説明

繊維機械管理システム及び精紡ワインダ

【課題】精紡ワインダにおいて効率の良いメンテナンスを支援する繊維機械管理システムを提供する。
【解決手段】ボビン23を乗せて搬送するトレーは、ボビンを形成した精紡ユニット32を特定可能な情報を記憶するRFタグを備える。ワインダ3は、各巻取ユニット31が実ボビンから解舒している紡績糸の状態を監視して糸品質情報を取得する糸品質監視部21を備える。糸品質情報に基づいて前記糸に所定の特徴を検出した場合、管理システムは、前記ボビン情報に基づいて、粗紡ユニット33又は精紡ユニット32の中から、前記特徴に対応する対応ユニットを特定する。また、管理システムは、前記糸品質情報に基づいて、前記対応ユニットにおいて前記特徴に対応する部位である対応部位を特定するとともに、当該対応部位の状態を推定する。そして、前記対応ユニットと、前記対応部位と、前記対応部位の状態と、がディスプレイ18によって通知される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精紡ワインダの繊維機械管理システムに関する。詳細には、繊維機械管理システムによって、精紡ワインダのメンテナンスを適切に行うことができるように支援するための構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、精紡機のトラベラやドラフト部の各ベルト類の交換など、繊維機械のメンテナンスを実施するタイミングは、オペレータの経験や判断に委ねられていた。従って、必ずしも最適なタイミングで部品の交換が行われるとは限らず、以下のような問題が発生し得る。即ち、早過ぎるタイミングで部品交換すればメンテナンスコストの増大を招き、遅過ぎるタイミングで部品交換すれば消耗した部品によって不良糸が大量に生産されてしまう。
【0003】
この点、例えばメーカー推奨の使用期間を経過した部品は一律に交換するという方法も考えられる。しかし実際には、部品の消耗具合は仕掛け条件によって影響を受ける。そのため、メーカー推奨の使用期間を目安にして部品を交換しても、そのタイミングが常に適切であると言うことはできない。
【0004】
また、巻き取られた糸を分析し、部品を交換するタイミングをその分析結果に基づいて決定することも行われている。具体的には、実際の仕掛け条件で糸の巻取りを行い、巻き取った糸をオペレータが手作業で採取して、これを分析機で分析する。そして、この分析結果から部品の寿命を定め、一定期間経過後に部品を交換する。しかしこの方法の場合、オペレータが糸を採取して分析する必要があり、非常に手間であるという問題があった。
【0005】
一方、特許文献1が開示するような精紡機の管理システムが提案されている。特許文献1の構成は、ボビンを搬送するトレーにバーコードを添付しておき、このバーコードを読み取ることにより、ボビンを形成した精紡ユニットを特定するものである。この構成により、不具合の発生時に、メンテナンスが必要な精紡ユニットを特定することができる。また、特許文献2は、ボビンを搬送するトレー(キャディ)に電気的に読み取り及び消去可能なメモリチップを搭載し、ボビンを形成したリングスピンドルを特定できる情報を前記メモリチップに記憶する構成を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−41329号公報
【特許文献2】特開2003−176081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1及び特許文献2の構成では、どの精紡ユニットに不具合が発生したかということはわかるものの、それ以上の情報を得ることができない。即ち、ある精紡ユニットにメンテナンスが必要であるということはわかるが、当該ユニットのどの部分をメンテナンスすべきかという点は、オペレータの経験によって判断しなければならない。更に言えば、メンテナンスが必要なユニットが事後的に把握できるようになったとしても、部品交換などのメンテナンスを不都合が発生する前に予防的に行うことはできず、この点で限界がある。
【0008】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、精紡ワインダにおいて、効率の良いメンテナンスを支援する繊維機械管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0010】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の繊維機械管理システムが提供される。即ち、この繊維機械管理システムは、精紡機と、自動ワインダと、ボビン自動供給装置と、通知部と、を有する精紡ワインダの繊維機械管理システムとして構成されている。前記精紡機は、複数の前工程ユニットを備える前工程機から供給される糸原料から糸を生成し、当該糸をボビンに巻き付けて実ボビンを形成する精紡ユニットを複数備える。前記自動ワインダは、前記実ボビンから糸を解舒してパッケージに巻き取る巻取ユニットを複数備える。前記ボビン自動供給装置は、前記実ボビンをトレーに乗せ、当該実ボビンを前記精紡機から各巻取ユニットに供給する。また、前記トレーは、当該トレーが乗せている実ボビンを形成した精紡ユニットを特定可能な情報をボビン情報として記憶する記憶部を備える。前記自動ワインダは、前記各巻取ユニットが前記実ボビンから解舒している糸の状態を監視して糸品質情報を取得する糸品質監視部を備える。前記各巻取ユニットは、当該巻取ユニットに供給された実ボビンを乗せているトレーの前記記憶部から、前記ボビン情報を読み取ることが可能な読取部を備える。また、この繊維機械管理システムは、前記糸品質情報に基づいて前記糸に所定の特徴を検出した場合、前記ボビン情報に基づいて、前記前工程ユニット又は前記精紡ユニットの中から、前記特徴に対応する対応ユニットを特定する。また、この繊維機械管理システムは、前記糸品質情報に基づいて、前記対応ユニットにおいて前記特徴に対応する部位である対応部位を特定するとともに、当該対応部位の状態を推定する。そして、この繊維機械管理システムは、前記対応ユニットと、前記対応部位と、前記対応部位の状態と、を前記通知部によって通知可能である。
【0011】
即ち、糸に何らかの異常が検出された場合、当該異常の原因があるユニットと、当該ユニットの中で異常の原因となっている部位と、をオペレータに通知することができるので、オペレータはメンテナンスを適切に行うことができる。また、異常の原因となっている部位の状態も通知されるので、メンテナンスをどのタイミングで行うかを、オペレータが適切に判断することができる。また、実ボビンから糸を手作業で採取して分析を行うという従来技術のような手間を掛けることなく、自動的に糸の状態を分析することができるので、オペレータの負担を大幅に軽減することができる。
【0012】
前記の繊維機械管理システムにおいて、前記通知部は、前記対応部位の部品寿命を、当該対応部位の状態として通知することが好ましい。
【0013】
これにより、部品寿命をオペレータに通知できるので、オペレータは当該部品を交換すべき時期を的確に把握することができる。従って、部品を交換する時期が早すぎて無駄な交換が行われてしまったり、部品を交換する時期が遅すぎて品質の悪い糸を生産してしまったりすることがないので、メンテナンスコスト及び糸品質の両面で優れている。
【0014】
前記の繊維機械管理システムにおいて、前記糸の特徴が異常である場合、前記通知部は、前記対応部位がメンテナンスを要する状態であることを、当該対応部位の状態として通知することが好ましい。
【0015】
これにより、不良糸が検知されたときに、メンテナンスが必要である旨と、メンテナンスが必要なユニット及び部位をオペレータに通知することができる。従って、オペレータが速やか且つ適切にメンテナンスをすることが可能となり、当該異常から早期に復旧することができる。
【0016】
前記の繊維機械管理システムは、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記精紡ユニットは、糸に撚りを掛けるためのトラベラを備えたリング精紡ユニットである。そして、当該繊維機械管理システムは、毛羽量が所定の特徴に従って増加していることを前記糸の特徴として検出した場合、当該毛羽量の増加に対応する対応部位は前記トラベラであると特定するとともに、前記毛羽量に基づいて、前記トラベラの部品寿命又はメンテナンスの必要性を推定して前記通知部によって通知する。
【0017】
即ち、トラベラが摩耗すると、糸の毛羽量が増大するため、適切な時期に当該トラベラを交換する必要がある。この点、上記のように構成することにより、糸の実際の毛羽量に基づいてトラベラの寿命又はメンテナンスの必要性を推定できるので、トラベラの交換を適切なタイミングで行うことができる。
【0018】
前記の繊維機械管理システムは、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記精紡ユニット及び前記前工程ユニットのうち少なくとも何れか一方は、前記糸又は前記糸原料を搬送するためのローラ及びベルトのうち少なくとも何れか一方を備える。そして、当該繊維機械管理システムは、周期的な太さムラがあることを前記糸の特徴として検出した場合、当該太さムラの周期に基づいて当該太さムラに対応する対応部位であるローラ又はベルトを特定するとともに、前記太さムラの大きさに基づいて、前記ローラ又はベルトの部品寿命又はメンテナンスの必要性を推定して前記通知部によって通知する。
【0019】
即ち、ローラやベルトのように回転して糸を搬送する部材に不具合が発生すると、糸に周期的な太さムラが発生する。この太さムラの周期は、不具合が発生したローラ又はベルトに特有のものとなる。従って、上記のように構成することにより、ローラ又はベルトの寿命又はメンテナンスの必要性を推定できるので、ローラ又はベルトのメンテナンスを適切なタイミングで行うことができる。
【0020】
前記の繊維機械管理システムは、以下のように構成されることが好ましい。即ち、それぞれの前記精紡ユニットは、複数の前記前工程ユニットのうち特定の前工程ユニットからのみ前記糸原料が供給されるように構成される。また、前記複数の前工程ユニットは、それぞれが複数の精紡ユニットに対して前記糸原料を供給するように構成される。そして、当該繊維機械管理システムは、複数の精紡ユニットで形成された前記実ボビンで共通の糸の特徴が検出された場合であって、前記複数の精紡ユニットが共通の前工程ユニットから前記糸原料を供給されている場合、当該前工程ユニットを前記対応ユニットとして特定する。
【0021】
これにより、対応ユニットである前工程ユニットを確実に特定することができる。
【0022】
前記の繊維機械管理システムは、以下のように構成することが好ましい。即ち、前記糸品質監視部は前記通知部を有する。また、前記対応部位及び前記対応部位の状態は、前記糸品質監視部によって特定される。
【0023】
これにより、膨大な糸品質情報を糸品質監視部の外部に送信する必要が無いので、繊維機械管理システムをシンプルに構成することができる。
【0024】
前記の繊維機械管理システムは、以下のように構成することもできる。即ち、前記精紡ワインダは、前記通知部を有する集中制御部を備える。前記集中制御部は、前記糸品質監視部が出力した前記糸品質情報に基づいて、前記対応部位及び前記対応部位の状態を特定する。
【0025】
これにより、糸品質監視部では対応部位及び対応部位の状態を特定する必要が無いので、糸品質監視部の構成を簡素化できる。
【0026】
本発明の第2の観点によれば、上記の繊維機械管理システムが適用された精紡ワインダが提供される。
【0027】
この精紡ワインダは、前記の繊維機械管理システムが適用されることによりメンテナンスを適切に行うことができるので、生成されるパッケージの品質及びメンテナンスコストの面で優れている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係る精紡ワインダを上から見た様子を示す概略的な平面図。
【図2】精紡ワインダの概略的な正面図及びブロック図。
【図3】ボビン及びトレーの外観斜視図。
【図4】精紡ユニットの構成を示す側面図。
【図5】巻取ユニットの構成を示す側面図。
【図6】糸品質監視部のブロック図。
【図7】糸品質情報を周期分析した結果を示すスペクトログラム。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明の実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る精紡ワインダ1を上から見た様子を示す概略的な平面図である。図2は、精紡ワインダ1の概略的な正面図及びブロック図である。
【0030】
図1に示すように、精紡ワインダ1は、ボビン23をセットするトレー50を搬送するためのトレー搬送路90を備え、このトレー搬送路90には、精紡機2と、ワインダ3と、ボビン自動供給装置6と、が配置されている。トレー搬送路90は、精紡機2とワインダ3との間を接続するとともにループ状に構成されており、ボビン23(トレー50)が当該トレー搬送路90内を循環するようになっている。なお、図1ではボビン23及びトレー50は1つのみが図示されているが、実際には複数のトレー50がトレー搬送路90に沿って搬送される。
【0031】
なお、以下の説明では、トレー搬送路90におけるトレー50の流れに注目して、トレー50の搬送方向上流側を単に「上流側」と、搬送方向下流側を単に「下流側」と、それぞれ称することがある。
【0032】
まず、トレー搬送路90で搬送されるトレー50及びボビン23の構成について、図3を参照して簡単に説明する。図3は、本実施形態の精紡ワインダ1で用いられるトレー50及びボビン23の外観斜視図である。
【0033】
図3の左側に示すように、トレー50は、略円板状に形成されたベース部50aと、ベース部50aから垂直に突出する棒状のボビン差込み部50bを備える。このトレー50は、前記差込み部50bの突出する方向が上を向いた状態で、トレー搬送路90に沿って移動する。
【0034】
図3の中央に示すように、ボビン23は細長い筒状に構成されており、その内部に前記差込み部50bを挿入することができる。これにより、ボビン23は、その長手方向を垂直に向けた状態でトレー50にセットされ、トレー搬送路90に沿って搬送することができる。
【0035】
なお、以下の説明では、糸が巻き付けられた状態のボビン(図3の右側のボビン)を「実ボビン」と呼ぶ場合がある。また、糸が巻き付けられていない状態(図3の中央に示す状態)のボビンについては、そのような状態を特に強調する意図で、当該ボビンを「空ボビン」又は「空のボビン」と呼ぶ場合がある。
【0036】
本実施形態の精紡ワインダ1には、RFID(Radio Frequency IDentification:電波による個体識別)技術を用いてトレー50上のボビン23の情報を管理する繊維機械管理システムが適用されている。より具体的には、それぞれのトレー50において、適宜の情報を書込可能なRFタグ(記録部)60がベース部50aの内部に配置されており、ボビン23に関する情報をRFタグ60に(トレー50ごとに)書き込むことでボビン23の状況を管理している。
【0037】
次に、精紡ワインダ1の各構成について、トレー搬送路90に沿って説明する。トレー搬送路90は、実ボビン導入路91と、実ボビン搬送路92と、戻しボビン搬送路93と、ボビン待機ループ94と、ボビン供給路95と、空ボビン搬送路96と、空ボビン返却路97と、不良ボビン待機路98と、交換済ボビン返却路99と、を備えている。
【0038】
実ボビン導入路91は、精紡機2とボビン自動供給装置6とを接続しており、ボビン23を乗せたトレー50を、精紡機2からボビン自動供給装置6まで搬送できるように構成されている。以下、精紡機2について説明する。
【0039】
図2に示すように、精紡機2は、並列配置される多数の精紡ユニット32と、これらの多数の精紡ユニット32を統括的に制御することができる制御装置19と、を有している。また、精紡機2は、精紡ユニット32による糸の巻付けが完了したボビン23(実ボビン)を玉揚げするための図略の玉揚装置を有している。なお、各精紡ユニット32を区別する必要がある場合は、精紡機2の図面向かって左側から順に、符号の末尾にアルファベットを付して、精紡ユニット32a、精紡ユニット32b、・・・のように表記するものとする。
【0040】
次に、図4を参照して、精紡ユニット32について詳細に説明する。本実施形態の精紡ユニット32は、図4に示すように、前工程の粗紡機で生成された粗糸に撚りを加えて紡績するためのものである。具体的には、前記精紡機2はリング精紡機として構成されており、精紡ユニット32は、ドラフト機構101と加撚機構102とを備えるリング紡績ユニットとして構成されている。
【0041】
ドラフト機構101は複数のドラフトローラを備えており、このドラフトローラは、トップローラ103とボトムローラ104により構成されている。トップローラ103は、バックローラ103a、エプロンベルト105を装架したミドルローラ103b及びフロントローラ103cの3つのドラフトローラから構成されている。一方、ボトムローラ104は、バックボトムローラ104a、エプロンベルト105を装架したミドルボトムローラ104b、フロントボトムローラ104cの3つのドラフトローラから構成されている。図4に示すように、トップローラ103とボトムローラ104とは、粗糸の走行経路を挟んで対向するように配置されており、所定の圧力で粗糸をニップできるように構成されている。ボトムローラ104のそれぞれには、図略の駆動源の出力軸が接続されており、互いに異なる速度で駆動されることが可能になっている。このボトムローラ104が駆動されることで、粗糸が延伸されながら加撚機構102に送られる。
【0042】
加撚機構102は、スピンドル軸111と、リングレール112と、リング113と、トラベラ114と、を備えている。スピンドル軸111は、当該スピンドル軸111にセットされるボビン23を回転させるためのものである。リングレール112は、図略の駆動装置に接続されており、ボビン23の長手方向に移動可能に構成されている。リング113は、リングレール112に固定されており、トラベラ114を取り付けるためのフランジ部を有している。トラベラ114は、リング113のフランジ部に支持されており、当該リング113の周方向に移動可能に構成されている。
【0043】
以上のように構成された精紡ユニット32で精紡を行うには、最初に、ドラフト機構101から送られてきた糸(粗糸が延伸されたもの)を、トラベラ114とリング113との間の隙間に通し、その端部を適宜の方法で空ボビン23に固定する。そして、この状態でスピンドル軸111によってボビン23を回転させると、トラベラ114は、ボビン23に巻き取られる糸に引っ張られるようにして周方向に移動する。この結果、トラベラ114の回転がボビン23の回転よりも遅れ、こうして生じる回転数の差によって糸に撚りが加えられる。撚られた糸はボビン23に順次巻き付けられ、予め設定された長さだけ糸がボビン23に巻き取られたところで、スピンドル軸111の回転を停止して巻取りを終了する。
【0044】
本実施形態の精紡機2は、いわゆる一斉ドッフィングタイプとして構成されている。このタイプの精紡機2は、後述の空ボビン返却路97を介してボビン自動供給装置6から搬送されてくるボビン23を1列に並べて多数ストックしておき、所定のタイミングになると、多数のボビン23を一斉に各精紡ユニット32のスピンドル軸111にセットして、糸を同時に巻き付けていく。そして、糸の巻付けが完了すると、前記玉揚装置によって全てのボビン23(実ボビン)が一斉に玉揚げされ、適宜の位置で待機している空のボビン23が乗せられたトレー50から空のボビン23を抜き取り、そのトレー50にボビン23(実ボビン)が挿入される。そして抜き取られた空のボビン23はスピンドル軸111にセットされ、精紡機2により糸が巻かれる。精紡機2で玉揚げされてトレー50に乗せられたボビン23は、実ボビン導入路91を搬送されることにより、ボビン自動供給装置6に導入される。
【0045】
ボビン自動供給装置6は、精紡機2からボビン23(実ボビン)を乗せたトレー50を受け取ると、当該トレー50のRFタグ60に適宜の情報を書き込み、口出し装置7でボビン23の口出しを行った後、当該トレー50をワインダ3側に供給するように構成されている。以下、詳しく説明する。
【0046】
図1に示すように、精紡機2の実ボビン導入路91下流側には、RFライタ(データ書込部)4が配置されている。このRFライタ4は、ボビン23の紡績を行った精紡ユニット32を特定する情報等をRFタグ60に書き込むためのものである。実ボビン導入路91を搬送されるトレー50がRFライタ4の書込位置を通過すると、当該トレー50上のボビン23に糸を巻き付けた精紡ユニット32を特定する情報が、RFライタ4によってRFタグ60に記録される。
【0047】
精紡ユニット32は、精紡機2の長手方向に並列配置されており、一斉ドッフィングによって玉揚されたボビン23は、トレー50に装着された後、精紡ユニット32の並びと同一の順番で実ボビン導入路91を搬送される。従って、ボビン23が実ボビン導入路91に導入されてくる順番をカウントすることで、ボビン23が紡績された精紡ユニット32を特定できることになる。例えば、一斉ドッフィングが行われてからRFライタ4の読取位置を1番目に通過したトレー50のRFタグ60には、最も下流側(図2の左端)に配置されている精紡ユニット32aの錘番号としてNo.1を記憶させる。その次に搬送されてきたトレー50のRFタグ60には、図2の左から2番目の精紡ユニット32bの錘番号としてNo.2を記憶させる。以降においても同様に、新しく搬送されてくるトレーのRFタグ60に錘番号をNo.3、No.4・・・と順番に記憶させていく。この結果、RFライタ4の書込位置を通過するトレー50のRFタグ60に、当該トレー50上のボビン23に糸を巻き付けた精紡ユニット32を特定する情報(錘番号)が記憶されることになる。
【0048】
また、本実施形態のRFライタ4は、上述した錘番号とともに、ドッフィング情報を書き込むように構成されている。ここでいうドッフィング情報とは、前記一斉ドッフィングを行ったときの時間又は何回目のドッフィングであるか等のドッフィングを行ったタイミングを示す情報である。
【0049】
なお、錘番号とともにドッフィング情報(ドッフィングの実施時刻等)をRFタグ60に記録するのは、以下の理由による。即ち、ボビン自動供給装置6及びワインダ3(精紡機2の下流側)では、RFタグ60に記憶された錘番号が同じトレー50が存在することがある。例えば、前回ドッフィング時にワインダ3側へ送られたボビン23の巻取作業が終了していないうちに、次のドッフィングが行われて新たなボビン23群がボビン自動供給装置6に導入されたような場合である。このような場合でも、RFタグ60に前記ドッフィング情報を記憶しておけば、当該ドッフィング情報を参照することで、錘番号が同じボビン23を異なるボビン23として区別することができる。また、本実施形態のRFライタ4は、上記情報に加えてロット番号や精紡機2の番号(精紡機2を複数備える場合に精紡機2ごとに付けられる番号)等もRFタグ60に記憶させることが可能になっている。なお、以下の説明において、RFタグ60に書き込まれるボビン23を特定するための情報(錘番号及びドッフィング情報)をボビン情報と称することがある。
【0050】
実ボビン導入路91の下流側端部は、実ボビン搬送路92の上流側端部に接続している。この実ボビン搬送路92は、ボビン自動供給装置6とワインダ3とを接続している。RFライタ4によってRFタグ60に所定の情報が書き込まれたトレー50は、実ボビン搬送路92に沿ってワインダ3へ搬送される。
【0051】
ボビン自動供給装置6は口出し装置7を備えており、この口出し装置7は、前記実ボビン搬送路92上であって、ワインダ3よりも上流側に配置されている。この口出し装置7は、ワインダ3でボビン23の糸を捕捉し易くするため、当該ボビン23の口出しを行うものである。簡単に説明すると、口出し装置7は、トレー50に乗って実ボビン搬送路92を搬送されてきたボビン23に吸引流を作用させることにより、ボビン23の表面から糸を解舒する。解舒された糸端は、筒状のボビン23の内部に挿入しておく。こうしておくことにより、口出し装置7の下流側のワインダ3において、ボビン23の糸端を簡単に捕捉することができる。
【0052】
なお、口出し装置7において口出しが常に成功するとは限らず、口出しに失敗する場合もある。この場合、口出しが失敗したボビン23を乗せたトレー50は、戻しボビン搬送路93に送り出される。この戻しボビン搬送路93は、口出し装置7のすぐ下流側において実ボビン搬送路92から分岐しており、ループ状に湾曲して実ボビン搬送路92の上流側端部に接続するように構成されている。以上の構成で、口出しに失敗したボビン23は、戻しボビン搬送路93に沿って搬送されることにより、再び口出し装置7の上流側まで戻される。これにより、口出しに失敗しても、口出し装置7による口出し処理が自動的に再実行されるので、口出しミスがあるたびにオペレータが対処する必要が無い。
【0053】
次にワインダ3について説明する。図1及び図2に示すように、ワインダ3は、複数の巻取ユニット31と、巻取ユニット31ごとに配置されるRFリーダ(データ読取部)5と、制御装置としての機台制御装置(集中制御部)11と、を備える。また、ワインダ3は、各巻取ユニット31で巻き取られている糸の状態を監視するための糸品質監視部21を備えている。
【0054】
前記糸品質監視部21は、各巻取ユニット31に配置されたクリアラ15と、前記クリアラ15が接続されるクリアラコントロールボックス(CCB)12と、を備えている。
【0055】
また、図1に示すように、ワインダ3においては、実ボビン搬送路92から分岐するボビン供給路95が複数設けられている。前記複数のボビン供給路95は、ワインダ3が備える複数の巻取ユニット31に対応して設けられている。この複数のボビン供給路95によって、実ボビン搬送路92を搬送されてきたボビン23を、各巻取ユニット31に振り分けることができる。具体的には以下のとおりである。
【0056】
各ボビン供給路95は所定の長さを有しており、当該ボビン供給路95上に複数のボビン23を並べてストックしておくことができるように構成されている。また、各ボビン供給路95の上流側端部には図略の案内部材等が配置されており、実ボビン搬送路92を搬送されてきたボビン23が、前記案内部材によってボビン供給路95内に自然に導入されるように形成されている。一方、ボビン供給路95にボビン23を導入するスペースが空いていない場合(ストックされているボビン23の本数が上限に達している場合)は、新しいボビン23を当該ボビン供給路95内に導入しようとしても、当該ボビン供給路95内のボビンによって阻止される。このとき、ボビン供給路95への導入を阻止されたボビン23は、そのまま実ボビン搬送路92を下流側に搬送され、スペースが空いている別のボビン供給路95に導入される。以上のようにして、精紡機2から送られてきたボビン23を各巻取ユニット31に対して振り分けることができる。
【0057】
一方、ボビン23を導入できるスペースが空いたボビン供給路95が1つも無い場合は、ボビン待機ループ94にボビン23が導入されて当該ボビン待機ループ94を搬送されるように構成されている。ボビン待機ループ94は、実ボビン搬送路92の一番下流側から分岐し、実ボビン搬送路92と一番上流側のボビン供給路95との分岐部よりも上流側の位置に接続するように構成されている。従って、ボビン23は、何れかのボビン供給路95でボビンをストックできるスペースが空くまでの間、ボビン待機ループ94と実ボビン搬送路92で構成されるループ経路を循環し続ける。
【0058】
次に、図5を参照して、巻取ユニット31の構成について詳細に説明する。図5に示すように、巻取ユニット31は、実ボビンから糸を巻取ボビン22に巻き取ってパッケージ30を形成するためのものであり、糸をトラバースさせるとともに前記巻取ボビン22を駆動するための巻取ドラム(綾振ドラム)24を備えている。また、本実施形態の巻取ユニット31は、解舒作業を行うために適宜の位置にセットされたボビン23と巻取ドラム24との間の糸走行経路中に、ボビン23側から順に、テンション付与装置13と、糸継装置14と、クリアラ(糸品質測定器)15と、を配置した構成となっている。
【0059】
テンション付与装置13は、走行する糸に所定のテンションを付与するものである。テンション付与装置13は、固定の櫛歯に対して可動の櫛歯を配置するゲート式のものが用いられている。可動側の櫛歯は、櫛歯同士が噛み合わせ状態又は解放状態になるように、ロータリ式のソレノイドにより回動することができる。このテンション付与装置13によって、巻き取られる糸に一定のテンションを付与し、パッケージ30の品質を高めることができる。
【0060】
糸継装置14は、クリアラ15が糸欠点を検出して行う糸切断時、又はボビン23からの解舒中の糸切れ時等に、ボビン23側の下糸と、パッケージ30側の上糸とを糸継ぎするものである。糸継装置14としては、機械式のものや、圧縮空気等の流体を用いるもの等を使用することができる。糸継装置14の下側及び上側には、ボビン23側の下糸を吸引捕捉して案内する下糸案内パイプ25と、パッケージ30側の上糸を吸引捕捉して案内する上糸案内パイプ26と、が設けられている。
【0061】
クリアラ15は、糸の太さを適宜のセンサで監視し、糸品質情報をCCB12へ送信するように構成されている。前記CCB12において前記糸品質情報を適宜分析することにより、糸の欠陥及び毛羽量を検出することができる。このほか、クリアラ15は、単に糸の有無を検知するセンサとしても機能させることができる。また、クリアラ15の近傍には、クリアラ15が糸の欠陥を検出したときはそれを除去できるように切断手段が設けられている。
【0062】
ボビン23から解舒された糸は、糸継装置14の下流側に配置される巻取ボビン22に巻き取られる。巻取ボビン22は、当該巻取ボビン22に対向して配置される巻取ドラム24が回転駆動することにより駆動される。この巻取ドラム24には回転センサ27が取り付けられており、巻取ドラム24が所定角度回転するごとに回転パルス信号を出力している。本実施形態の巻取ユニット31は、時間あたりのパルス数を計測することで、巻取ドラム24の回転速度を算出することができるように構成されている。
【0063】
以上の構成で、ボビン供給路95によって搬送されてきたボビン23が巻取ユニット31の適宜の位置(巻取位置)にセットされると、巻取ドラム24が駆動され、前記ボビン23から解舒された糸が前記巻取ボビン22に巻き取られて所定長のパッケージ30が形成されることになる。
【0064】
RFリーダ5は、巻取ユニット31に巻き取られるボビン23を乗せたトレー50のRFタグ60から、当該RFタグに記憶されている情報を読み取ることができるように、ボビン供給路95に配置されている。このRFリーダ5で読み取られた情報は機台制御装置11に送信される。
【0065】
機台制御装置11は、図2に示すように、表示手段としてのディスプレイ16と、操作手段としての入力キー17と、を備えている。ディスプレイ16は、各巻取ユニット31の状況を表示するためのものである。入力キー17は、オペレータが巻取条件等の設定等を行うためのものである。
【0066】
上述したように、機台制御装置11には、RFリーダで読み取られたボビン情報(錘番号及びドッフィング情報)が入力されており、現在巻取ユニット31が巻き取っているボビン23がどの精紡ユニット32で糸を巻き付けられたものかを特定することが可能になっている。
【0067】
CCB12は、クリアラ15から送信されてくる糸品質情報に基づいて、糸欠陥等が生じているか否か等の判定処理を行う。図2に示すように、CCB12は、表示手段としてのディスプレイ(通知部)18を有しており、糸欠陥に関する情報や糸欠陥に基づいて生成された情報等、各種の情報をディスプレイ18に表示できるように構成されている。また、CCB12は、前記機台制御装置11に電気的に接続されており、機台制御装置11と各種の情報のやり取りを行うことができるように構成されている。
【0068】
また、図5に示すように、巻取ユニット31の下方には前記ボビン供給路95が敷設されている。巻取ユニット31に供給されたボビン23は、このボビン供給路95によって前記巻取位置まで搬送される。なお、糸の巻取り中は、ボビン23を巻取位置に停止させておくため、ボビン供給路95によるトレー50の搬送を一時停止するように構成されている。
【0069】
また前述のように、ボビン供給路95はボビン23を複数ストックできるように構成されている。図5に示すように、ストックされているボビン23はボビン供給路95上に1列に並んでおり、当該ボビン供給路95の一番下流側にあるボビン23が、巻取ユニット31による糸の巻取りの対象となっている。図5においては、図面に複数描かれているボビンのうち最も右側のボビン23の位置が、前記巻取位置である。
【0070】
また、ボビン23からの糸の解舒は、図5に示すように、ボビン23をトレー50に乗せたままの状態で行われる。ボビン23の糸が無くなって空のボビン23となると、ボビン供給路95によるトレー50の搬送が行われる。これにより、空のボビン23は、トレー50に乗ったまま下流側へ送られ、空ボビン搬送路96(後述)に排出される。
【0071】
一方、巻取位置にあった空のボビン23が下流側に送られるのに伴って、ボビン供給路95にストックされていた各ボビン23も下流側へ送られる。これにより、巻取位置に新しいボビン23がセットされるので、当該新しいボビン23から糸を解舒して巻取りを再開することができる。なお、ボビン供給路95から空ボビンを排出することにより、当該ボビン供給路95にボビン23をストックできるスペースが新たに空くことになる。これにより、実ボビン搬送路92を搬送されているボビン23が当該ボビン供給路95に補給される。
【0072】
図1に示すように、複数のボビン供給路95の下流側端部は、それぞれ空ボビン搬送路96と合流するように構成されている。この空ボビン搬送路96は、ワインダ3と、ボビン自動供給装置6とを接続している。そして、各巻取ユニット31から排出された空ボビン23は、空ボビン搬送路96を搬送されることにより、ボビン自動供給装置6に戻される。
【0073】
ボビン自動供給装置6において、空ボビン搬送路96は、前記戻しボビン搬送路93の途中に接続している。一方、戻しボビン搬送路93において、前記空ボビン搬送路96が接続している位置よりも下流側の位置からは、空ボビン返却路97が分岐して設けられている。空ボビン搬送路96を介してボビン自動供給装置6に戻ってきた空ボビンは、戻しボビン搬送路93の一部を通過した後、後述の経路切替機構(図略)によって空ボビン返却路97に導入される。空ボビン返却路97は、ボビン自動供給装置6と精紡機2とを接続している。そして、ボビン自動供給装置6は、空ボビン返却路97によって空のボビン23を搬送することにより、当該空のボビン23を精紡機2に戻すように構成されている。
【0074】
以上で説明したように、精紡機2とワインダ3との間を接続するループ状のトレー搬送路90によって、精紡機2とワインダ3との間でボビン23を循環させることができる。
【0075】
なお、実際には、空ボビンのほか、実ボビンや不良ボビンがランダムに混ざった状態で、空ボビン搬送路96を搬送される。従って、混在して搬送される空ボビン、実ボビン及び不良ボビンを、分別して適切に処理するための構成が必要となる。この点について、以下に詳しく説明する。
【0076】
まず、実ボビン(糸が残ったボビン)が空ボビン搬送路96を搬送される場合について説明する。例えば、巻取ユニット31における糸の巻取り中に糸切れが発生した場合、糸継装置14による糸継ぎが行われる。このとき、巻取ユニット31は、下糸案内パイプ25の先端部に吸引流を発生させて、ボビン23側の糸端を吸引捕捉して糸継装置14に案内し、当該糸継装置14によって上糸との糸継ぎを行う。
【0077】
しかし、下糸案内パイプ23によってボビン23側の糸端を吸引捕捉できない場合、例えば糸端がボビン23の周囲に巻き付いてしまった場合や、ボビン23近くで糸が切れてしまった場合などは、糸継装置14による糸継ぎを実行することができない。このような場合、巻取ユニット31は、当該ボビン23の糸端の捕捉をあきらめて、糸端捕捉ができないボビン23を空ボビン搬送路96に排出する。これと同時に、ストックされていたボビン23がボビン供給路95を下流側に搬送されて巻取位置にセットされる。この新しいボビン23は、口出し装置7によって口出しされているので、糸端を簡単に捕捉して糸継ぎを行うことができる。以上のように、糸切れ時に糸端捕捉ができない場合であっても、当該糸端捕捉ができないボビン23を排出して代わりに新しいボビン23をセットすることにより、糸継ぎを行って巻取りを再開することができる。
【0078】
一方、糸端捕捉ができなかったボビン23は、空ボビン搬送路96を搬送される。ここで空ボビン搬送路96には、前述したように、他の巻取ユニット31から送り出された空ボビンも搬送されている。従って、糸端捕捉ができなかったボビン23は、空ボビンに混ざって空ボビン搬送路96を搬送され、戻しボビン搬送路93に導入される。
【0079】
ここで、図1に示すように、戻しボビン搬送路93上であって、戻しボビン搬送路93と空ボビン返却路97との分岐部よりも上流側の位置には、空ボビン判別装置8が設けられている。この空ボビン判別装置8は、戻しボビン搬送路93を搬送されてくるボビン23が空ボビンか否かを適宜のセンサによって検査するように構成されている。また、戻しボビン搬送路93と空ボビン返却路97との分岐部には、図略の経路切替機構が設けられている。そして、前記経路切替機構は、空ボビン判別装置8が空ボビンであると判断したボビン23は空ボビン返却路97側に送り出し、空ボビン判別装置8が空ボビンではないと判断したボビン23はそのまま戻しボビン搬送路93を搬送させるように構成されている。
【0080】
以上の構成により、空ボビンのみを精紡機2に返却することができる。なお、空ボビン判別装置8によって空ボビンではないと判断されたボビン23(糸が残っているボビン)は、戻しボビン搬送路93を搬送される。そして、図略の残糸量検出装置によって残糸量を計測する。残糸量が極少と判断されたボビン23は、図略の残糸処理装置にて極少残糸が除去される。十分な残糸量を有するボビン23は、口出し装置7にて口出し処理される。このように、巻取ユニット31で糸端の捕捉ができなかったボビン23であっても、口出し装置7によって口出しされることにより、巻取ユニット31によって再び糸の解舒を行うことができる。
【0081】
次に、不良ボビン(不良糸が巻き取られたボビン)が空ボビン搬送路96を搬送される場合について説明する。
【0082】
精紡ユニット32において、例えばドラフトローラやエプロンベルト105に損傷や摩耗等が発生すると、精紡ユニット32で製造される糸に周期的な太さムラが発生することがある。これは、ドラフトローラやエプロンベルトが回転しながら糸に接触し、当該糸を延伸しつつ搬送しているためである。また、トラベラ114が摩耗すると、糸の毛羽の量は増大する傾向を示す。なお、以下の説明では、太さムラがある糸や毛羽量が多い糸は商品価値の低い不良糸であることを考慮し、このような不良糸が巻かれたボビン23を「不良ボビン」と呼ぶことがある。前記不良糸がパッケージ30に混入してしまうことを防ぐため、巻取ユニット31においては、不良ボビンを自動的に検出して排除できることが望まれる。
【0083】
そこで、本実施形態のCCB12では、クリアラ15からの糸品質情報に基づいて、ボビン23から解舒される糸の太さ及び毛羽を検出している。そして本実施形態のCCB12は、ある巻取ユニット31のクリアラ15が検出した糸太さ変動の大きさや毛羽量が所定の許容範囲を超えたときに、当該巻取ユニット31において現在巻き取っているボビンは不良ボビンであると判定している。
【0084】
巻取ユニット31は、不良ボビンが検出された場合、それ以上の糸の解舒は行わずに当該不良ボビンをそのまま(糸が残ったまま)空ボビン搬送路96に排出し、ボビン供給路95にストックされている別のボビン23からの糸の解舒を開始するように構成されている。これにより、太さムラがある糸や、毛羽量の多い糸がパッケージ30に混入することを防ぐことができる。
【0085】
ところで、巻取ユニット31から空ボビン搬送路96に送り出された不良ボビンが、仮に戻しボビン搬送路93に導入されてしまうと、(当該不良ボビンには糸が残っているため)空ボビン判別装置8において空ボビンでは無いと判断されて、口出し装置7を経由して再びワインダ3に供給されてしまう。そこで、ボビン自動供給装置6は、不良ボビンが空ボビン搬送路96を搬送されてきたときは、当該不良ボビンを戻しボビン搬送路93に導入することなく、不良ボビン待機路98に退避させるように構成されている。
【0086】
具体的には以下のとおりである。CCB12は、ある巻取ユニット31のクリアラ15からの糸品質情報に基づいて不良ボビンを検出すると、当該巻取ユニット31で不良ボビンが検出された旨の情報を機台制御装置11に送信するように構成されている。また前述のように、巻取ユニット31によってボビン23の糸を巻き取る際には、当該ボビン23が装着されたトレー50のRFタグ60に記憶されている情報(ボビン23を特定するための情報を含む)をRFリーダ5が読み取り、その情報が機台制御装置11に入力される。そして、機台制御装置11は、巻取ユニット31で不良ボビンが検出されたときは、その旨の情報と、当該巻取ユニット31で現在巻き取られているボビン23(前記不良ボビン)のボビン情報と、を関連付けて記憶するように構成されている。従って、どのボビン23が不良ボビンであるかという情報が、機台制御装置11に記憶されることとなる。
【0087】
一方、図1に示すように、前記不良ボビン待機路98は、空ボビン搬送路96と戻しボビン搬送路93との合流部より上流側の位置において、当該空ボビン搬送路96から分岐して設けられている。また、空ボビン搬送路96上であって、空ボビン搬送路96と不良ボビン待機路98との分岐部の上流側には、RFリーダ9が配置されている。このRFリーダ9は、空ボビン搬送路96を搬送されてくるトレー50が備えるRFタグ60の記憶内容を読み取り、当該記憶内容を機台制御装置11に送信するように構成されている。また、空ボビン搬送路96と不良ボビン待機路98との分岐部には、図略の経路切替機構が設けられている。この経路切替機構は、機台制御装置11によって制御可能に構成されている。
【0088】
機台制御装置11は、RFリーダ9から送られてくる情報と、自身が記憶している情報(どのボビン23が不良ボビンであるかという情報)とを照らし合わせることにより、RFリーダ9の位置を通過したトレー50が乗せているボビン23が不良ボビンであるか否かを判断するように構成されている。そして、前記経路切替機構は、機台制御装置11が不良ボビンであると判断したボビン23は不良ボビン待機路98側に送り出し、機台制御装置11が不良ボビンではないと判断したボビン23はそのまま空ボビン搬送路96を搬送させるように構成されている。
【0089】
前記不良ボビン待機路98はある程度の長さを有しているとともに、当該不良ボビン待機路98の下流側端部は行き止まりになっている。これにより、当該不良ボビン待機路98上に、不良ボビンを乗せたトレー50を複数個待機させることができる。
【0090】
不良ボビンを乗せたトレー50が不良ボビン待機路98に一定程度貯まると、オペレータは各トレー50から不良ボビンを取り除いて空ボビンに交換する。そして、オペレータが適宜の操作を行うことにより、不良ボビン待機路98が逆転駆動される。これにより、不良ボビン待機路98に貯まっていたトレー50は、交換された空ボビンを乗せて交換済ボビン返却路99に導入される。
【0091】
前記交換済ボビン返却路99は、図1に示すように、不良ボビン待機路98の途中から分岐し、空ボビン返却路97に接続している。そして、不良ボビンから交換された空ボビンを乗せたトレー50は、交換済ボビン返却路99を介して空ボビン返却路97に導入され、精紡機2に返却される。
【0092】
以上で説明したように、本実施形態の精紡ワインダ1は、空ボビン、実ボビン及び不良ボビンが混在した状態であっても、トレー50の搬送を停止することなく、精紡機2とワインダ3との間でボビン23のやり取りを適切に行うことができるように構成されている。
【0093】
次に、本実施形態の繊維機械管理システムにおいて、メンテナンス情報を通知するための構成について説明する。
【0094】
巻取ユニット31で不良ボビンが検出された場合、当該不良の原因を取り除くべく、メンテナンスを速やかに行う必要がある。しかしながら、一般に繊維機械は多数のユニットを有し、しかも各ユニット内でも点検が必要な部位は複数箇所にわたる。このため、従来はメンテナンスが必要な部位を特定するだけでも多大な労力を要していた。
【0095】
そこで本実施形態の繊維機械管理システムは、巻取ユニット31で不良ボビンが検出されると、ディスプレイ18にメンテナンス情報を表示するように構成されている。ここで、前記メンテナンス情報とは、メンテナンスが必要である旨の警告と、メンテナンスが必要なユニットと、当該ユニットの中で特にメンテナンスが必要な部位と、を示す情報である。以下、具体的に説明する。
【0096】
まず、不良ボビンを検出するためのクリアラ15について、図6を参照して詳しく説明する。図6は、本実施形態の糸品質監視部21の構成を示すブロック図である。
【0097】
図6に示すように、本実施形態のクリアラ15は、第1糸太さセンサ43を備える。この第1糸太さセンサ43は、図略の発光部と、当該発光部からの光を受光して受光量を検出する図略の受光部とを備えている。また、クリアラ15は、前記発光部と受光部との間を、巻取ユニット31において巻取り中の糸が通過するように設置されている。発光部と受光部との間を通過する糸の太さが太いほど、受光部が受光する光の強度が低下する。従って、この第1糸太さセンサ43によって糸の太さを検出することができる。
【0098】
また、上記の第1糸太さセンサ43で、糸の毛羽を検出することもできる。即ち、毛羽は糸から放射状に拡がるようにして現れるので、毛羽の量が多いと糸の見かけの太さが増大する。従って、毛羽の量が多いほど、受光部が受光する光の強度が低下するため、第1糸太さセンサ43で糸の毛羽量を検出することができる。
【0099】
第1糸太さセンサ43は、第1A/Dコンバータ45と第2A/Dコンバータ46に接続されている。それぞれのA/Dコンバータは、第1糸太さセンサ43が出力するアナログ波形をサンプリングして、デジタルの波形データに変換する。そして、第1A/Dコンバータ45がサンプリングした波形データは、CCB12に送信される。なお、第1A/Dコンバータ45が出力するデジタルの波形データを、以下の説明において「糸品質情報」と呼ぶことがある。また、第2A/Dコンバータ46については後述する。
【0100】
CCB12では、前記糸品質情報に基づいて、糸欠陥の判定処理や周期的な糸太さムラの検出、毛羽量の測定処理などを行う。前記周期的な糸太さムラは、例えば、デジタルの波形データである糸品質情報に対して公知のFFT(高速フーリエ変換)を施すなど、適宜の手段で周期分析することにより検出することができる。
【0101】
ところで、繊維機械において糸に発生する周期的な太さムラというのは、一定の長さ間隔で繰り返し現れる太さムラのことである。即ち、上記の「周期的」とは、(時間的な周期ではなく)糸の長さ周期をいう。ここで、一定の長さ間隔で現れる周期ムラをFFTで正確に求めようとする場合、波形データにおける糸の単位長さあたりのサンプル数が一定でなければならない。しかし、巻取ユニット31における糸の巻取速度は一定ではないから、単位長さあたりのサンプル数を一定にしようとすると、第1A/Dコンバータ45によるサンプリング周波数を糸速度に比例させて変化させる必要がある。従って、糸太さの周期ムラを正確に求めようとした場合、正確な糸速度の値を得ることが重要となる。そこで、本実施形態のクリアラ15は、正確な糸速度を検出するために以下のように構成されている。
【0102】
図6に示すように、クリアラ15は、第2A/Dコンバータ46と、第2糸太さセンサ44と、CPU47と、を備える。第2糸太さセンサ44は、第1糸太さセンサ43と同様の構成であり、第1糸太さセンサ43よりも糸走行方向上流側に配置されている。第2A/Dコンバータ46は、第1糸太さセンサ43と第2糸太さセンサ44からのアナログ信号をA/D変換する。
【0103】
CPU47は、前記第2A/Dコンバータ46のサンプリング周波数を制御している。一方、CPU47には、前記回転センサ27からの回転パルス信号が入力されている。そして、CPU47は、回転パルス信号の周波数に比例させて、第2A/Dコンバータ46のサンプリング周波数を変化させるように構成されている。即ち、巻取ドラム24の回転速度が速いほど(糸が高速で巻き取られているほど)、第2A/Dコンバータ46のサンプリング間隔が短くなるように構成されている。
【0104】
第2A/Dコンバータ46は、2つの糸太さセンサ43,44からの信号をサンプリングしたデジタル波形を、CPU47に出力する。ここで、第1糸太さセンサ43と第2糸太さセンサ44は同じ糸を測定しているので、第2A/Dコンバータ46からは、同じ波形の2つのデジタル信号が出力される。ただし、第1糸太さセンサ43は第2糸太さセンサ44よりも糸走行方向下流側に配置されているので、第1糸太さセンサ43からの信号の波形は、第2糸太さセンサ44からの信号の波形よりも遅れている。
【0105】
一方、CPU47においては、第1糸太さセンサ43からの波形が第2糸太さセンサ44からの波形に比べて時間的にどれだけ遅れているかを示す遅れ量ΔTを求める。この遅れ量ΔTは、例えば、第1糸太さセンサ43からのデジタル波形と、第2糸太さセンサ44からのデジタル波形と、のパターンマッチングを行うことにより求めることができる。なお、本実施形態では、上記のように第2A/Dコンバータ46のサンプリング周波数を糸速度に応じて変動させているので、途中で糸速度が変動しても、第2A/Dコンバータ46が出力するデジタル波形が大きく歪むことがない。従って、上記パターンマッチングを精度良く行うことができる。
【0106】
ここで、第1糸太さセンサ43と第2糸太さセンサ44との間隔Lは既知である。従って、V=L/ΔTより、糸速度Vを求めることができる。この糸速度Vは、クリアラ15の位置を通過中の糸を直接観測することにより求めた値であるから、当該クリアラ15の位置の糸速度として正確な値であるということができる。
【0107】
CPU47は、前記第1A/Dコンバータ45のサンプリング周波数を、前記糸速度Vに比例して変化させる。このように、正確な糸速度Vに応じてサンプリング周波数を変化させることにより、糸の単位長さあたりのサンプル数が一定なデジタル波形データ(糸品質情報)を得ることができる。
【0108】
そして、第1A/Dコンバータ45からの糸品質情報は、CCB12に出力される。CCB12においては上記のようにしてサンプリングした糸品質情報に対するFFT演算等の周期分析が行われ、糸太さの周期ムラが検出される。
【0109】
CCB12において上記糸品質情報を周期分析した結果を例示するスペクトログラムを、図7に示す。図7のスペクトログラムにおいて、横軸は波形データ(糸品質情報)に含まれる周期信号の周期(波長)、縦軸は前記信号の強度である。糸品質情報に太さムラが無い場合、前記スペクトログラムは滑らかな曲線となる。一方、糸品質情報に周期的な太さムラがあった場合は、図7のように、当該太さムラの周期に対応する位置にピークが現れる。
【0110】
CCB12は、ある巻取ユニット31において巻取り中のボビン23の糸に、周期的な糸太さムラが検出された場合であって、当該太さムラの強度(スペクトログラムのピークの強度)が許容範囲を超えていた場合、当該周期的な太さムラを不良とみなして、不良ボビンが検出された旨の情報を機台制御装置11に送信する。
【0111】
また前述のように、CCB12は、糸品質情報に基づいて毛羽量の測定を行うことができる。毛羽量の増大は、上記のような周期的な変化というよりも、むしろ糸の全体的な傾向として現れる。そこで、CCB12は、糸品質情報が示す糸の太さが全体的に増大したことを検出すると、毛羽量が増大してきたと判断する。
【0112】
CCB12は、ある巻取ユニット31において巻取り中のボビン23の糸に、毛羽量の増大が検出された場合であって、当該毛羽の量が所定の許容範囲を超えていた場合、当該毛羽量を不良とみなして、不良ボビンが検出された旨の情報を機台制御装置11に送信する。
【0113】
以上のように、CCB12は、糸品質情報に基づいて不良ボビンを検出することができる。即ち、糸品質情報に基づいて、メンテナンスが必要な状態のユニットが存在していることを検出することができる。
【0114】
次に、不良ボビンの糸の不良に対応してメンテナンスが必要なユニットである、要メンテナンスユニット(対応ユニット)を特定するための構成について説明する。
【0115】
ところで、不良ボビンの不良の原因は、精紡ユニット32にあるとは限らない。即ち、各精紡ユニット32は、その前工程を担当する粗紡ユニット(前工程ユニット)から粗糸ボビン(粗糸を巻き付けたボビン)の供給を受け、当該粗糸ボビンから解舒した粗糸を延伸して撚りを掛けることにより紡績糸を生成している。従って、この粗紡ユニットに何らかの不具合がある場合にも、精紡ユニット32で不良ボビンが形成され得る。このため、不良ボビンが検出された場合であっても、当該不良ボビンを形成した精紡ユニット32をメンテナンスすれば良いとは断定できず、粗紡ユニット側のメンテナンスが必要な場合も考えられる。
【0116】
そこで、まず、精紡機2の前工程を担当する粗紡機(前工程機)について簡単に説明する。図2には、粗紡機20の正面図が模式的に示されている。粗紡機20は、複数の粗紡ユニット33を備えている。なお、各粗紡ユニット33を区別する必要がある場合は、粗紡機20の図面向かって左側から順に、符号の末尾にアルファベットを付して、粗紡ユニット33a、粗紡ユニット33b、・・・のように表記するものとする。
【0117】
粗紡ユニット33は、スライバから粗糸を生成し、当該粗糸をボビンに巻き付けた粗糸ボビンを形成するためのものである。粗紡ユニット33の構成は公知であるので図示は省略するが、各粗紡ユニット33は、スライバを引き伸ばすためのドラフトローラ及びエプロンベルトを備えたドラフト部と、ドラフト部で引き伸ばされたスライバに軽く撚りをかけつつボビンに巻き取るためのフライヤと、を備えている。
【0118】
本実施形態の粗紡機20は、いわゆる一斉ドッフィングタイプに構成されている。このタイプの粗紡機は、一斉のタイミングで粗糸の巻取りを開始し、粗糸の巻付けが終了すると、一斉に玉揚げされる。また、本実施形態の粗紡機20の粗紡ユニット33は、粗紡機20の長手方向に1列に並べて配置されている。そして、玉揚げされた粗糸ボビンは、粗紡ユニット33と同じく1列に並べて配置されている各精紡ユニット32に対して、当該精紡ユニット32が並んでいる順番に対応する粗紡ユニット33から供給される。
【0119】
即ち、例えば図2において、1番左の粗紡ユニット33aからの粗糸ボビンは1番左の精紡ユニット32aへ、左から2番目の粗紡ユニット33bからの粗糸ボビンは左から2番目の精紡ユニット32bへ、・・・というように、ある精紡ユニット32と粗紡ユニット33との対応関係は不変となっている。
【0120】
また、本実施形態においては、精紡ユニット32は粗紡ユニット33よりも多く設けられている。そこで、各粗紡ユニット33は、それぞれが複数の精紡ユニット32へ粗糸ボビンを供給するようになっている。この場合、どの精紡ユニット32がどの粗紡ユニット33から粗糸ボビンの供給を受けるか、の対応パターンが、精紡機2の長手方向で反復して繰り返されるようになっている。
【0121】
例えば図2に示すように、精紡機2の長手方向で、粗紡ユニット33と同じ数ずつ精紡ユニット32をまとめて、第1ユニット群321、第2ユニット群322、・・・のように精紡ユニット群を構成する。そして、第1ユニット群321内の各精紡ユニット32に対して、当該各精紡ユニット32が並んでいる順番に対応する粗紡ユニット33から粗糸ボビンを供給する。同様に、第2ユニット群322内の各精紡ユニット32に対しても、当該各精紡ユニット32が並んでいる順番に対応する粗紡ユニット33から粗糸ボビンを供給する。このように、各粗紡ユニット33は、対応する複数の精紡ユニット32に粗糸ボビンを供給するようになっている。
【0122】
以上の点を踏まえれば、以下のようにして要メンテナンスユニットを特定することができる。
【0123】
前述のように、機台制御装置11は、各巻取ユニット31のRFリーダ5で読み取ったボビン情報に基づいて、当該巻取ユニット31が巻き取っているボビン23がどの精紡ユニット32で形成されたものかを特定することができる。従って、ある巻取ユニット31で不良ボビンが検出されると、機台制御装置11において、当該不良ボビンを形成した精紡ユニット32を特定することができる。
【0124】
そして、機台制御装置11は、ある巻取ユニット31で検出された不良ボビンを形成した精紡ユニット32を特定すると、他の精紡ユニット32でも不良ボビンが形成されていないかを調べる。
【0125】
例えば、ある粗紡ユニット33に不具合が発生し、これが原因となって不良糸が生成されてしまったとする。この場合、当該粗紡ユニット33の不具合の影響は、当該粗紡ユニット33が粗糸ボビンを供給している複数の精紡ユニット32に及ぶ。従って、ある粗紡ユニット33から粗糸ボビンが供給されている複数の精紡ユニット32のそれぞれで不良糸が形成され、しかも各精紡ユニット32で不良糸の特徴が共通している場合(例えば複数の精紡ユニット32で生成された不良糸で似たような周期の周期ムラが検出された場合)、不良糸の不良の原因は当該粗紡ユニット33にあると考えることができる。
【0126】
具体的には、図2の場合において、精紡ユニット32aと精紡ユニット32eで形成されたボビン23が、それぞれ糸太さの周期ムラがある不良糸を巻き取った不良ボビンとして検出され、しかも前記周期ムラの周期が共通している場合、2つの精紡ユニットに対する共通の粗糸ボビン供給源である粗紡ユニット33aにメンテナンスが必要であると特定できる。
【0127】
一方、ある精紡ユニット32に不具合が発生し、これが原因となって不良ボビンが形成されてしまったとする。この場合、当該精紡ユニット32における不具合は他の精紡ユニット32で形成されるボビンには影響を及ぼさない。従って、特定の特徴を有する不良糸が1つの精紡ユニット32からのみ形成されている場合、当該不良糸の不良の原因は、当該不良糸を生成した精紡ユニット32にあると考えることができる。
【0128】
具体的には、図2の場合において、精紡ユニット32aで形成されたボビンのみが不良ボビンとして検出され、精紡ユニット32eで形成されたボビンは不良ボビンとして検出されていない場合、メンテナンスが必要なのは(粗紡ユニット33aではなくて)精紡ユニット32aであると特定できる。
【0129】
以上のように、機台制御装置11は、不良ボビンのボビン情報に基づいて、要メンテナンスユニットを特定することができる。そして、機台制御装置11は、要メンテナンスユニットを特定すると、当該要メンテナンスユニットを特定する情報をCCB12に送信する。
【0130】
次に、要メンテナンスユニットの中で、不良ボビンに対応してメンテンナンスが必要な部位である要メンテナンス部位(対応部位)を特定するための構成について説明する。
【0131】
前述のように、精紡ユニット32が備えるドラフトローラ又はエプロンベルト105に破損や摩耗などの問題があると、糸の周期的な太さムラが検出される。これは、粗紡ユニット33が備えるドラフトローラ又はエプロンベルトに問題がある場合も同様である。この糸の太さムラの周期は、問題が発生しているローラの径やベルトの長さ、回転速度等、各種条件によって異なる。即ち、糸の太さムラの周期は、当該太さムラの原因となったローラ又はベルト(メンテナンスが必要な部位)に特有のものとなる。従って、太さムラの周期分析を行って糸太さムラの周期を求めれば、当該周期に基づいて要メンテナンス部位を特定することができる。
【0132】
図7の下側には、精紡ユニット32及び粗紡ユニット33が備えるドラフトローラ又はエプロンベルトに不具合があった場合、これに対応してスペクトログラムのどの位置にピークが現れるかを例示的に示している。本実施形態のCCB12には、このような、スペクトラムのピーク位置(糸太さムラの周期)と、問題が発生しているローラ又はベルトと、の対応関係が記憶されている。
【0133】
以上の構成で、CCB12は、糸品質情報から求めたスペクトログラムのピークの位置に基づいて、不具合が発生している部位を特定することができる。例えば糸品質情報から図7のようなスペクトログラムが得られた場合、精紡ユニット32のエプロンベルトに不具合があると特定することができる。このように不具合が発生している部位が、要メンテナンス部位である。
【0134】
一方、前述のように、トラベラ114が摩耗してくると、毛羽の量が増大する。そこで、CCB12は、糸品質情報に基づいて毛羽量の全体的な増大を検出した場合、前記トラベラ114を、要メンテナンス部位として特定する。
【0135】
以上のように、CCB12は、糸品質情報に基づいて要メンテナンス部位を特定している。そして、CCB12は、要メンテナンス部位を特定すると、ディスプレイ18に、メンテナンスが必要である旨と、要メンテナンス部位と、を表示するように構成されている。また前記のように、CCB12には、機台制御装置11から要メンテナンスユニットを特定する情報が入力されているので、この要メンテナンスユニットもディスプレイ18に表示する。
【0136】
精紡ワインダ1のオペレータは、前記ディスプレイ18に表示されたメンテナンス情報を確認することにより、メンテナンスが必要なユニットと、当該ユニットの中でメンテナンスが必要な部位と、を知ることができるので、速やかにメンテナンス作業を行うことができる。
【0137】
ただし、前述したように、メンテナンスが必要な箇所を事後的に通知するだけでは、(不良ボビンが形成されてしまう前に)予め適切な時期にメンテナンスを実行しておくことができない。
【0138】
そこで本実施形態の繊維機械管理システムでは、メンテナンス情報として、各ユニットが備える各消耗部品の寿命をディスプレイ18に表示することもできるように構成している。ここで消耗部品とは、具体的には、精紡ユニット32及び粗紡ユニット33が備えるエプロンベルト、及び精紡ユニット32が備えるトラベラ114である。
【0139】
精紡ユニット32のエプロンベルト105が摩耗してくると、当該精紡ユニット32が形成したボビン23を巻き取っている巻取ユニット31において、エプロンベルト105に対応した周期で糸太さムラが検出される。このとき、糸太さムラの強度(スペクトログラムのピークの高さ)は、エプロンベルト105が摩耗すればするほど強くなると考えられる。なお、この点は、粗紡ユニット33が備えるエプロンベルトが摩耗した場合についても同様である。
【0140】
そこで、CCB12は、ある巻取ユニット31において巻取り中のボビン23の糸に周期的な糸太さムラが検出された場合であって、当該太さムラの強度(スペクトログラムのピークの強度)が許容範囲内であった場合(即ち、まだ部品の寿命が尽きていない場合)、当該太さムラの周期がエプロンベルトに対応したものであるか否かを判定する。そして、前記太さムラがエプロンベルトに起因するものである場合、CCB12は、当該エプロンベルトを寿命推定対象部位(対応部位)として特定する。また、CCB12は、前記ピークの強度に基づいて、エプロンベルトの部品寿命を推定する。例えば、前記ピークの強度が前記許容範囲の境界値をわずかに下回っている場合、当該エプロンベルトの部品寿命は残り少ないと判断できる。
【0141】
また、精紡ユニット32のトラベラ114が摩耗してくると、当該精紡ユニット32が形成したボビン23を巻き取っている巻取ユニット31において、糸の毛羽量の増大が検出される。このとき、当該トラベラ114が摩耗すればするほど、検出される毛羽の量は多くなると考えられる。
【0142】
そこで、CCB12は、ある巻取ユニット31において巻取り中のボビン23の糸に、毛羽量の増大が検出された場合であって、当該毛羽の量が許容範囲内であった場合(即ち、まだトラベラの寿命が尽きていない場合)、トラベラ114を寿命推定対象部位(対応部位)として特定する。また、CCB12は、前記毛羽の量に基づいて、トラベラ114の部品寿命を推定する。例えば、前記毛羽の量が前記許容範囲の境界値をわずかに下回っている場合、当該トラベラ114の部品寿命は残り少ないと判断できる。
【0143】
また、CCB12は、寿命推定対象部位を特定すると、前記糸太さムラ又は毛羽量の増大に対応するユニット(寿命推定対象ユニット)を特定するように、機台制御装置11に信号を送る。ここで寿命推定対象ユニットとは、CCB12が寿命を推定した寿命推定対象部位を有しているユニットのことをいう。
【0144】
機台制御装置11は、糸太さムラ又は毛羽量の増大が検出されたボビン23のボビン情報に基づいて、前記寿命推定対象ユニット(対応ユニット)を特定する。この寿命推定対象ユニットは、前記の要メンテナンスユニットと同じ要領で特定することができる。機台制御装置11は、寿命推定対象ユニットを特定すると、当該寿命推定対象ユニットを特定する情報をCCB12に送信する。
【0145】
CCB12は、寿命推定対象部位と、部品寿命と、をディスプレイ18に表示する。なお、これだけではどのユニットの部品について部品寿命を推定したかが分からないので、機台制御装置11から受信した寿命推定対象ユニットもディスプレイ18に表示する。
【0146】
精紡ワインダ1のオペレータは、上記ディスプレイ18の表示を確認することにより、寿命が切れそうになっている部品はどのユニットのどの部位であるか等の判断ができるので、精紡ワインダ1のメンテナンスを最適なタイミングで行うことができる。
【0147】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0148】
上記実施形態では、メンテナンス情報をCCB12のディスプレイ18に表示する構成としたが、これに代えて、機台制御装置11のディスプレイ16にメンテナンス情報を表示するように構成しても良い。この場合、対応部位の特定と、対応部位の状態の推定を機台制御装置11側で行うようにすれば、メンテナンス情報を特定して通知する構成を機台制御装置11のみで実現することができる。これにより、糸品質監視部21としては、(メンテナンス情報を特定して通知する機能を持たない)簡単な構成のものを用いることができ、また、従来の構成の糸品質監視部にも容易に適合させることができる。
【0149】
ただし、この変形例では、機台制御装置11は、糸品質監視部21から糸品質情報を受信しなければならない。このように糸品質監視部21と機台制御装置11との間で、膨大なデータ(糸品質情報)のやり取りを行わなければならい場合、繊維機械管理システムの構成が複雑になってしまう。この点、上記実施形態のように、糸品質監視部21側のCCB12で対応部位と当該対応部位の状態を特定して通知する構成とすれば、糸品質情報を機台制御装置11との間でやり取りする必要がないので、繊維機械管理システムをシンプルに構成することができる。
【0150】
以上で説明したように、本実施形態の繊維機械管理システムは、精紡機2と、ワインダ3と、ボビン自動供給装置6と、ディスプレイ18と、を有する精紡ワインダ1の繊維機械管理システムとして構成されている。精紡機2は、複数の粗紡ユニット33を備える粗紡機20から供給される粗糸から糸を生成し、当該糸をボビン23に巻き付けて実ボビンを形成する精紡ユニット32を複数備える。ワインダ3は、実ボビンから糸を解舒してパッケージ30に巻き取る巻取ユニット31を複数備える。ボビン自動供給装置6は、実ボビンをトレー50に乗せ、当該実ボビンを精紡機2から各巻取ユニット31に供給する。また、トレー50は、当該トレー50が乗せている実ボビンを形成した精紡ユニット32を特定可能な情報をボビン情報として記憶するRFタグ60を備える。ワインダ3は、各巻取ユニット31が実ボビンから解舒している紡績糸の状態を監視して糸品質情報を取得する糸品質監視部21を備える。各巻取ユニット31は、当該巻取ユニット31に供給された実ボビンを乗せているトレー50のRFタグ60から、前記ボビン情報を読み取ることが可能なRFリーダ5を備える。また、この繊維機械管理システムは、前記糸品質情報に基づいて前記糸に所定の特徴を検出した場合、前記ボビン情報に基づいて、粗紡ユニット33又は精紡ユニット32の中から、前記特徴に対応する対応ユニットを特定している。また、この繊維機械管理システムは、前記糸品質情報に基づいて、前記対応ユニットにおいて前記特徴に対応する部位である対応部位を特定するとともに、当該対応部位の状態を推定している。そして、この繊維機械管理システムは、前記対応ユニットと、前記対応部位と、前記対応部位の状態と、をディスプレイ18によって通知可能である。
【0151】
即ち、糸に何らかの異常が検出された場合、当該異常の原因があるユニットと、当該ユニットの中で異常の原因となっている部位と、をオペレータに通知することができるので、オペレータはメンテナンスを適切に行うことができる。また、異常の原因となっている部位の状態も通知されるので、メンテナンスをどのタイミングで行うかを、オペレータが適切に判断することができる。また、実ボビンから糸を手作業で採取して分析を行うという従来技術のような手間を掛けることなく、自動的に糸の状態を分析することができるので、オペレータの負担を大幅に軽減することができる。
【0152】
また、本実施形態の繊維機械管理システムにおいて、ディスプレイ18は、消耗部品の部品寿命を、当該消耗部品の状態として表示している。
【0153】
これにより、部品寿命をオペレータに通知できるので、オペレータは当該部品を交換すべき時期を的確に把握することができる。従って、部品を交換する時期が早すぎて無駄な交換が行われてしまったり、部品を交換する時期が遅すぎて品質の悪い糸を生産してしまったりすることがないので、メンテナンスコスト及び糸品質の両面で優れている。
【0154】
また、本実施形態の繊維機械管理システムにおいて、糸の特徴が異常である場合、ディスプレイ18は、要メンテナンス部位にメンテナンスが必要である旨を表示している。
【0155】
これにより、不良糸が検知されたときに、メンテナンスが必要である旨と、メンテナンスが必要なユニット及び部位をオペレータに通知することができる。従って、オペレータが速やか且つ適切にメンテナンスをすることが可能となり、当該異常から早期に復旧することができる。
【0156】
また、本実施形態の繊維機械管理システムは、以下のように構成されている。即ち、精紡ユニット32は、糸に撚りを掛けるためのトラベラ114を備えたリング精紡ユニットである。そして、当該繊維機械管理システムは、毛羽量が所定の特徴に従って増加していることを糸の特徴として検出した場合、当該毛羽量の増加に対応する対応部位は前記トラベラ114であると特定するとともに、前記毛羽量に基づいて、前記トラベラの部品寿命又はメンテナンスの必要性を推定してディスプレイ18に表示している。
【0157】
即ち、トラベラ114が摩耗すると糸の毛羽量が増大するため、適切な時期に当該トラベラ114を交換する必要がある。この点、上記のように構成することにより、糸の実際の毛羽量に基づいてトラベラの寿命又はメンテナンスの必要性を推定できるので、トラベラの交換を適切なタイミングで行うことができる。
【0158】
また、本実施形態の繊維機械管理システムは、以下のように構成されている。即ち、精紡ユニット32及び粗紡ユニット33は、糸又は粗糸を搬送するためのドラフトローラ及びエプロンベルトを備える。そして、当該繊維機械管理システムは、周期的な太さムラがあることを糸の特徴として検出した場合、当該太さムラの周期に基づいて当該太さムラに対応する対応部位であるドラフトローラ又はエプロンベルトを特定するとともに、前記太さムラの大きさに基づいて、前記ローラ又はベルトの部品寿命又はメンテナンスの必要性を推定してディスプレイ18に表示している。
【0159】
即ち、ローラやベルトのように回転して糸を搬送する部材に不具合が発生すると、糸に周期的な太さムラが発生する。この太さムラの周期は、不具合が発生したローラ又はベルトに特有のものとなる。従って、上記のように構成することにより、ローラ又はベルトの寿命又はメンテナンスの必要性を推定できるので、ローラ又はベルトの交換又はメンテナンスを適切なタイミングで行うことができる。
【0160】
また、本実施形態の繊維機械管理システムは、以下のように構成されている。即ち、それぞれの精紡ユニット32は、複数の粗紡ユニット33のうち特定の粗紡ユニット33からのみ粗紡ボビンが供給されるように構成される。また、前記複数の粗紡ユニット33は、それぞれが複数の精紡ユニット32に対して粗紡ボビンを供給するように構成される。そして、当該繊維機械管理システムは、複数の精紡ユニット32で形成された実ボビンで共通の糸の特徴が検出された場合であって、前記複数の精紡ユニット32が共通の粗紡ユニット33から前記粗糸ボビンを供給されている場合、当該粗紡ユニット33を前記対応ユニットとして特定する。
【0161】
これにより、対応ユニットである粗紡ユニット33を確実に特定することができる。
【0162】
また、本実施形態の繊維機械管理システムは、以下のように構成されている。即ち、糸品質監視部21は、ディスプレイ18を有する。また、前記対応部位及び前記対応部位の状態は、糸品質監視部21によって特定される。
【0163】
これにより、膨大な糸品質情報を糸品質監視部の外部に送信する必要が無いので、繊維機械管理システムをシンプルに構成することができる。
【0164】
また、本実施形態の繊維機械管理システムは、以下のように変形することもできる。即ち、精紡ワインダ1は、ディスプレイ16を有する機台制御装置11を備える。前記機台制御装置11は、前記糸品質監視部21が出力した糸品質情報に基づいて、前記対応部位及び前記対応部位の状態を特定する。
【0165】
この変形例では、糸品質監視部21では対応部位及び対応部位の状態を特定する必要が無いので、従来の構成の糸品質監視部を用いることができる。
【0166】
また、本実施形態の精紡ワインダ1には、上記の繊維機械管理システムが適用されている。
【0167】
本実施形態の精紡ワインダ1は、前記の繊維機械管理システムが適用されることによりメンテナンスを適切に行うことができるので、生成されるパッケージの品質及びメンテナンスコストの面で優れている。
【0168】
以上に本発明の好適な実施の形態及び変形例について説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0169】
本発明の繊維機械管理システムが適用される精紡ワインダは、図1及び図2に示した構成に限られない。例えば、実際の精紡ワインダにおいては、精紡ユニット及び巻取ユニットの数は数十台から数百台に及ぶが、ユニットの数にかかわらず本発明の繊維機械管理システムを適用することができる。また、複数の精紡ユニットに対して単数の巻取ユニットを備える構成とすることもできる。
【0170】
上記実施形態では、部品寿命をディスプレイ18に表示する構成としたが、この部品寿命は、「当該部品があと何日使えるか」という情報であっても良いし、「当該部品の交換予定日は何月何日である」というように当該部品の交換時期を示す情報であっても良い。
【0171】
上記実施形態では、RFタグ60に錘番号及びドッフィング情報を記憶させて精紡ユニットを特定する構成であるが、この構成は事情に応じて適宜変更することができる。例えば、トレー50にユニークな識別番号を付し、その識別番号に基づいてボビン23を特定する構成とすることもできる。
【0172】
上記実施形態のクリアラ15は、間隔を空けて設けられた2つの糸太さセンサ43,44によって糸の速度を正確に求める構成としたが、これに限定されない。例えば、クリアラ15とは別に、糸の速度を測定するセンサを設けても良い。この場合、クリアラ15は糸太さセンサを1つのみ有する通常の構成とすることができる。
【0173】
上記実施形態では、糸の太さムラ等の原因を、精紡機2の1つ前の工程である粗紡機20まで遡って特定している。しかし実際には、粗紡機20の前にも、更に練条機などの他の前工程が存在する。このように粗紡機20の更に前の工程を担当する前工程機に糸太さムラの原因があった場合であっても、当該糸太さムラの周期を分析することにより、どの部位に原因があるのかを特定することができる。
【符号の説明】
【0174】
1 精紡ワインダ
2 精紡機
3 ワインダ
5 RFリーダ(読取部)
6 ボビン自動供給装置
11 機台制御装置(集中制御部)
16 ディスプレイ(通知部)
20 粗紡機(前工程機)
21 糸品質監視部
23 ボビン
31 巻取ユニット
32 精紡ユニット
33 粗紡ユニット(前工程ユニット)
50 トレー
60 RFタグ(記憶部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の前工程ユニットを備える前工程機から供給される糸原料から糸を生成し、当該糸をボビンに巻き付けて実ボビンを形成する精紡ユニットを複数備える精紡機と、
前記実ボビンから糸を解舒してパッケージに巻き取る巻取ユニットを複数備える自動ワインダと、
前記実ボビンをトレーに乗せ、当該実ボビンを前記精紡機から各巻取ユニットに供給するボビン自動供給装置と、
通知部と、
を有する精紡ワインダの繊維機械管理システムであって、
前記トレーは、当該トレーが乗せている実ボビンを形成した精紡ユニットを特定可能な情報をボビン情報として記憶する記憶部を備え、
前記自動ワインダは、前記各巻取ユニットが前記実ボビンから解舒している糸の状態を監視して糸品質情報を取得する糸品質監視部を備え、
前記各巻取ユニットは、当該巻取ユニットに供給された実ボビンを乗せているトレーの前記記憶部から、前記ボビン情報を読み取ることが可能な読取部を備え、
前記糸品質情報に基づいて前記糸に所定の特徴を検出した場合、前記ボビン情報に基づいて、前記前工程ユニット又は前記精紡ユニットの中から、前記特徴に対応する対応ユニットを特定し、
前記糸品質情報に基づいて、前記対応ユニットにおいて前記特徴に対応する部位である対応部位を特定するとともに、当該対応部位の状態を推定し、
前記対応ユニットと、前記対応部位と、前記対応部位の状態と、を前記通知部によって通知可能であることを特徴とする繊維機械管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の繊維機械管理システムであって、
前記通知部は、前記対応部位の部品寿命を、当該対応部位の状態として通知することを特徴とする繊維機械管理システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の繊維機械管理システムであって、
前記糸の特徴が異常である場合、前記通知部は、前記対応部位がメンテナンスを要する状態であることを、当該対応部位の状態として通知することを特徴とする繊維機械管理システム。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の繊維機械管理システムであって、
前記精紡ユニットは、糸に撚りを掛けるためのトラベラを備えたリング精紡ユニットであり、
毛羽量が所定の特徴に従って増加していることを前記糸の特徴として検出した場合、当該毛羽量の増加に対応する対応部位は前記トラベラであると特定するとともに、前記毛羽量に基づいて、前記トラベラの部品寿命又はメンテナンスの必要性を推定して前記通知部によって通知することを特徴とする繊維機械管理システム。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の繊維機械管理システムであって、
前記精紡ユニット及び前記前工程ユニットのうち少なくとも何れか一方は、前記糸又は前記糸原料を搬送するためのローラ及びベルトのうち少なくとも何れか一方を備え、
周期的な太さムラがあることを前記糸の特徴として検出した場合、当該太さムラの周期に基づいて当該太さムラに対応する対応部位であるローラ又はベルトを特定するとともに、前記太さムラの大きさに基づいて、前記ローラ又はベルトの部品寿命又はメンテナンスの必要性を推定して前記通知部によって通知することを特徴とする繊維機械管理システム。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載の繊維機械管理システムであって、
それぞれの前記精紡ユニットは、複数の前記前工程ユニットのうち特定の前工程ユニットからのみ前記糸原料が供給されるように構成され、
前記複数の前工程ユニットは、それぞれが複数の精紡ユニットに対して前記糸原料を供給するように構成され、
複数の精紡ユニットで形成された前記実ボビンで共通の糸の特徴が検出された場合であって、前記複数の精紡ユニットが共通の前工程ユニットから前記糸原料を供給されている場合、当該前工程ユニットを前記対応ユニットとして特定することを特徴とする繊維機械管理システム。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載の繊維機械管理システムであって、
前記糸品質監視部は前記通知部を有し、
前記対応部位及び前記対応部位の状態は、前記糸品質監視部によって特定されることを特徴とする繊維機械管理システム。
【請求項8】
請求項1から6までの何れか一項に記載の繊維機械管理システムであって、
前記精紡ワインダは、前記通知部を有する集中制御部を備え、
前記集中制御部は、前記糸品質監視部が出力した前記糸品質情報に基づいて、前記対応部位及び前記対応部位の状態を特定することを特徴とする繊維機械管理システム。
【請求項9】
請求項1から8までの何れか一項に記載の繊維機械管理システムが適用されたことを特徴とする精紡ワインダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−20836(P2011−20836A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169561(P2009−169561)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】