説明

縁石カバー

【課題】既存の縁石をそのまま使用して、縁石への車両の乗り上げを効果的に防止することができる縁石カバーを提供する。
【解決手段】車道1と、歩道2との境界線に沿って敷かれる縁石3に被せられる縁石カバーにおいて、縁石3の車道1側の前面3aをカバーする前面部4aと、縁石3の上面3bをカバーする上面部4bとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、縁石カバー、特に、既存の縁石をそのまま使用して、縁石への車両の乗り上げを効果的に防止することができる縁石カバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、車道と、歩道あるいは安全地帯等との境界線には、これに沿って縁石が敷設されている。
【0003】
図6に示すように、例えば、車道1と歩道2との境界線に敷設される縁石3は、車道側の前面3aが傾斜したプレキャストコンクリートブロックからなっている。縁石3の主目的は、走行中の車両が車道1から歩道2に進入して、歩道2を歩いている歩行者をはねたり、歩道2沿いの建物等に衝突するのを未然に防止ことにある。従って、縁石3の車道1から上面3bまで高さ(H)は、車両が容易に乗り上げず、しかも、車両の誘導効果がある200mmから250mm程度に設定され、道路事情に応じて、最適高さのものが適宜、選択して使用されている。
【0004】
しかし、車両が縁石3を乗り越え、歩道2に進入して歩行者をはねる等の事故が後を絶たず、その対策が急がれている。車両が縁石3を乗り越えるのを防止するためには、縁石3の高さ(H)を高くすれば良いが、むやみに高くすると、歩行者の歩道2から車道1、車道1から歩道2への移動がしづらくなるばかりか、美観上も好ましくない。
【0005】
また、車両が縁石3を乗り越える状況を考えた場合、車両が縁石3の正面から乗り越えるケースは余りなく、斜め前方から縁石3を乗り越えるケースが多い。
【0006】
【特許文献1】特公昭57−8922号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本願発明者は、従来と同じ高さのもので、車両が斜め前方から縁石3に接触した場合、どのようにすれば、車両が縁石3を乗り越え、歩道2に進入することを効果的に防止することができるかについて鋭意、研究を重ねた。この結果、以下のような知見を得た。
【0008】
従来のプレキャストコンクリートブロックからなる縁石3は、コンクリートであるがゆえに表面がざらついており摩擦抵抗が大きい。このために、車両が斜め前方から縁石3に進入した場合、本来ならタイヤが縁石3を滑って縁石3に沿って誘導され、車両が縁石3を乗り上げるのを防止できるはずが、縁石3の表面の摩擦抵抗が大きいことから、タイヤが滑りにくく、この結果、車両が縁石3を乗り越えてしまう。
【0009】
従って、縁石3の表面の摩擦抵抗を小さくして、タイヤを滑りやすくすれば、車両が斜め前方から縁石3に進入した場合に、車両が縁石3を乗り越えることを大幅に軽減することができる。
【0010】
縁石3の表面の摩擦抵抗を小さくするには、縁石3自体を摩擦抵抗の小さい物質で作れば良いが、新設の場合はともかく、既設の縁石3をこのような摩擦抵抗の小さいものに敷設し直すには莫大な費用と時間がかかる。
【0011】
そこで、既設の縁石3を、コンクリートより遥かに摩擦抵抗の小さい鋼板等の金属板で覆えば、縁石3の表面の摩擦抵抗を減少させることができるので、既設の縁石3をそのまま使用して、車両が縁石3を乗り越えることを効果的に防止することができる。
【0012】
なお、特公昭57−8922号公報には、鋼板製の縁石が開示されている。図7および図8に示すように、この従来の金属製縁石8は、車道1と歩道2との境界線に従来のコンクリート製縁石に代えて敷設するものである。この従来の金属製縁石8は、車道1と歩道2との境界線に形成した側溝9部分を覆うように敷設され、開口8aから雨水を側溝9に排水することができるようになっている。
【0013】
この金属製縁石8によれば、縁石と側溝とが一体的に形成された従来のコンクリートブロックの場合と比べて、側溝9が独立しているので、道路幅員の有効利用が図れる等といった利点がある。
【0014】
しかし、既設の縁石をそのまま使用するものではないので、費用が嵩むばかりか、途中を補強板10により補強するとはいえ、大部分が中空となるので、縁石としての強度に劣り、タイヤの衝突により変形する可能性が大きいものと思われる。
【0015】
従って、この発明の目的は、既存の縁石をそのまま使用して、車両の歩道への乗り上げを効果的に防止することができ、しかも、タイヤの衝突により変形しにくく、かつ安価な縁石カバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、下記を特徴とするものである。
【0017】
請求項1に記載の発明は、車道と、歩道あるいは安全地帯等との境界線に沿って敷かれる縁石に被せられる縁石カバーにおいて、前記縁石の車道側の前面をカバーする前面部と、前記縁石の上面をカバーする上面部とを有することに特徴を有するものである。
【0018】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、金属板または樹脂板から構成されることに特徴を有するものである。
【0019】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記縁石に接着剤またはアンカーにより固定されることに特徴を有するものである。
【0020】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3の何れか1つに記載の発明において、前記上面部には、下方に折れ曲がり、内面が前記縁石の背面に接するフランジが形成されていることに特徴を有するものである。
【0021】
請求項5に記載の発明は、請求項1から3の何れか1つに記載の発明において、前記上面部は、下方に折れ曲がり、下端が前記縁石の前記上面に接するフランジと、前記上面の長手方向に形成された溝部とを有し、前記前面部は、前記フランジの高さ分だけ高く形成されていることに特徴を有するものである。
【0022】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記溝部には、視線誘導用塗装または視線誘導部材が設けられていることに特徴を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、この発明の縁石カバーの一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1(a)から(e)は、この発明の縁石カバーを示す図であり、(a)は、正面図、(b)は、背面図、(c)は、左側面図、(d)は、平面図、(e)は、底面図であり、図2は、この発明の縁石カバーを縁石に被せた状態を示す斜視図である。
【0025】
図1および図2に示すように、この発明の縁石カバー4は、縁石3の車道1側の前面3aをカバーする前面部4aと、縁石3の上面3bをカバーする上面部4bとを有している。
【0026】
縁石カバー4は、亜鉛メッキ鋼板やステンレス鋼板等からなり、接着剤あるいはアンカーによって、プレキャストコンクリートブロックからなる既設の縁石3の表面に固定される。コンクリートブロックの摩擦係数は、乾燥時において0.7から0.8、湿潤時において0.5から0.7であるのに対して、鋼板の摩擦係数は、乾燥時において0.4、湿潤時において0.2であり、鋼板は、コンクリートに比べて大幅に滑りやすい。
【0027】
従って、図2に示すように、この発明の縁石カバー4を縁石3に被せれば、縁石3の摩擦抵抗が小さくなり、滑りやすくなるので、車両が斜め前方から縁石3に接触した場合に、車両が縁石3を乗り越え、歩道2に進入することを大幅に軽減できる。
【0028】
縁石カバー4は、車両が乗り上げやすい車道1のカーブ箇所等の縁石3に連続して設置される。長手方向の連結は継ぎ目に段差が生じないように、目地材で塞ぐか、鞘構造にしても良い。縁石カバー4と縁石3とには隙間が生じないので、タイヤの衝突により縁石カバー1が変形することはない。
【0029】
なお、図3に示すように、歩道2が若干、低い場合には、縁石3の上面部4bに、下方に折れ曲がり、内面が縁石3の背面に接するフランジ6aを形成すると良い。このように、フランジ6aを形成することにより、縁石カバー施工時の位置決めがしやすくなると共に、より強固に縁石3に固定できる。
【0030】
以上のように、この発明の縁石カバー4によれば、既設の縁石3に被せるのみで、縁石3の摩擦抵抗を大幅に小さくすることができるので、車両が斜め前方から縁石3に接触した場合に、車両が縁石3を乗り越え、歩道2に進入することを大幅に軽減できる。しかも、車両は、確実に縁石3に沿って誘導される。
【0031】
以上の例は、縁石3の高さが比較的高い場合であるが、縁石3の高さが低い場合には、いくら縁石3を縁石カバー4により覆っても、車両が縁石3を乗り越えてしまう恐れがある。従って、このような場合には、縁石3の高さを嵩上げする必要がある。
【0032】
この場合には、図4(a)から(e)および図5に示すような、他の縁石カバー5を用いる。
【0033】
図4(a)から(e)は、この発明のさらに他の縁石カバーを示す図であり、(a)は、正面図、(b)は、背面図、(c)は、左側面図、(d)は、平面図、(e)は、底面図であり、図5は、この発明のさらに他の縁石カバーを縁石に被せた状態を示す斜視図である。
【0034】
図4および図5に示すように、この発明の他の縁石カバー5は、縁石3の車道1側の前面3aをカバーする前面部5aと、縁石3の上面3bをカバーする上面部5bとを有し、上面部5bは、縁石3の上面3b側に直角に折れ曲がったフランジ6bと、上面部5bの長手方向に形成された溝部7とを有し、前面部5aは、フランジ6bの高さ分だけ高く形成されている。これにより、既設の縁石3の高さをフランジ6bの分だけ嵩上げすることができる。
【0035】
この縁石カバー5も上記縁石カバー4と同様に、亜鉛メッキ鋼板やステンレス鋼板等からなり、接着剤やアンカー等によって、プレキャストコンクリートブロックからなる既設の縁石3の表面に固定される。
【0036】
この縁石カバー5によれば、上記縁石カバー4と同様に、縁石3の摩擦抵抗を小さくすることができるので、縁石3の高さが高くなったことと相俟って、車両が斜め前方から縁石3に接触した場合に、車両が縁石3を乗り越え、歩道2に進入することを大幅に軽減することができる。
【0037】
縁石3の高さを嵩上げしたことにより、縁石カバー5の上面部5bと縁石3の上面3bとの間に隙間が形成されるが、上面部5bに溝7が形成され、これが補強の作用をするので、縁石カバー5の強度が低下する恐れはない。溝7の底部が縁石3の上面3bと接するようにすれば、上面部5bの上部からの荷重に抵抗することができる。さらに強度を高める場合には、縁石カバー5の上面部5bと縁石3の上面3bとの間の隙間をモルタル等で塞げば良い。さらに、溝7内に塗装を施したり、図示しないが、LED等の発光素子や反射板、反射テープ等からなる視線誘導部材を埋め込むことによって、視線誘導効果を持たせることもできる。
【0038】
なお、以上は、縁石カバー4、5を何れも、亜鉛メッキ鋼板やステンレス鋼板で構成した場合であるが、強度と摩擦係数が満足されれば、鋼板以外に合成樹脂等、他の材質であっても良い。さらに、摩擦係数をより小さくするために、鋼板を樹脂で被覆するか、あるいは鋼板に塗装を施しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明の縁石カバーを示す図であり、(a)は、正面図、(b)は、背面図、(c)は、左側面図、(d)は、平面図、(e)は、底面図である。
【図2】この発明の縁石カバーを縁石に被せた状態を示す斜視図である。
【図3】この発明の他の縁石カバーを縁石に被せた状態を示す斜視図である。
【図4】この発明のさらに他の縁石カバーを示す図であり、(a)は、正面図、(b)は、背面図、(c)は、左側面図、(d)は、平面図、(e)は、底面図である。
【図5】この発明のさらに他の縁石カバーを縁石に被せた状態を示す斜視図である。
【図6】車道と歩道との境界線に敷設される縁石を示す斜視図である。
【図7】従来の金属製縁石を示す斜視図である。
【図8】従来の金属製縁石の設置状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1:車道
2:歩道
3:縁石
3a:前面
3b:上面
4:この発明の縁石カバー
4a:前面部
4b:上面部
5:この発明の他の縁石カバー
5a:前面部
5b:上面部
6a:フランジ
6b:フランジ
7:溝部
8:従来の金属製縁石
9:側溝
10:補強板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車道と、歩道あるいは安全地帯等との境界線に沿って敷かれる縁石に被せられる縁石カバーにおいて、
前記縁石の車道側の前面をカバーする前面部と、前記縁石の上面をカバーする上面部とを有することを特徴とする縁石カバー。
【請求項2】
金属板または樹脂板から構成されることを特徴とする、請求項1に記載の縁石カバー。
【請求項3】
前記縁石に接着剤またはアンカーにより固定されることを特徴とする、請求項1または2に記載の縁石カバー。
【請求項4】
前記上面部には、下方に折れ曲がり、内面が前記縁石の背面に接するフランジが形成されていることを特徴とする、請求項1から3の何れか1つに記載の縁石カバー。
【請求項5】
前記上面部は、下方に折れ曲がり、下端が前記縁石の前記上面に接するフランジと、前記上面の長手方向に形成された溝部とを有し、前記前面部は、前記フランジの高さ分だけ高く形成されていることを特徴とする、請求項1から3の何れか1つに記載の縁石カバー。
【請求項6】
前記溝部には、視線誘導用塗装または視線誘導部材が設けられていることを特徴とする、請求項5に記載の縁石カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−209556(P2009−209556A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52239(P2008−52239)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【出願人】(000231110)JFE建材株式会社 (150)
【Fターム(参考)】