説明

絶縁膜付基板の製造方法

【課題】 基板を十分に絶縁膜で覆うことのできる絶縁膜付基板や絶縁膜を十分に上層で覆うことのできる絶縁膜付基板の製造方法を提供すること。
【解決手段】 下記(A)を含有する密着層形成用組成物を用いて密着層を形成する工程、および、下記(B)を含有する絶縁膜形成用組成物を用いて該密着層の上に絶縁膜を形成する工程を含む絶縁膜付基板の製造方法。ほか
(A)シランカップリング剤および/またはその縮合物
(B)式(1)で示される化合物、または該化合物を重合して得られるポリマー


(Arは芳香環を有する基。R1は式(2)または式(3)で示される基。xは1〜3の整数。yは1〜3の整数。x×yは2〜9の整数。)


(Q1〜Q3は水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基。)


(Q4は水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は絶縁膜付基板の製造方法に関する。更に詳しくは、IC、LSI等の半導体デバイス、LCD、EL等の表示デバイスに使用される絶縁膜膜付基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスは配線微細化に伴って、電子信号の伝達速度が遅くなる、いわゆる配線遅延が問題となっている。配線遅延を解決するためには、絶縁膜の性能を向上して配線間の干渉を低減することが必要であることから、低誘電率の絶縁膜の開発が試みられている。
中でも有機絶縁膜の材料としては、近年、炭素−炭素三重結合と分子構造の嵩高いポリアダマンタン骨格を有する化合物が注目されており、これは、特に低い誘電率が得られることで知られている(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−292878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら該特許文献1記載の絶縁膜形成方法では、絶縁膜が基板を覆っていないボイドを含む不連続膜を形成することがあった。またあるいは、該絶縁膜の上にSiCやSiN、SiOCなどの層を形成しようとすると不連続となることがあった。本発明の目的は、基板を十分に絶縁膜で覆うことのできる絶縁膜付基板や絶縁膜を十分に上層で覆うことのできる絶縁膜付基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち本発明は、下記(A)を含有する密着層形成用組成物を用いて密着層を形成する工程、および、下記(B)を含有する絶縁膜形成用組成物を用いて該密着層の上に絶縁膜を形成する工程を含む絶縁膜付基板の製造方法にかかるものであり、また本発明は、下記(B)を含有する絶縁膜形成用組成物を用いて絶縁膜を形成する工程、および、該絶縁膜の上に下記(A)を含有する密着層形成用組成物を用いて密着層を形成する工程を含む絶縁膜付基板の製造方法にかかるものである。
(A)シランカップリング剤および/またはその縮合物
(B)式(1)で示される化合物、または該化合物を重合して得られるポリマー

(式(1)中、Arは芳香環を有する基を表し、R1は式(2)または式(3)で示される基を表し、xは1〜3の整数を表し、xが2以上の場合、複数のR1は互いに同一でも異なっていてもよく、yは1〜3の整数を表し、yが2以上の場合、複数のArおよび複数のR1はそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよく、x×yは2〜9の整数を表す。)

(式中、Q1〜Q3はそれぞれ独立に水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。)

(式中、Q4は水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。)
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、基板を十分に絶縁膜で覆うことのできる絶縁膜付基板や絶縁膜を十分に上層で覆うことのできる絶縁膜付基板の製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明で用いられるシランカップリング剤としては、特に限定はされないが、基板と後述の絶縁膜の両方と反応しうる基を有していることが好ましく、基板との反応基としては、分子内のケイ素に直接結合したクロロ基、ブロモ基、ヨード基等のハロゲン基、アルコキシ基、アシル基が挙げられ、絶縁膜に対する反応基としては、アルキル基、クロロアルキル基、ブロモアルキル基、ヨードアルキル基、ヒドロキシアルキル基、フェニル基、アルケニル基、アルキニル基、エポキシ基、アミノ基、メタクリロキシ基、メルカプト基等が挙げられる。
特に、基板との反応基が、アルコキシ基またはアシル基であると、基板との反応によって脱離するアルコールまたはカルボン酸の絶縁膜への影響が通常小さいことから、シランカップリング剤としてはアルコキシシラン化合物またはアシルオキシシラン化合物が好ましい。これらのアルコキシラン化合物、アシルオキシシラン化合物としては、
ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジアセトキシシラン、
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、
エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、
プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリアセトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルルトリアセトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、2−クロロエチルトリエトキシシラン、2−ブロモエチルトリエトキシシラン、2−ヨードエチルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−ブロモプロピルトリエトキシシラン、3−ヨードプロピルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリエトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラアセトキシラン、
【0008】
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリプロピオニルオキシシラン、
ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、ジビニルジプロポキシシラン、ジビニルジブトキシシラン、ジビニルジフェノキシシラン、ジビニルジトリアセトキシシラン、ジビニルプロピオニルオキシシラン、
アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリプロポキシシラン、アリルトリブトキシシラン、アリルトリフェノキシシラン、アリルトリアセトキシシラン、アリルトリプロピオニルオキシシラン、
ジアリルジメトキシシラン、ジアリルジエトキシシラン、ジアリルジプロポキシシラン、ジアリルジブトキシシラン、ジアリルジフェノキシシラン、ジアリルジアセトキシシラン、ジアリルジプロピオニルオキシシラン、
ブテニルトリメトキシシラン、ブテニルトリエトキシシラン、ブテニルトリプロポキシシラン、ブテニルトリブトキシシラン、ブテニルトリフェノキシシラン、ブテニルトリアセトキシシラン、ブテニルトリプロピオニルオキシシラン、
ジブテニルジメトキシシラン、ジブテニルジエトキシシラン、ジブテニルジプロポキシシラン、ジブテニルジブトキシシラン、ジブテニルジフェノキシシラン、ジブテニルジアセトキシシラン、ジブテニルジプロピオニルオキシシラン、
エチニルトリメトキシシラン、エチニルトリエトキシシラン、エチニルトリプロポキシシラン、エチニルトリブトキシシラン、エチニルトリフェノキシシラン、エチニルトリアセトキシシラン、
プロピニルトリメトキシシラン、プロピニルトリエトキシシラン、プロピニルトリプロポキシシラン、プロピニルトリブトキシシラン、プロピニルトリフェノキシシラン、プロピニルトリアセトキシシラン、
【0009】
γ−グリシドプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドプロピニルトリプロポキシシラン、γ−グリシドプロピニルトリブトキシシラン、γ−グリシドプロピニルトリフェノキシシラン、γ−グリシドプロピニルトリアセトキシシラン、
アミノメチルトリメトキシシラン、アミノメチルトリエトキシシラン、アミノメチルトリプロポキシシラン、アミノメチルトリブトキシシラン、アミノメチルトリフェノキシシラン、アミノメチルトリアセトキシシラン、アミノメチルトリプロピオニルオキシシラン、
アミノエチルトリメトキシシラン、アミノエチルトリエトキシシラン、アミノエチルトリプロポキシシラン、アミノエチルトリブトキシシラン、アミノエチルトリブトキシシラン、アミノエチルトリフェノキシシラン、アミノエチルトリアセトキシシラン、アミノエチルトリプロピオニルオキシシラン、
アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリプロポキシシラン、アミノプロピルトリブトキシシラン、
アミノフェニルトリメトキシシラン、アミノフェニルトリエトキシシラン、アミノフェニルトリプロポキシシラン、アミノフェニルトリブトキシシラン、
アミノナフチルトリメトキシシラン、アミノナフチルトリエトキシシラン、
N−(2−アミノエチル)アミノエチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)アミノエチルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)アミノエチルトリプロポキシシラン、N−(2−アミノエチル)アミノエチルトリブトキシシラン、N−(2−アミノエチル)アミノエチルトリフェノキシシラン、N−(2−アミノエチル)アミノエチルトリアセトキシシラン、N−(2−アミノエチル)アミノエチルトリプロピオニルオキシシラン、
【0010】
アミノエチルメチルジメトキシシラン、アミノエチルメチルジエトキシシラン、アミノエチルメチルジアセトキシシラン、アミノエチルエチルジメトキシシラン、アミノエチルエチルジエトキシシラン、アミノエチルエチルジアセトキシシラン、アミノエチルフェニルジメトキシシラン、アミノエチルフェニルジエトキシシラン、アミノエチルフェニルジアセトキシシラン、アミノエチルジメチルエトキシシラン、アミノエチルジエチルエトキシシラン、アミノエチルメチルフェニルエトキシシラン、アミノエチルエチルメチルエトキシシラン、アミノエチルメチルフェニルエトキシシラン、アミノエチルエチルフェニルエトキシシラン
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリブトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリフェノキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリアセトキシシラン、
メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、メルカプトメチルトリプロポキシシラン、メルカプトメチルトリブトキシシラン、メルカプトメチルトリフェノキシシラン、メルカプトメチルトリアセトキシシラン、
等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
【0011】
絶縁膜と反応しやすい基としては、アルケニル基、アルキニル基、エポキシ基、アミノ基、メタクリロキシ基、およびメルカプト基よりなる群から選ばれる1種または2種以上の官能基を有することが好ましく、これらの基を有するアルコキシシラン化合物またはアシルオキシシラン化合物がもっとも好ましい。
本発明で用いられるシランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドプロピルトリエトキシシラン、2−アミノエチルトリメトキシシラン、2−アミノエチルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノエチルトリアセトキシシラン、3−アミノプロピルトリアセトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、またはメルカプトメチルトリメトキシシランが特に好ましく使用される。
【0012】
上記シランカップリング剤を縮合する方法としては、シランカップリング剤に対して0.01〜10倍モル量、より好ましくは0.1〜4倍モル当量の水を混合し、反応温度−20℃〜100℃、より好ましくは0〜50℃、反応時間は0.1〜50時間、より好ましくは1〜10時間反応させる方法が好適に採用される。また、反応溶媒として有機溶媒を使用しても良い。使用される有機溶剤は、特に限定されないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ヘキサノール、2−エトキシメタノール、3−メトキシプロパノール等のアルコール系溶剤;アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、γブチロラクトン等のエステル系溶剤;ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチルプロピルエーテル、アニソール、フェネトール、ベラトロール等のエーテル系溶剤;メシチレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、プロピルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤などが工業的に入手可能であり、安全であるため溶剤として好適であり、これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。該縮合は、無触媒で行ってもよいが、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、マレイン酸、スルホン酸型陽イオン交換樹脂等の酸触媒、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、4級アンモニウム型陰イオン交換樹脂等のアルカリ触媒を共存させてもよく、触媒は前記シランカップリング剤に対し、通常0.001〜1当量、好ましくは、0.01〜0.1当量を用いることができる。また、酸触媒を用いる場合は、反応剤として水の代わりに蟻酸、酢酸、プロピオン酸等の低級カルボン酸を使用することもできる。
【0013】
本発明で用いられる密着層形成用組成物は、(A)シランカップリング剤および/またはその縮合物を含有する密着層形成用組成物であり、(A)シランカップリング剤および/またはその縮合物以外の成分としては通常、有機溶剤を含有する。該有機溶剤としては、前記縮合の反応溶媒として例示したものと同様の溶剤が挙げられ、これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよく、成分(A)がシランカップリング剤の縮合物である場合は反応液をそのままあるいは希釈して用いることもできる。また、触媒を用いた場合は、触媒を公知の方法により除去してから用いてもよい。
【0014】
該密着層形成用組成物の濃度は、0.01〜10%であることが好ましい。該濃度が、低すぎると下層(半導体基板等)との密着性が低下する傾向があり、高すぎると比誘電率が悪化し、更に絶縁膜をドライエッチング等で加工する上で、エッチング残渣が多量に発生する傾向がある。
更に、該密着層形成用組成物には、界面活性剤等の添加剤を添加してもよい。
【0015】
本発明においては、該密着層形成用組成物を用いて密着層を形成する。具体的には、通常は、該密着層形成用組成物を下層(例えば半導体基板)の上に塗布した後に加熱する方法により密着層は形成される。
該密着層形成用組成物を下層上に塗布する方法としては、スピンコーティング法、ローラーコーティング法、ディップコーティング法、スキャン法等の任意の方法が用いられる。その後行われる加熱処理の温度としては100℃〜350℃が好ましく、さらに好ましくは100℃〜250℃である。
【0016】
該基板としては、その表面に例えば、ガラス、石英、金属、セラミック、シリコン、GaAs、SiO2、プラズマ化学気相堆積により成膜されたシリコンカーバイト(SiC)、プラズマ化学気相堆積により成膜されたシリコンナイトライド(SiN)、プラズマ化学気相堆積により成膜されたシリコンオキシカーバイト(SiOC)などを備えた基板が挙げられる。
【0017】
本発明においては、このようにして密着層を形成した後に、その上に絶縁膜を形成することにより、基板を十分に絶縁膜で覆うことのできる絶縁膜付基板が製造される。本発明の絶縁膜付基板の製造方法として好ましくは、前記密着層形成用組成物を用いて密着層を形成する工程および絶縁膜形成用組成物を用いて該密着層の上に絶縁膜を形成する工程を含む絶縁膜付基板の製造方法である。
【0018】
また本発明においては、密着層を絶縁膜の上に形成した後に、その上に塗布法やプラズマ化学気相堆積法等により膜を形成することにより、絶縁膜を上層で十分に覆うことのできる絶縁膜付基板が製造される。かかる絶縁膜付基板の製造方法として好ましくは、絶縁膜形成用組成物を用いて絶縁膜を形成する工程および該絶縁膜の上に前記密着層形成用組成物を用いて密着層を形成する工程を含む絶縁膜付基板の製造方法である。
【0019】
本発明においては、密着層形成と絶縁膜形成の間に公知の方法により、密着層の表面改質処理を行うこともできる。表面改質処理としては、UV照射法、イオンビーム照射法、低温プラズマ処理、コロナ放電処理、界面活性剤・有機溶剤による洗浄処理等を挙げることができる。
【0020】
本発明においては、前記絶縁膜形成用組成物として下記(B)を含有する絶縁膜形成用組成物を用いる。
(B)式(1)で示される化合物、または該化合物を重合して得られるポリマー

(式中、Arは芳香環を有する基を表し、R1は式(2)または式(3)で示される基を表し、xは1〜3の整数を表し、xが2以上の場合、複数のR8は互いに同一でも異なっていてもよく、yは1〜3の整数を表し、yが2以上の場合、複数のArおよび複数のR1はそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよく、x×yは2〜9の整数を表す。)
【0021】

(式中、Q1〜Q3はそれぞれ独立に水素原子または炭化水素基を表す。)

(式中、Q4は水素原子または炭化水素基を表す。)
【0022】
ここで、Q1〜Q4における炭化水素基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基等の炭化水素から誘導される基であり、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数2〜4のアルケニル基、炭素原子数2〜4のアルキニル基または炭素原子数6〜10のアリール基が好ましい。
炭素原子数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。
炭素原子数2〜4のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ブタジニル基が挙げられる。
炭素原子数2〜4のアルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基が挙げられる。
炭素原子数6〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基、トルイル基、キシリル基、ナフチル基が挙げられ、フェニル基が好ましい。
【0023】
1〜Q4として好ましくは、水素原子、アルキル基またはアリール基であり、特に好ましくは水素原子またはフェニル基である。
【0024】
式(2)で示される基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ブタジエニル基、スチレニル基等が挙げられる。
【0025】
式(3)で示される基としては、例えば、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、フェニルエチニル基等が挙げられる。
【0026】
式(1)中のArとしては、フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、およびこれらの基の芳香環が1〜2個のメチル基またはエチル基で置換された基などの極性基を含有しない芳香環1〜3個で構成される基などが挙げられる。Arとして特に好ましくは、フェニレン基である。
【0027】
式(1)で示される化合物の製造方法は特に限定されないが、以下の方法を挙げることができる。
アダマンタン骨格を有する化合物の橋かけメチン基を塩素、臭素、ヨウ素等によりハロゲン化した後、塩化アルミニウム、塩化スズ、塩化アンチモン、塩化チタン、臭化アルミニウム、臭化スズ、臭化アンチモン、臭化チタン等のルイス酸を触媒とし、ブロモベンゼン、ブロモナフタレン、ブロモアントラセン、ブロモビフェニル、ブロモターフェニル、ジブロモベンゼン、ジブロモナフタレン、ジブロモアントラセン、トリブロモベンゼン、トリブロモナフタレン、トリブロモアントラセン、ヨードベンゼン、ヨードナフタレン、ヨードアントラセン、ヨードビフェニル、ヨードターフェニル、ジヨードベンゼン、ジヨードナフタレン、ジヨードアントラセン、トリヨードベンゼン、トリヨードナフタレン、トリヨードアントラセン等の芳香族ハロゲン化物とカップリング反応させて、ハロゲン化アリール基をアダマンタン骨格のメチン基に結合させる。また、そのようにして得たハロゲン化アリール基がアダマンタン骨格のメチン基に結合した化合物をトリス(トリフルオロメチル)ボロン、フッ化アンチモン等で処理して異性化させることでアダマンタン骨格のメチレン基にハロゲン化アリール基を転移させる。
このようにして得られた、ハロゲン化アリール基が結合したアダマンタン骨格を有する化合物を更に、式(4)または式(5)で示される化合物と薗頭カップリング反応させることにより、アリール基に結合しているハロゲン原子と式(4)または式(5)で示される化合物の水素原子とを脱離させ、式(1)で示される化合物が得られる。

式中、Q1〜Q3は前記と同じ意味を表す。

式中、Q4は前記と同じ意味を表す。
【0028】
式(2)のQ1〜Q3のいずれか1つまたは式(3)のQ4が水素原子である式(1)で示される化合物を製造しようとする場合は、式(4)または式(5)におけるQ1〜Q4としての水素原子をトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリブチルシリル基、トリメチルスズ基、トリエチルスズ基、トリブチルスズ基等の保護基に置き換えた化合物を用いて、前記薗頭カップリング反応を行い、その薗頭カップリング反応後、前記保護基を常法により水素原子に置換する方法も採用できる。
【0029】
1が式(3)で示される基であると、ベーク処理および熱硬化処理を施すことによって、耐熱性により優れた絶縁膜が得られることから好ましい。また、式(3)で示される基は、エチニル基またはフェニルエチニル基であることがより好ましい。
【0030】
式(1)で示される化合物の具体例としては、例えば、

【0031】

【0032】

【0033】

などが挙げられ、式(1)で示される化合物としてはこれらのうちのいずれかであることが好ましい。
【0034】
前記式(1)で示される化合物を重合する方法は、公知の重合方法を採用することが可能であり、例えば、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーオキシド、アゾビスイソブチロニトリル等のラジカル開始剤によるラジカル重合、硫酸、リン酸、トリエチルアルミニウム、塩化タングステン等の触媒によるカチオン重合、リチウムナフタレン等の触媒によるアニオン重合、光照射等の光ラジカル重合、溶媒中での加熱による熱重合などを挙げることができ、溶媒中で100℃〜150℃(より好ましくは120℃〜150℃)に加熱することによる熱重合が特に好ましい。通常、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合等では触媒残渣等、光ラジカル重合法でも増感剤等を除去する工程が必要となる。
【0035】
熱重合時に前記式(1)で示される化合物を溶解させるのに用いる有機溶剤は、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−エトキシメタノール、3−メトキシプロパノール等のアルコール系溶剤;アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、γブチロラクトン等のエステル系溶剤;ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチルプロピルエーテル、アニソール、フェネトール、ベラトロール等のエーテル系溶剤;メシチレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、プロピルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤などが工業的に入手可能であり、これらの中から、熱重合を行うのに好適な温度以上の沸点を有するものを選択することが好ましい。これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。絶縁膜形成用組成物の調製に用いられる有機溶剤と同じものを使用することにより、絶縁膜形成用組成物を作成するときの溶媒留去等の手間を省くことができる。
【0036】
重合は、通常、炭素−炭素二重結合や炭素−炭素三重結合同士が反応することにより進行する。得られるポリマーの具体例としては、ポリ(ジエチニルアダマンタン)、ポリ(トリエチニルアダマンタン)、ポリ(テトラエチニルアダマンタン)ポリ(ビス(エチニルフェニル)アダマンタン)、ポリ(トリス(エチニルフェニル)アダマンタン)、ポリ(ビス(ジエチニルフェニル)アダマンタン)、ポリ(トリス(ジエチニルフェニル)アダマンタン)、ポリ(ビス(エチニルフェニルエチニル)アダマンタン)、ポリ(トリス(エチニルフェニルエチニル)アダマンタン)等が挙げられる。
【0037】
前記式(1)で示される化合物を重合して得られるポリマーは、GPCによるポリスチレン換算平均分子量が1000以上500000以下であることが好ましい。ここで、GPCによるポリスチレン換算平均分子量は、公知の方法で測定することができる。このGPCによるポリスチレン換算平均分子量は、2000以上400000以下であることがより好ましく、3000以上200000以下であることがさらに好ましい。GPCによるポリスチレン換算平均分子量が小さい場合、後述の成分(C)を含有させて、空孔を形成させる際、空孔径が十分に小さくならない場合がある。GPCによるポリスチレン換算平均分子量が大きい場合、塗布液としたときの粘度が上がり、操作性が悪くなる場合がある。
【0038】
前記式(1)で示される化合物を重合する際に、前記式(1)で示される化合物が残存していてもよい。
本発明で用いられる絶縁膜形成用組成物は、かかる成分(B)以外には通常、有機溶剤を含有する。ここで用いられる有機溶剤は、前記密着層形成用組成物が含有する有機溶剤と同様のものである。
【0039】
本発明で用いられる絶縁膜形成用組成物は、空孔形成用化合物(C)をさらに含有することが好ましい。空孔形成用化合物を含有させることにより、基板への塗布後、絶縁膜の硬化の段階で、揮発または分解し、絶縁膜中に微細な空孔を形成し、より誘電率の低下をはかることができる。
【0040】
成分(C)としては、例えば、オレフィン誘導体、ポリスチレン誘導体、ポリアルキレンオキシド誘導体、ポリアクリル酸誘導体、ポリメタクリル酸誘導体、ポリメタクリル酸誘導体、ポリアルキレングリコール誘導体、ポリオキシエーテル、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート等が挙げられる。これらの中で、ポリスチレン誘導体またはポリアルキレンオキシド誘導体が好ましく使用される。
ポリスチレン誘導体としては、例えば、ポリスチレン、ポリビニルトルエン、ポリビニルキシレン、ポリα−メチルスチレン、ポリα−メチルビニルトルエン、ポリα−メチルビニルキシレン、ポリα−エチルスチレン、ポリα−エチルビニルトルエン、ポリα−エチルビニルキシレンなどが挙げられ、これらの中で、ポリスチレン、ポリビニルトルエン、ポリα−メチルスチレン、ポリα−メチルビニルトルエンが好ましく、ポリスチレン、ポリα−メチルスチレンがより好ましい。
ポリアルキレンオキシド誘導体としては、例えば、ポリオキシメチレン、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシイソプロピレンなどが挙げられ、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンが好ましく使用される。
【0041】
成分(C)は、2種以上のモノマー類を重合させた共重合体であってもよい。該共重合体としては、例えば、ポリオキシメチレン−ポリオキシエチレン共重合体、ポリオキシメチレン−ポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体等のポリオキシアルキレン共重合体、スチレン−メタアクリレート共重合体などが挙げられる。
【0042】
成分(C)は、成分(B)との相溶性が良好に維持できる範囲で任意に選択することが可能であり、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
成分(C)のGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量は、50000以下であることが好ましく、30000以下であることがより好ましく、10000以下であることがさらに好ましい。
該分子量が50000を超えると、形成される空孔が大きくなる傾向がある。
【0044】
成分(C)には、成分(B)との相溶性をさらに向上させるために、重合反応に用いられる重合開始剤、変成剤、反応停止剤を適宜選択することができる。
重合開始剤としては、例えば、金属アリール化合物、金属アルキル化合物等の有機金属化合物、トリフェニルメチルカルボニウムイオンの塩、芳香環を有する過酸化物、芳香族環を有するアゾ化合物などが挙げられる。
変成剤としては、例えば、1,1−ジフェニルエチレン、1,2−ジフェニルエチレン(シス体、トランス体)、1,1,2−トリフェニルエチレン、1−ナフチル−1−フェニルエチレンなどが挙げられる。
反応停止剤としては、例えば、水、メタノール、ハロゲン化アルキル化合物、カルボニル化合物などが挙げられる。
【0045】
本発明で用いられる絶縁膜形成用組成物中の成分(B)と成分(C)との重量比は、99:1〜1:99であることが好ましく、より好ましくは95:5〜30:70である。
この成分(B)の重量比が多いと、形成される空孔が少なくなり、十分に比誘電率が低下しない傾向があり、少ないと、成分(B)と成分(C)との相溶性が悪化し、形成される空孔が大きくなる傾向がある。
【0046】
本発明で用いられる絶縁膜形成用組成物には、さらに添加剤を配合してもよい。
該添加剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等のカップリング剤、界面活性剤、整泡剤、有機過酸化物等の触媒などが挙げられる。
特に半導体デバイスの分野では、絶縁膜と基板との密着性が高いことが好ましいことから、本発明で用いられる絶縁膜形成用組成物には、さらにシランカップリング剤(A)を配合することが好ましく、ビニル基、アリル基、アクロイル基、メタクロイル基、メルカプト基、アミノ基、イミノ基、またはケチミノ基を有するシランカップリング剤を配合することがより好ましい。
該シランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アクロイルエチルトリメトキシシラン、アクロイルエチルトリエトキシシラン、メタクロイルエチルトリメトキシシラン、メタクロイルエチルトリエトキシシラン、メルカプトエチルトリメトキシラン、メルカプトエチルトリエトキシランなどが挙げられる。
また、上記シランカップリング剤を公知の方法により重合して用いても構わない。これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
シランカップリング剤の添加量は、成分(A)100重量部に対して0.01〜40重量部であることが好ましく、0.1〜20重量部であることがより好ましく、1〜10重量部であることがさらに好ましい。
【0047】
本発明で用いられる好ましい絶縁膜形成用組成物は、[(成分(A)配合量+成分(B)配合+成分(C)配合量)/(成分(A)配合量+成分(B)配合+成分(C)配合量+有機溶剤配合量)]×100は、5〜50%であることが好ましい。該濃度は、塗布膜の膜厚や段差埋め込み性改良等の目的に応じて適宜調整することができる。
【0048】
また、本発明の絶縁膜形成用組成物には、塗布性等の性能を損なわない範囲で、ラジカル発生剤、非イオン界面活性剤、フッ素系非イオン界面活性剤等の添加剤を添加してもよい。
ラジカル発生剤としては、例えば、t−ブチルパーオキシド、ペンチルパーオキシド、ヘキシルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
非イオン界面活性剤としては、例えば、オクチルポリエチレンオキシド、デシルポリエチレンオキシド、ドデシルポリエチレンオキシド、オクチルポリプロピレンオキシド、デシルポリプロピレンオキシド、ドデシルポリプロピレンオキシド等が挙げられる。
フッ素系非イオン界面活性剤としては、例えば、パーフルオルオクチルポリエチレンオキシド、パーフルオルデシルポリエチレンオキシド、パーフルオルドデシルポリエチレンオキシド等が挙げられる。
【0049】
絶縁膜は、スピンコーティング法、ローラーコーティング法、ディップコーティング法、スキャン法等の任意の方法により、前記の絶縁膜形成用組成物を基板に塗布した後、空気中、大気圧下、80〜250℃でベーク処理を行い、250〜400℃で熱硬化処理して得られる。熱硬化処理は、窒素、ヘリウム、アルゴン、キセノン等の不活性気体中あるいは0.1気圧以下の減圧下でのホットプレート加熱、ファーネス炉を使用した方法、RTP(Rapid Thermal Processor)等によるキセノンランプを使用した光照射加熱等を適用して実施される。
【0050】
加熱処理によって炭素−炭素二重結合や炭素−炭素三重結合同士がカップリングし、3次元構造を形成した結果、機械的強度、耐熱性に優れた絶縁膜が形成されると考えられる。最終的な加熱温度は、200〜450℃が好ましく、より好ましくは250〜400℃であり、加熱時間は、通常、1分間〜10時間である。
【0051】
本発明の絶縁膜付基板の絶縁膜は、比誘電率が低く、耐熱性に優れ、半導体基板との密着性にも優れていることから、半導体素子等における層間絶縁膜として有用であることはいうまでもなく、更にパッシベーション膜、半導体デバイス保護膜として好適に使用することもできる。
【実施例】
【0052】
本発明を実施例に基いてさらに詳細に説明するが、本発明が実施例により限定されるものではないことは言うまでもない。
【0053】
製造例1
シランカップリング剤の加水分解縮合物Aの製造
300mLの3つ口フラスコ中で50gのビニルトリメトキシシランを100gのメタノールに溶解させた。次いで、窒素気流下で0.1M塩酸4.5mlを5分間かけて滴下し、約5時間攪拌を行ないビニルトリメトキシシランの加水分解縮合物のメタノール溶液を得た。得られた溶液のメタノールを留去し、アニソールを加え、ビニルトリメトキシシランの加水分解縮合物のアニソール溶液を得た。この縮合物のGPCによるポリスチレン換算平均分子量は500であった。これをシランカップリング剤の加水分解縮合物Aとする。
【0054】
製造例2
化合物Bの製造
50mLの3つ口フラスコ中で3gの1,3−ビス(3,5−ジエチニルフェニル)アダマンタンを27gのアニソールに溶解させた。窒素気流下で約150℃、10時間攪拌を行った。次いで、一旦115℃まで温度を低下させた後、徐々に昇温し、135℃まで昇温させ、合計20時間で反応を止めた。得られた樹脂のGPCによるポリスチレン換算平均分子量は57000であった。このとき、GPCの面積強度で42%がモノマーとして残存していた。これを化合物Bとする。
【0055】
製造例3
空孔形成用化合物Cの製造
窒素置換したフラスコに、テトラヒドロフラン 284重量部、α−メチルスチレン 72重量部を仕込んだ。攪拌下、濃度1.6Mのn−ブチルリチウム溶液 54重量部をフラスコに滴下した。次いでフラスコを−60℃まで冷却し、30分間攪拌した。次いで1,1−ジフェニルエチレンの20%テトラヒドロフラン溶液 165重量部をフラスコに滴下し、30分間攪拌した。最後にメタノール 6重量部を仕込み反応を停止させた。室温まで昇温し、得られた樹脂溶液を4000重量部のメタノールに滴下し、樹脂を沈殿させ、ろ過して取り出した。末端をジフェニルエチレンで修飾した重量平均分子量1300のポリα−メチルスチレンが得られた。これを空孔形成用化合物Cとする。
【0056】
塗布液の調製
塗布液1の調製
製造例1で得られたシランカップリング剤の加水分解縮合物Aを0.4重量%となるようにアニソールに配合し、溶解させた。この溶液を、0.1μmPTFEフィルターで公知の方法により濾過し、塗布液を調製した。
塗布液2の調製
製造例2で得られた化合物Bと製造例3で得られた空孔形成用化合物Cの重量比率がB:C=60:40となるよう、またBとCとの合計の濃度が15重量%となるようにアニソール中に配合し、溶解させた。この溶液を、0.1μmPTFEフィルターで公知の方法により濾過し、塗布液を調製した。
【0057】
実施例1
調製された塗布液1を、4インチシリコンウェハー上に約1ml滴下した。その後、このウェハーを500rpmで3秒間スピンさせてから、1500rpmの速度で15秒間スピンさせた。コーティングしたウェハーを150℃で1分間焼き付けた。その後、調製された塗布液2を約1ml滴下した。このウェハーを500rpmで3秒間スピンさせてから、1500rpmの速度で15秒間スピンさせた。コーティングしたウェハーを150℃で1分間焼き付けた。次いで、その焼き付けたウェハーを炉内で、窒素雰囲気中、400℃に30分保持することにより硬化させ、空孔形成用化合物を分解させた。
【0058】
比較例1
調製された塗布液2を、4インチシリコンウェハー上に約1ml滴下した。このウェハーを500rpmで3秒間スピンさせてから、1500rpmの速度で15秒間スピンさせた。コーティングしたウェハーを150℃で1分間焼き付けた。次いで、その焼き付けたウェハーを炉内で、窒素雰囲気中、400℃に30分保持することにより硬化させ、空孔形成用化合物を分解させた。
【0059】
得られた硬化膜の密着性は、QUAD GROUP社製Sebastian V型を用い測定した。塗布性は光学顕微鏡を用いて確認した。結果を表1に示す。
【0060】
【表1】


実施例1は比較例1に比べ、ボイドを発生させることなく、高い密着性が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の絶縁膜付基板の製造方法は、製品の安定性、歩留まり向上にも優れる。かかる絶縁膜付基板の製造方法は、半導体デバイスの分野ですこぶる利用価値が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)を含有する密着層形成用組成物を用いて密着層を形成する工程、および、下記(B)を含有する絶縁膜形成用組成物を用いて該密着層の上に絶縁膜を形成する工程を含む絶縁膜付基板の製造方法。
(A)シランカップリング剤および/またはその縮合物
(B)式(1)で示される化合物、または該化合物を重合して得られるポリマー

(式(1)中、Arは芳香環を有する基を表し、Rは式(2)または式(3)で示される基を表し、xは1〜3の整数を表し、xが2以上の場合、複数のRは互いに同一でも異なっていてもよく、yは1〜3の整数を表し、yが2以上の場合、複数のArおよび複数のRはそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよく、x×yは2〜9の整数を表す。)

(式中、Q〜Qはそれぞれ独立に水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。)

(式中、Qは水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。)
【請求項2】
下記(B)を含有する絶縁膜形成用組成物を用いて絶縁膜を形成する工程、および、該絶縁膜の上に下記(A)を含有する密着層形成用組成物を用いて密着層を形成する工程を含む絶縁膜付基板の製造方法。
(A)シランカップリング剤および/またはその縮合物
(B)式(1)で示される化合物、または該化合物を重合して得られるポリマー

(式(1)中、Arは芳香環を有する基を表し、Rは式(2)または式(3)で示される基を表し、xは1〜3の整数を表し、xが2以上の場合、複数のRは互いに同一でも異なっていてもよく、yは1〜3の整数を表し、yが2以上の場合、複数のArおよび複数のRはそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよく、x×yは2〜9の整数を表す。)

(式中、Q〜Qはそれぞれ独立に水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。)

(式中、Qは水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。)
【請求項3】
(A)におけるシランカップリング剤が、アルケニル基、アルキニル基、エポキシ基、アミノ基、メタクリロキシ基、およびメルカプト基よりなる群から選ばれる1種または2種以上の官能基を有するシランカップリング剤である請求項1または2記載の絶縁膜付基板の製造方法。
【請求項4】
(A)におけるシランカップリング剤が、アルコキシシラン化合物および/またはアセトキシシラン化合物である密着層形成用組成物を用いる請求項1〜3のいずれかに記載の絶縁膜付基板の製造方法。
【請求項5】
式(1)で示される化合物において、Arがアダマンタン骨格のメチン基に結合していることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の絶縁膜付基板の製造方法。
【請求項6】
式(1)で示される化合物において、Rが式(3)で示される基であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の絶縁膜付基板の製造方法。

(式中、Qは水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。)
【請求項7】
式(1)で示される化合物において、Rがエチニル基またはフェニルエチニル基であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の絶縁膜付基板の製造方法。

【公開番号】特開2006−245458(P2006−245458A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−61958(P2005−61958)
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】