説明

缶用コーティング組成物とびコーティング方法

酸官能性もしくは酸無水物官能性ポリマーとアミン(好ましくは第三アミン)との塩の水性分散液とエチレン性不飽和モノマー成分とを混合することによって形成されるエマルジョン重合ラテックスポリマーを含んだ食品用もしくは飲料用缶のためのコーティング組成物。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本特許出願は、2004年10月20日付け出願の米国仮特許出願第60/620,639号(該出願の全開示内容を参照により本明細書に含める)に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
包装用品(たとえば、食品もしくは飲料用缶)の表面を被覆するのに多種多様なコーティングが使用されている。たとえば、金属缶は、“コイル・コーティング”操作や“シートコーティング”操作を使用して被覆されることがある。すなわち、適切な支持体(たとえば、スチール金属やアルミニウム金属)の平面コイルもしくは平面シートを適切な組成物で被覆し、硬化(たとえばキュアー)させる。次いで被覆された支持体を、缶エンドや缶ボディに造り上げる。これとは別に、二次成形品(the formed article)に液体コーティング組成物を塗布し(たとえば、噴霧、浸漬、およびロール塗り等によって)、次いで硬化(たとえばキャアー)させることもできる。
【0003】
包装用コーティングは、支持体に高速塗布できるのが好ましく、そして硬化させたときに、こうした要求の厳しい最終用途において果たすのに必要な特性をもたらすのが好ましい。たとえばコーティングは、食品と接触しても安全でなければならず、支持体に対して優れた接着力を有していなければならず、そして過酷な環境に曝露されても長期間にわたって分解されにくいものでなければならない。
【0004】
現在の包装用コーティングの多くは、遊離状態(mobile)もしくは結合状態(bound)のビスフェノールA(“BPA”)、または芳香族グリシジルエーテル化合物、またはPVC化合物を含有する。これまでに得られている科学的な証拠をバランスさせて考えると、存在しているコーティングから放出されることがあるこれら化合物のごくわずかな量が、ヒトに対していかなる健康上のリスクも引き起こしてはいないが、それにもかかわらず、これらの化合物は、一部の人たちによってヒトの健康に対して有害の可能性があると認識されている。したがって、食品接触コーティングからこれらの化合物を取り除くことが強く求められている。
【0005】
上記の説明から、当業界において必要とされていることは、抽出可能な量のこのような化合物を含有しない組成物で被覆された包装容器(たとえば、食品用もしくは飲料用)である、ということがわかる。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、乳化重合ラテックスポリマーを含んだ、食品用もしくは飲料用のためのコーティング組成物を提供する。このポリマーは、酸官能性もしくは酸無水物官能性ポリマー(すなわち、酸基もしくは酸無水物基を含有するポリマー)とアミン(好ましくは第三アミン)との塩の水性分散液と、エチレン性不飽和モノマー成分とを混合し、次いで前記モノマー成分を重合させることによって作製される。
【0007】
エチレン性不飽和モノマー成分は、モノマーの混合物であるのが好ましい。混合物中のモノマーの少なくとも1種がα,β-不飽和モノマーであるのが好ましく、そして少なくとも1種のモノマーがオキシラン官能性モノマーであるのが好ましい。混合物中のモノマーの少なくとも1種がオキシラン基含有α,β-エチレン性不飽和モノマーであるのがさらに好ましい。
【0008】
1つの実施態様においては、食品用もしくは飲料用缶を製造する方法が提供される。本発明の方法は、酸官能性もしくは酸無水物官能性ポリマーとアミンとの塩を、水を含んだキャリヤー(および必要に応じて有機溶剤)中にて形成させて、水性分散液を作製する工程;エチレン性不飽和モノマー成分と水性分散液とを混合する工程;および、水性分散液の存在下にてエチレン性不飽和モノマー成分を重合させて、乳化重合ラテックスポリマーを形成させる工程;を含む、乳化重合ラテックスポリマーを含んだ組成物を作製すること;ならびに、金属支持体を食品用もしくは飲料用缶またはその一部に造り上げる前に、あるいは造り上げた後に、金属支持体に乳化重合ラテックスポリマーを含んだ組成物を塗布すること;を含む。
【0009】
他の実施態様においては、本発明の方法は、酸官能性もしくは酸無水物官能性ポリマーと第三アミンとの塩を、水を含んだキャリヤー(および必要に応じて有機溶剤)中にて形成させて、水性分散液を作製する工程;モノマー成分の重量を基準として0.1重量%〜30重量%のオキシラン官能基含有α,β-エチレン性不飽和モノマーと水性分散液とを混合する工程;および、水性分散液の存在下にてエチレン性不飽和モノマー成分を重合させて、乳化重合ラテックスポリマーを形成させる工程;を含む、乳化重合ラテックスポリマーを含んだ組成物を作製すること;ならびに、金属支持体を食品用もしくは飲料用缶またはその一部に造り上げる前に、あるいは造り上げた後に、金属支持体に乳化重合ラテックスポリマーを含んだ組成物を塗布すること;を含む。
【0010】
特定の実施態様においては、組成物が水性分散液中に有機溶剤を含んでよい。特定の実施態様においては、本発明の方法は、水性分散液から有機溶剤(存在する場合)の少なくとも一部を除去することを含んでよい。
【0011】
特定の実施態様においては、金属支持体に組成物を塗布することは、平面コイルもしくは平面シートの形態の金属支持体に組成物を塗布すること;乳化重合ラテックスポリマーを硬化させること;および金属支持体を食品用もしくは飲料用缶またはその一部に造り上げること;を含む。特定の実施態様においては、金属支持体に組成物を塗布することが、金属支持体を缶またはその一部に造り上げた後に、金属支持体に組成物を塗布することを含む。
【0012】
特定の実施態様においては、金属支持体を缶またはその一部に造り上げることが、金属支持体を缶エンドまたは缶ボディに造り上げることを含む。特定の実施態様においては、缶は、ツーピース延伸食品用缶、スリーピース食品用缶、食品用缶エンド、延伸鉄食品用もしくは飲料用缶、飲料用缶エンド、および類似物である。金属支持体は、スチールであってもよいし、あるいはアルミニウムであってもよい。
【0013】
特定の実施態様においては、エチレン性不飽和モノマー成分と水性分散液とを混合することが、エチレン性不飽和モノマー成分を水性分散液に加えることを含む。エチレン性不飽和モノマー成分を水性分散液に徐々に加えるのが好ましい。
【0014】
特定の実施態様においては、エチレン性不飽和モノマー成分は、モノマーの混合物を含む。モノマーの混合物は、少なくとも1種のオキシラン官能基含有モノマーを含むのが好ましく、少なくとも1種のオキシラン官能基含有α,β-エチレン性不飽和モノマーを含むのがさらに好ましい。特定の実施態様においては、オキシラン官能基含有モノマーは、エチレン性不飽和モノマー成分中に、モノマー混合物の重量を基準として少なくとも0.1重量%の量にて存在する。特定の実施態様においては、オキシラン官能基含有モノマーは、エチレン性不飽和モノマー成分中に、モノマー混合物の重量を基準として30重量%以下の量にて存在する。
【0015】
特定の実施態様においては、本発明の方法は、乳化重合ラテックスポリマーと、1種以上の架橋剤、充填剤、触媒、染料、顔料、トナー、エキステンダー、滑剤、防錆剤、流れ調整剤、チキソトロープ剤、分散剤、酸化防止剤、接着促進剤、光安定剤、有機溶剤、界面活性剤、またはこれらの組み合わせ物とを、コーティング組成物中にて混合することをさらに含む。
【0016】
特定の実施態様においては、酸官能性ポリマーが1500〜50,000の数平均分子量を有する。
特定の実施態様においては、組成物は、遊離BPA(mobile BPA)と芳香族グリシジルエーテル化合物を実質的に含有しない。組成物は、結合BPA(bound BPA)と芳香族グリシジルエーテル化合物を実質的に含有しないのが好ましい。
【0017】
特定の実施態様においては、酸官能性もしくは酸無水物官能性ポリマーが、酸官能性もしくは酸無水物官能性アクリルポリマー、酸官能性もしくは酸無水物官能性アルキド樹脂、酸官能性もしくは酸無水物官能性ポリエステル樹脂、酸官能性もしくは酸無水物官能性ポリウレタン、またはこれらの組み合わせ物を含む。酸官能性もしくは酸無水物官能性ポリマーが、酸官能性アクリルポリマーを含むのが好ましい。
【0018】
特定の実施態様においては、アミンが第三アミンである。第三アミンは、トリメチルアミン、ジメチルエタノールアミン(ジメチルアミノエタノールとしても知られている)、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチルメチルエタノールアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルプロピルアミン、ジメチル3-ヒドロキシ-1-プロピルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジメチル2-ヒドロキシ-1-プロピルアミン、ジエチルメチルアミン、ジメチル1-ヒドロキシ-2-プロピルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N-メチルモルホリン、およびこれらの混合物からなる群から選択されるのが好ましい。酸官能性もしくは酸無水物官能性ポリマーを、水中にてアミンで少なくとも25%中和するのが好ましい。
【0019】
特定の実施態様においては、エチレン性不飽和モノマー成分を、水性分散液の存在下にて、水溶性のラジカル開始剤を使用して0℃〜100℃の温度で重合させる。特定の実施態様においては、ラジカル開始剤は過酸化物開始剤を含む。ラジカル開始剤は、過酸化水素とベンゾインを含むのが好ましい。これとは別に、特定の実施態様においては、ラジカル開始剤はレドックス開始剤系を含む。
【0020】
本発明はさらに、本明細書に記載の方法によって製造される食品用缶および飲料用缶を提供する。
1つの実施態様においては、本発明は、金属支持体を含んだボディ部分もしくはエンド部分;ならびに、その上に配置されたコーティング組成物、このとき前記コーティング組成物が乳化重合ラテックスポリマーを含み、前記乳化重合ラテックスポリマーが、酸官能性もしくは酸無水物官能性ポリマーとアミンとの塩、エチレン性不飽和モノマー成分、および水から製造される;を含んだ食品用もしくは飲料用缶を提供する。
【0021】
さらに他の実施態様においては、本発明は、食品用もしくは飲料用缶をコーティングする際に使用するための組成物を提供し、このとき前記組成物が乳化重合ラテックスポリマーを含み、前記乳化重合ラテックスポリマーが、酸官能性もしくは酸無水物官能性ポリマーとアミンとの塩、エチレン性不飽和モノマー成分、および水から製造される。
【0022】
(用語の意味)
特定の遊離化合物(mobile compound)に関して“実質的に含有しない(substantially free)”とは、本発明の組成物が、該遊離化合物を1000パーツ・パー・ミリオン(ppm)未満の量にて含有するということを意味している。特定の遊離化合物に関して“本質的に含有しない(essentially free)”とは、本発明の組成物が、該遊離化合物を100パーツ・パー・ミリオン(ppm)未満の量にて含有するということを意味している。特定の遊離化合物に関して“本質的に完全に含有しない(essentially completely free)”とは、本発明の組成物が、該遊離化合物を5パーツ・パー・ミリオン(ppm)未満の量にて含有するということを意味している。特定の遊離化合物に関して“完全に含有しない(completely free)”とは、本発明の組成物が、該遊離化合物を20パーツ・パー・ビリオン(ppb)未満の量にて含有するということを意味している。
【0023】
“遊離状態の(mobile)”とは、最終用途に応じて、幾つかの規定されたセットの条件に関して、コーティング(一般には、1mg/cm2というおおよそのフィルム重量)を試験媒体に曝露したときに、硬化したコーティングから該化合物を抽出することができる、ということを意味している。こうした試験条件の1つの例は、硬化コーティングを10重量%エタノール溶液に121℃にて2時間曝露し、次いで前記溶液に49℃にて10日間曝露するというものである。
【0024】
上記のフレーズが“遊離状態の(mobile)”という用語なしで使用されている場合(たとえば“XYZ化合物を実質的に含有しない”)、該化合物が、コーティング中において遊離状態であろうと、あるいはコーティングの成分と結合した状態であろうと、本発明の組成物は、該化合物を上記の量未満の量にて含有する。
【0025】
本明細書で使用している“有機基”とは、脂肪族基、環式基、または脂肪族基と環式基との組み合わせ(たとえば、アルカリール基やアラルキル基)として分類される炭化水素基〔必要に応じて、炭素と水素以外の元素(酸素、窒素、イオウ、およびケイ素など)を有する〕を意味している。“脂肪族基”とは、飽和もしくは不飽和の直鎖炭化水素基または分岐鎖炭化水素基を意味している。この用語は、たとえば、アルキル基、アルケニル基、およびアルキニル基を包含するよう使用されている。“アルキル基”とは、たとえば、メチル、エチル、イソプロピル、t-ブチル、ヘプチル、ドデシル、オクタデシル、アミル、および2-エチルヘキシル等を含めた、飽和直鎖炭化水素基または飽和分岐鎖炭化水素基を意味している。“アルケニル基”とは、1つ以上の炭素-炭素二重結合を有する不飽和直鎖炭化水素基または不飽和分岐鎖炭化水素基(たとえばビニル基)を意味している。“アルキニル基”とは、1つ以上の炭素-炭素三重結合を有する不飽和直鎖炭化水素基または不飽和分岐鎖炭化水素基を意味している。“環式基”とは、脂環式基または芳香族基(どちらも、ヘテロ原子を含んでよい)として分類されている閉環炭化水素基を意味している。“脂環式基”とは、脂肪族基に似た特性を有する環式炭化水素基を意味している。
【0026】
“Ar”とは、二価のアリール基(すなわちアリーレン基)(フェニレン、ナフチレン、ビフェニレン、フルオレニレン、およびインデニル等の閉じた芳香環もしくは芳香環系)、およびヘテロアリーレン基〔すなわち、環中の原子の1つ以上が炭素以外の元素である閉環炭化水素基(たとえば窒素、酸素、イオウなど)〕を表わしている。適切なヘテロアリール基としては、フリル、チエニル、ピリジル、キノリル、イソキノリル、インドリル、イソインドリル、トリアゾリル、ピロリル、テトラゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、カルバゾリル、ベンゾオキサゾリル、ピリミジニル、ベンゾイミダゾリル、キノキサリニル、ベンゾチアゾリル、ナフチリジニル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、プリニル、キナゾリニル、ピラジニル、1-オキシドピリジル、ピリダジニル、トリアジニル、テトラジニル、オキサジアゾリル、およびチアジアゾリル等がある。このような基が二価であるとき、一般に“ヘテロアリーレン”基(たとえば、フリレンやピリジレンなど)と呼ばれる。
【0027】
同一であっても異なっていてもよい基は、“独立的に”....(“independently” something)と呼ぶ。
本発明の化合物の有機基上に置換が考えられる。本出願全体を通して使用されている特定の用語についての論考と詳述を簡単化する手段として、“基(group)”と“部分(moiety)”という用語は、置換が可能であるか、もしくは置換を施すことができる化学種と、置換が不可能であるか、もしくは置換を施すことができない化学種を区別するために使用されている。したがって、化学置換基(a chemical substituent)を説明するのに“基”という用語が使用されている場合は、記載の化学物質が、未置換の基;鎖中にO原子、N原子、Si原子、もしくはS原子を有する基(たとえばアルコシキ基);およびカルボニル基もしくは他の従来の置換基;を含む。化合物(a chemical compound)または化学置換基を説明するのに“部分”という用語が使用されている場合は、未置換の化学物質だけが含まれるように意図されている。たとえば、“アルキル基”という語句は、単なる開鎖の飽和炭化水素アルキル置換基(たとえば、メチル、エチル、プロピル、およびt-ブチル等)だけでなく、当業界において公知のさらなる置換基(たとえば、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルスルホニル、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、アミノ、およびカルボキシル等)を担ったアルキル置換基も含むよう意図されている。したがって“アルキル基”は、エーテル基、ハロアルキル基、ニトロアルキル基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、およびスルホアルキル基等を含む。他方、“アルキル部分”という語句は、単なる開鎖の飽和炭化水素アルキル置換基(たとえば、メチル、エチル、プロピル、およびt-ブチル等)のみの包含に限定されている。
【0028】
“含む(comprise)”という用語およびそのバリエーションは、これらの用語が発明の詳細な説明と特許請求の範囲において現れる場合は、限定の意味を有してはいない。
“好ましい(preferred)”および“好ましくは(preferably)”という用語は、特定の状況下において特定の利点をもたらす本発明の実施態様を表わしている。しかしながら、同じ状況もしくは他の状況下において、他の実施態様も好ましい場合がある。さらに、1つ以上の好ましい実施態様について説明していることは、他の実施態様が有用ではないということを示しているわけではなく、また他の実施態様を本発明の範囲から除外するよう意図しているわけではない。
【0029】
本明細書で使用している“a”、“an”、“the”、“少なくとも1つ(at least one)”、および“1つ以上(one or more)”は、区別なく使用されている。したがってたとえば、ポリマー(“a” polymer)を含んだコーティング組成物は、コーティング組成物が“1つ以上の”ポリマーを含んでいる、ということを意味するように解釈することができる。
【0030】
さらに本明細書においては、端点による数値域の記載は、当該範囲内に包含される全ての数字を含む(たとえば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、および5などを含む)。
本発明の上記要約は、本発明のそれぞれの開示された実施態様、または全ての実施を説明するようには意図されていない。下記の説明により、本発明の実施態様がより詳細に示される。本出願全体にわたる幾つかの場所において、実施例のリストを通してガイダンスが与えられており、これらの実施例は種々の組み合わせにて使用することができる。それぞれの場合において、記載のリストは、代表的なグループとしてのみ機能するものであって、限定されたリストとして解釈すべきではない。
【0031】
(実施態様の詳細な説明)
本発明は、ラテックスポリマーを含んだ、食品用および飲料用缶に使用するためのコーティング組成物を提供する。ラテックスポリマーは、乳化重合法(好ましくはラジカル開始重合法)にて製造される。ラテックスポリマーは、金属支持体を食品用もしくは飲料用缶(たとえば、ツーピース缶やスリーピース缶)またはその一部に造り上げる前、あるいは造り上げた後において、金属支持体が缶エンドであろうと、缶ボディであろうと、金属支持体に塗布することができる。本発明のラテックスポリマーは、食品と接触する状況において使用するのに適しており、このような缶の内面に使用することができる。ラテックスポリマーは、ツーピースの延伸鉄飲料用缶の内面に対して、および飲料用缶エンドに対して特に有用である。
【0032】
ラテックスポリマーは、酸基もしくは酸無水物基含有ポリマーとアミン(好ましくは第三アミン)との塩の存在下にて、水性媒体中でエチレン性不飽和モノマー成分を重合させることによって製造される。エチレン性不飽和モノマー成分は、モノマーの混合物であるのが好ましい。混合物中のモノマーの少なくとも1種がα,β-エチレン性不飽和モノマーであるのが好ましく、モノマーの少なくとも1種がオキシラン基を含有するのが好ましい。モノマーの少なくとも1種が、オキシラン基含有α,β-エチレン性不飽和モノマーであるのがさらに好ましい。
【0033】
本発明の組成物は、所望するフィルム特性をもたらすのに必要とされる架橋剤、充填剤、触媒、染料、顔料、トナー、エキステンダー、滑剤、防錆剤、流れ調整剤、チキソトロープ剤、分散剤、酸化防止剤、接着促進剤、光安定剤、界面活性剤、有機溶剤、またはこれらの組み合わせ物を、必要に応じて含んでよい。
【0034】
1つの実施態様においては、コーティング組成物は、酸官能性もしくは酸無水物官能性ポリマーとアミンとの塩を作製すること;水と任意の有機溶剤とを含んだキャリヤー中に塩を分散させて、水性分散液を作製すること;必要に応じて、水性分散液から有機溶剤(存在する場合)を除去すること;エチレン性不飽和モノマー成分と水性分散液とを混合すること(水性分散液にエチレン性不飽和モノマー成分を加えるのが好ましい);および、水性分散液の存在下においてエチレン性不飽和モノマー成分を重合させて、乳化重合ラテックスポリマーを作製すること;によって製造される。
【0035】
組成物は、遊離ビスフェノールA(BPA)と芳香族グリシジルエーテル化合物(たとえば、BADGE、BFDGE、およびエポキシノボラック)を実質的に含有しないのが好ましく、これらの化合物を本質的に含有しないのがさらに好ましく、これらの化合物を本質的に完全に含有しないのがさらに好ましく、そしてこれらの化合物を完全に含有しないのが最も好ましい。コーティング組成物はさらに、結合BPAと芳香族グリシジルエーテル化合物を実質的に含有しないのが好ましく、これらの化合物を本質的に含有しないのがさらに好ましく、これらの化合物を本質的に完全に含有しないのが最も好ましく、これらの化合物を完全に含有しないのが最適である。
【0036】
エチレン性不飽和モノマー成分は、水性媒体中におけるラジカル開始重合が可能であるようなモノマーの混合物であるのが好ましい。モノマー混合物は、少なくとも1種のオキシラン官能性モノマーを含有するのが好ましく、少なくとも1種のオキシラン基含有α,β-エチレン性不飽和モノマーを含有するのがさらに好ましい。
【0037】
モノマー混合物は、オキシラン基含有モノマーを、モノマー混合物の重量を基準として少なくとも0.1重量%含有するのが好ましく、少なくとも1重量%含有するのがさらに好ましい。一般には、オキシラン基含有モノマーの少なくとも0.1重量%が、ラテックスの安定性に寄与する。
【0038】
特定の理論で拘束されるつもりはないが、これは、オキシラン化学種と酸基含有ポリマーとアミンとの間で形成される第四級塩(ラテックスの凝集を引き起こすことがある)の量が減少するためであると考えられる。さらに、オキシラン基含有モノマーの少なくとも0.1重量%が分散粒子の架橋に寄与し、キュアー時においてポリマーラテックスが組み込まれた、より優れた特性もつコーティング組成物が得られる。
【0039】
モノマー混合物は、オキシラン基含有モノマーを、モノマー混合物の重量を基準として30重量%以下含有するのが好ましく、20重量%以下含有するのがさらに好ましく、10重量%以下含有するのがさらに好ましく、そして9重量%以下含有するのが最適である。一般には、モノマー混合物中のオキシラン基含有モノマーが30重量%を超えると、フィルム特性の低下の一因となることがある。特定の理論で拘束されるつもりはないが、これは、架橋が多すぎることによって引き起こされる脆化によるものと考えられる。
【0040】
適切なオキシラン官能性モノマーとしては、反応性の炭素-炭素二重結合とオキシラン(すなわちグリシジル)基を有するモノマーがある。一般には、モノマーは、α,β-不飽和酸もしくはその無水物のグリシジルエステル(すなわち、オキシラン基含有α,β-エチレン性不飽和モノマー)である。適切なα,β-不飽和酸としては、モノカルボン酸またはジカルボン酸がある。このようなカルボン酸の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、α-クロロアクリル酸、α-シアノアクリル酸、β-メタクリル酸(クロトン酸)、α-フェニルアクリル酸、β-アクリルオキシプロピオン酸、ソルビン酸、α-クロロソルビン酸、アンゲリカ酸、ケイ皮酸、p-クロロケイ皮酸、β-ステアリルアクリル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アコニット酸、マレイン酸、フマル酸、トリカルボキシエチレン、無水マレイン酸、およびこれらの混合物などがあるが、これらに限定されない。
【0041】
グリシジル基を含有する適切なモノマーの特定の例は、グリシジル(メタ)アクリレート(すなわち、グリシジルメタクリレートとグリシジルアクリレート)、モノグリシジルイタコネート、ジグリシジルイタコネート、モノグリシジルマレエート、ジグリシジルマレエート、モノグリシジルホルメート、およびジグリシジルホルメートである。アリルグリシジルエーテルとビニルグリシジルエーテルも、オキシラン官能性モノマーとして使用することができると考えられる。好ましいモノマーはグリシジルメタクリレート(“GMA”)である。
【0042】
オキシラン官能性モノマーは、モノマー混合物中の適切な他のモノマーと反応させるのが好ましい。これらのモノマーは、エチレン性不飽和モノマーやヒドロキシ官能性モノマーであってよい。適切なエチレン性不飽和モノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレート、ビニルモノマー、およびマレイン酸やフマル酸のアルキルエステルなどがある。
【0043】
適切なアルキル(メタ)アクリレートは、CH2=C(R1)-CO-OR2という構造を有する化合物を含み、このときR1は水素またはメチルであり、R2は、好ましくは1〜16個の炭素原子を有するアルキル基である。R2基は、1個以上の、一般には1〜3個の、たとえばヒドロキシ、ハロ、フェニル、およびアルコキシ等の部分で置き換えることができる。したがって適切なアルキル(メタ)アクリレートは、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを包含する。アルキル(メタ)アクリレートは、一般には、アクリル酸もしくはメタクリル酸のエステルである。R1が水素もしくはメチルであって、R2が、2〜8個の炭素原子を有するアルキル基であるのが好ましい。R1が水素もしくはメチルであって、R2が、2〜4個の炭素原子を有するアルキル基であるのがさらに好ましい。
【0044】
適切なアルキル(メタ)アクリレートの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、およびヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート(HPMA)などがある。
【0045】
二官能の(メタ)アクリレートモノマーも、モノマー混合物中に使用することができる。例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、およびアリルメタクリレートなどがある。
【0046】
適切なビニルモノマーとしては、スチレン、メチルスチレン、ハロスチレン、イソプレン、ジアリルフタレート、ジビニルベンゼン、共役ブタジエン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、およびこれらの混合物などがある。酸官能性または酸無水物官能性ポリマーと関連させて下記に記載するビニル芳香族モノマーも、ラテックスポリマーを製造するのに使用されるエチレン性不飽和モノマー成分中に使用するのに適している。現時点では、一つにはコストが比較的低いことから、スチレンが好ましいビニルモノマーである。
【0047】
エチレン性不飽和モノマー成分中に使用するための、他の適切な重合可能なビニルモノマーとしては、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ステアリン酸ビニル、N-イソブトキシメチルアクリルアミド、およびN-ブトキシメチルアクリルアミドなどがある。
【0048】
オキシラン基含有モノマーは、エチレン性不飽和モノマー成分の0.1重量%〜30重量%を構成するのが好ましく、1重量%〜20重量%を構成するのがさらに好ましい。混合物中の他のモノマーが、モノマー成分の残部(すなわち、モノマー混合物の総重量を基準として70重量%〜99.9重量%、好ましくは80重量%〜99重量%)を構成する。
【0049】
エチレン性不飽和モノマー成分の少なくとも40重量%がアルキルアクリレートとアルキルメタクリレートから選択されるのが好ましく、少なくとも50重量%がアルキルアクリレートとアルキルメタクリレートから選択されるのがさらに好ましい。少なくとも20重量%がビニル芳香族化合物から選択されるのが好ましく、少なくとも30重量%がビニル芳香族化合物から選択されるのがさらに好ましい。
【0050】
ラテックスポリマーの製造に際しては、少なくとも5重量%のエチレン性不飽和モノマー成分が使用されるのが好ましく、少なくとも25重量%のエチレン性不飽和モノマー成分が使用されるのがさらに好ましく、少なくとも50重量%のエチレン性不飽和モノマー成分が使用されるのがさらに好ましく、そして少なくとも60重量%のエチレン性不飽和モノマー成分が使用されるのがさらに好ましい。ラテックスポリマーの製造に際しては、95重量%以下のエチレン性不飽和モノマー成分が使用されるのが好ましく、90重量%以下のエチレン性不飽和モノマー成分が使用されるのがさらに好ましく、85重量%以下のエチレン性不飽和モノマー成分が使用されるのがさらに好ましい。このようなパーセントは、エチレン性不飽和モノマー成分と酸基含有もしくは酸無水物基含有ポリマー(すなわち、酸官能性もしくは酸無水物官能性ポリマー)の塩との総重量を基準としている。
【0051】
本発明のラテックスポリマーを製造する際に使用できる酸官能性ポリマーは、適切なアミンを使用して中和もしくは部分中和して、水性媒体中への溶解または安定的な分散が可能な塩を形成することができる実質的に全ての酸含有もしくは酸無水物含有ポリマーである。酸含有もしくは酸無水物含有モノマーの選択は、コーティング組成物の意図する最終用途によって決定され、実質的に制約はない。
【0052】
酸含有ポリマー(すなわち酸官能性ポリマー)は、樹脂1g当たり少なくとも40mgKOHの酸価を有するのが好ましく、樹脂1g当たり少なくとも100mgKOHの酸価を有するのがさらに好ましい。酸含有ポリマーは、樹脂1g当たり400mgKOH以下の酸価を有するのが好ましく、樹脂1g当たり300mgKOH以下の酸価を有するのがさらに好ましい。酸無水物含有ポリマーは、水中に存在させたときに同等の酸価範囲を有するのが好ましい。
【0053】
本発明の特定の応用に対しては、低分子量ポリマーが好ましい。酸官能性もしくは酸無水物官能性ポリマーの分子量は、数平均分子量基準にて50,000以下であるのが好ましく、20,000以下であるのがさらに好ましい。酸官能性もしくは酸無水物官能性ポリマーの分子量は、数平均分子量基準にて少なくとも1500であるのが好ましく、少なくとも2000であるのがさらに好ましい。
【0054】
使用できる好ましい酸官能性もしくは酸無水物官能性ポリマーとしては、酸官能性もしくは酸無水物官能性のアクリルポリマー、アルキド樹脂、ポリエステルポリマー、およびポリウレタンがある。必要であれば、このようなポリマーの組み合わせ物も使用することができる。本明細書においては、ポリマーという用語は、ホモポリマーとコポリマー(すなわち、2種以上の異なったモノマーのポリマー)とを含む。
【0055】
本発明において使用される好ましい酸官能性もしくは酸無水物官能性ポリマーとしては、従来のラジカル重合法によって製造されるポリマーがある。適切な例としては、不飽和酸官能性もしくは不飽和酸無水物官能性モノマーまたはこれらの塩、および他の不飽和モノマーから製造されるポリマーがある。これらのうち、好ましい例としては、少なくとも15重量%の不飽和酸官能性もしくは不飽和酸無水物官能性モノマーまたはこれらの塩と、残部の他の重合可能な不飽和モノマーとから製造されるポリマーがあり、さらに好ましい例としては、少なくとも20重量%の不飽和酸官能性もしくは不飽和酸無水物官能性モノマーまたはこれらの塩と、残部の他の重合可能な不飽和モノマーとから製造されるポリマーがある。前述にて例示したコモノマーも適用可能である。
【0056】
種々の酸官能性もしくは酸無水物官能性モノマーまたはこれらの塩も使用することができる。これらの化合物の選択は、所望する最終的なポリマー特性に依存する。このようなモノマーは、エチレン性不飽和であるのが好ましく、α,β-エチレン性不飽和であるのがさらに好ましい。本発明のための適切なエチレン性不飽和酸官能性もしくは酸無水物官能性モノマーとしては、反応性の炭素-炭素二重結合と、酸基もしくは酸無水物基またはこれらの塩とを有するモノマーがある。好ましいこのようなモノマーは、3〜20個の炭素、少なくとも1つの不飽和部位、および少なくとも1つの酸基もしくは酸無水物基またはこれらの塩を有する。
【0057】
適切な酸官能性モノマーとしては、エチレン性不飽和酸(一塩基酸や二塩基酸)、エチレン性不飽和酸無水物、または二塩基酸のエチレン性不飽和モノエステルなどがあり、これらの化合物は、ポリマーを製造するのに使用される他の任意のモノマーと共重合することができる。具体的な一塩基酸は、式CH2=C(R3)-COOHで示される化合物であり、このときR3は、水素または1〜6個の炭素原子を有するアルキル基である。適切な二塩基酸は、式R4(COOH)C=C(COOH)R5およびR4(R5)C=C(COOH)R6COOHで示される化合物であり、このときR4とR5は、水素、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、ハロゲン、3〜7個の炭素原子を有するシクロアルキル、またはフェニルであり、R6は、1〜6個の炭素原子を有するアルキレン基である。これらの酸と1〜8個の炭素原子を有するアルカノールとのハーフエステルも適切である。
【0058】
有用なエチレン性不飽和酸官能性モノマーの例としては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、α-クロロアクリル酸、α-シアノアクリル酸、クロトン酸、α-フェニルアクリル酸、β-アクリルオキシプロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、ソルビン酸、α-クロロソルビン酸、アンゲリカ酸、ケイ皮酸、p-クロロケイ皮酸、β-ステアリルアクリル酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アコニット酸、トリカルボキシエチレン、2-メチルマレイン酸、イタコン酸、2-メチルイタコン酸、およびメチレングルタル酸等の酸、またはこれらの混合物などがあるが、これらに限定されない。好ましい不飽和酸官能性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、2-メチルマレイン酸、イタコン酸、2-メチルイタコン酸、およびこれらの混合物がある。さらに好ましい不飽和酸官能性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、およびこれらの混合物がある。最も好ましい不飽和酸官能性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、およびこれらの混合物がある。
【0059】
適切なエチレン性不飽和酸無水物モノマーの例としては、上記酸から誘導される化合物(たとえば、純然たる酸無水物として、またはこのような酸無水物の混合物として)があるが、これらに限定されない。好ましい酸無水物としては、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物、およびマレイン酸無水物がある。必要であれば、上記酸の水性塩(aqueous salts)も使用することができる。
【0060】
酸官能性もしくは酸無水物官能性ポリマーを形成させるためのモノマーの重合は通常、当業界によく知られているラジカル開始剤の存在下にて、有機溶液重合法によって行われる。酸官能性もしくは酸無水物官能性ポリマーの製造は溶液中にて行うのが好都合であるけれども、必要であれば、ニートなプロセスも使用することができる。
【0061】
さらに、酸官能性もしくは酸無水物官能性のアクリルポリマー、酸官能性もしくは酸無水物官能性のアルキド樹脂、酸官能性もしくは酸無水物官能性のポリエステル樹脂、酸官能性もしくは酸無水物官能性のポリウレタン樹脂、またはこれらの組み合わせ物も、本発明の実施において使用することができる。このようなポリマーが、米国特許第4,692,491号;第3,479,310号;および第4,147,679号に記載されている。酸官能性もしくは酸無水物官能性ポリマーは、酸官能性アクリルポリマーであるのが好ましい。
【0062】
他の好ましい実施態様においては、酸官能性もしくは酸無水物官能性ポリマーはポリエステルポリマーである。このようなポリエステルポリマーの例が、「容器用コーティング組成物とコーティング方法」と題して同日付で出願されている米国仮特許出願第 号(代理人整理番号287.00220160)に開示されている。簡単に言えば、該出願に記載のポリマーは、式I
-O-Ar-Rn-C(O)-O-R1-O-C(O)-Rn-Ar-O-
〔式中、各Arは、独立的に二価のアリール基(すなわちアリーレン基)またはヘテロアリーレン基であり;R1は二価の有機基であり;各Rは、独立的に二価の有機基であり;そしてnは0または1である〕で示される1つ以上のセグメントを有している。いずれのポリマーも、種々のこのようなセグメントを有することができ、セグメントが同一であっても、あるいは異なっていてもよい。
【0063】
R1は、隣接したエステル結合(-C(O)-0-と-O-C(O)-)の少なくとも一方に対して加水分解安定性をもたらすのが好ましく、これらの両方に対して加水分解安定性をもたらすのがさらに好ましい。この文脈においては、“加水分解安定性”とは、R1が、隣接エステル結合と水との反応性を、同じ条件下での-CH2-CH2-部分と比較して、好ましくは少なくとも1/2程度だけ低下させる、ということを意味している。これは、エステルの酸素に近接して(好ましくは2つの原子の距離以内にて)立体的にバルキーな基を含むR1を選択することによって果たすことができる。ポリマーは、エステル結合の総数を基準として70%より多い加水分解安定性エステル結合を含むのが好ましく、80%より多い加水分解安定性エステル結合を含むのがさらに好ましく、90%より多い加水分解安定性エステル結合を含むのがさらに好ましい。
【0064】
式Iのセグメントにおいて、R1は、好ましくは少なくとも3個の炭素原子を有する二価の有機基であり、さらに好ましくは少なくとも4個の炭素原子を有する二価の有機基であり、さらに好ましくは少なくとも5個の炭素原子を有する二価の有機基であり、そしてさらに好ましくは少なくとも8個の炭素原子を有する二価の有機基である。特定の応用(当業者であれば容易に決定できる)に対してはR1が大きいことが望まれる、と考えられる。
【0065】
式Iの特定の好ましい実施態様においては、R1は式
-C(R2)2-Yt-C(R2)2-
〔式中、各R2は、独立的に水素または有機基(たとえば、脂環式基または分岐もしくは非分岐のアルキル基)であり;Yは、二価の有機基であり;tは、0または1(好ましくは1)である〕で示される基である。特定の実施態様においては、各R2は、独立的に水素である。
【0066】
特定の実施態様においては、Yは、必要に応じて1つ以上のエーテル結合もしくはエステル結合を含んでよい。特定の実施態様においては、Yは、二価の飽和脂肪族基(すなわち、分岐もしくは非分岐のアルキレン基)、二価の脂環式基、二価の芳香族基(すなわちアリーレン基)、またはこれらの組み合わせである。
【0067】
特定の実施態様においては、Yは、二価のアルキル基(すなわちアルキレン基)であって、分岐していても、あるいは非分岐であってもよく、少なくとも1個の炭素原子を有するのが好ましく、少なくとも2個の炭素原子を有するのがさらに好ましく、少なくとも3個の炭素原子を有するのがさらに好ましく、そして少なくとも6個の炭素原子を有するのがさらに好ましい。特定の実施態様においては、Yは二価の脂環式基であり、好ましくはシクロヘキシレンである。特定の応用(当業者であれば容易に決定できる)に対してはYが大きいことが望まれる、と考えられる。
【0068】
Yは、式IにおけるR1に隣接したエステル結合の少なくとも一方に対して加水分解安定性をもたらすのが好ましい。これは、式Iにおけるエステル酸素原子の少なくとも一方に近接(好ましくは2原子以内で)している立体的にバルキーな基を含んだYを選択することによって果たすことができる。
【0069】
特定の実施態様においては、R1は式-(C(R2)2)s-(式中、sは少なくとも2であって、好ましくは少なくとも3であり、各R2は前記したとおりである)を有する。このようなR1基の例としては、ネオペンチレン、ブチルエチルプロピレン、および-CH2-CH(CH3)-CH2-などがある。
【0070】
特定の実施態様においては、Yは式
-[Zw-C(R2)2-O-C(O)-R3-C(O)-O-C(R2)2-]vZw-
(式中、wは0または1であり;vは1〜10であり;各R2は前記したとおりであり;各R3は、独立的に二価の有機基であり;そして各Zは、独立的に二価の有機基である)を有する。
【0071】
特定の実施態様においては、R3は、二価の飽和脂肪族基(すなわち、分岐もしくは非分岐のアルキレン基)、二価の脂環式基、アリーレン基、またはこれらの組み合わせである。特定の実施態様においては、R3は、(C3-C20)アルキレン(分岐もしくは非分岐の)基またはフェニレン基である。
【0072】
特定の実施態様においては、Zは、二価の飽和脂肪族基(すなわち、分岐もしくは非分岐のアルキレン基)、二価の脂環式基、二価の芳香族基(すなわちアリーレン基)、またはこれらの組み合わせである。
【0073】
Zは、式IにおけるR1に隣接したエステル結合の少なくとも一方に対して、および/または、Y中に含まれている隣接エステル結合に対して加水分解安定性をもたらすのが好ましい。これは、エステル酸素原子の少なくとも一方に近接(好ましくは2原子の距離以内で)している立体的にバルキーな基を含んだZを選択することによって果たすことができる。
【0074】
式Iのセグメントにおいて、nは0である(すなわち、Rが存在しない)のが好ましい。しかしながら、nが1であって、Rが存在する場合、Rは(C1-C4)アルキレン基であるのが好ましく、(C1-C4)アルキレン部分であるのがさらに好ましい。
【0075】
式Iのセグメントにおいて、各Arは、20個未満の炭素原子を有するのが好ましく、11個未満の炭素原子を有するのがさらに好ましく、そして8個未満の炭素原子を有するのがさらに好ましい。Arは、少なくとも4個の炭素原子を有するのが好ましく、少なくとも5個の炭素原子を有するのがさらに好ましく、そして少なくとも6個の炭素原子を有するのがさらに好ましい。
【0076】
特定の実施態様においては、各Arはフェニレン基である。特定の実施態様においては、各Arは式-C6(R4)4-(式中、各R4は、独立的に水素、ハロゲン、または有機基であり;2つのR4基が一緒になって、必要に応じて1つ以上のヘテロ原子を含有する環を形成してもよい)のフェニレン基である。特定の実施態様においては、R4は水素または有機基であり、2つのR4基が一緒になって6員環を形成してもよい。R4は水素であるのが好ましい。
【0077】
これらのようなポリエステルポリマーは、式II
HO-Ar-Rn-C(O)-O-R1-O-C(O)-Rn-Ar-OH
(式中、Ar、R、R1、およびnは、前記したとおりである)の化合物から種々の方法によって製造することができる。このような化合物は、たとえば、1モルのジオール(たとえば、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、または2-メチル-1,3-プロパンジオール等のHO-R1-OH)と2モルの酸(たとえば4-ヒドロキシ安息香酸)とのエステル化反応によって製造することができる。これとは別に、このような化合物は、たとえば、1モルのジオール(たとえば、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、または2-メチル-1,3-プロパンジオール)と2モルのエステル(たとえば、4-ヒドロキシメチルベンゾアート、4-ヒドロキシエチルベンゾアート、または4-ヒドロキシブチルベンゾアート)とのエステル交換反応によって製造することもできる。
【0078】
式Iのポリマーは、式IIの化合物の分子量を増大させることを含む方法によって製造することができる。特定の実施態様においては、式IIの化合物(たとえば二価フェノール類)とジエポキシドとを反応させて分子量を増大させることができる。たとえば、式IIの化合物(たとえば二価フェノール類)とビスフェノールAやビスフェノールFをベースとしないジエポキシドとを、ビスフェノールAやビスフェノールFをベースとしたジエポキシドの場合とほぼ同じ仕方で反応させて、堅い包装のコーティングを得るための架橋剤や添加剤と配合できるポリマーを作り出すことができる。たとえば、式IIの化合物とジエポキシドとを反応させて、-CH2-CH-(OH)-CH2-セグメントを含んだポリマーを形成させることができる。これとは別に、式IIの化合物とエピクロロヒドリンとを反応させて、式IIの化合物のジエポキシド類縁体を形成させることができ、次いでこれを式IIの他の化合物と反応させて、-CH2-CH-(OH)-CH2-セグメントを含んだポリマーを形成させることもできる。
【0079】
式IIの化合物のジエポキシド類縁体(たとえば、二価フェノール類のグリシジルポリエーテル)は、必要な割合の式IIの化合物(たとえば二価フェノール)とエピクロロヒドリンとをアルカリ性媒体中にて反応させることによって製造することができる。所望のアルカリ性は、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の塩基性物質を、好ましくは化学量論的に過剰な量にてエピクロロヒドリンに加えることによって得られる。この反応は、50℃〜150℃の温度で行うのが好ましい。数時間にわたって加熱を続けて反応を果たし、次いで生成物を洗浄して塩と塩基を取り除く。このような反応の手順は、一般によく知られており、たとえば米国特許第2,633,458号に開示されている。
【0080】
本発明において使用される適切なジエポキシド(式IIの化合物のジエポキシド類縁体以外の)は、BPAやBPFを含有しないジエポキシドであり、1つ以上のエーテル結合を有するのが好ましい。適切なジエポキシドは、種々の方法によって(たとえば、ジヒドロキシ化合物とエピクロロヒドリンとの縮合反応によって)製造することができる。適切なジエポキシド(式IIの化合物のジエポキシド類縁体以外の)の例としては、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル(CHDMDGE)、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、および2-メチル-1,3-プロパンジオールジグリシジルエーテルなどがある。
【0081】
こうして得られる式Iのポリマーは、たとえば、エポキシ末端であっても、またはフェノキシ末端であってもよい。これらのポリマーは、市販されているBPAベースのエポキシ物質〔これらの物質は、たとえば、エポン(EPON)828、1001、1007、および1009等の商品名で、テキサス州ヒューストンのレゾルーション・パフォーマンス・プロダクツ社(Resolution Performance Products)から市販されている〕の分子量等の、種々の分子量にて製造することができる。本発明のポリマーは、少なくとも2,000の数平均分子量(Mn)を有するのが好ましく、少なくとも3,000の数平均分子量を有するのがさらに好ましく、そして少なくとも4,000の数平均分子量を有するのがさらに好ましい。ポリマーの分子量は、所望する用途に必要とされる大きさであってよい。
【0082】
ポリマーの分子量の増大は、ジエポキシド(式IIのジエポキシド類縁体であろうと、他のジエポキシドであろうと)と式(II)の化合物の反応において触媒を使用することによって果たすことができる。本発明のエポキシ物質の分子量を増大させるのに有用な代表的な触媒としては、アミン、水酸化物(たとえば水酸化カリウム)、およびホスホニウム塩などがある。現時点において好ましい触媒はホスホニウム塩触媒である。本発明において有用なホスホニウム塩触媒は、所望する縮合反応の進行を容易にするに足る量にて存在するのが好ましい。
【0083】
これとは別に、式Iのエポキシ末端ポリマーは、脂肪酸と反応して不飽和の(たとえば空気酸化可能な)反応性基を有するポリマーを形成することができ、あるいはアクリル酸もしくはメタクリル酸と反応してラジカル硬化可能なポリマーを形成することができる。
【0084】
ポリマーの分子量の増大は、式Iのエポキシ末端ポリマーと適切な二酸(たとえばアジピン酸)との反応によって果たすこともできる。
酸官能性もしくは酸無水物官能性ポリマーの塩(完全な塩であっても、部分塩であってもよい)は、ポリマーの酸基(酸官能性ポリマー中に最初から存在していようと、あるいは酸無水物官能性ポリマーを水に加えることで形成されようと)を適切なアミン(好ましくは第三アミン)で中和もしくは部分中和することによって形成される。所望するポリマー塩を形成させるのに必要とされる中和の程度は、ポリマー中に含まれる酸の量、および所望する塩の溶解性と分散性の程度に応じて大幅に変わってよい。ポリマーを水分散性にするには通常、水中にてアミンを使用して、ポリマーの酸性を少なくとも25%中和し、少なくとも30%中和するのが好ましく、そして少なくとも35%中和するのがさらに好ましい。
【0085】
適切な第三アミンの幾つかの例としては、トリメチルアミン、ジメチルエタノールアミン(ジメチルアミノエタノールとしても知られている)、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチルメチルエタノールアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルプロピルアミン、ジメチル3-ヒドロキシ-1-プロピルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジメチル2-ヒドロキシ-1-プロピルアミン、ジエチルメチルアミン、ジメチル1-ヒドロキシ-2-プロピルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N-メチルモルホリン、およびこれらの混合物などがある。トリエチルアミンまたはジメチルエタノールアミンを第三アミンとして使用するのが最も好ましい。
【0086】
重合において使用される酸官能性もしくは酸無水物官能性ポリマーの塩の量は、少なくとも5重量%であるのが好ましく、少なくとも10重量%であるのがさらに好ましく、そして少なくとも15重量%であるのがさらに好ましい。重合において使用される酸官能性もしくは酸無水物官能性ポリマーの塩の量は、95重量%以下であるのが好ましく、50重量%以下であるのがさらに好ましく、そして40重量%以下であるのがさらに好ましい。これらのパーセントは、重合可能なエチレン性不飽和モノマー成分と酸基含有ポリマーの塩との合計重量を基準としている。
【0087】
オキシラン基を含有する物質と第三アミンとの反応(水の存在下で行なわれる場合)により、ヒドロキシル基と水酸化第四級アンモニウムとを含有する生成物が得られる。好ましい条件下においては、酸基とオキシラン基とアミンとが作用して第四級塩を形成する。この結合は、ポリマーを連結するだけでなく、繋がったポリマーの水分散性を促進するので好都合である。留意しておかねばならないことは、酸基とオキシラン基もエステルを形成することがあるという点である。こうした反応が幾らか起こりうるが、この結合は、水分散性が求められる場合はあまり望ましいものではない。
【0088】
反応の正確な態様は完全にはわからないが、2つの反応間には競争が存在していると考えられる。しかしながら、このことで限定がなされるわけではない。好ましい実施態様においては、第1の反応は、第三アミンが中和された酸官能性ポリマーがオキシラン官能性のモノマーもしくはポリマーと反応して、第四級アンモニウム塩を形成することを含む。第2の反応は、オキシラン官能性のモノマーもしくはポリマーと、カルボン酸もしくはカルボン酸塩とのエステル化を含む。本発明においては、水とある量のアミンが存在することで、エステル結合よりも第四級アンモニウム塩の形成のほうが起こりやすくなっているものと考えられる。エステル化のレベルが高いと、粘度がより高くなり、ゲル様の物質が得られることがあるが、第四級化のレベルが高いと、水分散性が向上する。
【0089】
乳化重合の条件に関して、エチレン性不飽和モノマー成分は、水性媒体中において酸官能性もしくは酸無水物官能性ポリマーの塩の存在下で、水溶性のラジカル開始剤を使用して重合させるのが好ましい。
【0090】
重合温度は、一般には0℃〜100℃であり、好ましくは50℃〜90℃であり、さらに好ましくは70℃〜90℃であり、そしてさらに好ましくは80℃〜85℃である。水性媒体のpHは、一般に5〜12のpHに保持する。
【0091】
ラジカル開始剤は、ラジカル開始剤として作用することが知られている1種以上の水溶性過酸化物から選択することができる。例としては、過酸化水素とt-ブチルヒドロペルオキシドがある。当業界においてよく知られているレドックス開始剤系(たとえば、t-ブチルヒドロペルオキシド、エリソルビン酸、および第一鉄錯体)も使用することができる。ベンゾインと過酸化水素との混合物を使用するのが特に好ましい。過硫酸アンモニウムや過硫酸カリウム等の過硫酸塩開始剤は好ましくない。硬化コーティングの耐水性が低下するからである。
【0092】
ポリマー塩の水性分散液の存在下での、エチレン性不飽和モノマー成分の重合反応は、バッチ方式でも、間欠方式でも、あるいは連続方式でも行うことができる。全ての重合成分を最初に重合容器中に装入してもよいが、通常はプロポーショニング法(proportioning techniques)を使用すると、より良好な結果が得られる。
【0093】
一般には、反応器に適切な量の水、ポリマー塩、およびラジカル開始剤を装入する。次いで反応器をラジカル反応開始温度に加熱し、反応器にエチレン性不飽和モノマー成分を装入する。水、開始剤、ポリマー塩、およびエチレン性不飽和モノマー成分の一部だけを、最初に反応器に装入するのが好ましい。水混和性溶剤が幾らか存在してもよい。この初期装入物を、重合温度にてある時間にわたって反応させた後、残部のエチレン性不飽和モノマー成分を、重合温度、使用する開始剤の種類、および重合させるモノマーの種類と量に応じて変わる添加速度で徐々に加える。モノマー成分を全て装入した後、重合を完結させるために最終的な加熱を行う。次いで反応器を冷却し、ラテックスを回収する。
【0094】
上記ラテックスを使用するコーティング組成物は、1種以上の任意の硬化剤〔すなわち架橋用樹脂(“架橋剤”と呼ばれることもある)〕を使用して配合することができる、ということが発見された。特定の架橋剤の選択は、一般には、配合する物質の種類に依存する。たとえば、ある種のコーティング組成物は濃い色が付いている(たとえば、金色のコーティング)。これらのコーティングは一般に、それ自体が黄色を示す傾向がある架橋剤を使用して配合することができる。これとは対照的に、白色コーティングは一般に、非黄色の架橋剤、あるいはほんの少量の黄色架橋剤を使用して配合される。好ましい硬化剤は、遊離BPAと芳香族グリシジルエーテル化合物(たとえば、BADGE、BFDGE、およびエポキシノボラック)を実質的に含有しない。
【0095】
よく知られているヒドロキシル反応性硬化剤のいずれも使用することができる。たとえば、フェノプラスト硬化剤やアミノプラスト硬化剤を使用することができる。
フェノプラスト樹脂としては、アルデヒドとフェノールとの縮合生成物がある。ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドが好ましいアルデヒドである。フェノール、クレゾール、p-フェニルフェノール、p-tert-ブチルフェノール、p-tert-アミルフェノール、およびシクロペンチルフェノール等の、種々のフェノール類を使用することができる。
【0096】
アミノプラスト樹脂は、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、およびベンズアルデヒド等のアルデヒドと、ウレア、メラミン、およびベンゾグアナミン等のアミノ基もしくはアミド基含有物質との縮合生成物である。
【0097】
適切な架橋用樹脂の例としては、ベンゾグアナミン-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、エステル化メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、およびウレア-ホルムアルデヒド樹脂などがあるが、これらに限定されない。本発明を実施する際に使用する架橋剤は、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂を含むのが好ましい。特に有用な架橋剤の1つの特定の例は、サイテック・インダストリーズ社(Cytec Industries,Inc.)からサイメル(CYMEL)303の商品名で市販されている完全アルキル化メラミン-ホルムアルデヒド樹脂である。
【0098】
一般的に適切な他の硬化剤の例としては、脂肪族、脂環式、もしくは芳香族で二価、三価、または多価の、ブロックトあるいは非ブロックトイソシアネート(たとえば、ヘキサメチレンジイソシアネートやシクロヘキシル-1,4-ジイソシアネートなど)がある。
【0099】
必要とされる硬化剤(すなわち架橋剤)のレベルは、硬化剤の種類、ベークの時間と温度、およびポリマーの分子量に依存する。架橋剤を使用する場合、架橋剤は一般に、最大で50重量%の量にて、好ましくは最大で30重量%の量にて、そしてさらに好ましくは最大で15重量%の量にて存在する。これらの重量%は、コーティング組成物中の樹脂ソリッドの総重量を基準としている。
【0100】
本発明のコーティング組成物はさらに、コーティング組成物またはそれから得られる硬化コーティング組成物に悪影響を及ぼさない他の任意のポリマーを含んでもよい。このような任意のポリマーは、一般には、コーティング組成物中に充填剤物質として組み込まれるが、架橋剤物質として組み込むことも、あるいは望ましい特性を得るために組み込むこともできる。1種以上の任意のポリマー(たとえば充填剤ポリマー)は、意図する目的に役立つに足る量にて、しかしながらコーティング組成物またはそれから得られる硬化コーティング組成物に悪影響を及ぼさないような量にて組み込むことができる。
【0101】
このような追加のポリマー物質は非反応性であり、したがって単に充填剤として作用する。このような任意の非反応性充填剤ポリマーとしては、たとえば、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリエーテル、およびノボラックなどがある。これとは別に、このような追加のポリマー物質もしくはモノマー物質は、組成物の他の成分(たとえば、酸官能性ポリマー)に対して反応性であってもよい。必要であれば、反応性ポリマーを本発明の組成物中に組み込んで、架橋を含めた種々の目的のためのさらなる官能性をもたらすこともできる。このような反応性ポリマーの例としては、たとえば、官能化されたポリエステル、アクリル樹脂、ポリアミド、およびポリエーテルなどがある。任意のポリマーは、遊離BPAと芳香族グリシジルエーテル化合物(たとえば、BADGE、BFDGE、およびエポキシノボラック)を実質的に含有しないのが好ましい。
【0102】
本発明のコーティング組成物はさらに、コーティング組成物もしくはそれから得られる硬化コーティング組成物に悪影響を及ぼさない他の任意成分を含んでよい。このような任意成分は一般には、組成物の美的外観を高めるために、組成物の製造、処理、取り扱い、および塗布を容易にするために、そしてコーティング組成物もしくはそれから得られる硬化コーティング組成物の特定の機能特性をさらに向上させるために、コーティング組成物中に組み込まれる。
【0103】
このような任意成分としては、たとえば、触媒、染料、顔料、トナー、エキステンダー、充填剤、滑剤、防錆剤、流れ調整剤、チキソトロープ剤、分散剤、酸化防止剤、接着促進剤、光安定剤、界面活性剤、またはこれらの混合物などがある。各任意成分は、意図する目的に役立つに足る量にて、しかしながらコーティング組成物もしくはそれから得られる硬化コーティング組成物に悪影響を及ぼさないような量にて組み込まれる。
【0104】
好ましい任意成分の1つは、硬化速度を高めるための触媒である。触媒の例としては、強酸〔たとえば、ドデシルベンゼンスルホン酸(DDBSA、サイテック社からサイキャット(CYCAT)として市販)、メタンスルホン酸(MSA)、p-トルエンスルホン酸(p-TSA)、ジノニルナフタレンジスルホン酸(DNNDSA)、およびトリフルオロメタンスルホン酸〕、第四アンモニウム化合物、リン化合物、スズ化合物、および亜鉛化合物などがあるが、これらに限定されない。特定の例としては、テトラアルキルハロゲン化アンモニウム、テトラアルキルヨウ化ホスホスニウム、テトラアルキルアセテート、テトラアリールヨウ化ホスホスニウム、テトラアリールアセテート、錫オクトエート、亜鉛オクトエート、トリフェニルホスフィン、および当業者に公知の類似の触媒などがあるが、これらに限定されない。触媒が使用される場合、触媒は、不揮発性物質の重量を基準として少なくとも0.01重量%の量にて存在するのが好ましく、少なくとも0.1重量%の量にて存在するのがさらに好ましい。触媒が使用される場合、触媒は、不揮発性物質の重量を基準として3重量%以下の量にて存在するのが好ましく、1重量%以下の量にて存在するのがさらに好ましい。
【0105】
他の有用な任意成分は滑剤(たとえばワックス)であり、被覆された金属支持体のシートに滑性を付与することによって金属クロージャーの製造を容易にする。好ましい滑剤は、たとえば、カルナバ蝋やポリエチレンタイプの滑剤などがある。滑剤が使用される場合、滑剤は、コーティング組成物中に、不揮発性物質の重量を基準として少なくとも0.1重量%の量にて存在するのが好ましく、2重量%以下の量にて存在するのがさらに好ましく、1重量%以下の量にて存在するのがさらに好ましい。
【0106】
他の有用な任意成分は、二酸化チタン等の顔料である。顔料が使用される場合、顔料は、コーティング組成物中に、コーティング組成物中のソリッドの合計重量を基準として70重量%以下の量にて存在するのが好ましく、50重量%以下の量にて存在するのがさらに好ましく、40重量%以下の量にて存在するのがさらに好ましい。
【0107】
支持体における流れと湿潤を向上させるために、必要に応じて、コーティング組成物に界面活性剤を加えることができる。界面活性剤の例としては、ノニルフェノールポリエーテル、塩類、および当業者に公知の類似の界面活性剤などがあるが、これらに限定されない。界面活性剤が使用される場合、界面活性剤は、樹脂ソリッドの重量を基準として少なくとも0.01重量%の量にて存在するのが好ましく、少なくとも0.1重量%の量にて存在するのがさらに好ましい。界面活性剤が使用される場合、界面活性剤は、樹脂ソリッドの重量を基準として10重量%以下の量にて存在するのが好ましく、5重量%以下の量にて存在するのがさらに好ましい。
【0108】
前述したように、本発明のコーティング組成物は、特に食品用缶および飲料用缶(たとえば、ツーピース缶やスリーピース缶など)に使用すべく設計されている。ツーピース缶は、缶ボディ(一般には延伸金属ボディ)と缶エンド(一般には延伸金属エンド)を接合することによって製造される。本発明のコーティング組成物は、食品や飲料と接触する状況において使用するのに適しており、このような缶の内面に使用することができる。本発明のコーティング組成物は、ツーピースの延伸鉄飲料用缶の内面への噴霧塗布による液体コーティングに対して、および飲料用缶エンドに対するコイル・コーティングに対して特に適している。本発明はさらに、他の応用に対しても有用である。こうしたさらなる応用としては、ウォッシュ・コーティング(wash coating)、シート・コーティング(sheet coating)、およびサイドシーム・コーティング(side seam coating)などがあるが、これらに限定されない。
【0109】
スプレー・コーティングは、予備成形された包装容器の内面に被覆組成物を導入することを含む。スプレー・コーティングに適した代表的な予備成形包装容器としては、食品用缶、ビール用容器、および飲料用容器などがある。スプレーは、予備成形包装容器の内面を均一にコーティングすることができるスプレーノズルを使用するのが好ましい。次いで、スプレーされた予備成形容器を熱処理して、残留溶剤を除去し、被膜を硬化させる。
【0110】
コイル・コーティングは、金属(たとえば、スチールやアルミニウム)で構成される連続コイルのコーティングとして説明されている。コーティングがなされたら、コーティングコイルを、短時間の熱硬化サイクル、紫外線硬化サイクル、および/または電磁硬化サイクルにて処理して、被膜を硬化させる(たとえば、乾燥とキュアー)。コイル・コーティングにより、成形物品(たとえば、ツーピース延伸食品用缶、スリーピース食品用缶、食品用缶エンド、延伸鉄缶、飲料用缶エンド、およびこれらの類似物)に造り上げることができる被覆金属(たとえば、スチールおよび/またはアルミニウム)支持体が得られる。
【0111】
ウォッシュ・コーティングは、工業的には、保護コーティングの薄い層を有するツーピース延伸鉄(“D&I”)缶の外面コーティングとして説明されている。予備成形されたツーピースD&I缶をコーティング組成物のカーテンの下に通すことによって、これらD&I缶の外面が“ウォッシュ・コーテイング”される。缶を逆さにする。すなわち、缶をカーテンに通すときに、缶のオープンエンドを“下方(down)”位置にする。コーティング組成物のこのカーテンは、“滝のような”外観を呈する。これらの缶がコーティング組成物のこのカーテンの下をいったん通ると、液体コーティング物質により各缶の外面が効果的に被覆される。過剰のコーティングは、“エア・ナイフ”を使用することによって除去する。各缶の外面に所望量のコーティングを施したら、各缶を、熱硬化オーブン、紫外線硬化オーブン、および/または電磁硬化オーブンに通して、コーティングを硬化(たとえば、乾燥やキュアーによって)させる。このオーブン中のキュアー温度は、一般には150℃〜220℃の範囲である。
【0112】
シート・コーティングは、あらかじめ正方形もしくは長方形の“シート”にカットされた種々の物質(たとえば、スチールやアルミニウム)の個別ピースへのコーティングとして説明されている。これらシートの一般的な寸法は約1平方メートルである。被覆されたら、各シートをキュアーする。硬化したら(たとえば、乾燥やキュアーによって)、被覆支持体のシートを集め、その後の製造工程に備える。シート・コーティングにより、定形部材(たとえば、2-ピース延伸食品用缶、3-ピース食品用缶、食品用缶エンド、延伸鉄缶、および飲料用缶エンドなど)に旨く造り上げることができる被覆金属(たとえば、スチールやアルミニウム)支持体が得られる。
【0113】
サイドシーム・コーティングは、定形スリーピース食品用缶の溶接部分への、液体コーティングの噴霧塗布として説明されている。スリーピース食品用缶が作製されたら、被覆支持体の長方形ピースを円筒体に造り上げる。熱溶着による長方形の各辺の溶接によって円筒体の形成が永久的なものとなる。いったん溶接されると、各缶は、一般には液体コーティングの層を必要とし、この液体コーティング層により、露出した“溶接部(weld)”は、その後の腐食や収容されている食品に対する他の影響から保護される。こうした役割にて機能する液体コーティングは“サイドシーム・ストライプ”と呼ばれる。一般的なサイドシーム・ストライプは、噴霧塗布され、小型の熱オーブン、紫外線オーブン、および/または電磁オーブンに加えて、溶接操作からの残留熱によって速やかに硬化される。
【0114】
たとえば、エレクトロコーティング、押出コーティング、ラミネーティング、および粉末コーティング等の、他の工業用のコーティング・硬化方法も考えられる。
本発明の好ましいコーティングは、実施例セクションに記載の特性の1つ以上を示す。本発明のさらに好ましいコーティングは下記の特性の1つ以上を示す:3mA未満の金属露出値(metal exposure value);3.5mA未満の、落下損傷後の金属露出値;50ppm未満のグローバル抽出結果(global extraction results);接着等級(adhesion rating)が10;ブラッシュ等級(blush rating)が少なくとも7;背面衝撃試験(a reverse impact test)においてひび割れが殆どないかあるいは全くない;ドーム衝撃試験(a dome impact test)においてひび割れなし(等級10);0.2インチ未満のフェザリング(feathering);0.055〜0.095のCOF範囲;および、低温殺菌もしくはレトルト後において、20mA未満のコンティニュイティ(continuity)。
【実施例】
【0115】
下記の実施例は、本発明の理解を助けるために示されており、これらの実施例によって本発明の範囲が限定される解釈すべきではない。特に明記しない限り、部とパーセントは全て重量基準である。
【0116】
キュアー条件
噴霧ベーク(spray bakes)内部の飲料の場合、キュアー条件は、缶ドームにおける測定温度を188℃〜199℃にて30秒保持することを含む。
【0117】
飲料のエンドコイルベーク(beverage end coil bakes)の場合、キュアー条件は、特定の時間(たとえば、オーブン中、平均204℃にて10秒、204℃のピーク金属温度が達成される)内にピーク金属温度をもたらすに足る温度を使用することを含む。
【0118】
前述の構造物を、下記のような試験によって評価した。
初期金属露出
この試験法では、噴霧された被膜によって効果的に被覆されていない、缶の表面内側の金属量を測定する。この測定は、導電性溶液(脱イオン水中1%NaCl)を使用することによって行われる。被覆された缶にこの導電性溶液を充填し、電気プローブを、缶の外面(被覆されていない、導電性)と接触した状態で取り付ける。第2のプローブを、缶の内側の中央部にて塩溶液中に浸漬する。缶の内側に未被覆の金属が存在する場合は、これら2つのプローブ間に電流が流れ、LEDディスプレイ上にある値として示される。LEDは、伝えられた電流をミリアンペア(mA)で表示する。流れる電流は、被膜で効果的に覆われていない金属の量に比例する。目標は、缶の内側に100%のコーティング被覆率を達成することであり、この結果、LEDの読取値は0.0mAとなる。コーティングによって、金属露出値が3mA未満となるのが好ましく、2mA未満となるのがさらに好ましく、1mA未満となるのがさらに好ましい。工業的に得られる金属露出値は、一般には平均で2.0mA未満である。
【0119】
落下損傷後の金属露出
落下損傷抵抗は、充填された缶の落下をシミュレートする条件下での、被覆容器が亀裂に耐える能力を評価する。亀裂の存在は、“金属露出”セクションにおいて前述したように、電解質溶液を介して電流を通すことによって測定する。被覆容器に電解質溶液を充填し、初期金属露出を記録する。缶に水を充填し、管を介して、特定の高さから傾斜面上に落下させ、チャイム部分(chime area)にへこみを生じさせる。次いで、缶の向きを180度変え、このプロセスを繰り返す。缶から水を除去し、再び前述のように金属露出を測定する。損傷がなければ、電流(mA)の変化は観察されない。一般には、6個または12個の容器の実験の平均を記録する。落下前と落下後の金属露出結果を記録する。ミリアンペア値が低くなるほど、落下損傷に対するコーティングの抵抗性が良好になる。コーティングによって、落下損傷後の金属露出値が3.5mA未満となるのが好ましく、2.5mA未満となるのがさらに好ましく、1.5mA未満となるのがさらに好ましい。
【0120】
耐溶剤性
コーティングの“キュアー”もしくは架橋の程度は、溶剤〔たとえば、メチルエチルケトン(MEK、ニュージャージー州ニューアークのエクソン社から市販)やイソプロピルアルコール(IPA)〕に対する抵抗性として評価される。この試験は、ASTMD5402-93に記載の手順にしたがって行う。ダブル・ラブ(double-rubs)(すなわち、1回の往復運動)の数を記録する。
【0121】
グローバル抽出
グローバル抽出試験は、コーティングから、被覆缶中に詰め込まれている食品中に移行するおそれのある遊離物質の総量を評価するよう設計されている。一般には、所定の最終用途をシミュレートするよう、被覆支持体を、種々の条件下にて水または溶剤ブレンドにさらす。条件に合った抽出条件と媒体が、21CFR175.300のパラグラフ(d)と(e)に記載されている。FDA条例によって規定されている許容グローバル抽出限界は、50パーツ・パー・ミリオン(ppm)である。
【0122】
本発明において使用される抽出手順が21CFR175.300のパラグラフ(e)(4)(xv)に記載されており、最悪の場合のシナリオを確実に実施するために下記のような変更を施した:1)アルコールの含量を10重量%に増大させた;および2)充填容器を、10日間の平衡期間にわたって100°Fに保持した。これらの条件は、食品接触告示書(Food Contact Notifications)を作製するためのFDA刊行物である“工業用ガイドライン(Guidelines for Industry)”によるものである。被覆された飲料用缶に10重量%の水性エタノールを充填し、低温殺菌条件(150°F)に2時間さらし、次いで100°Fにて10日間の平衡期間にわたってさらした。抽出物の量は、21CFR175.300のパラグラフ(e)(5)に記載のように測定し、ppm値は、44平方インチの缶(缶エンドなし)表面積(体積355ml)を基準として算出した。コーティングにより、50ppm未満のグローバル抽出結果が得られるのが好ましく、10ppm未満のグローバル抽出結果が得られるのがさらに好ましく、1ppm未満のグローバル抽出結果が得られるのがさらに好ましい。グローバル抽出結果は、検出されないのが最も好ましい。
【0123】
接着力
接着試験は、コーティングが被覆支持体に接着するかどうかを評価するために行われる。SCOTCH610テープ(ミネソタ州セントポールの3M社から市販)を使用し、ASTMD3359-試験法Bにしたがって接着試験を行った。接着力は、一般には0〜10の段階で等級付けされ、このとき等級“10”は、接着不良がないことを示しており、等級“9”は、コーティングの90%が接着したままであることを示しており、等級“8”は、コーティングの80%が接着したままであることを示しており、以下同様である。商業的に採算がとれるコーティングを得るためには、一般には接着等級10が要求される。
【0124】
ブラッシュ抵抗
ブラッシュ抵抗は、コーティングが種々の溶液からの攻撃に耐える能力を評価する。ブラッシュは一般に、被覆フィルム中に吸収される水の量によって評価される。フィルムが水を吸収すると、一般には濁ってくるか又は白っぽく見えるようになる。ブラッシュは一般に、0〜10の段階を使用して目視により評価され、このとき等級“10”は、ブラッシュが観察されないことを示しており、等級“0”は、フィルムが完全に白化していることを示している。商業的に採算がとれるコーティングを得るためには、一般には少なくとも7のブラッシュ等級が要求され、ブラッシュ等級は9以上が最適である。
【0125】
プロセスまたは耐レトルト性(Retort Resistance)
これは、水などの液体と共に熱と圧力に曝露した後の、被覆支持体のコーティング保全性の尺度である。レトルト性能は、必ずしも全ての食品用コーティングや飲料用コーティングに対して要求されるわけではないが、レトルト状態のもとで詰められているある種のタイプの製品に対しては望ましい性能である。手順は、滅菌試験または低温殺菌試験に類似している。試験は、支持体を、105℃〜130℃の範囲の熱および0.7〜1.05kg/cm2の範囲の圧力にて15〜90分処理することによって行われる。この評価の場合は、被覆支持体を脱イオン水中に浸漬し、121℃(250°F)の熱および1.05kg/cm2の圧力にて90分処理した。被覆支持体を、接着力とブラッシュに関して前述のように試験した。レトルト性能を必要とする食品用もしくは飲料用の用途においては、商業的に採算のとれるコーティングを得るために、一般には10の接着等級と少なくとも7のブラッシュ等級が必要とされる。
【0126】
ひび割れ-背面耐衝撃性
背面衝撃は、被覆支持体が、半球ヘッドを有するスチールパンチによって強い衝撃を受けたときに生じる変形に耐える能力を評価する。この評価の場合は、BYK-ガードナー“オーバーオール”曲げ・衝撃試験機を使用して12インチ-ポンド(1.36Nm)の力で処理し、微小割れ又は微小破壊(一般にはひび割れと呼ばれている)に関して目視により等級付けした。試験片の被覆されていない側すなわち背面に衝撃を加えた。10の等級はひび割れがないことを示しており、フレキシビリティと硬化が十分であることを示している。0の等級は完全な破壊が起きていることを示している。商業的に採算のとれるコーティングは、背面衝撃試験に関してひび割れが僅かであるか又は全くないのが好ましい。
【0127】
ドームに対する衝撃
ドーム衝撃は、12オンス飲料用缶のドーム頂部を、前述のセクションに記載のように背面衝撃にさらすことによって評価した。衝撃後のひび割れを評価した。10の等級はひび割れがないことを示しており、フレキシビリティと硬化が十分であることを示している。0の等級は完全な破壊が起きていることを示している。飲料用缶の内側に対するコーティングは、ドーム衝撃に対してひび割れを生じない(等級10)のが好ましい。
【0128】
ジョイ洗剤試験(Joy Detergent Test)
ジョイ洗剤(JOY Detergent)(プロクター&ギャンブル社から市販)の脱イオン水中1%溶液を調製し、82℃(180°F)に加熱する。被覆されたパネルを加熱溶液中に10分浸漬し、次いでパネルを取り出し、すすぎ洗いし、乾燥する。前述のように、接着力とブラッシュに関してサンプルを評価する。商業的に採算のとれる飲料用缶内側コーティングは、この洗剤試験において、10の接着等級と少なくとも7(最適なのは少なくとも9)のブラッシュ等級をもたらすのが好ましい。
【0129】
フェザリング
フェザリングとは、飲料用缶エンドのタブ上のコーティングの接着力低下を表わすのに使用されている用語である。飲料用缶をあけるとき、コーティングがタブに対する接着力を失う場合は、フリーフィルム(free film)の一部が、缶の開口を横切って存在してよい。これがフェザリングである。
【0130】
フェザリングを試験するために、パネルの被覆側を下向きにした状態で、被覆パネルの裏側に関して“タブ”にスコアをつける。次いで試験片を、下記の低温殺菌セクションに記載のように低温殺菌処理する。
【0131】
低温殺菌処理後、ペンチを使用して、カットされた“タブ”を、支持体の被覆側から離れて90度の角度に曲げる。次いで試験片を、被覆されている側を下にしてフラットな表面上に置く。ペンチを使用してカット“タブ”をつかみ、完全に取り除けるまで、180度の角度にて試練パネルから引っ張る。“タブ”を取り除いた後、試験パネル上にて開口に広がっている全てのコーティングを測定する。最大貫入の距離(フェザリング)をインチ表示で記録する。飲料用缶エンドに対するコーティングは、0.2インチ(0.508cm)未満のフェザリングを示すのが好ましく、0.1インチ(0.254cm)未満のフェザリングを示すのがさらに好ましく、0.05インチ(0.127cm)未満のフェザリングを示すのが最も好ましく、0.02インチ(0.051cm)未満のフェザリングを示すのが最適である。
【0132】
ダウファックス洗剤試験(Dowfax Detergent Test)
“ダウファックス”試験は、沸騰洗剤溶液に対するコーティングの抵抗性を評価するよう設計されている。これは、飲料用缶エンドのコーティングに対する一般的な試験であり、主として接着力を評価するために使用されている。従来、この試験は、支持体の前処理に対するコーティングの相互作用による問題を示すのに使用されている。溶液は、5mlのダウファックス2A1(ダウケミカル社の製品)を3000mlの脱イオン水中に混合することによって調製する。一般には、被覆支持体のストリップを、沸騰しているダウファックス溶液中に15分浸漬する。次いでストリップをすすぎ洗いし、脱イオン水中にて冷却し、乾燥し、それから試験して、前述のように、ブラッシュと接着力に関して等級付けする。好ましい飲料用缶エンドのコーティングは、ダウファックス洗剤試験において、10の接着等級と少なくとも4のブラッシュ等級をもたらすのが好ましく、6以上のブラッシュ等級をもたらすのがさらに好ましい。
【0133】
滅菌または低温殺菌
滅菌試験もしくは低温殺菌試験は、コーティングが、容器中に詰められている異なったタイプの食品に対するプロセス条件にどの程度耐えるかを決定する。一般には、被覆支持体を水浴中に浸漬し、65℃〜100℃の範囲の温度で5〜60分加熱する。ここでの評価では、被覆支持体を脱イオン水浴中に85℃で45分浸漬した。次いで被覆支持体を水浴から取り出し、コーティングの接着力とブラッシュに関して前述のように試験した。商業的に採算のとれるコーティングは、完全な接着力(等級10)と少なくとも5(最適なのは少なくとも9)のブラッシュ抵抗性を有して、十分な耐低温殺菌性をもたらすのが好ましい。
【0134】
摩擦係数
摩擦係数(COF)はコーティングの滑性の尺度であり、工業的な製造装置やプレスに対して硬化コーティングがどのように挙動するかの表示を得るのに使用される。滑剤は一般に、適切な滑性が得られるよう、応用後にアグレッシブな作製を必要とするコーティングに加えられる。
【0135】
ここでの評価では、チャート式記録計を備えたアルテック・モビリティ/滑性試験機モデル9505AEを使用して、飲料用缶エンドの硬化コーティングの、アルミニウム支持体に対するCOFを測定した。被覆支持体の表面を横切っているロード・バーに鋼球を取り付けた状態で、スレッドを引っ張ることによって機器が作動し、0〜10の目盛りのチャート紙上にCOFが抵抗として記録される。各ユニットは0.25COFユニットに等しい。本発明のコーティングは、0.055〜0.095の好ましいCOF範囲が得られるように配合される。
【0136】
製造もしくは缶エンドのコンティニュィティ(Fabrication or End Continuity)
この試験は、被覆支持体が、飲料用缶エンドを製造するのに必要な成形プロセスを受けるときに、被覆支持体がその保全性を維持する能力を評価する。この能力が、成形された缶エンドにおける亀裂や破損の有無の尺度となる。一般には、電解質溶液を充填したカップ上に缶エンドを配置する。このカップを逆さにして、缶エンドの表面を電解質溶液にさらす。次いで、缶エンドを通過する電流の量を測定する。コーティングが、作製後に完全な状態(亀裂や破損がない)のままであれば、缶エンドを通過する電流は僅かである。
【0137】
ここでの評価では、完全に加工された202基準による開口飲料用缶エンドを、脱イオン水中1重量%NaClで構成される電解質溶液に4秒間さらした。イリノイ州シカゴのウィルケンズ-アンダーソン社(Wilkens-Anderson Company)から市販のWACOエナメルレイターII(WACO Enamel Rater II)を使用して金属露出を測定し、6.3ボルトの出力電圧を得た。測定した電流をミリアンペア表示で記録した。缶エンドのコンティニュイティは一般に、最初に、次いで缶エンドを低温殺菌もしくはレトルト処理した後に試験した。
【0138】
本発明の好ましいコーティングは、前述のように試験したときに、最初は10ミリアンペア(mA)未満の電流が通り、5mA未満の電流が通るのがさらに好ましく、2mA未満の電流が通るのが最も好ましく、1mA未満の電流が通るのが最適である。低温殺菌もしくはレトルト処理した後に、好ましいコーティングは、20mA未満のコンティニュイティをもたらし、10mA未満のコンティニュイティをもたらすのがさらに好ましく、5mA未満のコンティニュイティをもたらすのがさらに好ましく、2mA未満のコンティニュイティをもたらすのがさらに好ましい。
【0139】
原材料と成分のリスト
下記の表には、以下の実施例において使用されている原材料と成分の一部が記載されている。当業者には周知のことであるが、これらとは別の材料または供給業者を挙げることもできる。
【0140】
【表1】

【0141】
【表2】

【0142】
実施例1:実験1.酸官能性アクリル樹脂の製造
512.6部のグレイシャルメタクリル酸(glacial methacrylic acid)(MAA)、512.6部のブチルアクリラート(BA)、114.0部のスチレン、および73.2部の過酸化ベンゾイル(70%水湿潤)のプレミックスを別個の容器にて調製した。3リットルのフラスコに、攪拌機、還流冷却器、熱電対、加熱マントル、および窒素流入管を取り付けた。プレミックスの10%を、405.9部のブタノールおよび30.6部の脱イオン水と共にフラスコに加えた。残部のプレミックスに、496.1部のブタノールと38.3部の脱イオン水を加えた。フラスコ中に窒素ガスを流入させつつ、内容物を93℃に加熱した。93℃にて外部加熱を止め、15分間にわたって材料の温度を上昇するままにしておいた。15分後、バッチの温度は97℃となり、残部のプレミックスを、温度を97℃〜100℃に保持しながら2時間にわたって均一に加えた。プレミックスの付加が完了したとき、プレミックス容器を5部のブタノールですすぎ洗いした。バッチの温度を2時間半にわたって保持した。加熱を止め、317.7部のブチルセロソルブを加えた。こうして得られたアクリルプレポリマーは、固形分(NV)が44.3%、酸価が313、そしてブルックフィールド粘度(ASTMD-2196にしたがって測定)が4,990センチポイズ(cps)であった。
【0143】
実施例1:実験2.酸官能性アクリル樹脂の製造
677.7部のグレイシャルメタクリル酸(MAA)、677.7部のブチルメタクリラート(BMA)、150.8部のスチレン、および96.9部の過酸化ベンゾイル(70%水湿潤)のプレミックスを別個の容器にて調製した。5リットルのフラスコに、攪拌機、還流冷却器、熱電対、加熱マントル、および窒素流入管を取り付けた。プレミックスの10%を、536.9部のブタノールおよび40.7部の脱イオン水と共にフラスコに加えた。残部のプレミックスに、758.1部のブタノールと50.6部の脱イオン水を加えた。フラスコ中に窒素ガスを流入させつつ、内容物を93℃に加熱した。93℃にて外部加熱を止め、10分間にわたって材料の温度を上昇するままにしておいた。15分後、バッチの温度は98℃となり、残部のプレミックスを、温度を97℃〜100℃に保持しながら2時間にわたって均一に加えた。バッチの温度を3時間にわたって保持した。加熱を止め、バッチを冷却した。こうして得られたアクリルプレポリマーは、NVが49.9%、酸価が304、そしてブルックフィールド粘度が101,000センチポイズであった。
【0144】
実施例1:実験3.酸官能性アクリル樹脂の製造
802.6部のグレイシャルメタクリル酸(MAA)、807部のブチルメタクリラート、178.5部のスチレン、80.3部のt-ブチルペルオクトアート(t-butyl peroctoate)、838.5部のブタノール、および59.9部の脱イオン水のプレミックスを別個の容器にて調製した。5リットルのフラスコに、攪拌機、還流冷却器、熱電対、加熱マントル、および窒素流入管を取り付けた。5リットルのフラスコに、635.8部のブタノールと48.1部の脱イオン水を加えた。フラスコを94℃に加熱した。94℃にて、12.5部のt-ブチルペルオクトアートを加えた。このバッチを5分間保持してから、プレミックスを2.5時間で加えた。59.2部のブタノールと16.1部のt-ブチルペルオクトアートを含有する第2のプレミックスを調製した。第1のプレミックスの付加が完了した後、第2のプレミックスを30分で加えた。これが完了した後、このバッチを30分保持した。3.4部のt-ブチルペルオクトアートをさらに加え、このバッチを2時間保持した。2時間保持した後、加熱を止め、バッチを冷却した。こうして得られたアクリルプレポリマーは、NVが50.1%、酸価が292、そしてブルックフィールド粘度が150,000センチポイズであった。
【0145】
実施例1:実験4.酸官能性アクリル樹脂の製造
802.6部のグレイシャルメタクリル酸、445.9部のエチルアクリラート、535.1部のスチレン、108.6部のt-ブチルペルオクトアート、838.5部のブタノール、および59.9部の脱イオン水のプレミックスを別個の容器にて調製した。5リットルのフラスコに、攪拌機、還流冷却器、熱電対、加熱マントル、および窒素流入管を取り付けた。5リットルのフラスコに、635.8部のブタノールと48.1部の脱イオン水を加えた。フラスコを94℃に加熱した。94℃にて、16.6部のt-ブチルペルオクトアートを加えた。このバッチを5分間保持してから、プレミックスを2.5時間で加えた。59.2部のブタノールと21.2部のt-ブチルペルオクトアートを含有する第2のプレミックスを調製した。第1のプレミックスの付加が完了した後、第2のプレミックスを30分で加えた。これが完了した後、このバッチを30分保持した。3.4部のt-ブチルペルオクトアートをさらに加え、このバッチを2時間保持した。2時間保持した後、加熱を止め、バッチを冷却した。こうして得られたアクリルプレポリマーは、NVが49.8%、酸価が303、そしてブルックフィールド粘度が21,650センチポイズであった。
【0146】
実施例1:実験5〜11
実施例1:実験4に記載の方法を使用して、表1に示す系を調製した。
【0147】
【表3】

【0148】
実施例1:実験12.酸官能性アクリル樹脂の製造
803.4部のグレイシャルメタクリル酸、446.3部のエチルアクリラート(EA)、535.5部のスチレン、153部の過酸化ベンゾイル(70%水湿潤)、839.2部のブタノール、および60部の脱イオン水のプレミックスを別個の容器にて調製した。5リットルのフラスコに、攪拌機、還流冷却器、熱電対、加熱マントル、および窒素流入管を取り付けた。フラスコに、636.3部のブタノールと48.2部の脱イオン水を加え、フラスコ中に窒素ガスを流入させつつ97℃〜100℃に加熱した。温度を97℃〜100℃に保持しながら、プレミックスを2.5時間で均一に加えた。プレミックスが存在している場合、プレミックス容器を59.2部のブタノールですすぎ洗いし、フラスコに加えた。このバッチの温度を2時間保持した。加熱を止め、バッチを冷却した。こうして得られたアクリルプレポリマーは、NVが50.2%、酸価が301、そしてブルックフィールド粘度が25,400センチポイズであった。
【0149】
実施例1:実験13〜15
実施例1:実験12に記載の方法を使用して、表2に示す系を調製した。
【0150】
【表2】

【0151】
実施例2:実験1.酸官能性アクリル樹脂の塩の製造
3リットルのフラスコに、攪拌機、還流冷却器、ディーンシュタルク管、熱電対、加熱マントル、および窒素流入管を取り付けた。このフラスコに、711.5部の実施例1:実験1のアクリル樹脂、762.9部の脱イオン水、および56.9部のジメチルエタノールアミン(DMEA)を加えた。内容物を加熱還流し、553部をフラスコから留去した。蒸留が完了した後、598部の脱イオン水を加えた。バッチを冷却し、固形分が20.3%で酸価が307のアクリル樹脂溶液を得た。
【0152】
実施例2:実験2.酸官能性アクリル樹脂の塩の製造
5リットルのフラスコに、攪拌機、還流冷却器、ディーンシュタルク管、熱電対、加熱マントル、および窒素流入管を取り付けた。このフラスコに、1853部の実施例1:実験2のアクリル樹脂、2220.4部の脱イオン水、および163.3部のジメチルエタノールアミンを加えた。内容物を加熱還流し、1587部をフラスコから留去した。蒸留が完了した後、1718部の脱イオン水を加えた。バッチを冷却し、固形分が22.2%、酸価が294、pHが6.0、および粘度が13秒(ASTMD-1200にしたがって測定されるNo.4フォードカップ粘度)のアクリル樹脂溶液を得た。
【0153】
実施例2:実験3.酸官能性アクリル樹脂の塩の製造
5リットルのフラスコに、攪拌機、還流冷却器、ディーンシュタルク管、熱電対、加熱マントル、および窒素流入管を取り付けた。このフラスコに、1852.3部の実施例1:実験3のアクリル樹脂、2219部の脱イオン水、および163部のジメチルエタノールアミンを加えた。内容物を加熱還流し、1463部をフラスコから留去した。蒸留が完了した後、1581部の脱イオン水を加えた。バッチを冷却し、固形分が21.6%、酸価が284、pHが6.23、および粘度が13秒(No.4フォードカップ)のアクリル樹脂溶液を得た。
【0154】
実施例2:実験4.酸官能性アクリル樹脂の塩の製造
5リットルのフラスコに、攪拌機、還流冷却器、ディーンシュタルク管、熱電対、加熱マントル、および窒素流入管を取り付けた。このフラスコに、1799.2部の実施例1:実験4のアクリル樹脂、2155.9部の脱イオン水、および158.6部のジメチルエタノールアミンを加えた。内容物を加熱還流し、1541部をフラスコから留去した。蒸留が完了した後、1615部の脱イオン水を加えた。バッチを冷却し、固形分が22.16%、酸価が302、pHが6.55、およびブルックフィールド粘度が2060センチポイズのアクリル樹脂溶液を得た。
【0155】
実施例2:実験5〜15
実施例2:実験4に記載の方法を使用して、表3に示す系を調製した。実施例2の各実験は、実施例1からの対応番号の実験を使用した。すなわち、実施例2:実験5は、実施例1:実験5からのアクリルプレポリマーを使用した、など。
【0156】
【表5】

【0157】
実施例3:実験1.エマルジョン
1リットルのフラスコに、攪拌機、還流冷却器、熱電対、加熱マントル、および窒素流入管を取り付けた。このフラスコに、313.9部の実施例2:実験3の塩と267.3部の脱イオン水を加えた。フラスコの内容物を、280回転/分(RPM)にて75℃に加熱した。別の容器に、71.4部のスチレン、116.3部のブチルメタクリラート、および16.3部のグリシジルメタクリラート(GMA)のプレミックスを調製した。フラスコの温度が75℃になったとき、プレミックスの10%を加え、次いで2.04部のベンゾインと20部の脱イオン水を加えた。フラスコをさらに79℃に加熱した。79℃にて2.04部の35%過酸化水素を加え、5分間保持した。5分後、温度制御を81℃に設定し、残部のプレミックスを1時間で加えた。プレミックスの付加が完了したとき、20部の脱イオン水を使用してすすぎ洗いして、残留プレミックスをフラスコ中に入れた。バッチを10分間保持してから、0.35部のベンゾイン、20部の脱イオン水、および0.35部の35%過酸化水素を加えた。2時間後、加熱を止め、バッチを冷却した。これにより、固形分が31.9%、酸価が63.3、pHが6.48、およびブルックフィールド粘度が203センチポイズのエマルジョンが得られた。
【0158】
実施例3:実験2.エマルジョン
0.5リットルのフラスコに、攪拌機、還流冷却器、熱電対、加熱マントル、および窒素流入管を取り付けた。このフラスコに、155.6部の実施例2:実験4の塩と120.6部の脱イオン水を加えた。フラスコの内容物を、240RPMにて75℃に加熱した。別の容器に、66.3部のスチレン、19.6部のエチルアクリラート、および7.5部のグリシジルメタクリラートのプレミックスを調製した。フラスコの温度が75℃になったとき、プレミックスの10%を加え、次いで0.91部のベンゾインと9.4部の脱イオン水を加えた。フラスコをさらに79℃に加熱した。79℃にて0.91部の35%過酸化水素を加え、5分間保持した。5分後、温度制御を81℃に設定し、残部のプレミックスを1時間で加えた。プレミックスの付加が完了したとき、9.4部の脱イオン水を使用してすすぎ洗いして、残留プレミックスをフラスコ中に入れた。バッチを10分間保持してから、0.16部のベンゾイン、9.4部の脱イオン水、および0.16部の35%過酸化水素を加えた。2時間後、加熱を止め、バッチを冷却した。これにより、固形分が30.9%、酸価が83.8、pHが6.70、および粘度が40秒(No.4フォードカップ)のエマルジョンが得られた。
【0159】
実施例3:実験3.エマルジョン
1リットルのフラスコに、攪拌機、還流冷却器、熱電対、加熱マントル、および窒素流入管を取り付けた。このフラスコに、311.2部の実施例2:実験4の塩と241.2部の脱イオン水を加えた。フラスコの内容物を、270RPMにて75℃に加熱した。別の容器に、112.1部のスチレン、59.8部のエチルアクリラート、および14.9部のグリシジルメタクリラートのプレミックスを調製した。フラスコの温度が75℃になったとき、プレミックスの10%を加え、次いで1.87部のベンゾインと18.8部の脱イオン水を加えた。フラスコをさらに79℃に加熱した。79℃にて1.87部の35%過酸化水素を加え、5分間保持した。5分後、温度制御を81℃に設定し、残部のプレミックスを1時間で加えた。プレミックスの付加が完了したとき、18.8部の脱イオン水を使用してすすぎ洗いして、残留プレミックスをフラスコ中に入れた。バッチを10分間保持してから、0.32部のベンゾイン、18.8部の脱イオン水、および0.32部の35%過酸化水素を加えた。2時間後、加熱を止め、バッチを冷却した。これにより、固形分が31.8%、酸価が76.7、pHが6.67、および粘度が28秒(No.4フォードカップ)のエマルジョンが得られた。
【0160】
実施例3:実験4.エマルジョン
5リットルのフラスコに、攪拌機、還流冷却器、熱電対、加熱マントル、および窒素流入管を取り付けた。このフラスコに、1525.0部の実施例2:実験4の塩と1219.1部の脱イオン水を加えた。フラスコの内容物を、250RPMにて70℃に加熱した。別の容器に、380.4部のスチレン、278.3部のブチルアクリラート(BA)、194.9部のブチルメタクリラート、および74.2部のグリシジルメタクリラートのプレミックスを調製した。フラスコの温度が70℃になったとき、プレミックスの10%を加え、次いで9.29部のベンゾインと92.9部の脱イオン水を加えた。フラスコをさらに79℃に加熱した。79℃にて9.29部の35%過酸化水素を加え、5分間保持した。5分後、温度制御を81℃に設定し、残部のプレミックスを1時間で加えた。プレミックスの付加が完了したとき、92.9部の脱イオン水を使用してすすぎ洗いして、残留プレミックスをフラスコ中に入れた。バッチを10分間保持してから、1.59部のベンゾイン、92.9部の脱イオン水、および1.59部の35%過酸化水素を加えた。バッチを45分間保持してから、0.52部のベンゾインと0.52部の35%過酸化水素を加えた。2時間後、加熱を止め、バッチを冷却した。これにより、固形分が31.4%、酸価が64.1、pHが6.95、および粘度が22秒(No.4フォードカップ)のエマルジョンが得られた。
【0161】
実施例3:実験5.エマルジョン
12リットルのフラスコに、攪拌機、還流冷却器、熱電対、加熱マントル、および窒素流入管を取り付けた。このフラスコに、3886.5部の実施例2:実験4の塩と3022.5部の脱イオン水を加えた。フラスコの内容物を、235RPMにて70℃に加熱した。別の容器に、771.25部のスチレン、933.75部のブチルアクリラート、537.5部のブチルメタクリラート、および93.75部のグリシジルメタクリラートのプレミックスを調製した。フラスコの温度が70℃になったとき、23.38部のベンゾインと116.25部の脱イオン水を加え、次いでプレミックスの10%を加えた。フラスコをさらに79℃に加熱した。79℃にて23.38部の35%過酸化水素と116.25部の脱イオン水を加え、5分間保持した。5分後、温度制御を81℃に設定し、残部のプレミックスを1時間で加えた。プレミックスの付加が完了したとき、232.5部の脱イオン水を使用してすすぎ洗いして、残留プレミックスをフラスコ中に入れた。バッチを10分間保持してから、4.0部のベンゾイン、232.5部の脱イオン水、および4.0部の35%過酸化水素を加えた。バッチを45分間保持してから、1.25部のベンゾインと1.25部の35%過酸化水素を加えた。2時間後、加熱を止め、バッチを冷却した。これにより、固形分が31.4%、酸価が72.4、pHが7.05、および粘度が32秒(No.4フォードカップ)のエマルジョンが得られた。
【0162】
実施例3:実験6〜10
実施例3:実験4に記載の方法を使用して、表4に示すエマルジョンを調製した。
【0163】
【表6】

【0164】
この一連の樹脂から、GMAのレベルが減少するにつれて、容認できるエマルジョンを得るのがより困難になるということがわかった。
実施例3:実験11〜18
実施例2:実験9を上記の酸官能性アクリル樹脂塩および方法として使用する設計実験(a design experiment)を準備した。これを表5に示す。
【0165】
【表7】

【0166】
表5からのラテックスを、さらなる変更や配合を施すことなく試験した。得られた結果を表6に示す。各組成物を、7〜8ミリグラム/in2(msi)〔1.1〜1.25mg/平方センチメートル(mg/cm2)〕のフィルム重量にてアルコアALXアルミニウム上に延伸し、10秒間キュアーして、ガス燃焼コイルオーブン中にて420°F(215℃)のピーク金属温度を達成した。
【0167】
【表8】

【0168】
実施例3:実験5bと実験19〜25
実施例2:実験4を上記の酸官能性アクリル樹脂塩および方法として使用する設計実験を準備した。これを表7に示す。実施例3:実験5bは、変量(variables)の1つとして含めた。これは実験5の繰り返しである。
【0169】
【表9】

【0170】
表7からのラテックスを、さらなる変更や配合を施すことなく試験した。得られた結果を表8に示す。各組成物を、7〜8msi(1.1〜1.25mg/cm2)のフィルム重量にてアルコアALXアルミニウム上に延伸し、10秒間キュアーして、ガス燃焼コイルオーブン中にて420°F(215℃)のピーク金属温度を達成した。
【0171】
【表10】

【0172】
実施例3:実験26〜33
実施例2:実験11を上記の酸官能性アクリル樹脂塩および方法として使用する設計実験を準備した。これを表9に示す。
【0173】
【表11】

【0174】
表9からのラテックスを、さらなる変更や配合を施すことなく試験した。得られた結果を表10に示す。各組成物を、7〜8msi(1.1〜1.25mg/cm2)のフィルム重量にてアルコアALXアルミニウム上に延伸し、10秒間キュアーして、ガス燃焼コイルオーブン中にて420°F(215℃)のピーク金属温度を達成した。
【0175】
【表12】

【0176】
下記は、表5〜10において示されているエマルジョンDOEの結果から導き出される結論の一部である。実施例2:実験9からのスチレン非含有アクリル樹脂安定剤ポリマーは、より高い粘度のエマルジョンをもたらした(最終用途によっては、あまり望ましいことではない)。実施例2:実験4からの組成物は、全体としてより良好なフィルム性能を示した。一般に、アクリルポリマー/モノマーの比が高くなるほど、フィルムの保全性(コンティニュイティ)はより悪化する傾向を示した。エマルジョンモノマー混合物中のGMAのレベルがより高くなると、エマルジョンの粘度がより高くなり、レトルト後のフィルムのコンティニュイティ(mA)がより増大する傾向を示した。種々のコモノマー組成物間にほとんど差異はなく、したがって、全体としてのエマルジョンモノマー組成を変える上での許容範囲がある。
【0177】
実施例3:実験34〜35
モノマー対酸官能性アクリル樹脂の比を73/27(固体/固体)として、表11に示す一連のエマルジョンを作製した。これらの系は、実施例2:実験4の酸官能性アクリル樹脂塩を使用し、実施例3:実験5に記載の方法を使用して調製した。
【0178】
【表13】

【0179】
グリシジルメタクリレートのレベルが増大するにつれて、得られる酸価が減少していることがわかる。このことは、GMAが、アクリルポリマー安定剤上の酸基の一部を消費したことを示している。
【0180】
実施例3:実験36〜42
モノマー対酸官能性アクリル樹脂の比を73/27(固体/固体)として、表12に示す一連のエマルジョンを作製した。これらの系は、実施例2:実験10の酸官能性アクリル樹脂塩を使用し、実施例3:実験5b記載の方法を使用して調製した。このアクリル系誘導体は、キュアー中においてIBMAと理論的に共反応しうるヒドロキシル官能価を有している。
【0181】
【表14】

【0182】
表12からのラテックスを、さらなる変更や配合を施すことなく試験した。得られた結果を表13に示す。各組成物を、7〜8msi(1.1〜1.25mg/cm2)のフィルム重量にてアルコアALXアルミニウム上に延伸し、10秒間キュアーして、ガス燃焼コイルオーブン中にて420°F(215℃)のピーク金属温度を達成した。
【0183】
【表15】

【0184】
表13の結果から、エマルジョンモノマー組成物中のIBMAの最適レベルは、アクリルポリマー安定剤中のヒドロキシル官能価と関連させて使用すると、約5%であるということがわかる。
【0185】
実施例4:実験1〜2.噴霧塗布
実施例3:実験4の水ベースエマルジョンを適切に配合して、ビール/飲料用アルミニウム缶内部のためのスプレー塗布コーティングにした。表14に記載のように、生成物は、追加の界面活性剤を組み込んだ場合と組み込まない場合について配合した。
【0186】
【表16】

【0187】
これらの配合物を、飲料用缶コーティング内部の塗布に対して、缶1つ当たり120ミリグラム(120mg/缶)〜130mg/缶のコーティング重量という典型的な実験室条件にてスプレーし、ガスオーブンコンベヤーに通して188℃〜199℃(缶ドームにて測定)で30秒という、こうした塗布に対する典型的な加熱スケジールにてキュアーした。表15に示すフィルム特性が達成された。
【0188】
【表17】

【0189】
硬化フィルムは、MEKでの摩擦によって決定される耐溶剤性が低いという事実にもかかわらず、優れた耐MEK性と低いグローバル抽出を示した。実施例4:実験2の場合の、より高いグローバル抽出結果は、界面活性剤の存在によるものと決定された。
【0190】
実施例4:実験3〜4. スプレー塗布
実施例3:実験4と実施例3:実験7の水ベースエマルジョンを適切に配合して、ビール/飲料用アルミニウム缶内部のためのスプレー塗布コーティングにした。コーティングの組成を表16に示す。
【0191】
【表18】

【0192】
これらの配合物を、飲料用缶コーティング内部の塗布に対して、120mg/缶〜130mg/缶(12オンス)のコーティング重量という典型的な実験室条件にてスプレーし、ガスオーブンコンベヤーに通して188℃〜199℃(缶ドームにて測定)で30秒という、こうした塗布に対する典型的な加熱スケジールにてキュアーした。市販のエポキシアクリラートコーティングを対照標準として使用して、表17に示すフィルム特性が達成された。
【0193】
【表19】

【0194】
表17からわかるように、本発明のコーティングは、市販のエポキシ-アクリラートコーティングと比べて遜色がなく、耐レトルト性に関してかなりの利点がある。
実施例5:実験1.飲料用缶エンドのコイル・コーティング
攪拌機を取り付けたジャーにおいて、483.25部の実施例3:実験5のエマルジョンと16.75部のスリッペイド(SLIPAYD)404ワックスとを攪拌した。本混合物を10分攪拌して均一にした。次いで本混合物を濾過した。本混合物の固形分は約31%であった。本混合物を、7〜8ミリグラム/平方インチ(msi)(1.1〜1.25mg/cm2)にてALXアルコアアルミニウム上に塗布し、コイルオーブン中にて10秒間ベークして400°F(204℃)のピーク金属温度を達成した。さらに、7〜8msi(1.1〜1.25mg/cm2)にてALXアルコアアルミニウム上に塗布し、コイルオーブン中にて10秒間ベークして435°F(224℃)のピーク金属温度を達成した。フィルムの特性を表18に示す。
【0195】
【表20】

【0196】
実施例5:実験2〜4.飲料用缶エンドコーティング
実施例5:実験1に記載の方法を使用して、表19に示す配合物を作製し、缶エンドのコンティニュイティに及ぼすGMAレベルの影響を調べた。各組成物を、7〜8ミリグラム/in2(msi)(1.1〜1.25mg/cm2)のフィルム重量にてアルコアALXアルミニウム上に塗布し、10秒間ベークして、コイルオーブン中にて420°F(215℃)のピーク金属温度を達成した。缶エンドのコンティニュイティを表20に示す。
【0197】
【表21】

【0198】
【表22】

【0199】
表20に記載のデータからわかるように、GMAのレベルが低くなるほど、作製される缶エンドに対し、特にレトルト後において、より優れたフィルム保全性をもたらすようである。
【0200】
実施例5:実験5.飲料用缶エンドコーティング
実施例5:実験1に記載の方法を使用して、表21に示す配合物を作製した。各組成物を、7〜8ミリグラム/in2(msi)(1.1〜1.25mg/cm2)のフィルム重量にてALXアルコアアルミニウム上に塗布し、10秒間ベークして、コイルオーブン中にて400°F(204℃)と420°F(215℃)のピーク金属温度を達成した。フィルムと缶エンドの性能特性を表22に示す。この材料は、エマルジョンモノマー混合物およびヒドロキシル官能価を含んだアクリル樹脂組成物中に4%のGMAと5%のIBMAを含有する。
【0201】
【表23】

【0202】
【表24】

【0203】
表22の結果から、本発明の飲料用缶エンド配合物は、MEKでの二重摩擦によって測定される耐溶剤性はより低いものの、エポキシベースの市販の水系飲料用缶エンドコーティングと同等の性能をもたらすことができるということがわかる。さらに、フェザリング抵抗性が改良されるという利点がもたらされる。
【0204】
実施例6:ポリエステル安定剤を含んだラテックス
実施例6は、種々の酸官能性ポリマー塩を本発明のエマルジョンのための安定剤として使用することを説明すべく意図されている。
【0205】
段階A
2リットルのフラスコに、攪拌機、充填剤入りカラム、ディーンシュタルクトラップ、還流冷却器、熱電対、加熱マントル、および窒素流入管を取り付けた。このフラスコに、700.1部のジプロピレングリコールと700.1部のイソフタル酸を加えた。窒素雰囲気下において、内容物を125℃に加熱した。125℃において、1.05部のFASCAT4201を加えた。温度を上げて水を除去した。210℃にて、水が採取され始めた。5.2の酸価が得られた後、37部のキシレンを加えて水の除去を促進させた。0.9の酸価が得られ、この生成物の一部を段階Bにおいて使用した。
【0206】
段階B
段階Aからの物質(599.8部)を2リットルのフラスコ中に入れた。温度を112℃に設定し、82部の無水トリメリット酸を加えた。物質を232℃に加熱して水を除去した。48.4の酸価が得られた後、物質の一部を段階Cにおいて使用した。
【0207】
段階C
段階Bからの物質(198.8部)を2リットルのフラスコに加え、40部のドワノールPNPを加えた。物質の温度を74℃に調整し、脱イオン水のゆっくりした添加を開始した。約30部の水を加えた後、7.6部のジメチルエタノールアミンを導入した。約150部の脱イオン水を加えたときに加熱を止め、2.4部のジメチルエタノールアミンを加えた。脱イオン水の全ての添加が完了した後、粘度の上昇が目視にて認められ、さらに200部の脱イオン水を加えた。物質をゆっくりと自然冷却させながら、追加のジメチルエタノールアミンを徐々に加えてpHを6.6に増大させた。得られた生成物は、固形分が29.7%であり、酸価が53.9であった。
【0208】
段階D
500ミリリットルのフラスコに、攪拌機、還流冷却器、熱電対、加熱マントル、および窒素流入管を取り付けた。このフラスコに、93.2部の段階Cの物質と179部の脱イオン水を加えた。フラスコの内容物を240RPMで50℃に加熱しながら、2滴のHAMP-OL4.5%鉄と1.11部のエリソルビン酸を加えた。別の容器に、28.8部スチレン、50.9部のBA、21.0部のBMA、5.6部のIBMA、4.5部のGMA、および1.11部のトリゴノックス(TRIGONOX)A-W70のプレミックスを作製した。フラスコの温度が52℃になったときにプレミックスの10%を加え、5分間保持した。5分後、温度制御を50℃に設定し、残部のプレミックスを1時間で加えた。添加が完了したら、15.0部の脱イオン水を使用して残留プレミックスをすすぎ洗いし、これをフラスコ中に入れた。バッチをこの温度で2時間保持してから、バッチを冷却した。これにより、固形分が34.0%、酸価が14.5、pHが5.45、および粘度が11.5秒(No.4フォードカップ)のエマルジョンが得られた。
【0209】
段階E
段階Dからのエマルジョン50部に、エチレングリコールとブチルセロセルブの50/50ブレンド3.125部を加えた。この物質を、クロム処理したアルミニウムパネルに塗布し、10秒ベークして420°F(217℃)のピーク金属温度を達成した。本実施例と市販の対照標準配合物の飲料用缶エンド試験からの結果を表23に示す。
【0210】
【表25】

【0211】
実施例7:内部スプレー用エマルジョン
3リットルのフラスコに、攪拌機、還流冷却器、熱電対、加熱マントル、および窒素流入管を取り付けた。このフラスコに、392.2部の実施例1:実験4の酸官能性アクリル樹脂、86.4部の脱イオン水、34.6部のDMEA、および1120.8部の脱イオン水を加えた。フラスコの内容物を70℃に加熱した。別の容器に、215.8部のスチレン、302.7部のブチルアクリラート、および42.0部のグリシジルメタクリラートのプレミックスを調製した。フラスコの温度が70℃になったときに、5.5部のベンゾインと27.8部の脱イオン水を加え、次いでプレミックスの10%を加えた。フラスコをさらに79℃に加熱し、この温度に達したときに、5.5部の35%過酸化水素と27.8部の脱イオン水を加え、5分保持した。フラスコを210rpmで攪拌した。5分後、温度制御を81℃に設定し、残部のプレミックスを1時間で加えた。添加が完了したとき、55.9部の脱イオン水を使用して残留プレミックスをすすぎ洗いし、これをフラスコに加えた。このバッチを10分保持してから、0.96部のベンゾイン、55.9部の脱イオン水、および0.95部の35%過酸化水素を加えた。このバッチを45分保持してから、0.31部のベンゾインと0.31部の35%過酸化水素を加えた。2時間後、バッチを45℃に冷却した。45℃になったとき、0.46部のHAMP-OL4.5%鉄、2.98部のトリゴノックスA-W70、および2.1部のエリソルビン酸と0.91部のDMEAと18.0部の脱イオン水とのプレミックスを加えた。このバッチを45℃で1時間保持した。次いでこの物質を冷却して、固形分が31.6%、酸価が67.7、pHが7.04、そして粘度が84秒(No.4フォードカップ)のエマルジョンを得た。
【0212】
実施例8:スプレー塗布
実施例7の水ベースエマルジョンを適切に配合して、ビール/飲料用アルミニウム缶の内部用のスプレー塗布コーティングを得た。この生成物は、表24に記載のように配合した。
【0213】
【表26】

【0214】
この配合物を、飲料用缶内部コーティングの塗布に対して、缶1個当たり120ミリグラム(120mg/缶)〜130mg/缶という典型的な実験室条件にてスプレーし、ガスオーブンコンベヤーに載せて、こうした塗布に対する一般的な加熱スケジュールにて、188℃〜199℃の温度(缶ドームにおいて測定)で30秒キュアーした。表25に示すフィルム特性が達成された。
【0215】
【表27】

【0216】
表25からわかるように、本発明のコーティングは、市販のエポキシ-アクリラートコーティングと遜色がない。
実施例9:ポリエステル-ポリエーテル安定剤を含んだラテックス
実施例9では、種々の酸官能性ポリマー塩を本発明のエマルジョンのための安定剤として使用することを説明する。
【0217】
段階A
フラスコに、攪拌機、充填剤入りカラム、ディーンシュタルクトラップ、還流冷却器、熱電対、加熱マントル、および窒素流入管を取り付けた。このフラスコに、809.8部のセバシン酸と1283.0部のCHDM-90(水中90%1,4-シクロヘキサンジメタノール)を加えた。窒素雰囲気下にて、内容物を加熱して、CHDM-90から水を留去した。内容物の温度が165℃になったとき、1.96部のFASCAT4100を加えた。温度を220℃に上昇させて水を除去した。このバッチのサンプルを試験し、0.5の酸価を有することが見出された。バッチの残部を計量し、1711.7部のこの物質に、1040.2部のp-ヒドロキシ安息香酸を加えた。バッチを230℃に加熱して水を除去した。水の除去を促進させるために、キシレンを徐々に加えた。2日間にわたって水を除去した後、1.04部のFASCAT4100を加えて反応を促進させた。反応混合物をさらに5時間保持した(反応は完全に進行したと思われる)。この生成物の一部を、段階Bにおいて使用した。
【0218】
段階B
段階Aからの物質(1915.2部)を、823.8部のERISYS GE-22(シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル)、84.8部のメチルイソブチルケトン、および2.63部のキャタリスト1201(ヨウ化エチルトリフェニルホスホニウム)と共にフラスコ中に装入した。温度を170℃に設定し、内容物を加熱した。室温で3時間後、物質のエポキシ値は0.003であった。この物質2684.2部がフラスコ中に含まれるようにバッチを調節した。フラスコに、145.0部のメチルイソブチルケトンと294.7部の無水コハク酸を加えた。温度を120〜135℃にて2時間保持した。2時間保持した後、124.8部の脱イオン水および214.2部のDMEAと265.8部の脱イオン水とのプレミックを加えた。次いで6325.8部の脱イオン水を加えた。物質を冷却して、固形分が26.4%、酸価が71.9、pHが7.7、そしてNo.4フォードカップ粘度が15秒の生成物が得られた。この物質を段階Cにおいて使用した。
【0219】
段階C
5リットルのフラスコに、攪拌機、還流冷却器、熱電対、加熱マントル、および窒素流入管を取り付けた。このフラスコに、1183.4部の段階Bの物質、および779.6部の脱イオン水を加えた。7.25部のエリソルビン酸、6.5部のDMEA、および76.7部の脱イオン水のプレミックスを調製した。このプレミックスと0.18部のHAMP-OL4.5%鉄をフラスコに加えた。フラスコの内容物を30℃に加熱した。別の容器に、249.0部のスチレン、113.8部のBA、106.7部のBMA、177.8部のヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA)、35.6部のIBMA、および28.5部のGMAのモノマープレミックスを作製した。7.25部のトリゴノックスA-W70と82.2部の脱イオン水との第3のプレミックスを作製した。全てのプレミックスを作製し、フラスコの温度が30℃になったときに、攪拌機を240rpmに設定し、モノマープレミックスを全て加えた。モノマープレミックスの容器を81.6部の脱イオン水ですすぎ洗いし、これもフラスコに加えた。フラスコの内容物を10分攪拌してから、第3のプレミックスの10%を1分以内に加えた。第3のプレミックスの10%を加えた後、温度を37℃に上げ、バッチを5分保持した。5分後、第3のプレミックスの残量を45分で加えた。外部から熱を加えなくても、温度が上昇した。添加時における最高温度は57℃であった。添加が完了したときの温度は51℃であった。温度制御を52℃に設定した。第3のプレミックスを108.4部の脱イオン水ですすぎ洗いし、これをバッチに加えた。このバッチを1.5時間保持し、次いで冷却した。これにより、固形分が33.1%、酸価が27.1、pHが7.9、そして粘度が12秒(No.4フォードカップ)のエマルジョンが得られた。
【0220】
段階D
段階Cからのエマルジョン1473.75部に26.25部のDMEOAを加えて、pHを8.6に増大させた。pHを増大させたこの物質を1330.18部使用して、89.51部のエチレングリコール、16.65部の二塩基性エステル、16.67部のドワノールPM、5.17部のキシレン、フェノール-ホルムアルデヒドフェノール樹脂の50%固形分溶液17.5部、および24.57部のマイケム(MICHEM)160PFEを加えた。この配合物は、30.1%の固形分、12秒のNo.4フォード粘度、および8.75ポンド/ガロン(1.05kg/l)であることがわかった。
【0221】
段階Dの組成物を、クロム処理していないアルミニウムパネルに塗布し、10秒ベークして420°F(217℃)のピーク金属温度を達成した。第2のセットを10秒ベークして440°F(227℃)のピーク金属温度を達成した。本実施例および市販の水ベース対照標準配合物と溶剤ベース対照標準配合物の飲料用缶エンド試験の結果を表26と27に示す。
【0222】
【表28】

【0223】
【表29】

【0224】
実施例10
実施例10では、種々の酸官能性ポリマー塩を本発明のエマルジョンのための安定剤として使用することを説明する。
【0225】
段階1
約1055部のBPAを、約1684部の液体エポキシ樹脂〔エポン(EPON)828〕、85部のメチルイソブチルケトン、および2〜3部のキャタリスト(Catalyst)1201と共にフラスコ中に入れる。温度を160℃に設定し、内容物を約3時間加熱して、約0.03のエポキシ価の物質を得る。この物質をフラスコ中に2684.2部収容するようバッチを調節する。このフラスコに、145.0部のメチルイソブチルケトンと294.7部のコハク酸無水物を加える。温度を120〜135℃で2時間保持する。2時間保持した後、124.8部の脱イオン水および214.2部のDMEAと265.8部の脱イオン水とのプレミックスを加える。次いで6325.8部の脱イオン水を加える。物質を冷却すると、固形分が26%〜27%、酸価が約72、pHが約7〜9、そして15秒のNo.4フォード粘度、というターゲット値を有する生成物が得られるはずである。この物質を段階2において使用する。
【0226】
段階2
5リットルのフラスコに、攪拌機、還流冷却器、熱電対、加熱マントル、および窒素流入管を取り付ける。このフラスコに、約1183部の段階1の物質と780部の脱イオン水を加える。7.25部のエリソルビン酸、6.5部のDMEA、および77部の脱イオン水のプレミックスを作製する。この第1のプレミックスと0.18部のHAMP-OL4.5%鉄をフラスコに加える。フラスコの内容物を30℃に加熱する。別の容器に、249部のスチレン、114部のBA、107部のBMA、178部のHEMA、36部のIBMA、および28部のGMAのモノマープレミックスを作製する。7.25部のトリゴノックスA-W70と82.2部の脱イオン水の第3のプレミックスを作製する。全てのプレミックスが作製され、フラスコの温度が30℃になったら、攪拌機を240rpmに設定し、モノマープレミックスを全部加える。モノマープレミックスの容器を82部の脱イオン水ですすぎ洗いし、これもフラスコに加える。フラスコの内容物を10分攪拌してから、第3のプレミックスの10%を1分以内に加える。次いで温度を37℃に上げる。このバッチを5分保持する。5分後、第3のプレミックスの残量を45分で加える。外部から熱を加えなくても、温度が上昇する。添加時の最高温度は57℃である。添加が完了したら、温度を52℃に設定する。第3のプレミックスを109部の脱イオン水ですすぎ洗いし、これをバッチに加える。バッチを1.5時間保持してから冷却する。このプロセスにより、固形分が約33%、酸価が27、pHが8、そして粘度が12秒(No.4フォードカップ)、というターゲット値を有する生成物が得られるはずである。
【0227】
段階3
段階2からの1474部のエマルジョンに26.25部のDMEOAを加えて、pHを8.6に増大させる。pHを増大させたこの物質を1330.18部使用して、89.51部のエチレングリコール、16.65部の二塩基性エステル、16.67部のドワノールPM、5.17部のキシレン、フェノール-ホルムアルデヒドフェノール樹脂の50%固形分溶液17.5部、および24.57部のマイケム160PFEを加える。こうした配合により、約30%の固形分を有する組成物が得られるはずである。
【0228】
段階3の組成物をクロム処理していないアルミニウムパネルに塗布し、10秒ベークして217℃のピーク金属温度を達成することができる。
本明細書中に挙げた特許、特許文献、および刊行物の全開示内容を、参照により(あたかもそれぞれが独立して組み込まれているように)本明細書に含める。本発明の要旨を逸脱することなく本発明に対する種々の改良や変更が可能であることは、当業者にとっては明らかであろう。理解しておかなければならないことは、本発明は、本明細書に記載の実施態様と実施例によって過度に限定されることを意図してはおらず、このような実施例と実施態様は単に例示のためにのみ与えられていて、本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ限定されるよう意図されている、ということである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸官能性もしくは酸無水物官能性ポリマーとアミンとの塩を、水を含んだキャリヤー中にて形成させて、水性分散液を作製する工程;
エチレン性不飽和モノマー成分と水性分散液とを合せる工程;および
水性分散液の存在下にてエチレン性不飽和モノマー成分を重合させて、乳化重合によるラテックスポリマーを形成させる工程;
を含む、乳化重合ラテックスポリマーを含んだ組成物を作製すること;ならびに
金属支持体を食品用もしくは飲料用缶またはその一部に造り上げる前に、あるいは造り上げた後に、金属支持体に乳化重合ラテックスポリマーを含んだ組成物を塗布すること;
を含む、食品用もしくは飲料用缶をコーティングする方法。
【請求項2】
組成物を金属支持体に塗布することが、平面コイルもしくは平面シートの形態の金属支持体に組成物を塗布すること;乳化重合ラテックスポリマーを硬化させること;および金属支持体を食品用もしくは飲料用缶またはその一部に造り上げること;を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
金属支持体を缶またはその一部に造り上げることが、金属支持体を缶エンドまたは缶ボディに造り上げることを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
缶が、ツーピース延伸食品用缶、スリーピース食品用缶、食品用缶エンド、延伸鉄缶、飲料用缶エンド、およびこれらの類似物である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
金属支持体がスチールまたはアルミニウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
金属支持体に組成物を塗布することが、金属支持体を缶またはその一部に造り上げた後に、金属支持体に組成物を塗布することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
エチレン性不飽和モノマー成分と水性分散液とを合せる工程が、水性分散液にエチレン性不飽和モノマー成分を加えることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
エチレン性不飽和モノマー成分を水性分散液に徐々に加える、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
エチレン性不飽和モノマー成分がモノマーの混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
モノマーの混合物が、少なくとも1種のオキシラン官能基含有モノマーを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
モノマーの混合物が、少なくとも1種のオキシラン官能基含有α,β-エチレン性不飽和モノマーを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
オキシラン官能基含有モノマーが、エチレン性不飽和モノマー成分中に、モノマー混合物の重量を基準として少なくとも0.1重量%の量にて存在する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
オキシラン官能基含有モノマーが、エチレン性不飽和モノマー成分中に、モノマー混合物の重量を基準として30重量%以下の量にて存在する、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
乳化重合ラテックスポリマーと、1種以上の架橋剤、充填剤、触媒、染料、顔料、トナー、エキステンダー、滑剤、防錆剤、流れ調整剤、チキソトロープ剤、分散剤、酸化防止剤、接着促進剤、光安定剤、有機溶剤、界面活性剤、またはこれらの組み合わせ物とを、コーティング組成物中にて合せることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
酸官能性ポリマーが1500〜50,000の数平均分子量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
組成物が、遊離BPAと芳香族グリシジルエーテル化合物を実質的に含有しない、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
組成物が、結合BPAと芳香族グリシジルエーテル化合物を実質的に含有しない、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
酸官能性もしくは酸無水物官能性ポリマーが、酸官能性もしくは酸無水物官能性アクリルポリマー、酸官能性もしくは酸無水物官能性アルキド樹脂、酸官能性もしくは酸無水物官能性ポリエステル樹脂、酸官能性もしくは酸無水物官能性ポリウレタン、またはこれらの組み合わせ物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
酸官能性もしくは酸無水物官能性ポリマーが酸官能性アクリルポリマーを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
酸官能性もしくは酸無水物官能性ポリマーがポリエステルポリマーを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
ポリエステルポリマーが、1つ以上の式Iのセグメント
-O-Ar-Rn-C(O)-O-R1-O-C(O)-Rn-Ar-O-
を含み、このとき
各Arは、独立的に、二価のアリール基もしくはヘテロアリーレン基であり;
各Rは、独立的に二価の有機基であり;
R1は二価の有機基であり;そして
各nは0もしくは1である、
請求項20に記載の方法。
【請求項22】
アミンが第三アミンである、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
第三アミンが、トリメチルアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチルメチルエタノールアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルプロピルアミン、ジメチル3-ヒドロキシ-1-プロピルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジメチル2-ヒドロキシ-1-プロピルアミン、ジエチルメチルアミン、ジメチル1-ヒドロキシ-2-プロピルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N-メチルモルホリン、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
酸官能性もしくは酸無水物官能性ポリマーを、水中にてアミンで少なくとも25%中和する、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
エチレン性不飽和モノマー成分を、水性分散液の存在下にて、水溶性のラジカル開始剤を使用して0℃〜100℃の温度で重合させる、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
ラジカル開始剤が過酸化物開始剤を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
ラジカル開始剤が過酸化水素とベンゾインを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
ラジカル開始剤がレドックス開始剤系を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
水性分散液が有機溶剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
有機溶剤の少なくとも一部を除去することをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
酸官能性もしくは酸無水物官能性ポリマーと第三アミンとの塩を、水を含んだキャリヤー中にて形成させて、水性分散液を作製する工程;
モノマー成分の重量を基準として0.1重量%〜30重量%のオキシラン官能基含有α,β-エチレン性不飽和モノマーと水性分散液とを合せる工程;および
水性分散液の存在下にてエチレン性不飽和モノマー成分を重合させて、乳化重合ラテックスポリマーを形成させる工程;
を含む、乳化重合ラテックスポリマーを含んだ組成物を作製すること;ならびに
金属支持体を食品用もしくは飲料用缶またはその一部に造り上げる前に、あるいは造り上げた後に、金属支持体に乳化重合ラテックスポリマーを含んだ組成物を塗布すること;
を含む、食品用もしくは飲料用缶をコーティングする方法。
【請求項32】
請求項1に記載の方法によって製造される食品用もしくは飲料用缶。
【請求項33】
請求項31に記載の方法によって製造される食品用もしくは飲料用缶。
【請求項34】
金属支持体を含んだボディ部分もしくはエンド部分;および
その上に配置されたコーティング組成物、このとき前記コーティング組成物が乳化重合ラテックスポリマーを含み、前記乳化重合ラテックスポリマーが、酸官能性もしくは酸無水物官能性ポリマーとアミンとの塩、エチレン性不飽和モノマー成分、および水から製造される;
を含む食品用もしくは飲料用缶。
【請求項35】
エチレン性不飽和モノマー成分がモノマーの混合物を含む、請求項34に記載の缶。
【請求項36】
モノマーの混合物が、少なくとも1種のオキシラン官能基含有モノマーを含む、請求項35に記載の缶。
【請求項37】
モノマーの混合物が、少なくとも1種のオキシラン官能基含有α,β-エチレン性不飽和モノマーを含む、請求項36に記載の缶。
【請求項38】
オキシラン官能基含有モノマーが、エチレン性不飽和モノマー成分中に、モノマー混合物の重量を基準として0.1重量%〜30重量%の量にて存在する、請求項36に記載の缶。
【請求項39】
酸官能性もしくは酸無水物官能性ポリマーが、酸官能性もしくは酸無水物官能性アクリルポリマー、酸官能性もしくは酸無水物官能性アルキド樹脂、酸官能性もしくは酸無水物官能性ポリエステル樹脂、酸官能性もしくは酸無水物官能性ポリウレタン、またはこれらの組み合わせ物を含む、請求項33に記載の缶。
【請求項40】
酸官能性もしくは酸無水物官能性ポリマーが酸官能性アクリルポリマーを含む、請求項39に記載の缶。
【請求項41】
アミンが第三アミンである、請求項33に記載の缶。
【請求項42】
乳化重合ラテックスポリマーを含んだ、食品用もしくは飲料用缶をコーティングするのに使用するための組成物であって、このとき前記乳化重合ラテックスポリマーが、酸官能性もしくは酸無水物官能性ポリマーとアミンとの塩、エチレン性不飽和モノマー成分、および水から製造される、前記組成物。

【公表番号】特表2008−516769(P2008−516769A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−538035(P2007−538035)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【国際出願番号】PCT/US2005/037750
【国際公開番号】WO2006/045017
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(503026211)ヴァルスパー・ソーシング・インコーポレーテッド (15)
【Fターム(参考)】