説明

緩衝体

【課題】主に野球場や競技場、屋内外体育施設、建築物の柱等に設置される緩衝体において、充分な緩衝性を保持しつつ、緩衝体を薄くでき、緩衝体の材料コストおよび製造、施行コストを低減できるようにする。この利点は競技場等に緩衝体を最初に設置する段階において既に享受することができる。
【解決手段】緩衝体(1)が、発泡樹脂層(111)を有する緩衝材(11)を備え、該緩衝材(11)が可撓性を有するメッシュ材(12)によって被覆される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に野球場や競技場、屋内外体育施設、建築物の柱等に設置される緩衝体に関する。
【背景技術】
【0002】
野球や陸上競技等において、競技者が勢い余ってフェンスに衝突し、負傷してしまうことを防止するため、緩衝性のフェンスが用いられている。
例えば、特許文献1には、コンクリート等のフェンス駆体に、半硬質発泡樹脂層が貼着され、さらに該半硬質発泡樹脂層の上に軟質発泡樹脂層を貼着した緩衝層の全面を覆うように表面シートが張設されており、表面シートの張設は、表面シートに適度の張力を持たせて固定されており、軟質発泡樹脂層は上部軟質発泡樹脂と中間部軟質発泡樹脂と下部軟質発泡樹脂とに分割されており、上部軟質発泡樹脂と下部軟質発泡樹脂との硬さを中間部軟質発泡樹脂の硬さより硬くした構成であることを特徴とする緩衝性フェンスが開示されている。
この緩衝性フェンスによれば、フェンス駆体側が半硬質発泡樹脂層であり、表面シート側が軟質発泡樹脂層であることで、競技者が勢い余ってフェンスに衝突した場合に、表面シートを介してまず軟質発泡樹脂層が衝突による衝撃を吸収し、この軟質発泡樹脂層に伝えられた衝撃をさらに半硬質発泡樹脂層によって吸収するため、衝突した競技者に対する負荷は低減され、充分な緩衝性を発揮することができる。
【0003】
この緩衝性フェンスは、「緩衝性」の観点からは、充分な性能を発揮するものであった。
しかしながら、このような構成においては、その緩衝層が半硬質発泡樹脂層と軟質発泡樹脂層との2層構造となり、緩衝性フェンス自体が厚くなることが避けられなかった。
例えば特許文献1の実施例によれば、緩衝性フェンスの厚みは、半硬質発泡樹脂層が20mm、軟質発泡樹脂層が110mm、表面シートに積層したウレタンフォームシートが10mm、合わせて約140mmの厚さとなる。
すなわち、上記緩衝性フェンスは、充分な緩衝性を発揮するための代償として厚みが増してしまうため、その分、緩衝層を構成するウレタン等の緩衝性材料を多量に使う必要が生じる。また、緩衝性フェンスを施行する現地において、フェンス駆体に半硬質発泡樹脂層を貼着し、さらに該半硬質発泡樹脂層の上に軟質発泡樹脂層を貼着する必要があるため、手間がかかり、施行が煩雑となる。このため、緩衝性フェンスの材料コストおよび製造、施行コストは増大していた。
さらに、野球場等の競技場によっては、緩衝性フェンスが厚い為、フェンスまでの規定の距離が足りなくなる恐れがあり、緩衝性フェンスを施行できない場合があった。
また、例えば柔道場等の狭い施設に上述の緩衝性フェンスを設置する場合、競技に使用できる施設内の空間が上記厚みの分だけ圧迫され、狭くなるという潜在的な問題もあった。
【0004】
ここで、緩衝性フェンスは、屋外に設置した場合は風雨や直射日光にさらされ、屋内に設置した場合でもプレイヤーの衝突による衝撃、スパイクやボールの衝突による衝撃などにさらされ、経年劣化するものである。
その為、緩衝性フェンスの定期的なメンテナンスが必要となるが、上記緩衝性フェンスにおいては、一定期間が経過すると緩衝性フェンス自体の貼り替えが必要となり、時間的にも金銭的にもメンテナンスコストが大きいという問題があった。
【0005】
これらの問題点を解消すべく、二層ではなく一層の薄い緩衝層を用いた緩衝性フェンスを製造した場合、厚みの問題は解消するものの、今度は緩衝性の性能が犠牲となる。
すなわち、単純に一層の薄い緩衝層を用いた場合は、競技者の衝突による衝撃を薄い緩衝層が吸収しきれず、コンクリート等からなるフェンス駆体に底づきを起こしてしまい、競技者が負傷してしまうおそれがある。
一方、この底づきを防止すべく、一層の薄い緩衝層を備えた緩衝性フェンスにおいて、緩衝層に用いられるウレタン等の緩衝性材料の密度を上げるという対策も考えられるが、この場合は緩衝層自体が硬くなってしまう為、衝突によって競技者が脳震盪を起こしてしまう等の危険性が増大する。また、密度の増大に伴って原材料も余分に必要となるため、材料コスト、製造コストの問題が解決できないことになる。
即ち、緩衝性フェンスの「緩衝性」と、「緩衝性フェンスの厚さ、材料および製造、施工コスト、競技に使用出来るスペースの広さ」とが、一方の質を向上させるともう一方の質が低下する二律背反の状態となってしまっていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明は、上記の二律背反の問題を解決するべくなされたものであり、充分な緩衝性を保持しつつ、緩衝体を薄くでき、緩衝体の材料コストおよび製造、施行コストを低減できるような緩衝体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであって、コンクリートのフェンス駆体に設置される緩衝性フェンス等の用途で用いることが可能な緩衝体が、ウレタン等の発泡樹脂層を有する緩衝材を備え、該緩衝材が可撓性を有するメッシュ材で被覆されている事を特徴とする。
緩衝材をメッシュ材で被覆することにより、メッシュ材自体が隙間を保つことによって空気層を形成する上に、緩衝体が受ける衝撃に対し、緩衝材を被覆しているメッシュ材が適度な固さと抵抗力を発揮し、薄い緩衝材であっても底づきを防ぐことができ、充分な緩衝性を発揮することができる。
【0008】
なお、メッシュ材は空気を通すので、メッシュ材で緩衝材を被覆しても、緩衝材を構成する発泡樹脂層の弾性変形を阻害することは無い。
また、メッシュ材を適宜選択することにより、緩衝体の全厚さを大きく変える事無く、低額の費用で、緩衝体の固さおよび緩衝性を調節することができる。
さらに、充分な緩衝性を保ったまま緩衝材を薄くすることができるので、緩衝材を構成する緩衝性材料が少なくて済み、メッシュ材を用いることにより緩衝体自体の材料コストを低減することができる。
【0009】
メッシュ材による緩衝材の被覆は、緩衝材にメッシュ材を巻き付けることによって行う。例えば、緩衝材を横に一周巻くように行うことで、緩衝材の正面、背面、及び側面がメッシュ材によって被覆される。
しかしながら、緩衝材の全面、すなわち、正面、背面、側面、上面及び底面をメッシュ材で被覆してもよい。全面を被覆することにより、緩衝体に与えられた衝撃によって緩衝材がメッシュ材からはみ出てしまう不都合を防止することができる。
【0010】
好適には、緩衝材は、前記発泡樹脂層と、プラスチックダンボール層とを有している。
メッシュ材によって被覆される緩衝材にプラスチックダンボール層が含まれることにより、後述する、メッシュ材によって被覆された緩衝材を袋体に挿入する工程において、緩衝材が折り曲がることなく袋体に挿入できるようになり、施工作業性が向上する。
なお、メッシュ材によって被覆された緩衝材において、前記発泡樹脂層は、緩衝体の正面側、すなわち外部からの衝撃を受ける側に配置される。
一方、プラスチックダンボール層は、緩衝体の背面側、すなわち緩衝体の正面とは反対側に配置される。例えば、フェンス駆体に設置される緩衝性フェンスとして該緩衝体を用いる場合には、フェンス駆体に接する側が緩衝体の背面側となる。
【0011】
好適には、上述のようにして緩衝材をメッシュ材で被覆したものを、緩衝体の表面を構成する表面シートを袋状に形成した袋体の中に挿入する。
上記「袋体への挿入」までの工程は、緩衝体を設置したい競技場等の施行場所とは異なる場所で、別途行うことができる。この事により、以下のような施行作業上の利点を得ることができる。
上記特許文献1に記載の従来型の緩衝性フェンスでは、フェンス駆体にその場で発泡樹脂層を貼着するものであった為、緩衝性フェンスの施行工程をほとんど全て現地にて行わなければならず、施行作業が長引いてしまっていた。当然ながら、この作業を行っている間、緩衝性フェンスを設置する競技場等は、競技に使用することができない。また、緩衝性フェンスを屋外に設置する場合においては、接着剤等による貼着が完了するまでの長時間の間に雨が降って来てしまうなどの、施行作業上の不都合があった。
これに対し、本発明に係る緩衝体においては、緩衝体の設置場所以外の場所において、「緩衝材をメッシュ材で被覆したものを袋体の中に挿入する」過程までを先に完了させることができ、あとは現地において袋体を配置するのみであるので、施行作業を簡単に、短時間で行うことができる。
【0012】
好適には、緩衝体が、発泡樹脂層を有する第二の緩衝材を更に備えていてもよい。
この第二の緩衝材は緩衝体の正面側に位置し、一方、前記メッシュ材に被覆された緩衝材は緩衝体の背面側に位置する。
第二の緩衝材をこのような位置に配置することにより、前記メッシュ材に被覆された緩衝材と緩衝体の正面側の表面との間に空気の層が一つ構築される為、緩衝体の正面側の表面を構成するシートが外部からの衝撃によって切れたり、切り傷が広がったりする事を防止できる。
また、第二の緩衝材が間に入る事により、メッシュ材に被覆された緩衝材と、第二の緩衝材との2つの緩衝部材によって、より安定した衝撃吸収を行うことができる。
【0013】
また、本発明は、緩衝体の製造方法も対象とする。
該製造方法は、発泡樹脂層を有する緩衝材をメッシュ材によって被覆するメッシュ被覆過程と、メッシュ材によって被覆された緩衝材を表面シートでさらに被覆する表面シート被覆過程からなる。
【0014】
上述のように、メッシュ材による緩衝材の被覆は、メッシュ材が緩衝材を横に一周巻くように、つまり、緩衝材の正面、背面、側面を被覆するように行われても良いし、緩衝材の全面、すなわち、正面、背面、側面、上面および底面を被覆するように行ってもよい。
また、好適には、緩衝材は、前記発泡樹脂層と、プラスチックダンボール層とからなる。
【0015】
表面シート被覆過程においては、緩衝体の表面を構成する表面シートを袋状に形成した袋体の中に、メッシュ被覆過程によって被覆された緩衝材を挿入することによって、表面シートによる被覆を行ってもよい。
なお、従来例の施工法と同様に、まず、緩衝材をフェンス駆体に貼着し、その上から表面シートによって緩衝材を被覆するという方法もある。この場合であっても、「充分な緩衝性」「緩衝体の薄型化」、「緩衝体の材料コストおよび製造コストの低減」という上述の利点を享受することができる。
【0016】
さらに好適には、前記表面シート被覆過程において、前記メッシュ材で被覆された緩衝材に加えて更に、発泡樹脂層を有する第二の緩衝材をも表面シートで被覆する。
当該表面シートによる被覆は、前記第二の緩衝材が緩衝体の正面側に位置し、前記メッシュ材で被覆された緩衝材が緩衝体の背面側に位置するように行われる。
【0017】
すなわち、本発明は以下の通りである。
第1に、緩衝材を備えた緩衝体であって、緩衝材は発泡樹脂層を有しており、該緩衝材が可撓性を有するメッシュ材によって被覆されている事を特徴とする、緩衝体である。
第2に、前記緩衝材の正面、背面、及び側面が前記メッシュ材によって被覆されていることを特徴とする、前記第1に記載の緩衝体である。
第3に、前記緩衝材の上面及び底面が更に、前記メッシュ材によって被覆されていることを特徴とする、前記第2に記載の緩衝体である。
第4に、前記緩衝材は、前記発泡樹脂層と、プラスチックダンボール層とを有していることを特徴とする、前記第1から第3のいずれか一つに記載の緩衝体である。
第5に、前記メッシュ材によって被覆された緩衝材が、緩衝体の表面を構成する表面シートを袋状に形成した袋体によって被覆されていることを特徴とする、前記第1から第4のいずれか一つに記載の緩衝体である。
第6に、緩衝体が、発泡樹脂層を有する第二の緩衝材を更に備えており、
該第二の緩衝材は緩衝体の正面側に位置し、前記メッシュ材に被覆された緩衝材は緩衝体の背面側に位置することを特徴とする、前記第1から第5のいずれか一つに記載の緩衝体である。
第7に、緩衝体の製造方法であって、該方法は、
発泡樹脂層を有する緩衝材をメッシュ材によって被覆するメッシュ被覆過程、および、メッシュ材によって被覆された緩衝材を表面シートでさらに被覆する表面シート被覆過程を備えていることを特徴とする、緩衝体の製造方法である。
第8に、前記メッシュ被覆過程において、前記緩衝材の正面、背面、及び側面をメッシュ材によって被覆することを特徴とする、前記第7に記載の製造方法である。
第9に、前記メッシュ被覆過程において、前記緩衝材の正面、背面、側面、上面および底面をメッシュ材によって被覆することを特徴とする、前記第7に記載の製造方法である。
第10に、前記メッシュ被覆過程における緩衝材は、前記発泡樹脂層とプラスチックダンボール層とを有するものであることを特徴とする、前記第7から第9のいずれか一つに記載の製造方法である。
第11に、前記表面シート被覆過程とは、緩衝体の表面を構成する表面シートを袋状に形成した袋体の中に、前記メッシュ被覆過程によって被覆された緩衝材を挿入する過程である事を特徴とする、前記第7から第10のいずれか一つに記載の製造方法である。
第12に、前記表面シート被覆過程において、前記メッシュ材で被覆された緩衝材に加えて更に、発泡樹脂層を有する第二の緩衝材をも表面シートで被覆し、
当該表面シートによる被覆は、前記第二の緩衝材が緩衝体の正面側に位置し、前記メッシュ材で被覆された緩衝材が緩衝体の背面側に位置するように行われることを特徴とする、前記第7から第11のいずれか一つに記載の製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による緩衝体の一例を示す断面図。
【図2】本発明による緩衝体の他の例を示す断面図。
【図3】緩衝材のメッシュ材による被覆を示す図。
【図4】本発明による緩衝体の表面を形成する袋体を示す図。
【図5】図4における袋体の展開図。
【図6】メッシュ材で被覆した緩衝材の袋体への挿入を示す図。
【図7】本発明による緩衝体の、フェンス駆体への固着を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1および図2は、本発明による緩衝体1の例を示す断面図である。
これらの図を参照すると、競技場等に設置されているコンクリート製等のフェンス駆体2に、本発明による緩衝体1が取り付けられている。
緩衝体1は緩衝材11を備えており、該緩衝材11の周囲をメッシュ材12が被覆している。
そして、メッシュ材12で被覆された緩衝材11が、緩衝体1の表面を構成する表面シートを袋状に形成した袋体13の内部に挿入されている。
【0020】
図1の態様においては、緩衝材11は発泡樹脂層111を有している。
発泡樹脂層111の材料としては、ウレタン樹脂を発泡した発泡樹脂が好ましい。しかしながら、これに限定されるものではない。
例えば、スチレン系樹脂やポリオレフィン系樹脂、フェノール樹脂等を発泡した発泡樹脂を用いても良い。
発泡樹脂層111の厚さは、40〜50mmが好ましい。
【0021】
図2の態様においては、緩衝材11は、前記発泡樹脂層111に加えて、プラスチックダンボール層112を有している。
発泡樹脂層111とプラスチックダンボール層112とは、接着剤等によって貼着される。
プラスチックダンボール層112を用いることにより、緩衝材11の折れ曲がりを防止することができる。そのため、メッシュ材12で被覆された緩衝材11を袋体13の中に挿入しやすくなる。また、フェンス駆体2に緩衝体1を固着する作業もより容易なものとなる。さらに、緩衝体1を屋外に設置する場合、雨水等がフェンス駆体2をつたって発泡樹脂層111に染みこむのを防止する効果も期待できる。
プラスチックダンボール層112の厚さは、1mm〜20mm程度が好ましく、より好適には、5mm程度が好ましい。
【0022】
図1および図2を参照すると、メッシュ材12の材質や物性は、緩衝体1に加わる衝撃に対する抵抗力、緩衝体1自体の固さをどの程度にするかを考慮して、適宜決定することができる。
一例としては、ポリエステルを基布とし、ポリ塩化ビニル樹脂を用いて製造したメッシュを使用することができる。
より特定的には、平岡織染株式会社製、ターポスクリーン(登録商標) 2類#2054(質量130g/m、密度縦26本/2.54cm、密度横28本/2.54cm、充実率0.710)等が好適である。
【0023】
次に、図3を参照すると、図1および図2における緩衝材11は、メッシュ材12によって被覆される。図3の例においては、長方形状のメッシュ材12のシートを緩衝材11に横に一周巻き付け、両面テープ等で止める。
その結果、緩衝材11は、その正面113、背面114、及び側面115がメッシュ材12によって被覆されることとなる。この場合、上面116と底面117は被覆されない。
このように、緩衝材11の上面116と底面117が被覆されないようにメッシュ材12を巻き付けてもよいが、図示は省略するが、上面116と底面117も前記メッシュ材12によって被覆されるよう、袋状に形成したメッシュ材12に緩衝材11を挿入してもよい。緩衝材11がメッシュ材12に完全に被覆される構成であれば、緩衝体1に与えられた衝撃によって緩衝材11がメッシュ材12からはみ出てしまうことを防止することができる。
【0024】
次に、図1、図2に示されている袋体13は、耐水性、耐候性を有する図5に見られるような表面シートを、図4にあるような略直方体の袋状に形成することで得られ、緩衝体1の表面を構成する。
耐水性、耐候性を有する表面シートとしては、例えば、ポリエステル繊維の基布を塩化ビニール樹脂でコーティングしたキャンバスシート等のポリエステル系樹脂のシートや、ナイロンターポリン等のナイロン系樹脂シート、ラバー製シート、塩化ビニール系樹脂シートやこれらと補強材とを複合したシート等が挙げられる。
【0025】
ここで図5を参照すると、袋体13を形成する表面シートは、正面131、背面132、側面133、側面134、上面135、および底面136の六面を有している。
図5にある表面シートを図4にあるような略直方体の袋状に形成した場合、表面シートの表側が袋体13の表面を、すなわち緩衝体1の表面を構成する。一方、表面シートの裏側は、袋体13の内側となる。
なお、ここで図1、図2を併せて参照すると、袋体13がその表面を構成する緩衝体1は、背面132がフェンス駆体2に接するように設置されるものである。
【0026】
表面シートを図4のような袋状に形成するには、例えば、図5における上面135および底面136を、背面132および側面134に、高周波融着等の手段によって貼着させればよい。
ここで、側面133は、後述する緩衝材11及びメッシュ材12の挿入に備えて開口したままにしておく。
なお、上記貼着は高周波融着以外の手段によって行ってもよい。例えば、ファスナーを配して該ファスナーを閉めることによって袋状への形成を行ってもよい。
【0027】
ここで、図4および図5を参照すると、表面シートはハトメ137を備えていてもよい。
ハトメ137は一般的にはステンレス製であり、好適には、側面133、側面134、底面136に配されており、完成した緩衝体1の内部が完全な気密状態となってしまわないよう、空気抜きの役割を果たす。
【0028】
図5における表面シート表側の背面132には、2つの舌状部材138、139が設けられている。
舌状部材138、139は、前記表面シートと同様の材質のシートを、背面132の長手方向の両端に、高周波融着等の手段によって固着することで設けることができる。
ここで、図7を併せて参照すると、舌状部材138、139は、完成した緩衝体1を、施工時にフェンス駆体2に固定する為に用いられる。
【0029】
次に、図4および図5を参照すると、好適には、表面シート裏側の正面131には、ごく薄い第二の緩衝材14を接着剤等により貼着してもよい。
第二の緩衝材14は、前記発泡樹脂層111と同様、ウレタン樹脂を発泡した発泡樹脂が好ましい。しかしながら、これに限定されるものではなく、例えばスチレン系樹脂やポリオレフィン系樹脂、フェノール樹脂等を発泡した発泡樹脂を用いても良い。
この第二の緩衝材14を貼着することにより、袋体13の正面131と、袋体13の中に挿入されるメッシュ材12との間に空気の層が一つ構築される為、袋体13の正面131が外部からの衝撃によって切れたり、切り傷が広がったりする事を防止できる。
また、第二の緩衝材14が介在することにより、完成した緩衝体1の表面における、袋体13の正面131が平らなものとなり、また、緩衝材11と緩衝材14との2つの緩衝材によってより安定した衝撃吸収を行うことができる。
第二の緩衝材14の厚さは、10mm程度が好適である。
【0030】
なお、前記発泡樹脂層111とプラスチックダンボール層112との接着、第二の緩衝材14の表面シート裏側の正面131への接着に用いられる接着剤としては、例えばアクリル系感圧性接着剤等を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0031】
次に、図6を参照すると、上述のように緩衝材11をメッシュ材12で被覆したものを、表面シートを袋状に形成した袋体13に、袋体13の長手方向に直交する方向に挿入する。
この挿入を行う時、緩衝材11がプラスチックダンボール層112を有していれば、プラスチックダンボール層112によって緩衝材11の折れ曲がりが防止され、スムーズに挿入を行うことができる。
そして、側面133を背面132、上面135および底面136に高周波融着等の手段によって貼着させ、本発明に係る緩衝体1が完成する。
なお、この貼着は高周波融着以外の手段、例えばファスナー等によって行ってもよい。
【0032】
なお、メッシュ材12で被覆した緩衝材11は、上述のように袋体13の長手方向に直交する方向に挿入するのが作業効率が良いが、例えば上面135または底面136を開口したままにしておいて、袋体13の長手方向に平行な方向に挿入してもよい。
また、図5における表面シートが展開された状態で、メッシュ材12で被覆した緩衝材11を表面シート裏側の背面132の上に乗せた後、表面シートを袋状に形成してもよい。
【0033】
図7は、本発明に係る緩衝体1の施行工程の一例として、競技場のフェンス駆体2に緩衝体1を固着させる工程を示す図である。
この固着は、表面シートの背面132に設けられた舌状部材138、139を、フェンス駆体2にピンなどの固定具3で固定すればよい。
なお、本発明に係る上述の例のような緩衝体1は、緩衝材11をメッシュ材12で被覆したものが袋体13内に挿入された構造となっている為、従来の緩衝性フェンスのように現地にて表面シートを張力を保持して張設する必要が無く、すでに袋状に形成された緩衝体1をフェンス駆体2に単に固定すればよいだけであるため、その施行は容易なものとなる。
【実施例】
【0034】
以下のような構成を有する緩衝体1を製作した。
まず、発泡樹脂層111として、以下の物性を有する、厚さ40mmの、連続気泡のウレタンフォームを用いた。
・見掛密度(kg/m)が24±2、
・40%硬さ(N/314cm)が150±20、
・引張強さ(kPa)が80以上、
・伸び(%)が120以上、
・引裂強さ(N/cm)が4.0以上、
・75%圧縮残留歪(%)が8以下。
なお、試験方法はJIS K6400に準ずる。
【0035】
発泡樹脂層111を構成する上記ウレタンフォームに、厚さ5mmのプラスチックダンボール層112を、接着剤によって貼着し、緩衝材11とした。
なお、この接着剤は、主剤として東洋インキ製造株式会社 製品名「オリバイン(登録商標) BPS 5375」、硬化剤として「BHS 8515」を用いた。
【0036】
メッシュ材12として、平岡織染株式会社製「ターポスクリーン(登録商標) 2類#2054」を用いた。該メッシュ材12を前記緩衝材11に横に一周巻き付け、両面テープで止めた。
すなわち、緩衝材11の正面113、背面114、及び側面115をメッシュ材12によって被覆した。
【0037】
袋体13を構成する表面シートとして、株式会社クラレ製、テント生地「E5 防炎ターポセット(登録商標)」を用いた。
また、これと同じ生地を用いて、表面シートの背面132に舌状部材138、139を設けた。
【0038】
該表面シート裏側の正面131に、第二の緩衝材14を接着剤により貼着した。
第二の緩衝材14としては、以下の物性を有する、厚さ10mmの、連続気泡のウレタンフォームを用いた。
・見掛密度(kg/m)が20±1.5、
・40%硬さ(N/314cm)が120±20、
・引張強さ(kPa)が70以上、
・伸び(%)が120以上、
・引裂強さ(N/cm)が3.5以上、
・75%圧縮残留歪(%)が10以下。
なお、試験方法はJIS K6400に準ずる。
接着剤は、主剤として東洋インキ製造株式会社 製品名「オリバイン(登録商標) BPS 5375」、硬化剤として「BHS 8515」を用いた。
【0039】
そして、第二の緩衝材14が貼着された表面シートを袋状に形成して、前記メッシュ材12によって被覆された前記緩衝材11をその中に挿入して、本発明に係る緩衝体1を得た。
完成した緩衝体1のサイズは、高さ180cm、幅90cm、厚さ約55mmとなった。
【0040】
このようにして完成した緩衝体1に対し、転倒衝突を想定した頭部モデルの緩衝性試験を行った。
温度17℃、湿度50%RH、衝突速度4m/s、衝突方式は壁面(振り子方式)という条件にて該試験を行ったところ、試験結果は下表のようになった。
【0041】
【表1】

【0042】
上記表から分かるように、総合Aが平均で101.6となり、本発明に係る緩衝体1が充分な緩衝性を発揮できることが確認された。
【符号の説明】
【0043】
1 緩衝体
11 緩衝材
111 発泡樹脂層
112 プラスチックダンボール層
113 正面
114 背面
115 側面
116 上面
117 底面
12 メッシュ材
13 袋体
131 正面
132 背面
133 側面
134 側面
135 上面
136 底面
137 ハトメ
138、139 舌状部材
14 緩衝材
2 フェンス駆体
3 固定具
【先行技術文献】
【特許文献】
【0044】
【特許文献1】特許第3362245号明細書

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緩衝材を備えた緩衝体であって、緩衝材は発泡樹脂層を有しており、
該緩衝材が可撓性を有するメッシュ材によって被覆されている事を特徴とする、緩衝体。
【請求項2】
前記緩衝材の正面、背面、及び側面が前記メッシュ材によって被覆されていることを特徴とする、請求項1に記載の緩衝体。
【請求項3】
前記緩衝材の上面及び底面が更に、前記メッシュ材によって被覆されていることを特徴とする、請求項2に記載の緩衝体。
【請求項4】
前記緩衝材は、前記発泡樹脂層と、プラスチックダンボール層とを有していることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一つに記載の緩衝体。
【請求項5】
前記メッシュ材によって被覆された緩衝材が、緩衝体の表面を構成する表面シートを袋状に形成した袋体によって被覆されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一つに記載の緩衝体。
【請求項6】
緩衝体が、発泡樹脂層を有する第二の緩衝材を更に備えており、
該第二の緩衝材は緩衝体の正面側に位置し、前記メッシュ材に被覆された緩衝材は緩衝体の背面側に位置することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一つに記載の緩衝体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−31931(P2012−31931A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171852(P2010−171852)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(510208756)株式会社 キャンバス チバ (1)
【出願人】(311003710)
【Fターム(参考)】