説明

置換金メッキ浴及び当該金メッキ方法

【課題】 パラジウム皮膜上に美麗な外観の置換金めっき皮膜を良好に形成する。
【解決手段】 パラジウム皮膜上に金皮膜を形成する置換金メッキ浴において、可溶性金塩と縮合リン酸類を含有し、pH2〜7である非シアン系の置換金メッキ浴である。置換金メッキ浴にポリリン酸、ピロリン酸、或はその塩などの縮合リン酸類を含有するため、この縮合リン酸類が金イオンに対して適度の錯化機能とレベリング機能を発揮し、パラジウム皮膜上に均一でレモンイエローの明るい色調の美麗な金皮膜を析出させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非シアン系の置換金メッキ浴並びに当該金メッキ方法に関して、パラジウム皮膜上に均一で美麗な外観の金メッキ皮膜を良好に形成できるものを提供する。
【背景技術】
【0002】
金メッキは電子部品の端子メッキやボンディングなどの分野に多用されるが、電気メッキ方式に対して、置換金メッキ方式には、電子部品の小型化や高密度化の現状に則して、通電することなく微細で複雑な形状の部品や電気的に孤立した部分などに、均一な厚みで皮膜を良好に形成できる利点がある。
【0003】
置換金メッキ浴の従来技術を挙げると次の通りである。
(1)特許文献1
スルフィド系化合物などを錯化剤とし、酒石酸、クエン酸等のオキシカルボン酸、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン等のアミン系化合物などを隠蔽錯化剤として含有する置換金メッキ浴が開示されている(請求項1〜2、段落18)。
当該置換金メッキ浴には、塩化アンモニウム、ホウ酸塩、リン酸塩などのpH緩衝剤を添加できること(段落33)、また、実施例1〜8には塩化アンモニウムを緩衝剤とする置換金メッキ浴が記載されている(段落42〜49)。
【0004】
(2)特許文献2
メルカプト化合物又はスルフィド化合物を還元剤として含有した金などの置換メッキ浴であって(請求項1〜2)、リン酸、酢酸、クエン酸及びその塩などをpH緩衝剤として添加できることが開示されている(段落21)。
置換金メッキ浴の実施例1〜5には緩衝剤としてリン酸2水素カリウムが添加されている(段落37〜42)。
【0005】
(3)特許文献3
フェニル化合物系還元剤と、チオ尿素化合物、スルフィド化合物などのイオウ系化合物を安定剤として含有する無電解金メッキ浴であって(請求項1〜5)、pH緩衝剤としてリン酸塩、ホウ酸塩、クエン酸塩などを添加できることが開示されている(段落53)。 置換金メッキ浴には四ホウ酸二カリウム四水和物をpH緩衝剤として添加している(表2)。また、金属イオン隠蔽剤として、ベンゾトリアゾール系化合物を使用できることが記載されている(段落55〜56)。
【0006】
(4)特許文献4
安定剤として特定のアルコール又はフェノール類を含有する金などの無電解メッキ浴に(段落5)、錯化剤としてクエン酸、酒石酸などのヒドロキシカルボン酸、エチレンジアミン四酢酸などのアミンカルボン酸などを添加でき(段落31〜32)、また、pH緩衝剤として酒石酸、クエン酸、リン酸、塩化アンモニウムなどを添加できることが記載されている(請求項12、段落38)。
無電解金メッキ浴の実施例1にはクエン酸塩とエチレンジアミン四酢酸が添加され、同様に実施例11にはクエン酸塩とニトリロ三酢酸塩が添加されている(段落45と段落55)。
【0007】
(5)特許文献5
亜硫酸金塩とEDTAなどの錯化剤とを含有する無電解金メッキ浴に、リン酸系のpH緩衝剤を添加できることが記載されている(請求項1、段落9〜10)。
【0008】
また、置換金メッキ浴ではないが、特許文献6には、特定のモノスルフィド系化合物を含有する置換銀メッキ浴に(請求項1、段落12)、pH調整剤として酒石酸、リンゴ酸、酒石酸などを添加でき(段落16)、pH緩衝剤としてリン酸、2−リン酸、トリポリリン酸、ホウ酸、酢酸などを添加できることが記載されている(段落23)。
【0009】
【特許文献1】特開2000−192248号公報
【特許文献2】特開2000−26977号公報
【特許文献3】特開2004−10964号公報
【特許文献4】特開2003−268558号公報
【特許文献5】特開平4−371584号公報
【特許文献6】特開2000−309875号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
置換金メッキでは、接合強度を増し、或は、ポリエチレングリコールをメッキ浴に添加した場合に生じる析出むらを防止するなどの見地から、被メッキ物にパラジウムの下地メッキを施し、当該パラジウム皮膜上に置換金メッキを施すことが多い。
しかしながら、このパラジウム皮膜上への金の置換メッキでは、パラジウムと金の電極電位が貴の領域でかなり接近しているため、メッキ浴に添加する金の錯化剤にあっては、適正なバランスの錯化機能が要求される。即ち、錯化機能が強いと金イオンが浴中で安定し過ぎて金の析出が困難になり、逆に錯化機能が弱いとパラジウム皮膜上に均一に付着しなかったり、レモンイエローの明るい色調の外観が得られず、外観不良になってしまう問題があった。
本発明は、パラジウム皮膜上に美麗な外観の置換金めっき皮膜を良好に析出させることを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、パラジウム皮膜に対する置換金メッキにおいて、適正な錯化機能を奏する化合物を鋭意研究した結果、ピロリン酸、トリポリリン酸、ポリリン酸、及びその塩などの縮合リン酸類が、金イオンに対して適度の錯化機能とレベリング(均一付着性)機能を奏して、パラジウム皮膜上に良好に金を置換析出させること、また、得られる金皮膜は均一でレモンイエローの明るい色調であることを見い出して、本発明を完成した。
【0012】
即ち、本発明1は、パラジウム皮膜上に金皮膜を形成する置換金メッキ浴において、
可溶性金塩と縮合リン酸類を含有し、pH2〜7であることを特徴とする非シアン系の置換金メッキ浴である。
【0013】
本発明2は、上記本発明1において、縮合リン酸類がポリリン酸、トリポリリン酸、ピロリン酸、メタリン酸、及びこれらの塩より選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする非シアン系の置換金メッキ浴である。
【0014】
本発明3は、上記本発明1又は2において、さらに、隠蔽錯化剤として、ポリアミン類、アミンカルボン酸類、アミノアルコール類から選ばれたアミン類、及びオキシカルボン酸類、ポリカルボン酸類より選ばれたカルボン酸類の少なくとも一種を含有する非シアン系の置換金メッキ浴である。
【0015】
本発明4は、上記本発明3において、アミン類がアミンカルボン酸類であり、カルボン酸類がオキシカルボン酸類であることを特徴とする非シアン系の置換金メッキ浴である。
【0016】
本発明5は、上記本発明1〜4のいずれかにおいて、可溶性金塩が、ハロゲン化金酸塩、亜硫酸金塩、チオ硫酸金塩、チオリンゴ酸金塩であることを特徴とする非シアン系の置換金メッキ浴である。
【0017】
本発明6は、上記本発明1〜5のいずれかにおいて、さらに界面活性剤を含有することを特徴とする非シアン系の置換金メッキ浴である。
【0018】
本発明7は、被メッキ物にパラジウム皮膜を形成した後、上記本発明1〜6のいずれかの非シアン系の置換金メッキ浴を用いて、当該パラジウム皮膜上に金メッキ皮膜を形成することを特徴とする置換金メッキ方法である。
【0019】
本発明8は、上記本発明7において、被メッキ物が、プリント基板、フレキシブルプリント基板、フィルムキャリア、半導体集積回路、抵抗、コンデンサ、フィルタ、インダクタ、サーミスタ、水晶振動子、スイッチ、リード線より選ばれた電子部品であることを特徴とする置換金メッキ方法である。
【発明の効果】
【0020】
置換金メッキ浴にポリリン酸、ピロリン酸、或はこれらの塩などの縮合リン酸類を含有するため、この縮合リン酸類が金イオンに対して適度の錯化機能とレベリング機能を発揮して、パラジウム皮膜上に良好に金を置換析出できるとともに、均一でレモンイエローの明るい色調の金皮膜を形成できる。
置換金メッキ浴にさらに隠蔽錯化剤としてアミン類、カルボン酸類を含有すると、置換反応で溶出する下地金属のイオンを良好に封鎖するため、金の皮膜外観をより美麗に形成できるとともに、メッキの連続操業がより円滑になる。
また、置換金メッキ浴にノニオン系、両性などの各種界面活性剤を添加すると、メッキむらをなくし、メッキ皮膜の均一性をより向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は可溶性金塩と縮合リン酸類を含有し、pH2〜7に調整されたパラジウム皮膜上に金メッキを施すための非シアン系の置換金メッキ浴である。従って、本発明の置換金メッキ浴においては、金のシアン系錯体塩などのシアン化物を含む置換金浴は排除される。
【0022】
金の供給源である可溶性金塩は、メッキ浴中に金イオンを供給可能な金塩であれば特に制限されず、具体的には、塩化金酸カリウム、塩化金酸ナトリウム、塩化金酸アンモニウム、亜硫酸金カリウム、亜硫酸金ナトリウム、亜硫酸金アンモニウム、チオ硫酸金カリウム、チオ硫酸金ナトリウム、チオ硫酸金アンモニウム、チオリンゴ酸カリウム、チオリンゴ酸ナトリウムなどが挙げられる(本発明5参照)。
可溶性金塩は単用又は併用でき、メッキ浴中へ含有量は金属換算で0.001〜20g/L、好ましくは0.5〜10g/Lである。
【0023】
上記縮合リン酸類はオルトリン酸が加熱などにより縮合したものであり、従って、オルトリン酸及びその塩は排除される。
本発明2に示すように、縮合リン酸類としては、ポリリン酸、ポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸、ピロリン酸カリウム、ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸二水素二ナトリウム、メタリン酸、メタリン酸カリウム、メタリン酸ナトリウムなどが挙げられ、ピロリン酸、ポリリン酸、トリポリリン酸及びその塩が好ましく、ピロリン酸及びその塩がより好ましい。
上記縮合リン酸類は金イオンの錯化機能及びメッキ皮膜のレベリング機能を兼備し、単用又は併用できる。メッキ浴中への縮合リン酸類の含有量は0.01〜5モル/L、好ましくは0.02〜2モル/Lである。
【0024】
本発明3に示すように、金の皮膜外観、特に色調をより美麗にする見地から、置換金メッキ浴には隠蔽錯化剤として、ポリアミン類、アミンカルボン酸類、アミノアルコール類から選ばれたアミン類、及びオキシカルボン酸類、ポリカルボン酸類より選ばれたカルボン酸類の少なくとも一種を含有することが好ましい。
上記アミン類のうちのポリアミン類としては、メチレンジアミン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミンなどが挙げられる。
アミンカルボン酸としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩(EDTA・2Na)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、エチレンジアミンテトラプロピオン酸、ニトリロ三酢酸(NTA)、イミノジ酢酸(IDA)、イミノジプロピオン酸(IDP)などが挙げられる。
上記アミノアルコール類としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどが挙げられる。
尚、上記アミン類としては、エチレンジアミンテトラメチレンリン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンリン酸、アミノトリメチレンリン酸、アミノトリメチレンリン酸五ナトリウム塩などのアミンリン酸類も有効である。
上記カルボン酸類のうちのオキシカルボン酸類としては、グルコン酸、クエン酸、酒石酸、グルコヘプトン酸、リンゴ酸、グリコール酸、乳酸、トリオキシ酪酸、或はこれらの塩などが挙げられる。
上記ポリカルボン酸類としては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、或はこれらの塩などが挙げられる。
本発明では、被メッキ物の銅素地にパラジウムの下地皮膜を形成し、或は硬度を増す見地から銅素地にニッケル皮膜を介してパラジウムの下地皮膜を形成するが、これらのパラジウム皮膜上に置換金メッキをするに際しては、パラジウムの溶出に加えて、パラジウム皮膜が薄い場合には、その下層の皮膜、即ち、銅やニッケルの素地がメッキ浴に溶出する恐れがある。上記アミン類はパラジウム、或は銅イオンの隠蔽に有効であり、上記カルボン酸類はニッケルイオンの隠蔽に有効である。
上記隠蔽錯化剤は単用又は併用でき、メッキ浴への含有量は0.01〜5モル/L、好ましくは0.02〜3モル/Lである。
【0025】
また、本発明6に示すように、本発明の置換金メッキ浴には、メッキむらをなくして析出皮膜の均一付着性を向上する見地から、ノニオン系、両性界面活性剤、カチオン系、或はアニオン系の各種界面活性剤を添加することが好ましい。
界面活性剤は単用又は併用でき、その含有量は0.01〜100g/L、好ましくは0.1〜50g/Lである。
【0026】
当該ノニオン系界面活性剤の具体例としては、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)を初め、C1〜C20アルカノール、フェノール、ナフトール、ビスフェノール類、(ポリ)C1〜C25アルキルフェノール、(ポリ)アリールアルキルフェノール、C1〜C25アルキルナフトール、C1〜C25アルコキシル化リン酸(塩)、ソルビタンエステル、ポリアルキレングリコール、C1〜C22脂肪族アミン、C1〜C22脂肪族アミドなどにエチレンオキシド(EO)及び/又はプロピレンオキシド(PO)を2〜300モル付加縮合させたものや、C1〜C25アルコキシル化リン酸(塩)などが挙げられる。
【0027】
上記エチレンオキシド(EO)及び/又はプロピレンオキシド(PO)を付加縮合させるC1〜C20アルカノールとしては、メタノール、エタノール、n−ブタノール、t−ブタノール、n−ヘキサノール、オクタノール、デカノール、ラウリルアルコール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、ステアリルアルコール、エイコサノール、オレイルアルコール、ドコサノールなどが挙げられる。同じく上記ビスフェノール類としては、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールFなどが挙げられる。上記(ポリ)C1〜C25アルキルフェノールとしては、モノ、ジ、若しくはトリアルキル置換フェノール、例えば、p−メチルフェノール、p−ブチルフェノール、p−イソオクチルフェノール、p−ノニルフェノール、p−ヘキシルフェノール、2,4−ジブチルフェノール、2,4,6−トリブチルフェノール、ジノニルフェノール、p−ドデシルフェノール、p−ラウリルフェノール、p−ステアリルフェノールなどが挙げられる。上記アリールアルキルフェノールとしては、2−フェニルイソプロピルフェノール、クミルフェノール、(モノ、ジ又はトリ)スチレン化フェノール、(モノ、ジ又はトリ)ベンジルフェノールなどが挙げられる。上記C1〜C25アルキルナフトールのアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシルなどが挙げられ、ナフタレン核の任意の位置にあって良い。上記ポリアルキレングリコールとしては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン・コポリマーなどが挙げられる。
【0028】
上記C1〜C25アルコキシル化リン酸(塩)は、下記の一般式(a)で表されるものである。
Ra・Rb・(MO)P=O …(a)
(式(a)中、Ra及びRbは同一又は異なるC1〜C25アルキル、但し、一方がHであっても良い。MはH又はアルカリ金属を示す。)
【0029】
上記ソルビタンエステルとしては、モノ、ジ又はトリエステル化した1,4−、1,5−又は3,6−ソルビタン、例えばソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンジオレエート、ソルビタン混合脂肪酸エステルなどが挙げられる。上記C1〜C22脂肪族アミンとしては、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、牛脂アミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミンなどの飽和及び不飽和脂肪酸アミンなどが挙げられる。上記C1〜C22脂肪族アミドとしては、プロピオン酸、酪酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘン酸、ヤシ油脂肪酸、牛脂脂肪酸などのアミドが挙げられる。
【0030】
更に、上記ノニオン系界面活性剤としては、
1N(R2)2→O
(上式中、R1はC5〜C25アルキル又はRCONHR3(R3はC1〜C5アルキレンを示す)、R2は同一又は異なるC1〜C5アルキルを示す。)などで示されるアミンオキシドを用いることができる。
【0031】
上記カチオン系界面活性剤としては、下記の一般式(b)で表される第4級アンモニウム塩
(R1・R2・R3・R4N)+・X- …(b)
(式(b)中、Xはハロゲン、ヒドロキシ、C1〜C5アルカンスルホン酸又は硫酸、R1、R2、R3及びR4は同一又は異なるC1〜C20アルキル、アリール又はベンジルを示す。)或は、下記の一般式(c)で表されるピリジニウム塩などが挙げられる。
6−(C54N−R5)+・X- …(c)
(式(c)中、C54Nはピリジン環、Xはハロゲン、ヒドロキシ、C1〜C5アルカンスルホン酸又は硫酸、R5はC1〜C20アルキル、R6はH又はC1〜C10アルキルを示す。)
【0032】
塩の形態のカチオン系界面活性剤の例としては、ラウリルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、ラウリルジメチルエチルアンモニウム塩、オクタデシルジメチルエチルアンモニウム塩、ジメチルベンジルラウリルアンモニウム塩、セチルジメチルベンジルアンモニウム塩、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム塩、トリメチルベンジルアンモニウム塩、トリエチルベンジルアンモニウム塩、ジメチルジフェニルアンモニウム塩、ベンジルジメチルフェニルアンモニウム塩、ヘキサデシルピリジニウム塩、ラウリルピリジニウム塩、ドデシルピリジニウム塩、ステアリルアミンアセテート、ラウリルアミンアセテート、オクタデシルアミンアセテートなどが挙げられる。
【0033】
上記アニオン系界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、{(モノ、ジ、トリ)アルキル}ナフタレンスルホン酸塩などが挙げられる。アルキル硫酸塩としては、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩としては、ポリオキシエチレン(EO5)ノニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(EO15)ドデシルエーテル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩としては、ポリオキシエチレン(EO15)ノニルフェニルエーテル硫酸塩などが挙げられる。アルキルベンゼンスルホン酸塩としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。また、{(モノ、ジ、トリ)アルキル}ナフタレンスルホン酸塩としては、ナフタレンスルホン酸塩、ジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物などが挙げられる。
【0034】
上記両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン、イミダゾリンベタイン、スルホベタイン、アミノカルボン酸などが挙げられる。また、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドとアルキルアミン又はジアミンとの縮合生成物の硫酸化、或はスルホン酸化付加物も使用できる。
【0035】
代表的なカルボキシベタイン、或はイミダゾリンベタインは、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ミリスチルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−ウンデシル−1−カルボキシメチル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、2−オクチル−1−カルボキシメチル−1−カルボキシエチルイミダゾリニウムベタインなどが挙げられ、硫酸化及びスルホン酸化付加物としてはエトキシル化アルキルアミンの硫酸付加物、スルホン酸化ラウリル酸誘導体ナトリウム塩などが挙げられる。
【0036】
上記スルホベタインとしては、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアンモニウム−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、N−ココイルメチルタウリンナトリウム、N−パルミトイルメチルタウリンナトリウムなどが挙げられる。アミノカルボン酸としては、ジオクチルアミノエチルグリシン、N−ラウリルアミノプロピオン酸、オクチルジ(アミノエチル)グリシンナトリウム塩などが挙げられる。
【0037】
本発明の置換金メッキ浴はpH2〜7、即ち、弱酸性〜中性域のメッキ浴に限定される。pHが適正範囲より低くて酸性が強くなると、縮合リン酸類を含有しても皮膜に外観不良を生じる恐れがある。
置換金メッキ浴の好ましいpHは3〜6.5であり、より好ましくはpH4〜6である。
縮合リン酸類を必須成分とする本発明の置換金浴では、アンモニア水、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、或はアミン類などの各種の塩基により、pHを上記適正範囲に調整する。
【0038】
本発明7は、被メッキ物にパラジウム皮膜を下地皮膜として形成し、このパラジウム皮膜上に上記本発明1〜6の置換金メッキ浴を用いて金皮膜を形成する置換金メッキ方法である。
置換金メッキ方法としては、被メッキ物に直接パラジウム皮膜をメッキなどで形成し、その上に置換金メッキを施しても良いが、前述したように、硬度を増す見地から、被メッキ物にニッケル皮膜を介してパラジウムの下地皮膜を形成し、このパラジウム皮膜に本発明の置換浴を適用して金を析出させることもできる。
本発明8に示す通り、上記被メッキ物としては、プリント基板、フレキジブルプリント基板、フィルムキャリア、半導体集積回路、抵抗、可変抵抗、コンデンサ、フィルタ、インダクタ、サーミスター、水晶振動子、スイッチ、リード線などの電子部品が好適である。
置換金メッキにおいては、被メッキ物をメッキ浴に通常1秒〜30分間浸漬し、所望の膜厚までメッキ皮膜を析出させることにより行う。浴温は10〜80℃程度であり、メッキ時間は膜厚に依存して決定される。また、浴の撹拌は必要に応じて行っても良い。
【実施例】
【0039】
以下、本発明の非シアン系の置換金メッキ浴の実施例、当該実施例の置換浴を用いてパラジウム皮膜上に形成した金メッキ皮膜の外観評価試験例を順次述べる。
また、本発明は下記の実施例、試験例に拘束されることはなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
【0040】
《置換金メッキ浴の実施例》
下記の実施例1〜12のうち、実施例1〜2は縮合リン酸類にピロリン酸塩を用いて濃度を変化させた例、実施例3〜4は縮合リン酸類を併用して濃度を変化させた例、実施例5は実施例1を基本として可溶性金塩の濃度を増した例、実施例6〜8は実施例1を基本として界面活性剤の種類や濃度を変化させた例である。実施例9〜12は隠蔽錯化剤を添加した例、他の実施例は隠蔽錯化剤を添加しない例である。
また、下記の比較例1〜4のうち、比較例1は縮合リン酸類を添加せず、通常の金イオンの錯化剤(亜硫酸塩)を用いたブランク例である。比較例2は比較例1を基本として通常のオルトリン酸塩(リン酸2水素塩)を添加した例である。比較例3は実施例1を基本として、縮合リン酸類に替えて通常のオルトリン酸塩(リン酸2水素ナトリウム)を添加した例である。比較例4は縮合リン酸類を添加したpH1.5の酸性浴の例である。
【0041】
(1)実施例1
下記の組成により置換金メッキ浴を建浴した。
塩化金酸ナトリウム(Au3+として) 1.0g/L
ピロリン酸2水素2ナトリウム 0.05モル/L
PEG600 2.0g/L
ポリオキシエチレンクミルフェニルエーテル(EO10) 0.5g/L
pH(水酸化ナトリウムで調整) 5.6
上記PEG600はポリエチレングリコールの平均分子量が600g/モルの重合体を意味する。また、界面活性剤の括弧内のEO10は、エチレンオキシド10モル付加物を意味する(以下の実施例及び比較例も同じ)。
【0042】
(2)実施例2
下記の組成により置換金メッキ浴を建浴した。
塩化金酸ナトリウム(Au3+として) 1.0g/L
ピロリン酸2水素2ナトリウム 0.10モル/L
PEG600 2.0g/L
ポリオキシエチレンクミルフェニルエーテル(EO10) 0.5g/L
pH(水酸化ナトリウムで調整) 5.6
【0043】
(3)実施例3
下記の組成により置換金メッキ浴を建浴した。
塩化金酸ナトリウム(Au3+として) 1.0g/L
ピロリン酸2水素2ナトリウム 0.05モル/L
ポリリン酸ナトリウム 0.01モル/L
PEG600 2.0g/L
ポリオキシエチレンクミルフェニルエーテル(EO10) 0.5g/L
pH(水酸化ナトリウムで調整) 5.6
【0044】
(4)実施例4
下記の組成により置換金メッキ浴を建浴した。
塩化金酸ナトリウム(Au3+として) 1.0g/L
ピロリン酸2水素2ナトリウム 0.03モル/L
ポリリン酸ナトリウム 0.02モル/L
PEG600 1.0g/L
ポリオキシエチレンクミルフェニルエーテル(EO10) 0.5g/L
pH(水酸化ナトリウムで調整) 5.6
【0045】
(5)実施例5
下記の組成により置換金メッキ浴を建浴した。
塩化金酸ナトリウム(Au3+として) 3.0g/L
ピロリン酸2水素2ナトリウム 0.05モル/L
PEG600 2.0g/L
ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル(EO8) 0.1g/L
pH(水酸化ナトリウムで調整) 5.4
【0046】
(6)実施例6
下記の組成により置換金メッキ浴を建浴した。
塩化金酸ナトリウム(Au3+として) 1.0g/L
ピロリン酸2水素2ナトリウム 0.05モル/L
PEG1000 2.0g/L
ポリオキシエチレンクミルフェニルエーテル(EO10) 0.5g/L
pH(水酸化ナトリウムで調整) 5.0
【0047】
(7)実施例7
下記の組成により置換金メッキ浴を建浴した。
塩化金酸ナトリウム(Au3+として) 1.0g/L
ピロリン酸2水素2ナトリウム 0.05モル/L
PEG600 2.0g/L
pH(水酸化ナトリウムで調整) 6.0
【0048】
(8)実施例8
下記の組成により置換金メッキ浴を建浴した。
塩化金酸ナトリウム(Au3+として) 1.0g/L
ピロリン酸カリウム 0.05モル/L
PEG400 2.0g/L
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン
−ブロックコーポリマー(EO10・PO10) 0.3g/L
pH(水酸化ナトリウムで調整) 4.8
【0049】
(9)実施例9
下記の組成により置換金メッキ浴を建浴した。
塩化金酸ナトリウム(Au3+として) 2.0g/L
メタリン酸ナトリウム 0.03モル/L
PEG800 2.0g/L
ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル(EO8) 0.1g/L
エチレンジアミン 0.5モル/L
pH(水酸化ナトリウムで調整) 5.4
【0050】
(10)実施例10
下記の組成により置換金メッキ浴を建浴した。
塩化金酸ナトリウム(Au3+として) 1.0g/L
ピロリン酸ナトリウム 0.05モル/L
PEG600 2.0g/L
ポリオキシエチレンクミルフェニルエーテル(EO10) 0.5g/L
EDTA 0.1モル/L
pH(水酸化ナトリウムで調整) 5.2
【0051】
(11)実施例11
下記の組成により置換金メッキ浴を建浴した。
塩化金酸ナトリウム(Au3+として) 1.5g/L
ピロリン酸2水素2ナトリウム 0.05モル/L
PEG600 1.0g/L
ポリオキシエチレンクミルフェニルエーテル(EO12) 0.5g/L
クエン酸 0.2モル/L
pH(水酸化ナトリウムで調整) 5.8
【0052】
(12)実施例12
下記の組成により置換金メッキ浴を建浴した。
塩化金酸ナトリウム(Au3+として) 1.0g/L
ピロリン酸2水素2ナトリウム 0.05モル/L
PEG600 2.0g/L
ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(EO10) 0.1g/L
リンゴ酸 0.1モル/L
EDTA 0.2モル/L
pH(水酸化ナトリウムで調整) 5.0
【0053】
(13)比較例1
下記の組成により置換金メッキ浴を建浴した。
塩化金酸ナトリウム(Au3+として) 1.0g/L
亜硫酸ナトリウム 0.5モル/L
pH(水酸化ナトリウムで調整) 6.0
【0054】
(14)比較例2
下記の組成により置換金メッキ浴を建浴した。
塩化金酸ナトリウム(Au3+として) 1.0g/L
亜硫酸ナトリウム 0.5モル/L
リン酸2水素ナトリウム 0.05モル/L
pH(水酸化ナトリウムで調整) 6.0
【0055】
(15)比較例3
下記の組成により置換金メッキ浴を建浴した。
塩化金酸ナトリウム(Au3+として) 1.0g/L
リン酸2水素ナトリウム 0.05モル/L
PEG600 2.0g/L
ポリオキシエチレンクミルフェニルエーテル(EO10) 0.5g/L
pH(水酸化ナトリウムで調整) 5.6
【0056】
(16)比較例4
下記の組成により置換金メッキ浴を建浴した。
塩化金酸ナトリウム(Au3+として) 1.0g/L
ピロリン酸2水素2ナトリウム 0.05モル/L
PEG600 2.0g/L
ポリオキシエチレンクミルフェニルエーテル(EO10) 0.5g/L
pH(塩酸で調整) 1.5
【0057】
《パラジウム皮膜上への置換金メッキによる皮膜外観の評価試験例》
そこで、上記実施例1〜12及び比較例1〜4の各置換金メッキ浴を用いて、パラジウム皮膜を下地メッキした試験片に下記の条件A〜Bで置換金メッキを施し、得られた金メッキ皮膜を目視観察して、皮膜外観の優劣を評価した。
その評価基準は次の通りである。
○:均一でムラがなく、明るいレモンイエローの色調であった。
△:析出ムラが発生し、或は、赤く色変した。
×:金皮膜が析出しなかった。
【0058】
(1)メッキ条件A
25×25mmの銅板に無電解メッキによりパラジウム皮膜を0.1μmの厚みで施し、この試験片を上記実施例1〜12及び比較例1〜4の各置換金メッキ浴に浸漬し、50℃、5分の条件で金メッキ皮膜を形成した。
(2)メッキ条件B
25×25mmの銅板に無電解メッキによりニッケル皮膜を5μmの厚みで施し、次に無電解メッキによりパラジウム皮膜を0.1μmの厚みで施し、この試験片に上記実施例1、3、5、9〜12及び比較例1〜4の各置換金メッキ浴に浸漬し、50℃、5分の条件で金メッキ皮膜を形成した。
【0059】
下表はその試験結果である。尚、下表の膜厚の単位はすべてμmである。
条件A 条件B 条件A 条件B
外観 膜厚 外観 膜厚 外観 膜厚 外観 膜厚
実施例1 ○ 0.06 ○ 0.04 実施例9 ○ 0.04 ○ 0.02
実施例2 ○ 0.04 − − 実施例10 ○ 0.06 ○ 0.04
実施例3 ○ 0.04 ○ 0.04 実施例11 ○ 0.04 ○ 0.03
実施例4 ○ 0.06 − − 実施例12 ○ 0.07 ○ 0.05
実施例5 ○ 0.06 ○ 0.03 比較例1 × − × −
実施例6 ○ 0.07 − − 比較例2 × − × −
実施例7 ○ 0.05 − − 比較例3 △ − △ −
実施例8 ○ 0.04 − − 比較例4 △ − △ −
【0060】
上表によると、縮合リン酸類を含まず、可溶性金塩と通常の金イオンの錯化剤を含む比較例1では、パラジウム皮膜上に金が析出せず、また、比較例1を基本として通常のオルトリン酸塩を追加した比較例2でも同様に金が析出しなかった。
これに対して、縮合リン酸類を含有したpH2〜7の実施例1〜12では共に、パラジウム皮膜上に均一でレモンイエローの色調の美麗な金皮膜が形成できた。
従って、この実施例1〜12を比較例1〜2に対比すると、パラジウム皮膜上に優れた外観の金皮膜を形成するには、適度の錯化機能とレベリング機能を兼備する縮合リン酸類の含有が必須なことが確認できた。ちなみに、比較例1〜2のように、通常の金イオンの錯化剤(亜硫酸塩)を使用すると、パラジウム皮膜上への金の置換反応に際して、金の錯化機能が過剰に強くなって金の析出が困難になるものと推定される。
【0061】
亜硫酸塩に替えて通常のオルトリン酸塩を含有する比較例3では、金皮膜は析出するが、皮膜の均一性に欠けたり、赤く色変することから、この比較例3を実施例1〜12に対比すると、優れた外観の金皮膜を得るには、同じリン酸類の中でも、オルトリン酸類ではなく、縮合リン酸類を使用することの必要性が裏付けられた。
また、縮合リン酸類を含有しても、pHが本発明の適正領域から外れる酸性の比較例4では、上記比較例3と同様であることから、優れた外観の金皮膜を得るにはメッキ浴のpHを2〜7の領域に適正化することの重要性が裏付けられた。
【0062】
そこで、実施例1〜12を詳細に検討すると、ピロリン酸塩の濃度を変化させた実施例1〜2、或は、併用した縮合リン酸類の濃度を変化させた実施例3〜4では、得られる金皮膜の外観は共に良好であることから、縮合リン酸類の濃度には余り影響されず、良好な外観の金皮膜が得られることが分かる。
また、界面活性剤の種類や濃度を変化させた実施例6〜8に照らして、これら界面活性剤の種類や濃度の変化に余り影響されず、良好な外観の金皮膜が得られ、さらには、隠蔽錯化剤を添加した実施例9〜12に対して、隠蔽錯化剤を含まないその他の実施例も同様に優れた皮膜外観を呈することから、隠蔽錯化剤を添加しない場合でも金皮膜の良好な外観を担保できることが分かる。
実施例1に対して可溶性金塩の濃度を増した実施例5も、実施例1と同様に優れた皮膜外観を保持することから、可溶性金塩と縮合リン酸類の含有割合が変化しても良好な皮膜外観を担保できることが分かる。
但し、例えば、実施例1では縮合リン酸類の濃度は0.05モル/L、金皮膜の膜厚は0.06μmであるのに対して、実施例2では同濃度は0.10モル/L、同膜厚は0.04μmであることから、縮合リン酸類の濃度が増すと金への錯化機能も強まり、金の析出量が抑制されて膜厚が減少するものと推定される。
一方、本発明の置換金メッキ浴にあっては、被メッキ物が銅素地にパラジウム下地皮膜を形成したものであっても、或は、銅素地にニッケル皮膜を介してパラジウム下地皮膜を形成したものであっても、共に優れた外観の金皮膜が得られることが、条件A〜Bの試験結果から確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラジウム皮膜上に金皮膜を形成する置換金メッキ浴において、
可溶性金塩と縮合リン酸類を含有し、pH2〜7であることを特徴とする非シアン系の置換金メッキ浴。
【請求項2】
縮合リン酸類がポリリン酸、トリポリリン酸、ピロリン酸、メタリン酸、及びこれらの塩より選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の非シアン系の置換金メッキ浴。
【請求項3】
さらに、隠蔽錯化剤として、ポリアミン類、アミンカルボン酸類、アミノアルコール類から選ばれたアミン類、及びオキシカルボン酸類、ポリカルボン酸類より選ばれたカルボン酸類の少なくとも一種を含有する請求項1又は2に記載の非シアン系の置換金メッキ浴。
【請求項4】
アミン類がアミンカルボン酸類であり、カルボン酸類がオキシカルボン酸類であることを特徴とする請求項3に記載の非シアン系の置換金メッキ浴。
【請求項5】
可溶性金塩が、ハロゲン化金酸塩、亜硫酸金塩、チオ硫酸金塩、チオリンゴ酸金塩である事を特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の非シアン系の置換金メッキ浴。
【請求項6】
さらに界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の非シアン系の置換金メッキ浴。
【請求項7】
被メッキ物にパラジウム皮膜を形成した後、請求項1〜6のいずれか1項に記載の非シアン系の置換金メッキ浴を用いて、当該パラジウム皮膜上に金メッキ皮膜を形成することを特徴とする置換金メッキ方法。
【請求項8】
被メッキ物が、プリント基板、フレキシブルプリント基板、フィルムキャリア、半導体集積回路、抵抗、コンデンサ、フィルタ、インダクタ、サーミスタ、水晶振動子、スイッチ、リード線より選ばれた電子部品であることを特徴とする請求項7に記載の置換金メツキ方法。

【公開番号】特開2009−102681(P2009−102681A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−273704(P2007−273704)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(000197975)石原薬品株式会社 (83)
【Fターム(参考)】