説明

縮合多環化合物及びそれを有する有機発光素子

【課題】 新規な縮合多環化合物、及び高効率で高輝度な光出力を有する有機発光素子を提供する。
【解決手段】 下記一般式[1]で示されることを特徴とする縮合多環化合物を提供する。
【化1】


[1]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縮合多環化合物及びそれを有する有機発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子は、一対の電極とそれらの間に配置される有機化合物層とを有する素子である。これら一対の電極から電子および正孔を注入することにより、有機化合物層中の発光性有機化合物の励起子を生成し、該励起子が基底状態にもどる際に光を放出する。
【0003】
有機発光素子は高い発光効率、フレキシブル性を有する次世代のフルカラーディスプレイ技術の一つとして注目されており、材料技術開発および素子技術開発が盛んに行われている。
【0004】
非特許文献1には、シクロペンタ[1,2−b:3,4−b]ジアントラセンが、化合物として記載されている。記載されているシクロペンタ[1,2−b:3,4−b]ジアントラセンの無置換体の構造を下記に示す。
【0005】
【化1】

【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Tetrahedron Letters 第41巻 4947−4951頁(1966)
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第08/146825号 パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非特許文献1には、シクロペンタ[1,2−b:3,4−b]ジアントラセンの無置換体のHOMO準位等の計算例が記載されている。しかし、合成例や有機発光素子に関する記述は無い。
【0009】
また、シクロペンタ[1,2−b:3,4−b]ジアントラセンの無置換体は反応性が高いため、無置換体のままでは、有機発光素子の発光材料として用いることが困難である。
【0010】
本発明は、酸化に対して安定で新規な縮合多環化合物を提供することを目的とする。そして、それを有する発光効率の高い有機発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
よって、本発明は、下記一般式[1]で示されることを特徴とする縮合多環化合物を提供する。
【0012】
【化2】


[1]
【0013】
一般式[1]において、R乃至R18は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基またはアリール基からそれぞれ独立に選ばれる。
【0014】
ただし、R4、R9、R12、R17の少なくともいずれかひとつは、前記アリール基である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、酸化に対して安定で新規な縮合多環化合物を提供できる。そして、それを有する発光効率が高く、かつ耐久性が高い有機発光素子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係る発光層積層型の有機発光素子の一例の模式図である。
【図2】本実施形態に係る有機発光素子と、この有機発光素子に接続されているスイッチング素子とを示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、下記一般式[1]で示されることを特徴とする縮合多環化合物である。
【0018】
【化3】


[1]
【0019】
一般式[1]において、R乃至R18は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、またはアリール基からそれぞれ独立に選ばれる。
【0020】
ただし、R4、R9、R12、R17の少なくともいずれかひとつは、前記アリール基である。
【0021】
化合物の安定性を考慮するとR及びRはアルキル基であることが好ましい。
【0022】
また、R、R、R12及びR17は、置換されることが好ましい。置換基としては、アリール基が好ましく、特にフェニル基またはナフチル基が好ましい。置換されるアリール基は置換基を有してよい。
これらのアリール基を設けることで骨格自体が酸化されにくいので、化合物自体の安定性が向上し、薄膜にした時の安定性が向上する。
乃至R18で表されるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
乃至R18で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、セカンダリーブチル基、ターシャリーブチル基等が挙げられる。
乃至R18で表されるアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。
【0023】
上記アリール基がさらに有してもよい置換基としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、シアノ基が挙げられる。
【0024】
本発明に係る縮合多環化合物は、基本骨格が有するアントラセンの特定の位置に置換基を有するため、酸化に対して安定性の高い化合物である。酸化に対して安定な化合物は、薄膜状態での安定性が高いので好ましい。
【0025】
ここで、本実施形態において基本骨格とは共役を有する縮環構造を指す。
【0026】
本発明に係る縮合多環化合物は、バンドギャップが2.82eVの化合物である。このバンドギャップは、青色領域の発光に適した2.60eV以上2.75eV以下の範囲よりも大きい。
【0027】
すなわち、本発明に係る縮合多環化合物は、青色発光材料よりもバンドギャップが大きいので、青色を発する発光層のホスト材料に好ましく用いることができる。
【0028】
本発明に係る縮合多環化合物は、バンドギャップが十分に広いので、発光層のホスト材料やアシスト材料として用いることができる。その発光層の発光色は特に限定されない。バンドギャップが十分に広いため、青緑、緑、黄色、赤といった青色よりもエネルギーが青よりも低い色のホスト材料に用いることができる。
【0029】
ここで、ホスト材料とは、発光層の中で重量比が最も大きく、主としてキャリアの輸送及びゲスト材料への励起エネルギー供与の機能を担う化合物である。ゲスト材料とは発光層の中で重量比がホスト材料よりも小さく、主たる発光をする化合物である。アシスト材料とは発光層の中で重量比がホスト材料よりも小さく、ゲスト材料の発光を助ける化合物である。
【0030】
本発明に係る縮合多環化合物は、アモルファス性が高い化合物である。これは、基本骨格自体が高いアモルファス性を有することに起因する。アモルファス性が高いことは結晶性が低いということもできる。
【0031】
有機発光素子のホスト材料や電荷輸送材料の結晶性が高い場合、結晶化した材料同士の界面がキャリアのトラップサイトとなって、有機発光素子の性能を低下させることが考えられる。
【0032】
つまり、有機発光素子のホスト材料や電荷輸送材料はアモルファス性が高いことが好ましい。
【0033】
そして、アモルファス性が高いことは化合物のガラス転移温度を測定することで確認することができる。
【0034】
本発明に係る縮合多環化合物aのガラス転移温度は200℃以上であった。
【0035】
【化4】


[a]
【0036】
ガラス転移温度が高い化合物は、アモルファス性が高い化合物である。本発明に係る縮合多環化合物aはガラス転移温度が高いので、アモルファス性が高い化合物である。
【0037】
そのため、本発明に係る縮合多環化合物は、有機発光素子に好ましく用いることができる。
【0038】
また、本実施形態に係る縮合多環化合物は、電荷輸送性が高い。本発明に係る縮合多環化合物aと下記のbで示す化合物とを比較する。bはジメチル基を中心として非対称な構造である。この構造の右側であるフェニル基側は共役が広いため電荷輸送能を有さない。
【0039】
化合物bの右側は電荷輸送能を有さないため、化合物bは分子全体の電荷輸送能が化合物aよりも低いと考えられる。
【0040】
【化5】


[b]
【0041】
この点でジメチル基を中心として等価な共役を有する本発明の化合物は左右どちらも同じ共役の広さであるため電荷輸送性が高い。この点で本発明の有機化合物はバンドギャップが広いにも関わらす、分子内の電荷輸送性部位を多く有するため、電荷輸送性が高い。電子輸送性が高い化合物を有機発光素子に用いた場合、有機発光素子の駆動電圧を低電圧化できる。
【0042】
一般式[1]における縮合多環化合物の具体例を以下に示す。しかし、本発明はこれらに限られるものではない。
【0043】
【化6】

【0044】
【化7】

【0045】
【化8】

【0046】
(合成ルートの説明)
本発明に係る化合物の合成ルートの一例を説明する。中間体A−1は、特許文献1を参照しながら合成することができる。本発明に係る有機化合物の合成ルートの一例を説明する。以下に反応式を記す。
【0047】
【化9】

【0048】
化合物A−3は、例えば化合物A−1と化合物A−2とのDiels−Alder反応により得ることができる。目的化合物は化合物A−3のエポキシドを鉄や亜鉛等の金属で処理することで得ることができる。
【0049】
また、A−2を所望の構造を有する化合物に代えることで種々の有機化合物を合成することができる。
【0050】
非対称の目的化合物を合成する際は、Diels−Alder反応を一段階ずつ行うことで得ることができる。
【0051】
(本実施形態に係る有機発光素子の説明)
次に本実施形態に係る有機発光素子を説明する。
【0052】
本実施形態に係る有機発光素子は一対の電極である陽極と陰極とそれらの間に配置される有機化合物層とを有し、この有機化合物層が一般式[1]で示される有機化合物を有する素子である。
【0053】
本実施形態に係る有機発光素子が有する有機化合物層は、単層であっても複数層であっても構わない。
【0054】
複数層とは、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔ブロック層、電子輸送層、電子注入層、エキシトンブロック層等から適宜選択される層である。もちろん、前記群の中から複数を選択し、かつそれらを組み合わせて用いることができる。
【0055】
さらに、発光層は単層であっても積層であっても良い。例えば、白色発光素子の場合、有機発光素子は複数の発光層を有し、その発光層それぞれが異なる色を発することで、素子として白色を発する素子が挙げられる。
【0056】
本実施形態に係る白色を発する有機発光素子が有する複数の発光層のうちの一層は一般式[1]で示される縮合多環化合物を有する発光層である。
【0057】
上記複数の発光層のうちの一般式[1]で示される縮合多環化合物を有する発光層以外の発光層が異なる色を発し、素子全体では、白色を発する。すなわち、複数の発光色の混色によって白色を発する素子である。
【0058】
他にも発光層は単層であって、複数の発光材料を有することで白色を発することもできる。
【0059】
本実施形態に係る白色を発する有機発光素子の形態には、以下に示すような発光層の構成が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
(1)単層:青、緑および赤色の発光材料を含む素子
(2)積層:水色および黄色の発光材料を含む素子
(3)2層:青色発光層と緑および赤色の発光材料を含む発光層、または赤色発光層と青および緑色の発光材料を含む発光層との積層素子
(4)2層:水色発光層と黄色発光層との積層素子
(5)3層:青色発光層と緑色発光層と赤色発光層の積層素子
図1は、本実施形態に係る白色有機発光素子の一例として、上記(5)の発光層を有する素子構成の一例を示した断面模式図である。本図では3色の発光層を有する有機発光素子が図示されている。構造の詳細を以下に説明する。
【0060】
この有機発光素子は、ガラス等の基板上に、陽極1、正孔注入層2、正孔輸送層3、青色発光層4、緑色発光層5、赤色発光層6、電子輸送層7、電子注入層8、陰極9を積層させた素子構成である。ただし、青、緑、赤色発光層の積層は順不同でも良い。
【0061】
また、発光層は積層される形態に限られず、横並びに配置されてもよい。横並びとは、横並びに配置された発光層はいずれも正孔輸送層および電子輸送層等の隣接層に接するように配置されることである。
【0062】
また、発光層は、一の色を発光する発光層の中に他の色を発する発光部のドメインを形成する形態でもよい。
【0063】
一般式[1]で表される縮合多環化合物を発光層のホスト材料またはゲスト材料として用いることができる。特にゲスト材料として用いた場合、580nmから660nmの領域に発光ピークを持つ赤領域に発光する高効率の発光素子を提供する。
【0064】
青色発光層の発光材料および緑色発光層の発光材料は、特に限定されないがフルオランテン骨格またはアントラセン骨格またはフルオレン骨格を有する化合物を用いることが好ましい。
【0065】
なお、本実施形態に係る縮合多環化合物をゲスト材料として用いる場合、ホスト材料に対するゲスト材料の濃度は0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.5wt%以上10wt%以下であることがより好ましい。
【0066】
本実施形態に係る有機発光素子は本発明に係る縮合多環化合物以外にも、必要に応じて従来公知の正孔注入性材料あるいは輸送性材料あるいはホスト材料あるいはゲスト材料あるいは電子注入性材料あるいは電子輸送性材料等を一緒に使用することができる。これら材料は低分子であっても高分子であってもよい。
【0067】
以下にこれらの化合物例を挙げる。
【0068】
正孔注入性材料あるいは正孔輸送性材料としては、正孔移動度が高い材料であることが好ましい。正孔注入性能あるいは正孔輸送性能を有する低分子及び高分子系材料としては、トリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、ポリ(ビニルカルバゾール)、ポリ(チオフェン)、その他導電性高分子が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0069】
ホスト材料としては、トリアリールアミン誘導体、フェニレン誘導体、縮合環芳香族化合物(例えばナフタレン誘導体、フェナントレン誘導体、フルオレン誘導体、クリセン誘導体、など)、有機金属錯体(例えば、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム等の有機アルミニウム錯体、有機ベリリウム錯体、有機イリジウム錯体、有機プラチナ錯体等)およびポリ(フェニレンビニレン)誘導体、ポリ(フルオレン)誘導体、ポリ(フェニレン)誘導体、ポリ(チエニレンビニレン)誘導体、ポリ(アセチレン)誘導体等の高分子誘導体が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0070】
ホスト化合物としては、具体的な構造式を表1に示す。ホスト化合物は表4に示す構造式を有する誘導体である化合物であってもよい。またそれ以外に、縮環化合物(例えばフルオレン誘導体、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、カルバゾール誘導体、キノキサリン誘導体、キノリン誘導体等)、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム等の有機アルミニウム錯体、有機亜鉛錯体、及びトリフェニルアミン誘導体、ポリ(フルオレン)誘導体、ポリ(フェニレン)誘導体等の高分子誘導体が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0071】
電子注入性材料あるいは電子輸送性材料としては、ホール注入性材料あるいはホール輸送性材料のホール移動度とのバランス等を考慮し選択される。電子注入性能あるいは電子輸送性能を有する材料としては、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラジン誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体、有機アルミニウム錯体等が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0072】
陽極材料としては、仕事関数がなるべく大きなものがよい。例えば、金、白金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、コバルト、セレン、バナジウム、タングステン等の金属単体あるいはこれらの合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)、酸化亜鉛インジウム等の金属酸化物である。また、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性ポリマーでもよい。これらの電極物質は単独で使用してもよいし複数併用して使用してもよい。また、陽極は一層構成でもよく、多層構成でもよい。
【0073】
一方、陰極材料としては、仕事関数の小さなものがよい。例えば、リチウム等のアルカリ金属、カルシウム等のアルカリ土類金属、アルミニウム、チタニウム、マンガン、銀、鉛、クロム等の金属単体が挙げられる。あるいはこれら金属単体を組み合わせた合金も使用することができる。例えば、マグネシウム−銀、アルミニウム−リチウム、アルミニウム−マグネシウム等が使用できる。酸化錫インジウム(ITO)等の金属酸化物の利用も可能である。これらの電極物質は単独で使用してもよいし、複数併用して使用してもよい。また、陰極は一層構成でもよく、多層構成でもよい。
【0074】
本実施形態に係る有機発光素子において、本実施形態に係る縮合多環化合物を含有する層及びその他の有機化合物からなる層は、以下に示す方法により形成される。
【0075】
例えば、真空蒸着法、イオン化蒸着法、スパッタリング法、プラズマあるいは、適当な溶媒に溶解させてスピンコーティング、ディッピング、キャスト法、LB法、インクジェット法等の公知の塗布法により層を形成する。
【0076】
ここで真空蒸着法や溶液塗布法等によって層を形成すると、結晶化等が起こりにくく経時安定性に優れる。また塗布法で形成する場合は、適当なバインダー樹脂と組み合わせて膜を形成することもできる。
【0077】
上記バインダー樹脂としては、ポリビニルカルバゾール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、尿素樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0078】
また、これらバインダー樹脂は、ホモポリマー又は共重合体として1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。さらに必要に応じて、公知の可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を併用してもよい。
【0079】
(本実施形態に係る有機発光素子の用途)
本実施形態に係る有機発光素子は、表示装置や照明装置に用いることができる。他にも電子写真方式の画像形成装置の露光光源や液晶表示装置のバックライトなどに用いることができる。
【0080】
表示装置は本実施形態に係る有機発光素子を表示部に有する。この表示部は複数の画素を有し、この画素は本実施形態に係る有機発光素子と発光輝度を制御するためのスイッチング素子の一例としてTFT素子を有する。
【0081】
スイッチング素子は、この有機発光素子の陽極または陰極と薄膜トランジスタのドレイン電極またはソース電極とが接続されている。
【0082】
表示装置はPC、ヘッドマウントディスプレイ、携帯電話等の画像表示装置として用いることができる。表示される画像は、二次元画像、三次元画像を問わない。
【0083】
表示装置は、エリアCCD、リニアCCD、メモリーカード等からの画像情報を入力する画像入力部を有し、入力された画像を表示部に出力する画像入力装置でもよい。
【0084】
画像入力装置は、画像入力部をCCDセンサ等の撮像素子とし、撮像光学系を有するデジタルカメラであってもよい。
【0085】
表示装置は、出力されている画像に触れることで入力できる入力機能を有していてもよい。例えば、タッチパネル機能等が挙げられる。
【0086】
また表示装置はマルチファンクションプリンタの表示部に用いられてもよい。
【0087】
本実施形態に係る有機発光素子は照明装置に用いられてもよい。この照明装置は、本実施形態に係る有機発光素子と有機発光素子に接続されたインバータ回路とを有する。インバータ回路は交流電圧を直流電圧に変換するものである。
【0088】
本実施形態に係る照明装置の照明光の色は、白色でも、昼白色でも、その他の色でもよい。
【0089】
白色を発する場合は、有機発光素子の発光層が複数の層を有し、本発明の化合物が赤色を発し、その他の層が赤色以外を発することで、素子として白色を発する。
【0090】
図2は、本実施形態に係る有機発光素子とそれに接続されたTFT素子とを有する表示装置の断面模式図である。
【0091】
この表示装置は、ガラス等の基板10とその上部にTFT素子又は有機化合物層を保護するための防湿膜11が設けられている。また符号12は金属のゲート電極12である。符号13はゲート絶縁膜13であり、14は半導体層である。
【0092】
TFT素子17は半導体層14とドレイン電極15とソース電極16とを有している。TFT素子17の上部には絶縁膜18が設けられている。コンタクトホール19を介して有機発光素子の陽極20とソース電極16とが接続されている。
【0093】
本実施形態に係る表示装置はこの構成に限られず、陽極または陰極のうちいずれか一方とTFT素子ソース電極またはドレイン電極のいずれか一方とが接続されていればよい。
【0094】
有機化合物層21は本図では多層の有機化合物層を1つの層の如く図示をしているが複数層であってよい。陰極22の上には有機発光素子の劣化を抑制するための第一の保護層23や第二の保護層24が設けられている。
【0095】
本実施形態に係る有機発光素子はスイッチング素子の一例であるTFT素子により発光輝度が制御される。有機発光素子を複数面内に設けることでそれぞれの発光輝度により画像を表示することができる。
【0096】
本実施形態に係る有機発光素子が有するスイッチング素子は、TFT素子に限られず、トランジスタやMIM素子、Si基板等の基板上にアクティブマトリクスドライバーを形成し、その上に有機発光素子を設けて制御する形態であってもよい。
【0097】
これは精細度によって選択され、たとえば1インチでQVGA程度の精細度の場合はSi基板上に有機発光素子を設けることが好ましい。
【0098】
本実施形態に係る有機発光素子を用いた表示装置を駆動することにより、良好な画質で、長時間表示にも安定な表示が可能になる。
【実施例】
【0099】
以下、本発明について実施例を用いて詳細に説明する。なお本発明はこれらに限定されるものではない。
【0100】
(実施例1)
[例示化合物(1−1)の合成]
【0101】
【化10】

【0102】
(1)化合物A−3の合成
下記に示される試薬、溶媒を反応容器内に投入した。
A−1:1.29g(2.14mmol)
A−2:1.73g(6.41mmol)
THF:50ml
この溶液を窒素気流下、−78℃で撹拌し、n−ブチルリチウム(1.6M溶液、4mml、6.4mmol)を少しずつ5分間にわたって加えた。反応液を−78℃で1時間撹拌したのち、室温まで終夜で撹拌した。
【0103】
反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相;へプタン:酢酸エチル=20:1)により精製し化合物A−3(1.00g、90%)を得た。
【0104】
(2)例示化合物(1−1)の合成
下記に示される試薬、溶媒を反応容器内に投入した。
化合物A−3:1.10g(1.51mmol)
鉄粉:1.00g(17.9mmol)
酢酸:30ml
窒素気流下、この懸濁液を100℃で6時間撹拌した後、室温まで冷却した。無機物をセライト濾過により除去し、トルエンで洗浄した。濾液を減圧濃縮後、残渣をエタノールで分散洗浄することで例示化合物(1−1)を858mg(収率82%)得た。
質量分析法により、例示化合物(1−1)のM+である698を確認した。
【0105】
また、H−NMR測定により、例示化合物(1−1)の構造を確認した。
H−NMR(CDCl,400MHz) σ(ppm):1.41(s、6H)、7.24−7.32(m、4H)、7.46−7.64(m、24H)、7.70−7.76(m、2H)、7.83(s、2H)
【0106】
(実施例2)
[例示化合物(1−4)の合成]
化合物A−2を以下の化合物A−4に変えて、実施例1と同様にして、例示化合物(10)を合成した。
【0107】
【化11】

【0108】
質量分析法により、例示化合物(1−4)のM+である1002を確認した。
【0109】
(実施例3)
[例示化合物(4−7)の合成]
化合物A−2と以下の化合物A−5を用いて、実施例1と同様にして、例示化合物(4−7)を合成した。
【0110】
【化12】

【0111】
質量分析法により、例示化合物(4−7)のM+である734を確認した。
【0112】
(実施例4)
本実施例では、基板上に順次陽極/正孔輸送層/電子阻止層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極が設けられた構成の有機発光素子を以下に示す方法で作製した。
【0113】
ガラス基板上に、陽極としてITOをスパッタ法にて膜厚120nmで製膜したものを透明導電性支持基板(ITO基板)として使用した。このITO基板上に、以下に示す有機化合物層及び電極層を、10−5Paの真空チャンバー内で抵抗加熱による真空蒸着によって連続的に製膜した。このとき対向する電極面積は3mmになるように作製した。
正孔輸送層(40nm) A−6
電子阻止層(10nm) A−7
発光層(30nm) ホスト材料:例示化合物(1−1)、ゲスト材料:A−8(0.5wt%)
正孔阻止層(10nm) A−9
電子輸送層(30nm) A−10
金属電極層1(0.5nm) LiF
金属電極層2(100nm) Al
【0114】
【化13】

【0115】
次に、有機発光素子が水分の吸着によって素子劣化が起こらないように、乾燥空気雰囲気中で保護用ガラス板をかぶせアクリル樹脂系接着材で封止した。以上のようにして有機発光素子を得た。
得られた有機発光素子について、ITO電極を正極、Al電極を負極にして、発光輝度2000cd/m時の印加電圧を測定したところ、5.0Vであった。発光効率は8.3lm/Wであり、赤色の発光が観測された。
【0116】
(実施例5)
ホスト材料を例示化合物(1−4)に換えた以外は実施例4と同様にして有機発光素子を作成した。
得られた有機発光素子について、ITO電極を正極、Al電極を負極にして、発光輝度2000cd/m時の印加電圧を測定したところ、5.2Vであった。発光効率は7.9lm/Wであり、赤色の発光が観測された。
【0117】
(実施例6)
ホスト材料を例示化合物(4−7)に換えた以外は実施例4と同様にして有機発光素子を作成した。
得られた有機発光素子について、ITO電極を正極、Al電極を負極にして、発光輝度2000cd/m時の印加電圧を測定したところ、5.1Vであった。発光効率は8.0lm/Wであり、赤色の発光が観測された。
【0118】
(実施例7)
発光層(30nm)を以下のように換えて、正孔阻止層を除いた以外は実施例4と同様に有機発光素子を作成した。
赤発光層(10nm)ホスト材料:例示化合物(1−1)、ゲスト材料:A−8(0.5wt%)
緑発光層(10nm)ホスト材料:A−11、ゲスト材料:A−12(2.5wt%)
青発光層(10nm)ホスト材料:A−11、ゲスト材料:A−13(1.0wt%)
【0119】
【化14】

【0120】
得られた有機発光素子について、ITO電極を正極、Al電極を負極にして、電圧をかけたところ白色発光が観測された。
【0121】
(比較例1)
ホスト材料を(A−14)に換えた以外は実施例4と同様にして有機発光素子を作成した。
【0122】
【化15】

【0123】
得られた有機発光素子について、ITO電極を正極、Al電極を負極にして、発光輝度2000cd/m時の印加電圧を測定したところ、5.3Vであった。発光効率は7.0lm/Wであり、赤色の発光が観測された。
【0124】
(比較例2)
ホスト材料を(A−15)に換えた以外は実施例4と同様にして有機発光素子を作成した。
【0125】
【化16】

【0126】
得られた有機発光素子について、ITO電極を正極、Al電極を負極にして、発光輝度2000cd/m時の印加電圧を測定したところ、5.2Vであった。発光効率は4.0lm/Wであり、赤色の発光が観測された。
【0127】
以上のように本発明に係る縮合多環化合物は、発光層のホスト材料として有機発光素子に用いた場合、発光効率が高い有機発光素子を得ることができる。
【符号の説明】
【0128】
4 青色発光層
5 緑色発光層
6 赤色発光層
17 TFT素子
20 陽極
21 有機化合物層
22 陰極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式[1]で示されることを特徴とする縮合多環化合物。
【化1】


[1]
一般式[1]において、R乃至R18は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基またはアリール基からそれぞれ独立に選ばれる。
ただし、R4、R9、R12、R17の少なくともいずれかひとつは、前記アリール基である。
【請求項2】
前記R及び前記Rが前記アルキル基であり、前記R、前記R、前記R12及び前記R17が前記アリール基であることを特徴とする請求項1に記載の縮合多環化合物。
【請求項3】
一対の電極と、前記一対の電極の間に配置されている有機化合物層とを有し、前記有機化合物層は請求項1又は2に記載の縮合多環化合物を有することを特徴とする有機発光素子。
【請求項4】
前記有機化合物層は発光層を有し、前記発光層はホスト材料とゲスト材料とを有し、前記ホスト材料が前記縮合多環化合物であることを特徴とする請求項3に記載の有機発光素子。
【請求項5】
前記有機化合物層は、複数の発光層を有する発光部を有し、
前記複数の発光層のうちの少なくともいずれかひとつが、前記縮合多環化合物を有し、
前記複数の発光層のそれぞれの発光色が混色することにより白色を発することを特徴とする請求項3に記載の有機発光素子。
【請求項6】
複数の画素を有し、前記画素は請求項3乃至5のいずれか一項に記載の有機発光素子と前記有機発光素子に接続されているスイッチング素子とを有することを特徴とする表示装置。
【請求項7】
画像を表示するための表示部と、画像情報を入力するための入力部とを有し、
前記表示部は複数の画素を有し、前記画素は請求項3乃至5のいずれか一項に記載の有機発光素子と前記有機発光素子に接続されているスイッチング素子とを有することを特徴とする画像入力装置。
【請求項8】
請求項3乃至5のいずれかに記載の有機発光素子と前記有機発光素子に接続されているインバータ回路とを有することを特徴とする照明装置。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2013−49651(P2013−49651A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189136(P2011−189136)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】