縮合5員環を有する三重項発光体
本発明は、発光化合物に関し、特に電気光学用途に適した三重項発光体に関する。本発明による化合物は、中間の6員環によって、5員環又は6員環に連結する1つの5員環の主鎖を有する、金属、有利にはIrの有機金属錯体である。これらの化合物は、少なくとも1つの5員又は6員環構造内の原子又は基の適合によってUV〜NIR範囲の発光への適合に適している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発光化合物に関し、特に電気光学、例えば、エレクトロルミネセンス用途に有用なリン光性化合物に関する。本発明による化合物の使用は、例えば、OLED中の層としての使用であり、又は電流によって励起された時に可視光を放射するためのレーザー用途であり、並びに光起電力素子において光吸収するための層を形成することである。
【0002】
さらに詳細には、本発明による化合物は三重項発光体であり、これは電気エネルギーから放射への高度に効率的な変換を用いる。この変換は、金属原子、有利にはIrを錯化する有機化合物において生じる。
【0003】
従来技術
第1の利用可能な三重項発光体の1つは、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy)3)(Grushinら、Chem. Communications 1494-1495 (2001年))である。この化合物において、2つの6員芳香環が1つのσ結合によって結合されており、この1つが金属原子を錯化するための窒素原子を含有する。Ir(ppy)3の発光特性は、Finkenzellerらによって詳細に研究されてきた。(Chemical Physics Letters 377, 299-305 (2003年))。
【0004】
国際公開第2004/016711A1号パンフレットより発光特性に影響を及ぼす電子吸引基又は電子供与基を有する置換基を備えた多種多様なIr(ppy)3誘導体が公知である。
【0005】
Liら(Organometallics 24, 1329-1335 (2005年))は、8−フェニルキノリン構造をベースとした、エレクトロルミネセンスに使用するための6員のIr錯体を記載している。Liらによるイリジウム(Ir)錯体は、濃赤の範囲の波長において光を放射することが報告されている。6員のキレート化合物を含有する典型的なIr錯体の1つは、ビス[8−(3,5−ジフルオロフェニル)−キノリン]イリジウム(III)アセチルアセトナートである。これらの化合物において、2つの芳香族部分がσ結合によって連結し且つIrをキレート化する時に6員環構造を形成する。
【0006】
特開2004−319438号公報は、Rhを錯化する、発光体の多種多様な構造を開示している。全ての構造はRhを錯化する窒素を含有する6員環を含む。
【0007】
本発明の目的
本発明は、電気光学用途に適した、即ち、公知の錯体の代替構造を有する三重項発光体として適した、有機金属錯体を提供することを求める。
【0008】
有利には、本発明は、公知のエレクトロルミネセンス化合物の代替構造を有する三重項発光体を提供することを求める。該代替構造は有利には消費された電気エネルギー当たりの改善された発光収量を有する。更に有利には、本発明の化合物は高い化学的安定性及び熱安定性を有する。
【0009】
発明の一般的な記載
本発明は、電気光学用途に適した化合物に関し、特に三重項発光体に関する。一般に、以下の層の配列が、本発明による発光体化合物を有するOLED中に存在する必要がある:陽極、例えばZnOのような透明な導電性金属酸化物(TCO)で被覆された基板、有利にはITO(インジウムスズ酸化物)で被覆されたガラス又は有機透明シート材料、正孔輸送材料、発光層、任意に正孔ブロック材料及び/又は電子輸送材料、及び導電性陰極層。
【0010】
本発明による発光体化合物は、原子の変化、例えば、炭素のヘテロ原子への置き換え、又は金属原子を錯化する窒素含有5員環内の基の置き換え又は金属原子を錯化する炭素原子を含有する5員環又は6員環内の基の置き換えによって、UV、可視及びNIRにおける、有利には可視範囲における光の放射への適合に適する。炭素原子の代わりにヘテロ原子を導入することの別法として、金属原子を錯化する構造内の炭素原子及び/又はヘテロ原子を置換することによる予測可能な方法で、放射された光の波長に影響を与えることができる。
【0011】
本発明による化合物は、例えば、Os、Pt及びRe、Ru、Pd、有利にはIrから選択された遷移金属の有機金属錯体である。遷移金属原子は、有機主鎖に含有された1個の窒素原子及び1個の炭素原子によって錯化されており、金属原子を含む5員環構造を形成する。
【0012】
芳香族主鎖構造は、発光体化合物の有機部分を提供し且つ2つの環構造、B及びCを含む。係る環構造は6員環の中間リンカー芳香族基(A)によって形成される2つの連結により互いに結合している。環構造BとCとの間に配置されたリンカー基Aは、環構造B及びCそれぞれと原子を共有する。これらの環構造の1つ、環構造Bは錯化された金属原子への結合を形成する窒素を含有し、もう1つの構造、環構造Cは金属原子への結合を形成する炭素原子を含有する。
【0013】
環構造Bは5員環である。環構造Cは独立して5員環又は6員環である。
【0014】
有利には、環構造B及びCは不飽和結合、有利には少なくとも2つの共役不飽和結合を含有し、最も有利には、構造B及びCは芳香族である。
【0015】
環構造Aは芳香族であり、隣接した環構造B及びCと原子を共有する6員環を形成する。任意に、環構造B及び/又はCはまた更なるヘテロ原子を含有し、それらは例えばN、O、S、Se、Te及びSiから選択される。
【0016】
金属原子はPt、Pd、Ru、Re、Os、有利にはIrから選択される。
【0017】
金属原子の原子価の飽和のために、1個より多い配位子、例えば2又は3個の配位子が、それぞれ金属原子との5員環構造を形成してよい。あるいは、代替的に、補助的に配位している配位子、例えばアセチルアセトナート基、ピコリン酸基、2−ピリジルギ酸(pyridylformiate)基、2−(4H−[1,2,4]トリアゾール−3−イル)ピリジン基、及び/又はジピバロイルメタナート基を含有する化合物によって飽和がもたらされてもよい。
【0018】
一般的に、本発明による金属キレート錯体は一般式I:
【化1】
[式中、環Bは5員環であり、環Aは6員環であり、そして環Cは6員環又は5員環であってよく、
X1はCR’及びNから選択され、
X2はNR’、O、S、Se、Te、CR’R"、及びSiR’R"から選択され、
X3、X4=N、NR’、S、O、CR’、CR’R"、CR’=CR"、N=N、CR’=N、N=CR"、SiR’、SiR’R"、Se、Teであり、
R’、R"はA1、CN、NA1A2、OA1、SA1、F、Cl、Br、I、CNO、NCO、CA1O、COOA1から選択され、A1、A2は任意の置換された(ヘテロ)アルキル、(ヘテロ)アリール又はHであり、該(ヘテロ)アルキル及び(ヘテロ)アリールは、任意に重合可能な基、例えばアルデヒド、アルコール、シアナト、イソシアナト、少なくとも一不飽和のオレフィン性基、ビニル、アルキリデン、アリル、オキセタン、アクリル、アミン、オキシラン、炭酸又はエステル基を有し、
MetはIr、Pt、Ru、Re、Pd及びOsから選択され、
Met=Ir、Os、Ru、Reの場合、n=1〜3、m=3−nであり且つMet=Pt、Pdの場合、n=1〜2、m=2−nであり、
R1、R2は独立してA1、CN、NA1A2、OA1、SA1、F、Cl、Br、I、CNO、NCO、CA1O、COOA1から選択され、A1、A2は任意の置換された(ヘテロ)アルキル、(ヘテロ)アリール又はHであり、任意に重合可能な基、例えばアルデヒド、アルコール、シアナト、イソシアナト、少なくとも一不飽和のオレフィン性基、ビニル、アルキリデン、アリル、オキセタン、アクリル、アミン、オキシラン、炭酸又はエステル基を有し、R1及びR2は置換及び/又は互いに結合することができ、これらは環構造A、B及びCに縮合された置換基、有利には縮合部分を形成し、そしてZ1及びZ2は補助的な飽和配位子の部分である]により表すことができる。
【0019】
有利な実施態様によると、環構造A、B及び/又はCに結合した重合可能な基は、金属錯化発光体部分の少なくとも1種のポリマー性基への結合を提供する働きをする。重合性基はマトリックス化合物として機能することができ且つ例えば不活性基、電子輸送基及び/又は正孔輸送基から選択することができる。本発明の目的に使用されるときに、「不活性基」という用語は導電性ではない基を指す。即ち、係る基は本発明による電気光学素子に利用される電気状態の下で電荷輸送を提供せず、従って本明細書では正孔輸送基又は電気輸送基の群に含まれない。不活性基の例はポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリウレタン、これらの基の誘導体並びにそれらのコポリマーのようなポリアルキレン類の間で選んでよい。
【0020】
飽和配位子
【化2】
は、錯化した金属原子への二座配位子を形成し且つモノアニオン性配位子であり、Z1及びZ2は独立して原子を表し、これらは任意に置換され且つ化学結合により結合し又はZ1とZ2の間に1、2又は3個の付加的な原子を配置する中間基により結合する。有利には、Z1及びZ2の両方並びにこれらの間の中間基は、重合可能な基と置換されて少なくとも1種のポリマー性基を有する結合を提供する。
【0021】
中間基はZ1のために列挙された基から選択できる。Z1及びZ2は例えば、メチレン、置換されたメチレン、N、NR1、S、O、Se、Te、CR1、SiR1、CR1R2、SiR1R2、CR2=CR3、N=N、CR1=Nから独立して選択され、R1〜R3はA1、CN、NA1A2、OA1、SA1、F、Cl、Br、I、SO2A1、CNO、NCO、CA1O、COOA1から独立して選択され、A1及びA2は、任意の置換された(ヘテロ)アルキル、(ヘテロ)アリール、又はHであり、該(ヘテロ)アルキル及び(ヘテロ)アリールは任意に重合可能な基を有する。
【0022】
有利には、飽和配位子は、アセチルアセトナート、2−ピリジルアセテート(またピコリン酸と呼ばれる)、ジピバロイルメタナート、2−ピリジルギ酸、2−(4H−[1,2,4]トリアゾール−3−イル)ピリジンを小単位として含む群から選択される。これに関して、この小単位という用語は、上述の特定の基及びこれらの基を含む化合物を指し、これらは追加の置換基並びにそれらの誘導体、例えば、ポリマー性基に結合する重合可能な基と置換された誘導体を有する。また該用語は、上記の一般的な構造を含み且つ金属原子の自由原子価を飽和させる基を指す。即ち、該金属原子は、環構造A、B及びCを含有する発光体部分により錯化される。係る式及び本発明による化合物において、たとえ1つの特定の飽和配位子が示されても、特定の例示的な化合物の飽和配位子を互いに交換できる。
【0023】
有利な実施態様において、飽和配位子は少なくとも1種のポリマー性基と置換され、例えば、不活性基、電子輸送基及び/又は正孔輸送基から選択される。少なくとも1種のポリマー性基への結合は、重合可能な基が飽和配位子を置換して連結する結合をもたらすことによって得られる。飽和配位子とポリマー性基との置換は、環構造A、B及び/又はCとポリマー性基との置換と無関係である。従って、更なる実施態様において、少なくとも1つの環構造A、B及び/又はCと飽和配位子との双方はポリマー性基に結合する。飽和配位子及び/又は金属原子を錯化する発光体部分とポリマー性基との置換は、デンドリマー、オリゴマー又はポリマーとしての特徴がある分子を生成するために利用できる。ポリマー性基との置換の特殊な利点として、置換基により与えられた特性を備えた、三重項発光体部分を有する化合物が得られる。これらは更に溶液からの塗布、例えばスピンコーティング、吹付け塗り、又はジェット印刷にさえ適している。
【0024】
一般式Iに表された環構造B及びCに含有されたπ結合は、環B及び/又はCのヘテロ原子によって異なり、また5又は6員環である環Cによって異なり得る。しかしながら、当業者は、どの結合が正式にπ結合であるかを容易に決定できる。
【0025】
環構造B及びCは、独立して非芳香環、非共役又は共役芳香環である。有利には、芳香族構造Aは環構造B及びCに結合し、環構造A、B及びCを含む縮合系を形成する。
【0026】
環構造Aが芳香族であるため、環構造B及びCは中間の芳香族環構造Aによって縮合環を形成し、その際環構造B及びCは飽和又は部分的に不飽和の環であってよく、有利には共役の芳香族であってよい。
【0027】
従って、環B及びCを連結する結合周りの回転を制限するように環構造Aが環構造B及びCに結合し、環構造B及びCの互いについて固定された配座をもたらすことは、本発明の化合物の特殊な利点である。有利な実施態様において、環構造A、B及びCは共役系を形成し、本質的に平面配座の骨格構造を作り出す。
【0028】
従って、本発明による三重項発光体は、基の回転運動によって生じるエネルギー散逸を回避し、これは無放射失活、即ち発光の代わりの熱緩和プロセスをもたらす。結果として、本発明による三重項発光体はより良好な発光量を有する。即ち、電気エネルギー消費量に比例して更に効率的にエレクトロルミネセンスが生じる。
【0029】
金属錯化窒素を含有する、例えば、環Bとして6員環を有する化合物に対する本発明による化合物の特殊な利点は、環構造Bが5員環であることに基づくことである。この利点は第1に、5員の縮合された環が一般により単純な及び/又はより効率的な合成ルートによって生成し得ることである。第2に、電子密度は、環の炭素原子をヘテロ原子と置き換えることによって、電子に富んだ状態から電子不足の状態へ又は逆に変化且つ調節でき、とりわけ発光波長の変化及び/又は電子又は正孔輸送特性の変化をもたらす。従って、これらの効果は、置換基を環構造に導入しないで、あるいは置換基の数及び/又は大きさの要求量、例えば、発光体錯体に同様の効果をもたらすために更に置換基を要求する6員環と比較して、より高い置換基の電子密度を減少させないで、少なくとも1部分において達成できる。更に、放射の代わりに振動エネルギー変換によるエネルギー損失が増加するので、多数の置換基は通常、発光効率の低下をもたらす。更に、低下した数及び/又は低下した大きさの置換基は、増加したガラス転移温度、即ち高い温度安定性をもたらすことが多い。
【0030】
任意に、本発明による化合物は置換基、例えば、置換可能なポリマー性基に化学的に結合する。即ち、環構造A、B及び/又はCは独立して、これらの環構造の間の結合に又は金属錯体の形成に関与しないそれらの炭素又はヘテロ原子に置換基を運ぶ。置換基は、(ヘテロ−)アルキル、(ヘテロ−)アリール、−NR12、−OR1、−SR1、−CN、−F、−CF3から選択してよく、R1は独立してA1、CN、NA1A2、OA1、SA1、F、Cl、Br、I、SO2A1、CNO、NCO、CA1O、COOA1から選択され、A1及びA2は任意の置換された(ヘテロ)アルキル、(ヘテロ)アリール、又はHであり、任意に重合可能な基、例えばアルデヒド、アルコール、シアナト、イソシアナト、少なくとも一不飽和のオレフィン性基、ビニル、アルキリデン、アリル、オキセタン、アクリル、アミン、オキシラン、炭酸又はエステル基、並びに電気光学的な官能基を有し、その際2つまたはそれ以上の置換基は、縮合したアレーニル(arenyl)基又は高縮合したマトリックス物質を形成する基、例えば、不活性基、電子輸送基及び/又は正孔輸送基から選択された基であってよい。本発明による発光体化合物が電荷輸送基に結合した結果、電気光学素子の層構造は、それぞれの電荷輸送層を除くことによって単純化できる。詳細には、電子輸送基に結合した発光体化合物は、層構造を有する電気光学素子において電子輸送層なしで使用でき、正孔輸送基に結合した発光体化合物は、層構造を有する電気光学素子において正孔輸送層なしで使用できる。
【0031】
一実施態様において、本発明による化合物はポリマー性基と置換され、その際、環構造A、B及び/又はCの少なくとも1つは重合可能な基を備え、ポリマー性基への結合を形成する。少なくとも1つの環構造の置換基に加えて又はそれに取って代わって、飽和配位子はポリマー性基への結合を形成するために1個以上の重合可能な基と置換できる。
【0032】
重合可能な基は、例えば、アルデヒド、アルコール、シアナト、イソシアナト、少なくとも一不飽和のオレフィン性基、例えば、ビニル、アルキリデン、アリル、又はオキセタン、アクリル、アミン、オキシラン、炭酸又はエステル基によって形成できる。この実施態様において、重合可能な基に結合した重合性基は、不活性基、電子輸送基及び/又は正孔輸送基であってよい。この実施態様において、重合性基が飽和配位子に更に結合することは有利である。
【0033】
更に、2個以上の同一の又は異なる本発明による発光体化合物の分子は、独立して環構造A、B又はCの1つへの結合により、及び、代わりに又は付加的に飽和配位子への結合により重合性基に結合することができる。この実施態様において、少なくとも2個以上の本発明による発光体化合物の分子を含み、1つのポリマー性基に結合した、デンドリマー、オリゴマー又はポリマーが形成される。2個以上の発光体化合物の共通のポリマー性基への結合とは無関係に、該発光体化合物は1個以上の同一の又は異なるポリマー性基によって任意に置換することができ、これらは電気的機能を任意に提供し得る、例えば、これらは不活性基、電子輸送基及び/又は正孔輸送基から独立して選択される。
【0034】
更に、環構造A、B及びCへの置換基は、芳香族の下位構造、例えば、環構造A、B及び/又はCへの共役を有する又は有していない芳香族残基を形成することができ、有利には、環構造A、B及びCを含む、高縮合系をもたらす。
【0035】
本発明による係る化合物の特殊な利点は、放射された光の波長、即ち、励起下で放射された光の色に、原子又は基R1、R2、X1、X2,X3及び/又はX4の変更によって容易に影響を与え得ることである。例えば、R1、R2、及びX1〜X4の1つの変化による化合物の双極子モーメントのシフトは、放射された波長の範囲に直接影響を与える。
【0036】
極大波長のシフトは、有利には、UV又は可視〜NIR波長の範囲に渡って達成できる。有利な実施態様によると、波長のシフトは、共役の芳香族である環構造B及びC、更に有利には共役系を形成する環構造A、B及びCに対して特に顕著である。
【0037】
三重項発光体の電気、光学、物理、熱及び化学の特性は、環構造B及びCへの置換基並びに芳香族構造Aへの置換基を選択することによって所望の特性に更に適合させることができる。環構造B及びCは、置換基X1、X2及びX3、X4によって、それぞれ誘導体化される。発光体の波長に影響を及ぼすために、環構造A、B及び/又はCのいずれかへの置換基、例えば、構造IIのR1〜R5の例は、有利には電荷輸送基から選択される。例えば、電子輸送部分及び正孔輸送部分から選択される。
【0038】
電子輸送物質及び電子輸送基の例は、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(ブフェン)及びその誘導体、例えば2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP)、2,5−ジアリールオキサジアゾール及びその誘導体、例えば2−(p−tert.−ブチルフェニル)−5−(p−ビフェニル)−オキサジアゾール(PBD)、オリゴ−(ベンゾオキサジアゾール−2イル)−アレーン及びその誘導体、例えばビス−2,5−(5−tert.−ブチル−ベンゾオキサジゾール−2−イル)−チオフェン(BBOT)、1,3−ビス[5−(アリール)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン及びその誘導体、例えば1,3−ビス[5−(p−tert.−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(OXD−7)、2,5−ジアリールトリアゾール及びその誘導体、例えば2−(p−tert.−ブチルフェニル)−5−(p−ビフェニル)−トリアゾール(TAZ)、及び2,2’,2"−(1,3,5−フェニレン)−トリス(1−フェニルベンゾイミダゾール)(TPBI)である。
【0039】
正孔輸送物質及び正孔輸送基の例は、ポリ(9−ビニルカルバゾール)、トリス[(N,N−ジアリール)アミノ]−トリフェニルアミン、例えば4,4’,4’’−トリス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノトリフェニルアミン](1−TNATA)及びその誘導体、4,4’,4’’−トリス[N−(2−ナフチル)−N−フェニルアミノ)−トリフェニルアミン](2−TNATA)又は4,4’,4’’−トリス[(N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ)−トリフェニルアミン](m−TDATA)およびその誘導体、4,4’,4’’−トリス(カルバゾール−9−イル)トリフェニルアミン](TCTA);N,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジンとしてのN,N,N’,N’−テトラ−アリールベンジジン及びその誘導体、N,N’−ビス(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(α−NPD)、N,N’−ジ(ナフタレン−2−イル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(β−NPD)、4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル(CBP)およびその誘導体、およびこれらのヘテロ原子置換された類縁物(例えば、チエニル誘導体、セレニル誘導体、フラニル誘導体);4,4’−ビス(2,2’−ジフェニルビニル)−1’,1’−ビフェニル(DPVBI);トリアリールアミンおよびその誘導体、4,4’−ビス(N,N−ジアリールアミノ)−テルフェニル、4,4’−ビス(N,N−ジアリールアミノ)−クアテルフェニルおよびその同族体および誘導体、N,N’−ジメチルキナクリドン(dimethylchinacridone)及びその誘導体、1,1−ビス−(4−ビス(4−メチル−フェニル)−アミノフェニル)−シクロヘキサン(TPAC)及びN,N,N’,N’−テトラアリールジアミノフルオレン並びにそれらの誘導体である。
【0040】
発明の詳細な説明
一般式Iの実施態様は、以下の式II:
【化3】
[式中、置換基は式Iに示されたように定義され、置換基R3〜R5はR1及び/又はR2に関して定義された基から選択される]による化合物である。
【0041】
更に特殊な実施態様の式Iによる化合物は以下に示され、
その際、補助的な飽和配位子の変化は1つの例示的な配位子上に示される:
【化4】
【化5】
その際、環構造Bは変化する:
【化6】
その際、環構造A、B及びCの縮合系は、更に縮合された置換基により形成される:
【化7】
【0042】
本発明による化合物を含む電気光学素子の例として、添付の図面を略示すると、
・図1はOLEDの断面図である。
・図2はインバーテッド型OLEDの断面図である。
・図3は更なる実施態様の2つの隣接した放射層を有するOLEDの断面図である。
・図4は太陽電池の断面図である。
・図5は、OLEDの放射層を形成する本発明による化合物のエレクトロルミネセンススペクトルを示す。
・図6は図1で使用したOLEDに印加した電圧に対する電流密度を示す。
・図7は図1で使用したOLEDに印加した電圧に対する輝度を示す。
・図8は異なる放射層厚さのTPBiマトリックス中に発光体としてIr(MNTZ)3を備える図3によるOLEDに印加した電圧に対する電流密度のプロットを示す。
・図9は図8の測定のために使用したOLEDの輝度のプロットを示す。
・図10は図8の測定のために使用したOLEDの1つの輝度効率のプロットを示す。
・図11は図8の測定のために使用したOLEDの1つの長時間安定度のプロットを示す。
・図12はIr(MNTZ)3のエレクトロルミネセンススペクトルを示す。
・図13はIr(MNTZ)3のDSCを示す。
・図14はIr(MNTZ)3のHPLCクロマトグラムを示す。
・図15及び16は本発明による化合物の発光スペクトルを示す。
【0043】
図1〜3のOLEDにおいて、放射層を電子輸送層(ETL)と正孔輸送層(HTL)との間に配置することによって、放射層からの電荷輸送及び放射層への電荷輸送を可能にする。図3のOLEDでは、放射層は、発光体、例えば例1のIr(MNTZ)3を異なるマトリックス化合物中に、それぞれ例えばTPBI及びTCTA中10% w/wで含む2つの隣接層から形成される。
【0044】
太陽電池の場合、本発明の化合物はn型層半導体とp型層半導体との間に配置され、図4において「接合部」として示される。その中で、係る半導体層は、本発明の化合物によって入射光の変換から生じた電荷の輸送媒体として働く。
【0045】
実施例1:トリス(2−メチルナフト[1,2−d]チアゾール)イリジウム(III)(Ir(MNTZ)3)の合成
Sprouseら(J. Am. Chem. Soc. 106, 6647-6653 (1984年))に従って生成したジ−μ−クロロテトラキス(2−メチルナフト[1,2−d]チアゾール)ジ−イリジウム(III)を、M. G. Colomboら(Inorg. Chem. 33, 545- 550 (1994年))によるトリフルオロ酢酸の銀塩と反応させた。
【0046】
詳細には、塩化イリジウム(III)水和物(4.0g、0.011mol)及び2−メチルナフト[1,2−d]チアゾール(5.6g、0.028mol)を2−エトキシエタノール(138ml)及び水(46ml)中で懸濁させ且つ不活性ガス雰囲気下で68時間130℃で攪拌した。反応溶液を濾別してn−ヘキサン及びジエチルエーテルで洗う。生成物は黄色の微粉末固体である(収率61%)。
【0047】
不活性ガス雰囲気下で、ジ−μ−クロロテトラキス(2−メチルナフト[1,2−d]チアゾール)ジ−イリジウム(III)(500mg、0.4mmol)を、2−メチルナフト[1,2−d]チアゾール(319mg、1.6mmol)及びトリフルオロ酢酸の銀塩(177mg、0.8mmol)とともに、120℃で75時間攪拌した。この固体を単離してエタノールで洗う。ジクロロメタンを溶出剤として使用するカラムクロマトグラフィーにより精製し且つメタノールから再結晶化させた後、白黄色の粉末が得られる(収率18%)。
【0048】
以下の特性を測定した:
1H NMR([D6]−DMSO):
δ=7.88(d,1H),7.78(d,1H),7.35(d,1H),6.91(m,1H),6.34(d,1H),2.15(s,3H)
13C NMR([D6]−DMSO):
δ=168.5(s),157.5(s),143.3(s),138.4(s),131.4(d),130.3(s),127.1(d),126.1(d),124.8(s),117.9(d),117.8(d),16.6(q)
MS(EI):
m/z(%):787(100)[M]+
UV/Vis(CH2Cl2):
λ/nm(ε)=341(16 900),278(41 000),230(106 000)
C36H30IrN3O3(744.86) 計算値:C54.94 H3.07 N5.34
測定値:C54.61 H3.17 N5.31
【0049】
一般的な反応スキームを以下に示す:
【化8】
【0050】
実施例2:メトキシル化されたIr(OMe−MNTZ)3の合成
環構造Aにメトキシ置換基を導入するために、2−メチルナフト[1,2−d]チアゾール(1g、5.02mmol)とLiBr(0.479g、5.52mmol)を10mlの無水のアセトニトリル中で懸濁させた。アセトニトリル中で懸濁したCAN((NH4)2Ce(NO3)6、3.026g、5.52mmol)を、窒素雰囲気下において室温で1時間にわたり滴加し攪拌した(Subhas Chandra Royら、Tetrahedron Lett. 42, 6941(2001年)に従う)。水を用いた精製及びジクロロメタンを使用するカラムクロマトグラフィーにより淡黄色固体が得られる(収率30%、0.436g、1.57mmol)。生成物(300mg、1.078mmol)を、次いでナトリウムメトキシド(582mg、10.78mmol)を用いてメタノール(2ml)中で温めた(H. L. Aalten Tetrahedron 45(17), 5565 (1989年)に従う)。CuBr(15mg、0.108mmol)を熱溶液に添加し4時間にわたり還流した。水を用いた精製及びカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/酢酸エチルエステル10:1)により白色固体が得られる(収率68%、168mg、0.732mmol)。Irとの錯化は、以下の反応スキームによるIr(MNTZ)3と類似する:
【化9】
【0051】
実施例3:シアノ置換された誘導体(Ir(シアノ−MNTZ)3)の合成
ニトリロ置換基を環構造Aに導入するために、以下の反応スキームを使用した:
【化10】
【0052】
実施例4:ビス(2−メチルナフト[1,2−d]チアゾール)イリジウム(III)−(2−ピリジル)ギ酸((MNTZ)2Irpic)の合成
不活性ガス雰囲気下で、ジ−μ−クロロテトラキス(2−メチルナフト[1,2−d]チアゾール)ジ−イリジウム(III)(300mg、0.24mmol)及びピリジン−2−カルボン酸(74mg、0.6mmol)をエタノール中で懸濁させた。塩基の添加後、反応混合物を還流下で50時間にわたり攪拌する。水(15ml)の添加後、微細な緑灰色の沈殿物を単離し、ジクロロメタン/アセトンを溶出剤として使用するカラムクロマトグラフィーにより精製し、メタノールから再結晶化させると黄褐色の固体が得られる(収率23%)。
【0053】
以下の特性を測定した:
1H NMR([D6]−DMSO):
δ=8.10(m,2H),7.95(m,2H),7.77(m,3H),7.51(m,1H),7.37(m,2H),6.96(m,2H),6.29(d,1H),6.11(d,1H),2.99(s,3H),2.11(s,3H)
MS(EI):
m/z(%):711(100)[M]+
【0054】
一般的な反応スキームを以下に示す:
【化11】
【0055】
実施例5:ビス(2−メチルナフト[1,2−d]チアゾール)イリジウム(III)−2−(5−フェニル−2H−[1,2,4]トリアゾール−3−イル)ピリジン((MNTZ)2Irトリアゾール)の合成
P. Coppoら(Chem. Comm. 1774-1774(2004年))に従って、ジ−μ−クロロテトラキス(2−メチルナフト[1,2−d]チアゾール)ジ−イリジウム(III)を2−(5−フェニル−2H−[1,2,4]トリアゾール−3−イル)ピリジンと反応させる。
【0056】
詳細には、不活性ガス雰囲気下で、ジ−μ−クロロテトラキス(2−メチルナフト[1,2−d]チアゾール)ジ−イリジウム(III)(300mg、0.24mmol)と2−(5−フェニル−2H−[1,2,4]トリアゾール−3−イル)ピリジン(136mg、0.60mmol)を、ジクロロメタン(6.6ml)及びエタノール(2ml)中で懸濁させる。塩基の添加後、混合物を室温で41時間にわたり攪拌する。単離した粗生成物を、ジクロロメタン/アセトンを溶出剤として使用するカラムクロマトグラフィーにより精製すると、黄色の固体が得られる(収率10%)。m/z(%)の質量=810(22)[M]+は、MS(EI)によって測定した。一般的な反応スキームを以下に示す:
【化12】
【0057】
実施例4:トリス(2−メチルナフト[1,2−d]チアゾール)イリジウム(III)を発光層として含むOLED
本発明による化合物を含むエレクトロルミネセンス素子の1例として、マトリックス材料としてのPVK(ポリ(9−ビニルカルバゾール))と混合されているトリス(2−メチルナフト[1,2−d]チアゾール)イリジウム(III)を発光層として有するOLEDが、溶液からの析出により作られた。係るOLEDは、ITOで被覆されたガラスの陽極、正孔輸送材料としてのポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン−ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS))、発光層、電子輸送層及び/又は正孔ブロッキング層としての2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP)、並びにLiF/Al陰極層から成る。
【0058】
電流が印加された時に、図4〜6に描かれた光学的及び電気的応答がそれぞれ得られた。正規化された輝度強度は、図4において任意の単位(a.u.)で得られ、約500nm〜650nmの発光を示す。印加された電圧に応じた電流密度を図5に示す。図6は印加された電圧に応じた輝度を絶対値で示す。
【0059】
本発明による更なる化合物の三重項発光体の特性及び発光層の形成に対するそれらの適性はまた、典型的なエレクトロルミネセンス素子としてOLED中に示すことができる。
【0060】
以下の例示的な化合物は、小さい置換基を環の1つに少数導入する、例えば、置換基を1つだけ環A、B及びCを含む核の化合物に導入することによって発光波長が変わり得ることを実証する。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
【表4】
【0065】
【表5】
【0066】
図3によるOLEDの測定効率を図8〜10に示し、これらは本発明の化合物により高い効率が得られることを実証する。
【0067】
本発明の化合物の高い長期安定性を、図11に示した結果によって実証する。Ir(MNTZ)3のエレクトロルミネセンススペクトルを図12に示す。
【0068】
図13は示差走査熱量測定法(DSC)を示し、これは分解なしに480℃の顕著に高い融点である非常に高い温度安定性を実証する。また、実施例1に従って合成かつ精製した化合物のHPLCクロマトグラムを図14に示し、これは広範な精製手順なしに高い純度が得られることを実証する。
【0069】
これらの図は本発明の化合物の発光を示し、これは発光波長のシフトがヘテロ原子及び/又は置換基の導入によって得られることを実証する。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】図1はOLEDの断面図である。
【図2】図2はインバーテッド型OLEDの断面図である。
【図3】図3は更なる実施態様の2つの隣接した放射層を有するOLEDの断面図である。
【図4】図4は太陽電池の断面図である。
【図5】図5は、OLEDの放射層を形成する本発明による化合物のエレクトロルミネセンススペクトルを示す。
【図6】図6は図1で使用したOLEDに印加した電圧に対する電流密度を示す。
【図7】図7は図1で使用したOLEDに印加した電圧に対する輝度を示す。
【図8】図8は異なる放射層厚さのTPBiマトリックス中に発光体としてIr(MNTZ)3を備える図3によるOLEDに印加した電圧に対する電流密度のプロットを示す。
【図9】図9は図8の測定のために使用したOLEDの輝度のプロットを示す。
【図10】図10は図8の測定のために使用したOLEDの1つの輝度効率のプロットを示す。
【図11】図11は図8の測定のために使用したOLEDの1つの長時間安定度のプロットを示す。
【図12】図12はIr(MNTZ)3のエレクトロルミネセンススペクトルを示す。
【図13】図13はIr(MNTZ)3のDSCを示す。
【図14】図14はIr(MNTZ)3のHPLCクロマトグラムを示す。
【図15】図15は本発明による化合物の発光スペクトルを示す。
【図16】図16は本発明による化合物の発光スペクトルを示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は発光化合物に関し、特に電気光学、例えば、エレクトロルミネセンス用途に有用なリン光性化合物に関する。本発明による化合物の使用は、例えば、OLED中の層としての使用であり、又は電流によって励起された時に可視光を放射するためのレーザー用途であり、並びに光起電力素子において光吸収するための層を形成することである。
【0002】
さらに詳細には、本発明による化合物は三重項発光体であり、これは電気エネルギーから放射への高度に効率的な変換を用いる。この変換は、金属原子、有利にはIrを錯化する有機化合物において生じる。
【0003】
従来技術
第1の利用可能な三重項発光体の1つは、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy)3)(Grushinら、Chem. Communications 1494-1495 (2001年))である。この化合物において、2つの6員芳香環が1つのσ結合によって結合されており、この1つが金属原子を錯化するための窒素原子を含有する。Ir(ppy)3の発光特性は、Finkenzellerらによって詳細に研究されてきた。(Chemical Physics Letters 377, 299-305 (2003年))。
【0004】
国際公開第2004/016711A1号パンフレットより発光特性に影響を及ぼす電子吸引基又は電子供与基を有する置換基を備えた多種多様なIr(ppy)3誘導体が公知である。
【0005】
Liら(Organometallics 24, 1329-1335 (2005年))は、8−フェニルキノリン構造をベースとした、エレクトロルミネセンスに使用するための6員のIr錯体を記載している。Liらによるイリジウム(Ir)錯体は、濃赤の範囲の波長において光を放射することが報告されている。6員のキレート化合物を含有する典型的なIr錯体の1つは、ビス[8−(3,5−ジフルオロフェニル)−キノリン]イリジウム(III)アセチルアセトナートである。これらの化合物において、2つの芳香族部分がσ結合によって連結し且つIrをキレート化する時に6員環構造を形成する。
【0006】
特開2004−319438号公報は、Rhを錯化する、発光体の多種多様な構造を開示している。全ての構造はRhを錯化する窒素を含有する6員環を含む。
【0007】
本発明の目的
本発明は、電気光学用途に適した、即ち、公知の錯体の代替構造を有する三重項発光体として適した、有機金属錯体を提供することを求める。
【0008】
有利には、本発明は、公知のエレクトロルミネセンス化合物の代替構造を有する三重項発光体を提供することを求める。該代替構造は有利には消費された電気エネルギー当たりの改善された発光収量を有する。更に有利には、本発明の化合物は高い化学的安定性及び熱安定性を有する。
【0009】
発明の一般的な記載
本発明は、電気光学用途に適した化合物に関し、特に三重項発光体に関する。一般に、以下の層の配列が、本発明による発光体化合物を有するOLED中に存在する必要がある:陽極、例えばZnOのような透明な導電性金属酸化物(TCO)で被覆された基板、有利にはITO(インジウムスズ酸化物)で被覆されたガラス又は有機透明シート材料、正孔輸送材料、発光層、任意に正孔ブロック材料及び/又は電子輸送材料、及び導電性陰極層。
【0010】
本発明による発光体化合物は、原子の変化、例えば、炭素のヘテロ原子への置き換え、又は金属原子を錯化する窒素含有5員環内の基の置き換え又は金属原子を錯化する炭素原子を含有する5員環又は6員環内の基の置き換えによって、UV、可視及びNIRにおける、有利には可視範囲における光の放射への適合に適する。炭素原子の代わりにヘテロ原子を導入することの別法として、金属原子を錯化する構造内の炭素原子及び/又はヘテロ原子を置換することによる予測可能な方法で、放射された光の波長に影響を与えることができる。
【0011】
本発明による化合物は、例えば、Os、Pt及びRe、Ru、Pd、有利にはIrから選択された遷移金属の有機金属錯体である。遷移金属原子は、有機主鎖に含有された1個の窒素原子及び1個の炭素原子によって錯化されており、金属原子を含む5員環構造を形成する。
【0012】
芳香族主鎖構造は、発光体化合物の有機部分を提供し且つ2つの環構造、B及びCを含む。係る環構造は6員環の中間リンカー芳香族基(A)によって形成される2つの連結により互いに結合している。環構造BとCとの間に配置されたリンカー基Aは、環構造B及びCそれぞれと原子を共有する。これらの環構造の1つ、環構造Bは錯化された金属原子への結合を形成する窒素を含有し、もう1つの構造、環構造Cは金属原子への結合を形成する炭素原子を含有する。
【0013】
環構造Bは5員環である。環構造Cは独立して5員環又は6員環である。
【0014】
有利には、環構造B及びCは不飽和結合、有利には少なくとも2つの共役不飽和結合を含有し、最も有利には、構造B及びCは芳香族である。
【0015】
環構造Aは芳香族であり、隣接した環構造B及びCと原子を共有する6員環を形成する。任意に、環構造B及び/又はCはまた更なるヘテロ原子を含有し、それらは例えばN、O、S、Se、Te及びSiから選択される。
【0016】
金属原子はPt、Pd、Ru、Re、Os、有利にはIrから選択される。
【0017】
金属原子の原子価の飽和のために、1個より多い配位子、例えば2又は3個の配位子が、それぞれ金属原子との5員環構造を形成してよい。あるいは、代替的に、補助的に配位している配位子、例えばアセチルアセトナート基、ピコリン酸基、2−ピリジルギ酸(pyridylformiate)基、2−(4H−[1,2,4]トリアゾール−3−イル)ピリジン基、及び/又はジピバロイルメタナート基を含有する化合物によって飽和がもたらされてもよい。
【0018】
一般的に、本発明による金属キレート錯体は一般式I:
【化1】
[式中、環Bは5員環であり、環Aは6員環であり、そして環Cは6員環又は5員環であってよく、
X1はCR’及びNから選択され、
X2はNR’、O、S、Se、Te、CR’R"、及びSiR’R"から選択され、
X3、X4=N、NR’、S、O、CR’、CR’R"、CR’=CR"、N=N、CR’=N、N=CR"、SiR’、SiR’R"、Se、Teであり、
R’、R"はA1、CN、NA1A2、OA1、SA1、F、Cl、Br、I、CNO、NCO、CA1O、COOA1から選択され、A1、A2は任意の置換された(ヘテロ)アルキル、(ヘテロ)アリール又はHであり、該(ヘテロ)アルキル及び(ヘテロ)アリールは、任意に重合可能な基、例えばアルデヒド、アルコール、シアナト、イソシアナト、少なくとも一不飽和のオレフィン性基、ビニル、アルキリデン、アリル、オキセタン、アクリル、アミン、オキシラン、炭酸又はエステル基を有し、
MetはIr、Pt、Ru、Re、Pd及びOsから選択され、
Met=Ir、Os、Ru、Reの場合、n=1〜3、m=3−nであり且つMet=Pt、Pdの場合、n=1〜2、m=2−nであり、
R1、R2は独立してA1、CN、NA1A2、OA1、SA1、F、Cl、Br、I、CNO、NCO、CA1O、COOA1から選択され、A1、A2は任意の置換された(ヘテロ)アルキル、(ヘテロ)アリール又はHであり、任意に重合可能な基、例えばアルデヒド、アルコール、シアナト、イソシアナト、少なくとも一不飽和のオレフィン性基、ビニル、アルキリデン、アリル、オキセタン、アクリル、アミン、オキシラン、炭酸又はエステル基を有し、R1及びR2は置換及び/又は互いに結合することができ、これらは環構造A、B及びCに縮合された置換基、有利には縮合部分を形成し、そしてZ1及びZ2は補助的な飽和配位子の部分である]により表すことができる。
【0019】
有利な実施態様によると、環構造A、B及び/又はCに結合した重合可能な基は、金属錯化発光体部分の少なくとも1種のポリマー性基への結合を提供する働きをする。重合性基はマトリックス化合物として機能することができ且つ例えば不活性基、電子輸送基及び/又は正孔輸送基から選択することができる。本発明の目的に使用されるときに、「不活性基」という用語は導電性ではない基を指す。即ち、係る基は本発明による電気光学素子に利用される電気状態の下で電荷輸送を提供せず、従って本明細書では正孔輸送基又は電気輸送基の群に含まれない。不活性基の例はポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリウレタン、これらの基の誘導体並びにそれらのコポリマーのようなポリアルキレン類の間で選んでよい。
【0020】
飽和配位子
【化2】
は、錯化した金属原子への二座配位子を形成し且つモノアニオン性配位子であり、Z1及びZ2は独立して原子を表し、これらは任意に置換され且つ化学結合により結合し又はZ1とZ2の間に1、2又は3個の付加的な原子を配置する中間基により結合する。有利には、Z1及びZ2の両方並びにこれらの間の中間基は、重合可能な基と置換されて少なくとも1種のポリマー性基を有する結合を提供する。
【0021】
中間基はZ1のために列挙された基から選択できる。Z1及びZ2は例えば、メチレン、置換されたメチレン、N、NR1、S、O、Se、Te、CR1、SiR1、CR1R2、SiR1R2、CR2=CR3、N=N、CR1=Nから独立して選択され、R1〜R3はA1、CN、NA1A2、OA1、SA1、F、Cl、Br、I、SO2A1、CNO、NCO、CA1O、COOA1から独立して選択され、A1及びA2は、任意の置換された(ヘテロ)アルキル、(ヘテロ)アリール、又はHであり、該(ヘテロ)アルキル及び(ヘテロ)アリールは任意に重合可能な基を有する。
【0022】
有利には、飽和配位子は、アセチルアセトナート、2−ピリジルアセテート(またピコリン酸と呼ばれる)、ジピバロイルメタナート、2−ピリジルギ酸、2−(4H−[1,2,4]トリアゾール−3−イル)ピリジンを小単位として含む群から選択される。これに関して、この小単位という用語は、上述の特定の基及びこれらの基を含む化合物を指し、これらは追加の置換基並びにそれらの誘導体、例えば、ポリマー性基に結合する重合可能な基と置換された誘導体を有する。また該用語は、上記の一般的な構造を含み且つ金属原子の自由原子価を飽和させる基を指す。即ち、該金属原子は、環構造A、B及びCを含有する発光体部分により錯化される。係る式及び本発明による化合物において、たとえ1つの特定の飽和配位子が示されても、特定の例示的な化合物の飽和配位子を互いに交換できる。
【0023】
有利な実施態様において、飽和配位子は少なくとも1種のポリマー性基と置換され、例えば、不活性基、電子輸送基及び/又は正孔輸送基から選択される。少なくとも1種のポリマー性基への結合は、重合可能な基が飽和配位子を置換して連結する結合をもたらすことによって得られる。飽和配位子とポリマー性基との置換は、環構造A、B及び/又はCとポリマー性基との置換と無関係である。従って、更なる実施態様において、少なくとも1つの環構造A、B及び/又はCと飽和配位子との双方はポリマー性基に結合する。飽和配位子及び/又は金属原子を錯化する発光体部分とポリマー性基との置換は、デンドリマー、オリゴマー又はポリマーとしての特徴がある分子を生成するために利用できる。ポリマー性基との置換の特殊な利点として、置換基により与えられた特性を備えた、三重項発光体部分を有する化合物が得られる。これらは更に溶液からの塗布、例えばスピンコーティング、吹付け塗り、又はジェット印刷にさえ適している。
【0024】
一般式Iに表された環構造B及びCに含有されたπ結合は、環B及び/又はCのヘテロ原子によって異なり、また5又は6員環である環Cによって異なり得る。しかしながら、当業者は、どの結合が正式にπ結合であるかを容易に決定できる。
【0025】
環構造B及びCは、独立して非芳香環、非共役又は共役芳香環である。有利には、芳香族構造Aは環構造B及びCに結合し、環構造A、B及びCを含む縮合系を形成する。
【0026】
環構造Aが芳香族であるため、環構造B及びCは中間の芳香族環構造Aによって縮合環を形成し、その際環構造B及びCは飽和又は部分的に不飽和の環であってよく、有利には共役の芳香族であってよい。
【0027】
従って、環B及びCを連結する結合周りの回転を制限するように環構造Aが環構造B及びCに結合し、環構造B及びCの互いについて固定された配座をもたらすことは、本発明の化合物の特殊な利点である。有利な実施態様において、環構造A、B及びCは共役系を形成し、本質的に平面配座の骨格構造を作り出す。
【0028】
従って、本発明による三重項発光体は、基の回転運動によって生じるエネルギー散逸を回避し、これは無放射失活、即ち発光の代わりの熱緩和プロセスをもたらす。結果として、本発明による三重項発光体はより良好な発光量を有する。即ち、電気エネルギー消費量に比例して更に効率的にエレクトロルミネセンスが生じる。
【0029】
金属錯化窒素を含有する、例えば、環Bとして6員環を有する化合物に対する本発明による化合物の特殊な利点は、環構造Bが5員環であることに基づくことである。この利点は第1に、5員の縮合された環が一般により単純な及び/又はより効率的な合成ルートによって生成し得ることである。第2に、電子密度は、環の炭素原子をヘテロ原子と置き換えることによって、電子に富んだ状態から電子不足の状態へ又は逆に変化且つ調節でき、とりわけ発光波長の変化及び/又は電子又は正孔輸送特性の変化をもたらす。従って、これらの効果は、置換基を環構造に導入しないで、あるいは置換基の数及び/又は大きさの要求量、例えば、発光体錯体に同様の効果をもたらすために更に置換基を要求する6員環と比較して、より高い置換基の電子密度を減少させないで、少なくとも1部分において達成できる。更に、放射の代わりに振動エネルギー変換によるエネルギー損失が増加するので、多数の置換基は通常、発光効率の低下をもたらす。更に、低下した数及び/又は低下した大きさの置換基は、増加したガラス転移温度、即ち高い温度安定性をもたらすことが多い。
【0030】
任意に、本発明による化合物は置換基、例えば、置換可能なポリマー性基に化学的に結合する。即ち、環構造A、B及び/又はCは独立して、これらの環構造の間の結合に又は金属錯体の形成に関与しないそれらの炭素又はヘテロ原子に置換基を運ぶ。置換基は、(ヘテロ−)アルキル、(ヘテロ−)アリール、−NR12、−OR1、−SR1、−CN、−F、−CF3から選択してよく、R1は独立してA1、CN、NA1A2、OA1、SA1、F、Cl、Br、I、SO2A1、CNO、NCO、CA1O、COOA1から選択され、A1及びA2は任意の置換された(ヘテロ)アルキル、(ヘテロ)アリール、又はHであり、任意に重合可能な基、例えばアルデヒド、アルコール、シアナト、イソシアナト、少なくとも一不飽和のオレフィン性基、ビニル、アルキリデン、アリル、オキセタン、アクリル、アミン、オキシラン、炭酸又はエステル基、並びに電気光学的な官能基を有し、その際2つまたはそれ以上の置換基は、縮合したアレーニル(arenyl)基又は高縮合したマトリックス物質を形成する基、例えば、不活性基、電子輸送基及び/又は正孔輸送基から選択された基であってよい。本発明による発光体化合物が電荷輸送基に結合した結果、電気光学素子の層構造は、それぞれの電荷輸送層を除くことによって単純化できる。詳細には、電子輸送基に結合した発光体化合物は、層構造を有する電気光学素子において電子輸送層なしで使用でき、正孔輸送基に結合した発光体化合物は、層構造を有する電気光学素子において正孔輸送層なしで使用できる。
【0031】
一実施態様において、本発明による化合物はポリマー性基と置換され、その際、環構造A、B及び/又はCの少なくとも1つは重合可能な基を備え、ポリマー性基への結合を形成する。少なくとも1つの環構造の置換基に加えて又はそれに取って代わって、飽和配位子はポリマー性基への結合を形成するために1個以上の重合可能な基と置換できる。
【0032】
重合可能な基は、例えば、アルデヒド、アルコール、シアナト、イソシアナト、少なくとも一不飽和のオレフィン性基、例えば、ビニル、アルキリデン、アリル、又はオキセタン、アクリル、アミン、オキシラン、炭酸又はエステル基によって形成できる。この実施態様において、重合可能な基に結合した重合性基は、不活性基、電子輸送基及び/又は正孔輸送基であってよい。この実施態様において、重合性基が飽和配位子に更に結合することは有利である。
【0033】
更に、2個以上の同一の又は異なる本発明による発光体化合物の分子は、独立して環構造A、B又はCの1つへの結合により、及び、代わりに又は付加的に飽和配位子への結合により重合性基に結合することができる。この実施態様において、少なくとも2個以上の本発明による発光体化合物の分子を含み、1つのポリマー性基に結合した、デンドリマー、オリゴマー又はポリマーが形成される。2個以上の発光体化合物の共通のポリマー性基への結合とは無関係に、該発光体化合物は1個以上の同一の又は異なるポリマー性基によって任意に置換することができ、これらは電気的機能を任意に提供し得る、例えば、これらは不活性基、電子輸送基及び/又は正孔輸送基から独立して選択される。
【0034】
更に、環構造A、B及びCへの置換基は、芳香族の下位構造、例えば、環構造A、B及び/又はCへの共役を有する又は有していない芳香族残基を形成することができ、有利には、環構造A、B及びCを含む、高縮合系をもたらす。
【0035】
本発明による係る化合物の特殊な利点は、放射された光の波長、即ち、励起下で放射された光の色に、原子又は基R1、R2、X1、X2,X3及び/又はX4の変更によって容易に影響を与え得ることである。例えば、R1、R2、及びX1〜X4の1つの変化による化合物の双極子モーメントのシフトは、放射された波長の範囲に直接影響を与える。
【0036】
極大波長のシフトは、有利には、UV又は可視〜NIR波長の範囲に渡って達成できる。有利な実施態様によると、波長のシフトは、共役の芳香族である環構造B及びC、更に有利には共役系を形成する環構造A、B及びCに対して特に顕著である。
【0037】
三重項発光体の電気、光学、物理、熱及び化学の特性は、環構造B及びCへの置換基並びに芳香族構造Aへの置換基を選択することによって所望の特性に更に適合させることができる。環構造B及びCは、置換基X1、X2及びX3、X4によって、それぞれ誘導体化される。発光体の波長に影響を及ぼすために、環構造A、B及び/又はCのいずれかへの置換基、例えば、構造IIのR1〜R5の例は、有利には電荷輸送基から選択される。例えば、電子輸送部分及び正孔輸送部分から選択される。
【0038】
電子輸送物質及び電子輸送基の例は、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(ブフェン)及びその誘導体、例えば2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP)、2,5−ジアリールオキサジアゾール及びその誘導体、例えば2−(p−tert.−ブチルフェニル)−5−(p−ビフェニル)−オキサジアゾール(PBD)、オリゴ−(ベンゾオキサジアゾール−2イル)−アレーン及びその誘導体、例えばビス−2,5−(5−tert.−ブチル−ベンゾオキサジゾール−2−イル)−チオフェン(BBOT)、1,3−ビス[5−(アリール)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン及びその誘導体、例えば1,3−ビス[5−(p−tert.−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(OXD−7)、2,5−ジアリールトリアゾール及びその誘導体、例えば2−(p−tert.−ブチルフェニル)−5−(p−ビフェニル)−トリアゾール(TAZ)、及び2,2’,2"−(1,3,5−フェニレン)−トリス(1−フェニルベンゾイミダゾール)(TPBI)である。
【0039】
正孔輸送物質及び正孔輸送基の例は、ポリ(9−ビニルカルバゾール)、トリス[(N,N−ジアリール)アミノ]−トリフェニルアミン、例えば4,4’,4’’−トリス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノトリフェニルアミン](1−TNATA)及びその誘導体、4,4’,4’’−トリス[N−(2−ナフチル)−N−フェニルアミノ)−トリフェニルアミン](2−TNATA)又は4,4’,4’’−トリス[(N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ)−トリフェニルアミン](m−TDATA)およびその誘導体、4,4’,4’’−トリス(カルバゾール−9−イル)トリフェニルアミン](TCTA);N,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジンとしてのN,N,N’,N’−テトラ−アリールベンジジン及びその誘導体、N,N’−ビス(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(α−NPD)、N,N’−ジ(ナフタレン−2−イル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(β−NPD)、4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル(CBP)およびその誘導体、およびこれらのヘテロ原子置換された類縁物(例えば、チエニル誘導体、セレニル誘導体、フラニル誘導体);4,4’−ビス(2,2’−ジフェニルビニル)−1’,1’−ビフェニル(DPVBI);トリアリールアミンおよびその誘導体、4,4’−ビス(N,N−ジアリールアミノ)−テルフェニル、4,4’−ビス(N,N−ジアリールアミノ)−クアテルフェニルおよびその同族体および誘導体、N,N’−ジメチルキナクリドン(dimethylchinacridone)及びその誘導体、1,1−ビス−(4−ビス(4−メチル−フェニル)−アミノフェニル)−シクロヘキサン(TPAC)及びN,N,N’,N’−テトラアリールジアミノフルオレン並びにそれらの誘導体である。
【0040】
発明の詳細な説明
一般式Iの実施態様は、以下の式II:
【化3】
[式中、置換基は式Iに示されたように定義され、置換基R3〜R5はR1及び/又はR2に関して定義された基から選択される]による化合物である。
【0041】
更に特殊な実施態様の式Iによる化合物は以下に示され、
その際、補助的な飽和配位子の変化は1つの例示的な配位子上に示される:
【化4】
【化5】
その際、環構造Bは変化する:
【化6】
その際、環構造A、B及びCの縮合系は、更に縮合された置換基により形成される:
【化7】
【0042】
本発明による化合物を含む電気光学素子の例として、添付の図面を略示すると、
・図1はOLEDの断面図である。
・図2はインバーテッド型OLEDの断面図である。
・図3は更なる実施態様の2つの隣接した放射層を有するOLEDの断面図である。
・図4は太陽電池の断面図である。
・図5は、OLEDの放射層を形成する本発明による化合物のエレクトロルミネセンススペクトルを示す。
・図6は図1で使用したOLEDに印加した電圧に対する電流密度を示す。
・図7は図1で使用したOLEDに印加した電圧に対する輝度を示す。
・図8は異なる放射層厚さのTPBiマトリックス中に発光体としてIr(MNTZ)3を備える図3によるOLEDに印加した電圧に対する電流密度のプロットを示す。
・図9は図8の測定のために使用したOLEDの輝度のプロットを示す。
・図10は図8の測定のために使用したOLEDの1つの輝度効率のプロットを示す。
・図11は図8の測定のために使用したOLEDの1つの長時間安定度のプロットを示す。
・図12はIr(MNTZ)3のエレクトロルミネセンススペクトルを示す。
・図13はIr(MNTZ)3のDSCを示す。
・図14はIr(MNTZ)3のHPLCクロマトグラムを示す。
・図15及び16は本発明による化合物の発光スペクトルを示す。
【0043】
図1〜3のOLEDにおいて、放射層を電子輸送層(ETL)と正孔輸送層(HTL)との間に配置することによって、放射層からの電荷輸送及び放射層への電荷輸送を可能にする。図3のOLEDでは、放射層は、発光体、例えば例1のIr(MNTZ)3を異なるマトリックス化合物中に、それぞれ例えばTPBI及びTCTA中10% w/wで含む2つの隣接層から形成される。
【0044】
太陽電池の場合、本発明の化合物はn型層半導体とp型層半導体との間に配置され、図4において「接合部」として示される。その中で、係る半導体層は、本発明の化合物によって入射光の変換から生じた電荷の輸送媒体として働く。
【0045】
実施例1:トリス(2−メチルナフト[1,2−d]チアゾール)イリジウム(III)(Ir(MNTZ)3)の合成
Sprouseら(J. Am. Chem. Soc. 106, 6647-6653 (1984年))に従って生成したジ−μ−クロロテトラキス(2−メチルナフト[1,2−d]チアゾール)ジ−イリジウム(III)を、M. G. Colomboら(Inorg. Chem. 33, 545- 550 (1994年))によるトリフルオロ酢酸の銀塩と反応させた。
【0046】
詳細には、塩化イリジウム(III)水和物(4.0g、0.011mol)及び2−メチルナフト[1,2−d]チアゾール(5.6g、0.028mol)を2−エトキシエタノール(138ml)及び水(46ml)中で懸濁させ且つ不活性ガス雰囲気下で68時間130℃で攪拌した。反応溶液を濾別してn−ヘキサン及びジエチルエーテルで洗う。生成物は黄色の微粉末固体である(収率61%)。
【0047】
不活性ガス雰囲気下で、ジ−μ−クロロテトラキス(2−メチルナフト[1,2−d]チアゾール)ジ−イリジウム(III)(500mg、0.4mmol)を、2−メチルナフト[1,2−d]チアゾール(319mg、1.6mmol)及びトリフルオロ酢酸の銀塩(177mg、0.8mmol)とともに、120℃で75時間攪拌した。この固体を単離してエタノールで洗う。ジクロロメタンを溶出剤として使用するカラムクロマトグラフィーにより精製し且つメタノールから再結晶化させた後、白黄色の粉末が得られる(収率18%)。
【0048】
以下の特性を測定した:
1H NMR([D6]−DMSO):
δ=7.88(d,1H),7.78(d,1H),7.35(d,1H),6.91(m,1H),6.34(d,1H),2.15(s,3H)
13C NMR([D6]−DMSO):
δ=168.5(s),157.5(s),143.3(s),138.4(s),131.4(d),130.3(s),127.1(d),126.1(d),124.8(s),117.9(d),117.8(d),16.6(q)
MS(EI):
m/z(%):787(100)[M]+
UV/Vis(CH2Cl2):
λ/nm(ε)=341(16 900),278(41 000),230(106 000)
C36H30IrN3O3(744.86) 計算値:C54.94 H3.07 N5.34
測定値:C54.61 H3.17 N5.31
【0049】
一般的な反応スキームを以下に示す:
【化8】
【0050】
実施例2:メトキシル化されたIr(OMe−MNTZ)3の合成
環構造Aにメトキシ置換基を導入するために、2−メチルナフト[1,2−d]チアゾール(1g、5.02mmol)とLiBr(0.479g、5.52mmol)を10mlの無水のアセトニトリル中で懸濁させた。アセトニトリル中で懸濁したCAN((NH4)2Ce(NO3)6、3.026g、5.52mmol)を、窒素雰囲気下において室温で1時間にわたり滴加し攪拌した(Subhas Chandra Royら、Tetrahedron Lett. 42, 6941(2001年)に従う)。水を用いた精製及びジクロロメタンを使用するカラムクロマトグラフィーにより淡黄色固体が得られる(収率30%、0.436g、1.57mmol)。生成物(300mg、1.078mmol)を、次いでナトリウムメトキシド(582mg、10.78mmol)を用いてメタノール(2ml)中で温めた(H. L. Aalten Tetrahedron 45(17), 5565 (1989年)に従う)。CuBr(15mg、0.108mmol)を熱溶液に添加し4時間にわたり還流した。水を用いた精製及びカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/酢酸エチルエステル10:1)により白色固体が得られる(収率68%、168mg、0.732mmol)。Irとの錯化は、以下の反応スキームによるIr(MNTZ)3と類似する:
【化9】
【0051】
実施例3:シアノ置換された誘導体(Ir(シアノ−MNTZ)3)の合成
ニトリロ置換基を環構造Aに導入するために、以下の反応スキームを使用した:
【化10】
【0052】
実施例4:ビス(2−メチルナフト[1,2−d]チアゾール)イリジウム(III)−(2−ピリジル)ギ酸((MNTZ)2Irpic)の合成
不活性ガス雰囲気下で、ジ−μ−クロロテトラキス(2−メチルナフト[1,2−d]チアゾール)ジ−イリジウム(III)(300mg、0.24mmol)及びピリジン−2−カルボン酸(74mg、0.6mmol)をエタノール中で懸濁させた。塩基の添加後、反応混合物を還流下で50時間にわたり攪拌する。水(15ml)の添加後、微細な緑灰色の沈殿物を単離し、ジクロロメタン/アセトンを溶出剤として使用するカラムクロマトグラフィーにより精製し、メタノールから再結晶化させると黄褐色の固体が得られる(収率23%)。
【0053】
以下の特性を測定した:
1H NMR([D6]−DMSO):
δ=8.10(m,2H),7.95(m,2H),7.77(m,3H),7.51(m,1H),7.37(m,2H),6.96(m,2H),6.29(d,1H),6.11(d,1H),2.99(s,3H),2.11(s,3H)
MS(EI):
m/z(%):711(100)[M]+
【0054】
一般的な反応スキームを以下に示す:
【化11】
【0055】
実施例5:ビス(2−メチルナフト[1,2−d]チアゾール)イリジウム(III)−2−(5−フェニル−2H−[1,2,4]トリアゾール−3−イル)ピリジン((MNTZ)2Irトリアゾール)の合成
P. Coppoら(Chem. Comm. 1774-1774(2004年))に従って、ジ−μ−クロロテトラキス(2−メチルナフト[1,2−d]チアゾール)ジ−イリジウム(III)を2−(5−フェニル−2H−[1,2,4]トリアゾール−3−イル)ピリジンと反応させる。
【0056】
詳細には、不活性ガス雰囲気下で、ジ−μ−クロロテトラキス(2−メチルナフト[1,2−d]チアゾール)ジ−イリジウム(III)(300mg、0.24mmol)と2−(5−フェニル−2H−[1,2,4]トリアゾール−3−イル)ピリジン(136mg、0.60mmol)を、ジクロロメタン(6.6ml)及びエタノール(2ml)中で懸濁させる。塩基の添加後、混合物を室温で41時間にわたり攪拌する。単離した粗生成物を、ジクロロメタン/アセトンを溶出剤として使用するカラムクロマトグラフィーにより精製すると、黄色の固体が得られる(収率10%)。m/z(%)の質量=810(22)[M]+は、MS(EI)によって測定した。一般的な反応スキームを以下に示す:
【化12】
【0057】
実施例4:トリス(2−メチルナフト[1,2−d]チアゾール)イリジウム(III)を発光層として含むOLED
本発明による化合物を含むエレクトロルミネセンス素子の1例として、マトリックス材料としてのPVK(ポリ(9−ビニルカルバゾール))と混合されているトリス(2−メチルナフト[1,2−d]チアゾール)イリジウム(III)を発光層として有するOLEDが、溶液からの析出により作られた。係るOLEDは、ITOで被覆されたガラスの陽極、正孔輸送材料としてのポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン−ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS))、発光層、電子輸送層及び/又は正孔ブロッキング層としての2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP)、並びにLiF/Al陰極層から成る。
【0058】
電流が印加された時に、図4〜6に描かれた光学的及び電気的応答がそれぞれ得られた。正規化された輝度強度は、図4において任意の単位(a.u.)で得られ、約500nm〜650nmの発光を示す。印加された電圧に応じた電流密度を図5に示す。図6は印加された電圧に応じた輝度を絶対値で示す。
【0059】
本発明による更なる化合物の三重項発光体の特性及び発光層の形成に対するそれらの適性はまた、典型的なエレクトロルミネセンス素子としてOLED中に示すことができる。
【0060】
以下の例示的な化合物は、小さい置換基を環の1つに少数導入する、例えば、置換基を1つだけ環A、B及びCを含む核の化合物に導入することによって発光波長が変わり得ることを実証する。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
【表4】
【0065】
【表5】
【0066】
図3によるOLEDの測定効率を図8〜10に示し、これらは本発明の化合物により高い効率が得られることを実証する。
【0067】
本発明の化合物の高い長期安定性を、図11に示した結果によって実証する。Ir(MNTZ)3のエレクトロルミネセンススペクトルを図12に示す。
【0068】
図13は示差走査熱量測定法(DSC)を示し、これは分解なしに480℃の顕著に高い融点である非常に高い温度安定性を実証する。また、実施例1に従って合成かつ精製した化合物のHPLCクロマトグラムを図14に示し、これは広範な精製手順なしに高い純度が得られることを実証する。
【0069】
これらの図は本発明の化合物の発光を示し、これは発光波長のシフトがヘテロ原子及び/又は置換基の導入によって得られることを実証する。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】図1はOLEDの断面図である。
【図2】図2はインバーテッド型OLEDの断面図である。
【図3】図3は更なる実施態様の2つの隣接した放射層を有するOLEDの断面図である。
【図4】図4は太陽電池の断面図である。
【図5】図5は、OLEDの放射層を形成する本発明による化合物のエレクトロルミネセンススペクトルを示す。
【図6】図6は図1で使用したOLEDに印加した電圧に対する電流密度を示す。
【図7】図7は図1で使用したOLEDに印加した電圧に対する輝度を示す。
【図8】図8は異なる放射層厚さのTPBiマトリックス中に発光体としてIr(MNTZ)3を備える図3によるOLEDに印加した電圧に対する電流密度のプロットを示す。
【図9】図9は図8の測定のために使用したOLEDの輝度のプロットを示す。
【図10】図10は図8の測定のために使用したOLEDの1つの輝度効率のプロットを示す。
【図11】図11は図8の測定のために使用したOLEDの1つの長時間安定度のプロットを示す。
【図12】図12はIr(MNTZ)3のエレクトロルミネセンススペクトルを示す。
【図13】図13はIr(MNTZ)3のDSCを示す。
【図14】図14はIr(MNTZ)3のHPLCクロマトグラムを示す。
【図15】図15は本発明による化合物の発光スペクトルを示す。
【図16】図16は本発明による化合物の発光スペクトルを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学素子に適した化合物であって、一般式I
【化1】
[式中、環Bは5員環であり、環Aは6員環であり、環Cは6員環又は5員環であり、
X1はCR’及びNから選択され、
X2はNR’、O、S、Se、Te、CR’R"及びSiR’R"から選択され、
X3、X4は独立してN、NR’、S、O、CR’、CR’R"、CR’=CR"、N=N、CR’=N、N=CR"、SiR’、SiR’R"、Se及びTeから選択され、
R’、R"はA1、CN、NA1A2、OA1、SA1、F、Cl、Br、I、CNO、NCO、CA1O、COOA1から選択され、
A1、A2は任意の置換された(ヘテロ)アルキル、(ヘテロ)アリール、又はHであり、
MetはIr、Pt、Ru、Re、Pd及びOsから選択され、Met=Ir、Os、Ru、Reの場合n=1〜3、m=3−nであり且つMet=Pt、Pdの場合n=1〜2、m=2−nであり、
R1、R2は独立してA1、CN、NA1A2、OA1、SA1、F、Cl、Br、I、CNO、NCO、CA1O、COOA1から選択され、
【化2】
はモノアニオン性飽和配位子である]の構造を含むことを特徴とする、電気光学素子に適した化合物。
【請求項2】
A1及び/又はA2は、アルデヒド、アルコール、シアナト、イソシアナト、少なくとも一不飽和のオレフィン性基、ビニル、アルキリデン、アリル、オキセタン、アクリル、アミン、オキシラン、炭酸又はエステル基を含む群から選択される重合可能な基と置換されることを特徴とする、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
環構造A、B及びCが縮合系を形成することを特徴とする、請求項1又は2記載の化合物。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項記載の化合物であって、以下の式II:
【化3】
[式中、R1、R2、R3、R4及びR5は独立してA1、CN、NA1A2、OA1、SA1、F、Cl、Br、I、CNO、NCO、CA1O、COOA1から選択され、A1、A2は任意の(ヘテロ)アルキル、(ヘテロ)アリール、又はHである]による構造を有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項5】
R1〜R5のいずれかが互いに結合し、環構造A、B及び/又はCの1つ以上に縮合された置換基を形成することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項6】
環構造A、B及びCが電荷輸送部分と置換されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項7】
Z1及びZ2は、化学結合によって又は1、2又は3個の付加的な原子をZ1とZ2との間に配置する中間基によって連結する原子を表し、Z1及びZ2は独立してメチレン、置換されたメチレン、N、NR1、S、O、Se、Te、CR1、SiR1、CR1R2、SiR1R2、CR2=CR3、N=N、CR1=Nから選択され、R1〜R3は独立してA1、CN、NA1A2、OA1、SA1、F、Cl、Br、I、SO2A1、CNO、NCO、CA1O、COOA1から選択され、A1及びA2は、任意の置換された(ヘテロ)アルキル、(ヘテロ)アリール、又はHであり、前記(ヘテロ)アルキル、(ヘテロ)アリールは重合可能な基を有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項8】
モノアニオン性飽和配位子
【化4】
が、アセチルアセトナート、2−ピリジルアセテート、ジピバロイルメタナート、2−ピリジルギ酸、2−(4H−[1,2,4]トリアゾール−3−イル)ピリジンを小単位として含む置換基の群から選択される部分を表すことを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項記載の化合物であって、1〜18個の炭素原子を有する直鎖、分枝鎖又は環状の炭化水素から選択された(ヘテロ)アルキル及び1〜18個の炭素原子を有する一不飽和、二不飽和及び多不飽和の直鎖、分枝鎖又は環状の炭化水素から選択された(ヘテロ)アリールであることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項10】
前記重合可能な基が、アルデヒド、アルコール、シアナト、イソシアナト、少なくとも一不飽和のオレフィン性基、ビニル、アルキリデン、アリル、オキセタン、アクリル、アミン、オキシラン、炭酸又はエステル基を含む群から選択されることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項11】
前記重合可能な基が、ポリアルキレン基、マトリックス基、電子輸送基及び/又は正孔輸送基から選択されるポリマー性基に連結することを特徴とする、請求項10記載の化合物。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項記載の化合物を部分として少なくとも2個含むことを特徴とする、オリゴマー、デンドリマー又はポリマー。
【請求項13】
請求項1から11までのいずれか1項記載の化合物の電気光学素子における三重項発光体としての使用。
【請求項14】
請求項1から11までのいずれか1項記載の化合物の製造方法。
【請求項15】
ハロゲンが塩素又は臭素である、中間μ-ハロゲノ錯体が存在することを特徴とする、請求項14記載の方法。
【請求項16】
請求項1から11までのいずれか1項記載の化合物を使用することを特徴とする、電気光学素子の製造方法。
【請求項17】
請求項1から11までのいずれか1項記載の化合物を溶液からの塗布又はスパッタリングによって適用することを特徴とする、請求項15記載の方法。
【請求項18】
前記塗布が噴霧、回転、浸漬又はナイフ塗布又は印刷であることを特徴とする、請求項16記載の方法。
【請求項19】
請求項1から9までのいずれか1項記載の化合物が使用され、前記素子の有機層及び最終的な接触電極を真空下で形成させることを特徴とする、請求項16記載の方法。
【請求項20】
真空法がPVD法(物理的蒸着)、CVD法(化学的蒸着)、又はOVPD法(有機気相蒸着)であることを特徴とする、請求項19記載の方法。
【請求項21】
請求項1から11記載の化合物を含むことを特徴とする、電気光学素子。
【請求項22】
前記電気光学素子がOLED、OFET、レーザー又は光起電力素子であることを特徴とする、請求項21記載の電気光学素子。
【請求項1】
電気光学素子に適した化合物であって、一般式I
【化1】
[式中、環Bは5員環であり、環Aは6員環であり、環Cは6員環又は5員環であり、
X1はCR’及びNから選択され、
X2はNR’、O、S、Se、Te、CR’R"及びSiR’R"から選択され、
X3、X4は独立してN、NR’、S、O、CR’、CR’R"、CR’=CR"、N=N、CR’=N、N=CR"、SiR’、SiR’R"、Se及びTeから選択され、
R’、R"はA1、CN、NA1A2、OA1、SA1、F、Cl、Br、I、CNO、NCO、CA1O、COOA1から選択され、
A1、A2は任意の置換された(ヘテロ)アルキル、(ヘテロ)アリール、又はHであり、
MetはIr、Pt、Ru、Re、Pd及びOsから選択され、Met=Ir、Os、Ru、Reの場合n=1〜3、m=3−nであり且つMet=Pt、Pdの場合n=1〜2、m=2−nであり、
R1、R2は独立してA1、CN、NA1A2、OA1、SA1、F、Cl、Br、I、CNO、NCO、CA1O、COOA1から選択され、
【化2】
はモノアニオン性飽和配位子である]の構造を含むことを特徴とする、電気光学素子に適した化合物。
【請求項2】
A1及び/又はA2は、アルデヒド、アルコール、シアナト、イソシアナト、少なくとも一不飽和のオレフィン性基、ビニル、アルキリデン、アリル、オキセタン、アクリル、アミン、オキシラン、炭酸又はエステル基を含む群から選択される重合可能な基と置換されることを特徴とする、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
環構造A、B及びCが縮合系を形成することを特徴とする、請求項1又は2記載の化合物。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項記載の化合物であって、以下の式II:
【化3】
[式中、R1、R2、R3、R4及びR5は独立してA1、CN、NA1A2、OA1、SA1、F、Cl、Br、I、CNO、NCO、CA1O、COOA1から選択され、A1、A2は任意の(ヘテロ)アルキル、(ヘテロ)アリール、又はHである]による構造を有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項5】
R1〜R5のいずれかが互いに結合し、環構造A、B及び/又はCの1つ以上に縮合された置換基を形成することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項6】
環構造A、B及びCが電荷輸送部分と置換されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項7】
Z1及びZ2は、化学結合によって又は1、2又は3個の付加的な原子をZ1とZ2との間に配置する中間基によって連結する原子を表し、Z1及びZ2は独立してメチレン、置換されたメチレン、N、NR1、S、O、Se、Te、CR1、SiR1、CR1R2、SiR1R2、CR2=CR3、N=N、CR1=Nから選択され、R1〜R3は独立してA1、CN、NA1A2、OA1、SA1、F、Cl、Br、I、SO2A1、CNO、NCO、CA1O、COOA1から選択され、A1及びA2は、任意の置換された(ヘテロ)アルキル、(ヘテロ)アリール、又はHであり、前記(ヘテロ)アルキル、(ヘテロ)アリールは重合可能な基を有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項8】
モノアニオン性飽和配位子
【化4】
が、アセチルアセトナート、2−ピリジルアセテート、ジピバロイルメタナート、2−ピリジルギ酸、2−(4H−[1,2,4]トリアゾール−3−イル)ピリジンを小単位として含む置換基の群から選択される部分を表すことを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項記載の化合物であって、1〜18個の炭素原子を有する直鎖、分枝鎖又は環状の炭化水素から選択された(ヘテロ)アルキル及び1〜18個の炭素原子を有する一不飽和、二不飽和及び多不飽和の直鎖、分枝鎖又は環状の炭化水素から選択された(ヘテロ)アリールであることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項10】
前記重合可能な基が、アルデヒド、アルコール、シアナト、イソシアナト、少なくとも一不飽和のオレフィン性基、ビニル、アルキリデン、アリル、オキセタン、アクリル、アミン、オキシラン、炭酸又はエステル基を含む群から選択されることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の化合物。
【請求項11】
前記重合可能な基が、ポリアルキレン基、マトリックス基、電子輸送基及び/又は正孔輸送基から選択されるポリマー性基に連結することを特徴とする、請求項10記載の化合物。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項記載の化合物を部分として少なくとも2個含むことを特徴とする、オリゴマー、デンドリマー又はポリマー。
【請求項13】
請求項1から11までのいずれか1項記載の化合物の電気光学素子における三重項発光体としての使用。
【請求項14】
請求項1から11までのいずれか1項記載の化合物の製造方法。
【請求項15】
ハロゲンが塩素又は臭素である、中間μ-ハロゲノ錯体が存在することを特徴とする、請求項14記載の方法。
【請求項16】
請求項1から11までのいずれか1項記載の化合物を使用することを特徴とする、電気光学素子の製造方法。
【請求項17】
請求項1から11までのいずれか1項記載の化合物を溶液からの塗布又はスパッタリングによって適用することを特徴とする、請求項15記載の方法。
【請求項18】
前記塗布が噴霧、回転、浸漬又はナイフ塗布又は印刷であることを特徴とする、請求項16記載の方法。
【請求項19】
請求項1から9までのいずれか1項記載の化合物が使用され、前記素子の有機層及び最終的な接触電極を真空下で形成させることを特徴とする、請求項16記載の方法。
【請求項20】
真空法がPVD法(物理的蒸着)、CVD法(化学的蒸着)、又はOVPD法(有機気相蒸着)であることを特徴とする、請求項19記載の方法。
【請求項21】
請求項1から11記載の化合物を含むことを特徴とする、電気光学素子。
【請求項22】
前記電気光学素子がOLED、OFET、レーザー又は光起電力素子であることを特徴とする、請求項21記載の電気光学素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2009−507064(P2009−507064A)
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529637(P2008−529637)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際出願番号】PCT/EP2006/066153
【国際公開番号】WO2007/028822
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(303035097)テヒニッシェ ウニヴェルジテート カローローヴィルヘルミーナ ツー ブラウンシュヴァイク (2)
【氏名又は名称原語表記】TECHNISCHE UNIVERSITAET CAROLO−WILHELMINA ZU BRAUNSCHWEIG
【住所又は居所原語表記】Pockelsstrasse14, D−38106 Braunschweig, Germany
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際出願番号】PCT/EP2006/066153
【国際公開番号】WO2007/028822
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(303035097)テヒニッシェ ウニヴェルジテート カローローヴィルヘルミーナ ツー ブラウンシュヴァイク (2)
【氏名又は名称原語表記】TECHNISCHE UNIVERSITAET CAROLO−WILHELMINA ZU BRAUNSCHWEIG
【住所又は居所原語表記】Pockelsstrasse14, D−38106 Braunschweig, Germany
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】
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