理によって、直流電流と交流電流とを別に計算し、次いで重畳の計算を行う。
【0043】
交流については、交流重畳電圧Eoが印加され、交流重畳電流が流れる。対地絶縁コンダクタンスGp,Gnに流れる交流重畳電流をそれぞれIgp,Ignとし、対地静電容量Cp,Cnに流れる交流重畳電流をそれぞれIcp,Icnとすると、IgpはEoGp、IgnはEoGn、Eoの角周波数をωとしてベクトル記号法で表すと、IcpはjωCpEo、IcnはjωCnEoとなる。従って、交流重畳電圧Eoに起因する交流重畳電流をIaoとすると、Iaoは、Icp,Icn,IgpそれにIgnのベクトル和になり、下記の式1のように示すことができる。
【0044】
Iao=(Gp+Gn)Eo+jω(Cp+Cn)Eo ・・・(1)
直流については、対地漏洩電流が直流故障電流となり、対地絶縁コンダクタンスGp,Gnに流れる直流故障電流をそれぞれIdp,Idnとすると、IdpはEpGp,IdnはEnGnとなり、また直流電圧Ep,Enに起因する直流故障電流をIdoとすると、IdoはIdpとIdnの和になり、前述した交流給電線線間電圧がEのとき、Epは+0.5√2E、Enは−0.5√2Eとなる関係から、下記の式2のように示すことができる。
【0045】
Ido=0.5√2(Gp−Gn)E ・・・(2)
直流給電線の正極線(以下、p相という。)及び負極線(以下、n相という。)のいずれかに故障電流が発生した場合は、上記式1、式2による検出が可能であるが、p相とn相に、同時に故障電流が発生したときは、式2ではその差の電流しか検出できない。特に、p相及びn相の故障電流が等しいときは検出が不可能となる。
【0046】
p相とn相に故障電流が同時に発生したときは、交流については上記式1の(Gp+Gn)Eoの検出が可能であるが、直流については式2から、0.5√2(Gp+Gn)Eの値がp相とn相に同時に直流故障電流が発生したときの絶対値の合計値つまり直流電圧Edに起因する直流故障電流の値となる。
【0047】
交流については式1の実数部分(Gp+Gn)Eoが交流重畳電流IaoのEoとの同位相成分つまり交流重畳電流Iaoの有効成分で、この値をAとすれば、有効成分Aが重畳電圧Eoに起因する故障電流の値となる。
【0048】
また、式1の虚数部分ω(Cp+Cn)Eoは、交流重畳電流Iaoと重畳電圧Eoとが直角の位相角の成分つまり交流重畳電流Iaoの無効成分で、この値をBとすれば、直流は定常的にはCp,Cnには流れないので、無効成分Bが、電圧印加部分と接地部分間に通常存在する対地静電容量を介して流れる漏洩電流Igcの値となる。
【0049】
有効成分A及び無効成分Bは、交流重畳電流Iaoの大きさと、この電流Iaoと重畳電圧Eo若しくはEoと定まった位相角を持つ電圧、例えば交流給電線線間電圧Eとの間の位相角を測定することによって実測が可能である。また、前述の交流重畳電流Iaoは零相変流器の出力電流である零相電流I0から交流フイルタによって分流することができる。
【0050】
また、直流電圧と交流重畳電圧とが重畳する電圧印加部分と接地部分間の絶縁抵抗を介して流れる漏洩電流Igrは、上述の交流の有効成分Aの値の二乗値と、前述した直流故障電流である0.5√2(Gp+Gn)Eの値の二乗値との和の平方根である実効値であり、且つ前述したように給電変圧器の結線方式とその端子の接地方式とそれに給電用変圧器から導出される給電線の方式によってきまる定数mのE倍が交流重畳電圧Eoになるので、これらの関係から、故障電流に相当する電路及び負荷装置の電圧印加部分と接地部分間の絶縁抵抗を介して流れる漏洩電流Igrは下記の式3によって求められ、電路及び負荷装置の電圧印加部分に存在する対地静電容量を介して流れる漏洩電流Igcは下記の式4によって求められる。
【0051】
Igr=A{1+1/(2m2)}1/2 ・・・(3)
Igc=B ・・・(4)
また、交流電路及び交流負荷装置の電圧印加部分から接地部分へ流れる零相電流I0の値は、下記の式5によって求められる。
【0052】
I0=(Igr2+Igc2)1/2 ・・・・・(5)
前述の位相比較の際に必要となる交流の電圧として、高調波成分を多く含み接地接続などに不安要素が多い重畳電圧Eoの直接入力を避け、Eoとある定まった位相角を保つ交流給電線の線間電圧Eを入力し、これと零相電流I0の交流分として含まれている交流重畳電流Iaoとの位相差及び電流Iaoの大きさとを測定することにより、故障電流Igr、漏洩電流Igc、零相電流I0の値を求めることができる。
【0053】
以上の方法は重畳電圧Eoの存在が必要で、重畳電圧Eoが存在する給電変圧器の結線方式とその端子の接地方式を列挙すれば、単相で給電する場合には以下の方式がある。
(イ)最初にのべた、単相三線方式の接地中点端子と他のいずれかの端子とから給電する方式。
(ロ)ヨーロッパを初めとして全世界に普及している、三相給電変圧器の給電側巻線をY形に結線し、その中点を接地して、その電圧端子から380V〜440Vの三相を給電し、接地された中点と電圧端子とから交流線間電圧Eが220V〜254Vの単相を給電する3相4線式給電方式(以下Y方式という)の接地点と電圧端子のいずれか1端子とから給電する単相給電方式。
(ハ)上記のY方式の3つある電圧端子のうちの2つの端子から、交流線間電圧Eが380V〜440Vの単相で給電する方式。
(ニ)三相3線のうちの1線が接地されている給電方式であるΔ方式の3つある端子の2つから単相で給電する方式。
【0054】
そして、三相で給電する場合は、以下の方式がある。
(ホ)Δ方式の3つある端子で三相給電する方式。
(ヘ)単三変圧器にもう1台変圧器を追加したV結線方式(以下V方式という)による3相給電方式。
【0055】
交流重畳電圧Eoは給電線の線間電圧Eのm倍としている定数mの値は、給電線の線間電圧でベクトルを描くとき、その長さが給電線間電圧E、その重心と接地点との間隔が交流重畳電圧Eoを表すので、前記(イ)の方式では、mは1/2となり、前記(ロ)の方式では、同様にmは1/2となり、前記(ハ)の方式では正3角形の重心が接地点で線間電圧の中点までの距離がEoとなり、mは1/(2√3)、(ニ)2線のうち1線が接地されているときmは1/2となり、前記(ホ)の方式では正3角形の重心が三相の電気的中性点で接地点である1つの頂点までの距離がEoとなり、mは1/√3となり、前記(ヘ)の方式では、正3角形の重心が三相の電気的中性点で接地点である線間電圧の中点までの距離がEoとなりmは1/(2√3)となる。
【0056】
以上説明した理論に基づいて具体化される本発明に係る漏洩電流測定装置及び測定方法は、給電変圧器から導出される単相給電線にあっては、その線間電圧Eを、三相給電線にあっては、三相の電圧端子をR,S,Tとし、S相が接地してあるΔ方式ではR相とT相と間の線間電圧ERTを、R相とT相との間の中点が接地してあるV方式ではR相とT相との間の線間電圧ERTを測定する電圧検出手段と、単相又は三相給電線若しくはこの給電線にスイッチング素子等で構成される直流/交流変換装置を経由して導出される直流給電線の各給電線をそれぞれ流れる合計電流である零相電流I0を検出する零相電流検出手段と、この零相電流検出手段によって検出された零相電流I0からその交流成分である交流重畳電流Iaoを検出する交流重畳電流検出手段とを有し、上記電圧検出手段によって検出された上記線間電圧を基準電圧とし、この基準電圧と上記交流重畳電流との位相を比較する位相比較手段と、上記基準電圧に対して、上記交流重畳電流を同相の有効成分Aと、これと直角の位相差を有する無効成分Bに分離して演算する演算手段を備える。
【0057】
最初に、例えばY方式の接地された中点とある電圧点とから導出されるような、単相給電線2線のうち1線が接地されている給電方式にあっては、基準電圧である給電線線間電圧Eと、前述の重畳電圧Eoとの位相は一致し、給電線線間電圧Eに対する重畳電圧Eoの倍数mは1/2となるので、前記式3のmに1/2を代入すると、直流電圧と交流重畳電圧とが重畳する電圧印加部分と接地部分間の絶縁抵抗を介して流れる漏洩電流である故障電流Igrの値は有効成分Aの√3倍となり、前記式4から電圧印加部分と接地部分間に通常存在する対地静電容量を介して流れる漏洩電流Igcの値は無効成分Bの値となる。
【0058】
ここで、漏洩電流Igcの値は、全電圧印加部分と接地部分間の漏洩電流の合計値であり、故障電流Igrの値は、全電圧印加部分と接地部分間の絶縁抵抗を介して流れる故障電流で、その直流成分は正極、負極故障電流の絶対値の合計値であり、交流成分とも重畳した故障電流の値となる。
【0059】
次に、Y方式の3つある電圧端子のうちの2つの端子から単相で給電するとき、前述したようにmは1/(2√3)、S相が接地してあるΔ方式にあってR相とT相から単相で給電するときもmは1/(2√3)、Δ方式の3つある端子で三相での給電ではmは1/√3、V方式によって三相で給電するときはmは1/(2√3)となり、そして、いずれも基準電圧Eと前述の重畳電圧Eoとの位相差が90度となるので、上記基準電圧Eに対して、前記交流重畳電流Iaoを同相の有効成分Aと、これと直角の位相差を有する無効成分Bに分離したとき、漏洩電流Igcの値が有効成分Aの値となり、故障電流Igrの値は、mが1/(2√3)のときは無効成分Bの√7倍に、mが1/√3のときは無効成分Bの√2.5倍の値となる。
【0060】
以上のように、本発明に係る漏洩電流測定装置にあっては、零相電流I0からその交流成分である交流重畳電流Iaoを検出し、入力された給電線線間電圧である基準電圧Eに対して交流重畳電流Iaoの有効成分Aの値とこれと直角の位相差を有する無効成分Bの値とを求めるための位相比較を行い、これらの値及び給電用変圧器結線方式とその端子の接地方式それに給電用変圧器から導出される給電線の方式から定まる交流給電線の線間電圧Eに対する重畳電圧Eoの倍数m及び両電圧の位相差に基づいて、前記故障電流Igrの値及び電圧印加部分と接地部分間に通常存在する対地静電容量を介して流れる電流の合計値である漏洩電流Igcの値、それに故障電流Igrと漏洩電流Igcとのベクトル和である零相電流I0の値を演算する演算手段とを備える。
【0061】
ここで、上記演算手段は、より具体的には、入力された給電線の線間電圧である基準電圧Eに対して、基準電圧Eの電気的中性点の給電電源の接地点からの電圧である重畳電圧Eoが基準電圧Eと、例えば一線が接地してある単相給電線のように同位相のとき、基準電圧Eに対して上記交流重畳電流Iaoの同位相成分つまり有効成分の値をAとし、これと直角の位相差を有する無効成分の値をBとするとき、式A{1+1/(2m2)}1/2の値を故障電流Igrの値として演算し、無効成分Bの値を漏洩電流Igcの値として演算する。これに対し基準電圧Eの位相と重畳電圧Eoの位相差が90度あるときは、式B{1+1/(2m2)}1/2の値を故障電流Igrの値として演算し、交流重畳電流Iaoの有効成分Aの値を漏洩電流Igcの値として演算する。またI0=(Igr2+Igc2)1/2の値を零相電流I0の値として演算する。
【0062】
前述の基準電圧Eと重畳電圧Eoの位相差及びmの値は、給電用変圧器の結線方式とその端子の接地方式及び給電線の引出し方式とによって決まる。
【0063】
本発明に係る漏洩電流測定装置は、更に表示手段を備え、上記演算手段によって演算された結果を上記表示手段に表示して告知することが望ましい。
【0064】
さらに、本発明に係る漏洩電流測定装置は、警報手段を備え、上記演算手段において求められる上記故障電流Igrの値が所定の値を超えたときに上記警報手段より警報を発することにより、故障電流Igrの値が所定の値を超えたことを告知することができる。
【0065】
さらにまた、本発明に係る漏洩電流測定装置は、さらに遮断手段を備えることにより、上記演算手段において求められる上記故障電流Igrの値が所定の値を超えたときに上記遮断手段により電路を遮断することを可能とする。
【0066】
また、本発明に係る漏洩電流測定方法は、給電変圧器から導出される単相給電線にあっては、その線間電圧Eを、三相給電線にあっては、三相の電圧端子をR,S,Tとし、S相が接地してあるΔ方式ではR相とT相間との線間電圧ERTを、R相とT相との間の中点が接地してあるV方式ではR相とT相との間の線間電圧ERTを測定する電圧検出工程と、単相又は三相給電線若しくはこの給電線にスイッチング素子等で構成される直流/交流変換装置を経由して導出される直流給電線各々の給電線を流れる合計電流である零相電流I0を検出する零相電流検出工程と、この零相電流検出工程によって検出された零相電流I0からその交流成分である交流重畳電流Iaoを検出する交流重畳電流検出工程とを有し、上記電圧検出工程によって検出された上記線間電圧ERTを基準電圧とし、この基準電圧と上記交流重畳電流Iaoとの位相を比較する位相比較工程と、上記基準電圧に対して、上記交流重畳電流Iaoを同相の有効成分Aと、これと直角の位相差を有する無効成分Bに分離した計測値を求め、これらの値及び給電用変圧器結線方式とその端子の接地方式それに給電用変圧器から導出される給電線の方式から定まる交流給電線線間電圧Eに対する重畳電圧Eoの倍数m及び両電圧の位相差に基づいて、前記故障電流Igrの値及び電圧印加部分と接地部分間に通常存在する対地静電容量を介して流れる電流の合計値である漏洩電流Igcの値、それに故障電流Igrと漏洩電流Igcとのベクトル和である零相電流I0の値を演算する演算工程とを備える。
【0067】
そして、入力された給電線線間電圧である基準電圧Eに対して交流重畳電流Iaoの有効成分Aの値とこれと直角の位相差を有する無効成分Bの値とを求めるための位相比較が行われ、これらの値及び給電用変圧器結線方式とその端子の接地方式それに給電用変圧器から導出される給電線の方式から定まる交流給電線線間電圧Eに対する重畳電圧Eoの倍数m及び両電圧の位相差に基づいて、前記故障電流Igrの値及び電圧印加部分と接地部分間に通常存在する対地静電容量を介して流れる電流の合計値である漏洩電流Igcの値、それに故障電流Igrと漏洩電流Igcとのベクトル和である零相電流I0の演算が行われる。
【0068】
ここで、上記演算工程は、より具体的には、入力された給電線の線間電圧である基準電圧Eに対して、基準電圧Eの電気的中性点の給電電源の接地点からの電圧である重畳電圧Eoが基準電圧Eと、例えば一線が接地してある単相給電線のように同位相のとき、基準電圧Eに対して上記交流重畳電流Iaoの有効成分の値をAとし、これと直角の位相差を有する無効成分の値をBとするとき、式A{1+1/(2m2)}1/2の値を故障電流Igrの値として演算し、無効成分Bの値を漏洩電流Igcの値として演算する。これに対し基準電圧Eの位相と重畳電圧Eoの位相差が90度あるときは、式B{1+1/(2m2)}1/2の値を故障電流Igrの値として演算し、Aの値を漏洩電流Igcの値として演算する。またI0=(Igr2+Igc2)1/2の値を零相電流I0の値として演算する。
【発明の効果】
【0069】
上述したように、従来の装置又は方法にあっては、発電機器、コゼネレーシヨン機器等のエネルギー供給装置、これらエネルギー供給装置からエネルギーの供給を受ける空調機器、照明機器等のエネルギー変換装置や、蓄電池等のエネルギー貯留供給装置、電気自動車の充放電端末などのエネルギー受給装置などに給電する直流給電線及びこれに接続されている各装置並びに機器の電圧印加部分から接地部分へ流れる故障電流Igrの検出に際して、正極故障電流と負極故障電流との差を故障電流Igrとして検出していたため、正極負極同時故障の際は過小な故障電流Igrを検出し、特に正極故障電流と負極故障電流の絶対値とが等しいときは検出が不可能になるなど、重大故障の一因になっていたが、本発明に係る装置及び方法では正極故障電流、負極故障電流の絶対値の和として故障電流Igrの検出を可能にしているので、上述の各装置及び機器を含む全装置の絶縁監視を高い信頼性で可能となし、安全性を大きく向上することができる。
【0070】
また、本発明は、警報手段を備えることにより、故障電流Igrが異常状態になったことを音などの警報により告知することができるので、漏電による事故を未然に防止することができる。
【0071】
更にまた、漏洩電流Igcの検出も容易なため、上述したヨーロッパ規格の要求事項についても適応が可能であり、また、故障電流や漏洩電流の検出に際して直流微小電流を検出するための複雑高価な零相変流器や特殊なセンサーを用いる代わりに、標準的な交流零相変流器と電子回路での処理が可能となり、更に測定の際にスイッチング素子等による高調波電圧などの影響を受けやすい対地電圧の入力に代わって、安定した交流給電線の線間電圧を用いるなど、高い信頼性を有し、しかも安価で、全世界に適用が可能な漏洩電流測定装置及びその測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】変圧器の二次側巻線を星形に結線したY方式である三相星形給電方式の電源の接地相と電圧相の1つから導出された単相給電線に接続された変換装置から給電される直流給電線及びそれに接続される負荷装置、電源装置等の故障電流Igr及び漏洩電流Igcの測定に本発明に係る漏洩電流測定装置を適用した構成例を示す概略系統図である。
【図2】図1に示すY方式の星形給電方式の電源における給電電圧Eとその電気的中性点Ma、そのときの重畳電圧Eo、及び給電線がR相、S相から導出されたときの給電電圧Esとその電気的中性点Ms、そのときの重畳電圧Eosの関係を示すベクトル図である。
【図3】単三方式電源の変圧器の二次側巻線の結線と接地の状態、給電線がR相と接地点Gから導出されたときの給電電圧E1とその電気的中性点M1の関係を示す図である。
【図4】単三方式給電方式の電源における給電電圧E1とその電気的中性点M1、そのときの重畳電圧Eo1の関係を示すベクトル図である。
【図5】V方式の電源の変圧器の二次側巻線の結線と接地の状態、給電線がR相、S相、T相の三相で導出されたときの給電電圧Evの関係を示す図である。
【図6】V方式の給電電源から三相で導出されたときの給電電圧Evと三相電位の重心であるその電気的中性点Mv、そのときの重畳電圧Eovの関係を示すベクトル図である。
【図7】Δ方式電源の変圧器の二次側巻線の結線と接地の状態、給電線がR相S相T相の三相で導出されたときの給電電圧EDの関係を示す図である。
【図8】Δ方式の給電電源から三相で導出されたときの給電電圧EDと三相電位の重心であるその電気的中性点MD、そのときの重畳電圧EoDの関係を示すベクトル図である。
【図9】本発明に係る漏れ電流測定装置を構成する信号処理部の詳細を示すブロック図である。
【図10】零相電流I0の交流成分であるIao、基準電圧として入力される給電線線間電圧E,Es、E1、線間電圧EV、ED、ESR,EST、位相角θ、零相電流I0の交流成分であるIaoの有効成分A、零相電流I0の交流成分であるIaoの無効成分Bの関係を示すベクトル図である。
【図11】ある時点で位相差がθの入力電圧Eと零相電流I0の交流成分であるIaoの波形と、位相判定のためのゼロクロッシング回路の出力波形の関係を示す図である。
【図12】基準電圧として入力される給電線線間電圧Es、Ev、EDと重畳電圧Eos、Eov,EoDとの位相角が90度の場合の零相電流I0の交流成分であるIaoの有効成分Aと、零相電流I0の交流成分であるIaoの無効成分Bの関係を示すベクトル図である。
【図13】直流給電線及びそれに接続されている装置を本発明に係る漏れ電流測定装置で監視し、遮断器と警報器を制御する構成を備え、且つ分流器により零相電流I0及び零相電流I0の交流成分であるIaoを分流して信号処理部へ入力する本発明に係る漏洩電流測定装置を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
以下、本発明を適用した漏洩電流測定装置及びその測定方法の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0074】
本発明に係る漏洩電流測定装置は、単相又は三相給電線の電気的中性点に対地交流電圧が存在する、例えば単相の2線のうちの1線が接地されている給電線に接続される直流給電系統に適用される。
【0075】
そして、変圧器の二次側巻線1を星形に結線したY方式を採用した図1に示す給電方式において、二次側巻線1の接地相Gと電圧相R,S,Tの1つであるR相からそれぞれ導出された単相給電線2R,2Gに接続された交流/直流変換装置3と、この変換装置3から導出される直流給電線4の正極線4pと負極線4nには 直流で駆動され、あるいは直流で動作する各種の装置や負荷装置から構成される装置5が接続されている。
【0076】
上述した装置5は、直流給電線4p、4nに直接接続される太陽光発電装置や燃料電池などの発電装置、LED照明装置、電気自動車の充電放電端子、蓄電池などの直流で動作しあるいは駆動する直流装置若しくは設備や、スイッチング素子等を経由して接続される交流電動機により駆動される駆動機器などの交流負荷装置、風力発電機などの交流発電装置、コゼネレーシヨン装置などから構成されている。
【0077】
変圧器の二次側巻線1の中点である接地端子Gは、接地線8を経由して接地点Goで接地されている。そして、接地端子Gと電圧端子R間の巻線1aには、接地端子Gに対する電圧端子Rの電位である相電圧Eが発生し、この相電圧Eが交流給電線2の給電線2R,2Gの線間電圧Eとなる。これら電圧と各端子の関係を図2のベクトル図に示す。図2において、接地端子Gの電位と電圧端子Rとの電位差である図2中Eで示すベクトルの中間の電位点Maを相電圧Eの電気的中性点といい、接地点Gから電気的中性点Maまでの電圧を重畳電圧Eoと称する。したがって、この場合のように単相給電線の1線が接地されているときは重畳電圧Eoの値は、線間電圧Eの値の半分であるE/2となる。
【0078】
また、図1に示す変圧器の星形に結線された二次側巻線1の端子Rと端子Sから導出される交流給電線電圧Esは、図2中Esで示す電圧ベクトルであり、この電圧ベクトルEsの中点Msが、交流給電線電圧Esの電気的中性点で、接地点Gに対する電気的中性点Msの電圧Eosがこのときの重畳電圧となる。この重畳電圧Eosの値は、図2に示すベクトル図から、給電線線間電圧Esの値の1/(2√3)の値となる。
【0079】
また、交流給電線2には、給電線2R,2Gに供給される電流のベクトル和である零相電流I0を出力するための零相変流器9を備える。零相変流器9は、交流給電線2、直流給電線4、接地線8のような零相電流I0の通路であればいずれの位置にも設置可能である。さらに、零相電流I0には、直流電流に交流電流が重畳しており、測定の際に必要な交流電流分を分流するため、分流器10を経由してその交流成分である交流電流Iaoを抽出し信号処理部13に入力する。また、給電線2R,2Gの線間電圧Eも、測定の際の基準電圧として信号処理部13に入力する。
【0080】
交流/直流変換装置3は、スイッチング素子等で構成され、交流端子R,Gに印加された交流電圧を直流電圧として直流端子P,Nに出力し、電流は交流側から直流側へ、又はその逆方向へも流すことができる。
【0081】
交流/直流変換装置3の直流端子P,Nから直流給電線4p,4nが導出され、その線間電圧はEdで示され、直流給電線4p,4nの中間電圧点が電気的中性点Mdとなる。すなわち、電気的中性点Mdから直流給電線4pまでの電圧Epは、線間電圧Edの1/2となり、直流給電線4nから電気的中性点Mdまでの電圧Enの負電圧も線間電圧Edの1/2となる。
【0082】
また、交流/直流変換装置3の構成要素であるダイオード、サイリスタ等は、交流端子R,Gから直流端子P,Nの間の電流通路及び素子の定格、数など対称的に配置され、結線されているので、交流給電線2R,2Gの電気的中性点Maの電位と直流給電線4p,4nの電気的中性点Mdの電位は一致する。したがって、交流給電線2R,2Gの電気的中性点Maの対地電圧をEoとすると、直流給電線4p,4nの電気的中性点Mdの対地電圧もEoとなり、等価的には図1のように接地点から直流給電線4p,4nの電気的中性点Mdへ交流電圧Eoが印加される。したがって、直流給電線4pに印加される対地電圧として、直流電圧Epに加えて交流電圧Eoが重畳して印加され、直流給電線4nに印加される対地電圧として、直流電圧Enに加えて交流電圧Eoが重畳して印加される。これが交流電圧Eoを重畳電圧Eoと称する理由である。
【0083】
交流給電線の電気的中性点の対地交流電圧が存在する他の例を図3に示す。図3に示す例は、単相3線給電方式の変圧器の端子Rと端子T間の二次側巻線で、その中点が接地され、この中点に設けた端子Gと端子Rから交流給電線を導出している。端子Gと端子Rから導出される交流給電線間の線間電圧E1は、図4に示すベクトル図において、ベクトルE1で示され、このベクトルE1の中心点M1が交流給電線の電気的中性点で、接地されたG端子から電気的中性点M1までの電圧Eo1が重畳電圧になる。このときの重畳電圧Eo1の値は、図4のベクトル図から、給電線線間電圧E1の値の1/2の値となる。また、端子Gと端子Tから線間電圧E1が印加される交流給電線が導出されても同様となる。
【0084】
次の例として、V結線給電方式の例を図5に示す。図5に示すV結線給電方式では、変圧器の端子Rと端子T間の巻線の中点Gが接地され、各端子R,S,Tから線間電圧EVの三相交流給電線が導出されている。図6のベクトル図に示すように、3本の交流給電線線間電圧ベクトルで描かれる三角形の重心Mvが三相交流給電線の電気的中性点で、接地されたG端子から電気的中性点Mvまでの電圧Eovが重畳電圧になる。このときの重畳電圧Eovの値は、図6のベクトル図から給電線線間電圧Evの値の1/(2√3)の値となる。
【0085】
次に、図7に示すΔ結線給電方式で、変圧器の端子Sが接地され、端子R,S,Tから線間電圧EDの三相交流給電線が導出された例において、図8のベクトル図に示す3本の交流給電線線間電圧ベクトルで描かれる三角形の重心MDが三相交流給電線の電気的中性点で、接地されたS端子から電気的中性点MDまでの電圧EoDが重畳電圧になる。このときの重畳電圧EoDの値は、図8のベクトル図から給電線線間電圧EDの値の1/(√3)の値となる。
【0086】
また、端子RS又は端子TSから導出される単相交流給電線については図3、図4に示す単相給電方式の場合と同様である。
【0087】
ここで、図1に示す直流給電系統で、交流/直流変換装置3は、ダイオードやサイリスタなどのスイッチング素子等で構成され、これらの素子は、例えばブリッジ状のように対称的に配置結線されているので、端子R,Gに入力された実効値Eの交流電圧は前記素子によって整流されて直流端子P,Nに直流電圧Edとして出力される。この場合の直流電圧Edの値は、電圧Edの印加に起因する故障電流、漏洩電流の検出が目的であるため、実効値Eの交流電圧を整流したときの最高の値である交流電圧の波高値、Eの√2倍の値によって計算する。前記直流給電系統には発電装置も含まれており、前記の最大値は実際に起こりうる値である。
【0088】
次に、図1に示す概略系統図で、直流給電線4p,4n及びそれに接続されている負荷装置5にはそれに印加される交流の重畳電圧Eo及び直流電圧Ep,Enに起因する対地漏洩電流が流れる。前述したように直流電流に交流電流が重畳している対地漏洩電流の計算には重畳の理を用いる。即ち、直流電圧部分を短絡して交流電圧に起因する電流を求め、次に交流電圧部分を短絡して直流電圧に起因する電流を求め、両者を合計して重畳された電流を求めるが、両電流は異なった波形であり、実効値が必要なため、両電流各々を二乗して合計、開平して重畳電流の実効値を求める。
【0089】
また、図1に示したように、直流給電線4p,4n及びそれに接続されている負荷装置5には、通常対地静電容量6が存在する。そして、この通常存在する対地静電容量6の値は、負荷装置5及び直流給電線4が回路として接続されているので、それぞれの値の合計値で、直流給電線4p,4nにかかわる対地静電容量6の各々の値をCp,Cnとする。対地静電容量6には、交流の重畳電圧Eoに起因する漏洩電流Icp,Icnが流れる。ここで、重畳電圧Eoの角周波数をωとしてベクトル記号法を適用すれば、漏洩電流IcpはjωCpEoで表され、漏洩電流IcnはjωCnEoで表され、対地静電容量6には直流電圧Ep,Enに起因する定常電流は流れない。
【0090】
従って、直流給電線4p,4n及びそれに接続されている負荷装置5に存在する対地静電容量6を流れる漏洩電流Icp,Icnの和、即ちω(Cp+Cn)Eoの値が、電圧印加部分と接地部分間に通常存在する対地静電容量6を介して流れる漏洩電流Igcの値になる。
【0091】
また、直流給電線4p,4n及びそれに接続されている負荷装置5には対地漏洩コンダクタンス7が生ずることがあり、直流給電線4p,4nにかかわる各々の値をGp,Gnとする。このとき、これら対地漏洩コンダクタンス7には重畳電圧Eoに起因する漏洩電流Igp、Ignが流れ、漏洩電流IgpはGpEoで表され、漏洩電流IgnはGnEoで表される。これらを合計すると(Gp+Gn)Eoとなり、交流の重畳電圧Eoに起因する電圧印加部分と接地部分間の対地漏洩コンダクタンス7を介して流れる故障電流の合計値となる。
【0092】
また、対地漏洩コンダクタンス7には直流電圧Ep,Enに起因する故障電流Idp,Idnが重畳して流れ、IdpはGpEp、IdnはGnEnで表され、両電流の合計はGpEp+GnEnとなるが、図1に示すように、線間電圧Edの直流給電線4p,4nの電気的中性点MDから直流給電線4pに印加される電圧Epは+Ed/2、直流給電線4nへの電圧Enは−Ed/2となり、両電流の合計(GpEp+GnEn)は(Gp―Gn)Ed/2、つまり両電流値の差を計測し、直流給電線4p,4nに同時に対地漏洩コンダクタンス7が生じたとき、実際より少ない値を計測、特に対地漏洩コンダクタンス7の値であるGp,Gnの値が等しいときには故障として認識できない。
【0093】
この致命的な欠陥をなくすため、本発明では上述した分流器10を経由して抽出した零相電流I0の交流成分である交流電流Iaoを利用する。この交流電流Iaoは、上述した交流電流の重畳電圧Eoに起因する漏洩電流Icp,Icnと故障電流Igp,Ignの合計であり、下記の式6のように示すことができる。
【0094】
Iao=(Gp+Gn)Eo+jω(Cp+Cn)Eo ・・・(6)
上記式6のEoとの同位相成分(Gp+Gn)EoをAとおき、この値Aを電流Iaoから検出する。ちなみに、Aの値が重畳電圧Eoに起因する故障電流Igp,Ignの合計であり、これと直角の位相差を有する成分ω(Cp+Cn)EoをBとしたとき、Bの値が重畳電圧Eoに起因する電圧印加部分と接地部分間に通常存在する対地静電容量6を介して流れる漏洩電流Igcの値になる。
【0095】
上記Aの値と電圧Ed,Eo、それに交流給電線線間電圧Eの関係が明らかになっていることを利用して、直流電圧Ep,Enに起因する対地漏洩コンダクタンス7に流れる故障電流Idp,Idnをそれぞれの絶対値の和、つまり(Gp+Gn)Ed/2の値として算出する。前述したように、直流給電線線間電圧Edは交流給電線線間電圧Eの√2倍であるので、直流電圧Ep,Enに起因する対地漏洩コンダクタンス7に流れる故障電流の絶対値の和(Gp+Gn)Ed/2は、(Gp+Gn)E/√2と計算される。また、交流の重畳電圧Eoは、交流給電線線間電圧Eのm倍の関係があり、(Gp+Gn)EoがAであるので、上記直流電圧Ep,Enに起因する故障電流の絶対値の和はA/(m√2)と計算される。また、重畳電圧Eoに起因する故障電流の和はAで表されるので、これら故障電流を重畳させた実効値を求めると、Aの値の{1+1/(2m2)}1/2倍となる。図1に示すように、単相交流給電線のうちの1本が接地してあるときは交流給電線線間電圧Eである基準電圧と重畳電圧Eoとの位相差はなく、mは1/2であることから、{1+1/(2m2)}1/2の値は√3となる。つまり、Aの値を求めることができれば、Aの√3倍の値が交流の重畳電圧Eoに起因する故障電流と直流電圧Ep、Enに起因する故障電流とを重畳させた直流給電線4及びそれに接続されている負荷装置5の電圧印加部分から接地部分へ流れる故障電流Igrの値となる。
【0096】
上述したような直流給電線4及びそれに接続されている負荷装置5に通常存在する対地静電容量6に起因する漏洩電流Igc及び故障時発生する対地漏洩コンダクタンス7に起因する故障電流Igrを測定する本発明に係る漏洩電流測定装置は、図1に示すように信号処理部13、演算部14、表示部15を有する処理演算部16を備える。そして、前述の漏洩電流Igc及び故障電流Igrを測定する場合には、処理演算部16を構成する信号処理部13に、交流給電線2に流れる電流のベクトル和である零相電流I0から分流された零相電流I0の交流成分Iaoが、零相電流I0を検出する零相変流器9と交流成分Iaoを分流する分流器10を介して入力される。
【0097】
ここで、直流給電線4及びそれに接続されている負荷装置5及び零相変流器9から直流給電線4寄りの交流給電線2に存在する対地静電容量6を流れる漏洩電流Igc及び同部位に発生する対地漏洩コンダクタンス7を流れる故障電流Igrのベクトル和である零相電流I0は、大地から給電電源の接地極Go、接地線8を経由して、配電電源1、交流給電線2、直流/交流変換装置3、直流給電線4及びそれに接続されている負荷装置5の経路を還流するので、零相電流I0はこの還流経路の途中いずれの点でも測定が可能である。
【0098】
また、本発明を採用することにより、負荷装置5を構成する複数の装置を1台の漏洩電流測定装置によって監視することが可能である。
【0099】
次に、図1に示す処理演算部16を構成する信号処理部13の具体例を、図9を参照して説明する。この信号処理部13は、電圧検出器21と、第1の増幅器22と、第1のローパスフィルタ(LPF)23と、第1の実効値変換器28と、零相電流I0から分流された交流分電流Iao検出器24と、第2の増幅器25と、第2のローパスフィルタ(LPF)26と、第2の実効値変換器29と、位相差計測器27とを備える。
【0100】
図9において、電圧検出器21には、交流給電線2の線間電圧が基準電圧Eとして入力される。交流給電線2がΔ方式の三相であれば接地相以外の線間電圧を、V方式の三相であれば接地相の線間電圧を入力する。
【0101】
そして、第1の増幅器22は、電圧検出器21の検出感度に応じて、電圧検出器21から出力される基準電圧Eを適切な値になるまで増幅する。第1のローパスフィルタ23は、基準電圧Eとして入力される電圧の最高周波数である例えば60Hzを超える周波数成分を減衰させて基準電圧周波数波形を取り出す。
【0102】
そして、電流Iao検出器24には、零相電流I0から分流された交流分電流Iaoが入力される。
【0103】
第2の増幅器25は、電流Iao検出器24の検出感度に応じて、電流Iao検出器24から出力される電流Iaoを適切な値になるまで増幅する。第2のローパスフィルタ26は、電流Iaoの商用周波数を超える周波数成分を減衰させて商用周波数を取り出す。
【0104】
そして、位相差計測器27は、基準電圧として入力された単相の交流給電線2の線間電圧、Δ方式の三相であれば接地相以外の線間電圧、V方式の三相であれば接地相の線間電圧のいずれかと、電流Iaoとの位相差を計測する。ここで基準電圧Eとして入力された単相の交流給電線2の線間電圧、Δ方式の三相であれば接地相以外の線間電圧、V方式の三相であれば接地相の線間電圧のいずれかと、電流Iaoとの位相角θの関係を図10、図11に示す。
【0105】
そして、信号処理部13において、第1のローパスフィルタ23は出力された基準電圧Eの波形と、第2のローパスフィルタ26から出力された電流Iaoの波形を、例えばオペアンプゼロクロッシング回路に入力すると、それらの出力波形は、図11に示すように、基準電圧Eに対してはEZで示すようになり、電流Iaoに対してはIZで示すようになる。基準電圧E及び電流Iaoの出力波形の波高値を一致させて、出力波形EZとIZの差を求める。その差の絶対波形は、図11に示す|EZ−IZ|波形になる。図11に示す|EZ−IZ|波形及びIZ波形の突出部分の面積をそれぞれS1,S2とすれば、S1は基準電圧Eと電流Iaoとの位相差角θに比例し、S2は位相差180度に比例する。このS1,S2に比例した電圧は、演算部14に出力される。
【0106】
そして、第1の実効値変換器28は、基準電圧Eの波形を両波整流して実効値に比例したアナログ値に変換し、演算部14に入力する。第2の実効値変換器29は、電流Iaoの基本周波数波形を両波整流して実効値に比例したアナログ値に変換して演算部14に入力する。
【0107】
演算部14は、位相差計測器27が計測した基準電圧Eと電流Iaoとの位相差角θを用いて、電流Iaoを基準電圧Eと同位相の有効成分Aと、基準電圧Eより90度位相が進んだ無効成分Bとに分解して出力する。
【0108】
なお、位相差計測器27が検出する基準電圧Eと電流Iaoとの位相差角θは、下記の式7に基づいて算出される。
【0109】
θ=(180S1)/S2 ・・・(7)
ここで、演算部14は、I0cosθの値を電流Iaoの有効成分Aの値として、Iaosinθの値を電流Iaoの無効成分Bの値として演算し出力する。これら電流Iaoと、電流Iaoの有効成分A及び無効成分Bの関係は、前述したように、図10のベクトル図に示すように表される。即ち、有効成分Aは、式8のように表され、無効成分Bは式9のように表される。
【0110】
A=Iaocosθ ・・・(8)
B=Iaosinθ ・・・(9)
そして、演算部14において、上述したような演算処理が行われる。
【0111】
また、前述したように、基準電圧Eと重畳電圧Eoとの位相が等しく、2線のうち1線が接地してある単相給電のとき対地静電容量6に起因する漏洩電流Igcは、下記の式10に示すようになる。
【0112】
Igc=B ・・・(10)
同じ条件で、対地漏洩コンダクタンス7に起因し、直流電流に交流電流が重畳する故障電流Igrは、下記の式11示すようになる。
【0113】
Igr=√3A ・・・(11)
演算部14において、演算処理が行われる漏洩電流Igcの値と、故障電流Igrの値は、必要に応じて表示部15に表示される。
【0114】
また、基準電圧Eと重畳電圧Eoとの位相差が90度の関係にある図1、図2に示された、星形に結線され、その中点が接地された変圧器の二次側巻線で形成される交流電源の中点以外の端子R,Sから単相の交流給電線が導出されるときは、図12に示すように角θは90度大きく測定されるので、前記式10は下記の式12に示すようになる。
【0115】
Igc=A ・・・(12)
また、重畳電圧Eoは基準電圧Eの1/(2√3)倍であるので前記式11は下記の式13に示すようになる。
【0116】
Igr=√7B ・・・(13)
また、基準電圧Eと重畳電圧Eoとの位相差が90度の関係にある図7、図8に示した、三角形に結線され、その1端子が接地された変圧器の二次側巻線で形成される交流電源から三相の交流給電線が導出されるときは、図12に示すように角θは90度大きく測定されるので式10は式12に示すようになり、重畳電圧Eoは基準電圧Eの1/√3倍であるので式11は下記の式14に示すようになる。
【0117】
Igr=√2.5B ・・・(14)
また、基準電圧Eと重畳電圧Eoとの位相差が90度の関係にある図5、図6に示された、V字形に結線され、その一方の巻線の中点が接地された変圧器の二次側巻線で形成される交流電源の中点以外の3点から導出される三相の交流給電線のときは、図12に示すように角θは90度大きく測定されるので式10は式12に示すようになり、重畳電圧Eoは基準電圧Eの1/(2√3)倍であるので式11は式13に示すようになる。
【0118】
また、本発明に係る漏洩電流測定装置は、図13に示すように、交流給電線2の途中に遮断器19を設け、演算部14の演算の結果により、遮断器19の遮断動作を制御する構成としてもよい。この漏洩電流測定装置は、演算部14により演算されて測定された故障電流Igrの測定結果を制御信号とし、この制御信号に基づいて交流給電線2の途中に設けた遮断器19を動作させることにより、交流/直流変換装置3とそれから導出される直流給電線4、直流装置や種々の負荷装置から構成される装置5を給電電源1から遮断する。
【0119】
本発明に係る漏洩電流測定装置においては、更に遮断器を設けることにより、故障電流Igrの検出と共に、故障電流Igrが所定の値を超えたとき交流/直流変換装置3とそれから導出される直流給電線4、直流装置や種々の負荷装置から構成される装置5を給電電源から遮断するようにすることができるので、給電電源に接続された交流/直流変換装置3とそれから導出される直流給電線4、直流装置や種々の負荷装置から構成される装置5を絶縁不良に伴う重大事故から守ることができる。
【0120】
更に、本発明に係る漏洩電流測定装置では、演算部14の演算の結果により、故障電流Igrの値が所定の値より大きくなったことが判定された場合には、その判定信号を制御信号として、音や発光等の警報装置を動作させ、音や発光等を用いて警報を発するようにしてもよい。このような警報装置を設けることにより、漏電に起因する事故を確実に防止することができる。なお、この警報装置は、図13に示すように、演算部14の判定信号を制御信号として警報器18を動作させるものであるので、演算部14からの判定信号が入力されるように、この演算部14に接続される。
【0121】
更に、本発明に係る漏洩電流測定装置では、図13に示すように零相電流I0から交流電流Iaoを検出するとともに、零相電流I0をも検出可能な分流器を備え、零相電流I0をも信号処理部13に入力させ、その値を演算部14を経由して表示部15で出力させることもできる。
【0122】
また、図3に示す単3方式で端子R,Tから導出した単相の交流給電線2、又は図1のY給電方式で端子R,S,Tから導出した三相の交流給電線2の場合、それら給電線2の電気的中性点の電位が接地点Gの電位と一致するので重畳電圧Eoの値が0となり、零相電流I0の値は下記の式15により示されるIdoの値になる。
【0123】
Ido=0.5√2(Gp−Gn)E ・・・(15)
演算部14は、このIdoの値を故障電流Igrの値として検出する。
【0124】
但し、式15で示されるように正極又は負極のいずれか一方に対地漏洩コンダクタンス7が発生したときは故障電流Igrの値として正確であるが、正極及び負極の双方に発生したときにはその差の値を表示することになる。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明に係る漏洩電流測定装置及び測定方法は、今後急速な普及が予想されるスマートグリットの直流給電線及び直流給電線に接続された直流及びスイッチング素子等を経由する交流の負荷装置、給電装置、発電装置、コゼネレーシヨン装置などの絶縁測定、予防保全、事故防止に用いることができる。
【符号の説明】
【0126】
1 変圧器の二次側巻線、2 交流給電線、3 交流/直流変換装置、4 直流給電線、5 負荷装置、6 対地静電容量、7 対地漏洩コンダクタンス、8 接地線 9 零相変流器、10 分流器、13 信号処理部、14 演算部、15 表示部、16 処理演算部、18 警報機、19 遮断器、
【技術分野】
【0001】
本発明は、ある一定の区域に設置された空調機器や照明機器等のエネルギー変換装置と、このエネルギー変換装置にエネルギーを供給する発電機器やコゼネレーシヨン機器等のエネルギー供給装置と、このエネルギー供給装置から供給されるエネルギーを蓄積し更には蓄積されたエネルギーの供給を行うエネルギー貯留供給装置及び電気自動車の充放電端末等のエネルギー受給装置をを一括連携する給電装置の電圧印加部分から接地部分へ流れる漏洩電流を測定する漏洩電流測定装置及び漏洩電流測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人が居住する住居、人の働くビルデングなどの建物、これら住居や建物を含む複合体から構成される地域などの一定の区域内に配置された空調機器や照明機器等の電気熱負荷に、この区域内に設置した発電機器やコゼネレーシヨン機器を含むエネルギー供給装置から電力や熱を供給するようにしたエネルギー供給システムが用いられている。
【0003】
この種のエネルギー供給システムにおいては、エネルギー供給装置により生成されるエネルギーを蓄積する蓄電蓄熱手段を設け、電気熱負荷により消費されない余分のエネルギーを蓄電蓄熱手段に蓄積しておき、必要に応じて蓄電蓄熱手段に蓄積されたエネルギーを電気熱負荷に供給することにより、エネルギー供給装置で生成されるエネルギーの有効利用を図るようにしたものが提案され、用いられている。
【0004】
また、エネルギー供給システムに商用電源を接続することにより、エネルギー変換機器の特性に応じてエネルギー供給装置から供給されるエネルギーと商用電源を選択して供給することにより、エネルギーコストの削減を図るようにしたシステムも用いられている。
【0005】
そして、エネルギー供給システムに商用電源を接続することにより、エネルギー供給装置により生成される電力の余分を電力会社に販売し、エネルギー供給装置の運転コストの削減を図るようにしたシステムも用いられている。
【0006】
最近では、上述したようなエネルギー供給システムを構成する電気熱負荷及びこの電気熱負荷にエネルギーを供給するエネルギー供給装置、更には蓄電蓄熱手段を含む各装置を給電線と情報ラインとにより一括連携して制御することにより、一定の区域全体のエネルギーの受給の最適化を実現するようにしたいわゆるスマートハウス、スマートビル、あるいはスマートグリットと称されるシステム(以下、総称してスマートグリットという。)が提案されている。
【0007】
上述したエネルギー供給システムにおいて、エネルギー供給装置から電源が供給される給電線には交流方式が広く用いられるが、発電機器を構成する太陽光発電や燃料電池の発電は直流により行われ、電気熱負荷であるLED電灯等は直流電流で駆動される。また、蓄電池への蓄電は、直流で行われる。そのため、交流電流が供給される給電線と直流駆動する機器とを接続するために、交流/直流変換装置又は直流/交流変換装置を接続する必要がある。この変換装置は、多数のダイオードやスイッチング素子を備え、これらの素子を含む変換装置の変換損失が大きな問題になっている。この交流電流と直流電流との変換損失を減らし、また、近年急激に増加している直流で駆動される電気自動車の充放電端末を充電放電スタンドに直接接続するため、更にはスマートグリットを構成するエネルギー変換機器を含む各構成要素に直接給電するため、直流給電方式に加えて、交流及び直流いずれの電流での給電を可能にしたハイブリッド給電方式が増加する傾向にある。
【0008】
ところで、従来、電路及び電気機器の絶縁状態を調べる方法として、被測定部分を停電させて、絶縁抵抗計で絶縁抵抗を測定する方法が広く用いられている。このような方法は、情報処理用の機器を含む多様な機器を構成要素に含むスマートグリットや連続操業が要求される工場等のように停電が許されないシステムに適用することができない。
【0009】
特に、交流から変換された直流が給電される直流給電線には、交流駆動される交流機器や電力会社の交流電源との接続のためのインバータやコンバーターなどのダイオードやスイッチング素子(以下、スイッチング素子等という。)が多く接続される可能性がある。このような電気系統において、絶縁抵抗中を流れる故障電流を測定する場合には、この系統を構成するスイッチング素子等を、絶縁抵抗の測定時に印加される高電圧から保護するため、これらスイッチング素子等の部分を切り離して測定する必要があり、停電手続きや、その結線の開放、再接続などに多くの手間と時間とを必要としている。
【0010】
そこで、交流給電方式を採用したスマートグリットを停電させることなく、活線のまま給電線及び装置の絶縁状態を調べる技術が提案され、用いられている。この種の技術として、零相変流器を用いて、交流電路及び負荷装置の電圧印加部分から接地部分へ流れる電流である零相電流I0を、零相変流器と電流センサーとを組み合わせて検知するようにしたものがある。この零相変流器によって検出される零相電流I0は、電路及び負荷装置の電圧印加部分と接地部分間の絶縁抵抗を介して流れる漏洩電流Igr(以下、この電流を故障電流Igrという。)と、この電圧印加部分と接地部分間に存在する対地静電容量を介して流れる漏洩電流Igc(以下、この電流を漏洩電流Igcという。)とのベクトル和で構成されている。
【0011】
これらの技術のうち、現在実用化されている200V級三相3線のうちの1線が接地されている給電方式(以下、Δ方式という。)での故障電流Igrを測定する技術は、この給電方式及び単相給電方式の計測は可能であるが、直流給電系統やそれから給電されている装置や、スイッチング素子等が使用されている装置、更には系統の計測は困難とされている。
【0012】
また、直流装置とそれに給電する直流給電線は、直流電流センサーを用いて直流の故障電流Igrを検出しているが、これの計測のために正極と負極又は交流側の給電線を一括した零相変流器を通じて計測するため、万一、正極と負極が同時に漏電を起こしたときには正極及び負極の故障電流Igrが互いに打ち消しあい、正常な故障電流値Igrの計測が困難となる。
【0013】
また、スマートグリットに連携する電力会社などの給電用変圧器の結線方式とその端子の接地方式、給電用変圧器から導出される給電線の方式によっては、その直流給電線の対地直流電圧に交流電圧が重畳することがあり、直流センサーを用いた故障電流Igrの検出が困難であり、特に近年ヨーロッパ規格として制定されている電圧印加部分と接地部分間に通常存在する対地静電容量を介して流れる漏洩電流Igcの検出が困難である。
【0014】
また、海外などで標準給電方式として広く用いられている2線のうち1線が接地してある単相給電線と直流電圧を発生する太陽光発電素子とを連携するパワーコンデイショナー装置には、単相給電線に挿入された零相変流器によって零相電流を検出し、その波形を処理して、故障電流Igrと漏洩電流Igcを検出する方法が提案されている。しかし、この方法では、正極故障電流と負極故障電流との差が故障電流Igrとして検出されるため、正極と負極が同時に故障したときには過小な故障電流Igrを検出し、また直流電流に交流電流が重畳しているため特殊なセンサーを必要とし、信号の処理工程も複雑となるばかりか、スイッチング素子等による高調波電圧などの影響によって測定精度が劣る問題点がある。
【0015】
なお、この種の漏洩電流計測の先行技術として、特開2008−170330号公報(特許文献1)に記載されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2008−170330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上述したような実情に鑑み、本発明は、電力会社などの給電線に1箇所で連携したスマートグリットの直流給電線、この直流給電線に接続された直流駆動される直流装置やスイッチング素子等を経由する交流電流で駆動される負荷装置、給電装置、発電装置、コゼネレーシヨン装置などの電圧印加部分から接地部分へ対地絶縁抵抗を通じて流れる漏洩電流Igr(以下、故障電流Igrという。)と、電圧印加部分と接地部分間に通常存在する対地静電容量を介して流れる漏洩電流Igc(以下、漏洩電流Igcという。)と、故障電流Igrと漏洩電流Igcとの合成電流である零相電流I0(以下、零相電流I0という。)とを運転状態のままで検出することができる漏洩電流測定装置及びその測定方法を提供することを目的とする。
【0018】
そして、本発明は、スマートグリットに連携する電力会社等の商用電源を供給する給電用変圧器の結線方式とその端子の接地方式、それに給電用変圧器から導出される給電線の方式とによって、その直流給電線の対地直流電圧に交流電圧が重畳することがあり、この対地直流電圧に交流電圧が重畳している際に、直流給電線及び直流給電線に接続された直流装置及びスイッチング素子等を経由する交流電流で動作する各種の交流装置に発生する故障電流Igrと漏洩電流Igcとを運転状態のまま検出する装置及び方法を提供することを目的とする。
【0019】
また、本発明は、直流電流と交流電流とが重畳している故障電流Igrの実効値を検出する装置及び方法を提供することを目的とする。
【0020】
更に、本発明は、正極及び負極が同時に漏電を起こしたときに、正極及び負極各々の故障電流の絶対値を合計した故障電流の合計電流を検出する漏洩電流測定装置及びその測定方法を提供することを目的とする。
【0021】
そして、本発明においては、スマートグリットと連携する電力会社等の給電用変圧器の結線方式とその端子の接地方式、それに給電用変圧器から導出される給電線の方式とによって対地直流電圧に重畳している交流電圧の大きさや位相などの状態が異なり、且つその状態は理論的に明確なものであるので、上述した各々の方式についての漏洩電流測定装置及びその測定方法を提供することを目的とする。
【0022】
また、直流給電線に接続されたスイッチング素子等を経由する交流の負荷装置、給電装置、発電装置、コゼネレーシヨン装置などは、そのスイッチング素子等の作動時に対地電圧に多くの高調波電圧を発生させるため、測定時これら対地電圧の入力は誤差増大の原因となる。
【0023】
そこで、本発明は、給電用変圧器から導出される給電線の波形が安定している線間電圧のみを入力する方式を採用し、電力会社などの交流給電線からスマートグリットの直流給電線やそれに接続された種々の装置から大地へ漏洩し、大地から電力会社などの給電変圧器端子の接地線へと貫流する漏洩電流を、その貫流するいずれの部分でも計測が可能な漏洩電流測定装置及び測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上述したような課題を解決するため本発明は、電力会社などがスマートグリットへ給電するさいに設置する給電変圧器の低電圧側巻線である二次側巻線から導出された交流給電線部分又は漏洩電流が貫流する部分に漏洩電流測定装置を設置し、交流給電線に接続された交流/直流変換装置の直流給電端子から導出された直流給電線に接続される太陽光発電装置や燃料電池などの発電装置、LED照明装置、電気自動車の充電放電端子、蓄電池などの直流装置、更には、スイッチング素子等を経由して接続される交流電動機や交流駆動機器などの交流負荷装置、風力発電装置等の交流発電装置、コゼネレーシヨン装置などの対地漏洩電流を測定し、この電流と入力した交流給電線の線間電圧とを対比することによって、故障電流Igr、漏洩電流Igcを導出し、零相電流I0を演算する。
【0025】
ところで、交流電流の給電は、単相又は三相の給電線を介して行われる。そして、交流で給電される電流は、交流/直流変換装置により直流に変換され、直流で駆動される各種の直流機器や直流装置、更には直流給電される給電端子に給電される。これら直流機器や直流装置、更には給電端子は、交流/直流変換装置から導出される正極及び負極の直流給電線に接続される。したがって、交流給電線と直流給電線とは、交流/直流変換装置の半導体素子を介して接続されている。そして、上記給電方式では、給電用変圧器の結線方式とその端子の接地方式とによっては、2本又は3本の交流給電線の電圧の中心点である電気的中性点の対地電圧が0でない場合がある。ここに、電気的中性点は、単相給電では2本の交流給電線電圧差の中心点になり、ベクトルで示すときに2本の給電線電圧差ベクトルの0.5倍のベクトル先端の点になり、三相の給電方式では3本の交流給電線電圧の中心点になり、ベクトルで示すときに3本の交流給電線電圧差ベクトルで描かれる三角形の重心になる。
【0026】
一方、これらの交流給電線に、スイッチング素子等を経由して接続されている直流給電線の電気的中性点は、2本の直流給電線電圧差の中心点となり、この直流給電線と交流給電線とは、電気的に対称に配置されたスイッチング素子等を経由して接続されているので、両者の電気的中性点は一致する。ここで、交流給電線電気的中性点の対地交流電圧をEoとするとき(以下、この電圧Eoを重畳電圧Eoという。)は、この重畳電圧Eoが直流給電線電圧に重畳する。
【0027】
上述の直流給電電圧に重畳電圧Eoが重畳する給電用変圧器の結線方式と、その端子の接地方式と、更に給電用変圧器から導出される給電線の方式の一例として挙げられる一般家庭に引き込まれた線間電圧Eが105Vの交流単相給電線は、給電用単相変圧器の二次側巻線の中点が接地してある105V巻線と接地中点と105V巻線から構成される単相3線式給電用変圧器(以下単三方式という)の接地中点端子と他のいずれかの端子に接続されている。そして、105Vの交流単相給電線は、2本の給電線うちの1本が接地された0電位で、他の1本の対地電圧が105Vとなり、この電圧の半分の0.5Eにあたる対地電圧52.5Vの点が105Vの交流単相給電線の電気的中性点の対地電圧となり、この対地電圧52.5Vが重畳電圧Eoの値となる。
【0028】
このときの直流給電最大電圧は、実効値である交流給電電圧Eの波高値であるこの電圧Eの√2倍に相当する148Vになるので、この直流給電最大電圧の中点にあたる電気的中性点に対しては正極線が直流給電最大電圧の0.5倍である+74Vであり、負極線が−74Vであり、交流給電線電気的中性点がこの直流給電線電気的中性点に一致するので、直流給電線の両極線に重畳電圧Eoである52.5Vの対地交流電圧が重畳する。
【0029】
給電線2本のうちの1本が接地された単相交流給電線の線間電圧をEとするとき、直流給電線の最大電圧は、この線間電圧Eの√2倍であり、直流電気的中性点に対する正極線、負極線の電圧は、それぞれ直流給電線の最大電圧の+0.5倍、−0.5倍にあたる線間電圧Eの+0.5√2倍、−0.5√2倍となり、この両極線に線間電圧Eの0.5倍の重畳電圧Eoも同時に印加される。このように、これらの線間電圧Eと重畳電圧Eoは、給電用変圧器の結線方式とその端子の接地方式、それに給電用変圧器から導出される給電線の方式による一定の関係を保っている。本発明は、これらの関係を利用して上述した技術課題を解決し得る漏洩電流測定装置及び測定方法を構成したものである。
【0030】
更に、上述したような技術課題を解決するために提案される本発明に係る漏洩電流測定装置及び測定方法では、線間電圧Eの単相又は3相交流給電線の電気的中性点の対地電圧である重畳電圧Eoの存在が必要である。この重畳電圧Eoは、交流給電線の線間電圧Eのm倍になり、この倍数m及び両電圧E,Eoの位相差は、給電用変圧器結線方式とその端子の接地方式それに給電用変圧器から導出される給電線の方式から定まる。
【0031】
そして、交流給電線にはスイッチング素子等で構成される交流/直流変換装置が接続され、この変換装置から導出される直流給電線の線間電圧Edは最大値で交流給電線の線間電圧Eの√2倍で、直流給電線の電気的中性点に対する正、負極線の各直流電圧Ep,Enは、それぞれ直流給電線の線間電圧Edの+0.5倍、−0.5倍に相当し、正極線の直流電圧Epは交流給電線線間電圧Eの+0.5√2倍、負極線の直流電圧Enは交流給電線線間電圧Eの−0.5√2となり、これら正、負極線に交流の重畳電圧であるEoが重畳する。なお、この直流給電線の線間電圧Edは、故障電流の最大状態を算出するため、交流給電線線間電圧Eの√2倍とする。
【0032】
以上のように、直流給電線電圧Ed及び重畳電圧Eoは、いずれも交流給電線の線間電圧Eによって決まる。直流給電線及びそれに接続された各装置の正極、負極には対地直流電圧Ep,Enが印加され、両極にはそれら直流電圧に交流重畳電圧Eoが重畳して印加される。
【0033】
このときの対地漏洩電流を求める方法として、交流重畳電圧Eoのみ印加した交流対地漏洩電流(以下、交流重畳電流という。)と、対地直流電圧Ep,Enを印加したときに正極、負極からの対地漏洩電流である直流故障電流とを求め、その後重畳の理を用いて両電流を重畳するのが一般的な方法であるが、直流故障電流は、漏洩電流Igcを含まず、前述したように、正極故障電流と負極故障電流との差が直流故障電流として検出されるので、正極と負極とが同時故障したときには過小な電流を故障電流として検出するという致命的な問題点がある。
【0034】
これに対し交流重畳電流は、重畳の理によって、正極、負極に同時に交流重畳電圧Eoを印加するとして計算するので、交流重畳電流には正極漏洩電流と負極漏洩電流の和としての漏洩電流Igcと、正極故障電流と負極故障電流の絶対値の和とした故障電流とをベクトル的に合計したものになる。
【0035】
そして、交流重畳電流と交流給電線の線間電圧Eとの位相を比較することにより、上記交流重畳電流から、上記漏洩電流Igcと上記故障電流Igrの値を求めることができる。
【0036】
さらに前述のように、交流給電線の線間電圧Eと重畳電圧Eo、直流給電線電圧Ed、さらには正極、負極の対地直流電圧Ep,Enの関係が明らかにされており、この関係を利用して、交流重畳電流から求めた故障電流Igrの値から、正極、負極にそれぞれ対地直流電圧Ep,Enを印加した場合の正極故障電流と負極故障電流の絶対値の和である直流故障電流の値を算出することができる。
【0037】
上述の直流故障電流算出値の二乗と前述の交流重畳電流から求めた故障電流の二乗とを加算、開平すれば実効値として重畳させた故障電流Igrを求めることができる。
【0038】
この故障電流Igrの二乗と上記漏洩電流Igcの二乗とを加算、開平すればベクトル和としての零相電流I0の実効値を求めることができる。
【0039】
また、単相又は三相交流給電線又は正極及び負極の直流給電線を一括した合計電流である零相電流I0は、零相変流器によって検出されるが、この零相電流I0は正極、負極の対地直流電圧Ep,Enによる直流故障電流に交流重畳電流が重畳されており、前述のように、計測が必要である交流重畳電流は零相電流I0から交流フイルタによって分離することができる。
【0040】
次に、以上述べた手段の妥当性について、数式を用いて理論的に説明する。
【0041】
さて、直流給電線には各種の直流装置若しくは設備が接続される他、スイッチング素子等で構成される直流/交流変換装置を経由して交流装置若しくは設備が接続されているが、これらの装置若しくは設備はスイッチング素子等を経由して電気的に直流給電線に接続されているので、これら直流給電線に接続された装置と直流給電線とを合計しての正極線、負極線の対地絶縁コンダクタンスをそれぞれGp,Gnとし、対地静電容量をそれぞれCp,Cnとする。
【0042】
この対地絶縁コンダクタンスGp,Gn、対地静電容量Cp,Cnには、前述した正、負極線直流電圧と交流の重畳電圧とが印加されるので、対地漏洩電流Igcを求めるに当たっては、重畳の理によって、直流電流と交流電流とを別に計算し、次いで重畳の計算を行う。
【0043】
交流については、交流重畳電圧Eoが印加され、交流重畳電流が流れる。対地絶縁コンダクタンスGp,Gnに流れる交流重畳電流をそれぞれIgp,Ignとし、対地静電容量Cp,Cnに流れる交流重畳電流をそれぞれIcp,Icnとすると、IgpはEoGp、IgnはEoGn、Eoの角周波数をωとしてベクトル記号法で表すと、IcpはjωCpEo、IcnはjωCnEoとなる。従って、交流重畳電圧Eoに起因する交流重畳電流をIaoとすると、Iaoは、Icp,Icn,IgpそれにIgnのベクトル和になり、下記の式1のように示すことができる。
【0044】
Iao=(Gp+Gn)Eo+jω(Cp+Cn)Eo ・・・(1)
直流については、対地漏洩電流が直流故障電流となり、対地絶縁コンダクタンスGp,Gnに流れる直流故障電流をそれぞれIdp,Idnとすると、IdpはEpGp,IdnはEnGnとなり、また直流電圧Ep,Enに起因する直流故障電流をIdoとすると、IdoはIdpとIdnの和になり、前述した交流給電線線間電圧がEのとき、Epは+0.5√2E、Enは−0.5√2Eとなる関係から、下記の式2のように示すことができる。
【0045】
Ido=0.5√2(Gp−Gn)E ・・・(2)
直流給電線の正極線(以下、p相という。)及び負極線(以下、n相という。)のいずれかに故障電流が発生した場合は、上記式1、式2による検出が可能であるが、p相とn相に、同時に故障電流が発生したときは、式2ではその差の電流しか検出できない。特に、p相及びn相の故障電流が等しいときは検出が不可能となる。
【0046】
p相とn相に故障電流が同時に発生したときは、交流については上記式1の(Gp+Gn)Eoの検出が可能であるが、直流については式2から、0.5√2(Gp+Gn)Eの値がp相とn相に同時に直流故障電流が発生したときの絶対値の合計値つまり直流電圧Edに起因する直流故障電流の値となる。
【0047】
交流については式1の実数部分(Gp+Gn)Eoが交流重畳電流IaoのEoとの同位相成分つまり交流重畳電流Iaoの有効成分で、この値をAとすれば、有効成分Aが重畳電圧Eoに起因する故障電流の値となる。
【0048】
また、式1の虚数部分ω(Cp+Cn)Eoは、交流重畳電流Iaoと重畳電圧Eoとが直角の位相角の成分つまり交流重畳電流Iaoの無効成分で、この値をBとすれば、直流は定常的にはCp,Cnには流れないので、無効成分Bが、電圧印加部分と接地部分間に通常存在する対地静電容量を介して流れる漏洩電流Igcの値となる。
【0049】
有効成分A及び無効成分Bは、交流重畳電流Iaoの大きさと、この電流Iaoと重畳電圧Eo若しくはEoと定まった位相角を持つ電圧、例えば交流給電線線間電圧Eとの間の位相角を測定することによって実測が可能である。また、前述の交流重畳電流Iaoは零相変流器の出力電流である零相電流I0から交流フイルタによって分流することができる。
【0050】
また、直流電圧と交流重畳電圧とが重畳する電圧印加部分と接地部分間の絶縁抵抗を介して流れる漏洩電流Igrは、上述の交流の有効成分Aの値の二乗値と、前述した直流故障電流である0.5√2(Gp+Gn)Eの値の二乗値との和の平方根である実効値であり、且つ前述したように給電変圧器の結線方式とその端子の接地方式とそれに給電用変圧器から導出される給電線の方式によってきまる定数mのE倍が交流重畳電圧Eoになるので、これらの関係から、故障電流に相当する電路及び負荷装置の電圧印加部分と接地部分間の絶縁抵抗を介して流れる漏洩電流Igrは下記の式3によって求められ、電路及び負荷装置の電圧印加部分に存在する対地静電容量を介して流れる漏洩電流Igcは下記の式4によって求められる。
【0051】
Igr=A{1+1/(2m2)}1/2 ・・・(3)
Igc=B ・・・(4)
また、交流電路及び交流負荷装置の電圧印加部分から接地部分へ流れる零相電流I0の値は、下記の式5によって求められる。
【0052】
I0=(Igr2+Igc2)1/2 ・・・・・(5)
前述の位相比較の際に必要となる交流の電圧として、高調波成分を多く含み接地接続などに不安要素が多い重畳電圧Eoの直接入力を避け、Eoとある定まった位相角を保つ交流給電線の線間電圧Eを入力し、これと零相電流I0の交流分として含まれている交流重畳電流Iaoとの位相差及び電流Iaoの大きさとを測定することにより、故障電流Igr、漏洩電流Igc、零相電流I0の値を求めることができる。
【0053】
以上の方法は重畳電圧Eoの存在が必要で、重畳電圧Eoが存在する給電変圧器の結線方式とその端子の接地方式を列挙すれば、単相で給電する場合には以下の方式がある。
(イ)最初にのべた、単相三線方式の接地中点端子と他のいずれかの端子とから給電する方式。
(ロ)ヨーロッパを初めとして全世界に普及している、三相給電変圧器の給電側巻線をY形に結線し、その中点を接地して、その電圧端子から380V〜440Vの三相を給電し、接地された中点と電圧端子とから交流線間電圧Eが220V〜254Vの単相を給電する3相4線式給電方式(以下Y方式という)の接地点と電圧端子のいずれか1端子とから給電する単相給電方式。
(ハ)上記のY方式の3つある電圧端子のうちの2つの端子から、交流線間電圧Eが380V〜440Vの単相で給電する方式。
(ニ)三相3線のうちの1線が接地されている給電方式であるΔ方式の3つある端子の2つから単相で給電する方式。
【0054】
そして、三相で給電する場合は、以下の方式がある。
(ホ)Δ方式の3つある端子で三相給電する方式。
(ヘ)単三変圧器にもう1台変圧器を追加したV結線方式(以下V方式という)による3相給電方式。
【0055】
交流重畳電圧Eoは給電線の線間電圧Eのm倍としている定数mの値は、給電線の線間電圧でベクトルを描くとき、その長さが給電線間電圧E、その重心と接地点との間隔が交流重畳電圧Eoを表すので、前記(イ)の方式では、mは1/2となり、前記(ロ)の方式では、同様にmは1/2となり、前記(ハ)の方式では正3角形の重心が接地点で線間電圧の中点までの距離がEoとなり、mは1/(2√3)、(ニ)2線のうち1線が接地されているときmは1/2となり、前記(ホ)の方式では正3角形の重心が三相の電気的中性点で接地点である1つの頂点までの距離がEoとなり、mは1/√3となり、前記(ヘ)の方式では、正3角形の重心が三相の電気的中性点で接地点である線間電圧の中点までの距離がEoとなりmは1/(2√3)となる。
【0056】
以上説明した理論に基づいて具体化される本発明に係る漏洩電流測定装置及び測定方法は、給電変圧器から導出される単相給電線にあっては、その線間電圧Eを、三相給電線にあっては、三相の電圧端子をR,S,Tとし、S相が接地してあるΔ方式ではR相とT相と間の線間電圧ERTを、R相とT相との間の中点が接地してあるV方式ではR相とT相との間の線間電圧ERTを測定する電圧検出手段と、単相又は三相給電線若しくはこの給電線にスイッチング素子等で構成される直流/交流変換装置を経由して導出される直流給電線の各給電線をそれぞれ流れる合計電流である零相電流I0を検出する零相電流検出手段と、この零相電流検出手段によって検出された零相電流I0からその交流成分である交流重畳電流Iaoを検出する交流重畳電流検出手段とを有し、上記電圧検出手段によって検出された上記線間電圧を基準電圧とし、この基準電圧と上記交流重畳電流との位相を比較する位相比較手段と、上記基準電圧に対して、上記交流重畳電流を同相の有効成分Aと、これと直角の位相差を有する無効成分Bに分離して演算する演算手段を備える。
【0057】
最初に、例えばY方式の接地された中点とある電圧点とから導出されるような、単相給電線2線のうち1線が接地されている給電方式にあっては、基準電圧である給電線線間電圧Eと、前述の重畳電圧Eoとの位相は一致し、給電線線間電圧Eに対する重畳電圧Eoの倍数mは1/2となるので、前記式3のmに1/2を代入すると、直流電圧と交流重畳電圧とが重畳する電圧印加部分と接地部分間の絶縁抵抗を介して流れる漏洩電流である故障電流Igrの値は有効成分Aの√3倍となり、前記式4から電圧印加部分と接地部分間に通常存在する対地静電容量を介して流れる漏洩電流Igcの値は無効成分Bの値となる。
【0058】
ここで、漏洩電流Igcの値は、全電圧印加部分と接地部分間の漏洩電流の合計値であり、故障電流Igrの値は、全電圧印加部分と接地部分間の絶縁抵抗を介して流れる故障電流で、その直流成分は正極、負極故障電流の絶対値の合計値であり、交流成分とも重畳した故障電流の値となる。
【0059】
次に、Y方式の3つある電圧端子のうちの2つの端子から単相で給電するとき、前述したようにmは1/(2√3)、S相が接地してあるΔ方式にあってR相とT相から単相で給電するときもmは1/(2√3)、Δ方式の3つある端子で三相での給電ではmは1/√3、V方式によって三相で給電するときはmは1/(2√3)となり、そして、いずれも基準電圧Eと前述の重畳電圧Eoとの位相差が90度となるので、上記基準電圧Eに対して、前記交流重畳電流Iaoを同相の有効成分Aと、これと直角の位相差を有する無効成分Bに分離したとき、漏洩電流Igcの値が有効成分Aの値となり、故障電流Igrの値は、mが1/(2√3)のときは無効成分Bの√7倍に、mが1/√3のときは無効成分Bの√2.5倍の値となる。
【0060】
以上のように、本発明に係る漏洩電流測定装置にあっては、零相電流I0からその交流成分である交流重畳電流Iaoを検出し、入力された給電線線間電圧である基準電圧Eに対して交流重畳電流Iaoの有効成分Aの値とこれと直角の位相差を有する無効成分Bの値とを求めるための位相比較を行い、これらの値及び給電用変圧器結線方式とその端子の接地方式それに給電用変圧器から導出される給電線の方式から定まる交流給電線の線間電圧Eに対する重畳電圧Eoの倍数m及び両電圧の位相差に基づいて、前記故障電流Igrの値及び電圧印加部分と接地部分間に通常存在する対地静電容量を介して流れる電流の合計値である漏洩電流Igcの値、それに故障電流Igrと漏洩電流Igcとのベクトル和である零相電流I0の値を演算する演算手段とを備える。
【0061】
ここで、上記演算手段は、より具体的には、入力された給電線の線間電圧である基準電圧Eに対して、基準電圧Eの電気的中性点の給電電源の接地点からの電圧である重畳電圧Eoが基準電圧Eと、例えば一線が接地してある単相給電線のように同位相のとき、基準電圧Eに対して上記交流重畳電流Iaoの同位相成分つまり有効成分の値をAとし、これと直角の位相差を有する無効成分の値をBとするとき、式A{1+1/(2m2)}1/2の値を故障電流Igrの値として演算し、無効成分Bの値を漏洩電流Igcの値として演算する。これに対し基準電圧Eの位相と重畳電圧Eoの位相差が90度あるときは、式B{1+1/(2m2)}1/2の値を故障電流Igrの値として演算し、交流重畳電流Iaoの有効成分Aの値を漏洩電流Igcの値として演算する。またI0=(Igr2+Igc2)1/2の値を零相電流I0の値として演算する。
【0062】
前述の基準電圧Eと重畳電圧Eoの位相差及びmの値は、給電用変圧器の結線方式とその端子の接地方式及び給電線の引出し方式とによって決まる。
【0063】
本発明に係る漏洩電流測定装置は、更に表示手段を備え、上記演算手段によって演算された結果を上記表示手段に表示して告知することが望ましい。
【0064】
さらに、本発明に係る漏洩電流測定装置は、警報手段を備え、上記演算手段において求められる上記故障電流Igrの値が所定の値を超えたときに上記警報手段より警報を発することにより、故障電流Igrの値が所定の値を超えたことを告知することができる。
【0065】
さらにまた、本発明に係る漏洩電流測定装置は、さらに遮断手段を備えることにより、上記演算手段において求められる上記故障電流Igrの値が所定の値を超えたときに上記遮断手段により電路を遮断することを可能とする。
【0066】
また、本発明に係る漏洩電流測定方法は、給電変圧器から導出される単相給電線にあっては、その線間電圧Eを、三相給電線にあっては、三相の電圧端子をR,S,Tとし、S相が接地してあるΔ方式ではR相とT相間との線間電圧ERTを、R相とT相との間の中点が接地してあるV方式ではR相とT相との間の線間電圧ERTを測定する電圧検出工程と、単相又は三相給電線若しくはこの給電線にスイッチング素子等で構成される直流/交流変換装置を経由して導出される直流給電線各々の給電線を流れる合計電流である零相電流I0を検出する零相電流検出工程と、この零相電流検出工程によって検出された零相電流I0からその交流成分である交流重畳電流Iaoを検出する交流重畳電流検出工程とを有し、上記電圧検出工程によって検出された上記線間電圧ERTを基準電圧とし、この基準電圧と上記交流重畳電流Iaoとの位相を比較する位相比較工程と、上記基準電圧に対して、上記交流重畳電流Iaoを同相の有効成分Aと、これと直角の位相差を有する無効成分Bに分離した計測値を求め、これらの値及び給電用変圧器結線方式とその端子の接地方式それに給電用変圧器から導出される給電線の方式から定まる交流給電線線間電圧Eに対する重畳電圧Eoの倍数m及び両電圧の位相差に基づいて、前記故障電流Igrの値及び電圧印加部分と接地部分間に通常存在する対地静電容量を介して流れる電流の合計値である漏洩電流Igcの値、それに故障電流Igrと漏洩電流Igcとのベクトル和である零相電流I0の値を演算する演算工程とを備える。
【0067】
そして、入力された給電線線間電圧である基準電圧Eに対して交流重畳電流Iaoの有効成分Aの値とこれと直角の位相差を有する無効成分Bの値とを求めるための位相比較が行われ、これらの値及び給電用変圧器結線方式とその端子の接地方式それに給電用変圧器から導出される給電線の方式から定まる交流給電線線間電圧Eに対する重畳電圧Eoの倍数m及び両電圧の位相差に基づいて、前記故障電流Igrの値及び電圧印加部分と接地部分間に通常存在する対地静電容量を介して流れる電流の合計値である漏洩電流Igcの値、それに故障電流Igrと漏洩電流Igcとのベクトル和である零相電流I0の演算が行われる。
【0068】
ここで、上記演算工程は、より具体的には、入力された給電線の線間電圧である基準電圧Eに対して、基準電圧Eの電気的中性点の給電電源の接地点からの電圧である重畳電圧Eoが基準電圧Eと、例えば一線が接地してある単相給電線のように同位相のとき、基準電圧Eに対して上記交流重畳電流Iaoの有効成分の値をAとし、これと直角の位相差を有する無効成分の値をBとするとき、式A{1+1/(2m2)}1/2の値を故障電流Igrの値として演算し、無効成分Bの値を漏洩電流Igcの値として演算する。これに対し基準電圧Eの位相と重畳電圧Eoの位相差が90度あるときは、式B{1+1/(2m2)}1/2の値を故障電流Igrの値として演算し、Aの値を漏洩電流Igcの値として演算する。またI0=(Igr2+Igc2)1/2の値を零相電流I0の値として演算する。
【発明の効果】
【0069】
上述したように、従来の装置又は方法にあっては、発電機器、コゼネレーシヨン機器等のエネルギー供給装置、これらエネルギー供給装置からエネルギーの供給を受ける空調機器、照明機器等のエネルギー変換装置や、蓄電池等のエネルギー貯留供給装置、電気自動車の充放電端末などのエネルギー受給装置などに給電する直流給電線及びこれに接続されている各装置並びに機器の電圧印加部分から接地部分へ流れる故障電流Igrの検出に際して、正極故障電流と負極故障電流との差を故障電流Igrとして検出していたため、正極負極同時故障の際は過小な故障電流Igrを検出し、特に正極故障電流と負極故障電流の絶対値とが等しいときは検出が不可能になるなど、重大故障の一因になっていたが、本発明に係る装置及び方法では正極故障電流、負極故障電流の絶対値の和として故障電流Igrの検出を可能にしているので、上述の各装置及び機器を含む全装置の絶縁監視を高い信頼性で可能となし、安全性を大きく向上することができる。
【0070】
また、本発明は、警報手段を備えることにより、故障電流Igrが異常状態になったことを音などの警報により告知することができるので、漏電による事故を未然に防止することができる。
【0071】
更にまた、漏洩電流Igcの検出も容易なため、上述したヨーロッパ規格の要求事項についても適応が可能であり、また、故障電流や漏洩電流の検出に際して直流微小電流を検出するための複雑高価な零相変流器や特殊なセンサーを用いる代わりに、標準的な交流零相変流器と電子回路での処理が可能となり、更に測定の際にスイッチング素子等による高調波電圧などの影響を受けやすい対地電圧の入力に代わって、安定した交流給電線の線間電圧を用いるなど、高い信頼性を有し、しかも安価で、全世界に適用が可能な漏洩電流測定装置及びその測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】変圧器の二次側巻線を星形に結線したY方式である三相星形給電方式の電源の接地相と電圧相の1つから導出された単相給電線に接続された変換装置から給電される直流給電線及びそれに接続される負荷装置、電源装置等の故障電流Igr及び漏洩電流Igcの測定に本発明に係る漏洩電流測定装置を適用した構成例を示す概略系統図である。
【図2】図1に示すY方式の星形給電方式の電源における給電電圧Eとその電気的中性点Ma、そのときの重畳電圧Eo、及び給電線がR相、S相から導出されたときの給電電圧Esとその電気的中性点Ms、そのときの重畳電圧Eosの関係を示すベクトル図である。
【図3】単三方式電源の変圧器の二次側巻線の結線と接地の状態、給電線がR相と接地点Gから導出されたときの給電電圧E1とその電気的中性点M1の関係を示す図である。
【図4】単三方式給電方式の電源における給電電圧E1とその電気的中性点M1、そのときの重畳電圧Eo1の関係を示すベクトル図である。
【図5】V方式の電源の変圧器の二次側巻線の結線と接地の状態、給電線がR相、S相、T相の三相で導出されたときの給電電圧Evの関係を示す図である。
【図6】V方式の給電電源から三相で導出されたときの給電電圧Evと三相電位の重心であるその電気的中性点Mv、そのときの重畳電圧Eovの関係を示すベクトル図である。
【図7】Δ方式電源の変圧器の二次側巻線の結線と接地の状態、給電線がR相S相T相の三相で導出されたときの給電電圧EDの関係を示す図である。
【図8】Δ方式の給電電源から三相で導出されたときの給電電圧EDと三相電位の重心であるその電気的中性点MD、そのときの重畳電圧EoDの関係を示すベクトル図である。
【図9】本発明に係る漏れ電流測定装置を構成する信号処理部の詳細を示すブロック図である。
【図10】零相電流I0の交流成分であるIao、基準電圧として入力される給電線線間電圧E,Es、E1、線間電圧EV、ED、ESR,EST、位相角θ、零相電流I0の交流成分であるIaoの有効成分A、零相電流I0の交流成分であるIaoの無効成分Bの関係を示すベクトル図である。
【図11】ある時点で位相差がθの入力電圧Eと零相電流I0の交流成分であるIaoの波形と、位相判定のためのゼロクロッシング回路の出力波形の関係を示す図である。
【図12】基準電圧として入力される給電線線間電圧Es、Ev、EDと重畳電圧Eos、Eov,EoDとの位相角が90度の場合の零相電流I0の交流成分であるIaoの有効成分Aと、零相電流I0の交流成分であるIaoの無効成分Bの関係を示すベクトル図である。
【図13】直流給電線及びそれに接続されている装置を本発明に係る漏れ電流測定装置で監視し、遮断器と警報器を制御する構成を備え、且つ分流器により零相電流I0及び零相電流I0の交流成分であるIaoを分流して信号処理部へ入力する本発明に係る漏洩電流測定装置を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
以下、本発明を適用した漏洩電流測定装置及びその測定方法の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0074】
本発明に係る漏洩電流測定装置は、単相又は三相給電線の電気的中性点に対地交流電圧が存在する、例えば単相の2線のうちの1線が接地されている給電線に接続される直流給電系統に適用される。
【0075】
そして、変圧器の二次側巻線1を星形に結線したY方式を採用した図1に示す給電方式において、二次側巻線1の接地相Gと電圧相R,S,Tの1つであるR相からそれぞれ導出された単相給電線2R,2Gに接続された交流/直流変換装置3と、この変換装置3から導出される直流給電線4の正極線4pと負極線4nには 直流で駆動され、あるいは直流で動作する各種の装置や負荷装置から構成される装置5が接続されている。
【0076】
上述した装置5は、直流給電線4p、4nに直接接続される太陽光発電装置や燃料電池などの発電装置、LED照明装置、電気自動車の充電放電端子、蓄電池などの直流で動作しあるいは駆動する直流装置若しくは設備や、スイッチング素子等を経由して接続される交流電動機により駆動される駆動機器などの交流負荷装置、風力発電機などの交流発電装置、コゼネレーシヨン装置などから構成されている。
【0077】
変圧器の二次側巻線1の中点である接地端子Gは、接地線8を経由して接地点Goで接地されている。そして、接地端子Gと電圧端子R間の巻線1aには、接地端子Gに対する電圧端子Rの電位である相電圧Eが発生し、この相電圧Eが交流給電線2の給電線2R,2Gの線間電圧Eとなる。これら電圧と各端子の関係を図2のベクトル図に示す。図2において、接地端子Gの電位と電圧端子Rとの電位差である図2中Eで示すベクトルの中間の電位点Maを相電圧Eの電気的中性点といい、接地点Gから電気的中性点Maまでの電圧を重畳電圧Eoと称する。したがって、この場合のように単相給電線の1線が接地されているときは重畳電圧Eoの値は、線間電圧Eの値の半分であるE/2となる。
【0078】
また、図1に示す変圧器の星形に結線された二次側巻線1の端子Rと端子Sから導出される交流給電線電圧Esは、図2中Esで示す電圧ベクトルであり、この電圧ベクトルEsの中点Msが、交流給電線電圧Esの電気的中性点で、接地点Gに対する電気的中性点Msの電圧Eosがこのときの重畳電圧となる。この重畳電圧Eosの値は、図2に示すベクトル図から、給電線線間電圧Esの値の1/(2√3)の値となる。
【0079】
また、交流給電線2には、給電線2R,2Gに供給される電流のベクトル和である零相電流I0を出力するための零相変流器9を備える。零相変流器9は、交流給電線2、直流給電線4、接地線8のような零相電流I0の通路であればいずれの位置にも設置可能である。さらに、零相電流I0には、直流電流に交流電流が重畳しており、測定の際に必要な交流電流分を分流するため、分流器10を経由してその交流成分である交流電流Iaoを抽出し信号処理部13に入力する。また、給電線2R,2Gの線間電圧Eも、測定の際の基準電圧として信号処理部13に入力する。
【0080】
交流/直流変換装置3は、スイッチング素子等で構成され、交流端子R,Gに印加された交流電圧を直流電圧として直流端子P,Nに出力し、電流は交流側から直流側へ、又はその逆方向へも流すことができる。
【0081】
交流/直流変換装置3の直流端子P,Nから直流給電線4p,4nが導出され、その線間電圧はEdで示され、直流給電線4p,4nの中間電圧点が電気的中性点Mdとなる。すなわち、電気的中性点Mdから直流給電線4pまでの電圧Epは、線間電圧Edの1/2となり、直流給電線4nから電気的中性点Mdまでの電圧Enの負電圧も線間電圧Edの1/2となる。
【0082】
また、交流/直流変換装置3の構成要素であるダイオード、サイリスタ等は、交流端子R,Gから直流端子P,Nの間の電流通路及び素子の定格、数など対称的に配置され、結線されているので、交流給電線2R,2Gの電気的中性点Maの電位と直流給電線4p,4nの電気的中性点Mdの電位は一致する。したがって、交流給電線2R,2Gの電気的中性点Maの対地電圧をEoとすると、直流給電線4p,4nの電気的中性点Mdの対地電圧もEoとなり、等価的には図1のように接地点から直流給電線4p,4nの電気的中性点Mdへ交流電圧Eoが印加される。したがって、直流給電線4pに印加される対地電圧として、直流電圧Epに加えて交流電圧Eoが重畳して印加され、直流給電線4nに印加される対地電圧として、直流電圧Enに加えて交流電圧Eoが重畳して印加される。これが交流電圧Eoを重畳電圧Eoと称する理由である。
【0083】
交流給電線の電気的中性点の対地交流電圧が存在する他の例を図3に示す。図3に示す例は、単相3線給電方式の変圧器の端子Rと端子T間の二次側巻線で、その中点が接地され、この中点に設けた端子Gと端子Rから交流給電線を導出している。端子Gと端子Rから導出される交流給電線間の線間電圧E1は、図4に示すベクトル図において、ベクトルE1で示され、このベクトルE1の中心点M1が交流給電線の電気的中性点で、接地されたG端子から電気的中性点M1までの電圧Eo1が重畳電圧になる。このときの重畳電圧Eo1の値は、図4のベクトル図から、給電線線間電圧E1の値の1/2の値となる。また、端子Gと端子Tから線間電圧E1が印加される交流給電線が導出されても同様となる。
【0084】
次の例として、V結線給電方式の例を図5に示す。図5に示すV結線給電方式では、変圧器の端子Rと端子T間の巻線の中点Gが接地され、各端子R,S,Tから線間電圧EVの三相交流給電線が導出されている。図6のベクトル図に示すように、3本の交流給電線線間電圧ベクトルで描かれる三角形の重心Mvが三相交流給電線の電気的中性点で、接地されたG端子から電気的中性点Mvまでの電圧Eovが重畳電圧になる。このときの重畳電圧Eovの値は、図6のベクトル図から給電線線間電圧Evの値の1/(2√3)の値となる。
【0085】
次に、図7に示すΔ結線給電方式で、変圧器の端子Sが接地され、端子R,S,Tから線間電圧EDの三相交流給電線が導出された例において、図8のベクトル図に示す3本の交流給電線線間電圧ベクトルで描かれる三角形の重心MDが三相交流給電線の電気的中性点で、接地されたS端子から電気的中性点MDまでの電圧EoDが重畳電圧になる。このときの重畳電圧EoDの値は、図8のベクトル図から給電線線間電圧EDの値の1/(√3)の値となる。
【0086】
また、端子RS又は端子TSから導出される単相交流給電線については図3、図4に示す単相給電方式の場合と同様である。
【0087】
ここで、図1に示す直流給電系統で、交流/直流変換装置3は、ダイオードやサイリスタなどのスイッチング素子等で構成され、これらの素子は、例えばブリッジ状のように対称的に配置結線されているので、端子R,Gに入力された実効値Eの交流電圧は前記素子によって整流されて直流端子P,Nに直流電圧Edとして出力される。この場合の直流電圧Edの値は、電圧Edの印加に起因する故障電流、漏洩電流の検出が目的であるため、実効値Eの交流電圧を整流したときの最高の値である交流電圧の波高値、Eの√2倍の値によって計算する。前記直流給電系統には発電装置も含まれており、前記の最大値は実際に起こりうる値である。
【0088】
次に、図1に示す概略系統図で、直流給電線4p,4n及びそれに接続されている負荷装置5にはそれに印加される交流の重畳電圧Eo及び直流電圧Ep,Enに起因する対地漏洩電流が流れる。前述したように直流電流に交流電流が重畳している対地漏洩電流の計算には重畳の理を用いる。即ち、直流電圧部分を短絡して交流電圧に起因する電流を求め、次に交流電圧部分を短絡して直流電圧に起因する電流を求め、両者を合計して重畳された電流を求めるが、両電流は異なった波形であり、実効値が必要なため、両電流各々を二乗して合計、開平して重畳電流の実効値を求める。
【0089】
また、図1に示したように、直流給電線4p,4n及びそれに接続されている負荷装置5には、通常対地静電容量6が存在する。そして、この通常存在する対地静電容量6の値は、負荷装置5及び直流給電線4が回路として接続されているので、それぞれの値の合計値で、直流給電線4p,4nにかかわる対地静電容量6の各々の値をCp,Cnとする。対地静電容量6には、交流の重畳電圧Eoに起因する漏洩電流Icp,Icnが流れる。ここで、重畳電圧Eoの角周波数をωとしてベクトル記号法を適用すれば、漏洩電流IcpはjωCpEoで表され、漏洩電流IcnはjωCnEoで表され、対地静電容量6には直流電圧Ep,Enに起因する定常電流は流れない。
【0090】
従って、直流給電線4p,4n及びそれに接続されている負荷装置5に存在する対地静電容量6を流れる漏洩電流Icp,Icnの和、即ちω(Cp+Cn)Eoの値が、電圧印加部分と接地部分間に通常存在する対地静電容量6を介して流れる漏洩電流Igcの値になる。
【0091】
また、直流給電線4p,4n及びそれに接続されている負荷装置5には対地漏洩コンダクタンス7が生ずることがあり、直流給電線4p,4nにかかわる各々の値をGp,Gnとする。このとき、これら対地漏洩コンダクタンス7には重畳電圧Eoに起因する漏洩電流Igp、Ignが流れ、漏洩電流IgpはGpEoで表され、漏洩電流IgnはGnEoで表される。これらを合計すると(Gp+Gn)Eoとなり、交流の重畳電圧Eoに起因する電圧印加部分と接地部分間の対地漏洩コンダクタンス7を介して流れる故障電流の合計値となる。
【0092】
また、対地漏洩コンダクタンス7には直流電圧Ep,Enに起因する故障電流Idp,Idnが重畳して流れ、IdpはGpEp、IdnはGnEnで表され、両電流の合計はGpEp+GnEnとなるが、図1に示すように、線間電圧Edの直流給電線4p,4nの電気的中性点MDから直流給電線4pに印加される電圧Epは+Ed/2、直流給電線4nへの電圧Enは−Ed/2となり、両電流の合計(GpEp+GnEn)は(Gp―Gn)Ed/2、つまり両電流値の差を計測し、直流給電線4p,4nに同時に対地漏洩コンダクタンス7が生じたとき、実際より少ない値を計測、特に対地漏洩コンダクタンス7の値であるGp,Gnの値が等しいときには故障として認識できない。
【0093】
この致命的な欠陥をなくすため、本発明では上述した分流器10を経由して抽出した零相電流I0の交流成分である交流電流Iaoを利用する。この交流電流Iaoは、上述した交流電流の重畳電圧Eoに起因する漏洩電流Icp,Icnと故障電流Igp,Ignの合計であり、下記の式6のように示すことができる。
【0094】
Iao=(Gp+Gn)Eo+jω(Cp+Cn)Eo ・・・(6)
上記式6のEoとの同位相成分(Gp+Gn)EoをAとおき、この値Aを電流Iaoから検出する。ちなみに、Aの値が重畳電圧Eoに起因する故障電流Igp,Ignの合計であり、これと直角の位相差を有する成分ω(Cp+Cn)EoをBとしたとき、Bの値が重畳電圧Eoに起因する電圧印加部分と接地部分間に通常存在する対地静電容量6を介して流れる漏洩電流Igcの値になる。
【0095】
上記Aの値と電圧Ed,Eo、それに交流給電線線間電圧Eの関係が明らかになっていることを利用して、直流電圧Ep,Enに起因する対地漏洩コンダクタンス7に流れる故障電流Idp,Idnをそれぞれの絶対値の和、つまり(Gp+Gn)Ed/2の値として算出する。前述したように、直流給電線線間電圧Edは交流給電線線間電圧Eの√2倍であるので、直流電圧Ep,Enに起因する対地漏洩コンダクタンス7に流れる故障電流の絶対値の和(Gp+Gn)Ed/2は、(Gp+Gn)E/√2と計算される。また、交流の重畳電圧Eoは、交流給電線線間電圧Eのm倍の関係があり、(Gp+Gn)EoがAであるので、上記直流電圧Ep,Enに起因する故障電流の絶対値の和はA/(m√2)と計算される。また、重畳電圧Eoに起因する故障電流の和はAで表されるので、これら故障電流を重畳させた実効値を求めると、Aの値の{1+1/(2m2)}1/2倍となる。図1に示すように、単相交流給電線のうちの1本が接地してあるときは交流給電線線間電圧Eである基準電圧と重畳電圧Eoとの位相差はなく、mは1/2であることから、{1+1/(2m2)}1/2の値は√3となる。つまり、Aの値を求めることができれば、Aの√3倍の値が交流の重畳電圧Eoに起因する故障電流と直流電圧Ep、Enに起因する故障電流とを重畳させた直流給電線4及びそれに接続されている負荷装置5の電圧印加部分から接地部分へ流れる故障電流Igrの値となる。
【0096】
上述したような直流給電線4及びそれに接続されている負荷装置5に通常存在する対地静電容量6に起因する漏洩電流Igc及び故障時発生する対地漏洩コンダクタンス7に起因する故障電流Igrを測定する本発明に係る漏洩電流測定装置は、図1に示すように信号処理部13、演算部14、表示部15を有する処理演算部16を備える。そして、前述の漏洩電流Igc及び故障電流Igrを測定する場合には、処理演算部16を構成する信号処理部13に、交流給電線2に流れる電流のベクトル和である零相電流I0から分流された零相電流I0の交流成分Iaoが、零相電流I0を検出する零相変流器9と交流成分Iaoを分流する分流器10を介して入力される。
【0097】
ここで、直流給電線4及びそれに接続されている負荷装置5及び零相変流器9から直流給電線4寄りの交流給電線2に存在する対地静電容量6を流れる漏洩電流Igc及び同部位に発生する対地漏洩コンダクタンス7を流れる故障電流Igrのベクトル和である零相電流I0は、大地から給電電源の接地極Go、接地線8を経由して、配電電源1、交流給電線2、直流/交流変換装置3、直流給電線4及びそれに接続されている負荷装置5の経路を還流するので、零相電流I0はこの還流経路の途中いずれの点でも測定が可能である。
【0098】
また、本発明を採用することにより、負荷装置5を構成する複数の装置を1台の漏洩電流測定装置によって監視することが可能である。
【0099】
次に、図1に示す処理演算部16を構成する信号処理部13の具体例を、図9を参照して説明する。この信号処理部13は、電圧検出器21と、第1の増幅器22と、第1のローパスフィルタ(LPF)23と、第1の実効値変換器28と、零相電流I0から分流された交流分電流Iao検出器24と、第2の増幅器25と、第2のローパスフィルタ(LPF)26と、第2の実効値変換器29と、位相差計測器27とを備える。
【0100】
図9において、電圧検出器21には、交流給電線2の線間電圧が基準電圧Eとして入力される。交流給電線2がΔ方式の三相であれば接地相以外の線間電圧を、V方式の三相であれば接地相の線間電圧を入力する。
【0101】
そして、第1の増幅器22は、電圧検出器21の検出感度に応じて、電圧検出器21から出力される基準電圧Eを適切な値になるまで増幅する。第1のローパスフィルタ23は、基準電圧Eとして入力される電圧の最高周波数である例えば60Hzを超える周波数成分を減衰させて基準電圧周波数波形を取り出す。
【0102】
そして、電流Iao検出器24には、零相電流I0から分流された交流分電流Iaoが入力される。
【0103】
第2の増幅器25は、電流Iao検出器24の検出感度に応じて、電流Iao検出器24から出力される電流Iaoを適切な値になるまで増幅する。第2のローパスフィルタ26は、電流Iaoの商用周波数を超える周波数成分を減衰させて商用周波数を取り出す。
【0104】
そして、位相差計測器27は、基準電圧として入力された単相の交流給電線2の線間電圧、Δ方式の三相であれば接地相以外の線間電圧、V方式の三相であれば接地相の線間電圧のいずれかと、電流Iaoとの位相差を計測する。ここで基準電圧Eとして入力された単相の交流給電線2の線間電圧、Δ方式の三相であれば接地相以外の線間電圧、V方式の三相であれば接地相の線間電圧のいずれかと、電流Iaoとの位相角θの関係を図10、図11に示す。
【0105】
そして、信号処理部13において、第1のローパスフィルタ23は出力された基準電圧Eの波形と、第2のローパスフィルタ26から出力された電流Iaoの波形を、例えばオペアンプゼロクロッシング回路に入力すると、それらの出力波形は、図11に示すように、基準電圧Eに対してはEZで示すようになり、電流Iaoに対してはIZで示すようになる。基準電圧E及び電流Iaoの出力波形の波高値を一致させて、出力波形EZとIZの差を求める。その差の絶対波形は、図11に示す|EZ−IZ|波形になる。図11に示す|EZ−IZ|波形及びIZ波形の突出部分の面積をそれぞれS1,S2とすれば、S1は基準電圧Eと電流Iaoとの位相差角θに比例し、S2は位相差180度に比例する。このS1,S2に比例した電圧は、演算部14に出力される。
【0106】
そして、第1の実効値変換器28は、基準電圧Eの波形を両波整流して実効値に比例したアナログ値に変換し、演算部14に入力する。第2の実効値変換器29は、電流Iaoの基本周波数波形を両波整流して実効値に比例したアナログ値に変換して演算部14に入力する。
【0107】
演算部14は、位相差計測器27が計測した基準電圧Eと電流Iaoとの位相差角θを用いて、電流Iaoを基準電圧Eと同位相の有効成分Aと、基準電圧Eより90度位相が進んだ無効成分Bとに分解して出力する。
【0108】
なお、位相差計測器27が検出する基準電圧Eと電流Iaoとの位相差角θは、下記の式7に基づいて算出される。
【0109】
θ=(180S1)/S2 ・・・(7)
ここで、演算部14は、I0cosθの値を電流Iaoの有効成分Aの値として、Iaosinθの値を電流Iaoの無効成分Bの値として演算し出力する。これら電流Iaoと、電流Iaoの有効成分A及び無効成分Bの関係は、前述したように、図10のベクトル図に示すように表される。即ち、有効成分Aは、式8のように表され、無効成分Bは式9のように表される。
【0110】
A=Iaocosθ ・・・(8)
B=Iaosinθ ・・・(9)
そして、演算部14において、上述したような演算処理が行われる。
【0111】
また、前述したように、基準電圧Eと重畳電圧Eoとの位相が等しく、2線のうち1線が接地してある単相給電のとき対地静電容量6に起因する漏洩電流Igcは、下記の式10に示すようになる。
【0112】
Igc=B ・・・(10)
同じ条件で、対地漏洩コンダクタンス7に起因し、直流電流に交流電流が重畳する故障電流Igrは、下記の式11示すようになる。
【0113】
Igr=√3A ・・・(11)
演算部14において、演算処理が行われる漏洩電流Igcの値と、故障電流Igrの値は、必要に応じて表示部15に表示される。
【0114】
また、基準電圧Eと重畳電圧Eoとの位相差が90度の関係にある図1、図2に示された、星形に結線され、その中点が接地された変圧器の二次側巻線で形成される交流電源の中点以外の端子R,Sから単相の交流給電線が導出されるときは、図12に示すように角θは90度大きく測定されるので、前記式10は下記の式12に示すようになる。
【0115】
Igc=A ・・・(12)
また、重畳電圧Eoは基準電圧Eの1/(2√3)倍であるので前記式11は下記の式13に示すようになる。
【0116】
Igr=√7B ・・・(13)
また、基準電圧Eと重畳電圧Eoとの位相差が90度の関係にある図7、図8に示した、三角形に結線され、その1端子が接地された変圧器の二次側巻線で形成される交流電源から三相の交流給電線が導出されるときは、図12に示すように角θは90度大きく測定されるので式10は式12に示すようになり、重畳電圧Eoは基準電圧Eの1/√3倍であるので式11は下記の式14に示すようになる。
【0117】
Igr=√2.5B ・・・(14)
また、基準電圧Eと重畳電圧Eoとの位相差が90度の関係にある図5、図6に示された、V字形に結線され、その一方の巻線の中点が接地された変圧器の二次側巻線で形成される交流電源の中点以外の3点から導出される三相の交流給電線のときは、図12に示すように角θは90度大きく測定されるので式10は式12に示すようになり、重畳電圧Eoは基準電圧Eの1/(2√3)倍であるので式11は式13に示すようになる。
【0118】
また、本発明に係る漏洩電流測定装置は、図13に示すように、交流給電線2の途中に遮断器19を設け、演算部14の演算の結果により、遮断器19の遮断動作を制御する構成としてもよい。この漏洩電流測定装置は、演算部14により演算されて測定された故障電流Igrの測定結果を制御信号とし、この制御信号に基づいて交流給電線2の途中に設けた遮断器19を動作させることにより、交流/直流変換装置3とそれから導出される直流給電線4、直流装置や種々の負荷装置から構成される装置5を給電電源1から遮断する。
【0119】
本発明に係る漏洩電流測定装置においては、更に遮断器を設けることにより、故障電流Igrの検出と共に、故障電流Igrが所定の値を超えたとき交流/直流変換装置3とそれから導出される直流給電線4、直流装置や種々の負荷装置から構成される装置5を給電電源から遮断するようにすることができるので、給電電源に接続された交流/直流変換装置3とそれから導出される直流給電線4、直流装置や種々の負荷装置から構成される装置5を絶縁不良に伴う重大事故から守ることができる。
【0120】
更に、本発明に係る漏洩電流測定装置では、演算部14の演算の結果により、故障電流Igrの値が所定の値より大きくなったことが判定された場合には、その判定信号を制御信号として、音や発光等の警報装置を動作させ、音や発光等を用いて警報を発するようにしてもよい。このような警報装置を設けることにより、漏電に起因する事故を確実に防止することができる。なお、この警報装置は、図13に示すように、演算部14の判定信号を制御信号として警報器18を動作させるものであるので、演算部14からの判定信号が入力されるように、この演算部14に接続される。
【0121】
更に、本発明に係る漏洩電流測定装置では、図13に示すように零相電流I0から交流電流Iaoを検出するとともに、零相電流I0をも検出可能な分流器を備え、零相電流I0をも信号処理部13に入力させ、その値を演算部14を経由して表示部15で出力させることもできる。
【0122】
また、図3に示す単3方式で端子R,Tから導出した単相の交流給電線2、又は図1のY給電方式で端子R,S,Tから導出した三相の交流給電線2の場合、それら給電線2の電気的中性点の電位が接地点Gの電位と一致するので重畳電圧Eoの値が0となり、零相電流I0の値は下記の式15により示されるIdoの値になる。
【0123】
Ido=0.5√2(Gp−Gn)E ・・・(15)
演算部14は、このIdoの値を故障電流Igrの値として検出する。
【0124】
但し、式15で示されるように正極又は負極のいずれか一方に対地漏洩コンダクタンス7が発生したときは故障電流Igrの値として正確であるが、正極及び負極の双方に発生したときにはその差の値を表示することになる。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明に係る漏洩電流測定装置及び測定方法は、今後急速な普及が予想されるスマートグリットの直流給電線及び直流給電線に接続された直流及びスイッチング素子等を経由する交流の負荷装置、給電装置、発電装置、コゼネレーシヨン装置などの絶縁測定、予防保全、事故防止に用いることができる。
【符号の説明】
【0126】
1 変圧器の二次側巻線、2 交流給電線、3 交流/直流変換装置、4 直流給電線、5 負荷装置、6 対地静電容量、7 対地漏洩コンダクタンス、8 接地線 9 零相変流器、10 分流器、13 信号処理部、14 演算部、15 表示部、16 処理演算部、18 警報機、19 遮断器、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子の1つ又は巻線の中点が接地された単相又は三相に結線された変圧器の二次側巻線で形成される交流電源から導出される単相又は三相の交流給電線に接続される交流/直流変換装置と、この交流/直流変換装置から導出される直流給電線と、この直流給電線に接続される直流装置及び直流/交流変換装置と、この直流/交流変換装置を経由して接続される交流装置とを備える給電システムの直流及び交流電圧印加部分と接地部分間の絶縁抵抗を介して流れる漏洩電流Igrと、上記電圧印加部分と上記接地部分間に存在する対地静電容量を介して流れる漏洩電流Igcを測定する漏洩電流測定装置において、
上記交流給電線の線間電圧を測定する電圧検出手段と、
上記交流給電線又は上記直流給電線に流れる電流のベクトル和である零相電流I0を検出する零相電流検出手段と、
上記零相電流I0から交流電流Iaoを検出する交流電流検出手段と、
上記電圧検出手段によって検出された上記線間電圧を基準電圧とし、この基準電圧と上記交流電流Iaoとの位相を比較する位相比較手段と、
上記絶縁抵抗を介して流れる漏洩電流Igrと上記対地静電容量を介して流れる漏洩電流Igcを演算する演算手段とを備え、
上記演算手段は、
上記基準電圧に対して、上記交流電流Iaoを同相の有効成分Aと、これと直角の位相差を有する無効成分Bに分離した計測値を求め、
上記線間電圧を基準電圧としたときに得られる上記交流電流Iaoの有効成分Aとこれと直角の位相差を有する無効成分Bとに基づいて、上記交流/直流変換装置と、この変換装置から導出される直流給電線及びこの直流給電線に接続される直流装置及び直流/交流変換装置と、この直流/交流変換装置を経由して接続される交流装置全体の直流正極側のみに発生する上記漏洩電流Igrの値、直流負極側のみに発生する上記漏洩電流Igrの絶対値、上記直流正極側のみに発生する上記漏洩電流Igrの値と直流負極側のみに発生する上記漏洩電流Igrの絶対値との合計値である直流正極側及び直流負極側に発生する上記漏洩電流Igrの絶対値の合計値、及び上記交流電圧及び直流電圧印加部分と接地部分間に存在する対地静電容量を介して流れる全体の漏洩電流Igcの値、交流配電線及び上記交流/直流変換装置及び上記直流/交流変換装置と上記直流/交流変換装置を経由して接続される交流装置の1相に発生する上記漏洩電流Igrの値、交流装置の2相に発生する上記漏洩電流Igrの絶対値の合計値を演算することを特徴とする漏洩電流測定装置。
【請求項2】
上記零相電流I0から交流電流Iaoを検出すると共に、上記零相電流I0をも検出可能な分流器を更に備えることを特徴とする請求項1記載の漏洩電流測定装置。
【請求項3】
上記演算手段は、交流給電線が単相で、上記交流給電線のいずれか一方が接地されているとき、上記有効成分Aの値の√3倍を、上記直流正極側に発生する漏洩電流Igrの近似値と直流負極側に発生する漏洩電流Igrの絶対値の近似値との合計値とし、上記無効成分Bの値を上記交流電圧及び直流電圧印加部分と上記接地部分との間に存在する対地静電容量を介して流れる全体の漏洩電流Igcの近似値として演算することを特徴とする請求項1記載の漏洩電流測定装置。
【請求項4】
上記単相の交流給電線が、星形に結線され、その中点が接地された変圧器の二次側巻線で形成される交流電源の中点以外の2点から導出されるとき、
上記演算手段は、上記無効成分Bの値の√7倍を、上記直流正極側に発生する漏洩電流Igrの近似値と上記直流負極側に発生する漏洩電流Igrの絶対値の近似値との合計値とし、上記有効成分Aの値を上記交流電圧及び直流電圧印加部分と接地部分間に存在する対地静電容量を介して流れる全体の漏洩電流Igcの近似値として演算することを特徴とする請求項1記載の漏洩電流測定装置。
【請求項5】
上記三相の交流給電線が、三角形に結線され、その1端子が接地された変圧器の二次側巻線で形成される交流電源から導出されるとき、
上記演算手段は、上記無効成分Bの値の√2.5倍を、上記直流正極側に発生する漏洩電流Igrの近似値と直流負極側に発生する漏洩電流Igrの絶対値の近似値との合計値とし、上記有効成分Aの値を上記交流電圧及び直流電圧印加部分と接地部分間に存在する対地静電容量を介して流れる全体の漏洩電流Igcの近似値として演算することを特徴とする請求項1記載の漏洩電流測定装置。
【請求項6】
上記三相の交流給電線が、V字形に結線され、その一方の巻線の中点が接地された変圧器の二次側巻線で形成される交流電源の中点以外の3点から導出されるとき、
上記演算出段は、上記無効成分Bの値の√7倍を、上記直流正極側に発生する上記漏洩電流Igrの近似値と直流負極側に発生する漏洩電流Igrの絶対値の近似値との合計値とし、上記有効成分Aの値を上記交流電圧及び直流電圧印加部分と接地部分間に存在する対地静電容量を介して流れる全体の漏洩電流Igcの近似値として演算することを特徴とする請求項1記載の漏洩電流測定装置。
【請求項7】
更に表示手段を備え、上記表示手段は、上記演算手段によって演算された結果を表示することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1に記載の漏洩電流測定装置。
【請求項8】
更に警報手段を備え、上記警報手段は、上記演算手段において求められる上記漏洩電流Igrの値が所定の値を超えたときに警報を発することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1に記載の漏洩電流測定装置。
【請求項9】
更に遮断手段を備え、上記遮断手段は、上記演算手段において求められる上記漏洩電流Igrの値が所定の値を超えたときに電路を遮断することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1に記載の漏洩電流測定装置。
【請求項10】
端子の1つ又は巻線の中点が接地された単相又は三相に結線された変圧器の二次側巻線で形成される交流電源から導出される単相又は三相の交流給電線に接続される交流/直流変換装置と、この交流/直流変換装置から導出される直流給電線と前記直流給電線に接続される直流装置及び直流/交流変換装置と、この直流/交流変換装置を経由して接続される交流装置とを備える給電システムの直流及び交流電圧印加部分と接地部分間の絶縁抵抗を介して流れる漏洩電流Igrと、上記電圧印加部分と上記接地部分間に存在する対地静電容量を介して流れる漏洩電流Igcを測定する漏洩電流測定方法において、
上記交流給電線の線間電圧を測定する電圧検出工程と、
上記交流給電線又は直流給電線に流れる電流のベクトル和である零相電流I0を検出する零相電流検出工程と、
上記零相電流I0から交流電流Iaoを検出する交流電流検出工程と、
上記電圧検出工程によって検出された上記線間電圧を基準電圧とし、この基準電圧と上記交流電流Iaoとの位相を比較する位相比較工程と、
上記基準電圧に対して、上記交流電流Iaoを同相の有効成分Aと、これと直角の位相差を有する無効成分Bに分離した計測値を求める工程と、
上記線間電圧を基準電圧としたときに得られる上記交流電流Iaoの有効成分Aとこれと直角の位相差を有する無効成分Bとに基づいて、上記交流/直流変換装置と、この交流/直流変換装置から導出される直流給電線及びこの直流給電線に接続される直流装置及び直流/交流変換装置と、この直流/交流変換装置を経由して接続される交流装置全体の直流正極側のみに発生する上記漏洩電流Igrの値、直流負極側のみに発生する上記漏洩電流Igrの絶対値、上記直流正極側のみに発生する上記漏洩電流Igrの値と直流負極側のみに発生する上記漏洩電流Igrの絶対値との合計値である直流正極側及び直流負極側に発生する上記漏洩電流Igrの絶対値の合計値、及び上記交流電圧及び直流電圧印加部分と接地部分間に存在する対地静電容量を介して流れる全体の漏洩電流Igcの値、交流配電線及び上記交流/直流変換装置及び上記直流/交流変換装置とこの直流/交流変換装置を経由して接続される交流装置の1相に発生する上記漏洩電流Igrの値、上記交流装置の2相に発生する上記漏洩電流Igrの絶対値の合計値を演算する演算工程と
を備えることを特徴とする漏洩電流測定方法。
【請求項11】
上記演算工程は、上記交流給電線が単相で、給電線のいずれか一方が接地されているとき、上記有効成分Aの値の√3倍を、上記直流正極側に発生する上記漏洩電流Igrの近似値と直流負極側に発生する上記漏洩電流Igrの絶対値の近似値との合計値とし、上記無効成分Bの値を上記交流電圧及び直流電圧印加部分と接地部分間に存在する対地静電容量を介して流れる全体の漏洩電流Igcの近似値として演算することを特徴とする請求項10記載の漏洩電流測定方法。
【請求項12】
上記単相の交流給電線が、星形に結線され、その中点が接地された変圧器の二次側巻線で形成される交流電源の中点以外の2点から導出されるとき、
上記演算工程において、上記無効成分Bの値の√7倍を、上記直流正極側に発生する漏洩電流Igrの近似値と上記直流負極側に発生する漏洩電流Igrの絶対値の近似値との合計値とし、上記有効成分Aの値を上記交流電圧及び直流電圧印加部分と接地部分間に存在する対地静電容量を介して流れる全体の漏洩電流Igcの近似値として演算することを特徴とする請求項10記載の漏洩電流測定方法。
【請求項13】
上記三相の交流給電線が、三角形に結線され、その1端子が接地された変圧器の二次側巻線で形成される交流電源から導出されるとき、
上記演算工程において、上記無効成分Bの値の√2.5倍を、上記直流正極側に発生する漏洩電流Igrの近似値と直流負極側に発生する漏洩電流Igrの絶対値の近似値との合計値とし、上記有効成分Aの値を上記交流電圧及び直流電圧印加部分と接地部分間に存在する対地静電容量を介して流れる全体の漏洩電流Igcの近似値として演算することを特徴とする請求項10記載の漏洩電流測定方法。
【請求項14】
上記三相の交流給電線が、V字形に結線され、その一方の巻線の中点が接地された変圧器の二次側巻線で形成される交流電源の中点以外の3点から導出されるとき、
上記演算工程において、上記無効成分Bの値の√7倍を、上記直流正極側に発生する上記漏洩電流Igrの近似値と直流負極側に発生する漏洩電流Igrの絶対値の近似値との合計値とし、上記有効成分Aの値を上記交流電圧及び直流電圧印加部分と接地部分間に存在する対地静電容量を介して流れる全体の漏洩電流Igcの近似値として演算することを特徴とする請求項10記載の漏洩電流測定方法。
【請求項1】
端子の1つ又は巻線の中点が接地された単相又は三相に結線された変圧器の二次側巻線で形成される交流電源から導出される単相又は三相の交流給電線に接続される交流/直流変換装置と、この交流/直流変換装置から導出される直流給電線と、この直流給電線に接続される直流装置及び直流/交流変換装置と、この直流/交流変換装置を経由して接続される交流装置とを備える給電システムの直流及び交流電圧印加部分と接地部分間の絶縁抵抗を介して流れる漏洩電流Igrと、上記電圧印加部分と上記接地部分間に存在する対地静電容量を介して流れる漏洩電流Igcを測定する漏洩電流測定装置において、
上記交流給電線の線間電圧を測定する電圧検出手段と、
上記交流給電線又は上記直流給電線に流れる電流のベクトル和である零相電流I0を検出する零相電流検出手段と、
上記零相電流I0から交流電流Iaoを検出する交流電流検出手段と、
上記電圧検出手段によって検出された上記線間電圧を基準電圧とし、この基準電圧と上記交流電流Iaoとの位相を比較する位相比較手段と、
上記絶縁抵抗を介して流れる漏洩電流Igrと上記対地静電容量を介して流れる漏洩電流Igcを演算する演算手段とを備え、
上記演算手段は、
上記基準電圧に対して、上記交流電流Iaoを同相の有効成分Aと、これと直角の位相差を有する無効成分Bに分離した計測値を求め、
上記線間電圧を基準電圧としたときに得られる上記交流電流Iaoの有効成分Aとこれと直角の位相差を有する無効成分Bとに基づいて、上記交流/直流変換装置と、この変換装置から導出される直流給電線及びこの直流給電線に接続される直流装置及び直流/交流変換装置と、この直流/交流変換装置を経由して接続される交流装置全体の直流正極側のみに発生する上記漏洩電流Igrの値、直流負極側のみに発生する上記漏洩電流Igrの絶対値、上記直流正極側のみに発生する上記漏洩電流Igrの値と直流負極側のみに発生する上記漏洩電流Igrの絶対値との合計値である直流正極側及び直流負極側に発生する上記漏洩電流Igrの絶対値の合計値、及び上記交流電圧及び直流電圧印加部分と接地部分間に存在する対地静電容量を介して流れる全体の漏洩電流Igcの値、交流配電線及び上記交流/直流変換装置及び上記直流/交流変換装置と上記直流/交流変換装置を経由して接続される交流装置の1相に発生する上記漏洩電流Igrの値、交流装置の2相に発生する上記漏洩電流Igrの絶対値の合計値を演算することを特徴とする漏洩電流測定装置。
【請求項2】
上記零相電流I0から交流電流Iaoを検出すると共に、上記零相電流I0をも検出可能な分流器を更に備えることを特徴とする請求項1記載の漏洩電流測定装置。
【請求項3】
上記演算手段は、交流給電線が単相で、上記交流給電線のいずれか一方が接地されているとき、上記有効成分Aの値の√3倍を、上記直流正極側に発生する漏洩電流Igrの近似値と直流負極側に発生する漏洩電流Igrの絶対値の近似値との合計値とし、上記無効成分Bの値を上記交流電圧及び直流電圧印加部分と上記接地部分との間に存在する対地静電容量を介して流れる全体の漏洩電流Igcの近似値として演算することを特徴とする請求項1記載の漏洩電流測定装置。
【請求項4】
上記単相の交流給電線が、星形に結線され、その中点が接地された変圧器の二次側巻線で形成される交流電源の中点以外の2点から導出されるとき、
上記演算手段は、上記無効成分Bの値の√7倍を、上記直流正極側に発生する漏洩電流Igrの近似値と上記直流負極側に発生する漏洩電流Igrの絶対値の近似値との合計値とし、上記有効成分Aの値を上記交流電圧及び直流電圧印加部分と接地部分間に存在する対地静電容量を介して流れる全体の漏洩電流Igcの近似値として演算することを特徴とする請求項1記載の漏洩電流測定装置。
【請求項5】
上記三相の交流給電線が、三角形に結線され、その1端子が接地された変圧器の二次側巻線で形成される交流電源から導出されるとき、
上記演算手段は、上記無効成分Bの値の√2.5倍を、上記直流正極側に発生する漏洩電流Igrの近似値と直流負極側に発生する漏洩電流Igrの絶対値の近似値との合計値とし、上記有効成分Aの値を上記交流電圧及び直流電圧印加部分と接地部分間に存在する対地静電容量を介して流れる全体の漏洩電流Igcの近似値として演算することを特徴とする請求項1記載の漏洩電流測定装置。
【請求項6】
上記三相の交流給電線が、V字形に結線され、その一方の巻線の中点が接地された変圧器の二次側巻線で形成される交流電源の中点以外の3点から導出されるとき、
上記演算出段は、上記無効成分Bの値の√7倍を、上記直流正極側に発生する上記漏洩電流Igrの近似値と直流負極側に発生する漏洩電流Igrの絶対値の近似値との合計値とし、上記有効成分Aの値を上記交流電圧及び直流電圧印加部分と接地部分間に存在する対地静電容量を介して流れる全体の漏洩電流Igcの近似値として演算することを特徴とする請求項1記載の漏洩電流測定装置。
【請求項7】
更に表示手段を備え、上記表示手段は、上記演算手段によって演算された結果を表示することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1に記載の漏洩電流測定装置。
【請求項8】
更に警報手段を備え、上記警報手段は、上記演算手段において求められる上記漏洩電流Igrの値が所定の値を超えたときに警報を発することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1に記載の漏洩電流測定装置。
【請求項9】
更に遮断手段を備え、上記遮断手段は、上記演算手段において求められる上記漏洩電流Igrの値が所定の値を超えたときに電路を遮断することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1に記載の漏洩電流測定装置。
【請求項10】
端子の1つ又は巻線の中点が接地された単相又は三相に結線された変圧器の二次側巻線で形成される交流電源から導出される単相又は三相の交流給電線に接続される交流/直流変換装置と、この交流/直流変換装置から導出される直流給電線と前記直流給電線に接続される直流装置及び直流/交流変換装置と、この直流/交流変換装置を経由して接続される交流装置とを備える給電システムの直流及び交流電圧印加部分と接地部分間の絶縁抵抗を介して流れる漏洩電流Igrと、上記電圧印加部分と上記接地部分間に存在する対地静電容量を介して流れる漏洩電流Igcを測定する漏洩電流測定方法において、
上記交流給電線の線間電圧を測定する電圧検出工程と、
上記交流給電線又は直流給電線に流れる電流のベクトル和である零相電流I0を検出する零相電流検出工程と、
上記零相電流I0から交流電流Iaoを検出する交流電流検出工程と、
上記電圧検出工程によって検出された上記線間電圧を基準電圧とし、この基準電圧と上記交流電流Iaoとの位相を比較する位相比較工程と、
上記基準電圧に対して、上記交流電流Iaoを同相の有効成分Aと、これと直角の位相差を有する無効成分Bに分離した計測値を求める工程と、
上記線間電圧を基準電圧としたときに得られる上記交流電流Iaoの有効成分Aとこれと直角の位相差を有する無効成分Bとに基づいて、上記交流/直流変換装置と、この交流/直流変換装置から導出される直流給電線及びこの直流給電線に接続される直流装置及び直流/交流変換装置と、この直流/交流変換装置を経由して接続される交流装置全体の直流正極側のみに発生する上記漏洩電流Igrの値、直流負極側のみに発生する上記漏洩電流Igrの絶対値、上記直流正極側のみに発生する上記漏洩電流Igrの値と直流負極側のみに発生する上記漏洩電流Igrの絶対値との合計値である直流正極側及び直流負極側に発生する上記漏洩電流Igrの絶対値の合計値、及び上記交流電圧及び直流電圧印加部分と接地部分間に存在する対地静電容量を介して流れる全体の漏洩電流Igcの値、交流配電線及び上記交流/直流変換装置及び上記直流/交流変換装置とこの直流/交流変換装置を経由して接続される交流装置の1相に発生する上記漏洩電流Igrの値、上記交流装置の2相に発生する上記漏洩電流Igrの絶対値の合計値を演算する演算工程と
を備えることを特徴とする漏洩電流測定方法。
【請求項11】
上記演算工程は、上記交流給電線が単相で、給電線のいずれか一方が接地されているとき、上記有効成分Aの値の√3倍を、上記直流正極側に発生する上記漏洩電流Igrの近似値と直流負極側に発生する上記漏洩電流Igrの絶対値の近似値との合計値とし、上記無効成分Bの値を上記交流電圧及び直流電圧印加部分と接地部分間に存在する対地静電容量を介して流れる全体の漏洩電流Igcの近似値として演算することを特徴とする請求項10記載の漏洩電流測定方法。
【請求項12】
上記単相の交流給電線が、星形に結線され、その中点が接地された変圧器の二次側巻線で形成される交流電源の中点以外の2点から導出されるとき、
上記演算工程において、上記無効成分Bの値の√7倍を、上記直流正極側に発生する漏洩電流Igrの近似値と上記直流負極側に発生する漏洩電流Igrの絶対値の近似値との合計値とし、上記有効成分Aの値を上記交流電圧及び直流電圧印加部分と接地部分間に存在する対地静電容量を介して流れる全体の漏洩電流Igcの近似値として演算することを特徴とする請求項10記載の漏洩電流測定方法。
【請求項13】
上記三相の交流給電線が、三角形に結線され、その1端子が接地された変圧器の二次側巻線で形成される交流電源から導出されるとき、
上記演算工程において、上記無効成分Bの値の√2.5倍を、上記直流正極側に発生する漏洩電流Igrの近似値と直流負極側に発生する漏洩電流Igrの絶対値の近似値との合計値とし、上記有効成分Aの値を上記交流電圧及び直流電圧印加部分と接地部分間に存在する対地静電容量を介して流れる全体の漏洩電流Igcの近似値として演算することを特徴とする請求項10記載の漏洩電流測定方法。
【請求項14】
上記三相の交流給電線が、V字形に結線され、その一方の巻線の中点が接地された変圧器の二次側巻線で形成される交流電源の中点以外の3点から導出されるとき、
上記演算工程において、上記無効成分Bの値の√7倍を、上記直流正極側に発生する上記漏洩電流Igrの近似値と直流負極側に発生する漏洩電流Igrの絶対値の近似値との合計値とし、上記有効成分Aの値を上記交流電圧及び直流電圧印加部分と接地部分間に存在する対地静電容量を介して流れる全体の漏洩電流Igcの近似値として演算することを特徴とする請求項10記載の漏洩電流測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−215423(P2012−215423A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79628(P2011−79628)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(309040790)パトックス.ジャパン株式会社 (8)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(309040790)パトックス.ジャパン株式会社 (8)
【Fターム(参考)】
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