説明

継手

【課題】 複合パイプを接続しても、継手本体の金属と複合パイプの端面に露出した金属層とが接触するような事態を回避しながら、カシメ式継手のように専用の圧縮治具を用いることなく複合パイプを簡易に接続することのできるワンタッチ式の継手を提供すること。
【解決手段】 爪12を備えた割りリング11が予め嵌込まれている袋ナット7を、Oリング17が取り付けられた内筒部3およびこの内筒部3とで環状溝4を形成する外筒部5を有する継手本体1に接続し、合成樹脂層6a,6a間にアルミニウムなどの金属材料よりなる金属層6bが挟着された少なくとも3層構造を有する複合パイプ6を、内筒部3に挿通される案内リング15を介して、袋ナット7側から前記環状溝4に差し込んで前記爪12を複合パイプ端部Eの外周面jに食い込ませることにより複合パイプ6の抜け止めを可能にするワンタッチ式の金属製継手24である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、合成樹脂材料よりなる樹脂パイプを接続する継手、および、合成樹脂層間にアルミニウムなどの金属材料よりなる金属層が挟着された少なくとも3層構造を有する複合パイプを接続する継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
給水と給湯の配管工事に際して、給水主管と、給湯設備からの給湯主管とを屋内に引き込んで、これら給水主管および給湯主管を給水用の配管用ヘッダーおよび給湯用の配管用ヘッダーにそれぞれ接続し、これら各ヘッダーと、例えば洗面所の湯水混合栓の上流に位置する各止水栓とを接続する水供給管、湯供給管として、架橋ポリエチレンまたはポリブテンなどの熱に強く、変形しにくく、錆びることがないなど優れた耐久性を備えた樹脂パイプを蛇腹状の鞘管に挿通して成るものが使用されており、それによって、水漏れ等の場合に鞘管はそのままにして前記樹脂パイプの両端の接続を解除するだけで鞘管内から前記樹脂パイプを取り出し、入れ替えできる点で利便性がある。
【0003】
前記架橋ポリエチレンまたはポリブテンなどの合成樹脂材料よりなる樹脂パイプが接続される継手は、爪を備えた割りリングが予め嵌込まれている袋ナットを、Oリングが取り付けられた内筒部およびこの内筒部とで環状溝を形成する外筒部を有する継手本体に接続し、樹脂パイプを、袋ナット側から前記環状溝に差し込んで前記爪を樹脂パイプ端部の外周面に食い込ませることにより樹脂パイプの抜け止めを可能にするワンタッチ式の金属製継手である。
【0004】
一方、前記樹脂パイプが接続される継手以外に、複合パイプが接続される金属製の継手が下記特許文献1に提案されている。前記複合パイプは、架橋ポリエチレンまたは耐熱ポリエチレンなどの合成樹脂材料とアルミニウムなどの金属材料とからなり、例えば合成樹脂層間にアルミニウムの金属層が挟着された3層構造を有している。そして、前記特許文献1に記載されている金属製の継手では、架橋ポリエチレンまたはポリブテンよりなる上述した樹脂パイプの使用時においては発生し得なかった、複合パイプを接続することにより生じるおそれのある特有の問題を解決している。
【0005】
すなわち、特許文献1に記載されている金属製の継手は、継手本体に、複合パイプが外嵌しうる筒部を設け、この筒部の外側で、筒部との間に、複合パイプ嵌入用の環状溝を形成するよう金属製の薄コアを設け、少なくとも環状溝の底に当該底を覆う絶縁シートを設け、環状溝に嵌入される複合パイプの端面が前記絶縁シートに当接することにより、継手本体の金属と、複合パイプ端面に露出している金属層とが接触することがないように構成されてなるもので、仮に継手本体の金属と複合パイプの金属層とが接触し、かつ、これら金属間に例えばリークによる水が存在した場合、継手本体の金属と複合パイプの金属層のうち平衡電極電位が大きい方の金属が酸化され、腐食するとともに、金属層を伝わって、例えば給湯器側に電流が流れるといった危険な状態に陥るおそれがあるが、前記絶縁シートにより金属同士の接触がないので継手本体の金属や複合パイプの金属層の腐食を防止でき、かつ、前記危険な状態に陥る事態を回避できるようにしたものである。
【0006】
【特許文献1】 特開2004−125016号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前者の樹脂パイプが接続される継手では、樹脂パイプを直接環状溝まで差し込む(挿入する)ことから、差し込み途中においては樹脂パイプがOリングに当たってOリングが樹脂パイプで潰されるが、その際、切断されたままの荒い樹脂パイプ端面がOリングを傷つけたり、最悪の場合Oリングを切断したりするおそれがあるとともに、爪を備えた割りリングによって樹脂パイプがその端面で差し込むことができずに止まってしまい、樹脂パイプを環状溝へ差し込み難くなるという問題がある。
【0008】
また、後者の特許文献1に記載されている継手は、前記薄コアの外面を圧縮変形させて複合パイプを継手本体に接続するよう構成された、いわゆる、カシメ式継手であるために、専用の圧縮治具が必要である。
【0009】
この発明の第1の目的は、樹脂パイプを用いた場合において、その挿入時にOリングを傷つけたり、挿入し難くなる事態を防止できるワンタッチ式の継手を提供することである。また、この発明の第2の目的は、複合パイプを接続しても、継手本体の金属と複合パイプの端面に露出した金属層とが接触するような事態を回避しながら、カシメ式継手のように専用の圧縮治具を用いることなく複合パイプを簡易に接続することのできるワンタッチ式の継手を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記第1の目的を達成するために、この発明の継手は、爪を備えた割りリングが予め嵌込まれている袋ナットを、Oリングが取り付けられた内筒部およびこの内筒部とで環状溝を形成する外筒部を有する継手本体に接続し、架橋ポリエチレンまたはポリブテンなどの合成樹脂材料よりなる樹脂パイプを、袋ナット側から前記環状溝に差し込んで前記爪を樹脂パイプ端部の外周面に食い込ませることにより樹脂パイプの抜け止めを可能にするワンタッチ式の金属製継手であって、樹脂パイプは内筒部に挿通される案内リングを介して前記環状溝に差し込まれるよう構成されており、さらに、前記案内リングは、前記Oリングに損傷を与えることなく前記割りリングを通過可能なように、下端面が湾曲面、あるいは、末広がり状のテーパ面に形成されており、しかも、前記案内リングは、前記樹脂パイプ端部が挿入されるよう形成された環状のパイプ挿入溝を有することを特徴としている(請求項1)。
【0011】
また、上記第2の目的を達成するために、この発明の継手は、爪を備えた割りリングが予め嵌込まれている袋ナットを、Oリングが取り付けられた内筒部およびこの内筒部とで環状溝を形成する外筒部を有する継手本体に接続し、合成樹脂層間にアルミニウムなどの金属材料よりなる金属層が挟着された少なくとも3層構造を有する複合パイプを、内筒部に挿通される案内リングを介して、袋ナット側から前記環状溝に差し込んで前記爪を複合パイプ端部の外周面に食い込ませることにより複合パイプの抜け止めを可能にするワンタッチ式の金属製継手であって、前記案内リングは、前記複合パイプ端部が挿入されるよう形成された環状のパイプ挿入溝を有するとともに、複合パイプ端面が当接するよう前記パイプ挿入溝内に予め設けられ複合パイプ端面が前記案内リングに直接接触するのを防止しうる環状の絶縁パッキンを有することを特徴としている(請求項2)。
【0012】
また、この発明は別の観点から、架橋ポリエチレンまたは耐熱ポリエチレンなどの合成樹脂材料よりなる合成樹脂層間にアルミニウムなどの金属材料よりなる金属層が挟着された少なくとも3層構造を有する複合パイプを接続するワンタッチ式の金属製継手であって、一端に接続部を有し、この接続部の内側に一端側から他端側に向かって延設された内筒部を有する一方、前記接続部から他端側に向かって前記内筒部よりは短く延設され前記内筒部とで環状溝を形成する外筒部を有するとともに、この外筒部の外周面に雄ねじを有する継手本体と、下流側から順次、前記外筒部の前記雄ねじに螺合する雌ねじが形成された雌ねじ部、この雌ねじ部の内径よりも短い内径の環状面および複合パイプの外周が当接するパイプ挿通穴部を有する袋ナットと、この袋ナットの前記雌ねじ部の側から前記袋ナットに予め嵌め込まれて前記環状面に配置される爪付きの割りリングと、前記内筒部に予め挿通されており、複合パイプに押されながら複合パイプと共に前記環状溝に差し込まれる案内リングとを備え、前記内筒部は、前記複合パイプ挿通穴部および/または前記環状面に対向する外周面に、上下複数のOリングを有するとともに、前記袋ナットを前記継手本体に接続したときに前記袋ナットの前記環状面およびパイプ挿通穴部と前記内筒部との間に、前記環状溝に連通するパイプ挿通用の環状空間が形成され、この状態で、案内リングを介して前記複合パイプを前記環状空間から前記継手本体の前記環状溝まで差し込むと、前記割りリングの前記爪が複合パイプ端部の外周面に食い込むように構成されており、さらに、前記案内リングは、前記複合パイプ端部が挿入されるよう形成された環状のパイプ挿入溝を有するとともに、複合パイプ端面が当接するよう前記パイプ挿入溝内に予め設けられ複合パイプ端面が前記案内リングに直接接触するのを防止しうる環状の絶縁パッキンを有することを特徴とする継手を提供する(請求項3)。
【発明の効果】
【0013】
この発明では、架橋ポリエチレンまたはポリブテンなどの合成樹脂材料よりなる樹脂パイプを、内筒部に挿通される案内リングを介して環状溝に差し込まれるよう構成し、案内リングの下端面を、湾曲面、あるいは、末広がり状のテーパ面に形成したので、樹脂パイプの挿入時にOリングを傷つけたり、爪を備えた割りリングによって挿入し難くなる事態を防止できる。すなわち、樹脂パイプの端部を案内リングに形成されているパイプ挿入溝に挿入し、案内リングを装着した状態で樹脂パイプは差し込み側へと進むが、その途中で案内リングの下端面がOリングに当たりながら案内リングはOリングを引っ込ませた状態で、かつ、案内リングの下端面が爪に当たりながら割りリングを拡径した状態で進むことになる。
【0014】
また、この発明では、Oリングが取り付けられた内筒部およびこの内筒部とで環状溝を形成する外筒部を有する継手本体に、爪を備えた割りリングが予め嵌込まれている袋ナットが接続された状態で、袋ナット側から、前記内筒部に挿通される案内リングを介して複合パイプ端部を、前記環状溝の奥まで差し込むだけの容易なワンタッチ作業で、カシメ式継手のような専用の圧縮治具を用いることなく複合パイプを接続することができる。そして、複合パイプを袋ナット側から前記環状溝に差し込むことにより、前記爪が複合パイプ端部の外周面に食い込む抜け止め作用によって複合パイプの戻りを防止できる。
【0015】
また、この発明では、複合パイプを差し込む前に、前記案内リングのパイプ挿入溝内に予め環状の絶縁パッキンを設けるとともに、金属層が露出している複合パイプ端面が絶縁パッキンに当接するよう複合パイプ端部をパイプ挿入溝に挿入させた状態で、複合パイプの差し込み作業を開始することから、差し込み完了時の接続状態において、継手本体の金属と複合パイプ端面に露出した金属層とが接触する事態を回避できることは勿論、案内リングの金属と前記露出金属層とが接触する事態も回避できる。
すなわち、この発明では、案内リングのパイプ挿入溝内に絶縁パッキンを介して複合パイプ端面が位置するように構成されているので、絶縁パッキンおよび案内リングによって複合パイプ端面が継手本体と接触しないように仕切られているとともに、絶縁パッキンによって複合パイプ端面が案内リングと接触しないように仕切られている。そのため、この発明では、使用状態において仮にリークした水が案内リングのパイプ挿入溝内に進入した場合、複合パイプ端面が絶縁パッキンに当接しているので、進入した水が、複合パイプ端面と案内リング間に存在したり、ましてや複合パイプ端面と継手本体間に存在するような事態は決して起こることはなく、水の存在による平衡電極電位が大きい、複合パイプの前記金属層、継手本体の金属、案内リングの金属のいずれかの金属が酸化され、腐食するといった事態になるのを確実に防止できるとともに、前記金属層を伝わって、例えば給湯器側に電流が流れるといった危険な状態に陥る事態を回避できる。
【0016】
また、複合パイプの継手の接続形態として、この発明で用いるワンタッチ式のもの、従来例で説明したカシメ式のもの以外に、袋ナットを締込むタイプのねじ込み式のものも考えられるが、ねじ込み式の継手では、定期的に継手を取り外す必要のある場所に施工した場合、施工後に袋ナットのトルク管理が必要である。しかし、この発明に係る継手は複合パイプを継手本体の環状溝に挿入するだけで接続できるワンタッチ式の継手であることから、袋ナットのトルク管理は必要とせず、ねじ込み式に比べて施工性を良好にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明の実施例を、図を参照しながら説明する。なお、それによってこの発明は限定されるものではない。
【0018】
図1〜図5は、この発明の一つの実施の形態を示す。図1(A)は、複合パイプと、複合パイプ端面が当接する環状の絶縁パッキンが設けられている環状のパイプ挿入溝を備えた案内リングを示し、図1(B)および図1(C)はそれぞれ、絶縁パッキンの平面図および断面図を示している。図2〜図4は、複合パイプと継手の接続手順を示している。また、図5は爪を備えた割りリングの断面図である。
図1〜図5において、1は、金属製(例えば、鉛を含まない銅合金製)の継手本体である。この継手本体1は、下流端に雄ねじ部2(接続部の一例)を有し、この雄ねじ部2の内側に下流端側から上流端側に向かって延設された内筒部3を有する一方、雄ねじ部2から上流端側に向かって内筒部3よりは短く延設され内筒部3とで環状溝4を形成する外筒部5を有するとともに、この外筒部5の外周面に雄ねじmを有する。雄ねじ部2には例えば給湯器の上流側接続部が接続される。
6は、前記環状溝4に挿入される例えば3層構造を有する複合パイプである。この複合パイプ6は、架橋ポリエチレンまたは耐熱ポリエチレンなどの熱に強く、変形しにくく、錆びることがないなど優れた耐久性を備えた合成樹脂材料とアルミニウムなどの金属材料とからなる。この実施の形態では、複合パイプ6は合成樹脂層6a,6a間にアルミニウムの金属層6bが挟着されてなる。
7は、金属製の袋ナットで、下流側から順次、外筒部5の雄ねじmに螺合する雌ねじnが形成された雌ねじ部8と、この雌ねじ部8の内径よりも短い内径の環状面9と、複合パイプ6の外周jが当接する複合パイプ挿通穴部10とを有する。
11は、複数の爪12が設けられた割りリングで、例えばステンレス製である。この割りリング11は、バネ性を有するもので、袋ナット7の前記雌ねじ部8の側から袋ナット7内に嵌め込まれて前記環状面9に配置される。前記割りリング11は、正面視横長の矩形形状をなす薄いステンレス板の一方面Fに鋸歯形状に突出形成された複数の爪12を上下に有するとともに、複数の爪12が内周面に位置するように前記ステンレス板を包むようにリング状に丸めて成形されている。この実施の形態では、ステンレス板の一方面Fに突出形成された爪12のステンレス板の一方面Fに対する下向き突出傾斜角度を45°に設定している。前記爪12は、ステンレス板の横方向に沿って、かつ、上下例えば2列に多数設けている。そして、前記割りリング11を雌ねじ部8の側から袋ナット7内に予め嵌め込むときは、割りリング11を径方向に縮めながら行うのが好ましい。
上記構成では、袋ナット7を継手本体1に接続したときに、袋ナット7の環状面9および複合パイプ挿通穴部10と内筒部3間に、環状溝4に連通する複合パイプ挿通用の環状空間Sが形成される。そして、この環状空間Sを介して複合パイプ6を環状溝4まで差し込むと、前記割りリング11の前記多数の爪12が複合パイプ6の外周面jに食い込み、これにより、複合パイプ6を継手本体1に確実に接続できる。
更に、前記内筒部3は、複合パイプ挿通穴部10または環状面9に対向する外周面tに、上下複数のOリング溝14を有し、Oリング溝14にOリング17が嵌め込まれている。Oリング17は、複合パイプ6の挿入時の内面iを水密にシールするための部材である。
また、継手本体1は、環状溝4が位置する部分に平面視円形で小径の横穴18を有する。この横穴18の数は1個でも複数個でもよい。前記横穴18に、複合パイプ6に押されて環状溝4の底4aに当接するまで移動するステンレスなどの金属製または合成樹脂製の案内リング(スリーブ)15によって横穴18から外側に突出するよう構成された差し込み動作終了の目安となる手段を備えている。この手段は、横穴18に嵌まり込む大きさを有する円柱部20と円錐部21よりなる嵌込部材22と、円板状のキャップ部材23とで構成される。嵌込部材22とキャップ部材23は合成樹脂製である。そして、嵌込部材22は、図2に示すように、円錐部21が環状溝4に位置するよう横穴18に嵌め込まれるとともに、キャップ部材23を横穴18に嵌め込むことで嵌込部材22がキャップ部材23で覆われる。そして、継手本体(オスアダプター本体)1、袋ナット7、爪12付きの割りリング(バネリング)11、案内リング(スリーブ)15、嵌込部材22およびキャップ部材23とで複合パイプ用のワンタッチ式の金属製継手24が主として構成される。
また、前記複合パイプ6は、内筒部3に挿通される案内リング15を介して環状溝4に差し込まれるよう構成されている。すなわち、前記案内リング15は、複合パイプ6の挿入時のガイドをする部材であって、下端面16がOリング(ゴムリング)17に損傷を与えないように、また、案内リング15の爪12を通過しやすくするために、緩やかに湾曲した湾曲面に形成されてなる。また、下端面16を末広がり状のテーパー面に形成してもよい。具体的には、前記案内リング15の下端面16の内側面部分(内側エッジ面部分)16aが前記Oリング溝14に嵌め込まれている表面が山形形状に突出しているOリング(ゴムリング)17に損傷を与えないように緩やかに湾曲した湾曲面に形成されてなる。すなわち、前記案内リング15は、先端の湾曲面16でOリング17を引っ込ませ、割りリング11を拡径する部材である。また、Oリング17に損傷を与えないように下端面16の内側面部分(内側エッジ面)16aを末広がり状のテーパー面に形成してもよい。また、下端面16の外側面部分(外側エッジ面)16bも緩やかに湾曲した湾曲面や末広がり状のテーパー面に形成することにより、案内リング15の爪12を通過しやすくできる。すなわち、案内リング15を用いずに複合パイプ6を直接差し込むと、環状空間Sにおいて複合パイプ6がOリング17に当たってOリング17が複合パイプ6で潰されるが、その際、切断されたままの荒い複合パイプ端面6cがOリング17を傷つけたり、最悪の場合切断したりするからである。また、案内リング15を用いずに複合パイプ6を直接差し込むと、環状空間Sにおいて割りリング11によって複合パイプ端面6cで止まってしまい、それ以降複合パイプ6が環状溝4にまで挿入できなくなるおそれがある。
【0019】
以下、この発明の特徴的構成について説明する。
前記案内リング15は、有底のリング本体よりなり、複合パイプ6の端部Eが挿入されるよう形成された環状のパイプ挿入溝26をリング本体の上面側に有するとともに案内リング15の下端面16はOリング(ゴムリング)17に損傷を与えないように、また、案内リング15を進みやすくするために、緩やかに湾曲した湾曲面に形成されている。また、前記案内リング15は、複合パイプ端面Eが当接するようパイプ挿入溝26内に予め設けられ複合パイプ端面Eが前記案内リング15に直接接触するのを防止しうる環状の絶縁パッキン27を有する。絶縁パッキン27は断面矩形形状をなしており、案内リング15の内面先端(パイプ挿入溝26の下端面側)に装着される。
【0020】
而して、このワンタッチ式の金属製継手24は、工場出荷の段階で組み立てを完成させておく。
すなわち、爪12付きの割りリング11が袋ナット7の環状面9に組み込まれる一方、嵌込部材22およびキャップ部材23が、図3に示すように、継手本体1の横穴18に嵌込まれ、更に、複合パイプ挿通穴部10の上面qと内筒部3の上面pとが略面一になるよう袋ナット7と継手本体1が接続されるとともに、絶縁パッキン27をパイプ挿入溝26内に収納した案内リング15が、複合パイプ挿通穴部10および内筒部3間の環状空間Sに予め嵌込まれた状態でワンタッチ式の金属製継手24が工場出荷されるものである。このように、袋ナット7と継手本体1が接続された時点で案内リング15と割りリング11の位置は固定されるように構成されている。また、袋ナット7は、接着剤などを塗布して戻らなくして継手本体1に接続してある。
そのため、施工現場においては、作業者は、金属製継手24を手にしてこの金属製継手24の環状空間Sを介して案内リング15および複合パイプ6の順に両者15,6を環状溝4まで差し込むだけの極めて容易な作業を行うだけでよく、カシメ式継手のように専用の圧縮治具を用いることなく複合パイプ6を簡易に接続することができる。
つまり、この発明では、図2に示すように、作業者は、パイプ挿入溝26を介して、複合パイプ6を案内リング15内に挿入しながら複合パイプ差し込み動作を開始する。複合パイプ端面6aがパイプ挿入溝26内の絶縁パッキン27に当たりながら、複合パイプ6は案内リング15を装着した状態で環状空間S内を奥へと進み、図3に示すように、Oリング17を引っ込ませながら、かつ、割りリング11を拡径しながら環状空間Sから環状溝4へと進む。この際、Oリング17は案内リング15が通り抜けると、複合パイプ内面iと密着し、水密シール性を持つようになる。また、割りリング11は、案内リング15が通り抜けると、バネ性が戻り、割りリング11の複数の爪12で複合パイプ6の戻りを防止する(抜け止め)。また、バネの力で割りリング11は複合パイプ6を圧縮し、内筒部3およびOリング17と複合パイプ内面iのシール性を高める。さらに、複合パイプ6を奥へと進めると、図4に示すように、案内リング15の差し込み力によって案内リング15の湾曲面15cが円錐部21の円錐面30に当たりながら案内リング15は環状溝4に沿って環状溝4の底面4aに向かう。そして、湾曲面15cと円錐面30を介して案内リング15を嵌込部材22が滑ることにより嵌込部材22がキャップ部材23と共に横穴18を外方向(C方向)に移動し、その結果、横穴18からキャップ部材23が飛び出して落下する。このキャップ部材23の落下が複合パイプ差し込み動作終了の目安となる。なお、嵌込部材22とキャップ部材23に異なる色をつけるのが好ましい。キャップ部材23が飛び出すのを作業者は容易に確認できるからである。
さらに、複合パイプ6を差し込む前に、前記案内リング11のパイプ挿入溝26内に予め環状の絶縁パッキン27を設けるとともに、金属層6bが露出している複合パイプ端面6cが絶縁パッキン27に当接するよう複合パイプ端部Eをパイプ挿入溝26に係合させた状態で、複合パイプ6の差し込み作業を開始することから、差し込み完了時の接続状態において、継手本体1の金属と複合パイプ端面6cに露出した金属層6bとが接触する事態を回避できることは勿論、案内リング11の金属と前記露出金属層6bとが接触する事態も回避できる。
【0021】
図6は、架橋ポリエチレンまたはポリブテンなどの合成樹脂材料よりなる樹脂パイプ6’が接続される継手24’に係るこの発明の他の実施の形態を示す。図6において、図1〜図5に示した符号と同一のものは同一または相当物である。
図6において、この実施の形態の前記架橋ポリエチレンまたはポリブテンなどの合成樹脂材料よりなる樹脂パイプ6’が接続される継手24’は、爪12を備えた割りリング11が予め嵌込まれている袋ナット7を、Oリング17が取り付けられた内筒部3およびこの内筒部3とで環状溝4を形成する外筒部5を有する継手本体1に接続し、樹脂パイプ6’を、袋ナット側から前記環状溝4に差し込んで前記爪12を樹脂パイプ端部Eの外周面jに食い込ませることにより樹脂パイプ6’の抜け止めを可能にするワンタッチ式の金属製継手である。
さらに、樹脂パイプ6’は内筒部3に挿通されるステンレスなどの金属製または合成樹脂製の案内リング(スリーブ)15を介して前記環状溝4に差し込まれるよう構成されている。そして、前記案内リング15は、前記Oリング17に損傷を与えることなく前記割りリング11を通過可能なように、下端面16が湾曲面、あるいは、末広がり状のテーパ面に形成されており、しかも、前記案内リング15は、前記樹脂パイプ端部Eが挿入されるよう形成された環状のパイプ挿入溝26を有する。
【0022】
而して、架橋ポリエチレンまたはポリブテンなどの合成樹脂材料よりなる樹脂パイプ6’を、内筒部3に挿通される案内リング15を介して環状溝4に差し込まれるよう構成し、案内リング15の下端面16を、湾曲面、あるいは、末広がり状のテーパ面に形成したので、樹脂パイプ6’の挿入時にOリング17を傷つけたり、爪12を備えた割りリング11によって挿入し難くなる事態を防止できる。すなわち、樹脂パイプ端部Eを案内リング15に形成されているパイプ挿入溝26に挿入し、案内リング15を装着した状態で樹脂パイプ6’は差し込み側へと進むが、その途中で案内リング15の下端面16がOリング17に当たりながらOリング17に傷つけることなく案内リング17はOリング17を引っ込ませた状態で、かつ、案内リング15の下端面16が爪11に当たりながら案内リング15は爪11によってその通過を阻止されることなくスムーズに、かつ、割りリング11を拡径した状態で進むことになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】 (A)は、この発明の一つの実施の形態における複合パイプと、複合パイプ端面が当接する環状の絶縁パッキンが設けられている環状のパイプ挿入溝を備えた案内リングを示す分解斜視図である。(B)は、上記実施の形態における絶縁パッキンの平面図である。(C)は、上記実施の形態における絶縁パッキンの断面図である。
【図2】 上記実施の形態における複合パイプとの接続開始の状態を示す構成説明図である。
【図3】 上記実施の形態における複合パイプとの接続途中の状態を示す構成説明図である。
【図4】 上記実施の形態における複合パイプとの接続完了後の状態を示す構成説明図である。
【図5】 上記実施の形態における案内リングの断面図である。
【図6】 この発明の他の実施の形態における樹脂パイプとの接続完了後の状態を示す構成説明図である。
【符号の説明】
【0024】
1 継手本体
3 内筒部
4 環状溝
5 外筒部
6 複合パイプ
6a 合成樹脂層
6b 金属層
6c 複合パイプ端面
7 袋ナット
11 割りリング
12 爪
15 案内リング
17 Oリング
24 金属製継手
26 パイプ挿入溝
27 絶縁パッキン
E 複合パイプ端部
j 外周面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
爪を備えた割りリングが予め嵌込まれている袋ナットを、Oリングが取り付けられた内筒部およびこの内筒部とで環状溝を形成する外筒部を有する継手本体に接続し、架橋ポリエチレンまたはポリブテンなどの合成樹脂材料よりなる樹脂パイプを、袋ナット側から前記環状溝に差し込んで前記爪を樹脂パイプ端部の外周面に食い込ませることにより樹脂パイプの抜け止めを可能にするワンタッチ式の金属製継手であって、
樹脂パイプは内筒部に挿通される案内リングを介して前記環状溝に差し込まれるよう構成されており、さらに、前記案内リングは、前記Oリングに損傷を与えることなく前記割りリングを通過可能なように、下端面が湾曲面、あるいは、末広がり状のテーパ面に形成されており、しかも、前記案内リングは、前記樹脂パイプ端部が挿入されるよう形成された環状のパイプ挿入溝を有することを特徴とする継手。
【請求項2】
爪を備えた割りリングが子め嵌込まれている袋ナットを、Oリングが取り付けられた内筒部およびこの内筒部とで環状溝を形成する外筒部を有する継手本体に接続し、合成樹脂層間にアルミニウムなどの金属材料よりなる金属層が挟着された少なくとも3層構造を有する複合パイプを、内筒部に挿通される案内リングを介して、袋ナット側から前記環状溝に差し込んで前記爪を複合パイプ端部の外周面に食い込ませることにより複合パイプの抜け止めを可能にするワンタッチ式の金属製継手であって、
前記案内リングは、前記複合パイプ端部が挿入されるよう形成された環状のパイプ挿入溝を有するとともに、複合パイプ端面が当接するよう前記パイプ挿入溝内に予め設けられ複合パイプ端面が前記案内リングに直接接触するのを防止しうる環状の絶縁パッキンを有することを特徴とする継手。
【請求項3】
架橋ポリエチレンまたは耐熱ポリエチレンなどの合成樹脂材料よりなる合成樹脂層間にアルミニウムなどの金属材料よりなる金属層が挟着された少なくとも3層構造を有する複合パイプを接続するワンタッチ式の金属製継手であって、
一端に接続部を有し、この接続部の内側に一端側から他端側に向かって延設された内筒部を有する一方、前記接続部から他端側に向かって前記内筒部よりは短く延設され前記内筒部とで環状溝を形成する外筒部を有するとともに、この外筒部の外周面に雄ねじを有する継手本体と、
下流側から順次、前記外筒部の前記雄ねじに螺合する雌ねじが形成された雌ねじ部、この雌ねじ部の内径よりも短い内径の環状面および複合パイプの外周が当接するパイプ挿通穴部を有する袋ナットと、
この袋ナットの前記雌ねじ部の側から前記袋ナットに予め嵌め込まれて前記環状面に配置される爪付きの割りリングと、
前記内筒部に予め挿通されており、複合パイプに押されながら複合パイプと共に前記環状溝に差し込まれる案内リングとを備え、
前記内筒部は、前記複合パイプ挿通穴部および/または前記環状面に対向する外周面に、上下複数のOリングを有するとともに、前記袋ナットを前記継手本体に接続したときに前記袋ナットの前記環状面およびパイプ挿通穴部と前記内筒部との間に、前記環状溝に連通するパイプ挿通用の環状空間が形成され、この状態で、案内リングを介して前記複合パイプを前記環状空間から前記継手本体の前記環状溝まで差し込むと、前記割りリングの前記爪が複合パイプ端部の外周面に食い込むように構成されており、
さらに、前記案内リングは、前記複合パイプ端部が挿入されるよう形成された環状のパイプ挿入溝を有するとともに、複合パイプ端面が当接するよう前記パイプ挿入溝内に予め設けられ複合パイプ端面が前記案内リングに直接接触するのを防止しうる環状の絶縁パッキンを有することを特徴とする継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−25819(P2008−25819A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−224717(P2006−224717)
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【出願人】(505136402)株式会社三葉製作所 (9)
【出願人】(506250158)有限会社テックエスティ (2)
【Fターム(参考)】