繊維強化プラスチックスの成形方法および成形装置ならびに成形体
【課題】プリフォーム工程に費やしていた時間が大幅に省力化可能となり、安価で良好な賦形をされたコンポジット成形品を得ることができる繊維強化プラスチックスの成形方法および成形装置ならびに成形体を提供することにある。
【解決手段】複数枚の強化繊維基材を成形型に配置し、成形型を閉じることで所定の形状に上記強化繊維基材を変形せしめ、かつ、変形した該強化繊維基材が成形型に設けた基材キャビティー内に収められるようにし、その状態の型内へ樹脂を注入するとともに硬化させて成形品を得ることを特徴とする繊維強化プラスチックスの成形方法。
【解決手段】複数枚の強化繊維基材を成形型に配置し、成形型を閉じることで所定の形状に上記強化繊維基材を変形せしめ、かつ、変形した該強化繊維基材が成形型に設けた基材キャビティー内に収められるようにし、その状態の型内へ樹脂を注入するとともに硬化させて成形品を得ることを特徴とする繊維強化プラスチックスの成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、効率良く強化繊維基材の成形体を得るための繊維強化プラスチックスの成形方法および成形装置ならびに成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維を強化繊維とした複合材料は、優れた力学特性、軽量化等の要求特性を満たすことから主に航空、宇宙、スポーツ用途に用いられてきた。これらの代表的な製造方法としては、オートクレーブ成形法が知られている。かかる成形法では、強化繊維にマトリックス樹脂を予め含浸させたプリプレグを、成形型に積み重ねてオートクレーブにて加熱・加圧して複合材料を成形する。ここで用いる基材としてのプリプレグは、それを用いると機械特性の高い複合材料が得られる利点があるが、コシが強すぎて賦形しにくいこと、製造に高いコストがかかること、すなわち生産性が低いことに問題があった。
【0003】
一方、複合材料の生産性に優れる成形法としては、例えばレジン・トランスファー・モールディング成形法(以降、RTM法と記す)等の注入成形が挙げられる。かかるRTM法では、マトリックス樹脂が予備含浸されていない(ドライな)炭素繊維からなる強化繊維基材を複雑な成形型の中に配置して、液状(低粘度)のマトリックス樹脂を注入することにより強化繊維中にマトリックス樹脂を含浸させて成形をする。
【0004】
ところがこの注入成形は、複合材料の生産性には優れるが、用いる強化繊維基材(例えばドライな織物等)が目ズレし易い(形態不安定)、強化繊維基材にコシがなさすぎるため容易に折れ曲がる、積層した時に強化繊維基材同士を接着できない(タック性がない)等の強化繊維基材の取り扱い性に関する問題があった。この他にも、マトリックス樹脂が低粘度である必要があるため、例えばプリプレグに用いられる高粘度のものに比べて力学特性が低い等の問題等があり、これらの諸問題により炭素繊維本来の特性を十分発現できずに、複合材料の力学特性を損なう問題を引き起こしていた。
【0005】
上記問題に対し、例えば、強化繊維布帛に熱可塑ライクな樹脂を布帛に付与し、強化繊維基材としてのドライな織物の取り扱い性の向上、注入成形に用いるプリフォーム形態安定化に関する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、エポキシ樹脂とエラストマー粒子またはポリアミド6とを配合した樹脂を織物上に付与することにより、注入成形によって得られるCFRPの力学特性(ModeI,IIの層間破壊靭性等)が向上することを報告しているものがある(例えば、非特許文献1、2参照)。
【0007】
つまり、これらの提案は、強化繊維基材の取り扱い性を向上させることでプリフォームと呼ばれる成形前駆体を容易に作製できるようにすることで、成形工程におけるレイアップ工程を外段取りで行う方法であった。しかしながら、一旦プリフォームという工程を必要とすることから、成形工程の省略化による低コスト化に成り得なかった。
【0008】
すなわち、従来の技術では、成形型上に樹脂を含浸させる前の強化繊維基材をのせて積層し、その後、バッグフィルムや成形型で覆い、その中に樹脂を注入し硬化させることで成形品を得たり、予め、樹脂を含浸させた強化繊維基材を賦形型に積層し、予備賦形してプリフォームとすることで、その後、成形型に入れて硬化成形させたりしていた。この時、賦形に関しては、人手により所定形状に基材をレイアップすることが多く、生産性が低いと共にコストが高い要因となっていた。そこで、プリフォーム工程等を省略した低コスト量産成形技術が渇望されていた。
【特許文献1】米国特許第5,071,711号明細書
【非特許文献1】ジェームズ・シー・セフェリス(James C. Seferis)著,“ジャーナル・オブ・アドバンスド・マテリアルズ(Journal of Advanced Materials)”,(米国),2000年7月,第32巻,第3号,p.27−34
【非特許文献2】ジェームズ・シー・セフェリス(James C. Seferis)著,“コンポジット・パート・A(Composites part A)” ,(米国),2001年,第32巻,p.721−729
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、上記従来の問題点を解決しようとするものであり、プリフォーム工程に費やしていた時間が大幅に省力化可能となり、安価で良好な賦形をされたコンポジット成形品を得ることができる繊維強化プラスチックスの成形方法および成形装置ならびに成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、
(1)複数枚の強化繊維基材を成形型に配置し、成形型を閉じることで所定の形状に上記強化繊維基材を変形せしめ、かつ、変形した該強化繊維基材が成形型に設けた基材キャビティー内に収められるようにし、その状態の型内へ樹脂を注入するとともに硬化させて成形品を得ることを特徴とする繊維強化プラスチックスの成形方法。
【0011】
(2)前記基材キャビティー内の、樹脂が流動する方向の両側部に、樹脂の流動を制御するシール部を設けて、樹脂の流動を制御することを特徴とする前記(1)記載の繊維強化プラスチックスの成形方法。
【0012】
(3)前記シール部のシール率αが5〜100%の範囲となるようにしたことを特徴とする前記(2)記載の繊維強化プラスチックスの成形方法。
【0013】
(4)前記シール部が予め成形型内に埋め込まれていることを特徴とする前記(2)または(3)記載の繊維強化プラスチックスの成形方法。
【0014】
(5)前記シール部を、配置した強化繊維基材とともに成形型内に配置することを特徴とする前記(2)または(3)記載の繊維強化プラスチックスの成形方法。
【0015】
(6)用いられる強化繊維基材の非繊維軸方向引張試験による引張歪みが1%に到達するまでの荷重の最大値が、0.01〜0.75Nの範囲内にある強化繊維基材を用いることを特徴する前記(1)〜(5)のいずれかに記載の繊維強化プラスチックスの成形方法。
【0016】
(7)前記強化繊維基材として非繊維軸方向引張試験による引張歪みが5%に到達するまでの荷重の最大値が、0.1〜1.0Nの範囲内であるものを用いることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の強化繊維プラスチックスの成形法
(8)複数枚の強化繊維基材を配置する下型と、該下型に対応して設けられた上型を有し、該上型を下型に対してを閉じることで所定の形状に上記強化繊維基材を変形させるための成形型を備え、かつ、該成形型には、前記変形した強化繊維基材が収められるように設けられた基材キャビティーを有するとともに、該基材キャビティー内に樹脂を注入する樹脂注入口と注入された樹脂を排出する樹脂排出口を設けたことを特徴とする繊維強化プラスチックスの成形装置。
【0017】
(9)前記(1)〜(7)のいずれかに記載の繊維強化プラスチックスの成形方法、もしくは前記(8)に記載の繊維強化プラスチックの成形装置によって製造されてなることを特徴とする繊維強化プラスチックス成形体。
【発明の効果】
【0018】
本発明の製造方法によれば、プリフォーム工程に費やしていた時間を大幅に省力化可能になることから、安価で良好な賦形をされたコンポジット成形品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を図を参照しながらさらに詳細に説明する。
【0020】
図1はRTM成形設備の概略図であり、本発明のFRP成形用強化繊維基材の賦形方法の一例を示す概略図である。また、図3は、本発明のFRP成形用強化繊維基材の賦形方法に用いる成形金型の下型の一例を示す概略図である。成形型2は上型16と下型17からなり(図2参照)、金型昇降装置1に取付られている。この金型昇降装置には油圧ユニット9が設けられており、その中の油圧ポンプ10にて発生させた油圧を油圧シリンダー11におくることにより型の開閉が行われる構造になっている。下型は、図3に示すように、積層された複数枚の裁断された強化繊維基材31a,31b,31cが型内に収まるように所定の板厚分の型キャビティー32が設けられており、裁断された強化繊維基材31a,31b,31cが型キャビティー32内に収まるようにして配置し、もしくは上型を閉じ、形状に追従した後の裁断された強化繊維基材31a,31b,31cの端末が型キャビティー32内に収まるようにし、型を閉じることで強化繊維基材を所定形状に賦形するものである。
【0021】
図1に戻って、成形型2には任意に複数の樹脂注入口8aに繋がる樹脂注入流路13、排出口8bに繋がる排出路14が設けられている。樹脂注入流路13、排出路14は各々カプラを介して注入口8a、排出口8bに接続されている。また、樹脂注入流路13には樹脂注入装置3が接続されている。樹脂注入装置3は主剤タンク5、硬化剤タンク6にそれぞれ主剤・硬化剤を収容し、それぞれのタンクは加温、真空脱泡できる機構(例えば真空ポンプ24)を備えている。樹脂注入時にはそれぞれのタンクから樹脂は逆止弁12を通じて加圧装置23により樹脂注入流路13に向かって押し流す。加圧装置23は、シリンジポンプを用いており、シリンジを同時に押し出すことで定量性も確保することが2液混合により硬化する樹脂には好ましい。混合ユニット4で混合され、樹脂注入流路13に至る。排出路14は真空ポンプ7aあるいは加圧ポンプ7bへの樹脂の流入を防ぐために、樹脂トラップ15に接続される。
【0022】
なお、注入口8aの数や位置は成形型の形状や寸法、1型内で同時に成形する成形品の数量などによって異なるが、注入口8aはできるだけ少ないことが好ましい。これは樹脂注入装置3からの樹脂注入流路 13を注入口8aに接続する箇所が増えて注入作業が繁雑になることを防ぐためである。
【0023】
樹脂注入流路13の材料は十分な流量の確保と樹脂との適合性(温度や耐溶剤性、耐圧)を考慮することが重要である。チューブには口径5〜30mmのものを用い、樹脂の注入圧力に耐えるために1.0MPa以上の耐圧性、樹脂硬化時の温度に耐えるために100℃以上の耐熱性のものを用いることが重要となり、厚みが2mm程度の”テフロン(登録商標)”などのフッ素樹脂製チューブやナイロンチューブが好適である。スチール、アルミ等の金属管であってもよい。また、排出口8bの数や位置は成形型の形状や寸法、1型内で同時に成形する成形品の数量などによって異なるが、排出口もできるだけ少ないことが好ましい。また、排出口8bは、型内に残留する気体が抜けやすいように注入口8aよりも気体が浮動し易い方向である高い位置に設置されることが好ましい。
【0024】
排出路14の材料は、樹脂注入流路13と同様に十分な流量の確保と樹脂との適合性(温度や耐溶剤性、耐圧)を考慮することが重要である。排出路14としてはスチール、アルミ等の金属管、あるいはポリエチレン、”テフロン(登録商標)”等のプラスチック製のチューブが挙げられるが、直径5〜10mm、厚み1〜2mmのナイロンチューブがより好適である。
【0025】
樹脂注入時の樹脂注入流路13、排出路14の途中に設置する注入バルブ22aや排出バルブ22bは、図2に示すようなバイスグリップ21等により、直接作業者により流路を挟むことで全域開閉や口径を変化させることができる。また、バイスグリップのハンドル部分にアクチュエータを設置して自動化することや、またバイスグリップの代わりに電磁バルブやエアーオペレーションバルブを用いる等したバルブ開閉装置を適用することができる。さらに、排出バルブ22bは、単なる開閉の2値ではなく、流路の径を変化(ボールバルブの開度調節)させることも制御装置22cを用いることで可能である。
【0026】
樹脂の加圧は、シリンジポンプなどによる加圧方法によれば定量性も得られるので好ましい。樹脂の注入圧Piは0.1〜1.0MPaの範囲で用いるのが好ましい。ここで樹脂の注入圧Piとは、加圧装置23により加圧される最大圧力を指し、図1の注入圧力計30で表示させる圧力を表す。最終的に樹脂が型内の基材に完全に含浸され排出路14まで到達したら排出路14を閉じ、その後暫くしてから樹脂注入流路 13も閉じて樹脂注入を終了する。成形型2は温調機25、26によって加温されており、これにより樹脂を硬化させる。なお、型内樹脂圧Pmとは、型内圧力計27の圧力を表す。
【0027】
本発明は、上記のように、複数枚の強化繊維基材31a、31b、31cからなるシートを成形型2内に配置し(図3)、該成形型2の上型16と下型17を閉じることで所定の形状に該強化繊維基材からなるシートを変形させ、かつ、変形した強化繊維基材シートが成形型に設けた基材キャビティー32内に収められるようにし、その状態の型内へ樹脂を注入することで、硬化させて成形品を得るものである。
【0028】
本発明によって、予め賦形を行ったプリフォームが不要となり、上記工程に従って成形を行えば、工程の省力化が行え、短時間に安価な製品を成形可能になる。
【0029】
本発明で賦形する強化繊維としては、炭素繊維やアラミド繊維,ガラス繊維,ポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維等が好ましく使用できるが、これらに限定されるものではない。引張弾性率として、110〜600GPaであるものが好ましく、210〜600GPaであればさらに好ましい。引張弾性率が110GPa以上であると、複合材料の力学特性が高くなるため好ましく、本観点からは、弾性率が高ければ高いほど好ましい。ここで、引張弾性率は、JIS R7601に準拠して測定される値を指し、単位はGPaである。
【0030】
本発明における強化繊維基材としては、強化繊維を用いて製布する布帛であれば、特に限定されないが、例えば二次元の一方向性、二方向性、あるいはそれ以上の方向性を有する織物、三次元の多方向性織物、編物、多軸挿入布帛、一方向に引きそろえられた強化繊維シートをバインダーや融着性不織布、ステッチ糸等で形態安定化したもの(一方向性シート)、一方向性シートを二方向以上積層した多軸シート等が挙げられる。また、該布帛ははステッチ糸や結節糸等により接合され複数が一体化しているものでもよい。
【0031】
また、布帛として用いられる強化繊維の種類が1種類のみならず、異なる繊維を組み合わせたて布帛を構成したり、種類の異なる布帛を重ね合わせて賦形させていても良い。
さらには、予め、強化繊維基材100重量部に対して、0.1〜20重量部の範囲で樹脂を表面に付与した基材を用いてもよい。
【0032】
ただし、非繊維軸方向引張試験による引張歪みが1%に到達するまでの荷重の最大値が、0.01〜0.75Nの範囲内にあるものであることが好ましい。
【0033】
本発明に係る強化繊維基材の非繊維軸方向引張試験とは、強化繊維織物の面内方向に引張荷重を加えたときに強化繊維織物の変形が最も大きくなる方向において、変位と荷重を測定するものであり、具体的には次の方法による。
【0034】
まず、強化繊維織物が最も変形しやすい方向を長軸方向となるように矩形の試験片(測定部の寸法:長さ150mm×幅45mm)を準備する。この試験片を長軸方向に引張り、変形量(測定部長の変化量)とそのときの引張荷重を測定する。
【0035】
たとえば0°および90°の2方向に強化繊維束の繊維軸を持った2方向性強化繊維織物の場合、引張荷重を加えたときに最も変形しやすい方向は、+45°および−45°のいずれかの方向であることから、いずれかの方向を長軸方向とする試験片を切り出す(図6参照)。
この試験片に対して非繊維軸方向引張試験を行うと、強化繊維束の繊維軸方向とは異なる方向に引張荷重が加えられ、それに伴い強化繊維織物を構成する強化繊維束間の相対位置がずれて織角度が変化する。その結果、試験片としては、測定部長の距離が大きくなるように変形する(図7参照)。つまり、非繊維軸方向引張試験において織角度が変化して生じる変形は、強化繊維織物を立体形状へ追従させる場合に必要な変形と同じメカニズムによるものであり、非繊維軸方向引張試験において荷重と変形量の関係を測定することで、強化繊維織物の変形しやすさを知ることができる。例えば、一定量の変形を与えるために必要な荷重が小さい強化繊維織物は、変形性に優れており立体形状に追従しやすい強化繊維織物であると言える。
【0036】
なお、非繊維軸方向引張試験においては、図7に示すように試験片が不均一な変形を示すために、試験片寸法が変わると測定結果が異なることに注意が必要である。したがって、本発明においては、上記寸法の試験片で試験を行うものとする。
【0037】
また引張荷重を付与した時、図7に示す試験片取付け部71,73において試験片が幅方向に変形してしまった場合にも同様に測定結果が異なるため、試験片の取り付けには試験片の全幅にわたって均一に締付け圧力がかかる構造の取付け治具を用い、締付け部分において試験片が幅方向に変形しないように取り付けることが重要である。
【0038】
このような非繊維軸方向引張試験による引張歪みが1%であるとは、試験片を長軸方向に引張り変形させた場合に、その測定部長が初期長さから1.5mm大きくなり、151.5mmになった状態のことである。非繊維軸方向引張試験による引張歪みが1%に到達するまでの荷重の最大値が、0.01〜0.75Nの範囲内であれば、その強化繊維織物は変形初期の微小な変形域においても各々の部分が小さい変形荷重で滑らかに変形することができるため、立体形状になめらかに追従することができ、シワなどの不具合を生ずる可能性が低い。当該荷重の最大値の上限は、好ましくは0.6N、さらに好ましくは0.45Nである。一方、当該荷重の最大値の下限は、0.05が好ましく、0.1がさらに好ましい。引張歪みが1%に到達するまでに必要な荷重の最大値が、0.05〜0.6Nの範囲内の場合には変形性がさらに優れ、0.1〜0.45Nの範囲内であればきわめて優れた変形性を有し、立体形状へシワ無く変形させることがさらに容易となる。
【0039】
なお、本試験法による荷重とは、試験片45mm幅あたりの荷重値のことを表す。従って、試験片幅を100mmで行った場合は、その荷重値に45÷100を掛けることで、試験片幅45mmで実施した場合の値に補正することもできる。
【0040】
さらに、本発明において強化繊維織物は、非繊維軸方向引張試験による引張歪みが5%に到達するまでの荷重の最大値が、0.1〜1.0Nの範囲内であることが好ましい。非繊維軸方向引張試験による引張歪みが5%とは、試験片を長軸方向に引張り変形させた場合に、その測定部長が初期長さから7.5mm大きくなり157.5mmになった状態のことである。
【0041】
強化繊維織物を立体形状に変形させる場合、強化繊維織物は、立体形状へと変形する部分のほぼ全体にわたって微小な変形を伴うと共に、形状が大きく変わる部分でさらに大きく変形する必要がある。
非繊維軸方向引張試験による引張歪みが5%に到達するまでの荷重の最大値が、0.1〜1.0Nの範囲内にあれば、強化繊維織物は小さい変形荷重下での微小な変形に加え、大きな変形が必要となる場合においても強化繊維束間の相対位置が変化しやすくシワなどの不具合を生ずる可能性が低い。当該荷重の最大値の上限は、好ましくは0.85N、さらに好ましくは0.7Nである。一方、当該荷重の最大値の下限は、0.15が好ましく、0.2がさらに好ましい。引張歪みが5%に到達するまでの荷重の最大値が、0.15〜0.85Nであれば変形性はさらに優れ、0.20〜0.70Nであれば極めて優れた変形性を有し、大きな変形が必要な場合でも立体形状へシワ無く変形することがさらに容易となる。
【0042】
本発明においては、前記基材キャビティー内の、樹脂が流動する方向の両側部に、樹脂の流動を制御するシール部を設けて、樹脂の流動を制御することが好ましい。
【0043】
例えば、図3に示すように、樹脂注入口と排出口を結ぶ線を中心として、製品形状の両側部に樹脂流動を制御するシール材34a、34bを設けることが好ましい。
【0044】
そして、本発明における樹脂流動の制御方法として、成形品となりうる部分の樹脂の通過可能な空間の比率をシール部と称する部分の該空間の比率よりも高くなるようにすることが重要であり、シール部の構造として、下式で表されるシール率αを5%以上とすることが好ましく、5〜100%の範囲とすることかさらに好ましく、面積の大きな製品においては不良率低下の観点からシール率αを8%以上、さらには8〜100%とすることがより好ましい。
【0045】
ここで、シール率αとは、図5に示す、成形型内で樹脂が通過する隙間率のことである。
【0046】
Sa/(Sa+Fa)={(Sb+Sc)/(Sb+Sc+Fb+Fc)}×(1+α)
ここで、
Sa=43aにおける空間断面積
Sb=43bにおける空間断面積
Sc=43cにおける空間断面積
Fa=43aにおける基材断面積
Fb=43bにおける基材および充填物断面積
Fc=43cにおける基材および充填物断面積
と表される。
【0047】
なお、基材及び充填物断面積とは、連通する気泡や空間を除いた断面積(その断面内での空間を占有している固形物の断面積であり、基材及び充填物の単位質量を密度で除して算出される厚みと当該部の幅を積算することで算出される値)を表す。
【0048】
このシール率を変える手段としては、図3、図4に示すように、予め、シール率αが所望する率になるように成形型にシール材34a、34bを予め設けておくことで調整できる。このシール材34a、34bは置き子のように自由に取り外しができても良い。また、強化繊維基材を成形型内にセットするときに、図5に示すように、シール材54a,54bを同時に配置し、型を閉じたときにシール率αが所定の範囲に収まるように調整することもできる。この時のシール材の材質は特に規定しないが、ある程度の厚み方向の調整が可能な、例えばシート状の軟質発泡体やゴム質シート等が挙げられる。
【実施例】
【0049】
以下に、より具体的な実施例について説明する。
【0050】
基材a:東レ株式会社製 炭素繊維T300−3K(フィラメント数:3,000本、引張弾性率:230GPa,引張強度:3.5GPa,繊度:198tex,破断伸度:1.5%)を使用した二方向性強化繊維織物 東レ株式会社製 CO6343B(織組織:平織り,織物目付け:198g/m2,厚さ:0.25mm、縦糸織密度:12.5本/25mm,横糸織密度:12.5本/25mm)
基材b:東レ株式会社製 炭素繊維T700SC−12K(フィラメント数:12,000本、引張弾性率:230GPa,引張強度:4.9GPa,繊度:800ex,破断伸度:2.1%)を使用した二方向性強化繊維織物 東レ株式会社製 CK6243C(織組織:平織り,織物目付け:314/m2、縦糸織密度:3.27本/25mm,横糸織密度:3.27本/25mm)
置き子a:東レ株式会社製 トーレペフ(ポリプロピレン製発泡シート)
置き子b:真鍮製置き子(厚み0.5mm)
充填材a:旭化成製 ラスタン(耐炎化糸フェルト,厚み2.8mm)
樹脂a:東レ株式会社製 TR−C35(エポキシ系樹脂)
(実施例1)
図8に示すような製品形状を有する成形下型85aに、基材を予め重ね合わせただけの強化繊維基材81を準備し配置した。
【0051】
強化繊維基材81= 基材a(0/90)×10Ply
この時、基材aの非繊維軸方向引っ張り特性を測定したところ、引張歪みが1%に到達するまでの荷重の最大値が、0.1〜0.3Nであった。また強化繊維基材81の外寸法は498×498mmとし、成形下型85aの型キャビティー82の寸法500×500mmに配置した段階で丁度収まる寸法とした。
次に、その上から、成形上型85bを下型85aの上に図示しないプレス機を用いて型を閉じた。
この時、図9におけるL2、L3部にはシール材84a,84bとして、厚み3mmの置き子aを予め下型85aに貼り付けた。
この状態で、図1に示したRTM成形の工程を用いて、樹脂aを85℃に保持した状態の成形型85a,85bに対し注入を行った、樹脂aを注入後、約25分間そのままの状態で保持をし型を開けて成形品を脱型したところ、繊維の乱れが少ない外観の良好な成形体が得られた。
この時、成形品から図10におけるL1部のキャビティーに相当する部分の厚みを測定したところ2.68mmであり、L2、L3部では、2.30mmであったことから、シール率αは、12.6%と計算された。
【0052】
(実施例2)
実施例1で用いた強化繊維基材81を以下のような構成にしたことおよび、シール材84a,84bを置き子bにした以外は、全く同じ方法で成形を行い成形品を得た。
【0053】
強化繊維基材81= 基材b(0/90)×7Ply
この時、基材bの非繊維軸方向引っ張り特性を測定したところ、引張歪みが1%に到達するまでの荷重の最大値が、0.26〜0.4Nであった。
成形後、成形品を脱型したところ、繊維の乱れが少ない外観の良好な成形体が得られた。
この時、成形品から図9におけるL1部のキャビティーに相当する部分の厚みを測定したところ2.70mmであり、L2、L3部では、2.21mmであったことから、シール率αは、22.1%と計算された。
【0054】
(実施例3)
実施例2で用いたシール材84a,84bを、図10に示すようなシール材104a,104bの位置とし充填材aを基材の上に配置した以外は、全く同じ方法で成形を行い成形品を得た。
成形後、成形品を脱型したところ、繊維の乱れが少ない外観の良好な成形体が得られた。
この時、成形品から図9におけるL1部のキャビティーに相当する部分の厚みを測定したところ2.67mmであり、L2、L3部では、2.46mmであったことから、シール率αは、8.7%と計算された。
【産業上の利用可能性】
【0055】
このような賦形方法は、強化繊維基材を用いる、航空機、自動車、船舶等の輸送機器における繊維強化プラスチックスのプリフォームを賦形するのに好適な賦形方法であるが、これに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明のFRP成形用強化繊維基材の賦形方法に用いる成形装置の一例を示す概略図である。
【図2】本発明のFRP成形用強化繊維基材の賦形方法に用いる成形型への基材配置の一例を示す概略斜視図である。
【図3】本発明のFRP成形用強化繊維基材の賦形方法に用いる成形型への基材配置の一例を示す概略斜視図である。
【図4】本発明のFRP成形用強化繊維基材の賦形方法に用いる成形型への基材配置の別の一例を示す概略断面図である。
【図5】本発明のFRP成形用強化繊維基材の賦形方法に用いる成形型への基材配置の別の一例を示す概略断面図である。
【図6】非繊維方向引っ張り強度試験を示す試験前の説明図である。
【図7】非繊維方向引っ張り強度試験を示す試験中の説明図である。
【図8】本発明のFRP成形用強化繊維基材の賦形方法に用いる成形型への基材配置の別の一例を示す概略斜視図である。成形型への基材配置
【図9】本発明のFRP成形用強化繊維基材の賦形方法に用いる成形型への基材配置の別の一例を示す概略断面図である。
【図10】本発明のFRP成形用強化繊維基材の賦形方法に用いる成形型への基材配置の別の一例を示す概略断面図である。
【図11】シール部の拡大図である。
【符号の説明】
【0057】
1:金型昇降装置
2:成形型
3:樹脂注入装置
4:混合ユニット
5:主剤タンク
6:硬化剤タンク
7a:真空ポンプ
7b:加圧ポンプ
8a:注入口
8b:排出口
9:油圧ユニット
10:油圧ポンプ
11:油圧シリンダー
12:逆止弁
13:樹脂注入流路
14:排出路
15:樹脂トラップ
16:上型
17:下型
20:シール材
21:バイスグリップ
22a:注入バルブ
22b:排出バルブ
22c:制御装置
23:加圧装置
24:真空ポンプ
25、26:金型温調機
27:型内圧力計
30:注入圧力計
31a,31b,31c:強化繊維基材
32:型キャビティー
33:樹脂シール
34a,34b:シール材
35:樹脂注入口
36:樹脂排出口
41:成形上型
42:成形下型
43a:成形品の範囲
43b,43c:シール材の範囲
44:基材
54a,54b:シール材
61:強化繊維基材
71:試験片取付部
72:強化繊維基材の試験片
73:試験片取付部
81:強化繊維基材
82:型キャビティー
83:樹脂シール
84a,84b:シール材
85a:成形下型
85b:成形上型
L1:成形品の範囲
L2,L3:シール材の範囲
104a,104b:シール材
【技術分野】
【0001】
本発明は、効率良く強化繊維基材の成形体を得るための繊維強化プラスチックスの成形方法および成形装置ならびに成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維を強化繊維とした複合材料は、優れた力学特性、軽量化等の要求特性を満たすことから主に航空、宇宙、スポーツ用途に用いられてきた。これらの代表的な製造方法としては、オートクレーブ成形法が知られている。かかる成形法では、強化繊維にマトリックス樹脂を予め含浸させたプリプレグを、成形型に積み重ねてオートクレーブにて加熱・加圧して複合材料を成形する。ここで用いる基材としてのプリプレグは、それを用いると機械特性の高い複合材料が得られる利点があるが、コシが強すぎて賦形しにくいこと、製造に高いコストがかかること、すなわち生産性が低いことに問題があった。
【0003】
一方、複合材料の生産性に優れる成形法としては、例えばレジン・トランスファー・モールディング成形法(以降、RTM法と記す)等の注入成形が挙げられる。かかるRTM法では、マトリックス樹脂が予備含浸されていない(ドライな)炭素繊維からなる強化繊維基材を複雑な成形型の中に配置して、液状(低粘度)のマトリックス樹脂を注入することにより強化繊維中にマトリックス樹脂を含浸させて成形をする。
【0004】
ところがこの注入成形は、複合材料の生産性には優れるが、用いる強化繊維基材(例えばドライな織物等)が目ズレし易い(形態不安定)、強化繊維基材にコシがなさすぎるため容易に折れ曲がる、積層した時に強化繊維基材同士を接着できない(タック性がない)等の強化繊維基材の取り扱い性に関する問題があった。この他にも、マトリックス樹脂が低粘度である必要があるため、例えばプリプレグに用いられる高粘度のものに比べて力学特性が低い等の問題等があり、これらの諸問題により炭素繊維本来の特性を十分発現できずに、複合材料の力学特性を損なう問題を引き起こしていた。
【0005】
上記問題に対し、例えば、強化繊維布帛に熱可塑ライクな樹脂を布帛に付与し、強化繊維基材としてのドライな織物の取り扱い性の向上、注入成形に用いるプリフォーム形態安定化に関する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、エポキシ樹脂とエラストマー粒子またはポリアミド6とを配合した樹脂を織物上に付与することにより、注入成形によって得られるCFRPの力学特性(ModeI,IIの層間破壊靭性等)が向上することを報告しているものがある(例えば、非特許文献1、2参照)。
【0007】
つまり、これらの提案は、強化繊維基材の取り扱い性を向上させることでプリフォームと呼ばれる成形前駆体を容易に作製できるようにすることで、成形工程におけるレイアップ工程を外段取りで行う方法であった。しかしながら、一旦プリフォームという工程を必要とすることから、成形工程の省略化による低コスト化に成り得なかった。
【0008】
すなわち、従来の技術では、成形型上に樹脂を含浸させる前の強化繊維基材をのせて積層し、その後、バッグフィルムや成形型で覆い、その中に樹脂を注入し硬化させることで成形品を得たり、予め、樹脂を含浸させた強化繊維基材を賦形型に積層し、予備賦形してプリフォームとすることで、その後、成形型に入れて硬化成形させたりしていた。この時、賦形に関しては、人手により所定形状に基材をレイアップすることが多く、生産性が低いと共にコストが高い要因となっていた。そこで、プリフォーム工程等を省略した低コスト量産成形技術が渇望されていた。
【特許文献1】米国特許第5,071,711号明細書
【非特許文献1】ジェームズ・シー・セフェリス(James C. Seferis)著,“ジャーナル・オブ・アドバンスド・マテリアルズ(Journal of Advanced Materials)”,(米国),2000年7月,第32巻,第3号,p.27−34
【非特許文献2】ジェームズ・シー・セフェリス(James C. Seferis)著,“コンポジット・パート・A(Composites part A)” ,(米国),2001年,第32巻,p.721−729
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、上記従来の問題点を解決しようとするものであり、プリフォーム工程に費やしていた時間が大幅に省力化可能となり、安価で良好な賦形をされたコンポジット成形品を得ることができる繊維強化プラスチックスの成形方法および成形装置ならびに成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、
(1)複数枚の強化繊維基材を成形型に配置し、成形型を閉じることで所定の形状に上記強化繊維基材を変形せしめ、かつ、変形した該強化繊維基材が成形型に設けた基材キャビティー内に収められるようにし、その状態の型内へ樹脂を注入するとともに硬化させて成形品を得ることを特徴とする繊維強化プラスチックスの成形方法。
【0011】
(2)前記基材キャビティー内の、樹脂が流動する方向の両側部に、樹脂の流動を制御するシール部を設けて、樹脂の流動を制御することを特徴とする前記(1)記載の繊維強化プラスチックスの成形方法。
【0012】
(3)前記シール部のシール率αが5〜100%の範囲となるようにしたことを特徴とする前記(2)記載の繊維強化プラスチックスの成形方法。
【0013】
(4)前記シール部が予め成形型内に埋め込まれていることを特徴とする前記(2)または(3)記載の繊維強化プラスチックスの成形方法。
【0014】
(5)前記シール部を、配置した強化繊維基材とともに成形型内に配置することを特徴とする前記(2)または(3)記載の繊維強化プラスチックスの成形方法。
【0015】
(6)用いられる強化繊維基材の非繊維軸方向引張試験による引張歪みが1%に到達するまでの荷重の最大値が、0.01〜0.75Nの範囲内にある強化繊維基材を用いることを特徴する前記(1)〜(5)のいずれかに記載の繊維強化プラスチックスの成形方法。
【0016】
(7)前記強化繊維基材として非繊維軸方向引張試験による引張歪みが5%に到達するまでの荷重の最大値が、0.1〜1.0Nの範囲内であるものを用いることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の強化繊維プラスチックスの成形法
(8)複数枚の強化繊維基材を配置する下型と、該下型に対応して設けられた上型を有し、該上型を下型に対してを閉じることで所定の形状に上記強化繊維基材を変形させるための成形型を備え、かつ、該成形型には、前記変形した強化繊維基材が収められるように設けられた基材キャビティーを有するとともに、該基材キャビティー内に樹脂を注入する樹脂注入口と注入された樹脂を排出する樹脂排出口を設けたことを特徴とする繊維強化プラスチックスの成形装置。
【0017】
(9)前記(1)〜(7)のいずれかに記載の繊維強化プラスチックスの成形方法、もしくは前記(8)に記載の繊維強化プラスチックの成形装置によって製造されてなることを特徴とする繊維強化プラスチックス成形体。
【発明の効果】
【0018】
本発明の製造方法によれば、プリフォーム工程に費やしていた時間を大幅に省力化可能になることから、安価で良好な賦形をされたコンポジット成形品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を図を参照しながらさらに詳細に説明する。
【0020】
図1はRTM成形設備の概略図であり、本発明のFRP成形用強化繊維基材の賦形方法の一例を示す概略図である。また、図3は、本発明のFRP成形用強化繊維基材の賦形方法に用いる成形金型の下型の一例を示す概略図である。成形型2は上型16と下型17からなり(図2参照)、金型昇降装置1に取付られている。この金型昇降装置には油圧ユニット9が設けられており、その中の油圧ポンプ10にて発生させた油圧を油圧シリンダー11におくることにより型の開閉が行われる構造になっている。下型は、図3に示すように、積層された複数枚の裁断された強化繊維基材31a,31b,31cが型内に収まるように所定の板厚分の型キャビティー32が設けられており、裁断された強化繊維基材31a,31b,31cが型キャビティー32内に収まるようにして配置し、もしくは上型を閉じ、形状に追従した後の裁断された強化繊維基材31a,31b,31cの端末が型キャビティー32内に収まるようにし、型を閉じることで強化繊維基材を所定形状に賦形するものである。
【0021】
図1に戻って、成形型2には任意に複数の樹脂注入口8aに繋がる樹脂注入流路13、排出口8bに繋がる排出路14が設けられている。樹脂注入流路13、排出路14は各々カプラを介して注入口8a、排出口8bに接続されている。また、樹脂注入流路13には樹脂注入装置3が接続されている。樹脂注入装置3は主剤タンク5、硬化剤タンク6にそれぞれ主剤・硬化剤を収容し、それぞれのタンクは加温、真空脱泡できる機構(例えば真空ポンプ24)を備えている。樹脂注入時にはそれぞれのタンクから樹脂は逆止弁12を通じて加圧装置23により樹脂注入流路13に向かって押し流す。加圧装置23は、シリンジポンプを用いており、シリンジを同時に押し出すことで定量性も確保することが2液混合により硬化する樹脂には好ましい。混合ユニット4で混合され、樹脂注入流路13に至る。排出路14は真空ポンプ7aあるいは加圧ポンプ7bへの樹脂の流入を防ぐために、樹脂トラップ15に接続される。
【0022】
なお、注入口8aの数や位置は成形型の形状や寸法、1型内で同時に成形する成形品の数量などによって異なるが、注入口8aはできるだけ少ないことが好ましい。これは樹脂注入装置3からの樹脂注入流路 13を注入口8aに接続する箇所が増えて注入作業が繁雑になることを防ぐためである。
【0023】
樹脂注入流路13の材料は十分な流量の確保と樹脂との適合性(温度や耐溶剤性、耐圧)を考慮することが重要である。チューブには口径5〜30mmのものを用い、樹脂の注入圧力に耐えるために1.0MPa以上の耐圧性、樹脂硬化時の温度に耐えるために100℃以上の耐熱性のものを用いることが重要となり、厚みが2mm程度の”テフロン(登録商標)”などのフッ素樹脂製チューブやナイロンチューブが好適である。スチール、アルミ等の金属管であってもよい。また、排出口8bの数や位置は成形型の形状や寸法、1型内で同時に成形する成形品の数量などによって異なるが、排出口もできるだけ少ないことが好ましい。また、排出口8bは、型内に残留する気体が抜けやすいように注入口8aよりも気体が浮動し易い方向である高い位置に設置されることが好ましい。
【0024】
排出路14の材料は、樹脂注入流路13と同様に十分な流量の確保と樹脂との適合性(温度や耐溶剤性、耐圧)を考慮することが重要である。排出路14としてはスチール、アルミ等の金属管、あるいはポリエチレン、”テフロン(登録商標)”等のプラスチック製のチューブが挙げられるが、直径5〜10mm、厚み1〜2mmのナイロンチューブがより好適である。
【0025】
樹脂注入時の樹脂注入流路13、排出路14の途中に設置する注入バルブ22aや排出バルブ22bは、図2に示すようなバイスグリップ21等により、直接作業者により流路を挟むことで全域開閉や口径を変化させることができる。また、バイスグリップのハンドル部分にアクチュエータを設置して自動化することや、またバイスグリップの代わりに電磁バルブやエアーオペレーションバルブを用いる等したバルブ開閉装置を適用することができる。さらに、排出バルブ22bは、単なる開閉の2値ではなく、流路の径を変化(ボールバルブの開度調節)させることも制御装置22cを用いることで可能である。
【0026】
樹脂の加圧は、シリンジポンプなどによる加圧方法によれば定量性も得られるので好ましい。樹脂の注入圧Piは0.1〜1.0MPaの範囲で用いるのが好ましい。ここで樹脂の注入圧Piとは、加圧装置23により加圧される最大圧力を指し、図1の注入圧力計30で表示させる圧力を表す。最終的に樹脂が型内の基材に完全に含浸され排出路14まで到達したら排出路14を閉じ、その後暫くしてから樹脂注入流路 13も閉じて樹脂注入を終了する。成形型2は温調機25、26によって加温されており、これにより樹脂を硬化させる。なお、型内樹脂圧Pmとは、型内圧力計27の圧力を表す。
【0027】
本発明は、上記のように、複数枚の強化繊維基材31a、31b、31cからなるシートを成形型2内に配置し(図3)、該成形型2の上型16と下型17を閉じることで所定の形状に該強化繊維基材からなるシートを変形させ、かつ、変形した強化繊維基材シートが成形型に設けた基材キャビティー32内に収められるようにし、その状態の型内へ樹脂を注入することで、硬化させて成形品を得るものである。
【0028】
本発明によって、予め賦形を行ったプリフォームが不要となり、上記工程に従って成形を行えば、工程の省力化が行え、短時間に安価な製品を成形可能になる。
【0029】
本発明で賦形する強化繊維としては、炭素繊維やアラミド繊維,ガラス繊維,ポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維等が好ましく使用できるが、これらに限定されるものではない。引張弾性率として、110〜600GPaであるものが好ましく、210〜600GPaであればさらに好ましい。引張弾性率が110GPa以上であると、複合材料の力学特性が高くなるため好ましく、本観点からは、弾性率が高ければ高いほど好ましい。ここで、引張弾性率は、JIS R7601に準拠して測定される値を指し、単位はGPaである。
【0030】
本発明における強化繊維基材としては、強化繊維を用いて製布する布帛であれば、特に限定されないが、例えば二次元の一方向性、二方向性、あるいはそれ以上の方向性を有する織物、三次元の多方向性織物、編物、多軸挿入布帛、一方向に引きそろえられた強化繊維シートをバインダーや融着性不織布、ステッチ糸等で形態安定化したもの(一方向性シート)、一方向性シートを二方向以上積層した多軸シート等が挙げられる。また、該布帛ははステッチ糸や結節糸等により接合され複数が一体化しているものでもよい。
【0031】
また、布帛として用いられる強化繊維の種類が1種類のみならず、異なる繊維を組み合わせたて布帛を構成したり、種類の異なる布帛を重ね合わせて賦形させていても良い。
さらには、予め、強化繊維基材100重量部に対して、0.1〜20重量部の範囲で樹脂を表面に付与した基材を用いてもよい。
【0032】
ただし、非繊維軸方向引張試験による引張歪みが1%に到達するまでの荷重の最大値が、0.01〜0.75Nの範囲内にあるものであることが好ましい。
【0033】
本発明に係る強化繊維基材の非繊維軸方向引張試験とは、強化繊維織物の面内方向に引張荷重を加えたときに強化繊維織物の変形が最も大きくなる方向において、変位と荷重を測定するものであり、具体的には次の方法による。
【0034】
まず、強化繊維織物が最も変形しやすい方向を長軸方向となるように矩形の試験片(測定部の寸法:長さ150mm×幅45mm)を準備する。この試験片を長軸方向に引張り、変形量(測定部長の変化量)とそのときの引張荷重を測定する。
【0035】
たとえば0°および90°の2方向に強化繊維束の繊維軸を持った2方向性強化繊維織物の場合、引張荷重を加えたときに最も変形しやすい方向は、+45°および−45°のいずれかの方向であることから、いずれかの方向を長軸方向とする試験片を切り出す(図6参照)。
この試験片に対して非繊維軸方向引張試験を行うと、強化繊維束の繊維軸方向とは異なる方向に引張荷重が加えられ、それに伴い強化繊維織物を構成する強化繊維束間の相対位置がずれて織角度が変化する。その結果、試験片としては、測定部長の距離が大きくなるように変形する(図7参照)。つまり、非繊維軸方向引張試験において織角度が変化して生じる変形は、強化繊維織物を立体形状へ追従させる場合に必要な変形と同じメカニズムによるものであり、非繊維軸方向引張試験において荷重と変形量の関係を測定することで、強化繊維織物の変形しやすさを知ることができる。例えば、一定量の変形を与えるために必要な荷重が小さい強化繊維織物は、変形性に優れており立体形状に追従しやすい強化繊維織物であると言える。
【0036】
なお、非繊維軸方向引張試験においては、図7に示すように試験片が不均一な変形を示すために、試験片寸法が変わると測定結果が異なることに注意が必要である。したがって、本発明においては、上記寸法の試験片で試験を行うものとする。
【0037】
また引張荷重を付与した時、図7に示す試験片取付け部71,73において試験片が幅方向に変形してしまった場合にも同様に測定結果が異なるため、試験片の取り付けには試験片の全幅にわたって均一に締付け圧力がかかる構造の取付け治具を用い、締付け部分において試験片が幅方向に変形しないように取り付けることが重要である。
【0038】
このような非繊維軸方向引張試験による引張歪みが1%であるとは、試験片を長軸方向に引張り変形させた場合に、その測定部長が初期長さから1.5mm大きくなり、151.5mmになった状態のことである。非繊維軸方向引張試験による引張歪みが1%に到達するまでの荷重の最大値が、0.01〜0.75Nの範囲内であれば、その強化繊維織物は変形初期の微小な変形域においても各々の部分が小さい変形荷重で滑らかに変形することができるため、立体形状になめらかに追従することができ、シワなどの不具合を生ずる可能性が低い。当該荷重の最大値の上限は、好ましくは0.6N、さらに好ましくは0.45Nである。一方、当該荷重の最大値の下限は、0.05が好ましく、0.1がさらに好ましい。引張歪みが1%に到達するまでに必要な荷重の最大値が、0.05〜0.6Nの範囲内の場合には変形性がさらに優れ、0.1〜0.45Nの範囲内であればきわめて優れた変形性を有し、立体形状へシワ無く変形させることがさらに容易となる。
【0039】
なお、本試験法による荷重とは、試験片45mm幅あたりの荷重値のことを表す。従って、試験片幅を100mmで行った場合は、その荷重値に45÷100を掛けることで、試験片幅45mmで実施した場合の値に補正することもできる。
【0040】
さらに、本発明において強化繊維織物は、非繊維軸方向引張試験による引張歪みが5%に到達するまでの荷重の最大値が、0.1〜1.0Nの範囲内であることが好ましい。非繊維軸方向引張試験による引張歪みが5%とは、試験片を長軸方向に引張り変形させた場合に、その測定部長が初期長さから7.5mm大きくなり157.5mmになった状態のことである。
【0041】
強化繊維織物を立体形状に変形させる場合、強化繊維織物は、立体形状へと変形する部分のほぼ全体にわたって微小な変形を伴うと共に、形状が大きく変わる部分でさらに大きく変形する必要がある。
非繊維軸方向引張試験による引張歪みが5%に到達するまでの荷重の最大値が、0.1〜1.0Nの範囲内にあれば、強化繊維織物は小さい変形荷重下での微小な変形に加え、大きな変形が必要となる場合においても強化繊維束間の相対位置が変化しやすくシワなどの不具合を生ずる可能性が低い。当該荷重の最大値の上限は、好ましくは0.85N、さらに好ましくは0.7Nである。一方、当該荷重の最大値の下限は、0.15が好ましく、0.2がさらに好ましい。引張歪みが5%に到達するまでの荷重の最大値が、0.15〜0.85Nであれば変形性はさらに優れ、0.20〜0.70Nであれば極めて優れた変形性を有し、大きな変形が必要な場合でも立体形状へシワ無く変形することがさらに容易となる。
【0042】
本発明においては、前記基材キャビティー内の、樹脂が流動する方向の両側部に、樹脂の流動を制御するシール部を設けて、樹脂の流動を制御することが好ましい。
【0043】
例えば、図3に示すように、樹脂注入口と排出口を結ぶ線を中心として、製品形状の両側部に樹脂流動を制御するシール材34a、34bを設けることが好ましい。
【0044】
そして、本発明における樹脂流動の制御方法として、成形品となりうる部分の樹脂の通過可能な空間の比率をシール部と称する部分の該空間の比率よりも高くなるようにすることが重要であり、シール部の構造として、下式で表されるシール率αを5%以上とすることが好ましく、5〜100%の範囲とすることかさらに好ましく、面積の大きな製品においては不良率低下の観点からシール率αを8%以上、さらには8〜100%とすることがより好ましい。
【0045】
ここで、シール率αとは、図5に示す、成形型内で樹脂が通過する隙間率のことである。
【0046】
Sa/(Sa+Fa)={(Sb+Sc)/(Sb+Sc+Fb+Fc)}×(1+α)
ここで、
Sa=43aにおける空間断面積
Sb=43bにおける空間断面積
Sc=43cにおける空間断面積
Fa=43aにおける基材断面積
Fb=43bにおける基材および充填物断面積
Fc=43cにおける基材および充填物断面積
と表される。
【0047】
なお、基材及び充填物断面積とは、連通する気泡や空間を除いた断面積(その断面内での空間を占有している固形物の断面積であり、基材及び充填物の単位質量を密度で除して算出される厚みと当該部の幅を積算することで算出される値)を表す。
【0048】
このシール率を変える手段としては、図3、図4に示すように、予め、シール率αが所望する率になるように成形型にシール材34a、34bを予め設けておくことで調整できる。このシール材34a、34bは置き子のように自由に取り外しができても良い。また、強化繊維基材を成形型内にセットするときに、図5に示すように、シール材54a,54bを同時に配置し、型を閉じたときにシール率αが所定の範囲に収まるように調整することもできる。この時のシール材の材質は特に規定しないが、ある程度の厚み方向の調整が可能な、例えばシート状の軟質発泡体やゴム質シート等が挙げられる。
【実施例】
【0049】
以下に、より具体的な実施例について説明する。
【0050】
基材a:東レ株式会社製 炭素繊維T300−3K(フィラメント数:3,000本、引張弾性率:230GPa,引張強度:3.5GPa,繊度:198tex,破断伸度:1.5%)を使用した二方向性強化繊維織物 東レ株式会社製 CO6343B(織組織:平織り,織物目付け:198g/m2,厚さ:0.25mm、縦糸織密度:12.5本/25mm,横糸織密度:12.5本/25mm)
基材b:東レ株式会社製 炭素繊維T700SC−12K(フィラメント数:12,000本、引張弾性率:230GPa,引張強度:4.9GPa,繊度:800ex,破断伸度:2.1%)を使用した二方向性強化繊維織物 東レ株式会社製 CK6243C(織組織:平織り,織物目付け:314/m2、縦糸織密度:3.27本/25mm,横糸織密度:3.27本/25mm)
置き子a:東レ株式会社製 トーレペフ(ポリプロピレン製発泡シート)
置き子b:真鍮製置き子(厚み0.5mm)
充填材a:旭化成製 ラスタン(耐炎化糸フェルト,厚み2.8mm)
樹脂a:東レ株式会社製 TR−C35(エポキシ系樹脂)
(実施例1)
図8に示すような製品形状を有する成形下型85aに、基材を予め重ね合わせただけの強化繊維基材81を準備し配置した。
【0051】
強化繊維基材81= 基材a(0/90)×10Ply
この時、基材aの非繊維軸方向引っ張り特性を測定したところ、引張歪みが1%に到達するまでの荷重の最大値が、0.1〜0.3Nであった。また強化繊維基材81の外寸法は498×498mmとし、成形下型85aの型キャビティー82の寸法500×500mmに配置した段階で丁度収まる寸法とした。
次に、その上から、成形上型85bを下型85aの上に図示しないプレス機を用いて型を閉じた。
この時、図9におけるL2、L3部にはシール材84a,84bとして、厚み3mmの置き子aを予め下型85aに貼り付けた。
この状態で、図1に示したRTM成形の工程を用いて、樹脂aを85℃に保持した状態の成形型85a,85bに対し注入を行った、樹脂aを注入後、約25分間そのままの状態で保持をし型を開けて成形品を脱型したところ、繊維の乱れが少ない外観の良好な成形体が得られた。
この時、成形品から図10におけるL1部のキャビティーに相当する部分の厚みを測定したところ2.68mmであり、L2、L3部では、2.30mmであったことから、シール率αは、12.6%と計算された。
【0052】
(実施例2)
実施例1で用いた強化繊維基材81を以下のような構成にしたことおよび、シール材84a,84bを置き子bにした以外は、全く同じ方法で成形を行い成形品を得た。
【0053】
強化繊維基材81= 基材b(0/90)×7Ply
この時、基材bの非繊維軸方向引っ張り特性を測定したところ、引張歪みが1%に到達するまでの荷重の最大値が、0.26〜0.4Nであった。
成形後、成形品を脱型したところ、繊維の乱れが少ない外観の良好な成形体が得られた。
この時、成形品から図9におけるL1部のキャビティーに相当する部分の厚みを測定したところ2.70mmであり、L2、L3部では、2.21mmであったことから、シール率αは、22.1%と計算された。
【0054】
(実施例3)
実施例2で用いたシール材84a,84bを、図10に示すようなシール材104a,104bの位置とし充填材aを基材の上に配置した以外は、全く同じ方法で成形を行い成形品を得た。
成形後、成形品を脱型したところ、繊維の乱れが少ない外観の良好な成形体が得られた。
この時、成形品から図9におけるL1部のキャビティーに相当する部分の厚みを測定したところ2.67mmであり、L2、L3部では、2.46mmであったことから、シール率αは、8.7%と計算された。
【産業上の利用可能性】
【0055】
このような賦形方法は、強化繊維基材を用いる、航空機、自動車、船舶等の輸送機器における繊維強化プラスチックスのプリフォームを賦形するのに好適な賦形方法であるが、これに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明のFRP成形用強化繊維基材の賦形方法に用いる成形装置の一例を示す概略図である。
【図2】本発明のFRP成形用強化繊維基材の賦形方法に用いる成形型への基材配置の一例を示す概略斜視図である。
【図3】本発明のFRP成形用強化繊維基材の賦形方法に用いる成形型への基材配置の一例を示す概略斜視図である。
【図4】本発明のFRP成形用強化繊維基材の賦形方法に用いる成形型への基材配置の別の一例を示す概略断面図である。
【図5】本発明のFRP成形用強化繊維基材の賦形方法に用いる成形型への基材配置の別の一例を示す概略断面図である。
【図6】非繊維方向引っ張り強度試験を示す試験前の説明図である。
【図7】非繊維方向引っ張り強度試験を示す試験中の説明図である。
【図8】本発明のFRP成形用強化繊維基材の賦形方法に用いる成形型への基材配置の別の一例を示す概略斜視図である。成形型への基材配置
【図9】本発明のFRP成形用強化繊維基材の賦形方法に用いる成形型への基材配置の別の一例を示す概略断面図である。
【図10】本発明のFRP成形用強化繊維基材の賦形方法に用いる成形型への基材配置の別の一例を示す概略断面図である。
【図11】シール部の拡大図である。
【符号の説明】
【0057】
1:金型昇降装置
2:成形型
3:樹脂注入装置
4:混合ユニット
5:主剤タンク
6:硬化剤タンク
7a:真空ポンプ
7b:加圧ポンプ
8a:注入口
8b:排出口
9:油圧ユニット
10:油圧ポンプ
11:油圧シリンダー
12:逆止弁
13:樹脂注入流路
14:排出路
15:樹脂トラップ
16:上型
17:下型
20:シール材
21:バイスグリップ
22a:注入バルブ
22b:排出バルブ
22c:制御装置
23:加圧装置
24:真空ポンプ
25、26:金型温調機
27:型内圧力計
30:注入圧力計
31a,31b,31c:強化繊維基材
32:型キャビティー
33:樹脂シール
34a,34b:シール材
35:樹脂注入口
36:樹脂排出口
41:成形上型
42:成形下型
43a:成形品の範囲
43b,43c:シール材の範囲
44:基材
54a,54b:シール材
61:強化繊維基材
71:試験片取付部
72:強化繊維基材の試験片
73:試験片取付部
81:強化繊維基材
82:型キャビティー
83:樹脂シール
84a,84b:シール材
85a:成形下型
85b:成形上型
L1:成形品の範囲
L2,L3:シール材の範囲
104a,104b:シール材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の強化繊維基材を成形型に配置し、成形型を閉じることで所定の形状に上記強化繊維基材を変形せしめ、かつ、該変形した強化繊維基材が成形型に設けた基材キャビティー内に収められるようにし、その状態の型内へ樹脂を注入するとともに硬化させて成形品を得ることを特徴とする繊維強化プラスチックスの成形方法。
【請求項2】
前記基材キャビティー内の、樹脂が流動する方向の両側部に、樹脂の流動を制御するシール部を設けて、樹脂の流動を制御することを特徴とする請求項1記載の繊維強化プラスチックスの成形方法。
【請求項3】
前記シール部のシール率αが5〜100%の範囲となるようにしたことを特徴とする請求項2記載の繊維強化プラスチックスの成形方法。
【請求項4】
前記シール部が、予め成形型内に埋め込まれていることを特徴とする請求項2または3記載の繊維強化プラスチックスの成形方法。
【請求項5】
前記シール部を、配置した強化繊維基材とともに成形型内に配置することを特徴とする請求項2または3記載の繊維強化プラスチックスの成形方法。
【請求項6】
用いられる強化繊維基材の非繊維軸方向引張試験による引張歪みが1%に到達するまでの荷重の最大値が、0.01〜0.75Nの範囲内にある強化繊維基材を用いることを特徴する請求項1〜5のいずれかに記載の繊維強化プラスチックスの成形方法。
【請求項7】
前記強化繊維基材として非繊維軸方向引張試験による引張歪みが5%に到達するまでの荷重の最大値が、0.1〜1.0Nの範囲内であるものを用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の強化繊維プラスチックスの成形法
【請求項8】
複数枚の強化繊維基材を配置する下型と、該下型に対応して設けられた上型を有し、該上型を下型に対して閉じることで所定の形状に上記強化繊維基材を変形させるための成形型を備え、かつ、該成形型には、前記変形した強化繊維基材が収められるように設けられた基材キャビティーを有するとともに、該基材キャビティー内に樹脂を注入する樹脂注入口と注入された樹脂を排出する樹脂排出口を設けたことを特徴とする繊維強化プラスチックスの成形装置。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の繊維強化プラスチックスの成形方法、もしくは請求項7に記載の繊維強化プラスチックの成形装置によって製造されてなることを特徴とする繊維強化プラスチックス成形体。
【請求項1】
複数枚の強化繊維基材を成形型に配置し、成形型を閉じることで所定の形状に上記強化繊維基材を変形せしめ、かつ、該変形した強化繊維基材が成形型に設けた基材キャビティー内に収められるようにし、その状態の型内へ樹脂を注入するとともに硬化させて成形品を得ることを特徴とする繊維強化プラスチックスの成形方法。
【請求項2】
前記基材キャビティー内の、樹脂が流動する方向の両側部に、樹脂の流動を制御するシール部を設けて、樹脂の流動を制御することを特徴とする請求項1記載の繊維強化プラスチックスの成形方法。
【請求項3】
前記シール部のシール率αが5〜100%の範囲となるようにしたことを特徴とする請求項2記載の繊維強化プラスチックスの成形方法。
【請求項4】
前記シール部が、予め成形型内に埋め込まれていることを特徴とする請求項2または3記載の繊維強化プラスチックスの成形方法。
【請求項5】
前記シール部を、配置した強化繊維基材とともに成形型内に配置することを特徴とする請求項2または3記載の繊維強化プラスチックスの成形方法。
【請求項6】
用いられる強化繊維基材の非繊維軸方向引張試験による引張歪みが1%に到達するまでの荷重の最大値が、0.01〜0.75Nの範囲内にある強化繊維基材を用いることを特徴する請求項1〜5のいずれかに記載の繊維強化プラスチックスの成形方法。
【請求項7】
前記強化繊維基材として非繊維軸方向引張試験による引張歪みが5%に到達するまでの荷重の最大値が、0.1〜1.0Nの範囲内であるものを用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の強化繊維プラスチックスの成形法
【請求項8】
複数枚の強化繊維基材を配置する下型と、該下型に対応して設けられた上型を有し、該上型を下型に対して閉じることで所定の形状に上記強化繊維基材を変形させるための成形型を備え、かつ、該成形型には、前記変形した強化繊維基材が収められるように設けられた基材キャビティーを有するとともに、該基材キャビティー内に樹脂を注入する樹脂注入口と注入された樹脂を排出する樹脂排出口を設けたことを特徴とする繊維強化プラスチックスの成形装置。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の繊維強化プラスチックスの成形方法、もしくは請求項7に記載の繊維強化プラスチックの成形装置によって製造されてなることを特徴とする繊維強化プラスチックス成形体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−144994(P2007−144994A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−267465(P2006−267465)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】
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