説明

縮合環化合物、有機薄膜及び有機薄膜素子

【課題】優れた電子輸送性を有するとともに、溶媒への溶解性にも優れる有機n型半導体として利用可能な縮合環化合物の提供。
【解決手段】式(1)で表される縮合環化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縮合環化合物、有機薄膜及び有機薄膜素子に関する。
【背景技術】
【0002】
電子輸送性又はホール輸送性を有する有機材料を含む薄膜は、有機薄膜トランジスタ、有機太陽電池、光センサ等の有機薄膜素子への応用が期待されているが、有機p型半導体(ホール輸送性を示す)に比べ、有機n型半導体(電子輸送性を示す)が得難いことから、有機n型半導体の開発が種々検討されている。
【0003】
良好な電子輸送性を示す有機n型半導体として利用可能な化合物としては、例えば、特許文献1に示されるような縮合環化合物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−149613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載された縮合環化合物は、有機n型半導体として優れた電子輸送性を発揮し得るものであった。このような化合物を用いて有機薄膜素子を製造する際には、簡便且つ均質に有機薄膜を形成するために、化合物を有機溶媒等の溶媒に溶解した上で、所定の塗布法によって有機薄膜を形成できることが好ましい。しかしながら、これまで、優れた電子輸送性を有する縮合環化合物は、有機溶媒等の溶媒に対する十分な溶解性が得られない場合も少なくなかった。そのため、有機n型半導体として適用される化合物には、有機溶媒等の溶媒への溶解性も一層良好であることが望まれている。
【0006】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、優れた電子輸送性を有するとともに、溶媒への溶解性にも優れる有機n型半導体として利用可能な縮合環化合物を提供することを目的とする。また、本発明は、このような縮合環化合物を含有する有機薄膜、並びにこの有機薄膜を備える有機薄膜素子、特に有機薄膜トランジスタ及び有機太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の縮合環化合物は、式(1)で表される構造を有する。
【化1】


【化2】

【0008】
[式(1)中、R11及びR12は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示し、R11及びR12の少なくとも一方は、式(2)で表される基である。Ar10、Ar11及びAr12は、各々独立に、炭素数6以上の芳香族炭化水素基又は炭素数4以上の複素環基を示し、これらは置換基を有してもよい。s及びtは、各々独立に、0から6の整数を示す。X11及びX12は、各々独立に、酸素原子、硫黄原子又は=C(A)で表される基を示し、Aは、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示し、二つのAは互いに同一でも異なっていてもよい。R13及びR14は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示し、R13及びR14の少なくとも一方は、炭素数1〜30のアルキル基を示し、該アルキル基中の一部の炭素原子は酸素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子、S=O、S(=O)又はN−Rに置換されていてもよく(Rは、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示す)、該アルキル基中の水素原子の一部又は全部がフッ素原子に置換されていてもよい。R13及びR14は、前記原子又は基を示す代わりに、互いに結合して、これらが結合している環と縮合する、芳香族炭素環又は複素環を形成していてもよい。
式(2)中、Ar21は、芳香族炭化水素基又は複素環基を示し、これらは置換基を有していてもよい。R21及びR22は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示し、R21及びR22の少なくとも一方は、フッ素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のフルオロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基又は炭素数1〜20のフルオロアルコキシ基である。X21及びX22は、各々独立に、酸素原子、硫黄原子又は=C(A)で表される基を示し、Aは、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示し、二つのAは互いに同一でも異なっていてもよい。]
【0009】
このような構造を有する本発明の縮合環化合物は、環同士のπ共役平面性が良好であるとともに、縮合環の導入によって十分に低いLUMOを示すことができ、電子輸送性に優れた有機n型半導体として利用可能である。
【0010】
また、本発明の縮合環化合物は、Ar10を含む環構造に、置換基としてR13及びR14が結合しており、R13及びR14の少なくとも一方が、一部のCH部分が、例えば後述するように酸素原子等で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基である。そのため、R13及びR14のいずれか一方、又はR13及びR14によって形成される環構造が、一部にアルキル基を有するものとなる。更に、R11及びR12で表される構造の少なくとも一方が、式(2)で表される基である。この基は、フッ素原子、アルキル基、フルオロアルキル基、アルコキシ基又はフルオロアルコキシ基が置換した環状構造を有している。このような構造を有していることから、本発明の縮合環化合物は、溶媒への溶解性が向上したものとなる。そのため、本発明の縮合環化合物は、有機溶媒等の溶媒に対して優れた溶解性を示し、塗布法による有機薄膜の形成が容易であり、その結果、性能の優れた有機薄膜素子を形成することができる。
【0011】
上記本発明の縮合環化合物は、R13及びR14が互いに結合して、これらが結合している環と縮合する、芳香族炭素環又は複素環を形成していることが好ましい。こうすれば、Ar10及びこれと縮環している環からなる中央部分の共役構造が拡がり、更に良好な電子輸送性が得られる可能性がある。
【0012】
また、本発明の縮合環化合物においては、式(2)で表される基が、式(4)で表される基であると好ましい。これにより、縮合環化合物の電子輸送性及び有機溶媒に対する溶解性が更に向上する傾向にある。
【化3】


【化4】


[式(4)中、R21、R22、X21及びX22は、前記と同義であり、R41は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のフルオロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基又は炭素数1〜20のフルオロアルコキシ基を示し、Z41は、式(xi)、(xii)、(xiii)、(xiv)、(xv)、(xvi)、(xvii)、(xviii)及び(xix)で表される基又は原子のいずれかを示す。式(xvii)、式(xviii)及び式(xix)中、R81、R82、R83及びR84は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示し、R81とR82とは互いに結合して環を形成していてもよい。なお、式(xvii)及び(xviii)で表される基は、左右反転した2通りの結合様式があるが、そのいずれであってもよい。]
【0013】
上述した本発明の効果を更に良好に得る観点からは、Z41が、式(xii)で表される原子又は式(xvii)で表される基であると好ましく、X21及びX22が、酸素原子であると好ましい。また、X11及びX12が、酸素原子であると好ましい。特に、Z41が硫黄原子を含み、X21及びX22が酸素原子である場合は、分子間での硫黄原子と酸素原子の相互作用により、分子間配列がしやすくなり、電荷輸送性が向上する。
【0014】
本発明はまた、上記本発明の縮合環化合物を含む有機薄膜、並びにかかる有機薄膜を備える有機薄膜素子、特に有機薄膜トランジスタ及び有機太陽電池を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、優れた電子輸送性を有するとともに、溶媒への溶解性にも優れる有機n型半導体として利用可能な縮合環化合物を提供することが可能となる。また、このような縮合環化合物を含み、高い電子輸送性を安定して発揮できる有機薄膜、並びにかかる有機薄膜を備えており、実用性の高い有機薄膜トランジスタや有機太陽電池等の有機薄膜素子を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図2】第2実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図3】第3実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図4】第4実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図5】第5実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図6】第6実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図7】第7実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【図8】好適な実施形態に係る太陽電池の模式断面図である。
【図9】第1実施形態に係る光センサの模式断面図である。
【図10】第2実施形態に係る光センサの模式断面図である。
【図11】第3実施形態に係る光センサの模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、必要に応じて図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、図面中、同一の要素には同一の符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0018】
(縮合環化合物)
まず、好適な実施形態に係る縮合環化合物について説明する。本実施形態の縮合環化合物は、上記式(1)で表される構造を有する共役系化合物である。ここで、共役系化合物とは、分子の主骨格において、単結合と、不飽和結合、孤立電子対、ラジカル又は非結合性軌道とが交互に連なる構造を有しており、主骨格全体にわたって電子が非局在化している化合物をいう。縮合環化合物は、特にπ軌道の相互作用によるπ共役系化合物であると好適である。
【0019】
式(1)で表される縮合環化合物において、X11及びX12は、各々独立に、酸素原子、硫黄原子又は=C(A)で表される基を示し、Aは、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示し、二つのAは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0020】
11及びX12としては、酸素原子又は=C(A)で表される基が好ましく、酸素原子がより好ましい。また、X11又はX12が=C(A)で表される基の場合、LUMOを一層低くする観点から、Aの少なくとも一方、好ましくは両方が、電子吸引性の基であると好ましい。この場合、より具体的には、Aの少なくとも一方、好ましくは両方が、シアノ基、ニトロ基、アルデヒド基、アルカノイル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、水酸基又はハロゲン原子であると好ましく、シアノ基、ニトロ基又はハロゲン原子であるとより好ましく、シアノ基であると特に好ましい。アルキル基をその構造中に含む基である、アルカノイル基又はアルコキシカルボニル基におけるアルキル基としては、炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、炭素数1〜10のアルキル基が更に好ましい。
【0021】
式(1)で表される縮合環化合物において、Ar10で表される芳香族炭化水素基は、ベンゼン環又は縮合環から水素原子4個を除いた残りの原子団からなる基であると好ましい。縮合環としては、ナフタレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、ピレン環、ペリレン環、フルオレン環が挙げられる。芳香族炭化水素基の炭素数は、6〜60であると好ましく、6〜20であるとより好ましい。Ar10で表される芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環から水素原子4個を除いた残りの原子団からなる基が特に好ましい。
【0022】
芳香族炭化水素基は、置換基を更に有していてもよく、その場合、上述した好適な芳香族炭化水素基の炭素数には、置換基の炭素数は含まない。この芳香族炭化水素基が有する置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜12の飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜60のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルカノイル基、炭素数6〜60のアリールオキシ基、炭素数3〜60の複素環基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基が挙げられる。置換基としての飽和の炭化水素基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基が、不飽和の炭化水素基としては、ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、プロパルギル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基及び2−ブテニル基が挙げられる。また、置換基としてのアリール基としては、フェニル基、ナフチル基が、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基が、アルカノイル基としては、メタノイル基、エタノイル基、プロパノイル基、プロペノイル基、ベンゾイル基が、アリールオキシ基としては、フェニルオキシ基、炭素数1〜12のアルキル基を有するフェニルオキシ基が、複素環基としては、チエニル基、炭素数1〜12のアルキル基を有するチエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基が挙げられる。
【0023】
また、Ar10としての複素環基は、複素環式化合物から水素原子4個を除いた残りの原子団からなる基であると好ましい。なかでも、チオフェン環、チエノチオフェン環、フラン環、ピロール環及びピリジン環から水素原子4個を除いた残りの原子団からなる基が好ましく、チオフェン環、チエノチオフェン環から水素原子4個を除いた残りの原子団からなる基が更に好ましい。これらは、特徴的な電気的性質(例えば、電子輸送に適したLUMOレベル及び安定なキノイド構造をとりやすい性質)を示し、種々の電気的特性(例えば、高い電子輸送性)を発揮することが期待できる。複素環基の炭素数は、4〜60であると好ましく、4〜20であるとより好ましい。なお、複素環基としては、芳香族複素環基が好ましい。
【0024】
複素環基は、置換基を更に有していてもよい。この場合、上述した好適な複素環基の炭素数には、置換基の炭素数は含まない。置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜12の飽和若しくは不飽和の炭化水素基、炭素数6〜60のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルカノイル基、炭素数6〜60のアリールオキシ基、炭素数3〜60の複素環基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基が挙げられる。これらの置換基としては、芳香族炭化水素基の置換基として上述したものと同じ基が例示できる。
【0025】
式(1)中、R13及びR14は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示す。R13及びR14の少なくとも一方は、炭素数1〜30のアルキル基を示し、このアルキル基中の一部のCH部分は、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子、S=O、S(=O)又はN−Rに置換されていてもよく(Rは、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示す)、このアルキル基中の水素原子の一部又は全部がフッ素原子に置換されていてもよい。R13及びR14は、これらの原子又は基を示す代わりに、互いに結合して、これらが結合している環に縮合する芳香族炭素環又は複素環を形成していてもよい。これらの芳香族炭素環及び複素環は、置換基を有していてもよい。
【0026】
13及びR14が互いに結合して環を形成していない場合は、R13及びR14の少なくとも一方は、炭素数1〜30のアルキル基である。また、R13及びR14のうちのもう一方は、1価の基であると好ましい。この1価の基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のフルオロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のフルオロアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基又は炭素数1〜20のフルオロアルキルチオ基であることが好ましく、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数1〜20のフルオロアルキル基がより好ましく、炭素数3〜18のアルキル基又は炭素数3〜18のフルオロアルキル基が更に好ましい。R13及びR14をこれらの基にすることによって、縮合環化合物の有機溶媒への溶解性が向上する。
【0027】
また、R13及びR14が互いに結合して環を形成している場合、かかる環は、芳香族炭素環又は複素環であってもよい。溶解性を向上させる観点からは、R13及びR14が互いに結合してなる環は、置換基を有する芳香族炭素環又は置換基を有する複素環であると好ましい。置換基としては、上述したR13及びR14として好適な基と同様の基が好ましく、特に炭素数3〜18のアルキル基が好ましい。
【0028】
芳香族炭素環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、ピレン環、ペリレン環、フルオレン環が挙げられ、ベンゼン環が好ましい。
【0029】
複素環は、チオフェン環、チエノチオフェン環、フラン環、ピロール環及びピリジン環が挙げられ、チオフェン環、チエノチオフェン環が好ましい。
【0030】
上記の芳香族炭素環や複素環が置換基を有する場合の置換基としては、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のフルオロアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数1〜18のフルオロアルコキシ基、炭素数1〜18のアルキルチオ基又は炭素数1〜18のフルオロアルキルチオ基が例示され、炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜18のフルオロアルキル基が好ましく、炭素数3〜12のアルキル基又は炭素数3〜12のフルオロアルキル基が更に好ましく、炭素数3〜12のアルキル基が特に好ましい。これらの置換基にすることにより、縮合環化合物の有機溶媒への溶解性が向上する。

【0031】
上記式(1)で表される化合物は、式(6)で表される化合物であると好ましい。
【化5】


【化6】


[式(6)中、R11、R12、R13、R14、Ar11、Ar12、X11、X12、s及びtは、上記と同義であり、Z31は、式(xxxi)、(xxxii)、(xxxiii)、(xxxiv)、(xxxv)、(xxxvi)、(xxxvii)、(xxxviii)及び(xxxix)で表される基又は原子のいずれかを示す。式(xxxvii)、式(xxxviii)及び式(xxxix)中、R81、R82、R83及びR84は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示し、R81とR82とは互いに結合して環を形成していてもよい。なお、式(xxxvii)、(xxxviii)で表される基は、左右反転した2通りの結合様式があるが、そのいずれであってもよい。]
【0032】
31としては、式(xxxi)〜(xxxix)で表される基又は原子のうち、式(xxxi)、(xxxii)、(xxxiii)、(xxxvii)、(xxxviii)及び(xxxix)のいずれかで表される基又は原子が好ましく、式(xxxii)で表される原子又は(xxxvii)で表される基がより好ましく、式(xxxii)で表される原子が更に好ましい。Z31を含む環がチオフェン環である場合は、特徴的な電気的性質(例えば、電子輸送に適したLUMOレベル及び安定なキノイド構造をとりやすい性質)を示す。
【0033】
上記式(1)で表される化合物は、式(7)で表される化合物であることも好ましい。
【化7】


【化8】


[式(7)中、R11、R12、Ar10、Ar11、Ar12、X11、X12、s及びtは、上記と同義であり、Z32は、式(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)、(vi)、(vii)、(viii)及び(ix)で表される基又は原子のいずれかを示す。式(vii)、式(viii)及び式(ix)中、R71、R72、R73及びR74は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示し、R71とR72とは互いに結合して環を形成していてもよい。R33及びR34は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示す。なお、式(vii)、(viii)で表される基は、左右反転した2通りの結合様式があるが、そのいずれであってもよい。]
【0034】
式(7)中、Z32で表される基が、式(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)又は(vi)で表される基又は原子である場合は、R33及びR34の少なくとも一方が、上述したR13及びR14として好適な基と同様の基であると好ましい。一方、Z32で表される基が、式(vii)、(viii)又は(ix)で表される基である場合は、R33、R34、並びに式(vii)、(viii)又は(ix)で表される基中の置換基(R71、R72、R73及びR74)のうちの少なくとも1つが、上述したR13及びR14として好適な基と同様の基であると好ましい。これらの条件を満たすことで、縮合環化合物の溶媒への溶解性がより良好になる。
【0035】
32としては、式(i)〜(ix)で表される基のうち、式(i)、(ii)、(iii)、(vii)、(viii)及び(ix)のいずれかで表される基が好ましく、式(ii)及び(vii)のいずれかで表される基がより好ましく、式(vii)で表される基が更に好ましい。式(vii)で表される基の場合、R71及びR72の少なくとも一方、好ましくは両方が、各々独立に、炭素数1〜25のアルキル基、炭素数1〜25のフルオロアルキル基、炭素数1〜25のアルコキシ基、炭素数1〜25のフルオロアルコキシ基、炭素数1〜25のアルキルチオ基又は炭素数1〜25のフルオロアルキルチオ基であることが好ましく、炭素数1〜25のアルキル基又は炭素数1〜25のフルオロアルキル基であることがより好ましく、炭素数6〜20のアルキル基又は炭素数6〜20のフルオロアルキル基であることが更に好ましく、炭素数6〜12のアルキル基であることが特に好ましい。これらのアルキル基及びアルキル基をその構造中に含む基のアルキル基は、直鎖状、分岐状若しくは環状のいずれでもよい。これらの基にすることにより、縮合環化合物の溶媒への溶解性がより向上する。
【0036】
式(7)中、R33及びR34は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示す。R33及びR34の少なくとも一方、好ましくは両方が、各々独立に、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のフルオロアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数1〜18のフルオロアルコキシ基、炭素数1〜18のアルキルチオ基又は炭素数1〜18のフルオロアルキルチオ基であることが好ましく、炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜18のフルオロアルキル基であることがより好ましく、炭素数3〜12のアルキル基又は炭素数3〜12のフルオロアルキル基であることが更に好ましく、炭素数3〜12のアルキル基であることが特に好ましい。これらの基にすることにより、縮合環化合物の有機溶媒への溶解性がより向上する。
【0037】
上記式(1)、(6)又は(7)で表される化合物は、式(3)で表される化合物であると更に好ましい。
【化9】


【化10】


[式(3)中、R11、R12、Ar11、Ar12、X11、X12、Z31、Z32、R33、R34、s及びtは、前記と同義である。]
【0038】
式(1)、式(6)、式(7)又は式(3)中、Ar11及びAr12は、各々独立に、炭素数6以上の芳香族炭化水素基又は炭素数4以上の複素環基を示し、これらの基は置換基を有してもよい。s及びtは、各々独立に、0から6の整数を示し、0〜3の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましい。縮合環化合物の製造を容易化する観点からは、s及びtは同じであることが好ましい。なお、s及びtが2以上である場合、複数のAr11及びAr12は、それぞれ同一でも異なってもよい。
【0039】
Ar11及びAr12で表される芳香族炭化水素基とは、芳香族炭素環から結合に供される部位の水素原子を除いた残りの原子団から構成される基をいう。芳香族炭化水素基の炭素数は、6〜60であると好ましく、6〜20であるとより好ましい。芳香族炭素環には、ベンゼン環又は縮合環が含まれる。縮合環としては、例えば、ナフタレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、ピレン環、ペリレン環、フルオレン環が挙げられる。
【0040】
芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環、ペンタセン環、ピレン環又はフルオレン環から水素原子2個を除いた残りの原子団から構成される基が好ましい。なお、芳香族炭化水素基は、置換基を更に有していてもよい。この場合、上述した好適な芳香族炭化水素基の炭素数には、置換基の炭素数は含まない。なお、置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜12の飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜60のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルカノイル基、炭素数6〜60のアリールオキシ基、炭素数3〜60の複素環基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基が挙げられる。これらの置換基としては、Ar10で表される芳香族炭化水素基の置換基として上述したものと同じ基が例示できる。
【0041】
また、Ar11及びAr12で表される複素環基とは、複素環式化合物から結合に供される部位の水素原子を除いた残りの原子団から構成される基をいう。ここで、複素環式化合物とは、環式構造をもつ有機化合物のうち、環を構成する元素が炭素原子だけでなく、酸素、硫黄、窒素、リン、ホウ素、ケイ素等のヘテロ原子を環内に含むものをいう。
【0042】
複素環基の炭素数は、4〜60であると好ましく、4〜20であるとより好ましい。複素環基としては、例えば、チオフェン環、チオフェン環が2〜6個縮環した環(チエノチオフェン環、ジチエノチオフェン環等)、ベンゾチオフェン環、ベンゾジチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、チアゾール環、ピロール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環から水素原子2個を除いた残りの原子団から構成される基が好ましい。なかでも、チオフェン環、チオフェン環が2〜6個縮環した環(チエノチオフェン環、ジチエノチオフェン環等)から水素原子2個を除いた残りの原子団から構成される基が好ましく、チオフェン環、チエノチオフェン環から水素原子2個を除いた残りの原子団から構成される基がより好ましい。
【0043】
なお、複素環基は、置換基を更に有していてもよい。この場合、上述した好適な複素環基の炭素数には、置換基の炭素数は含まない。置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜12の飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜60のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルカノイル基、炭素数6〜60のアリールオキシ基、炭素数3〜60の複素環基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基が挙げられる。これらの置換基としては、Ar10で表される芳香族炭化水素基の置換基として上述したものと同じ基が例示できる。
【0044】
式(1)、式(6)又は式(3)で表される縮合環化合物において、Ar11及びAr12で表される基の少なくとも一つは、式(5)で表される基であると好適であり、両方が各々独立に式(5)で表される基であるとより好ましい。Ar11又はAr12としてこのような基を有することで、縮合環化合物の溶媒への溶解性が向上し、且つ、電気的特性を制御しやすくなる。
【化11】


【化12】

【0045】
式(5)中、Z51は、式(xxi)〜(xxix)で表される基又は原子のいずれかを示す。R51及びR52は、各々独立に、水素原子又は1価の基を示す。また、式(xxvii)、(xxviii)及び(xxix)中、R91、R92、R93及びR94は、各々独立に、水素原子又は1価の基を示し、R91とR92とは互いに結合して環を形成していてもよい。なお、式(xxvii)、(xxviii)で表される基は、左右反転した2通りの結合様式があるが、そのいずれであってもよい。Z51としては、式(xxii)で表される原子が好ましい。
【0046】
更に、式(1)、式(6)又は式(3)中、R11及びR12は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基であって、R11及びR12の少なくとも一方は、式(2)で表される基である。R11及びR12の両方が、式(2)で表される基であると好ましいが、その場合、それぞれ異なる構造を有していてもよい。ただし、縮合環化合物の製造を容易化する観点からは、R11及びR12の両方が式(2)で表される基であって、しかも同一の基であることがより好ましい。
【0047】
式(2)で表される基において、Ar21は、芳香族炭化水素基又は複素環基を示す。芳香族炭化水素基及び複素環基の定義は、上述したAr11及びAr12で示したものと同様である。
【0048】
Ar21としての芳香族炭化水素基は、ベンゼン環又は縮合環から水素原子3個を除いた残りの原子団からなる基であると好ましい。縮合環としては、ナフタレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、ピレン環、ペリレン環、フルオレン環が挙げられる。芳香族炭化水素基の炭素数は、6〜60であると好ましく、6〜20であるとより好ましい。この芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環から水素原子3個を除いた残りの原子団からなる基が特に好ましい。芳香族炭化水素基は、Ar11及びAr12の場合と同様の置換基を有していてもよい。
【0049】
また、Ar21としての複素環基は、複素環式化合物から水素原子3個を除いた残りの原子団からなる基であると好ましい。なかでも、チオフェン環、チエノチオフェン環、フラン環、ピロール環及びピリジン環から水素原子3個を除いた残りの原子団からなる基がより好ましく、チオフェン環、チエノチオフェン環から水素原子3個を除いた残りの原子団からなる基が更に好ましい。これらは、特徴的な電気的性質(例えば、電子輸送に適したLUMOレベル及び安定なキノイド構造をとりやすい性質)を示す。複素環基の炭素数は、4〜60であると好ましく、4〜20であるとより好ましい。なお、複素環基としては、芳香族複素環基が好ましい。また、複素環基は、Ar11及びAr12の場合と同様の置換基を有していてもよい。
【0050】
式(2)中、R21及びR22は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基であるが、R21及びR22の少なくとも一方、好ましくは両方が、各々独立に、フッ素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のフルオロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基又は炭素数1〜20のフルオロアルコキシ基である。縮合環化合物の溶媒への溶解性を向上する観点からは、R21及びR22の両方がこれらの基であると好ましい。更に、溶解性を一層高める観点からは、R21及びR22の少なくとも一方は、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数1〜20のフルオロアルキル基であると好ましく、炭素数5〜12のアルキル基であると特に好ましい。一方、式(2)で表される基の電子吸引性を高め、縮合環化合物のLUMOレベルを低くし、かつ、電子輸送性をより高めるという観点からは、R21及びR22は、フッ素原子を有している基が好ましい。
【0051】
また、式(2)中、X21及びX22は、各々独立に、酸素原子、硫黄原子又は=C(A)で表される基を示し、Aは、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示し、二つのAは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0052】
21及びX22としては、酸素原子又は=C(A)で表される基が好ましく、酸素原子がより好ましい。また、X21又はX22が=C(A)で表される基の場合、LUMOを一層低くする観点から、Aの少なくとも一方、好ましくは両方が、電子吸引性の基であると好ましい。具体的には、Aの少なくとも一方、好ましくは両方が、シアノ基、ニトロ基、アルカノイル基、アルコキシカルボニル基(−C(O)−ORで表される基(Rは水素原子以外の任意の有機基を示す。))、カルボキシル基、水酸基又はハロゲン原子であると好ましく、シアノ基、ニトロ基又はハロゲン原子であるとより好ましく、シアノ基であると特に好ましい。アルキル基をその構造中に含む基である、アルカノイル基又はアルコキシカルボニル基におけるアルキル基としては、炭素数1〜12のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜10のアルキル基が更に好ましい。
【0053】
式(2)で表される基としては、上記の式(4)で表される基が好ましい。こうすれば、縮合環化合物の溶解性が一層高められる傾向にある。式(4)中、R21、R22、X21及びX22は、式(2)の場合と同義である。R41は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のフルオロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基又は炭素数1〜20のフルオロアルコキシ基を示す。
【0054】
式(4)中、Z41は、式(xi)〜(xix)で表される基又は原子のいずれかを示す。式(xi)〜(xix)で表される基又は原子としては、それぞれ上記式(i)〜(ix)と同様の基又は原子が好適である。なかでも、Z41としては、式(xi)、(xii)、(xiii)、(xvii)、(xviii)、(xix)のいずれかで表される基又は原子が好ましく、式(xii)、(xiii)、(xvii)、(xix)のいずれかで表される基又は原子がより好ましく、式(xii)で表される原子又は(xvii)で表される基が更に好ましい。
【0055】
なお、本明細書中のハロゲン原子又は1価の基としては、それぞれ以下の原子や基が例示される。
【0056】
まず、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
【0057】
また、上述したR11、R12、A、R13、R14、R、R21、R22、R81、R82、R83、R84、R13、R14、R71、R72、R73、R74、R33、R34、R51、R52、R91、R92、R93、R94で表される1価の基としては、直鎖状若しくは分岐状の低分子鎖(例えば、炭素数が1〜20のもの)からなる飽和の炭化水素基、炭素数が1〜20の不飽和の炭化水素基、環構成原子数が3〜60である1価の環状基(この環状基は、単環でも縮合環でも、炭素環でも複素環でも、飽和でも不飽和でもよく、置換基を有していてもいなくてもよい)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルカノイルオキシ基、アミノ基、ヒドロキシアミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルカノイルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、1個以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基、アルコキシスルホニル基、アルキルスルホニル基、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基、カルボキシル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、アルカノイル基、アルコキシカルボニル基、および、これらが以下の置換基を有しているものが挙げられる。この置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜12の飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜60のアリール基、炭素数6〜60のアリールオキシ基、炭素数3〜60の複素環基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基が挙げられる。
【0058】
上記の1価の基のうち、アルキル基をその構造中に含む基である、アルコキシ基、アルカノイルオキシ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルカノイルアミノ基、アルコキシスルホニル基、アルキルスルホニル基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基又はアルカノイル基におけるアルキル基としては、炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、炭素数1〜10のアルキル基が更に好ましく、また、このアルキル基における水素原子の一部又は全部は1個以上のハロゲン原子で置換されたものも好ましい。なお、環構成原子数が3〜60である環状基としては、例えば、下記式で示される基が挙げられる。
【化13】

【0059】
このような1価の基のうち、飽和の炭化水素基としては、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基が挙げられ、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基が好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、3−メチルブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロドデシル基が挙げられる。これらアルキル基の水素原子の一部又は全部は1個以上のハロゲン原子で置換されてもよい。なお、アルキル基をその構造中に含む基(例えば、アルコキシ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシスルホニル基、アルキルスルホニル基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基)におけるアルキル基もこれらと同様である。アルキル基としては、炭素数1〜12のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜10のアルキル基が更に好ましい。
【0060】
不飽和の炭化水素基としては、ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、プロパルギル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基及び2−ブテニル基が挙げられる。
【0061】
アルカノイル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、イソブチリル基、バレリル基及びイソバレリル基等が挙げられる。アルカノイル基をその構造中に含む基(例えば、アルカノイルオキシ基、アルカノイルアミノ基)におけるアルカノイル基もこれらと同様である。なお、炭素数1のアルカノイル基とはホルミル基を指し、アルカノイル基をその構造中に含む基についても同様である。
【0062】
本明細書中の飽和の炭化水素基および不飽和の炭化水素基としては、上述の1価の基と同様の基が例示され、炭素数1〜12のアルキル基が好ましい。
【0063】
上述した構造を有する縮合環化合物としては、以下の式で表される化合物が挙げられる。下記式中のR00は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のフルオロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のフルオロアルコキシ基、炭素数6〜60のアリール基又は炭素数4〜60の複素環基を示す。R00としては、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、水素原子又は炭素数6〜12のアルキル基がより好ましい。式中に複数あるR00は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【化14】


【化15】


【化16】

【0064】
【化17】


【化18】


【化19】

【0065】
【化20】


【化21】


【化22】

【0066】
【化23】


【化24】

【0067】
(縮合環化合物の製造方法)
本実施形態の縮合環化合物は、どのような製造方法により製造されてもよいが、例えば、以下に示す製造方法によって製造されると好ましい。以下では、式(1)におけるR11及びR12の両方が式(2)で表される基であり、s及びtが0である場合の縮合環化合物の製造例について説明する。なお、下記で例示した製造方法における反応条件や反応試薬等は、例示したもの以外も選択可能である。
【0068】
まず、縮合環化合物の中間体(c)を、下記のスキームに示される反応により合成する。この反応では、式(a)及び(b)で表される出発原料を用い、これらを反応させて中間体(c)を得る。
【化25】

【0069】
式中、Xは、上述した式(3)中のX11又はX12と、ZはZ31と、Rは、式(vii)中のR71又はR72と同義である。これらは製造する縮合環化合物の構造に応じて選択する。
【0070】
V及びVは、各々独立に、反応して結合を生じる反応性基を示す。この反応性基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基、アリールアルキルスルホネート基、アルキルスタニル基、アリールスタニル基、アリールアルキルスタニル基、ホウ酸エステル残基、スルホニウムメチル基、ホスホニウムメチル基、ホスホネートメチル基、モノハロゲン化メチル基、ホウ酸残基(ジヒドロキシボリル基、−B(OH))、ホルミル基、ビニル基が挙げられる。なお、これらの基に含まれているアルキル構造は炭素数1〜6であると好ましく、また、これらの基に含まれているアリール構造は炭素数6〜20であると好ましい。複数あるV及びVは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。ホウ酸エステル残基とは、ホウ酸ジエステルから水酸基を除いた基であり、下記式で示される基が挙げられる。
【化26】

【0071】
上記の反応性基のうち、アルキル基をその構造中に含む基である、アルキルスルホネート基、アリールアルキルスルホネート基、アルキルスタニル基、アリールアルキルスタニル基におけるアルキル基としては、炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基が更に好ましい。また、アリール基をその構造中に含む基である、アリールスルホネート基、アリールアルキルスルホネート基、アリールスタニル基、アリールアルキルスタニル基におけるアリール基としては、炭素数6〜20のアリール基が好ましく、炭素数6〜10のアルキル基が更に好ましい。
【0072】
次に、得られた中間体(c)を用いて、下記スキームに示される化合物(d)との反応によって、化合物(e)を得る。
【化27】

【0073】
式中、R**は、式(4)中のR21及びR22と、Z**は式(4)中のZ41と同義であり、これらは製造する縮合環化合物の構造に応じて選択する。また、V**は、上記Vと同義である。
【0074】
そして、上記の反応後、得られた化合物(e)の保護基を外してカルボニル基を形成させることにより、式(3)で表される縮合環化合物(ここでは、Z32が式(vii)で表される基であり、s=t=0であるもの)が得られる。
【0075】
上述した縮合環化合物の製造において、反応を生じさせやすくするために、V、V及びV**は、各々独立に、ハロゲン原子、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基、アリールアルキルスルホネート基、アルキルスタニル基、ホウ酸エステル残基又はホウ酸残基であることが好ましい。
【0076】
上述した反応の工程は、必要に応じて反応性の高い基を保護するために、その基をその後の反応において不活性な基(保護基)に変換しておく工程、及び目的の反応終了後にかかる保護基を外す工程を含んでいてもよい。保護基は保護する基や用いる反応に応じて選択することができる。例えば、「活性水素を有する基に誘導される保護基」としては、この活性水素が、トリメチルシリル基(TMS)、トリエチルシリル基(TES)、tert−ブチルジメチルシリル基(TBS又はTBDMS)、トリイソプロピルシリル基(TIPS)、tert−ブチルジフェニルシリル基(TBDPS)で置換された基等が挙げられる。なお、活性水素を有する基としては、ヒドロキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルカノイルアミノ基、スルホ基等が挙げられる。アルキル基をその構造中に含む基である、アルキルアミノ基、アルカノイルアミノ基におけるアルキル基としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。
【0077】
また、上述した反応の各工程では、必要に応じて溶媒を用いることができる。用いられる溶媒としては、目的の反応を阻害しないものであることが好ましい。このような溶媒としては、例えば、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、アセトニトリル等のニトリル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上併用してもよい。なかでも、好適な溶媒としては、ジクロロメタンが挙げられる。
【0078】
更に、得られた縮合環化合物を、有機薄膜素子用の材料として用いる場合、その純度が素子の特性に影響を与えるため、得られた化合物を更に蒸留、昇華精製、再結晶等の方法で純化処理することが好ましい。
【0079】
(有機薄膜)
次に、好適な実施形態に係る有機薄膜について説明する。
【0080】
好適な実施形態の有機薄膜は、上述した縮合環化合物を含有するものである。なお、有機薄膜は、縮合環化合物の1種類を単独で含むものであってもよく、また縮合環化合物の2種類以上を含むものであってもよい。有機薄膜は、縮合環化合物以外に、電子輸送性又はホール輸送性を有する低分子化合物又は高分子化合物(電子輸送性材料、ホール輸送性材料)を含んでいてもよい。
【0081】
ホール輸送性材料としては、例えば、ピラゾリン、アリールアミン、スチルベン、トリアリールジアミン、オリゴチオフェン、ポリビニルカルバゾール、ポリシラン、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアリーレンビニレン、ポリチエニレンビニレン、及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0082】
電子輸送性材料としては、例えば、オキサジアゾール、アントラキノジメタン、ベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノン、テトラシアノアンスラキノジメタン、フルオレノン、ジフェニルジシアノエチレン、ジフェノキノン、8−ヒドロキシキノリンの金属錯体、ポリキノリン、ポリキノキサリン、ポリフルオレン、C60等のフラーレン、及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0083】
また、本実施形態の有機薄膜は、有機薄膜中で吸収した光により電荷を発生させるために、電荷発生材料を含んでいてもよい。電荷発生材料としては、例えば、アゾ化合物、ジアゾ化合物、無金属フタロシアニン化合物、金属フタロシアニン化合物、ペリレン化合物、多環キノン系化合物、スクアリリウム化合物、アズレニウム化合物、チアピリリウム化合物、C60等のフラーレン、及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0084】
更に、有機薄膜は、種々の機能を発現させるために必要な材料を含んでいてもよい。
このような材料としては、例えば、吸収した光により電荷を発生させる機能を増感するための増感剤、安定性を増すための安定化剤、紫外(UV)光を吸収するためのUV吸収剤が挙げられる。
【0085】
また、有機薄膜は、機械的特性を高めるため、上述した各成分として例示した化合物以外の高分子材料を、高分子バインダーとして含んでいてもよい。高分子バインダーとしては、電子輸送性又はホール輸送性を極度に阻害しないものが好ましく、また可視光に対する吸収が強くないものが好ましい。
【0086】
高分子バインダーとしては、例えば、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサン、及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0087】
本実施形態の有機薄膜の製造方法としては、例えば、縮合環化合物のほか、必要に応じて混合する電子輸送性材料又はホール輸送性材料、高分子バインダーや溶媒を含む溶液を用いた成膜による方法が挙げられる。また、縮合環化合物が昇華性を有する場合は、真空蒸着法によって有機薄膜を形成することもできる。
【0088】
溶液による成膜を行う場合、溶液に用いる溶媒としては、縮合環化合物や、混合する電子輸送性材料又はホール輸送性材料、高分子バインダーを溶解させ得るものであればよい。例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、デカリン、ビシクロヘキシル、n−ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン等の炭化水素、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテルを用いることができる。縮合環化合物は、化合物の構造や分子量にもよるが、これらの溶媒に0.1質量%以上溶解させることができる。
【0089】
成膜方法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法、ノズルコート法及びキャピラリーコート法等の塗布法を用いることができる。なかでも、スピンコート法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法、ノズルコート法及びキャピラリーコート法が好ましい。
【0090】
有機薄膜の厚さ(膜厚)は、通常、1nm〜100μmであり、2nm〜1000nmであることが好ましく、5nm〜500nmであることが更に好ましく、20nm〜200nmであることが特に好ましい。
【0091】
また、有機薄膜は、縮合環化合物が配向したものであると、縮合環化合物の主鎖又は側鎖が一方向に並ぶので、更に高い電荷移動度が得られる傾向にある。そのため、有機薄膜を製造する工程には、縮合環化合物を配向させる工程が含まれていてもよい。
【0092】
縮合環化合物を配向させる方法としては、液晶の配向手法として知られている方法を用いることができる。なかでも、ラビング法、光配向法、シェアリング法(ずり応力印加法)や引き上げ塗布法が、配向手法として簡便且つ有用であるので好ましく、ラビング法、シェアリング法がより好ましい。
【0093】
有機薄膜を製造する工程は、成膜後にアニール処理をする工程を更に含んでいてもよい。この工程により、縮合環化合物間の相互作用が促進される等、有機薄膜の膜質が改善され、電子移動度又はホール移動度が一層向上する。アニール処理の処理温度は、50℃から縮合環化合物のガラス転移温度(Tg)の間の温度が好ましく、(Tg−30℃)からTgの間の温度がより好ましい。アニール処理する時間は、1分から10時間が好ましく、10分から1時間がより好ましい。アニール処理の雰囲気は、真空又は不活性ガス雰囲気が好ましい。
【0094】
有機薄膜は、特に優れた電子輸送性を発揮し得ることから、電極から注入された電荷や、光吸収により発生した電荷を輸送制御することができ、その特性により、有機薄膜トランジスタ、有機光電変換素子(有機太陽電池、光センサ等)等の有機薄膜素子に用いることができる。有機薄膜をこれらの有機薄膜素子に用いる場合は、配向処理によって縮合環化合物が配向されていると、より電荷輸送性が向上する傾向にある。
【0095】
(有機薄膜素子)
次に、好適な実施形態に係る有機薄膜素子について説明する。上述した縮合環化合物を含む有機薄膜を適用した有機薄膜素子の好適例としては、有機薄膜トランジスタ及び有機光電変換素子が挙げられる。以下、有機薄膜トランジスタ、並びに、有機光電変換素子の例である太陽電池及び光センサについて説明する。
【0096】
まず、有機薄膜トランジスタは、例えば、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となり縮合環化合物を含む有機薄膜からなる有機薄膜層(活性層)、電流経路を通る電流量を制御するゲート電極を備えた構造を有する。このような有機薄膜トランジスタとしては、電界効果型、静電誘導型が例示される。
【0097】
電界効果型有機薄膜トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となり縮合環化合物を含む有機薄膜層(活性層)、電流経路を通る電流量を制御するゲート電極、並びに、活性層とゲート電極との間に配置される絶縁層を備えることが好ましい。特に、ソース電極及びドレイン電極が、縮合環化合物を含む活性層に接して設けられており、更に活性層に接した絶縁層を挟んでゲート電極が設けられていることが好ましい。
【0098】
静電誘導型有機薄膜トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となり縮合環化合物を含有する有機薄膜層(活性層)、並びに電流経路を通る電流量を制御するゲート電極を有しており、ゲート電極が活性層中に設けられていることが好ましい。特に、ソース電極、ドレイン電極及び活性層中に設けられたゲート電極が、縮合環化合物を含有する活性層に接して設けられていることが好ましい。ゲート電極の構造としては、ソース電極からドレイン電極へ流れる電流経路が形成され、かつゲート電極に印加した電圧で電流経路を流れる電流量が制御できる構造であればよく、例えば、くし形電極が挙げられる。
【0099】
図1は、第1実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図1に示す有機薄膜トランジスタ100は、基板1と、基板1上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6を覆うようにして基板1上に形成された活性層2と、活性層2上に形成された絶縁層3と、ソース電極5とドレイン電極6との間の絶縁層3の領域を覆うように絶縁層3上に形成されたゲート電極4と、を備えるものである。
【0100】
図2は、第2実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図2に示す有機薄膜トランジスタ110は、基板1と、基板1上に形成されたソース電極5と、ソース電極5を覆うようにして基板1上に形成された活性層2と、ソース電極5と所定の間隔を持って活性層2上に形成されたドレイン電極6と、活性層2及びドレイン電極6上に形成された絶縁層3と、ソース電極5とドレイン電極6との間の絶縁層3の領域を覆うように絶縁層3上に形成されたゲート電極4と、を備えるものである。
【0101】
図3は、第3実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図3に示す有機薄膜トランジスタ120は、基板1と、基板1上に形成された活性層2と、活性層2上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6を一部覆うようにして活性層2上に形成された絶縁層3と、ソース電極5が下部に形成されている絶縁層3の領域とドレイン電極6が下部に形成されている絶縁層3の領域とをそれぞれ一部覆うように、絶縁層3上に形成されたゲート電極4と、を備えるものである。
【0102】
図4は、第4実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図4に示す有機薄膜トランジスタ130は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域を一部覆うように絶縁層3上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6を一部覆うように絶縁層3上に形成された活性層2と、を備えるものである。
【0103】
図5は、第5実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図5に示す有機薄膜トランジスタ140は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域を一部覆うように絶縁層3上に形成されたソース電極5と、ソース電極5を一部覆うようにして絶縁層3上に形成された活性層2と、ゲート電極4が下部に形成されている活性層2の領域を一部覆うように、ソース電極5と所定の間隔を持って絶縁層3上に形成されたドレイン電極6と、を備えるものである。
【0104】
図6は、第6実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図6に示す有機薄膜トランジスタ150は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域を覆うように形成された活性層2と、ゲート電極4が下部に形成されている活性層2の領域を一部覆うように絶縁層3上に形成されたソース電極5と、ゲート電極4が下部に形成されている活性層2の領域を一部覆うように、ソース電極5と所定の間隔を持って絶縁層3上に形成されたドレイン電極6と、を備えるものである。
【0105】
図7は、第7実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(静電誘導型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。図7に示す有機薄膜トランジスタ160は、基板1と、基板1上に形成されたソース電極5と、ソース電極5上に形成された活性層2と、活性層2上に所定の間隔を持って複数形成されたゲート電極4と、ゲート電極4の全てを覆うようにして活性層2上に形成された活性層2a(活性層2aを構成する材料は、活性層2と同一でも異なっていてもよい)と、活性層2a上に形成されたドレイン電極6と、を備えるものである。
【0106】
第1〜第7実施形態に係る有機薄膜トランジスタにおいては、活性層2及び/又は活性層2aは、上述した実施形態の縮合環化合物を含有しており、ソース電極5とドレイン電極6の間の電流通路(チャネル)となる。また、ゲート電極4は、電圧を印加することにより活性層2及び/又は活性層2aにおける電流通路(チャネル)を通る電流量を制御する。
【0107】
上述した形態の電界効果型有機薄膜トランジスタは、公知の方法、例えば、特開平5−110069号公報に記載の方法により製造することができる。また、静電誘導型有機薄膜トランジスタは、公知の方法、例えば、特開2004−006476号公報に記載の方法により製造することができる。
【0108】
基板1の材質は、有機薄膜トランジスタとしての特性を阻害しなければよい。基板1としては、例えば、ガラス基板、フレキシブルなフィルム基板及びプラスチック基板を用いることができる。第1の電極7aが透明又は半透明である場合、基板1も透明又は半透明であることが好ましい。
【0109】
活性層2を形成する際には、縮合環化合物が有機溶媒に可溶性を有することが、製造上有利であり好ましい。その場合、上記で説明したような、溶液を用いた塗布による有機薄膜の製造方法を適用して、活性層2となる有機薄膜を形成することができる。
【0110】
活性層2に接した絶縁層3としては、電気の絶縁性が高い材料から構成されるものであればよく、この材料としては公知のものを用いることができる。例えば、SiOx、SiNx、Ta、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、有機ガラス及びフォトレジストが挙げられる。低電圧化の観点から、絶縁層3は、誘電率の高い材料であることが好ましい。
【0111】
絶縁層3の上に活性層2を形成する場合は、絶縁層3と活性層2の界面特性を改善するために、絶縁層3の表面をシランカップリング剤等の表面処理剤で処理して表面の改質を行った後に、活性層2を形成することも可能である。表面処理剤としては、例えば、炭素数6〜20のアルキルクロロシラン、炭素数6〜20のアルキルアルコキシシラン、フッ素化アルキルクロロシラン、フッ素化アルキルアルコキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等のシリルアミン化合物が挙げられる。表面処理剤で処理する前には、絶縁層3の表面をオゾンUVやOプラズマで処理しておくことも可能である。
【0112】
また、有機薄膜トランジスタを作製した後には、素子を保護するために、有機薄膜トランジスタ上に保護膜を形成することが好ましい。これにより、有機薄膜トランジスタを大気から遮断することができ、有機薄膜トランジスタの特性の低下を抑えることが可能となる。また、有機薄膜トランジスタの上に駆動する表示デバイスを形成する場合に、保護膜によって、表示デバイスの製造工程における有機薄膜トランジスタへの影響を低減することができる。
【0113】
保護膜を形成する方法としては、例えば、有機薄膜トランジスタを、UV硬化樹脂、熱硬化樹脂又は無機のSiONx膜でカバーする方法が挙げられる。大気との遮断を効果的に行うためには、有機薄膜トランジスタを作製してから保護膜を形成するまでの工程を、大気に曝すことなく(例えば、乾燥した窒素雰囲気中、真空中で)行うことが好ましい。
【0114】
次に、有機光電変換素子の好適な実施形態について説明する。有機光電変換素子の代表的なものとしては、上記のように、太陽電池や光センサがある。
【0115】
図8は、好適な実施形態の太陽電池を示す模式断面図である。図8に示す太陽電池200は、基板1と、基板1上に形成された第1の電極7aと、第1の電極7a上に形成された縮合環化合物を含有する有機薄膜からなる有機薄膜層(活性層2)と、活性層2上に形成された第2の電極7bと、を備えるものである。
【0116】
太陽電池200においては、第1の電極7a及び第2の電極7bの一方に透明又は半透明の電極を用いる。電極材料としては、アルミニウム、金、銀、銅、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属や、それらの半透明膜、透明導電膜を用いることができる。電極材料は、高い開放電圧を得るために、第1の電極7aと第2の電極7bとの仕事関数の差が大きくなるように選ばれることが好ましい。また、活性層2中には光感度を高めるために電荷発生剤、増感剤等を添加してもよい。基板1としては、シリコン基板、ガラス基板、プラスチック基板等を用いることができる。
【0117】
図9は、第1実施形態に係る光センサを示す模式断面図である。図9に示す光センサ300は、基板1と、基板1上に形成された第1の電極7aと、第1の電極7a上に形成された縮合環化合物を含有する有機薄膜からなる有機薄膜層(活性層2)と、活性層2上に形成された電荷発生層8と、電荷発生層8上に形成された第2の電極7bと、を備えるものである。
【0118】
また、図10は、第2実施形態に係る光センサの模式断面図である。図10に示す光センサ310は、基板1と、基板1上に形成された第1の電極7aと、第1の電極7a上に形成された電荷発生層8と、電荷発生層8上に形成された縮合環化合物を含有する有機薄膜からなる有機薄膜層(活性層2)と、活性層2上に形成された第2の電極7bと、を備えるものである。
【0119】
更に、図11は、第3実施形態に係る光センサの模式断面図である。図11に示す光センサ320は、基板1と、基板1上に形成された第1の電極7aと、第1の電極7a上に形成された縮合環化合物を含有する有機薄膜からなる活性層2と、活性層2上に形成された第2の電極7bと、を備えるものである。
【0120】
第1〜第3実施形態に係る光センサにおいては、第1の電極7a及び第2の電極7bの一方に透明又は半透明の電極を用いる。電極材料としては、アルミニウム、金、銀、銅、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属又はそれらの半透明膜、透明導電膜を用いることができる。電荷発生層8は光を吸収して電荷を発生する層である。また、活性層2中には、光感度を高めるためにキャリア発生剤、増感剤等を添加してもよい。更に、基板1としては、シリコン基板、ガラス基板、プラスチック基板等を用いることができる。
【0121】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【実施例】
【0122】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0123】
[測定条件]
まず、以下の合成例及び実施例において行った各種の分析等の条件を示す。すなわち、まず、核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、日本電子株式会社(JEOL)製のJNM−270(H測定時、270MHz)又は同社製のJMNLA−600(19F測定時、600MHz)を用いて測定した。ケミカルシフトは百万分率(ppm)で表している。内部標準0ppmには、テトラメチルシラン(TMS)を用いた。結合定数(J)は、ヘルツで示しており、略号s、d、t、q、m及びbrは、それぞれ、一重線(singlet)、二重線(doublet)、三重線(triplet)、四重線(quartet)、多重線(multiplet)及び広幅線(broad)を表す。
【0124】
ガスクロマトグラフ−質量分析(GC−MS)は、株式会社島津製作所製のGCMS−QP−5050Aを用い、電子イオン化(EI)法、直接試料導入(DI)法により測定を行った。カラムクロマトグラフィー分離におけるシリカゲルは、関東化学株式会社製の商品名Silicagel 60N(40〜50μm)を用いた。なお、全ての化学物質は、試薬級であり、和光純薬工業株式会社、東京化成工業株式会社、関東化学株式会社、ナカライテスク株式会社、シグマアルドリッチジャパン株式会社、又はダイキン化成品株式会社より購入した。
【0125】
[実施例1]
まず、目的とする化合物の原料となる中間体を、下記のスキーム1に従って、化合物(23a)を出発原料に用いて合成した。以下に詳細について説明する。
【化28】

【0126】
<化合物Aの合成>
式(23a)で表される化合物A−1を、文献(J.Chem.Soc.Perkin Trans 1.Organic and Bio-Organic Chemistry 1992,21,2985-2988)に記載の方法で合成した。次いで、300mLの三口フラスコに化合物A−1(1.00g,6.58mol)、フッ素化剤「Selectfluor(登録商標)」(5.60g,15.8mol)を入れ、THF(65mL)を加えて溶かした。そこへテトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド(TBAH)(10質量%メタノール溶液)(3.76g,14.5mol)を加え、0℃で12時間撹拌した。溶媒を減圧留去して、水を加え、水層を酢酸エチルで抽出した。次に有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧濃縮した。得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=3/1(体積比))で精製し、上記式(23b)で表される化合物A−2(0.934g,収率75%)を淡黄色固体として得た。
【0127】
200mLの三口フラスコに、化合物A−2(1.97g,10.48mmol)を入れ、N,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)(50mL)を加え溶かし、更に2−クロロエタノール(3.37g,41.91mmol)を加えた。そこへDMF(50mL)に溶かしたカリウムtert−ブトキシドを−60℃で滴下した。滴下終了後、室温で4時間撹拌し、水を加えて反応を停止した。次に、水層を酢酸エチルで抽出し、水で洗ってから有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ別し、減圧濃縮した。得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=3/1(体積比))で精製し、上記式(24)で表される化合物A−3(1.58g、収率55%)を白色固体として得た。
【0128】
50mLの三口フラスコに、化合物A−3(500mg,1.81mmol)を入れ、THF(18mL)を加え溶かした。そこへn−ブチルリチウム(1.58M,2.29mL,3.62mmol)を−78℃で加えた。0.5時間撹拌した後、塩化トリブチルスズ(1.09mL,3.98mmol)を加え、徐々に室温まで昇温した。1時間後、水を加えて反応を停止した。水層を酢酸エチルで抽出し、水で洗ってから有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させて、ろ別し、減圧濃縮した。得られた濃縮物をアルミナカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=10/1(体積比))で精製し、上記式(25)で表される化合物A(1.02g、収率99%)を無色液体として得た。
【0129】
<化合物Bの合成>
加熱乾燥したナスフラスコに、2,5−ジブロモ−3,4−チオフェンカルボン酸塩化物(407mg,1.00mmol)、及び、ジクロロメタン(10mL)を入れた。ナスフラスコ内の気体を窒素で置換し、0℃に冷却した後塩化アルミニウム(533mg,4.00mmol)を加えた。1,2−ブチルベンゼン(228mg,1.20mmol)のジクロロメタン溶液(2mL)を加え、0℃で反応させた。3時間後、氷に反応混合物を加えクロロホルムで抽出した。有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ減圧濃縮した。シリカゲルカラム(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=10/1(体積比))で精製し、式(26)で表される化合物B(240mg,収率50%)を淡黄色固体として得た。得られた化合物Bの分析結果及び化学式は以下の通りである。
TLC R=0.5(展開溶媒:ヘキサン)
H NMR(400MHz,CDCl):δ8.07(s,2H),2.76(t,4H,J=7.9Hz),1.62(m,4H),1.45(m,4H),0.97(t,6H,J=7.3Hz)
GC−MS(EI):m/z=484(M).
【化29】

【0130】
<化合物Cの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に、化合物B(58mg,0.12mmol)、化合物A(150mg,0.27mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(25mg,0.02mmol)、及び、トルエン(1mL)を入れた後、試験管内の気体を窒素で置換し、15時間還流させた。反応液をセライト濾過後、減圧濃縮した。ゲル浸透クロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)で精製を行い、中間体である黄色固体(104mg,収率99%)を得た。ナスフラスコに得られた黄色固体、テトラヒドラフラン(2mL)、及び、濃硫酸(5mL)を入れた後、60℃に加熱した。12時間後、室温まで降温し、氷に反応混合物を加えてクロロホルムで抽出した。得られた有機層をセライト濾過後、減圧濃縮した。ゲル浸透クロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)で精製し、式(27)で表される化合物C(71mg,収率86%)を黄色固体として得た。得られた化合物Cの分析結果及び化学式は以下の通りである。
NMR(400MHz,CDCl):δ8.08(s,2H),8.05(s,2H),2.80(t,4H,J=7.9Hz),1.67(m,4H),1.47(m,4H),0.99(t,6H,J=7.3Hz)
DI−MS(EI):m/z=698(M).
【化30】

【0131】
[実施例2]
<化合物Dの合成>
加熱乾燥したナスフラスコに、2,5−ジブロモ−3,4−チオフェンカルボン酸塩化物(329mg,1.00mmol)、及び、ジクロロメタン(10mL)を入れた。ナスフラスコ内の気体を窒素で置換し、0℃に冷却した後塩化アルミニウム(533mg,4.00mmol)を加えた。1,2−ヘキシルベンゼン(296mg,1.20mmol)のジクロロメタン溶液(2mL)を加え、0℃で反応させた。3時間後、氷に反応混合物を加えクロロホルムで抽出した。有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ減圧濃縮した。シリカゲルカラム(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=10/1(体積比))で精製し、式(28)で表される化合物D(398mg,収率74%)を淡黄色固体として得た。得られた化合物Dの分析結果及び化学式は以下の通りである。
TLC R=0.5(展開溶媒:ヘキサン)
H NMR(400MHz,CDCl):δ8.06(s,2H),2.74(t,4H,J=7.9Hz),1.66(m,4H),1.33(m,12H),0.90(t,6H,J=7.3Hz)
GC−MS(EI):m/z=540(M).
【化31】

【0132】
<化合物Eの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に、化合物D(92mg,0.17mmol)、化合物A(200mg,0.35mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(25mg,0.02mmol)、及び、トルエン(1mL)を入れた後、試験管内の気体を窒素で置換し、15時間還流させた。反応液をセライト濾過後、減圧濃縮した。ゲル浸透クロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)で精製を行い、中間体である黄色固体(137mg,収率86%)を得た。ナスフラスコに得られた黄色固体、テトラヒドラフラン(2mL)、濃硫酸(5mL)を入れた後、60℃に加熱した。12時間後、室温まで降温し、氷に反応混合物を加えクロロホルムで抽出した。得られた有機層をセライト濾過後、減圧濃縮した。ゲル浸透クロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)で精製し、式(29)で表される化合物E(103mg,収率93%)を黄色固体として得た。得られた化合物Eの分析結果及び化学式は以下の通りである。
NMR(400MHz,CDCl):δ8.08(s,2H),8.05(s,2H),2.79(t,4H,J=7.9Hz),1.66(m,4H),1.34(m,12H),0.91(t,6H,J=7.3Hz)
DI−MS(EI):m/z=754(M).
【化32】

【0133】
[実施例3]
<化合物Fの合成>
加熱乾燥したナスフラスコに、2,5−ジブロモ−3,4−チオフェンカルボン酸塩化物(812mg,2.21mmol)、及び、ジクロロメタン(20mL)を入れた。ナスフラスコ内の気体を窒素で置換し、0℃に冷却した後、塩化アルミニウム(1.18g,8.85mmol)を加えた。1,2−ドデシルベンゼン(1.7g,4.10mmol)のジクロロメタン溶液(20mL)を加え、0℃で反応させた。3時間後、氷に反応混合物を加えクロロホルムで抽出した。得られた有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ減圧濃縮した。シリカゲルカラム(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=10/1(体積比))で精製し、式(30)で表される化合物F(1.06mg,収率68%)を黄褐色オイルとして得た。
TLC R=0.4(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=10/1(体積比))
H NMR(400MHz,CDCl):δ8.06(s,2H),2.74(t,4H,J=7.9Hz),1.66(m,4H),1.33(m,12H),0.90(t,6H,J=7.3Hz)
DI−MS(EI):m/z=708(M).
【化33】

【0134】
<化合物Gの合成>
加熱乾燥した蓋付き試験管に、化合物F(130mg,0.18mmol)、化合物A(240mg,0.42mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(25mg,0.02mmol)、及び、トルエン(2mL)を入れた後、試験管内の気体を窒素で置換し、15時間還流させた。反応液をセライト濾過後、減圧濃縮した。ゲル浸透クロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)で精製を行い、中間体である黄色固体(83mg,収率69%)を得た。ナスフラスコに得られた黄色固体、テトラヒドラフラン(2mL)、濃硫酸(5mL)を入れた後、60℃に加熱した。12時間後、室温まで降温し、氷に反応混合物を加えクロロホルムで抽出した。得られた有機層をセライト濾過後、減圧濃縮した。ゲル浸透クロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)で精製し、式(31)で表される化合物G(30mg,収率43%)を黄色固体として得た。得られた化合物Gの分析結果及び化学式は以下の通りである。
NMR(400MHz,CDCl):δ8.08(s,2H),8.05(s,2H),2.79(t,4H,J=7.9Hz),1.65(m,4H),1.15(m,42H)
MALDI−TOF MASS:m/z=923(M).
【化34】

【0135】
[実施例4]
<有機薄膜素子1の作製及びトランジスタ特性の評価>
ゲート電極となる高濃度にドープされたp型シリコン基板の表面に、絶縁層となるシリコン酸化膜を熱酸化により、300nm形成したものを準備した。この基板の上に、リフトオフ法によりチャネル幅38mm、チャネル長5μmの櫛形ソース電極及びドレイン電極を形成した。電極付き基板をアセトンで10分間、次いでイソプロピルアルコールで10分間超音波洗浄した後、オゾンUVを30分間照射し表面を洗浄した。洗浄した基板を、ヘキサメチルジシラザン(HMDS):クロロホルムに室温で浸漬した後、クロロホルムで超音波洗浄し、HMDSで表面処理された基板を得た。
【0136】
また、実施例1で合成した化合物Cを用い、クロロホルムの1質量%溶液を調製し、塗布液とした。この化合物Cの塗布液を、上記の表面処理した基板上に滴下し、スピンコート法により化合物Cの有機薄膜を成膜し、有機薄膜素子1を作製した。この際、化合物Cは、溶媒であるクロロホルムに十分に溶解し、有機薄膜を良好に成膜することができた。
【0137】
得られた有機薄膜素子1に対し、半導体パラメータアナライザー(keithley社製、商品名「4200−SCS」)を用い、真空中でゲート電圧Vgを0〜80V、ソース−ドレイン間電圧Vsdを0〜80Vの範囲で変化させて、有機トランジスタ特性を測定したところ、良好なn型半導体のId−Vg特性が得られた。このときの移動度は0.016cm/Vsであり、しきい値電圧が15Vであり、オン/オフ比が10と良好であった。このことから、化合物Cを用いた有機薄膜素子1は、n型有機トランジスタとして有効に機能することが確認され、また化合物Cは電子輸送性に優れた有機n型半導体として利用可能であることが確認された。
【0138】
[実施例5]
<有機薄膜素子2の作製及びトランジスタ特性の評価>
実施例4と同様にして、化合物Cの替わりに化合物Eを用いて、有機薄膜素子2を作製した。この際、化合物Eは、溶媒であるクロロホルムに十分に溶解し、有機薄膜を良好に成膜することができた。
【0139】
得られた有機薄膜素子2に対し、半導体パラメータアナライザー(keithley社製、商品名「4200−SCS」)を用い、真空中でゲート電圧Vgを0〜80V、ソース−ドレイン間電圧Vsdを0〜80Vの範囲で変化させ、有機トランジスタ特性を測定したところ、良好なn型半導体のId−Vg特性が得られた。このときの移動度は0.014cm/Vsであり、しきい値電圧が10Vであり、オン/オフ比が10と良好であった。このことから、化合物Eを用いた有機薄膜素子1は、n型有機トランジスタとして有効に機能することが確認され、また化合物Eは電子輸送性に優れた有機n型半導体として利用可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0140】
1…基板、2…活性層、2a…活性層、3…絶縁層、4…ゲート電極、5…ソース電極、6…ドレイン電極、7a…第1の電極、7b…第2の電極、8…電荷発生層、100…第1実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、110…第2実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、120…第3実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、130…第4実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、140…第5実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、150…第6実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、160…第7実施形態に係る有機薄膜トランジスタ、200…実施形態に係る太陽電池、300…第1実施形態に係る光センサ、310…第2実施形態に係る光センサ、320…第3実施形態に係る光センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される、縮合環化合物。
【化1】


【化2】


[式(1)中、R11及びR12は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示し、R11及びR12の少なくとも一方は、式(2)で表される基である。Ar10、Ar11及びAr12は、各々独立に、炭素数6以上の芳香族炭化水素基又は炭素数4以上の複素環基を示し、これらは置換基を有してもよい。s及びtは、各々独立に、0から6の整数を示す。X11及びX12は、各々独立に、酸素原子、硫黄原子又は=C(A)で表される基を示し、Aは、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示し、二つのAは互いに同一でも異なっていてもよい。R13及びR14は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示し、R13及びR14の少なくとも一方は、炭素数1〜30のアルキル基を示し、該アルキル基中の一部の炭素原子は酸素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子、S=O、S(=O)又はN−Rに置換されていてもよく(Rは、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示す)、該アルキル基中の水素原子の一部又は全部がフッ素原子に置換されていてもよい。R13及びR14は、前記原子又は基を示す代わりに、互いに結合して、これらが結合している環と縮合する、芳香族炭素環又は複素環を形成していてもよい。
式(2)中、Ar21は、芳香族炭化水素基又は複素環基を示し、これらは置換基を有していてもよい。R21及びR22は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示し、R21及びR22の少なくとも一方は、フッ素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のフルオロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基又は炭素数1〜20のフルオロアルコキシ基である。X21及びX22は、各々独立に、酸素原子、硫黄原子又は=C(A)で表される基を示し、Aは、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示し、二つのAは互いに同一でも異なっていてもよい。]
【請求項2】
13及びR14は、互いに結合して、これらが結合している環と縮合する、芳香族炭素環又は複素環を形成している、請求項1記載の縮合環化合物。
【請求項3】
式(2)で表される基が、式(4)で表される基である、請求項1又は2記載の縮合環化合物。
【化3】


【化4】


[式(4)中、R21、R22、X21及びX22は、前記と同義であり、R41は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のフルオロアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基又は炭素数1〜20のフルオロアルコキシ基を示し、Z41は、式(xi)、(xii)、(xiii)、(xiv)、(xv)、(xvi)、(xvii)、(xviii)及び(xix)で表される基又は原子のいずれかを示す。式(xvii)、式(xviii)及び式(xix)中、R81、R82、R83及びR84は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基を示し、R81とR82とは互いに結合して環を形成していてもよい。]
【請求項4】
41が、式(xii)で表される基又は前記式(xvii)で表される基である、請求項3記載の縮合環化合物。
【請求項5】
前記X11及び前記X12が、酸素原子である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の縮合環化合物。
【請求項6】
前記X21及び前記X22が、酸素原子である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の縮合環化合物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の縮合環化合物を含む、有機薄膜。
【請求項8】
請求項7記載の有機薄膜を備える、有機薄膜素子。
【請求項9】
請求項7記載の有機薄膜を備える、有機薄膜トランジスタ。
【請求項10】
請求項7記載の有機薄膜を備える、有機太陽電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−51874(P2012−51874A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164377(P2011−164377)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】