説明

繊維強化樹脂およびその製造方法

【課題】 シクロオレフィンモノマーと第10族遷移金属化合物とを含有する重合性組成物を繊維材存在下で重合させてなる繊維強化樹脂に関し、特に機械度、強靭性及び耐酸化劣化性に優れる繊維強化樹脂を得る。
【解決手段】 シクロオレフィンモノマーおよび第10族遷移金属化合物を含有する重合性組成物を繊維材存在下に重合してなる繊維強化樹脂を用いる。該繊維強化樹脂は、シクロオレフィンモノマーおよび第10族遷移金属化合物を含有する重合性組成物を繊維材存在下に重合して得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロオレフィンモノマーを繊維材存在下で重合してなる繊維強化樹脂及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、第10族金属化合物存在下でシクロオレフィンモノマーを繊維材中で重合してなる機械的強度、強靭性及び耐酸化劣化性に優れる維強化樹脂及びその繊維強化樹脂を容易に製造できる製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジシクロペンタジエン等のシクロオレフィンモノマーは、RIMと呼ばれる反応成形法により大型で複雑な形状のものを成形できる特性を有している。例えば、特許文献1には、ジシクロペンタジエンを6塩化タングステン等の第6族金属化合物とアルキルアルミニウム等の助触媒とからなるメタセシス重合触媒を用いて成形型内で重合と成形を同時に行う方法が開示されている。本法により得られる成形体は、機械強度と強靭性に優れるために自動車用のバンパーをはじめとして様々な用途に有用であることが報告されている。しかしながら、本法により得られる成形体は、メタセシス重合は主鎖に不飽和結合が導入されるために高温使用の用途では酸化劣化の問題により制限使用される問題が知られている。
【0003】
一方、特許文献2には、ノルボルネンと第10族金属化合物であるパラジウム系触媒とからなる重合性組成物を50℃の成形器に流し込み5分間反応をさせ主鎖に炭素−炭素二重結合のない成形体を得る方法が開示されている。本法により得られる成形体は、主鎖に炭素−炭素二重結合を形成させないために酸素雰囲気下の耐熱性に優れる利点を有するが、機械強度や強靭性に劣る欠点を有していた。
【0004】
また、特許文献3には、エポキシ樹脂、アミン系硬化剤及び尿素系硬化促進剤とからなるエポキシ樹脂組成物を離型紙上に薄く均一に塗布して樹脂フィルムを作製し、次いで該樹脂フィルムを炭素繊維の両面から重ね、加熱、加圧することにより樹脂組成物を含浸させプリプレグとし、積層し成形金型内で硬化させて繊維強化樹脂を得る方法が開示されている。しかしながら、本法で得られる繊維強化樹脂は、機械的強度と耐酸化劣化性に優れるが、強靭性に劣る問題を有している。
【0005】
【特許文献1】特開昭58−129013号公報
【特許文献2】特開平8−325329号公報
【特許文献3】特開2004−99814号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、シクロオレフィンモノマーと第10族遷移金属化合物とを含有する重合性組成物を繊維材存在下で重合させてなる繊維強化樹脂に関し、特に機械度、強靭性及び耐酸化劣化性に優れる繊維強化樹脂を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討の結果、ノルボルネンなどのシクロオレフィンモノマーとパラジムアセチルアセトネート等の第10族遷移金属化合物とを含有する重合性組成物を強化繊維材存在下で重合すると、繊維材が重合阻害を起こさず重合が可能であること、しかも重合性組成物が炭素繊維との馴染み性に優れ、機械強度及び強靭性に優れ且つ耐酸化劣化性にも優れた繊維強化樹脂が得られることを見出した。また、強化繊維材として、有機繊維や炭素繊維、特に炭素繊維からなるものを用いると機械強度、強靭性及び耐酸化劣化性の特性が高度にバランスされることを見出した。さらに、重合性組成物に架橋剤やエラストマー材料を加える、あるいはフェノール系、アミン系、リン系またはイオウ系の老化防止剤のいずれかを添加するとシクロオレフィンモノマーの重合性を阻害をせずに機械強度、強靭性及び耐酸化劣化性を更に高めることを見出した。本発明者は、これらの知見に基づいて本発明を完成するに至ったものである。
【0008】
かくして本発明によれば、シクロオレフィンモノマーおよび第10族遷移金属化合物を含有する重合性組成物を繊維材存在下に重合してなる繊維強化樹脂が提供される。
【0009】
本発明によれば、また、シクロオレフィンモノマーおよび第10族遷移金属化合物を含有する重合性組成物を繊維材存在下に重合することを特徴とする繊維強化樹脂の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、機械強度、強靭性及び耐酸化劣化性に優れたシクロオレフィン樹脂を含んでなる繊維強化樹脂を容易に得ることができる。また、本発明の繊維強化樹脂は、機械強度、強靭性及び耐酸化劣化性の特性に優れるため、自動車用や航空機等の構成部材、ゴルフシャフト等のスポーツ用具、建材等、幅広い用途の材料として好適に使用することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(シクロオレフィンモノマー)
本発明に使用されるシクロオレフィンモノマーは、炭素原子で形成される環構造を有し、該環中に炭素−炭素二重結合を有する化合物である。その例として、ノルボルネン系モノマーおよび単環シクロオレフィンなどが挙げられ、ノルボルネン系モノマーが好ましい。
【0012】
ノルボルネン系モノマーは、ノルボルネン環を含むモノマーである。ノルボルネン系モノマーとしては、格別な限定はないが、例えば、2−ノルボルネン、ノルボルナジエンなどの二環体、ジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエンなどの三環体、テトラシクロドデセン、エチリデンテトラシクロドデセン、フェニルテトラシクロドデセンなどの四環体、トリシクロペンタジエンなどの五環体、テトラシクロペンタジエンなどの七環体、及びこれらのアルキル置換体(メチル、エチル、プロピル、ブチル置換体など)、アルキリデン置換体(例えば、エチリデン置換体)、アリール置換体(例えば、フェニル、トリル置換体)、並びにエポキシ基、メタクリル基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、シアノ基、ハロゲン基、エーテル基、エステル結合含有基などの極性基を有する誘導体などが挙げられる。
【0013】
単環シクロオレフィンとしては、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロオクテン、シクロドデセン、1,5−シクロオクタジエンなどの単環シクロオレフィン及び置換基を有するそれらの誘導体が挙げられる。
【0014】
これらのシクロオレフィンモノマーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0015】
(第10族遷移金属化合物)
本発明に使用される第10族遷移金属化合物としては、周期律表(IUPAC無機化学命名法改訂版、1989年;長周期型)の第10族遷移金属元素を含む化合物物であれば格別な限定はない。第10族遷移金属元素としては、例えば、ニッケル、パラジウム、白金などが挙げられ、好ましくはニッケルとパラジウムであり、更に好ましくはパラジウムである。かかる第10族遷移金属元素を含む化合物としては、例えば、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、過塩素酸ニッケル等のニッケルの無機酸塩;酢酸ニッケル、シュウ酸ニッケル等のニッケルの有機酸塩;ニッケルアセチルアセトネート、ニッケルフタロシアニン等のニッケル錯体;塩化パラジウム、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウム、硫酸パラジウム、硝酸パラジウム等のパラジウムの無機酸塩;酢酸パラジウム、トリフルオロ酢酸パラジム等のパラジウムの有機酸塩;パラジウムアセチルアセトネート、ビス(アリル)パラジウム、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)パラジウム、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム、カルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリエチルホスフィン)パラジウム、ジアセトビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロ[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム、ビス[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム、テトラアミンパラジウムナイトレート、テトラキス(アセトニトリル)パラジウムテトラフルオロボレート等のパラジウム錯体;塩化白金、ヨウ化白金等の白金の無機酸塩;白金アセチルアセトネート等の白金錯体などが挙げられ、これらの中でも、パラジウムの無機酸塩、有機酸塩、錯体が好ましく、パラジウムの錯体化合物が特に好ましい。
【0016】
これらの第10族遷移金属化合物は、それぞれ単独であるいは2種以上が組み合わされて用いることができる。第10族遷移金属化合物の使用量は、使用用途に応じて適宜選択されるが、シクロオレフィンモノマーに対して、通常0.00001〜1モル%、好ましくは0.0001〜0.1モル%の範囲である。
【0017】
(重合性組成物)
本発明に使用される重合性組成物は、上記シクロオレフィンモノマーと第10族遷移金属化合物とを必須成分として、必要に応じて、架橋剤、エラストマー材料、老化防止剤、及びその他の添加剤を添加することができる。
【0018】
本発明に使用される重合性組成物は、架橋剤を含むことで耐酸化劣化性を阻害することなく機械強度と強靭性をより高度に向上させることができ好適である。架橋剤としては、重合物を架橋させるものであれば格別な限定はないが、通常ラジカル発生剤が用いられる。ラジカル発生剤としては、有機過酸化物、ジアゾ化合物および非極性ラジカル発生剤などが挙げられ、好ましくは有機過酸化物や非極性ラジカル発生剤である。
【0019】
有機過酸化物としては、例えば、t−ブチルヒドロペルオキシド、p−メンタンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド類;ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサンなどのジアルキルペルオキシド類;ジプロピオニルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシドなどのジアシルペルオキシド類;2,2−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブタン、1,1−ジ(t−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサンなどのペルオキシケタール類;t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシベンゾエートなどのペルオキシエステル類;t−ブチルペルオキシイソプロピルカルボナート、ジ(イソプロピルペルオキシ)ジカルボナートなどのペルオキシカルボナート類;t−ブチルトリメチルシリルペルオキシドなどのアルキルシリルペルオキシド類;などが挙げられる。中でも、重合反応に対する障害が少ない点で、ジアルキルペルオキシドおよびペルオキシケタール類が好ましい。
【0020】
ジアゾ化合物としては、例えば、4,4’−ビスアジドベンザル(4−メチル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4’−アジドベンザル)シクロヘキサノンなどが挙げられる。
【0021】
非極性ラジカル発生剤としては、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン、1,1,2−トリフェニルエタン、1,1,1−トリフェニル−2−フェニルエタンなどが挙げられる。
【0022】
これらの架橋剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。架橋剤の使用量は、シクロオレフィンモノマー100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部の範囲である。
【0023】
本発明に使用される重合性組成物は、エラストマー材料を加えることにより格段と強靭性を向上させることができ好適である。
【0024】
エラストマー材料としては、例えば、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、クロロプレン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びこれらの水素添加物が挙げられる。
【0025】
これらのエラストマー材料は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。その使用量は、シクロオレフィンモノマー100重量部に対して、通常0.1〜100重量部、好ましくは1〜50重量部、より好ましくは3〜30重量部の範囲である。
【0026】
本発明に使用される重合性組成物は、老化防止剤として、フェノール系老化防止剤、アミン系老化防止剤、リン系老化防止剤及びイオウ系老化防止剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の老化防止剤を添加することにより、重合反応を阻害しないで、得られる繊維強化樹脂の耐酸化劣化性を高度に向上させることができ好適である。これらの中でも、フェノール系老化防止剤とアミン系老化防止剤が好ましく、フェノール系老化防止剤が特に好ましい。
【0027】
フェノール系老化防止剤は、分子内にフェノール骨格を有する老化防止剤である。フェノール系老化防止剤としては、一般の樹脂工業で通常使用される物であれば格別な限定はなく、例えば、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−(1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニルアクリレート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、テトラキス(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニルプロピオネート)メタン[すなわち、ペンタエリスリメチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート)]、6−(4−ヒドロキシ−3−メチル−5−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、2−オクチルチオ−4,6−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−オキシアニリノ)−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。
【0028】
アミン系老化防止剤は、分子内にアミノ基を有する老化防止剤である。アミン系老化防止剤としては、一般の樹脂工業で通常使用される物であれば格別な限定はなく、例えば、1−[2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]−4−〔3−3,5−ジ−tブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸−ビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)などの分子内にピペリジン骨格を有するもの等が挙げられる。
【0029】
リン系老化防止剤は、分子内にリン原子を有する老化防止剤である。リン系老化防止剤としては、一般の樹脂工業で通常使用される物であれば格別な限定はなく、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(イソデシルホスファイト)、などが挙げられる。
【0030】
イオウ系老化防止剤は、分子内にイオウ原子を有する老化防止剤である。イオウ系老化防止剤としては、例えば、ジラウリル3,3−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル3,3−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオ−プロピオネート)、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどを挙げられる。
【0031】
これらの老化防止剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。老化防止剤の使用量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、シクロオレフィンモノマー100重量部に対して大して、通常0.0001〜10重量部、好ましくは0.001〜5重量部、より好ましくは0.01〜1重量部の範囲である。
【0032】
その他の添加剤としては、例えば、助触媒、難燃剤、充填剤、着色剤、光安定剤、顔料、発泡剤、高分子改質剤などが挙げられる。
【0033】
助触媒としては、第10族遷移金属化合物と相互作用してシクロオレフィンモノマーに対する重合活性種を生成せしめる化合物であれば特に限定されない。かかる化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のアルキルアルミニウム;メチルアルミノキサン等のアルミニウムオキシ化合物;ジメチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、塩化亜鉛、四塩化珪素、四塩化錫、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、ヨウ化アルミニウム、三塩化硼素、三フッ化硼素、フェニルボロンジクロリド、塩化ガリウム等のハロゲン原子を含有するルイス酸;テトラフェニル硼酸トリエチルアンモニウム、テトラフェニル硼酸ジメチルアニリニウム、トリエチルアンモニウムテトラフェニル硼酸トリメチルスルホニウム、テトラ(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリエチルアンモニウム、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ジメチルアニリニウム、テトラ(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリメチルスルホニウム、テトラ(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリチル、テトラフェニル硼酸フェロセニウム、テトラ(ペンタフルオロフェニル)硼酸フェロセニウム、テトラフェニル硼酸(テトラフェニルポルフィリンマンガン)等の遷移金属と反応してイオン性の錯体を形成する化合物等が挙げられる。これらの助触媒は、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
難燃剤としては、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物系難燃剤、三酸化アンチモンなどのアンチモン化合物などが挙げられる。
【0035】
充填剤としては、特に限定はされないが、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、クレー、タルク、カイカ、シリカ、カオリン、フライアッシュ、モンモリロナイト、ガラスバルーン、シリカバルーン、熱膨張性塩化ビニリデン粒子等が好適に用いられる。着色剤としては、染料、顔料などが用いられる。染料の種類は多様であり、公知のものを適宜選択して使用すればよい。
【0036】
これらのその他の添加剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その使用量は、本発明の効果を損ねない範囲で適宜選択される。
【0037】
本発明に用いられる重合性組成物は、上記成分を混合して得ることができる。混合方法としては、常法に従えばよく、例えば、第10族遷移金属化合物を適当な溶媒に溶解若しくは分散させた液(触媒液)をシクロオレフィンモノマーに必要に応じてその他の添加剤を配合した液(モノマー液)に添加し、攪拌することによって調製することができる。
【0038】
(繊維材)
本発明に使用される繊維材の種類としては、格別な制限はないが、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)繊維、アラミド繊維、超高分子ポリエチレン繊維、ポリアミド(ナイロン)繊維、液晶ポリエステル繊維などの有機繊維;ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、タングステン繊維、モリブデン繊維、ブデン繊維、チタン繊維、スチール繊維、ボロン繊維、シリコンカーバイド繊維、シリカ繊維などの無機繊維などが挙げることができる。これらの中でも、有機繊維、ガラス繊維、あるいは炭素繊維が好ましく、炭素繊維がより好ましい。特に、炭素繊維は、シクロオレフィンモノマーを含む重合性組成物の含浸性に優れ、得られる繊維強化樹脂の機械強度、強靭性及び耐熱性の特性を高度にバランスさせることができ好適である。炭素繊維としては、格別な限定はなく、例えば、アクリル系、ピッチ系、レーヨン系等の各種の従来公知の方法で製造される炭素繊維が使用でき、中でも、アクリル繊維(ポリアクリロニトリル繊維)を原料として製造される炭素繊維であるアクリル系炭素繊維が重合阻害を起こさず、機械強度と強靭性等の特性を高度に付与でき好適である。
【0039】
本発明に使用される繊維材の強度特性は、格別な限定はなく使用目的に応じて適宜選択される。引張強度としては、JIS R7601に従って測定されるストランド引張強度で、通常0.5〜50GPa、好ましくは1〜10GPa、より好ましくは2〜8GPaの範囲である。引張弾性率としては、JIS R7601に従って測定されるストランド引張弾性率で、通常100〜1,000GPa、好ましくは200〜800GPa、より好ましくは300〜700GPaの範囲である。伸びとしては、JIS R7601に従って測定されるストランド引張伸びで、通常0.1〜10%、好ましくは0.5〜5%、より好ましくは1〜3%の範囲である。繊維の強度特性がこれらの範囲にあるときに、機械強度と強靭性が高度にバランスされ好適である。
【0040】
本発明に使用される繊維材の断面形状は、格別な限定はないが、実質的に円形であるものが好ましい。断面形状が円形であると、重合性組成物を含浸させる際、フィラメントの再配列が起こりやすくなり、繊維間への重合性組成物の浸み込みが容易になるからである。さらに、繊維束の厚みを薄くすることが可能となるため、ドレープ製に優れたプリプレグを得やすい利点がある。なお、断面形状が実質的に円形であるとは、その断面の外接円半径Rと内接円半径rとの比(R/r)を変形度として定義した場合に、この変形度が1.1以下であるものを意味する。
【0041】
本発明に使用される繊維材の長さは、格別な限定無く使用目的に応じて適宜選択され、短繊維、長繊維のいずれをも用いることができるが、より高い機械強度と強靭性を得たい場合は、繊維の長さが1cm以上、好ましくは2cm以上、より好ましくは3cm以上、もっとも好ましくは連続繊維とするのがよい。
【0042】
本発明に使用される繊維材の形態は、特に限定されず、織物、不織布、マット、ニット、組み紐、一方向ストランド、ロービング、チョップド等から適宜選択できる。これらの中でも、強靭性と耐衝撃性がより高い水準にある繊維強化樹脂を得るためには、繊維が織物、一方向ストランド、ロービング等連続繊維の形態であるのが良い。織物形態としては、従来公知のものが利用でき、例えば、平織、繻子織、綾織、3軸織物などの繊維が交錯する織り構造の全てが利用できる。また、織物形態としては、2次元だけでなく、織物の厚み方向に繊維が補強されているステッチ織物、3次元織物等も利用できる。
【0043】
本発明に使用される繊維材は、織物等で使用する場合は繊維束糸条として利用する。その場合の繊維束糸条1本中のフィラメント数は、格別な限定はないが、1,000〜100,000本、好ましくは2,000〜20,000本、より好ましくは5,000〜15,000の範囲である。
【0044】
これらの繊維材は、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その使用量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、得られる繊維強化樹脂中の繊維材含有量が、通常10〜90重量%、好ましくは20〜80重量%、より好ましくは30〜70重量%の範囲になるように選択される。
【0045】
(繊維強化樹脂)
本発明の繊維強化樹脂は、前記シクロオレフィンモノマーの重合により得られる重合体と繊維材とが一体化しているものであり、機械強度、強靭性及び耐酸化劣化性に優れる特性を有している。
【0046】
本発明の繊維強化樹脂の揮発性成分量は、格別な限定はないが、200℃で1時間加熱したときに揮発する量で、繊維強化樹脂総重量に対して、通常5重量%以下、好ましくは3重量%以下、より好ましくは1重量%以下である。かかる揮発性成分の少ない繊維強化樹脂は、発泡やブリード等の問題がなく、また機械強度、強靭性、耐酸化劣化性の特性を高度に向上でき好適である。
【0047】
本発明の繊維強化樹脂中の繊維材含有率は、使用目的に応じて適宜選択されるが、通常10〜90重量%、好ましくは20〜80重量%、より好ましくは30〜70重量%の範囲である。この範囲にあるときに、機械強度と強靭性との特性が高度にバランスされたものになり好適である。
【0048】
かかる本発明の繊維強化樹脂の製造方法は、格別な限定はないが、シクロオレフィンモノマー、第10族遷移金属化合物、及び必要に応じて架橋剤、エラストマー材料、特定老化防止剤、その他添加剤とを含んでなる重合性組成物を繊維材存在下に重合することで容易に得ることができる。
【0049】
重合方法は特に限定されないが、塊状重合が好ましい。塊状重合により、種々の形状の繊維強化樹脂を得ることができる。ここで、「存在下に」とは、繊維材と重合性組成物とが接触する状態で重合を行うことをいう。具体的には、繊維材が織物である場合には、繊維材に重合性組成物を含浸し、次いで塊状重合を行う方法が挙げられる。繊維材への重合性組成物の含浸は、支持体上または型内で行うことが好ましい。
【0050】
重合性組成物の繊維材への含浸は、例えば、重合性組成物の所定量を、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、カーテンコート法、ダイコート法、スリットコート法等の公知の方法により繊維材に塗布し、必要に応じてその上に保護フィルムを重ね、上側からローラーなどで押圧することにより行うことができる。重合性組成物を繊維材に含浸させた後、含浸物を所定温度に加熱することにより、重合性組成物を塊状重合させることができ、それによってシート状又はフィルム状の本発明の繊維強化樹脂が得られる。
【0051】
含浸を型内で行う場合は、型内に繊維材を設置し、該型内に重合性組成物を注ぎ込み、次いで重合を行う。この方法によれば、任意の形状の複合材料成形体を得ることができる。その形状としては、シート状、フィルム状、柱状、円柱状、多角柱状等が挙げられる。ここで用いる型としては、従来公知の成形型、例えば、割型構造すなわちコア型とキャビティー型を有する成形型を用いることができ、それらの空隙部(キャビティー)に重合性組成物を注入して塊状重合させる。コア型とキャビティー型は、目的とする成形体の形状にあった空隙部を形成するように作製される。また、成形型の形状、材質、大きさなどは特に制限されない。また、ガラス板や金属板などの板状成形型と所定の厚さのスペーサーとを用意し、スペーサーを2枚の板状成形型で挟んで形成される空間内に重合性組成物を注入し、該型内で重合を行うことにより、シート状又はフィルム状の繊維強化樹脂を得ることができる。
【0052】
重合性組成物は従来のエポキシ樹脂等と比較して低粘度であり、繊維材に対する含浸性に優れるので、重合で得られる樹脂を繊維材に均一に含浸させることができる。
【0053】
また、塊状重合を行う場合には、重合性組成物は反応に関与しない溶媒等の含有量が少ないので、繊維材に含浸させた後に溶媒を除去するなどの工程が不要であり、生産性に優れ、残存溶媒による臭気やフクレ等も生じない。特に、繊維材は、その表面で重合反応を阻害することがなく、予備乾燥等が不要であるので、本発明の製造方法は生産性に優れる。さらに、重合で得られる樹脂は未反応のモノマーの含有量が少なく、臭気が少なく、また耐熱性が優れる。
【0054】
繊維材がチョップなどの短繊維である場合には、繊維材を重合性組成物に混合し、次いで塊状重合を行う方法が挙げられる。繊維材は、モノマー液と触媒液を混合する前にモノマー液及び/又は触媒液に添加してもよいし、モノマー液と触媒液とを混合した後に添加してもよい。塊状重合の方法としては、上記と同様に型内で塊状重合を行う方法が挙げられる。また、短繊維と長繊維からなる織物とを併用し、繊維材の短繊維を含む重合性組成物を、上記と同様に長繊維からなる織物に含浸させてから重合してもよい。
【0055】
上記いずれの方法においても、重合性組成物を重合させるための加熱温度は、通常50〜250℃、好ましくは100〜200℃である。重合時間は適宜選択すればよいが、通常、10秒間から20分間、好ましくは5分間以内である。重合組成物をこの範囲温度に加熱することにより未反応モノマーの少ない繊維強化樹脂が得られるので好適である。
【0056】
重合性組成物を所定温度に加熱することにより重合反応が開始する。この重合反応は発熱反応であり、一旦塊状重合が開始すると、反応液の温度が急激に上昇し、短時間(例えば、10秒間から5分間程度)でピーク温度に到達する。重合反応時の最高温度があまりに高くなると、架橋反応が起きて架橋体になってしまい、後架橋可能な複合材料成形体が得られないおそれがある。したがって、重合反応のみを完全に進行させ、架橋反応が進行しないようにするためには、塊状重合における重合性組成物のピーク温度を、前記架橋剤の1分間半減期温度以下、好ましくは230℃以下、より好ましくは200℃未満に制御することが好ましい。
【0057】
かくして得られる本発明の繊維強化樹脂は、機械的強度、強靭性、耐熱性及び外観等の特性に優れるので、特に、OAやAV機器、自動車や鉄道などの車両用構造体材、航空機内装部品などをはじめとして、ゴルフシャフトや釣竿等のスポーツ用途、その他一般産業用途に好適に用いられる。具体的な用途としては、例えば、釣竿、ゴルフクラブ用シャフト、テニスラケット、スキーストック等のスポーツ用途;ディスプレー、FDDキャリッジ、シャーシ、HDD、MO、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、ノートパソコン、携帯電話、デジタルスチルカメラ、PDA、ポータブルMD、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイなどの電気・電子機器;電話、ファクシミリ、VTR、コピー機、テレビ、アイロン、ヘアドライヤー、炊飯器、電子レンジ、音響機器、掃除機、トイレタリー用品、レザーディスク、コンパクトディスク、照明、冷蔵庫、エアコン、タイプライター、ワードプロセッサーなどのオフィスオートメーション機器および家電機器;アンダーカバー、スカッフプレート、ピラートリム、プロペラシャフト、ドライブシャフト、ホイール、ホイールカバー、フェンダー、ドアミラー、ルームミラー、フェシャー、バンパー、バンパービーム、ボンネット、トランクフード、エアロパーツ、プラットフォーム、カウルルーバー、ルーフ、インストルメントパネル、スピラーおよび各種モジュールなどの自動車部材;ランディングギアポッド、ウイングレッド、スポイラー、エッジ、ラダー、フェイリングなどの航空機部品およびパネルなどの建材などが挙げられる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例における部および%は、特に断りのない限り重量基準である。
【0059】
実施例および比較例における各特性は、下記の方法に従い測定、評価した。
(1)機械的強度:JIS K−7073に規定する試験方法に従い、標点間距離を150mmとし、クロスヘッド速度2.0mm/分で引張強度を測定し、比較例3の成形品の値を100として、下記基準で判断した。
○:110以上
△:90以上、110未満
×:90未満
【0060】
(2)強靭性:成形物を90°に曲げ、その曲げ部分の表面観察を行い下記基準で判断した。
○:粉落ち、形状崩れのいずれも認められない
△:粉落ち、形状崩れのいずれかが認められる
×:両方認められるか、いずれか一方だけでも程度が酷いもの
【0061】
(3)外観:成形品を目視で観察し、下記基準で判断した。
○:ソリ、形状崩れのいずれも認められない
△:ソリ、形状崩れのいずれかが認められる
×:ソリ、形状崩れの両方認められるか、いずれか一方だけでも程度が酷いもの
【0062】
(4)耐熱性:成形品をオーブン内に静置し、150℃×500hr後の表面黄色度(YI値)を色差計を用いて測定し、比較例2の成形品値を100として、下記基準で評価した。
○:100以下
×:100超
【0063】
実施例1
一方向に配列し300×300mmにカットした炭素繊維を3mm厚になるように敷き詰め、その後50℃に加温した成形機(内寸300mm×300mm、厚3mmのポリテトラフルオロエチエン製のスペーサーをガラス板で挟んだもの)に、パラジウムアセチルアセトネートの0.001mol%ノルボルネン溶液(触媒液)とテトラ(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリチルの0.001mol%ノルボルネン溶液とを1:1の割合で混合しながら注入し、50℃×5分間、200℃×5分間の反応を行った後、冷却後成形機を解体し300mm×300mm×3mmの繊維強化樹脂を得た。得られた繊維強化樹脂の揮発成分は0.7%、炭素繊維割合は70重量%であった。また、機械強度、靭性、外観及び耐酸化劣化を評価してその結果を表1に示した。
【0064】
【表1】

【0065】
実施例2
触媒液中にノルボルネン全量(混合後の合計量)100部に対して1.2部の割合になるようにジクミルパーオキサイドを添加する以外は実施例1と同様に行い各特性を評価しその結果を表1に示した。尚、揮発成分は0.6%であった。
【0066】
実施例3
触媒液中にノルボルネン全量(混合後の合計量)100部に対して15部の割合になるようにポリブタジエンを添加する以外は実施例2と同様に行い各特性を評価しその結果を表1に示した。尚、揮発成分量は0.8%であった。
【0067】
実施例4
触媒液中にノルボルネン全量(混合後の合計量)100部に対して1.0部の割合になるように3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソールを添加する以外は実施例2と同様に行い各特性を評価しその結果を表1に示した。尚、揮発成分量は0.9%であった。
【0068】
比較例1
六塩化タングステンの0.05mol%ノルボルネン溶液とジエチルアルミニウムクロリドの0.5mol%ノルボルネン溶液を調製し、両溶液を1:1の割合で混合しながら室温の成形機(内寸300mm×300mm、厚さ3mmのポリテトラフルオロエチエン製のスペーサーをガラス板で挟んだもの)に注入し、5分後に成形機を解体し300mm×300mm×3mmの板状成形体を得た。各々の特性を評価してその結果を表1に示した。
【0069】
比較例2
パラジウムアセチルアセトネートの0.001mol%ノルボルネン溶液とテトラ(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリチルの0.001mol%ノルボルネン溶液を調整し、両溶液を1:1の割合で混合しながら50℃の成形機(内寸300mm×300mm、厚さ3mmのポリテトラフルオロエチエン製のスペーサーをガラス板で挟んだもの)に注入し、5分後に成形機を解体し300mm×300mm×3mmの板状成形体を得た。各々の特性を評価してその結果を表1に示した。
【0070】
比較例3
エピコート1005F(2官能ビスフェノール型樹脂、エポキシ当量950〜1050)20部、エピコート828(2官能ビスフェノール型樹脂、エポキシ当量176〜180)80部、硬化剤ジシアンジアミド5部、硬化促進剤1,1”−4(メチル−m−フェニレン)ビス(3,3”ジメチルウレア))4.2部からなるエポキシ樹脂組成物をリバースロールコーターを用いて離型紙上に薄く均一に塗布して樹脂フィルムを作製した。次にシート上に一方向に配列させた炭素繊維に該樹脂フィルム2枚を炭素繊維の両面から重ね、加熱、加圧することによりエポキシ樹脂組成物を含浸させ、一方向プリプレグを作製した。次いで、作製したプリプレグを用いて、成形品厚みが3mmになるように積層して金型へ設置し、成形条件は金型温度150℃、成形圧力981kPaで2時間の圧縮成形を行った。成形後脱着し、各特性を評価し、その結果を表1に示した。
【0071】
表1の結果より、本発明の繊維強化樹脂は、機械的強度、強靭性、外観及び耐熱性が高度にバランスされていることがわかる(実施例1〜4、比較例1〜3に比して)。また、重合性組成物に架橋剤を配合すると、重合活性や耐熱性を損なうことなく、繊維強化樹脂の機械的強度、強靭性、外観及び耐熱性の特性が高度にバランスされることがわかる(実施例2〜4)。一方、重合性組成物にフェノール系老化防止剤を配合すると(実施例4)、重合活性を阻害せずに、繊維強化樹脂の機械的強度、強靭性、外観のいずれの特性にも優れているが、特に、耐熱性の評価では該老化防止剤を配合していない例(実施例1〜3)に比して黄色度が殆ど変化しないことが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロオレフィンモノマーおよび第10族遷移金属化合物を含有する重合性組成物を繊維材存在下に重合してなる繊維強化樹脂。
【請求項2】
重合性組成物が、さらに架橋剤を含んでなる請求項1記載の繊維強化樹脂。
【請求項3】
重合性組成物が、さらにエラストマー材料を含んでなる請求項1または2記載の繊維強化樹脂
【請求項4】
重合性組成物が、フェノール系老化防止剤、アミン系老化防止剤、リン系老化防止剤及びイオウ系老化防止剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の老化防止剤をさらに含んでなる請求項1乃至3のいずれかに記載の繊維強化樹脂。
【請求項5】
繊維材が、有機繊維または炭素繊維からなるものである請求項1乃至4のいずれかに記載の繊維強化樹脂。
【請求項6】
シクロオレフィンモノマーおよび第10族遷移金属化合物を含有する重合性組成物を繊維材存在下に重合することを特徴とする繊維強化樹脂の製造方法。
【請求項7】
重合性組成物が、さらに架橋剤を含んでなる請求項6記載の製造方法。
【請求項8】
重合性組成物が、さらにエラストマー材料を含んでなる6または7記載の製造方法。
【請求項9】
重合性組成物が、フェノール系老化防止剤、アミン系老化防止剤、リン系老化防止剤及びイオウ系老化防止剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の老化防止剤をさらに含んでなる請求項6乃至8のいずれかに記載の製造方法。

【公開番号】特開2009−203433(P2009−203433A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−50060(P2008−50060)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】