説明

絶縁性高分子材料組成物および碍子

【課題】作業性を悪化させることなく、高電圧機器等の高分子製品において良好な機械的物性,電気的物性を得ると共に、十分な生分解性で地球環境保全に貢献する。
【解決手段】エポキシ化亜麻仁油(例えば、100phr)に対し硬化剤としてフェノール樹脂(例えば、40〜80phr)を添加して混練し、その混練物を熱処理し三次元架橋させて絶縁性高分子材料組成物を得る。この絶縁性高分子材料組成物を、碍子等の高分子製品に適用する。必要に応じて、前記のエポキシ化亜麻仁油,フェノール樹脂の他に、例えば、硬化促進剤としてイミダゾール類を用いたり、各種添加剤を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁性高分子材料組成物および碍子に関するものであって、例えば筐体内に遮断器や断路器等の開閉機器を備えた高電圧機器の絶縁構成に用いられるものである。
【背景技術】
【0002】
例えば筐体内に遮断器や断路器等の開閉機器を備えた電圧機器(高電圧機器等)の絶縁構成(例えば、絶縁性を要する部位)に適用(例えば、屋外に直接暴露して適用)される材料として、石油由来の熱硬化性樹脂(石油を出発物質とした樹脂;エポキシ樹脂等)を主成分とした高分子材料を硬化して成る組成物、例えば高分子材料を注型して成る組成物により構成された製品(モールド注型品;以下、高分子製品と称する)が、従来から広く知られている。
【0003】
社会の高度化・集中化に伴って高電圧機器等の大容量化,小型化や高い信頼性(例えば、機械的物性(絶縁破壊電界特性等),電気的物性)等が強く要求されると共に、前記の高分子製品に対しても種々の特性の向上が要求されてきた。
【0004】
一般的には、高分子材料の主成分として例えばガラス転移点(以下、Tgと称する)100℃以上の耐熱性エポキシ樹脂や比較的に機械的物性(強度等)の高いビスフェノールA型のエポキシ樹脂を用いた高分子製品が知られているが、前記の高分子製品を処分(例えば、寿命,故障等の理由で処分)する場合を考慮して、生分解性を有する高分子材料から成る高分子製品の開発が試みられている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2002−358829号公報。
【0005】
なお、種々の技術分野において、植物由来の高分子材料を硬化して成る組成物を適用(例えば印刷配線ボードに適用)する試みが行われ(例えば、特許文献2)、例えば室温雰囲気下で使用した場合には十分な機械的物性が得られることが知られているが、その組成物はアルデヒド類を硬化剤として用いたものであり、高温雰囲気下では機械的物性が低くなるため高電圧機器には適用されていなかった。
【特許文献2】特開2002−53699号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のように、高分子材料の主成分としてガラス転移点(以下、Tgと称する)100℃以上の耐熱性エポキシ樹脂等を用いて成る高分子製品は、硬く脆弱であり、温度変化が激しい環境下で使用した場合にはクラックが発生し易い恐れがある。このため、例えば高分子材料の主成分として固形エポキシ樹脂(例えば、金属導体を用いた耐クラック性試験の結果が−30℃以下のもの)を用いたり、該高分子材料に多量の充填材を添加して耐クラック性等を向上させる試みが行われているが、その高分子材料の粘度が著しく高くなってしまい、例えば注型作業等において十分なポットライフ(工業的な作業に必要な最低限の時間)を確保できず、作業性が悪化する恐れがある。
【0007】
また、前記のビスフェノールA型のエポキシ樹脂は、機械的物性が高い特性を有することから工業製品として広く使用されているが、そのビスフェノールA自体は環境ホルモンとして有害性を有するものとみなされ、環境性の観点から懸念され始めている。高分子製品のように硬化された組成物中であれば、その組成物中からビスフェノールAが漏出することは殆どなく有害性はないとの報告もあるが、極めて微量(例えば、ppmレベル、またはそれ以下の量)であっても有害性を有する物質であることから、たとえ前記のように組成物中であっても該組成物中に未反応のビスフェノールA(低分子量成分)が存在する場合には、そのビスフェノールAが気中に漏洩してしまう可能性があり、懸念されている。
【0008】
例えば、高分子製品の製造施設において、ビスフェノールA型エポキシ樹脂と種々の添加剤等とを合成する工程や、その合成工程後の高分子材料を注型する工程等の限定された環境下では、高濃度のビスフェノールA雰囲気下になる恐れがある。たとえ前記製造設備の各工程において完全無人化(高分子製品の製造ラインの無人化)を図っても、それら各工程において換気設備(使用環境における空気を浄化するための設備)を要することとなるため(すなわち、従来では想定しなかった換気設備を要するため)、その製品コストの増加を招く恐れがある。
【0009】
前記の高分子製品を処分(例えば、寿命,故障等の理由で処分)する場合については、種々の処理方法を適用することが可能であるが、それぞれ以下に示す問題点がある。
【0010】
石油由来の物質(例えば、エポキシ樹脂等)を主成分とする高分子材料から成る高分子製品の場合、焼却処理する方法を適用すると種々の有害物質や二酸化炭素を大量に排出し、環境汚染,地球温暖化等の問題を引き起こす恐れがある点で懸念されていた。一方、前記の高分子製品を単に埋立て処理する方法を適用することもできるが、その埋立て処理に係る最終処分場は年々減少している傾向である。この最終処分場の残余年数に関して、旧・厚生省では平成20年頃と試算している。また、旧・経済企画庁では、前記の旧・厚生省の試算に基づいて、平成20年頃に廃棄物処理費用が高騰し、経済成長率が押し下げられると予測している。
【0011】
なお、前記の高分子製品を回収し再利用(リサイクル)する試みもあるが、その再利用方法は確立されておらず殆ど行われていない。例外的に、品質が比較的均一な部材(高分子製品に用いられているPEケーブル被覆部材)のみを回収しサーマルエネルギーとして利用されているが、このサーマルエネルギーは燃焼処理工程を要するため、前記のように環境汚染,地球温暖化等の問題を招く恐れがある。
【0012】
一方、生分解性を有する高分子材料から成る高分子製品の場合は、例えば温度100℃以上の雰囲気下で使用すると溶融してしまう恐れがある。また、生物由来の架橋組成物から成る高分子製品の場合は、アルデヒド類を硬化物として用いるため、常温程度の温度雰囲気下(例えば、印刷配線ボードにおける温度環境)では高い機械的物性を有するものの、高温雰囲気下(例えば、高電圧機器等の使用環境)では十分な機械的物性が得られない恐れがある。
【0013】
以上示したようなことから、高分子製品の特性(機械的物性,電気的特性等)を良好に維持すると共に、その高分子製品の処分に係る諸問題の改善が求められている。
【0014】
本発明は、前記課題に基づいて成されたものであり、作業性を悪化させることなく、高電圧機器等の高分子製品において良好な機械的物性,電気的物性を付与できると共に、十分な生分解性を有し環境性に優れた絶縁性高分子材料組成物および碍子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、前記の課題の解決を図るためのものであって、請求項1記載の発明は、電圧機器の絶縁構成に用いられるものであって、エポキシ化亜麻仁油,フェノール樹脂を含んだ混練物から成り、前記の混練物を熱処理により三次元架橋したことを特徴とする。
【0016】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記の混練物はイミダゾール類を含んだことを特徴とする。
【0017】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記のフェノール樹脂は、前記のエポキシ化亜麻仁油100phrに対し40〜80phr用いたことを特徴とする。
【0018】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3記載の発明のいずれかの絶縁性高分子材料組成物と金属インサートとから成る碍子であることを特徴とする。
【0019】
請求項1記載の発明では、例えば多量の充填剤等(例えば従来の高分子製品のように大量の充填剤等)を用いなくとも、各材料の混練物が熱処理によって三次元架橋される。
【0020】
請求項2記載の発明では、イミダゾール類がフェノール樹脂における硬化の起点となる。
【0021】
請求項4記載の発明では、絶縁性高分子材料組成物の線膨張率と金属インサートの線膨張率との差が小さくなる(例えば従来の高分子製品等と比較して小さくなる)。
【発明の効果】
【0022】
以上、本発明によれば、作業性を悪化させることなく(例えば、十分なポットライフを確保)、高電圧機器等の高分子製品として良好な機械的物性,電気的物性が得られると共に、十分な生分解性(例えば、土中に埋立て処理した場合の生分解性)を有し地球環境保全に貢献することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態における絶縁性高分子材料組成物を詳細に説明する。
【0024】
本実施の形態は、例えば高分子製品の絶縁性を要する部位に適用される絶縁性高分子材料組成物において、エポキシ樹脂等の石油由来の高分子材料を用いる替わりに、天然由来であって三次元架橋する高分子材料(すなわち、天然材料を基材(出発物質)とする高分子材料)を用いるものである。
【0025】
すなわち、前記のような高分子材料であれば、作業性を悪化させることなく十分良好な電気的物性,機械的物性が得られ高電圧機器に適用できると共に、その高分子材料自体はカーボンニュートラルであるため、該高分子材料から成る組成物(高分子製品等)を焼却処理しても、有害物質(例えば、環境ホルモン等)や二酸化炭素等の排出を防止または抑制でき、例えば土中に埋めた場合には生分解できることに着目したものである。天然由来の高分子材料から成る組成物において、印刷配線ボードに適用した例は知られているが、高電圧機器等の高分子製品に適用した例はなかった。
【0026】
具体的には、前記のように天然由来であって三次元架橋する高分子材料としてエポキシ化亜麻仁油を用いたものである。従来、エポキシ化亜麻仁油は、例えばエポキシ化大豆油と同様に塩化ビニル樹脂における安定剤として広く使用されてきたが、一般的な工業用エポキシ樹脂と比較すると反応性が乏しく硬化に長時間を要し、Tg特性や機械的物性が低いことから、高電圧機器の高分子製品として適用および検討されることはなかった。
【0027】
本実施の形態では、エポキシ化亜麻仁油を硬化させて成る絶縁性高分子材料組成物において、硬化剤としてフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂を用い(エポキシ化亜麻仁油に添加し)前記の硬化を図ることによりTgが向上し、絶縁性高分子材料組成物の絶縁性が高められ、既存の工業用エポキシ樹脂製品よりも良好な特性が得られる(例えば、絶縁破壊電界特性が良好である)ことを見出したものである。
【0028】
前記のフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂は、例えば、まずエポキシ化亜麻仁油のオキシラン濃度によりエポキシ当量を算出し、そのエポキシ当量に基づいた化学量論量(例えば、化学量論比に対して0.5〜2.0)を添加する。また、前記熱硬化性樹脂における硬化の起点(硬化促進剤の役割)として、イミダゾール類を用いても良い。
【0029】
本実施の形態は、例えば作業性の向上(例えば、作業時間の短縮等),成形性,Tg特性,機械的・物理的物性(例えば、硬度,弾性率,線膨張率,熱伝導率等),電気的物性等の改善を図る目的で、前記のエポキシ化亜麻仁油,熱硬化性樹脂等をマトリックス(例えば、後述の実施例ではエポキシ化亜麻仁油,フェノール樹脂,イミダゾール)として用いる他に、種々の添加剤(例えば、充填剤,カップリング剤(例えば、マトリックスと充填剤とを化学的に結合するためのもの))を適宜用いることができる。
【0030】
例えば、本実施の形態の絶縁性高分子材料組成物を碍子に適用する場合、該絶縁性高分子材料組成物には、該マトリックスの物性を改善する目的で、シリカ粉末,アルミナ粉末,ドロマイト粉末,グラファイト粉末等の充填剤が用いられる。該碍子は、前記の絶縁性高分子材料組成物中に金属インサートを埋め込んだ構成が一般的に知られている。
【0031】
前記のような碍子の場合、絶縁性高分子材料組成物の線膨張率と金属インサートの線膨張率との差が大きいと、それら両者の間には該碍子の使用環境に応じた大きさの熱応力が発生し、クラック等が発生する可能性がある。そのため、例えば前記の充填剤の使用する場合、該充填剤の種類,添加量,粒径,粒度分布等においては、前記の線膨張率の差が大きくならないように、目的とする高分子製品の形状,金属インサートの材質,形状等を考慮して適宜設定することが好ましい。
【0032】
この具体例として、前記のシリカ粉末を充填剤として50vol%程度を目処に用いることが挙げられる。また、粒径がナノメートルオーダの充填剤(いわゆるナノ粒子と称される充填剤)を用いた場合には、表面積効果(例えば、樹脂(本実施の形態ではエポキシ化亜麻仁油等)に対する充填剤の接点(表面積)が多くなることによる効果)により、一般的な粒径(例えば、マイクロミリオーダ)の充填剤を用いた場合よりも少量(例えば、約1/10以下の添加量)にて、マトリックスの物性改善を図ることが可能となる。
【0033】
なお、前記のような充填剤を適宜使用することが好ましいが、該充填剤によるマトリックスの物性改善という観点においては、汎用の充填剤(例えば、一般的な粒径の充填剤)をエポキシ化植物油,ポリフェノールに添加する場合と同様である。また、カップリング剤においても、前記の充填剤と同様に適宜使用することが好ましいが、例えばマトリックスと充填剤とを化学的に結合させるという観点においては、汎用のカップリング剤を用いる場合と同様である。
【0034】
前記のカップリング剤としては、例えば樹脂(疎水基)や充填剤(親水基)に対して反応する官能基を有するものを適用できる。前記の充填剤としてシリカを用いる場合には、例えばシランカップリング剤やチタネートカップリング剤等を有効に適用することができる。
【0035】
[実施例]
次に、本実施の形態における絶縁性高分子材料組成物の実施例を説明する。まず、本実施例では、エポキシ化亜麻仁油(本実施例ではダイセル化学工業(株)製のエポキシ化亜麻仁油(品名;ダイマックL−500))100phrに対して、硬化剤としてフェノール樹脂(本実施例では住友ベークライト(株)製のフェノールホルムアルデヒド型ノボラック(品名;PR−HF−3))40〜80phr、硬化促進剤としてイミダゾール類(本実施例では四国化成工業(株)製の2−エチル−4−メチルイミダゾール(品名;2E4MZ))1phr、充填剤としてシリカ粉末(本実施例では龍森製のシリカ粉末(品名;MFC−4))420〜480phrを添加して混練(例えば、添加量に応じた条件で混練)し、その混練物を注型することにより24kV用の碍子(JIS C3851 EIE20A;碍子高さ255mm)の試料S1〜S5を作製した。
【0036】
なお、本実施例では、まず、加温(50〜150℃に加温)されたエポキシ化亜麻仁油に対し、同じように加温(50〜150℃に加温)されたフェノール樹脂,シリカ粉末を加え、さらにイミダゾール類を加えてから十分に混合・撹拌し、得られた混練物を減圧雰囲気下で脱泡した。その後、該混練物を所定の金型(24kV用の碍子を作製するための金型)に流し込み(大気中にて流し込み)、再度減圧雰囲気下にて脱泡し150〜200℃の温度で5〜20時間加熱して硬化させることにより、各試料を作製した。
【0037】
また、前記の試料S1〜S5の比較例として、前記のエポキシ化亜麻仁油100phrに対し、前記のシリカ450phr,酸無水物(本実施例では日立化成製の無水フタル酸(品名;HN2200))60phr,三級アミン(本実施例では明電ケミカル製のDMP−30(品名;L−86))1phr添加して混練し、その混練物を注型することにより、試料S1〜S5同様の碍子の試料P1を作製(試料S1〜S5と同様の条件で作製)した。さらに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(本実施例ではバンティコ社製のエポキシ樹脂(品名;CT200A))100phrに対し、前記のフェノール樹脂60phr,シリカ450phr,三級アミン1phr添加して混練し、その混練物を注型することにより、試料S1〜S5同様の碍子の試料P2を作製(試料S1〜S5と同様の条件で作製)した。
【0038】
そして、前記の各試料S1〜S5,P1,P2の機械的物性として碍子曲げ破壊時荷重(Pw0(N))を測定し、電気的物性として雷インパルス(V50(kV))を測定し、各測定結果を下記表1に示した。なお、前記の碍子曲げ破壊時荷重は、JIS−Cの3851に準拠して測定した。また、雷インパルスは、ステップ幅を5kVとした昇降法によって測定(正極が小さい値であるため正極性のみ測定)した。
【0039】
【表1】

【0040】
前記表1に示すように、各試料S1〜S5は、石油由来のビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いた試料P2と同様に、十分(特に、試料S3においては良好)な碍子曲げ破壊時荷重,雷インパルスが測定された。また、前記の試料S3と同様にエポキシ化亜麻仁油を用い硬化剤としては酸無水物を用いた試料P1は、各試料S1〜S5と比較して、低い碍子曲げ破壊時荷重,雷インパルスが測定された。
【0041】
したがって、前記の各試料S1〜S5のように、高分子材料としてエポキシ化亜麻仁油を含んだ混練物から成る絶縁性高分子材料組成物によれば、既存の石油由来のビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いた絶縁性高分子材料組成物と同様に、高分子製品(例えば、該絶縁性高分子材料組成物と金属インサートとから成る碍子)において十分な機械的物性,電気的物性が得られることを確認できた。また、前記のエポキシ化亜麻仁油の硬化剤としてフェノール樹脂を用いることにより、該硬化剤として酸無水物等を用いた場合と比較して、高分子製品において良好な機械的物性,電気的物性が得られることを確認できた。また、硬化促進剤,充填剤として、それぞれイミダゾール類,シリカを適用できることが確認できた。
【0042】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【0043】
例えば、本実施の形態では、天然由来であって三次元架橋する高分子材料としてエポキシ化亜麻仁油,硬化剤としてフェノール樹脂,硬化促進剤としてイミダゾール類,充填剤としてシリカ粉末を用い、それら各材料の混練物を注型(熱処理)して得た絶縁性高分子材料組成物の例を挙げたが、本発明の技術思想の範囲は前記の各材料の種類等(メーカ,グレード等)に限定されるものではなく、本質的にエポキシ化亜麻仁油等のエポキシ化植物油とポリフェノールとの反応(芳香環と水酸基を有する物質との反応)によるものであれば良く、種々の材料適用することが可能である。
【0044】
また、前記の注型(熱処理)における混練物の硬化は、目的とする絶縁性高分子材料組成物の物性に適合させるための工程の一つであって、その硬化温度・時間においては該目的(例えば、目的とする高分子製品)や使用材料に応じて適宜設定(例えば、実施例以外の硬化温度・時間に設定)することが可能である。実施例では、大気中で注型する製法の例を挙げたが、例えば成形サイクル等を考慮して、減圧雰囲気下での注型(例えば、脱泡工程を省略できる注型),トランスファー成形,射出成形等を適用することも可能である。
【0045】
さらに、各材料の配合量においても、本実施の形態では100phrのエポキシ化亜麻仁油に対しフェノール樹脂40〜80phr,イミダゾール類1phr,シリカ粉末420〜480phr用いた24kV用の碍子の例を挙げたが、それら各材料の配合量は目的とする高分子製品の機械的物性,電気的物性等に応じて適宜変更することが可能である。
【0046】
さらにまた、例えば絶縁性高分子材料組成物を作製する際の作業性(例えば、各材料の混練時の作業性),反応性,生産性,安全性等を高める目的で、本実施の形態では挙げてない各種添加剤を目的とする高分子製品に応じて適宜添加した場合においても、該実施例と同様の作用効果が得られることは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧機器の絶縁構成に用いられるものであって、
エポキシ化亜麻仁油,フェノール樹脂を含んだ混練物から成り、
前記の混練物を熱処理により三次元架橋したことを特徴とする絶縁性高分子材料組成物。
【請求項2】
前記の混練物はイミダゾール類を含んだことを特徴とする請求項1記載の絶縁性高分子材料組成物。
【請求項3】
前記のフェノール樹脂は、前記のエポキシ化亜麻仁油100phrに対し40〜80phr用いたことを特徴とする請求項1または2記載の絶縁性高分子材料組成物。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかの絶縁性高分子材料組成物と金属インサートとから成ることを特徴とする碍子。

【公開番号】特開2007−35337(P2007−35337A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−213614(P2005−213614)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】