説明

耐久性消音構造体の作成方式、それによる耐久性消音構造およびこの種の構造を利用する被覆材

【課題】 本発明の目的は、消音処理のための被覆材を得るために蜂窩状構造体上に取り付けられる、耐久性消音構造体の作成方式であり、
【解決手段】同耐久性消音構造体が、接着によって結合された、少なくとも1つの多孔性層(34)および補強用構造体(36)を含んでおり、
― 少なくとも1つの同補強用構造体(36)上に非晶質型接着剤を付着させ、
― 非晶質型接着剤の付着後、補強用構造体(36)を穿孔または微細穿孔し、
― 非晶質型接着剤で被覆した補強用構造体(36)の表面に、少なくとも1つの同多孔性層を付着させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機のナセル内に配置してあるターボジェットエンジンが発生する騒音の一部を減少させるために、とりわけ同ナセルの表面に取付けることを目的とする、他の層と組み合わせることによる消音処理のための被覆材が得られる耐久性消音構造体の作成方式に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機の推進用集合体は、自己の軸に取り付けてある送風機を駆動する動力部がほぼ同心円的に内部に配置してあるナセルを含む。
【0003】
ナセルは、前方に空気取り入れ口を有するダクトを画定する内壁、燃焼に参加するために動力部を貫通する、一次流束と呼ばれている流入空気束の第1部分、送風機に牽引されて、ナセルの内壁と動力部の外壁で画定されている環状ダクト内を流通する、二次流束と呼ばれている空気束の第2部分を含んでいる。
【0004】
推進用集合体が発生する騒音は、一方では、空気と燃焼したガスの各種気流の混合による、ダクト外で発生するジェット気流の騒音、他方では、送風機、コンプレッサ、タービンおよびダクト内で伝播される、燃焼で発生する、内部騒音と呼ばれている、内方部分で発生する騒音からなる。
【0005】
空港の近隣における騒音による公害の影響を抑制すべく、国際規定は、騒音発生に関して、ますます厳しくなっている。
【0006】
内部騒音を抑制すべく、とりわけヘルムホルツ共鳴の原理を利用することによる音のエネルギーの一部を吸収することを狙いとする被覆を、ダクトのレベルに配置するための技術が発達した。消音パネルとも呼ばれているこの消音被覆材は、既知の方法で、外方から内方に向かって、耐久性消音構造体、蜂窩状構造体および反対層を含んでいる。
【0007】
層とは、同一または同一ではない性質の単一または複数の層を指す。
【0008】
耐久性消音構造体は、同層を貫通する音波を部分的に熱に変換させる、分散的役割を有する多孔性構造体である。同層は、音波を通過させておくことのできる、開放区域と呼ばれている区域と、音波を通過させないが、同層の力学的強さを保証するための閉鎖区域または充実区域と呼ばれている区域を含んでいる。この耐久性消音層は、主としてエンジンに関連して変化する、開放表面の比率をとりわけ特徴とする。
【0009】
通常、耐久性消音構造体は、少なくとも1つの多孔性層および少なくとも1つの補強用構造体を含んでいる。
【0010】
多孔性層は、線形消音処理ができるようにし、音波を蜂窩状構造体で構成されているヘルムホルツ小胞内に捕捉する必要がある。
【0011】
1つの実施態様では、多孔性層は、金属製織布、とりわけ当業者に知られているステンレス製網状体である。
【0012】
この種の織布は、約10分の1ないし10分の2ミリメートルのごく薄い厚さでも、合成材料よりも高い力学的強さという利点を有する。
【0013】
航空力学的気流と直接接触する、表面のレベルに配置されているこの織布が、砂粒や小石のような固体粒子によって損傷を受けるか、たまたま吸い込まれて、速度の関係で損傷を加える可能性のある氷の塊または鳥の影響を受けることがあり得るので、この大きな力学的強さが必要となる。
【0014】
別の利点として、この金属製織布は、落雷に対する優れた良導体である。
【0015】
補強用構造体は、合成または金属製プレートの形状を呈しており、同プレートに多かれ少なかれ大きな孔部が配設されている。1つの実施態様では、補強用構造体は、細長の円形穿孔を有する鉄板の形状を呈する。変形態様では、直径約0.05ないし1.2ミリメートルの微細穿孔を含むことができるだろう。
【0016】
補強用構造体と金属製緩衝用織布が好ましいのは、ナセルの空気取り入れ口の前縁のように強い応力に晒されている区域に取り付けてあるとき、必要な大きな力学的強さが得られるからである。
【0017】
更に、この金属製要素は、ナセルの空気取り入れ口のレベルで必要な霜処理の効果を向上させる、熱の優れた分散を保証する。
【0018】
多孔性層と補強用構造体を結合させるには、接着法が利用され、それによって平滑な表面、したがってより良い航空力学性が得られ、鋲、ネジまたはそれに類似する固定用手段とは逆に、搭載質量を増加させ過ぎないで済む。更に、接着は、異なる材料、異なる厚さの要素を結合させられ、力をより良く分散させられる。
【0019】
1つの実施態様では、300℃ないし400℃の温度に長時間晒されることに耐えられる、ポリエーテルイミド(PEI)系,ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)系,ポリフェニレンスルフォン(PPS)系,ポリアミド(PA)系およびピリエチレンテレフタレート(PET)系のような耐熱性熱塑性樹脂が利用される。
【0020】
本出願者の名義による特許文献1には、耐熱性消音層の作成方式が記載されている。
【0021】
両要素の結合前に、あらかじめ、補強用構造体に穿孔または微細穿孔を行ない、次に清掃し、接着剤が同補強用構造体に正しく付着するように準備する。
【0022】
その次に、準備した補強用構造体と多孔性層との間に、冷たいままでは接着しない接着剤の一定の厚さのフイルムを配置する。フイルムは、補強用構造体の開放区域に合わせて裁断されることが好まれている。同区域に接着して、多孔性層に使用される織布の編み目を、開放区域に直角に閉鎖しないためである。
【0023】
必要に応じて、この諸要素をあらかじめ形成し、または折り畳むことができる。
【0024】
その次に、各種要素は、接着剤を活性化させるために加熱し、加圧する。冷却後、補強用構造体と多孔性層の強力な結合が得られる。この結合は、接着剤の厚さが均一で、補強用構造体の全表面で薄ければ薄いほど強力である。
【0025】
消音用構造体の製作にいかに注意を払っても、成果は下記理由によって最適にならない。
【0026】
結合すべき2の要素がもはや平坦ではないので、接着剤の厚さは、100分の数ミリメートルないし1ミリメートルの相違があり得るので、補強用構造体と多孔性層との間の連結は均一でなくなり、大きな剥離の危険が増大する。
【0027】
他方では、過剰の接着剤は、多孔性層の穿孔または微細穿孔区域に向かって流動する傾向があるので、多孔性層として使用している織布の編み目を閉鎖して、消音処理の効果を著しく減少させる。
【0028】
なお、接着剤のフイルムの裁断と、同フイルムの開放区域と補強用構造体とを共働させるための補強用構造体に対する同フイルムの位置づけは、結合すべき要素の形状が複雑であるだけに、その実施は困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】仏国第2826168号出願
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
それ故、本発明は、耐久性消音構造体の諸要素間の接着を向上させ、同構造体の消音上の特性を損なわないことを可能ならしめる耐久性消音構造の作成方式を提案することによって、従来の技術の欠点を排除することを狙いとしている。
【課題を解決するための手段】
【0031】
そのために、本発明は、消音処理のための被覆材が得られるように、蜂窩状構造体上に取り付けられる耐久性消音構造体の作成方式を目的としており、同耐久性消音構造体は、少なくとも1つの多孔性層および接着で結合する少なくとも1つの補強用構造体を含んでおり、少なくとも1つの同補強用構造体に非晶質型の接着剤を付着させ、非晶質型の接着剤の付着後に補強用構造体を穿孔または微細穿孔し、少なくとも1つの多孔性層を、非晶質型の接着剤を付着させた補強用構造体の面に貼り付けることからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
接着剤の非晶質性によって温度の上昇と低下が連続的に行えても同接着剤の特性が損なわれないので、少量ずつの結合ができ、補強用構造体の開放区域に直角に多孔性層の編み目を閉鎖する危険が抑制されて、接着剤の厚さの均一性と最適性が保証される。
【0033】
その他の特性と利点は、添付図に照らして、単に例として示した、本発明の以後の記載で明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】航空機の推進用集合体を示す斜視図である。
【図2】第1の変形態様によるナセルの空気取り入れ口を示す縦断面図である。
【図3】別の1つの変形態様によるナセルの空気取り入れ口を示す縦断面図である。
【図4A】第1の変形態様による消音用被覆材を示す断面図である。
【図4B】第2の変形態様による消音用被覆材を示す断面図である。
【図4C】第3の変形態様による消音用被覆材を示す断面図である。
【図5A】補強用構造体に配設した孔部の第1の形状による耐熱性消音層の立面図である。
【図5B】補強用構造体に配設した孔部の別の形状による耐熱性消音層の立面図であり、そして
【図6A】本発明による作成方式の各種段階を図式的に示す概観図である。
【図6B】本発明による作成方式の各種段階を図式的に示す概観図である。
【図6C】本発明による作成方式の各種段階を図式的に示す概観図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
今度は航空機の推進用集合体の空気取り入れ口に適用して本発明の記述を行なうことにする。しかしながら、本発明は、消音処理が、例えば翼の前縁、あるいはエンジンの近くまたは発動の羽根の近くのように高温に晒される他の箇所のレベルで、航空機の各種区域のレベルに適用できる。
【0036】
今後の記述では、霜とは、霜と氷のどちらにしても、いかなる性質、構造および厚さのものをも指す。
【0037】
図1に、支柱12を介して翼の下に連結された、航空機の推進用集合体10を示した。しかしながら、この推進用集合体は、航空機の他の区域に連結されることができる。
【0038】
この推進用集合体は、ナセル14を含んでおり、同ナセルの中に、自己の軸16に取り付けてある送風機を駆動する動力機構がほぼ同心円状に配置してある。ナセルの長手方向軸は、参照番号18で示した。
【0039】
ナセル14は、前方の空気取入れ口22を有するダクトを画定する内壁20、燃焼に関与するためにエンジンを通過する、第一次流束と呼ばれている、侵入する空気束の第一部、送風機に誘引されて、ナセルの内壁と動力機構の外壁で画定されている環状ダクト内を流れる、第二次流束と呼ばれている空気の流束の第二部を含んでいる。
【0040】
空気取り入れ口22の頂部24は、図2に示したように、長手方向軸18にほぼ垂直であり得るか、または図3に示したように、12時よりも少し進んでいる方向に位置している頂部で垂直ではない平面に伸びている、ほぼ円形をなしている。しかしながら、他の形状の空気取り入れ口が考慮されることができる。
【0041】
今後の記述では、航空力学的表面は、航空力学的流束と接触する航空機の被覆を指す。
【0042】
公害の影響を抑制するために、とりわけヘルムホルツ共鳴の原理を利用して、とりわけ航空力学的表面のレベルで、騒音エネルギーの一部分を吸収する被覆材26が予定されている。既知の方法で、消音パネルとも呼ばれているこの消音用被覆材は、図4Aから図4Cまでに示したように、内方から外方に向かって、反射層28、少なくとも1つの蜂窩状構造体30および耐久性消音構造体32を含んでいる。
【0043】
変形態様として、消音用被覆材26は、隔壁と呼ばれている耐久性消音構造体による複数の蜂窩状構造体を含むことができるだろう。
【0044】
諸変形態様では、図2と図3に示したように、消音用被覆材は、二次ダクトの表面および前方に伸びることができ、翼の前縁またはナセルの空気取り入れ口、ならびに外面の一部分を被覆することができる。
【0045】
1つの実施態様では、反射層28は、金属薄板または樹脂製基質内に埋没した、少なくとも1つの繊維の織布または不織布からなる膜の形を呈することができる。
【0046】
蜂窩状外装30は、金属性蜂窩状の形状、または例えばニダ・ノメックスの名称で市販されている蜂窩状外装の形状を呈することができる。変形態様では、他の手段、例えば、それぞれの端部で開放小胞を画定するように交錯する帯状部材の結合で得られるだろう。
【0047】
反射層28と蜂窩状構造体30は、当業者に知られているので、これ以上詳述しない。
【0048】
耐久性消音層32は、同構造体を透過する音波の音響エネルギーの一部を熱に変換させ、分散させる役割を帯びている、少なくとも1つの多孔質構造体を含む。
【0049】
1つの実施態様では、耐久性消音用構造体32は、少なくとも1つの多孔性層34および少なくとも1つの補強用構造体36を含んでおり、同補強用構造体は、求められている力学的特性を耐久性消音構造体に付与する。
【0050】
図4Aに示した第1の変形態様では、耐久性消音構造体32は、蜂窩状構造体と補強用構造体36との間に介在する多孔性層34を含むことができる。
【0051】
図4Bに示した第2の変形態様では、耐久性消音構造体32は、2の補強用構造体36間に介在する多孔性層34を含むことができる。
【0052】
図4Cに示した別の変形態様では、耐久性消音構造体32は、蜂窩状構造体30と多孔性層34との間に介在する補強用構造体36を含むことができる。
【0053】
多孔質層34は、例えばワイヤーメッシュの如き金属製織布の形状を呈することができる。1つの実施態様では、消音用織布は金属製であり、とりわけ当業者に知られているステンレス製網状体である。
【0054】
補強用構造体36は、同補強用構造体の中を通過する音波の通過を保証する開口部38または微小穿孔を含む金属製プレートの形状を呈する。場合によって、補強用構造体は、アルミニウム合金製またはチタン合金製であり得る。チタン合金製は、耐久性/質量の大きな比率、膨張率の低さおよび高温に対する強度で関心を引いている。したがって、耐久性消音構造体は、チタン合金製補強用構造体および約380℃の温度に耐えられる接着剤を使用することによって、同高温に耐えられる。
【0055】
補強用構造体36は、いろいろな形状または大きさの開口部38すなわち微小穿孔、例えば図5Aに示したように円形の孔の集合または図5Bに示したように細長い形状の孔を含んでいる。開口部38の形状と大きさは、空気束の流れの擾乱を減少させ、求められている力学的強さ、とりわけ剥離に抵抗する力学的強さを保証し、そして消音用被覆材の性能が良好であるように、音波が透過できるように決定される。
【0056】
どの場合にも、耐久性消音用構造体32は、音波の透過を許す、開放的と呼ばれている区域と、音波を通さないが、同層の力学的強度を保証するための閉鎖的すなわち閉塞区域を含んでいる。この耐久性消音層は、主としてエンジンに応じて変わる開放表面の比率および同層を構成する構成要素を特徴としている。
【0057】
多孔性層と結合する前に、補強用構造体は、少なくとも1つの下記目的の1または複数の表面処理を受ける。
― とりわけ圧延、引抜き時の汚濁、汚染、オイルおよび潤滑油の除去、
― 吸着された層の除去、
― 完全に清潔な、むき出しの金属に戻すまでの、多かれ少なかれもろい層(自然な酸化物、水酸化物)の除去、
― 湿潤性の強化、
― 力学的結合を高めるための表面の粗さの増加、
― 接着剤の接着を高めるために、表面に酸化活性層またはそれ以外の丈夫な層の形成。
【0058】
1つの実施態様によれば、補強用構造体は、油脂除去後、サンドブラストにかける。微細構造が得られるために、ごく細かい粒状金属を使用することが好ましい。
【0059】
本発明では、補強用構造体と多孔性層とを結合させるために、非晶質の接着剤を使用する。
【0060】
接着剤とは、少なくとも2つの要素を結合させるための化学製品を指す。
【0061】
接着剤の非晶質性は、その化学的構造、したがってその構造の特性を変えることなく、同接着剤の温度を高め、冷却することを可能ならしめる。この特性は、接着の質を確認するために、段階的に接着することを可能ならしめる。温度の変化時に、鎖間のブリッジ化または連結の切断のような非可逆的変化を誘導する化学的老化とは逆に、接着剤の非晶質性に固有の可逆性現象による物理的老化すなわち構造的弛緩が得られる。
【0062】
したがって、連続的な温度の上昇と冷却によって接着剤が変質しないので、接着の質を順次確認できるように、接着作業を少量ずつ行なうことが可能である。なお、例えば空気取り入れ口の前縁のように、以前には接着が困難であった形状の区域で、接着剤の非晶質性によって、部分毎に作業できる。
【0063】
本発明の別の1つの特性では、接着剤は、熱接着型である。同接着剤は、熱に反応する、冷えているときに接着しない、一定の厚さのフイルム40の形状を呈することが好ましく、同フイルムは、接着するいずれか1つの表面に付着させておかれる。
【実施例】
【0064】
本発明では、補強用構造体36に設けられる穿孔または微細穿孔は、非晶質接着剤で接着を行なった後に実施される。
【0065】
したがって、補強用構造体の全面に、接着剤の一定かつ最小限の厚さが得られるので、より良い質の結合が保証される。
【0066】
他方では、この解決策によって、消音性構造の消音性を阻害しないように、接着剤が開放区域の方向に流動して、同区域で編み目を塞ぐことが避けられる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
1つの実施態様では、図6Aに示したように、接着剤のフイルム40を補強用構造体36に付着させる。補強用構造体と接着剤のフイルム40は、圧縮機にかける型42上に配置すると有利である。
【0068】
次に、接着剤を活性化させるために、1ないし15バ−ルの圧力で、
100℃ないし300℃の温度に高められる大型炉またはオートクラーブ内に全体を置く。非晶質接着剤40は、冷却時に、その力学的特性および接着性を失うことなく硬化する。
【0069】
このようにして補強用構造体36は、全体的に湿潤する。以前の技術とは逆に、接着剤の一定かつ最適な厚さが得られるので、結合の質を向上させられる。
【0070】
その次に、図6Bに示したように、穿孔または微細穿孔を行なう。この補強用構造体および接着剤のフイルムは、この段階のとき、同時に穿孔されるので、フイルムと補強用構造体の開口部が完全に一致することが注目される。したがって施工は大いに単純化される。
【0071】
それ以外の技術が穿孔または微細穿孔を行なうのに使用できる。一例として、レーザービームまたは電子ビームを利用できる。加工の時に熱が発生しても、接着剤が非晶質である限り、同接着剤は変質しない。接着剤が開口部の周囲のレベルで変質しないので、強度の環境に晒されるこの区域で、強力な接着性が得られる。
【0072】
図6Cに示したように、型またはその他を介して、多孔性層34を接着剤40上に合わせて、付着させる。次に、接着剤を活性化するために、1ないし15バ−ルの圧力で、100℃ないし300℃の温度に高められる大型炉またはオートクラーブ内に全体を置く。場合によって、多孔性層の設置は、部分毎に行なって、接着剤は、多孔性層の部分毎に活性化させる。この解決策は、通常、最も激しい環境に晒される区域である空気取り入れ口の前縁のように複雑な形状を呈する区域にも、満足すべき質の接着が行なえる。
【0073】
接着剤の非晶質性は、同接着剤の特性を損なうことなく、相次ぐ温度の上昇と冷却を可能たらしめているので、少量ずつの結合が可能であり、補強用構造体の開口区域に直角に多孔性層の網目の閉鎖の危険を抑制し、接着剤の一定かつ最適の厚さを保証する。
【符号の説明】
【0074】
10. 推進用集合体
12. 支柱
14. ナセル
16. 送風機の軸
18. ナセルの長手方向軸
20. 内壁
22. 空気取り入れ口
24. 空気取り入れ口の頂部
26. 消音用被覆材
28. 反射層
30. 蜂窩状構造体
32. 耐久性消音層
34. 多孔性層
36. 補強用構造体
38. 開口部
40. 接着剤のフイルム
42. 型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消音処理のための被覆材が得られるように、蜂窩状構造体上に取り付けることのできる耐久性消音構造体の作成方式であり、同耐久性消音層(32)が、接着で結合した、少なくとも1つの多孔性層(34)および少なくとも1つの補強用構造体(36)を含んでおり、
― 少なくとも1つの同補強用構造体(36)上に非晶質型接着剤を取り付け、
― 非晶質型接着剤を取り付けた後に補強用構造体(36)を穿孔または微細穿孔し、
― 非晶質型接着剤で被覆した補強用構造体(36)の表面上に、少なくとも1つの多孔性層を付着させることからなることを特徴とする耐久性消音構造体の作成方式。
【請求項2】
多孔性層(34)の取り付けが部分毎に行なわれ、接着剤が各部分毎に順次活性化されることを特徴とする、請求項1に記載の耐久性消音構造体の作成方式。
【請求項3】
耐熱性接着剤を使用することを特徴とする、請求項1または2に記載の耐久性消音構造体の作成方式。
【請求項4】
低温では接着性のない非晶質型接着剤のフイルムを使用することを特徴とする、請求項1または2に記載の耐久性消音構造体の作成方式。
【請求項5】
― 補強用構造体(36)とフイルム(40)を型(42)上に配置し、接着剤を活性化するために、全体を1ないし15バ−ルの圧力で、100℃ないし300℃の温度にかけ、
― 冷却後、補強用構造体と接着剤層のレベルで穿孔または微細穿孔を行ない、そして
― 多孔性層(34)を配置し、接着剤を活性化するために、全体を1ないし15バ−ルの圧力で、100℃ないし300℃の温度にかける
諸段階を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1つの請求項に記載の耐久性消音構造体の作成方式。
【請求項6】
消音処理のための被覆材が得られるように、蜂窩状構造体上に取り付けられる耐久性消音構造体であり、同耐久性消音構造体(32)が、請求項1から4までのいずれか1つの請求項に記載の耐久性消音構造体の製作法に基づいて、非晶質型接着剤で結合した少なくとも1つの多孔性層(34)と少なくとも1つの補強用構造体(36)を含んでいる耐久性消音構造体。
【請求項7】
内方から外方に向かって、反射層(28)、少なくとも1つの蜂窩状構造体(30)および耐久性消音構造体(32)を含んでおり、同耐久性消音構造体(32)が、請求項1から4までのいずれか1つの請求項に記載の製作法に基づいて非晶質型接着剤で結合された少なくとも1つの多孔性層(34)と少なくとも1つの補強用構造体(36)を含む、消音処理のための被覆材。
【請求項8】
内方から外方に向かって、反射層(28)、少なくとも1つの蜂窩状構造体(30)および耐久性消音構造体(32)を含む消音処理のための被覆材を含み、同耐久性消音構造体(32)が、請求項1から4までのいずれか1つの請求項に記載の作成方式に基づいて非晶質型接着剤で結合された少なくとも1つの多孔性層(34)および少なくとも1つの補強用構造体(36)を含むナセル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【公表番号】特表2010−523878(P2010−523878A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−501567(P2010−501567)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【国際出願番号】PCT/FR2008/050561
【国際公開番号】WO2008/135702
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(508009851)エアバス フランス (19)
【Fターム(参考)】