説明

繊維不織布強化複合材料の製法、及び繊維不織布強化複合材料及びその使用

本発明は、部分的に又は完全に重なり合って配列している2層以上の繊維層の配列の製造(この際、1層以上の繊維層は、炭素繊維、炭素繊維の前駆繊維、セラミック繊維及びその混合物からなる群から選択される繊維少なくとも50質量%まで含む)、少なくとも1繊維層の、1層以上の他の繊維層への、装着結合糸での装着(この際、装着結合糸は、炭素繊維、炭素繊維の前駆繊維、セラミック繊維及びその混合物からなる群から選択される1種以上の繊維を含む)を含む繊維不織布の製造、繊維不織布の、不活性雰囲気下に高温処理時間中少なくとも400℃の温度での高温処理、繊維不織布の、少なくとも1種のバインダーでの含浸、含浸された繊維不織布の硬化、及び含浸された繊維不織布の少なくとも1表面の少なくとも1表面区分の、硬化時間の開始前及び/又は硬化時間の少なくとも部分時間中の任意の加圧(この際、繊維不織布強化複合材料が形成される)を含む繊維不織布強化複合材料の製法に関する。更に本発明は、高温処理された繊維不織布及び繊維不織布強化複合材料の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維不織布(Fasergelege)強化複合材料の製法、及び繊維不織布強化複合材料及びその使用に関する。
【0002】
複合材料の製造のために、繊維を、織物構造又は非織物構造の形で、及び単独のバラ繊維の形で使用することができる。織物の使用は、繊維が大量にかつ比較的均一の分布で複合材料中に取り入れられ得るという利点をもたらす。更に、織物の使用は、繊維が織物中で結合して存在し、かつ通常は互いに更なる固定を必要としないという利点をもたらす。しかし、織物の製造は、殊に、繊細な又は織り難い繊維を使用する場合に、高い経費がかかることが不利である。
【0003】
繊維不織布は、通常は、織物に比べて価格的により有利に製造可能であるという利点を有する。しかし同時に、繊維不織布は極めて結合が悪く、このことは、殊に工業的規模における繊維不織布の加工を著しく困難にさせる。繊維不織布の結合を改善するために、例えば、繊維層を接着させ、熱溶融の結合糸によって結び付け又は編み込ませ又は互いに縫合させることができる。化学結合剤を使用した繊維構造をベースとする複合材料の1製法は、例えば、特許明細書FR1394271に記載されている。
【0004】
しかし、縫合による繊維層の結合は、比較的負荷容量の少ない繊維不織布を生じさせ、一方で接着による結合又は熱溶融の結合糸の使用では、比較的高い温度では、接着剤又は熱溶融の結合糸が溶融又は分解するので、繊維不織布の結合がもはや十分な強度では与えられないという危険が生じる。更に、接着剤又は熱溶融の結合糸の溶融又は分解後に、繊維不織布上に残渣が残り得る。このことは、殊に複合材料の製造では高度に不利であり、それというのも、そのような残渣は、強化繊維不織布と複合材料マトリックスとの間の結合に著しく障害を与え、かつ複合材料の物質特性、殊にその負荷容量及び寿命を明らかに低下させ得るからである。
【0005】
従って、本技術範囲では、繊維不織布強化複合材料の製造を容易にし、かつその際、複合材料の個々の出発物質成分、つまり繊維材料成分、マトリックス材料成分及び固定剤成分が互いに調和するもう1つの方法の開発への要求がある。
【0006】
添付図は、本発明による繊維不織布強化複合材料及び本発明による方法で中間生成物として製造される数種の繊維不織布を解説して非限定的に示す:
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、炭素繊維の前駆繊維紡糸からの縫合を有する繊維不織布(+/−45°不織布)を示す。
【図2】図2は、2000℃で処理した後の炭素繊維の前駆繊維紡糸からの縫合を有する繊維不織布(+/−45°不織布)を示す。
【図3】図3は、2000℃で黒鉛化した後の炭素繊維紡糸で縫合した繊維不織布(+/−45°不織布)を示す。
【図4】図4は、図3で示した生成物から製造した炭素繊維強化炭素セラミックからのプレートを示す。
【0008】
従って、本発明の課題は、出発物質成分が互いに調和していて、かつ繊維不織布の十分で確かな結合が、比較的高い又は極めて高い温度、例えば、400℃〜2700℃以上の範囲で経過する製造段階中及びその後も保証されている、繊維不織布強化複合材料の製法を得ることである。更に、このような方法は、繊維不織布及び従って繊維不織布強化複合材料の、経費的に有利な製造を可能にすべきである。更に、このような方法の方法段階、殊に、繊維不織布の製造は、工業的規模で繊維不織布強化複合材料を製造するためにも好適であるように、比較的高い速度で実施可能であるべきである。更に、本発明による方法で接触する物質は、繊維不織布の加熱及び冷却後に、繊維不織布及び/又は繊維不織布強化複合材料の障害的歪曲化又は波状化が生じないように互いに調和しているべきである。
【0009】
本発明の課題は、次の段階を含む繊維不織布強化複合材料の製法を取得することによって解明される:
a)部分的に又は完全に重なり合って配列している2層以上の繊維層の配列の製造(この際、1層以上の繊維層は、各繊維層の全質量に対して、炭素繊維、炭素繊維の前駆繊維、セラミック繊維及びその混合物からなる群から選択される繊維少なくとも50質量%まで含む)、少なくとも1繊維層の、1層以上の他の繊維層への、装着結合糸での装着(この際、装着は、装着結合糸が、少なくとも1繊維層及び少なくとも1層以上の他の繊維層の少なくとも1層を貫通することを含み、この際、装着結合糸は、炭素繊維、炭素繊維の前駆繊維、セラミック繊維及びその混合物からなる群から選択される1種以上の繊維を含む)を含む繊維不織布の製造、b)繊維不織布の、不活性雰囲気下に高温処理時間中少なくとも400℃の温度での高温処理、c)高温処理された繊維不織布の、少なくとも1種のバインダーでの含浸、d)含浸された繊維不織布の、硬化時間中少なくとも40℃の硬化温度での硬化、及び含浸された繊維不織布の少なくとも1表面の少なくとも1表面区分の、硬化時間の開始前及び/又は硬化時間の少なくとも部分時間中の任意の加圧(この際、繊維不織布強化複合材料が形成される)、及びe)繊維不織布強化複合材料又は複合材料生成物の、硬化及び任意の加圧段階後の任意の取得。
【0010】
更に、本発明は、請求項20に記載の繊維不織布を製造する。更に、本発明は、請求項21に記載の、複合材料、複合材料生成物及び繊維不織布の使用を示す。有利な実施態様は、各々下位請求項に示されている。
【0011】
本発明に至った多数の試験中に、本発明による方法により、高品質の複合材料の製造を可能にする、相互調和の物質を使用した繊維不織布強化複合材料が得られることが確証された。殊に、本発明において、本発明による製法中に不活性雰囲気下に少なくとも400℃の温度に加熱され、しかも確かな結合を製造し、更に工業的製法に好適な速度で製造され得る繊維不織布をベースとする複合材料の製造が驚異的にも成功した。更に、本発明による方法は、繊維層の製造のために、高いフィラメント数を有する比較的安価なロープを使用することができるという重要な利点をもたらす。
【0012】
本発明による方法において、第一段階で、例えば、不活性雰囲気下に少なくとも400℃の温度での処理後も、確実な結合を製造することができる繊維不織布の製造が行なわれ、かつその際、繊維不織布がこの高温処理後に波状にならない又は実質的に波状にならない又は他の不所望な変形を示さないように、材料は相互に調和している。
【0013】
繊維不織布の製造のために、第一段階で、部分的又は完全に重なり合って配列している2層以上の繊維層の配列が製造され、この際、繊維層の1層以上は、炭素繊維、炭素繊維の前駆繊維、セラミック繊維及びその混合物からなる群から選択される繊維少なくとも50%までを含み(各々繊維層の全質量に対して)、かつこの方法で、高価値の負荷し得る複合材料の製造が可能である。
【0014】
炭素繊維及びその前駆繊維、及びセラミック繊維の製造は当業者に公知であり、更に次に説明される。
【0015】
本出願で使用される"繊維層"という概念は、任意の材料又は材料混合物からの繊維層を含む。繊維層とは、殊に一方向(unidirektionale)層又は単一方向層(Einrichtungslage)、即ち、例えば、通常は平行して又は実際に平行して1方向に延びる、多数のフィラメント又はフィラメントを有する繊維層のことであってよい。このことは、例えば、ロープの伸展又はフィラメント又は紡糸の任意の平行配列によって行なわれ得る。更に、繊維層という概念は、フィラメント又は比較的短い長さの繊維断片の、任意の配列又は任意の延伸を有する繊維層、例えば、フリース層も含む。殊に、繊維層は異なった長さ寸法及び/又は幅寸法又は異なった形態を有することもできる。
【0016】
本発明による方法で使用される製造すべき繊維不織布において、炭素繊維、炭素繊維の前駆繊維、セラミック繊維及びその混合物含む群から選択される繊維少なくとも50質量%までを含む1種以上の繊維層は、繊維不織布内で各々の所望の位置を占めることができかつ、例えば、最下繊維層でも、最上繊維層でも及び/又は他の繊維層の間に配列された繊維層であってもよい。
【0017】
炭素繊維、その前駆繊維及びセラミック繊維の他に、繊維層は、当業者がその一般的専門知識及び本発明の解説に基づき選択し得る、任意の繊維を含むことができる。
【0018】
極めて良好な材料特性を有する複合材料の製造のための繊維不織布は、例えば、繊維不織布の繊維層の少なくとも2層、繊維層の数の有利に少なくとも50%、好ましくは全ての繊維層が、炭素繊維、炭素繊維の前駆繊維、セラミック繊維及びその混合物からなる群から選択される繊維を含む場合に得ることができる。更に、極めて良好な材料特性を有する複合材料のための1層以上の繊維層は、炭素繊維、炭素繊維の前駆繊維、セラミック繊維及びその混合物からなる群から選択される繊維70質量%超、有利に85質量%超、好ましくは92質量%超、殊に98質量%超まで含み又は完全にこれらから成ることができる。
【0019】
極めて良好な機械的負荷容量の複合材料は、繊維不織布の少なくとも1繊維層がセラミック繊維を、有利に全ての繊維層がセラミック繊維を、例えば、各繊維層の繊維の全質量に対して、0.5〜100質量%、有利に2〜99質量%の範囲で含む場合に得ることができる。
【0020】
本発明による方法のもう1つの段階で、繊維不織布の製造のために、少なくとも1繊維層を1層以上の他の繊維層に装着結合糸で装着させることを行なうことができる。装着過程は、殊に、装着結合糸が少なくとも1繊維層及び1層以上の他の繊維層の少なくとも1層を貫通することを含む。
【0021】
"装着"という概念は、先ず加工すべき繊維層の一部分だけを重ね合わせて配列させかつ相接して装着させ、かつ引き続いて他の繊維層を、この先ず製造した繊維不織布の1層以上の繊維層に装着させることも含む。更に、"装着"という概念は、2、3又はそれ以上の繊維不織布を、各々1層以上の繊維層と重ね合わせて配列させかつ相接して固定させることを含む。更に、本発明による方法は、繊維不織布が1区分以上で異なった数の繊維層を有し得るという利点をもたらす。この方法で、各最終的に完成すべき生成物、殊に完成すべき複合材料に依存して、完成すべき生成物の拡張又は厚さ及び負荷容量を合目的に変更しかつ適合させることができる。
【0022】
装着結合糸は、炭素繊維、炭素繊維の前駆繊維、セラミック繊維及びその混合物からなる群から選択される1種以上の繊維を含む。
【0023】
更に、従来、公知技術水準で、高い脆弱性及び/又は易崩壊性を有する材料をベースとする結合糸、例えば、炭素繊維及びその前駆繊維、及びセラミック繊維は、糸が多重に比較的少ない曲半径で曲げられる方法に関しては、殊に、そのような方法が工業的規模でかつ高い生産速度で進行する場合には、糸が完全に破壊されることが考えられるので、その方法に適していないという先入観があったことに注意すべきである。
【0024】
殊に、装着糸の1種以上の炭素繊維の前駆繊維は、予備酸化ビスコース繊維、予備酸化ポリアクリルニトリル繊維、予備酸化織物繊維、フェノール樹脂繊維、ピッチをベースとする前駆繊維及びその混合物からなる群から選択され得る。更に、繊維層の1種以上の炭素繊維の前駆繊維が、予備酸化ビスコース繊維、予備酸化ポリアクリルニトリル繊維、予備酸化織物繊維、フェノール樹脂繊維、ピッチをベースとする前駆繊維及びその混合物からなる群から選択され得る。予備酸化ポリアクリルニトリル繊維(通常はしばしばPAN‐Ox繊維としても表示される)、フェノール樹脂繊維、ピッチをベースとする前駆繊維という概念は、当業者に公知であり、次に詳説される。"織物繊維"という概念は、当業者に公知の織物繊維、殊に炭素含有化合物を含む又はこれから成る織物繊維を含む。
【0025】
装着糸の1種以上のセラミック繊維及び/又は繊維層の1種以上のセラミック繊維は、玄武岩繊維、Si、C、B、N、Al又はその化合物をベースとする繊維、ガラス繊維、酸化アルミニウムをベースとする繊維、酸化ジルコンをベースとする繊維、TiCをベースとする繊維、WCをベースとする繊維及びその混合物からなる群から選択され得る。1種以上のセラミック繊維は、有利に、玄武岩繊維、SiNC、SiBNC、SiC、BC、BN、Si、酸化アルミニウム、酸化ジルコン、TiC、WC及びその混合物を含む又はそれから成る繊維及びその混合物からなる群から選択される。本発明の範囲で使用される"ある材料をベースとする繊維"という概念は、繊維が一定の材料から成り得る又はこれを含み得ることを示す。前記のセラミック繊維は当業者に公知であり、次に詳説される。
【0026】
高い負荷容量の装着結合糸は、例えば、装着結合糸の1種以上の繊維が、C、Si、N、B、Al、Zr、Ti、Wからの群から選択される、少なくとも1種の、有利に2種以上の元素を有する少なくとも1種の化合物を含む場合に得ることができる。
【0027】
殊に、例えば、1種以上のセラミック繊維を含み得る、高い負荷容量の装着結合糸は、C、Si、B、N、Al、Zr、Ti、Wの含量の合計が、装着結合糸の全質量の50質量%以上、有利に83質量%以上、好ましくは85質量%超、殊に95質量%以上である場合に得られ得て、この際、1種以上のC、Si、B、N、Al、Zr、Ti、Wの含量は、0質量%であってよい。従って、装着結合糸は、1種、有利に2種以上のC、Si、B、N、Al、Zr、Ti、Wの含量だけを有することもできる。装着結合糸は、ガラス繊維を含み又はそれから成り得るが、それは有利に装着結合糸の全質量に対して、1種以上のガラス繊維の15質量%以下、有利に10質量%以下を含む;殊に、装着結合糸はガラス繊維を含みなくてよい。
【0028】
所望する場合には、繊維層の装着の際に、同じ又は異なった繊維を含み得る数種の装着結合糸を使用することができる。
【0029】
装着結合糸は、各々装着結合糸の全質量に対して、炭素繊維、炭素繊維の前駆繊維、セラミック繊維及びその混合物からなる群から選択される1種以上の繊維少なくとも15質量%までを有利に含む。良好な負荷容量の装着結合糸を得るために、装着結合糸は、有利に、炭素繊維の前駆繊維、セラミック繊維、炭素繊維、及びその混合物からなる群から選択される1種以上の繊維から、各装着結合糸の全質量に対して、少なくとも75質量%、有利に少なくとも85質量%、好ましくは少なくとも96質量%、殊に少なくとも98質量%、更に殊に少なくとも99質量%まで又は完全に成ってよい。
【0030】
装着結合糸として、例えば、1Kフィラメント、紡糸、殊に低い単位メートル当たりの質量を有する、例えば、0.05〜0.12g/mの範囲の炭素繊維紡糸、又は低い単位メートル当たりの質量を有する、例えば、0.04Tex〜1Texの範囲の炭素繊維ステープル紡糸を使用することができる。
【0031】
装着結合糸は、任意の成分として更に、例えば、当業者によってその一般的専門知識に基づき選択可能な任意の有機ポリマー、例えば、ポリアクリルニトリルを含むことができ(この際、ポリマーは、殊に繊維の形で存在することができる)、かつ例えば、殊に金属糸又は金属紡糸の形の金属、添加剤を含む。このような任意の成分は、当業者がその専門知識及び本明細書の解説に基づき選択することができる。
【0032】
装着糸は、DIN 60905により測定された、例えば、1Tex以下の繊度又は有利に0.04〜1Texの範囲の繊度、好ましくは0.04〜0.75Texの範囲の繊度を有することができる。
【0033】
本発明による方法は、殊に、加熱の際に完全に又は実際に完全に、炭素及び/又は2種以上のC、Si、N、B、Al、Zr、Ti、Wを含有する混合物又は化合物、有利に珪素及び炭素を含有する混合物又は化合物に変換し得る装着結合糸を使用することができるという利点を有し、即ち、その結合糸から、例えば、1000℃への加熱後に、窒素99.9質量%を含む雰囲気下(雰囲気の全質量に対して)1時間後に、C、Si、N、B、Al、Zr、Ti、W、有利に炭素及び/又は珪素の含量の合計が、加熱後に残留する装着結合糸の全質量に対して、少なくとも90質量%、有利に少なくとも93質量%である物質が残留し、この際、1種以上のC、Si、N、B、Al、Zr、Ti、Wの含量は0質量%であってもよい。
【0034】
装着結合糸として、殊に高温耐性結合糸を使用することができる。本発明で使用される"高温耐性結合糸"という概念は、雰囲気の全質量に対して窒素99.9質量%を含む雰囲気下に8時間405℃の温度の影響を、完全に溶解することなく、又は糸の形態が、例えば、粉末の形で完全に分解残渣の形成下に分解することなく耐える糸を含む。有利に、高度に高温耐性の結合糸、即ち、雰囲気の全質量に対して窒素99.9質量%を含む雰囲気下に8時間410℃の温度の影響で、加熱前の糸の全質量に対して、60質量%以下の質量損失を有する糸を有利に使用することができる。好ましくは、極めて高度に高温耐性の結合糸、即ち、雰囲気の全質量に対して、窒素99.9質量%を含む雰囲気下に8時間600℃の温度の影響で、加熱前の糸の全質量に対して、60質量%以下の質量損失を有する糸を有利に使用することができる。更に有利に、特に高度に高温耐性の結合糸、即ち、雰囲気の全質量に対して窒素99.9質量%を含む雰囲気下に8時間900℃の温度の影響で、加熱前の糸の全質量に対して、60質量%以下の質量損失を有する糸を有利に使用することができる。殊に、極めて高温耐性の結合糸、即ち、雰囲気の全質量に対して窒素99.9質量%を含む雰囲気下に8時間2000℃の温度の影響で、加熱前の糸の全質量に対して、60質量%以下の質量損失を有する糸を有利に使用することができる。窒素99.9質量%を含む雰囲気は、雰囲気の全質量に対して0.01質量%以下の含量を有する不純物の留保下に、有利に更に、窒素、希ガス、酸素及び炭素酸化物(Kohlenstoffoxiden)から成り、好ましくは窒素及び希ガスから成る。
【0035】
特に有利な本発明による繊維不織布及び複合材料は、装着結合糸として、雰囲気の全質量に対して、窒素99.9質量%を含む雰囲気下に400℃、有利に410℃、好ましくは600℃、更に好ましくは900℃、殊に2000℃への加熱後に、殊に、この温度で8時間の間の加熱後に、少なくとも5MPa、有利に少なくとも10MPa、好ましくは少なくとも120MPa、更に好ましくは少なくとも200MPa、殊に少なくとも400MPaの引張強度を有する結合糸を使用する場合に得られ得る。引張強度は、ASTM D 3379-75により調べることができる。更に次の方法部分で、引張強度の有利な測定法を詳説する。
【0036】
本発明に至る多数の試験で、驚異的にも、繊維不織布製造のために本発明により使用される装着結合糸が、複合材料の製造で適用される温度への加熱前も、加熱後も、満足する引張強度を示すことが判明した。炭素繊維の前駆繊維、例えば、予備酸化ポリアクリルニトリル(PAN‐Ox)から成る又はこれを含む装着結合糸の使用で、例えば、2000°以上の温度への加熱後に、引張強度が増加することは特に驚異的でかつ有利である。従って、炭素繊維の前駆繊維、炭素繊維及びその混合物からなる群から選択される1種以上の繊維を含む又はこれから成る装着結合糸は、極めて良好な材料特性を有する本発明による繊維不織布及び複合材料を生じさせる。
【0037】
装着結合糸のほかに、更に任意に、当業者に公知の任意の材料から製造される補充結合糸、例えば、ポリアクリルニトリルをベースとする糸を使用することができる。例えば、殊に熱負荷し得る材料をベースとする装着結合糸で1区分を、かつ補充結合糸で1区分以上を装着させることが可能である。前記で使用される"結合糸"という概念は、装着結合糸も、補充結合糸も含む。
【0038】
結合糸は、例えば、紡糸、殊にDIN 60900による紡糸であってよい。紡糸は1以上の繊維を含むことができ、かつ当業者に公知の任意の紡糸構造を有することができる。例えば、単一紡糸又は複合紡糸、殊に2本以上の撚り合せた紡糸を含む撚糸を使用することができる。例えば、撚糸が少なくとも2本の対向撚りの紡糸を含む場合が有利であり、それというのも、殊に、繊維不織布が複合材料の製造のために使用される場合、そのような撚糸は圧縮がより少ないからである。更に、結合糸は、例えば、1種以上のマルチフィラメントストランドであってよく、この際、マルチフィラメントストランドは、DIN 60905により測定された、有利に0.04〜1Texの範囲の繊度、好ましくは0.04〜0.75Texの範囲の繊度を有し得る。
【0039】
更に、ステープル紡糸も、フィラメント紡糸又はその混合物も、結合糸として、装着結合糸としても、補充結合糸としても使用され得る。
【0040】
本発明の範囲で使用される"ステープル紡糸"という概念は、有限的に長い、例えば、1〜50mm、有利に6〜20mm、好ましくは8〜15mmの長さの繊維から構成されている紡糸を示す。例えば、この繊維から紡績の際に数種の繊維の撚りによって、任意の長さの紡糸を得ることができる。本発明の範囲で使用される"フィラメント紡糸"という概念は、理論的に無限に長い繊維、いわゆるフィラメントから構成されている紡糸を示す。
【0041】
更に、装着結合糸は、例えば、1種以上の炭素繊維及び/又は1種以上の炭素前駆繊維及び/又は1種以上のガラス繊維を含む紡糸の他に、他の材料をベースとする紡糸を任意に含有することができ、この際、紡糸は、例えば、有機ポリマー、殊に、例えば、ポリアクリルニトリル又はビスコースを含む。更に、装着結合糸は、隣接して延びる又は装着結合糸と撚り合う補充結合糸と組み合わせて使用され得る。2種以上の装着結合糸の組合せも可能である。
【0042】
装着結合糸を用いて少なくとも1層の繊維層を1層以上の他の繊維層に装着させることは、装着結合糸を少なくとも1層の繊維層及び1層以上の他の繊維層を貫通させることによって行なわれる。
【0043】
装着結合糸の貫通は、当業者に公知の様々な方法によって、例えば、縫合法及び/又は編込法及び/又は鉤編法によって行なわれ得る。これらの方法は、場合により、当業者によってその一般的専門知識に基づき、本発明による方法に適合され得る。
【0044】
若干の適用では、装着結合糸を繊維層中の隙間又は間隙を通して、例えば、フィラメントの間で貫通させることが有利であり得る。しかし、装着結合糸を、繊維層を通して、例えば、針を突き刺して貫通させることが有利である。
【0045】
少なくとも1層の繊維層を1層以上の他の繊維層に縫合させることによって、装着が行なわれる場合がきわめて有利であり、それというのも、この方法で極めて確実で確かな、及び高度に負荷し得る各繊維層の結合が達成され得るからである。
【0046】
縫合は、例えば、当業者によってその一般的専門知識及び本発明の解説に基づき選択され得る、工業的縫合機で行なわれ得る。針及び穿刺法は、当業者によってその一般的専門知識に基づき選択され得る。この際、縫合は、片側又は両側で行なわれ得る。上糸及び下糸、即ち、実際に繊維不織布の下及び実際に繊維不織布の上を通る糸を使用する縫合では、少なくともこの一方の糸、有利に両方の糸は、装着結合糸であってよい。
【0047】
装着の段階は、装着結合糸を、第一進入部位で第一繊維層中に進入させ、第一繊維層及び少なくとももう1層の繊維層を貫通させ、かつ少なくとももう1層の繊維層上の第一進出部位で進出させ、かつ任意に少なくとももう1層の繊維層上の第二進入部位で進入させ、かつ少なくとももう1層の繊維層及び第一繊維層を貫通させ、かつ第一繊維層上の第二進出部位で進出させることを含む。
【0048】
更に任意に、装着結合糸を、第一繊維層上の第三進入部位で再度進入させ、第一繊維層及び少なくとももう1層の繊維層を貫通させ、かつ少なくとももう1層の繊維層上の第三進出部位で進出させ、かつ少なくとももう1層の繊維層上の第四進入部位で進入させ、かつ少なくとももう1層の繊維層及び第一繊維層を貫通させ、かつ第一繊維層上の第四進出部位で進出させることができる。この前記の装着結合糸の実施工程は更に数回繰り返すことができる。
【0049】
若干の装着法においては、有利に、1つの又は有利に各々の第二進出部位、例えば、第一、第三、第五進出部位、及び次の進入部位、例えば、第二、第四、第六進入部位が空間的に集合する、又は3mm以下の間隙を有することができる。しかし、繊維層上の進入部位及び進出部位は、少なくとも部分的に各々空間的に隔たっていてもよい。
【0050】
完成した繊維不織布において、進入部位、例えば、第一進入部位及び相応する進出部位、例えば、第一進出部位は、実際に垂直に重なり合っていてよく、有利にそれらは5mm以下ほどずれている。しかし、若干の装着法では、装着結合糸は斜めに繊維不織布を貫通することができ、従って、進入部位及び相応する進出部位は実際には垂直に重なり合っていない。
【0051】
装着結合糸の進入部位及び進出部位の間に拡がる繊維不織布の範囲は、本発明の範囲で、装着区分として、かつ縫合による装着の場合には、縫目として表示される。
【0052】
更に、装着結合糸は、少なくとも装着の前に少なくとも部分的に、有利に完全に、装着液、例えば、サイズによって被覆されていてよい。本発明が次の前提の正当性に限定されることなく、高温耐性でかつ同時に比較的繊細な及び/又は脆弱な材料での繊維層の固定を、更にもっと上昇した速度で実施することができることに、装着結合糸の装着液による部分的又は完全な被覆が寄与するということが容認される。このことは、作業時間節約及び生産時間節約を可能にし、従って、繊維不織布及び同時に繊維不織布強化複合材料を、消費者にとって経費的により有利に製造することができる。
【0053】
装着液は、例えば、液体、溶液、懸濁液、流動性混合物又はエーロゾルの形で供給することができる。
【0054】
装着液は、例えば、水、シリコーン油、ポリウレタン、エポキシド樹脂化合物、例えば、エポキシエステル、ポリビニルアルコール、蝋、脂肪酸エステル、ポリウレタンエステル、ポリウレタンエーテル、それから誘導される誘導体、及びその混合物からなる群から選択される1種以上の化合物を含み得る又はそれから成ってよい。更に、装着液は、任意に溶剤、例えば、無機又は有機溶剤、塩基、酸、緩衝液混合物、滑剤、分散剤及び当業者がその一般的専門知識及び本発明の解説に基づき選択し得る他の任意の成分を含み得る。装着液は有利に水性混合物が重要である。
【0055】
高度に負荷し得る固定を達成するために、装着区分、例えば、縫目が斜めに走り又は実際に垂直に、即ち、繊維不織布の辺縁、有利に繊維不織布の縦方向に延びる長辺に対して、少なくとも10°、有利に少なくとも30°、有利に約80°〜90°の角度下に拡がることが有利であり得る。
【0056】
装着区分、例えば、縫目は、その全長に渡って、装着結合糸から又は補充結合糸から製造することができ、又は任意に、装着結合糸の代わりに補充結合糸が使用される又は結合糸が使用されない、少なくとも1区分を有することができる。
【0057】
繊維不織布の製造のために、装着結合糸及び補充結合糸は、各々繊維不織布中に存在する装着結合糸及び補充結合糸の全質量に対して、20:1〜1:30、有利に3:1〜1:15、好ましくは2:1〜1:7の質量比で使用することが有利であり得る。
【0058】
装着結合糸及び補充結合糸の可能な有利な配列は図1に示されていて、この際、装着結合糸からの装着区分(縫目)に、補充結合糸からの数個の装着区分(縫目)が続く。装着結合糸からの装着区分及び補充結合糸からの装着区分は、一般的専門知識に基づき、本発明の解説の考慮下に、多数の方法で配列され、かつ、例えば、交差又は重なり合うことができる。多数の適用では、1区分以上の装着結合糸からの装着区分及び補充結合糸からの装着区分が、実際に互いに平行して延びる場合が有利であり得る。
【0059】
装着結合糸を用いて第一繊維層に少なくとももう1層の繊維層を装着させた後に、繊維不織布を編む。多軸繊維不織布が有利である。本発明の範囲で使用される"多軸繊維不織布"という概念は、その各々の縦方向が、互いに平行しては延びない、少なくとも2層の一方向層(単一方向層とも称される)を含む繊維不織布を示す。一方向層の製法は、当業者に公知であり、更に次に詳説する。
【0060】
次の方法段階で、複合材料中の強化体として有利な特性を有する繊維不織布を得るために、繊維不織布を高温処理する。そのような高温処理の間に、例えば、繊維層中に及び/又は結合糸中に存在する炭素繊維又はその前駆繊維の炭化又は黒鉛化を行なうことができる。1種以上の炭素繊維又は1種以上のその前駆繊維を含む繊維層及び/又は結合糸、又は繊維層の部分範囲は、そのような処理後に、繊維層、結合糸又は繊維層の部分範囲の全質量に対して、90質量%以上、有利に92質量%超、好ましくは95質量%以上の炭素含量を有する。
【0061】
繊維不織布の温度処理は、不活性雰囲気下に、少なくとも400℃、有利に405℃〜2700℃、好ましくは500℃〜2500℃、更に好ましくは600℃〜2000℃、殊に600℃〜900℃及び/又は1600℃〜2000℃の温度で行なわれ得る。
【0062】
本発明の範囲で、"不活性雰囲気"という概念は、酸素を含まない又は酸素含量が、雰囲気の全質量に対して、5質量%以下、有利に1質量%以下、好ましくは0.2質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下、殊に0.001質量%以下である雰囲気を含む。有利な不活性雰囲気は、例えば、雰囲気の全質量に対して、窒素及び/又は1種以上の希ガス少なくとも99.9質量%の含量を有する。窒素及び/又は1種以上の希ガス少なくとも99.9質量%の含量を有する雰囲気は、雰囲気の全質量に対して、0.01質量%以下の含量を有する不純物の留保下に、有利に更に窒素、希ガス、酸素及び炭素酸化物、好ましくは窒素及び希ガスを含む。更に、"不活性雰囲気"として、1atm以下の圧力を有する雰囲気、即ち、雰囲気を含む容器の部分的又は完全な排気後に得られた雰囲気を使用することもできる。不活性雰囲気は、有利に窒素及び/又は希ガスを含み得る。
【0063】
高温処理時間は、例えば、少なくとも5分間、有利に1時間〜24時間、好ましくは2.5〜12時間、殊に3.5〜9時間持続し得る。
【0064】
高温処理の終了後に、高温処理された繊維不織布が得られる。この繊維不織布中で、繊維層は少なくとも部分的になお装着結合糸と接合して装着している。
【0065】
本発明による方法のもう1つの継続段階で、高温処理された繊維不織布をバインダーで含浸させることができ、この際、先ず、含浸された繊維不織布が得られ、その含浸体は未だ硬化していない。この含浸された繊維不織布は、本発明の範囲で、プリプレグ(Prepreg)とも表示される。
【0066】
バインダーは、1種以上の樹脂及び/又は1種以上の無機含浸剤、及び1種以上の溶剤、例えば、水、及び黒鉛及び/又はカーボンブラック、及び当業者がその一般的専門知識及び本明細書の解説に基づいて選択し得る他の添加剤を含み得る。
【0067】
繊維不織布の含浸のために特に好適である樹脂は、例えば、フェノール樹脂、エポキシド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シアネートエステル樹脂、ポリエステル樹脂/ビニルエステル樹脂、フラン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアクリレート樹脂、それから誘導される誘導体及びその混合物である。
【0068】
繊維不織布の含浸のために、更に、無機含浸剤を使用することができ、この際、繊維不織布の含浸のために、例えば、液体珪素、SiC前駆体ポリマー、殊にシラザン、SiC前駆体オリゴマー及びその混合物が特に好適である。
【0069】
本発明の範囲で使用される"SiC前駆体ポリマー"という概念は、珪素、及び炭素及び/又は窒素を含む、例えば、化合物の全質量に対して、Si10〜99質量%の含量を有することができる、約300g/モル以上の分子量を有する化合物を示す。本発明の範囲で使用される"SiC前駆体オリゴマー"という概念は、珪素、及び炭素及び/又は窒素を含み、少なくとも2個の珪素原子を有し、込みで約300g/モルまでの分子量を有し、かつ例えば、化合物の全質量に対して、Si10〜99質量%の含量を有することができる化合物を示す。有利に、SiC前駆体ポリマー又はSi前駆体オリゴマーは、不活性雰囲気下に150℃以上の温度への加熱の際に、少なくとも部分的にSiCに変換する。
【0070】
繊維不織布の含浸の際に、オリゴシラザン、ポリシラザン、オリゴカルボシラザン、ポリカルボシラザン、オリゴシラン、ポリシラン、オリゴボロカルボシラザン、ポリボロカルボシラザン、メチル‐オリゴシロキサン、メチル‐ポリシロキサン、オリゴカルボシラン、ポリカルボシラン、オリゴボロシラザン、ポリボロシラザン、オリゴ(ジアルキル)シリコーン、ポリ(ジアルキル)シリコーン、オリゴシロキサン、ポリシロキサン、例えば、ポリ(ジアルキル)シロキサン、例えば、ポリ(ジメチル)シロキサン、例えば、ポリ(ジアリール)シロキサン、例えば、ポリ(ジフェニル)シロキサン、例えば、ポリ(モノアルキル‐モノアリール)シロキサン、例えば、ポリ(モノメチル‐モノフェニル)シロキサン、その誘導体及びその混合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を使用する場合に、極めて良好な結果を得ることができる。オリゴシラザン、オリゴカルボシラザン、オリゴシラン、オリゴボロカルボシラザン、メチルオリゴシロキサン、オリゴカルボシラン、オリゴボロシラザン、オリゴ(ジアルキル)シリコーン、オリゴシロキサンなどの概念は、少なくとも2種のモノマー単位から構成されている各概念下にあるオリゴマー、即ち、二量体から開始して込みで約300g/モルまでの分子量を有する化合物までのオリゴマーを含む。
【0071】
ポリシラザン、ポリカルボシラザン、ポリシラン、ポリボロカルボシラザン、メチル‐ポリシロキサン、ポリカルボシラン、ポリボロシラザン、ポリ(ジアルキル)シリコーン、ポリシロキサンなどの概念は、各概念下にある、約300g/モル以上の分子量を有するポリマーを含む。
【0072】
繊維不織布は、更に、無機含浸剤でも、樹脂、有利に合成樹脂でも含浸され得る。例えば、繊維不織布の隣接区分は、1種以上の無機含浸剤及び/又は1種以上の樹脂で含浸され得る。更に、例えば、含浸は、数段階で又は含浸過程に引き続いて、1種以上の無機含浸剤及び/又は1種以上の樹脂で行なわれ及び/又は含浸は1種以上の無機含浸剤及び樹脂の混合物の使用下に行なわれ得る。硬化の条件の選択は、選択された含浸剤の結果を考慮する。
【0073】
もう1つの方法段階で、含浸された繊維不織布の硬化が行なわれ、その後に、硬化された繊維不織布強化複合材料、殊に少なくとも部分的に繊維不織布で強化されたマトリックスを有する複合材料が得られる。含浸が少なくとも部分的に又は完全に1種以上の有機樹脂で行なわれる場合には、硬化後に、硬化プラスチックを含む又はそれから成るマトリックスが得られ、この際、取得した複合材料は、通常、繊維強化プラスチックとしても示される。炭素繊維不織布又は少なくとも部分的に炭素繊維を含む不織布の場合に、炭素繊維強化プラスチック(CFK)が得られる。1種以上の無機含浸剤による含浸では、硬化後に、少なくとも部分的架橋結合の無機含浸剤からマトリックスを得る。
【0074】
含浸された繊維不織布の硬化は、少なくとも40℃の硬化温度範囲で、50〜250℃、有利に80〜200℃の範囲の硬化温度で行われ得る。硬化は、有利に硬化時間の開始前に及び/又は少なくとも硬化時間の部分時間中に、例えば、プレス機を用いて含浸された繊維不織布の少なくとも1表面の少なくとも1表面区分の圧縮による加圧下に行われ得る。硬化時間は、例えば、少なくとも1分間、有利に10分間〜8時間、好ましくは15分間〜3時間であってよい。加圧下での硬化の時間は、例えば、少なくとも1分間、有利に10分間〜8時間、好ましくは15分間〜3時間の範囲であってよい。圧縮圧は、例えば、少なくとも0.01MPa、有利に0.01MPa〜100MPaであってよい。
【0075】
非含浸された繊維不織布の全質量に対する、バインダーの含量は、10〜90質量%、有利に30〜70質量%、好ましくは35〜50質量%の範囲であってよい。非含浸された繊維不織布の全質量に対する、樹脂及び/又は無機含浸剤の含量は、5〜85質量%、有利に25〜65質量%、好ましくは30〜45質量%の範囲であってよい。
【0076】
繊維不織布は、例えば、繊維不織布が飽和するまで含浸され得る。殊に、液体樹脂又は溶融樹脂("ホットメルト樹脂(hot melt resin)"を使用することができ、この際、例えば、フェノール樹脂が重要である。
【0077】
硬化及び含浸の方法段階は、これに関して当業者に公知である方法の使用下に実施され得る。極めて有利な結果は、含浸が浸漬浴中への浸漬によって又はフィルムトランスファー(Film-Transfer)法で行なわれる場合に得られ得る。例えば、この方法段階を連続的に実施することができ、即ち、織物を、例えば、ロールによって巻き上げ、例えば、不活性雰囲気下に400℃以上の好適な温度及び雰囲気を有する1基以上の炉を通過させ、かつ引き続いて、更に樹脂浴及び/又は無機含浸剤を有する浴、及び/又は圧延カレンダー及び/又は他の含浸装置を通過させる。続いて、硬化を行なうことができ、この際、そのマトリックスが、繊維不織布、例えば、炭素繊維繊維不織布によって強化されている複合材料が得られる。硬化の方法段階は、連続的にも、不連続的にも実施され得る。硬化樹脂及び/又は硬化無機含浸剤は、硬化後に得られる複合材料中で数種の機能を満たす。先ず、樹脂は繊維不織布のロープと糸との間の結合を製造し、織物中でその層を固定する。複合材料用途に応じて、繊維不織布は、完全に又は区分的に、硬化樹脂及び/又は無機含浸剤を含むマトリックス中に着床している、及び/又は完全に又は区分的に、単一繊維だけを被覆する樹脂及び/又は無機含浸剤からの薄膜で被覆されている、及び/又は区分的に樹脂を含まなくてよい。更に、硬化バインダーは繊維不織布の機械的強化を引き起こす。
【0078】
硬化及び/又は圧縮の段階後に、繊維不織布強化複合材料又は繊維不織布強化複合材料生成物を得ることができる。
【0079】
繊維不織布強化複合材料生成物として、本出願の範囲では、部分的又は有利に完全に硬化された繊維不織布強化複合材料が示され、これは、任意に他の加工段階、例えば、裁断、切削成形など行われた。更に、本出願の範囲では、硬化繊維不織布強化複合材料は、グリーンボディー(Gruenkoerper)としても表示される。
【0080】
部分的又は完全に硬化された繊維不織布強化複合材料は、その間に接続される取得段階を行なうことなく、又は部分的又は完全に硬化された繊維不織布強化複合材料生成物に、他の方法段階、例えば、熱処理、例えば、炭化又は黒鉛化のための熱処理、又は更に続く加熱及び/又は圧縮を施すことができる。
【0081】
もう1つの方法段階で、熱処理を行なうことができ、この際、硬化バインダーの部分的又は完全な炭化及び/又は黒鉛化が行なわれる。この方法段階は、原則的に、これに関して当業者に公知の方法により行なうことができ、次に、"バインダーマトリックス炭化"又は"バインダーマトリックス黒鉛化"としても示される。本発明の範囲で使用される"硬化バインダーの部分的又は完全炭化(黒鉛化)"という概念は、部分的又は完全炭化(黒鉛化)下に熱処理を施された複合材料試料片中の炭素の含量が、熱処理前の複合材料試料片と比較して、上昇していることを示す。
【0082】
熱処理は、第一温度範囲(しばしば"炭化"としても表示される)で行なうことができ、例えば、酸化作用物質の遮断下に、即ち、不活性雰囲気、保護ガス下に又はゲッターとして作用する、酸化作用媒体、特に酸素結合物質で燃焼すべき物質を包囲して、約800℃〜約1250℃、好ましくは850℃〜950℃、殊に880℃〜920℃の範囲の温度又は温度範囲での加熱によって行なうことができる。第一温度範囲での熱処理は、例えば、少なくとも30分間、有利に少なくとも8時間、殊に30分間〜96時間の時間で行われ得る。"不活性雰囲気"という概念は既に前記した。第一温度範囲での熱処理("炭化")のために、本発明の解説の範囲で当業者に公知の方法、例えば、固床熱分解を使用することができる。良好なコークス収率を達成するために、前以て加熱層を、例えば、1時間当たり最高4℃の比較的僅少な温度勾配で300〜600℃の範囲で実施することができ、又は加圧下にコークス化させる。この方法段階での最終温度は、例えば、1250℃を超えることはできない。
【0083】
完全に硬化された繊維不織布強化複合材料も、部分的にしか硬化されない繊維不織布強化複合材料も、第一温度範囲での熱処理を施すことができる。
【0084】
第一温度範囲での熱処理後に、そのマトリックスが炭素を含み、かつ炭素繊維組織で強化されている複合材料が得られる("炭素繊維強化炭素"、CFC)。
【0085】
第一温度範囲での熱処理に選択的に又はこれに付加的に、殊にこの後に、第二温度範囲での熱処理(しばしば"黒鉛化"としても表示される)を行なうことができる。第二温度範囲での熱処理("黒鉛化")は、これについて当業者に公知の方法により行われ得る。殊に、加熱は、不活性雰囲気中で、約1251℃〜3000℃、好ましくは1800℃〜2200℃の範囲の温度で、例えば、少なくとも約30分間、有利に少なくとも8時間、殊に30分間〜96時間行われ得る。"不活性雰囲気"という概念は、既に前記した。
【0086】
第一及び/又は第二温度範囲での熱処理で、樹脂層は、揮発性成分の分離による質量損失によって収縮する。熱処理後に得られる複合材料は、高い耐熱性を特徴とする。
【0087】
繊維不織布強化複合材料又は複合材料生成物の熱処理後に、熱処理繊維不織布強化複合材料又は複合材料生成物を得ることができる。任意に、加工段階、例えば、剪断又は切削成形などを実施することができる。
【0088】
第一及び/又は第二温度範囲での1回以上の熱処理後に得られる複合材料、殊に炭素繊維強化炭素を含む複合材料は、任意に、付加的に1回以上の後処理、殊に後凝縮を施すことができ、その際、複合材料は、少なくとも1回含浸され、殊に炭化可能な試剤で含浸させ、及び/又は少なくとも1回新規に第一及び/又は第二温度範囲での熱処理(通常、後燃焼(Nachbrand)としても表示される)が施される。後凝縮、殊に含浸及び熱処理の段階は、本発明の解説の範囲では、原則的にこれについて当業者に公知の方法により行われ得る。本発明の範囲で使用される後凝縮という概念は、処理される材料又は加工部品の密度の維持又は上昇を導く材料又は加工部品の各処理を示す。このような後処理によって有利に密度の上昇が行われ得る。この際、含浸及び熱処理は、殊に前記及び後記の条件下に有利に行われ得る。含浸については、例えば、いわゆる減圧法を使用することができる。
【0089】
含浸剤としては、炭素を含む又はそれから成る部材の含浸のために公知の全ての物質、例えば、30質量%以上のコークス収率を有する物質、例えば、合成樹脂、殊に熱硬化性樹脂又はピッチ及びそれから誘導される誘導体、及び樹脂及びピッチ及び/又はピッチ誘導体からの混合物を使用することができる。殊に、ノボラック又はレゾール型のフェノール樹脂、フラン樹脂又は含浸ピッチを使用することができる。含浸後の、前記で定義した第一及び/又は第二温度範囲での熱処理、いわゆる後燃焼は、酸化作用を有する物質の遮断下に、殊に不活性雰囲気下に行なわれる。第一及び/又は第二温度範囲での熱処理前及び/又はその後に、例えば、8〜10時間の、例えば室温(20℃)への加熱又は冷却が行われ得る。第一及び/又は第二温度範囲での熱処理のための例としての有利な時間及び温度範囲は、前記で詳しく説明されている。この方法段階では、付加的な1層以上の炭素被覆を、既に存在する被覆上に施し、かつ第一炭化段階後に、第一被覆中になお存在する裂け目及び孔を閉鎖すべきである。繊維のための意図される保護作用に応じて、この含浸過程及び後燃焼過程を数回、有利に1〜3回行なうこともできる。
【0090】
適用特異的に、複合材料の最適化のために、炭化が行われ得る第一温度範囲での熱処理の後に、黒鉛化が行われ得る不活性雰囲気下での第二温度範囲での熱処理を更に続けることが有利であり得る。しかし、そのような手段の実施は全く任意である。一般に、黒鉛化の際に、最終温度は3000℃、殊に2400℃を超えない。1800〜2200℃の温度で作業することが有利である。この段階については、全ての公知の黒鉛化法が適用され得る。
【0091】
先ず含浸及び次いで燃焼過程を含む前記の後凝縮は、1回又は数回繰り返され得る。
【0092】
実施すべき後凝縮の数は、炭素繊維強化炭素セラミックの所望される目的密度に依存し、かつ1回又は数回、例えば、2回、3回又は4回以上、有利に直接連続する方法で実施され得る。含浸及び次に続く燃焼段階は、各々3回実施することが有利である。後凝縮後に、例えば、1.30〜1.60g/cm、有利に1.30〜1.55g/cmの密度が達成され得る。
【0093】
更に、任意に、1回以上の熱処理後に得られる及び/又は更に前記のように後凝縮された、繊維不織布強化炭素を含む複合材料は、更に、CVD法(CVD=Chemical Vapor Deposition)による又はCVI法(CVI=Chemical Vapor Infiltration)による気相被覆で、高溶融物質、例えば、ピロ炭素、TiC、TiN又はSiCからの保護層を施され得る。本発明の範囲で、当業者に公知のCVD法/CVI法を使用することができる。CVD法/CVI法は、例えば、明細書DE3933039A1又は公表文書E. Fitzer et al., Chemie-Ingenieur-Technik 57, Nr. 9, S. 737-746 (1985)に解説されている。
【0094】
更に、任意に、第一及び/又は第二温度範囲での熱処理後に得られる及び/又は更に前記のように後凝縮された及び/又は更にCVD法により又はCVI法により被覆された、炭素繊維強化炭素を含む複合材料に、珪化(Silizierung)を施すことができる。そのような方法は、例えば、公表文書E. Fitzer et al., Chemie-Ingenieur-Technik 57, Nr. 9, S. 737-746 (1985)に解説されている。
【0095】
本発明の範囲で、珪化は、当業者に公知の方法で実施され得る。特に高い品質の複合材料は、例えば、珪化を、不活性雰囲気下に、1450℃〜2200℃の範囲、有利に1650℃〜1750℃の範囲で実施する場合に得られ得る。殊に、減圧下に、1650℃〜1750℃の範囲で操作することができる。珪化温度の達成後に、SiCへの浸透及び反応のための時間は、少なくとも10分間、例えば、10分間〜1時間であってよい。減圧を行なわない珪化の場合には、殊に2100℃〜2200℃の温度で不活性雰囲気下に珪化させ得る。浸透時間及び反応時間の合計は、減圧を行なわない珪化の場合にも、少なくとも10分間、例えば、10分間〜1時間であってよい。前記の珪化は、有利にいわゆる灯心技術(Dochttechnik)の使用下に行われ得る。この際、珪化されるべき物体は、その下部が液体珪素中に存在する、多孔性の、珪素に対して極めて吸引性の炭素体上にある。そうして、珪化すべき物体は珪素浴と直結することなく、珪素はこの灯心体を通って珪化すべき物体中に上昇する。
【0096】
前記の、殊に含浸及び任意の、引き続いての第一及び/又は第二温度範囲での熱処理による後凝縮段階、珪化段階及び気相被覆段階は、各々1回以上繰り返すことができ、かつ任意の順序で互いに組み合わせることができる。
【0097】
特に高い品質を有する複合材料は、例えば、含浸された繊維不織布の硬化及び任意の凝縮段階及び炭化が行われ得る第一温度範囲での熱処理段階後に、後凝縮が達成され得る前記の含浸及び第一及び/又は第二温度範囲での熱処理段階を、少なくとも1回、有利に1〜3回、好ましくは3回実施する場合に得ることができる。任意に引き続いて更に珪化又は気相被覆又は気相被覆に随行される珪化を実施することができる。気相被覆は、殊に炭素又は炭素を含む混合物を用いて、CVD法又はCVI法により、前記したように行なうことができる。
【0098】
本発明は、もう1つの観点により、a)部分的に又は完全に重なり合って配列している2層以上の繊維層の配列の製造(この際、1層以上の繊維層は、炭素繊維、炭素繊維の前駆繊維、セラミック繊維及びその混合物からなる群から選択される繊維少なくとも50質量%まで含む)、少なくとも1繊維層の1層以上の他の繊維層への装着結合糸での装着(この際、装着は、装着結合糸が少なくとも1繊維層及び少なくとも1層以上の他の繊維層の少なくとも1層を貫通することを含み、この際、装着結合糸は、炭素繊維、炭素繊維の前駆繊維、セラミック繊維及びその混合物からなる群から選択される1種以上の繊維を含む)を含む繊維不織布の製造、及びb)繊維不織布の、不活性雰囲気下に高温処理時間中少なくとも400℃の温度での高温処理を含む方法により得られる繊維不織布を製造する。
【0099】
本発明は、もう1つの観点により、本発明による繊維不織布強化複合材料又は複合材料生成物及び/又は本発明による熱処理された繊維不織布強化複合材料又は複合材料生成物及び/又は本発明による後凝縮された及び/又は珪化された及び/又は気相被覆された繊維不織布強化複合材料又は複合材料生成物又は本発明による繊維不織布の、炉、殊に加熱空間の加熱のために、例えば、少なくとも800℃、有利に少なくとも1100℃、殊に少なくとも2000℃の温度に設定される高温炉の製造のための、殊にそのような炉の内装又は加熱範囲内装の製造のための、熱導体の製造のための、化学反応装置の製造のための、化学反応装置の構造要素の製造のための、及び加熱プレスマトリックス製造のための使用を提供する。
【0100】
本発明による繊維不織布強化複合材料及び/又は熱処理された及び/又は後凝縮された及び/又は珪化された及び/又は気相被覆された繊維不織布強化複合材料を含む又はこれから成る極めて有利な生成物は、特に、高温負荷し得る要素及び装置、例えば、炉、その内装又は加熱範囲内装、熱導体、化学反応装置、化学反応装置の構造要素、及びホットプレスマトリックスである。
【0101】
極めて規則的なので、極めて有利な繊維不織布を生じさせる繊維層は、いわゆる単一方向層又は一方向層である。
【0102】
一方向層の製造のために、一方向テープを形成するために伸展される、1本以上のロープを使用することができる。一方向テープは、一方向層を形成するために、並行して配列され得る。この際、一方向テープは相接して、離れて(beabstandet)又は重なっていてよい。本発明の範囲で使用される"ロープ"という概念は、当業者によって選択可能な任意の材料を含むロープを含む。
【0103】
極めて有利な特性を有する繊維不織布は、例えば、少なくとも1繊維層、殊に一方向層、有利に全繊維層が、0.5K(500フィラメント)〜500K(500000フィラメント)の範囲にあるフィラメントの数を有する場合に得ることができる。1繊維層又は一方向層のフィラメントの数は、有利に1K(1000フィラメント)〜400K(400000フィラメント)の範囲、好ましくは12K(12000フィラメント)〜60K(60000フィラメント)の範囲にある。従って、本発明による方法は、軽型のロープ("低トウ(low tow)"、約25Kまでの範囲)の使用も、重型のロープ("重トウ(heavy tow)"、約25K以上の範囲)の使用も可能である。1繊維層又は一方向層の著しく経費的に有利な製造は、約24K以上のフィラメント数を有するロープの使用で得ることができる。任意に、ロープの一部分だけ、例えば、ロープのフィラメント数の半分だけを伸展させることもできる。
【0104】
少なくとも1繊維層又は一方向層、有利に全繊維層又は一方向層のフィラメントの直径は、例えば、6〜8μmの範囲であってよい。
【0105】
更に、単独の1繊維層又は一方向層は、例えば、50g/m〜500g/mの範囲、有利に150g/m〜350g/mの範囲の単位面積当たりの質量を有し得る。目的とする最終生成物に依り、少なくとも305g/mの単位面積当たりの質量を有する1層以上の繊維層又は一方向層を選択することが有利であり得る。
【0106】
炭素繊維及び/又はその前駆繊維の使用では、ポリアクリルニトリルから出発して得られた繊維も、しかしピッチ又はフェノール樹脂繊維から出発して得られた繊維も、極めて良好な機械的負荷容量の繊維層を生成させた。
【0107】
繊維不織布は、原則的に、当業者に公知の方法により製造することができる。有利な特性を有する繊維不織布は、少なくとも1繊維層、殊に一方向層、有利に全繊維層、殊に一方向層が炭素繊維及び/又はその前駆繊維及び/又はセラミック繊維から成り又はこれを含む繊維不織布であり、この際、これらの繊維不織布は、1繊維層又は一方向層当たり、1K(1000フィラメント)〜400K(400000フィラメント)以上の範囲、好ましくは12K(12000フィラメント)〜60K(60000フィラメント)の範囲のフィラメント数を有することができる。
【0108】
有利な材料特性及び比較的僅少な製造経費を有する繊維不織布は、ポリマー繊維、殊に有機ポリマー繊維、又はその混合物を含む1層以上の繊維層、殊に一方向層を使用する場合に得ることができる。若干の使用では、ポリアクリルニトリルをベースとする繊維、ビスコースをベースとする繊維を、少なくとも1繊維層の製造に使用することが有利であると実証することができる。1、2、3又はそれ以上の繊維層は、例えば、完全に又は繊維層中の繊維の全質量に対して、少なくとも80質量%までポリアクリルニトリル繊維及び/又はビスコース繊維から成ってよい。
【0109】
繊維層又は一方向層の伸展前、その間及び/又はその後に、これ又はその出発物質を、任意に、1種以上の化学的結合剤で処理することができる。このことは、例えば、結合剤の噴霧によって、結合剤を含む浴中への浸漬によって、又は熱溶融可能な又は熱付着性のポリマーの噴霧によって達成され得る。非結束フィラメントから形成されている繊維層の使用では、所望の場合には、当業者はフィラメントを混合させ、かつ例えば、一方向層を伸展の前に圧力水流にさらし、又は縫合を実施することができる。一方向層の製造のために、ロープを単独で伸展させ、得られた一方向テープを、一方向層を形成するために、任意に相接して並べることができる。この際、1本以上のロープの伸展は、当業者に公知の、更に当業者によって本発明の解説に基づき、適合されかつ変更され得る方法を使用して行なうことができる。
【0110】
本発明による方法は、殊に、多軸繊維不織布の製造も可能とし、この際、2層以上の一方向層を重ね合わせて配列させることができる。
【0111】
ロープの伸展のための、及び一方向層及び繊維不織布の製造のための、及び多軸繊維不織布の製造のための方法は、次に詳説され、かつこれらは明細書FR‐A‐2581085及びFR‐A‐2581086に記載されている。
【0112】
2、3、4、5、6、7、8又は任意にそれ以上の繊維層及び/又は一方向層を含む繊維不織布を製造することによって、異なった材料特性を有する繊維不織布を得ることができる。高度に負荷し得る材料の達成のために、一方向層が他の縦方向に、各々この一方向層の上及び/又は下に配列される一方向層として、延伸することが有利であり得る。繊維不織布中に存在する全ての一方向層が各々異なった縦方向に延伸することが有利である。この際、少なくとも1層の一方向層の縦方向が、少なくとも1層の次の一方向層の縦方向に対して、少なくとも30°、有利に少なくとも45°、好ましくは少なくとも60°、殊に85〜90°の角度を成す場合が有利であり得る。
【0113】
一方向層が各々互いに異なった縦方向を有する場合には、2層の一方向層の使用では2軸繊維不織布が得られ、3層の一方向層の使用では3軸の繊維不織布が得られ、4層の一方向層の使用では4軸の繊維不織布が得られる。
【0114】
次に、一方向層及び繊維不織布、殊に多軸繊維不織布の製造を詳説する。更に、当業者によって他の製法を選択することができる。一方向層の取得のためのロープ伸展の間に、ロープを先ず、例えば、ロープの伸張を制御することができる1基以上の装置上に送り、かつ引き続いて、ロープの伸展のための1以上の装置上に送り、それによって一方向テープが得られる。次いで、1枚の一方向テープを装置上で1枚以上の他のテープと集結させ、1層の一方向層を形成することができる。1枚以上の他のテープは、同じ又は異なった材料のロープから由来してよい。任意に、繊維層、殊に一方向層はその形成後に、結合剤で処理され得る。結束フィラメントから形成されているロープも、非結束フィラメントから形成されているロープも、及び異なった材料を含む混合フィラメントを有するロープも、本発明による方法で使用することができる。
【0115】
次いで、数層の一方向層を1つの繊維不織布、殊に1つの多軸繊維不織布に合一することができる。このために、一方向層の少なくとも2つの縦方向が互いに5°以上の角度を成すように、有利に互いに配列されている一方向層を使用することができる。使用される一方向層は、同じ又は異なった幅を有することができる。多軸繊維不織布の製造では、当業者は、対照方向として、0°方向として表示される方向を選択する。しばしば、0°方向は、製造すべき繊維不織布の縦方向に相応する。この方向に平行する一方向層は、0°層として表示される。
【0116】
2層以上の一方向層の使用で、有利に、2層以上の他の一方向層は、その各々の縦方向が0°方向に対して反対符号を有する角度を成すように配列され、この際、角度の値は同じ(及び角度は、例えば、+60°/−60°又は+45°/−45°であってよい)又は異なっていてよく、又はその各々の縦方向は0°方向に対して0°及び90°の角度下にある。
【0117】
本出願の範囲で使用される"炭素繊維"という概念は、炭素含有出発物質繊維、例えば、ポリアクリルニトリルをベースとする繊維、ポリアセチレンをベースとする繊維、ポリフェニレンをベースとする繊維、ピッチをベースとする繊維、又はセルロースをベースとする繊維から出発して製造された炭素繊維を含み、この際、この概念は殊に、各々繊維の全質量に対して、75質量%以上、有利に85質量%超、好ましくは92質量%超の炭素含量を有する繊維を含むことができる。
【0118】
本出願の範囲で使用される"炭素繊維の前駆繊維"という概念は、炭素繊維がそれから製造することができ、かつそれについては前記で多数の例が挙げられている炭素含有出発物質繊維から出発して製造された繊維を含むが、この際、"炭素繊維の前駆繊維"は、出発物質繊維と比較して、既に化学的又は機械的変化、例えば、酸化を受けている。炭素繊維の前駆繊維の例は、特に予備酸化されたポリアクリルニトリル繊維(しばしば、PAN‐Oxと略称される)、予備酸化されたビスコース繊維、各予備酸化された織物繊維、フェノール樹脂繊維、ピッチをベースとする前駆繊維、及びその混合物であり、この際、これらの列挙は決定的と解するべきでない。
【0119】
炭素繊維及び炭素繊維の前駆繊維の製造のための出発物質繊維として好適な繊維は、ポリアクリルニトリルをベースとする繊維である。更に、ポリアクリルニトリルをベースとする繊維は、そのものとしても繊維層の製造に使用することができる。
【0120】
ポリアクリルニトリル繊維、予備酸化されたポリアクリルニトリル繊維の製法及びそれから製造される炭素繊維は、例えば、E. Fitzer, L. M. Manocha, "Carbon Reinforcements and Carbon/Carbon Composites", Springer Verlag, Berlin, 1998, ISBN 3-540-62933-5, S. 10-24の公表文書、及び明細書US4001382、US6326451、EP0384299B1及びUS6054214に説明されている。
【0121】
ピッチをベースとする前駆繊維の製造のための出発物質繊維は、等方性のピッチ繊維でも、異方性のピッチ繊維でもよい。このような出発物質繊維の製造のために、メソ相ピッチ(メソフェーズピッチ(mesophase pitch))に溶融紡糸法を施し、かつ可塑的変形可能となるまで延伸させ、この際、有利な方向性を有するピッチ繊維を製造することができる。ピッチ繊維及びピッチをベースとする前駆繊維の好適な製法は公知技術水準で公知であり、かつ例えば、E. Fitzer, L. M. Manocha, "Carbon Reinforcements and Carbon/Carbon Composites", Springer Verlag, Berlin, 1998, ISBN 3-540-62933-5, S. 24-34の公表文書、及び特許明細書DE69732825T2に説明されている。
【0122】
フェノール樹脂繊維の製法、及びこの糸からの結合糸の製造は当業者に公知である。更に、このような方法は、例えば、明細書DE2308827及びDE2328313に記載されている。
【0123】
例えば、繊維層又は装着結合糸のためのセラミック繊維として、例えば、少なくとも1種、有利に少なくとも2種の元素、炭素、珪素、硼素、チタン、ジルコン、タングステン、アルミニウム及び窒素を含む1種以上の化合物をベースとする酸化及び/又は非酸化繊維を使用することができる。セラミック繊維は、少なくとも2種の元素、炭素(C)、珪素(Si)、硼素(B)、チタン(Ti)、ジルコン(Zr)、タングステン(W)、アルミニウム(Al)及び窒素(N)を含む化合物から完全に又はセラミック繊維の全質量に対して少なくとも90質量%まで成ることが有利である。殊に、C、Si、B、N、Al、Zr、Ti、Wの含量の合計が、セラミック繊維の全質量の50質量%以上、有利に83質量%以上、好ましくは85質量%超、殊に95質量%以上であるセラミック繊維を使用することができ、この際、C、Si、B、N、Al、Zr、Ti、Wの1種以上の含量は0質量%であってよい。
【0124】
Si、C、B、N、Al又はその化合物をベースとする繊維、殊に高耐熱性繊維(この際、これらの繊維は、例えば、明細書DE19711829C1に、"Si/B/N‐繊維"としても表示される)、及び殊に、これらの元素の少なくとも2種を含む化合物をベースとするセラミック繊維が使用される。このような繊維は、例えば、明細書DE19711829C1に記載されている。
【0125】
セラミック繊維は、例えば、酸化アルミニウム、酸化ジルコン、SiNC、SiBNC、SiC、BC、BN、Si、TiC、WC及びその混合物から選択される少なくとも1種の化合物を含む、又はそれから完全に又は繊維の全質量に対して、少なくとも90質量%、有利に少なくとも93質量%まで成ってよい。セラミック繊維とは、殊に、玄武岩繊維及び/又はガラス繊維又は他のセラミック繊維とのその混合物のことであってよい。
【0126】
玄武岩繊維の製法、及びこれらの糸からの結合糸の製法は、当業者に公知である。更にこのような方法は、例えば、明細書DE19538599A1、CH96640に記載されている。
【0127】
方法
a)糸の質量測定
明確に例外として挙げられていない場合には、"糸の質量"又は"糸の全質量"という概念は、乾燥糸の、及び装着液(又はいわゆる"サイズ")の塗布前の糸に関し、この際、乾燥は、当業者に公知の乾燥法を使用して行なうことができる。ISO 1889による乾燥が有利に行われる。
【0128】
b)加熱における糸の質量損失の調査
前記のa)節に記載したように得られた乾燥糸の質量の20℃での測定後に、乾燥糸を、1013hPaの圧力及び20℃の温度で不活性雰囲気下に(この際、不活性雰囲気は、不活性雰囲気の全質量に対して、窒素99.9質量%を含む)12時間、各々選択された温度まで、前記で説明したように加熱する(高温耐性糸の場合:405℃、高度に高温耐性の糸の場合:410℃、極めて高度に高温耐性の糸の場合:600℃、特に高度に高温耐性の糸の場合:900℃、極めて高度に高温耐性の糸の場合:2000℃)。選択された温度の達成後に、温度を8時間一定に保った。引き続き、冷却を20℃まで20時間行なった。
【0129】
20℃までの冷却後に、選択された温度で処理された糸の各質量を測定し、乾燥糸の各質量と加熱前とを比較し、質量損失を調べる。
【0130】
c)加熱後の糸の引張強度の調査
糸を、不活性雰囲気下に、1013hPaの圧力及び20℃の温度で(この際、不活性雰囲気は、不活性雰囲気の全質量に対して、窒素99.9質量%を含む)12時間各目的温度に(400℃、有利に410℃、好ましくは600℃、更に好ましくは900℃、殊に2000℃)加熱する。目的温度の達成後に、温度を8時間一定に保つ。引き続き、冷却を20℃まで20時間行なった。冷却後に、引張強度をASTM D3379-75により調べる。
【0131】
d)他の方法
最高引張力及び引張強度("tensile strength")の調査を当業者に公知の方法で行なうことができる。殊に、測定はASTM D3379-75により行なうことができる。
【0132】
繊維、例えば、繊維不織布の質量とは、乾燥繊維の質量のことであり、この際、乾燥は、当業者に公知の乾燥法を使用して行われ得る。乾燥は、有利にISO 1889により行われる。
【0133】
規格、例えば、DIN規格、ISO規格又はASTM規格は、その多数の版が存在する場合には、1.8.08で各々現下の版に関連させる。
【0134】
ここで、本発明を実施例に付き説明するが、これに限定されるものではない:
実施例
例1:繊維不織布の製造及びその継続加工
多軸スクリム機上で、商標Sigrafil C30 T050 EPYを有する、SGL Group, Meitingen, Deutschlandの50000単一フィラメントを有する重トウ(heavy-tow)炭素繊維を、単位面積当たりの質量450g/mを有する二軸スクリムに加工した。Sigrafil C30繊維は、直径6.5μm、密度1.80g/cm、引張強度3.8GPa(ASTM D3379-75により測定、"tensile strength")、繊維の全質量に対して、ASTM D5291-02による炭素含量("carbon content")>95質量%を有する。
【0135】
後に続く加熱工程、殊に前記の高温処理で、不織布の必要な耐熱性を達成するために、様々な結合糸を、高い耐熱性を有する装着結合糸として使用した。この際、1つの型だけの結合糸を有する不織布も、組み合わせたものも試験した。
【0136】
図1は、予備酸化されたポリアクリルニトリル(PAN-Ox)からの紡糸(紡糸の商標:Sigrafil Nm25/2、繊度:1.7dtex.、SGL Group, Meitingen, Deutschlandを介して得られる)からの縫合パターンを有する+/−45°不織布(一方向層を有する繊維不織布、この際、一方向層の縦方向は、繊維不織布の縦方向(0°方向)に対して+45°及び−45°の角度を形成する)を例示する。縫合パターンは、図1で、比較的より暗黒色の紡糸から製造されている、上から5番目の縫目として見分けられる。他の縫目は、2000℃までの加熱を、非破壊性では耐えられない公知技術水準の紡糸から製造されている。
【0137】
図2は、少なくとも99.9質量%まで窒素を含む不活性雰囲気下に、2000℃で8時間加熱後の同じ不織布を示す。PAN-Ox結合糸は、後に続く含浸工程(プリプレグ工程)に必要な強度で黒鉛化に耐え、一方で公知技術水準の紡糸は、加熱を非破壊性では耐えられなかった。2200℃までの加熱を実施した試験は、比較可能な結果を示す。後に続く含浸工程(プリプレグ工程)に十分な縫合の強度は実証され得た。
【0138】
比較可能な結果は、例えば、結合糸として、紡糸された延伸断続の予備酸化ポリアクリルニトリル繊維からのステープル紡糸(紡糸の商標:Sigrafil SPO Nm14/2, SGL Group, Meitingen, Deutschlandを介して得られる)、又は炭素繊維紡糸又は炭素繊維紡糸、ステープル紡糸及び予備酸化ポリアクリルニトリルからの紡糸から選択される、少なくとも2種の紡糸の組合せを使用した。
【0139】
図3は、黒鉛化され、炭素繊維で縫合された+/−45°不織布を例示する。不織布は、使用された結合糸の耐熱性に基づき、形状安定のままであり、従って、これはマトリックスとしてフェノール樹脂を用いる次に続く含浸過程で半製品(プリプレグ(Prepregs))に継続加工することができた。黒鉛化は、少なくとも99.9質量%まで窒素を含む不活性雰囲気下に2000℃で8時間行なわれた。
【0140】
前記の黒鉛化不織布から製造されたプリプレグを、炭素繊維強化炭素セラミックに加工した。この際、先ずプリプレグを、180℃までの温度で、8時間まで、特に有利に3時間までの時間をかけて、かつ圧力下に加熱圧縮して、試料プレートに形成し、それによってグリーンボディーを得る。この例では、150℃で4時間にわたり10N/cmの圧力で圧縮した。次いで、このグリーンボディーを継続段階で先ず1000℃の温度で8時間、少なくとも99.9質量%まで窒素を含む不活性雰囲気下に熱処理し(炭化)、引き続いて、含浸ピッチで含浸させ、かつ1000℃の温度で8時間、少なくとも99.9質量%まで窒素を含む不活性雰囲気下に再度燃焼させる。
【0141】
後凝縮のために、例えば、殊にフェノール樹脂の群から由来する、高い炭素収量を有する熱硬化性樹脂を使用することもできる。ピッチ及びそれから誘導される誘導体での試験は、同様に良好な結果を示す。実施すべき後凝縮の回数は、所望される炭素繊維強化炭素セラミックの目的密度に依るが、4回まで実施され、それによって1.30〜1.58±0.03g/cmの密度が達成される。
【0142】
前記の方法で達成された炭素繊維強化炭素セラミックを、引き続いて実施される不活性雰囲気中2000℃で8時間の加熱後に、特性付けした。図4は、この炭素繊維強化炭素セラミックを示す。表1に、達成された特性を総括する。
【0143】
表1:例1により製造された炭素繊維強化炭素セラミックの特性一覧表
【表1】

【0144】
試料1及び2は、各々複合材料から切り取ったほぼ長方形の試料片である。試料1は、繊維方向に対して平行に延びる長辺を有し、一方で試料2は、繊維方向に対して45°で延びる長辺を有する。
【0145】
例2:2000℃までの加熱における予備酸化ポリアクリルニトリル繊維の引張強度の変化
次の表は、本発明による繊維不織布の製造に使用され得るPAN‐Ox紡糸(予備酸化ポリアクリルニトリル繊維からの紡糸)(紡糸の商標:Nm25/2、SGL Group, Meitingen, Deutschlandを介して得られる)の引張強度を2000℃での処理の前及びその後で比較する。この処理では、不活性雰囲気下(この際、不活性雰囲気は、不活性雰囲気の全質量に対して、窒素少なくとも99.9質量%まで含む)1013hPaの圧力及び20℃の温度で、紡糸を12時間2000℃まで加熱する。2000℃の達成後に、温度を8時間一定に保った。引き続き、冷却を20℃まで20時間行なった。
【0146】
【表2】

【0147】
最高引張力及び引張強度("tensile strength")の調査は、ASTM D3379-75により行なわれた。
【0148】
驚異的にも、PAN‐Ox紡糸の最高引張力も引張強度も、温度処理後に上昇したことを示す。このことは、炭素繊維の前駆繊維を含む又はそれから成る紡糸、殊にPAN‐Oxを含む紡糸が、本発明による複合材料及び繊維不織布の製造のための装着糸として、極めて好適であることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)部分的に又は完全に重なり合って配列している2層以上の繊維層の配列の製造(この際、1層以上の繊維層は、各繊維層の全質量に対して、炭素繊維、炭素繊維の前駆繊維、セラミック繊維及びその混合物からなる群から選択される繊維を少なくとも50質量%まで含む)、
少なくとも1繊維層の、1層以上の他の繊維層への、装着結合糸での装着(この際、装着は、装着結合糸が少なくとも1繊維層及び少なくとも1層以上の他の繊維層の少なくとも1層を貫通することを含み、この際、装着結合糸は、炭素繊維、炭素繊維の前駆繊維、セラミック繊維及びその混合物からなる群から選択される1種以上の繊維を含む)
を含む繊維不織布の製造と、
b)繊維不織布の、不活性雰囲気下に高温処理時間中少なくとも400℃の温度での高温処理と、
c)高温処理された繊維不織布の、少なくとも1種のバインダーでの含浸と、
d)含浸された繊維不織布の、硬化時間中少なくとも40℃の硬化温度での硬化、及び含浸された繊維不織布の少なくとも1表面の少なくとも1表面区分の、硬化時間の開始前及び/又は硬化時間の少なくとも部分時間中の任意の加圧(この際、繊維不織布強化複合材料が形成される)と、
e)繊維不織布強化複合材料又は複合材料生成物の、硬化及び任意の加圧段階後の任意の取得と、
を含む繊維不織布強化複合材料の製法。
【請求項2】
更に、繊維不織布強化複合材料又は複合材料生成物の熱処理、及び熱処理段階後の熱処理された繊維不織布強化複合材料又は複合材料生成物の任意の取得を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
更に、熱処理された繊維不織布強化複合材料又は複合材料生成物の後凝縮及び/又は珪化及び/又は気相被覆、並びに後凝縮及び/又は珪化及び/又は気相被覆の段階後の、後凝縮及び/又は珪化及び/又は気相被覆された繊維不織布強化複合材料又は複合材料生成物の任意の取得を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
装着は縫合である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1繊維層は、炭素繊維、炭素繊維の前駆繊維、セラミック繊維及びその混合物からなる群から選択される繊維を、各繊維層の全質量に対して、70質量%超まで、有利に85質量%超まで、好ましくは92質量%超まで、殊に98質量%超まで含む、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
C、Si、B、N、Al、Zr、Ti、Wの含量の合計が、装着結合糸の全質量の50質量%以上、有利に83質量%以上、好ましくは85質量%超、殊に95質量%以上であり、この際、C、Si、B、N、Al、Zr、Ti、Wの1種以上の含量は、0質量%であってよい装着結合糸を使用する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
装着結合糸は、少なくとも装着の前に、少なくとも部分的に又は完全に、装着液によって被覆されている、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
装着は、装着結合糸が、第一繊維層上の第一進入位置で進入し、第一繊維層及び少なくとももう1層の繊維層を貫通し、かつ少なくとももう1層の繊維層上の第一進出位置で進出し、かつ任意に、少なくとももう1層の繊維層上の第二進入位置で進入し、かつ少なくとももう1層の繊維層及び第一繊維層を貫通し、かつ第一繊維層上の第二進出位置で進出することを含む、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
装着糸の1種以上の炭素繊維の前駆繊維は、予備酸化織物繊維、予備酸化ビスコース繊維、予備酸化ポリアクリルニトリル繊維、フェノール樹脂繊維、ピッチをベースとする前駆繊維及びその混合物からなる群から選択される、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
装着糸の1種以上のセラミック繊維は、玄武岩繊維、Si、C、B、N、Al又はその化合物をベースとする繊維、ガラス繊維、酸化アルミニウムをベースとする繊維、酸化ジルコンをベースとする繊維、TiCをベースとする繊維、WCをベースとする繊維及びその混合物からなる群から選択され、この際、1種以上のセラミック繊維は、有利に、玄武岩繊維、SiNC、SiBNC、SiC、BC、BN、Si、酸化アルミニウム、酸化ジルコン、TiC、WC及びその混合物を含む又はそれから成る繊維、及びその混合物からなる群から選択される、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1繊維層は、単位面積当たりの質量を、50g/m〜500g/mの範囲、有利に150g/m〜350g/mの範囲、殊に少なくとも305g/m〜500g/mの範囲で有する、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1繊維層は、0.5K(500フィラメント)〜500K(500000フィラメント)の範囲、有利に1K(1000フィラメント)〜400K(400000フィラメント)の範囲、好ましくは12K(12000フィラメント)〜60K(60000フィラメント)の範囲にあるフィラメントの数を有する、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
バインダーは、1種以上の樹脂及び/又は1種以上の無機含浸剤を含み、この際、有利に、1種以上の樹脂は、フェノール樹脂、エポキシド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シアネートエステル樹脂、ポリエステル樹脂/ビニルエステル樹脂、ポリイミド樹脂、フラン樹脂、ポリアクリレート樹脂及びその混合物からなる群から選択され、及び/又は、この際、有利に、1種以上の無機含浸剤は、珪素、SiC前駆体ポリマー、SiC前駆体オリゴマー及びその混合物からなる群から選択される、請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1層の、有利に全ての繊維層は、一方向層である、請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
装着液は、水、シリコーン油、ポリウレタン、エポキシド樹脂化合物、殊にエポキシエステル、ポリビニルアルコール、蝋、脂肪酸エステル、ポリウレタンエステル、ポリウレタンエーテル、及びその混合物からなる群から選択される1種以上の化合物を含む、請求項7から14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
装着結合糸は、DIN 60905により測定される、1Tex以下の繊度、有利に0.04〜1Texの範囲の繊度、好ましくは0.04〜0.75Texの範囲の繊度を有する、請求項1から15までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
請求項1又は請求項4から16までのいずれか1項に記載の方法によって得られ、請求項2又は3に従属しない、繊維不織布強化複合材料生成物又は繊維不織布強化複合材料。
【請求項18】
請求項2又は請求項4から16までのいずれか1項に記載の方法によって得られ、請求項3に従属しない、熱処理された繊維不織布強化複合材料生成物又は熱処理された繊維不織布強化複合材料。
【請求項19】
請求項3から16までのいずれか1項に記載の方法によって得られる、後凝縮及び/又は珪化及び/又は気相被覆された繊維不織布強化複合材料生成物又は後凝縮及び/又は珪化及び/又は気相被覆された繊維不織布強化複合材料。
【請求項20】
a)部分的に又は完全に重なり合って配列している2層以上の繊維層の配列の製造(この際、1層以上の繊維層は、各繊維層の全質量に対して、炭素繊維、炭素繊維の前駆繊維、セラミック繊維及びその混合物からなる群から選択される繊維を少なくとも50質量%まで含む)、
少なくとも1繊維層の、1層以上の他の繊維層への、装着結合糸での装着(この際、装着は、装着結合糸が少なくとも1繊維層及び少なくとも1層以上の他の繊維層の少なくとも1層を貫通することを含み、この際、装着結合糸は、炭素繊維、炭素繊維の前駆繊維、セラミック繊維及びその混合物からなる群から選択される1種以上の繊維を含む)
を含む繊維不織布の製造、
b)繊維不織布の、不活性雰囲気下に高温処理時間中少なくとも400℃の温度での高温処理
を含む方法によって得られる繊維不織布。
【請求項21】
炉の製造のための、殊に、炉の、熱導体の、化学的反応装置又はその要素の、及び加熱圧縮マトリックスの加熱範囲内装の製造のための、請求項17から19までのいずれか1項に記載の複合材料又は複合材料生成物の、又は請求項20に記載の繊維不織布の使用。
【請求項22】
請求項17から19までのいずれか1項に記載の複合材料又は複合材料生成物を含む又はそれから成る要素又は装置、有利に、炉、殊にその内装又は加熱範囲内装、熱導体、化学的反応装置又はその構成要素、及び加熱圧縮マトリックスからなる群から選択される要素又は装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−528757(P2011−528757A)
【公表日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−519166(P2011−519166)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【国際出願番号】PCT/EP2009/059445
【国際公開番号】WO2010/010129
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(501090803)エスゲーエル カーボン ソシエタス ヨーロピア (47)
【氏名又は名称原語表記】SGL CARBON SE
【住所又は居所原語表記】Rheingaustrasse 182, D−65203 Wiesbaden, Germany
【Fターム(参考)】