説明

耐久性人工芝用基布及び人工芝生

【課題】軽量で、柔軟性、耐水性に優れ、また、長期に亘ってパイル糸を堅固に保持し、パイル糸の抜け出し、へたりがなく、長期に使用することが可能な、耐久性に優れ、かつ、生産性よく製造可能な人工芝生、及び、耐久性に優れた人工芝生を得ることのできる基布の提供
【解決手段】熱可塑性樹脂を一軸延伸して得られたパイル用線条体をタフティングする基布において、熱可塑性樹脂からなり一軸延伸された多数の小径線条体が、小径線条体の厚さ方向の最大幅cに対して、厚さaが0.05〜0.7、幅bが0.05〜1.0の割合の連結膜を介して互いに結合した連結糸からなる基布用線条体を織成してなるタフティング用基布及びそれを用いた人工芝生。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量で、柔軟性、耐水性に優れ、また、パイル糸の抜け出し、へたりが少なく長期に使用することが可能な、耐久性に優れた人工芝生、及び、かかる人工芝生を得ることの可能なタフティング用基布に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、サッカー場、野球場、テニス場、その他競技場においては、熱可塑性樹脂製の人工芝生が広く用いられている。これら、熱可塑性樹脂製の人工芝生は、テープ状の熱可塑性樹脂を一軸延伸したフラットヤーン等を織成した基布に、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド等を延伸したパイル糸をタフティングすることによって形成されている。
【0003】
これら、熱可塑性樹脂製の人工芝生は、腐食せず、管理が容易なことから、今後、ますます普及するものと予測されている。
【0004】
しかし、熱可塑性樹脂製の人工芝生をサッカー場等の競技場に使用すると、芝生の上で激しい運動が行なわれるために、芝を形成するパイル糸が抜けていたみが速く、また、パイルが型崩れして老朽化も速く、期待される期間より速く張替えが必要となり、その都度、莫大な費用を必要とした。
【0005】
本発明者等が、その上で激しい運動が行なわれる場合にも、パイル糸が抜けることがなく、長期に使用可能な耐久性の高い人工芝生を得るために、詳細に検討をした結果、パイル糸の耐久性の他、一次裏地として使用される基布の堅牢さが重要であることを見出した。
【0006】
すなわち、人工芝生に耐久性を付与し、長期に使用可能とするためには、激しい運動が行なわれ、強力な力が作用した場合にも、組織が崩れることなく、パイル糸を堅固に保持し得る強靭な基布を使用することが重要であることが見出された。
【0007】
従来、フラットヤーン、あるいは、フラットヤーンに縦方向の切れ目を多数入れたスプリットヤーンを用いて織布を形成して基布とし、これを用いて人工芝生が製造されているが、従来のフラットヤーン等による織布では、人工芝生のように太いパイル糸をタフティングすると、タフティング針によって線条体に破断が生じて強度が低下する問題があり、また、フィルム状の一軸延伸ヤーンに細い筋状のリブを形成した筋入りフラットヤーンを使用した場合においても、フィルム状のヤーンを基体とする限り、ヤーンの破断、強度低下は避けることができず、このため、その上で激しい運動が行なわれると、織布の織目にゆるみが生じてパイル糸を保持し得なくなって、パイル糸が抜け出したり、パイル糸が倒れ、いわゆるへたりが生じ、長期の使用に耐えないことが判明した。
【0008】
また、目ずれが生じることなく、パイル糸を堅固に保持させるためには、太い線条体を用いて基布を織成することが考えられるが、線条体を太くすると、線条体の剛性が高くなるため、パイル糸をタフティングした場合の開裂が大きく、結果、強度低下が大きく、期待する程、強靭な一次基布を得ることはできないことも判明した。
【0009】
このため、本発明者等は、図6に示すように、適当な太さの線条体5、5を複数本並列し、隣接する線条体間を連結した連結糸3を基布として用いることを提案した(先願明細書1)。これによって、パイルが線条体5以下の太さに細く分裂することが防止され、タフティングによる強度低下が少なくなり、また、生産性を大きく向上することに成功した。
【0010】
しかし、かかる方法においても線状体間が直接融着されているため、パイル糸が剛直になり易く、製織工程の生産性が低下し易いことが判明した。
【特許文献1】特開平7−158007号公報
【先願明細書1】
【0011】
特願2003−185683号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、軽量で、柔軟性、耐水性に優れ、また、長期に亘ってパイル糸を堅固に保持し、パイル糸の抜け出し、へたりがなく、長期に使用することが可能な、耐久性に優れた人工芝生、及び、かかる人工芝生を得ることのできる基布を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果なされたもので、具体的には、熱可塑性樹脂を一軸延伸して得られたパイル用線条体をタフティングする基布において、熱可塑性樹脂からなり一軸延伸された多数の小径線条体が、小径線条体の厚さ方向の最大幅cに対して、厚さaが0.05〜0.7、幅bが0.05〜1.0の割合の連結膜を介して互いに結合した連結糸からなる基布用線条体を織成してなることを特徴とするタフティング用基布を提供するものである。
【0014】
また、本発明は、基布用線条体が、小径線条体が5本以上並列し、厚さ方向最大幅が0.1〜1.0mm、横方向最大幅が1.0〜10mmとされてなる上記のタフティング用基布、及び、少なくとも小径線条体が、基層と、基層より融点の低い熱可塑性樹脂からなり基層を被覆する接合層とによって形成され、織成された後、経緯の基布用線条体間が熱接合されてなる上記のタフティング用基布を提供するものである。
【0015】
さらに、本発明は、上記のいずれかに記載のタフティング用基布に熱可塑性樹脂を一軸延伸して得られたパイル用線条体をタフティングしてなることを特徴とする耐久性人工芝生、基布用線条体とパイル用線条体が、オレフィン系重合体からなる上記の耐久性人工芝生、基布に融点の低いオレフィン系重合体からなるフィルムを積層し、得られた積層シートにパイル用線条体をタフティングした後、熱処理してなる上記の耐久性人工芝生、及び、基布にパイル用線条体をタフティングした後、融点の低いオレフィン系重合体からなるフィルムを熱接着してなる上記の耐久性人工芝生を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、軽量で、柔軟性、耐水性に優れ、また、長期に亘ってパイル糸を堅固に保持し、パイル糸の抜け出し、へたりがなく、耐久性に優れ、かつ、生産性に優れた人工芝生、及び、耐久性に優れた人工芝生その他のパイル織物を得ることのできる基布を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明のタフティング用基布1は、図1に示すように、熱可塑性樹脂を一軸延伸した基布用線条体3を織成して構成され、得られたタフティング用基布1は、図2に示すように、熱可塑性樹脂のパイル用線条体4がタフティングされて人工芝生2等のパイル織物とされる。
【0018】
本発明は、基布用線条体3として、図3(A)〜(C)に示すように、径の細い小径線条体5が多数並列され、その側部が連結膜6を介して隣接する小径線条体5に結合された連結糸を用いるところに特徴を有する。
【0019】
基布用線条体3は、図3(A)に示すように、単層の連結糸とすることができ、また、目的に応じて、図3(B)に示すように、基層10を接合層11で被覆した複合線条体としてこれを連結することによって形成することもできる。さらに、図3(C)に示すように、基層10を連結した状態に形成し、その片面又は両面に接合層11を積層することによって基層10を被覆することもできる。
【0020】
基布用線条体3の単層体、又は、複合線条体の基層10を構成する熱可塑性樹脂としては、延伸効果の大きい樹脂、一般には結晶性樹脂が使用され、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、変性ポリエステル、ナイロン6、ナイロン66のポリアミド等が用いられる。中でも加工性と経済性からポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系重合体が望ましく、特に接着性と透明性の観点からメタロセン系触媒を用いて重合したポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましい。
【0021】
接合層11は、織成された後、基布用線条体3間を接合し、あるいは、基布用線条体3とパイル用線条体4を接合するもので、基層10を構成する熱可塑性樹脂より融点が低く熱融着性の優れた熱可塑性樹脂が用いられる。具体的には、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体等のオレフィン系重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、変性ポリエステル、ナイロン6、ナイロン66のポリアミド等を用いることができ、基層10の熱可塑性樹脂との関係で基層10より融点が低い熱可塑性樹脂、好ましくは10℃以上、さらに好ましくは15℃以上低融点の熱可塑性樹脂が選択される。
【0022】
中でも加工性と経済性から高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体等のオレフィン系重合体が望ましく、特に接合力を高める観点からメタロセン系触媒を用いて重合したエチレン系重合体、プロピレン系重合体、エチレン・プロピレン共重合体、あるいは、エチレン・ブテン共重合体等のエチレン・α−オレフィン共重合体が好ましい。
【0023】
本発明基布用線条体3は、複数の小径線条体5からなる連結糸とすることによって、パイル糸をタフティングする際、タフティング針が突き刺さると小径線条体5間が開裂してパイル糸を通すことができ、また、開裂された基布用線条体3は、双方共に小径線条体5からなるから、所定の強度を有し切断することがない。したがって、強度が低下することなく、パイルを堅固に保持し得る人工芝用基布1を得ることができる。また、織成工程においても、糸送り機構に対する接触が、小径線条体5によって線接触となるため、糸送り機構との摩擦抵抗が少なくなり、糸送りがスムーズとなって強度低下を防止することができると共に、生産性をあげることができる。
【0024】
これら基層10、接合層11を構成する熱可塑性樹脂には、目的に応じて、無機充填材を添加することができる。無機充填材の種類としては、熱可塑性樹脂添加材として自体公知の無機充填材を使用することができ、例えば、タルク、クレー、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ウオラストナイト、ゼオライト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪酸カルシウム等を使用することができる。無機充填材の配合量は、1〜40重量%、好ましくは3〜30重量%である。
【0025】
また、熱可塑性樹脂には、目的に応じて各種の添加剤を添加することができ、具体的には、フェノール系、有機ホスファイト系、ホスナイトなどの有機リン系、チオエーテル系等の酸化防止剤;ヒンダードアミン系等の光安定剤;ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系等の紫外線吸収剤;ノニオン系、カチオン系、アニオン系等の帯電防止剤;ビスアミド系、ワックス系、有機金属塩系等の分散剤;アルカリ土類金属塩のカルボン酸塩系等の塩素補足剤;アミド系、ワックス系、有機金属塩系、エステル系等の滑剤;ヒドラジン系、アミンアシド系等の金属不活性剤;含臭素有機系、リン酸系、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、赤リン等の難燃剤;有機顔料;無機顔料;金属イオン系などの無機、有機抗菌剤等が挙げられる。
【0026】
これら添加剤は、適宜組み合わされて、基布用線条体3の材料組成物を製造するいずれかの工程で配合される。添加剤の配合は、従来の公知の二軸スクリュー押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ミキシングロール等の混練装置を用いて所定割合に混合して、これを溶融混練して調製してもよいし、高濃度のいわゆるマスターバッチを作製し、これを希釈して使用するようにしてもよい。
【0027】
また、延伸は、熱ロールによる延伸、熱板による延伸、熱風炉による延伸等によって行なうことができる。延伸倍率は通常3〜10倍程度とされる。
【0028】
連結膜6の厚さaは、小径線条体5の厚さ方向の最大幅cの0.05〜0.7、好ましくは0.1〜0.6、さらに好ましくは0.1〜0.5の割合とされる。また、連結膜6の幅bは、小径線条体5の厚さ方向の最大幅cの0.05〜1.0、好ましくは0.1〜0.9、さらに好ましくは0.1〜0.7の割合とされる。小径線条体5間に薄肉の連結膜6が介在することによって、基布用線条体3がしなやかとなって製織時の送り機構に対する追随性が向上し、製織工程の生産性を向上することができる。連結膜6の厚さaが小径線条体5の厚さ方向の最大幅cの0.05を下回るときは、製織工程中に分裂し易くなり強度低下が生じ、また、0.7を越えるときは、基布用線条体3が剛直となる。連結膜6の幅bが0.05未満では基布用線条体3が剛直となり、1.0を超えると線条体5が分裂したとき、連結膜6がヒレ状となって線条体5に残存するため、パイルのタフティング針によってこのヒレ状体が細く裂け、ひげ状となって切断し易くなり、使用中にひげ状の塵埃が発生し易くなる。
【0029】
いずれの場合においても、各小径線条体5の断面形状は特に制限はなく、任意に定め得るが、一般には、円形、楕円形、長円形とされる。
【0030】
基布用線条体3、及び、小径線条体5の太さは目的に応じて任意に定め得るが、一般には、小径線条体5の平均直径が0.05〜2mm、好ましくは0.1〜1.0mmとされ、基布用線条体3の幅は0.3〜20mm、好ましくは1.0〜10mmとされる。
【0031】
こうして得られた基布用線条体3は、図1に示すように、平織とし、あるいは、綾織、斜文織、畦織、二重織、模紗織等の方法で織製することによって、タフティング用基布1とされる。
【0032】
タフティング用基布1にタフティングされるパイル用線条体4は、熱可塑性樹脂によって構成され、熱可塑性樹脂としては、延伸効果の大きい樹脂が使用され、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、変性ポリエステル、ナイロン6、ナイロン66のポリアミド等が用いられる。中でも加工性と経済性からポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系重合体が望ましく、特に接着性と透明性の観点からメタロセン系触媒を用いて重合したポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましい。
【0033】
なお、本発明においてパイル用線条体4は、結晶性のオレフィン系重合体の単層体であってもよいが、結晶性のオレフィン系重合体からなる基層の表面に、接着性の樹脂、あるいは、顔料又は無機フィラーを配合した樹脂からなる表層を積層することができ、例えば、図4(A)に示すように、結晶性の熱可塑性合成樹脂の単層体を用いることができ、また、図4(B)に示すように、結晶性のオレフィン系重合体からなる基層12の片面に顔料又は無機フィラーを配合した表層13が積層された構造とすることができ、さらに、図4(C)に示すように、基層12の両面に表層13が積層されたサンドイッチ構造とすることができる。また、図4(D)に示すように、シースコア構造、図4(E)に示すようにサイドバイサイド構造とすることもできる。中でも、図4(C)に示すように、テープ状基層12の両面に表層13を積層したものが望ましい。表層13は、パイル糸用線条体3に接合性、風合いを与えることができる。
【0034】
表層13は、基層12を構成する熱可塑性樹脂より融点が低く熱融着性の優れた熱可塑性樹脂が用いられる。具体的には、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体等のオレフィン系重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、変性ポリエステル、ナイロン6、ナイロン66のポリアミド等を用いることができ、基層12の熱可塑性樹脂との関係で基層12より融点が低い熱可塑性樹脂、好ましくは10℃以上、さらに好ましくは15℃以上低融点の熱可塑性樹脂が選択される。
【0035】
中でも加工性と経済性から高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体等のオレフィン系重合体が望ましく、特に基布との接合力を高める観点からメタロセン系触媒を用いて重合したエチレン系重合体、プロピレン系重合体、エチレン・プロピレン共重合体、あるいは、エチレン・ブテン共重合体等のエチレン・α−オレフィン共重合体が好ましい。
【0036】
これらパイル糸用線条体4を構成する熱可塑性樹脂には、目的に応じて各種の添加剤を添加することができる。具体的には、フェノール系、有機ホスファイト系、ホスナイトなどの有機リン系、チオエーテル系等の酸化防止剤;ヒンダードアミン系等の光安定剤;ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系等の紫外線吸収剤;ノニオン系、カチオン系、アニオン系等の帯電防止剤;ビスアミド系、ワックス系、有機金属塩系等の分散剤;アルカリ土類金属塩のカルボン酸塩系等の塩素補足剤;アミド系、ワックス系、有機金属塩系、エステル系等の滑剤;ヒドラジン系、アミンアシド系等の金属不活性剤;含臭素有機系、リン酸系、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、赤リン等の難燃剤;有機顔料;無機顔料;無機充填剤、有機充填剤;金属イオン系などの無機、有機抗菌剤等が挙げられる。
【0037】
これら添加剤は、適宜組み合わせて、基層12や表層13の材料組成物を製造するいずれかの工程で配合される。添加剤の配合は、従来の公知の二軸スクリュー押出機、バンバリー、ミキサー、ニーダー、ミキシングロール等の混練装置を用いて所定割合に混合して、これを溶融混練して調製してもよいし、高濃度のいわゆるマスターバッチを作製し、これを希釈して使用するようにしてもよい。
【0038】
パイル用線条体4として積層体が使用される場合、成形材料となる積層フィルムを成形する手段としては、予め基層12となるフィルムと表層13となるフィルムを形成してドライラミネート法や熱ラミネート法を用いて複層化する手段や、基層12となるフィルムの表面に表層13となる熱可塑性合成樹脂をコーティングする方法、予め形成した基層12となるフィルムに表層13を押出ラミネートする方法、あるいは、多層共押出法によって積層フィルムとして押出成形するなどの公知の手段から適宜選択して用いればよいが、成形の容易さやコスト面、あるいは製品の各層間の接着性の点から、多層共押出法によって基層12と表層13の積層体を一段で得る方法が望ましい。シースコア構造、あるいは、サイドバイサイド構造については共押出法によるのが一般的である。
【0039】
得られたパイル用線条体4は、タフティング用基布1にタフティングされて人工芝生2等とされる。パイル用線条体4のタフティングは、従来公知のタフティングカーペットの製造方法と同様の方法によって行うことができる。
【0040】
なお、本発明においては、タフティング用基布1とパイル用線条体4の結合を強くするために、図2に示すように、タフティング用基布1の裏面に低融点のオレフィン系重合体フィルム7を積層することができる。
【0041】
本発明において融点の高い、低いは、基布用線条体3を構成する熱可塑性樹脂、基布用線条体3が積層体からなるときは基層を構成する熱可塑性樹脂との比較で判断される。
【0042】
オレフィン系重合体フィルム7としては、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレンブロック共重合体等のエチレン系重合体、又は、プロピレン系重合体が用いられる。中でも加工性と経済性からポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系重合体が望ましく、特に接着性の観点からメタロセン系触媒を用いて重合したポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましい。
【0043】
オレフィン系重合体フィルム7の厚さは、任意であり、目的に応じて選定することができるが、一般には、20μm以上、好ましくは50μm以上2mm以下程度とされる。
【0044】
また、図2に示すように、低融点のオレフィン系重合体フィルム8を、パイル用線条体4がタフティングされた人工芝生2等の裏面に積層することもできる。オレフィン系重合体フィルム8を形成するオレフィン系重合体としては、オレフィン系重合体フィルム7と同様の重合体を用いることができる。
【0045】
オレフィン系重合体フィルム8を人工芝生2の裏面に接合するときは、空気圧を用いて押圧する方式とすることが望ましく、図5に示すように、人工芝生2を裏面が上面となるようにして接合装置に供給し、その上にオレフィン系重合体フィルム8を重ねると共に、加熱ヒーター等の輻射熱加熱方式の加熱装置16を用いてオレフィン系重合体フィルム8を加熱することによってオレフィン系重合体フィルム8を溶融し、ついで、エアーナイフ等の熱風噴き出し装置17を用いてオレフィン系重合体製フィルム8を押圧することによって、人工芝生2に接合することができる。
【0046】
空気圧を用いてオレフィン系重合体フィルム8を接合することによって、オレフィン系重合体フィルム8は、人工芝生2裏面の凹凸に沿って賦形されて、人工芝生2の裏面全面にぴったりと添着され、パイル糸を強固に固定することができる。また、パイル用線条体4によって形成された凸部14の間に連続した凹部15が形成され、凹部15は人工芝生2が敷設された際に雨水等を排水する排水路として機能させることができる。なお、必要に応じて、オレフィン系重合体フィルム7、8に所定の間隔をおいて多数の排水孔を設けることによって人工芝生2を敷設した際の上面の排水を図ることも可能である。
【0047】
本発明タフティング用基布1は、小径線条体5が連結した集合糸を用いているから、タフティング針が挿通されたときには、小径線条体5が分裂してパイル糸4を容易に通すことができ、したがって、線条体の破断、強度低下がなく、また、小径線条体5は所定の径を有するから、分裂した際にも、分裂した各フィブリルは所定の強度を維持し、分裂によって細く弱い繊維が生じて切断が生じることもない。
【0048】
したがって、本発明耐久性人工芝用基布1を用いて形成した人工芝生2は、パイル糸の保持力が強く、堅固に保持し、激しい運動が行なわれた際にも、パイル糸の抜け出しのおそれがない。
【0049】
本発明タフティング用基布1を用いて形成した人工芝生2は、野球場、サッカー場、ラグビー場、あるいはこれらの多目的グランド、テニスコート、ゴルフ練習場の芝生として用いることができ、また、歩行路、車、飛行機、ホール等の敷物として用いることができる。なお、本発明人工芝生2は、そのまま敷設して使用することができ、また、図2に示すように、パイル間に砂9等を充填して使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明タフティング用基布の一例を示す(A)は平面図、(B)は縦断面図
【図2】本発明人工芝生の例を示す(A)は正縦断面図、(B)は側縦断面図
【図3】基布用線条体の例を示す縦断面図
【図4】パイル用線条体の例を示す縦断面図
【図5】人工芝生の製造例を示す縦断面図
【図6】従来の基布用線条体の例を示す縦断面図
【符号の説明】
【0051】
1.タフティング用基布
2.人工芝生
3.基布用線条体
4.パイル用線条体
5.小径線条体
7.8.オレフィン系重合体フィルム
10.12.基層
11.接合層
13.表層
16.加熱装置
17.熱風噴き出し装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を一軸延伸して得られたパイル用線条体をタフティングする基布において、熱可塑性樹脂からなり一軸延伸された多数の小径線条体が、小径線条体の厚さ方向の最大幅cに対して、厚さaが0.05〜0.7、幅bが0.05〜1.0の割合の連結膜を介して互いに結合した連結糸からなる基布用線条体を織成してなることを特徴とするタフティング用基布。
【請求項2】
基布用線条体が、小径線条体が5本以上並列し、厚さ方向最大幅が0.1〜1.0mm、横方向最大幅が1.0〜10mmとされてなる請求項1記載のタフティング用基布。
【請求項3】
少なくとも小径線条体が、基層と、基層より融点の低い熱可塑性樹脂からなり基層を被覆する接合層とによって形成され、織成された後、経緯の基布用線条体間が熱接合されてなる請求項1又は2に記載のタフティング用基布。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のタフティング用基布に、熱可塑性樹脂を一軸延伸して得られたパイル用線条体をタフティングしてなることを特徴とする耐久性人工芝生。
【請求項5】
基布用線条体とパイル用線条体が、オレフィン系重合体からなる請求項4に記載の耐久性人工芝生。
【請求項6】
基布に、融点の低いオレフィン系重合体からなるフィルムを積層し、得られた積層シートに、パイル用線条体をタフティングした後、熱処理してなる請求項4又は5に記載の耐久性人工芝生。
【請求項7】
基布に、パイル用線条体をタフティングした後、融点の低いオレフィン系重合体からなるフィルムを熱接着してなる請求項4〜6のいずれかに記載の耐久性人工芝生。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−132026(P2006−132026A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−321215(P2004−321215)
【出願日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(390019264)ダイヤテックス株式会社 (53)
【Fターム(参考)】