説明

耐吸湿固結性を有する粉体造粒物の製造方法および粉体造粒物

【課題】本発明は、組成を変更することなく、原料をそのままの状態で使用することができ、さらに新たな設備投資も必要とせずに、吸湿固結を生じにくい粉体造粒物の製造方法、および該粉体造粒物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、原料粉体の不均一加湿を行うことにより、吸湿固結が抑制された粉体造粒物の製造方法、および該粉体造粒物を提供するものであり、原料粉体を連続的に供給しながら、結合液を間欠的に添加して造粒することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体造粒物の製造方法および当該製造方法により製造される粉体造粒物に関し、さらに詳細には、吸湿による固結が抑制された粉体造粒物の製造方法および当該製造方法により製造される粉体造粒物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、吸湿性を有する粉体原料を含む食品、医薬品などの粉体製品は、湿度の高い場所で長期間保存すると吸湿してケーキングを起こし、いわゆるダマの発生や、あるいは固結を生じることが知られている。ダマの発生あるいは固結が生じた場合は、必要量を計量分取する際にダマや固まりの破壊操作が必要となり、操作性が極めて悪くなる。また場合によっては、固結が強固で破壊が困難であったり、潮解を起こしたりすることもある。
【0003】
ダマの発生あるいは固結を抑制するためには、基本的に粉体製品の水分含有率を製品固有の閾値以下とし、さらに密閉性の高い容器の中に入れて吸湿しないように保存する必要がある。しかしながら、容器包材の如何に関わらず、通常使用において一度容器を開封すると開封前の密閉性を完全に保つことは不可能であり、容器に生じた隙間より吸湿が生じるため容器中の粉体製品の吸湿固結を防ぐことは非常に困難である。
【0004】
このような問題を解決するために、従来から様々な研究がなされている。例えば粉体食品の分野では、耐吸湿固結性を与える特定原料を加えるものとして、セサミン類を添加した飲食品用組成物(特許文献1)、特定性状のセルロース粉末を添加した粉末食品組成物(特許文献2)、低水分含有量のコーンスターチを所定量加えた粉末食品(特許文献3)、所定の微細な水不溶性食物ファイバーを添加した固結防止性食品(特許文献4)、固形脂と水不溶性微粉末とを所定量加えた粉末食品(特許文献5)、特定性状のα化澱粉を添加した粉体食品(特許文献6)、カルボキシメチルセルロースを添加した粉末食品(特許文献7)などが挙げられる。また、耐吸湿固結性を有する特定物質でコーティングするものとして、二重に糖衣がけ処理がなされた食品(特許文献8)、炭酸カルシウムで被覆された食品添加物(特許文献9)、融点が70℃以下の食用油脂またはモノグリセライドでコーティングされた食塩組成物(特許文献10)、所定量の食用油脂を噴霧しながら製造された顆粒状調味食品(特許文献11)などが挙げられる。加えて、原料の造粒工程に係る順序を調整したものとして、食用高分子素材とエキス類とを複合して造粒する第1工程と、その後に食塩を添加して造粒する第2工程とを含む顆粒状混合調味料の製造方法(特許文献12)などが挙げられる。その他、食品原料の物性を調整するものとして、かさ比容と粒子径が調整された香辛料が配合された調味料(特許文献13、14)などが挙げられる。
【0005】
また、粉体造粒物の製造に関し、結合水溶液を間欠的に噴霧して造粒、乾燥する製造方法も開示されている(特許文献15、16)。しかしながら、これらの方法では粉体造粒物の製造装置として流動層式造粒機が用いられている。流動層式造粒機では、槽の中に供給された原料粉体について造粒と乾燥とが同時に行われ、これにより間欠的に結合水溶液が噴霧されることになる。そのため、当該方法を用いることにより顆粒の形成および成長は促進されることになるが、粉体造粒物の吸湿固結の抑制については特に影響を与えることはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−244270号公報
【特許文献2】特開2006−28452号公報
【特許文献3】特開平7−184593号公報
【特許文献4】特開平5−84048号公報
【特許文献5】特開昭60−19458号公報
【特許文献6】特開昭63−313574号公報
【特許文献7】特開平2−211833号公報
【特許文献8】特開平10−14554号公報
【特許文献9】特開平7−132056号公報
【特許文献10】特開2005−185261号公報
【特許文献11】特開昭59−42861号公報
【特許文献12】特開2008−148619号公報
【特許文献13】特開2000−50825号公報
【特許文献14】特開2001−128640号公報
【特許文献15】特開平2−300135号公報
【特許文献16】特開2002−119244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、粉体の吸湿固結を抑制する方法として耐吸湿固結性を与える特定原料を加えたり、耐吸湿固結性を与える特定物質でコーティングしたりすることは、食品、医薬品などのような粉体製品の大幅な組成変更を伴うことになる。また、原料の造粒工程に係る順序の調整はさらなる設備投資を必要とする可能性があり、製品原料の物性を調整するためには当該原料の前処理が必要になるという問題を生じることがある。
【0008】
本発明は、上記のような従来技術の問題を解決することを課題とするものであり、具体的には、組成を変更することなく、原料をそのままの状態で使用することができ、さらに新たな設備投資も必要とせずに、吸湿固結を生じにくい粉体造粒物の製造方法、および該粉体造粒物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
原料粉体が連続的に供給される従来の攪拌造粒装置では、通常、原料粉体と同様に結合液も連続的に供給され、当該原料粉体が均一加湿されることによって造粒が行われることを特徴としている。本発明者らは、吸湿性を有する原料粉体を用いた場合に、当該攪拌造粒装置により製造される粉体造粒物について、その湿度と平衡水分との関係を検討し、当該原料粉体表面の状態を調整するために不均一加湿を行うことに着目した。そこで本発明者らは、原料粉体を連続的に供給しながら、間欠的に結合液を供給することにより、当該原料粉体について不均一加湿とする、即ち、加湿ムラを発生させることができることを見出した。さらに、加湿ムラを生じさせることにより、加湿された原料粉体の表面を乾燥状態である原料粉体が同一製造過程において被覆することを見出し、これにより吸湿固結が抑制された粉体造粒物を製造することに成功し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は以下の通りである。
(1)原料粉体を連続的に供給しながら、結合液を間欠的に添加して造粒する、粉体造粒物の製造方法。
(2)結合液を間欠的に噴霧して添加する、(1)に記載の製造方法。
(3)結合液を、原料粉体に対して、平均添加率が1〜10重量%となるように添加する、(1)または(2)に記載の製造方法。
(4)結合液を、原料粉体に対して、瞬時添加率が1〜15重量%となるように添加する、(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5)結合液を、1〜25秒間添加した後1〜30秒間添加を停止する操作を繰り返して間欠的に添加する、(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法。
(6)粉体造粒物の平均粒子径が150〜1000μmである、(1)〜(5)のいずれかに記載の製造方法。
(7)造粒が撹拌造粒である、(1)〜(6)のいずれかに記載の製造方法。
(8)造粒が転動造粒である、(1)〜(7)のいずれかに記載の製造方法。
(9)竪型の筒状槽を有する撹拌造粒装置を用いて造粒する、(1)〜(8)のいずれかに記載の製造方法。
(10)粉体造粒物が食品である、(1)〜(9)のいずれかに記載の製造方法。
(11)(1)〜(9)のいずれかに記載の製造方法により製造される、粉体造粒物。
(12)(1)〜(9)のいずれかに記載の製造方法により製造される、食品。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来の攪拌造粒装置を用いて、組成の変更や原料粉体の前処理などを必要とせずに、吸湿固結が抑制された粉体造粒物を簡便に効率よく製造することができる。吸湿固結しにくい粉体造粒物を製造することにより、使用性の向上のみならず、水分移行などによる品質劣化も抑制することができ、商品価値の維持および向上を図ることができる。なお、本発明に係る製造方法により製造された粉体造粒物は、食品、医薬品、化粧品、農薬などとして、好適に用いることができる。
【0012】
本発明ではさらに、粉体造粒物の製造過程において造粒に寄与しなかった乾燥状態の原料粉体を、例えばその粒子径に応じて篩い分けなどで回収して、新たに供給する原料粉体に加えることができる。これにより原料粉体のリサイクルが可能となり、製造上の無駄を省き、製造コストの面でも改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、実施例1および比較例1の各サンプルにおける粉体造粒物の拡大写真を示した図である。
【図2】図2は、液体エキス原料を配合した場合の各サンプル(サンプル1〜4)における粉体造粒物の拡大写真を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、原料粉体を連続的に供給しながら、結合液を間欠的に添加して造粒する、粉体造粒物の製造方法、および当該方法により製造された粉体造粒物を提供する。
【0015】
本発明においては、原料粉体として、一般的に食品、医薬品、化粧品、農薬などの分野において用いられる粉体を用いることができる。本発明は、原料粉体が吸湿性を有する粉体である場合に特に有用である。ここで「吸湿性」とは、対象とする物質が空気にさらされている場合に、当該空気中の水分(水蒸気)を吸収する性質のことをいい、空気中の水分を取り込んで当該水分に自発的に溶解するという潮解性の性質も、この「吸湿性」の概念に含まれる。粉体の吸湿性は、当業者に公知の方法を用いて測定または評価を行うことができる。例えば、乾燥状態においてあらかじめ計量しておいた粉体を、温度を24℃、相対湿度を一定条件下として10日間放置した後、当該粉体の質量増加分を計測する、あるいは放置後の変化を目視観察する(粉体の流動性や固結化の程度の確認、変色の確認など)ことにより評価することができる。また簡易的には室内条件下に1時間放置した後、粉体の変化を目視観察することにより評価することができる。
【0016】
吸湿性を有する原料粉体は、吸湿性を有し、粉体食品などに用いられる粉体であれば特に制限されない。吸湿性を評価する基準としては、例えば、温度20〜30℃、相対湿度22〜64%の条件下で3〜10日間放置をした場合に吸湿性を示すことなどが挙げられる。ここで「粉体」とは、外観により粉状を呈している全ての物質を含むことを意味し、一種の粒子からなるものであってもよく、複数種の粒子により構成される集合体であってもよい。一般的に用いられる、粉、粉末、微粉、超微粉、粒、粒体、細粒、顆粒、粗粒、粉粒などと呼ばれる物質は、本発明の「粉体」に含まれ得る。
【0017】
原料粉体は、特定の化合物単独からなるものであってもよく、またあるいは、複数種の化合物により構成されるものであってもよい。特定の化合物単独からなる原料粉体としては、例えば、グルタミン酸ナトリウム、食塩、グラニュー糖、乳糖、デキストリン、マルトデキストリン、澱粉などを挙げることができる。また、複数種の化合物から構成される原料を用いる場合は、あらかじめ所望の粉体食品、医薬品などの組成となるように調製されたものを用いることができ、または当該組成から意図的に1種以上の化合物を除いたり、特定化合物の配合濃度を少なくしたものを用いることもできる。複数種の化合物から構成される原料は、市販されているものを購入して用いることも可能であり、当該原料粉体としては、例えば、魚節類、エキスパウダーなどがある。魚節類としては鰹節、宗田節、鯖節、鮪節、うるめ節などを挙げることができる。エキスパウダーとしてはポークエキスパウダー、チキンエキスパウダー、ビーフエキスパウダー、エビエキスパウダー、オイスターエキスパウダー、ホタテエキスパウダー、昆布エキスパウダー、かつおエキスパウダー、鮪エキスパウダー、鯖エキスパウダー、ニンジンエキスパウダー、キャベツエキスパウダー、ハクサイエキスパウダー、トマトエキスパウダー、ホウレンソウエキスパウダー、ネギエキスパウダー、ガーリックエキスパウダー、オニオンエキスパウダーなどを挙げることができる。
【0018】
原料粉体は、特に限定されないが、例えば適当な大きさの固形物を所望の粒子径に粉砕して調製することができる。粉砕は、湿式粉砕でも乾式粉砕でもよく、粉砕装置としては、ピンミル、ジェットミル、フェザーミル、ロッドミル、ボールミル、震動ロッドミル、震動ボールミル、円盤型ミルなどの各種ミル、ジョークラッシャー、ジャイレトリークラッシャー、コーンクラッシャー、平滑ロールクラッシャー、歯付きロールクラッシャー、インパクトクラッシャー、ハンマークラッシャーなどの各種クラッシャー、フードカッター、ダイサーなどを用いることができる。原料粉体が複数種の化合物から構成されるものである場合は、例えば、所定の組成からなる溶液を調製しておいて、当該溶液を凍結乾燥などにより固体化し、得られた固形物を粉砕することによって調製することができる。なお、原料粉体が特定の化合物単独からなるものである場合は、粉砕のみならず、晶析によって調製することもできる。
【0019】
また、原料粉体は、上記のように粉砕して得られたものを造粒することによって調製することもできる。本発明において「造粒」とは、粉体や、粉体を溶解して得られた溶液を出発物質として適当な大きさの粉体(造粒物)を調製することをいう。原料粉体の造粒は、自体公知の造粒方法を用いることができ、例えば、転動造粒、流動層造粒、攪拌造粒、圧縮造粒、押出造粒、溶融造粒、噴霧造粒、振動造粒、焼結造粒、混合造粒、鋳込み成形造粒、フレイカー造粒、板上滴下造粒、鋳造造粒、液相反応造粒などの方法により行うことができる。
【0020】
本発明では、上記の通り、粉砕、晶析または造粒などにより調製された原料粉体について、その平均粒子径が、例えば30〜200μm、好ましくは40〜100μm、より好ましくは50〜80μmの原料粉体を用いることができる。原料粉体の平均粒子径は、例えば日機装社製MICROTRAC HRA(エタノール分散測定法)によって測定することができる。
【0021】
本発明の粉体造粒物の製造方法において、原料粉体は連続的に造粒装置に供給される。「連続的に供給する」とは、最初の原料粉体が造粒装置に供給されてから最初の粉体造粒物が製造されるまで続けて供給することを意味する。したがって、当該時間内であれば断続的に原料粉体を供給することも含まれるが、本発明では、途切れることなく続けて原料粉体を供給することが好ましい。
【0022】
原料粉体の造粒装置への供給は、供給される装置の規模にもよるため特に限定されないが、例えば、50〜60000kg/hr、好ましくは1000〜4000kg/hr、より好ましくは1800〜2100kg/hrの流量で行うことができる。
【0023】
原料粉体が供給される装置は、如何なる材質、形状または大きさのものでも採用し得るが、本発明では、攪拌造粒装置を用いることが好ましい。攪拌造粒装置を用いた場合は流動層造粒装置と比較して造粒に要する時間が短く、造粒に必要なエネルギーも少なくすることができるため、製造コストを抑えることができる。攪拌造粒装置には竪型式または横型式などがあるが、本発明では竪型式の攪拌造粒装置を用いることがより好ましい。具体的には、地面(水平面)に対して略垂直に保持された竪型式の筒状の槽を有するものが好ましく、当該槽の上部および底部は、蓋などにより覆われていても覆われていなくてもよい。竪型式の筒状槽を採用することにより、当該槽の上部より原料粉体を供給して、当該槽の下部から本発明の粉体造粒物を取り出すことができる。これについて、当該槽の上部より原料粉体を連続的に供給して、粉体造粒物が製造された都度、当該槽の下部から当該粉体造粒物を取り出せば、効率よく連続的に粉体造粒物を生産することができるようになる。
【0024】
造粒装置に供給された原料粉体は、当該装置の混合槽内または撹拌槽内で攪拌されることが好ましい。攪拌は、当業者に公知の方法を用いて行うことができ、例えば、棒、板またはプロペラ状などの攪拌子(攪拌羽根)を用いて行ってもよく、前記槽に設置したポンプやプロペラなどにより槽内に空気の対流を生じさせて行ってもよく、あるいは槽自体を振動させて行ってもよい。本発明では、効率よく原料粉体を槽内に分散させるという観点から、攪拌羽根を用いて原料粉体を攪拌することが好ましい。また攪拌羽根は、槽内の如何なる位置に設けられてもよい。攪拌羽根を用いる場合、当該攪拌羽根は板状であることが好ましく、さらに攪拌羽根の回転方向に対して垂直よりもやや斜めに傾けられたプロペラ状であることがより好ましい。また、攪拌羽根を支持する回転軸も槽内の如何なる位置に設けられてもよいが、槽内の略中央部を通るように設けられることが好ましく、その場合、当該槽内において略垂直方向または略水平方向に設置することができる。上記に記載した竪型式の筒状槽を用いる場合であれば、攪拌羽根を支持する回転軸は当該槽内の略中央部を通るように水平面に対して略垂直方向に設けることが好ましい。そうすることにより、効率よく原料粉体を攪拌することができる。竪型式の筒状槽は、水平断面が略円形、略楕円形、略長円形または多角形などの形状のものを採用し得るが、攪拌羽根を用い、さらに攪拌羽根の回転軸が当該槽内において略垂直方向に設けられる場合は、当該槽の水平断面は略円形、即ち、竪型式の略円筒形の槽とすることが好ましい。なお、攪拌により粉体の造粒を行う装置であって、竪型式の筒状槽、特に竪型式の円筒形槽を採用したものとしては、シュギミキサーまたはフレキソミックスと呼ばれるものがある。市販のシュギミキサーとしては、例えばフレキソミックス(ホソカワミクロン社製)、シュギフレキソミックス(パウレック社製)などを挙げることができる。
【0025】
攪拌羽根を用いて原料粉体を攪拌する場合、当該攪拌羽根の回転速度は特に限定されないが、例えば500〜4800rpm、好ましくは800〜3000rpm、より好ましくは900〜2400rpmとすることができる。槽内に供給された原料粉体は、攪拌羽根自体に接触し、または当該攪拌羽根によって生じる旋回気流によって、槽内を浮遊旋回するように攪拌され得る。
【0026】
本発明における粉体造粒物の製造方法では、結合液が間欠的に槽内に加えられる。結合液とは、槽内に投入された原料粉体同士の結合力を増大するための液状物を意味し、具体的には、水;液状の油脂;デンプン、グルコース、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、カゼイン、コラーゲン、結晶セルロース、アラビアガムなどを含有する液状物などが挙げられ、生理学的に許容されるものであれば特に限定されない。また、粉体造粒物の配合成分として通常用いられる、エキス類を含む液状物も本発明における結合液として含めることができる。これらのうち本発明では、結合の程度および製造コストの観点から、結合液として水を用いることが好ましい。これらの結合液は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。2種以上の結合液を用いる場合は、各種結合液を同時に加えてもよく、または添加時間を調整しながら別々に加えてもよいが、装置設定上や作業上の簡便性を考慮して、同時に加えることが好ましい。
【0027】
結合液は、原料粉体が実際に攪拌されている際に、または当該攪拌が停止している際もしくは終了した際に前記槽内に加えることができるが、本発明では実際に原料粉体が攪拌されている際に加えることが好ましい。結合液の供給口は、前記槽の如何なる位置に設けられていてもよいが、原料粉体の供給口とは別の位置に設けられていることが好ましい。また、結合液を槽内に加える態様としては、例えば、所定の流量で槽内に流入するように加えても滴下するように加えてもよく、その方法は特に制限されないが、供給された原料粉体に対して効率よく広範囲に加湿させるという観点から、槽内に噴霧して加えることが好ましい。なお、噴霧する場合の結合液の液滴径は、例えば1〜200μmとすることができ、好ましくは5〜100μm、より好ましくは10〜70μmとすることができる。
【0028】
結合液は、原料粉体に対して、例えば1〜10重量%、好ましくは2〜8重量%、より好ましくは2.5〜6重量%の平均添加率で槽内に加えることができる。結合液の平均添加率は、造粒装置に備えられた操作に従って設定することもできるが、具体的には、粉体造粒物の製造に要する原料粉体の総重量に対し、加える結合液の総重量に基づいて設定することができる。
【0029】
結合液の槽内への間欠的な添加は、結合液を添加する時間と当該添加を停止する時間とで調整しながら行うことができる。この場合、槽の形状または大きさなどにもよるが、結合液を添加する時間は、例えば1〜25秒間、好ましくは3〜20秒間、より好ましくは5〜15秒間とすることができ、当該添加を停止する時間は例えば1〜30秒間、好ましくは2〜20秒間、より好ましくは3〜10秒間とすることができる。このように、所定時間に基づいた結合液の添加および停止を繰り返すことにより、間欠的に結合液を槽内に加えることができる。
【0030】
結合液を槽内に添加する操作および当該添加を停止する操作は、手動または自動で行うことができ、自動で行う場合は装置に設けられたタイマーなどを利用することもできる。いずれの操作の場合においても、結合液の添加と停止の切り替え時には結合液添加量が一定値に到達するまでの添加量変化が生じる。結合液の添加量変化は、結合液の添加量(平均添加率)、添加時間および停止時間に応じて変動し、本発明ではこれらの指標に基づいて結合液の瞬時添加率を設定することができる。具体的には、結合液の瞬時添加率は、平均添加率に結合液の添加時間と停止時間とを加えた時間を乗じ、その値を結合液の添加時間で割ることにより算出することができる。結合液の添加および停止に係る時間の調節は槽の形状や大きさなどに依存することから、結合液の瞬時添加率を設定すれば、如何なる槽にも本発明の製造方法を対応させることができる。結合液の瞬時添加率は、製造される粉体造粒物の粒子径や色の濃さなどにも影響を及ぼす重要な要素であり、本発明では、この瞬時添加率を例えば1〜15重量%、好ましくは2〜10重量%、より好ましくは3〜7重量%と設定することができる。
【0031】
上記の通り、結合液を間欠的に槽内に加えることにより、結合液が加えられている間は、槽内に供給された原料粉体に結合液が付与され、加湿されることなどによって原料粉体が付着性を有するようになり、次いで結合液の添加が停止されると、後から槽内に供給される乾燥状態の原料粉体が、付着性を有した原料粉体の表面に接触して相互に付着することができ、原料粉体同士でいわゆるコーティングがなされることになる。この一連の現象は、原料粉体が連続的に槽内に供給されているため、粉体造粒物の一つの製造過程において生じさせることができる。原料粉体の表面が乾燥状態の原料粉体で覆われることによって、得られた粉体造粒物の吸湿固結を効果的に抑制することが可能となる。なお、結合液を加えることにより付着性を有することとなった原料粉体は、槽の内面(内壁)に付着してしまう可能性がある。そのため、原料粉体が供給される槽の内面は、例えばテフロン(登録商標)などの撥水性の素材でコーティングされたものであることが好ましく、あるいは外部から力もしくは衝撃を加えて原料粉体の付着を抑制し、または付着した原料粉体を取り除くために、ゴムなどの素材で作製された槽を用いることが好ましい。
【0032】
槽内において攪拌され、さらに付着性を備えた原料粉体は、当該攪拌中において、もしくは落下した後の槽下部において、またはその両方において造粒されることができる。本発明では、連続的な製造操作を行っていることから、攪拌中および落下後の両方において造粒されることが好ましい。落下後の槽下部における造粒では、通常の皿が槽下部に設けられていてもよく、または転動造粒用の皿が槽下部に設けられていてもよい。なお、「槽下部」とは、槽下方の位置を示すことを意味しており、槽の底部または底面もこれに含まれる。また、当該皿は、如何なる形態および材質であってもよく、単なる板状の形態であってもよい。槽下部に設けられた皿は、転動造粒をするために旋回などの動作を伴うものであってもよいし、あるいは静置されていてもよい。皿が静置されている場合でも、水平面よりやや斜めに皿が傾いていれば、原料粉体が重力に応じて下方に転がり、自然と造粒されることとなる。本発明では、槽下部に設けられた皿が旋回することで、粉体加湿物が転動し、結合液が添加されて付着性を有する加湿原料の周りに、結合液が添加されていない乾燥状態の粉体原料がまぶされるという効果を促進することができるため、槽下部の皿は旋回などの動作を伴うことが好ましい。なお、皿の旋回回転数は、例えば100〜300rpm、好ましくは150〜250rpm、より好ましくは190〜220rpmとすることができる。このように、本発明の製造方法では、原料粉体を槽下部にて転動造粒することが好ましい。
【0033】
原料粉体の造粒物は、当業者に公知の方法を用いて乾燥させることができる。例えば、当該造粒物を室温または高温低湿下などの一定条件下において適当な時間放置することにより乾燥させることができ、または市販の装置を用いることにより乾燥させることができる。市販の乾燥装置としては、例えば、連続式では連続流動層乾燥機(栗本鉄工所社製)、流動層乾燥機(月島機械社製)、振動流動層乾燥機(西村機械製作所社製)などが、回分式では試料迅速乾燥機(レッチェ社製HG−200)などが挙げられる。
【0034】
原料粉体の造粒物は、当業者に公知の方法を用いることにより篩い分けを行い、所望の大きさの造粒物を選別することができる。造粒物の篩い分けは、市販の篩分装置などを用いて行うことができる。篩分装置としては、例えば、連続式では円形振動ふるい機(西村機械製作所社製)、振動式篩機(ラサ工業社製)、振動ふるい(ダルトン社製)などが、回分式ではロータップ型篩分機(飯田製作所社製)、タップ型篩分機(レッチェ社製AS200tap)などが挙げられる。
【0035】
本発明では、槽下部に落下した原料粉体を再度繰り返して槽内に供給することができる。このとき、上記のように造粒物の篩い分けを行っていれば、当該篩い分けにより本発明の粉体造粒物として選別されなかった大きさの造粒物または原料粉体を容易に再度供給することができ、再利用できる原料粉体を効率よく回収することができる。回収される原料粉体の量は少ない方が好ましいが、粉体造粒物の原料としてリサイクルされれば、製造上の無駄を省き、製造コストを効果的に抑えることができる。
【0036】
また本発明では、原料粉体および結合液以外にも、他の成分を添加することができる。当該他の成分としては、食品、医薬品、化粧品、農薬などの分野において添加物として用いられるものであれば特に限定されず、賦形剤、崩壊剤、潤沢剤、安定化剤、乳化剤、等張化剤、緩衝剤、溶解補助剤、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、矯味剤、凝固剤、糖類、ビタミン類、pH調整剤、増粘剤、エキス類、生薬、無機塩などが挙げられる。前記成分は、食品成分、薬物などの粉体とともに混合し、原料粉体として槽内に連続的に供給してもよく、原料粉体と同時に、または別個に連続的に供給してもよい。また前記成分が液状物である場合には、本発明における原料粉体に対して不均一加湿を行うという観点から、上記の通り間欠的に加えることが好ましい。前記他の成分の添加量は、粉体造粒物の組成に応じて適宜調整することができる。
【0037】
粉体造粒物の利用価値および付加価値などを考慮して、本発明では、前記他の成分の液状物としてエキス原料(エキス類を含有する原料)を用いることができる。本発明においてエキス類は、例えば、漢方薬などの医薬品に配合されるもの、健康補助食品、保健機能食品に配合されるもの、調味料、スープ、ソース、ブイヨンなどの加工食品などに配合されるものであり、特定の薬効や栄養素の他、好ましい呈味、コク味、濃厚感、風味および香りを付与するために配合されるものである。エキス類としては、その製造方法や抽出方法に関わらず如何なるものでも用いることができ、例えば、生薬エキス、酵母エキス、あるいは畜肉、魚肉、鶏ガラ、魚介類、野菜類もしくは果実類から抽出または搾汁された天然エキスなどを挙げることができる。畜肉としては牛肉、豚肉、鶏肉などが、魚肉としては鰹、鮪、鰯などが、鶏ガラとしては廃鶏ガラ、ブロイラーガラなどが、魚介類としてはアワビ、ホタテ、アサリ、カキ、エビ、イカなどが、野菜類としてはタマネギ、セロリ、ニンジン、トマト、キャベツなどが、果実類としてはブルーベリー、リンゴ、バナナ、パインなどが挙げられる。また、本発明におけるエキス類は、あらかじめ複数種類のエキス類を混合しているものであってもよく、またはエキス類の呈味改善のためにアミノ酸や糖類などのその他の原料を混合しているものであってもよい。
【0038】
上記の通り製造された粉体造粒物は、最終的にはその平均粒子径を、例えば150〜1000μm、好ましくは200〜800μm、より好ましくは250〜750μmとすることができる。なお、粉体造粒物の平均粒子径は篩分法などにより測定することができる。例えばJISZ8801−01規格で目開き1400μm、710μm、500μm、355μm、250μm、180μmの篩網を用意し、タップ型篩分機(レッチェ社製AS200tap)にて5分間篩分することにより、粉体造粒物の粒度分布および平均粒子径を測定することができる。
【0039】
本発明における粉体造粒物は、食品、医薬品、化粧品、農薬などの分野において、顆粒状、細粒状といった製品として用いることができる。また、打錠、カプセル化などを行って、錠剤、カプセル剤などの製品として用いることもできる。特に、食品分野では、一般食品のみならず、飲料、健康補助食品、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品)、サプリメント、食事療法用食品、総合健康食品などにも用いられる。また、例えば、粉末醤油、粉末味噌、粉乳、粉末果汁、動植物エキス粉末、タンパク質加水分解物、アミノ酸系天然調味料、化学調味料、糖類、有機酸類、食塩、塩化カリウムなどの水溶性天然添加物もしくは食品添加物、またはこれらを主成分とする粉末スープ、調味料、香辛料、調味スパイス、粉末コーヒー、ココア、クリーミングパウダー、プディング、粉末ソースなどに適用することもできる。
【実施例】
【0040】
以下に実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによりなんら限定されるものではない。
【0041】
1.結合液の間欠添加が吸湿固結性に及ぼす影響の検討(1)
[実施例1]
下記の表1に示した組成で各原料の計量を行った。
【0042】
【表1】

【0043】
次に、計量された原料を、平均粒子径が100μm以下になるまで衝撃式粉砕機で粉砕した。さらに、粉砕された原料を容器固定型混合機で15分間混合した。
【0044】
次に、混合された原料を、流量2000kg/hr(新たに供給される原料粉体50%、回収された原料粉体50%)で、高速攪拌造粒機(パウレック社製フレキソミックス250型)へ定量供給した。高速攪拌造粒機の攪拌羽根の回転数を2500rpmとし、結合液として水を間欠的に添加して、粉体加湿物を得た。水の平均添加率は3.2重量%、平均液滴径はおよそ20μmとして、7.5秒間の添加と6.5秒間の添加停止(瞬時添加率=6.0重量%)とを繰り返した。
【0045】
次に、高速攪拌造粒機より連続的に排出される粉体加湿物を、200rpmで旋回を行っている転動皿型造粒装置(山型状としたバッフル機構を備える仕様)へ供給し、転動造粒を行った。
【0046】
次に、転動皿型造粒装置から連続的に排出された粉体加湿物を、連続的に流動層乾燥装置に供給し、熱風温度100℃で乾燥した。その後、目開きが約990μmと約300μmの2段のスクリーンを設置した振動式篩分装置を使用して篩分を行い、990μmと300μmの間の粒度の粉体造粒物を実施例1のサンプルとして得た。
【0047】
[比較例1]
比較対象として、平均添加率が3.2重量%となるように連続的に水(結合液)を添加する以外は実施例1と同様の条件にて同様の操作を行うことにより、比較例1のサンプルを得た。
【0048】
[試験例1]
上記の通り得られた実施例1と比較例1のサンプルについて、吸湿固結性を確認するために吸湿試験を行った。当初乾燥状態に置いていたサンプルを、24℃にて相対湿度22%、33%、44%、54%の条件下で10日間静置した後、当該粉体造粒物の吸湿固結性を評価した。その試験結果を表2に示す。なお、吸湿固結性の評価基準は以下の通りとした。
<吸湿固結性の評価基準>
5:さらさらした状態で、固結は見られない
4:触れるとすぐに崩れるような軽い固結が見られる
3:軽く押すと崩れるような固結が見られる
2:強く押すと崩れるような強い固結が見られる
1:押しても崩れない固結が見られる
0:潮解状態である
【0049】
【表2】

【0050】
表2に示す結果より、実施例1のサンプルは比較例1のものよりも吸湿固結の抑制された粉体造粒物であることが示された。また実施例1と比較例1の各サンプルの粉体造粒物の拡大写真を図1に示す。これにより、実施例1のサンプルは比較例1のものに比べ、表面が白く、密であり、結合液により加湿されていない乾燥状態の粉体原料が造粒物表面を覆っていることが示された。
【0051】
2.結合液の間欠添加が吸湿固結性に及ぼす影響の検討(2)
また、粉体造粒物の製造条件を検討するため、結合液の平均添加率、添加時間および停止時間の条件を変更しながら、製造後の粉体造粒物の吸湿固結性を調べた。
平均添加率が3.10〜3.32重量%、添加時間7.5〜9.5秒、停止時間5.5〜7.5秒(瞬時添加率=4.89〜6.64重量%)となるように間欠的に水(結合液)を添加する以外は実施例1と同様の条件にて同様の操作を行うことにより、実施例2〜11のサンプルを得た。
実施例2〜11のサンプルの吸湿固結性を確認するために、吸湿試験を行った。当初乾燥状態に置いていたサンプルを、24℃にて相対湿度64%の高湿条件下で1時間静置した後、当該粉体造粒物の吸湿固結性を評価した。各実施例の添加条件とその試験結果を表3に示す。なお、吸湿固結性の評価基準は上記と同様の基準を用いた。
【0052】
【表3】

【0053】
表3の結果より、製造したサンプルについてはいずれも吸湿固結抑制についての評価が高いことがわかった。結果として、各種条件において結合液の添加と停止とを繰り返すことによって、吸湿固結しにくい粉体造粒物を製造できることが示された。
【0054】
3.エキス原料の添加が吸湿固結性に及ぼす影響の検討
粉体造粒物に液体エキス原料を配合した場合について、吸湿固結しにくい粉体造粒物の製造条件を検討した。
本発明は連続式の造粒機を含むプロセスにて適用することが可能であるが、小スケールの検討では回分式の造粒機を使用し、結合液の間欠添加を想定した実験を行うことも可能である。すなわち回分式の造粒機にて粉体原料に結合液を添加し、得られた粉体加湿物に、結合液が添加されていない乾燥状態の粉体原料を転動皿型造粒機にてまぶすことにより、連続式造粒機での結合液の間欠添加を再現することができる。この場合、結合液の添加時間、停止時間については、転動皿型造粒機でまぶされる乾燥状態の原料粉体の重量にて規定することが可能である。結合液の添加時間をT1、停止時間をT2とすると、まぶされる乾燥状態の原料粉体重量は以下の式(1)を用いて計算をすることができる。
【0055】
【数1】

【0056】
エキス原料の添加による吸湿固結の検討ではこの小スケールでの実験方法を用いて検討を行った。以下、詳細に説明をする。
【0057】
下記の表4に示した組成で各原料の計量を行った。
【0058】
【表4】

【0059】
次に、計量された原料を実施例1と同様の条件にて粉砕、混合を行い、均一に混合された原料Aを得た。
【0060】
次に混合された原料Aを使用し、造粒、乾燥、篩分工程を経て、粉体造粒物を製造するが、以下の通り、想定する実験条件に応じて2通りの場合分けを行い、実験方法を説明する。
(1)水およびエキス原料の連続添加を想定する実験条件
(2)水およびエキス原料の間欠添加を想定する実験条件
粉体造粒物中のエキス原料の配合量を揃えるため、想定する実験条件により中間品の粉体加湿物を得るためのエキス原料の添加量が異なることに注意が必要である。
【0061】
(1)水およびエキス原料の連続添加を想定する実験条件
混合された原料Aを、1000g(新たに供給される原料粉体50%、回収された原料粉体50%)、攪拌造粒機(岡田精工社製NSK−160、以下攪拌造粒機Xと表記する)へ供給した。攪拌造粒機Xの攪拌羽根の回転数を1000rpmとし、攪拌しながら、原料粉体の重量に対して平均添加率が3.4重量%となるように水を添加し、また原料粉体の重量に対して平均添加率が2重量%となるようにエキス原料を添加し、粉体加湿物Bを得た。
【0062】
次に、攪拌造粒機Xから排出された粉体加湿物Bを、200rpmで旋回を行っている回分式特殊転動皿型造粒装置(徳寿工作所製特殊転動皿:山型状としたバッフル機構を備えた仕様、以下転動皿型造粒機Yと表記する)へ供給し、転動造粒を行い、粉体加湿物を得た。
【0063】
次に、転動皿型造粒機Yから排出される粉体加湿物を、流動層乾燥機(レッチェ社製TG200)に供給し、熱風温度100℃で約10分乾燥し、粉体乾燥物を得た。その後、目開きが約1000μmと約300μm(東京スクリーン社製Test sieves試験用ふるいJIS規格Z8801)のふるいを使用し、タップ型篩分機(レッチェ社製AS200tap)を用いて篩分を行い、サンプル1の粉体造粒物を得た。
【0064】
(2)水およびエキス原料の間欠添加を想定する実験条件
混合された原料Aを、1000g(新たに供給される原料粉体50%、回収された原料粉体50%)、攪拌造粒機Xへ供給した。攪拌造粒機の攪拌羽根の回転数を1000rpmとし、攪拌しながら、原料粉体の重量に対して平均添加率が3.4重量%となるように水を添加し、また粉体原料の重量に対して表5に示した平均添加率となるようにエキス原料を添加し、粉体加湿物Cを得た。
【0065】
次に、200rpmで旋回を行っている転動皿型造粒機Yへ、混合された原料Aを表5に示された分量ずつ秤り込み、その上から攪拌造粒機Xから排出された粉体加湿物Cを供給し、転動造粒を行い、粉体加湿物を得た。
【0066】
【表5】

【0067】
次に、転動皿型造粒機Yから排出される粉体加湿物をサンプル1と同様の条件にて乾燥、篩分を行い、サンプル2〜4の粉体造粒物を得た。
【0068】
各サンプルの実験条件で想定される結合液の添加時間および停止条件については、上述した通り、結合液の添加時間と停止時間との比は、粉体加湿物重量およびまぶされる乾燥状態の原料粉体重量によって計算することができる。これに基づいて、添加時間を10秒としたときの各サンプルの想定される結合液添加の停止時間を表6に示す。
【0069】
【表6】

【0070】
各種サンプルについて、サンプル台の上に乗せて室温にて1時間静置した後、該サンプル台を傾けて目視にて吸湿固結性の評価を行った。その結果を表7に示す。なお、吸湿固結性の評価基準は以下の通りとした。
<吸湿固結性の評価基準>
2:さらさらした状態で、固結は見られない
1:軽い固結が見られる
0:固結が見られる
【0071】
【表7】

【0072】
表7の結果より、粉体造粒物の製造においては水およびエキス原料を間欠的に添加する方が固結しにくくなることが示された。特に、停止時間が1秒間よりも2秒間または3秒間である方が、得られた粉体造粒物は固結しにくくなることがわかった。
【0073】
また、各サンプルの粉体造粒物の拡大写真を図2に示す。図2の結果によれば、サンプル1は細粒が集まった凝集体であり、細粒間に空隙があること、および表面に光沢(透明感)があることが観察された。これに対してその他のサンプルでは、微粉が入り込んで空隙が埋められており、表面に光沢(透明感)はなく、微粉が付着結合しているように観察された。この傾向は、添加時間に対し、停止時間が長いほど顕著であった。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明によれば、吸湿による固結が抑制された粉体造粒物を得ることができる。本発明により得られる粉体造粒物は、食品、医薬品、化粧品、農薬等の分野において有用である。特に、一般家庭での台所など、湿度の高い場所に長期間保管された場合でも、吸湿固結しにくい調味料や香辛料などの粉体食品を製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料粉体を連続的に供給しながら、結合液を間欠的に添加して造粒する、粉体造粒物の製造方法。
【請求項2】
結合液を間欠的に噴霧して添加する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
結合液を、原料粉体に対して、平均添加率が1〜10重量%となるように添加する、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
結合液を、原料粉体に対して、瞬時添加率が1〜15重量%となるように添加する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
結合液を、1〜25秒間添加した後1〜30秒間添加を停止する操作を繰り返して間欠的に添加する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
粉体造粒物の平均粒子径が150〜1000μmである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
造粒が撹拌造粒である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
造粒が転動造粒である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
竪型の筒状槽を有する撹拌造粒装置を用いて造粒する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
粉体造粒物が食品である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法により製造される、粉体造粒物。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法により製造される、食品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−194343(P2011−194343A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65188(P2010−65188)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】