説明

編隊飛行におけるスター・センサと光学式計測センサとの組合せにより改良された絶対ターゲット・システム

【課題】編隊飛行におけるスター・センサと光学式計測センサとの組合せにより改良された絶対ターゲット・システムを提供する。
【解決手段】本発明は天体観測衛星に組み込まれることを意図している絶対ターゲット・システムに関する。
最高の精度を備える絶対ターゲット・システムを確立するため、本発明はスター・センサ(4)を光学式計測センサ(5N、5R)と連結することを提案する。これら2つのアイテムの装置は特に編成飛行ミッションに対して、通常は衛星に既に搭載されているため、この解決策は追加の重量および費用を加えない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は天体観測衛星に組み込まれることを意図している絶対ターゲット・システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、多くの宇宙ミッション、そしてとりわけ幾つかの衛星の編隊における飛行を必要とするミッションにおいて、必要な絶対指向精度は非常に高い。衛星に搭載された観測機器の絶対指向を行なうために、ステラ・センサとも呼ばれるスター・センサが今日使用される。これら従来のスター・センサは、それらの絶対位置が非常に高い精度で知られている星表を有する。しかしながら、スター・センサは既知の輝星に向かって、弧のおよそ数秒の精度で近似的にのみ指し示すことを可能にする。
【0003】
従って、最新技術の絶対ターゲット・システムに関し、それが最新であっても、その要求精度が弧のおよそ10分の1秒の精度である、現在想定されるミッションに対して必要な絶対指向精度を達成することは不可能である。
【0004】
さらに、このタイプの機器を較正することは特に困難である:組込み及び発射、ならびに熱的環境により誘起される機械的及び熱弾性的な偏りは、実質的に較正することが不可能である。
【0005】
その結果、一般的に求められる解決策は:
・必要な精度、すなわち弧の1秒未満、を有する新たなスター・センサの開発にある。しかし、これは大きな投資を必要とする。その上、そのような解決策が必要な絶対精度を有するスター・センサの開発をもたらす場合、これは特に宇宙用途に対して望ましくない、大きな追加的費用と重量を生み出すであろう。
・あるいは、誘起された偏りを正確に測定するための探求にある。しかし、これは非常に困難であり、その残余はいずれの場合も一般に弧の数秒と推定される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の1つの目的は、とりわけ上記の欠点を克服することである。従って、最高の精度を備える絶対ターゲット・システムを作り出すため、本発明はスター・センサを光学式計測センサと連結することを提案する。これら2つのアイテムの装置は特に編成飛行ミッションに対して、通常は既に衛星に搭載されているため、この解決策は追加の重量又は費用を加えない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このために、本発明の主題は既知の輝星、すなわちその絶対位置がカタログの精度で知られている星のグループを、リストに記載した星表を有するスター・センサを備え、
それが更に、測定精度を示し、それに座標系が組み合わされた、相対位置を正確に決定することができる光学式計測センサを備え、前記光学式計測センサがさらに絶対的な星の環境に関する知識を持たず、前記スター・センサと前記光学式計測センサが、星表における既知の輝星に相当する目標方向に光学式計測センサをおおよそ向けるため、スター・センサが使用され得るように協力し、光学式計測センサが次に前記既知の輝星の方向を、それ自体の座標系において正確に決定し、従って目標方向をカタログ精度の許容誤差内で、光学式計測センサの測定精度にほぼ相当する最適化された絶対精度で知り得るようにすることを特徴とする、絶対ターゲット・システムである。
【0008】
既知の輝星は3、4、5又は6であり得る等級を示すことが有利である。
【0009】
光学式計測センサは1組のCCD、CMOS、又はAPSタイプの検出器を含むことが有利である。
【0010】
光学式計測センサは、20mに対して約10μm以内で目標物体の相対位置を決定することを可能にする精度を示し、その結果として弧の約0.1秒以下の目標の角度精度を達成し得ることが有利である。
【0011】
光学式計測センサの較正は、ミリワット程度の出力を有する非干渉性のファイバー接続された光源を用いて、全て地上で行なわれ得ることが有利である。
【0012】
有利なことに、衛星は観測機器を天体の方に正確に向けることを可能にする、本発明による絶対ターゲット・システムを組み込むことができる。
【0013】
有利なことに絶対指向法は、本発明による絶対ターゲット・システムを用いることができ、前記スター・センサが広い視野を提示し、そして光学式計測センサが検出領域及び目標軸を提示し:
・最初にスター・センサが、目標方向として選ばれた既知の輝星を、前記絶対ターゲット・システムの任意の変位制御及び適用手段により、光学式計測センサの検出領域へと導き、さもなくば前記スター・センサ及び光学式計測センサの適切な設備により、重なり合うスター・センサの広い視野及び光学式計測センサの検出領域へと導き、
・次に、光学式計測センサがそれ自体の座標系において目標方向を測定することを特徴とし、
光学式計測センサの座標系における既知の輝星に相当する目標方向の正確な知識と、そして星表のおかげによる前記既知の輝星の絶対位置の正確な知識とは、絶対目標方向を正確に推定することを最終的に可能とする。
【0014】
有利なことに、前述の絶対ターゲット・システムに組み込まれた星表のカタログ精度よりも高い精度で、地上において星表を持つことにより、絶対目標方向の精度を増すように前記既知の輝星の座標知識に関する絶対精度を高めるため、そこで前記地上における星表が参照される、絶対指向法を実行することが可能である。
【0015】
本発明のその他の特徴及び利点は、添付図面の観点から与えられる、以下に続く説明から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は輝星Sの方向7への、衛星1aに搭載された任意の宇宙機器6aの絶対指向を例示する単純な図である。この衛星1aはサービスモジュール3a及び、ミッションのために必要な全てのエネルギーを供給するために差し向けられる、太陽パネル2aを備える。
【0017】
従って、この図において4つの「ヘッド」を備えるスター・センサ又はステラ・センサ4は、CCD又はCMOSタイプのデジタルセンサ、及び短い焦点距離と天空においてほぼ星座に相当する、約20°の比較的広い領域の焦点調節光学系を用いて、天空の一部分のマップを作り出す。
【0018】
このマップに続いて、ステラ・センサは、それが検出した全ての星を記憶及びデジタル化し、次に統合されたコンピュータは、認識アルゴリズム及び、天空における輝星の絶対位置を記載している星表を用いて、その3つの座標を計算することにより、前記ステラ・センサの目標軸を決定する。必要ならば、さらに正確な地上のカタログを用いることもまた可能である。
【0019】
一般に、使用される星は2等星〜5等星であり、3つ又は4つの星はアルゴリズムが収束するためには大抵十分である。さらに、アルゴリズムは一般にノイズの最小化及び「誤った星」の除去のための処理動作を含む。その決定精度は弧のおよそ10〜20秒であり、これらの値は製作者及び用いられる技術によって変化する平均の値である。
【0020】
しかしながら、最も改良されていたとしても、最近のスター・センサにより達成されている精度は、現在想定されている一定の宇宙ミッションに要求される精度には達しない。その結果、本発明は前述のステラ・センサを、相対位置を正確に決定することができる光学式計測センサ5Nと連結することを提案する。
【0021】
この光学式計測センサ5Nは同一のセンサ5Rによりバックアップされる。正確な光学式計測センサの特定の動作は、そのようなセンサの一例を表わす図3を用いて説明されよう。
【0022】
図2はサービスモジュール3b及び積載荷重6bを含む衛星1bに搭載された、本発明による絶対ターゲット・システムの一例を表わす。その原理は従って、その4つの「ヘッド」を有する従来のスター・センサ4を、センサ5Rによりバックアップされる正確な光学式計測センサ5Nに連結することである。この例において、4つのステラ・センサ4の視界は円錐8で表わされ、その頂点における角度は約20°である。この広い視界8は、スター・センサが参照できる星表の中にその絶対座標が現われる、数多くの既知の輝星を検出することを可能にする。
【0023】
正確な光学式計測センサ5Nは、スター・センサが既知の輝星Sを視界9N(9Rはセンサ5R用)に相当する、その検出円錐内へ導いたときに利用される。光学式計測センサ5Nは次に既知の輝星Sを最高の精度で、その焦点面に置くことができる。従って最初に、輝星Sはスター・センサ4のおかげで識別される。それは既知でありその座標は星表の中に現われる。スター・センサ4を介して、それはスター・センサの不完全さに起因する平均精度で、典型的には最良でも弧の数秒で絶対的に置かれる。
【0024】
次に、前記輝星Sは光学式計測センサ5Nを用いて、観測機器6bの座標系内で正確かつ相対的に置かれる。その結果、スター・センサ4と光学式計測センサ5Nとの連結は、典型的には弧の0.1秒の最高絶対指向精度を衛星にもたらすことを可能にする。その誤差は衛星の座標系内で光学式計測センサ5Nにより標的とされた輝星Sの相対位置に関する誤差と、星表の中に現われる標的とされた輝星Sの絶対座標に関する誤差との合計に限定される。
【0025】
星表、そして特に輝星表は非常に高い精度を有するため、このシステムの絶対精度は、ステラ・センサ4のような標準スター・センサの絶対精度よりも、少なくとも従来10倍優れている、光学式計測センサ5Nの相対精度にほぼ等しい。
【0026】
本発明による絶対ターゲット・システムの好適な一実施例において、光学式計測センサとして、仏国特許出願第2902894号明細書に記述されているタイプの装置を用いることが従って可能である。この特許出願は、宇宙において衛星を相対的に配置することを可能にする、衛星の編隊飛行用の計測システムを説明している。
【0027】
一般に、編隊における衛星の飛行の範囲内で、衛星の相対位置の測定は、ちょうど衛星の絶対指向測定の如く、星のような慣性方向に対して必要とされる。衛星間の相対位置測定に対して、光学式計測センサが使用される。絶対指向測定に対して、スター・センサが使用される。相対位置計測センサの測定精度は、一般にスター・センサの絶対測定よりも遥かに優れている。他方で、計測センサは絶対的な星の環境に関する知識を持たない。本発明の目的は、機上に余分なセンサを何ら追加することなく、おおむね衛星間相対測定精度の絶対測定精度を提供するために、これら二つの測定値及び二つのタイプのセンサからの情報を組み合わせることである。
【0028】
図3はそのような光学式計測センサ5Nの動作の、高度に単純化された表現である。上述の特許出願において、一次衛星に搭載された光源は、一次衛星に向かって光線を反射する、二次衛星に向かって光線を放射する。一次衛星は、その上に反射された光線が集束させられる一組の検出器を備える。一次衛星に対する二次衛星の相対位置を知ることを可能にするのは、検出器のグループ上で得られる光点位置の測定である。本発明の範囲内での使用に対し、輝星Sはミラーにより反射される光源に取って代わる。前記輝星Sから得られる光は、レンズL及びミラーMを用いて、光学式計測センサ5NのCCD検出器のグループ上の点Pにおいて集束させられる。従って、点PからCCD検出器マトリックスの中心R迄の距離は正確に測定され、そして輝星Sがある方向は、そこから、光学式計測センサ5Nの特定の座標系における、従ってセンサが搭載されている衛星の、又は衛星グループの座標系における、前記センサ5Nの目標軸X−X’に対して推定される。そのような光学式計測センサ5Nを用いて、本発明によるシステムの絶対指向精度は弧の約0.1秒に達することができる。
【0029】
その上、そのような光学式計測センサ5Nは地上で完全に較正されることができる。実際、光学式計測センサ5Nの較正を地上で行なうために、星Sに取って代わるであろう光源が使用され得る。そのようなセンサの地上におけるこの較正は、弧のおよそ10分の1秒の目標軸における精度に十分相当する、光源の位置における20mにつき約10μm程度の精度を達成することを可能にする。
【0030】
要約すると、本発明の主な利点は、現在及び将来の宇宙観測ミッションに対して求められる精度に適合する、最高の精度を示す絶対ターゲット・システムの実施を可能にすることである。さらに、この結果を達成するため、本発明は天体観測衛星に通常は系統的に組み込まれている1つだけのスター・センサと、あらゆる編成飛行ミッションに必須の光学式計測システムとを要する。本特許出願において提案されている解決策は、従って組み込むことが容易であり、装置の重量及び費用に関して潜在的に無関係である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明による装置を用いて、輝星に向けた衛星の絶対指向の第1例の図示である。
【図2】本特許出願による装置の活用プロセスを詳細に述べることを可能にする、本発明による絶対ターゲット・システムの第2例の原理図である。
【図3】本特許出願の適用を可能にする、本発明による装置における光学式計測センサの一例の図式的表現である。
【符号の説明】
【0032】
1a 衛星
1b 衛星
2a 太陽パネル
3a サービスモジュール
3b サービスモジュール
4 スター・センサ、ステラ・センサ
5N 光学式計測センサ
5R 光学式計測センサ
6a 宇宙機器
6b 積載荷重、観測機器
7 目標方向、輝星Sの方向
8 広い視野、円錐
9N 検出領域、視界
9R 検出領域、視界
S 輝星
M ミラー
L レンズ
CCD 検出器
P CCD検出器のグループ上の点
R CCD検出器マトリックスの中心
X−X’目標軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶対ターゲット・システムであって、既知の輝星、すなわちその絶対位置がカタログの精度で知られている星のグループを、リストに記載した星表を有するスター・センサ(4)を備え、
それが更に、測定精度を示し、それに座標系が組み合わされた、相対位置を正確に決定することができる光学式計測センサ(5N、5R)を備え、前記スター・センサ(4)と前記光学式計測センサ(5N、5R)が、星表における既知の輝星(S)に相当する目標方向に光学式計測センサ(5N、5R)をおおよそ向けるため、スター・センサ(4)が使用され得るように協力し、光学式計測センサ(5N、5R)が次に前記既知の輝星(S)の方向を、それ自体の座標系において正確に決定し、従って目標方向をカタログ精度の許容誤差内で、光学式計測センサ(5N、5R)の測定精度にほぼ相当する最適化された絶対精度で知り得るようにすることを特徴とする、絶対ターゲット・システム。
【請求項2】
既知の輝星(S)が3、4、5又は6であり得る等級を示すことを特徴とする、請求項1に記載の絶対ターゲット・システム。
【請求項3】
光学式計測センサ(5N、5R)が1組のCCD、CMOS、又はAPSタイプの検出器(CCD)を備えることを特徴とする、請求項1あるいは2のいずれか一項に記載の絶対ターゲット・システム。
【請求項4】
光学式計測センサ(5N、5R)が、20mに対して約10μm以内で目標物体の相対位置を決定することを可能にする精度を示し、その結果として弧の約0.1秒以下の目標の角度精度を達成し得ることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の絶対ターゲット・システム。
【請求項5】
光学式計測センサ(5N、5R)の較正が、ミリワット程度の出力を有する非干渉性のファイバー接続された光源を用いて、全て地上で行なわれ得ることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の絶対ターゲット・システム。
【請求項6】
観測機器を天体の方に正確に向けることの出来る、請求項1〜5のいずれか一項に記載の絶対ターゲット・システムを組み込んでいることを特徴とする、観測機器を備えた衛星。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の絶対ターゲット・システムを用いる絶対指向法であって、前記スター・センサ(4)が広い視野(8)を提示し、そして光学式計測センサ(5N、5R)が検出領域(9N、9R)及び目標軸(X−X’)を提示する絶対指向法において:
・最初にスター・センサ(4)が、目標方向(7)として選ばれた既知の輝星(S)を、前記絶対ターゲット・システムの任意の変位制御及び適用手段により、光学式計測センサ(5N、5R)の検出領域(9N、9R)へと導き、さもなくば前記スター・センサ(4)及び光学式計測センサ(5N、5R)の適切な設備により、重なり合うスター・センサ(4)の広い視野(8)及び光学式計測センサ(5N、5R)の検出領域(9N、9R)へと導き、
・次に、光学式計測センサ(5N、5R)がそれ自体の座標系において目標方向(7)を測定することを特徴とし、
光学式計測センサ(5N、5R)の座標系における既知の輝星(S)に相当する目標方向(7)の正確な知識と、そして星表のおかげによる前記既知の輝星(S)の絶対位置の正確な知識とが、絶対目標方向(7)を正確に推定することを最終的に可能とする絶対指向法。
【請求項8】
前記絶対ターゲット・システムに組み込まれた星表のカタログ精度よりも高い精度を有する星表が地上にあり、そして絶対目標方向(7)の精度を増すように、前記既知の輝星(S)の座標知識に関する絶対精度を高めるため、前記地上における星表が参照されることを特徴とする請求項7に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−150870(P2009−150870A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−267171(P2008−267171)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(505157485)テールズ (231)
【Fターム(参考)】