説明

緊急データ通信のビークル搭載システム(IVS)制御

ビークル搭載システム(IVS)(図2)は位置データのようなデータを捕捉するとともに、緊急時には無線通信ネットワークを介して緊急電話対応オペレータ又はPSAP(図3)に対する呼出しを自動的に行う。音声呼出しセッションの確立後に、IVSシステムは、予め決定した制御信号を、音声チャネルを介して送信する。この制御信号は電話対応オペレータシステムに向けられてこの電話対応オペレータシステムがデータを受信する準備完了状態となるようにする(図4)。この制御信号は、少なくとも1つのオーディオ周波数トーンを有するようにするのが好ましい。このことは、人を介在させることなく行うことができる。このようにすることにより、緊急情報が正確に且つ最少遅延で送信されるようになる。必須情報の送信後に、IVSシステムは生の人の声による会話のためのオーディオ接続に切換えうる(図2)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビークル位置情報を含む緊急情報を、無線通信ネットワークを介して警察庁、消防庁、E911又はその他の公共安全当局に送信する、モータービークルシステムのようなビークル搭載システムに関するものである。
【0002】
[関連出願]
本出願は、2009年3月3日に出願された米国暫定特許出願第61/156,968号を優先権主張するものであり、この米国暫定特許出願は参考として導入したものである。
【0003】
[著作権勧告]
(c) 2009-2010 AIRBIQUITY INC. 本明細書の開示の一部には、著作権保護の対象となる資料が含まれる。著作権者は、米国特許商標庁のファイル又は記録に現れるときには、特許書面又は特許の開示のいずれによる複製にも異議を申し立てないが、その他に対しては全て著作権の権利を保有するものである。37CFR§1.71(d)
【背景技術】
【0004】
警察庁、消防庁、医療当局又はその他の公共安全当局への緊急呼出しは殆どの人にとって重要なことである。E911のような公共安全応答機関(又は緊急応答機関)、すなわちPSAPは米国においてほぼ至る所に存在する。E112サービスを用いる同様なサービスが欧州の殆どに存在する。これらの全ての場合、無線通信、例えば、携帯電話には、現存する固定電話技術を超える異なる技術的な障害が存在する。例えば、現在のシステムは、固定電話から呼出しを受けた場合に、緊急事態のオペレータがデータベース(ANI)における呼出し人の位置を探し得るようにするために存在するものである。無線の呼出しが到来した場合、呼出し人の位置を決定するのが不可能ではないにしても困難である。従って、適切な緊急要員及び装置の双方又は何れか一方を正確な位置に直ちに派遣するのが課題となる。
【発明の概要】
【0005】
以下のことは本発明を基本的に理解するための本発明の概要である。この概要は、本発明の主要な又は重要な要素を特定したり、本発明の範囲を確定したりするものではない。この概要の唯一の目的は、後の本発明の詳細な説明に対する予備段階として、本発明の幾つかの概念を簡単に提示することにあるものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の通信方法は、その一例では、モバイルシステムで、利用可能な無線通信ネットワークを検出するステップを有するようにする。モバイルシステムは、ビークル、例えば、モータービークルで実行しうる。利用可能な無線ネットワークの検出は、ビークルが移動している際に定期的に繰り返すことができる。以下に更に説明するように、少なくとも音声サービスのみは必要となる。
【0007】
本発明の通信方法では更に、検出された通信事業者(キャリヤ)を登録するステップと、緊急事象を検出するステップと、この緊急事象を表すデータを捕捉して記憶するステップとを必要とする。このデータには、緊急の種類、例えば、エアーバッグの展開又は火災を含めることができ、これにはビークルの現在位置を含めるのが好ましい。又、本発明の通信方法では更に、選択した電話対応オペレータサービスに対し無線通信ネットワークで無線音声呼出しセッションを開始するステップを必要とする。呼出しに対する緊急番号は予めプログラミングしておくことができる。検出された緊急の種類に応答して、PSAP番号の1つを選択することができる。
【0008】
一例では、本発明の通信方法では更に、音声呼出しセッションが確立された後に、予め決定した制御信号であって、無線通信ネットワークの音声符号化要素による破損を回避するために人の音声の声域内で選択した少なくとも1つのオーディオ周波数トーンを有する当該制御信号を、音声チャネルで自動的に送信するステップを実行する。システムは、選択した電話対応オペレータサービスから、このサービスがデータを受信する準備完了状態にあることを表す確認信号を受信するようにするのが好ましい。
【0009】
又、本発明の通信方法では、確認信号に応答して、デジタル無線通信ネットワークの音声符号化要素による破損を回避するために、帯域内信号伝達モデム技術を用いることにより音声チャネルセッションで記憶データを送信するステップを必要とする。
【0010】
ある例では、記憶データの送信後に、システムが、この記憶データの送信の終了を表す他の(第2の)制御信号を送信するようにしうる。
【0011】
本発明の他の態様は、緊急の場合に電話対応オペレータと連絡するとともに、帯域内の制御信号を送信することによりデータ送信を制御し、例えば、帯域内モデムを切換えることにより電話対応オペレータのシステムをデータ受信準備完了状態にするように構成されたビークル搭載システム(IVS)に関するものである。本発明の他の態様は、IVSを実行するソフトウェアに関するものである。
【0012】
本発明の更なる態様及び利点は、添付図面を参照して行う以下の好適実施例の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、アナログ電話とデジタル無線基地局との間の通信経路と、携帯電話の送受話器との一例を示す簡単化したブロック線図である。
【図2】図2は、ビークル搭載システム(IVS)の一例を示す簡単化したブロック線図である。
【図3】図3は、IVS及びPSAP(緊急応答機関)のモデムの機能要素の一実施例を示す簡単化したブロック線図である。
【図4】図4は、本発明による方法の一例を示す簡単化したメッセージの流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、無線通信ネットワークを介する無線音声呼出し、すなわち電話呼出しに対する代表的な通話路を示す簡単化したブロック線図である。図1の上側の線図は簡単化した携帯電話の送受話器を示す。マイクロホンから生じるアナログ音声信号はA/D変換器によりデジタル化され、その後に(8000サンプル/秒での)ボコーダの符号化アルゴリズム手段に供給される。エンコーダは圧縮データのパケット(代表的に20ミリ秒の音声フレーム当り1パケット)を生じ、このデータ流を無線送受信機に供給する。他方の側(図1の下側の線図)では、無線受信機がこれらのパケットを復号化アルゴリズム手段に供給し、次にこの復号化アルゴリズム手段により元の音声信号をPCMの流れとして(不完全であるが)再現する。このPCMの流れは、最終的にアナログ電圧に戻るように変換され、このアナログ電力がスピーカに供給される。
【0015】
この種類のシステムを用いる場合、周波数やタイミングを注意深く選択するとともに、情報を人間の音声データに“見せかける”ことによる情報の送信にボコーダを“偽装”させる特別な技術を用いることにより、(この場合、ボコーダ対話データではなく、ユーザデータを意味する)少量のデータを、“帯域内”で送信しうる。無線システムの音声チャネルを用いるこの種類のデータ通信は、しばしば“帯域内信号伝達”と称されている。このデータ通信は、従来の“固定電話”通信でよく知られている旧来のモデム(変調器‐復調器)を取り入れている“帯域内信号伝達モデム”と称されるハードウェア及びソフトウェアの双方又は何れか一方で実現しうる。
【0016】
以下に、ビークル搭載の“無線通信モジュール”を説明する。このようなモジュールは代表的に、ビークル内に組み込まれており、物理的にはドライバー又は乗客に見得るところには装着されていない。無線通信モジュールは、一実施例では、図2に示す“埋込式電話モジュール”に相当する。無線モジュールは、人間が介入することなしに動作して、例えば、後に説明するように緊急呼出しを開始するようにしうる。ある実施例では、ビークル搭載モジュールはマイクロホン又はスピーカを有さず、それにもかかわらず、ビークルのオーディオシステムを介して音声通信を達成するようにできる。
【0017】
幾つかの特許文献には、無線通信ネットワークの音声チャネルを介してデジタルデータを伝達する帯域内信号伝達の技術が開示されている。一例では、入力端がデジタルデータを受信する。このデジタルデータはエンコーダにより、人間の対話の周波数特性を、合成されたオーディオトーンに変換する。デジタルデータは、無線通信ネットワーク内の音声符号化回路が、デジタルデータを表す合成オーディオトーンを破損させないようにも符号化されている。その後、出力端が合成オーディオトーンをデジタル無線通信ネットワークの音声チャネルに出力する。ある場合には、“トーン”を有するデータが同時音声とともに送信される。これらのトーンは短く且つ比較的目立たないようにしうる。他の実施では、データが音声チャネルを介して送信されている間、しばしば“ブランク・バースト”と称されるように音声が遮断されるようになっている。更なる他の実施では、オーディオ周波数のスペクトルの一部が音声に対し用いられ、他の部分がデータに対し割り当てられている。このようにすることは、受信側で復号するのに役立つ。
【0018】
帯域内信号伝達では、通話の両端に適切な設備(例えば、帯域内モデム)が必要となる。この場合、モデムをターンオン及びターンオフさせる時を検出するのに課題が生じる。この課題は、一旦通話接続されている(リンクが確立されている)場合に、受信システムを(代表的にマイクロホンとスピーカとを用いている)音声動作モードから、音声(オーディオ)チャネルからデータを受信するように動作するデータモードにいつ切換える必要があるかである。この切換えは、自動的に、すなわち、人を介在させずに行うのが好ましい。無線ネットワークにおける従来の制御信号伝達では、帯域内でない制御チャネルが用いられている。音声チャネルでない制御チャネルでの信号伝達は通信事業者にとって所有権があり、従って、あらゆる顧客システムに利用できるものではない。
【0019】
本明細書で開示するのに用いたこの技術のアプリケーションの1つはモータービークルとの通信である。現在、多くのビークルが、無線ネットワークを介して通信を行うためのある種の機能を有している。これらのビークルシステムはテレマティックス顧客システムと称しうる。図2は、具体的なビークル搭載システム(IVS)を示す簡単化したブロック線図である。この図2は、代表的なテレマティックス顧客システムの関連部分の一例を示す。この顧客システムは、モータービークル環境で動作するように設計された埋込式ハードウェア及びソフトウェアより成る。
【0020】
この図2では、テレマティックスソフトウェアに“顧客アプリケーション”が含まれており、このアプリケーションは、殆どの如何なるアプリケーションにもすることができ、特に、無線ネットワークを介するデータ転送を採用するアプリケーションとすることができる。この顧客アプリケーションは例えば、ナビゲーション又はエンターティメントに関連させることができる。動作に当っては、顧客アプリケーションにより、データ(好ましくは、データパケット)を帯域内信号伝達のモデムに伝達する。この帯域内モデムは、データを(パケットヘッダ及び必要に応じた他のオーバーヘッドと一緒に)オーディオ周波数トーンに変換し、これらを“PCMスイッチ”に供給する。
【0021】
最近、ビークル搭載システム(IVS)は、幾つかの目的を達成するように開発されている。第1に、最近のIVSはビークル内に組み込まれた無線通信装置を有することができ、この無線通信装置によれば、たとえ搭乗者が、利用しうる携帯電話を有していない場合でも、緊急の場合に例えば、PSAPに通信しうるようになる。IVSの通信システムによれば、緊急通信に対し得られる1つ以上の無線ネットワーク(PLWN)の利点が得られるようにするのが好ましい。これらのネットワークは、“発呼側”(人又は機械)が他のネットワークサービスに対する加入者でない場合にも、E112又はE911のような緊急呼出しに対処するように構成することができる。このことは実際に、幾つかの管轄における法的必要条件となるものである。
【0022】
第2に、IVSは、衝突のようなある状況の下でビークルのドライバーが例えば、負傷又は意識消失の為に呼出しができない場合に自動的に呼出しするように構成することができる。音声による会話が不可能であるこのような場合には、それにもかかわらずビークルの位置のある種の表示を含む適切な情報がPSAPに首尾よく送信されれば、助けを求めることができる。
【0023】
この目的に向け、発展するある種の標準規格、例えば、欧州共同体における構想である“ eCall”によれば、ビークルに特有で高性能の位置情報を含む最小事故データ集合(MSD; Minimum Set of Data)により補間される、自動的に又は手動的に開始されるE112音声呼出しが提案されている。この情報を用いることにより、緊急サービスは事故の犠牲者に対し、正確に位置決めすることができるとともに、より急速な援助を提供でき、従って、人命をより一層救うことができるようになる。E112と同様に、ビークルからPSAPに送信されるMSDの完全性は確実なものにする必要がある。
【0024】
図3は、IVS及びPSAP(緊急応答機関)のモデムの機能要素の一実施例を示す簡単化したブロック線図である。この場合、IVSモデムは受信要素(Rx)と送信要素(Tx)とを有する。この線図も機能的なものであり、物理的なものではない。Rx及びTx要素は代表的に、DSPのような同じプロセッサで実行しうるソフトウェアで構成されている。PSAP又は他の電話対応オペレータ機関は、Tx及びRx要素に対し同様な帯域内モデム配列を有する。IVSモデムからPSAPモデムへの送信はアップリンク(UL)チャネルで示すことができ、その逆の方向はダウンリンク(DL)チャネルと称することができる。好適な実施例では、これらのチャネルを無線ボイスセッションにより、すなわち音声チャネルで実現されており、全二重で動作させることができる。
【0025】
一実施例では、最小事故データ集合(MSD)が、ビークル搭載システム(IVS)から、例えば利用可能な2G又は3Gモバイルネットワーク(MNO)を介して緊急応答機関(PSAP)に送信される。信号伝達としては種々の選択肢を用いることができるが、それにもかかわらず、以下に更に説明するように、“音声チャネル”又は“帯域内”通信処理をデータに対して用いることができるが、(人が話す意味での)有効な音声通信は想定できない。例えば、音声チャネルでの呼出しはIVSにより自動的に開始でき、この呼出しに対し、他の個所に適切に設けられた電話対応オペレータシステムにより自動的に“応答”を行うことができる。
【0026】
従って、PSAPに対する無線ネットワークを介する緊急呼出しには少なくとも2つのカテゴリーが存在しうる。ある場合には、音声呼出しが行われ、発呼側の生の人(ライブパーソン)が対話により電話対応オペレータ(他の生の人)と通信する。この場合、当事者が同意した場合にデータの伝送を後続させるか又は音声呼出し中に同時にデータの伝送を行うことができる。あるシステムでは、PSAPのサーバが信号を呼出しユニット(IVS)に送ってこの呼出しユニットに“データ送信を開始せよ”と命令することによりデータ転送を開始させる。このことは、例えば帯域内モデムを用いることにより、サーバがモデムによるデータの受信を可能にした後に行われる。
【0027】
ここでの開示は、主として他のカテゴリーの呼出し、すなわち緊急状態でIVSにより自動的に行われる呼出しに関するものである。この場合、この開示によれば、IVSがデータセッションの開始を制御する。一実施例では、当事者が人の声による会話で繋がる前にこの制御を行う。さもないと、生の会話を全く行うことができない。一実施例では、音声による会話が開始される前に、必須データ、例えば、MSDがPSAPで受信されるようにする。一実施例では、MSDを電話対応オペレータセンターで復号させて画面表示させるようにすることができる。情報は、警察職員、消防職員又は医療職員のような“第一応答者”に転送するためのソフトウェア制御の下でメッセージ内に導入することもできる。位置のようなデータを自動的に転送することにより、例えば、住所又は幹線道路番号をタイピングする際の人為的エラーの危険性を排除する。
【0028】
電話対応オペレータシステムではなくIVSがデータ転送を開始することにより、人間の介在を必要とせずに、遅延が最少となる。IVSがデータ転送を開始することによる他の利点は、PSAPにより通常のE112/E911緊急呼出しと、MSDデータ転送が後続するビークル緊急呼出しとを識別しうるということである。PSAPは、現存するE112/E911緊急呼出しをいかなる手順の変更をも行わずに通常のように支援し続けうるが、現存するモバイル通信ネットワークは、上述した実施により影響されない。
【0029】
緊急データのセッションを開始させるための、IVSからPSAPのサーバへの信号伝達は、種々の技術を用いて行うことができる。この信号伝達の制御は、音声チャネル内の接続を意味する“帯域内”で行うのが好ましい。その一実施例を図4に示す。この帯域内の“データのセッションの開始”の信号伝達には予め決定したオーディオ信号、すなわちトーンが含まれるようにしうる。このオーディオ信号は、1つ以上のオーディオ周波数を有するようにでき、且つ種々の波形を有するようにしうる。電話対応オペレータ装置(又はサーバ)は、どんな制御信号が選択されたかを認識するように構成されている。信号伝達の持続時間は、数十ミリ秒又は数百ミリ秒程度にするのが好ましい。信号伝達は、大きなデータパケット内で行うことができる。サーバ側の帯域内モデムは、“データのセッションの開始”の信号伝達を認識し、これに応答してデータの捕捉を開始するようにプログラミングされている。
【0030】
ある実施例では、サーバが確認信号をIVSに返信し、データのセッションを開始する指令を受けたことを確認するようにしうる。他の実施例では、サーバがデータを受信して直ちに確認信号をIVSに返信し、データの良好な受信を確認するようにしうる。一実施例を表す通信略図を図4に示す。
【0031】
IVSは、緊急データの送信後に呼出しセッションを終了させることができる。他の実施例では、IVSが制御信号をサーバに送信して、セッションが終了したことを表すようにする。この場合、サーバは、データセッションが成功したことや、呼出しセッションを安全に終了できることを確信しうる。従って、図示のようにIVSにより、又はPSAP/サーバにより、データセッションを終了させることができる。これらの追加の制御信号もオーディオトーンを用いて帯域内で送信するのが好ましい。この場合も、これらの制御信号が、予め決定した単一の周波数トーン又は複数のトーンの組み合わせを有するようにしうる。制御信号はメッセージ又はパケットの一部とすることができる。
【0032】
上述した処理は、例えば、搭載プロセッサで遂行するためにビークル側においてソフトウェアで実行する。そのプロセッサは、帯域内信号伝達モデムを実行するのと同じプロセッサとすることができる。このプロセッサは、接客サービスのような他のサービスに対しても用いられるビークル内の無線NADの一部にするか又はこの無線NADに結合させることができる。他の実施例では、ここで述べた処理は、携帯電話のようなユーザのパーソナル通信装置と、このユーザの携帯電話が必要な無線通信チャネルを提供するようにブルートゥース(Bluetooth;登録商標)のような短距離無線プロトコルを介して、通信するビークル内のソフトウェアで実行することができる。受信側、すなわち“電話対応オペレータ”側、例えば、政府機関又は“第一応答者”機関では、上述した方法を、ソフトウェアや、PBX、コンピュータ、サーバ又はその他のプロセッサで実行するのも好ましい。
【0033】
ソフトウェアという用語は一般的に理解されている意味で用いているものであり、機械又はプロセッサにより用い得るプログラム又はルーチン(サブルーチン、オブジェクト、プラグイン等)や、データを言及するものである。よく知られているように、コンピュータプログラムは一般に、機械可読又はコンピュータ可読記憶媒体に記憶された命令を有している。本発明のある実施例は、デジタルメモリのような機械可読又はコンピュータ可読記憶媒体に記憶された実行可能プログラム又は命令を有するようにしうる。通常の意味での“コンピュータ”は、如何なる特定の実施例でも必要とすることを必ずしも意味するものではない。例えば、モータービークルのような装置には、埋込式又はその他の種々のプロセッサを用いることができる。
【0034】
ソフトウェアを記憶するメモリもよく知られている。ある実施例では、所定のプロセッサと関連するメモリは、このプロセッサと同じ物理的装置に(“オンボード”メモリとして)設けることができ、例えば、RAM又はフラッシュメモリを集積回路のマイクロプロセッサ等の中に設けることができる。他の例では、メモリが、外付けのディスクドライブ、記憶アレイ又は携帯フラッシュキーフォブのような独立装置を有するようにする。このような場合には、例えば、入出力(I/O)ポート、ネットワーク接続等により、メモリとデジタルプロセッサとを互いに動作的に結合させるか、又は互いに通信するようにすることにより、これらを互いに“関連”させ、プロセッサがメモリに記憶されたファイルを読み取りうるようにする。関連させるメモリは、設計又はパーミッション設定により“読み取り専用”(ROM)にするか、又はこのようにしないようにすることができる。他の例は、WORM、EPROM、EEPROM、FLASH等を有するが、これらに限定されるものではない。これらの技術はしばしば、固体半導体装置で実行されている。他のメモリは、通常の回転ディスクドライブのような可動部を有しうる。このようなメモリは全て“機械可読”又は“コンピュータ可読”メモリであり、メールピース分類及びこれに関連する動作に対し本発明の種々の実施例を実行するための実行可能命令を記憶するのに用いることができる。
【0035】
“ソフトウェア製品”又は“コンピュータプログラム製品”は、一連の実行可能な命令が機械可読形態で記憶され、ソフトウェア製品に対する適切なアクセス手段を有する適切な機械又はプロセッサにより命令を遂行してこれら命令により実行される処理を達成しうるようにするメモリ装置を言及するものである。ソフトウェア製品はしばしば、ソフトウェアを配信するのに用いられている。上述したメモリ(これらに限定されない)を含む如何なる種類の機械可読メモリをも、ソフトウェア製品を形成するのに用いることができる。しかし、電子送信(“ダウンロード”)によりソフトウェアを配信しうることも知られており、この場合、代表的に送信側又は受信側或いはその双方の側に、対応するソフトウェア製品を存在させる。
【0036】
本発明の基本原理から逸脱することなく、上述した実施例の細部に多くの変形を施し得ることは、当業者にとって明らかである。従って、本発明の範囲は特許請求の範囲のみにより決定されるべきものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モバイルシステムで、利用可能な無線通信ネットワークを検出するステップと、
検出された通信事業者を登録する登録ステップと、
緊急事象を検出するステップと、
この緊急事象を表すデータを捕捉して記憶するステップと、
選択した電話対応オペレータサービスに対し無線通信ネットワークで無線音声呼出しセッションを開始するステップと、
この無線音声呼出しセッションの確立後に、予め決定した制御信号であって、無線通信ネットワークの音声符号化要素による破損を回避するために人の音声の声域内で選択した少なくとも1つのオーディオ周波数トーンを有する当該制御信号を、音声チャネルで自動的に送信するステップと、
前記選択した電話対応オペレータサービスから、このサービスが、データを受信する準備完了状態にあることを表す確認信号を受信するステップと、
この確認信号に応答して、無線通信ネットワークの音声符号化要素による破損を回避するために、帯域内信号伝達モデム技術を用いることにより無線音声呼出しセッションで記憶データを送信するステップと
を具える通信方法。
【請求項2】
請求項1に記載の通信方法において、この通信方法が更に、
記憶データを送信した後に、この記憶データの送信の終了を表す他の制御信号を送信するステップ
を具える通信方法。
【請求項3】
請求項1に記載の通信方法において、この通信方法が更に、
記憶データが送信された後に、確立された無線音声呼出しセッションを介する生の人の声の通信を可能にするステップ
を具える通信方法。
【請求項4】
請求項1に記載の通信方法において、この通信方法が更に、
どの無線通信ネットワークが用いられているかに応答して、前記制御信号に対する少なくとも1つのオーディオ周波数トーンを選択するステップ
を具える通信方法。
【請求項5】
請求項1に記載の通信方法において、この通信方法が更に、
前記確認信号が予め決定された時間内に受信されない場合に、前記制御信号に対するオーディオ周波数トーンの選択を異なる周波数に代えるとともに、この異なる周波数を用いる制御信号を再送するステップ
を具える通信方法。
【請求項6】
請求項1に記載の通信方法において、前記モバイルシステムがビークル搭載システム(IVS)を有するようにする通信方法。
【請求項7】
請求項1に記載の通信方法において、前記記憶データが前記モバイルシステムの現在位置を有するようにする通信方法。
【請求項8】
請求項1に記載の通信方法において、前記記憶データが少なくとも、予め決定した最小事故データ集合(MSD)を有するようにする通信方法。
【請求項9】
請求項1に記載の通信方法において、前記記憶データが、検出された緊急の種類を表す識別子を有するようにする通信方法。
【請求項10】
請求項1に記載の通信方法において、検出された緊急の種類に応答して、前記電話対応オペレータサービスが自動的に選択されるようにする通信方法。
【請求項11】
請求項1に記載の通信方法において、(ネットワークの混雑を緩和するために)緊急呼出しが必要となるまで、前記登録ステップが延期されるようにする通信方法。
【請求項12】
プロセッサを制御するためのコンピュータプログラムコードが記録されたコンピュータ可用媒体を具えるビークル搭載プラットホーム用コンピュータプログラム製品であって、前記コンピュータプログラムコードが、
ビークル内の緊急事象を検出するコンピュータプログラムコード手段と、
前記緊急事象を表すデータを捕捉するとともに記憶するコンピュータプログラムコード手段と、
電話対応オペレータに対する無線通信ネットワークで無線音声呼出しセッションを開始するコンピュータプログラムコード手段と、
予め決定した制御信号であって、無線通信ネットワークの音声符号化要素による破損を回避するために人の音声の声域内で選択した少なくとも1つのオーディオ周波数トーンを有する当該制御信号を、音声チャネルで自動的に送信するコンピュータプログラムコード手段と、
前記電話対応オペレータが、データを受信する準備完了状態にあることを表す確認信号を前記無線音声呼出しセッションにおいて受信するコンピュータプログラムコード手段と、
この確認信号に応答して、デジタル無線通信ネットワークの音声符号化要素による破損を回避するために、帯域内信号伝達モデム技術を用いることにより音声チャネルセッションを介して記憶データを送信するコンピュータプログラムコード手段と
を有するようにしたビークル搭載プラットホーム用コンピュータプログラム製品。
【請求項13】
請求項12に記載のビークル搭載プラットホーム用コンピュータプログラム製品において、前記コンピュータプログラムコードが更に、ビークルの現在位置を記憶データ中に含めるコンピュータプログラムコード手段を有するようにしたビークル搭載プラットホーム用コンピュータプログラム製品。
【請求項14】
請求項12に記載のビークル搭載プラットホーム用コンピュータプログラム製品において、前記コンピュータプログラムコードが更に、予め決定した最小事故データ集合(MSD)を送信データ中に含めるコンピュータプログラムコード手段を有するようにしたビークル搭載プラットホーム用コンピュータプログラム製品。
【請求項15】
請求項12に記載のビークル搭載プラットホーム用コンピュータプログラム製品において、前記コンピュータプログラムコードが更に、緊急の種類を表す識別子を送信データ中に含めるコンピュータプログラムコード手段を有するようにしたビークル搭載プラットホーム用コンピュータプログラム製品。
【請求項16】
請求項12に記載のビークル搭載プラットホーム用コンピュータプログラム製品において、前記コンピュータプログラムコードが更に、記憶データが送信された後に、たとえこの記憶データの送信が成功されなくても、確立された無線音声呼出しセッションを介する生の人の声の通信を可能にするコンピュータプログラムコード手段を有するようにしたビークル搭載プラットホーム用コンピュータプログラム製品。
【請求項17】
緊急通信用ビークル搭載システムであって、この緊急通信用ビークル搭載システムが、
デジタルプロセッサと、
このデジタルプロセッサと通信するように構成された緊急事象検出器と、
位置情報を前記デジタルプロセッサに提供するように構成されたGPS受信機と、
前記デジタルプロセッサに結合された、プログラムコード及びデータの双方又は何れか一方を記憶するメモリと、
携帯端末ユニットとして無線通信ネットワークと情報交換するように構成されているとともに前記デジタルプロセッサに動作的に結合された無線通信モジュールと、
前記デジタルプロセッサに結合されているか又はこのデジタルプロセッサでソフトウェアとして実行可能な帯域内モデムであって、前記無線通信モジュールに動作的に結合され、無線音声セッション中に音声チャネルにおいてデータを送信するようにした当該帯域内モデムと、
音声呼出しセッション中に帯域内送信されるデータを受信する準備完了状態にあるように電話対応オペレータシステムを設定するために、制御信号を音声チャネルで送信するように前記緊急通信用ビークル搭載システムを制御するアプリケーションソフトウェアと
を有するようにした緊急通信用ビークル搭載システム。
【請求項18】
請求項17に記載の緊急通信用ビークル搭載システムにおいて、この緊急通信用ビークル搭載システムが更に、記憶データの送信前に音声呼出しセッションが中断している場合に、PSAPからのコールバックを可能にする手段を前記アプリケーションソフトウェアに有するようにした緊急通信用ビークル搭載システム。
【請求項19】
請求項17に記載の緊急通信用ビークル搭載システムにおいて、前記アプリケーションソフトウェアは、緊急事象の検出に応答して無線呼出しを行う予め決定した基準に基づいて、利用可能な無線通信事業者の中から選択を行うように構成されている緊急通信用ビークル搭載システム。
【請求項20】
請求項17に記載の緊急通信用ビークル搭載システムにおいて、前記無線通信モジュールは、プロセッサが緊急事象を信号送信した後にのみ無線通信事業者を登録するように構成されている緊急通信用ビークル搭載システム。
【請求項21】
デジタルプロセッサを有する制御システムと、このデジタルプロセッサと通信するように構成された緊急事象検出器と、このデジタルプロセッサに位置情報を提供するように構成されたGPS受信機と、このデジタルプロセッサに結合され、プログラムコード及びデータの双方又は何れか一方を記録するメモリと、携帯端末ユニットとして無線通信ネットワークと情報交換するように構成されているとともに前記デジタルプロセッサに動作的に結合された無線通信モジュールとを具えるモータービークルに適用する緊急通信方法において、この緊急通信方法が、
緊急事象の検出に応答して、選択された目的の電話対応オペレータシステムに対し無線通信モジュールを介して無線電話呼出しセッションを自動的に開始するステップと、
この無線電話呼出しセッションが確立された後に、予め決定した制御信号を音声チャネルで送信して、データを受信する準備完了状態に電話対応オペレータシステムを設定するステップと、
その後に、ビークルの位置を含む緊急データであって、音声の符号化によるこの緊急データの破損を回避するように構成された帯域内モデムによりオーディオ周波数トーンに変換された当該緊急データを、音声チャネルにおいてモータービークルから電話対応オペレータシステムに送信するステップと
を具える緊急通信方法。
【請求項22】
請求項21に記載の緊急通信方法において、この緊急通信方法が更に、緊急データを送信する前で、制御信号の送信に続いて、電話対応オペレータシステムからの確認信号を待つステップを具える緊急通信方法。
【請求項23】
請求項21に記載の緊急通信方法において、前記緊急データがビークルの識別子、位置情報及びタイムスタンプを有するようにする緊急通信方法。
【請求項24】
請求項23に記載の緊急通信方法において、前記緊急データをソフトウェア制御下でメッセージに導入して、警察職員、消防職員又は医療職員のような第一応答者に転送するようにする緊急通信方法。
【請求項25】
請求項21に記載の緊急通信方法において、この緊急通信方法が更に、電話対応オペレータシステムからの他の確認信号を待つステップと、緊急データの受信を確認するステップと、その後に呼出しセッションを終了させるステップとを具える緊急通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−520015(P2012−520015A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553051(P2011−553051)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/025955
【国際公開番号】WO2010/101943
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(309032522)エアビクティ インコーポレイテッド (13)
【Fターム(参考)】