説明

緊急速報送出装置、緊急速報表示システムおよび緊急速報表示方法

【課題】視聴中のデジタル放送受信装置の画面またはスピーカーから緊急情報を早期に出力する緊急速報送出装置等を提供すること。
【解決手段】緊急速報送出装置10は、デジタル放送の少なくともオーディオおよびビデオのいずれかのパケットを緊急メッセージのデータと入れ替えて予め用意し、所定のメディアからの緊急速報情報を受信すると、入れ替えられた緊急メッセージをデジタル放送受信機(テレビ)20に送出し、デジタル放送受信機(テレビ)20は、緊急速報情報があった場合には、入れ替えられた緊急メッセージを表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊急地震速報の情報などを検出した時に、視聴中のデジタル放送受信装置に時間的な遅延を低減して素早く緊急メッセージを表示する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
災害の発生時等の緊急時には、テレビやラジオの放送局からの緊急放送、例えば緊急地震速報/緊急警報放送(EWS)/臨時ニュースなど、やインターネットを介したe−mail(電子メール)通知サービスなどにより、緊急時であることが通知される。
【0003】
デジタル放送(テレビ)の場合、映像/音声は、暗号化/圧縮してから送信するため、放送局から送信する際とテレビで受信してから元の映像/音声に戻す際のデータ処理に時間が掛かる。
【0004】
デジタルテレビでは視聴中の番組が送出している放送データ以外のデータ(他チャンネルの放送番組を含む)を画面に映そうとすると、切り換え処理に数秒程度の時間が掛かる。
【0005】
一般的に緊急情報は、その情報が送出されたメディアに対応した受信機、例えば、上記の例ではテレビ/ラジオやパソコンなど、だけでしか緊急情報を見聞きすることができない。
【0006】
また、衛星放送等の様に全国ネットの放送の場合は局地的な地震情報の場合視聴者は緊急事態であるのに知らずに視聴を続ける事となる。
【0007】
これまでは、電源OFF状態だが、完全に電源が切れているのではなく、受信機能は生きている状態で緊急警報放送等を検知すると、自動的に電源をONにして、受信した緊急放送の映像/音声をユーザーに通知したり、専用の緊急放送受信機を用いたり、地域の放送局から送信されるテレビやラジオ番組中に割り込む形で緊急番組を放送したりしていた。
【0008】
関連技術として、選択されている映音像信号源の種類に関係なく、緊急報知メッセージを受信して視聴者に表示できる緊急報知メッセージ自動表示テレビジョン受像機を提供する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−209761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述の関連技術は、デジタル放送(テレビ放送)では、映像/音声を暗号化/圧縮してから送信するため、放送局から送信する際とテレビで受信してから元の映像/音声に戻す際のデータ処理に時間が掛かり、受信した放送波に重畳されていた緊急情報の検知から緊急事態を知らせる画音を出力するまでに、アナログ放送よりも数秒余分にかかってしまうことがあり、「緊急地震速報」の情報は地震がユーザー宅に到着した後で表示されるケースが発生するおそれがあった。
【0010】
また、デジタル放送受信機では、視聴中のチャンネルで送出されている番組データ以外のデータを画面に映すためには、切り換え処理のために数秒程度、映像/音声が途切れてしまうので、この間、緊急情報を表示することができなかった。
【0011】
さらに、ユーザーが緊急情報を入手するためのメディアとしての放送電波やインターネット回線は通常一つであるため、当該メディアからの通知が遅れた場合や、当該メディアに対応したテレビ/ラジオやパソコンなどの受信機が使用できない場合には緊急情報を取得できないこととなっていた。
【0012】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、視聴中のデジタル放送受信装置の画面またはスピーカーから緊急情報を早期に出力する緊急速報送出装置、緊急速報表示システムおよび緊急速報表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の緊急速報送出装置は、デジタル放送の少なくともオーディオおよびビデオのいずれかのパケットを緊急メッセージのデータと入れ替えて予め用意し、所定のメディアからの緊急速報情報を受信すると、前記入れ替えられた緊急メッセージをデジタル放送受信装置に送出することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の緊急速報表示システムは、緊急速報送出装置は、デジタル放送の少なくともオーディオおよびビデオのいずれかのパケットを緊急メッセージのデータと入れ替えて予め用意し、所定のメディアからの緊急速報情報を受信すると、前記入れ替えられた緊急メッセージをデジタル放送受信装置に送出し、
前記デジタル放送受信装置は、前記所定のメディアからの緊急速報情報があった場合には、前記入れ替えられた緊急メッセージを表示することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の緊急速報表示方法は、デジタル放送の少なくともオーディオおよびビデオのいずれかのパケットを緊急メッセージのデータと入れ替えて予め用意するステップと、
所定のメディアからの緊急速報情報を受信するステップと、
前記入れ替えられた緊急メッセージをデジタル放送受信装置に送出するステップとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、視聴中のデジタル放送受信装置の画面またはスピーカーから緊急情報を早期に出力することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の第一の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施の形態に係る緊急速報表示システムの構成図である。図1に示す本実施の形態における緊急速報表示システムは、緊急速報送出装置10と、デジタル放送受信機(テレビ)20と、テレビアンテナ30と、ラジオアンテナ40と、インターネット回線50とから構成されている。
【0018】
緊急速報送出装置10は、CPUにより処理動作が制御される情報処理装置であり、デジタル放送受信部111と、デジタル放送ストリーム解析部112と、緊急メッセージストリーム生成部113と、送出データ生成部114と、受信信号切り替え部115と、緊急メッセージデータ生成/データ切り替え指示部12と、テレビ(地デジ)放送受信部131と、緊急速報検出部132と、緊急情報解析(抜き出し)部133と、テレビ(地アナ)放送受信部134と、緊急速報検出部135と、緊急情報解析(抜き出し)部136と、ラジオ放送受信部141と、緊急速報検出部142と、緊急情報解析(抜き出し)部143と、e−mail受信部151と、緊急速報検出部152と、緊急情報解析(抜き出し)部153とを備えている。
【0019】
緊急速報送出装置10は、マンション等の共用アンテナまたは地域毎に設けられた電波中継塔などのテレビアンテナ30から受信した信号のパケットを受信信号切り替え部115の左側の流路へ流し、デジタル放送受信機(テレビ)20へ送出し、映像/音声を出力させる。これは通常のデジタル放送の受信態様である。
【0020】
緊急速報送出装置10は、テレビアンテナ30から受信した信号のパケットをデジタル放送受信部111にも流す。そして、設置されたテレビアンテナで受信可能な全デジタル放送チャンネル分だけ存在するデジタル放送受信部111と、デジタル放送ストリーム解析部112と、緊急メッセージストリーム生成部113により、緊急メッセージデータ生成/データ切り替え指示部12の指示に基づき、オーディオおよび/またはビデオのパケットを緊急メッセージ121および緊急メッセージ122のデータに入れ替える。
【0021】
緊急速報送出装置10は、テレビアンテナ30からテレビ(地デジ)放送受信部131とテレビ(地アナ)放送受信部134とでデータを取得し、緊急速報検出部132と、緊急情報解析(抜き出し)部133と、緊急速報検出部135と、緊急情報解析(抜き出し)部136とで緊急速報情報が発せられたことを知る。また、ラジオアンテナ40からラジオ放送受信部141でデータを取得し、緊急速報検出部142と、緊急情報解析(抜き出し)部143とで緊急速報情報が発せられたことを知る。また、インターネット回線50からe−mail受信部151でデータを取得し、緊急速報検出部152と、緊急情報解析(抜き出し)部153で緊急速報情報が発せられたことを知る。なお、テレビ、ラジオ、e−mailは例示であり、メディアは限定されるものではない。緊急速報の情報が発せられたことを知るのは、それぞれの検出部(132,135,142,152)の役割であり、各検出部により検出された後に、それぞれの解析部(133,136,143,153)にて具体的な緊急情報を抜き出す。
【0022】
緊急速報送出装置10は、緊急速報情報が発せられたことを知ると、受信信号切り替え部115により、デジタル放送受信機(テレビ)20へ送出するデータを、送出データ生成部114により生成された緊急メッセージを含むデータへ切り替える。これにより、デジタル放送受信機(テレビ)20の視聴者は表示部に表示された「緊急メッセージ」により、何か緊急事態が発生したことを認識することができ、これにより身の回りの安全を確保する、コンロの火を消す、貴重品を確保する等の緊急事態一般に共通の対応をとることが可能となる。
【0023】
以下に、図2のフローチャートの右側を参照して本実施の形態の処理動作を詳細に説明する。
まず、緊急速報送出装置10のデジタル放送受信部111は、ユーザーが視聴するデジタル放送受信テレビのアンテナ入力端子に接続するのと同じアンテナケーブルから、全チャンネルのデジタル放送データを取得する(S201)。なお、緊急速報送出装置10が一家に一台等で設けられている場合には、現在テレビで視聴中の放送波/チャンネルに関するデジタル放送データを取得することであってもよい。
【0024】
次に、緊急速報送出装置10のデジタル放送ストリーム解析部112は、取得したデータ(PSIなど)をもとに番組の放送データを解析する(S202)。なお、PSI(Program Specific Information)は、番組特定情報と呼ばれ、所要の番組を選択するために必要な情報である。
【0025】
そして、緊急速報送出装置10の緊急メッセージストリーム生成部113は、予め用意していた、例えば図3に示すような緊急メッセージの画音データを、番組の画音データと差し換える(S203)。すなわち、番組の画音データを構成するオーディオおよび/またはビデオのパケットを緊急メッセージ121、さらに緊急メッセージ122に入れ替える。なお、この詳細な処理フローは後述する。
【0026】
緊急速報送出装置10の送出データ生成部114は、画音データを使ってストリームデータを生成し(S204)、アンテナケーブルにのせる信号になるよう変調する(S205)。
【0027】
緊急速報送出装置10の受信信号切り替え部115は、送出データ生成部114が上記のステップS204で予め用意しておいた緊急メッセージ画面/音声のデータと合成し、必要な変調などを行い緊急メッセージ用に生成した信号を、デジタル放送受信機(テレビ)20に出力させるべく、切り換え用アンテナケーブルに送出する(S206)。この信号は視聴中の放送波/チャンネルに合ったものであるため、切り換え時の画音の乱れは、通常のチャンネル切り換え時よりも短時間で正常に戻ることができ、早期にユーザーに緊急事態を知らせることができる。
【0028】
次に、図2のフローチャートの左側を参照して本実施の形態の処理動作を詳細に説明する。
まず、緊急速報送出装置10のテレビ(地デジ)放送受信部131と、テレビ(地アナ)放送受信部134と、ラジオ放送受信部141と、e−mail受信部151は、各メディアごとにデータを取得し、緊急速報検出部132と、緊急速報検出部135と、緊急速報検出部142と、緊急速報検出部152は、緊急速報情報があるか否かを判断する(S301a、S301b、S301c)。つまり、地上デジタルテレビ/ラジオ放送電波、インターネット回線を使ったe−mailによる通知サービスなどをそれぞれ受信し、緊急情報が通知されていないか、常時監視しておく。なお、この監視システムは別個のシステムとして設けられている構成であってもよい。
【0029】
そして、上記のステップS301a、S301b、S301cで緊急速報情報があると判断された場合には、緊急メッセージデータ生成/データ切り替え指示部12は、テレビに接続しているアンテナケーブルに流す信号をテレビアンテナの信号から緊急メッセージ用の信号に切り換える(S302)。ここでは、オーディオおよび/またはビデオのパケットを緊急メッセージ121とする。なお、一番早く通知されたものをトリガーとして、ユーザーに緊急情報の通知があったことを知らせる。
【0030】
次に、緊急速報送出装置10の緊急情報解析(抜き出し)部133と、緊急情報解析(抜き出し)部136と、緊急情報解析(抜き出し)部143のうち、緊急速報を検出したメディアに該当するものは、その受信データを解析して、緊急情報(メッセージ)を取得する(S303)。ここでの緊急情報(メッセージ)は、抽象的な緊急メッセージ121とは異なり、詳細な災害情報等を具体的に示す緊急メッセージ122とする。例えば、地震の際の、震源・震度・津波のおそれ等である。
【0031】
次に、緊急速報送出装置10の緊急メッセージデータ生成/データ切り替え指示部12は、取得した情報からデジタル放送受信機(テレビ)20に表示する緊急メッセージの画音データを生成する(S304)。
【0032】
そして、緊急速報送出装置10の緊急メッセージデータ生成/データ切り替え指示部12は、即時表示用に使っていた固定メッセージの画音データから、解析して得たメッセージの画音データに切り換える(S305)。すなわち、抽象的な緊急メッセージ121から、具体的な緊急メッセージ122に切り換える。
【0033】
上記の本実施の形態によれば、視聴中のデジタル放送受信テレビの画面に早期に情報を提示することができる。また社会現象として、防災意識の向上もある事から直接または間接的な貢献が得られる。
【0034】
また、上記の実施の形態に加えて、デジタル放送受信装置の電源がOFF状態の場合に、所定のメディアからの緊急速報情報を受信すると、その受信をトリガとしてデジタル放送受信装置の電源がON状態とされ、入れ替えられた緊急メッセージをデジタル放送受信装置側で確実に受信できるように制御されることであってもよい。
【0035】
なお、上述する実施の形態は、本発明の好適な実施の形態であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更実施が可能である。例えば、緊急速報送出装置10の機能を実現するためのプログラムを装置に読込ませて実行することにより装置の機能を実現する処理を行ってもよい。さらに、そのプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録メディアであるCD−ROMまたは光磁気ディスクなどを介して、または伝送メディアであるインターネット、電話回線などを介して伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。また、本システムの機能が他の装置によりまとめて実現されたり、追加の装置により機能が分散されて実現される形態も本発明の範囲内である。
BS/CS及び地デジ放送受信機能内蔵PCに本発明を適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の形態に係る緊急速報表示システムの構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る処理動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態に係る緊急メッセージの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
10 緊急速報送出装置
20 デジタル放送受信機(テレビ)
30 テレビアンテナ
40 ラジオアンテナ
50 インターネット回線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル放送の少なくともオーディオおよびビデオのいずれかのパケットを緊急メッセージのデータと入れ替えて予め用意し、所定のメディアからの緊急速報情報を受信すると、前記入れ替えられた緊急メッセージをデジタル放送受信装置に送出することを特徴とする緊急速報送出装置。
【請求項2】
所定のメディアからの緊急速報情報を受信すると、前記緊急速報情報に基づく第二の緊急メッセージを前記デジタル放送受信装置に送出することを特徴とする請求項1記載の緊急速報送出装置。
【請求項3】
前記所定のメディアは、テレビ、ラジオおよびe−mailのうちの少なくとも一つであることを特徴とする請求項1または2記載の緊急速報送出装置。
【請求項4】
緊急速報送出装置は、デジタル放送の少なくともオーディオおよびビデオのいずれかのパケットを緊急メッセージのデータと入れ替えて予め用意し、所定のメディアからの緊急速報情報を受信すると、前記入れ替えられた緊急メッセージをデジタル放送受信装置に送出し、
前記デジタル放送受信装置は、前記所定のメディアからの緊急速報情報があった場合には、前記入れ替えられた緊急メッセージを表示することを特徴とする緊急速報表示システム。
【請求項5】
前記緊急速報送出装置は、所定のメディアからの緊急速報情報を受信すると、前記緊急速報情報に基づく第二の緊急メッセージを前記デジタル放送受信装置に送出し、
前記デジタル放送受信装置は、前記入れ替えられた緊急メッセージの表示後、前記緊急速報情報に基づく第二の緊急メッセージを表示することを特徴とする請求項4記載の緊急速報表示システム。
【請求項6】
前記所定のメディアは、テレビ、ラジオおよびe−mailのうちの少なくとも一つであることを特徴とする請求項4または5記載の緊急速報表示システム。
【請求項7】
デジタル放送の少なくともオーディオおよびビデオのいずれかのパケットを緊急メッセージのデータと入れ替えて予め用意するステップと、
所定のメディアからの緊急速報情報を受信するステップと、
前記入れ替えられた緊急メッセージをデジタル放送受信装置に送出するステップとを有することを特徴とする緊急速報表示方法。
【請求項8】
所定のメディアからの緊急速報情報を受信すると、前記緊急速報情報に基づく第二の緊急メッセージを前記デジタル放送受信装置に送出するステップをさらに有することを特徴とする請求項7記載の緊急速報表示方法。
【請求項9】
前記所定のメディアは、テレビ、ラジオおよびe−mailのうちの少なくとも一つであることを特徴とする請求項7または8記載の緊急速報表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−81087(P2010−81087A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−244738(P2008−244738)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(302069930)NECパーソナルプロダクツ株式会社 (738)
【Fターム(参考)】