説明

緑豆蛋白分解物を含有する皮膚外用剤

【課題】 天然物由来の優れた保湿効果および老化抑制効果を有する皮膚外用剤を提供すること。
【解決手段】 本発明は、緑豆蛋白分解物を含有する、皮膚外用剤を提供する。好ましくは、この緑豆蛋白分解物の全ペプチド中のジペプチドまたはトリペプチドの割合は10%以上であり、より好ましくは50%以上である。さらに好ましくは、この緑豆蛋白分解物は、緑豆由来の蛋白質をプロテアーゼにより加水分解することによって得られる。好ましくは、上記皮膚外用剤は化粧料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑豆蛋白分解物を含有する皮膚外用剤に関する。より詳細には、優れた保湿効果および老化抑制効果を有する皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、外側から表皮、真皮、および皮下組織の3つの層から構成されている。その最外層である表皮は、さらに4つの層(外側から角層、顆粒層、有棘層、および基底層)に分かれており、保水機能や様々な外的刺激に対する防御や保護の働きを担っている。表皮最下層である基底層では、細胞増殖が絶えず行われ、新しい細胞は、有棘層、顆粒層、角層へと特徴を変化させながら表面へ押し上げられていく。角層の細胞はやがて剥がれ落ち、新しい細胞に置き換わる。この過程をターンオーバーという。基底部の表皮細胞は、細胞内に核を持っているが、ターンオーバーの過程では消化されるため、皮膚から剥がれ落ちる頃には核は消失する。紫外線や乾燥などの外的ストレスおよび加齢などで皮膚が衰え、ターンオーバーが乱れると、肌には様々なトラブルが生じてくる。一般的に、ターンオーバーは、加齢とともに遅くなる傾向があり、ターンオーバーが遅くなると、剥がれるはずの角層が肌に残って角層の肥厚化が進み、あるいは、排出されるはずのメラニンが滞って沈着し、これらに起因するシミ、シワ、クスミなどの皮膚の老化現象が起きる。また、ターンオーバーが早すぎる場合でも、核を持った未成熟の細胞が皮膚表面へと押し上げられる不全角化が起こり、皮膚のバリア機能や保水機能の低下が生じる。正常なターンオーバーの過程では、天然保湿因子が生産され、角層の潤いを保つ役割を果たしている。正常なターンオーバーが促進されると、肌は潤いとハリをもつようになる。
【0003】
一方、角層に潤いがなくなると、外部からの刺激による影響も被りやすく、正常なターンオーバーができなくなる。そして、これがまた保水を抑制するという悪循環をきたす。また、きめの細かいみずみずしい肌を保つのに、角層に十分な水分がある必要がある(非特許文献1)。
【0004】
このように、ターンオーバーと角層水分量とは相互に関係しており、正常なターンオーバーが活発に行われ、角層に十分な水分が保たれることは、健康で美しい肌を保つのに重要である。このため、ターンオーバーを整え、正常に促進する成分や角層を保湿する成分が皮膚外用剤の成分として種々検討されている(特許文献1および2)。
【0005】
また、角層を保湿し、皮膚の老化を防止するものとして化粧品成分が種々検討されている。例えば、皮膚の主要な構成成分であるコラーゲンおよびグリコサミノグリカンは、保湿に重要な役割を果たすと考えられている。これらの合成を促進する成分として、種々のオリゴペプチドが開示されている(特許文献3)。また、ある種のオリゴペプチドは、紫外線による色素沈着の防止効果を有することも知られている(特許文献4)。さらに、L−グルタミンを含むジペプチドが保湿作用を有することも知られている(特許文献5)。
【0006】
また、皮膚のバリア機能を評価するものとして、経皮水分蒸散量(TEWL)がある。TEWLは、角層を透過して肌の外に出る水の量である。正常な角層は、体内の水分量を適度に保つ役割をもつ。しかし、機能的に欠陥のある角層は、角層自身を柔軟に保ち得るだけの水分保持力がない。その結果として、大量の水分が皮膚の表面を通過し、失われてしまう。皮膚に適度な水分量が保持されなくなると、皮膚のしなやかさ、柔らかさが失われ、硬くもろくなる。
【0007】
また、加齢や紫外線曝露により生体内で発生する活性酸素種も、皮膚のシワ形成や皮膚の老化に深く関与する。このような活性酸素種を消去することが、皮膚の老化防止および改善に有効であると考えられており、種々の抗酸化物質について検討が行われている。
【0008】
例えば、グルタチオンは、生体内に広く分布する抗酸化物質であり、システイン、グルタミン酸、およびグリシンからなるトリペプチドである。グルタチオンは、グルタチオンペルオキシダーゼの基質として、生体内に発生した過酸化水素や過酸化脂質などの過酸化物を無毒化し、自身が酸化されることにより、生体内に及ぼされる酸化障害から生体を保護する働きがある。過剰な酸化ストレスにより、グルタチオンが消費されて枯渇し、正常な細胞の働きを維持できなくなることもある。
【0009】
グルタチオンは、そのまま外用剤に添加すると、使用時に不快臭を発生する。不快臭を除くために、グルタチオンの包接化合物(特許文献6)などが化粧品成分として開発されている。あるいは、グルタチオンの経皮透過性を高める目的で、グルタチオンの誘導体が開発されている(特許文献7)。また、細胞内グルタチオンの産生を促進するものとして、特定の植物(特許文献8)あるいは2−クロマノン誘導体(特許文献9)が知られている。
【0010】
また、絹蛋白質、ケラチン蛋白質、コラーゲン蛋白質から選ばれる1種以上の蛋白質分解物を含有してなる化粧料組成物が知られている(特許文献10)。この化粧料組成物は、保湿作用、皮膚老化防止作用、抗炎症作用を有すると記載されている。
【特許文献1】特開平11−335257号公報
【特許文献2】特開2001−010946号公報
【特許文献3】特表2002−524487号公報
【特許文献4】米国特許第6296857号明細書
【特許文献5】特開2003−306420号公報
【特許文献6】特許第2954634号公報
【特許文献7】特開平9−67227号公報
【特許文献8】特開2002−275079号公報
【特許文献9】特開2003−321463号公報
【特許文献10】特開2003−95913号公報
【非特許文献1】「バイオ化粧品」、岡本暉公彦著、共立出版、1986年、23頁および52頁
【非特許文献2】「皮膚の測定・評価マニュアル集」、技術情報協会、101頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、天然物由来の優れた保湿効果および老化抑制効果を有する皮膚外用剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、緑豆蛋白分解物について、皮膚外用剤としての種々の評価を行ったところ、皮膚に対して優れた保湿効果およびターンオーバー促進効果を有することを見出して、本発明を完成した。
【0013】
本発明は、緑豆蛋白分解物を含有する、皮膚外用剤を提供する。
【0014】
好適な実施態様では、上記緑豆蛋白分解物の全ペプチド中のジペプチドまたはトリペプチドの割合は10%以上である。
【0015】
より好適な実施態様では、上記緑豆蛋白分解物の全ペプチド中のジペプチドまたはトリペプチドの割合は50%以上である。
【0016】
好適な実施態様では、上記緑豆蛋白分解物は、緑豆由来の蛋白質をプロテアーゼにより加水分解することによって得られる。
【0017】
さらに好適な実施態様では、上記皮膚外用剤は化粧料である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の皮膚外用剤に含有される緑豆蛋白分解物は、グルタチオン産生促進作用、保湿作用、および皮膚のターンオーバー促進作用を有し、さらに、コラゲナーゼ阻害作用やラジカル消去作用、ならびにチロシナーゼ阻害作用やエラスターゼ阻害作用も有する。そのため、本発明の皮膚外用剤は、皮膚に対して保湿効果をはじめとする優れた美肌効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
緑豆は、マメ科植物に属し、マメの部分は緑色〜褐色であり、その大きさはアズキよりも小さい。緑豆はもやしとして、そして緑豆のデンプンははるさめの原料として知られている。
【0020】
本発明で用いる緑豆由来の蛋白質を含む原料(以下、「原料」という)は、緑豆の破砕物またはその搾り汁、あるいはこれらの水、酸、またはアルカリによる抽出物であり得る。さらに、緑豆の加工処理における副産物も、原料として用いられ得る。例えば、緑豆のデンプンを主成分とするはるさめの製造過程で生じる緑豆由来の蛋白質を含む副産物が挙げられる。その形態は、液体、粉体、ペーストなど、いずれの形態でもよい。また、緑豆由来の蛋白質以外に、糖類、食物繊維類、塩分、水分、油脂類などが含まれていてもよい。原料中の蛋白質の含量(以下、「粗蛋白含量」という)は特に限定されないが、好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上である。
【0021】
ここで、粗蛋白含量とは、蛋白質中の窒素量に換算係数を乗じて算出される。窒素量は、例えば、セミミクロケルダール法にて測定する。具体的には、粗蛋白含量は以下のようにして算出される。まず、ケルダールフラスコに50mgの試料を正確に秤量する。次いで、硫酸カリウム10gと硫酸銅1gとを混合して分解促進剤とし、その1gをフラスコに入れ、さらに濃硫酸5mLを加える。一晩放置後、フラスコを徐々に加熱し、液が透明となり、フラスコの内壁に炭化物を認めなくなるまで加熱する。冷却後、蒸留水20mLを加えよく混合した後、氷冷し、フラスコを、予め水蒸気を通じて洗浄した蒸留装置に連結する。留液を受ける受器には0.1N硫酸10mLおよび指示薬(メチルレッドとメチレンブルー試液との混合液)2〜3滴を入れ、この液に蒸留装置の冷却器の下端を浸す。蒸留装置に連結したロートから40%水酸化ナトリウム20mLをフラスコに添加し、水蒸気を通じて6〜7分間蒸留する。冷却器の下端を液面から離し、少量の水でその部分を洗い込み、0.1Nの水酸化ナトリウムで滴定する。また、試料を添加せずに同様の方法で測定したものをブランクとする。粗蛋白含量は下記の式により算出する:
粗蛋白含量(%(w/w))={([B]−[A])×F×1.4007×6.25/[C]}×100
式中、[A]は、試料を添加した時に滴定に要する0.1N水酸化ナトリウムの容量(mL)であり、そして[B]は、ブランクの滴定に要する0.1N水酸化ナトリウムの容量(mL)である。また、[C]は、試料の質量(mg)であり、そして「F」は、滴定に使用する水酸化ナトリウムのファクターである。「1.4007」は0.1N硫酸1mLに相当する窒素の質量(mg)に相当する。また、本発明においては、窒素の質量からの蛋白量換算係数として「6.25」を使用した。
【0022】
本発明において、緑豆蛋白分解物とは、緑豆由来の蛋白質をあらゆる手段で加水分解して得られる分解物、酸、あるいはプロテアーゼなどの酵素によって分解された分解物をいう。反応が温和であること、および副生成物が生じにくいという点から、プロテアーゼによる分解物が好ましい。
【0023】
緑豆由来の蛋白質を加水分解するために使用するプロテアーゼは、蛋白質を加水分解できるプロテアーゼまたはペプチダーゼである。例えば、Rhizopus delemar、Rhizopus niveusなどのRhizopus属、Aspergillus niger、Aspergillus oryzaeなどのAspergillus属、Bacillus subtilis、Bacillus sp.などのBacillus属などの微生物由来の酵素;ペプシン、パンクレアチンなどの動物由来の酵素;パパイン、ブロメラインなどの植物由来の酵素が挙げられる。本発明においては、分解程度が調節しやすい点で、Aspergillus属由来の酸性プロテアーゼが望ましい。プロテアーゼは、市販の精製品または粗製品であってもよく、一種あるいは二種以上を用いてもよい。加水分解の反応条件(反応温度、pH、時間、酵素使用量など)については、使用するプロテアーゼの最適作用条件に応じて設定され得る。通常は、温度は10℃〜80℃、pHは2〜11、反応時間は2〜48時間、使用する酵素量は粗蛋白1gあたり10〜30,000unitsである。好ましくは、反応温度は30℃〜60℃、pHは3〜8、反応時間は4〜20時間、酵素量は粗蛋白1gあたり100〜7000unitsである。
【0024】
上記プロテアーゼ処理後、得られた緑豆蛋白分解物から、濾過または遠心分離により不溶物を除去する。得られた上清液を、減圧濃縮、凍結乾燥、スプレー乾燥などの方法によって乾燥させて、目的物を得る。得られた緑豆蛋白分解物の形態は、液体、粉末、ペーストのいずれでもよい。
【0025】
本発明の緑豆蛋白分解物は、その全ペプチド中に、ジペプチドまたはトリペプチドの割合が10%以上であることが好ましい。ジペプチドまたはトリペプチドの割合は、40%以上であることがより好ましい。摂取した場合の吸収性に優れる点で、50%以上であることがさらに好ましい。なお、ジペプチドまたはトリペプチドとは、具体的には、以下の分子量分布の分析で、分子量が約130〜580の範囲に含まれるペプチドである。
【0026】
本発明において、緑豆蛋白分解物の分子量分布およびジペプチドもしくはトリペプチド含量の分析は、下記の方法で行った。
【0027】
分子量の測定はゲル濾過カラム(Superdex Peptide HR 10/30、ファルマシアバイオテック社)を用いた高速液体クロマトグラフィーにより測定した。移動相として0.1%トリフルオロ酢酸を含む30%アセトニトリル水溶液を用い、流速0.3ml/分とし、紫外部(220nm)吸収により検出を行った。分子量は、分子量既知のオリゴペプチド「Gly=75.07」、「Ala‐Pro=186.2」、「Angiotensin
II=1046.2」、および「Substance P=1347.7」を用いて標準線を作成して求めた。分子量分布は、データ処理装置(D‐2500
Chromato-Integrator、日立製作所社製)を用いて積分チャートの面積比で示した。ジペプチドもしくはトリペプチド含量は、上記積分チャートから平均分子量が130〜580のペプチド合計量を求め、これをジペプチドもしくはトリペプチド量とし、全体のペプチド量の合計に対する割合を求めた。
【0028】
上記緑豆蛋白分解物は、グルタチオン産生促進作用、皮膚のターンオーバー促進作用、角層保湿作用、および経皮水分蒸散量低下作用を有する。さらに、コラゲナーゼ阻害作用やラジカル消去作用、ならびにチロシナーゼ阻害作用やエラスターゼ阻害作用も有する。
【0029】
本発明の皮膚外用剤は、上記緑豆蛋白分解物を含有する。好ましくは、本発明の皮膚外用剤中に、上記緑豆蛋白分解物は0.1〜99質量%含有され得る。
【0030】
本発明の皮膚外用剤の形態は、特に限定されず、通常の皮膚外用剤基剤中に混合され得る。例えば、ローション、乳剤、クリーム、軟膏などの種々の形態であり得る。特に、化粧水、美容液、乳液、クリームなどの化粧料として提供されることが好ましい。
【0031】
本発明の皮膚外用剤は、上記緑豆蛋白分解物以外に、皮膚外用剤や化粧料に通常使用され得る種々の成分を、緑豆蛋白分解物の効果を損なわない範囲で含み得る。例えば、他の保湿剤、油性物質、界面活性剤、増粘剤、中和剤、防腐剤、抗酸化剤、色素、香料、紫外線吸収剤、美白剤、細胞賦活剤、他の薬効成分などが挙げられる。
【実施例】
【0032】
(製造例1:緑豆蛋白分解物の調製)
はるさめ製造工程で得られる副産物である、緑豆蛋白排出液乾燥物をミルで粉砕し、粗蛋白含量が6質量%となるよう、水道水を加え分散した。これを塩酸でpH3に調整した後、酸性プロテアーゼ(デナプシン、ナガセケムッテクス社製)を粗蛋白1g当たり3000units加え、攪拌しながら40℃で16時間反応させた。反応後、80℃〜85℃で20分間加熱し、酵素を失活させた。その後、NaOHの添加により反応液をpH7に調整した。これを遠心分離して、上清を凍結乾燥し、緑豆蛋白分解物の試料(以下、緑豆ペプチドという)を得た。試料の分子量分布を、上記の手順により測定した。本試料の全ペプチド中ジペプチドまたはトリペプチドの含量は64.4%であった。
【0033】
(製造例2:緑豆蛋白分解物の調製)
はるさめ製造工程で得られる副産物である、緑豆蛋白排出液乾燥物をミルで粉砕し、粗蛋白含量が6質量%となるように水道水を加え、分散させた。これを水酸化ナトリウムでpH7に調整後、アルカリプロテアーゼ(商品名:ビオプラーゼSP15−FG、ナガセケムテックス社製)を粗蛋白1g当たり1万units添加し、緩やかに攪拌しながら40℃で16時間反応させた。80℃〜85℃で20分間加熱し、酵素を失活させた。酵素反応液を遠心分離して、上清を凍結乾燥し、緑豆蛋白分解物の試料(以下、緑豆ペプチドという)を得た。試料の分子量分布を、上記の手順により測定した。本試料の全ペプチド中ジペプチドおよびトリペプチドの割合は、61.1%であった。
【0034】
(実施例1:グルタチオン産生促進作用の測定)
NHDF(AD)正常ヒト皮膚繊維芽細胞(Cascade Biology, Inc.)を、10%非働化ウシ胎児血清(GIBCO社)含有増殖添加剤(LSGS;クラボウ社)添加正常ヒト皮膚繊維芽細胞基礎培地(Medium106S;クラボウ社)中、6ウェルプレートに2.0×105細胞/ウェルで播種し、37℃にて5%CO2下で24時間培養した。細胞がプレートに接着したことを確認した後、培地を、上記製造例1で得た緑豆ペプチドを粗蛋白として100または1000μg/mL添加した培地に置換し、37℃にて5%CO2下で24時間培養し、細胞を回収した。細胞中のグルタチオン量を、Total
Glutathione Quantification Kit(DOJINDO MOLECULAR TECHNOLOGIES, INC.製)を用いて測定した。また、細胞中の蛋白質の量を、Lowry法を用いて測定し、蛋白質当たりのグルタチオン量を算出した。結果を図1に示す。なお、緑豆ペプチドを含まない培地で培養した細胞を、コントロールとした。
【0035】
図1に示すように、緑豆ペプチドは、ヒト皮膚繊維芽細胞において優れたグルタチオン産生促進作用を示した。
【0036】
(実施例2:吸湿性・保湿性試験)
試料(上記製造例1で得た緑豆ペプチド、ヒアルロン酸ナトリウム、およびグリセリン)を、真空乾燥機中で60℃にて乾燥させた。秤量瓶も乾熱機中で105℃にて乾燥させた。乾燥済みの秤量瓶に、上記の各試料1gを正確に秤量した。これらを、温度40℃および湿度75%の恒温機中で6日間置き、重量変化を測定した(吸湿性試験)。次いで、これらを、温度20℃および湿度約40%のデシケータ中に移し、さらに6日間置いて、重量変化を測定した(保湿性試験)。結果を図2に示す。
【0037】
図2に示すように、緑豆ペプチドは、吸湿・保湿性があることが知られているグリセリンおよびヒアルロン酸ナトリウムよりも、優れた吸湿・保湿性を有する。
【0038】
(実施例3:角層の吸水保水機能増加作用試験)
試料塗付後に生体角層水負荷試験を行って、緑豆ペプチドによる角層の保水機能向上効果を評価した。すなわち、上腕の測定部位の肌水分量を測定した後、上記製造例1で得た緑豆ペプチドの5%(w/v)水溶液を同部位に塗付した。液が乾いた後、測定部位を覆うように、水滴を10秒間表皮に置いた。それを拭き取った直後から2分後まで30秒ごとに肌水分量を測定した。肌水分量の測定には、家庭用の肌水分計(肌水分計DM-R2、松下電器産業社)を使用した。同じ部位について、時間をおいて3回測定を行い、平均値を求めた結果を図3に示す。
【0039】
この測定法では、拭き取った直後の肌水分値が高ければ吸水能が高いと判断し、初期値への戻りが遅いほど水分保持能は高いと判断する。図3に示すように、緑豆ペプチドには、角層の吸水能、水分保持能を増加させる効果が見られた。
【0040】
(実施例4:ラジカル消去活性の測定)
非常に安定なラジカルである1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジル(DPPH)を用いて、上記製造例1で得た緑豆ペプチドのラジカル消去活性を測定した。紫色の安定ラジカルであるDPPHラジカルは、抗酸化物質の作用でラジカルではなくなると、この紫色が消失するので、これを測定することにより、ラジカル消去活性を評価した。
【0041】
ラジカル消去活性の測定は、特開2003−81744号公報に記載の方法に準じて行った。すなわち、まず、100mM MES緩衝液(pH6)に溶解した種々の量の試料1.5mLと、150μMのDPPHを含むエタノール溶液1.5mLとを、試験管に入れ、密栓をしてよく混合した。室温にて30分間静置した後、517nmの吸光度を測定した。なお、ブランクは、試料の代わりに100mM
MES緩衝液1.5mLを用いた。
【0042】
陽性対照として、ラジカル消去作用をもつことで知られるTrolox(6-Hydroxy-2,5,7,8-tetramethylchroman-2-carboxylic
acid、ALDRICH社)についても同様の測定を行った。緑豆ペプチド粗蛋白あたりのラジカル消去能を、これに相当するラジカル消去能を示すTrolox量として示した。
【0043】
緑豆ペプチドの添加量とDPPHラジカル消去率との関係を図4に示す。図4に示すように、緑豆ペプチドには、ラジカル消去活性が認められた。緑豆ペプチド粗蛋白1mg当たりのラジカル消去能に相当するTrolox量は、6.7nmolであった。
【0044】
(実施例5:コラゲナーゼ阻害活性の測定)
コラゲナーゼは、真皮の主要成分であるコラーゲンを減少させることにより、皮膚のシワやタルミを促進するといわれている。これらを防止するために、コラゲナーゼ阻害剤を用いることが知られている(特開2003−55184号公報)。そこで、コラゲナーゼ阻害活性について検討を行った。
【0045】
20mM塩化カルシウム含有、0.1M
Tris-HCl緩衝液(pH7.1)を調製し、緩衝液とした。Pz-peptide(Pz-Pro-Leu-Gly-Pro-D-Arg-OH;BACHEM
Fenichemikalien AG社)を 1mM となるように上記緩衝液に溶解し、基質溶液とした。コラゲナーゼtype IV(SIGMA社製)5mgに蒸留水1mlを加え溶解し、これを上記緩衝液にて100倍希釈してコラゲナーゼ液とした。基質溶液0.2mlとバッファーに溶解して種々の濃度に調製した試料溶液0.25mlを混合し、37℃にて5分間保温、そこへコラゲナーゼ液0.05mlを加えて37℃にて30分間反応させた。25mMクエン酸1mlを添加して反応を停止し、酢酸エチル5mlを加え、密栓をしてミキサーで20秒間激しく攪拌した。4℃にて遠心分離し、回収した酢酸エチル層の320nmにおける吸光度を測定した。ブランクは上記で酵素を添加する前にクエン酸を添加し、以降テストと同様に測定したものを用いた。コラゲナーゼ阻害率は以下の式により算出した。式中のAは試料添加した場合の吸光度を示し、Bはそのブランクを示す。また、Cは試料無添加の場合の吸光度を示し、そしてDはそのブランクを示す。
【0046】
【数1】

【0047】
緑豆ペプチド濃度0.25%、0.5%、および1.0%におけるコラゲナーゼ残存率を図5に示す。図5に示すように、緑豆ペプチドには、コラゲナーゼ阻害活性が認められた。
【0048】
(調製例1:緑豆ペプチド含有化粧水の調製)
上記製造例1で得た緑豆ペプチドを用いて、以下の処方で化粧水を調製した。
緑豆ペプチド 5質量%
1,3-ブチレングリコール 5質量%
グリセリン 5質量%
メチルパラベン 0.1質量%
クエン酸 微量
精製水 残余
【0049】
(比較調製例1:緑豆ペプチド非含有化粧水の調製)
比較のために、以下の処方で緑豆ペプチドを含まない化粧水を調製した。
1,3-ブチレングリコール 5質量%
グリセリン 5質量%
メチルパラベン 0.1質量%
クエン酸 微量
精製水 残余
【0050】
(調製例2:緑豆ペプチド含有クリームの調製)
上記製造例1で得た緑豆ペプチドを用いて、以下の処方でクリームを調製した。
緑豆ペプチド 5質量%
グリセリン 5質量%
スクワラン 12質量%
セチル酸アルコール 7.2質量%
セテアレス−20 0.8質量%
メチルパラベン 0.2質量%
プロピルパラベン 0.1質量%
クエン酸 微量
精製水 残余
【0051】
(比較調製例2:緑豆ペプチド非含有クリームの調製)
比較のために、以下の処方で緑豆ペプチドを含まないクリームを調製した。
グリセリン 5質量%
スクワラン 12質量%
セチル酸アルコール 7.2質量%
セテアレス−20 0.8質量%
メチルパラベン 0.2質量%
プロピルパラベン 0.1質量%
クエン酸 微量
精製水 残余
【0052】
(実施例6:皮膚ターンオーバー速度の測定)
白色ワセリンにダンシルクロリドを5質量%混合し、これを5名の被験者の両腕の前腕内側の皮膚に左右対称となるように2箇所ずつ、24時間閉塞塗付し、ダンシルクロリドを角層に結合させて標識とした。上記調製例1の化粧水および調製例2のクリームを、一方の腕の別々の標識部位にそれぞれ毎日朝晩塗付した。対照として、上記比較調製例1の化粧水および比較調製例2のクリームも、他方の腕の標識部位に同様に毎日朝晩塗付した。標識部位において、紫外線照射時に発する蛍光が完全に消失するまでの日数を測定し、ターンオーバー速度とした。結果を表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
緑豆ペプチドを含む化粧水およびクリーム(それぞれ調製例1および2)は、緑豆ペプチドを含まないものよりも、皮膚の角層のターンオーバー速度が少し速くなる傾向が見られた。
【0055】
次いで、各被験者の各部位において、蛍光が完全に消失した日に、その部位からテープストリッピングにより角層細胞を採取した。採取した角層細胞を、ゲンチアナバイオレットおよびブリリアントグリーンで染色し、有核細胞の数を計測した。有核細胞の発現率は、細胞20個当たりの有核細胞数から算出した。結果を表2に示す。
【0056】
【表2】

【0057】
緑豆ペプチドを含む化粧水およびクリーム(それぞれ調製例1および2)では、有核細胞の発現率は低く、角層細胞が健常に成熟していることが認められた。
【0058】
以上の結果から、緑豆ペプチドを含む化粧料は、正常な角化による角層細胞のターンオーバーを促進することがわかった。
【0059】
(実施例7:官能評価)
上記調製例2および比較調製例2のクリームを、被験者5名の顔に2週間にわたり毎日朝晩塗付した。その使用感を、湿潤性、肌荒れ、平滑性、弾力性、および小じわの6項目について評価させた。判定は、やや低下、変化なし、やや向上、および良好の中から当てはまるものを選択させた。結果を表3に示す。
【0060】
【表3】

【0061】
緑豆ペプチドを含むクリームの方が、良好またはやや向上と感じた被験者が多く、化粧料として適していることがわかった。
【0062】
(調製例3:緑豆ペプチド含有化粧水の調製)
上記製造例1で得た緑豆ペプチドを用いて、以下の処方で化粧水を調製した。
緑豆ペプチド 7質量%
グリセリン 5質量%
エタノール 5質量%
メチルパラベン 0.1質量%
精製水 残余
【0063】
(比較調製例3:緑豆ペプチド非含有化粧水の調製)
比較のために、以下の処方で緑豆ペプチドを含まない化粧水を調製した。
グリセリン 5質量%
エタノール 5質量%
メチルパラベン 0.1質量%
精製水 残余
【0064】
(実施例8:化粧水の塗付)
7名の被験者に、上記調製例3で調製した化粧水および上記比較調製例3で調製した化粧水を毎日朝晩、3週間連続して塗付した。
塗付部位:
右手全体、右腕の前腕内側(上記調製例3で調製した化粧水を塗付)
左手全体、左腕の前腕内側(上記比較調製例3で調製した化粧水を塗付)
【0065】
(実施例9:角層水分量の測定)
以下の実施例9〜実施例11の測定は、左右がほぼ同一部位となるように測定した。本発明の緑豆ペプチドが角層水分量を増加させる効果を有するか否かについて検討した。実施例8に従って化粧水の塗付を行った7名の被験者について、塗付前、塗付開始1週間後および3週間後に、Corneometer
CM825(Courage+Khazaka製)を用いて、両手の甲の角層水分量(A1:右手、B1:左手)および両腕の前腕内側の角層水分量(A2:右腕、B2:左腕)を測定した。角層水分量は、周囲温度および/または周囲湿度、被験者の体調等の影響を受けて大きく変動する場合がある。そのため、得られた角層水分量A1、B1、A2およびB2をそのまま評価すると正しい結果が得られない場合がある。そこで、本発明者らは、上記の影響をできるだけ少なくするために、下式(1)により求めた角層水分量相対値R1およびR2を用いて角層水分量の評価を行った。

Rn=(An−Bn)/Bn (1)
(式中、n=1または2)

この測定法では、本発明の緑豆ペプチドが高い角層水分量増加効果を示すほど、塗付前と比べて塗付後の角層水分量相対値Rnが大きくなる。7名の被験者の角層水分量相対値R1およびR2を表4に示す。また、図6は、手の角層水分量相対値R1の平均値の推移を示すグラフである。
【0066】
【表4】

【0067】
表4に示されるとおり、手に塗付した場合、塗付期間1週間では被験者6名中3名で角層水分量の増加が見られ、塗付期間3週間では被験者6名中5名で角層水分量の増加が見られた。また、表4に示されるとおり、前腕内側に塗付した場合、塗付期間1週間では被験者7名中4名で角層水分量の増加が見られ、塗付期間3週間では被験者7名中3名で角層水分量の増加が見られた。特に、手に塗付した場合には、図6に示されるように、塗付期間が長くなるにつれて、角層水分量は増加し、塗付期間3週間での角層水分量相対値R1は、塗付前と比較し有意な増加を示した(Paired t-test、p<0.05)。以上の結果から、本発明の緑豆ペプチドは、角層水分量を増加させる効果があることがわかった。
【0068】
(実施例10:経皮水分蒸散量の測定)
本発明の緑豆ペプチドが経皮水分蒸散量を減少させる効果を有するか否かについて検討した。実施例8に従って化粧水の塗付を行った7名の被験者について、塗付前、塗付開始1週間後および3週間後に、経皮水分蒸散量測定装置(AS-TW2(ASAHI BIOMED社))を用いて、両腕の前腕内側の経皮水分蒸散量(C1:右腕、D1:左腕)を測定した。経皮水分蒸散量は、実施例9に記載した角層水分量と同様に、周囲温度および/または周囲湿度、被験者の体調等の影響を受けて大きく変動する場合がある。そのため、得られた経皮水分蒸散量C1およびD1をそのまま評価すると正しい結果が得られない場合がある。そこで、本発明者らは、上記の影響をできるだけ少なくするために、下式(2)により求めた経皮水分蒸散量相対値T1を用いて経皮水分蒸散量の評価を行った。

T1=(C1−D1)/D1 (2)

この測定では、本発明の緑豆ペプチドが高い経皮水分蒸散量低下効果を示すほど、塗付前と比べ、塗付後のT1は小さくなる。7名の被験者の経皮水分蒸散量相対値T1を表5に示す。また、図7は、前腕内側の経皮水分蒸散量相対値T1の平均値の推移を示すグラフである。
【0069】
【表5】

【0070】
表5に示されるとおり、塗付期間1週間では被験者7名中6名で経皮水分蒸散量の減少が見られ、塗付期間3週間では被験者7名中5名で経皮水分蒸散量の減少が見られた。図7に示されるとおり、相対値T1は塗付前と比較すると、塗付1週間後、3週間後ともに低下がみられ、塗付期間1週間で、有意な差が認められた(paired t-test、p<0.01)。
以上の結果から、本発明の緑豆ペプチドは、経皮水分蒸散量を減少させる効果があることがわかった。
【0071】
(実施例11:皮膚粘弾性の測定)
実施例8に従って化粧水の塗付を行った7名の被験者について、塗付前、塗付開始1週間後および3週間後に皮膚の柔軟性および弾力性の測定を行った。
皮膚の柔軟性および弾力性は皮膚粘弾性測定装置(Cutometer
SEM575(Courage & Khazaka electronic GmbH社))を用いた吸引法により求めた。即ち、皮膚(手および前腕内側)を減圧下(500mb)で一定時間(1秒間)吸引し、一気に吸引を解除してその時の皮膚の挙動を測定した。
【0072】
評価指標は、柔軟性に対応するパラメータとして、吸引時の皮膚高の最大変位量(UF)を使用し、弾力性に対応するパラメータとして、戻り率(UF/UR:吸引解除直後に回復する変位量(UR)の(UF)に対する割合)を使用した。一般的にUF値が高いと柔軟性が高いと評価される。UF/UR値が高いと弾力性が高いと評価される(非特許文献2を参照)。
【0073】
この測定も、実施例9および10と同様に、測定時の環境や、被験者の皮膚の状態による結果のばらつきなど、測定に影響を及ぼす変動要素が多い。このため、それらの影響をできるだけ少なくするために、下式(3)および(4)により求めた最大変位量相対値Mnおよび戻り率相対値Nnを用いて評価を行った。この測定では、本発明の緑豆ペプチドが高い皮膚柔軟性改善効果を示すほど、塗付前と比べ塗付後のMnは大きくなり、高い皮膚弾力性改善効果を示すほど、塗付前と比べ塗付後のNnは大きくなる。
【0074】
Mn=(En−Fn)/Fn (3)
(式中、n=1または2であり;
E1は右手の最大変位量であり;
F1は左手の最大変位量であり;
E2は右腕の前腕内側の最大変位量であり;
F2は左腕の前腕内側の最大変位量である)
【0075】
Nn=(Gn−Hn)/Hn (4)
(式中、n=1または2であり;
G1は右手の戻り率であり;
H1は左手の戻り率であり;
G2は右腕の前腕内側の戻り率であり;
H2は左腕の前腕内側の戻り率である)
【0076】
最大変位量相対値M1およびM2を表6に示す。また、図8は、手の最大変位量相対値M1の平均値の推移を示すグラフである。
【0077】
【表6】

【0078】
表6に示されるとおり、手に塗付した場合、塗付期間1週間では被験者5名中3名で柔軟性の向上傾向が見られ、塗付期間3週間では被験者5名中4名で柔軟性の向上傾向が見られた。また、図6に示されるとおり、前腕内側に塗付した場合、塗付期間1週間では被験者7名中6名で柔軟性の向上効果が見られ、塗付期間3週間では被験者7名中5名で柔軟性の向上効果が見られた。以上の結果より、本発明の緑豆ペプチドは、皮膚の柔軟性を向上させる効果があることがわかった。
【0079】
戻り率相対値N1およびN2の結果を表7に示す。また、図9は、前腕内側の戻り率相対値N2の平均値の推移を示すグラフである。
【0080】
【表7】

【0081】
表7に示されるとおり、手に塗付した場合、塗付期間1週間では被験者5名中2名で弾力性の向上傾向が見られ、塗付期間3週間では被験者5名中3名で弾力性の向上傾向が見られた。また、表7に示されるとおり、前腕内側に塗付した場合、塗付期間1週間では被験者6名中5名で弾力性の向上効果が見られ、塗付期間3週間では被験者6名中5名で弾力性の向上効果が見られた。以上の結果より、本発明の緑豆ペプチドは、皮膚の弾力性を向上させる効果があることがわかった。
【0082】
(実施例12:官能評価)
上記調製例3および上記比較調製例3の化粧水を、被験者10名の手に3週間にわたり毎日朝晩塗付した。その使用感を、湿潤性、肌荒れ、平滑性、弾力性、およびしわの5項目について評価させた。判定は、やや低下(改善スコア:−1)、変化なし(改善スコア:0)、やや改善(改善スコア:+1)、改善(改善スコア:+2)の4段階から各被験者に選択させた。各被験者の選択結果をもとに、各項目を選択した被験者の人数を集計し、表8に示す。
【0083】
【表8】

【0084】
表8より、比較調製例3の化粧水を塗付した後の評価では、各項目で「改善」を選択する被験者は0人であったのに対し、調製例3の化粧水を塗付した後の評価では、「改善」「やや改善」を選択する被験者が増えた。
【0085】
表9に、各評価項目についての改善スコアの合計点を示す。さらに、図10に、塗付期間3週間の改善スコア合計のグラフを示す。
【0086】
【表9】

【0087】
表9および図10に示されるように、製造例3の化粧水を塗付した場合の改善スコア合計は、比較製造例3の化粧水を塗付した場合よりもすべての項目について高い数値であった。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明によれば、皮膚に対して優れた保湿効果および老化抑制効果を有する皮膚外用剤が提供される。主成分である緑豆ペプチドは、天然物由来であり、はるさめの製造過程での副産物を利用して得られ得るため、安価かつ安全である。本発明の皮膚外用剤は、化粧料としてまたは医薬品として使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】緑豆ペプチド添加培地中で培養したNHDF細胞内のグルタチオン量を示すグラフである。
【図2】高湿度下、低湿度下での緑豆ペプチド、ヒアルロン酸ナトリウム、およびグリセリンの試料の重量の経日変化を示すグラフである。
【図3】緑豆ペプチド塗付後の肌水分量の経時変化を示すグラフである。
【図4】緑豆ペプチドの添加量とDPPHラジカル消去率との関係を示すグラフである。
【図5】緑豆ペプチドの濃度とコラゲナーゼ阻害率との関係を示すグラフである。
【図6】手の角層水分量相対値(R1)の平均値の推移を示すグラフである。
【図7】前腕内側の経皮水分蒸散量相対値(T1)の平均値の推移を示すグラフである。
【図8】手の最大変位量相対値M1の平均値の推移を示すグラフである。
【図9】前腕内側の戻り率相対値の平均値の推移を示すグラフである。
【図10】塗付期間3週間の改善スコア合計のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緑豆蛋白分解物を含有する、皮膚外用剤。
【請求項2】
前記緑豆蛋白分解物の全ペプチド中のジペプチドまたはトリペプチドの割合が10%以上である、請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
前記緑豆蛋白分解物の全ペプチド中のジペプチドまたはトリペプチドの割合が50%以上である、請求項2に記載の皮膚外用剤。
【請求項4】
前記緑豆蛋白分解物が、緑豆由来の蛋白質をプロテアーゼにより加水分解することによって得られる、請求項1から3のいずれかの項に記載の皮膚外用剤。
【請求項5】
前記皮膚外用剤が化粧料である、請求項1から4のいずれかの項に記載の皮膚外用剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−22093(P2006−22093A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−170150(P2005−170150)
【出願日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(000214250)ナガセケムテックス株式会社 (173)
【Fターム(参考)】