説明

給電設備

【課題】低コスト、省エネルギーを実現でき、電源装置の故障による移動体停止のリスクを改善できる給電設備を提供する。
【解決手段】各スタッカークレーン14Aー14D毎に、その移動経路に沿って誘導線路41Aー41Dを設け、各誘導線路41Aー41Dへ高周波電流を供給する電源装置61,62と、電源装置61,62から供給される高周波電流を各誘導線路41Aー41Dに切換えて供給する電源制御盤63を備える。また各スタッカークレーン14Aー14D毎に、搭載した電気二重層コンデンサの充電状態を監視し、不足と判断すると給電要求信号を出力する本体コントローラを設け、前記電源制御盤63は、スタッカークレーン14Aから14Dの本体コントローラから給電要求信号が送られてきたときのみ、この給電要求信号に応じて、電源装置61,62より、このスタッカークレーン14Aー14Dが位置する誘導線路41に対して高周波電流を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一定の移動経路に沿ってそれぞれ移動する複数の移動体に対して無接触で給電し、各移動体にそれぞれ搭載され移動体の電源として使用されるバッテリあるいは電気二重層コンデンサを充電する給電設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の無接触で移動体に給電される給電設備の一例が、特許文献1に開示されている。
この特許文献1には、自動倉庫のスタッカークレーン(移動体の一例)に対して無接触で給電する給電設備が開示されており、給電設備として、高周波電源装置と、スタッカークレーンを案内する床レールに沿って敷設され前記高周波電源装置より高周波電流が常時、供給される誘導線路が備えられ、スタッカークレーンに、前記誘導線路に対向して配置され前記誘導線路より起電力が誘起される受電コイルが設けられている。
【0003】
スタッカークレーンには、前記床レールに沿ってクレーンを走行させるためのモータ、物品を支持する昇降台を昇降させるためのモータ、物品を棚に移載するフォークを駆動ためのモータ等が備えられ、前記受電コイルに誘起される起電力によりこれらモータに給電して駆動するように構成され、スタッカークレーンは前記モータ等の駆動に必要なときに誘導線路から電力を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−240811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示されている給電設備では、1台の高周波電源装置で1台のスタッカークレーンに給電しているため、高周波電源装置が故障すると給電対象のスタッカークレーンは動けなくなり物品の入出庫ができなくなり、信頼性が損なわれる恐れがあった。
【0006】
また複数の自動倉庫が配置される大規模な物品保管設備では、各自動倉庫毎に高周波電源装置が必要となるために給電設備が大きくなり、コストがかかり、電力を多く消費するという問題があった。さらに各自動倉庫の高周波電源装置に対して電源(商用電源)を供給するケーブルの敷設が、ユーザーの大きな負担になっているという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、低コスト、省エネルギーを実現でき、さらに高周波電源装置の故障による移動体停止のリスクを改善でき、信頼性を向上できる給電設備を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、一定の移動経路に沿ってそれぞれ移動する複数の移動体に対して無接触で給電し、各移動体にそれぞれ搭載され移動体の電源として使用されるバッテリあるいは電気二重層コンデンサを充電する給電設備であって、
前記各移動体毎に、または複数台の移動体毎にそれぞれ、前記移動体の移動経路に沿って敷設された誘導線路と、高周波電流を供給する電源装置と、前記電源装置から供給される高周波電流を、前記各誘導線路毎に切換えて供給する電源制御手段を備え、前記各移動体にそれぞれ、前記誘導線路に対向して配置され前記誘導線路より誘起される起電力により前記バッテリあるいは電気二重層コンデンサを充電する受電コイルと、前記バッテリあるいは電気二重層コンデンサの充電状態を監視し、前記移動体の1回当たりの移動に必要な給電容量が不足していると判断すると、給電要求信号を出力する移動体制御手段を設け、前記電源制御手段は、前記各誘導線路への前記電源装置からの給電を停止しており、前記移動体の移動体制御手段から給電要求信号を入力すると、この給電要求信号を出力した移動体が位置する誘導線路に対して、前記電源装置より高周波電流を供給することを特徴とするものである。
【0009】
上記構成によれば、通常は誘導線路には高周波電流は流れておらず、移動体の移動体制御手段から給電要求信号が出力されているときにのみ、電源制御手段はこの移動体が位置する誘導線路に電源装置より高周波電流を供給する。よって、電源装置は、通常は高周波電流を供給している必要がなく、省エネルギーが実現され、さらに給電要求信号を受け取ったときのみ給電要求信号を送った移動体が位置する誘導線路へ給電すればよいので、誘導線路の本数に比較して少ない電源装置の台数での給電が可能となり、コストが削減される。
【0010】
また請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明であって、前記電源制御手段は、一の誘導線路から他の誘導線路へ給電を切換えるとき、前記電源装置から出力される電流を遮断してから行うことを特徴とするものである。
【0011】
上記構成によれば、誘導線路の切換えは、電源装置から出力される電流を遮断した状態で行うので、誘導線路への給電に必要な電流の閉路容量を満足する主接点を有する電磁接触器を使用して誘導線路の切換えを行える。よって、回路の電流を遮断する遮断容量が小さな主接点を有する電磁接触器でも使用可能となり、コストを低減できる。なお、遮断容量は閉路容量より大きく、遮断容量が大きいほど電磁接触器の価格は高くなり、また形状も大きくなる。
【0012】
また請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明であって、複数の移動体が同一の誘導線路を共有する場合、各移動体の移動体制御手段は、給電要求信号を出力するとき、同一の誘導線路を共有する移動体の移動体制御手段が給電要求信号を出力していないことを確認することを特徴とするものである。
【0013】
上記構成によれば、同一の誘導線路から複数の移動体が同時に給電することがないように規制され、電源装置として給電容量が大きい装置を備える必要がなくなり、コストが低減され、さらに誘導線路に流れる電流が制限され、通電可能な電流が小さい誘導線路の使用が可能となる。
【0014】
また請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の発明であって、前記電源装置を複数台備え、前記電源制御手段は、前記移動体から給電要求信号が送られてくると、基本的に1台の電源装置から1本の誘導線路に給電するように切換えを行うことを特徴とするものである。
【0015】
上記構成によれば、複数台の電源装置を備えることにより、自在に複数の本数の誘導線路に対して切換えて給電でき、1台の電源装置の異常により誘導線路へ給電できなくなり、移動体が移動できなくなる恐れが回避され、信頼性が向上する。また基本的に1台の電源装置から1本の誘導線路に給電することにより、1台の電源装置の給電容量を、全ての誘導線路が必要とする給電容量とする必要がなくなり、各電源装置の給電容量を減らすことが可能となる。
【0016】
また請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明であって、前記電源装置の台数は、電源装置の給電容量にこの台数を乗算して求められる設備の給電容量が、各移動体の1回当たりの移動に必要な給電容量に、移動体の台数および移動体の稼働率を乗算して求められる移動体群が必要な給電容量より大きくなるように設定されることを特徴とするものである。
【0017】
上記構成によれば、電源装置の台数は、移動体の台数だけでなく、移動体の稼動率により設定され、稼動率が低い場合には、電源装置の台数を減らすことが可能となり、適正な台数の電源装置を配備できる。
【0018】
また請求項6に記載の発明は、請求項4または請求項5に記載の発明であって、前記複数台の電源装置は、隣接して配置されていることを特徴とするものである。
上記構成によれば、複数台の電源装置は隣接して配置され、よって各電源装置を商用電源に接続するケーブルの敷設距離が短くて済み、ケーブルの引き回しに伴う工事が楽になり、コストを削減できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の給電設備は、通常は高周波電流を供給している必要がなく、省エネルギーを実現でき、さらに給電要求信号を受け取ったときのみ給電要求信号を送った移動体が位置する誘導線路へ給電すればよいので、誘導線路の本数に比較して少ない電源装置の台数での給電も可能となり、コストを削減できる、という効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態における給電設備を備えた自動倉庫からなる物品保管設備の平面図である。
【図2】同物品保管設備の要部側面図である。
【図3】同物品保管設備のスタッカークレーンの回路構成図である。
【図4】同物品保管設備の給電回路の構成図である。
【図5】本発明の他の実施の形態における給電設備の構成を示す図であり、(a)は電源制御盤の配置を変更したときの構成を示す図、(b)は誘導線路を2台のスタッカークレーンで共有したときの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の実施の形態における給電設備を備えた複数組(図では2組)の自動倉庫からなる物品保管設備の平面図、図2は同物品保管設備の要部側面図である。
【0022】
図1および図2に示すように、物品保管設備を構成する2組の自動倉庫11A,11Bはそれぞれ、外周および上部がカバー(パネル)10で覆われており、自動倉庫11A,11Bにはそれぞれ、物品出し入れ方向が互いに対向するように間隔を隔てて設置した2基の収納棚12A,12Bが設けられている。
【0023】
また第1自動倉庫11Aには、2基の収納棚12A,12B間に形成した作業通路13を自動走行する第1スタッカークレーン(移動体の一例)14Aと第2スタッカークレーン(移動体の一例)14Bとが設けられ、第2自動倉庫11Bには、前記作業通路13を自動走行する第3スタッカークレーン(移動体の一例)14Cと第4スタッカークレーン(移動体の一例)14Dとが設けられている。
【0024】
また各収納棚12A,12Bには物品15を収納する多数の物品収納部16が上下多段かつ左右に並設され、これら多数の物品収納部16のうち最も下段に位置する物品収納部16に対向するように、カバー10に物品15の搬入出口17が形成されている。前記最も下段に位置する物品収納部16は、外方から物品15を受け渡しできる荷受台を兼ねており、物品15の入出庫は、搬入出口17と、荷受台を兼ねた最下段の物品収納部16を介して、自動倉庫11A,11Bの外周の一定経路18を走行する自動搬送台車19により行われる。この自動搬送台車19には、物品15の移載に必要なフォーク装置(図示せず)が備えられている。
【0025】
また前記各作業通路13には、収納棚12A,12Bの長手方向に沿って2台のスタッカークレーン14A,14Bまたは14C,14Dが走行する走行レール(軌道;同一の移動経路の一例)20が設置されている。
【0026】
また第1自動倉庫11Aの作業通路13の一方の端部には、第1スタッカークレーン14Aに入出庫指令を入力する地上コントローラ(制御手段の一例)21Aと操作パネル(入力手段)22Aと後述する第2光送受信器37(図3)を備えた第1地上制御盤23Aが設けられ、第1自動倉庫11Aの作業通路13の他方の端部には、第2スタッカークレーン14Bに入出庫指令を入力する地上コントローラ(制御手段の一例)21Bと操作パネル(入力手段)22Bと第2光送受信器37(図3)を備えた第2地上制御盤23Bが設けられている。
【0027】
同様に、第2自動倉庫11Bの作業通路13の一方の端部には、第3スタッカークレーン14Cに入出庫指令を入力する地上コントローラ(制御手段の一例)21Cと操作パネル(入力手段)22Cと第2光送受信器37(図3)を備えた第3地上制御盤23Cが設けられ、第2自動倉庫11Bの作業通路13の他方の端部には、第4スタッカークレーン14Dに入出庫指令を入力する地上コントローラ(制御手段の一例)21Dと操作パネル(入力手段)22Dと第2光送受信器37(図3)を備えた第2地上制御盤23Dが設けられている。
【0028】
前記各スタッカークレーン14(14A,14B,14C,14D)はそれぞれ、走行レール20に沿って走行する走行車体25に、昇降台(昇降体)26と、その昇降台26を昇降操作自在に案内支持する前後一対の昇降マスト(走行車体に垂設された柱体)27とを設けて構成され、昇降台26には物品移載用のフォーク装置(物品の受け渡し手段)28が設けられている。また各自動倉庫11A,11Bの天井部には、走行レール20に沿ってガイドレール29が敷設され、上記一対の昇降マスト27の上端部には、これら上端部を連結するとともに、前記ガイドレール29を左右から挟み込んで、スタッカークレーン14の走行に伴ってスタッカークレーン14の上部位置を規制する上部フレーム30が設けられている。
【0029】
また走行車体25上には、図3に示す、昇降台26を駆動昇降させるための昇降用電動モータ31と、走行車体25を走行駆動させるための走行用電動モータ32と、フォーク装置28を出退駆動させるためのフォーク用モータ33が設けられ、さらに走行車体25上には、昇降マスト27の外方位置に、コンピュータからなる本体コントローラ34(移動体制御手段の一例)を内蔵した本体制御盤35が設けられており、走行車体25の側面には、各地上コントローラ21(21A,21B,21C,21D)とのデータの送受信を行う第1光送受信器36が設けられている。
【0030】
また各地上コントローラ21の近傍にはそれぞれ、前記第1光送受信器36に対向して第2光送受信器37(図3)が設けられ、これら第2光送受信器37はそれぞれ各地上コントローラ21に接続されている。
【0031】
また本体制御盤35内には、後述する電源ライン52が設けられ、電源ライン52から給電される、走行用電動モータ32およびフォーク用モータ33を駆動する第1インバータ38、昇降用電動モータ31を駆動する第2インバータ39、および本体コントローラ34へ制御電源を給電する制御電源装置40が設けられている。
【0032】
各スタッカークレーン14の本体コントローラ34はそれぞれ、地上コントローラ21から光送受信器36,37を介して搬送指令(入出庫の作業データ)を受けて、第2インバータ39ヘ指令して昇降用電動モータ31を駆動して昇降台26を指定された昇降位置に昇降させ、第1インバータ38へ指令して走行用電動モータ32を駆動して走行車体25を指定された走行位置に移動させ、フォーク用モータ33を駆動してフォーク装置28を駆動して物品15を移載させることにより、物品15の搬送並びに各物品収納部16との間の物品15の移載を行っている。
【0033】
また第1自動倉庫11Aには、給電設備として、走行レール20に沿って第1スタッカークレーン14Aに給電するための第1誘導線路41Aが敷設され、また走行レール20に沿って第2スタッカークレーン14Bに給電するための第2誘導線路41Bが敷設され、また第2自動倉庫11Bには、給電設備として、走行レール20に沿って第3スタッカークレーン14Cに給電するための第3誘導線路41Cが敷設され、また走行レール20に沿って第4スタッカークレーン14Dに給電するための第4誘導線路41Dが敷設されている。これら各誘導線路41(41A,41B,41C,41D)には、高周波電流が供給される(詳細は後述する)。
【0034】
また各スタッカークレーン14(14A,14B,14C,14D)にはそれぞれ、図3に示すように、誘導受電回路42が設けられている。
この誘導受電回路42は、誘導線路41に対向して配置され前記誘導線路41より起電力が誘起される受電コイル43と、この受電コイル43と並列に、この受電コイル43と誘導線路41の周波数に共振する共振回路を形成する共振コンデンサ44と、この共振コンデンサ44に接続される整流・平滑回路45と、整流・平滑回路45に接続される安定化電源回路46とから構成されている。前記安定化電源回路46は、誘導受電回路42の出力電圧を一定の電圧幅の電圧(例えば、295V〜305Vの電圧)に維持する機能と、本体コントローラ34からの給電停止信号(後述する)に応じて、受電を停止する機能(例えば、整流・平滑回路45の両端を短絡する機能)を有している。
【0035】
また各スタッカークレーン14にはそれぞれ、誘導受電回路42からの安定化電源回路46よりダイオード47を介して充電される、すなわち受電コイル43に誘導線路41より誘起される起電力により充電される直流電源装置として機能するキャパシタバンク51が設けられ、このキャパシタバンク51から給電される上記電源ライン52が設けられている。上述したように、この電源ライン52に、上記第1インバータ38、第2インバータ39、および制御電源装置40が並列に接続されている。また前記キャパシタバンク51は、直列接続されたM個(Mは2以上の整数)の電気二重層コンデンサから構成されている。
【0036】
また電源ライン52に、キャパシタバンク51の両端電圧(電源ライン52の電圧)を検出する電圧センサ(電圧検出手段の一例)53が設けられている。
本体コントローラ34は、通常、安定化電源回路46へ給電停止信号を出力して受電を停止し、キャパシタバンク51への充電を停止しており、電圧センサ53により検出されるキャパシタバンク51の両端電圧によりキャパシタバンク51の充電状態を監視し、電圧が下がって、スタッカークレーン14の1回当たりの物品15の搬送に必要な給電容量が不足しているかどうかを判断している。そして、不足していると判断すると、すなわち物品15の搬送のために再充電をしなければならないとなると判断すると、上記光送受信器36,37を介して地上コントローラ21へ給電要求信号を出力し(給電要求信号をONとし)、上記安定化電源回路46へ出力していた給電停止信号を解除し(OFFとし)、給電容量不足が解消すると、給電要求信号を停止し(給電要求信号をOFFとし)、上記給電停止信号を安定化電源回路46へ出力し(ONとし)、充電を終了する。
【0037】
各地上コントローラ21は、入力した給電要求信号を後述する電源制御盤63へ転送する。なお、スタッカークレーン14の1回当たりの物品15の搬送に必要な給電容量は、走行車体25の走行に必要な給電容量、昇降台26の昇降に必要な給電容量、フォーク装置28の出退に必要な給電容量を加算し、さらに制御電源装置40で常に消費されている容量を加算したものである。
【0038】
また自動倉庫11A,11Bの外方には、図1および図3に示すように、高周波電流を供給する電源装置として第1電源装置61と第2電源装置62が隣接して配置され、これら2台の電源装置61,62から供給される高周波電流を、各自動倉庫11A,11Bにそれぞれ敷設された誘導線路41(41A,41B,41C,41D)に切換えて供給する電源制御盤(電源制御手段の一例)63が配置されている。また2台の電源装置61,62はそれぞれ、ケーブル64により商用電源に接続されて給電され、また後述する給電停止信号により高周波電流の出力を遮断する(停止する)機能を有している。
【0039】
なお、上記電源装置の台数は、電源装置の給電容量にこの台数を乗算して求められる設備の給電容量が、各スタッカークレーン14の1回当たりの物品15の搬送に必要な給電容量に、その台数(実施の形態では4台)およびスタッカークレーン14の稼働率を乗算して求められるスタッカークレーン14群が必要とする給電容量より大きくなるように設定されている。実施の形態では、4台のスタッカークレーン14に対して2台の電源装置61,62で十分であるとしている。
【0040】
電源制御盤63には、図4に示すように、第1電源装置61から高周波電流が供給される第1交流ライン65と、第2電源装置62から高周波電流が供給される第2交流ライン66と、各自動倉庫11A,11Bの地上制御盤23(23A,23B,23C,23D)から給電要求信号が入力される制御装置(電源制御手段の一例)67と、この制御装置67により駆動される(操作コイルが励磁される)、8台の電磁接触器MC11,MC12,MC21,MC22,MC31,MC32,MC41,MC42が設けられている。
【0041】
そして、電源制御盤63内において、第1自動倉庫11Aの第1誘導線路41Aは、第1交流ライン65と電磁接触器MC11の主接点(供給電流の投入・遮断を行う接点)により接続され、第2交流ライン66と電磁接触器MC12の主接点により接続される。また第1自動倉庫11Aの第2誘導線路41Bは、第1交流ライン65と電磁接触器MC21の主接点により接続され、第2交流ライン66と電磁接触器MC22の主接点により接続される。また第2自動倉庫11Bの第3誘導線路41Cは、第1交流ライン65と電磁接触器MC31の主接点により接続され、第2交流ライン66と電磁接触器MC32の主接点により接続される。また第2自動倉庫11Bの第4誘導線路41Dは、第1交流ライン65と電磁接触器MC41の主接点により接続され、第2交流ライン66と電磁接触器MC42の主接点により接続される。
【0042】
制御装置67は、次の機能を有している。
a.「通常時」
通常、各自動倉庫11A,11Bの各誘導線路41への給電を停止している。すなわち、各電磁接触器MC(MC11,MC12,MC21,MC22,MC31,MC32,MC41,MC42)の操作コイルを無励磁として、各電磁接触器MCの主接点を開放している。
【0043】
b.「高周波電流の供給」
各スタッカークレーン14から地上制御盤23を介して給電要求信号を入力すると、基本的に1台の電源装置61または62から1つの誘導線路41に給電するように電磁接触器MCを選択する。すなわち、誘導線路41へ給電していない交流ライン65または66を選択し、この選択した交流ライン65または66と、給電要求信号を出力したスタッカークレーン14が位置する誘導線路41とを接続する電磁接触器MCを選択する。また交流ライン65および66ともに給電していた場合は、いずれかを選択する。なお、その選択は誘導線路41を2本まで許容する。
【0044】
そして、選択した電磁接触器MCを励磁して主接点を閉じ、給電要求信号を出力したスタッカークレーン14が位置する誘導線路41に対して、選択した交流ライン65または66、電磁接触器MCの主接点を介して電源装置61または62より高周波電流を供給する。
【0045】
c.「高周波電流の遮断」
給電要求信号がオフとなると、給電要求信号を出力していたスタッカークレーン14が位置する誘導線路41に対する高周波電流の供給を停止するが、投入していた電磁接触器MCの主接点を開放する前に、主接点が接続されていた交流ライン65または66へ給電していた電源装置61または62を停止する。すなわち、給電停止信号を電源装置61または62へ出力し、電源装置61または62から出力される電流を遮断する。その後、前記電磁接触器MC(操作コイル)を無励磁として主接点を開放し、開放した後、給電停止信号を解除して(OFFとして)、交流ライン65または66への電流の供給を再開する。上記電源装置61または62から出力される電流の遮断は、1つの交流ライン65または66から、複数(本実施の形態では2)の誘導線路41へ給電しているときも実行される。
【0046】
d.「高周波電流の切換え」
オンの給電要求信号とオフの給電要求信号を同時に入力すると、すなわち一の誘導線路41から他の誘導線路41への給電の切換えが発生すると、まず上記「高周波電流の遮断」を実行し、すなわち電源装置61または62から出力される電流を遮断し、給電していた電磁接触器MCの主接点を開放し、電源装置61または62からの高周波電流の供給を再開し、その後に、上記「高周波電流の供給」を実行し、電磁接触器MCの主接点を投入する。
【0047】
このように制御装置67は、通常は各自動倉庫11A,11Bの各誘導線路41への給電を停止しており、給電要求信号を入力しているときのみ、給電要求信号を出力したスタッカークレーン14が位置する誘導線路41を接続する電磁接触器MCを駆動して高周波電流を供給し、また一の誘導線路41から他の誘導線路41への給電の切換えを、電源装置61または62から出力される電流を遮断してから行っている。
【0048】
上記給電設備の構成による給電方法を説明する。
「スタッカークレーン側」
通常は、本体コントローラ34は、安定化電源回路46へ給電停止信号ヘ出力して(ONとして)キャパシタバンク51への充電は行っておらず、キャパシタバンク51に蓄積された電力でスタッカークレーン14の物品15の搬送動作を行っている。
【0049】
また本体コントローラ34は、1回の物品15の搬送が終了すると、電圧センサ53により検出されるキャパシタバンク51の両端電圧を確認し、キャパシタバンク51に次の動作に必要な「スタッカークレーン14の1回当たりの物品15の搬送に必要な給電容量」が残っているかどうかを確認し、不足と判断すると、給電要求信号を出力する。スタッカークレーン14側が、給電の有無の主導権を持っている。
【0050】
続いて、安定化電源回路46へ出力していた給電停止信号を解除して(OFFして)、キャパシタバンク51への充電開始を指令する。
続いて電圧センサ53により検出されるキャパシタバンク51の両端電圧を確認し、給電容量不足が解消すると、給電要求信号を停止し(給電要求信号をOFFとし)、上記給電停止信号を安定化電源回路46へ出力し(ONとし)、充電を終了する。
【0051】
「電源制御盤側」
通常は、誘導線路41に給電してなく、制御装置67は、スタッカークレーン14から給電要求信号を入力すると、給電要求信号を出力したスタッカークレーン14が位置する誘導線路41を接続する電磁接触器MCを選択し、選択した電磁接触器MCの操作コイルを励磁して、給電要求信号を出力したスタッカークレーン14が位置する誘導線路41に対して、選択した交流ライン65または66、電磁接触器MCの主接点を介して電源装置61または62より高周波電流を供給する。
【0052】
またスタッカークレーン14から入力していた給電要求信号がオフとなると、投入している電磁接触器MCが接続されている電源装置61(交流ライン65)または電源装置62(交流ライン66)へ給電停止信号を出力し、電流の供給を遮断し、その後、投入している電磁接触器MCを無励磁(OFF)とし、主接点を開放する。その後、前記給電停止信号を解除して電源装置61または62からの電流の供給を再開する。
【0053】
以上のように、本実施の形態によれば、通常は誘導線路41に高周波電流を供給している必要がなく、省エネルギーを実現でき、さらに給電要求信号を受け取ったときのみ給電要求信号を送ったスタッカークレーン14が位置する誘導線路41へ給電すればよいので、誘導線路41の4本に比較して少ない2台の電源装置61,62での給電が可能となり、コストを削減できる。
【0054】
また本実施の形態によれば、誘導線路41の切換えは、電源装置61,62から出力される電流を遮断した状態で行うので、給電に必要な電流の閉路容量を満足する主接点を有する電磁接触器MCを使用して誘導線路41の切換えを行うことができ、よって主接点の遮断容量が小さな電磁接触器MCでも使用可能となり、コストを低減できる。なお、遮断容量は閉路容量より大きく、遮断容量が大きい主接点を有するほど電磁接触器MCの価格は高くなり、形状も大きくなる。
【0055】
また本実施の形態によれば、2台の電源装置61,62から、自在に4本の誘導線路41A,41Bに対して切換えて給電でき、1台の電源装置61または62の異常により誘導線路へ給電できなくなり、スタッカークレーン14A,14Bが移動できなくなる恐れを回避でき、信頼性を向上することができる。また基本的に1台の電源装置61または62から1つの誘導線路41に給電するように切換えを行うことにより、1台の電源装置61,62の給電容量を、全ての誘導線路41が必要とする給電容量とする必要がなくなり、電源装置61,62として給電容量が大きい装置を装備する必要がなくなり、コストを低減できる。
【0056】
また本実施の形態によれば、電源装置の台数は、スタッカークレーン14の台数だけでなく、スタッカークレーン14の稼動率により設定され、稼動率が低い場合には、電源装置の台数を減らすことが可能となり、適正な台数の電源装置を配備することができる。
【0057】
また本実施の形態によれば、複数台の電源装置61,62は隣接して配置されることによって、各電源装置61,62ヘ商用電源を供給するケーブル64の敷設距離が短くて済み、ケーブルの引き回しに伴う工事が楽になり、コストを削減できる。
【0058】
なお、本実施の形態では、電源装置61,62と電源制御盤63を、作業通路13の一方の端部側にまとめて配置しているが、このように電源装置61,62と電源制御盤63をまとめて配置できないとき、図5(a)に示すように、作業通路13の両端部にそれぞれ分離して配置するようにしてもよい。図5(a)では電源装置61と電源制御盤63Aを一方の端部側に、電源装置62と電源制御盤63Bを他方の端部側に配置している。各電源制御盤63A,63Bはそれぞれ各誘導線路41へ給電できるが、同一の誘導線路41へ給電しないようにインターロックをとる必要がある。
【0059】
また本実施の形態では、各スタッカークレーン14に対してそれぞれ誘導線路41が敷設されているが、図5(b)に示すように、自動倉庫11A,11B毎に、複数台(図では2台)のスタッカークレーン14が同一の誘導線路41(41E,41F)を共有するようにすることもできる。すなわち、複数台のスタッカークレーン14毎にそれぞれ、スタッカークレーン14の移動経路に沿って誘導線路41を敷設することもできる。このとき、同一の誘導線路41を共有するスタッカークレーン14(走行車体25)にそれぞれ、対向して光送受信器71を配置し、これら光送受信器71を介して各スタッカークレーン14の本体コントローラ34は、給電要求信号を出力するとき、同一の誘導線路41を共有するスタッカークレーン14の本体コントローラ34に対して給電要求信号を出力しているかどうかを確認し、給電要求信号を出力していないことを確認する。これにより、同一の誘導線路41を共有するスタッカークレーン14ヘ同時に給電することがないように規制することができ、よって電源装置61または62として給電容量が大きい電源装置を備える必要がなくなり、コストを低減でき、さらに各誘導線路41に流れる電流を制限でき、通電できる電流が小さい誘導線路41の使用を可能とすることができる。
【0060】
また上記のように、複数台(図では2台)のスタッカークレーン14が同一の誘導線路41を共有するとき、同一の誘導線路41を共有する各スタッカークレーン14の本体コントローラ34は互いにインターロックをとるようにしているが、スタッカークレーン14側でインターロックをとるのではなく、電源制御盤63の制御装置67において同一の誘導線路41から複数台のスタッカークレーン14が同時に給電することがないように規制することもできる。すなわち、電源制御盤63は、一のスタッカークレーン14の本体コントローラ34から給電要求信号を入力すると、同一の誘導線路41を共有する他のスタッカークレーン14の本体コントローラ34から給電要求信号を入力しているかどうかを確認し、入力していると、前記一のスタッカークレーン14の本体コントローラ34に対して受電禁止信号を出力し、他のスタッカークレーン14の受電が終了すると、受電許可信号を出力する。本体コントローラ34は、受電禁止信号を入力すると、安定化電源回路46へ出力していた給電停止信号をそのまま解除せずに、充電開始を中止し、受電許可信号を入力すると、給電停止信号を解除して充電を開始するように構成する。
【0061】
また図5(b)に示す構成では、電源装置61,62と電源制御盤63を、作業通路13の一方の端部側にまとめて配置しているが、このように電源装置61,62と電源制御盤63をまとめて配置できないとき、図5(a)に示すように、作業通路13の両端部にそれぞれ分離して配置するようにしてもよいことは勿論である。
【0062】
また本実施の形態では、電源制御盤63の制御装置67は、給電停止信号を、スタッカークレーン14から給電要求信号を入力したときのみ、電源装置61,62へ出力しているが、交流ライン65または66から誘導線路41への給電がないときは、給電のない交流ライン65または66へ給電している電源装置61または62に対して、給電停止信号を出力するようにしてもよい。これにより交流ライン65または66において消費される電力を削減できる。
【0063】
また本実施の形態では、誘導線路から無接触で給電される移動体をスタッカークレーン14としているが、スタッカークレーン14に限ることはなく、移動体は、例えば、一定の移動経路に沿って走行する自走搬送台車であってもよい。
【0064】
また本実施の形態では、電源装置として、第1電源装置61と第2電源装置62の2台を備えているが、給電要求信号を受け取ったときのみ誘導線路41へ給電すればよいことから、スタッカークレーン14の稼動率が低い場合は、電源装置を1台とすることも可能である。
【0065】
また本実施の形態では、スタッカークレーン14の直流電源装置としてキャパシタバンク51を備えているが、キャパシタバンク51に代えて、バッテリを備えるようにしてもよい。
【0066】
また本実施の形態では、電源制御盤63内において、誘導線路41と交流ライン65または66とを接続するために電磁接触器MCを使用しているが、大電流を通電可能な絶縁ゲートバイポーラトランジスタを使用することも可能である。
【符号の説明】
【0067】
11A,11B 自動倉庫
14(14A,14B,14C,14D) スタッカークレーン
15 物品
21(21A,21B,21C,21D) コントローラ
22(22A,22B,22C,22D) 操作パネル
23(23A,23B,23C,23D) 地上制御盤
34 本体コントローラ
41(41A,41B,41C,41D,41E,41F) 誘導線路
42 誘導受電回路
43 受電コイル
51 キャパシタバンク
52 電源ライン
53 電圧センサ
61,62 電源装置
63 電源制御盤
64 ケーブル
65,66 交流ライン
67 制御装置
MC(MC11,MC12,MC21,MC22,MC31,MC32,MC41,MC42) 電磁接触器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の移動経路に沿ってそれぞれ移動する複数の移動体に対して無接触で給電し、各移動体にそれぞれ搭載され移動体の電源として使用されるバッテリあるいは電気二重層コンデンサを充電する給電設備であって、
前記各移動体毎に、または複数台の移動体毎にそれぞれ、前記移動体の移動経路に沿って敷設された誘導線路と、
高周波電流を供給する電源装置と、
前記電源装置から供給される高周波電流を、前記各誘導線路毎に切換えて供給する電源制御手段
を備え、
前記各移動体にそれぞれ、
前記誘導線路に対向して配置され前記誘導線路より誘起される起電力により前記バッテリあるいは電気二重層コンデンサを充電する受電コイルと、
前記バッテリあるいは電気二重層コンデンサの充電状態を監視し、前記移動体の1回当たりの移動に必要な給電容量が不足していると判断すると、給電要求信号を出力する移動体制御手段
を設け、
前記電源制御手段は、前記各誘導線路への前記電源装置からの給電を停止しており、前記移動体の移動体制御手段から給電要求信号を入力すると、この給電要求信号を出力した移動体が位置する誘導線路に対して、前記電源装置より高周波電流を供給すること
を特徴とする給電設備。
【請求項2】
前記電源制御手段は、一の誘導線路から他の誘導線路への給電の切換えを、前記電源装置から出力される電流を遮断してから行うこと
を特徴とする請求項1に記載の給電設備。
【請求項3】
複数の前記移動体が同一の前記誘導線路を共有する場合、各移動体の移動体制御手段は、給電要求信号を出力するとき、同一の誘導線路を共有する移動体の移動体制御手段が給電要求信号を出力していないことを確認すること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の給電設備。
【請求項4】
前記電源装置を複数台備え、
前記電源制御手段は、前記移動体から給電要求信号を入力すると、基本的に1台の電源装置から1つの誘導線路に給電するように切換えを行うこと
を特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の給電設備。
【請求項5】
前記電源装置の台数は、電源装置の給電容量にこの台数を乗算して求められる設備の給電容量が、各移動体の1回当たりの移動に必要な給電容量に、移動体の台数および移動体の稼働率を乗算して求められる移動体群が必要とする給電容量より大きくなるように設定されること
を特徴とする請求項4に記載の給電設備。
【請求項6】
前記複数台の電源装置は、隣接して配置されていること
を特徴とする請求項4または請求項5に記載の給電設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−6228(P2011−6228A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−153119(P2009−153119)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(000003643)株式会社ダイフク (1,209)
【Fターム(参考)】