説明

美容外科用注入容器体

【課題】ジェル状のプロテーゼを利用した、簡易な美容外科手術に好適な美容外科用注入容器体を提供すること。
【解決手段】本発明の美容外科用注入容器体は、ポリアクリルアミドを含有するジェル状プロテーゼが、密閉性注入容器に充填されてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美容効果を奏するジェル状プロテーゼが充填されてなる美容外科用注入容器体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、鼻を高くしたり、顎の形状を整えたりする美容外科手術が行われてきた。このような美容外科手術は、その多くが手術部位の形状に適合するよう、予め固形状のプロテーゼを成形し、これを切開した手術部位に挿入するという方法が用いられていた。
【0003】
しかしながら、このような方法であると、被手術者ごとにプロテーゼを成形する手間が生じ、また、手術部位の傷跡を可能な限り最小限に留めるためには、高度な技術力を要するという事情があった。また、こうした美容外科手術は、被施術者だけでなく施術者によっても、簡易な方法であってより短時間に施されるものであることが要求されつつある。
【0004】
こうしたなか、固形状ではなく、ジェル状のプロテーゼが開発されるに到ったが、具体的にどのような手段によって美容外科手術に適用し得るかについて、いまだ提案されるに至っていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、ジェル状のプロテーゼを利用した、簡易な美容外科手術に好適な美容外科用注入容器体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の美容外科用注入容器体は、ポリアクリルアミドと生理溶液とを含有するジェル状プロテーゼが、密閉性注入容器に充填されてなることを特徴としている。
前記密閉性注入容器は、ジェル状プロテーゼを収容するシリンジと、ジェル状プロテーゼを押し出すロッドと、該シリンジからジェル状プロテーゼを射出する針と、該針を収納するキャップとから構成されてなるのが望ましい。
【0007】
また、前記密閉性注入容器に充填されたジェル状プロテーゼの容量は、1〜20mLであるのが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の美容外科用注入容器体によれば、予めプロテーゼを成形する必要がないとともに手術部位を切開する手間を省くことができるので、より迅速な美容外科手術が可能となる。
【0009】
また、美容外科手術の対象部位の形状に応じて、予め必要量のジェル状プロテーゼが充填された美容外科用注入容器体を選択することができるので、美容外科手術をより簡略化することができる。
【0010】
さらに、被手術者の痛みおよび傷跡をより低減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について、必要に応じて本願発明の実施例を示した図面を参酌しながら、具体的に説明する。なお、各図面中、同じ部位については同じ符号を伏して示す。
本発明の美容外科用注入容器体は、ジェル状プロテーゼが、密閉性注入容器に充填されてなることを特徴としている。
【0012】
<ジェル状プロテーゼ>
本発明の美容外科用注入容器体を構成する密閉性注入容器に充填されるジェル状プロテーゼは、ポリアクリルアミドを含有している。このポリアクリルアミドは、従来固形状のプロテーゼに採用されていたポリアクリルアミドと比較して低分子量であるため、プロテーゼ全体としてジェル状の剤型を呈している。
【0013】
このようなポリアクリルアミドの含有量は、本発明に用いられるジェル状プロテーゼ100重量%中、通常3〜6重量%、好ましくは4〜5.5重量%の量であり、残部は生理溶液である。
【0014】
上記ジェル状プロテーゼは、具体的には、たとえば、ポリアクリルアミドが5重量%、生理溶液が95重量%であるコスモジェル(登録商標:スタイリング メディカル デバイス社製)として上市されている。pH値が5.5〜7.0と好適な値を示し、取扱性が良好である。
【0015】
このようなジェル状プロテーゼは、体内に挿入されると被膜を形成する性質を有するため、従来の固形状のプロテーゼよりも簡易な手術に適用できるとともに、手術者の取扱性にも優れ、手術部位の形状にも柔軟に対応することができる。また、適度な弾力性を有するため、手術後の部位に対して自然な形状を付与することが可能である。
【0016】
<美容外科用注入容器体>
本発明の美容外科用注入容器体は、上記ジェル状プロテーゼが、密閉性注入容器に充填されてなる。密閉性注入容器は、充填されるジェル状プロテーゼが外気に接触して変質を抑止するとともに、該容器内から外部への漏出を防止する構造であればよい。
【0017】
たとえば、本発明の美容外科用注入容器体の一実施態様の全体図を図1(A)に示す。本発明の美容外科用注入容器体1は、密閉性注入容器が、ジェル状プロテーゼを収容するシリンジ2と、ジェル状プロテーゼを押し出すロッド3と、シリンジ2からジェル状プロテーゼを射出する針4と、針4のキャップ5とから構成されてなり、この密閉性注入容器にジェル状プロテーゼが充填されてなる。
【0018】
これらシリンジ2およびロッド3の材質は、透明性および耐薬品性が良好である材質であれば特に制限されず、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネートなどの材質が挙げられる。また、シリンジ2の容量は、所望の手術部位により必要なジェル状プロテーゼの量が変動することから特に制限されないが、通常1〜20mL程度である。さらにシリンジ2の外壁には目盛が付されていてもよく、シリンジ2の所望の個所に対応する内壁には図2に示すようなノッジ10が設けられていてもよい。ノッジ10を設けることにより、ノッジ10の位置でロッド3の押圧を仮止めすることができ、ロッド3に対する一度の押圧によって針4から射出されるジェル状プロテーゼの容量を制限することが可能となる。たとえば、同一の手術部位に対して複数個所に同量のジェル状プロテーゼを注入する場合、所望の位置ごとに複数のノッジ10が設けられていると、一度の押圧で注入できるジェル状プロテーゼの量を自動的に制限することができ、ジェル状プロテーゼを注入する度にシリンジ2におけるプロテーゼの残存量を確認する手間を省くことができる。
【0019】
また、ロッド3の先端部6は、密閉性が高く、かつ適度な柔軟性のある材質からなり、シリンジ2に収容されたジェル状プロテーゼが滲出または変質することのないよう、先端
部6の周辺がシリンジ2に密着してなる。このような先端部6の材質としては、たとえば、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、シリコーンゴムなどが挙げられる。また、ロッド3の動作を阻害することのないよう適度な滑性を付与するために、表面にフッ素加工が施されていてもよく、グリスが塗布されていてもよい。
【0020】
本発明の美容外科用注射器体1を用いた手術部位としては、たとえば、頬部、鼻、前額部、中顔面、顎部、眼窩周囲、胸部、臀部などが挙げられ、シリンジ2に充填されるジェル状プロテーゼの容量は、たとえば顔面または小さな体部の欠損の矯正を対象とする場合、1〜5mL、体部の比較的大きな欠損の矯正を対象とする場合、5〜10mL、豊胸を対象とする場合、5〜20mLであるのが好ましい。このように、本発明の美容外科用注射器体1を構成するシリンジ2には、所望の手術部位に応じた必要な量のジェル状プロテーゼが予め充填されてなるため、針4を手術部位に挿入してジェル状プロテーゼを注入するだけでよく、手術による痛みを低減し、かつ傷跡を最小限に留めることができる。また、美容外科手術を簡易かつ迅速に施すことができるだけでなく、余剰プロテーゼの発生を抑制することも可能となり、美容外科用注射器体1の破棄処分も簡便となる。
【0021】
針4の形状は、内部に中空部を有し、かつ所望の手術部位に挿入されやすい形状であれば特に限定されない。たとえば、図1(A)に示すように、針4の最先端部が斜めに切断されてなる形状であってもよく、また、図1(B)の針4の部分拡大図に示すように、針4の最先端部が丸みを帯びた形状、いわゆるカニューレのような形状であってもよい。シリンジ2に充填されたジェル状プロテーゼは、この針4の中空部を介して体内に挿入される。
【0022】
針4の長さl1は、通常約15〜200mm、直径rは約0.8mm〜2.5mmであ
る。たとえば、手術部位が顔面である場合、l1は15〜40 mm、rは0.8mm〜
1.2mmであるのが好ましい。一方、手術部位が体部である場合、l1は50〜120
mm、rは1.2mm〜2.0mmであるのが好ましい。上記範囲の長さおよび直径であると、予め所望の手術部位に対応した針4のサイズであるため、不必要な部位に針4が挿入されることによる皮下組織の損傷を防止することができるとともに、手術部位に応じた所定量のジェル状プロテーゼを円滑に体内へ注入することができる。
【0023】
また、針4は、図3(A)に示すように、先端部が延出方向に向かって予め湾曲して形成されていてもよい。湾曲とは、針先を斜めに刺した場合に、進む方向に曲がっていくことを意味する。針4の先端部がこのように形成されていると、針4を手術部位に挿入する際、湾曲した先端部4a側を上向きにし、斜め方向から上方に向かってゆっくりと挿入すれば、先端部4aを表皮に沿って前進させることができる。これにより不必要な部位にまで、先端部4aが到達することはない。この場合、針4の長さl2がl1に対応する長さを有しているのが望ましく、またその最先端部は、図3(B)の針4の部分拡大図に示すように、丸みを帯びた形状、いわゆるカニューレのような形状であってもよい。
【0024】
このような針4の材質は、通常、たとえばチタンあるいはチタン合金などから形成されており、針4が手術部位に挿入されやすいように摩擦抵抗の小さいフッ素樹脂がコーティングされていてもよい。また、硬質プラスチックから形成され、使い捨て可能な針4であってもよい。
【0025】
図4に示すように、針4は、シリンジ2に充填されたジェル状プロテーゼが滲出または変質することのないよう、滅菌処理されたキャップ5により覆われることで密閉される。キャップ5の先端部5aは、図4のキャップ5の断面図にも示すように、針4の先端部がすっぽりと密着して包含されるような形状を有し、密閉性注入容器全体の密閉性を保持している。このようなキャップ5は、針4との密着性に優れ、かつ耐薬品性の高い材質であ
るのが好ましく、シリコーンゴムであるのが望ましい。シリコーンゴムとしては、たとえばメチルシリコーンゴム、フェニル−メチルシリコーンゴム、フッ化シリコーンゴムなどが挙げられる。所望の手術部位に針4を挿入する直前に、キャップ5を取り外して用いる。
【0026】
なお、針4はシリンジ2から着脱可能な態様であってもよい。この場合にはシリンジ2が図5(A)に示すような形状を有し、予め栓8によって充填されたジェル状プロテーゼが密閉されている。栓8の材質はキャップ5の同様のものを採用することができる。手術時直前に栓8を外し、図5(B)に示した針4をキャップ5から取り出してシリンジ2に装着するだけでよい。
【0027】
<美容外科手術方法>
上記特定のジェル状プロテーゼが密閉性注入容器に充填されてなる本発明の美容外科用容器体を用いることにより、所望の手術部位に必要量のプロテーゼを注入して、注入直後に微調整をしつつ、所望の形状を形成することができる。このような形状は、自然な印象を与えるとともに、滑らかな手触り感をも有している。
【0028】
本発明の美容外科用容器体を用いた美容外科手術方法としては、まず、所望の手術部位に表面麻酔、または伝達麻酔を施す。次いで、美容外科用容器体1を用いて手術部位にジェル状プロテーゼを注入する。この際、美容外科用容器体1における針4が図1(A)または図3(A)に示されるような形状である場合、そのまま針4を手術部位に挿入し、シリンジ3を押すことによって、針4の中空部を介してジェル状プロテーゼを体内へ注入する。または、美容外科用容器体1における針4が図1(B)または図3(B)に示されるような形状である場合、別の注射針を使って予め手術部位に導入穴を設け、この導入穴に針4を挿入し、シリンジ3を押すことによって、針4の中空部を介してジェル状プロテーゼを体内へ注入する。手術時間は、通常2〜10分間程度である。
【0029】
このように、本発明の美容外科用容器体を用いた美容外科手術であると、所望の手術部位に要するジェル状プロテーゼが予め美容外科用容器体に充填されてなるため、手術部位に応じ、美容外科用容器体を選択して使用することができ、簡易および迅速な手術が可能となる。また、充填されている所定のジェル状プロテーゼは、すでにジェル状に固形化してなるので、被手術者の異物感を低減することができる。さらに、このような美容外科手術であると、従来固形状のプロテーゼを用いて行われていた手術部位を切開することを要する手術ではないため、メスを用いることがないうえ、術後の美容外科用容器体の廃棄処分も容易である。
【0030】
こうした美容外科手術方法によれば、降鼻手術、ワシ鼻矯正、鼻骨形成、頬骨矯正、顎骨形成、エラ骨矯正、胸矯正、臀部矯正などに優れた効果を発揮する。
この美容外科手術方法は、ジェル状プロテーゼが一旦体内で被膜形成した後、形状改善のため再びプロテーゼを摘出および再挿入することが可能であるため、優れた形状を維持することが容易となる。
【0031】
また、従来の固形状のプロテーゼを用いた美容外科手術と併用して、補助的に実施することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施態様である美容外科用容器体1を示す図である。(A)は全体図を示し、(B)は針4の他の態様である部分拡大図を示す。
【図2】図1のシリンジ2の部分断面図である。
【図3】図1の針4における他の形状を示す図である。(A)は全体図を示し、(B)は針4の他の態様である部分拡大図を示す。
【図4】図1の針4およびキャップ5の着脱状態を示す概略図である。
【図5】図1のシリンジ2および針4の別の態様を示す部分拡大図である。(A)はシリンジ2および栓8の断面図を示し、(B)は針4を示す。
【符号の説明】
【0033】
1 美容外科用容器体
2 シリンジ(ジェル状プロテーゼを収容する容器)
3 ロッド
4 針
4a 針4の先端部
5 キャップ
5a キャップ5の先端部
6 ロッド3の先端部
8 栓
10 シリンジ2の内壁に設けられたノッジ
1 針4の長さ
2 針4の長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアクリルアミドと生理溶液とを含有するジェル状プロテーゼが、密閉性注入容器に充填されてなることを特徴とする美容外科用注入容器体。
【請求項2】
前記密閉性注入容器が、ジェル状プロテーゼを収容するシリンジと、ジェル状プロテーゼを押し出すロッドと、該シリンジからジェル状プロテーゼを射出する針と、該針を収納するキャップとから構成されてなることを特徴とする請求項1に記載の美容外科用注入容器体。
【請求項3】
前記密閉性注入容器に充填されたジェル状プロテーゼの容量が、1〜20mLであることを特徴とする請求項1または2に記載の美容外科用注入容器体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−125341(P2009−125341A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−304177(P2007−304177)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【出願人】(506053009)
【Fターム(参考)】