説明

締結部材のかしめ締結方法

【課題】材料の節約ができ且つ一対の締結部材を簡単に締結することが可能な締結部材のかしめ締結方法を得る。
【解決手段】第1の締結部材と第2の締結部材とを一体となるよう締結するかしめ締結方法において、第1の締結部材の一端に先端が幅広形状の膨出部11とこれより幅の狭い首部12とからなる突起10を形成し、一方、第2の締結部材の一端に突起10が隙間を生じない程度に嵌るように膨出部11と首部12の外縁形状に沿う形状の嵌合穴20を形成し、この嵌合穴20に突起10を嵌め合わせ圧入するとともに、嵌合穴20の周囲に凹み21を加圧成形して第1の締結部材と第2の締結部材とを結合する締結部材のかしめ締結方法であるので、互いの締結部材の重なり部分がなく、電機部品の接続端子として十分に採用できる。また、このことから材料費の節約ができ、部品としてのコストが低減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状の締結部材を互いに結合するためのかしめ締結方法で、特に互いの部材を重ねることなく締結することを可能にした締結部材かしめ締結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に自動車の電装部品、家電製品等においては、その配線等に多くの電気接点が使用されている。これら接点に使用される材料は導電性の高い材料が用いられているが、近年の電子部品の進歩による需要の増加により、このような金属材料が高騰しているのが現状となっている。そのため、これらの材料を使用した部品も必然的に高くせざるを得ないが、部品の価格の上昇をできる限り押さえる必要性が生じている。これを解消するために部品に要する材料をできるだけ節約する必要性から現在多く採用されているのが端子の必要な個所にのみ導電性の高い材料を使用し、それ以外は比較的安価な材質の異なる材料からなる一組の部材をかしめて締結することで一つの部品を構成するようにしている。
【0003】
この方法の一つとして例えば、特開昭63−131414号公報に示すような製造方法がある。これは、図7に示すように、あらかじめ接点材103を抵抗溶接した薄板ばね材102のかしめ穴120に、台材101の凸部110を嵌め込んでかしめるようにしたものであって、この公報に記載されたかしめ方法は、かしめられた薄板ばね材に変形や曲がりが発生することからこれを阻止することを目的として開発されたものである。このため、薄板ばね材と台材とは互いに重なり合っており、強度的には十分であるが、一方、限られたスペースには厚みがあることから採用できないことが多くなっている。
【0004】
また、互いに薄い板材を接合する方法として例えば、特許第3264329号公報に示すようなものもある。これは、小型モータに採用されているステータの組立であって、この薄板状のステータ薄板束に巻き付けられているコイル巻線から2極小型モータを構成するものである。そして、このステータは二分割されており、これらの接続は一方の薄板には差し込み舌状部を形成し、他方の薄板には前記舌状部が差し込まれる切り欠かれた受容部が形成されてこれらが差し込み接続されることにより二分割された薄板が一体となることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63-131414号公報
【特許文献2】特許第3264329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、最初の従来例として示したかしめ方法では、最近のように部品の取付スペースが狭くなっている場合、前記厚みが影響して取り付けることができなかったり、他の電子部品や基板等に接触する等してショートの原因ともなっていた。また、一組の締結部材を重ねるための重なり部分が必要になることから材料の節約が不十分になっていた。更に、次の従来例においては、一方の薄板材に舌状部を形成し、これを他方の薄板材の受容部に嵌め合わせて差し込む構成であることから、依然として重なり部分が生じ、その部分に必要以上の厚みが発生している。しかも、これは差し込み接続しただけであるので、差し込み方向とは逆方向に引っ張ることで簡単に分離され、十分な引っ張り強度が得られていない。その上、このような接続に使用される薄板材はある程度のばね力を有する鉄製であることが必要で、電気接点のように導電性の高い銅材、アルミ材等の接続には適さない等の課題が依然として生じている。
【0007】
本発明の目的は、このような課題を解消するとともに材料の節約ができ且つ一対の締結部材を簡単に締結することが可能な締結部材のかしめ締結方法を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、第1の締結部材と第2の締結部材とをかしめて一体となるよう締結するかしめ締結方法において、第1の締結部材の一端に先端が幅広形状となった膨出部11とこれより幅の狭い首部12とからなる突起10を形成し、一方、前記第2の締結部材の一端に前記突起10が隙間を生じない程度に嵌るように膨出部11と首部12の外縁形状に沿う形状の嵌合穴20を形成し、この嵌合穴20に前記突起10を嵌め合わせ圧入するとともに、嵌合穴20の周囲にこれに沿う凹み21を加圧成形することによって第1の締結部材と第2の締結部材とを結合する構成とした締結部材のかしめ締結方法を提供することで達成される。
【0009】
前記発明において、突起10と嵌合穴20は第1の締結部材及び第2の締結部材の夫々に複数形成されている構成であるので、引っ張り方向の力に対して十分な締結力が得られる。また、嵌合穴20の周囲に沿う凹み21は締結部材の両面に加圧成形されている構成であるので、より確実な第1の締結部材と第2の締結部材との接続が得られる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、部品の取付スペースが狭くても互いの締結部材の重なり部分がなくなるので、電機部品の接続端子として十分に採用できる。また、他の電子部品や基板等への接触が減少することからショートの発生原因も解消される。更に、締結部材の締結部分に重なり部分がないことから材料費の節約ができ、部品としてのコストが低減される。しかも、締結部材の軸方向への引っ張り力に対して比較的大きな力で引っ張っても十分に耐えることができる。その上、締結部材が従来のようにばね力を有しないものであっても互いの部材をかしめ締結することができ、材質の影響を受けることもない。更に、突起とこの突起が嵌る嵌合穴の周囲にこれに沿う凹みを形成するように加圧してかしめるだけなので、簡単なかしめ工程となる等の特有の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態であるかしめ締結状態を示す平面図である。
【図2】本発明に係る第1、第2の締結部材の形状を示す平面図である。
【図3】締結部材のかしめ締結方法の加工工程図である。
【図4】かしめ締結状態を示す図1のA−A線に沿う拡大断面図である。
【図5】本発明に係る第1、第2の締結部材の変形例を示す平面図である。
【図6】本発明のかしめ順序を示す一部断面正面図であり、(a)は第1板材と第2板材の端部を対向配置した状態を示し、(b)は第2板材の嵌合穴に第1板材の突起を重ねた状態を示し、(c)は重ねた状態の嵌合穴に突起を圧入すると同時にかしめ締結した状態を示している。
【図7】従来例を示し、(a)は薄板ばね材を示し、(b)は台材の凸部と嵌め合わせた状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について最良の実施の形態を図1乃至図6に基づき説明する。図1及び図2において、1は第1の締結部材としての第1板材であり、この板材1にはその一端に幅の広い膨出部11とこれと接続され、膨出部11より幅の狭い首部12とが一体となった突起10が平行に複数形成されている。また、前記第1の締結部材に対応する第2の締結部材としての第2板材2には前記第1板材1の突起10に夫々対応するとともに前記突起10が隙間を生じない程度に若しくは隙間なく嵌るように膨出部11と首部12の外縁形状に沿う同一内周形状の嵌合穴20が前記突起10と同様に複数形成されている。
【0013】
これら板材1、2は図3に示す加工工程で形成されるようになっており、第1板材定寸加工工程3と第2板材定寸加工工程4により第1、第2板材1、2はあらかじめ設定された所定長さに切断されるようになっている。この後、定寸加工された板材1、2は次に第1板材突起加工工程5及び第2板材嵌合穴加工工程6に移り、第1板材1の突起10と第2板材2の嵌合穴20は夫々別々にプレス打ち抜き加工によりその形状が形成されるようになっている。
【0014】
このようにして図6(a)に示すように、前記加工工程で突起10が形成された第1板材1と嵌合穴20が形成された第2板材2は図3に示す突起及び嵌合穴嵌め合わせ工程7に移り、図6(b)に示すように、嵌め合わせ状態に配置され、かしめ工程8により嵌合穴20に突起10が圧入されるとともに、嵌合穴20の周囲にこれに沿う凹み21が図6(c)に示されるように加圧成形されることになる。そして、これによって第1板材1と第2板材2とが結合されている。
【0015】
このかしめ作用は中心に上下動可能な下型部材30を移動自在に内挿した支持台31上に前記第1板材1と第2板材2とを配置し、前記下型部材30の中心線上に昇降可能に配置されている上型部材32とで加圧することでかしめられる構成となっており、これら下型部材30と上型部材32には前記嵌合穴20に沿う凹み21を形成するための断面C型形状となった環状突部33が夫々設けられている。このため、図4に示すように、第1板材1の突起10に対して第2板材2の表裏側にある嵌合穴20の周囲の肉が前記環状突部33により嵌合穴20の内方へ夫々移動することになり、これら突起10と嵌合穴20とは一体かしめ固定されることになる。
【0016】
尚、この実施の形態では上下の型部材30、32に夫々環状突部33を設けているが、これに限定されることなくこの他にいずれか一方の型部材に環状突部33を設け、第2板材2の表裏いずれかの面に凹み21を形成するようにしてもよい。また、この実施の形態に示した第1板材1には突起10を、第2板材2には嵌合穴20を2個宛並列に形成しているが、これに代え、図5に示す変形例のように、第1板材1に突起10と嵌合穴20とを並列に形成し、一方、第2板材2には第1板材1に対応する嵌合穴20と突起10とを並列に形成することによっても同様の作用効果が得られるものである。
【0017】
これら実施の形態においては、材質の異なる第1板材1及び第2板材2を前提として説明したが、これに限定されるものではなく、同一材質の板材であってもその使用用途によっては十分にその効果が発揮されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明で得られるかしめ部品は板材を重ね合わせてこの重なっている個所をかしめるものに比べてその強度は劣るが、電装機器の接続端子としての使用が主であることから端子穴に対する押し込み及び引っ張り作用においては十分な強度を有しており、このような強度で十分な個所での使用には好適である。
【符号の説明】
【0019】
1 第1板材
2 第2板材
3 第1板材定寸加工工程
4 第2板材定寸加工工程
5 第1板材突起加工工程
6 第2板材突起加工工程
7 突起及び嵌合穴嵌め合わせ工程
8 かしめ工程
10 突起
11 膨出部
12 首部
20 嵌合穴
21 凹み
30 下型部材
31 支持台
32 上型部材
33 環状突部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の締結部材と第2の締結部材とをかしめて一体となるよう締結するかしめ締結方法において、第1の締結部材の一端に先端が幅広形状となった膨出部(11)とこれより幅の狭い首部(12)とからなる突起(10)を形成し、一方、前記第2の締結部材の一端に前記突起が隙間を生じない程度に嵌るように膨出部と首部の外縁形状に沿う形状の嵌合穴(20)を形成し、この嵌合穴に前記突起を嵌め合わせ圧入するとともに、嵌合穴の周囲にこれに沿う凹み(21)を加圧成形することによって第1の締結部材と第2の締結部材とを結合する構成としたことを特徴とする締結部材のかしめ締結方法。
【請求項2】
突起と嵌合穴は第1の締結部材及び第2の締結部材の夫々に複数形成されている構成であることを特徴とする請求項1記載の締結部材のかしめ締結方法。
【請求項3】
嵌合穴の周囲に沿う凹みは締結部材の両面に加圧成形されている構成であることを特徴とする請求項1又は2記載の締結部材のかしめ締結方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−649(P2012−649A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138617(P2010−138617)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000227467)日東精工株式会社 (263)
【Fターム(参考)】