説明

羽ばたき装置

【課題】機動力が高くかつホバリングすることができる羽部を備えた羽ばたき装置を提供する。
【解決手段】羽部1100は、その一端が根元部1130に接続され、長手方向に沿って延びる第一の稜線部または谷線部を有する前縁部1110と、羽部1100は、その一端が根元部1130に接続された枝部1120とを含んでいる。枝部1120は、根元部1130から所定の距離だけ離れた所定の位置から先端部側においては、第一の稜線部または谷線部から次第に離れるように延びる第二の稜線部または谷線部を有している。前縁部1110と枝部1120との間には板状部1140が張られている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、羽ばたき運動する羽部によって浮上および移動する羽ばたき装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、羽ばたき装置の羽部の設計が行われている。羽の設計手法は、本来、羽ばたき装置に求められる飛行態様に応じて異なるはずである。たとえば、羽ばたき装置が、推進力による胴体の移動に伴う羽部の前進に伴って従属的に浮上力を生み出す飛行態様を求められているのか、または、推進力とは関係なしに直接的に浮上力を生み出すことができる飛行態様を求められているのかによって異なるはずである。しかしながら、従来においては、羽ばたき装置の羽部は、単に、鳥または昆虫の羽を模倣するように設計されていた。
【0003】
以下、従来から用いられてきた羽ばたき装置の羽を詳細に説明する。
従来から、2つのタイプの羽ばたき装置の飛行態様が提案されている。
【0004】
1つは、揚力付随発生型(非ホバリングタイプ)の飛行態様である。これは、固定翼機に搭載されているプロペラまたはジェットエンジンのような推進直発生源として、羽ばたき運動する機構を用いる飛行態様である。
【0005】
生物の中では、ハチドリなどを除く一般的な鳥類は、前述のような飛行態様に近い飛行態様で推進力を得ている。より具体的には、一般的な鳥類の羽ばたき方を模倣した羽ばたき方で飛行する羽ばたき装置は、主として上下方向に羽を往復運動させる羽ばたき動作によって、水平方向の推進力を生じさせている。この推進力により、羽ばたき装置の本体が前進する。この前進により得られた相対流束(向かい風)は、羽部に揚力(Lift Forceを生じさせる。その結果、羽ばたき装置は浮上する。
【0006】
前述のように、揚力付随発生型の羽ばたき方で飛行する羽ばたき装置は、水平方向に推進するため、鉛直方向に上昇するための羽ばたき運動を行うよりも遙かに低いパワーで、浮上力を得ることができる。そのため、一般的には、揚力付随発生型の羽ばたき装置は、後述される揚力直接発生型の羽ばたき装置に比較してモータのパワーが小さくても、浮上することができる。より具体的には、揚力付随発生型の羽ばたき装置は、周囲流体から受ける抗力を超える推進力さえ得ることができれば、浮上することができる。そのため、揚力付随発生型の羽ばたき装置の推進力は、羽ばたき装置の重量の1/6程度の大きさに設定されることが多い。ただし、揚力付随発生型の羽ばたき装置は、前進のための運動を停止すると、相対的な周囲流体の速度がゼロになるため、揚力を得ることができない。したがって、揚力付随発生型の羽ばたき装置は、ホバリングをすることができない。
【0007】
また、揚力付随発生型の羽ばたき装置は、大きな推進力を生み出すことが困難であるため、基本的には、羽ばたき方をコントロールすることによって浮上および移動の態様をコントロールすることが困難である。したがって、揚力付随発生型の羽ばたき装置は、一般的な航空機と同様に、フラップまたは垂直尾翼を必要とする。また、揚力付随発生型の羽ばたき装置は、通常の固定翼航空機の機動力と同程度の機動力しか有していない。
【0008】
さらに、揚力付随発生型の羽ばたき装置の羽ばたき運動は、推進力を生み出すためにのみ用いられる。そのため、揚力付随発生型の羽ばたき装置は、大きな推進力を得るために大きな振幅で羽ばたけば、羽部に生じる揚力の方向が変化することによって揚力の鉛直上方成分を低下させてしまうおそれがある。したがって、揚力付随発生型の羽ばたき装置の羽ばたきの振幅は約20度以下という小さな値に設定されている。
【0009】
また、揚力付随発生型の羽ばたき装置においては、迎え角をなるべく一定に維持するために、羽ばたき方は、上下方向における1自由度の往復運動からなることが望ましい。
【0010】
次に、Michelsonの揚力付随発生型の羽ばたき装置の羽を説明する。
図9〜図11は、米国特許6082671号において開示された羽ばたき装置の羽部であって、Michelsonらによって開発された揚力付随発生型の羽ばたき装置の羽部の一例である。米国特許6082671号においては、軽量な羽部が膜部と梁部(静脈:Veinと記載されている)とからなる複合構造によって実現され得ることが開示されている。
【0011】
2種類の飛行態様のうちのもう1つは、浮上力(Rising Force)直接発生型(ホバリングタイプ)の飛行態様である。これは、羽ばたき運動で得られた浮上力を直接的に用いることによって羽ばたき装置を浮上させる飛行態様である。浮上力直接発生型の羽ばたき装置は、揚力付随発生型の羽ばたき装置の正面が上方に向けられたものに近い羽ばたき装置であり、トンボまたはアブ等の羽ばたき方と同様の羽ばたき方で飛行する羽ばたき装置である。
【0012】
浮上力直接発生型の羽ばたき装置は、羽ばたき装置の重量よりも大きな揚力を羽部の羽ばたきのみによって直接的に発生させなければならない。そのため、浮上力直接発生型の羽ばたき装置は、前述の揚力付随発生型の羽ばたき装置に比較して、アクチュエータに要求されるパワーは大きい。
【0013】
ただし、浮上力直接発生型の羽ばたき装置は、羽ばたき運動そのものにより得られる浮上力を利用して浮上および移動を行うため、ホバリングをすることができる。また、揚力直接発生型の羽ばたき装置は、トンボ等のように、非常に高い機動力を発揮することができる。
【0014】
浮上力直接発生型の羽ばたき装置の羽の一直線に沿った往復運動を考える。この往復運動は、基本的には、ヘリコプタのロータと同様の運動である。そのため、往復運動の両方で、羽部が適切な迎え角を有する状態を作り出すためには、図12〜図14に示される羽ばたき装置のように、往復運動の両端のそれぞれにおいて、羽部を羽軸まわりに大きく捻ることが必要である。以下、この羽部の羽軸まわりの捻りは、切り返しと呼ばれる。羽部の切り返しの際には、羽部の慣性力より大きな力で羽部の往復運動を反転させることが必要である。そのため、往復運動の両端間の距離をできる限り大きくすることが、効率的な羽ばたき方の実現のために必要である。そのため、羽ばたきの振幅は±45度以上というような大きな値に設定されることが望ましい。
【0015】
なお、前述の羽ばたき方は、往復運動とその両端のそれぞれでの捻り運動とからなる2自由度の運動である。
【0016】
次に、MFI(Micromechanical Flying Insect)の羽部を説明する。
Fearingらは、論文“Lift Force Improvements for the Micromechanical Flying Insect”において、図15に示される羽部を開示している。これは、それぞれがカーボン複合樹脂からなる複数のパイプの間にフィルムが張られた構造であり、生体のハエの羽質量を目安とする範囲の質量で、可能な限り受動変形を抑えた、剛な羽を構成することを目指して設計されている。
【0017】
次に、本願の発明者らが従来において開発した羽を説明する。
本発明者らは、特開2006−69482号公報において、図16に示される羽を開示している。この羽は、特開2006−69482号公報に開示されている2自由度羽ばたき機構に適用されていることから分かるように、浮上力直接発生型の飛行態様を実現するためのものである。また、この羽の前縁部は、カーボン複合樹脂からなる、コルゲーションと呼ばれる折板状の溝構造を有しているため、羽部の剛性が高められている。より具体的には、Fearingらと同様に、前縁部から枝分かれした枝部が、前後方向を含む面内の回転モーメントに対する羽部の剛性を高めている。
【特許文献1】米国特許6082671号
【特許文献2】特開2006−69482号公報
【非特許文献1】Lift Force Improvements for the Micromechanical Flying Insect
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、これまで提案されてきた羽部は、ホバリングおよび機動力の高い羽ばたき方を実現するためには不適切であるという問題がある。以下、その問題が具体的に述べられる。
【0019】
従来から研究されている羽部は、ほとんどが、前進し続ける必要があるために狭い空間内での飛行、および、高い機動力を実現することができない、揚力付随発生型の飛行態様のための羽部である。したがって、機動力の高い羽ばたき方を実現するためには、浮上力直接発生型の飛行態様のための羽部を採用することが必要である。
【0020】
浮上力直接発生型の飛行態様を実現する羽ばたき装置の研究は、上述のように、近年、進められているが、羽ばたき装置によって生じる周囲空間における空力のメカニズムの解明が不十分な状態で、行われている。そのため、羽部に生じる慣性を考慮して羽部を設計することの重要性が認識されていない。したがって、機動力が高い飛行を実現することができないことは当然のことであり、浮上することさえも実現することができない。
【0021】
また、揚力付随発生型の羽部の運動においては、上述のように、迎え角が大きく変化しないことが重要である。すなわち、揚力付随発生型の羽部の運動においては、通常、羽部は、羽ばたき振幅が小さくなるように設計される。そのため、羽部の運動は比較的緩慢である。したがって、羽部の質量の大小は、羽ばたき駆動に要求されるトルクに大きな影響を与えることはなかった。その結果、羽部の変形を許容してまで、羽部を軽量化する、という設計概念およびその設計概念に基づいて製造された羽部は存在しなかった。
【0022】
一方、実際の昆虫の羽は、大きく変形することができるため、その質量が極限まで軽量化されている。たとえば、実際のトンボの羽の捻り角は、図17に示されるように、羽の根元では、羽後縁部が羽前縁部の鉛直下方に位置する状態を0°として、±30°程度である。一方、羽の先端では、さらに羽の受動変形による捻れが加わるため、羽部の捻り角は、±70〜80°という大きな角度になる。また、ホバリングの際には、羽は略水平方向に往復運動するため、周囲流束に対する羽の迎え角は、水平方向に広がる面を基準として、10°〜20°という値になる。これは、一般的な固定翼機の離陸の際の迎え角とほぼ同一の値であり、揚抗比の大きな浮上効率が高い迎え角の値である。すなわち、トンボの羽は、受動変形までも含めて、浮上効率が高い迎え角が得られるように駆動されている。これは、羽部の受動変形を許容してでも、羽部を軽量化する必要があるためである。このような必要性があるのは、浮上力直接発生型の羽ばたき飛行は羽部の振幅が大きいため、羽部の質量の大小が、羽ばたき駆動に要求されるトルクに大きな影響を与えるためである。
【0023】
本発明者の解析によると、羽ばたき駆動トルクの1/3は、慣性力に対抗するために用いられている。例えば、長さ32mmの羽を42Hzの周波数で羽ばたかせるアキアカネにおいては、羽を駆動するためのトルクのピークが1gf・cm程度であるが、このうち0.3gf・cmが慣性力に対抗するために用いられている。
【0024】
上記の羽ばたき装置の羽部のいずれもが、羽部の軽量化の重要性が定量的に認識されていない時代において設計されたものであり、高い機動力を実現するとともにホバリングをすることができる羽部のための設計はなされていなかった。
【0025】
たとえば、Michelsonは、米国特許6082671号に開示されているように、多数のVeinと称される翅脈を有する羽(前者)、および、羽部の根元部から羽部の長手方向の中央部および羽部の先端の後縁のそれぞれに向かって延びる2本の翅脈を有する羽部(後者)を提案しているが、翅脈の最適な配置のための設計手法を開示していない。
【0026】
前者は、羽全体が均等に高い剛性を有しているため、複数の翅脈が質量を増加させる要因となり、慣性を増大させてしまうという問題を有している。一方、後者は、羽部の変形が図18に示すようなものである。そのため、後者は、羽部の前後方向の位置によって周囲流体に対する迎え角が大きく異なってしまうので、効率的に浮上力を発生させることができない。また、後者によれば、抗力が大きくなってしまう。
【0027】
このように、Michelsonの羽は、機動力が高く、かつ、ホバリングをし得る羽ばたき装置の羽部としては適していない。
【0028】
Fearingおよび本発明者らの前述の羽部が発明される以前の羽部として、前縁部の長さ方向の中央部から枝分かれする枝部を有しているものがある。しかしながら、Fearingの羽部においては、その枝部の材料としてパイプが用いられているため、その羽部の質量および慣性は大きくなってしまう。さらに、パイプ自体はその中心軸まわりのねじり変形に非常に強いため、この羽部を用いた際の羽部の変形の度合は、図18に示されるように小さいと予想される。そのため、この羽部も、羽ばたき装置の羽部としては適していないと考えられる。
【0029】
また、図16に示される、本発明者らが発明した以前の羽部は、枝部がコルゲーションと呼ばれる前縁から伸びているが、コルゲーションの溝の延びる方向に垂直な方向の剛性を利用して、枝部1105を支えているため、羽部の往復運動の往路および復路のいずれかにおいて、この枝部1105が接合されている前縁部のコルゲーションが、図19に示されるように、変形してしまう。そのため、羽部の前縁部101の溝構造が開いてしまうために、溝に沿う方向を含む面内における曲げに対する剛性が著しく低下してしまう。その結果、羽部の前縁部101が、この部分から折れ曲がってしまう。逆に、前縁101の枝部1105が接続されている部分を補強すると、羽部の中央部での質量が増加してしまうため、羽部の慣性が増加してしまう。故に、この羽部も、機動力が高く、かつ、ホバリングをすることができる羽ばたき装置の羽部としては適していない。
【0030】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、機動力が高くかつホバリングすることができる羽部を備えた羽ばたき装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明の羽ばたき装置は、本体と、前縁部を有する羽部と、羽部の根元部を駆動するように本体内に搭載され、羽部を前後方向に羽ばたき往復運動させるとともに、羽ばたき往復運動における運動方向の反転の前から後の所定期間において、前縁部が延びる方向を回転軸として羽部を捻るアクチュエータとを備えている。羽部は、その一端が根元部に接続され、長手方向に沿って延びる第一の稜線部または谷線部を有し、その一端が根元部に接続され、根元部から所定の距離だけ離れた所定の位置から先端部側においては、第一の稜線部または谷線部から徐々に離れるように延びる第二の稜線部または谷線部と、第一の稜線部または谷線部と第二の稜線部または谷線部との間に張られた板状部または膜部とを含んでいる。
【0032】
上記の構成によれば、羽ばたき運動に必要な流体力に耐え得る程度の剛性を有し、かつ、軽量である羽部を備えた羽ばたき装置を実現することができる。
【0033】
第一の稜線部または谷線部は、前縁部を構成し、第二の稜線部または谷線部は、根元部から所定の位置まで、第一の稜線部または谷線部にほぼ平行に延び、かつ、所定の位置から先端側においては、第一の稜線部または谷線部となす角度がアクチュエータから離れるに従って増加するとともに、その先端部が羽部の後縁部まで到っていてもよい。
【0034】
上記の構成によれば、主要な揚力発生部位である、板状部または膜部の面積および剛性が羽ばたき飛行の実現のために要求される程度に大きく、かつ、全体の重量が羽ばたき飛行の実現のために要求される程度に小さい羽部を備えた羽ばたき装置が得られる。
【0035】
第二の稜線部または谷線部の先端部は、根元部から羽長の2/3〜3/4の範囲内の距離だけ離れた位置で羽部の後縁部に到っていてもよい。
【0036】
上記の構成によれば、流体力を受けて羽部がねじれ変形したときに、主要な揚力発生部位である、先端部の迎え角が流体が流れる方向に沿ってほぼ一定である羽部を備えた羽ばたき装置が得られる。
【0037】
羽ばたき装置は、第一の稜線部または谷線部の先端部と第二の稜線部または谷線部の先端部とを接続する外枠部をさらに備えていてもよい。この場合、板状部または膜部が、第一の稜線部または谷線部、第二の稜線部または谷線部、および外枠部によって取り囲まれた領域に張られていることが望ましい。
【0038】
上記の構成によれば、板状部または膜部の損傷のおそれが低減される。
また、外枠部と第一の稜線部または谷線部とが連続した1つの曲線形状を構成するように、外枠部の一方の端部が、第一の稜線部または谷線部の先端部に接続されていることが望ましい。
【0039】
上記構成によれば、外枠部の捻り剛性と曲げ剛性との相違を利用し、流体力を受けて羽が捻れるように変形したときに、主要な揚力発生部位である、板状部または膜部の迎え角が、流体が流れる方向に沿ってほぼ一定である羽部を備えた羽ばたき装置を得ることができる。
【0040】
また、羽ばたき装置は、第二の稜線部または谷線部の先端と根元部とを接続する内枠部と、内枠部と第二の稜線部または谷線部との間の領域に張られた板状部または膜部とを備えていることが望ましい。
【0041】
上記の構成によれば、慣性力の増加および羽部の変形に起因する悪影響の増加の双方を抑制しながら、面積が大きな羽部を備えた羽ばたき装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態の羽ばたき装置が説明される。
(実施の形態1)
(羽ばたき装置の全体構造およびその動作)
本実施の形態においては、浮上力直接発生型の羽ばたき装置が用いられる。羽ばたき装置の全体構造は、特開2006−69482号公報に開示されている構造と同様であるため、ここでは、その説明はなされないが、本実施の形態の羽ばたき装置の羽部の構造の説明の後で、その説明がなされる。
【0043】
ただし、後述される羽ばたき装置の全体構造は、本発明の羽部が適用され得る羽ばたき装置の一例である。したがって、本発明の羽部の構造は、羽ばたき動作、すなわち羽部の運動が同様である羽ばたき装置であれば、いかなる羽ばたき装置に対しても適用され得る。
【0044】
これは、2つの羽ばたき装置が異なる構造を有していても、それらが同様な羽ばたき動作をするのであれば、それらの羽部が生み出す浮上力その他の性能を示すパラメータが同等であるためである。
【0045】
(構造)
図1に示されるように、本実施の形態に示されるように、羽部1100は、前縁部1110、枝部1120、前縁部1110および枝部1120のそれぞれが接続された根元部1130、および、前縁部1110と枝部1120との間に張られた板状部1140からなる。前縁部1110および枝部1120は、稜線部または谷線部を有する繊維強化プラスチックで構成されている。また、板状部1140はアラミドフィルムからなる。ただし、本発明の効果は、基本的には羽部の構造に起因するものであるため、前述の羽部を構成する材料の種類によらずに実現されるものである。したがって、前述の羽部を構成する材料は、本発明の目的を達成するための羽部を構成する材料の一例であり、本発明の羽部は、前述の材料によって構成されているものに限定されるものではない。
【0046】
(枝部)
枝部1120は、前縁部1110と同様に、1つの稜線部または谷線部を有する溝構造を有しているため、この稜線または谷線が延びる方向を含む平面内において生じる曲げモーメントに対して高い剛性を有している。図1に示されるように、枝部1120の一端は、根元部1130に固定されている。
【0047】
また、図1に示されるように、枝部1120は、根元部1130の近傍においては、前縁部1110とほぼ平行に延びている。また、根元部1130から所定の距離だけ離れた位置から羽部1100の先端側においては、先端に向かって、徐々に、枝部1120と前縁部1110とのなす角が大きくなる。枝部1120の先端は、羽部1100の後縁部1145まで到っており、根元部1130から羽長の約2/3〜3/4の位置に到達している。
【0048】
本実施の形態における羽部の形状と羽ばたき方との組み合わせが特定の場合、たとえば、長楕円形の羽部が、その根元部を実質的な回転中心として略同一平面内で回動する場合に、主要な揚力発生部位は、回転中心たる羽部の根元部から、羽長の2/3〜3/4の位置であることが分かっている。一般に、揚力は基本的に羽部の表面側の空間と裏面側の空間との圧力差に起因して生じる。この圧力差は相対流速の自乗に比例する。また、回転中心よりも羽部の先端側の部位においては、羽部に対する相対流速が高まるという現象が生じ、羽部の先端近傍においては、流体が羽部の一方側から他方側へ回り込むため、羽部の表面側の空間と裏面側の空間との圧力差が弱まるという現象が生じる。この2つの現象の組み合わせによって、最も移動速度の大きい、羽部の先端からわずかに回転中心側に近づいた部位において、最も大きな揚力が得られる。本実施の形態においても、板状部1140の主な揚力発生部位は、根元部1130から羽部の長さの約2/3〜3/4の範囲内の距離だけ離れて位置付けられており、枝部1120によって保持されている。板状部1140は、主に、羽部1100の揚力(Lift Force)および抗力(Drag)浮上力(Rising Force)を生み出す役割を果たしている。
【0049】
(根元部)
前縁部1110の一端および枝部1120の一端は、前縁部1110および枝部1120の位置関係が保持されるように、根元部1130に接続されている。なお、根元部1130は、羽部1100の回転中心またはその近傍に位置付けられている。そのため、これらの前縁部および枝部を強固に固定するための部材が必要なことに起因した根元部1130の多少の質量増加は、羽ばたき運動の特性に殆ど影響を与えない。
【0050】
(期待される効果)
上述のように、羽部1100の揚力は、主に、根元部1130から羽長の2/3〜3/4の距離だけ離れた位置にある領域Rにおいて生み出されている。これは、その領域Rの周囲流体の流速は、回転中心からの距離が大きいため、羽部1100の根元部1130の位置Rの周囲流体の流速に比較して、大きいからである。また、根元部1130から羽長の2/3〜3/4の距離だけ離れた位置は、羽部1100の表面側の流体と羽部1100の裏面側の流体と間の圧力差が大きくなるためである。
【0051】
羽部1100においては、前縁部1110は板状部1140に比較して剛性が高い。そのため、図3に示されるように、板状部1140は、周囲流体の流れに従うように変形する。より具体的には、羽部1100の後縁部1145が、前縁部1110を回転中心として、前縁部1110まわりに回転することによって、前縁部1110から後縁部1145へ所定の距離だけ離れた位置から後縁部1145までの部分が、周囲流体の流れ方向に沿うように変形する。
【0052】
枝部1120においては、その稜線または谷線を含む平面内において生じる曲げモーメントに対する剛性は高いが、稜線または谷線まわりの曲げモーメント、すなわち捻りに対する剛性は低い。そのため、枝部1120は、根元部1130の近傍の位置においては、稜線または谷線まわりに大きく回転変形する、すなわち捻り変形するが、根元部1130から離れた位置においては、殆ど変形しない。したがって、図3に示されるように、羽部1100は、板状部1140がほぼ均一の迎え角を有する状態に変形する。
【0053】
すなわち、上記図1および図2に示される構造の羽部1100によれば、羽部1100のうちの揚力の大半が発生する領域Rの迎え角を、その領域R内の位置にかかわらず、ほぼ一定にすることが可能になる。そのため、羽部1100を揚抗比が大きな迎え角を有する状態にすることが可能になる。つまり、板状部1140が周囲流体の流れ方向に沿った平面形状に維持されるため、羽部1100に生じる抗力を小さくすることができる。さらに、前縁部1110および枝部1120の双方とも、前縁部1110を含む平面内の曲げに対してのみ高い剛性を有しているため、それらの質量を小さくすることができる。
【0054】
また、前縁部1110および枝部1120は、根元部1130に接続されている。また、根元部1130は、羽部1100の回転中心に最も近く位置付けられている。そのため、羽部1100の慣性力の増加を最小限に抑制することができる。
【0055】
以上、本実施の形態の羽部1100は、次の(1)〜(5)の技術的な特徴を有している。
【0056】
(1) 羽部1100は、前縁部1110、枝部1120、前縁部1110と枝部1120との間に張られた板状部1140を有する。
【0057】
(2) 羽部1100の捻り変形を考慮して、迎え角が適切な値になることを前提として設計がなされるため、不必要な剛性の強化のための重量の増加がなく、極力軽量化されている。
【0058】
(3) 枝部1120は、周囲流体から力を受けると、前縁部1110まわりに捻れ、流体の流れ方向に沿って延びように変形する。
【0059】
(4) 図1に示されるように、枝部1120が、羽部1100の表側の周囲流体と羽部1100の裏側の周囲流体との間の圧力差が最も大きくなる、根元部1130から羽長2/3〜3/4までの領域を支えている。
【0060】
(5) 前縁部1110および枝部1120は、慣性力の増加に最も寄与しない根元部1130に接続されている。
【0061】
したがって、本実施の形態の羽部1100は、上記の技術的特徴のために、図9および図10に示される重量の増加に繋がる複数の翅脈を有するMichelsonの羽部、図11に示される羽長2/3〜3/4という最も羽部の表裏の圧力差が大きくなる領域を翅脈が支えていないMichelsonの羽、図15に示されるパイプ構造を用いて捻り変形を抑制しているFearingの羽部、および、従来から提案されてきた揚力付随発生型の羽部とは、明らかに異なっている。
【0062】
(補足事項)
なお、本実施の形態の羽部1100の説明においては、前縁部1110と枝部1120との間に張られた膜部は、便宜上、板状部1140と呼ばれているが、板状部1140が自発的に形状を保つだけの剛性を有していることは必要ではない。たとえば、前縁部1110、枝部1120、および前縁部1110の先端と枝部1120の先端とを接続する外枠部で囲まれた領域に、アラミドまたはPET(ポリエチレンテレフタレート)代表される薄い膜を張ることによって、膜部に自発的に形状を保持する剛性を与えてもよい。現実的には、軽量化の観点から、前縁部1110と枝部1120との間に薄い膜部を張ることが望ましい。さらに、その薄い膜部に張力をかければ、その剛性を高めることができる。
【0063】
この場合、前述の張力によって、上記2つの前縁部、枝部、および外枠部の変形が、羽ばたき飛行の妨げにならない程度に、上記張力を調整することが必要である。また、前縁部、枝部、および膜部との複合構造が平板の代わりに用いられていることは一般的になされていることである。この複合構造の一例は、特開20006−076358号公報に開示されている。
【0064】
また、本実施の形態においては、便宜上、前縁部1110および枝部1120が、「溝構造」と呼ばれているが、羽部1100は、表面から裏面に向かって突出している稜線を有していなくとも、裏面から表面に向かって突出している稜線を有していてもよい。さらに、羽部1100は、表面から裏面に向かって突出している稜線と裏面から表面に向かって突出している稜線とが交互に設けられた構造を有していていもよい。
【0065】
なお、説明の簡便のため、根元部1130は一定の厚さを有するがように図示されているが、前縁部1110および枝部1120が接続され得るものであれば、根元部1130の形状として、いかなるものが採用されてもよい。
【0066】
また、説明の簡便のため、前縁部1110は直線形状を有しており、かつ、枝部1120は前縁部1100の根元部1130から先端に向かって前縁部1100となす角度が単調に増加するように描かれているが、本発明の目的が達成される限り、前縁部1110と枝部1120との位置関係としていかなるものが採用されてもよい。特に、前縁部1100は、直線形状ではなく、トンボ等の羽のような曲線形状を有していてもよい。また、枝部1120と前縁部1110とがなす角度が単調に増加することは必須の構成ではない。枝部1120の捻りに対する剛性と曲げに対する剛性との間の相違を利用して、適切な迎え角になっている領域が極力大きくなるような羽部1100が実現されるのであれば、枝部1120と前縁部1110との間の位置関係はいかなる態様で変化してもよい。
【0067】
(実施の形態2)
次に、図4〜図6を用いて、本発明の実施の形態2の羽はたき装置の羽部が説明される。なお、本実施の形態においては、参照符号の下三桁に関しては、実施の形態1の羽部と同様の構造に対して実施の形態1の羽部の説明において用いられた数値と同一の数値が用いられている。
【0068】
図4〜図6に示されるように、本実施の形態に示される羽部2100は、前縁部2110、枝部2120、前縁部2110および枝部2120のそれぞれの一端が接続されている根元部2130、および、前縁部2110の先端と枝部2120の先端とを繋ぐように架け渡された外枠部2140を備えている。前縁部2110、枝部2120、および外枠部2140によって囲まれた領域には、膜部2150が形成されている。膜部2150はフィルムが前縁部2110、枝部2120、および外枠部2140に張られたものである。前縁部2110、枝部2120、および外枠部2140は、繊維強化プラスチックで構成されている。また、前縁部2110および枝部2120は、それぞれ、稜線部または谷線部を有している。要するに、本実施の形態の羽部2100においては、実施の形態1の羽部1100の板状部1140が、前縁部2110、枝部2120および外枠部2140によって囲まれた領域に設けられた膜部2150に置き換えられている。
【0069】
実施の形態1と同様に、本実施の形態の羽部2100によって得られる効果は、基本的には羽部の構造に依存するものであるため、上記材料の種類によらず実現されるものである。したがって、本実施の形態の羽部を構成する材料は一例であり、本発明の羽部は、前述の材料によって構成された羽部に限定されない。
【0070】
(期待される効果)
本実施の形態の外枠部2140は、前縁部2110の長さ方向に延びる軸まわりの捻りに対する剛性が低いが、実施の形態1の板状部2140は、前縁部2110の長さ方向に延びる軸まわりの捻りに対する剛性が高い。すなわち、本実施の形態の外枠部2140および膜部2150からなる複合構造は、実施の形態1の板状部1140に比較して、前縁部2110の長さ方向に延びる軸まわりの捻り変形が大きい。そのため、図4に示されるように、外枠部2140および膜部2150からなる複合構造は、実施の形態1の板状部1140のみからなる構造との比較において、流体が流れる方向に沿った部位のそれぞれの羽部の迎え角、すなわち、羽部の前後方向における部位のそれぞれの迎え角をほぼ一定値にすることが容易である。
【0071】
なお、前述の複合構造の前縁部2110の長さ方向に延びる軸まわりの捻りに対する剛性が低いことが重要であり、複合構造の前縁部2110の長さ方向を含む平面内の曲げに対する剛性は高くてもよいため、外枠部2140は、前縁部2110等と同様に、前縁部2110が延びる方向に沿った稜線部または谷線部からなる溝構造を有していてもよい。
【0072】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3の羽ばたき装置の羽部を、図7および図8を用いて説明する。なお、本実施の形態においては、参照符号の下三桁に関しては、実施の形態1の羽部と同様の構造に対して実施の形態1の羽部の説明において用いられた参照符号と同一の参照符号が用いられている。
【0073】
(羽構造)
図7および図8に示されるように、本実施の形態に示される羽部3100は、前縁部3110、枝部3120、前縁部3110および枝部3120のそれぞれが接続された根元部3130、お前縁部3110の先端部と枝部3120の先端部との間に接続された外枠部3140、および、根元部3130と枝部3120の先端部とに接続された内枠部3160を備えている。また、前縁部3110および枝部3120、および外枠部3140によって取り囲まれた領域にはフィルムからなる外膜部3150が張られている。また、枝部3120および内枠部3160に取り囲まれた領域にはフィルムからなる内膜部3170が張られている。前縁部3110、枝部3120、および外枠部3140は、繊維強化プラスチックで構成されている。前縁部3110および枝部3120は、それぞれ、稜線部または谷線部を有している。
【0074】
実施の形態1および2の羽部と同様に、本実施の形態の羽部の動作によって得られる効果は、基本的には、羽部の構造に起因するため、前述の羽部の材料の種類によらず、実現されるものである。したがって、本実施の形態の羽部を構成する材料は、一例であり、本発明の羽の材料は前述の材料に限定されない。
【0075】
(期待される効果)
内膜部3170は、羽ばたき装置が滑空しているときには、揚力を生み出すことができる。なお、内膜部3170は、羽部3100の回転中心に近い位置に設けられている。そのため、羽ばたき動作によって直接的に抗力に起因する浮上力が生み出されるときには、内膜部3170の表面側と裏面側との間に生じる圧力差が小さい。つまり、内膜部3170の存在に起因して生じる揚力は小さい。また、内枠部3160は、外枠部3140と同様に、前縁部3100が延びる方向に沿った軸まわりの捻り剛性が低い。そのため、内枠部3160は、羽ばたき動作によって直接的に抗力に起因する浮上力が生み出されるときには、羽部1130の揚力発生部位の変形には殆ど影響を及ぼさない。また、内枠部3160は、羽部3100の回転中心に近い位置に設けられているため、内枠部3160が設けられることに起因した羽部3100の慣性力の増加は僅かである。
【0076】
まとめると、内膜部3170の存在により、羽3100の全体の剛性および羽3100に生じる慣性力の増減に殆ど影響を与えることなく、羽ばたき装置が滑空するときに有効に機能するように、すなわち、揚力の発生に寄与するように羽部3100の面積を増加させることができる。
【0077】
図20〜図44を用いて、本発明の一実施の形態の羽ばたき装置を説明する。なお、本実施の形態では、左右対称の構成を有する羽ばたき装置を説明する。したがって、説明の簡略のため、左右対称である構成要素には同一参照符号が付され、それらのうち左側のみの説明がなされる。
【0078】
また、以下の説明においては、前述の羽部と異なる羽部を有する羽ばたき装置が示されているが、前述の羽部を以下の羽部と置き換えることにより、前述の羽部を用いて、以下に示される羽ばたき装置の羽ばたき運動が実現される。
【0079】
(全体の構成)
まず、図20および図21を用いて、本実施の形態の羽ばたき装置の全体構成を説明する。この項目は、全体構成を説明するためのものであるため、各構成要素の詳細な構成および動作は後述される。
【0080】
図20に示すように、羽ばたき装置100は、本体101と、本体101に設けられた1対の羽部110とを備えている。一対の羽部110の一方は、本体101の左側の側部に設けられ、一対の羽部110の他方は、本体101の右側の側部に設けられている。
【0081】
羽ばたき装置100は、羽部110の羽ばたき運動によって、周囲流体に流れを生じさせるとともに、周囲流体から反作用を受ける。このとき、羽ばたき装置100は、鉛直上方に向いた、自重を超える反作用を周囲流体から受ける。それにより、羽ばたき装置100には重力加速度を超える鉛直上方向きの加速度が生じる。その結果、羽ばたき装置100は浮上する。
【0082】
また、図21に示すように、羽ばたき装置100は、本発明のアクチュエータとしての上部超音波モータ120および下部超音波モータ130を有している。上部超音波モータ120および下部超音波モータ130は、本体101に回転可能に搭載されている。上部超音波モータ120および下部超音波モータ130には、上部超音波モータ120および下部超音波モータ130の運動を羽部110へ伝達する羽根駆動メカニズム140が接続されている。羽根駆動メカニズム140には羽部110が接続されている。羽部110は、上および下部超音波モータ120および130の駆動によって、上下方向を回転中心軸とする往復回動運動(以後、「ストローク運動」と称する。)と、羽部110の前縁部を回転中心軸とする回転運動(以後、「捻り運動」と称する。)とを行なう。つまり、羽部110は、ストローク運動および捻り運動のそれぞれを独立して行なうことができる。
【0083】
上部および下部超音波モータ120および130は、制御回路150によって制御される。また、制御回路150には、本体101に固定された位置検出センサ160から羽ばたき装置100の位置情報および姿勢情報が与えられる。
【0084】
また、羽ばたき装置100は、通信装置170を介して、羽ばたき装置100自身の情報およびその周辺の情報を、外部のコントローラ200に送信する機能を有する。本実施の形態においては、画像センサ180よって得られた流体センサ180によって得られた気体に関する情報がコントローラ200へ送信される。なお、流体センサ180よって得られた気体に関する情報は制御回路150によって直接利用されてもよい。
【0085】
また、通信装置170は、図20および図21に示すように、外部のコントローラ200から送信されてきた情報を受信し、その情報を制御回路150に与える機能を有する。本実施の形態では、外部のコントローラ200は、オペレータ210により制御され、羽ばたき装置100の運動指令を与えるものとする。一方、外部のコントローラ200は、羽ばたき装置100に搭載された流体センサ180によって得られた気体に関する情報を取得することができる。
【0086】
なお、コントローラ200が前述の気体に関する情報をオペレータ210に提示する方法は、いかなるものであってもよい。たとえば、外部のコントローラ200が画像表示機能を備えていれば、流体センサ180が取得した気体に関する情報そのものが視覚的にオペレータ210に提示される。また、説明の簡便のために、外部のコントローラ200は、オペレータ210によって操作されるものとしたが、これは必須ではない。
【0087】
また、制御回路150、通信装置170、および流体センサ180等は、本体101に配された電源190から供給される電力によって駆動される。電源190は、本発明の駆動エネルギー源として機能するが、本発明の駆動エネルギー源は、電力を用いるもの以外のもの、たとえば、化石燃料等であってもよい。この場合、アクチュエータとしては例えば2サイクルエンジンやスターリングエンジン等、上記駆動エネルギー源に対応した物が用いられる。
【0088】
(羽部)
以下に説明される羽部は、前述の図1〜図8を用いて説明された実施の形態1〜3の羽部に置き換えられ得るものである。したがって、前述の図1〜図8を用いて説明された実施の形態1〜3の羽部の根元部1130、2130、または3130が、図34に示されるような羽部110の根元部と同様の態様で上部プレート141および中間プレート144に接続される。それにより、前述の羽部1100、2100、または3100は、図40〜図47に示されるような羽ばたき動作をする。より具体的には、前述の実施の形態1〜3の羽部1100、2110、または3110の前縁部1110、2110、または3110は、以下に説明される前縁部1102と同様の動作をする。また、前述の実施の形態1〜3の羽部1100、2100、または3100は、全体として、以下に説明される羽部110と同様の動作をする。つまり、以下に示されるアクチュエータとして上部ロータ120および下部ロータ130は、羽部1100、2100、または3100を前後方向に羽ばたき往復運動させるとともに、羽ばたき往復運動における運動方向の反転の前から後の所定期間において、前縁部1110、2110、または3110が延びる方向を回転軸として羽部1100、2100、または3100を捻る。
【0089】
羽部110は、図22〜図26に示されたような形状を有し、長さが65mmであり、かつ、幅が16mmである。羽部110は、前縁部1102、羽面部1103、枠部1104、枝部1105、およびアクチュエータ接合部1106を有している。なお、羽面部1103とは、前縁部1102、枠部1104、枝部1105、およびアクチュエータ接合部1106以外の部分であって、細長板状部1107、1108、および1109とアラミドフィルム1114とからなる部分である。
【0090】
羽部110のアラミドフィルム1114以外の部分、つまり前縁部1102、枠部1104、枝部1105、アクチュエータ接合部1106、細長板状部1107、1108、1109は、厚さ20μmのCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic)層からな
る。具体的に言えば、羽部110のアラミドフィルム1114以外の部分は、CFRPのシートから図24〜図26に示す3つの部分が切り抜かれ、その3つの部分が積層されることによって形成される。
【0091】
前縁部1102およびアクチュエータ接合部1106は、厚さ20μmのCFRP層の3層積層構造を有している。また、枠部1104、枝部1105、細長板状部1107、1108、および1109はCFRP層の1層構造である。図22に示されるX軸の正の方向を0度とすると、細長板状部1107の繊維軸の方向は−60度(+120度)であり、細長板状部1108および枠部1104のそれぞれの繊維軸の方向は、0度(180度)であり、細長板状部1109の繊維軸の方向は、+60度(+240度)であり、枝部1105の繊維軸の方向は−30度(150度)である。前縁部1102およびアクチュエータ接合部1106は、繊維軸の方向が−60度(+120度)、0度(180度)、および+60度(240度)である3つのCFRP層が重ねられて形成されている。
【0092】
前縁部1102の主要な変形は、羽部110の長手方向に平行な伸縮であるため、この方向とCFRP層の繊維軸とが一致していることが望ましい。また、アクチュエータ接合部1106には複数の方向に力が加えられ、羽ばたき運動に応じてこれらの力の方向が変化すると考えられる。したがって、あらゆる方向に極力均等な剛性を有するように、異なる方向の繊維軸を有する多数のCFRP層を積層することによって形成されていることが望ましい。なお、前縁部1102およびアクチュエータ接合部1106は、他の部分よ
り剛性が高くなっている。これらの要件を満たす羽部の製造方法は後述される。
【0093】
また、アクチュエータ接合部1106、前縁部1102、枠部1104、および枝部1105に囲まれるように羽面部1103が設けられている。羽面部1103は、アラミドフィルム1114からなり、図23の紙面の奥行き方向に延びている。また、アクチュエータ接合部1106は、羽部110の根元に設けられ、アクチュエータに接合されており、その長さは10mmである。
【0094】
また、図24〜図26に示すように、複数の細長板状部1107のそれぞれは同一幅であり、複数の細長板状部1107同士は、互いに同一ピッチでかつ平行に設けられている。また、複数の細長板状部1108のそれぞれは同一幅であり、複数の細長板状部1108同士は、互いに同一ピッチでかつ平行に設けられている。さらに、複数の細長板状部1109のそれぞれは同一幅であり、複数の細長板状部1109同士は、互いに同一ピッチでかつ平行に設けられている。
【0095】
なお、本実施の形態では、説明の簡便のため、同一層の複数の細長板状部は、同一ピッチかつ平行であるものとしたが、たとえば、剛性分布を意図的に変更する場合には、前述のものに限定されない。たとえば、先端側に比較して、根元側のピッチが小さくなっており、それにより、剛性が高められている羽部110が用いられてもよい。
【0096】
<前縁部>
前縁部1102は、図23に示されるように、羽部110の長手方向に沿って延びる溝構造、すなわちコルゲーションと呼ばれる凹凸形状を有している。そのため、前縁部1102においては、長手方向を含む面内の曲げ変形に対する剛性が、長手方向を回転中心軸とする曲げ変形に対する剛性に比較して、高くなっている。なお、この前縁部1102の凹凸形状は、プリプレグと呼ばれるCFRP層の原材料のシートを、この凹凸形状に対応する金型に密着させた状態で加熱することによって容易に成形され得る。また、前縁部1102には荷重が大きくかかる。そのため、前縁部1102は、細長板状部が設けられていない構造、すなわち隙間がない密実構造であるので、羽面部1103より剛性が高くなっている。さらに、前縁部1102は、根元に近づくにしたがって、累積的に荷重が増加するため、根元が先端に比べ太くなっている。根元部分での前縁部1102の幅および高さは約2mmであり、先端部分での前縁部1102の幅および高さは約1mmである。ただし、図の記述精度の制約から、図23〜図26においては、根元部分における前縁部1102の幅と先端部分における前縁部1102の幅とは同じ幅で描かれている。
【0097】
<羽面部>
羽面部1103は、図23〜図26に示されるように、CFRP層の細長板状部1107、1108および1109、およびアラミドフィルム1114によって構成されている。羽部110と同一の外形を有するアラミドフィルム1114が、CFRP層の細長板状部によって挟まれている。
【0098】
本実施の形態においては、アラミドフィルム1114の耐熱温度がCFRP層の成形温度よりも高く、かつCFRP層の成形工程において、プリプレグとアラミドフィルムとを接触させておき、加圧および加熱処理を行なうことで、プリプレグに含まれる樹脂成分によってCFRP層とアラミドフィルムとを接着させることが可能である。したがって、CFRP層によって構成された前縁部1102、枠部1104、枝部1105、アクチュエータ接合部1106、細長板状部1107、1108、1109ならびにアラミドフィルム1114を含む原材料を上述の金型上で焼結することによって、簡単に羽面部1103を製造することが可能である。
【0099】
羽面部1103の細長板状部1107、1108、および1109は、それらが延びる方向が互いに60度ずつずれ、重ねられている。そのため、羽面部1103の表面に垂直な方向から見ると、細長板状部1107、1108、および1109によって、正三角形の枠、すなわちトラスが形成されているように見える。また、細長板状部1107、1108、および1109のそれぞれは、細長い長方形の輪郭を有しており、そのうち2つの長辺は、繊維軸に平行に延びている。これは、強度が高いCFRPの長手方向と、上記トラス構造の各ビームの力のかかる方向とを一致させ、一軸異方性材料であるCFRPの強度特性を最大限活用するための構成である。ただし、2つの長辺の一方の長辺のみが繊維軸に平行に延びていれば、繊維の強度をある程度有効に利用することが可能である。なお、上記ビームが長方形ではない場合には、応力解析などの手法を用いて、そのビームの形状に最適な繊維軸方向を決定する必要がある。
【0100】
また、本実施の形態では、細長板状部1107、1108、および1109のそれぞれの曲げ剛性は、前縁部1102の1/8であるものとする。一般に、曲げ剛性は、断面二次モーメントに比例する。つまり、曲げ剛性は、(幅:矩形の短辺の長さ)×(厚さの3乗)に比例する。
【0101】
ここで、細長板状部1107、1108、および1109のそれぞれの厚さが一定であり、細長板状部1107の幅が細長板状部1107同士の中心軸間の距離(以下、これを「ピッチ」という。)の1/a倍であり、細長板状部1108の幅が細長板状部1108同士のピッチの1/a倍であり、かつ、細長板状部1109の幅が細長板状部1109同士のピッチの1/a倍であると仮定する。この仮定の下では、細長板状部の幅が1/a倍になれば、羽面部1103の曲げ剛性も1/a倍になる。したがって、本実施の形態においては、細長板状部1107、1108、および1109のそれぞれの幅を細長板状部1107同士、細長板状部1108同士、および細長板状部1109同士のそれぞれのピッチの1/8倍にすることによって、前縁部1102の曲げ剛性の1/8倍の曲げ剛性を有する羽面部1103が実現されている。つまり、羽面部1103の厚さ、すなわち細長板状部の積層数を変化させることなく、細長板状部1107、1108、および1109のそれぞれの幅のみを変更することによって、所望の曲げ剛性分布を有する羽部110が形成されている。細長板状部の積層数は、自然数にしかならず、連続的に変化し得るものではないため、細長板状部の積層数を変化させるだけでは、羽部の曲げ剛性の分布が不連続になってしまう。しかしながら、上記細長板状部の幅とピッチとの比は、連続的に変化し得るものであるため、上記曲げ剛性分布を連続的に変更して、所望の曲げ剛性分布を得ることができる。
【0102】
なお、本実施の形態の羽部110の構造によれば、細長板状部1107の幅と細長板状部1107同士のピッチとの比、細長板状部1108の幅と細長板状部1108同士のピッチとの比、および細長板状部1109の幅と細長板状部1109同士のピッチとの比を互いに異ならせることによって、羽面部1103の曲げ剛性が異方性を有するようにすることが可能である。たとえば、羽部110の長手方向を含む面内の曲げ変形に対して高い剛性を有する羽部110を製造する場合には、細長板状部1108の幅を大きくし、細長板状部1108同士のピッチを小さくすればよい。
【0103】
一方、CFRP層が3つ積層された積層構造の一部をトラスが形成されるように切り抜く手法が用いられた場合には、各トラスの三辺に3つのCFRP層が積層されている。この手法により形成された羽面部の質量は、トラスが形成されていない羽面部1103と同一面積の3つのCFRP層の積層構造の質量の3/a倍(aは前述の値)となる。この場合、3つのCFRP層のうちの1つの層の繊維軸を含む面内の曲げ変形モードにおいては、その1つのCFRP層以外の2つのCFRP層は、樹脂程度の剛性しか有していないため、不要である。すなわち、前述の羽部110は、本段落にて説明されているような切
り抜きによって形成された羽部の約1/3の質量で、その羽部とほぼ同一の剛性を有する(具体的には下記の<羽質量>の項目に羽部の質量および剛性の数値が記載されている)。
【0104】
<枠部>
羽面部1103を構成するアラミドフィルム1114は、図23に示されるように、アクチュエータ接合部1106、前縁部1102、および枠部1104の間に張られている。そのため、アラミドフィルム1114の端部の破損が防止されている。本実施の形態では、枠部1104の幅は約0.5mmである。なお、枠部1104は、図23に示されるように、羽面部1103を取り囲む形状であるため、それが延びる方向は位置によって異なる。枠部1104の繊維軸の方向は、それの延びる方向に一致している。
【0105】
<枝部>
羽部110が大きくなった場合には、羽部110の先端部の回転半径も大きくなる。この場合、流体に対する相対速度が大きくなるため、羽部110の先端部には大きな流体力が生じる。羽部110の先端部に生じる流体力が大きくなっても、羽部110の先端部の制御性を維持する必要がある。そのため、前縁部1102に接続され、前縁部1102から斜め方向に延びる枝部1105が設けられている。枝部1105の幅は約0.9mmである。枝部1105は、X軸方向の羽部110の先端側を向く方向を0°とした場合に、−30°の方向に延びるように形成されている。
【0106】
なお、枝部1105とX軸との間の角度および羽面部1103に要求される剛性によっては、前述の細長板状部1107とは異なる細長板状部を有するCFRP層に枝部1105が設けられていてもよい。また、CFRP層とは別の材料を用いて形成された枝部1105がCFRP層同士の間に挟み込まれた構造の羽面部1103が用いられてもよい。
【0107】
<アクチュエータ接合部>
アクチュエータ接合部1106は、実際には、羽部110を駆動するアクチュエータとの適合性に応じて、その形状が決定される。本実施の形態のアクチュエータ接合部1106は、図23に示される形状であるものとする。また、羽ばたき運動により生じる流体力に起因する変形を防止するため、アクチュエータ接合部1106の材料としては、細長板状部を有しない、すなわち隙間がない密実な構造のCFRP層が用いられる。さらに、アクチュエータ接合部1106の前方端には溝構造が設けられている。このアクチュエータ接合部1106の溝構造と前縁部1102の溝構造とは連続するように設けられている。
【0108】
<羽質量>
CFRPの比重が1.6g/cm3であるものとして、表1に前述の羽部110の各部位の質量が示されている。表1に示されるように、羽部110の質量は、約26.5mgである。また、アクチュエータ接合部1106の質量は約10.8mgである。
【0109】
【表1】

【0110】
一方、CFRP層が3つ積層された積層構造をトラス形状が形成されるように切り抜く手法が用いられた比較例の羽部の質量は約48mgである。
【0111】
(超音波モータ)
次に、図27〜図33を用いて、本発明のアクチュエータとしての上部超音波モータ120および下部超音波モータ130を説明する。
【0112】
<全体構成>
まず、上部超音波モータ120および下部超音波モータ130の構成を説明する。
【0113】
図27に示されるように、上部超音波モータ120は、上部超音波振動子121と、これによって駆動される上部ロータ122とを有している。また、上部ロータ122は、上部ベアリング123を介して、ロータシャフト124に、ロータシャフト124の軸周りにのみ回転可能に設けられている。ロータシャフト124は、本体101に固定されている。上部ロータ122には、上部磁化パターン125が円弧状に記されている。上部磁化パターン125は、上部磁気エンコーダ126で読み取られる。上部超音波振動子121においては、図33に示すように、支持部1214が支持シャフト127に固定され、牽引部1224が牽引ゴム129により牽引されている。また、上部超音波振動子121を駆動する電力はフィルム基板128を介して供給される。
【0114】
下部超音波モータ130は、上部超音波モータ120と上下方向において鏡面対称の構造である。すなわち、下部超音波モータ130においては、下部超音波振動子131が下部ロータ132を回転させる。下部ロータ132は、図示されない下部ベアリングを介して、ロータシャフト124に、ロータシャフト124の軸周りにのみ回転可能に設けられている。下部ロータ132には、図示されない下部磁化パターンが円弧状に記されている。下部磁化パターンは、下部磁気エンコーダ136で読み取られる。
【0115】
上部および下部超音波モータ120および130は、上下方向において鏡面対称に設けられていること以外においては、全く同様の構成を有しているため、以降においては、上部超音波モータ120の詳細構造のみの説明を行なう。
【0116】
<駆動原理>
次に、図28〜図33を用いて、上部超音波モータ120の駆動原理を説明する。
【0117】
上部超音波振動子121は、振動板1211、表面ピエゾ1212および裏面ピエゾ1213からなる。振動板1211は、厚さ0.2mmのステンレスで作製され、幅2mmかつ長さ9mmの矩形部と、矩形部の長手方向の中央部から外方に突出する支持部1214とを有している。振動板1211は、表面ピエゾ1212および裏面ピエゾ1213によって挟まれている。表面ピエゾ1212および裏面ピエゾ1213は、それぞれ、幅2mm、長さ8mm、および厚さ0.2mmの短冊形状を有し、厚み方向に分極するピエゾ焼結体からなる。
【0118】
表面ピエゾ1212には表面電極1216が接合され、裏面ピエゾ1213には裏面電極1217が接合される。表面電極1216に電圧を印加すると、上部超音波振動子121において、図29に示されるような節を3つ有する、即ち3次のたわみ振動モードが励起される。また、裏面電極1217に電圧を印加すると、図30に示されるような、縦(伸縮)の振動モードが励起される。本実施の形態における上部超音波振動子121においては、2つの振動についての共振モードの共振周波数は、いずれも250kHzであり、互いに一致している。ここで、これらの共振モードの振動の位相を±90°異ならせることによって、振動板1211の頂点は図31および図32に示される2種類の楕円運動を行なう。2種類の楕円運動は、正方向に回転する楕円運動と、逆方向に回転する楕円運動である。また、振動板1211の頂点にはセラミックからなる接触部1215が設けられている。接触部1215は、前述の楕円運動に応じて、摩擦力によって、上部ロータ122をロータシャフト124の軸周りに回転させる。このとき、正方向の回転および逆方向の回転のいずれかが選択される。
【0119】
図31および図32は、表面電極1216に与えられる電位をφAとし、裏面電極1217に与えられる電位をφBとして、φAおよびφBを、それぞれ、cos(2πft)およびsin(2πft)に振幅を掛けた関数で表した場合における接触部1215の回転方向を示している。なお、説明の簡便のため、表面電極1216および裏面電極1217のそれぞれに与えられる電位を三角関数によって表わしたが、それらの電位の位相が±90°ずれているのであれば、矩形波等によって表わされる電位が両電極に与えられてもよい。なお、上部ロータ122および下部ロータ132のそれぞれは所定の回転角の範囲内での回転往復運動を行なう。そのため、軽量化のためには、図33に示されるように、不要な部分が削除された、その外形が中心角120°の略扇形状である上部ロータ122および下部ロータ132が用いられることが望ましい。これによれば、羽ばたき装置内におけるロータの占有率を低減することができる。
【0120】
なお、前述の各部位のサイズおよび振動板の共振周波数などの数値は、一例であり、浮上のための要件が満足されるのであれば、前述の値に限定されない。この浮上のための要件は、後述の浮上可能性の項において述べられている。
【0121】
また、上部ロータ122および下部ロータ132は、必要な強度が確保される範囲内において、軽量化のための中空構造を有していてもよい。更に、上部ロータ122および下部ロータ132に、上部ローラ122の回転角θ1−下部ロータ132の回転角θ2を所定の範囲内の値に制限するための機構が設けられてもいてもよい。これによれば、羽の捻り角βが一定の範囲内の値に制限される。そのため、後述する数式(7)において、解が物理的に1つに定まる。その結果、羽部の動作が安定する。なお、本発明者らの実験によれば、(θ1−θ2)の絶対値が所定値以上の値になると、後述する式(7)の解が、重解になることが分かっている。
【0122】
<予圧機構>
次に、図33を用いて、接触部1215から上部ロータ122へ予圧を与える機構を説明する。
【0123】
接触部1215から上部ロータ122へ予圧が作用しており、その反作用として、接触
部1215から上部ロータ122の外周面へ向かって抗力が生じている。そのため、上部ロータ122と接触部1215との間には摩擦が生じている。したがって、接触部1215の楕円運動によって、上部ロータ122は、摩擦力を受け、回転往復運動を行なう。
【0124】
牽引ゴム129は、環状であり、その一端が、牽引部1224に引っ掛けられている。牽引ゴム129の他端は、本体補強ポール112に固定されている牽引ゴムピン113に引っ掛けられている。したがって、牽引ゴム129には張力が生じ、牽引部1224が本体補強ポール112に向かって牽引されるため、振動板1211は牽引部1224を含む振動板1211を支持している支持シャフト127の軸周りに回転運動する。この回転運動は、接触部1215が上部ロータ122に接触することによって拘束されている。したがって、接触部1215から上部ロータ122へ向かう予圧が生じる。
【0125】
なお、前述の本体補強ポール112を、その長軸周りに回転させることによって、前述の予圧の大きさを調整することが可能である。また、予圧機構は、上部ロータ122を駆動するための摩擦力を得るために設けられているものであるため、前述の予圧が得られ、かつ、羽ばたき装置100の浮上特性が損なわれないのであれば、図33に示す構造に限定されない。
【0126】
<回転角検出>
図27に示す上部磁気エンコーダ126には、パターン周期の1/4の間隔を置いてA相およびB相のための2つの検出部が設けられている。この構成によって、一般的なエンコーダと同様に、上部ロータ122の回転方向に応じてA相およびB相の位相が異なるため、たとえば、A相のアップエッジをカウンタのトリガとして、B相のレベルの1/0をアップカウント/ダウンカウントの機能選択に割り当てれば、上部ロータ122の回転角θ1を検出することが可能である。この回転角θ1の算出は、中央演算装置151において行なわれる。
【0127】
<補足>
なお、図27〜図33において示された超音波モータは、一般的なアクチュエータの一例であり、本発明における羽ばたき装置のアクチュエータは、前述のような構造の超音波モータに限定されない。たとえば、アクチュエータとして、電磁モータまたは内燃機関が用いられてもよい。また、回転角検出のための装置は、羽ばたき飛行を阻害するものでなければ、いかなるものであってもよい。たとえば、前述の磁気エンコーダを用いる手法の替わりに、光学式エンコーダを用いる手法が採用されてもよい。
【0128】
(羽駆動メカニズム)
次に、図34〜図37を用いて羽根駆動メカニズムについて説明する。
【0129】
羽根駆動メカニズム140は、図34に示されるように、上部ロータ122に固定された上部プレート141と、下部ロータ132に固定された下部プレート142とを有している。さらに、下部プレート142には第1アラミドヒンジ143を介して中間プレート144が接続されている。さらに、上部プレート141には、第2アラミドヒンジ145を介して、羽部110の根元部が接続されている。さらに、羽部110の根元部は、第3アラミドヒンジ146を介して、中間プレート144にも接続されている。したがって、上部プレート141、羽部110、中間プレート144、および下部プレート142がアラミドフィルムで接続された複合ヒンジが構成されている。この複合ヒンジは、上部ロータ122および下部ロータ132によって駆動される。
【0130】
図35〜図37には、上部プレート141、中間プレート144、および下部プレート142の形状が示されている。なお、各プレートのヒンジおよびロータに接続されない辺の近傍の部分は、補強のため、図35〜図37のハッチングで示される部位が、各プレートの主表面に対して約90°折り曲げられている。さらに、この折り曲げ部同士の干渉を避けるため、折り曲げ部の両側端のそれぞれは、折り曲げ部が延びる方向に対して45°の方向においてカットされている。
【0131】
各アラミドヒンジは、幅0.1mmであり、長さに比べてその幅が非常に小さいため、擬似的に1自由度の回転のみ運動可能なリンク、すなわち蝶板(兆番)として機能する。また、アラミドヒンジ143、145、および146のそれぞれの延長線は1点で交わり、その1点はシャフト124の中心軸上に位置し、かつ、上部ベアリング123と下部ベアリング133との間に位置する。この構成により、上部超音波モータ120の回転角の制御によって羽部110の前後方向の往復運動が制御され、上部超音波モータ120の回転角の位相と下部超音波モータ130の回転角の位相との差の制御によって、羽部110のねじり運動が制御される。
【0132】
つまり、アクチュエータは、羽根軸としての前縁部1102を前後方向に往復運動(回転角α:Z軸周りの回転角)させる前後往復運動用ロータとしての上部超音波モータ120と、往復運動における運動方向の反転の前から後の所定期間において、前縁部1102を軸周りに回転(回転角β)させる捻り運動用ロータとを備えている。
【0133】
前述の羽ばたき方を、図38および図39を用いて、より具体的に説明する。図38および図39においては、羽ばたき装置100の前後方向に沿ってY軸が延びている。また、羽ばたき装置100の上下方向に沿ってZ軸が延びている。さらに、羽ばたき装置100の左右方向に沿ってX軸が延びている。X軸、Y軸、およびZ軸は、互いに直交する。また、Y軸においては、後方が正であり、前方が負である。また、X軸においては、上方が正であり、下方が負である。さらに、Z軸においては、左の羽部110の位置する側が正であり、右の羽部110が位置する側が負である。また、図39に示すように、上部超音波モータ120の回転角がθ1であり、下部超音波モータ130の回転角がθ2であり、前後方向の往復運動の回転角である羽ばたきストローク角がαであり、前縁部1102の軸周りの回転角である捻り角がβであるものとする。
【0134】
また、前述の各アラミドヒンジ143、145、および146のそれぞれの延長線の交点から各アラミドヒンジ143、145、および146のそれぞれの外側端までの距離は、それぞれ、R2、R1、およびR3であるものとする。さらに、アラミドヒンジ146の端点とアラミドヒンジ145の端点の距離がL1であり、アラミドヒンジ146の端点とアラミドヒンジ143の端点の距離がL2であり、アラミドヒンジ143の端点とアラミドヒンジ145の端点と間の距離がL3であるものとする。ロータシャフト124に対する羽部110の位置を表わす角度の組み合わせ(α,β)は、上および下部超音波モータの回転角θ1およびθ2を用いて、以下のように表わされる。
【0135】
羽ばたきストローク角αは、羽根軸(前縁部1102)のロータシャフト124の軸周りの回転であるため、次の式(1)に示すように、上部超音波モータ120の回転角θ1に等しい。
【0136】
α=θ1・・・(1)
また、捻り角(回転角β)は、羽部110の羽根軸(前縁部1102)の軸周りの回転角であるため、次の式(2)によって示されるβの余弦値から算出される。
【0137】
cos(π−β)=−cos(β)=[L1×L1+L3×L3−L2×L2]/(2×L1×L3)・・・(2)
ただし、L3に関しては、次の式(3)が成り立つ。
【0138】
L3=sqrt(R1×R1+R2×R2−2×R1×R2×cos(θ1−θ2))・・・(3)
ここで、sqrt()は()内の値の正の平方根である。
【0139】
なお、図38および図39から明らかなように、βは、πより大きく、かつ、2πより小さい。
【0140】
π<β<2π・・・(4)
したがって、βが1つの値に決定される。
【0141】
上記の式(1)〜(4)から、所望の羽部110の位置(α,β)を得るための回転角θ1およびθ2は、次の式(5)および(6)によって表わされることが分かる。
【0142】
θ1=α・・・(5)
cos(θ1−θ2)=[R1×R1+R2×R2−L3×L3]/2×R1×R2・・・(6)
ただし、L3に関しては、次の式(7)が成立する。
【0143】
L3=L1×cos(β−π)±sqrt(L2×L2−L1×L1×sin2(β−π))・・・(7)
なお、L3の符号が、正であるか、または、負であるかは、実際の羽部110の挙動を考慮することによって、容易に決定される。
【0144】
図38および図39に示される本実施の形態の羽ばたき装置の状態は、羽部110の主表面が鉛直な方向に延びる平面と平行である状態、すなわち、捻り角β=270°である状態である。このとき、θ1=0°、θ2=−45°R1=R2=15mm、R3=15.81mm、L1=5mm、L2=11.4mm、およびL3=11.39mmである。
【0145】
上部および下部ロータ122および132の回転角θ1およびθ2は、前述のように、磁気エンコーダ126よって得られた情報に基づいて中央演算装置151によって算出される。なお、回転角θ1およびθ2の制御方法は後述される。
【0146】
(羽ばたき方の変更による羽ばたき装置の動作制御)
<動作の基本>
本実施の形態における羽ばたき装置100は、羽部110の羽ばたき運動が生み出す浮上力の作用点より下側の質量が大きいため、自動的に、図20に示される姿勢になる。すなわち、X軸周りの回転およびY軸周りの回転を制御する必要はない。一方、X軸、Y軸、およびZ軸のそれぞれに沿った並進加速度、ならびにZ軸周りの回転加速度(以下、「角加速度」とも言う)は、羽ばたき方によって変更される。尚、羽ばたき運動により生じる力は羽部の運動に伴って変化するが、ここでは、羽ばたき運動の1周期平均の力を羽ばたき運動により生じる力とする。
【0147】
(コントロールパラメータ)
本実施の形態における羽ばたき装置100においては、トルク補助機構が適正に機能するためには、上部超音波モータ120の回転角θ1すなわちストローク角αの振幅は固定されている必要がある。そこで、羽ばたき装置100の動作を制御するために、下部超音波モータ130の回転角θ2が変更される。すなわち、羽ばたき装置100は、捻り角βの変更によって、流体の流れを変化させ、それにより、姿勢を変化させる。
【0148】
具体的には、羽ばたき運動のストロークの両端のそれぞれにおいて羽部110の捻り運動のタイミングを変化させる。
【0149】
(上下方向における浮上力の変化)
先述の非特許文献2において、Dickinsonらによって明らかにされているように、図41に示すように、(1)羽ばたき運動の切り返し動作の中間のタイミングよりも先、すなわち切り返しの前半に羽部110を捻る(捻り先行切り返し)と、浮上力は増加し、一方、図42に示すように、(2)羽ばたき運動の切り返し動作の中間のタイミングよりも後、すなわち切り返しの後半に羽部110を捻る(捻り遅れ切り返し)と、浮上力は減少する、という現象が起きる。
【0150】
(上下方向における浮上力が変化するときの前後方向における推進力の相殺)
さらに本発明者らは、図41に示す前述の(1)の動作によれば、切り返し動作前の羽進行方向に沿った抗力が増大し、図42に示す前述の(2)の動作によれば、その抗力が減少することを見出した。打ち上げ時に生じる前後方向の抗力と、打ち下ろし時に生じる前後方向の抗力とは、互いに逆向きである。そのため、打ち上げ動作と打ち下ろし動作とが前後方向に垂直な平面に対して鏡面対称であれば、それらの動作による抗力は相殺され、推進力はゼロとなる。このため、羽ばたき装置は、上下方向のみにおける移動を行なうことができる。
【0151】
(前後方向における推進力の変化)
逆に、打ち上げ時の切り返しと打ち下ろし時の切り返しとにおいて、図41に示す前述の(1)の動作と図42に示す前述の(2)の動作とが異なれば、その2つ動作による前後方向の抗力同士の間に差異が生じ、前方または後方のいずれかに推進力が生じる。より具体的には、図43に示されるように、打ち下ろしの後半では、遅れ切り返しによって、前方への加速度が得られ、また、打ち上げの後半では、先行切り返しによって、前方への加速度が得られる。一方、同様に、図43に示されるように、打ち下ろしの後半では、先行切り返しによって、後方への加速度が得られ、また、打ち上げの後半では、遅れ切り返しによって、後方への加速度が得られる。
【0152】
(前後方向における推進力が変化するときの上下方向における浮上力の変化の相殺)
尚、前方への加速度が得られる動作および後方への加速度が得られる動作のいずれが実行されるときにおいても、上方への加速度の変化と下方向への加速度の変化とを相殺することは可能である。このため、水平方向における加速度のみを得ることが可能である。
【0153】
(空間の3次元移動)
以上の説明のように、左および右の羽部110のそれぞれのストローク角α、すなわちθ1の振幅が固定されていても、θ2の時刻歴のみ変更し、打ち上げにおける羽部110の切り返しのタイミングと打ち下ろしにおける切り返しのタイミングとを異ならせることにより、羽部110に上下方向および前後方向における加速度を生じさせることができる。また、左の羽部110に生じる加速度と右の羽部110に生じる加速度とを異ならせることによって、羽ばたき装置100の姿勢を左または右に傾けること、ならびに、羽ばたき装置100が左方向または右方向へ旋回することが可能になる。
【0154】
<<制御の詳細>>
以下、図41に示す前述の(1)に記載の羽ばたき方を捻り先行切り返し(以下、単に、「先行切り返し」という。)と言い、図42に示す前述の(2)に記載の羽ばたき方を捻り遅れ切り返し(以下、単に、「遅れ切り返し」という。)と言い、図40に示すホバリング時の羽ばたき方を中央切り返しと言うものとする。
【0155】
また、説明の簡便のため、ホバリング、Z軸方向における並進運動、およびY軸方向における並進運動は、それぞれ、左右対称である。したがって、羽部の動作も、左右対称である。そのため、左右対称な動作のうちの左の羽部110の動作についてのみの説明がなされるものとする。
【0156】
<ホバリング>
図40には、ホバリング時の羽ばたき方が示されている。図40においては、回転角θ1およびθ2の時刻歴が、羽部110の断面の時刻歴とともに示されている。このときの浮上力は自重と釣り合っており、前後方向への推進力はゼロである。
【0157】
<Z軸方向の並進制御>
図41には、Z軸に沿った上方への移動、すなわち上昇のための羽ばたき方が示されている。図42には、Z軸に沿った下方への移動、すなわち下降のための羽ばたき方が示されている。図41および図42においては、回転角θ1およびθ2の時刻歴が、羽部110の断面の時刻歴とともに示されている。なお、左右の羽部110は、YZ平面を対称面とする鏡面対称の動作を行なう。
【0158】
図41に示す動作は、前述の(1)に記載の先行切り返し動作であり、図42に示す動作は、前述の(2)に記載の遅れ切り返し動作である。これらの動作の際の前後方向における加速度は、図43に示されるとおりゼロである。
【0159】
<Y軸方向の並進制御>
図44および図46には、前方へ移動するための羽ばたき方が示され、図45および図47には、後方へ移動するための羽ばたき方が示されている。なお、左右の羽部110は、YZ平面を対称面として、鏡面対称の動作を行なう。
【0160】
前方への移動の際には、打ち上げ終端を含む期間での切り返しにおいて、前述の(1)に記載の先行切り返し動作が行なわれ、打ち下ろし終端を含む期間での切り返しにおいて、前述の(2)に記載の遅れ切り返し動作が行なわれる。
【0161】
後方への移動の際には、打ち上げの終端を含む期間での切り返しにおいて、前述の(2)に記載の遅れ切り返し動作が行なわれ、打ち下ろしの終端を含む期間での切り返しにおいて、前述の(1)に記載の先行切り返し動作が行なわれる。
【0162】
なお、前述の通り、遅れ切り返しの際に浮上力は減少し、先行切り返しの際に浮上力は増加するため、Y軸方向の並進運動において、前述の(1)および(2)に記載の動作により生じる浮上力同士を相殺することは可能である。すなわち、羽ばたき装置100は、高度を保ったまま、前後方向へ移動することが可能である。
【0163】
<Z軸周り回転制御>
Z軸周りに正方向の回転、すなわち左への旋回を行なうためには、左の羽部110が後退のための羽ばたき方で動作し、右の羽部110が前進のための羽ばたき方で動作すればよい。
【0164】
Z軸周りに負方向の回転、すなわち右への旋回を行なうためには、左の羽部110が前進のための羽ばたき方で動作し、右の羽部110が後退のための羽ばたき方で動作すればよい。
【0165】
いずれの場合においても、上述のように、左および右の羽部110による浮上力同士
は相殺され得るものであるため、高度が維持されたまま、羽ばたき装置100のZ軸周りの回転が行なわれる。
【0166】
<X軸方向の並進制御>
左方への移動を行なうためには、右の羽部110が上昇のための動作をし、左の羽部110が下降のための動作をすればよい。これにより、羽ばたき装置1は、左の羽部110が右の羽部110よりも下側に位置するように姿勢を変更し、それにより、浮上力のベクトルの先端が鉛直上方向きの状態から右側に傾く。これにより、羽ばたき装置100を左方へ移動させる力が生じる。
【0167】
なお、このとき、浮上力の低下が起こることがあり得るため、X軸方向の並進制御とZ軸方向の上方への移動のための制御とを併せて行なうことが望ましい。
【0168】
<制御の変更方法>
以上により、切り返しのタイミングが異なる3種類の羽ばたき方、すなわち、先行切り返し、遅れ切り返し、および中央切り返しを使い分けることで、羽ばたき装置100は空間を自在に移動することができる。
【0169】
なお、切り返しのタイミングが異なる3種類の羽ばたき方は、いずれも、羽部110の前後方向の往復運動の終端の前から後にかけての所定期間内に行なわれる。そのため、羽ばたき運動のストロークの中心の前から後にかけての所定期間、すなわちストローク角α=0°の前から後にかけての所定期間内においては、回転角θ1およびθ2の値は、その速度および加速度を含めて同一である。したがって、上記のように、回転角θ1およびθ2が共通している期間内に羽ばたき方の変更を行なうのであれば、羽部110の動作を何ら補間することなく、機械的に次の羽ばたき方を選択するだけで、羽部110の動作に不連続性を生じさせることなく、ある羽ばたき方から他の羽ばたき方へ円滑に遷移することが可能である。
【0170】
<制御の選択>
上記のように、θ1=0°の位相において羽ばたき方の変更を行なうのであれば、羽ばたき方の状態を示す表現方法として、打ち下ろし、打ち上げ、およびそれぞれの終端での切り返し、という区分を行なうことは適切ではない。打ち下ろし後半および打ち下ろし後の切り返しおよび打ち上げの前半を前方羽ばたき運動とし、打ち上げ後半および打ち上げ後の切り返しおよび打ち下ろしの前半を後方羽ばたき運動として、羽ばたき方を二つに区分することが合理的である。
【0171】
すなわち、左および右の羽部110における前方羽ばたき運動および後方羽ばたき運動において、それぞれ、中央切り返し、先行切り返し、および遅れ切り返しの選択を行なうことによって、最も簡便に、羽ばたき方の制御を行なうことができる。前述の説明に基づいた羽ばたき装置の羽ばたき方に対応した選択肢が、表2に示されている。
【0172】
【表2】

【0173】
<補足事項>
なお、本項目においては、最も簡便に位置制御を実現する手法の一例が記載されているが、本発明の羽ばたき方は本項目の羽ばたき方に限定されるものではない。たとえば、本実施の形態においては、回転角θ1およびθ2の角速度は、切り返しの期間を除いて略一定であるものとされている。つまり、羽部110の往復運動は、図55に示すように、角速度が一定である打ち上げおよび打ち下ろしの運動と、これに連続する、角速度が変化する切り返しの運動、すなわち往復運動の運動方向を反転させるための運動とからなるものである。切り返しの運動の角速度は、打ち上げの運動の角速度および打ち下ろしの運動の角速度のそれぞれに連続するように変化する。この切り返しの運動としては、例えば1変数の三角関数等が挙げられる。しかしながら、回転角θ1およびθ2の角速度を変化させることによって、周囲流体から受ける反作用を変化させて、羽ばたき装置100を移動させる手法が用いられてもよい。
【0174】
また、本項目においては、説明の簡便のため、3種類の羽部110の切り返しのパターンの組み合わせによって、すべての羽ばたき方が表現される手法が用いられているが、この手法は、羽ばたき方の表現の一例であり、本発明の羽ばたき方は、前述の手法によって表現される羽ばたき方に限定されない。
【0175】
たとえば、回転角θ1およびθ2のパターンが多数存在する羽ばたき方の表現手法が用いられてもよい。すなわち、先行切り返しおよび遅れ切り返しのタイミングが複数種類ある羽ばたき方、または、切り返しのタイミングを連続的に自由に変更できる羽ばたき方の表現手法が用いられてもよい。逆に、中央切り返しは、先行切り返しと遅れ切り返しとを交互に繰り返す羽ばたき方の表現手法が用いられてもよい。このような羽ばたき方の表現手法であれば、中央切り返しのパターンのためのデータをメモリに記憶しておく必要が無いため、回転角θ1およびθ2のパターン数を低減させることができる。
【0176】
また、図40〜図42に示される回転角θの時刻歴は、図38および図39に表わされる構成を有する羽ばたき装置100の回転角θの一例である。実際には、羽部110を駆動するメカニズムに応じて、そのメカニズムを制御する各種パラメータが、前述の羽部110の先行切り返しおよび遅れ切り返しを実現するように設定されるのであれば、回転角θの時刻歴は、図40〜図42に示される回転角θの時刻歴に限定されない。
【0177】
(位置検出センサ)
位置検出センサ160は、本体101に固定されている。そのため、位置検出センサ160によって計測された位置および姿勢は、羽ばたき装置100の位置および姿勢そのものとなる。位置検出センサ160は、図48に示すように、計測された位置および姿勢のデータを後述する中央演算装置151に与える。このような機能を実現するためのセンサは、技術の進展により変化するものであり、本発明の本質に関わるものではないため、いかなるものであってもよい。また、前述の姿勢を検出するためのセンサの一例としては、磁気と加速度との組み合せで、0.5°程度の姿勢の変化を検出することができるものが市販されている。また、位置の検出のためには、例えばGPS(Global Positioning System)のようなセンサを用いることができる。
【0178】
(制御回路)
制御回路150は、図48および図49に示すように、中央演算装置151(Central Processing Unit)、中央演算装置151の指令により上および下部超音波モータ120および130を駆動するドライバ152、ならびに、ドライバ152に高電圧を供給する昇圧回路153等を有している。
【0179】
制御回路150は、流体センサ180とは反対側の筐体101の背面に設けられている。この構成により、水蒸気、腐食性ガス、および熱源など、回路の性能に悪影響を及ぼす測定対象が存在する場合であっても、制御回路150が筐体101のその他の部分に設けられている場合に比べて、流体センサ180を測定対象流体に近づけることができる。ただし、制御回路150の性能に悪影響を及ぼす測定対象流体が存在しない合、および、悪影響を及ぼす測定対象流体が存在してもその悪影響が制御回路150の性能に支障をきたす恐れのないような場合には、制御回路150は本体101のいかなる位置に設けられていてもよい。
【0180】
<制御回路の動作>
制御回路150には、オペレータ210が操作するコントローラ200から通信装置170を介して運動指令が与えられる。運転指令は、一時記憶装置(以後、「RAM(Random Access Memory)」と言う)155に格納される。中央演算装置151は、RAM155に記憶された運動指令に基づいて、羽ばたき方のデータを固定記憶装置(以後、「ROM(Read Only Memory)」と言う)154から得る。その後、中央演算装置151は、その羽ばたき方のデータをドライバ152に与える。それにより、羽ばたき装置100は、前述の前後左右上下方向の並進移動または鉛直を回転軸とする回転のいずれかを行なう。
【0181】
<中央演算装置>
中央演算装置151は、前述の運動指令、ROM154およびRAM155の情報を用いて、ドライバ152にPWM(Pulse Width Modulation)信号および回転方向制御信号を出力する。これにより、コントローラ200を介してオペレータ210が与えた運動指令に応じて超音波モータ120おび130が動作する。その結果、運転指令に対応する羽ばたき方が実現される。なお、羽ばたきの往復運動の周期は、反復タイマ156を用いて決定される。
【0182】
<反復タイマ>
中央演算装置151は、図48および図49に示すように、反復タイマ156を内蔵している。反復タイマ156は、羽ばたき運動の位相ψとして、−0.5〜0.5の値を50Hzの繰り返し周期で、中央演算装置151に出力する。ただし、羽ばたき運動の位相ψが、−0.5からカウントアップされ、0.5になると、再度、位相ψの値が−0.5からカウントアップされるものとする。この反復タイマ156の1周期に対応して、羽部110が往復運動の中央位置よりも前方に位置する前方羽ばたき運動、および、羽部110が往復運動の中央位置よりも後方に位置する後方羽ばたき運動のそれぞれが行なわれる。すなわち、反復タイマ156の1周期が羽ばたき運動の周期の2倍に対応する。本実施の形態においては、位相ψが正であれば、羽ばたき装置100は後方羽ばたき運動を行ない、位相ψが負であれば羽ばたき装置100は前方羽ばたき運動を行なうものとする。近年、機器制御に用いられているマイクロコントローラの多くには、本項で説明されている反復タイマとほぼ同様の、オートリロードタイマと呼ばれる機能が含まれており、これを用いることで、最も簡便に本項の反復タイマの機能を実現することができる。
【0183】
<ROMに格納された羽ばたき方のデータ>
ROM154は、羽ばたき方のデータを格納している。羽ばたき方のデータは、ドライバ152へ送信されるPWM制御信号のデューティ比の時刻歴のデータである。なお、超音波モータ120および130には、周波数が250KHzでありデューティ比が50%に固定された駆動電圧が印加される。一方、図50に示すように、ドライバ152へ送信されるPWM制御信号のデューティ比とは、デューティ比が50%に固定された250KHzの駆動電圧のON期間とOFF期間との和に対するON期間の比率である。
【0184】
すなわち、前述の先行切り返し、遅れ切り返し、および中央切り返しの3つのモードに対応する羽ばたき方のデータは、羽ばたき運動の位相ψに対応したドライバ152へ送信されるPWM制御信号のデューティ比として、ROM154に予め格納されている。なお、ドライバ152へ送信されるPWM制御信号のデューティ比は、Duty1(ψ、MODE)およびDuty2(ψ、MODE)で示される。ただし、表2に示すように、−0.5≦ψ<0.5において、MODE=1が先行切り返しであり、MODE=0が中央切り返しであり、MODE=−1が遅れ切り返しであるものとする。
【0185】
図51〜図53には、それぞれ、後方での切り返し動作行なう場合の、中央切り返し、先行切り返し、および遅れ切り返しにおけるDuty1およびDuty2の値が示されている。ただし、Duty1およびDuty2が負の値であれば、羽部110は、往復運動の中央位置を基準にして、後方から前方へ移動する動作が行なわれていることを意味する。なお、本実施の形態においては、各Dutyの関数は、羽ばたき動作が前後方向に対して垂直な面に関して対称であるため、Duty1(−ψ)=−1×Duty1(0.5+ψ)と表現され得る。
【0186】
すなわち、符号変換のみによって、ψが負の領域での各Duty値は、ψが正の領域での各Dutyの関数を用いて算出される。そのため、上記の各Dutyの関数は、ψが正である領域のみ、ROM154に格納されている。これによれば、ROM154に格納されている各Duty関数のデータ量を半分に減らすことができる。よって、本実施の形態においては、各Duty関数のうちψが正の領域のみが示される。
【0187】
なお、右の羽部110と左の羽部110とはZ軸に対して鏡面対称であるため、前述の座標系のX軸の方向の正と負とを反転させた左手系の座標が採用されれば、右の羽部110の制御においても前述と同様のDuty1およびDuty2を用いることができる。
【0188】
<中央演算装置の動作>
中央演算装置151は、位相ψの符号に基づいて、現在の羽ばたき方が前方羽ばたき運動であるか、または、後方羽ばたき運動であるかを判断する。その後、中央演算装置151は、ROM154に格納されている表2に示すデータに基づいて、羽ばたき方の状態を判断するとともに、通信装置170によって得られたRAM155に格納されている運動指令に応じて、前述のMODEの値を判断する。
【0189】
さらに、中央演算装置151は、前述の位相ψの値に基づいて、ROM154に格納されたDuty1およびDuty2の値を得る。この値の絶対値が、ドライバ152へ送信されるPWM制御信号のデューティ比である。また、この値の符号が、ドライバ152へ送信される、上部および下部超音波モータ120および130のそれぞれの回転方向である。前者は、例えばABS(Duty)というコマンドで表現され、後者は、例えばSIGN(Duty)というコマンドで表現される。これらのコマンドは、マイクロコントローラに内蔵されている。これらのコマンドを用いた演算は、一般的なマイクロコントローラにおいて容易に実行されるものである。
【0190】
中央演算装置151は、前述のデューティ比に基づいて、羽ばたき方に対応するPWM制御のためのON/OFF信号をドライバ152に出力するとともに、位相ψの正または負に応じた回転方向制御信号をドライバ152に出力する。
【0191】
本実施の形態では、振動板1211の共振周波数が250kHzであるため、たとえば、共振周波数が2.5kHzであるPWM制御が実行されれば、100段階の超音波モータの制御を行なうことが可能である。
【0192】
<ドライバの動作>
ドライバ152は、中央演算装置151から与えられたPWM制御信号のON/OFFおよび回転方向制御信号に応じて、超音波モータ120を回転/停止、および、正転/反転させる。
【0193】
超音波モータ120は自己位置保持機能を有するため、回転および停止の動作は、PWMのON/OFFに応じて後述の電力供給をON/OFFすることによって、実現される。
【0194】
また、図31および図32に示されるように、超音波振動子121において、裏面電極1217に与えられる電位φAの位相と表面電極1216に与えられる電位φBの位相との差を変更することによって、上部ロータ122の正回転と負回転との間の変更を行なうことができる。
【0195】
ドライバ152は、中央演算装置151からPWM信号を受けて、電位φAおよびφBのデータを作成する回路と、昇圧回路153から供給される高圧電力を制御して、超音波振動子121の表面電極1216および裏面電極1217に電位φAおよびφBを与える回路とからなる。前者は、一般的なタイマ回路やCPU(Central Processing Unit)を
用いて容易に実現され得るものであり、後者は、たとえば、Hブリッジと呼ばれる一般的なCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)回路を用いて容易に実現され
得るものである。本発明者らの実験によれば、これらの回路は、3mm×3mm×0.85mmの小型パッケージに収められ得るものであり、そのパッケージの質量は約25mgである。
【0196】
一般的に、前者のプログラムは以下のように表される。
:Label
if(PWM=ON) then
if(回転方向=正方向) then
φA=1
φB=1
φA=0
φB=0
end if
if(回転方向=逆方向) then
φB=1
φA=1
φB=0
φA=0
end if
end if
goto Label
但し、これらは簡易に前者回路の動作を表現するための一例であり、実際のプログラムにおいては、φAおよびφBのそれぞれが250kHzの矩形波となるようなタイミング調整が行なわれるため、ダミーの実行文の挿入等が必要になる。
【0197】
<昇圧回路>
昇圧回路153は、電源190の電圧(3V)を、超音波モータの駆動のために必要な+30Vの電圧に変更して、+30Vの電圧をドライバ152に印加する。昇圧回路153としては、一般的なDC(Direct Current)−DCコンバータが用いられ、その一例と
して、3mm×3mm×0.85mmという小型パッケージが市販されている。昇圧回路153の質量は約25mgである。
【0198】
<ブロック図>
前述の制御の体系のブロック図が図48に示されている。なお、4つの超音波モータの駆動方法は同一であるため、図48には左の羽部110を駆動する上部超音波モータ120の制御体系のみが示され、他の制御体系は省略されている。また、図49は、後述する図54のフローチャートにおけるデータ処理の流れを説明するための機能ブロック図である。
【0199】
<制御フローチャート>
次に、図54を用いて、羽ばたき装置の制御のためのフローチャートの一例を説明する。なお、このフローチャートは、一例であり、羽ばたき装置100のアプリケーションによって変更され得るものである。
【0200】
なお、以下のフローチャートにおいて、反復タイマ156は前述のオートリロードタイマを用いて恒常的に動作しており、ステップS1においては、ψ=0である状態から処理が開始されるものとする。このとき、α=0°であるものとする。
【0201】
ステップS1<羽ばたき装置動作決定>
コントローラ200から送信されたオペレータ210の運動指令が、通信装置170を介して、RAM155に格納される。
【0202】
ステップS2<羽ばたき状況検出>
中央演算装置151は、反復タイマ156から送信されてきた位相ψの値のデータに基づいて、羽ばたき装置100の現時刻での羽ばたき方の状態を認識する。具体的には、中央演算装置151は、位相ψの値が正であれば、羽ばたき装置100が後方羽ばたき運動を行なっていると判断し、位相ψが負であれば、羽ばたき装置100が前方羽ばたき運動を行なっていると判断する。
【0203】
ステップS3<羽ばたきモード決定>
中央演算装置151は、上記運動指令に応じて表2の行成分を選択し、また、上記羽ばたき方の状態に応じて表2の列成分を選択する。それにより、中央演算装置151は、中央切り返し、先行切り返し、および遅れ切り返しの中からいずれか1の羽ばたきモード、すなわちMODEの値を選択する。選択された羽ばたきモードのデータは、RAM155に格納される。
【0204】
ステップS4<デューティ比決定>
中央演算装置151は、前述の羽ばたきモードのデータに基づいて、ROM154に格納されたDuty1(ψ、MODE)およびDuty2(ψ、MODE)のデータの中からドライバ152へ送信されるPWM制御信号のデューティ比を選択する。
【0205】
ステップS5<ドライバ駆動>
中央演算装置151は、上記PWM制御信号のデューティ比の正または負に応じて、回転方向制御信号をドライバ152に出力するとともに、そのデューティ比のPWM信号をドライバ152に出力する。すなわち、ABS(A)をAの絶対値とし、SIGN(A)をAの符号とすると、回転方向制御信号はSIGN(Duty)であり、デューティ比はABS(Duty)である。なお、ここで、Dutyは、上部および下部超音波モータ120および130に応じた、Duty1(ψ、MODE)およびDuty2(ψ、MODE)を意味する。
【0206】
ステップS6<超音波モータ駆動>
ドライバ152は、上記回転方向制御信号に応じて、振幅が30Vであり、かつ、周波数が250kHzである矩形波の電圧を表面電極1216および裏面電極1217に印加する。これらの2つの矩形波は、±90°位相が異なっている。具体的には、ドライバ152は、超音波振動子121の表面電極1216に矩形波の電位φBを与え、また、超音波振動子121の裏面電極1217に矩形波の電位φAを与える。この矩形波の電位φAの位相と矩形波の電位φBの位相とが±90°ずれている。
【0207】
ステップS7<次回羽ばたきモード選択>
ψ=0またはψ=−0.5の場合には、羽ばたき方の状態が変更されたことを意味するため、再びステップS1の処理が実行され、運動指令の変更も含め、羽ばたきモードが更新される。ψ=0またはψ=−0.5以外の場合には、羽ばたきモードは更新されず、ステップS4の処理が実行され、新たな位相ψが設定される。
【0208】
<補足>
なお、上記指令の形態はあくまで説明のための一例であり、これに限定されない。たとえば、速度指令が電圧値としてアナログ信号で与えられることにより、量子化誤差のない滑らかな速度指令が得られる手法が用いられてもよい。また、超音波モータの駆動に必要な電圧は、技術の進歩によって変化し得るものである。たとえば、現行の主なTTL(Transistor Transistor Logic)−IC(Integration Circuit)やCPU(Central Processing Unit)の駆動電圧である3V以下で駆動し得る超音波モータが実現されれば、昇圧回路153は不要となる。
【0209】
また、本実施の形態では、説明の簡便のため、フィードバック制御を行なわず、単にコントローラ200の指令によって羽ばたき方が一義的に選択される手法の説明がなされたが、羽ばたき装置100の制御手法は、前述の手法に限定されない。
【0210】
たとえば、中央演算装置151が位置検出センサ160から位置および姿勢の情報を得て、その情報に基づいて運動指令を新たに作成するフィードバック制御が用いられてもよい。
【0211】
さらに、本実施の形態では、説明の簡便のため、デューティ比に応じて超音波モータ120および130の回転速度が一義的に決定されるという仮定の下に説明がなされている
が、負荷の変動などによってはこの仮定が成り立たない場合も考えられる。この場合には、上部磁気エンコーダ126の信号によって得られる上および下部超音波モータ120および130の回転角θ1およびθ2の値を参照して、デューティ比が調整されてもよい。
【0212】
なお、前述の羽ばたき装置の制御においては、理想的には、高い機動力を得るための羽ばたき運動の制御に必要な演算時間が短いことが望ましい。また、羽ばたき装置は軽量であることが望ましい。このため、前述の羽ばたき運動を制御するアルゴリズムも極力単純であることが望ましい。これらのことを考慮すると、高い機動力を有する羽ばたき装置に求められる要件は、単独性、連続性、選択性、独立性、および単純性である。
【0213】
単独性とは、流体力発生機構が設置されている胴体の姿勢に関わらず、当該流体力発生機構が単独で流体力の方向を変更することができることを意味する。単独性の欠如している羽ばたき装置の例として、ロータが胴体に固定されているヘリコプタが挙げられる。
【0214】
連続性とは、羽ばたき運動の変更が、胴体に大きな加速度を生じさせずに、連続的に行なわれることを意味する。
【0215】
選択性とは、羽ばたき運動の変更が、過去の羽ばたき運動の履歴に関わらず、独立して行なわれることを意味する。選択性が欠如している羽ばたき装置の例として、先述のRon FearingらによるMFI(Micromechanical Flying Insect)が挙げられる。これは共振によって羽部を駆動しているため、羽ばたき方を複数周期に渡って徐々に変更することしかできない。
【0216】
独立性とは、流体力発生機構が生み出す流体力が、羽ばたき運動の変更の履歴に影響されないことを意味する。独立性が欠如する具体的な場面として、以前の羽ばたき運動により生じた気流の影響を受ける現象などが挙げられる。
【0217】
単純性とは、羽ばたき運動の変更を実現するためのアルゴリズムが極力単純であることを意味する。
【0218】
(高機動力要件の検討)
<<単独性>>
本実施の形態における羽ばたき装置100の制御は、表2に示されるように、全て、羽ばたき運動の両端における羽部の捻り動作のタイミングの選択によって行なわれる。これは、胴体の姿勢に拘束されないため、単独性が確保される。
【0219】
より具体的には、図43〜図45に示される先行切り返しおよび遅れ切り返しのうちの一方の羽ばたき方が選択されると、羽部110の加速度の水平方向成分を独立して制御することが可能で、羽ばたき運動の1周期における羽部110の加速度の水平方向成分の方向を前方および後方のいずれかに向けることができる。したがって、羽ばたき装置は、本体部(胴体)101の姿勢を変化させることなく、羽部110の動作のみの変更によって、流体力の方向を変更することが可能である。
【0220】
<<連続性>>
前述の羽部110の捻り、すなわち切り返しの動作は、羽ばたき運動における羽部110の往復運動の始点または終点を含む特定期間においてのみ異なり、いずれの羽ばたき方においても、羽ばたき運動の往復運動の中心位置を含む所定期間においては、羽部110の運動は同一である。つまり、複数種類の羽ばたき運動は、往復運動の中心位置を含むタイミングにおいて、共通の動作をする。このため、羽ばたき運動中に羽ばたき方の変更がなされても、その羽ばたき方の変更が共通の動作をするタイミングにおいてなされるのであれば、1の羽ばたき方から他の羽ばたき方への変化における羽部110の挙動は、連続的なものである。つまり、羽ばたき方の変更はスムーズに行なわれる。
【0221】
より具体的には、本実施の形態の羽ばたき装置は、制御回路150のROM154が、羽部110に羽ばたき運動をさせるための複数種類のデータ(表2参照)を有し、複数種類のデータに基づいてアクチュエータ(上部および下部ロータ120および130)を制御する。複数種類のデータのそれぞれは、羽部110の往復運動の1周期の動作を特定可能であり、複数種類のデータは、往復運動の1周期の所定期間において、羽部110に共通の羽ばたき運動をさせるものである。具体的には、複数種類のデータは、先行切り返しのためのデータ、中央切り返しのためのデータ、および遅れ切り返しのためのデータからなる3種類のデータであり、図44および図45ならびに表2によって表わされている羽ばたき方(停空、上昇、下降、前進、後退、右移動、左移動、右旋回、および左旋回)をさせるためのデータである。制御回路150は、羽部110の往復運動の中心位置を含む所定期間において、アクチュエータ(ロータ120,130)が複数種類のデータのうちの1のデータによって特定される羽ばたき運動を羽部110にさせる制御からアクチュエータが複数種類のデータのうちの他のデータによって特定される羽ばたき運動を羽部110にさせる制御へ切り換える。
【0222】
上記の構成によれば、羽部の運動に不連続な変化が生じることなく、羽ばたき運動の態様を変更することができる。そのため、羽ばたき運動の「連続性」が実現される。
【0223】
また、羽部は、1のデータによって特定される羽ばたき運動においては、往復運動の一周期のうちの2つの特定期間のそれぞれにおいて行なわれる他のデータによって特定される羽ばたき運動とは異なる軌跡を描くことが望ましい。これによれば、羽部110は、往復運動の1周期の間に最大で4種類の状態に順次変化する。そのため、羽ばたき運動のバリエーションが豊富になる。
【0224】
<<独立性>>
また、2つの特定期間は、互いに1/2周期ずれていてもよい。これによれば、1の特定期間と他の特定期間とが時間的に最も大きくずれて繰り返される。そのため、一方の特定期間における羽ばたき運動に起因して生じる気流が、他の特定期間における羽ばたき運動に起因して生じる気流に及ぼす影響が最も小さくなる。そのため、羽ばたき運動の変更における「独立性」が確保される。
【0225】
また、2つの特定期間の一方および他方は、それぞれ、羽部110の往復運動の一方端に位置するタイミングおよび羽部110の往復運動の他方端に位置するタイミングを含むことが望ましい。つまり、羽部110の切り返しは、前後方向の往復運動の端部を含む期間において行なわれることが望ましい。これによれば、1の特定期間における羽部110の位置と他の特定期間における羽部110の位置とが最も離れている。そのため、一方の特定期間における羽ばたき運動に起因して生じる気流が、他方の特定期間における羽ばたき運動に起因して生じる気流に及ぼす影響が最も小さくなる。そのため、羽ばたき運動の変更における「独立性」が確保される。
【0226】
すなわち、本実施の形態の羽ばたき装置においては、羽ばたき運動の両端のそれぞれを含む特定期間においてのみ羽部110の動作が異なる複数種類の羽ばたき運動が行なわれる。そのため、以前の羽ばたき運動によって生じた流体の挙動が現在の羽ばたき運動に与える影響は極力低減されている。これにより、独立性が実現されている。
【0227】
<<単純性>>
また、2つの特定期間の一方の期間における羽ばたき運動により生じる流体力のうちの一の方向成分と、2つの特定期間の他方の期間における羽ばたき運動により生じる流体力のうちの一の方向成分とが、相殺される。これによれば、羽ばたき運動の変更に起因する羽ばたき装置の姿勢の変化の態様が単純になる。そのため、羽ばたき装置を所望の姿勢にするための制御が容易になる。したがって、羽ばたき運動の変更における「単純性」が確保される。
【0228】
より具体的には、本実施の形態の羽ばたき装置においては、表2に示されるように、羽ばたき装置の浮上移動の態様(停空、上昇、下降、前進、後退、左移動、右移動、左旋回、右旋回)と、浮上移動の態様を実現するための羽ばたき方(先行切り返し、中央切り返し、および遅れ切り返しの組み合わせ)とが一対一に対応している。そのため、羽ばたき方に対応する上部および下部超音波モータ120および130のそれぞれの駆動デューティ比のデータが変更されるだけの極めて単純なアルゴリズムによって、浮上移動態様の変更を実現することができる。したがって、本実施の形態の羽ばたき装置においては単純性が実現されている。
【0229】
更に、複数のデータのうちのホバリングのためのデータによって特定される羽ばたき運動は、羽部110に上下方向および左右方向を含む平面に対して鏡面対称な前後方向の往復運動をさせるものであり、制御回路150は、前後方向の往復運動の中心位置から前後方向の往復運動の一方端まで羽部110を移動させるための基本データ(図51、図52、および図53)と、前後方向の往復運動の中心位置から前後方向の往復運動の他方端まで羽部110を移動させるように、基本データを変換するためのアルゴリズムまたは演算機能部、即ち(Duty1(−ψ)=−1×Duty1(0.5+ψ))とを含んでいることが望ましい。これによれば、制御回路150は、羽ばたき運動の1周期の1/2の期間のみのためのデータを有しているだけで、所望の羽ばたき運動を羽部110にさせることができる。そのため、制御回路150のデータの記憶のためのメモリ容量を低減することができる。その結果、羽ばたき装置を小型化かつ軽量化することができる。
【0230】
図54のステップS11<初期動作>
まず、オペレータ210が、外部コントローラ200を操作して、羽ばたき動作を行なうための制御信号を羽ばたき装置100に送信する。それにより、羽ばたき装置100は、浮上のための羽ばたき動作を開始する。次に、オペレータ210は、水平方向に移動する羽ばたき動作を行なうための制御信号を羽ばたき装置100へ送信する。それによって、羽ばたき装置100が測定対象流体(たとえば、配管から噴出している有毒ガス等)の位置に接近する。なお、羽ばたき装置100は、距離検出センサ161によって、前方に存在する測定対象流体の位置と自身との間の距離を常にモニタリングしている。したがって、羽ばたき装置100は、前方に存在する障害物または測定対象流体の位置と羽ばたき装置100との間の距離が、所定の閾値以下になった場合に、外部コントローラ200から送信された前方に進行するという制御信号には従うことなく、その場でホバリング動作を行なう。また、本実施の形態においては、羽ばたき装置100と配管などから噴出される測定対象流体との間の距離が、所定の距離より小さくなった場合には、オペレータによって外部のコントローラ200から羽ばたき装置100へ、自動接近制御のための指令が送信される。測定流体の位置への接近経路は、上述の流速分布マップを用いて決定される。このとき、制御回路150は、左の羽部110の前後方向の回動の中心位置と右の羽部110の前後方向の回動の中心位置とを結ぶ線分を垂直に二等分する平面に沿って移動するための制御を実行する。ただし、羽ばたき装置100のはばたき動作の開始および障害物および測定対象物へ接近するための羽ばたき動作として、前述以外の手法が用いられてもよい。
【0231】
(通信装置)
通信装置170は、外部のコントローラ200から、羽ばたき装置100に必要とされる加速度の情報を受信し、その情報を制御回路150の中央演算装置151に与える。
【0232】
(電源)
本発明の駆動エネルギー源としての電源190は、必要とされる電力を供給できる放電特性を有し、かつ、浮上を妨げない質量を有するものであれば、いかなるものであってもよい。
【0233】
本発明者らが用いた電源190は、質量0.7gのリチウムイオン電池で、本発明者らの計算によれば、約50秒にわたり0.6Wを供給することができる。電源190は、本体101の下部に設けられている。そのため、電源190は、羽部110が受ける流体反力の作用点であるベアリング123より下側に位置し、羽ばたき装置100の姿勢を自律的に安定させている。
【0234】
この他の電源としては、燃料電池、電気二重層コンデンサなどのキャパシタ、太陽電池、および有線による供給、等が挙げられる。また、これらの電源が併用されてもよい。たとえば、リチウムイオン電池の他に、羽部110の表面に太陽電池が設けられ、これらの電力が併せて用いられてもよい。
【0235】
(本体)
本体101は、底部プレート102、上部プレート103、底部プレート102と上部プレート103とを連結するフレーム部104、および、底部プレート102に設けられた脚105からなる。
【0236】
底部プレート102および上部プレート103は、厚さ0.2mmのCFRPからなり、フレーム部104は厚さ35μmのステンレスからなる。脚105は、肉厚40μm、長さ10mm、かつ直径0.5mmのCFRPの中空パイプからなる。
【0237】
また、上部プレート103および底部プレート102は、ロータシャフト124、支持シャフト127、および本体補強ポール112によっても連結されている。
【0238】
(浮上の可否)
<質量>
本発明者らの計算によれば、羽部1枚が生み出す浮上力は1.21gfである。よって、羽部2枚が生み出す浮上力は2.42gfである。また、各構成要素の質量が表3に示されている。表3に示されるように、羽ばたき装置100の総質量は2.17gfであり、この値は、前述の浮上力2.42gfよりも小さいため、羽ばたき装置100は、浮上することができる。
【0239】
【表3】

【0240】
<消費電力>
本発明者らの計算によれば、羽ばたき装置100の羽部が1.2gfの浮上力を生ずるに要求される機械的パワーは上および下部超音波モータ120および130共に最大40mWである。各超音波モータのエネルギー変換効率は33%である。したがって、浮上のために要求される最大電力は超音波モータ1つにつき約120mWであり、それらの電力の合計は480mWである。ドライバ152および昇圧回路153の総合効率は約85%であるため、4つの超音波モータの駆動のために必要な電力は最大565mWである。
【0241】
中央演算装置151の消費電力は5mWである。磁気エンコーダ126の消費電力は5mWである。位置検出センサ160の消費電力は5mWである。流体センサ180の消費電力は15mWである。通信装置170の消費電力は5mWである。
【0242】
これらの電力の総計は、最大600mWであり、電源190の能力の範囲内の値である。したがって、羽ばたき装置100は、内蔵された電源190から供給された電力のみを用いて浮上することができる。したがって、羽ばたき装置100は、外部から電力の供給を受けることなく、独立して羽ばたき飛行することができるスタンドアロンタイプのロボットになり得るものである。
【0243】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0244】
【図1】実施の形態1の羽部の平面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図1のIII−III線断面図である。
【図4】実施の形態2の羽部の平面図である。
【図5】図4のV−V線断面図である。
【図6】図4のVI−VI線断面図である。
【図7】実施の形態3の羽部の平面図である。
【図8】図4のVIII−VIII線断面図である。
【図9】Michelsonが発明した第一の従来の羽部を示す図である。
【図10】Michelsonが発明した第一の従来の羽部を示す図である。
【図11】Michelsonが発明した第二の従来の羽部を示す図である。
【図12】本発明者が発明した従来の羽ばたき装置を示す図である。
【図13】本発明者が発明した従来の羽部を示す図である。
【図14】本発明者が発明した従来の羽ばたき装置の羽部の駆動態様を示す図である。
【図15】Fearingらが発明した従来の羽部を示す図である。
【図16】本発明者らが発明した従来の羽部を示す図である。
【図17】望ましい羽部のねじれ変形によって達成される迎え角を説明するための図である。
【図18】従来技術における羽部のねじれ変形によって達成される迎え角を説明するための図である。
【図19】羽部の溝構造の側面部に結合された枝部の移動によって溝構造部が変形することを説明するための図である。
【図20】実施の形態の羽ばたき装置の全体構成の概略図である。
【図21】実施の形態の羽ばたき装置の詳細構造の概略図である。
【図22】実施の形態の羽ばたき装置の羽部の概略平面図である。
【図23】実施の形態の羽ばたき装置の羽部の概略側面図である。
【図24】実施の形態の羽ばたき装置の羽部の第一の層を示す図である。
【図25】実施の形態の羽ばたき装置の羽部の第二の層を示す図である。
【図26】実施の形態の羽ばたき装置の羽部の第三の層を示す図である。
【図27】実施の形態の羽ばたき装置に用いられるアクチュエータの外観図である。
【図28】実施の形態の羽ばたき装置に用いられる超音波モータの概略図である。
【図29】実施の形態の羽ばたき装置に用いられる超音波モータの第一の振動モードを示す図である。
【図30】実施の形態の羽ばたき装置に用いられる超音波モータの第二の振動モードを示す図である。
【図31】実施の形態の羽ばたき装置に用いられる超音波モータの動作を表わす説明図である。
【図32】実施の形態の羽ばたき装置に用いられる超音波モータの動作を表わす説明図である。
【図33】実施の形態の羽ばたき装置に用いられる超音波モータの予圧機構の概略図である。
【図34】実施の形態の羽ばたき装置に用いられる羽駆動メカニズムの概略図である。
【図35】実施の形態の羽ばたき装置に用いられる羽駆動メカニズムの第一の構成部品を示す図である。
【図36】実施の形態の羽ばたき装置に用いられる羽駆動メカニズムの第二の構成部品を示す図である。
【図37】実施の形態の羽ばたき装置に用いられる羽駆動メカニズムの第三の構成部品を示す図である。
【図38】実施の形態の羽ばたき装置に用いられる羽駆動メカニズムのサイズの定義を示す図である。
【図39】実施の形態の羽ばたき装置に用いられる羽駆動メカニズムの駆動原理を説明するための図である。
【図40】実施の形態の羽ばたき装置のホバリング時の羽ばたき方を説明するための図である。
【図41】実施の形態の羽ばたき装置の上昇時の羽ばたき方を表わす説明図である。
【図42】実施の形態の羽ばたき装置の下降時の羽ばたき方を表わす説明図である。
【図43】実施の形態の羽ばたき装置の上昇・下降時の羽ばたき方により生じる水平方向の力を表す説明図である。
【図44】実施の形態の羽ばたき装置の前進方法を表す説明図である。
【図45】実施の形態の羽ばたき装置の後退方法を表す説明図である。
【図46】実施の形態の羽ばたき装置の前進時の羽ばたき方を表わす説明図である。
【図47】実施の形態の羽ばたき装置の後退時の羽ばたき方を表わす説明図である。
【図48】実施の形態の羽ばたき装置における制御システムのハードウエアブロック図である。
【図49】実施の形態の羽ばたき装置における制御システムの機能ブロック図である。
【図50】実施の形態の羽ばたき装置のPWM制御信号のデューティ比を説明するための図である。
【図51】実施の形態の羽ばたき装置の中央切り返しの制御のためのデューティ比を示すグラフである。
【図52】実施の形態の羽ばたき装置の先行切り返しの制御のためのデューティ比を示すグラフである。
【図53】実施の形態の羽ばたき装置の遅れ切り返しの制御のためのデューティ比を示すグラフである。
【図54】実施の形態の羽ばたき装置の制御の流れを示すフローチャートである。
【図55】一般的なホバリングの羽ばたき方を説明するための図である。
【符号の説明】
【0245】
1100,2110,3110 羽部、1110,2110,3110 前縁部、1120,2120,3120 枝部、1140,2150,3150 板状部または膜部、1145 後縁部、2140,3140 外枠部、3160 内枠部、3170 内膜部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
前縁部を有する羽部と、
前記羽部の根元部を駆動するように前記本体内に搭載され、前記羽部を前後方向に羽ばたき往復運動させるとともに、前記羽ばたき往復運動における運動方向の反転の前から後の所定期間において、前記前縁部が延びる方向を回転軸として前記羽部を捻るアクチュエータとを備え、
前記羽部は、
その一端が前記根元部に接続され、長手方向に沿って延びる第一の稜線部または谷線部を有し、
その一端が前記根元部に接続され、前記根元部から所定の距離だけ離れた所定の位置から先端部側においては、前記第一の稜線部または谷線部から徐々に離れるように延びる第二の稜線部または谷線部と、
前記第一の稜線部または谷線部と前記第二の稜線部または谷線部との間に張られた板状部または膜部とを含む、羽ばたき装置。
【請求項2】
前記第一の稜線部または谷線部は、前記前縁部を構成し、
前記第二の稜線部または谷線部は、前記根元部から前記所定の位置まで、前記第一の稜線部または谷線部にほぼ平行に延び、かつ、前記所定の位置から先端側においては、前記第一の稜線部または谷線部となす角度が前記アクチュエータから離れるに従って増加するとともに、その先端部が前記羽部の後縁部まで到る、請求項1に記載の羽ばたき装置。
【請求項3】
前記第二の稜線部または谷線部の先端部は、前記根元部から羽長の2/3〜3/4の範囲内の距離だけ離れた位置で前記羽部の後縁部に到る、請求項1に記載の羽ばたき装置。
【請求項4】
前記第一の稜線部または谷線部の先端部と前記第二の稜線部または谷線部の先端部とを接続する外枠部をさらに備え、
前記板状部または膜部が、前記第一の稜線部または谷線部、前記第二の稜線部または谷線部、および前記外枠部によって取り囲まれた領域に張られた、請求項1に記載の羽ばたき装置。
【請求項5】
前記外枠部と前記第一の稜線部または谷線部とが連続した1つの曲線形状を構成するように、前記外枠部の一方の端部が、前記第一の稜線部または谷線部の先端部に接続されている、請求項4に記載の羽ばたき装置。
【請求項6】
前記第二の稜線部または谷線部の先端と前記根元部とを接続する内枠部と、
前記内枠部と前記第二の稜線部または谷線部との間の領域に張られた板状部または膜部とを備えた、請求項1に記載の羽ばたき装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【公開番号】特開2009−6762(P2009−6762A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−167939(P2007−167939)
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】