説明

繊維機械

【課題】 オペレータによる玉揚げ作業がドッフィングタイマの報知に従って玉揚げ時間中に行われない場合でも、品質管理データとパッケージとを対応付けることができる繊維機械の提供を目的とする。
【解決手段】 ドッフィングタイマ65によりパッケージPの満管を報知する繊維機械であって、パッケージPの回転状態を検出する回転状態検出部48と、回転状態検出部48からの検出信号に基づいて、玉揚げ作業が行われたことを判定する玉揚げ判定部61と、パッケージPの品質管理データを記憶し、玉揚げ判定部61からの玉揚げ信号に基づいて、品質管理データの記憶を完了するデータ管理部62と、を備えた繊維機械とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドッフィングタイマによりパッケージの満管を報知する繊維機械に関する。
【背景技術】
【0002】
ドッフィングタイマによりパッケージの満管を報知する繊維機械として、オペレータが人手でパッケージの玉揚げ作業を行う延伸仮撚機が知られている。延伸仮撚機は、加工部で糸条を仮撚加工した後、巻取部で糸条を巻き取ってパッケージを形成する。ドッフィングタイマは、パッケージが満管になると報知し、その報知を受けたオペレータが人手で玉揚げ作業を行う。ドッフィングタイマは、糸条の巻取量を巻取時間で測定しており、所定の巻取時間(例えば8時間)が経過するとパッケージが満管になったと判断し、ドッフィングランプを所定の玉揚げ時間(例えば30秒)点灯させてパッケージの満管を報知する。
【0003】
延伸仮撚機には、加工部と巻取部との間に、糸条の状態量を検出する検出部が設けられている。糸条の状態量は、例えば糸条の張力や誘電率等である。糸条の状態量は、糸条を巻き取って形成されるパッケージの品質に関するデータでもある。糸条の状態量に基づいて、パッケージの品質の格付け等も行われる。特許文献1には、糸条の状態量に基づいてパッケージの格付けを行い、パッケージの格をランプ等の表示器で報知する技術が開示されている。以下では、糸条の状態量、パッケージの格等のデータを、品質管理データという。
【0004】
特許文献1のように、品質管理データをオペレータにランプ等で報知するだけでなく、品質管理データとパッケージとを対応付けて記憶する技術も知られている。ここで、オペレータが手動でパッケージの玉揚げ作業を行う繊維機械において、品質管理データとパッケージとを対応付ける従来の技術について説明する。
【0005】
図6は、従来技術におけるドッフィングタイマと、オペレータによる実際の作業状況と、データ管理部と、の関係を示すタイミングチャートを示している。
【0006】
図6に示すように、ドッフィングタイマは、パッケージの巻き取りを行う所定の巻取時間が経過すると、所定の玉揚げ時間、パッケージが満管であることを報知する。例えば、n1番目の巻取時間、n1番目の玉揚げ時間、n2番目の巻取時間、n2番目の玉揚げ時間、n3番目の巻取時間、n3番目の玉揚げ時間、n4番目の巻取時間・・・を順次測定し、各玉揚げ時間においてドッフィングランプを点灯させて、パッケージの満管を報知する。
【0007】
データ管理部では、品質管理データは、ドッフィングタイマの各巻取時間に対応させて記憶されるようになっている。従って、図6に示すように、品質管理データを記憶する各データ記憶時間と、ドッフィングタイマの各巻取時間とが一致する。つまり、n1番目のデータ記憶時間は、ドッフィングタイマのn1番目の巻取時間に一致しており、n2番目のデータ記憶時間は、ドッフィングタイマのn2番目の巻取時間に一致しており、n3番目のデータ記憶時間は、ドッフィングタイマのn3番目の巻取時間に一致しており、n4番目のデータ記憶時間は、ドッフィングタイマのn4番目の巻取時間に一致している。
【0008】
これにより、n1番目のデータ記憶時間中に記憶される品質管理データは、n1番目の巻取時間中に巻き取られたパッケージの品質管理データとして対応付けられ、n2番目のデータ記憶時間中に記憶される品質管理データは、n2番目の巻取時間中に巻き取られたパッケージの品質管理データとして対応付けられ、n3番目のデータ記憶時間中に検出された品質管理データは、n3番目の巻取時間中に巻き取られたパッケージの品質管理データとして対応付けられ、n4番目のデータ記憶時間中に検出された品質管理データは、n4番目の巻取時間中に巻き取られたパッケージの品質管理データとして対応付けられる。そして、ドッフィングタイマの各玉揚げ時間にあたる記憶休止時間中は、品質管理データの記憶は行われず、その前のデータ記憶時間中に記憶された品質管理データと、次のデータ記憶時間中に記憶される品質管理データとを区切るための時間とされる。
【0009】
一方、玉揚げ作業は、ドッフィングタイマによる報知を受けたオペレータによって行われるため、玉揚げ作業は、原則として玉揚げ時間中に行われるが、玉揚げ時間中に行われず、巻取時間中にずれ込む場合もある。図6に示すように、n1番目の玉揚げ時間中には、n1番目のパッケージの玉揚げ作業が行われ、n2番目の玉揚げ時間中には、n2番目のパッケージの玉揚げ作業が行われているが、n3番目の玉揚げ時間中には、n3番目のパッケージの玉揚げ作業は行われず、n3番目のパッケージの玉揚げ作業は、n4番目の巻取時間中にずれ込んでいる。
【0010】
n1番目の巻取時間中には、n1番目のパッケージの巻き取りのみが行われ、n1番目のデータ記憶時間中には、n1番目のパッケージのみの品質管理データが記憶されているため、n1番目のパッケージについては、品質管理データとパッケージとを対応付けることができる。同様に、n2番目の巻取時間中には、n2番目のパッケージの巻き取りのみが行われ、n2番目のデータ記憶時間中には、n2番目のパッケージのみの品質管理データが記憶されているため、n2番目のパッケージについても、品質管理データとパッケージとを対応付けることができる。つまり、オペレータによる玉揚げ作業が、ドッフィングタイマによる満管の報知に従って、玉揚げ時間中に行われている限りは、従来技術でも品質管理データとパッケージとを対応付けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−118874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、オペレータが手動でパッケージの玉揚げ作業を行う繊維機械においては、ドッフィングタイマがパッケージの満管を報知しても、玉揚げ時間中に玉揚げ作業が行われない場合がある。これは、多数の繊維機械を少人数のオペレータが担当しており、複数のパッケージが同時期に満管に達した場合に、全ての玉揚げ作業を玉揚げ時間中に完了できない場合があることや、不具合の生じた繊維機械のメンテナンスのために、他の繊維機械の玉揚げ作業が遅れる場合があること等に起因する。
【0013】
図6に示すように、n3番目の玉揚げ時間中には、n3番目のパッケージの玉揚げ作業は行われず、n3番目のパッケージの玉揚げ作業は、n4番目の巻取時間中にずれ込んでいる。つまり、n4番目の巻取時間中には、n4番目のパッケージの巻き取りだけでなく、n3番目のパッケージの巻き取りも行われていることになる。
【0014】
一方、品質管理データについては、n4番目のデータ記憶時間中には、n4番目の巻取時間中に巻き取られたパッケージの品質管理データが記憶されるため、n4番目のデータ記憶時間中の品質管理データには、n3番目のパッケージとn4番目のパッケージの両方の品質管理データが混在することとなる。このように、従来技術では、オペレータによる玉揚げ作業が遅れ、ドッフィングタイマの満管の報知に従って玉揚げ時間中に玉揚げ作業が行われないと、品質管理データとパッケージとを対応付けることができないという問題がある。
【0015】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであり、オペレータによる玉揚げ作業がドッフィングタイマの報知に従って玉揚げ時間中に行われない場合でも、品質管理データとパッケージとを対応付けることができる繊維機械の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0017】
即ち、第1の発明は、ドッフィングタイマによりパッケージの満管を報知する繊維機械であって、
パッケージの回転状態を検出する回転状態検出部と、
前記回転状態検出部からの検出信号に基づいて、玉揚げ作業が行われたことを判定する玉揚げ判定部と、
前記パッケージの品質管理データを記憶し、前記玉揚げ判定部からの玉揚げ信号に基づいて、前記品質管理データの記憶を完了するデータ管理部と、
を備えた繊維機械とする。
【0018】
第2の発明は、第1の発明において、前記回転状態検出部は、ボビンホルダの回転状態を検出することにより、パッケージの回転状態を検出する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0020】
第1の発明によれば、パッケージの回転状態を検出することにより、実際に玉揚げ作業を行った時期を確実に判定できる。また、玉揚げ作業が行われたと判定されたときに、そのパッケージの品質管理データの記憶を完了するため、オペレータによる玉揚げ作業がドッフィングタイマの報知に従って玉揚げ時間中に行われない場合でも、パッケージと品質管理データとを確実に対応付けることができる。
【0021】
第2の発明によれば、ボビンホルダの回転状態を検出することにより、パッケージの回転状態を検出するため、簡易な構成で、確実にパッケージの回転状態を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】延伸仮撚機11の側面図。
【図2】巻取部13のクレードル41付近の平面図。
【図3】延伸仮撚機11のシステム図。
【図4】パッケージPの品質管理データを記憶する流れを示す図。
【図5】延伸仮撚機11におけるドッフィングタイマ65と、オペレータによる実際の作業状況と、玉揚げ判定部61と、データ管理部62と、の関係を示すタイミングチャート。
【図6】従来技術におけるドッフィングタイマと、オペレータによる実際の作業状況と、データ管理部と、の関係を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の第1の実施の形態に係る繊維機械を図面に沿って説明する。図1は、繊維機械としての延伸仮撚機11の側面図である。延伸仮撚機11の概略を説明すると、まず、給糸パッケージ14を複数装着したクリールスタンド12が設けられ、クリールスタンド12の側方には、給糸パッケージ14からクリールスタンド12の下方を走行して供給される糸条Yを切断するためのヤーンカッタ21が配設される。ヤーンカッタ21の上方には、糸条Yを上方に向けて走行させる第1フィードローラ31が配設され、第1フィードローラ31の上方には、糸条Yを加熱する1次ヒータ22が設けられる。1次ヒータ22の上側出口付近から斜め下方に向けて、1次ヒータ22で加熱された糸条Yを案内しつつ冷却するバルーン制御プレート24が設けられる。
【0024】
バルーン制御プレート24の出口付近には、糸条Yに撚りを与えるニップツイスタ25が配設され、ニップツイスタ25の下流側には、糸条Yの張力を測定するテンションセンサ26が配設される。ニップツイスタ25の下方には、糸条Yを下方に向けて走行させる第2フィードローラ32、第2フィードローラ32の下方には、糸を再度加熱する2次ヒータ23が下向きに設けられる。2次ヒータ23の下方には、糸条Yを側方に向けて走行させる第3フィードローラ33と、糸条Yの有無を検知するヤーンフィーラ34が設けられる。そして、ヤーンフィーラ34の上方には、走行する糸条Yを複数のパッケージPとして巻き取る巻取部13が設けられている。
【0025】
尚、テンションセンサ26は、ニップツイスタ25の下流側に配置されているので、品質管理データとして撚加工後の糸条Yの張力を検出するが、これ以外の位置にテンションセンサ26を配置してもよい。例えば、第1フィードローラ31の前後に配置して加熱前の糸条Yの張力を検出し、ニップツイスタ25の上流に配置して撚加工前の糸条Yの張力を検出してもよい。また、品質管理データとして糸条Yの誘電率を検出するセンサを第3フィードローラ33とヤーンフィーラ34の間に配置してもよい。
【0026】
図2は、巻取部13のクレードル41付近の平面図であり、クレードル41、クレードルハンドル45、駆動ローラ46、ボビン47、パッケージP、を示している。クレードル41は、ボビン47又はパッケージPを駆動ローラ46に対して適切な接圧で接触させ、摩擦によりボビン47及びパッケージPを回転させて糸条Yを巻き取るものである。クレードル41は、ボビン47の両端部を回転自在に保持する、第1ボビンホルダ43と第2ボビンホルダ44とを備えている。ボビン47は、両端部の径が等しい筒状のチーズである。
【0027】
クレードル41は、第1ボビンホルダ43が装着される第1アーム411と、第2ボビンホルダ44が装着される第2アーム412と、第1アーム411及び第2アーム412の基端同士を連結する第3アーム(図示せず)とを備えている。第3アームは駆動ローラ46の回転軸と平行な支軸42に対して回転自在に取り付けられている(図1参照。)。このため、クレードル41は、パッケージPの巻径が大きくなると、これに従って支軸42を中心に回転するように移動して、パッケージPと駆動ローラ46とが所定の圧力で接触した状態を保つことができる。
【0028】
第1ボビンホルダ43は、第1ボビンホルダ主体431、第1回転部432を備えている。第1ボビンホルダ主体431は、第1アーム411の先端側に固定されている。第1回転部432は第1ボビンホルダ主体431に対して回転自在に取り付けられている。第2ボビンホルダ44は、第1ボビンホルダ43に対向するように、第2アーム412に取り付けられており、第2ボビンホルダ主体441、摺動部442、第2回転部443を備えている。第2ボビンホルダ主体441は、第2アーム412の先端に固定されている。摺動部442は、第2ボビンホルダ主体441に対して摺動自在に取り付けられており、第2ボビンホルダ主体441に内蔵された弾性部材(図示せず)により、第2ボビンホルダ主体441に対して進出する方向、すなわち、第1ボビンホルダ43に接近する方向に付勢されている。また、第2回転部443は、摺動部442に対して回転自在に取り付けられている。第1回転部432及び第2回転部443には、ボビン47の両端部の開口部に差し込まれる円錐台形状の突起が形成されており、この突起がボビン47の開口部に差し込まれて両方から挟持されることで、ボビン47は第1ボビンホルダ43と第2ボビンホルダ44の間に保持される。
【0029】
第1アーム411と第1回転部432の間には、第1回転部432の回転状態を検出する、回転状態検出部としての回転センサー48が設けられている。第1回転部432の回転状態を検出することで、パッケージPの回転状態を検出することができる。第1アーム411の先端部には、磁束の変化を検出する磁気センサー481が取り付けられ、第1回転部432には、磁気センサー481に対向する位置に永久磁石482が取り付けられている。永久磁石482は、第1回転部432が回転することにより、回転速度に比例したパルス数の磁束の変化を磁気センサー481に与え、磁気センサー481は、磁束の変化により、回転速度に比例したパルス数の出力電圧を発生する。尚、回転センサー48は磁気を用いたものに限定されず、種々の公知の回転センサーを用いることができる。
【0030】
また、第2ボビンホルダ44には、クレードル41を上昇させて、パッケージPが駆動ローラ46から離間すると作動する制動部が設けられている(図示せず)。制動部が作動すると、第2回転部443の回転が制動されて停止し、これに伴って、パッケージP及び第1回転部432の回転も停止する。
【0031】
クレードルハンドル45は、第2アーム412及び第2ボビンホルダ44に取り付けられている。クレードルハンドル45は、基端側の主軸部451と先端側のハンドル部452とを備えている。主軸部451の基端側は、第2アーム412に揺動自在に取り付けられており、先端側が、第2ボビンホルダ44の摺動部442に取り付けられている。ハンドル部452は、満管のパッケージPの外周よりも突出する長さである。クレードルハンドル45を上方に持ち上げて、クレードル41及びパッケージPを支軸42回りに回転させることで、パッケージPが駆動ローラ46から離間した状態となる。
【0032】
また、パッケージPの回転を停止させた状態で、クレードルハンドル45のハンドル部452を操作して、ボビン47の軸方向外方に移動させると、クレードルハンドル45が第2アーム412上の回転軸を中心に揺動し、これに伴って第2ボビンホルダ44の摺動部442が第2ボビンホルダ主体441側に後退して、第2係合部が第1ボビンホルダ43から離間する方向に移動する(開状態)。この開状態では、第1ボビンホルダ43及び第2ボビンホルダ44によるボビン47の保持が解除されるため、満管となったパッケージP等を巻取部13から排出できる。新たなボビン47をセットして、ハンドル部452を操作して、ボビン47の軸方向内方に移動させると、第2ボビンホルダ44の摺動部442が第2ボビンホルダ主体441側から進出して、第2係合部が第1ボビンホルダ43に接近する方向に移動する(閉状態)。この閉状態では、第1ボビンホルダ43及び第2ボビンホルダ44がボビン47を保持するため、新たなボビン47をクレードル41にセットすることができる。
【0033】
図3は、延伸仮撚機11のシステム図である。延伸仮撚機11の適宜な複数錘(スパン)を管理するスパンコントローラ52が複数設けられ、これらのスパンコントローラ52は通信ライン53を介して接続されている。また、この通信ライン53には、複数のスパンコントローラ52を統括するホストコンピュータ51が接続されている。各スパンコントローラ52は同等であるので、1つのスパンコントローラ52について説明する。
【0034】
スパンコントローラ52には、ドッフィングランプ651、テンションセンサ26、回転センサー48がそれぞれ複数(1錘に1つ)接続されている。ドッフィングランプ651は、オペレータに対して満管を報知する表示器である。ドッフィングランプ651は、図1に示されるように、上部ガイドレール35に上下段の3錘分が配置されている。
【0035】
また、スパンコントローラ52は、玉揚げ判定部61、データ管理部62、下位通信部63、上位通信部64、ドッフィングタイマ65、ドッフィングランプ651の点灯回路652、を備えている。玉揚げ判定部61は、回転センサー48からの回転信号N(r)に基づいて、オペレータによるパッケージPの玉揚げ作業が行われたことを判定するとともに、玉揚げ信号を出力する。データ管理部62は、張力信号等に基づいてパッケージPの品質管理データを作成、記憶し、玉揚げ判定部61からの玉揚げ信号に基づいて、品質管理データの作成、記憶を完了する。下位通信部63は、各錘のテンションセンサ26が検出した張力の瞬時値又は波形からなる張力信号、及び、各錘の回転センサー48からの回転信号N(r)を収集する。上位通信部64は、記憶した品質管理データ等を通信ライン53を介してホストコンピュータ51に送信する。
【0036】
玉揚げ判定部61による判定手段を詳しく説明する。回転センサー48からの回転信号N(r)は、パッケージPの回転速度に比例して変動するため、玉揚げ判定部61は、回転信号N(r)の変動に基づいて、パッケージPが回転中、すなわち、パッケージPが巻取中であることと、パッケージPの停止、すなわち、オペレータにより玉揚げ作業が行われたことを判定する。玉揚げ判定部61には、パッケージPが停止したと判断するための判断基準(閾値N(R))が設定されており、閾値N(R)は、例えば、パッケージPが完全に停止した状態や、停止に近い状態に対応させるものする。回転センサー48からの回転信号N(r)が閾値N(R)を下回る状態となったとき、玉揚げ判定部61は、オペレータによるパッケージPの玉揚げ作業が行われたことを判定する。尚、玉揚げ作業時には、オペレータがクレードルハンドル45を持ち上げるため、制動部が作動して、パッケージの回転数が急速に減少する。このため、閾値として回転信号の減少率を用いてもよい。
【0037】
次に、パッケージPの品質管理データを記憶する流れについて、図4に沿って説明する。まず、パッケージPの巻き取りは、オペレータがスイッチを操作して、巻取部13にパッケージPの巻き取り開始を指令することで開始する。パッケージPの巻き取り開始に伴い、データ管理部62は、新たなパッケージPについての品質管理データの作成と記憶を開始する(ステップS11)。
【0038】
玉揚げ判定部61には、回転センサからの回転信号N(r)が入力される(ステップS12)。玉揚げ判定部61は、入力される回転信号N(r)と予め設定されている閾値N(R)を比較し(ステップS13)、回転信号N(r)が閾値N(R)より上回っている場合(ステップS14においてNo)は、パッケージPは巻取中であると判定され(ステップS15)、ステップ11からステップ14が繰り返される。
【0039】
パッケージPに巻き取られる糸条Yが増加するとパッケージPの径が徐々に増加し、これに伴って回転センサー48からの回転信号N(r)が変動する。スパンコントローラ52のドッフィングタイマ65では、パッケージPに巻き取られる糸量を巻取時間で測定しており、巻取時間が予め設定した玉揚げ時間に到達すると、ドッフィングタイマ65はドッフィングランプ651を点灯させて、パッケージPが満管に達したことをオペレータに報知する。
【0040】
オペレータは、ドッフィングタイマ65からの報知を受けた後、玉揚げ作業を、原則として玉揚げ時間中に行う。しかしながら、玉揚げ作業が玉揚げ時間中に行われず、巻取時間中にずれ込む場合もある。仮に、玉揚げ作業が玉揚げ時間中に行われず、巻取時間中にずれ込んだ場合でも、そのパッケージPについての品質管理データの作成と記憶は続行される。
【0041】
そして、玉揚げ作業時には、オペレータは、クレードルハンドル45を持ち上げてパッケージPを駆動ローラ46から離間した状態にする。すると、制動部が作動してパッケージPの回転が急速に減少して停止する。玉揚げ判定部61は、入力される回転信号N(r)と予め設定されている閾値N(R)を比較し(ステップS13)、回転信号N(r)が閾値N(R)を下回っている場合(ステップS14においてYes)は、パッケージPの巻き取りは終了して、現在は玉揚げ作業中であると判定し(ステップS16)、玉揚げ判定部61は、データ管理部62に玉揚げ信号を入力する(ステップS17)。データ管理部62は、玉揚げ判定部61から玉揚げ信号が入力されると、品質管理データの作成と記憶を完了する(ステップS18)。
【0042】
尚、オペレータによる玉揚げ作業により、満管となったパッケージPが巻取部13から排出され、巻取部13に新たなボビン47がセットされて次のパッケージPの巻き取りに備えられる。玉揚げ作業が終了すると、オペレータがスイッチを操作して巻取部13にパッケージPの巻き取り開始を指令して、新たなパッケージPの巻き取りが開始される。
【0043】
また、玉揚げ判定部61でパッケージPの玉揚げ作業が行われたと判定され、玉揚げ判定部61からデータ管理部62に玉揚げ信号が入力されたときに、パッケージPの格付けを行ってもよい。パッケージPの格付けは、張力データ等に基づいて総合判断して行う。例えば、巻き始めから巻き終わりまで、良好かつ均一な糸品質であったような場合には、パッケージPは上質のものとなるから高い格とする。糸品質が少し又は激しく変動した場合、パッケージPはそれに応じて質が下がるので、並又は低い格とする。例えば、張力が上許容値を上回った回数、下許容値を下回った回数、上回った時間、下回った時間の4つの要素に基づいてパッケージPの格付けを行う。
【0044】
図5は、延伸仮撚機11におけるドッフィングタイマ65と、オペレータによる実際の作業状況と、玉揚げ判定部61と、データ管理部62と、のタイミングチャートを示している。
【0045】
図5に示すように、ドッフィングタイマ65は、パッケージPの巻き取りを行う所定の巻取時間が経過すると、所定の玉揚げ時間、パッケージPが満管であることを報知する。例えば、N1番目の巻取時間、N1番目の玉揚げ時間、N2番目の巻取時間、N2番目の玉揚げ時間、N3番目の巻取時間、N3番目の玉揚げ時間、N4番目の巻取時間・・・を順次測定し、各玉揚げ時間においてドッフィングランプ651を点灯させて、パッケージPの満管を報知する。
【0046】
玉揚げ作業は、ドッフィングタイマ65による報知を受けたオペレータによって行われるため、玉揚げ作業は、原則として玉揚げ時間中に行われるが、玉揚げ時間中に行われず、巻取時間中にずれ込む場合もある。図5に示すように、N1番目の玉揚げ時間中には、N1番目のパッケージPの玉揚げ作業が行われ、N2番目の玉揚げ時間中には、N2番目のパッケージPの玉揚げ作業が行われているが、N3番目の玉揚げ時間中には、N3番目のパッケージPの玉揚げ作業は行われず、N3番目のパッケージPの玉揚げ作業は、N4番目の巻取時間中にずれ込んでいる。
【0047】
玉揚げ判定部61では、入力される回転信号N(r)と予め設定されている閾値N(R)を比較し、回転信号N(r)が閾値N(R)を上回って場合は、ドッフィングタイマ65がパッケージPの満管を報知しても、これに関わらず、パッケージPは巻取中であると判定する。そして、回転信号N(r)が閾値N(R)を下回った場合、ドッフィングタイマが巻取時間中であっても、オペレータによる玉揚げ作業中であることを判定する。ドッフィングタイマのN1番目の玉揚げ時間、及び、N2番目の玉揚げ時間においては、オペレータによる玉揚げ作業が行われるため、玉揚げ判定部61においても、N1番目の玉揚げ、N2番目の玉揚げが判定される。一方、ドッフィングタイマ65のN3番目の玉揚げ時間においては、オペレータによるN3番目の玉揚げが行われず、ドッフィングタイマ65のN4番目の巻取時間中にずれ込んだため、玉揚げ判定部61においても、N3番目の玉揚げは、N4番目の巻取時間中に判定される。
【0048】
データ管理部62では、品質管理データは、ドッフィングタイマ65の巻取時間中であると、玉揚げ時間中であるとに関らず、玉揚げ判定部61からの玉揚信号が入力されるまで、品質管理データの記憶を続行し、玉揚げ信号が入力されると、品質管理データの記憶を完了する。従って、図5に示すように、品質管理データを記憶する各データ記憶時間と、オペレータによる実際の作業状況、及び玉揚げ判定部61の各巻取時間とが一致する。つまり、N1番目のデータ記憶時間は、玉揚げ判定部61及び実際の作業状況のN1番目の巻取時間と一致しており、N2番目のデータ記憶時間は、玉揚げ判定部61及び実際の作業状況のN2番目の巻取時間に一致しており、N3番目のデータ記憶時間は、玉揚げ判定部61及び実際の作業状況のN3番目の巻取時間に一致しており、N4番目のデータ記憶時間は、玉揚げ判定部61及び実際の作業状況のN4番目の巻取時間に一致している。
【0049】
これにより、N1番目のデータ記憶時間中に記憶される品質管理データは、N1番目のパッケージPと対応付けられ、N2番目のデータ記憶時間中に記憶される品質管理データは、N2番目のパッケージPと対応付けられ、N3番目のデータ記憶時間中に検出された品質管理データは、N3番目のパッケージPと対応付けられ、N4番目のデータ記憶時間中に検出された品質管理データは、N4番目のパッケージPと対応付けられる。そして、玉揚げ判定部61の各玉揚げ時間にあたる記憶休止時間中は、品質管理データの記憶は行われず、その前のデータ記憶時間中に記憶された品質管理データと、次のデータ記憶時間中に記憶される品質管理データとを区切るための時間とされる。
【0050】
以上説明した本発明の第1の実施の形態によれば、パッケージPの回転状態を検出することにより、実際に玉揚げ作業を行った時期を確実に判定できる。また、玉揚げ作業が行われたと判定されたときに、そのパッケージPの品質管理データの記憶を完了するため、オペレータによる玉揚げ作業がドッフィングタイマ65の報知に従って玉揚げ時間中に行われない場合でも、パッケージPと品質管理データとを確実に対応付けることができる。
【0051】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。例えば、パッケージPの巻き取りが開始されると、これに伴って、回転信号N(r)が増加するため、この回転信号N(r)の増加に基づいて、パッケージPの巻き取りが開始されたことを判定してもよい。
【0052】
また、パッケージPの巻き取りの開始及び終了日時等のパッケージPの識別データを作成し、これをパッケージPの品質管理データとともにデータ管理部62で記憶するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0053】
11 延伸仮撚機
12 クリールスタンド
13 巻取部
14 給糸パッケージ
21 ヤーンカッタ
22 1次ヒータ
23 2次ヒータ
24 バルーン制御プレート
25 ニップツイスタ
26 テンションセンサ
31 第1フィードローラ
32 第2フィードローラ
33 第3フィードローラ
34 ヤーンフィーラ
35 上部ガイドレール
41 クレードル
411 第1アーム
412 第2アーム
42 支軸
43 第1ボビンホルダ
431 第1ボビンホルダ主体
432 第1回転部
44 第2ボビンホルダ
441 第2ボビンホルダ主体
442 摺動部
443 第2回転部
45 クレードルハンドル
451 主軸部
452 ハンドル部
46 駆動ローラ
47 ボビン
48 回転センサー
481 磁気センサー
482 永久磁石
51 ホストコンピュータ
52 スパンコントローラ
53 通信ライン
61 玉揚げ判定部
62 データ管理部
63 下位通信部
64 上位通信部
65 ドッフィングタイマ
651 ドッフィングランプ
652 点灯回路
P パッケージ
Y 糸条

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドッフィングタイマによりパッケージの満管を報知する繊維機械であって、
パッケージの回転状態を検出する回転状態検出部と、
前記回転状態検出部からの検出信号に基づいて、玉揚げ作業が行われたことを判定する玉揚げ判定部と、
前記パッケージの品質管理データを記憶し、前記玉揚げ判定部からの玉揚げ信号に基づいて、前記品質管理データの記憶を完了するデータ管理部と、
を備えた繊維機械。
【請求項2】
前記回転状態検出部は、ボビンホルダの回転状態を検出することにより、パッケージの回転状態を検出することを特徴とする請求項1に記載の繊維機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−180000(P2010−180000A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23923(P2009−23923)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(502455511)TMTマシナリー株式会社 (91)
【Fターム(参考)】