説明

編物

【課題】着用や洗濯を繰り返す等の物理的及び化学的作用による伸縮機能の低下や脆化がなく、身体に適度にフィットする衣料及び衣料用資材として要求される高いストレッチ性、及び、伸長回復性、形態安定性に優れ、軽量で、ソフトな風合を有し、かつ、吸汗性に優れたセルロース系紡績糸混の編物を提供する。
【解決手段】ポリトリメチレンテレフタレート繊維とセルロース系紡績糸とから構成された編物であって、親水基を導入した吸水性シリコーン化合物とビニル基含有モノマーを導入したシリコーン化合物が付着していることを特徴とする編物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソフトで吸水性があり、伸長性及び伸長回復性と形態安定性に優れた編物に関するものでる。更に詳しくは、洗濯や繰り返しの伸長に対し、発生する伸び歪が少ない編物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、スポーツ、インナー衣料や襟、袖口、裾等の衣料資材用には、身体に適度にフィットし、身体の動きに対する追従性に優れた伸長回復性を有するストレッチ素材の要求が高まってきている。特に、綿等のセルロース紡績糸を含むストレッチ素材は、その風合、吸汗性、肌触り等から、要求度合いが高い素材となっている。
【0003】
しかしこれ迄、紡績糸を含む編地は、紡績糸自身の短繊維毛羽が伸長回復の邪魔になって、伸長回復率の低下や形態安定性を阻害する要因となっていた。
従来から、セルロース系紡績糸を混編してなる、高いストレッチ性を有し伸長回復性に優れた編地として、ポリウレタン系、ポリエーテルエステル系弾性繊維に代表される弾性繊維(以下、弾性繊維と略す)を交編した編地が、スポーツ、インナー衣料等に広く用いられている。
【0004】
しかしながら、弾性繊維を交編した編地は、ストレッチ率及び伸長回復性には優れるが、弾性繊維の熱セット性が低いこと及び収縮力が大きいことに起因して、編地が比較的高密度になるため、風合が硬くなり、製品の着用時に重量感を与えるという欠点があった。また、着用による伸長や洗濯等の繰り返しにより、特にポリウレタン系繊維が劣化し、その為、編地としてストレッチ率および伸長回復性が低下し、伸び歪が残るという問題があった。
【0005】
一方、ポリエチレンテレフタレート繊維やポリブチレンテレフタレート繊維の仮撚加工糸、あるいは、サイド・バイ・サイド型のポリエチレンテレフタレート繊維の潜在捲縮性複合糸を交編した編地の場合は、複合するセルロース系紡績糸の風合を低下させ、ポリエステルライクで、硬い生地になる。特に、ストレッチ率や伸長回復率をより高いものにするためには、前記の仮撚加工糸や潜在捲縮性複合糸の混率を上げる必要があるため、いっそう風合いの硬い生地になりやすい。
【0006】
また、前記の仮撚加工糸や潜在捲縮性複合糸は、もともと糸自身としてのストレッチ率が低いので、編物として良好なストレッチ感を有する編物にはならず、かつ、糸自身の伸長回復率の低さと紡績糸の短繊維毛羽との絡みから、伸長回復率の低下がより大きく、着脱や着用後に歪が残るという欠点があった。
【0007】
上記の問題を解決するために、近年、糸自身の伸長回復性が高く、柔らかいポリトリメチレンテレフタレート繊維を交編した編地が用いられるようになってきている。この編地は、風合が非常にソフトで、複合するセルロース系紡績糸の風合を低下させないものである。
【0008】
しかし、高いストレッチ率や、優れた伸長回復性は、糸条を高捲縮化させることで発現しているため、紡績糸と組合せる場合には、高捲縮化した糸が短繊維の毛羽と絡み、伸長回復率が低下し、衣類の着脱や着用後に歪が残り易いという問題を克服することができなかった。
【0009】
この問題を解決するために、特許文献1には、少なくとも1成分がポリトリメチレンテレフタレート繊維で構成された潜在捲縮発現型ポリエステル繊維と紡績糸を含む丸編地であって、該編地に対する潜在捲縮型ポリステル繊維の混率割合と、ニットループのループ長を特定した丸編地が提唱されている。しかしながら、この丸編地においても、前記と同様に、着用や洗濯を繰り返すと、伸長回復性が低下し、歪みが発生するという問題を解決することはできなかった。
【0010】
また、編地の滑り性を上げて、毛羽絡みを抑えるために、滑り剤としてアミノシリコーン加工剤を付与する方法が一般的に採られる場合が多い。しかしこの場合、編地は撥水性を帯び且つ吸汗性が低下するという懸念があった。さらに着用や、洗濯を繰り返すことによって、毛羽絡みがより助長され、また、加工剤の脱落により滑り性が低下し、その結果、ストレッチ率や伸長回復率が顕著に低下して、伸び歪が発生し、型崩れするという問題があった。
【特許文献1】特開2004−76191号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、上記の従来技術の問題を解決し、セルロース系の紡績糸を混用しているにも関わらず、着用や洗濯を繰り返す等の物理的及び化学的作用による伸縮機能の低下や脆化がなく、身体に適度にフィットし、衣料及び衣料用資材として要求される高いストレッチ性、及び、伸長回復性、並びに、形態安定性に優れ、軽量で、ソフトな風合を有し、かつ、吸汗性に優れる編物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、ポリトリメチレンテレフタレート繊維とセルロース系紡績糸とから構成された編物に関して、繊維形態や編物構造等の編物を構成する各種因子と、いわゆるストレッチバック性が悪いという問題との関連について詳細な検討を行った結果、短繊維の毛羽絡みにより摩擦抵抗が上がり、瞬間回復性が低下すること、また、洗濯を行うことによって仕上げ剤が脱落することにより平滑性が悪くなり、その為に、瞬間回復性が大きく低下するということを見出した。また、編地のストレッチ率が高くなるほど、編物の組織変形が大きくなる為、瞬間回復率が更に低下する傾向にあることを見出した。
【0013】
短繊維の毛羽の絡みによって糸−糸間摩擦が増加し、その結果、伸び歪が発生するという挙動は、ポリブチレンテレフタレート繊維の加工糸や、サイド・バイ・サイド型のポリエステル潜在捲縮系複合糸を用いた場合でも起こり得るが、特に、ポリトリメチレンテレフタレート繊維を用いた場合には、顕著に発生するものである。これは、ポリトリメチレンテレフタレート繊維糸条は、平滑性がポリエチレンテレフタレート繊維等に比べて悪く、糸−糸間の摩擦抵抗が高いという特異性のためである。この特異性により、繰返し伸長により毛羽絡みが増大し、また、洗濯等により加工剤が脱落した場合には、顕著に平滑性が低下し、瞬間回復率とストレッチ率が大きく低下する。
【0014】
本発明者らは、かかる知見に基づき更に検討した結果、ポリトリメチレンテレフタレート繊維とセルロース系紡績糸とから構成される編物に、特定のシリコーン系化合物を付着せしめることにより、上記の課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
即ち、本発明は、ポリトリメチレンテレフタレート繊維とセルロース系紡績糸とから構成された編物であって、親水基を導入した吸水性シリコーン化合物とビニル基含有モノマーを導入したシリコーン化合物が付着していることを特徴とする編物である。
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明において、ポリトリメチレンテレフタレート系繊維とは、トリメチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とするポリエステル繊維をいい、トリメチレンテレフタレート単位を約50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上含有するものをいう。従って、第三成分として他の酸成分及び/又はグリコール成分の合計量が、約50モル%以下、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下の範囲で含有されたポリトリメチレンテレフタレートを包含する。
【0017】
ポリトリメチレンテレフタレートは、テレフタル酸又はその機能的誘導体と、トリメチレングリコール又はその機能的誘導体とを、触媒の存在下で、適当な反応条件下に結合せしめることにより合成される。この合成過程において、適当な一種又は二種以上の第三成分を添加して共重合ポリエステルとしてもよいし、また、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリトリメチレンテレフタレート以外のポリエステルやナイロンと、ポリトリメチレンテレフタレートとをブレンドしてもよい。
【0018】
添加する第三成分としては、脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、アジピン酸等)、脂環族ジカルボン酸(シクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(イソフタル酸、ソジウムスルホイソフタル酸等)、脂肪族グリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、テトラメチレングリコール等)、脂環族グリコール(シクロヘキサンジメタノール等)、芳香族を含む脂肪族グリコール(1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等)、ポリエーテルグリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、脂肪族オキシカルボン酸(ω−オキシカプロン酸等)、芳香族オキシカルボン酸(p−オキシ安息香酸等)等がある。また、1個又は3個以上のエステル形成性官能基を有する化合物(安息香酸等又はグリセリン等)も、重合体が実質的に線状である範囲内で使用出来る。
【0019】
本発明において、ポリトリメチレンテレフタレート系繊維の紡糸については、例えば、国際公開第99/27168号パンフレットに記載された方法を用いることができる。即ち、1500m/分程度の巻取り速度で未延伸糸を得た後、2〜3.5倍程度で延撚する方法、紡糸−延伸工程を直結した直接紡糸延伸法(スピンドロー法)、巻取り速度5000m/分以上の高速紡糸法(スピンテイクアップ法)等の何れを採用しても良い。
【0020】
ポリトリメチレンテレフタレート繊維の好ましい特性としては、強度は、好ましくは2〜5cN/dtex、より好ましくは2.5〜4.5cN/dtex、さらに好ましくは3〜4.5cN/dtexである。伸度は、好ましくは30〜60%、より好ましくは35〜55%、さらに好ましくは40〜55%である。弾性率は、好ましくは30cN/dtex以下、より好ましくは10〜30cN/dtex、さらに好ましくは12〜28cN/dtex、特に好ましくは15〜25cN/dtexである。10%伸長時の弾性回復率は、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上である。
【0021】
また、本発明においては、ポリトリメチレンテレフタレート繊維として、少なくとも1成分がポリトリメチレンテレフタレートからなる潜在捲縮発現性ポリエステルを用いても良い。これは、少なくとも二種のポリエステル成分で構成されており(具体的には、サイド・バイ・サイド型又は偏心芯鞘型に接合されたものが多い)、少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートであり、熱処理によって捲縮を発現するものである。
【0022】
二種のポリエステル成分の複合比(一般的に、質量%で70/30〜30/70の範囲内のものが多い)、接合面形状(直線又は曲線形状のものがある)は、特に限定されない。また、総繊度は、好ましくは20〜300dtex、単糸繊度は、好ましくは0.5〜20dtexが用いられるが、これに限定されるものではない。
【0023】
上記の潜在捲縮発現性ポリエステルは、二種のポリエステルポリマーがサイド・バイ・サイド型又は偏心芯鞘型に接合された複合繊維であり、サイド・バイ・サイド型の場合、二種のポリエステルポリマーの溶融粘度比は1.00〜2.00が好ましく、偏心芯鞘型の場合は、鞘ポリマーと芯ポリマーのアルカリ減量速度比は、3倍以上鞘ポリマーが速いことが好ましい。
【0024】
ポリマーの組み合わせの好ましい具体例としては、ポリトリメチレンテレフタレート(テレフタル酸を主たるジカルボン酸とし、1.3−プロパンジオールを主たるグリコール成分とするポリエステルであり、エチレングリコール、ブタンジオール等のグリコール類やイソフタル酸、2.6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸等を共重合してもよい。また、他のポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料等の添加剤を含有してもよい。)とポリエチレンテレフタレート(テレフタル酸を主たるジカルボン酸とし、エチレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルであり、ブタンジオール等のグリコール類やイソフタル酸、2.6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸等を共重合してもよい。また、他のポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料等の添加剤を含有してもよい。)との組み合わせ、並びに、ポリトリメチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレート(テレフタル酸を主たるジカルボン酸とし、1.4−ブタンジオールを主たるグリコール成分とするポリエステルであり、エチレングリコール等のグリコール類やイソフタル酸、2.6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸等を共重合してもよい。また、他のポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料等の添加剤を含有してもよい。)との組み合わせが挙げられ、特に、繊維断面において、捲縮の内側にポリトリメチレンテレフタレートが配置されることが好ましい。
【0025】
このような少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートからなる潜在捲縮発現性ポリエステル繊維は、上記特開2001−40537号公報以外にも、特公昭43−19108号公報、特開平11−189923号公報、特開2000−239927号公報、特開2000−256918号公報、特開2000−328382号公報、特開2001−81640号公報等に記載されており、第一成分がポリトリメチレンテレフタレートであり、第二成分がポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステルを、並列的あるいは偏心的に配置して、サイド・バイ・サイド型又は偏心鞘芯型に複合紡糸した複合繊維が挙げられる。
【0026】
特に、ポリトリメチレンテレフタレートと共重合ポリトリメチレンテレフタレート又はポリエチレンテレフタレートの組み合わせや、固有粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレートの組み合わせが好ましい。
二種類のポリトリメチレンテレフタレートからなる組み合わせの場合は、その固有粘度差は、好ましくは0.05〜0.4(dl/g)、より好ましくは0.1〜0.35(dl/g)、さらに好ましくは0.15〜0.35(dl/g)である。
【0027】
例えば、高粘度側の固有粘度を0.7〜1.3(dl/g)から選択した場合には、低粘度側の固有粘度は0.5〜1.1(dl/g)から選択されるのが好ましい。なお、低粘度側の固有粘度は、好ましくは0.8(dl/g)以上、より好ましくは0.85〜1.0(dl/g)、さらに好ましくは0.9〜1.0(dl/g)である。
【0028】
また、このポリトリメチレンテレフタレート系複合繊維の平均固有粘度は、好ましくは0.7〜1.2(dl/g)、より好ましくは0.8〜1.2(dl/g)、さらに好ましくは0.85〜1.15(dl/g)、特に好ましくは0.9〜1.1(dl/g)である。
【0029】
なお、本発明において、潜在捲縮発現性ポリエステル繊維の紡糸は、前記のポリトリメチレンテレフタレート系繊維と同様な方法で紡糸することができる。
【0030】
本発明において、少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートからなる潜在捲縮発現性ポリエステル繊維は、初期引張抵抗度が10〜30cN/dtexであることが好ましく、20〜30cN/dtexであることがより好ましく、20〜27cN/dtexであることがさらに好ましい。なお、初期引張抵抗度が10cN/dtex未満のものは製造が困難である。
【0031】
また、顕在捲縮の伸縮伸長率は10〜100%であることが好ましく、10〜80%であることがより好ましく、10〜60%であることがさらに好ましい。顕在捲縮の伸縮弾性率は80〜100%であることが好ましく、85〜100%であることがより好ましく、85〜97%であることがさらに好ましい。
【0032】
さらに、100℃における熱収縮応力は0.1〜0.5cN/dtexであることが好ましく、0.1〜0.4cN/dtexであることがより好ましく、0.1〜0.3cN/dtexであることがさらに好ましい。100℃における熱収縮応力は、布帛の精錬、染色工程において捲縮を発現させるための重要な要件である。すなわち、布帛の拘束力に打ち勝って捲縮が発現するためには、10℃における熱収縮応力が0.1cN/dtex以上であることが好ましい。
【0033】
熱水処理後の伸縮伸長率は100〜250%であることが好ましく、より好ましくは150〜250%、さらに好ましくは180〜250%である。熱水処理後の伸縮弾性率は90〜100%であることが好ましく、より好ましくは95〜100%である。
【0034】
なお、本発明でいう固有粘度の値は、使用するポリマーではなく、紡糸されている糸の固有粘度を指す。この理由は、ポリトリメチレンテレフタレートは、ポリエチレンテレフタレート等と比較して熱分解が生じ易く、高い固有粘度のポリマーを使用しても紡糸工程での熱分解によって固有粘度が低下し、複合繊維においては、ポリマーの固有粘度差をそのまま維持することが困難であるためである。
【0035】
本発明において、ポリトリメチレンテレフタレート系繊維は、長繊維が好ましい。また、長さ方向に均一なものや太細のあるものでも良く、断面においても丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平(扁平度1.2〜5程度のもので、W型、I型、ブ−メラン型、波型、串団子型、まゆ型、直方体型等がある)、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形なものでもよい。
【0036】
糸条の形態としては、単糸繊度が0.1〜5dtex程度のマルチフィラメント原糸(極細糸を含む)が好ましく、甘撚糸〜強撚糸、仮撚加工糸(POYの延伸仮撚糸を含む)、空気噴射加工糸、押し込み加工糸、ニットデニット加工糸等であっても良い。本発明の編地に、良好なストレッチ率と伸長回復性をより良く発現させるためには、ポリトリメチレンテレフタレート系繊維自体の伸長性が高いもので、かつ、複合する短繊維の毛羽との絡みの少ないものが好ましい。
【0037】
従って、バルキーな糸よりは、より細かな捲縮がある伸長性の高い糸がより好適であり、上記に記載の断面形状、糸条形態の中でも、少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートからなる潜在捲縮発現性ポリエステル繊維で、扁平度が1.2〜5のマルチフィラメント原糸がより好適である。
【0038】
本発明において、セルロース系紡績糸としては、綿、麻等の天然繊維、キュプラレーヨン、ビスコースレーヨン、ポリノジックレーヨン、精製セルロース等の化繊の短繊維からなる糸や、これらの短繊維からなる混紡糸、さらに、羊毛繊維、絹等の天然繊維、またはアセテート繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ナイロン繊維等の人造繊維系の短繊維との混紡糸を用いることができる。
【0039】
なお、本発明の目的を損なわない程度で、さらに、羊毛繊維、絹等の天然繊維、またはアセテート繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ナイロン繊維等を混用しても構わない。
【0040】
本発明の編地に含有されている紡績糸の割合は、編地としての風合い及び機能が生かされる範囲であれば、特に限定されない。紡績糸の割合は用いる紡績糸の繊度によっても異なるが、好ましくは20wt%以上、90wt%未満であり、より好ましくは50wt%以上、90wt%未満である。
【0041】
本発明の編地には、ポリトリメチレンテレフタレート系繊維が、編地に対して10wt%以上、80wt%以下の混率で混用されていることが好ましく、より好ましくは10〜70wt%である。混率が10%未満の場合には、セルロース系紡績糸を含む編地の収縮力が不足し、伸長回復率が低下する傾向があり、混率が80%を超える場合には、セルロース系紡績糸に特有な性能、例えば、吸水性や、吸湿性、風合い、保温性等の性能が低下する場合がある。
【0042】
本発明の編物は、ポリトリメチレンテレフタレート繊維とセルロース系紡績糸との交編編地である。編組織は特に限定されず、丸編地、経編地でも良い。また、交編方法としては、引き揃えて給糸する方法、それぞれ単独でループを形成する方法、ループを形成せずに挿入する方法等が挙げられる。
【0043】
本発明の編物に高いストレッチ性を発現させる方法としては、編地を熱水、湿熱、等のリラックス処理により、編地のコースとウェルの配列や密度バランスを変化させて、組織点の長さ変化、交差点の屈曲クリンプ付与、糸条の浮いている部分に捲縮による形態変化を与え、更に、糸自身の捲縮を発現させることによって、高いストレッチ性を発現させることができる。
【0044】
従って、編物の生機密度と最終製品の仕上密度との密度差を大きくすることが、より好ましい。リラックス熱処理工程における高収縮化により、編地は高密度化し、糸自身の収縮と捲縮発現、及び、組織収縮によって、経方向又は緯方向にさらに細かい屈曲クリンプや捲縮が発現する。この工程は、通常の染色工程で代用されるが、その際の装置としては、リラックス熱処理の効果をより発現させるために、液流染色機を使用するのが特に好ましい。
【0045】
染色方法としては、ポリトリメチレンテレフタレート繊維とセルロース系繊維の複合布帛に一般的に用いられている方法を採用することができるが、ポリトリメチレンテレフタレート繊維に捲縮を発現させるための熱リラックス効果や、染色性の観点から、分散染料の染色温度は110〜130℃が好ましい。
【0046】
本発明においては、編物に、親水性基を導入した吸水性シリコーン化合物とビニル基含有モノマーを導入したシリコーン化合物が付着している。このようなシリコーン化合物が付着していることにより、短繊維の毛羽による絡みや、長期にわたる着用、あるいは、洗濯によっても、編物のストレッチ率や伸長回復性が低下せず、かつ、編物に吸水性を付与することができる。
【0047】
従来、繊維の柔軟剤として、シロキサン結合(Si−O−Si)を基本骨格として有するシリコーン化合物を用いて加工することにより、優れた柔軟性及び伸縮性が付与されることが知られている。
【0048】
このような化合物としては、アルキルポリシロキサン、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーンや、オレフィン類、アリルエステル類、アクリル酸エステル類等との共重合シリコーン等が使用されるが、風合いや、伸長特性から、特に、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーンが好ましく使用される。
【0049】
しかしながら、これらの化合物は、着用や、洗濯等によって編地の繊維上から脱落し、その結果、編地のストレッチ率、伸長回復性が低下し、歪みが残るという問題が発生する。特に、セルロース系繊維との複合編地では、吸水性が要求されるため、吸水性を阻害しないシリコーン化合物として、水になじみやすい親水性基を導入したシリコーン化合物等が一般的に使用されるが、親水性基を有する化合物は、親水性基を有しないシリコーン化合物に比較して、洗濯等によって処理剤(親水性基を有する化合物)が脱落しやすく、耐久性に劣るという欠点があった。
【0050】
シリコーン化合物の繊維に対する耐久性を向上させる方法として、一般的には、シリコーン化合物とバインダー樹脂を併用して加工する方法が知られている。しかしながら、これらの併用処方では各剤の混率調整が極めて困難である。すなわち、シリコーン化合物の比率が高すぎると、耐久性に乏しく、逆に、低すぎると、シリコーン化合物の風合いや滑り性が十分に発揮されず、風合いが粗硬になり、ストレッチ率や、伸長回復性も顕著に低下する。従って、吸水性を有し、風合い、滑り性に優れ、かつ、それらの機能が洗濯や着用などの化学的、物理的作用によっても低下しないシリコーン化合物を編地に付与することが重要である。
【0051】
このような性能を発現させるためには、繊維に対して優れた滑り性、風合いを付与しうる吸水性能を有する親水性基導入シリコーン化合物と、繊維に対して耐久性のある滑り性、優れた伸長性、伸長回復性、風合いを付与しうるビニル基含有シリコーン化合物を併用することが必要である。
【0052】
親水性基の導入により、風合いが若干ながら軋み感方向に変化するため、風合いを考慮すれば、親水性基導入シリコーン化合物の中でも、より風合いのソフトなアミノ変性タイプが好適である。また、ビニル基含有シリコーン化合物についても、風合い面や滑り面から、アミノ変性タイプがより好適である。
【0053】
親水性基導入シリコーン化合物単独で処理した場合、吸水性能は良好であるが、繰返し洗濯することにより、ストレッチ率や伸長回復性が極めて大きく低下する。また、ビニル基含有シリコーン化合物単独で処理した場合には、処理された編地は撥水性を帯びる。したがって、加工剤として両者を併用した場合にのみ、初期及び着用や洗濯繰返し後に、良好なストレッチ率、伸長回復性、及び、吸水性が得られるのである。即ち、両者を併用することにより、ビニル基含有シリコーン化合物のみならず、親水性基導入シリコーン化合物も繊維上から脱落しにくくなるのである。
【0054】
親水性基導入シリコーン化合物のビニル基含有シリコーン化合物に対する割合は特に限定されないが、本発明において、セルロース糸紡績糸を使用する目的である吸水性を発揮させるためには、好ましくは1.5〜4倍、より好ましくは2〜3倍である。これらシリコーン化合物の繊維に対する総付着量は、シリコーンエマルジョンの純分換算で0.05〜4.0wt%が好ましく、0.1〜2.0wt%がより好ましい。総付着量が上記の範囲であると、瞬間回復率が十分であり、また、加工後の編地の風合いがシリコーンタッチのヌルヌル、ツルツル感が過度になることがなく、ピリングやスナッグ等の性能低下が少ない。
【0055】
ポリトリメチレンテレフタレート繊維の代わりに、ポリエチレンテレフタレート繊維やポリブチレンテレフタレート繊維の仮撚加工糸、またはサイドバイサイド型のポリエチレンテレフタレート繊維の潜在捲縮性複合糸を用い、セルロース糸紡績糸と交編した編地に、本発明で用いられる特定のシリコーン化合物を付与しても、本発明の効果である洗濯や着用の耐久性に優れた高いストレッチ性を有し、かつ風合いのソフトな編物を得ることはできない。
【0056】
これは、前記の仮撚加工糸や潜在捲縮性複合糸では、各糸自身のストレッチ率や捲縮パワー力が低いので、編物として良好なストレッチ感を有するものにはならないためと、かつ、糸自身の回復率の低さのため、紡績糸の短繊維絡みから生じる伸長回復率の低下度合いに顕著に影響し、大幅に伸長回復性が低下するためである。また、ストレッチ率の低さを補うために使用混率を上げた場合には、糸自身のモジュラスがポリトリメチレンテレフタレート繊維に比較して極めて大きいために、編物風合いに及ぼす寄与率が大きく、従って風合硬化の懸念が顕著となる。
【0057】
従って、ポリトリメチレンテレフタレート繊維とセルロース糸紡績糸とで構成される編地に特定のシリコーン化合物を付与した場合に、初めて本発明の効果が発揮されるのである。
上記シリコーン化合物の付与方法としては、特に限定されず、スプレー法、パッド法、吸尽法等によって、付着させることができる。耐久性をより高めるためには、上記シリコーン化合物を付着後、または、付着させて100℃〜120℃で乾燥した後、150℃〜170℃で熱処理を行うことが効果的である。
【0058】
なお、本発明においては、シリコーン系化合物を付着せしめる仕上工程で、必要に応じて、帯電防止剤や、抗菌剤等の機能加工剤を併用してもかまわない。
【発明の効果】
【0059】
本発明により、着用や洗濯を繰り返す等の物理的及び化学的作用による伸縮機能の低下や脆化がなく、身体に適度にフィットする衣料及び衣料用資材として要求される高いストレッチ性、及び伸長回復性、並び形態安定性に優れ、軽量で、ソフトな風合を有し、かつ吸汗性に優れるセルロース系紡績糸混の編物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例などにより何ら限定されるものではない。なお、測定法、評価法等は下記の通りである。
【0061】
(1)固有粘度
固有粘度[η](dl/g)は、次式の定義に基づいて求められる値である。
【数1】

式中、ηrは、純度98%以上のo−クロロフェノール溶媒で溶解したポリトリメチレンテレフタレート糸又はポリエチレンテレフタレート糸の稀釈溶液の35℃での粘度を、同一温度で測定した上記溶媒の粘度で除した値であり、相対粘度と定義されているものである。Cは、g/100mlで表されるポリマー濃度である。
【0062】
なお、固有粘度の異なるポリマーを用いた複合マルチフィラメントは、マルチフィラメントを構成するそれぞれのポリマーの固有粘度を測定することは困難であるので、複合マルチフィラメントの紡糸条件と同じ条件で2種類のポリマーをそれぞれ単独で紡糸し、得られた糸を用いて測定した固有粘度を、複合マルチフィラメントを構成するそれぞれのポリマーの固有粘度とした。
【0063】
(2)編地のヨコ方向のストレッチ率と伸長回復率
巾6cm、長さ25cmの試料を、試料巾の中央部で巾2.5cmのチャックで掴み、つかみ長さ15cm、引っ張り速度15cm/分に設定して、テンシロン型引張り試験機で12.25N(4.9N/cm)の応力がかかるまで伸長し、次いで、同じスピードで変位0の位置まで戻した。
【0064】
12.25N応力時の伸長率をストレッチ率とした。また、下記式より、伸長回復率を求めた。
伸長回復率(%)=(L1−L0)/L0 ×100
L1: 12.25N時の伸び長さ(cm)
L2: 戻り工程において、応力0となった時の原点からの長さ(cm)
【0065】
(3)編地のヨコ方向のキックバック耐久性
タテ巾80mm×ヨコ長さ150mmにカットした試料をタテ方向に中央で曲げ、端をオーバーロックミシンで縫い合わせ、次いで、長さ方向に110mmの地点で、輪を本縫いで縫い合わせ、筒状サンプルを作成した。110mmの本縫い部分間に入るように、100mmのマークをつけた。
【0066】
このサンプルについて下記(イ)、(ロ)、(ハ)の作業を行った。
(イ)デマッチャーを用い、110mmをつかみ長さとして、100%伸長を1000回繰返した後、デマッチャーより生地を取り外し、100mmマーク間距離の長さ(L1[mm])を測定して、歪率を求めた(直後)。
(ロ)1時間静置後、再度100mmマーク間の距離(L2[mm])を測定して、歪率を求めた(1h後)。
(ハ)次いで、全自動洗濯機で、洗濯を行い、20℃×65%RHの環境下で一昼夜吊り干し乾燥した。乾燥後、再度マーク間距離(L3[mm])を測定して、歪率を求めた(洗濯後)。
【0067】
(イ)直後、(ロ)1h後、(ハ)洗濯後の歪率は下記により求められる。
直後:デマッチャー試験直後の歪率(%)=L1−100
1h後:上記の試験から1時間静置後の歪率(%)=L2−100
洗濯後:上記の1h静置したサンプルを洗濯・乾燥した後の歪率(%)=L3−100
【0068】
上記の(イ)、(ロ)、(ハ)の一連の作業を1回とし、これを繰返し行った。
未洗濯の編地につき1回目の作業時に測定した歪率を「1回目の歪率」とする。
さらに4回(合計では5回)行った後、6回目の作業時に測定した歪増加率(1回目との差)を「W=5後の歪増加率」とする。
続いてさらに4回(合計では10回)行った後、11回目の作業時に測定した歪増加率(1回目との差)を「W=10後の歪増加率」とする。
【0069】
(4)風合い変化
キックバック耐久性評価のサイクルを8回繰り返した後の生地について、風合いを触感により判定した。
○:変化なし〜殆ど変化なし
△:少し変化あり
×:顕著な変化あり
【0070】
(5)編地の吸水性
JIS−L−1018(A法滴下法)に準拠して、未洗濯の生地と、洗濯10回後の生地の吸水性を測定した。なお、洗濯方法は下記の通りである。
・洗剤:アタック
・2槽式洗濯機使用:増量布を入れ、浴比1:30とした
・「5分洗い−2分注水すすぎ−2分ためすすぎ−脱水30秒」工程の10回まとめ洗いを実施。
【0071】
〔実施例1〕
固有粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレートを比率4:6でサイド・バイ・サイド型に押出し、紡糸温度265℃、紡糸速度1500m/分で未延伸糸を得た。次いで、得られた未延伸糸を、ホットロール温度55℃、ホットプレート温度140℃、延伸速度400m/分、延伸倍率は延伸後の繊度が84dtexとなるように設定して延撚し、84dtex/24fのサイド・バイ・サイド型複合マルチフィラメントの原糸を得た。
【0072】
なお、紡糸して得られた複合マルチフィラメントの固有粘度は、高粘度側が[η]=1.30、低粘度側が[η]=0.90であった。また、延撚して得られた糸の強度は2.0cN/dtex、伸度は30%であった。
【0073】
このサイド・バイ・サイド型の複合マルチフィラメントの原糸(84dtex/24f)と、ポリエチレンテレフタレートと綿からなる30番手の混紡糸とを用いて、19GGのフライス編地を作成した。
【0074】
該編地を液流染色機中で精練した後、分散染料にて130℃で染色し、還元洗浄後、反応染料を用いて60℃で染色、ソーピング、フィックス処理を行い、脱水後、開反して乾燥させた。
乾燥した編物を、仕上げ剤として、下記の加工剤分散液に浸漬後、マングルでピックアップ70%に調節して絞液後、約10%巾出し設定して160℃×1.5分間のファイナルセットを行い、44コース、32ウェルの編物を得た。
【0075】
<仕上げ加工剤分散液>
シルコートFQ30:1.6wt%〔松本油脂製薬(株)製:親水性基導入アミノ変性シリコーン〕
シルコートSV:0.8wt%〔松本油脂製薬(株)製:ビニル基含有アミノ変性シリコーン〕
【0076】
得られた編物について、ヨコ方向のストレッチ率、洗濯前後の吸水性、キックバック耐久性を測定し、結果を表1及び2に示した。
表に示すように、得られた編物は、風合い、ストレッチ率が良好で、かつ、耐久性のある吸水性を有し、キックバックの耐久性にも優れるものであった。
【0077】
〔実施例2〕
固有粘度[η]0.92のポリトリメチレンテレフタレートを紡糸温度265℃、紡糸速度1200m/分で未延伸糸を得た。次いで、得られた未延伸糸を、ホットロール温度60℃、ホットプレート温度140℃、延伸倍率3倍、延伸速度800m/分で延撚して、84dtex/24fの延伸糸を得た。延伸糸の強伸度、弾性率並びに10%伸長時の弾性回復率は、各々3.3cN/dtex、46%、20cN/dtex並びに98%であった。
【0078】
得られた延伸糸を用いて編地を作成し、該編地を実施例1と同様にして、液流染色機中で染色加工及び仕上げ加工を行い、40コース、32ウェルのフライス編物を得た。
得られた編物について、ヨコ方向のストレッチ率、洗濯前後の吸水性、キックバック耐久性を測定し、結果を表1及び2に示した。
表に示すように、得られた編物は、風合い、ストレッチ率が良好で、かつ、耐久性のある吸水性を有し、キックバックの耐久性にも優れるものであった。
【0079】
〔実施例3〕
実施例1で用いたサイド・バイ・サイド型複合マルチフィラメント(84dtex/24f)の原糸と、30番手の綿紡糸とを用いて、19GGのフライス編地を作成した。
該編地を、実施例1と同様にして液流染色機中で染色加工及び仕上げ加工を行い、41コース、28ウェルのフライス編物を得た。
【0080】
得られた編物について、ヨコ方向のストレッチ率、洗濯前後の吸水性、キックバック耐久性を測定し、結果を表1及び2に示した。
表に示すように、得られた編物は、風合い、ストレッチ率が良好で、かつ、耐久性のある吸水性を有し、キックバックの耐久性にも優れるものであった。
【0081】
〔比較例1〕
実施例1において、サイド・バイ・サイド型複合マルチフィラメントの代わりに、レギュラーポリエステル糸(84dtex/36f)の2ヒーター加工糸を用い、実施例1と同様にして、40コース、28ウェルのフライス編物を得た。
得られた編物について実施例1と同様の測定を行い、結果を表1及び2に示した。表に示すように、得られた編物は、初期のストレッチ率や伸長回復性はほぼ良好であるが、伸張や洗濯を繰り返すことにより、風合い、回復率が顕著に低下し、歪が大きく残るものであった。
【0082】
〔比較例2〕
実施例1において、サイド・バイ・サイド型複合マルチフィラメントの代わりに、ポリブチレンテレフタレート糸(84dtex/36f)の1ヒーター加工糸を用い、実施例1と同様にして、40コース、28ウェルのフライス編物を得た。
得られた編物について実施例1と同様の測定を行い、結果を表1及び2に示した。表に示すように、得られた編物は、やや風合いが硬く、初期のストレッチ率や伸長回復性はほぼ良好であるが、伸張や洗濯を繰り返すことにより、風合い、回復率が顕著に低下し、歪が大きく残るものであった。
【0083】
〔比較例3〕
実施例1において、親水性基導入アミノ変性シリコーンであるシルコートFQ30の2.4wt%の分散液だけで仕上げ加工した以外は、実施例1と同様にして、44コース、32ウェルのフライス編物を得た。
得られた編物について実施例1と同様の測定を行い、結果を表1及び2に示した。表に示すように、得られた編物は、初期のストレッチ率や伸長回復性はほぼ良好であるが、伸張や洗濯を繰り返すことにより、風合い、回復率が徐々に低下し、歪が残るものであった。
【0084】
〔比較例4〕
実施例1において、ビニル基含有シリコーン化合物の特殊アミノ変性シリコーンシルコートSVの2.4wt%の分散液だけで仕上げ加工した以外は、実施例1と同様にして、44コース、32ウェルのフライス編物を得た。
得られた編物について実施例1と同様の測定を行い、結果を表1及び2に示した。得られた編物は、未洗濯の段階から撥水性を示し、良好な吸水性を示さないものであった。また、初期のストレッチ率や伸長回復性は良好であるが、伸張や洗濯を繰り返すことにより、風合い、回復率が徐々低下し、歪が残るものであった。
【0085】
〔比較例5〕
実施例1において、仕上げ加工剤分散液で用いたビニル基含有シリコーン化合物の特殊アミノ変性シリコーンシルコートSVの代わりに、ビニル基を含有しない一般的なアミノ変性シリコーン化合物である日華シリコーンAMZ〔日華(株)製〕を、0.8wt%で用いた以外は、実施例1と同様にして、44コース、32ウェルのフライス編物を得た。
得られた編物について実施例1と同様の測定を行い、結果を表1及び2に示した。得られた編物は、初期のストレッチ率や伸長回復性は良好であるが、伸張や洗濯を繰り返すことにより、風合い、回復率が徐々低下し、歪が残るものであった。
【0086】
〔実施例4〕
実施例1で用いたサイド・バイ・サイド型複合マルチフィラメント(84dtex/24f)の原糸と、レンチング社製テンセルの紡績糸30番手を用いた以外は、実施例1と同様にして、44コース、32ウェルのフライス編物を得た。
得られた編物の測定結果を表1及び2に示す。得られた編物は、風合いが非常に柔軟で、初期のストレッチ率及び伸長回復性が良好であり、更に、洗濯後の吸水性にも優れ、また、キックバック性の耐久性も非常に良好なものであった。
【0087】
〔実施例5〕
実施例1で用いたサイド・バイ・サイド型複合マルチフィラメント(84dtex/24f)の原糸と、40番手の綿紡績糸及び10番手の綿紡績糸を用いて、裏毛編物を製編した。得られた裏毛編物を、実施例1と同様にして、染色及び仕上げ加工を行い、37コース、35ウェルの裏毛編物を得た。
得られた編物の測定結果を表1及び2に示す。得られた編物は、風合いが非常に柔軟で、初期のストレッチ率、伸長回復性が良好であり、更に、洗濯後の吸水性にも優れ、また、キックバック性の耐久性も非常に良好なものであった。
【0088】
〔比較例6〕
サイド・バイ・サイド型複合マルチフィラメントの代わりに、レギュラーポリエステル糸84dtex/36fの2ヒーター加工糸を用いた以外は、実施例5と同様にして、34コース、32ウェルの裏毛編物を得た。
得られた編物の測定結果を表1及び2に示す。得られた編物は、初期のストレッチ率、伸長回復率が低く、更に、伸張や洗濯を繰り返すことにより、風合い、回復率が顕著に低下し、歪が大きく残るものであった。
【0089】
〔実施例6〕
仕上げ剤としてシルコートFQ30の代わりに、エーポールAQ88(日華化学(株)製:親水性基導入アミノ変性シリコーン)を1.6wt%使用する以外は、実施例5と同様にして、36コース、35ウェルの裏毛編物を得た。
得られた編物の測定結果を表1及び2に示す。得られた編物は、風合いが非常に柔軟で、初期のストレッチ率、伸長回復性が良好で、更に洗濯後の吸水性にも優れ、また、キックバック性の耐久性も非常に良好なものであった。
【表1】

【表2】

【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明により、着用や洗濯を繰り返す等の物理的及び化学的作用による伸縮機能の低下や脆化がなく、身体に適度にフィットする衣料及び衣料用資材として要求される高いストレッチ性、及び、伸長回復性、形態安定性に優れ、軽量で、ソフトな風合を有し、かつ、吸汗性に優れたセルロース系紡績糸混の編物を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリトリメチレンテレフタレート繊維とセルロース系紡績糸とから構成された編物であって、親水性基を導入した吸水性シリコーン化合物とビニル基含有モノマーを導入したシリコーン化合物が付着していることを特徴とする編物。

【公開番号】特開2008−95245(P2008−95245A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−278940(P2006−278940)
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(302071162)ソロテックス株式会社 (45)
【Fターム(参考)】