説明

縮毛矯正用第1剤および縮毛矯正用剤

【課題】 ダメージ度合いが部分ごとに異なる毛髪であっても、均一性の高い縮毛矯正処理が可能であり、かつ処理後の毛髪をやわらかな感触にし得る縮毛矯正用剤を構成するための縮毛矯正用第1剤と、該第1剤により構成される縮毛矯正用剤とを提供する。
【解決手段】 還元剤とアルカリ剤とが配合され、更に、(A)ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルまたはその塩、(B)ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル以外のリン酸エステルまたはその塩、(C)二塩基酸と1価のアルコールとからなるエステル、および(D)カチオン性界面活性剤またはカチオン性ポリマーが配合された縮毛矯正用第1剤、および該縮毛矯正用第1剤と、少なくとも酸化剤が配合された縮毛矯正用第2剤とで構成される縮毛矯正用剤により、前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縮毛をストレートに矯正するための縮毛矯正用剤と、該縮毛矯正用剤を構成するための縮毛矯正用第1剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パーマネントウェーブや縮毛矯正といった処理は、還元剤を含む第1剤を用いて毛髪中のシスチン結合を還元し、所望の状態とした後に酸化剤を含む第2剤を用いてその状態を固定する処理である。近年では、特許文献1に記載されているようにアイロンを用いた縮毛矯正方法が開発されており、美容技術として定着してきている。
【0003】
縮毛矯正の場合、毛髪を継続してストレートな状態に保つには縮毛状態の新生部も処理する必要があるため、平均して3〜6か月に1度程度の割合で縮毛矯正処理が繰り返し行われるのが通常である。ところが、縮毛矯正処理は前記のように毛髪に化学的処理を施すものであり、処理回数が増えるに従って毛髪のダメージ度合いが大きくなる。また、最近では、毛髪にブリーチや染毛といった化学的処理を施すことも多く、これらの処理によって毛髪は更にダメージを受けるようになる。
【0004】
最近では毛髪を健康な状態に保つニーズも高いことから、例えば、特許文献2や特許文献3に示されているように、毛髪損傷防止効果を有する縮毛矯正用剤も開発されている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−2459号公報
【特許文献2】特開2006−16391号公報
【特許文献3】特開2006−298822号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のように、例えば毛髪を継続してストレート状態に保つために、縮毛矯正処理を繰り返し施している毛髪は、その毛先に近づくほど縮毛矯正処理を数多く受けており、例えば毛先部分やその近傍と、新生部やその近傍とでは、ダメージ度合いが大きく異なっている。
【0007】
ダメージ度合いの異なる部分同士では縮毛矯正用剤による処理効果が異なってしまうため、前記のようにダメージ度合いが部分ごとに大きく異なる毛髪では、毛髪の良好な感触を保持したまま、均一性の高いストレート状態にすることが困難になっており、前記のような毛髪損傷効果を有する縮毛矯正用剤においても、かかる点において未だ改善の余地を残している。
【0008】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ダメージ度合いが部分ごとに異なる毛髪であっても、均一性の高い縮毛矯正処理が可能であり、かつ処理後の毛髪をやわらかな感触にし得る縮毛矯正用剤を構成するための縮毛矯正用第1剤と、該第1剤により構成される縮毛矯正用剤とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成し得た本発明の縮毛矯正用第1剤は、還元剤とアルカリ剤とが配合されたものであって、更に(A)ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルまたはその塩、(B)ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル以外のリン酸エステルまたはその塩、(C)二塩基酸と1価のアルコールとからなるエステル、および(D)カチオン性界面活性剤またはカチオン性ポリマーが配合されたものであることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の縮毛矯正用剤は、本発明の縮毛矯正用第1剤と、少なくとも酸化剤が配合された縮毛矯正用第2剤とで構成されるものである。
【0011】
前記の通り、縮毛矯正処理を繰り返すなどしてダメージを受けた毛髪は、根元から毛先にかけてダメージ度合いが異なっている。また、毛髪一本単位でも、その表面部分が最もダメージを受けている。
【0012】
毛髪の部分ごとにダメージ度合いが異なる場合、そのダメージ度合いの違いに応じて毛髪の親水性の度合いも異なるようになる。縮毛矯正用第1剤に配合される還元剤は水溶性化合物であるため、毛髪の中でも、よりダメージ度合いが大きく親水性の度合いが大きな部分で、より強く反応し、ダメージ度合いが比較的小さく親水性の度合いが小さな部分では、反応があまり進行しない。その結果、還元反応を毛髪全体にわたって均一に生じさせることが難しくなり、毛髪を均一性の高いストレート状態にすることが困難となる。
【0013】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、還元剤とアルカリ剤を含有する縮毛矯正用第1剤に、(A)ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルまたはその塩、(B)ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル以外のリン酸エステルまたはその塩、(C)二塩基酸と1価のアルコールとからなるエステル、および(D)カチオン性界面活性剤またはカチオン性ポリマーを配合することにより、ダメージ度合いが部分ごとに異なる毛髪に対しても、還元剤による効果がより均一に生じるように還元反応をコントロールできることを見出した。そして、前記の縮毛矯正用第1剤と、酸化剤を含有する縮毛矯正用第2剤とで構成される縮毛矯正用剤によれば、ダメージ度合いが部分ごとに異なる毛髪であっても、良好なストレート状態にでき、かつ処理後の毛髪をやわらかな感触にできることを見出した。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ダメージ度合いが部分ごとに異なる毛髪に対しても、均一性の高い縮毛矯正処理が可能であり、かつ処理後の毛髪をやわらかな感触にし得る縮毛矯正用剤を構成し得る縮毛矯正用第1剤と、前記縮毛矯正用剤とを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の縮毛矯正用第1剤における(A)成分であるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルまたはその塩、および(B)成分であるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル以外のリン酸エステルまたはその塩[以下、「(A)成分以外のリン酸エステルまたはその塩」という場合がある]は、還元剤を含めた縮毛矯正用第1剤の毛髪への浸透性を高めて、還元剤の作用を引き出す作用を有する成分である。これら(A)成分および(B)成分の使用によって、縮毛矯正用第1剤による毛髪の化学的損傷を抑制しつつ、良好な縮毛矯正作用を引き出している。また、これら(A)成分および(B)成分は、縮毛矯正時におけるコーミングや高温整髪用アイロンによる毛髪への物理的処理の際に、毛髪を保護して損傷を抑制する作用や、処理後の毛髪の感触(やわらかさやしっとり感)を高める作用も有している。
【0016】
(A)成分であるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルまたはその塩において、エチレンオキシドの付加モル数は特に限定されず、例えば、縮毛矯正用第1剤は乳化物であることが好ましいので、その乳化状態の安定性を考慮して選択すればよい。(A)成分の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンオクチルエーテルリン酸、ポリオキシエチレン(4)デシルエーテルリン酸(前記の括弧内の数値は、オキシエチレンユニットの付加モル数を意味している)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウム(ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸ナトリウムなど)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸ジエタノールアミン(ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ジエタノールアミンなど)、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸トリエタノールアミン(ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸トリエタノールアミンなど)などが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用しても構わない。これらの中でも、還元反応の均一性を高める作用がより良好であり、また、乳化状態を安定に保つ作用も優れている点から、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸がより好ましい。
【0017】
縮毛矯正用第1剤におけるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルまたはその塩の配合量は、前記の通り縮毛矯正用第1剤は乳化物とすることが好ましいので、例えば、その乳化状態に応じて適宜調整すればよいが、その使用による作用をより有効に発揮させる観点から、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましい。また、縮毛矯正用第1剤中のポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルまたはその塩の量が多すぎると、縮毛矯正用第1剤の粘度が高くなりすぎて操作性が低下することがあるため、その配合量は、8質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
【0018】
(B)成分であるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル以外のリン酸エステルまたはその塩としては、例えば、リン酸ジメチル、リン酸セチル、リン酸ジセチル、リン酸トリオレイル、リン酸トリステアリル、またはこれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩など)などが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用しても構わない。これらの中でも、還元剤を含めた縮毛矯正用第1剤の毛髪への浸透性を高める作用や、処理後の毛髪の感触向上作用が特に良好であることから、リン酸ジセチルがより好ましい。
【0019】
縮毛矯正用第1剤におけるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル以外のリン酸エステルまたはその塩の配合量は、前記の通り縮毛矯正用第1剤は乳化物とすることが好ましいので、例えば、その乳化状態に応じて適宜調整すればよいが、その使用による作用をより有効に発揮させる観点から、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましい。また、縮毛矯正用第1剤中のポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル以外のリン酸エステルまたはその塩の量が多すぎると、縮毛矯正用第1剤の粘度が高くなりすぎて操作性が低下することがあるため、その配合量は、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。
【0020】
(C)成分である二塩基酸と1価のアルコールとからなるエステルは、毛髪の各部分におけるダメージ度合いの違いに関わらず、還元剤を含めた縮毛矯正用第1剤を毛髪全体に均一性よく浸透させる作用を有している。すなわち、(C)成分の使用によって、縮毛矯正用第1剤による還元反応を、より均一に生じるようにコントロールすることができる。
【0021】
(C)成分である二塩基酸と1価のアルコールとからなるエステルの具体例としては、例えば、コハク酸ジ2−エチルヘキシル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジ2−エチルヘキシル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジ2−エチルヘキシル、セバシン酸ジブチルオクチルなどが挙げられる。これらの中でも、縮毛矯正用第1剤による均一な還元反応を促進する作用がより高い点で、セバシン酸ジエチルが好ましい。
【0022】
縮毛矯正用第1剤における二塩基酸と1価のアルコールとからなるエステルの配合量としては、その使用による作用をより良好に発揮させ、また、処理後の毛髪の感触をより良好にする観点から、0.001質量%以上であることが好ましく、0.003質量%以上であることがより好ましい。ただし、縮毛矯正用第1剤中の二塩基酸と1価のアルコールとからなるエステルの量が多すぎると、縮毛矯正用第1剤の粘度が変化しやすくなる傾向にあることから、その配合量は、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。
【0023】
(D)成分であるカチオン性界面活性剤またはカチオン性ポリマーは、処理後の毛髪を、毛髪が本来有するやわらかな感触にできる作用(以下、「コンディショニング作用」という)を有している。なお、前記の(A)成分から(C)成分を含む縮毛矯正用第1剤に、(D)成分であるカチオン性界面活性剤またはカチオン性ポリマーを配合することで(すなわち、本発明の縮毛矯正用第1剤とすることで)、(A)成分、(B)成分および(C)成分を配合せず、(D)成分のみを配合した縮毛矯正用第1剤に比べて、毛髪に対するコンディショニング作用が顕著に改善することも、本発明者らは確認している。その理論は必ずしも定かではないが、アニオン性化合物である(A)成分や(B)成分を含む系内にカチオン性化合物である(D)成分を配合することで、(A)成分や(B)成分と(D)成分とのコンプレックスが形成され、これにより、カチオン性化合物である(D)成分が本来有するコンディショニング作用が相乗的に向上しているためであると考えられる。
【0024】
(D)成分であるカチオン性界面活性剤としては、脂肪族アミン塩およびその第4級アンモニウム塩、環式第4級アンモニウム塩が挙げられる。脂肪族アミン塩としては、例えば、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミドなどのアミドアミン塩が挙げられる。脂肪族アミン塩の第4級アンモニウム塩としては、例えば、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化アルキル(16,18)トリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウムサッカリン、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウムサッカリン、塩化アルキル(28)トリメチルアンモニウム、塩化ジPOE(2)オレイルメチルアンモニウム、塩化ジPOEステアリルメチルアンモニウム、塩化POE(1)POP(25)ジメチルメチルアンモニウム、塩化POPメチルジエチルアンモニウムなどのモノアルキル4級アンモニウム塩;塩化ジアルキル(12〜15)ジメチルアンモニウム、塩化ジアルキル(12〜18)ジメチルアンモニウム、塩化ジアルキル(14〜18)ジメチルアンモニウム、塩化ジココイルジメチルアンモニウム、塩化ジセチルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化イソステアリルラウリルジメチルアンモニウムなどのジアルキル型4級アンモニウム塩;塩化トリPOE(5)ステアリルアンモニウムなどのトリアルキル型4級アンモニウム塩;塩化ベンザルコニウム、塩化ミリスチルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ラウリルジメチル(メチルベンジル)アンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウムなどのベンザルコニウム型アンモニウム;などが挙げられる。なお、前記例示の各化合物における「アルキル」の後の括弧内の数値はアルキル基の炭素数を意味し、また、「POE」はポリオキシエチレンの略で、その後の括弧内の数値はポリオキシエチレンユニットの付加モル数を意味し、「POP」はポリオキシプロピレンの略で、その後の括弧内の数値はポリオキシプロピレンユニットの付加モル数を意味している。
【0025】
また、(D)成分であるカチオン性ポリマーとしては、例えば、4級化セルロース(塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロースなど)、塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]グアーガム、ビニルピロリドン・N,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩、ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム、ジアリル4級アンモニウム塩を構成単位として含有する高分子(塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体、アクリルアミド・アクリル酸・塩化ジメチルジアリルアンモニウム共重合体など)、アクリル酸・アクリルアミド・メタクリルアミドプロピルトリモニウムクロリド、カチオン化澱粉、カチオン化ポリペプタイド、アミノ変性シリコーンなどが挙げられる。
【0026】
縮毛矯正用第1剤には、前記例示のカチオン性界面活性剤およびカチオン性ポリマーを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、縮毛矯正用第1剤には、カチオン性界面活性剤のみ、またはカチオン性ポリマーのみを使用してもよく、カチオン性界面活性剤とカチオン性ポリマーとを併用してもよい。
【0027】
縮毛矯正用第1剤における(D)成分の量には特に制限はなく、縮毛矯正用第1剤の成分組成や、求める効果(処理後の毛髪のやわらかさ向上効果)の程度に応じて適宜設定すればよいが、カチオン性界面活性剤の場合には、その配合量は、その作用をより良好に発揮させる観点から、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。また、縮毛矯正用第1剤中のカチオン性界面活性剤の量が多すぎると、処理後の毛髪がべたつく傾向にあることから、その配合量は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
【0028】
また、(D)成分としてカチオン性ポリマーを使用する場合、縮毛矯正用第1剤における配合量は、その作用をより良好に発揮させる観点から、0.01質量%以上であることが好ましく、0.03質量%以上であることがより好ましい。また、縮毛矯正用第1剤中のカチオン性ポリマーの量が多すぎると、処理後の毛髪がべたつく傾向にあることから、その配合量は、3質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。
【0029】
また、縮毛矯正用第1剤は、前記の(A)〜(D)の各成分以外にも、イソプロパノールを含有していることが好ましく、その場合には、本発明の効果がより向上する。
【0030】
縮毛矯正用第1剤におけるイソプロパノールの含有量(配合量)は、イソプロパノールの使用による作用をより有効に発揮させる観点から、0.001質量%以上であることが好ましく、0.003質量%以上であることがより好ましい。ただし、縮毛矯正用第1剤中のイソプロパノールの量が多すぎると、縮毛矯正用第1剤の香りがイソプロパノールの原料臭によって損なわれる傾向にあるため、その含有量(配合量)は、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。
【0031】
更に、縮毛矯正用第1剤は、該縮毛矯正用第1剤の塗布時に毛髪をストレート形状に保つという操作性を向上させる観点から、25℃で固体のワックス成分を含有していることも好ましい。ワックス成分としては、主に動植物由来の脂肪酸と脂肪族アルコールとのエステル(ロウ)や、トリグリセリドを主成分とする油脂、主に石油由来の炭化水素が挙げられる。これらのうち、25℃で固体のものとしては、例えば、カカオ脂、モクロウ、シア脂、マンゴーバター、カルナルバロウ、キャンデリラロウ、コメウカロウ、セラック、ラノリン、ミツロウ、オゾケライト、セレシン、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリンなどが挙げられる。
【0032】
縮毛矯正用第1剤における25℃で固体のワックスの含有量(配合量)は、例えば、縮毛矯正用第1剤の粘度が、毛髪への塗布に適切な程度になるように調整すればよいが、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上であって、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。
【0033】
縮毛矯正用第1剤には還元剤が使用されるが、この還元剤としては、毛髪中のタンパク質であるケラチンを還元する能力のあるものであれば特に制限はなく、例えば、チオグリコール酸やその誘導体およびそれらの塩(アンモニウム塩、モノエタノールアミン塩など)、システインやその誘導体およびそれらの塩(塩酸塩など)、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩など、メルカプト基を有する種々の還元剤が挙げられる。これらの還元剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
縮毛矯正用第1剤における還元剤の配合量は、要求される還元力に応じて適宜調整すればよいが、チオグリコール酸換算値で、例えば、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上であって、好ましくは13質量%以下、より好ましくは11質量%以下である。なお、ここでいう縮毛矯正用第1剤における還元剤の配合量に係る「チオグリコール酸換算値」は、パーマネント・ウェーブ工業組合から発行されている「パーマネント・ウェーブ用剤製造(輸入)承認基準」の「[別添]パーマネント・ウェーブ用剤品質規格」の「1.チオグリコール酸又はその塩類を有効成分とするコールド二溶式パーマネント・ウェーブ用剤」における「(1)第1剤」に記載の「(ウ)酸性煮沸後の還元性物質」に定められている手法によって求められる「酸性煮沸後の還元性物質の含有率(チオグリコール酸として)(%)」である。
【0035】
また、縮毛矯正用第1剤にはアルカリ剤が使用されるが、このアルカリ剤としては、アルカリ能を有するものであれば特に制限はなく、例えば、アンモニア、アミン類、中性塩タイプのアルカリ剤、塩基性アミノ酸などが挙げられる。アミン類としては、例えば、モノエタノールアミン、イソプロパノールアミンなどが挙げられる。また、中性塩タイプのアルカリ剤としては、例えば、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素アンモニウムなどが挙げられる。塩基性アミノ酸としては、例えば、リジン、アルギニンが挙げられる。これらのアルカリ剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用しても構わない。
【0036】
縮毛矯正用第1剤におけるアルカリ剤の配合量は、処理対象である毛髪に求められる膨潤度に応じて適宜調整すればよいが、通常、0.01質量%以上20質量%以下であり、0.05質量%以上であることがより好ましく、また、10質量%以下であることがより好ましい。
【0037】
更に、縮毛矯正用第1剤には、反応調整剤としてジチオジグリコール酸類[ジチオジグリコール酸や、ジチオジグリコール酸の塩(ジアンモニウム塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩など)]のが通常配合される。縮毛矯正用第1剤におけるジチオジグリコール酸類の含有量(配合量)は、0.1〜4質量%であることが好ましい。
【0038】
また、縮毛矯正用第1剤は、前記の各構成成分の他に、従来公知の縮毛矯正用剤や、その他の毛髪用化粧料などに添加されている各種添加剤を配合することができる。このような添加剤としては、例えば、エステル類[(A)成分、(B)成分、(C)成分および25℃で固体のワックス成分に該当し得るものを除く]、シリコーン類、保湿剤、アニオン性界面活性剤[(A)成分であるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルまたはその塩を除く]、両性界面活性剤、アニオン性高分子、キレート剤、抗炎症剤、酸化防止剤、植物・海藻エキス、アミノ酸およびペプチド、UV吸収剤、防腐剤、香料などが挙げられる。
【0039】
縮毛矯正用第1剤は、乳化物であることが好ましく、また、例えば、クリーム状、ローション状、ゲル状などの形態とすることができるが、毛髪への塗布性などの点で、クリーム状の乳化物とすることが好ましい。
【0040】
縮毛矯正用第1剤は、水を主たる分散媒とする。なお、前記の各種成分の一部は、水に溶解していてもよい。また、分散媒は、その全てが水であってもよく、低級アルコール(エタノールなどの、イソプロパノールを除く炭素数が6以下のアルコール)などの有機溶媒を含有していてもよい。ただし、分散媒中の有機溶媒量が増大すると、頭皮に刺激を与える虞があることから、分散媒中における有機溶媒の含有量は、例えば、5質量%以下であることが好ましい。また、縮毛矯正用第1剤における分散媒の配合量は、例えば、40〜98質量%であることが好ましい。
【0041】
縮毛矯正用第1剤の粘度は、例えば、B型粘度計を用い、4号ローターを使用して12rpmの条件で測定される粘度(以下、本明細書に記載の粘度について、同じ)で、3000〜40000mPa・sであることが好ましい。また、アイロンを使用する縮毛矯正に適用される場合には、縮毛矯正用第1剤の粘度は3000〜20000mPa・sであることがより好ましく、アイロンを使用しない縮毛矯正に適用される場合には、縮毛矯正用第1剤の粘度は20000〜40000mPa・sであることがより好ましい。これは、一般にアイロンを使用しない縮毛矯正処理においては、毛髪に塗布した縮毛矯正用第1剤により毛髪をストレート形状に保つ必要があるが、縮毛矯正用第1剤の粘度が高いと、例えばより固いクリーム状とすることができ、塗布した毛髪をストレート形状に保ちやすくなるからである。
【0042】
なお、縮毛矯正用第1剤の粘度を調節する必要がある場合には、前記の各構成成分の配合量を調整する他、粘度調節剤として高級アルコール(ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコールなどの、炭素数が8〜22の飽和または不飽和のアルコール)を用いることができる。また、特に前記の25℃で固体のワックス成分の配合量の調整も、縮毛矯正用第1剤の粘度調節に有効である。
【0043】
本発明の縮毛矯正用剤は、本発明の縮毛矯正用第1剤と、縮毛矯正用第2剤とで構成される。本発明の縮毛矯正用剤を構成する縮毛矯正用第2剤は、少なくとも酸化剤が配合されたものである。
【0044】
酸化剤には、従来公知の縮毛矯正用剤に使用されている酸化剤が使用できる。例えば、過酸化水素、臭素酸ナトリウムなどが挙げられる。縮毛矯正用第2剤における酸化剤の配合量は、過酸化水素の場合には、例えば、好ましくは1質量%以上であって、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下である。また、臭素酸ナトリウムの場合には、例えば、好ましくは5質量%以上であって、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下である。
【0045】
縮毛矯正用第2剤は、クリーム状、ローション状、ゲル状などの形態とすることができる。
【0046】
また、縮毛矯正用第2剤も、縮毛矯正用第1剤と同様に、水を主たる分散媒とする。分散媒には、水のみを使用してもよく、必要に応じて、エタノール、イソプロパノールなどの低級アルコール(炭素数が6以下のアルコール)などの有機溶媒を、分散媒全量中5質量%以下程度の量で水と併用してもよい。また、縮毛矯正用第1剤における分散媒の配合量は、例えば、60〜98質量%であることが好ましい。
【0047】
更に、縮毛矯正用第2剤には、必要に応じて、従来公知の縮毛矯正用剤や、その他の毛髪用化粧料などに添加されている各種添加剤を配合することができる。このような添加剤としては、例えば、縮毛矯正用第1剤に使用可能な添加剤として例示した各種材料が挙げられる。
【0048】
本発明の縮毛矯正用剤を用いた縮毛の矯正処理方法としては、縮毛矯正用第1剤を毛髪に塗布後、この毛髪をまっすぐに伸ばして矯正し、その後、前記毛髪を洗浄して縮毛矯正用第1剤を除去し、乾燥させてから縮毛矯正用第2剤を塗布する方法が採用できる。そして、縮毛矯正用第2剤の塗布後は、毛髪を洗浄し乾燥させて、処理が終了する。なお、縮毛矯正用第1剤を塗布後、毛髪を洗浄して塗布した縮毛矯正用第1剤を洗い流し、毛髪を乾燥してから矯正することが好ましい。
【0049】
縮毛矯正用第1剤を塗布した後の毛髪の矯正方法としては、例えば、コーミングなどにより毛髪をまっすぐに伸ばしたり、このように毛髪をまっすぐに伸ばした状態で更にドライヤーや他の乾熱器または湿熱器で加温するなどの方法を採用することができる。
【0050】
更に前記の矯正の後に、高温整髪用アイロンを用いて更なる矯正を行うことも可能であり、このような矯正方法を採用することで、より毛髪をストレートにすることができる。現在、美容室において縮毛矯正をおこなう場合、このようなアイロンを用いた縮毛矯正方法が一般的である。
【0051】
高温整髪用アイロンを使用する場合には、その表面温度を、60℃以上、より好ましくは80℃以上であって、220℃以下、より好ましくは200℃以下、更に好ましくは180℃以下とすることが望ましい。そして、このように表面温度を調節した高温整髪用アイロンを用いて毛髪を矯正するには、例えば、縮毛矯正用第1剤を塗布した後、まっすぐに伸ばして矯正した毛髪を、洗浄して縮毛矯正用第1剤を除去し、好ましくは乾燥させた後に、高温整髪用アイロンによる更なる矯正を行う。高温整髪用アイロンによる矯正処理としては、例えば、毛束を取り、根元から前記アイロンで挟み、順次毛先の方向へ処理していく方法が好ましい。毛髪を前記アイロンで挟む時間は2秒以下が好ましく、また、同じ箇所を2度処理しないことが好ましい。2秒を超えて処理する場合、熱による毛髪のタンパク変性が起こり、毛髪損傷につながる虞がある。
【0052】
前記の高温整髪用アイロンとしては、表面を前記の温度に調節でき、フラットな面を有するものであれば特に限定されないが、例えば、「サーマルエフェクトアイロンCR(商品名)」、「サーマルエフェクトアイロンFS(商品名)」,「サーマルエフェクトアイロンGショート(商品名)」(いずれも、ミルボン社製)を用いることが好ましい。
【実施例】
【0053】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。なお、以下の実施例などにおいて、「%」は「質量%」を意味している。また、縮毛矯正用第1剤および縮毛矯正用第2剤の配合量としては、全体で100%となるように各成分の配合量を%で示し、後記の各表中ではその%の表示を省略し、配合量を表す数値のみで表示する。
【0054】
なお、実施例および比較例で使用した原材料は、以下の通りである。
(1)クローダジャパン社製「クロダモル CS 20Acid(商品名)」:ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸[(A)成分]を40%、リン酸ジセチル[(B)成分]を20%、セテアリルアルコール(セチルアルコールとステアリルアルコールとの混合物)を40%含有。
(2)日光ケミカルズ社製「NIKKOL DES−SP(商品名)」:セバシン酸ジエチル[(C)成分]。
(3)花王社製「コータミン86W(商品名)」:塩化ステアリルトリメチルアンモニウム[(D)成分]。
(4)ユニオンカーバイト社製「JR−30M(商品名)」:カチオン化セルロース[(D)成分]。
(5)三井化学社製「IPA−SG−C(商品名)」:イソプロパノール。
(6)三木化学社製「精製蜜蝋」:ミツロウ。
(7)日本精蝋社製「PARAFFIN WAX(商品名)」:パラフィン。
【0055】
実施例1〜8および比較例1〜4
表1〜表2に示す処方で実施例1〜8および比較例1〜4の縮毛矯正用第1剤を調製した。また、表3に示す処方で縮毛矯正用第2剤を調製した。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
【表3】

【0059】
表1および表2における精製水の欄の「計100とする」とは、縮毛矯正用第1剤を構成する精製水以外の各成分の合計量に、精製水の量を加えて100%となるようにしたことを意味している。また、表3における精製水の欄の「計100とする」とは、縮毛矯正用第2剤を構成する精製水以外の各成分の合計量に、精製水の量を加えて100%となるようにしたことを意味している。
【0060】
なお、表1および表2に示す実施例1〜8および比較例1〜4の縮毛矯正用第1剤は、pHが約9.2である。また、表3に示しているように、縮毛矯正用第2剤は、リン酸水素二ナトリウムをpH調整剤として配合することにより、そのpHを3.3に調整した。
【0061】
前記の実施例1〜8および比較例1〜4の縮毛矯正用第1剤と、縮毛矯正用第2剤とを組み合わせて、実施例1〜8および比較例1〜4の縮毛矯正用剤を構成した。なお、後述するように本実施例では、縮毛矯正用剤による縮毛矯正効果の評価を、アイロンを使用する縮毛矯正処理の場合と、アイロンを使用しない縮毛矯正処理の場合の両者について行うが、アイロンを使用する場合に適用される縮毛矯正用剤に係る縮毛矯正用第1剤には、表1および表2に示す各成分に加えて、セテアリルアルコールを粘度調整剤として配合し、それらの粘度を8000mPa・sに調整した。また、アイロンを使用しない縮毛矯正処理による評価用の縮毛矯正用剤に係る縮毛矯正用第1剤には、表1および表2に示す各成分に加えて、セテアリルアルコールを粘度調整剤として配合し、それらの粘度を35000mPa・sに調整した。
【0062】
<縮毛矯正処理>
同一人物の健康毛から採取した縮毛から、長さ22.0cm(ただし、伸ばさずに自然の状態で測定)、重さ0.5gの毛束を複数作製し、これらの毛束を10%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、乾燥させた。
【0063】
[アイロンを使用した縮毛矯正処理]
前記の10%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、乾燥させた各毛束について、まず、その一端から全長の半分の長さまでの部分に1度目の縮毛矯正処理を施した。実施例1〜8または比較例1〜4の縮毛矯正用剤に係る縮毛矯正用第1剤を、各毛束の一端から全長の半分の長さまでの部分に、それぞれ1.0gずつ塗布し、塗布後の毛束をストレート(まっすぐ)に伸ばした状態で、室温で15分放置した後、水洗し、ドライヤーにて乾燥させた。これらの毛束に、180℃に調節した毛髪用アイロンでストレート処理を行った後、縮毛矯正用第2剤1.0gを、縮毛矯正用第1剤を塗布した箇所に塗布して5分放置し、その後水洗し、ドライヤーにて乾燥させて1度目の縮毛矯正処理を終了した。
【0064】
次に、1度目の縮毛矯正処理を施した各毛束について、2度目の縮毛矯正処理を施した。1度目の縮毛矯正処理を施した各毛束の全体に、実施例1〜8または比較例1〜4の縮毛矯正用剤に係る縮毛矯正用第1剤を、それぞれ2.0gずつ塗布し、塗布後の毛束をストレートに伸ばした状態で、室温で15分放置した後、水洗し、ドライヤーにて乾燥させた。これらの毛束に、180℃に調節した毛髪用アイロンでストレート処理を行った後、縮毛矯正用第2剤2.0gを、毛束の全体に塗布して5分放置し、その後水洗し、ドライヤーにて乾燥させて2度目の縮毛矯正処理を終了した。これら2度にわたる縮毛矯正処理を施した各毛束について、後記の各評価を行った。
【0065】
[アイロンを使用しない縮毛矯正処理]
前記の10%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、乾燥させた各毛束(前記のアイロンを使用した縮毛矯正処理を施していない毛束)に対し、アイロンを使用しない以外は、前記のアイロンを使用した縮毛矯正処理と同じ方法による2度の縮毛矯正処理を施した。これらの毛束について、後記の各評価を行った。
【0066】
<ストレート形状の均一性評価>
前記の各縮毛矯正処理を施した毛束について、毛髪のストレート状態の均一性(1度目の縮毛矯正処理も行った部分と、2度目の縮毛矯正処理のみを行った部分との繋がり)について、専門のパネラー20名により官能評価を行った。アイロンを使用した縮毛矯正処理を施した場合の評価結果を表4に、アイロンを使用しない縮毛矯正処理を施した場合の評価結果を表5に示す。なお、評価基準は以下の通りであり、◎および○の評価のものが、ストレート形状の均一性が良好であるといえる。
◎:20名のパネラーのうち、16名以上が均一であると評価。
○:20名のパネラーのうち、12名以上15名以下が均一であると評価。
△:20名のパネラーのうち、8名以上11名以下が均一であると評価。
×:20名のパネラーのうち、7名以下が均一であると評価。
【0067】
<毛髪のやわらかさ評価>
前記の各縮毛矯正処理後の毛束に係る毛髪のやわらかさについては、下記のねじり応力測定と官能評価とによって確認した。ねじり応力測定には、カトーテック社製のトルク感知式ねじり測定装置「KES−YN−1」を用いた。試料毛髪の長さを2cmとし、ねじり回転速度120°/秒、ねじり回転数±3回転の条件でねじり応力を測定した。なお、試料毛髪は、処理後の毛束のうち、縮毛矯正処理を2度施した部分からランダムに選択したものを用いた。ねじり応力測定により得られる数値が小さいほど、毛髪はやわらかいといえる。
【0068】
毛髪のやわらかさの官能評価は、前記の各縮毛矯正処理後の毛束について、専門のパネラー20名により、下記評価基準に従って行った。◎および○の評価のものが、毛髪がやわらかであるといえる。
◎:20名のパネラーのうち、16名以上がやわらかいと評価。
○:20名のパネラーのうち、12名以上15名以下がやわらかいと評価。
△:20名のパネラーのうち、8名以上11名以下がやわらかいと評価。
×:20名のパネラーのうち、7名以下がやわらかいと評価。
【0069】
アイロンを使用した縮毛矯正処理を施した場合の毛髪のやわらかさの評価結果を表4に、アイロンを使用しない縮毛矯正処理を施した場合の毛髪のやわらかさの評価結果を表5に示す。
【0070】
【表4】

【0071】
【表5】

【0072】
表4および表5に示す通り、実施例1〜8の縮毛矯正用剤(実施例1〜8の縮毛矯正用第1剤)により縮毛矯正処理を行った毛束は、アイロンの使用の有無に関わらず、1度しか縮毛矯正処理を施していない箇所(2度目の縮毛矯正処理のみを施した箇所)と2度の縮毛矯正処理を施した箇所との均一性が良好である。よって、実施例1〜8の縮毛矯正用剤(実施例1〜8の縮毛矯正用第1剤)によれば、ダメージ度合いの異なる箇所が存在する毛髪であっても、その全体を均一性高く縮毛矯正処理できることが分かる。
【0073】
また、実施例1〜8の縮毛矯正用剤(実施例1〜8の縮毛矯正用第1剤)により縮毛矯正処理を行った毛束に係る毛髪は、アイロンの使用の有無に関わらず、ねじり応力が比較例1〜4の縮毛矯正用剤で処理した毛束に係る毛髪よりも小さく、やわらかであるといえ、また、パネラーによる官能評価によっても、やわらかさが良好であるとの結果が得られている。
【0074】
更に、実施例の縮毛矯正用剤(縮毛矯正用第1剤)の中でも、イソプロパノールを配合した実施例5、6のものや、更に25℃で固体のワックス成分(ミツロウ、パラフィン)も配合した実施例7、8のものは、縮毛矯正処理後の毛髪のストレート形状の均一性が、特に良好である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元剤とアルカリ剤とが配合された縮毛矯正用第1剤であって、更に
(A)ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルまたはその塩、
(B)ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル以外のリン酸エステルまたはその塩、
(C)二塩基酸と1価のアルコールとからなるエステル、および
(D)カチオン性界面活性剤またはカチオン性ポリマー
が配合されたものであることを特徴とする縮毛矯正用第1剤。
【請求項2】
イソプロパノールを更に含有する請求項1に記載の縮毛矯正用第1剤。
【請求項3】
二塩基酸と1価のアルコールとからなるエステルが、セバシン酸ジエチルである請求項1または2に記載の縮毛矯正用第1剤。
【請求項4】
25℃で固体のワックス成分を更に含有する請求項1〜3のいずれかに記載の縮毛矯正用第1剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の縮毛矯正用第1剤と、少なくとも酸化剤が配合された縮毛矯正用第2剤とで構成されることを特徴とする縮毛矯正用剤。

【公開番号】特開2009−107935(P2009−107935A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−278674(P2007−278674)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(592255176)株式会社ミルボン (138)
【Fターム(参考)】