説明

継手にプレストレスを与えるファスナー

ファスナー継手は加えられた負荷によりファスナーに誘発された曲げ応力に等しい大きさで及び反対方向に継手を締め付けるファスナーに静的プレストレスを生じさせる。このような継手は接続ロッドベアリングキャップのボルト座を内方向に傾け、接続ロッドの主穿孔の近傍のキャップとロッド間のボルト締めされた接触面にレリーフ(逃げ)を形成し、又はネジ穴がボルト締めされたジョイント面から伸びるようにロッド本体内のネジ穴を内方向に傾斜させることを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボルトジョイント(継手)のようなファスナー継手設計に関し、特に、最大適応負荷でファスナー(締結具)内をより均一な応力になるようにファスナーをプレストレスを与える(予め圧力を加える)継手に関する。
【背景技術】
【0002】
曲げ応力は、継手が非対称であり、ファスナー負荷がファスナーの中心線上にない場合に湾曲平面でボルトのようなファスナーの軸部11に沿って誘発される。図1A および図1Bは同一軸上負荷加重(例えば、ボルトの軸部の軸での負荷)を有する2つのファスナーを概略的に示す。図1Aはファスナー10の軸部11を曲げ及び軸方向負荷を与えるように軸方向プレストレス上の(ファスナー軸部11を凸状に残すように湾曲平面の)紙面に加えられる曲げ応力を示す。図1Bは図1Aのボルトの中心軸の軸上負荷12に大きさの等しい軸方向負荷(非曲げ負荷)のみが加えられるファスナー10の軸部11を示し、両ファスナーの平均応力は同じである。
【0003】
図1Aのファスナーの曲げ応力はファスナー及び継手の負荷支持能力を減少させる。曲げ平面のファスナー軸部11の片側14は誘発された湾曲により他方16より高い応力を有する。これはファスナー軸部間の応力分布がファスナー軸部の側部14に高い応力を生じさせるので望ましい状態でない。最大負荷でより望ましい応力条件はファスナー12、14および16が実質的に等しい図1Bに示される最大負荷条件の湾曲平面でファスナー軸部11間で均一応力分布を有することである。ある場合において、締結された継手は加えられた負荷加重が動的で且つ変化する接続ロッド継手でのような全ての条件でファスナーの曲げ応力を除去するように設計できない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ファスナーにより支持される負荷はファスナー内の平均応力に関連する。図1A及び図1Bにおいて、両ファスナー10は同一平均応力12を有するが、図1Aのファスナーは曲げ応力の結果としてより高い最大応力14を有する。もし障害が生じる場合、側部14に沿った最大応力点で生じる。軸方向応力に加えられる曲げ応力は同一平均応力が加えられるが均一応力分布を有するファスナーに比べてファスナーの負荷支持能力を減少させる。
【0005】
図2Aを参照すると、継手を締結すると、最初の軸方向プレストレスがファスナーを締付け又は伸張する結果として加えられる。これは均一なプレストレス(圧縮応力)成分18により示される。もし継手が非対称であると、継手が締結穴の他方より一方でより圧縮する。これによりファスナー軸部11を曲げ応力を受け且つ負荷がファスナー軸部11の全域で不均一な方法で加えられる。これは非均一成分20により示される。さらに、もし負荷加重がファスナーの中心線からずれて加えられると、追加の曲げがファスナーに生じる。図1Aの応力成分12、14および16は最大負荷加重で均一成分18と非均一成分20の合計である。ファスナージョイント設計は図1Bに示される均一応力プロフィールをより好ましい選択にする曲げ応力を含むファスナーの最大応力により制限される。
【0006】
ここで使用される用語“ファスナー”はボルト、リベット、(ネジ切りされ、ピン止めされ、溶接された)ロッド、ネジ等のような継手に加えられるとき、張力が加えられる軸部を有する任意の型のファスナーである。用語“曲げ応力”はファスナー間の非均一応力と称される。本発明はボルトヘッドのように作用するジョイントシステムでナットを使用することを含み、したがって、ファスナーの“ヘッド”はナット、ボルトヘッド、又はネジヘッド、リベットヘッド又はリベットフランジ等を含んでいる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、継手(ジョイント)の使用用途での最大負荷条件で、最大応力がボルト軸部間で減少するボルト継手を提供する。ファスナーが継手に組み込まれる場合に適用曲げ応力の湾曲平面でファスナー軸部の曲げ応力を含む継手によりこれを実施する。継手により誘発される曲げ応力は最大負荷加重が加えられると最大応力を減少させるように使用においてファスナー軸部が受ける最大負荷加重により湾曲平面で誘発される曲げ応力にほぼ反比例する。
【0008】
そうすることにより、本発明はファスナー軸部が受ける周期的平均応力を減少させる。これはファスナーの疲れ寿命を増加させるために特に有効である。
【0009】
本発明の有用な態様において、継手により誘発される曲げ応力は、本発明の充分な利点を得るため、最大負荷加重が加えられると湾曲平面においてファスナー軸部間にほぼ均一な応力分布を発生するための大きさと方向から成る。
【0010】
本発明の一形態において、継手はファスナーが軸部で張力を誘発することに抗して支持するシート(座)を有し、座は軸部が伸びる部品内のファスナー穴の軸に対して90度以外の角度で傾斜している。座は最大負荷加重により誘発された曲げ応力の方向と反対方向にファスナーの曲げ応力誘発するような方向に角度付けされる。それにより、継手により誘発された曲げ応力は負荷加重により誘発された曲げ応力を相殺し、ファスナーの軸部上の最大負荷加重を減少させ且つファスナー軸部が受ける周期的平均応力を減少する。
【0011】
本発明を実施する他の方法において、継手は互いに対向し且つファスナーにより共に保持されるジョイント面を有し、ジョイント面の一部はこのジョイント面間に最大負荷加重により誘発される曲げ応力の方向と反対の方向にファスナーの軸部に曲げ応力を誘発する非支持間隙を規定する。
【0012】
本発明を実施する他の方法において、部品内に伸び且つファスナー軸部を受ける穴は部品の一方の第1部分と他方の第2部分を有し、第1部分は最大負荷加重により誘発される曲げ応力の方向と反対の方向にファスナー内の曲げ応力を誘発するように第2部分に対して傾斜している。
【0013】
本発明を実施するこれらの異なる方法は単独又は互いに任意の組合せで実施可能である。
【0014】
特別な有用な態様において、継手はベアリングキャップを接続ロッドのロッド部に接続する接続ロッド内の継手である。ベアリングキャップジョイントは、本発明を使用するファスナーにプレストレス(圧縮応力)を与えることがファスナー軸部の最大加応力と周期的平均応力を減少させるように、ファスナー軸部が接続ロッドの周期的動作により周期的曲げ応力を受けるので、本発明の特に有用な適用である。
【0015】
本発明の前述及び他の目的及び利点は以下の詳細に説明される。説明において、本発明の好ましい実施例を示す添付図面が参照される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図2Bを参照すると、本発明は最大負荷加重条件でファスナー軸部11にほぼ均一な応力分布を提供するファスナー締結ジョイント設計を提供する。図2Bにおいて、応力チャートは下部の組のベクトル矢印22、24及び26を有する圧縮応力と、上部の組のベクトル矢印28、30及び32による適用応力を示す。図2A及び図2Bにおいて、平均プレストレスと平均最大応力は同一であり、各事例は同一システム負荷を取り扱うが、本発明を使用すると負荷加重下でより低い最大応力になる。ジョイント負荷加重が接続ロッドベアリングキャップ継手(ジョイント)でのように循環的である場合において、平均周期応力もより低い。全周期応力スイングは同一のままである。
【0017】
図2A及び図2Bの概略応力チャートはいずれの偶発的又は予想外のジョイント曲げプレストレスも示さない点で簡略化されている。もしジョイント曲げプレストレスがあれば、図2Aの水平の組のプレストレスベクトルは(ある角度で)不均一であり、図2Bの対応するプレストレスベクトルは曲げプレストレスを補償するために調整する必要がある。
【0018】
最大負荷加重での均一応力分布は任意の数の方法で達成できる。現在、典型的な接続ロッドベアリングキャップ継手は図3に示されるように形成され、各ボルト継手座36は対応するボルト穴37とネジ穴39の中心線38に対して90度であり、非ネジ穴37はベアリングキャップ42内にあり、ネジ穴39接続ロッド本体44内にある。これは図2Aに示されるように実質的に応力分布を生じ、ベクトル18は静的プレストレスを示し、ベクトル20は動的負荷加重を示す。この場合留意すべきは最大応力が(両方の座36のクランク軸穴40に向かう)内部に生じる。
【0019】
本発明を実施する1つの方法は各ジョイントボルト座36をボルト37とネジ穴39の中心線38に対して相殺又はオフセットされるべき最大負荷加重に基いて選択されるある少量だけ傾斜させることである。典型的には、傾斜角は負荷加重の大きさに依存して、1度以下であり、例えば、0.125度である。この角度は正しい方向に向けるべきであり、それにより、継手及び負荷加重により誘発される最大(動的)負荷加重条件で曲げ応力を相殺する。これは図3に示される。図示されるように平坦である2つ座36は曲げ平面の方向で内方向に角度付けし又は傾斜させるように、且つ負荷加重により誘発された曲げ応力に逆である各ボルト10の曲げ応力を誘発するように機械加工又は形成される。換言すると、ボルト10は傾斜した座36の結果として紙面方向で(主穿孔40の軸に対して外方凸状である)外方向に撓ませ、それに対して、負荷加重は(主穿孔40の軸に対して内方凸状である)内方向に撓ませる傾向にある。座36の角度の大きさと方向と、ボルト10が締結されるトルクは、図2Bに示されるように、最大負荷加重でファスナー10の軸部でほぼ均一な応力分布を発生するように選択される。
【0020】
図4において、もしボルト穴37、39およびボルトジョイント座が同じスピンドル中心線38に沿って機械加工されると、座とボルトの中心線は、図3に示される典型的な継手のように、製造工程に基づいて互いに90度である。追加又は異なる工程が要求されたボルト座36の傾斜を形成させるために必要である。これは多くの異なる方法で実施できる。例えば、図4のボルト座36の傾斜はベアリングキャップ42に進む。他の方法は軸38に沿って1つのスピンドルでボルト穴を機械加工し、穴あけスピンドルに対して小角度で他のスピンドルでボルト座を機械加工することである。さらに他の方法はベアリングキャップ52内に各ボルト座36の傾斜を形成するため粉末冶金プロセスを使用して座36の角度を形成することである。
【0021】
最大負荷加重で湾曲平面にボルト軸部11間の均一応力を発生させる他の方法はジョイント面を形成することであり、ジョイント面は穿孔40の近傍の領域内の各組のジョイント面間の小さい非支持間隙48を形成するように外方向に先細になる互いに小角度で主穿孔40の中心近くで互いに対向している。これは図5に示される。1つ又は両対向表面が間隙48を形成するように角度付けされる。(図5では大きく誇張されており、相殺されるべき負荷加重の大きさに依存する1度以下である)この小角度は表面で機械加工され、鍛造又は冶金により形成され、または継手は後者の方法が接続ロッドのロッドとキャップの他の典型的な割れ目分割製造工程に組み込まれる間隙を形成するために可塑的に変形される。これによりキャップ42が、ファスナー10の軸部11に軸部を外方向に撓める様に曲げ応力を与える効果を有する、角度だけ形成された間隙の領域のロッド部材44に向けて屈曲するのを可能にする。ボルト10が締結されると、間隙48は閉じられ又は実質的に閉じられ又は閉じられない。間隙48のサイズとボルト10が締結されるトルクは、図2Bに示されるように、最大負荷加重で曲がる平面でファスナー10の軸部11の実質的に均一な応力分布を発生するように選択される。
【0022】
最大負荷加重でボルト軸部11間の湾曲平面で均一応力を形成するためのさらに他の方法は、図6に示されるように、ボルト穴37と(非屈曲)ボルト10の中心線38Bに対する小角度でネジ穴39の中心線38Aを形成することである。さらに、軸38Aの角度は大きく誇張されており、軸38Aに対して1度以下である。これらは、前述の実施例でのように、最大負荷加重で湾曲平面のボルト軸部間に均一応力分布を生じるようにボルト10の軸部11を外方向に撓め、ボルト軸部11の周期的平均応力と最大応力が減少する。軸38Aの角度とボルト10が締結されるトルクは、図2Bに示されるように、最大負荷加重でファスナー10の軸部11内の湾曲平面でほぼ均一な応力分布を発生するように選択される。
【0023】
本発明の好ましい実施例が相当詳細に述べられた。説明された好ましい実施例に対する多くの変形及び改造は当業者にとって明らかである。したがって、本発明は記載された実施例に限定すべきでない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1A】図1Aは曲げ及び軸負荷を受けるボルト内の応力分布を示す典型的従来技術ボルト応力分布図である。
【図1B】図1Bは軸方向負荷のみを受けるボルト内の応力分布を示し、且つ軸負荷の大きさは図1Aのボルトの軸の負荷に等しい状態を示す典型的従来技術ボルト応力分布図である。
【図2A】図2Aは、図1と同様の図であり、プレストレス(応力)と最大応力のような合計応力の成分を示す応力図である。
【図2B】図2Bは、図2Aと対応するファスナーの図であるが、本発明を含む継手により発生する圧縮応力及び最大応力分布を示す。
【図3】図3は本発明による傾斜ボルト座を有する接続ロッドベアリングキャプの図であり、角度は図示のため誇張している。
【図4】図4は、図3と類似であり、典型的な従来技術接続ロッドベアリングキャップ継手の図である。
【図5】図5は本発明による傾斜ジョイント面を有する接続ロッドベアリングキャップ継手を示し、角度は図示のため誇張している図である。
【図6】図6は本発明に従った内方向に傾斜したロッド内のネジ切りされたファスナー穴を有する接続ロッドベアリングキャップを示し、角度は図示のため誇張している図である。
【符号の説明】
【0025】
10 ファスナー(締結具)
11 軸部
12 軸負荷
18 圧縮応力成分
36 シート(座)
37 ボルト穴
39 ネジ穴
40 主穴
48 間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を共に保持する緊張状態の軸部を有するファスナーにより締付けられた少なくとも2つの部品間の継手において、
前記継手は前記ファスナーが前記継手に組み込まれる場合に湾曲平面の前記ファスナー軸部の曲げ応力を誘発し、
前記継手により誘発された前記曲げ応力は最大負荷加重が加えられる場合に最大応力を減じるように前記ファスナー軸部が作用する最大負荷加重による湾曲平面内に誘発される曲げ応力にほぼ反比例する、
ことを特徴とする継手。
【請求項2】
前記継手に誘発される前記曲げ応力は前記最大加重が加えられる湾曲平面の前記ファスナー軸部の全域でほぼ均一な応力分布を発生する大きさと方向を有することを特徴とする請求項1記載の継手。
【請求項3】
前記継手は前記ファスナーが前記軸部の張力を誘発することに抗して耐える座面を有し、前記座面は前記軸部が前記最大加重により誘発される曲げ応力の方向と反対に前記ファスナーの前記軸部の曲げ応力を減ずるように部品内の締結穴の軸に対して90度以外の角度に傾斜していることを特徴とする請求項1記載の継手。
【請求項4】
前記継手が互いに対向し前記ファスナーにより共に保持されるジョイント面を有し、前記ジョイント面の一部は前記ジョイント面間に前記最大負荷加重により誘発された曲げ応力の方向と反対方向の前記ファスナーの前記軸部内の曲げ応力を誘発する非支持間隙を規定することを特徴とする請求項1記載の継手。
【請求項5】
前記部品内に伸び且つ前記ファスナー軸部を受け入れる穴が前記部品の一方に第1部分及び他方の部品に第2部分を有し、前記第1部分は前記最大負荷加重により誘発される曲げ応力の方向と反対方向の前記ファスナー内に曲げ応力を誘発するように第2部分に対して傾斜していることを特徴とする請求項1記載の継手。
【請求項6】
前記第2部分がネジ切りされていることを特徴とする請求項5記載の継手。
【請求項7】
前記第1部分が前記第1部分の軸とほぼ直交する締結座面の近傍であることを特徴とする請求項5記載の継手。
【請求項8】
前記継手がベアリングキャップを前記接続ロッドのロッド部に接続する接続ロッド内の継手であることを特徴とする請求項1記載の継手。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−516391(P2007−516391A)
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538241(P2006−538241)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【国際出願番号】PCT/US2004/035796
【国際公開番号】WO2005/045262
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(505454410)ジーケーエヌ シンター メタルズ, インコーポレーテッド (9)
【氏名又は名称原語表記】GKN SINTER METALS, INC.
【住所又は居所原語表記】N112 W18700 Mequon Road, Germantown, WI 53022, U.S.A.
【Fターム(参考)】