説明

緑化装置

【課題】簡易な構成で、植栽ケース内に貯留される水や液肥等の水位を一定に保つことが可能な緑化装置を提供する。
【解決手段】緑化装置10は、内部空間を有する植栽ケース110と、植栽ケース110の内周面底部に密着して立設され、内部空間を、植栽ケース110に収容される植物60の下方に形成され、水が貯留される第1小空間と、外部に水を排出する排水機構が設けられた第2小空間とに仕切る、所定の高さを有する水位調整堰260と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の屋上等に設置される緑化装置に係り、とくに簡易な構成で培地に貯留される水や液肥等の水位を一定に保つ。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化問題への対応、都心部におけるヒートアイランド化の抑制、大気浄化などの環境対策として、植物による緑化が有効な手段の一つと考えられている。緑化技術の1つとして、例えば特許文献1には、上部が切り欠かれた管形状を有する植物を植え込むための植栽ケースと、その内部に収納される培地と、この培地に液肥等の水を循環させるための導管及びポンプからなる循環システムとから構成され、植栽ケース内の水切れが発生しないように、植栽ケース内に水位を検知するセンサを設置し、センサで検知した水位に応じて適正な水位となるように循環システムを制御する緑化装置が開示されている。
【特許文献1】特開2006−20542号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、これを実現するためには、水位センサ以外に、植栽ケースへ供給する水や液肥流量等を調節するバルブ若しくはポンプ、また水位センサによって検知する水位を監視し、その水位に応じてバルブの開閉若しくはポンプの出力を制御する制御装置等の設備を必要とすることになり、設備コストが嵩むとともに、それらのメンテナンスに手間がかかる。
【0004】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で、植栽ケース内に貯留される水や液肥等の水位を一定に保つことが可能な緑化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための本発明の第1の発明は、緑化装置であって、前記植栽ケースの内周面底部に密着して立設され、前記内部空間を、前記植栽ケースに収容される植物の下方に形成され、水が貯留される第1小空間と、外部に水を排出する排水機構が設けられた第2小空間とに仕切る、所定の高さを有する堰板と、を有することを特徴とする。
【0006】
本発明の緑化装置によれば、植栽ケース内に供給された水は、排水管から排水される前に堰によって堰き止められ、堰の高さに到達するまで貯留され、その後堰から溢れ出て排水されることになる。すなわち、簡易な構成で、植栽ケース内に水を一定の液面レベルにて貯留することができる。
また、水位センサ、バルブ及び制御装置等の設備を特に必要しないので、それら設備のメンテナンスコストも生じない。
【0007】
本発明のうち第2の発明は、上記緑化装置であって、請求項1に記載の緑化装置であって、前記堰板は、高さの異なる他の堰板に交換可能に前記内周面底部に設けられることを特徴とする。
本発明の緑化装置によれば、堰を取り替えて堰の高さを変更することにより、植栽ケース内に貯留する水の液面レベルを簡単に変更することができる。
【0008】
本発明のうち第3の発明は、上記緑化装置であって、前記植栽ケースの前記第1小空間の底面には、前記第1小空間に貯留される水を排出するためのドレンが設けられていることを特徴とする。
本発明の緑化装置によれば、植栽ケースを傾けたり裏返したりすることなく、植栽ケース内に貯留される水又は液肥を抜くことができるので、水抜き作業を容易に実施することができる。
【0009】
第4の発明は、第1〜3の何れかの発明において、前記植栽ケースは、並設される複数の独立した小ケースと、隣接する前記小ケースの内部空間を連結し、各前記小ケース内に貯留される水を各前記小ケース間に流通させる導水管とを有してなり、並設される前記小ケースのうち一端に設けられる前記小ケースに前記堰板を設けることを特徴とする。
本発明の緑化装置によれば、小ケースの連結数を増減することにより、植物を定植する範囲を容易に変更できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡易な構成で、植栽ケース内に貯留される水や液肥等の水位を一定に保つことが可能な緑化装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本実施形態の好ましい一実施形態について説明する。本実施形態に係る緑化装置は、例えば、休憩場所や憩いの場として、ビルの屋上、駐車場や公園等の平地、大空間を有する屋内施設等に設置されるものである。
【0012】
図1に緑化装置10の外観斜視図を示している。同図に示すように、緑化装置10は、2つの繁茂フレーム30a,30bと、植栽ケース設置棚20と、植栽ケース110とを含んで構成されている。
【0013】
緑化装置10は、植栽ケース110に植え込まれた植物が、植栽ケース110から2つの繁茂フレーム30a,30bに沿って伸延し、葉を繁茂させることできるようになっている。繁茂フレーム30a,30bは、格子状のフレームで構成されており、全体が矩形状を呈し全体が地面に対して一定の角度をなすように傾斜させて設けられる傾斜屋根部310、及び傾斜屋根部310の低位側の端辺を地面から所定の高さ位置に片持ち支持する2本の支柱320を有している。このような構成により、ビルの屋上等のように既設の諸設備等が存在する場所に緑化装置10を設置する場合でも、支柱320が設けられるのは、傾斜屋根部310の低位側の端辺に限られるので、設置環境を選ばず様々な場所に容易に設置できる。また、傾斜屋根部310の傾斜の低位方向から屋根全体を見渡すことができ、植物の生育状況が視認しやすい。これら2つの繁茂フレーム30a,30bは、それら傾斜屋根部310の高位側における各端辺312が、所定の間隔を隔て、かつ、略水平方向に平行に対向するように配置されている。
【0014】
繁茂フレーム30a,30bには、例えば市販のカーポートやサイクルポートを利用することができる。このような市販品を用いることで、繁茂フレームを構築する際の施工時間を短縮することができる。また緑化装置の10の製造コストや施工コストを低減することができる。なお、市販のカーポートやサイクルポートを利用する場合には、フレームにかかる荷重を減らし、また繁茂フレーム30の下方から容易に植物を手入れすることができるようにするため、購入時に取り付けられている屋根板は取り外して利用することが好ましい。
【0015】
繁茂フレーム30a,30bの各傾斜屋根部310には、植物を屋根全体に繁茂させるべく、傾斜屋根部310の全面を覆うように金網やネット等の部材(以下、繁茂ネット32と称する)が設けられている。
【0016】
なお、植物が繁茂フレーム30又は繁茂ネット32に絡んでいかない場合には、例えばワイヤや縄等を使って植物の茎部等を繁茂フレーム30又は繁茂ネット32に適宜留めていくようにしてもよい。
【0017】
植栽ケース設置棚20は、傾斜屋根部310の端辺312の長さと同程度の長さの長辺を有する矩形状の棚板22、及び棚板22を端辺312と同程度の高さに支持する2本の支柱24を有している。植栽ケース設置棚20は、繁茂フレーム30a,30bの、対向する高位側の端辺312の間に、棚板22の長辺が傾斜屋根部310の高位側の端辺と平行になるように設けられる。これにより棚板22に載置される植栽ケース110は端辺312に沿って配置され、植栽ケース110から植物を繁茂フレーム30a,30bに自然に誘導することができる。また植物は植栽ケース110から植栽ケース110の両側に設置される繁茂フレーム30a,30bに繁茂させることができるため、緑化面積が拡がることになる。
【0018】
棚板22には、植栽ケース110が棚板22から脱落しないように、植栽ケース110を固定するバンドやボルト等を設けてもよい。
【0019】
支柱24及び上述した支柱320の底部には、板材25が設けられている。ビルの屋上等に緑化装置10を設置する際は、この板材25とビル屋上のコンクリート面とをアンカーボルトで固定したり、接着材で接着したりすることで、強風に対する浮き上がりを防ぐことができる。
【0020】
図2に植栽ケース110の断面構造及びその周辺の構成を示している。なお、同図において、(a)は縦断面図であり、(b)はA−A断面図である。
【0021】
同図に示しているように、植栽ケース110の内部には培地70が収納されている。培地70には、後述する定植ポット142と共に植物60が定植されている。また植栽ケース110には、培地70に液肥(水を含む)を導入するための給水管120及び潅水チューブ122、及び植栽ケース110内から液肥を排水するための排水管130が接続されている。
【0022】
植栽ケース110は、例えば直方体の容器であり、その長手方向は繁茂フレーム30の端辺312と同程度の長さを有している。植栽ケース110の底面には、水抜き用のドレン112が設けられている。このため、植栽ケース110を裏返すことなく植栽ケース110の底部に溜まった液肥を排水することができる。なお、前述した棚板22のドレン112の位置と対応する部分には、ドレン112から液肥を棚板22の下方に排水する開口部が設けられている。
【0023】
植栽ケース110の上面には、脱着可能な蓋114が設けられている。蓋114は、植物60の生育時に取り付けられるが、例えば植物60の定植時や植栽ケース110の清掃時等には適宜取り外される。
【0024】
植栽ケース110の側面には、植物60をケース外部へ引き出すための開口部116が形成されている(同図(b)参照)。なお、開口部116は可能な限り小さいことが好ましい。開口部116を小さくすることで、日光の植栽ケース110内へ入射経路や、雨水や種等の異物の進入経路が制限され、植栽ケース110内におけるアオコの発生、液肥の希釈、雑草若しくは病原菌の繁殖を防ぐことができる。
【0025】
培地70には、あらかじめ肥料成分を吸着させたゼオライトを用いている。肥料成分を吸着させたゼオライトは、例えば、粒径が1〜3mm程度のクロノプチロル系のもの(例えばゼオライト工業社製のサン・ゼオライト)を用意し、植栽ケース110に充填する前又は充填した後に、液肥に充分浸漬させておくことにより簡便に製造することができる。このときの液肥の成分及び濃度は、植物60を生育する際に循環するものと同程度に設定している。例えば、水1Lに対して窒素18.6me/l、リン酸5.1me/l、カリ7.6me/l、カルシウム8.2me/l、マグネシウム3.7me/lとする。
【0026】
このように、培地70としてあらかじめ肥料成分を吸着させたゼオライトを用いた場合、新たに補給される液肥がゼオライトに接触してもゼオライトの吸着力は低下しており、液肥中の肥料成分が吸着されてしまうことは殆どない。このため、液肥中の肥料成分の減少を防ぐことができる。
【0027】
またゼオライトに補給される液肥中の肥料成分の濃度が通常の濃度より低くなる場合には、あらかじめゼオライトに吸着させた肥料成分が逆に液肥内に浸出し、植物60への肥料成分の供給が減少するのを防ぐことができる。
【0028】
給水管120は、後述する液肥タンクから植栽ケース110内まで延長されている。植栽ケース110内において給水管120の側面には複数の孔が形成されている。給水管120の一端は、培地70の表面に沿って載置される潅水チューブ122(例えば、サンレックス工業社製のエバーフローを用いることができる。)に接続している。これにより液肥は給水管120及び潅水チューブ122を介して植栽ケース110内の培地70の表面に散水され、培地70内を浸透して植物60に供給される。
【0029】
排水管130は、植栽ケース110の外側から内側底部に挿設されている。排水管130の植栽ケース110内における部分には、液肥を管内に取り入れるための複数の小孔132が形成されている。これにより、植栽ケース110内に補給され、植栽ケース110の底部に溜まる液肥を、これら小孔132から取り込んで、速やかに植栽ケース110の外部へ排水することができるようになっている。このため、培地70の通気性が向上することになり、多湿環境を嫌う植物の病気や根腐れを防止することができる。
【0030】
なお、各小孔132の周囲には、例えば不織布等(図示しない)が巻かれており、粒子状の培地70等が小孔132から管内へと進入したり、小孔132を閉塞したりするのを防いでいる。
【0031】
緑化装置10で栽培できる植物60としては、例えば、手入れが簡単で年を通じて屋外で水耕栽培を実施可能なアイビーやテイカカズラ等のつる性の常緑植物や、サツマイモ、藤等の落葉植物等があるが、植物60はとくにこれらに限定される訳ではない。
【0032】
また植物60として、例えば育苗に適した環境下(例えば、育苗専用の施設等)で育苗させたものを用いてもよい。また水耕性植物であれば、育苗時から水耕により栽培したものを用いてもよい。すなわち植物60は水耕育苗により水耕栽培に適した根を形成するので、培地70に定植した後、水耕環境に順応し易くなる。
【0033】
定植ポット142としては、育苗時には鉢として用いることができ、培地70への定植時には苗を鉢から取り出すことなく移植を容易に行えるようなものが好ましい。そのようなものとして、例えば特殊加工を施した紙製のもの、圧縮成形されたビートモス等の透水性の素材からなるもの(例えば、サカタのタネ社製ジフィー(登録商標)ポット)等がある。定植ポット142としてこのようなものを用いることで、定植時に根を傷めてしまうことがなく、植物を培地に徐々に順応させることができる。
【0034】
強風や自重等により植物60が植栽ケース110から脱落するのを防止するため、植栽ケース110内にその長手方向に伸張し植物60の茎部を固定する縄を結束するための植物固定用ワイヤ144を設けてもよい。
【0035】
図3に液肥の循環設備の一例として示す液肥循環ユニット40の系統図を示している。同図に示す液肥循環ユニット40は、液肥タンク42と、ポンプ48と、給水管120と、排水管130とを有している。
【0036】
液肥タンク42には、排水管130を通じて植栽ケース110から排水され、給水管120を通じて植栽ケース110に循環供給される液肥が一時的に貯留される。液肥タンク42の内部には、液肥の水位の減少に応じて適量の水又は液肥をタンク内に自動補給する水補給装置44が設けられている。なお、液肥タンク42に液肥の濃度を測定するための濃度センサ160(例えば電気伝導度計)を設けてもよい。
【0037】
また液肥タンク42には、液肥タンク42内の温度を測定するための温度センサ170、液肥の温度を調節するヒータ140及びクーラ150、温度センサ170の測定値に応じてヒータ140及びクーラ150の運転を制御する制御装置180を設けてもよい。これにより液肥が凍結してしまったり、液肥が植物60の生育に悪影響を与える程の高温になってしまうのを防ぐことができる。
【0038】
ポンプ48は、給水管120の流路に設置され、液肥タンク42に貯留される液肥を植栽ケース110へと移送する。ポンプ48への電力供給は、太陽光発電等の自然エネルギーを利用して行うことが好ましい。すなわち、植物は日照量が増大するとともに水分の吸収量も増大させるため、これに対応するために植栽ケース110内への液肥の補給量も増大させるべく、ポンプ48の出力も増大させる必要があるが、日照量の増大とともに発電量が上昇する太陽光発電は、とくにその電力供給源として好適である。
【0039】
給水管120には、液肥タンク42から植栽ケース110への液肥の供給を制御する電磁弁50や、電磁弁50による液肥の流量や供給時間等を制御するタイマー式コントローラ52等を適所に設けてもよい。
【0040】
排水管130には、排水管130内部に混入した異物を除去するためのストレーナ134を設置してもよい。また、このストレーナ134の後段に排水管130内の液肥の移送を許可又は禁止するためのボールバルブ136を設けてもよい。
【0041】
図4に、植栽ケース設置棚20に載置される植栽ケースの他の実施形態を示す。同図において、(a)は植栽ケースの縦断面図であり、(b)は植栽ケースのB−B断面図である。なお、同図において、前述した実施形態(図2)と同様の部位については同じ符号を付してある。
【0042】
同図に示す例では、植栽ケース110は、並設される複数の独立した小ケース210と、隣接する小ケース210の内部空間を連結し各小ケース210内に貯留される水を各小ケース210間に流通させる連結管230とを有してなる。このようにすることにより、必要に応じて、小ケース210の連結数を増減することにより、植物60を定植する範囲を容易に設定できるようになっている。
【0043】
植栽ケース110には、給水管120、上部供給用ホース242、滴下装置244、及び下部供給用ホース252からなる液肥を液肥タンクから導入する流路と、排水管130、水抜き管212及びドレン112からなる液肥を液肥タンクへ排水する流路とが設けられている。
【0044】
各小ケース210は、いずれも直方体形状(同図に示す例では2苗分が定植可能な大きさ)である。その上面はいずれも上方が開放されている。
【0045】
各小ケース210の底面には、植栽ケース110と同様に水抜き用のドレン112が設けられ、ケース毎にケースを裏返すことなく水抜きができるようになっている。各小ケース210のドレン112から水抜きされた液肥は、水抜き管212を介して排水管130へと移送される。
【0046】
各小ケース210の延長方向の側面には、連結管230が接続される連結孔214が形成され、連結管230を通じて、隣り合う小ケース210間に液肥が流通するようになっている。
【0047】
各小ケース210の内部にはメッシュバスケット220が収納されている。メッシュバスケット220は、メッシュ加工が施された金属又はプラスチック製の容器であって、小ケース210内部の容積よりもやや小さい直方体の形状を有する。
【0048】
メッシュバスケット220の高さは、小ケース210内側の深さよりも短く設定されている。図4(b)に示すように、メッシュバスケット220の長手側側面の上方縁部は、外周方向に折り曲げて形成されており、この折曲形成された上方縁部を小ケース210の側面上方縁部に当接させることにより、メッシュバスケット220は小ケース210の内部空間に底上げされた状態で設置できるようになっている。
【0049】
メッシュバスケット220の内周面には、培地70はメッシュの目から脱落させないで、液肥のみを通過させるための不織布224が設けられている。
【0050】
培地70は、これら各メッシュバスケット220内に収納されている。培地70としては、前述した実施形態(図2)と同様に、液肥に充分に浸漬したゼオライトを用いている。培地70の表面には、培地70の乾燥や温度変化を緩和するとともに病気による被害を回避し、培地70の舞い上がり及び雑草の発生を防止するために、植物60の根元の地表面を覆うように藁や水苔などのマルチング材222が敷かれている。
【0051】
なお、図4に示す実施形態では、培地70に植物60を直接定植する構成としているが、前述した実施形態(図2)と同様に、定植ポット142とともに定植するようにしてもよい。
【0052】
複数の小ケース210のうち、排水管130が接続される小ケース210(同図では一番左に載置される小ケース210)には、内部に水位調整堰260が設けられている。水位調整堰260は、小ケース210内の内周面底部に密着して垂直に固定可能な板状の部材からなる。
【0053】
水位調整堰260は、各小ケース210間に流通する液肥を、排水管130から排水させる前に堰き止め、各小ケース210の底部に、液肥の水位が水位調整堰260の高さになるまで貯留させる。すなわち、各小ケース210の底部には、一定水位の液肥が貯留されるようになっている。
【0054】
水位調整堰260は容易に脱着できるようになっており、高さの異なる水位調整堰260に交換することで、液肥の水位を調節できるようになっている。
【0055】
例えば、その高さがメッシュバスケット220の底面に達しない程度の水位調整堰260を設置する場合には、培地70内を下方に移動し、メッシュバスケット220の底面に到達した液肥は、小ケース210内の底部へ落下することになるので、培地70が多湿になるのを防いで植物60の病気や根腐れの発生を防止できる。一方、植物60が多湿を好む性質である場合は、メッシュバスケット220の底面よりも高い水位調整堰260を設置し、液肥が植物60に充分に供給されるようにすることができる。
【0056】
なお、水位調整堰260の設置位置は、必ずしも上述した位置に限られない。例えば各小ケース210の液肥が流入又流出する入口や出口(連結孔214)付近に複数設けてもよい。このようにすることで、例えば、小ケース210の一つを交換したい場合に、各小ケース210に貯留される液肥を全て抜く必要はなく、交換する小ケース210に貯留される液肥のみを抜くことができる。
【0057】
給水管120は、植栽ケース110の上部から液肥を供給する流路(以下、上部供給ルートと称する)と、植栽ケース110の底部に液肥を供給する流路(以下、底部供給ルートと称する。)に分岐している。
【0058】
上部供給ルートによって供給される液肥は、給水管120から上部供給用ホース242を介して各小ケース210付近まで移送され、その後、滴下装置244によって上部供給用ホース242から採取され、各小ケース210内の培地70に滴下される。なお、滴下装置244としては、例えば、市販の圧力補正付のウッドペッカータイプのドリッパーを用いることができる。各培地70に滴下された液肥は、その一部が植物60に吸収されるほかは各培地70内の下方に移動してメッシュバスケット220底部に移動し、各小ケース210内の底部に収容される。
【0059】
一方、底部供給ルートによって供給される液肥は、給水管120から下部供給用ホース252を介して、所定の小ケース210(図4では一番右の小ケース210)内の底部に収容され、その後、連結管230を通じてその他の各小ケース210へと流れる。
【0060】
なお、上部供給ルート及び底部供給ルートの適所には、例えば内部を流通する液肥の移送を許可又は禁止するボールバルブ136を設けてもよい。
【0061】
以上、本発明の実施形態につき詳細に説明したが、以上の説明は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0062】
例えば、以上の実施形態では培地70としてゼオライト用いているが、バーミキュライト、パーライト又はイソライト等を用いてもよい。
【0063】
また、以上の実施形態における植栽ケース110、小ケース210、植栽ケースの蓋114、給水管120、排水管130、液肥タンク42、連結管230、及び滴下装置244の材質としては、例えば、硬質塩化ビニルや金属等を用いることができる。また潅水チューブ122、上部供給用ホース242、及び下部供給用ホース252としては、例えば軟質塩化ビニルチューブを用いることができる。
【0064】
なお、紫外線等による液肥の劣化を防ぐため、いずれの構成部材も遮光性を有するものが好ましい。このようにすることで、日光が植栽ケース110内へ入射しないので、アオコの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】緑化装置10の外観を示す斜視図である。
【図2】植栽ケース110の断面構造及びその周辺の構成を示す図である。
【図3】液肥の循環設備の一例として示す液肥循環ユニット40の系統図である。
【図4】植栽ケース設置棚20に載置される植栽ケースの他の実施形態である。
【符号の説明】
【0066】
10 緑化装置 20 植栽ケース設置棚
22 棚板 24 支柱
25 板材 30、30a、30b 繁茂フレーム
32 繁茂ネット 40 液肥循環ユニット
42 液肥タンク 44 水補給装置
48 ポンプ 50 電磁弁
52 タイマー式コントローラ 60 植物
70 培地 110 植栽ケース
112 ドレン 114 蓋
116 開口部 120 給水管
122 潅水チューブ 130 排水管
132 小孔 134 ストレーナ
136 ボールバルブ 140 ヒータ
142 定植ポット 144 植物固定用ワイヤ
150 クーラ 160 濃度センサ
170 温度センサ 210 小ケース
212 水抜き管 214 連結孔
220 メッシュバスケット 222 マルチング材
224 不織布 230 連結管
242 上部供給用ホース 244 滴下装置
252 下部供給用ホース 260 水位調整堰
310 傾斜屋根部 312 端辺
320 支柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を有する植栽ケースと、
前記植栽ケースの内周面底部に密着して立設され、前記内部空間を、前記植栽ケースに収容される植物の下方に形成され、水が貯留される第1小空間と、外部に水を排出する排水機構が設けられた第2小空間とに仕切る、所定の高さを有する堰板と、を有することを特徴とする緑化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の緑化装置であって、
前記堰板は、高さの異なる他の堰板に交換可能に前記内周面底部に設けられることを特徴とする緑化装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の緑化装置であって、
前記植栽ケースの前記第1小空間の底面には、前記第1小空間に貯留される水を排出するためのドレンが設けられていることを特徴とする緑化装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の緑化装置であって、
前記植栽ケースは、並設される複数の独立した小ケースと、隣接する前記小ケースの内部空間を連結し、各前記小ケース内に貯留される水を各前記小ケース間に流通させる導水管とを有してなり、
並設される前記小ケースのうち一端に設けられる前記小ケースに前記堰板を設けることを特徴とする緑化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−183233(P2009−183233A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−28052(P2008−28052)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】