説明

線形運動デバイスの制御装置

【課題】検出磁場と線形運動デバイスの位置とにずれがある場合でも、線形運動デバイスを正確に位置決めすることができる線形運動デバイスの制御装置を提供する。
【解決手段】デバイス11の磁石19が発生する磁場を検出し、検出された磁場の値に応答する出力信号VMOを出力する磁場センサ113、制御信号VCM[2:0]と出力信号VMOの振幅とを関連付けた電圧指令信号VCOを生成する電圧信号生成回路114、出力信号VMOと電圧指令信号VCOとの偏差を増幅して出力信号VEOを生成する差動増幅器115、出力信号VEOの値に応じて線形運動デバイス11を駆動する出力ドライバ112と、出力信号VEOを、磁場センサ113から出力される出力信号VMOの振幅に応じて補正し、出力ドライバ112への入力信号を生成するゲイン補正回路116によって制御装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線形運動デバイス(オートフォーカスレンズなど)の制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
入力信号と、この入力信号に応じた変位とが一次関数で表されるデバイスは、線形運動デバイスとも呼ばれている。線形運動デバイスには、例えば、カメラのオートフォーカスレンズ等がある。
図13は、線形運動デバイス11を制御する従来の制御装置10を示した図である。図13に示した制御装置10は、磁場センサ13と、電圧指令信号生成回路14と、差動増幅器15と、出力ドライバ12と、を備えている。図中に符号11を付して示したのは、制御装置10によってフィードバック制御される線形運動デバイス11である。線形運動デバイス11は、コイル18と磁石19とを備えている。
【0003】
磁場センサ13は、検出した磁場に基づいて信号を生成し、出力信号VMOとして出力する。電圧指令信号生成回路14は、図示しないインターフェースから入力された信号に基づいて電圧指令信号VCOを生成する。出力信号VMOと電圧指令信号VCOは、差動増幅器15の正転入力端子と反転入力端子とにそれぞれ入力される。出力信号VMOと電圧指令信号VCOとが入力された差動増幅器15からは、出力ドライバ12の操作量(偏差と増幅度の積)を表す操作量信号VEOが出力される。
【0004】
操作量信号VEOの大きさによって出力ドライバ12を流れる電流が変化し、線形運動デバイス11のコイル18を流れる電流が変化する。コイル18を流れる電流により、磁石19を含む線形運動デバイス11の位置が変化する(移動する)。このとき、磁場センサ13の出力信号VMOは、磁石19の移動に伴って変化する。制御装置10は、出力信号VMOの変化によって線形運動デバイス11の位置を検出し、この位置が外部から入力される信号によって指示される位置に一致するようにフィードバック制御を行っている。
【0005】
図14は、図13に示した磁場センサ13によって検出される磁場(以下、検出磁場とも記す)と、線形運動デバイス11の位置との関係を示した図である。図14では、図中左側の縦軸には磁場センサ13によって検出された磁場が示され、図中右側の縦軸には磁場センサ13の出力信号VMOの値が示されている。図14の出力信号VMOを示す縦軸のさらに右側には、電圧指令信号VCOが示されている。
【0006】
また、図14の横軸は、線形運動デバイス11における所定の部位の基準点から計測した位置を示している。図13に示した制御装置10によれば、制御装置10は、図14に示した電圧指令信号VCMが与えられた場合、磁場センサ13が検出磁場BMを得るように、フィードバック制御を実行する。フィードバック制御により、線形運動デバイス11の位置は位置XMIDを得る。
【0007】
ところで、図13に示した線形運動デバイス11では、磁石19の着磁のばらつきが生じ得る。また、制御装置10では、磁場センサ13の搭載位置のずれにばらつきが生じ得る。このようなばらつきにより、線形運動デバイス11の位置と、磁場センサ13によって検出される磁場が設計時に想定された関係と相違する。
図15は、検出磁場と線形運動デバイス11の位置との関係を示した図である。図15の図中左側の縦軸には磁場センサ13の検出磁場が示され、図中右側の縦軸には磁場センサ13の出力信号が示されている。図15中の実線aは、図14に示した特性を示したもので、検出磁場と線形運動デバイス11の位置とのずれがない(設計値のとおり)場合の特性を比較のため示している。一点鎖線b及び二点鎖線cは、検出磁場と線形運動デバイス11の位置とのずれがある場合の特性を示している。
【0008】
図15に示したように、磁場センサ13の位置にずれがある場合、検出磁場が線形運動デバイス11の正しい位置を示さない。このため、制御装置10が、線形運動デバイス11を適正にフィードバック制御することができなくなることが分かる。
このような不具合を解消する従来技術には、例えば、特許文献1に記載された発明がある。図16は、特許文献1に記載された従来技術を説明するための図である。特許文献1に記載された従来技術では、線形運動デバイス11の最大移動幅(図16、横軸に示したXTOP−XBOT)に対応する磁場センサ13の出力信号VMOの最大値から最小値を、電圧指令信号のステップ数で等分割する。そして、等分割された磁場センサ13の出力範囲の各々を、線形運動デバイス11の移動幅に対する電圧指令信号の固定ステップとする。
特許文献1記載の従来技術によれば、磁石19の着磁ばらつきや磁場センサ13の搭載位置ずれによって生じる線形運動デバイス11の位置と磁場センサ13の出力信号VMOとのずれを補正することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−113874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記した特許文献1に記載された従来技術には、以下のような問題がある。すなわち、特許文献1に記載された従来技術では、線形運動デバイス個々の最大移動幅に対して電圧指令信号の固定ステップを定義する。しかしながら、磁場センサ13の出力信号VMO及び電圧指令信号生成回路14の電圧指令信号VCOの振幅値には様々なケースがあって、制御装置10ごとに異なるものと考えられる。
このため、図17に示すように、差動増幅器15に入力される偏差ε(磁場センサの出力信号VMOと電圧指令信号VCOとの差)及び出力ドライバ12の操作量VEO(偏差と増幅度の積)にも様々なケースがあり、制御装置10ごとに異なっている。
【0011】
図18(a)、(b)は、上記の点によって生じる従来技術の不具合を説明するための図である。図18(a)は、縦軸に電圧指令信号を示し、横軸に時間を示している。図18(b)は、図18(a)に示した電圧指令信号にしたがって動作した場合の線形運動デバイス11の位置を縦軸に示し、横軸に時間を示している。
差動増幅器15の増幅度Kpは、図18中の実線dに対して線形運動デバイス11のステップ応答時間が最適となるような一定値に設定される。このため、図18(a)に示すように、電圧指令信号VCOの値が本来出力されるべきVC/2からずれてVC/4(一点鎖線eで示す)、VC(二点鎖線fで示す)になると、図18(b)に示したように、適切な操作量VEOが出力ドライバ12に与えられず、応答時間が増えてしまう。
【0012】
例えば、一点鎖線eで示すように、操作量VEOが不足する場合には、線形運動デバイス11が所望の位置に達するまでの応答速度が遅くなり、実線dで示した場合の応答時間t1が応答時間t2にまで延びている。一方、二点鎖線fで示すように、操作量VEOが過剰の場合には応答時間が速くなって線形運動デバイス11がリンギングする。このため、線形運動デバイス11が所望の位置に収束するまで時間がかかり、応答時間が時間t3にまで延びている。さらに、操作量VEO過剰な場合、操作量VEOによっては線形運動デバイス11が発振に至る場合もある。
【0013】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、検出磁場と線形運動デバイスの位置との関係が設計時の関係と異なる場合でも、電圧指令信号に対する線形運動デバイスの位置のずれを補正することができる線形運動デバイスの制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の線形運動デバイスの制御装置は、磁石(例えば図1に示した磁石19)を有する線形運動デバイス(例えば図1に示した線形運動デバイス11)の、前記磁石が発生する磁場を検出し、外部から指示された位置に前記線形運動デバイスを移動させる線形運動デバイスの制御装置(例えば図1に示した制御装置101)であって、前記磁石が発生する磁場を検出し、検出された磁場の値に応答する第1出力信号を出力する磁場センサ(例えば図1に示した磁場センサ113)と、外部から入力される入力信号(例えば図1示した制御信号VCM[2:0])と、前記磁場センサの出力信号(例えば図1示した出力信号VMO)の振幅とを関連付けた電圧指令信号を生成する電圧指令信号生成回路(例えば図1に示した電圧指令信号生成回路114)と、前記磁場センサの出力信号と前記電圧指令信号との偏差を増幅して第2出力信号を生成する差動増幅器(例えば図1に示した差動増幅器115)と、前記第2出力信号の値に応じて前記線形運動デバイスを駆動する出力ドライバ(例えば図1に示した出力ドライバ112)と、前記差動増幅器から出力される前記第2出力信号を、前記磁場センサから出力される第1出力信号の振幅に応じて補正し、前記出力ドライバへの入力信号を生成する補正回路(例えば図1に示したゲイン補正回路116)と、を含むことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の線形運動デバイスの制御装置は、上記した発明において、前記補正回路が、前記第1出力信号の振幅が予め定められた基準振幅と相違する場合、前記第1出力信号の振幅に対する前記基準振幅の比で前記第2出力信号を増幅するゲイン補正回路(例えば図1に示したゲイン補正回路116)であることが望ましい。
また、本発明の線形運動デバイスの制御装置は、上記した発明において、前記ゲイン補正回路が、抵抗値が可変の抵抗素子(例えば図4に示した抵抗分割器41)と、前記第1出力信号の振幅によって前記抵抗素子の抵抗値を決定する制御信号を生成するデコーダ(例えば図4に示したデコーダ42)と、を含むことが望ましい。
【0016】
また、本発明の線形運動デバイスの制御装置は、上記した発明において、前記補正回路が、前記第1出力信号の振幅が予め定められた基準振幅と相違する場合、前記第1出力信号の振幅に対する前記基準振幅の比で前記第2出力信号を増幅するPWM変調回路(例えば図10に示したPWM変調回路90)であることが望ましい。
また、また、本発明の線形運動デバイスの制御装置は、上記した発明において、前記第1出力信号の振幅を示す制御信号を保持するメモリをさらに備え、前記補正回路は、前記メモリから前記第1出力信号の振幅を読み出して前記第2出力信号を補正することが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、線形運動デバイスの磁石や制御装置の磁場センサの搭載位置のずれによって検出磁場の値が設計値と相違する場合であっても、線形運動デバイスを外部から指示された適正な位置に移動させることができる。つまり、本発明の線形運動デバイスの制御装置は、検出磁場と線形運動デバイスの位置との関係が設計時の関係と異なる場合でも、電圧指令信号に対する線形運動デバイス位置のずれを補正することができる線形運動デバイスの制御装置を提供することができる。
なお、本発明によれば、単に検出磁場のみを補正したことによって生じる過渡応答特性の劣化も改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態の線形運動デバイス制御装置と、線形運動デバイスとを説明するための図である。
【図2】図1に示した出力ドライバの他の構成を例示した図である。
【図3】図1に示した電圧指令信号生成回路の回路構成を説明するための図である。
【図4】図1に示したゲイン補正回路の回路構成を説明するための図である。
【図5】本発明の第1実施形態の線形運動デバイスの制御装置の動作を説明するための図である。
【図6】図4に示した抵抗分割器の構成を説明するための図である。
【図7】本発明の第1実施形態の線形運動デバイスの制御装置の効果を説明するための図である。
【図8】図1に示したゲイン補正回路の他の構成例を説明するための図である。
【図9】図4に示した抵抗分割器の他の構成例を説明するための図である。
【図10】本発明の第2実施形態の線形運動デバイスの回路構成を説明するための図である。
【図11】図10に示したPWM変調回路の構成を、より具体的に説明するための図である。
【図12】図10、11に示したPWM変調回路によって生成されるPWM波を示した図である。
【図13】線形運動デバイスを制御する従来の制御装置を示した図である。
【図14】図13に示した磁場センサの検出磁場と、線形運動デバイスの位置との関係を示した図である。
【図15】図13に示した磁場センサの検出磁場と、線形運動デバイスの位置との他の関係を示した図である。
【図16】特許文献1に記載された従来技術を説明するための図である。
【図17】一般的な差動増幅器に入力される偏差ε及び出力ドライバの操作量を例示した図である。
【図18】特許文献1に記載された従来技術で生じる不具合を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の第1実施形態、第2実施形態について図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
・回路構成
図1は、第1実施形態の線形運動デバイス11を制御する制御装置101と、制御装置101によって制御される線形運動デバイス11とを説明するための図である。図1には、線形運動デバイス11と、線形運動デバイス11を制御する制御装置101とが示されている。線形運動デバイス11は、図13に示した線形運動デバイス11と同様の構成であるから、図15に示した符号と同様の符号を付し、その説明を一部略すものとする。
【0020】
第1実施形態の線形デバイス11は、コイル18と、磁石19とを有している。第1実施形態では、コイル18において電磁誘導により発生する磁場によって磁石19及び線形運動デバイス11の位置が変化するものとする。また、コイル18には制御装置101から電流が供給されて、供給された電流に応じて磁石19及び線形運動デバイス11が移動するから、制御装置101は、線形運動デバイス11の位置を制御することができる。
【0021】
制御装置101は、磁石19において発生した磁場を検出し、検出された磁場に応答する出力信号VMOを生成する磁場センサ113と、線形運動デバイス11を所望の位置に移動させるための信号(以降、入力信号とも記す)を外部から入力するためのインターフェースとして機能する電圧指令信号生成回路114と、を備えている。磁場センサ113の位置は固定されているから、磁場センサ113によって検出される磁場は、磁場センサ113と磁石19との相対的な位置を示す。
電圧指令信号生成回路114は、入力信号と磁場センサ113の出力信号VMOの振幅とを関連付けた電圧指令信号VCOを生成する。
【0022】
また、制御装置101は、磁場センサ113の出力信号VMOと電圧指令信号生成回路114から出力された出力信号VMOとを入力する差動増幅器115を備えている。差動増幅器115は、出力信号VMOと電圧指令信号VCOとの差である偏差を増幅度Kpで増幅した出力信号VEOを生成し、出力する。出力信号VEOは、後述するように補正されて入力信号VAJとなる。入力信号VAJは、線形運動デバイス11を駆動する出力ドライバ112に入力される。
出力ドライバ112は、MOSスイッチMN1を備えている。入力信号VAJは、MOSスイッチMN1のゲートに印加されてMOSスイッチMN1のソース、ドレイン間に流れる電流の値を制御する。コイル18で発生する磁場の強さに応じて磁石19の移動量が決定する。
【0023】
また、制御装置101は、出力信号VCOの振幅に応じて出力信号VEOを補正するゲイン補正回路116と、ゲイン補正回路116の補正に使用される制御信号VMH[2:0]及びVML[2:0]を記憶するためのメモリ17を備えている。ゲイン補正回路116による出力信号VEOの補正によって入力信号VAJが生成される。
制御信号VMH[2:0]は、磁場センサ113の最大出力電圧VMHを選択する制御信号である。また、制御信号VML[2:0]は、磁場センサ113の最小出力電圧VMLを選択する制御信号である。
【0024】
制御信号VMH[2:0]、制御信号VML[2:0]のメモリ17への書き込みは、例えば、以下のようにして行われる。すなわち、制御装置101を製造するメーカにおいて、制御装置101の出荷時に最大出力電圧VMHと最小出力電圧VMLとを測定する。そして、測定された最大出力電圧VMHに応じた制御信号VMH[2:0]、最小出力電圧VMLに応じた制御信号VML[2:0]を電圧指令信号生成回路114が決定してメモリ17に書き込むようにしてもよい。
また、図1中の磁場センサ113は、ホールセンサであっても、または磁気抵抗センサであってもよい。
【0025】
i 出力ドライバ
なお、出力ドライバ112の回路構成は、以上説明した構成に限定されるものではない。例えば、出力ドライバ112は、図1に示したように、1つのMOSスイッチMN1によって構成されるものに限定されるものではない。
図2は、出力ドライバ112の他の構成を例示した図である。出力ドライバ112は、出力ドライバ201、202を含むHブリッジドライバによって構成され、出力ドライバ201が2つのMOSスイッチM1、M3を含むように構成され、出力ドライバ202が2つのMOSスイッチM2、M4を含むように構成されるものであってもよい。
【0026】
ii 電圧指令信号生成回路
図3は、図1に示した電圧指令信号生成回路114の回路構成を説明するための図である。電圧指令信号生成回路114は、正電源(すなわち、VDD)と負電源(すなわち、VSS)の間に接続される抵抗素子RM0〜RM5と、正電源−負電源間に接続される抵抗を分割し、磁場センサ113の最大振幅相当の電圧を選択するスイッチSWH0〜SWH2及び磁場センサ113の最小振幅相当の電圧を選択するスイッチSWL0〜SWL2と、スイッチSWH0〜SWH2によって選択された電圧を入力するボルテージフォロア回路31と、スイッチSWL0〜SWL2によって選択された電圧を入力とするボルテージフォロア回路32と、ボルテージフォロア回路31の出力信号VMHQとボルテージフォロア回路32の出力信号VMLQとを分割するRC0〜RC3と、線形運動デバイス11を所望の位置へ移動させるための電圧指令信号を選択するスイッチSWC0〜SWC2と、スイッチSWC0〜SWC2によって選択された電圧を入力とし、電圧指令信号VCOを出力するボルテージフォロア回路33と、を備えている。
【0027】
このような電圧指令信号生成回路114は、外部から入力される入力信号として、制御信号VCM[2:0]が入力される。電圧指令信号生成回路114は、制御信号VCM[2:0]と、磁場センサ113の出力信号の振幅とを関連付けた電圧指令信号VCOを生成する。すなわち、電圧指令信号生成回路114は、磁場センサ113の最大振幅から最小振幅の間を電圧指令信号のステップ数で等分割して電圧指令信号の固定ステップとする。また、外部から入力される制御信号VCM[2:0]を、固定ステップに応じた電圧指令信号VCOとする。
【0028】
iii 差動増幅器
図1中の差動増幅器115は、微分要素と積分要素との少なくとも一つを含むように構成されたものであってもよい。
iv ゲイン補正回路
図4は、図1に示したゲイン補正回路116の回路構成を説明するための図である。ゲイン補正回路116は、メモリ17に記憶されている制御信号VMH[2:0]と、制御信号VML[2:0]とを入力し、抵抗分割器41の分割比を決定する制御信号RSEL[2:0]を生成するデコーダ42、制御信号RSEL[2:0]によって決定された分割比で分割される抵抗分割器41、図1に示した差動増幅器115の出力信号VEOを反転増幅する抵抗分割器41、フィードバック抵抗素子RF1及び差動増幅器43によって構成される反転増幅器44と、反転増幅器44の出力信号を反転増幅し、信号VAJを生成する入力抵抗素子RI2、フィードバック抵抗素子RF2及び差動増幅器45によって構成される反転増幅器46と、を備えている。
【0029】
・動作
次に、図5を用い、第1実施形態の線形運動デバイス11の制御装置101の動作を説明する。
図1に示した線形運動デバイス11の磁石19が移動すると、磁石19と磁場センサの相対的な位置が変化する。磁場センサ113は、磁石19の位置に応じた磁場を検出する。検出磁場に基づいて、磁場センサ113からは出力信号VMOが出力される。
本明細書の[発明が解決しようとする課題]で説明したように、検出磁場と線形運動デバイスの位置のずれは、線形運動デバイス11の磁石19の着磁ばらつきや磁場センサ113の搭載位置ずれによってケースごとに異なっている。
【0030】
先に示した図16では、検出磁場と線形運動デバイスの位置ずれを3つのケースについて示した。つまり、図16で示したように、実線aで示したケース1では、磁場センサ出力信号VMOの振幅がVM/2であるときに線形運動デバイス11の位置が最大移動幅に達するのに対し、一点鎖線bで示したケース2では、磁場センサ出力信号VMOの振幅がVM/4であるときに線形運動デバイス11の位置が最大移動幅に達する。また、二点鎖線cで示したケース3では、磁場センサ出力信号VMOの振幅がVMであるときに線形運動デバイス11の位置が最大移動幅に達する。
【0031】
図5に示した電圧指令信号生成回路114には、制御信号VMH[2:0]によって選択される電圧(つまり磁場センサ113の最大出力電圧VMH)と制御信号VML[2:0]によって選択される電圧(つまり磁場センサ113の最小出力電圧VML)との間において、線形運動デバイス11を所望の位置に移動させるための制御信号VCM[2:0]が入力される。電圧指令信号生成回路114は、制御信号VCM[2:0]によって図3に示したスイッチSWC0〜SWC2を切り替えることによって電圧指令信号VCOを生成する。
【0032】
電圧指令信号VCOは、磁場センサ113の最大出力電圧VMHと磁場センサ113の最小出力電圧VMLの間において生成されるため、磁場センサ113の出力信号VMOと同じ電圧振幅を得る。
図5に示した差動増幅器115は、磁場センサ113の出力信号VMOと、電圧指令信号生成回路114の出力信号VCOとの差である偏差εを増幅度Kpで増幅し、操作量信号VEOを生成する。すなわち、差動増幅器115は、図16に示したケース1においてKp×ε/2の操作量VEOを生成するのに対し、ケース2においてKp×ε/4の操作量VEOを、ケース3においてKp×εの操作量VEOを生成することになる。
【0033】
図4に示したゲイン補正回路116では、反転増幅器44が、抵抗分割器41の分割比を選択する制御信号RSEL[2:0]によって決定された入力抵抗と、フィードバック抵抗素子RF1とによって磁場センサ113の出力振幅に対応した増幅度が決定される。そして、反転増幅器46は、入力抵抗素子RI2と、フィードバック抵抗素子RF2とによって、反転増幅器44を介して出力される位相が反転した信号VAJNを、さらに位相を反転して正転信号として出力する。
【0034】
図6は、図4中に示した抵抗分割器41の構成を説明するための図である。図6に示した抵抗分割器41は、抵抗素子RS0〜RS2のそれぞれに対して、並列に接続されているスイッチSRS0〜SRS2を短絡、開放することによって抵抗値を任意に選択できるように構成されている。
以上の構成によれば、ケース1の出力ドライバ112の操作量VAJ(すなわち、Kp×ε/2)が最適だとすると、磁場センサ出力振幅がケース1の1/2倍となるケース2の場合でも、反転増幅器44の増幅度が2倍となる抵抗分割器41の抵抗比が選択され、ケース1と同じ値の出力ドライバ112の操作量VAJ(すなわち、Kp×ε/2)を得ることができる。
【0035】
また、以上の構成によれば、磁場センサ113の出力信号VMOの振幅がケース1の2倍となるケース3の場合でも、反転増幅器44の増幅度が1/2倍となる抵抗分割器41の抵抗比が選択され、ケース1と同じ値の出力ドライバ112の操作量VAJ(すなわち、Kp×ε/2)を得ることができる。
すなわち、第1実施形態では、ゲイン補正回路116が、差動増幅器115から得られる偏差εを増幅度Kpで増幅した信号VEOを補正して、出力ドライバ112の最適な操作量VAJを得ることができる。このため、第1実施形態によれば、磁石19の着磁ばらつきや磁場センサ113の搭載位置ずれによって磁場センサ113の出力信号と線形運動デバイスの位置との関係が設計と異なる場合でも、設計値と同様の過渡応答特性及びステップ応答時間を得ることができる。
【0036】
図7は、上記した第1実施形態の効果を説明するための図である。図7に示したように、第1実施形態によれば、一点鎖線eで示したケース2、二点鎖線fで示したケース3であっても、実線dで示したケース1と同じ過渡応答特性及びステップ応答時間t1を得ることが明らかである。
なお、第1実施形態では、電圧指令信号生成回路114に入力される制御信号と、ゲイン補正回路116のデコーダ42に入力される制御信号として、同じ磁場センサ113の最大出力電圧VMHを選択する制御信号VMH[2:0]と磁場センサ113の最小出力電圧VMLを選択する制御信号VML[2:0]をトラッキングさせることが望ましい。ただし、第1実施形態は、電圧指令信号生成回路114に入力される制御信号と、ゲイン補正回路116のデコーダ42に入力される制御信号を互いに独立した制御信号としてもよい。
【0037】
また、第1実施形態は、以上説明した構成に限定されるものではない。例えば、第1実施形態では、図4に示したようにゲイン補正回路116を構成した。しかし、第1実施形態のゲイン補正回路116は、図4中に示した抵抗分割器41とフィードバック抵抗素子RF1を入れ替えて、図8のように構成してもよい。
また、第1実施形態の図4、図8に示した抵抗分割器41は、図6の構成に限定されるものではない。例えば、図9に示すように、抵抗の分割比を選択する制御信号RSEL[2:0]を入力し、抵抗選択スイッチ制御信号SSEL[7:0]を生成する抵抗選択信号生成回路71と、抵抗選択信号生成回路71によって生成される制御信号SSEL[7:0]を入力する抵抗素子RP0〜RP8の間を選択するスイッチSRP0〜SRP7を含むように構成されるものであってもよい。
また、第1実施形態で着した入力信号はビット数を3ビットとしている場合がある。しかし、入力信号は3ビット以下であっても、3ビット以上であってもよい。
【0038】
[第2実施形態]
・回路構成
図10は、本発明の第2実施形態の線形運動デバイスの回路構成を説明するための図である。なお、図10において、図1に示した構成と同様の構成については同様の符号を付し、その説明を一部略すものとする。
第2実施形態は、先に説明した第1実施形態のように出力ドライバ112に入力される操作量VAJが線形的に変化するものであるのに対し、PWM(Pulse Width Modulation)変調を用いて出力ドライバ112への入力信号を生成することが特徴となる。
図10に示したように、実施形態2の線形運動デバイス11の制御装置109は、図1に示したゲイン補正回路116に代えて、PWM変調回路90を備えている。
【0039】
図11は、PWM変調回路90の構成を、より具体的に説明するための図である。図11に示したように、PWM変調回路90は、のこぎり波生成回路91と、差動増幅器115の出力信号VEOとのこぎり波VRMを比較してPWM波を生成するコンパレータ92とを備えている。
のこぎり波生成回路91は、磁場センサ113の最大出力電圧VMHを選択する制御信号VMH[2:0]と磁場センサ113の最小出力電圧VMLを選択する制御信号VML[2:0]とを入力する。そして、制御信号VMH[2:0]によって選択される電圧VMHを振幅最大値と、制御信号VML[2:0]によって選択される電圧VMLを振幅最小値とする、のこぎり波VRMを生成する。
【0040】
このようなのこぎり波生成回路91によれば、磁場センサ113の出力電圧振幅に関連付けた振幅を有するのこぎり波VRMを生成することができ、磁場センサ113の出力電圧幅に関連付けられる差動増幅器115の出力信号VEOとのこぎり波VRMとを比較して生成されるPWM波は、図15に示すようなデバイスごとに異なる磁場センサ113の出力電圧幅に因らない線形運動デバイス位置に対応したデューティー(すなわち、スイッチング周期Tsに対するVDDの期間Tonの割合)を得ることができる。すなわち、PWM変調回路90によって操作量信号VEOのゲイン補正を行い出力ドライバ112に対してデバイスに因らず最適の操作量を与えることができる。
【0041】
図12(a)、(b)、(c)は、図15中に示すケースのように、デバイスごとに異なった磁場センサ113の出力振幅を得た場合の図10、11に示したPWM変調回路90によって生成されるPWM波を示した図である。例えば、図12(a)中の磁場センサ113の最大出力電圧がVMH1、最小出力電圧がVML1の場合に得られる操作量VPW1を最適と考えると、デバイスごとに異なる磁場センサ113の出力電圧幅により得られる磁場センサ113の最大出力電圧がVMH2、最小出力電圧がVML2であっても、図12(b)中に示すように、出力ドライバ112に与えられる制御量VPW2は、操作量VPW1と同じ操作量を得ることができる。図12(c)において、磁場センサの最大出力電圧VMH3及び最小出力電圧VML3が得られた場合でも出力ドライバ112に与えられる操作量VPW3は、操作量VPW1と同じ操作量を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、カメラのオートフォーカスレンズのように、磁石を使って正確に位置決めする必要がある線形運動デバイスであれば、どのようなものにも適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
11 線形運動デバイス
18 コイル
19 磁石
31、32、33 ボルテージフォロア回路
41 抵抗分割器
42 デコーダ
44、46 反転増幅器
71 抵抗選択信号生成回路
90 変調回路
91 のこぎり波生成回路
92 コンパレータ
101、109 制御装置
112 出力ドライバ
113 磁場センサ
114 電圧指令信号生成回路
115 差動増幅器
116 ゲイン補正回路
201、202 出力ドライバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁石を有する線形運動デバイスの、前記磁石が発生する磁場を検出し、外部から指示された位置に前記線形運動デバイスを移動させる線形運動デバイスの制御装置であって、
前記磁石が発生する磁場を検出し、検出された磁場の値に応答する第1出力信号を出力する磁場センサと、
外部から入力される入力信号と、前記磁場センサの出力信号の振幅とを関連付けた電圧指令信号を生成する電圧指令信号生成回路と、
前記磁場センサの出力信号と前記電圧指令信号との偏差を増幅して第2出力信号を生成する差動増幅器と、
前記第2出力信号の値に応じて前記線形運動デバイスを駆動する出力ドライバと、
前記差動増幅器から出力される前記第2出力信号を、前記磁場センサから出力される第1出力信号の振幅に応じて補正し、前記出力ドライバへの入力信号を生成する補正回路と、
を含むことを特徴とする線形運動デバイスの制御装置。
【請求項2】
前記補正回路は、
前記第1出力信号の振幅が予め定められた基準振幅と相違する場合、前記第1出力信号の振幅に対する前記基準振幅の比で前記第2出力信号を増幅するゲイン補正回路であることを特徴とする請求項1に記載の線形運動デバイスの制御装置。
【請求項3】
前記ゲイン補正回路は、
抵抗値が可変の抵抗素子と、
前記第1出力信号の振幅によって前記抵抗素子の抵抗値を決定する制御信号を生成するデコーダと、
を含むことを特徴とする請求項2に記載の線形運動デバイスの制御装置。
【請求項4】
前記補正回路は、
前記第1出力信号の振幅が予め定められた基準振幅と相違する場合、前記第1出力信号の振幅に対する前記基準振幅の比で前記第2出力信号を増幅するPWM変調回路であることを特徴とする請求項1に記載の線形運動デバイスの制御装置。
【請求項5】
前記第1出力信号の振幅を示す制御信号を保持するメモリをさらに備え、
前補正回路は、前記メモリから前記第1出力信号の振幅を読み出して前記第2出力信号を補正することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の線形運動デバイスの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−248025(P2012−248025A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119616(P2011−119616)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】