説明

縦置二重殻円筒形低温貯槽の外槽取付構造

【課題】 内外槽を支持するスカートへ接続固定する外槽の底板と外槽の胴板下部の傾斜板をずらせ、或いは放熱構造にて接続固定することによって、スカート接続部への荷重が一点に集中するのを防止し、かつ伝熱部の局部集中を解消して、機械的性能及び伝熱的安定性を向上させた縦置二重殻円筒形低温貯槽の外槽取付構造を提供する。
【解決手段】 内槽と、保冷層を介して該内槽を囲繞する外槽とを設け、該外槽の底板端部を貫通して上記内槽に至る円筒形状のスカートで上記内槽及び外槽を基礎上に支持した縦置二重殻円筒形低温貯槽であって、上記外槽の底板及び上記外槽胴板下部の傾斜板の上記スカートへの各接続箇所となる取付部は、上下に集中化排除の間隔をもたせ位置をずらして上記スカートへ接続固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体窒素、液体酸素、LNG等の低温液化ガスなどを貯蔵する縦置二重殻円筒形低温貯槽の外槽取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の縦置二重殻円筒形低温貯槽について、特許文献1、特許文献2、特許文献3に基づいて説明する。
【0003】
従来例1の本出願人に係る「低温二重殻貯槽の保冷構造」特開平2000−2400号公報(特許文献1参照)の発明を、図7に例示して説明する。
この特許文献1の「低温二重殻貯槽の保冷構造」は、従来例の図7に示すように、内槽2に接続し外槽3を貫通して地上に設置されているサポート7について、このサポート7が貫通する箇所の外槽内側に、内外槽間の断熱材4に比べて熱伝導性の大きい保冷材6を充填したものである。
【0004】
従来例2の本特許出願人に係る「縦置二重殻円筒形低温貯槽」特開2004−211759号公報(特許文献2参照)の発明を、図8に例示して説明する。
この特許文献2「縦置二重殻円筒形低温貯槽」の発明は、従来例の図8に示すように、外槽の底板12は水平にスカート4に接続し、この位置から水平延長に補強リングプレート19を設け、スカート4に接続した脇板11に掛け渡して接続して断面三角形状の閉塞空間18を形成したものである。
【0005】
また、従来例3の「竪型断熱低温タンクの外槽底板構造」特開平2007−162772号(特許文献3参照)の発明について、図9に例示して説明する。
この特許文献3「竪型断熱低温タンクの外槽底板構造」の発明においては、従来例の図9に示すように、底板52はリング部561と傾斜フランジ部562とからなる補強リング部材56で支持スカート3に取り付け、その外側近傍位置の支持スカート3に逆円錐状のコーン板55を取付けたものである。
【0006】
上記従来例1乃至従来例3の縦置二重殻円筒形低温貯槽、竪型断熱低温タンクはいずれも、外槽の底板及び傾斜板のスカート接続位置が近接しているため、内槽からスカートの下方へ伝わる冷熱が、この至近のスカート取付部から外槽の底板及び傾斜板へ伝わりやすい接続構造となっている。
【0007】
【特許文献1】特開2000−2400号公報
【特許文献2】特開2004−211759号公報
【特許文献3】特開2007−162772号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本特許出願人に係る特許文献1「低温二重殻貯槽の保冷構造」の図7に例示した発明は、内槽2と外槽3を貫通するサポート7が貫通する箇所の外槽内側に、内外槽間の断熱材4に比べて熱伝導性の大きい保冷材6を充填しているので、この保冷材6近傍の接続部の鋼材には、冷熱と温熱の熱変動負荷がかかりやすい構造であった。
【0009】
本特許出願人に係る特許文献2「縦置二重殻円筒形低温貯槽」の図8に例示した発明は、外槽の底板12が水平にスカート4に接続し、この位置から水平延長に補強リングプレート19を設け、スカート4に接続した脇板11に掛け渡し接続して断面三角形状の閉塞空間18を形成しているので、スカート4への接続箇所が局部的に集中し施工が煩雑な構造であって、製作にあたって接続手順等も複雑であった。
【0010】
また、特許文献3「竪型断熱低温タンクの外槽底板構造」の発明においても、図9に例示されている構造は、底板52はリング部561と傾斜フランジ部562とからなる補強リング部材56で支持スカート3に取り付け、その外側近傍位置の支持スカート3に逆円錐状のコーン板55を取付ける接続部密集の構造となっているので、冷熱が伝わりやすい上に、接続部密集の局部的集中構造であるため、場所によっては急激な温度変化、つまり冷熱と温熱とによって生じる大きな熱変動負荷の心配が考えられた。
【0011】
この発明の目的は、上述のような従来技術が有する問題点に鑑みてなされたもので、内外槽を支持するスカートへ接続固定する外槽の底板と外槽の胴板下部の傾斜板をずらせ、或いは放熱構造にて接続固定することによって、スカート接続部への荷重が一点に集中するのを防止し、かつ伝熱部の局部集中を解消して、機械的性能及び伝熱的安定性を向上させた縦置二重殻円筒形低温貯槽の外槽取付構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明に係る縦置二重殻円筒形低温貯槽の外槽取付構造は、内槽と、保冷層を介して該内槽を囲繞する外槽とを設け、該外槽の底板端部を貫通して上記内槽に至る円筒形状のスカートで上記内槽及び外槽を基礎上に支持した縦置二重殻円筒形低温貯槽であって、上記外槽の底板及び上記外槽胴板下部の傾斜板の上記スカートへの各接続箇所となる取付部は、上下に集中化排除の間隔をもたせ位置をずらして上記スカートへ接続固定したものである。
【0013】
請求項2の発明に係る縦置二重殻円筒形低温貯槽の外槽取付構造は、内槽と、保冷層を介して該内槽を囲繞する外槽とを設け、該外槽の底板端部を貫通して上記内槽に至る円筒形状のスカートで上記内槽及び外槽を基礎上に支持した縦置二重殻円筒形低温貯槽であって、上記外槽の底板は、リング状の上下板と該上下板の間に設けたリブ板とからなる接続部材を上記スカートに接続固定し、該接続部材に底板支持材を取付けて、この底板支持材の上に設けたものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明に係る縦置二重殻円筒形低温貯槽の外槽取付構造は、内槽と、保冷層を介して該内槽を囲繞する外槽とを設け、該外槽の底板端部を貫通して上記内槽に至る円筒形状のスカートで上記内槽及び外槽を基礎上に支持した縦置二重殻円筒形低温貯槽であって、上記外槽の底板及び上記外槽胴板下部の傾斜板の上記スカートへの各接続箇所となる取付部は、上下に集中化排除の間隔をもたせ位置をずらして上記スカートへ接続固定したので、スカートの内と外の一致した箇所に溶接接続による接続箇所が一致しないため、接続作業の施工性が良く、荷重集中の分散がなされ、冷熱の局部的な集中が解消され熱変動負荷も軽減されて、放熱機能的に優れ、かつ接続箇所の低温劣化を防止することができる。
【0015】
請求項2の発明に係る縦置二重殻円筒形低温貯槽の外槽取付構造は、内槽と、保冷層を介して該内槽を囲繞する外槽とを設け、該外槽の底板端部を貫通して上記内槽に至る円筒形状のスカートで上記内槽及び外槽を基礎上に支持した縦置二重殻円筒形低温貯槽であって、上記外槽の底板は、リング状の上下板と該上下板の間に設けたリブ板とからなる接続部材を上記スカートに接続固定し、該接続部材に底板支持材を取付けて、この底板支持材の上に設けたので、放熱や対流の条件が悪いスカート内側であっても、表面積の広い接続部材からの放熱と入熱の熱出入が促進されるため、放熱入熱の効果が増すことに加えて、取付け支持の構造的な熱分散及び荷重分散機能も増加する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
この発明に係る縦置二重殻円筒形低温貯槽の実施の形態について、図1乃至図6を参照して説明する。
図1はこの発明に係る縦置二重殻円筒形低温貯槽の全体縦断面を示し、図2は外槽取付構造の実施形態例を示し、図3及び図4は、図1の外槽取付構造の実施形態例の部分縦断面を示し、図5は請求項2の実施形態例、図6は請求項1、2の実施形態例を示す。
【0017】
図1に示すように、低温液体を貯蔵する内槽1を設け、この内槽1を囲繞するように外槽2を設け、この内槽1と外槽2との間に保冷層3を設ける。
内槽1は、図のような半球形状又は半楕円形状(図示せず)などの上部鏡板6と、円筒形状の中間胴板7と、図のような半球形状又は半楕円形状(図示せず)などの下部鏡板8とで形成する。
外槽2は、図のような欠球形状又は上記内槽1の上部鏡板6と中心点を同じくする半球形状(図示せず)などの外槽屋根板9と、円筒形状の外槽側板10と、胴板11と、図のような上記下部鏡板8よりも小さな曲率のなだらかな凹面円板形状又は水平円板形状(図示せず)などの外槽底板12とで形成する。
円筒形状のスカート4は、内槽1の側面下端部から垂直下方に延出して外槽2の外槽底板12端部を貫通し、基礎5の上に内槽1及び外槽2を支持する。
スカート4への外槽2の側板10の下部の胴板11及び底板12の接続固定箇所を総称して取付部17とする。
この取付部17は、荷重と伝熱の集中化を排除するために、スカート4の外側に位置する胴板11の取付位置を、スカート4の内側に位置する外槽底板12の取付位置より下方位置に、隔離して形成する。
【0018】
図2は、外槽の取付部17近傍の他の事例で、外槽2の側板10の下部の胴板11は、湾曲面に形成した場合を示す。
外槽の胴板11及び底板12は湾曲面に形成し、スカート4への各取付位置は互いに離してスカート4に接続固定する。つまり、外側に位置する胴板11の取付位置は、荷重と伝熱の集中化を排除するために、内側に位置する底板12の取付位置より下方に離した位置とする。
【0019】
図1、図2に示すように、スカート4への外槽胴板11及び外槽底板12の取付位置は、スカート4の内外で一致させることなく、内外槽の形状、保冷層の厚さに対応して上下に隔離した位置とする。
【0020】
図3及び図4は、上記図1及び図2に示すスカート4へ外槽の底板12及び円すい胴板11を接続し取付ける構造を拡大して示す実施形態例である。
図3は外槽底板12を半球形状など湾曲面に形成した事例で、この外槽底板12は、傾斜したリング状の接続部材13に取付けた湾曲梁材15の上に設置する。この取付位置の外側の下方位置に傾斜したリング状の接続部材14を取付け、この接続部材14に傾斜した円すい胴板11を接続する。16は、間隔をおいて適宜設ける補強用のブラケットである。
【0021】
図4は外槽底板12を水平板形状に形成した事例で、この外槽底板12は、断面逆L字形状アングル材の接続部材13に取付けた水平梁材15の上に設置する。また、この取付位置の外側の下方位置にリング状の接続部材14を取付け、この接続部材14に傾斜した円すい胴板11を接続する。16は、間隔をおいて適宜設ける補強用のブラケットである。
【0022】
図1及び図2、図3及び図4に示すように、スカート4への底板12と円すい胴板11の接続箇所である取付部17を所定距離、例えばスカート4の板厚20ミリメートルの場合、少なくとも200〜300ミリメートル程度離した距離とする。
この隔離距離は、応力集中や荷重応力の分散を配慮すると200ミリメートル程度以上が好ましく、溶接棒が入り易い作業者の施工性や、伝熱集中の分散を配慮すると300ミリメートル程度以上取ることが好ましい。
このように、スカート4への接続箇所を、荷重と伝熱の集中化を排除するために上下にずらすことにより、スカート4の内外の水平同一位置に溶接による接続箇所が一致しないため、底板12と円すい胴板11の接続溶接作業の施工性が良く、荷重分散がなされ強度も向上する。また、スカート4への内外の接続箇所が一致しないため、冷熱を内外へ分散し放熱機能的にも優れ、冷熱の局部的な集中が免れ熱変動負荷による荷重も軽減され、接続箇所の低温劣化を防止することができる。さらに、結露や霜の発生を防止することができる。
【0023】
図5は、請求項2の外槽取付構造の実施形態例で、リング状の上下板13A、13Bとこの上下板13A、13Bの間に設けたリブ板13Cとからなる接続部材13を上記スカート4に接続固定し、該接続部材13に梁材状の底板支持材18を取付けて、この底板支持材18の上に外槽の底板12を設けたものである。
このように外槽の底板12は、上下二枚の接続部材13(13A、13B)上に確りと支持することができるとともに、スカート4から下降する冷熱を接続部材13で分散し放熱することができる。
つまり、放熱や対流の条件が悪いスカート4の内側の場所であっても、表面積の広い接続部材13からの放熱と入熱の熱出入が促進され、取付け支持の構造的な熱分散及び荷重分散機能が増加する。
【0024】
図6は、請求項1、2を組合せた構造の取付部17の実施形態例で、スカート4への外槽底板12及び外槽胴板11の接続箇所を上下にずらせた外槽取付構造である。
この取付部17は、スカート4の内側は、リング状の上下板13A、13Bなどからなる接続部材13を上記スカート4に接続固定し、この接続部材13に底板支持材18を取付けて、この底板支持材18の上に外槽の底板12を設け、さらにスカート4の外側は、接続部材13より下方位置にリング状の接続部材14を取付け、この接続部材14に傾斜した円すい胴板11を接続形成した事例である。
このように、請求項1、2を組合せた取付部17の構造は、熱を内外へ分散し放熱機能的に優れ、取付け支持の構造的な熱分散及び荷重分散機能が一層増加する。
【産業上の利用可能性】
【0025】
この発明に係る縦置二重殻円筒形低温貯槽の取付構造は、上記支持部の放熱構造と接続構造を有するので、機械的性能及び伝熱的安定性を向上させ、機能性と経済性に優れた低温貯槽を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明に係る縦置二重殻円筒形低温貯槽の外槽取付構造を示す全体縦断面説明図である。
【図2】この発明に係る縦置二重殻円筒形低温貯槽の外槽取付構造の実施形態例を示す縦断面説明図である。
【図3】図1の外槽取付構造の実施形態例を示す縦断面説明図である。
【図4】図1の外槽取付構造の他の実施形態例を示す縦断面説明図である。
【図5】請求項2の発明に係る縦置二重殻円筒形低温貯槽の外槽取付構造の実施形態例を示す縦断面説明図である。
【図6】請求項1、2の発明に係る縦置二重殻円筒形低温貯槽の外槽取付構造の実施形態例を示す縦断面説明図である。
【図7】従来例1の低温二重殻貯槽の保冷構造を示す縦断面説明図である。
【図8】従来例2の縦置二重殻円筒形低温貯槽を示す縦断面説明図である。
【図9】従来例3の竪型断熱低温タンクの外槽底板構造を示す縦断面説明図である。
【符号の説明】
【0027】
1 内槽
2 外槽
3 保冷層
4 スカート
5 基礎
6 上部鏡板
7 中間胴板
8 下部鏡板
9 外槽屋根板
10 外槽側板
11 胴板
12 外槽底板
13 底板接続部材
14 胴板接続部材
15 梁部材
16 ブラケット
17 接続部
18 底板支持材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内槽と、保冷層を介して該内槽を囲繞する外槽とを設け、該外槽の底板端部を貫通して上記内槽に至る円筒形状のスカートで上記内槽及び外槽を基礎上に支持した縦置二重殻円筒形低温貯槽であって、上記外槽の底板及び上記外槽胴板下部の傾斜板の上記スカートへの各接続箇所となる取付部は、上下に集中化排除の間隔をもたせ位置をずらして上記スカートへ接続固定したことを特徴とする縦置二重殻円筒形低温貯槽の外槽取付構造。
【請求項2】
内槽と、保冷層を介して該内槽を囲繞する外槽とを設け、該外槽の底板端部を貫通して上記内槽に至る円筒形状のスカートで上記内槽及び外槽を基礎上に支持した縦置二重殻円筒形低温貯槽であって、上記外槽の底板は、リング状の上下板と該上下板の間に設けたリブ板とからなる接続部材を上記スカートに接続固定し、該接続部材に底板支持材を取付けて、この底板支持材の上に設けたことを特徴とする縦置二重殻円筒形低温貯槽の外槽取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−54033(P2010−54033A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−222585(P2008−222585)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000147729)株式会社石井鐵工所 (67)
【Fターム(参考)】