説明

置換された1−アミノ−4−フェニル−ジヒドロイソキノリン、それらの製造法、それらの薬剤としての使用、およびそれらを含有する薬剤

本発明は式I
【化1】


(式中、R1〜R11は特許請求の範囲で定義された意味を有する)の化合物に関する。このタイプの化合物を含有する薬剤は様々な疾患を予防または治療するのに有用である。本化合物は特に急性または慢性腎不全のような腎疾患、胆管機能障害、いびきまたは睡眠時無呼吸のような呼吸障害、あるいは中枢神経系の疾患に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は置換された1−アミノ−4−フェニル−ジヒドロイソキノリン型の化合物に関する。このタイプの化合物を含有する薬剤は様々な疾患の予防または治療において有用である。したがって、これらの化合物は特に急性または慢性腎不全のような腎障害、胆管機能障害、いびきまたは睡眠時無呼吸のような呼吸障害、あるいは卒中に使用することができる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0002】
本発明は式I
【化1】

[式中、R1、R2、R3およびR4は互いに独立して水素、F、Cl、Br、I、CN、NO2、CF3、CH3−SO2、(1、2、3または4個のC原子を有する)アルキル、NH2、NH−CH3またはN(CH3)2であり;
R5およびR6は互いに独立して水素、(1、2、3、4、5または6個のC原子を有する)アルキル、CF3−CH2−、(3、4、5または6個のC原子を有する)シクロアルキル、またはシクロプロピル−CH2−であり;あるいは
R5およびR6はそれらが結合している窒素原子と一緒になって1または2個のCH2基が互いに独立してNR12、硫黄、酸素、C(O)またはSO2により置換されうる4−、5−、6−、7−、8−、9−または10−員環を形成し;ここで
R12は水素、(1、2、3または4個のC原子を有する)アルキル、または(3、4、5または6個のC原子を有する)シクロアルキルであり;
R7は水素、または(1、2、3または4個のC原子を有する)アルキルであり;
R8およびR9は互いに独立して水素、F、Cl、Br、OH、(1、2、3または4個のC原子を有する)アルキル、CH3O、CF3またはCH3SO2であり;
R10およびR11は互いに独立してR13−(CmH2m)−Bnであり、ここで
mは0、1、2、3または4であり;
nは0または1であり;
Bは−CO−、−CONR14−または−SO2−であり;
R14は水素、または(1、2、3、4、5または6個のC原子を有する)アルキルであり;
R13は水素、(1、2、3または4個のC原子を有する)アルキル、(3、4、5または6個のC原子を有する)シクロアルキル、1−ピロリジニル、1−ピペリジニル、1−(4−メチルピペラジニル)、1−モルホリニル、−COOR15、OR16、NR17R18、または(互いに独立して塩素、フッ素、メチルおよびメトキシからなる群より選択される1または2個の置換基を有する)フェニルであり;
R15、R16、R17およびR18は互いに独立して水素、または(1、2、3、4、5または6個のC原子を有する)アルキルであり;あるいは
R10およびR11はそれらが結合している窒素原子と一緒になって1、2、3または4個のCH2基が互いに独立してNR19、硫黄、酸素、C(O)またはSO2により置換されうる4−、5−、6−、7−、8−、9−または10−員環を形成し;ここで
R19は水素、(1、2、3または4個のC原子を有する)アルキル、または(3、4、5または6個のC原子を有する)シクロアルキルである]の化合物、並びにその薬学的に許容しうる塩およびトリフルオロ酢酸塩に関する。
【0003】
好ましくは、式I[式中、R1、R2、R3およびR4は互いに独立して水素、F、Cl、Br、CN、CF3、CH3−SO2、(1、2、3または4個のC原子を有する)アルキル、NH2、NH−CH3またはN(CH3)2であり;
R5およびR6は互いに独立して水素、(1、2、3、4、5または6個のC原子を有する)アルキル、CF3−CH2−、(3、4、5または6個のC原子を有する)シクロアルキル、またはシクロプロピル−CH2−であり;あるいは
R5およびR6はそれらが結合している窒素原子と一緒になって4−、5−、6−、7−、8−、9−または10−員環を形成し;
R7は水素またはメチルであり;
R8およびR9は互いに独立して水素、F、Cl、OH、(1、2、3または4個のC原子を有する)アルキル、CH3O、CF3またはCH3SO2であり;
R10およびR11は互いに独立してR13−(CmH2m)−Bnであり、ここで
mは0、1、2、3または4であり;
nは0または1であり;
Bは−CO−、−CONR14−または−SO2−であり;ここで
R14は水素、または(1、2、3、4、5または6個のC原子を有する)アルキルであり;
R13は水素、(1、2、3または4個のC原子を有する)アルキル、(3、4、5または6個のC原子を有する)シクロアルキル、1−ピロリジニル、1−ピペリジニル、1−(4−メチルピペラジニル)、1−モルホリニル、−COOR15、OR16、NR17R18、または(互いに独立して塩素、フッ素、メチルおよびメトキシからなる群より選択される1または2個の置換基を有する)フェニルであり;
R15、R16、R17およびR18は互いに独立して水素、または(1、2、3、4、5または6個のC原子を有する)アルキルであり;あるいは
R10およびR11はそれらが結合している窒素原子と一緒になって1、2、3または4個のCH2基が互いに独立してNR19、硫黄、酸素、C(O)またはSO2により置換されうる4−、5−、6−、7−、8−、9−または10−員環を形成し;ここで
R19は水素、または(1、2、3または4個のC原子を有する)アルキルである]の化合物、並びにその薬学的に許容しうる塩およびトリフルオロ酢酸塩である。
【0004】
特に好ましくは、式I[式中、R1、R2、R3およびR4は互いに独立して水素、F、Cl、Br、CN、CF3、CH3−SO2、メチル、エチル、NH2、NH−CH3またはN(CH3)2であり;
R5およびR6は互いに独立して水素、メチル、エチル、イソプロピル、CF3−CH2−、または(3、4、5または6個のC原子を有する)シクロアルキルであり;あるいは
R5およびR6はそれらが結合している窒素原子と一緒になって4−、5−、6−、7−、8−、9−または10−員環を形成し;
R7は水素またはメチルであり;
R8およびR9は互いに独立して水素、Clまたはメチルであり;
R10およびR11は互いに独立してR13−(CmH2m)−Bnであり、ここで
mは0、1、2、3または4であり;
nは0または1であり;
Bは−CO−、−CONR14−または−SO2−であり;ここで
R14は水素、または(1、2、3、4、5または6個のC原子を有する)アルキルであり;
R13は水素、メチル、エチル、イソプロピル、(3、4、5または6個のC原子を有する)シクロアルキル、1−ピロリジニル、1−ピペリジニル、1−(4−メチルピペラジニル)、−COOR15、OR16またはNR17R18であり;ここで
R15、R16、R17およびR18は互いに独立して水素、または(1、2、3、4、5または6個のC原子を有する)アルキルであり;あるいは
R10およびR11はそれらが結合している窒素原子と一緒になって1、2または3個のCH2基が互いに独立してNR19またはC(O)により置換されうる4−、5−、6−、7−、8−、9−または10−員環を形成し;ここで
R19は水素またはメチルである]の化合物、並びにその薬学的に許容しうる塩およびトリフルオロ酢酸塩である。
【0005】
さらに特に好ましくは、式I[式中、R1およびR3は水素であり;
R2およびR4は互いに独立して水素またはClであり;
R5およびR6は互いに独立して水素またはメチルであり;あるいは
R5およびR6はそれらが結合している窒素原子と一緒になって5−または6−員環を形成し;
R7は水素であり;
R8およびR9は互いに独立して水素またはClであり;
R10およびR11は互いに独立してR13−(CmH2m)−Bnであり、ここで
mは0、1、2、3または4であり;
nは0または1であり;
Bは−CO−または−CONR14−であり;ここで
R14は水素またはメチルであり;
R13は水素、メチル、(3、4、5または6個のC原子を有する)シクロアルキル、1−ピロリジニル、1−ピペリジニル、1−(4−メチルピペラジニル)、−COOR15、OR16またはNR17R18であり;
R15、R16、R17およびR18は互いに独立して水素、または(1、2、3、4、5または6個のC原子を有する)アルキルであり;あるいは
R10およびR11はそれらが結合している窒素原子と一緒になって1、2または3個のCH2基が互いに独立してNR19またはC(O)により置換されうる4−、5−、6−、7−、8−、9−または10−員環を形成し;ここで
R19は水素またはメチルである]の化合物、並びにその薬学的に許容しうる塩およびトリフルオロ酢酸塩である。
【0006】
とりわけ好ましいのは、式I[式中、R1およびR3は水素であり;
R2およびR4は互いに独立して水素またはClであり;
R5およびR6は互いに独立して水素またはメチルであり;あるいは
R5およびR6はそれらが結合している窒素原子と一緒になって5−または6−員環を形成し;
R7は水素であり;
R8およびR9は互いに独立して水素またはClであり;
R10およびR11は互いに独立してR13−(CmH2m)−Bnであり、ここで
mは0、1、2、3または4であり;
nは0または1であり;
Bは−CONR14−であり;
R14は水素またはメチルであり;
R13は水素、メチルまたはCOOR15であり;
R15は水素、メチルまたはエチルであり;あるいは
R10およびR11はそれらが結合している窒素原子と一緒になって1、2または3個のCH2基が互いに独立してNR19またはC(O)により置換されうる4−、5−、6−、7−、8−、9−または10−員環を形成;ここで
R19は水素またはメチルである]の化合物、並びにその薬学的に許容しうる塩およびトリフルオロ酢酸塩である。
【0007】
特に好ましくは、1−アミノ−4−(4−アミノフェニル)−6−クロロ−3,4−ジヒドロイソキノリン、
1−アミノ−4−(4−アミノフェニル)−3,4−ジヒドロイソキノリン、
1−アミノ−4−(2−アミノフェニル)−6−クロロ−3,4−ジヒドロイソキノリン、
4−(4−アミノフェニル)−6−クロロ−1−メチルアミノ−3,4−ジヒドロイソキノリン、
4−(4−アミノフェニル)−6−クロロ−1−ジメチルアミノ−3,4−ジヒドロイソキノリン、
4−(4−アミノフェニル)−6−クロロ−1−(N−ピロリジノ)−3,4−ジヒドロイソキノリン、
N−(エトキシカルボニルメチル)−N'−4−[(6−クロロ−3,4−ジヒドロ−1−ジメチルアミノイソキノリン−4−イル)フェニル]尿素および
3−{4−[(6−クロロ−3,4−ジヒドロ−1−ジメチルアミノイソキノリン−4−イル)フェニル]}イミダゾリジン−2,4−ジオンからなる群より選択される式Iの化合物、並びにその薬学的に許容しうる塩およびトリフルオロ酢酸塩である。
【0008】
一態様において、好ましい式Iの化合物はR1、R2、R3およびR4基が互いに独立して水素、F、Cl、Br、CN、CF3、CH3−SO2、(1、2、3または4個のC原子を有する)アルキル、例えばメチルまたはエチル、NH2、NH−CH3またはN(CH3)2である化合物であり;特に好ましい式Iの化合物はR1およびR3が水素であり、そしてR2およびR4が互いに独立して水素、F、Cl、Br、CN、CF3、CH3−SO2、メチル、エチル、NH2、NH−CH3またはN(CH3)2、例えば水素またはClである化合物であり;他の態様において、好ましい式Iの化合物はR1、R3およびR4が水素であり、そしてR2がF、Cl、Br、CN、CF3、CH3−SO2、メチル、エチル、NH2、NH−CH3またはN(CH3)2、例えばClである化合物である。
【0009】
一態様において、好ましい式Iの化合物はR5およびR6が互いに独立して水素、(1、2、3、4、5または6個のC原子を有する)アルキル、CF3−CH2−、または(3、4、5または6個のC原子を有する)シクロアルキルであるか、あるいはR5およびR6はそれらが結合している窒素原子と一緒になって4−、5−、6−、7−、8−、9−または10−員環を形成する化合物であり;他の態様において、好ましい式Iの化合物はR5およびR6が互いに独立して水素、メチル、エチル、イソプロピル、CF3−CH2、または(3、4、5または6個のC原子を有する)シクロアルキルであるか、あるいはR5およびR6はそれらが結合している窒素原子と一緒になって4−、5−、6−、7−、8−、9−または10−員環を形成する化合物であり;特に好ましい式Iの化合物はR5およびR6が水素、メチルまたはエチル、例えば水素またはメチルであるか、あるいはR5およびR6はそれらが結合している窒素原子と一緒になって5−または6−員環、特にピロリジンまたはピペリジン、例えばピロリジンを形成する化合物である。
【0010】
他の態様において、好ましい式Iの化合物はR7が水素またはメチル、例えば水素である化合物である。
【0011】
一態様において、好ましい式Iの化合物はR8およびR9基が互いに独立して水素、F、Cl、OH、(1、2、3または4個のC原子を有する)アルキル、CH3O、CF3またはCH3SO2である化合物であり;特に好ましい式Iの化合物はR8およびR9が互いに独立して水素、Clまたはメチル、特に水素またはCl、例えば水素である化合物である。
【0012】
フェニル環上のNR10R11基はオルト、メタまたはパラ位、例えばオルトまたはパラ位、特にパラ位でジヒドロイソキノリン基に結合する。
【0013】
一態様において、好ましい式Iの化合物はR10およびR11基が互いに独立してR13−(CmH2m)−Bnであるか、またはR10およびR11はそれらが結合している窒素原子と一緒になって1、2または3個のCH2基がNR19またはC(O)により置換されうる4−、5−、6−、7−、8−、9−または10−員環を形成し、ここでR19は水素、または(1、2、3または4個のC原子を有する)アルキル、特に水素またはメチルである化合物であり;他の態様において、好ましい式Iの化合物はR10およびR11基が互いに独立してR13−(CmH2m)−Bnである化合物である。他の態様において、好ましい式Iの化合物はR10およびR11はそれらが結合している窒素原子と一緒になって1、2または3個のCH2基がNR19またはC(O)により置換されうる、例えば3個のCH2基が1個のNR19および2個のC(O)により置換される4−、5−、6−、7−、8−、9−または10−員環を形成し、ここでR19は水素またはメチルである化合物である。
【0014】
一態様において、好ましい式Iの化合物はmが0、1または2、例えば0または1である化合物である。
【0015】
一態様において、好ましい式Iの化合物はnが0である化合物であり;他の態様において、好ましい式Iの化合物はnが1である化合物である。
【0016】
一態様において、好ましい式Iの化合物はBが−CO−または−CONR14−、特に−CONR14−であり、ここでR14は水素、または(1、2、3、4、5または6個のC原子を有する)アルキル、特に水素またはメチル、例えば水素である化合物である。
【0017】
一態様において、好ましい式Iの化合物はR13が水素、メチル、エチル、イソプロピル、(3、4、5または6個のC原子を有する)シクロアルキル、1−ピロリジニル、1−ピペリジニル、1−(4−メチルピペラジニル)、−COOR15、OR16またはNR17R18であり、ここでR15、R16、R17およびR18は互いに独立して水素、または(1、2、3、4、5または6個のC原子を有する)アルキルである化合物であり;他の態様において、好ましい式Iの化合物はR13が水素、メチルまたは−COOR15であり、ここでR15は水素、または(1、2、3、4、5または6個のC原子を有する)アルキル、特に水素、メチルまたはエチル、例えばエチルである化合物であり;特に好ましい式Iの化合物はR13が水素または−COOR15であり、そしてR15はエチルである化合物である。
【0018】
式Iの化合物が1個またはそれ以上の不斉中心を含有する場合、これらは互いに独立してSまたはR配置を有する。本化合物は光学異性体、ジアステレオマー、ラセミ化合物またはすべての比率のこれらの混合物の形態であってよい。式Iの化合物はさらに回転異性体の形態であってよい。
【0019】
本発明は式Iの化合物のすべての互変異性体を包含する。
【0020】
本発明はさらに式Iの化合物の誘導体、例えば水和物およびアルコール付加物のような溶媒和物、エステル、プロドラッグ、式Iの化合物の他の生理学的に許容しうる誘導体、並びに式Iの化合物の活性代謝物を包含する。また、本発明は式Iの化合物のすべての結晶変態を包含する。
【0021】
アルキル基は直鎖状または分枝状である。このことはそれらが置換基を有する場合、あるいは例えばフルオロアルキル基またはアルコキシ基のように他の基の置換基として存在する場合にもあてはまる。アルキル基の例はメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル(=1−メチルエチル)、n−ブチル、イソブチル(=2−メチルプロピル)、sec−ブチル(=1−メチルプロピル)、t−ブチル(=1,1−ジメチルエチル)、n−ペンチル、イソペンチル、t−ペンチル、ネオペンチルまたはヘキシルである。好ましいアルキル基はメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシルである。
【0022】
シクロアルキル基の例はシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルまたはシクロオクチルである。シクロアルキル基の1個またはそれ以上のCH2基はO、NHまたはN−アルキル、例えばNCH3により置換されうる。このことはシクロアルキルメチル基にもあてはまる。
【0023】
NR5R6環の例はモルホリン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、N−メチルピペラジン、ピロリジン−2−オン、ピロリジン−2,5−ジオン、イミダゾリジン、3−メチル−イミダゾリジン、イミダゾリジン−2−オン、3−メチルイミダゾリジン−2−オン、イミダゾリジン−2,4−ジオンおよび1−メチルイミダゾリジン−2,4−ジオン、特にピロリジンおよびピペリジン、例えばピロリジンである。
【0024】
NR10R11環の例はモルホリン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、N−メチルピペラジン、ピロリジン−2−オン、ピロリジン−2,5−ジオン、イミダゾリジン、3−メチル−イミダゾリジン、イミダゾリジン−2−オン、3−メチルイミダゾリジン−2−オン、イミダゾリジン−2,4−ジオンおよび1−メチルイミダゾリジン−2,4−ジオン、特にピロリジン−2,5−ジオンおよびイミダゾリジン−2,4−ジオン、例えばイミダゾリジン−2,4−ジオンである。
【0025】
アルキル基の末端CH3基はCH2単位ともみなされ、これはCH2−H基として理解される。
【0026】
変数、例えばシクロアルキルまたはR1が成分として2回以上存在する場合、これらの変数の定義は各場合それぞれ互いに独立している。
【0027】
式Iの化合物が1個またはそれ以上の酸性または塩基性の基、あるいは1個またはそれ以上の塩基性の複素環を含有する場合、本発明はまた、相当する生理学的または毒性学的に許容しうる塩、特に薬学的に使用可能な塩を包含する。したがって、式Iの化合物は酸性基を脱プロトン化することができ、例えばアルカリ金属塩、好ましくはナトリウムまたはカリウム塩、あるいはアンモニウム塩、例えばアンモニア、有機アミンまたはアミノ酸との塩として使用することができる。式Iの化合物は常に少なくとも1個の塩基性基を含有するため、例えば次の酸:塩酸、硫酸またはリン酸のような無機酸、あるいは酢酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、マロン酸、メタンスルホン酸、フマル酸のような有機酸を使用してそれらの生理学的に許容される酸付加塩の形態で製造することもできる。これに関して、適当な酸付加塩はすべての薬理学的に許容しうる酸(この基はまた、生理学的に許容しうるアニオンに相当する)の塩、例えばハロゲン化物、特に塩酸塩、乳酸塩、硫酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、酢酸塩、リン酸塩、メチルスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、アジピン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリセロールリン酸塩、マレイン酸塩およびパモ酸塩、さらにトリフルオロ酢酸塩である。
【0028】
本発明はまた、式Iの化合物を製造するための下記の方法に関する。
【0029】
本明細書で開示されたR10およびR11が水素である式Iの化合物は例えば式IIのニトロフェニル誘導体から出発して相当する式Ia
【化2】

(式中、置換基R1、R2、R3、R4、R5、R6、R8およびR9は上記で定義された通りである)のアミノ化合物に還元することにより製造することができる。還元は当業者に知られている方法により多数の還元剤を使用して、例えば接触水素化により、または無機還元剤、例えば氷酢酸中で鉄粉および塩酸を使用して行なうことができる。
【0030】
さらに、本発明の式Iの化合物は本発明の式Ia)の化合物から例えばフェニル基上のアミノ基を当業者に知られている方法で誘導体化することにより製造することができる。これらの場合、例えば化合物Ia)のアミノ基を式R10−Lおよび/またはR11−Lのアルキル化剤、アシル化剤またはスルホニル化試薬と有利には補助塩基、例えばピリジン、トリエチルアミンまたはHuenig塩基の存在下で当業者に知られている方法により反応させる。
【0031】
さらに、相当する式IbまたはIc
【化3】

(式中、置換基R1、R2、R3、R4、R5、R6、R8、R9、R10およびR11は上記で定義された意味を有するが、R10およびR11は水素ではなく、そしてLはF、Cl、Br、I、−OR、−OC(O)Rまたは−SRであり、ここでRは1、2、3、4、5または6個のC原子を有するアルキル、例えばメチルまたはエチルであり、またBが−C(O)−である場合、Lは−SRである)の尿素誘導体を製造するために式R10−N=C=Oおよび/またはR11−N=C=Oのイソシアネートを当業者に知られている方法で使用することが好適である。反応を段階的に行なうことにより、例えば本発明の式Ibの一置換化合物が得られ、それを単離し、そして/または引き続き反応させて式Icの二置換化合物を得ることができる。
【0032】
式IVの化合物は様々な方法で、例えば当業者に知られている方法によるしきIIIの化合物との求核置換によって式II
【化4】

[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R8、R9およびYは上記で定義された意味を有するが、R5およびR6は共に水素ではなく、Xは求核置換を行なうことができる脱離基、例えば塩素、臭素、トシレート、メシレート、トリフレート、(1、2、3、4、5または6個のC原子を有する)アルコキシ、例えばエトキシ、アリールオキシ、例えばフェノキシ、またはR'S(O)n−(ここでnは0または2である)であり、R'は好ましくは1、2、3または4個のC原子を有するアルキル基、例えばメチルであり、そしてMは水素または金属、特にアルカリ金属またはアルカリ土類金属同等物、例えばリチウムであるか、あるいは化合物VIIはGrignard化合物である]の化合物に変換することができる。アミンと>100℃の温度を使用することが有利であり、オートクレーブまたはマイクロ波の使用を推薦することができる。
【0033】
R5およびR6が水素である相当する式IVbの化合物は同様にして加圧下でNH3と反応させることにより製造することができる。
【0034】
X=R'−S−である式IVaの化合物は当業者に知られている方法により相当する式Vのメルカプト化合物を式VIのアルキル化剤と反応させて得ることができる
【化5】

(式中、R1、R2、R3、R4、R7、R8およびR9は上記で定義された意味を有し、R'は好ましくは1、2、3または4個のC原子を有するアルキル基、例えばメチルであり、そしてHalは塩素、臭素または沃素である)。
【0035】
式Vの化合物は例えば当業者に知られている方法により相当する式VIIのイソチオシアネートを酸が触媒する環化により製造することができる
【化6】

(式中、置換基R1、R2、R3、R4、R7、R8およびR9は上記で定義された意味を有する)。使用することができる酸はプロトン性および非プロトン性のルイス酸である。当該環化には濃硫酸を使用することが有利であることがわかっている。
【0036】
式VIIのイソチオシアネートは当業者に知られている方法により相当する式VIIIのアミンからチオカルボニル化剤、例えばチオホスゲンS=CCl2またはチオカルボニルビス−イミダゾールを使用して製造することができる
【化7】

(式中、置換基R1、R2、R3、R4、R7、R8およびR9は上記で定義された意味を有する)。
【0037】
式VIIIのフェネチルアミン前駆体は購入することができない場合、当業者に知られている標準法により例えば相当する式IXのニトリルを還元して得ることができる
【化8】

(式中、置換基R1、R2、R3、R4、R7、R8およびR9は上記で定義された意味を有する)。この還元でホウ素−水素複合体を使用することが有利であることがわかっている。それらはニトロ基をそのまま残し、それを後で別々に、また選択的に例えば鉄粉でアニリノ基に還元することができるからである(UminoのTetrahedron Letters 33, 2875〜76(1976年);J.Org.Chem. 53, 98〜104(1988年);Org. Prep. Proced.Int. 13,225(1981年);J.Org.Chem. 47, 1389(1982年);Chem.Rev. 76, 773(1973年))。
【0038】
式IXの化合物は購入することができない場合、当業者に知られている様々な方法により製造することができる。すなわち、例えば式XIの化合物から出発し、当業者に知られている方法で塩基により式Xのアニオンを生成し、芳香族部分上で式XIIの化合物と求核置換反応させることにより変換することができる
【化9】

(式中、置換基R1、R2、R3、R4、R7、R8およびR9は上記で定義された意味を有し、Yは求核的に置換可能な基、例えば塩化物、フッ化物、臭化物、NO2、トリフレートまたはメシレートである)。式XIの化合物から式Xの化合物への変換で使用される望ましい塩基は例えばHO−、CH3−O−、t−but−O−、LDA、NaNH2またはK(N(SiMe3)2である。この反応において通常の水酸化アルカリ金属溶液が2相触媒作用の条件下、2相触媒として例えば塩化N−ベンジル−N,N,N−トリエチルアンモニウムを使用して有利であることがわかっている(DE2610837)。
【0039】
水素ではないR7基の導入は当業者に知られている方法により、また後の段階でも可能である。例えば、式IXaの化合物は十分に強力な塩基で脱プロトン化し、次に式XIIIのアルキル化剤と反応させることができる
【化10】

(式中、置換基R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9およびHalは上記で定義された意味を有する)。
【0040】
ニトロ基の導入もまた、後の段階で知られている方法により、例えば硝酸または[NO2+SbF6-]のようなニトロニウム生成剤を使用する式XIVの化合物の直接ニトロ化反応により可能である
【化11】

(式中、置換基R1、R2、R3、R4、R7、R8およびR9は上記で定義された意味を有する)。
【0041】
化合物R10−Hal、R11−Hal、R10−N=C=O、R11−N=C=O、並びに式III、VI、XI、XII、XIIIおよびXIVの化合物は購入することができ、あるいは文献記載の方法や当業者に知られている方法により、またはそれらと同様にして製造することができる。式IVまたはIVaの化合物は購入することができ、さらに(X=アルキル−S−についての)上記方法により製造することができ、あるいは文献記載の方法や当業者に知られている方法により、またはそれらと同様にして製造することができる。式VIII、IXおよびIXaの化合物は購入することができ、さらに上記方法により製造することができ、あるいは文献記載の方法や当業者に知られている方法により、またはそれらと同様にして製造することができる。
【0042】
生成物および/または中間体の後処理、さらに記載があれば、その精製は抽出、クロマトグラフィーまたは結晶化および通常の乾燥のような常法により行なわれる。
【0043】
式Iの化合物がナトリウム−水素交換体(NHE)、特にサブタイプ3のナトリウム−水素交換体(NHE3)の優れた阻害剤であることを示すことができた。
【0044】
これまで開示されているNHE3阻害剤は例えばアシルグアニジン型(EP825178)、ノルボルニルアミン型(WO0144164)、2−グアニジノ−キナゾリン型(WO0179186)またはベンズアミジン型(WO0121582、WO0172742)の化合物から誘導される。同様にNHE3阻害剤として記載されているスクアラミン(M. DonowitzらのAm. J. Physiol. 276(Cell Physiol. 45):C136〜C144)は現在の知識によれば式Iの化合物のように直接作用しないが間接的機構により作用し、僅か1時間後にその効果の最高強度に達する。
【0045】
サブタイプ3のナトリウム−水素交換体(NHE3)の阻害剤としてテトラヒドロイソキノリンは例えば特許出願WO03048129、WO2004085404、並びにドイツ特許出願102004046492.8および102005001411.9に記載されている。テトラヒドロイソキノリニウム塩の関連化合物はNHE3阻害剤として特許出願WO03055880に記載されている。
【0046】
今般、驚くべきことに、本明細書で開示された式Iの化合物はNHE3の強力な阻害剤であり、さらに有利な薬理学的および薬物動態学的特性を有することを見い出した。
【0047】
NHE3は様々な種の体内、特に胆嚢、腸および腎臓(Larry FliegelらのBiochem. Cell. Biol. 76:735〜741(1998年))に存在するが、脳内(E. MaらのNeuroscience 79:591〜603)でも検出可能である。
【0048】
それらのNHE阻害特性のため、式Iの化合物はNHEの活性化または活性化したNHEにより生じる疾患、さらにNHE関連損傷により二次的に引き起こされる疾患の予防および治療に適している。
【0049】
式Iの化合物はまた、例えば低い投与量の使用によりNHEが単に部分的に阻害される疾患の治療および予防に使用することができる。
【0050】
本発明の化合物の使用は動物用および人間用の薬剤として急性および慢性疾患の予防および治療に関する。
【0051】
それらの薬理学的作用の結果として、式Iの化合物は特に呼吸駆動(respiratory drive)の改善をもたらすのに適している。したがって、これらは例えば次の臨床症状および疾患:中枢性呼吸駆動障害(例えば中枢性睡眠時無呼吸症、乳幼児突然死、術後低酸素血症)、筋肉関連呼吸障害、長期にわたる換気後の呼吸障害、高所順応に関連する呼吸障害、閉塞性および混合型睡眠時無呼吸、低酸素および高炭酸ガス症に伴なう急性および慢性の肺疾患において起こりうるもののような障害のある呼吸状態の治療に使用することができる。
【0052】
さらに、本化合物はいびきが抑制されるように上気道の筋緊張を高める。したがって、前記化合物は睡眠時無呼吸および筋肉関連呼吸障害を予防および治療するための薬剤の製造、並びにいびきを予防および治療するための薬剤の製造に有利に使用される。
【0053】
式IのNHE阻害剤と炭酸脱水酵素阻害剤(例えばアセタゾラミド)の併用もまた有利であることがわかっており、後者は代謝性アシドーシスを引き起こし、それ自体で呼吸活性を増大させるため、結果的に活性成分の作用の増強および使用量の低減が達成される。
【0054】
それらのNHE3阻害作用の結果として、本発明の化合物は毒性および病原性事象において迅速に消耗され、細胞損傷または細胞死をもたらす細胞エネルギーの貯蔵量を維持する。これに関して、近位細管での高エネルギーのATP消費ナトリウム吸収はNHE3阻害剤の影響を受けて一時的に中断するので、細胞は急性の病原性、虚血性または毒性状態を切り抜けることができる。したがって、本化合物は例えば急性腎不全のような虚血性病毒を治療するための薬剤として好適である。さらに、本化合物はまた、すべての慢性腎障害や増加したタンパク排泄の結果として慢性腎不全をもたらすタイプの腎炎を治療するのにも好適である。したがって、式Iの化合物は後期の糖尿病性腎損傷、糖尿病性腎症および慢性腎障害、特に増加したタンパク/アルブミン排泄に関連するすべての腎臓の炎症(腎炎)を治療するための薬剤の製造に好適である。
【0055】
本発明において使用される化合物は穏やかな緩下作用を有し、そのため緩下薬として、または便秘になる恐れのある場合にも有利に使用できることがわかった。
【0056】
さらに、本発明の化合物は例えば腸領域の虚血状態により、そして/またはその後の再潅流により、または炎症性の状態および事象により誘発される腸管の急性および慢性障害の予防および治療に有利に使用することができる。例えば、このような合併症は例えば外科的介入後に観察されることが多い、便秘または大幅に低下した腸活動に関連する腸の不十分な蠕動運動により起こりうる。
【0057】
本発明の化合物で胆石形成を予防することができる。
【0058】
本発明のNHE阻害剤は一般に虚血および再潅流により引き起こされる疾患を治療するのに適している。
【0059】
本発明の化合物はそれらの薬理学的特性の結果、抗不整脈薬として適している。それらの心臓保護成分のため、NHE阻害剤は梗塞の予防および梗塞の治療、さらに狭心症の治療に著しく適しており、その場合は虚血により誘発される損傷の進行、特に虚血により誘発される心不整脈の引き金に関連する病態生理学的プロセスを阻害するか、または予防的に大幅に低下させる。本発明において使用される式Iの化合物は病的な低酸素および虚血状態に対して保護作用を示し、細胞のNa+/H+交換機構を阻害するため、虚血により誘発されるすべての急性または慢性の損傷、あるいはそれにより一次的または二次的に誘発される疾患を治療するための薬剤として使用することができる。
【0060】
本発明は外科的介入のための薬剤としての使用にも関する。したがって、本発明の化合物は臓器移植で使用することができ、その場合、化合物はドナーの臓器を摘出前および摘出中に保護するため、さらに摘出した臓器を例えば生理学的な浴液で処置する間、またはその中で保存する時に、並びに予め式Iの化合物で処置した被移植者の体内に移植する間に保護するため使用することができる。
【0061】
同様に、本化合物は例えば心臓や末梢器官および末梢血管に対して血管形成の外科的介入を行なう際に保護作用を示す有用な薬剤である。
【0062】
さらに、本発明の化合物はバイパス術、例えば冠状血管に対するバイパス術や冠動脈バイパス移植片(CABG)のバイパス術を行なう場合に使用することができる。
【0063】
虚血により誘発される損傷に対するそれらの作用により、本発明の式Iの化合物は心拍停止後の蘇生に使用することもできる。
【0064】
虚血により誘発される損傷に対するそれらの保護作用により、本発明の化合物は神経系、特にCNSの虚血を治療するための薬剤としても適しており、例えば卒中または脳浮腫の治療に好適である。
【0065】
ヒトの組織および臓器のNHE阻害剤は虚血および再潅流により引き起こされる損傷に対してだけでなく、特にガン治療および自己免疫疾患の治療で使用されるもののような薬剤の細胞毒性作用に対してもまた効果的に保護するので、式Iの化合物との併用投与は治療の細胞毒性を軽減または抑制するのに適している。NHE阻害剤との同時投薬の結果として、細胞毒性、特に心臓毒性の軽減はさらに細胞毒性の治療剤の投与量を増加させたり、そして/またはこのような薬剤による薬物治療を延長させたりすることができる。このような細胞毒性治療の治療上の利点はNHE阻害剤との併用により大幅に増大させることができる。
【0066】
式Iの化合物は特に望ましくない心臓毒性成分を有する薬剤による治療法を改善するのに適している。
【0067】
一般に、本明細書で開示されたNHE阻害剤は細胞内のpHを調整する他の化合物と有利に組合せることができ、炭酸脱水酵素の酵素グループの阻害剤、重炭酸イオン輸送系、例えば重炭酸ナトリウム共輸送体(NBC)またはナトリウム依存性塩化物−重炭酸塩交換体(NCBE)の阻害剤との併用が適しており、さらに本明細書で開示されたNHE阻害剤の薬理学的に関連するpH調整作用を増強または調節するため他のサブタイプのNHEに対して阻害作用を示す他のNHE阻害剤をそのパートナーとして使用することができる。
【0068】
虚血により誘発される損傷に対するそれらの保護作用により、本化合物は神経系、特に中枢神経系の虚血を治療するための薬剤としても適しており、例えば卒中または脳浮腫の治療に好適である。
【0069】
式Iの化合物はまた、中枢神経系の過興奮性により誘発される疾患および障害の治療および予防、特に癲癇様疾患、中枢的に誘発される間代性および緊張性の痙攣、精神的な抑うつ状態、不安障害および精神病の治療に適している。これに関して、本発明のNHE阻害剤は単独で、あるいは抗癲癇作用または抗精神病活性成分を有する他の物質、または炭酸脱水酵素阻害剤、例えばアセタゾラミド、さらに他のNHEまたはナトリウム依存性塩化物−重炭酸塩交換体(NCBE)の阻害剤と併用して使用することができる。
【0070】
さらに、本発明の式Iの化合物はショック症状、例えばアレルギー性、心臓性、循環血液量減少性および細菌性ショックの治療にも適している。
【0071】
式Iの化合物はNHE阻害剤として両方の血小板凝集自身を阻害することができるため、血栓性疾患の予防および治療に使用することもできる。さらに、これらは虚血および再潅流の後に起こる炎症および血液凝固のメディエーター、特にフォン・ビルブランド因子および血栓形成性セレクチンタンパク質の過剰放出を阻害または予防することができる。これにより血栓形成性因子および炎症関連因子の病原性作用を軽減および排除することができる。したがって、本発明のNHE阻害剤は他の抗凝固剤および/または血栓溶解活性成分、例えば遺伝子組換え型または天然型の組織プラスミノーゲン活性化因子、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、アセチルサリチル酸、トロンビンアンタゴニスト、第Xa因子アンタゴニスト、線維素溶解活性剤、トロンボキサン受容体アンタゴニスト、ホスホジエステラーゼ阻害剤、第VIIa因子アンタゴニスト、クロピドグレル、チクロピジンなどと併用することができる。本発明のNHE阻害剤とNCBE阻害剤および/または炭酸脱水酵素の阻害剤、例えばアセタゾラミドの併用が特に有益である。
【0072】
さらに、本発明のNHE阻害剤は細胞増殖、例えば線維芽細胞の増殖および血管平滑筋細胞の増殖に対して強力な阻害作用を示すことは注目すべきである。したがって、式Iの化合物は細胞増殖が一次的または二次的な原因である疾患の有用な治療剤として適しており、そのため抗アテローム性動脈硬化症剤、慢性腎不全、ガンに対する薬剤として使用することができる。これらは例えば心臓および前立腺の臓器肥大および過形成の治療に使用することができる。したがって、式Iの化合物は心不全(鬱血性心不全=CHF)の予防および治療、並びに前立腺過形成または前立腺肥大の治療および予防に適している。
【0073】
NHE阻害剤はさらに線維症の遅延または予防に対して注目すべきである。したがって、これらは心臓線維症、肺線維症、肝線維症、腎線維症および他の腺維症を治療するための優れた薬剤として適している。
【0074】
本態性高血圧でNHEは有意に上昇するため、式Iの化合物は高血圧および心臓血管疾患の予防および治療に適している。これに関して、これらは単独でまたは適当なパートナーと併用して高血圧の治療および心臓血管疾患の治療に使用することができる。例えば、チアジド様作用を有する利尿薬、ループ利尿薬、アルドステロンおよび仮性アルドステロンアンタゴニスト、例えばヒドロクロロチアジド、インダパミド、ポリチアジド、フロセミド、ピレタニド、トラセミド、ブメタニド、アミロリド、トリアムテレン、スピロノラクトンまたはエプレロン(eplerone)の1つまたはそれ以上を式Iの化合物と併用することができる。さらに、本発明のNHE阻害剤はベラパミル、ジルチアゼム、アムロジピンまたはニフェジピンのようなカルシウム拮抗薬や例えばラミプリル、エナラプリル、リシノプリル、フォシノプリルまたはカプトプリルのようなACE阻害剤と併用して使用することができる。他の有益な併用のパートナーはメトプロロール、アルブテロールなどのようなβ遮断薬、アンギオテンシン受容体およびそのサブタイプの受容体の拮抗薬、例えばロサルタン、イルベサルタン、バルサルタン、オマパトリラット、ゲルノパトリラット(gernopatrilat)、エンドセリン拮抗薬、レニン阻害剤、アデノシン受容体アゴニスト、カリウムチャンネルの阻害剤および活性化剤、例えばグリベンクラミド、グリメピリド、ジアゾキシド、クロモカリム、ミノキシジルおよびその誘導体、ミトコンドリアATP感受性カリウムチャンネル(mitoK(ATP)チャンネル)の活性化剤、Kv1.5などのような他のカリウムチャネルの阻害剤である。
【0075】
それらの抗炎症作用の結果として、本発明のNHE阻害剤は抗炎症剤として使用することができる。これに関して、炎症メディエーターの放出阻害が機構的に注目すべき点である。したがって、本化合物は慢性および急性の炎症性疾患の予防または治療に単独で、または抗炎症剤と併用して使用することができる。併用で有利に使用されるパートナーはステロイド系および非ステロイド系抗炎症剤である。
【0076】
さらに、NHE阻害剤は血清リポタンパク質に対して有益な作用を示すことがわかった。したがって、これらは原因となる危険因子を排除することによりアテローム性動脈硬化症の予防および退縮に使用することができる。これらには一次性脂質異常症だけでなく、例えば糖尿病に合併するもののような特定の二次性脂質異常症もまた含まれる。さらに、NHE阻害剤は代謝異常により誘発される梗塞の著しい減少、特に誘発された梗塞の大きさおよびその重症度の有意な軽減をもたらす。したがって、式IのNHE阻害剤は高コレステロール血症を治療するための薬剤の製造、アテローム発生を予防するための薬剤の製造、アテローム性動脈硬化症を予防および治療するための薬剤の製造、上昇したコレステロール濃度により誘発される疾患を予防および治療するための薬剤の製造、内皮機能障害により誘発される疾患を予防および治療するための薬剤の製造、アテローム性動脈硬化症が誘発する高血圧症を予防および治療するための薬剤の製造、アテローム性動脈硬化症が誘発する血栓症を予防および治療するための薬剤の製造;高コレステロール血症および内皮機能障害が誘発する虚血性損傷および虚血後再潅流損傷を予防および治療するための薬剤の製造;心臓肥大、心筋症、鬱血性心不全(CHF)を予防および治療するための薬剤の製造;高コレステロール血症および内皮機能障害が誘発する冠動脈攣縮および心筋梗塞を予防および治療するための薬剤の製造;血圧降下剤、好ましくはアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤およびアンギオテンシン受容体拮抗薬と併用して前記疾患を治療するための薬剤の製造において有利に使用される。式IのNHE阻害剤と血中脂質濃度を低下させる活性成分、好ましくはHMG−CoA還元酵素阻害剤(例えばロバスタチンまたはプラバスタチン)の併用は後者が脂質低下効果をもたらすため式IのNHE阻害剤の脂質低下作用を増大させ、活性成分の作用の増強および使用量の低減という有利な併用が達成される。
したがって、NHE阻害剤は様々な原因による内皮損傷に対して効果的な保護をもたらす。このように内皮機能障害の症候群に対して血管保護作用を示すため、NHE阻害剤は冠動脈攣縮、末梢血管疾患、特に間欠性跛行、アテローム発生およびアテローム性動脈硬化症、左心室肥大および拡張型心筋症、並びに血栓性疾患を予防および治療するための有用な薬剤である。
【0077】
さらに、NHE阻害剤は例えばインシュリン抵抗性が抑制される非インシュリン依存性糖尿病(NIDDM)の治療に適している。これに関して、本発明の化合物をメトホルミンのようなビグアニド類;グリブリド、グリメピリド、トルブタミドなどのような抗糖尿病性スルホニル尿素;グルコシダーゼ阻害剤;ロシグリタゾン、ピオグリタゾンなどのようなPPARアゴニスト;様々な投与形態のインシュリン製剤、DB4阻害剤、インシュリン増感剤またはメグリチニドと併用することにより本発明の化合物の抗糖尿病効果および作用の性質を高めることが有益である。
【0078】
急性の抗糖尿病作用に加えて、NHE阻害剤は糖尿病の後期合併症の進行を妨げ、そのため後期の糖尿病性損傷、例えば糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性心筋症や糖尿病の結果として起る他の疾患を予防および治療するための薬剤として使用することができる。これらはNIDDM治療で上記の抗糖尿病薬と有利に併用することができる。これに関して、有効な投与形態のインシュリンとの併用が特に重要である。
【0079】
急性の虚血事象およびその後の同様に急性のストレス性再潅流事象に対する保護作用の他に、NHE阻害剤はまた、慢性的に進行する加齢過程の発現に関連し、急性の血液供給不足状態とは無関係に通常の非虚血状態で起こりうる全哺乳動物の疾患および障害に対して直接的な治療上有用な作用を示す。現在、NHE阻害剤での治療が可能な、長期の加齢過程で誘発されるこれらの加齢による病理学的発現、例えば疾患、病弱および死亡は本質的に重要な臓器およびそれらの機能の加齢に関連した変化により引き起こされ、老齢の動物でますます重要となる疾患および障害である。
【0080】
加齢による機能障害または加齢による臓器損耗の発現と関係がある障害は例えば収縮および弛緩反応に対する血管の不十分な応答および反応性である。心臓血管系、すなわち生命および健康の重要な過程である収縮および弛緩の刺激に対する血管反応性の加齢による低下はNHE阻害剤により有意に排除または軽減することができる。血管反応性の維持の重要な機能および尺度は内皮機能障害の加齢による進行の遮断または遅延であり、それはNHE阻害剤により極めて有意に排除することができる。したがって、NHE阻害剤は内皮機能障害、特に間欠性跛行の加齢による進行を治療および予防するのに極めて適している。そのため、NHE阻害剤はさらに心不全、鬱血性心不全(CHF)の治療および予防や加齢によるガンの治療、特に予防に極めて好適である。
【0081】
これに関して、ACE阻害剤、アンギオテンシン受容体拮抗薬、利尿薬、Ca2+拮抗薬などのような血圧降下剤、またはコレステロール低下薬のような代謝を正常化する薬剤との併用が考えられる。したがって、式Iの化合物は加齢による組織変化を予防するのに、また質の高い生活を維持しながら健康を維持し、延命するのに適している。
【0082】
本発明の化合物は多くの疾患(本態性高血圧症、アテローム性動脈硬化症、糖尿病など)において例えば赤血球、血小板または白血球のような容易に測定可能な細胞で上昇する細胞ナトリウム−プロトンアンチポーター(Na/H交換体)の有効な阻害剤である。そのため、本発明で使用される化合物は優れた簡単な科学的ツールとして、例えば特定の形態の高血圧症だけでなく、アテローム性動脈硬化症、糖尿病および糖尿病の後期合併症、増殖性疾患などもまた診断および区別するための診断補助剤として適している。
【0083】
さらに、NHE阻害剤は細菌および原生動物により誘発される疾患(人間および動物)の治療に適している。原生動物により引き起こされる疾患としては特に人間のマラリアまたは家禽のコクシジウム病が挙げられる。
【0084】
本化合物はまた、人間医学および獣医学や作物保護において吸汁性の寄生虫を防除するための薬剤として適している。これに関して、人間医学および獣医学では吸血寄生虫に対する薬剤として使用するのが好ましい。
【0085】
したがって、前記化合物は呼吸駆動障害、呼吸障害、睡眠関連呼吸障害、睡眠時無呼吸、いびき、急性および慢性の腎障害、急性腎不全および慢性腎不全、腸機能障害、高血圧、本態性高血圧、中枢神経系疾患、CNSの過興奮性により起こる疾患、癲癇および中枢的に誘発される痙攣、あるいは不安状態、鬱病および精神病、末梢または中枢神経系の虚血状態、あるいは卒中、虚血または再灌流事象により引き起こされる末梢器官または四肢の急性および慢性の損傷および疾患、アテローム性動脈硬化症、脂質代謝障害、血栓症、胆管機能障害、外部寄生虫感染症、内皮機能障害により起こる疾患、原虫症、マラリアを治療または予防するための;外科的処置用の移植片を保存および貯蔵するための;外科手術および臓器移植で使用するための;ショック状態または糖尿病および後期の糖尿病性損傷、あるいは細胞増殖が一次的または二次的原因である疾患を治療するための;さらに健康を維持し、延命するための薬剤の製造において単独で、あるいは他の薬剤または活性成分と組合せて有利に使用される。
【0086】
本発明はさらに、薬剤として使用するための式Iの化合物およびそれらの薬学的に許容しうる塩の使用に関する。
【0087】
本発明はまた、有効量の式Iの化合物および/またはその薬学的に許容しうる塩を含有する人間、動物または植物保護に使用される薬剤/医薬製剤、並びに単独の、あるいは1種またはそれ以上の他の薬理学的に活性な成分または薬剤と組合せた有効量の式Iの化合物および/またはその薬学的に許容しうる塩を含有する人間、動物または植物保護に使用される医薬製剤に関する。
【0088】
式Iの化合物またはその薬学的に許容しうる塩を含有する薬剤は例えば経口的、非経口的、筋肉内、静脈内、経腸的、経鼻的に、吸入により、皮下的に、または適当な経皮投与形態で投与することができ、好ましい投与はそれぞれの疾患の症状に依存する。さらに、式Iの化合物は特に獣医学および人間医学や作物保護において単独で、または薬用賦形剤と一緒に使用することができる。薬剤は式Iの活性成分および/またはその薬学的に許容しうる塩を一般に投与単位あたり0.01mg〜1gの量で含有する。
【0089】
当業者はその専門知識に基づいて所望の医薬製剤に適した賦形剤をよく知っている。溶剤、ゲル生成剤、坐剤の基剤、錠剤の賦形剤および他の活性成分担体に加えて、例えば抗酸化剤、分散剤、乳化剤、消泡剤、香味剤、保存剤、可溶剤または着色剤を使用することができる。
【0090】
経口投与形態の場合、活性化合物は本目的に適した添加剤、例えば担体、安定剤または不活性希釈剤と混合され、そして慣用の方法により適当な投与形態、例えば錠剤、コーチング錠、硬質ゼラチンカプセル剤;水性、アルコール性または油性の液剤に変換される。使用することができる不活性担体の例はアラビアゴム、マグネシア、炭酸マグネシウム、リン酸カリウム、ラクトース、グルコースまたはデンプン、特にコーンスターチである。さらに、その製造は乾式および湿式造粒法の両方により行なうことができる。適当な油性担体または溶剤の例は植物油または動物油、例えばヒマワリ油または魚肝油である。
【0091】
皮下、経皮または静脈内投与の場合、使用される活性化合物は所望により本目的で慣用の物質、例えば可溶化剤、乳化剤または他の賦形剤と一緒に溶液、懸濁液または乳濁液に変換される。適当な可溶化剤の例は水、生理食塩水またはアルコール、例えばエタノール、プロパノール、グリセロール、さらに糖溶液、例えばグルコースまたはマンニトール溶液、あるいはこれらの各種溶媒の混合物である。
【0092】
エアゾールまたはスプレーの形態で投与するのに適した医薬製剤は例えば薬学的に許容しうる溶媒、特にエタノールまたは水、またはこのような溶媒の混合物中における式Iの活性成分の液剤、懸濁剤または乳剤である。必要に応じて、製剤はまた、界面活性剤、乳化剤および安定剤のような他の薬用賦形剤、さらに推進用ガスを含有してもよい。このような製剤は一般に活性成分を約0.1〜10、特に約0.3〜3質量%の濃度で含有する。
【0093】
投与される式Iの活性成分の投与量および投与頻度は使用される化合物の効力および作用持続時間;さらに治療される疾患の性質および重症度、並びに治療される哺乳動物の性別、年齢、体重および個々の反応性に依存する。
【0094】
平均して、体重が約75kgの患者の場合、式Iの化合物の日用量は体重1キログラムあたり少なくとも0.001mg、好ましくは0.1mgから最大30mg、好ましくは1mgである。緊急時には、例えば高山で無呼吸の状態になった直後は、高い投与量が必要な場合もある。特に静脈内投与の場合、例えば集中治療室にいる梗塞患者では1日に最大300mg/kgまで必要である。日用量は1回またはそれ以上、例えば最大4回までの単回投与量に分割することができる。
【0095】
実験の説明および実施例
使用される略語:
m.p. 融点
MPRC カートリッジL−026−30;SI60 40〜63μm;Super Vario Flash;最大圧3バール;Goetec−Labortechnik社製
MPLC 中圧液体クロマトグラフィー
THF テトラヒドロフラン
RT 室温
【実施例】
【0096】
〔実施例1〕
1−アミノ−4−(4−アミノフェニル)−6−クロロ−3,4−ジヒドロイソキノリン塩酸塩(1A)および1−アミノ−4−(4−アミノフェニル)−3,4−ジヒドロイソキノリン塩酸塩(1B)
【化12】

a) 3'−クロロ−4−ニトロジフェニルアセトニトリル
5mlのTHF中における3gの3−クロロベンジルシアニド、3.1gの1−クロロ−4−ニトロベンゼンおよび4.3gの塩化N−ベンジル−N,N,N−トリエチルアンモニウムの混合物を室温で約10分間攪拌し、次に10.1mlの50%濃度NaOH水溶液を滴加した。青みがかった緑色の溶液を60℃で3時間攪拌し、少量の水で希釈し、室温まで冷却した後、36%濃度濃塩酸で酸性にした。酢酸エチルで抽出し、有機相を水で洗浄し、次に溶媒を蒸留により除去した。酢酸エチルおよびn−ヘプタンの混合物(2:1)でMPRCカラムにおける中圧液体クロマトグラフィー(MPLC)により処理して油状の非晶質生成物を単離した。
b) 2−(3−クロロフェニル)−2−(4−ニトロフェニル)エチルアミン
無水THF中における13.17ミリモルの3'−クロロ−4−ニトロジフェニルアセトニトリルの溶液を15.8ミリモル(15.8ml)のボラン−テトラヒドロフラン錯体に滴加した。室温で4時間撹拌し、さらに室温で15時間放置した後、溶媒をRotavapor(R)中(回転蒸発器)で減圧蒸留により除去した。エタノールおよび数滴の36%濃度濃塩酸を残留物に加え、蒸気浴で約30分間加熱した後、エタノール性溶媒を蒸留により除去した。緑色の油状残留物を水と混合し、2N NaOHでアルカリ性にし、酢酸エチルで抽出し、有機相を洗浄した後、乾燥し、溶媒をRotavapor(R)中で蒸留により除去した。ジクロロメタンおよびメタノールの混合物(10:1)を使用してMPRC におけるMPLCカラムクロマトグラフィーにより所望の生成物を緑色がかった非晶質油状物として得た。
c) 2−(3−クロロフェニル)−2−(4−ニトロフェニル)エチルイソチオシアネート
5mlの塩化メチレン中における1.192ミリモルのチオホスゲンの溶液を2.71ミリモルの重炭酸ナトリウム水溶液に加えた。次に、1.084ミリモルの2−(3−クロロフェニル)−2−(4−ニトロフェニル)エチルアミンの混合物をこの混合物に15分間で滴加した。有機相を除去し、水相をジクロロメタンで再び抽出した後、合一した有機相を水で洗浄し、溶媒をRotavapor(R)中で減圧蒸留により除去した。赤みを帯びた油状の2−(3−クロロフェニル)−2−(4−ニトロフェニル)エチルイソチオシアネートをさらに処理するまで冷蔵庫で密閉した防湿容器に保存した。
d) 6−クロロ−1−メルカプト−4−(4−ニトロフェニル)−3,4−ジヒドロイソキノリン
外部で氷冷し、内部で攪拌しながら1.75mlの濃硫酸を0.4g(1.255ミリモル)の2−(3−クロロフェニル)−2−(4−ニトロフェニル)エチルイソチオシアネートに加えた。室温でさらに4時間撹拌し、次に氷−水を加え、ジクロロメタンで抽出した。
e) 6−クロロ−1−メチルチオ−4−(4−ニトロフェニル)−3,4−ジヒドロイソキノリン
20mlのアセトン中における0.48gの6−クロロ−1−メルカプト−4−(4−ニトロフェニル)−3,4−ジヒドロイソキノリンを0.85gの沃化メチルと3時間反応させ、次にアセトンを蒸留により除去して6−クロロ−1−メチルチオ−4−(4−ニトロフェニル)−3,4−ジヒドロイソキノリン沃化水素酸塩を黄色の固体として得た。融点:177〜182℃。
相当する遊離塩基6−クロロ−1−メチルチオ−4−(4−ニトロフェニル)−3,4−ジヒドロイソキノリンは2N NaOH水溶液で沃化水素酸塩から遊離させ、酢酸エチルで抽出することができる。部分的に固体の生成物。
f) 1−アミノ−6−クロロ−4−(4−ニトロフェニル)−3,4−ジヒドロイソキノリン
0.45gの6−クロロ−1−メチルチオ−4−(4−ニトロフェニル)−3,4−ジヒドロイソキノリンおよび30mlのアンモニア−飽和THF溶液からなる溶液を80℃で10時間、次に120℃でさらに15時間、オートクレーブ中で加熱した。その後、20容量部の酢酸エチル:10容量部のn−ヘプタン:3容量部の氷酢酸の混合物を使用してMPRC カートリッジにおけるMPLCにより出発物質(6−クロロ−1−メチルチオ−4−(4−ニトロフェニル)−3,4−ジヒドロイソキノリン)を溶離した。次に、メタノールで溶離して1−アミノ−6−クロロ−4−(4−ニトロフェニル)−3,4−ジヒドロイソキノリンを得た。融点:170〜185℃。
g) 1−アミノ−4−(4−アミノフェニル)−6−クロロ−3,4−ジヒドロイソキノリン塩酸塩(1A)および1−アミノ−4−(4−アミノフェニル)−3,4−ジヒドロイソキノリン塩酸塩(1B)
210mgの1−アミノ−6−クロロ−4−(4−ニトロフェニル)−3,4−ジヒドロイソキノリン、10mlのエタノール、1mlの濃塩酸(36%)および87mgの酸化白金(IV)の混合物を大気圧下、室温で水素の取込みが終わるまで水素化した。溶媒を蒸留により除去した後、2成分を10容量部の酢酸エチル、5容量部のメタノール、5容量部のn−ヘプタン、5容量部のジクロロメタンおよび1容量部の(濃)アンモニアの混合物でMPRC カートリッジにおけるMPLCにより分離した。
生成物を少量の酢酸エチルに溶解し、エーテル性HClで酸性にし、室温で攪拌し、吸引ろ過した。1−アミノ−4−(4−アミノフェニル)−6−クロロ−3,4−ジヒドロイソキノリン塩酸塩(1A)を無色の結晶性物質として得た。Rf=0.16(シリカゲル、酢酸エチル/メタノール/ヘプタン/ジクロロメタン/アンモニア 10:5:5:5:1)。融点:278〜284℃。MS m/z=271 (m)+
生成物をさらに少量の酢酸エチルに溶解し、エーテル性HClで酸性にし、室温で攪拌し、吸引ろ過した。1−アミノ−4−(4−アミノフェニル)−3,4−ジヒドロイソキノリン塩酸塩(1B)を無色の結晶性物質として得た。Rf=0.11(シリカゲル、酢酸エチル/メタノール/ヘプタン/ジクロロメタン/アンモニア 10:5:5:5:1)。MS m/z=237 (m)+
【0097】
〔実施例2〕
1−アミノ−4−(2−アミノフェニル)−6−クロロ−3,4−ジヒドロイソキノリン塩酸塩
【化13】

a) 3'−クロロ−2−ニトロジフェニルアセトニトリル
実施例1a)に記載の方法と同様にして、2相触媒として塩化N−ベンジル−N,N,N−トリエチルアンモニウムの存在下で3−クロロベンジルシアニド、2−フルオロニトロベンゼンから油状の非晶質生成物として得た。
b) 2−(3−クロロフェニル)−2−(2−ニトロフェニル)エチルアミンアセテート
実施例1b)に記載の方法と同様にし、ニトリル基をBH3・THF錯体で選択的に還元することにより得た。
c) 2−(3−クロロフェニル)−2−(2−ニトロフェニル)エチルイソチオシアネート
実施例1c)に記載の方法と同様にして、ジクロロメタン中の2−(3−クロロフェニル)−2−(2−ニトロフェニル)エチルアミンアセテートおよびチオホスゲンから得、さらに反応させるまで冷蔵庫で不活性気体下、同様に保存した。
d) 6−クロロ−1−メルカプト−4−(2−ニトロフェニル)−3,4−ジヒドロイソキノリン
実施例1d)に記載の方法と同様にして、2−(3−クロロフェニル)−2−(2−ニトロフェニル)エチルイソチオシアネートおよび濃硫酸から非晶質の半固体生成物として得た。
e) 6−クロロ−1−メチルチオ−4−(2−ニトロフェニル)−3,4−ジヒドロイソキノリン
実施例1e)に記載の方法と同様にして、6−クロロ−1−メルカプト−4−(2−ニトロフェニル)−3,4−ジヒドロイソキノリンおよび沃化メチルから得、次に2N水酸化ナトリウム溶液で処理した。黄色の非晶質油状物。
f) 1−アミノ−6−クロロ−4−(2−ニトロフェニル)−3,4−ジヒドロイソキノリン塩酸塩
実施例1f)に記載の方法と同様にして、6−クロロ−1−メチルチオ−4−(2−ニトロフェニル)−3,4−ジヒドロイソキノリンから非晶質生成物として得、それをさらに精製することなく工程g)で反応させた。
g) 1−アミノ−4−(2−アミノフェニル)−6−クロロ−3,4−ジヒドロイソキノリン塩酸塩
実施例1g)に記載の方法と同様にして、1−アミノ−6−クロロ−4−(2−ニトロフェニル)−3,4−ジヒドロイソキノリン塩酸塩からPtO2で水素化し、MPLCにより10容量部の酢酸エチル、5容量部のn−ヘプタン、5容量部のジクロロメタン、5容量部のメタノールおよび1容量部の濃アンモニア水溶液の混合物で溶離して得た。生成物を少量の酢酸エチルに溶解し、エーテル性HClで酸性にし、室温で攪拌し、そして吸引ろ過した。分解点:175℃超(発泡)。
【0098】
〔実施例3〕
4−(4−アミノフェニル)−6−クロロ−1−メチルアミノ−3,4−ジヒドロイソキノリン塩酸塩
【化14】

a) 6−クロロ−1−メチルアミノ−4−(4−ニトロフェニル)−3,4−ジヒドロイソキノリン
400mgの6−クロロ−1−メチルチオ−4−(4−ニトロフェニル)−3,4−ジヒドロイソキノリン(化合物1eを参照)を振騰するオートクレーブにおいて120℃でTHF中、2gのメチルアミンと一緒に不活性気体下で20時間加熱した。溶媒を蒸留により除去し、次に10容量部の酢酸エチル、5容量部のn−ヘプタン、5容量部のジクロロメタン、5容量部のメタノールおよび1容量部の濃アンモニア水溶液の混合物でMPRCカートリッジにおけるMPLCクロマトグラフィーにより処理した。固体。融点:60〜65℃(非晶質生成物)。
b) 6−クロロ−1−メチルアミノ−4−(4−ニトロフェニル)−3,4−ジヒドロイソキノリン塩酸塩
15mgの6−クロロ−1−メチルアミノ−4−(4−ニトロフェニル)−3,4−ジヒドロイソキノリンの酢酸エチル溶液にジエチルエーテル中における塩化水素気体の飽和溶液を加えて放置することにより得た。6−クロロ−1−メチルアミノ−4−(4−ニトロフェニル)−3,4−ジヒドロイソキノリン塩酸塩を溶液から結晶化させ無色の結晶性生成物として得、簡単に加熱した後にろ過した。融点:282〜285℃
c) 4−(4−アミノフェニル)−6−クロロ−1−メチルアミノ−3,4−ジヒドロイソキノリン
135.2mgの鉄粉を4.5〜5mlの氷酢酸中における255mgの6−クロロ−1−メチルアミノ−4−(4−ニトロフェニル)−3,4−ジヒドロイソキノリンの溶液に加え、次に1.8mlの濃塩酸を滴加し、混合物を還流条件下で2時間沸騰させた。溶媒を蒸留により除去し、残留物を水と混合し、2N NaOHでアルカリ性にした。この水相を酢酸エチルで抽出し、MPRCカートリッジを使用して10容量部の酢酸エチル、5容量部のn−ヘプタン、5容量部のジクロロメタン、5容量部のメタノールおよび1容量部の濃アンモニア水溶液の混合物でMPLCクロマトグラフィーにより精製した。非晶質生成物。
d) 4−(4−アミノフェニル)−6−クロロ−1−メチルアミノ−3,4−ジヒドロイソキノリン 塩酸塩
実施例3bに記載の方法と同様にして、4−(4−アミノフェニル)−6−クロロ−1−メチルアミノ−3,4−ジヒドロイソキノリンの酢酸エチル溶液とエーテル性塩化水素溶液から得た。無色の結晶性物質。融点:306〜310℃。
【0099】
〔実施例4〕
4−(4−アミノフェニル)−6−クロロ−1−ジメチルアミノ−3,4−ジヒドロイソキノリン塩酸塩
【化15】

a) 6−クロロ−1−ジメチルアミノ−4−(4−ニトロフェニル)−3,4−ジヒドロイソキノリン
400mgの6−クロロ−1−メチルチオ−4−(4−ニトロフェニル)−3,4−ジヒドロイソキノリン(化合物1)を振騰するオートクレーブにおいて120℃でTHF中、20mlのジメチルアミンと一緒に不活性気体下で20時間加熱した。溶媒を蒸留により除去し、次に10容量部の酢酸エチル、5容量部のn−ヘプタン、5容量部のジクロロメタン、5容量部のメタノールおよび1容量部の濃アンモニア水溶液の混合物でMPRCカートリッジにおけるMPLCクロマトグラフィーにより処理した。半固体、部分的に非晶質の生成物。
b) 4−(4−アミノフェニル)−6−クロロ−1−ジメチルアミノ−3,4−ジヒドロイソキノリン塩酸塩
100mgの鉄粉を3.5mlの氷酢酸中における195mgの6−クロロ−1−ジメチルアミノ−4−(4−ニトロフェニル)−3,4−ジヒドロイソキノリンの溶液に加え、次に1.8mlの濃塩酸を滴加し、混合物を還流条件下で2時間沸騰させた。溶媒を蒸留により除去し、残留物を水と混合し、2N NaOHでアルカリ性にした。この水相を酢酸エチルで抽出し、MPRCカートリッジを使用して10容量部の酢酸エチル、5容量部のn−ヘプタン、5容量部のジクロロメタン、5容量部のメタノールおよび1容量部の濃アンモニア水溶液の混合物でMPLCクロマトグラフィーにより精製した。溶媒をRotavapor(R)中で除去した後、粘性の非晶質残留物を酢酸エチル中、エーテル性塩化水素溶液で処理し、結晶性固体をろ過した。融点:255〜260℃。
【0100】
〔実施例5〕
4−(4−アミノフェニル)−6−クロロ−1−(N−ピロリジノ)−3,4−ジヒドロイソキノリン塩酸塩
【化16】

a) 6−クロロ−4−(4−ニトロフェニル)−1−(N−ピロリジノ)−3,4−ジヒドロイソキノリン
300mgの6−クロロ−1−メチルチオ−4−(4−ニトロフェニル)−3,4−ジヒドロイソキノリン(化合物1)を0.151mlのピロリジンと一緒に120℃で3時間加熱した。溶媒 を蒸留により除去し、次に同容量部のジクロロメタンおよびメタノールの混合物でMPRCカートリッジにおけるMPLCクロマトグラフィーにより処理した。半固体、部分的に結晶性の生成物。
b) 4−(4−アミノフェニル)−6−クロロ−1−(N−ピロリジノ)−3,4−ジヒドロイソキノリン
80.6mgの鉄粉を2.8mlの氷酢酸中における171.2mgの6−クロロ−1−(N−ピロリジノ)−4−(4−ニトロフェニル)−3,4−ジヒドロイソキノリンの溶液に加え、次に1.8mlの濃塩酸を滴加し、混合物を還流条件下で2時間沸騰させた。溶媒を蒸留により除去し、残留物を水と混合し、2N NaOHでアルカリ性にした。この水相を酢酸エチルで抽出し、MPRCカートリッジを使用して10容量部の酢酸エチル、5容量部のn−ヘプタン、5容量部のジクロロメタン、5容量部のメタノールおよび1容量部の濃アンモニア水溶液の混合物でMPLCクロマトグラフィーにより精製した。部分的に非晶質の生成物。
c) 4−(4−アミノフェニル)−6−クロロ−1−(N−ピロリジノ)−3,4−ジヒドロイソキノリン塩酸塩
実施例3bに記載の方法と同様にして、4−(4−アミノフェニル)−6−クロロ−1−(N−ピロリジノ)−3,4−ジヒドロイソキノリンの酢酸エチル溶液とエーテル性塩化水素溶液から得た。無色の結晶性物質。融点:250℃超(分解)。
【0101】
〔実施例6〕
N−(エトキシカルボニルメチル)−N'−4−[(6−クロロ−3,4−ジヒドロ−1−ジメチルアミノイソキノリン−4−イル)フェニル]尿素塩酸塩
【化17】

a) 6−クロロ−1−ジメチルアミノ−4−(4−ニトロフェニル)−3,4−ジヒドロキノリン
400mgの6−クロロ−1−メチルチオ−4−(4−ニトロフェニル)−3,4−ジヒドロイソキノリン(化合物1)を振騰するオートクレーブにおいてTHF/ジメチルアミンの2M溶液(20ml)と一緒に120℃で20時間加熱した。溶媒を蒸留により除去し、次に同容量部のジクロロメタンおよびメタノールの混合物でMPRCカートリッジにおけるMPLCクロマトグラフィーにより処理した。半結晶性固体を得た。
b) 4−(4−アミノフェニル)−6−クロロ−1−(ジメチルアミノ)−3,4−ジヒドロイソキノリン
99mgの鉄粉を3mlの氷酢酸中における195mgの6−クロロ−1−ジメチルアミノ−4−(4−ニトロフェニル)−3,4−ジヒドロキノリンの溶液に加え、次に1.8mlの濃塩酸を滴加し、混合物を還流条件下で2時間沸騰させた。溶媒を蒸留により除去し、残留物を水と混合し、2N NaOHでアルカリ性にした。この水相を酢酸エチルで抽出し、MPRCカートリッジを使用して10容量部の酢酸エチル、5容量部のn−ヘプタン、5容量部のジクロロメタン、5容量部のメタノールおよび1容量部の濃アンモニア水溶液の混合物でMPLCクロマトグラフィーにより精製した。得られた粘稠な残留物を酢酸エチル中で懸濁し、エーテル/HClで酸性にした。結晶性固体をろ過した。融点:250℃超(分解)。
c) N−(エトキシカルボニルメチル)−N'−4−[(6−クロロ−3,4−ジヒドロ−1−ジメチルアミノイソキノリン−4−イル)フェニル]尿素
6mlのジクロロメタン中における76mgの4−(4−アミノフェニル)−6−クロロ−1(ジメチルアミノ)−3,4−ジヒドロイソキノリンを3mlのジクロロメタン中における33mgのエチルイソシアナトアセテートと3時間反応させ、その後ジクロロメタンを蒸留により除去してN−(エトキシカルボニルメチル)−N'−4−[(6−クロロ−3,4−ジヒドロ−1−ジメチルアミノイソキノリン−4−イル)フェニル]尿素を暗黄色の固体残留物として得た。次にMPRCカートリッジを使用して10容量部の酢酸エチル、5容量部のn−ヘプタン、5容量部のジクロロメタン、5容量部のメタノールおよび1容量部の濃アンモニア水溶液の混合物でMPLCにより生成物を溶離した。生成物を少量の酢酸エチルと混合し、エーテル性HClで酸性にした。融点:120℃。
【0102】
〔実施例7〕
3−{4−[(6−クロロ−3,4−ジヒドロ−1−ジメチルアミノイソキノリン−4−イル)フェニル]}−イミダゾリジン−2,4−ジオン塩酸塩
【化18】

43mgのN−(エトキシカルボニルメチル)−N'−4−[(6−クロロ−3,4−ジヒドロ−1−ジメチルアミノ−イソキノリン−4−イル)フェニル]尿素(実施例6)を還流下で5mlの6N HCl中で6時間沸騰させた。室温で1時間撹拌した後、水を蒸留により除去した。残留物を少量の水と混合し、飽和K2CO3溶液で中和した。固体が沈殿し、それを10容量部の酢酸エチル、5容量部のn−ヘプタン、5容量部のジクロロメタン、6容量部のメタノールおよび1容量部の濃アンモニア水溶液の混合物でMPRCカートリッジにおけるMPLCクロマトグラフィーにより精製した。生成物を少量の酢酸エチルに溶解し、エーテル性HClで酸性にし、室温で攪拌し、吸引ろ過した。融点:140℃超(>310℃で昇華が始まる)。
【0103】
薬理データ:
アッセイの説明:NHE阻害作用の測定
本アッセイにおいて、重炭酸塩を含まない条件下でさえ起こる機能性NHEによる酸性化後の細胞内pH(pHj)の回復を測定した。このために、pHjはpH−感受性蛍光色素BCECF(Calbiochem;前駆体BCECF−AMを使用した)により測定した。最初に、細胞をBCECFで染色した。BCECF蛍光を蛍光分光計(Photon Technology International社製;米国ニュージャージー州サウスブランズウィック)において505および440nmの励起波長と535nmの発光波長で測定し、較正プロットを使用してpHjに変換した。BCECF染色のために細胞をNH4Cl緩衝液(pH7.4)中でインキュベートした(NH4Cl緩衝液:115mMのNaCl、20mMのNH4Cl、5mMのKCl、1mMのCaCl2、1mMのMgSO4、20mMのヘペス、5mMのグルコース、1mg/mlのBSA;1M NaOHでpH7.4に調整した)。NH4Clを含まない緩衝液(975μl;下記参照)をNH4Cl緩衝液中でインキュベートした細胞(25μl)に加えて細胞内の酸性化を誘発した。その後のpH回復の割合をNHE1について2分間、NHE2について5分間、そしてNHE3について3分間記録した。試験物質の阻害力を計算するために、初めに細胞をpH回復が完全にある、または全くない緩衝液で試験した。完全なpH回復の場合(100%)、Na+を含有する緩衝液(133.8mMのNaCl、4.7mMのKCl、1.25mMのCaCl2、1.25mMのMgCl2、0.97mMのNa2HPO4、0.23mMのNaH2PO4、5mMのヘペス、5mMのグルコース;1M NaOHでpH7.0に調整した)中で細胞をインキュベートした。0%値を測定するために、Na+を含まない緩衝液(133.8mMの塩化コリン、4.7mMのKCl、1.25mMのCaCl2、1.25mMのMgCl2、0.97mMのK2HPO4、0.23mMのKH2PO4、5mMのヘペス、5mMのグルコース;1M NaOHでpH7.0に調整した)中で細胞をインキュベートした。試験される物質はNa+を含有する緩衝液中で作成された。様々な試験濃度の物質による細胞内pHの回復を最大回復の百分率として表した。Sigma Plotプログラムを使用してpH回復の百分率から個々のサブタイプのNHEに対するそれぞれの物質のIC50を計算した。
【0104】
NHE3に対する種々の実施例化合物による阻害作用(IC50値)を下表に示す:
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

[式中、R1、R2、R3およびR4は互いに独立して水素、F、Cl、Br、I、CN、NO2、CF3、CH3−SO2、1、2、3または4個のC原子を有するアルキル、NH2、NH−CH3またはN(CH3)2であり;
R5およびR6は互いに独立して水素、1、2、3、4、5または6個のC原子を有するアルキル、CF3−CH2−、3、4、5または6個のC原子を有するシクロアルキル、またはシクロプロピル−CH2−であり;あるいは
R5およびR6はそれらが結合している窒素原子と一緒になって1または2個のCH2基が互いに独立してNR12、硫黄、酸素、C(O)またはSO2により置換されうる4−、5−、6−、7−、8−、9−または10−員環を形成し;ここで
R12は水素、1、2、3または4個のC原子を有するアルキル、または3、4、5または6個のC原子を有するシクロアルキルであり;
R7は水素、または1、2、3または4個のC原子を有するアルキルであり;
R8およびR9は互いに独立して水素、F、Cl、Br、OH、1、2、3または4個のC原子を有するアルキル、CH3O、CF3またはCH3SO2であり;
R10およびR11は互いに独立してR13−(CmH2m)−Bnであり、ここで
mは0、1、2、3または4であり;
nは0または1であり;
Bは−CO−、−CONR14−または−SO2−であり;
R14は水素、または1、2、3、4、5または6個のC原子を有するアルキルであり;
R13は水素、1、2、3または4個のC原子を有するアルキル、3、4、5または6個のC原子を有するシクロアルキル、1−ピロリジニル、1−ピペリジニル、1−(4−メチルピペラジニル)、1−モルホリニル、−COOR15、OR16、NR17R18、または互いに独立して塩素、フッ素、メチルおよびメトキシからなる群より選択される1または2個の置換基を有するフェニルであり;
R15、R16、R17およびR18は互いに独立して水素、または1、2、3、4、5または6個のC原子を有するアルキルであり;あるいは
R10およびR11はそれらが結合している窒素原子と一緒になって1、2、3または4個のCH2基が互いに独立してNR19、硫黄、酸素、C(O)またはSO2により置換されうる4−、5−、6−、7−、8−、9−または10−員環を形成し;ここで
R19は水素、1、2、3または4個のC原子を有するアルキル、または3、4、5または6個のC原子を有するシクロアルキルである]
の化合物、並びにその薬学的に許容しうる塩およびトリフルオロ酢酸塩。
【請求項2】
R1、R2、R3およびR4は互いに独立して水素、F、Cl、Br、CN、CF3、CH3−SO2、1、2、3または4個のC原子を有するアルキル、NH2、NH−CH3またはN(CH3)2であり;
R5およびR6は互いに独立して水素、1、2、3、4、5または6個のC原子を有するアルキル、CF3−CH2−、3、4、5または6個のC原子を有するシクロアルキル、またはシクロプロピル−CH2−であり;あるいは
R5およびR6はそれらが結合している窒素原子と一緒になって4−、5−、6−、7−、8−、9−または10−員環を形成し;
R7は水素またはメチルであり;
R8およびR9は互いに独立して水素、F、Cl、OH、1、2、3または4個のC原子を有するアルキル、CH3O、CF3またはCH3SO2であり;
R10およびR11は互いに独立してR13−(CmH2m)−Bnであり、ここで
mは0、1、2、3または4であり;
nは0または1であり;
Bは−CO−、−CONR14−または−SO2−であり;ここで
R14は水素、または1、2、3、4、5または6個のC原子を有するアルキルであり;
R13は水素、1、2、3または4個のC原子を有するアルキル、3、4、5または6個のC原子を有するシクロアルキル、1−ピロリジニル、1−ピペリジニル、1−(4−メチルピペラジニル)、1−モルホリニル、−COOR15、OR16、NR17R18、または互いに独立して塩素、フッ素、メチルおよびメトキシからなる群より選択される1または2個の置換基を有するフェニルであり;
R15、R16、R17およびR18は互いに独立して水素、または1、2、3、4、5または6個のC原子を有するアルキルであり;あるいは
R10およびR11はそれらが結合している窒素原子と一緒になって1、2、3または4個のCH2基が互いに独立してNR19、硫黄、酸素、C(O)またはSO2により置換されうる4−、5−、6−、7−、8−、9−または10−員環を形成し;ここで
R19は水素、または1、2、3または4個のC原子を有するアルキルである
請求項1記載の式Iの化合物、並びにその薬学的に許容しうる塩およびトリフルオロ酢酸塩。
【請求項3】
R1、R2、R3およびR4は互いに独立して水素、F、Cl、Br、CN、CF3、CH3−SO2、メチル、エチル、NH2、NH−CH3またはN(CH3)2であり;
R5およびR6は互いに独立して水素、メチル、エチル、イソプロピル、CF3−CH2−、または3、4、5または6個のC原子を有するシクロアルキルであり;あるいは
R5およびR6はそれらが結合している窒素原子と一緒になって4−、5−、6−、7−、8−、9−または10−員環を形成し;
R7は水素またはメチルであり;
R8およびR9は互いに独立して水素、Clまたはメチルであり;
R10およびR11は互いに独立してR13−(CmH2m)−Bnであり、ここで
mは0、1、2、3または4であり;
nは0または1であり;
Bは−CO−、−CONR14−または−SO2−であり;ここで
R14は水素、または1、2、3、4、5または6個のC原子を有するアルキルであり;
R13は水素、メチル、エチル、イソプロピル、3、4、5または6個のC原子を有するシクロアルキル、1−ピロリジニル、1−ピペリジニル、1−(4−メチルピペラジニル)、−COOR15、OR16またはNR17R18であり;ここで
R15、R16、R17およびR18は互いに独立して水素、または1、2、3、4、5または6個のC原子を有するアルキルであり;あるいは
R10およびR11はそれらが結合している窒素原子と一緒になって1、2または3個のCH2基が互いに独立してNR19またはC(O)により置換されうる4−、5−、6−、7−、8−、9−または10−員環を形成し;ここで
R19は水素またはメチルである
請求項1または2記載の式Iの化合物、並びにその薬学的に許容しうる塩およびトリフルオロ酢酸塩。
【請求項4】
R1およびR3は水素であり;
R2およびR4は互いに独立して水素またはClであり;
R5およびR6は互いに独立して水素またはメチルであり;あるいは
R5およびR6はそれらが結合している窒素原子と一緒になって5−または6−員環を形成し;
R7は水素であり;
R8およびR9は互いに独立して水素またはClであり;
R10およびR11は互いに独立してR13−(CmH2m)−Bnであり、ここで
mは0、1、2、3または4であり;
nは0または1であり;
Bは−CO−または−CONR14−であり;ここで
R14は水素またはメチルであり;
R13は水素、メチル、3、4、5または6個のC原子を有するシクロアルキル、1−ピロリジニル、1−ピペリジニル、1−(4−メチルピペラジニル)、−COOR15、OR16またはNR17R18であり;
R15、R16、R17およびR18は互いに独立して水素、または1、2、3、4、5または6個のC原子を有するアルキルであり;あるいは
R10およびR11はそれらが結合している窒素原子と一緒になって1、2または3個のCH2基が互いに独立してNR19またはC(O)により置換されうる4−、5−、6−、7−、8−、9−または10−員環を形成し;ここで
R19は水素またはメチルである
請求項1〜3の何れかの項記載の式Iの化合物、並びにその薬学的に許容しうる塩およびトリフルオロ酢酸塩。
【請求項5】
1−アミノ−4−(4−アミノフェニル)−6−クロロ−3,4−ジヒドロイソキノリン、
1−アミノ−4−(4−アミノフェニル)−3,4−ジヒドロイソキノリン、
1−アミノ−4−(2−アミノフェニル)−6−クロロ−3,4−ジヒドロイソキノリン、
4−(4−アミノフェニル)−6−クロロ−1−メチルアミノ−3,4−ジヒドロイソキノリン、
4−(4−アミノフェニル)−6−クロロ−1−ジメチルアミノ−3,4−ジヒドロイソキノリン、
4−(4−アミノフェニル)−6−クロロ−1−(N−ピロリジノ)−3,4−ジヒドロイソキノリン、
N−(エトキシカルボニルメチル)−N'−4−[(6−クロロ−3,4−ジヒドロ−1−ジメチルアミノイソキノリン−4−イル)フェニル]尿素および
3−{4−[(6−クロロ−3,4−ジヒドロ−1−ジメチルアミノイソキノリン−4−イル)フェニル]}イミダゾリジン−2,4−ジオン
からなる群より選択される請求項1〜4の何れかの項記載の式Iの化合物、並びにその薬学的に許容しうる塩およびトリフルオロ酢酸塩。
【請求項6】
薬剤として使用される請求項1〜5の何れかの項記載の式Iの化合物およびその薬学的に許容しうる塩。
【請求項7】
呼吸駆動障害、呼吸障害、睡眠関連呼吸障害、睡眠時無呼吸、いびき、急性および慢性の腎障害、急性腎不全および慢性腎不全、腸機能障害、高血圧、本態性高血圧、中枢神経系疾患、CNSの過興奮性により起こる疾患、癲癇および中枢的に誘発される痙攣、あるいは不安状態、鬱病および精神病、末梢または中枢神経系の虚血状態、あるいは卒中、変性CNS疾患、記憶力低下、認知症およびアルツハイマー病、並びに虚血または再灌流事象により引き起こされる末梢器官または四肢の急性および慢性の損傷および疾患、アテローム性動脈硬化症、脂質代謝障害、血栓症、胆管機能障害、外部寄生虫感染症、内皮機能障害により起こる疾患、原虫症、マラリア、ショック状態または糖尿病および後期の糖尿病性損傷、あるいは細胞増殖が一次的または二次的原因である疾患を治療または予防するための;外科的処置用の移植片を保存および貯蔵するための;外科手術および臓器移植で使用するための;さらに健康を維持し、延命するための薬剤の製造における請求項1〜5の何れかの項記載の式Iの化合物および/またはその薬学的に許容しうる塩の使用。
【請求項8】
呼吸駆動障害、呼吸障害、睡眠関連呼吸障害、睡眠時無呼吸、いびき、急性および慢性の腎障害、急性腎不全および慢性腎不全、腸機能障害、高血圧、本態性高血圧、中枢神経系疾患、CNSの過興奮性により起こる疾患、癲癇および中枢的に誘発される痙攣、あるいは不安状態、鬱病および精神病、末梢または中枢神経系の虚血状態、あるいは卒中、虚血または再灌流事象により引き起こされる末梢器官または四肢の急性および慢性の損傷および疾患、アテローム性動脈硬化症、脂質代謝障害、血栓症、胆管機能障害、外部寄生虫感染症、内皮機能障害により起こる疾患、原虫症、マラリア、ショック状態または糖尿病および後期の糖尿病性損傷、あるいは細胞増殖が一次的または二次的原因である疾患を治療または予防するための;外科的処置用の移植片を保存および貯蔵するための;外科手術および臓器移植で使用するための;さらに健康を維持し、延命するための薬剤の製造における他の薬剤または活性成分と組合せた請求項1〜5の何れかの項記載の式Iの化合物および/またはその薬学的に許容しうる塩の使用。
【請求項9】
呼吸駆動障害および/または睡眠時無呼吸のような睡眠関連呼吸障害を治療または予防するための薬剤の製造における、単独のあるいは他の薬剤または活性成分と組合せた請求項1〜5の何れかの項記載の式Iの化合物および/またはその薬学的に許容しうる塩の使用。
【請求項10】
いびきを治療または予防するための薬剤の製造における、単独のあるいは他の薬剤または活性成分と組合せた請求項1〜5の何れかの項記載の式Iの化合物および/またはその薬学的に許容しうる塩の使用。
【請求項11】
急性または慢性の腎障害、急性腎不全または慢性腎不全を治療または予防するための薬剤の製造における、単独のあるいは他の薬剤または活性成分と組合せた請求項1〜5の何れかの項記載の式Iの化合物および/またはその薬学的に許容しうる塩の使用。
【請求項12】
腸機能障害を治療または予防するための薬剤の製造における、単独のあるいは他の薬剤または活性成分と組合せた請求項1〜5の何れかの項記載の式Iの化合物および/またはその薬学的に許容しうる塩の使用。
【請求項13】
有効量の請求項1〜5の何れかの項記載の式Iの化合物および/またはその薬学的に許容しうる塩を含有する人間、動物または植物保護に使用される医薬製剤。
【請求項14】
他の薬理学的に活性な成分または薬剤と組合せた有効量の請求項1〜5の何れかの項記載の式Iの化合物および/またはその薬学的に許容しうる塩を含有する人間、動物または植物保護に使用される医薬製剤。

【公表番号】特表2009−530323(P2009−530323A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−500730(P2009−500730)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際出願番号】PCT/EP2007/001982
【国際公開番号】WO2007/107245
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(399050909)サノフィ−アベンティス (225)
【Fターム(参考)】