説明

緑化用ブロック及びその製造方法

【課題】保水性ボードを、ブロック本体の上面から封入位置を、これの全面にわたって均一に、かつ封入深さを任意にすることができるようにする。
【解決手段】ポーラスコンクリートにて成形されるブロック本体2内に、あらかじめ保水材料にて板状に成形した保水性ボード3を、上記ブロック本体の表面と略平行にして封入した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川、湖沼等の水際に護岸ブロックとして施工されるブロックで、詳しくはブロック自体に植物が育成できるようにした緑化用ブロック及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の緑化用ブロックとしては、ポーラスコンクリートで成形されるブロック本体内に、楕円球体状の塊状に成形された生分解可能で保水性を有する保水材(生分解可能な細状物からなる集合体)を、このブロック本体の成形時に封入してなるものが知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
そしてこの従来の緑化用ブロックにおける上記保水材は、例えば上方を開放した成形型内に、鉄筋に支持して内装し、その後この成形型内にコンクリートを流し込むことによりコンクリート内に封入するようにしている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−52336号公報
【特許文献2】特開平8−105048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の緑化用ブロックにあっては、ブロック本体内に封入する保水材が楕円球状の塊状になっているため、この保水材のブロック本体の外面から、特に上面からの位置を一定にすることができず、また塊状であることにより、ブロック本体の上面から保水材までの位置、すなわちブロック本体の上面から保水材までのコンクリートの厚さが一定ではなく、上面の中心部でのコンクリート層は薄いが、中心部から離れた位置でのコンクリート層は厚くなっている。
【0006】
このためブロック本体の上面に着生した植物の根は、これの中央部では早く保水材まで到達して繁茂しやすいが、中央部から離れた位置で着生した植物の根は保水材に到達するのに長い時間がかかり、この間に枯死してしまうことがあり、ブロック本体の表面に植物が一様に繁茂しにくかった。
【0007】
また、上記したように保水材は塊状になって封入されるため、この保水材が分解及び腐食してブロック本体外へ流出してしまうと、このブロック本体内にこの保水材の抜け殻である塊状の中空部ができてしまい、ブロック本体としての強度上問題が生じる。
【0008】
またこの緑化用ブロックの製造方法も、従来にあっては上記したように、塊状の保水材を鉄筋に付帯して成形型内に配置してから、これにコンクリートを打ち込むようになっていたため、いくら鉄筋に付帯しているとはいえ、この保水材の封入位置が所期の位置からずれてしまうという問題があり、このように保水材の位置が定まりにくいことにより、この保水材のブロック本体の上面からの距離が不定になり、上記した植生の繁茂に対する問題が助長してしまうことになる。
【0009】
この従来の製造方法では、ブロック本体の形状等により保水材の位置決めが異なるため、製造作業が複雑になり作業効率が悪く、価格の高騰という問題があった。また、保水材を中空型内に支持した状態でコンクリートを一度に投入されるため、この保水材の下側に投入されるコンクリートは均一に押し固められず、ブロック本体としての必要な強度が得られないという問題もある。
【0010】
また、上記保水材は植物性の糊を用いて鉄筋に付帯させているが、この場合植物性の糊では鉄筋との付着力が弱く、なおかつ保水体は細い鉄筋に付帯しているだけであるので、コンクリートの投入時に保水材が鉄筋から剥離して所定の位置に封入されないという問題もある。
【0011】
本発明は上記のことに鑑みなされたもので、ブロック本体内に封入する保水材を、ブロック本体の上面からの封入位置を、これの全面にわたって均一に、かつ封入深さを任意にすることができると共に、この封入位置を任意に設定することができるようにした緑化用ブロック及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係る緑化用ブロックは、ポーラスコンクリートにて成形されるブロック本体内に、あらかじめ保水材料にて板状に成形した保水性ボードを、上記ブロック本体の表面と略平行にして封入した構成になっている。
【0013】
そしてこの構成の緑化用ブロックにおける保水性ボードに、この保水性ブロックの表側と裏側に貫通する1又は複数の孔を設けた。また、上記ブロック本体内に、複数の上記保水性ボードを横方向に位置をずらせると共に、上下方向に位置を変えて封入した構成にした。
【0014】
そして上記緑化用ブロックの製造方法は、型枠内に、この型枠の深さの途中までポーラスコンクリートを流し込み、上記ポーラスコンクリートが硬化しはじめる前の上面にあらかじめ保水材料にて板状に成形した保水性ボードを載置し、再度これの上側にポーラスコンクリートを流し込むようにした。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る緑化用ブロックは、ポーラスコンクリートよりなるブロック本体内に封入する保水性ボードのブロック本体の上面からの封入位置を、これの全面にわたって均一に、かつ封入深さを任意にすることができ、したがって緑化用ブロックとしてこれの表面に植生させようとする植物の根の深さ等の性質に応じてこの保水性ボードの封入深さを設定することにより、緑化用ブロックの表面の全面にわたって一様に所定の植物を繁茂させることができる。
【0016】
そして上記保水性ボードにこれの表裏を貫通する孔を設けることにより、保水性ボードにて仕切られるポーラスコンクリートがこの孔に流れ込み連結されることで、厚さ方向の中間に保水性ボードを封入した緑化用ブロックの強度を十分に保持することができる。
【0017】
また、上記保水性ボードをブロック本体内に横方向に位置をずらせると共に、上下方向に位置を変えて封入したことにより、この緑化用ブロックの表面に根の深さが異なる、すなわち種類の異なる植物の繁茂を促進することができる。
【0018】
そして本発明に係る緑化用ブロックの製造は、まず保水性ボードより下側のポーラスコンクリートを流し込み、このポーラスコンクリートが硬化しはじめる前に、これの上に保水性ボードを載置し、ついでこれの上側にポーラスコンクリートを流し込むことにより、型枠内にポーラスコンクリートを流し込むという従来一般的な製法にて製造することができて、製造ラインを変えることなく、保水性を向上させた緑化用ブロックを製造することができる。
【0019】
そして特に本発明に係る製造方法では、保水性ボードは型枠内に流し込まれて平らにならされたポーラスコンクリートの上面に載置してから、再度これの上側へ流し込まれる他のポーラスコンクリートにより封入されることにより、この保水性ボードを所定の位置にずれることなく封入することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1、図2は、本発明に係る緑化用ブロック1の一例を示す一部破断平面図と一部破断正面図であり、この緑化用ブロック1はポーラスコンクリートにて扁平四角状に成形されるブロック本体2と、このブロック本体2内に、これの上面と略平行にして封入される板状の保水性ボード3とからなっている。
【0021】
上記保水性ボード3の封入深さ、すなわちブロック本体2の上面からの距離は、このブロック本体2を構成するポーラスコンクリートの通孔率にもよるが、ブロック本体2の上面に着生する植物の根が上記ポーラスコンクリートの通孔を通って容易に到達できる距離で、例えば30〜70mm程度が適当である。また、保水性ボード3の厚さに特に限定されず、緑化ブロック1として使用箇所に応じて適当(3〜10mm)に決められる。
【0022】
そしてこの緑化用ブロック1の成形は、所定形状の型枠内に、この型枠の途中の深さまでポーラスコンクリートを水平状に流し込み、これが硬化しはじめる前に保水性ボード3を載置し、再度これの上から他のポーラスコンクリートを流し込むことにより行われる。保水性ボード3にて仕切られる上下のポーラスコンクリートは、保水性ボード3の周囲にて連結されることにより、緑化用ブロック1としての所定の強度が保持されるようになっている。なお、このときの保水性ボード3の封入位置は、これの上側へ流し込むポーラスコンクリートの厚さを制御することにより任意に決めることができる。
【0023】
保水性ボード3の保水材料には、木材の鉋屑、木材のおが屑、木粉、バーク、木材チップ、籾殻、藁、紙屑、布屑、保水剤、鶏糞炭化物、木炭、綿などの天然繊維、及びアセテートなどの化学繊維の1つあるいはいくつかを混合し、必要に応じて細かく粉砕したものが用いられる。一方、これを成形するための結合材料(バインダー)には、ポリエチレンやポリプロピレンなどの合成樹脂、合成樹脂系接着剤、さらには生分解性プラスチック等で、破砕機にて細片状に破砕したものが用いられる。
【0024】
保水性ボード3の成形方法の一例としては、十分に乾燥された保水材料に結合材料を5〜10%の割合で混入し、これらが均等に混合するように十分に撹拌し、ついで型内に充填して所定の厚さの平板状に成形する。その後、ホットプレスにて加熱圧締し、一定の時間にわたって加熱圧締後、解圧と共に冷却して型から取り出すようにしている。
【0025】
このように成形された保水性ボード3は、保水材料の相互が結合材料にて点接着状態で結合された構成となっていて、この保水材料は結合材料にて被覆されていないため、外側から水が容易に浸透できる状態になっている。そしてこの中に浸透した水は、保水材料にて吸水されて保水される。
【0026】
上記のような構成の緑化用ブロック1は、通常の護岸用のブロックと同様にして河川、湖沼等の水際に、あるいは任意の法面に表面を上側にして敷設して用いられる。そして必要に応じてこの施工時に各緑化用ブロック1の表面に覆土する。
【0027】
このように施工された各緑化用ブロック1では、雨水が透過し、この透過雨水が保水性ボード3に吸水されて保水される。そしてこの緑化用ブロック1の表面に着生した植物の根は、ブロック本体2の表面部の通孔を通って保水性ボード3に到達し、この保水性ボード3に保水されている水分を吸収して育成が促進される。
【0028】
上記保水性ボードにおいて、これの保水材料に間伐材を用いることにより、この間伐材が活用されて林業の活性化を図ることができる。
【0029】
図3、図4は本発明に係る緑化用ブロックの他例を示すもので、この例における緑化用ブロック1aでの保水性ボード3aに表と裏を貫通する孔4を1個あるいは複数設けている。
【0030】
この他例によれば、保水性ボード3aにて仕切られる上下のポーラスコンクリートが、この孔4を介しても連結されて緑化用ブロックとしての強度が増加される。
【0031】
図5、図6は本発明に係る緑化用ブロックの異なる他例を示すもので、この例における緑化用ブロック1bでの保水性ボード3bは、ブロック本体2bの平面大きさより小さくして所定の形状、例えば短冊状に形成したものをブロック本体2aの表面からの深さ、すなわち上下方向の位置を異ならせて、例えば図6に示すように千鳥状に配置して形成されている。
【0032】
この異なる他例によれば、各保水性ボード3b,3b,…間にて上下のポーラスコンクリートが連結されることにより、緑化用ブロック1bとしての強度が増加される。また緑化用ブロック1b内に、これの表面から異なる位置に保水性ボード3b,3b,…が封入されているため、緑化用ブロック1bの表面には、各保水性ボード3b,3b,…までの封入深さに適した複数種の植生が育成され、植生する植物の多様化が図られる。
【0033】
この他例における保水性ボード3bの形状は、短冊状に限るものではなく、例えば径の異なる環状にしたものを封入深さを変えて用いてもよい。
【0034】
本発明に係る緑化用ブロックの形状は、上記した形状に限るものではなく、多角形や円形等種々の形状のものに適用される。また、上記異なる他例における短冊状や環状にした保水性ボード3bのそれぞれを上面から同一位置に封入してもよい。
【0035】
図7は上記した各実施形態、例えば孔4を有する保水性ボード3aを封入して緑化用ブロック1aを成形する様子を示すものである。まずは、型枠5にホッパー6等よりこの型枠5の深さの途中までポーラスコンクリート2aを流し込み、平らにならす。そしてこのポーラスコンクリート2の凝結開始がはじまる前に、平らにならしたこれの上面に保水性ボード3aを載置する。ついで、これの上側にホッパー6より他のポーラスコンクリート2bを、所定の厚さになるまで型枠5内に流し込み平らにならす。これで緑化用ブロックが成形される。なお、このときの両ポーラスコンクリート2a,2bは全く同じものが用いられ、この上側に流し込まれたポーラスコンクリート2bは、保水性ボード3aの周囲及び孔4にて連結されて、保水性ボード3aを封入した状態で下側のポーラスコンクリート2aと一体に成形される。ここで、凝結開始がはじまる前とは、コンクリート標準示方書の凝結特性に述べられている適切な凝結特性が得られる時間設定とする。
【0036】
この成形に用いられる型枠5は図7では概略的に示したが、解枠が可能になっていて、緑化用ブロック1aの脱型強度が得られた硬化後はこれを解枠し、この硬化後の緑化用ブロック1aを容易に取り出せるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る緑化用ブロックの一例を示す一部破断平面図である。
【図2】本発明に係る緑化用ブロックの一例を示す一部破断正面図である。
【図3】本発明に係る緑化用ブロックの他例を示す一部破断平面図である。
【図4】本発明に係る緑化用ブロックの他例を示す一部破断正面図である。
【図5】本発明に係る緑化用ブロックの異なる他例を示す一部破断平面図である。
【図6】本発明に係る緑化用ブロックの異なる他例を示す一部破断正面図である。
【図7】本発明に係る緑化用ブロックの成形方法を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
1,1a,1b…緑化用ブロック、2,2a,2b…ブロック本体、3,3a,3b…保水性ボード、4…穴、5…型枠。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポーラスコンクリートにて成形されるブロック本体内に、あらかじめ保水材料にて板状に成形した保水性ボードを、上記ブロック本体の表面と略平行にして封入したことを特徴とする緑化用ブロック。
【請求項2】
上記保水性ボードに、この保水性ボードの表側と裏側に貫通する1又は複数の孔を設けたことを特徴とする請求項1記載の緑化用ブロック。
【請求項3】
上記ブロック本体内に、複数の上記保水性ボードを横方向に位置をずらせると共に、上下方向に位置を変えて封入したことを特徴とする請求項1または請求項2記載の緑化用ブロック。
【請求項4】
型枠内に、この型枠の深さの途中までポーラスコンクリートを流し込み、上記ポーラスコンクリートが硬化しはじめる前の上面にあらかじめ保水材料にて板状に成形した保水性ボードを載置し、再度これの上側にポーラスコンクリートを流し込むことを特徴とする緑化用ブロックの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−211519(P2007−211519A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−33837(P2006−33837)
【出願日】平成18年2月10日(2006.2.10)
【出願人】(306017014)地方独立行政法人 岩手県工業技術センター (61)
【出願人】(597054024)葛巻林業株式会社 (3)
【出願人】(000162216)共和コンクリート工業株式会社 (44)
【出願人】(503175298)株式会社きら和ぎ (2)
【上記3名の代理人】
【識別番号】100073818
【弁理士】
【氏名又は名称】浜本 忠
【Fターム(参考)】