説明

耐擦傷性及び表面スリップ性に優れた反射防止フィルム

【課題】本発明は、耐擦傷性及び表面スリップ性に優れた反射防止フィルムを提供し、さらに詳細には、画像表示素子の表面の光反射を効果的に防止し、かつ製造費用が低い反射防止フィルムを提供する。
【解決手段】本発明の耐擦傷性及び表面スリップ性に優れた反射防止フィルムは、基材フィルム100の少なくとも一方の面に、(メタ)アクリレート化合物を含有するハードコーティング層110、バインダー樹脂と導電性粒子とを含有する高屈折層120及びフッ素化合物を含有する低屈折層130が順に積層された反射防止フィルムであって、前記低屈折層の表面は、微細な凹凸を有し、また前記低屈折層側の表面摩擦係数のうち、静摩擦係数は0.5以下であり、動摩擦係数は0.7以下であることを特徴とし、前記低屈折層130は、バインダー樹脂100重量対比15重量部〜25重量部の中空シリカを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐擦傷性及び表面スリップ性に優れた反射防止フィルムに関し、さらに詳細には、画像表示素子の表面の光反射を効果的に防止し、耐擦傷性と表面スリップ性に優れ、かつ製造費用が低い耐擦傷性及び表面スリップ性に優れた反射防止フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、PDP、CRT、LCD等のディスプレイにおいては、外部から画面に入射された光の反射によって表示画像を見難くするという問題が発生するが、特に、最近フラットパネルディスプレイの大型化につれて前記問題を解決することがますます重要な課題となっている。
【0003】
前記問題を解決するために、今までいろいろなディスプレイに対して反射防止処理や防眩処理が施されているが、一つの例として反射防止フィルムを各種のディスプレイに使用している。図1は、反射防止フィルムの原理を示す図である。
【0004】
このような反射防止フィルムは、従来の蒸着又はスパッタリングなどのドライコーティングプロセス法により基材フィルム上に低屈折率の物質(MgF)を薄膜化する方法又は屈折率の大きな物質[ITO(錫ドープ酸化インジウム)、ATO(錫ドープ酸化アンチモン)、ZnO、TiO等]と屈折率の小さな物質(MgF、SiO等)を交互に積層する方法などにより製作されてきた。しかしながら、このようなドライコーティングプロセス法により製造された反射防止フィルムは、製造費用が高いという商業的短所があった。
【0005】
そのため、最近では、前記問題点を解決するために、ウェットコーティングを利用した反射防止フィルムを製造することが試みられており、実際に商業用として使用されている。しかしながら、このようなウェットコーティングにより製作された反射防止フィルムは、前記ドライコーティングプロセス法により製造された反射防止フィルムに比べて、表面の耐擦傷性が落ちるという問題が発生する。
【0006】
反射防止フィルムは、PDP、CRT、LCDなどのディスプレイにおいて最外郭に位置して、外部から入る光に対する反射による画質の低下を防止するための反射防止特性、外部汚染物に対する防汚特性、外部機械的摩擦に対する耐擦傷性などに主要特性を有している。
【0007】
しかしながら、最近では、前記主要特性の他に追加的に表面スリップ性が主要特性として台頭しており、仮に表面スリップ性が良くない場合にディスプレイをクリーニングする場合又は視野角の調整のために位置移動時にフレームと反射防止フィルムとの間の摩擦によってきしむ騷音が発生し、これによって消費者の不満を引き起こすことができるという弱点を有している。
【0008】
そのため、品質が優れた反射防止フィルムになるためには、前記主要特性の他に優れた表面スリップ性を必須的に有しなければならず、このための反射防止フィルムが求められているのが現状である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、画像表示素子の表面の光反射を効果的に防止し、耐擦傷性と表面スリップ性に優れ、製造費用が低い耐擦傷性及び表面スリップ性に優れた反射防止フィルムを提供することにある。
【0010】
本発明の上記の目的及び他の目的とその利点は、添付図面を参照して好ましい実施例を説明した下記の説明からより明確になるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的は、基材フィルム100の少なくとも一方の面に、(メタ)アクリレート化合物を含有するハードコーティング層110、バインダー樹脂と導電性粒子とを含有する高屈折層120及びフッ素化合物を含有する低屈折層130が順に積層された反射防止フィルムであって、前記低屈折層130の表面は、微細な凹凸を有し、また前記低屈折層130側の表面摩擦係数のうち、静摩擦係数は0.5以下であり、動摩擦係数は0.7以下であることを特徴とする、耐擦傷性及び表面スリップ性に優れた反射防止フィルムにより達成される。
【0012】
ここで、前記低屈折層130は、バインダー樹脂100重量対比15重量部〜25重量部の中空シリカをさらに含むことを特徴とする。
【0013】
また、前記反射防止フィルムは、ヘイズが3.0%未満であることを特徴とする。
【0014】
また、前記反射防止フィルムは、380nmの波長領域で透過率が5%未満であることを特徴とする。
【0015】
また、前記ハードコーティング層110の層厚さが1μm〜50μmの範囲であることを特徴とする。
【0016】
また、前記高屈折層120の層厚さは、0.01μm〜1.0μmの範囲であり、前記低屈折層130の層厚さは、0.01〜1.0μmの範囲であることを特徴とする。
【0017】
また、前記高屈折層120の導電性粒子は、金属酸化物微粒子であることを特徴とする。
【0018】
また、前記高屈折層120の前記バインダー樹脂と導電性粒子の重量割合は、10/90〜30/70であることを特徴とする。
【0019】
また、前記低屈折層130の前記フッ素化合物は、主鎖中にビニルエーテル構造を有する含フッ素系共重合体であることを特徴とする。
【0020】
また、前記低屈折層130は、粒径0.001μm〜0.2μmの範囲のシリカ微粒子をさらに含有することを特徴とする。
【0021】
また、前記シリカ微粒子は、2成分以上の粒径分布を有する微粒子であることを特徴とする。
【0022】
また、前記低屈折層130は、以下の化学式(1)で表されるシランカップリング剤又はその加水分解物又はその反応物をさらに含有することを特徴とする。
R(1)R(2)SiX4−(a+b) (1)
(式中、R(1)、R(2)は、それぞれアルキル基、アルケニル基、アリル基、又はハロゲン基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、メタクリルオキシ基、又はシアノ基を有する炭化水素基であり、Xは、アルコキシル基、アルコキシアルコキシル基、ハロゲン基、アシルオキシ基の中から選択された加水分解可能な置換基であり、aとbは、それぞれ0、1又は2であり、また(a+b)は、1、2又は3である。)
【0023】
また、前記低屈折層130のフッ素化合物は、下記の化学式(2)で表されるアルコキシシリル基を有するフッ素樹脂又はこの加水分解生成物をさらに含有することを特徴とする。
R(3)R(4)SiX4−(c+d) (2)
(式中、R(3)、R(4)は、それぞれフッ素置換されたアルキル基、アルケニル基、アリル基、メタクリルオキシ基、又は(メタ)アクリロイル基を有する炭化水素基であり、Xは、アルコキシル基、アルコキシアルコキシル基、ハロゲン基又はアシルオキシ基の中から選択された加水分解可能な置換基であり、cとdは、それぞれ0、1、2又は3であり、また(c+d)は、1、2又は3である。)
【発明の効果】
【0024】
本発明による耐擦傷性及び表面スリップ性に優れた反射防止フィルムによると、表面摩擦係数を下げることによって耐擦傷性が向上し、表面スリップ性に優れるから、視野角の調整などのためのディスプレイ位置調整時に発生可能な摩擦騷音の発生を抑制することができ、製造費用が低いなどの効果がある。
【0025】
したがって、本発明による耐擦傷性及び表面スリップ性に優れた反射防止フィルムは、例えば、プラズマディスプレイのような大画面の平面テレビの前面、液晶テレビの前面などに反射防止フィルムとして適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施例と図面を参照して、本発明を詳細に説明する。これらの実施例は、単に本発明をより具体的に説明するために例示的に提示したものに過ぎず、本発明の範囲がこれらの実施例により制限されないということは、当業界における通常の知識を有する者にとって自明である。
【0027】
図2は、反射防止フィルムの積層構造を模式的に示したフィルム断面図であり、このような反射防止フィルムは、基材フィルム100上にハードコーティング層110、高屈折層120及び低屈折層130が順次積層されたフィルム(以下、100+110+120+130を「積層フィルム」とする)であり、このような反射防止フィルムに保護フィルム140と基材フィルム100の反対面に粘着層150及び離型フィルム160が積層されうる。
【0028】
本発明は、低屈折層の表面のスリップ性を下げることによって、耐擦傷性を改善し、視野角の調整時に摩擦騷音の発生を抑制した反射外観が優れた反射防止フィルムを提供することができ、また表面反射率が低く色目が中性である反射外観が優れた反射防止フィルムを提供することができる。
【0029】
このような目的を達成するために、本発明者等は、鋭意研究を重ねた結果、基材フィルムの少なくとも片面にハードコーティング層110、高屈折層120、低屈折層130が順次積層され、また低屈折層130の表面摩擦係数を静摩擦係数は0.5以下、動摩擦係数は0.7以下にする構成により、その目的を達成できる反射防止フィルムからなるということを発見した。
【0030】
また、本発明は、前記反射防止フィルムを画像表示面又は前面板の表面に粘着してなる画像表示装置を備える。
【0031】
本発明によると、基材フィルムに(メタ)アクリレート化合物を含有するハードコーティング層110、導電性無機粒子を含有する高屈折層120、フッ素化合物を及び/又は中空シリカ粒子を含有する低屈折層130を積層してなる積層フィルムに表面動摩擦係数(μ)を0.7以下、静摩擦係数(μ)を0.5以下にすることによって、表面スリップ性を改善して耐擦傷性が向上して優れた機械的特性を有する反射防止フィルムを得ることができた。また、摩擦係数を下げて表面スリップ性を改善することによって、視野角の調整などのためのディスプレイ位置の調整時に発生可能な摩擦騷音を抑制するために、例えばプラズマディスプレイのような大画面の平面テレビの前面、液晶テレビの前面などに適用される反射防止フィルムとして適している。
【0032】
本発明による耐擦傷性及び表面スリップ性に優れた反射防止フィルムの基材フィルム100は、表示装置用部材(以下、表示部材とする)として使用するために、光線透過率が高く、ヘイズ値が低いことが好ましい。例えば、波長400〜800nmでの光線透過率は、好ましくは、40%以上、さらに好ましくは、60%以上であり、また、ヘイズ値は、好ましくは、5%以下、さらに好ましくは、3%以下である。これらの条件の一つ又はすべてを満足させない場合には、表示部材として使用したときに、画像の鮮明性が欠如するという傾向がある。また、このような効果を発揮する点から、光線透過率の上限値は、99.5%程度まで、そしてヘイズ値の下限値は、0.1%程度までが製作可能な範囲である。
【0033】
前記基材フィルム100は、特に限定されるものではなく、公知のプラスチック基材フィルムに利用される樹脂素材の中から適切に選択して使用することができる。このような基材フィルム100用樹脂素材として、例えば、エステル、エチレン、プロピレン、ジアセテート、トリアセテート、スチレン、カーボネート、メチルペンテン、スルホン、エーテルエチルケトン、イミド、フッ素、ナイロン、アクリレート、脂環族オレフィン系等から選択される一つを構成単位にするポリマー又は共重合ポリマーを使用することができる。
【0034】
好ましくは、これらの樹脂のうち、ポリエチレンテレフタレートなどのエステル系、トリアセチルセルロースなどのアセテート系、及びポリメチルメタクリルレートなどのアクリレート系から選択される一つを構成単位にするポリマー又は共重合ポリマーが好ましいが、これらは、透明性、強度及び厚さの均一性に優れているからである。特に、透明性、ヘイズ値、機械特性の面で、エステル系を構成単位にするポリマーからなる基材フィルム100が特に好ましい。
【0035】
このようなポリエステル系樹脂には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−α,β−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4´−ジカルボキシレートなどを例に挙げることができる。また、これらのポリエステルには、また他のジカルボン酸成分又はジオール成分が20モル%以下であると、共重合されていても良い。その中でも品質、経済性などを総合的に判断すると、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0036】
これらの構成樹脂成分は、1種のみを使用しても良く、2種以上を併用しても良い。
【0037】
また、本発明による耐擦傷性及び表面スリップ性に優れた反射防止フィルムの基材フィルム100の厚さは、特に限定されないが、透明性、ヘイズ値、機械特性の面で、通常5〜800μm、好ましくは、10〜250μmである。
【0038】
また、2枚以上のフィルムを公知の方法で接合したものであっても良い。
【0039】
また、前記基材フィルム100は、ハードコーティング層110を形成する前に、各種の表面処理(例えば、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、エッチング処理、又は粗面化処理等)を施したものであっても良い。また、接着を促進させるために、基材フィルムの表面にプライマー層としてコーティング(例えば、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエステルアクリレート系、ポリウレタンアクリレート系、ポリエポキシアクリレート系、チタネート系化合物などのコーティング)を施した後に、ハードコーティング層110を形成しても良い。特に、親水基含有ポリエステル樹脂にアクリル系化合物をグラフト化させた共重合体と架橋結合剤からなる組成物をプライマー塗布したものは、接着性が向上し、耐熱性、耐水性などの耐久性に優れているから、基材フィルム100として好ましい。
【0040】
次に、本発明による耐擦傷性及び表面スリップ性に優れた反射防止フィルムのハードコーティング層110は、前記基材フィルム100上に形成されるが、(メタ)アクリレート化合物を含有することが必須である。(メタ)アクリレート化合物は、活性光線の照射によりラジカル重合され、形成される膜の耐溶剤性や硬度を向上させる。具体的に、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの単官能アクリレート化合物を例に挙げることができる。また、(メタ)アクリロイル基が分子内に2個以上である多官能(メタ)アクリレート化合物は、耐溶剤性などが向上するので、本発明においては、特に好ましい。多官能(メタ)アクリレートの具体的な例には、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロルプロパントリ(メタ)アクリレートなどを例に挙げることができる。これらの単量体は、1種又は2種以上混合して使用しても良い。
【0041】
本発明におけるハードコーティング層110を形成するための構成樹脂の成分には、ハードコート層110の硬度を向上させる目的で、アルキルシリケート類及びその加水分解物、コロイドシリカ、乾式シリカ、湿式シリカ、酸化チタンなどの無機粒子、コロイド状に分散されたシリカ微粒子などを含有させても良い。
【0042】
前記ハードコート層110の厚さは、用途によって適宜に選択されるが、通常、1μm〜50μm、好ましくは、2μm〜30μmである。
【0043】
ハードコーティング層110の厚さが1μm未満では、表面の硬度が不充分であるから傷が生じやすくて好ましくない。また、50μmを超える場合には、透明性が低下してヘイズ値が高くなりやすく、また硬化膜が弱くなり、フィルムを折り曲げたときにハードコーティング層110にクラックが生じやすくなるため、好ましくない。
【0044】
次に、本発明による耐擦傷性及び表面スリップ性に優れた反射防止フィルムの高屈折層120は、前記ハードコーティング層110上に形成されるが、導電性粒子とバインダー成分を含有することが必須である。本発明での導電性粒子とは、金属微粒子あるいは金属酸化物微粒子を意味する。その中でも金属酸化物微粒子は、透明性が高いから好ましい。金属酸化物微粒子には、錫含有酸化アンチモン粒子(ATO)、亜鉛含有酸化アンチモン粒子、錫含有酸化インジウム粒子(ITO)、酸化亜鉛/酸化アルミニウム粒子、酸化アンチモン粒子などが特に好ましく、さらに好ましくは、錫含有酸化インジウム粒子(ITO)、錫含有酸化アンチモン粒子(ATO)である。
【0045】
前記導電性粒子は、平均1次粒径(BET法により測定される球相当の直径)が0.5μm以下である粒子が好ましく使用されるが、さらに好ましくは、0.001〜0.3μm、さらに好ましくは、0.005〜0.2μmの粒径のものが利用される。前記平均粒径が前記範囲を超過すると、生成される被膜(導電層120)の透明性を低下させ、前記範囲未満では、前記粒子が凝集されやすいから、生成被膜(高屈折層120)のヘイズ値が増大して如何なる場合にも、所望のヘイズ値を得ることが困難であるからである。
【0046】
前記高屈折層120を構成するバインダー成分は、(メタ)アクリレート化合物が利用される。(メタ)アクリレート化合物は、活性光線の照射によりラジカル重合され、形成される膜の耐溶剤性や硬度を向上させるために好ましく、また、(メタ)アクリロイル基が分子内に2個以上である多官能(メタ)アクリレート化合物は、耐溶剤性などが向上するので、本発明においては特に好ましい。例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロルプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エチレン変性トリメチロルプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス−(2−ヒドロキシエチル)−イソシアン酸エステルトリ(メタ)アクリレートなどの3官能(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの4官能以上の(メタ)アクリレートなどを例に挙げることができる。
【0047】
高屈折層120を構成するバインダー成分は粒子の分散性を向上させるために、カルボキシ基、リン酸基、スルホン酸基などの酸性官能基を有する(メタ)アクリレート化合物を使用することができる。具体的には、酸性官能基含有モノマーには、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸などの不飽和カルボン酸、モノ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、ジフェニル−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェートなどのリン酸(メタ)アクリル酸エステル、2−スルホエステル(メタ)アクリレートなどを例に挙げることができる。その他、アミド結合、ウレタン結合、エーテル結合などの極性を有した結合を有する(メタ)アクリレート化合物を使用することができる。また、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーなどのウレタン結合を有している樹脂であると、極性も高く粒子の分散性が良くなるので、特に好ましい。
【0048】
本発明でハードコート層110及び高屈折層120を形成するとき、塗布したバインダー成分の硬化を進行させるために開始剤を使用しても良い。前記開始剤には、塗布したバインダー成分を、ラジカル反応、負イオン反応、陽イオン反応などによる重合及び/又は架橋反応を開始又は促進させるものであり、従来から公知の各種光重合開始剤を使用することができる。具体的には、ソディウムメチルジチオカルバメートスルフィド、ジフェニルモノスルフィド、ジベンゾチアゾイルモノスルフィド及びジスルフィドなどのスルフィド類;チオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントンなどのチオキサントン誘導体;ヒドラゾーン、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物;ベンゼンジアゾニウム塩などのジアゾ化合物; ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾフェノン、ジメチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジルアントラキノン、t−ブチルアントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−クロロアントラキノンなどの芳香族カルボニル化合物;p−ジメチルアミノ安息香酸メチル、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、D−ジメチルアミノ安息香酸ブチル、p−ジエチルアミノ安息香酸イソプロピルなどのジアルキルアミノ安息香酸エステル;ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドなどの過酸化物;9−フェニルアクリジン、9−p−メトキシフェニルアクリジン、9−アセチルアミノアクリジン、ベンズアクリジンなどのアクリジン誘導体;9,10−ジメチルベンズフェナジン、9−メチルベンズフェナジン、10−メトキシベンズフェナジンなどのフェナジン誘導体;6,4´,4´´−トリメトキシ−2,3−ジフェニルキノキサリンなどのキノキサリン誘導体;2,4,5−トリフェニルイミダゾイル二量体、2−ニトロフルオレン、2,4,6−トリフェニルピリリウム4フッ化ホウ素塩、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、3,3´−カルボニルビスクマリン、チオミヒラーケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニール)フェニル)プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノンなどを例に挙げることができる。
【0049】
また、本発明でハードコーティング層110及び高屈折層120を形成するとき、前記開始剤の、酸素阻害による感度の低下を防止するために、光重合開始剤にアミン化合物を共存させても良い。このようなアミン化合物には、例えば、脂肪族アミン化合物、芳香族アミン化合物などの不揮発性のものであれば特に限定されない。例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミンなどが適切である。
【0050】
本発明において、高屈折層120の構成成分の配合割合は、バインダー成分と導電粒子との重量割合が10/90〜30/70であるものが必要であり、好ましくは、15/85〜25/75である。粒子が前記範囲より少ないと、得られる膜は、透明性が充分であっても導電性が悪くなり、逆に多すぎると、得られる膜の各種物理的、化学的強度が悪くなるので、好ましくない。光重合開始剤の量は、バインダー成分100重量部に対して、通常、0.1〜20重量部、好ましくは、1.0〜15.0重量部の範囲で添加される。0.1重量部未満では、光重合が遅くなり、硬度及び耐擦過性を満たすために長時間の光照射を必要とする傾向があり、時には、未硬化になりやすい。一方、20重量部を超過して添加すると、塗膜の導電性、耐摩耗性、耐厚性などの機能が低下しやすい。
【0051】
本発明による耐擦傷性及び表面スリップ性に優れた反射防止フィルムの高屈折層120の構成成分は、以上説明したバインダー成分、導電性粒子、光重合開始剤を必須構成成分とし、また必要によって、例えば、重合禁止剤、硬化触媒、酸化防止剤、分散剤、レベリング剤、シランカップリング剤などの各種添加剤を含有しても良い。
【0052】
本発明では、前記高屈折層120の構成成分に導電性の付与を目的としてポリピロール及びポリアニリンなどの導電性ポリマー、金属アルコラート及びキレート化合物などの有機金属化合物をさらに含有させることができる。また、この高屈折層120の構成成分に、表面硬度を向上させる目的で、アルキルシリケート類及びその加水分解物、コロイドシリカ、乾式シリカ、湿式シリカ、酸化チタンなどの無機粒子、コロイド状に分散されたシリカ微粒子などをさらに含有させることもできる。
【0053】
本発明の高屈折層120により所望の水準の帯電防止性が付与されるためには、前記高屈折層120の表面抵抗値が1×1011Ω/□以下であるものが好ましく、さらに好ましくは、1×1010Ω/□以下である。
【0054】
本発明における高屈折層120は、鮮明性、透明性の面で、全光線透過率が好ましくは、40%以上、さらに好ましくは、60%以上である層である。
【0055】
次に、本発明による耐擦傷性及び表面スリップ性に優れた反射防止フィルムの低屈折層130は、高屈折層120上に形成され、フッ素化合物を含有することが必須である。
【0056】
本発明に利用されるフッ素化合物は、熱又は電離放射線により架橋されるフッ素化合物が好ましい。架橋されるフッ素化合物には、不飽和基を有する含フッ素モノマー、架橋性基を有するフッ素ポリマー、あるいは含フッ素モノマーと架橋性基を付与するためのモノマーを構成単位にする含フッ素系共重合体を使用しても良い。特に、主鎖中にビニルエーテル構造を有する含フッ素系共重合体で構成されることが好ましい。含フッ素系共重合体は、フッ素含有量が30重量%以上であり、ポリスチレン換算による数平均分子量が500以上、好ましくは、5000以上であるフッ素含有オレフィン鎖を有することが好ましい。このような含フッ素系共重合体は、含フッ素化合物及びビニルエーテル含有化合物を含有する硬化性組成物を重合反応させることによって得られるものであり、好ましくは、フッ素含有オレフィン化合物、このフッ素含有オレフィン化合物と共重合可能なビニルエーテル含有化合物、及び必要によって配合される反応性乳化剤からなる硬化性組成物を重合反応させることによって得ることができる。含フッ素系共重合体を形成するために使用する硬化性組成物には、反応性乳化剤を1成分として含有させることが好ましい。この反応性乳化剤成分を使用することによって、塗布液中に含まれている含フッ素系共重合体を、良好な塗布性及びレベリング性で塗布できる。この反応性乳化剤には、特に非イオン性反応性乳化剤を使用することが好ましい。
【0057】
前記低屈折層130を構成する含フッ素系共重合体において、フッ素含有オレフィン化合物成分に由来する構造単位は、20〜70モル%、好ましくは、25〜65モル%、さらに好ましくは、30〜60モル%である。フッ素含有オレフィン化合物成分に由来する構造単位の割合が20モル%未満では、得られる含フッ素系共重合体中のフッ素含有量が過小になりやすいので、得られる低屈折層130は、屈折率が十分に低いものにはならない。一方、フッ素含有オレフィン化合物成分に由来する構造単位の割合が70モル%を超過すると、塗布液の均一性が悪化して均質の塗布被膜の形成が難しくなり、また、透明性及び基材への密着性が低くなって好ましくない。含フッ素系共重合体において、ビニルエーテル構造含有化合物成分に由来する構造単位は、10〜70モル%、好ましくは、15〜65モル%、さらに好ましくは、30〜60モル%である。ビニルエーテル構造含有化合物成分に由来する構造単位の割合が10モール%未満では、塗布液の均一性が悪化して均質の塗布被膜の形成が難しくなり、70モル%を超過すると、得られる低屈折層130は、透明性及び低反射率の光学特性が悪化したものになりやすいから好ましくない。このようなビニルエーテル構造含有化合物成分として、水酸基又はエポキシ基などの反応性官能基を含有する単量体を使用することによって、得られる硬化性樹脂組成物を塗布剤として使用した場合の硬化膜の強度を向上させることができるので好ましい。水酸基又はエポキシ基を含有する単量体の全単量体における割合は、0〜20モル%であり、好ましくは、1〜20モル%、さらに好ましくは、3〜15モル%である。この割合が20モル%を超過すると、得られる樹脂層130は、光学的特性が悪化しやすく、また、硬化膜が脆弱なものになりやすい。反応性乳化剤を含有する含フッ素系共重合体において、反応性乳化剤成分由来の構成単位の割合は、通常0〜10モール%であり、好ましくは、0.1〜5モル%である。この割合が10モール%を超過すると、得られる樹脂層130が粘着性を帯びたものになるため、取り扱い難く、また、塗布剤の耐湿性が低下するため好ましくない。
【0058】
また、本発明においての低屈折層130は、バインダー樹脂100重量対比15重量部〜25重量部の中空シリカを含むことを特徴とするが、前記中空シリカ粒子含有量が15重量部未満である場合には、屈折率の上昇による反射防止特性が低下、すなわち反射率が上昇するという問題点があり、中空シリカ粒子含有量が25重量部を超過する場合には、表面粗度の上昇によるスリップ性減少及び高価の中空シリカ粒子によるコスト上昇という問題点があるためである。
【0059】
本発明における低屈折層130には、含フッ素系共重合体の他に、また、架橋性化合物を配合することが好ましく、所定の硬化性を付与して、硬化特性を改善するために効果的である。
【0060】
前記架橋性化合物には、例えば各種アミノ化合物、ペンタエリスリトール、ポリフェノール、グリコール、アルキルシリケート類及びその加水分解物などの各種水酸基含有化合物などを挙げることができる。前記架橋性化合物として利用されるアミノ化合物は、フッ素化合物中に存在する水酸基又はエポキシと反応可能なアミノ基、例えばヒドロキシアルキルアミノ基及びアルコキシアルキルアミノ基のうち、何れか一方又は両方を2個以上含有する化合物であり、具体的には、例えばメラミン系化合物、要素系化合物、ベンゾグアナミン系化合物、グリコールウリル系化合物などを挙げることができる。メラミン系化合物は、一般にトリアジン環に窒素原子が結合された骨格を有する化合物として知られているものであり、具体的には、メラミン、アルキル化メラミン、メチロールメラミン、アルコキシ化メチルメラミンなどを例に挙げることができるが、1分子中にメチロール基及びアルコキシ化メチル基のうち、何れか一方又は両方を2個以上有することが好ましい。具体的には、メラミンとホルムアルデヒドを塩基性条件下で反応させて得られるメチロール化メラミン、アルコキシ化メチルメラミン、又はこれらの誘導体が好ましく、特に硬化性樹脂組成物に良好な保存安定性が得られる点、及び良好な反応性が得られる点でアルコキシ化メチルメラミンが好ましい。架橋性化合物として利用されるメチロール化メラミン及びアルコキシ化メチルメラミンには、特に制約はなく、例えば文献「プラスチック材料講座[8]ユリアメラミン樹脂」(日刊工業新聞社)に記載されている方法で得られる各種の樹脂形状物の使用も可能である。また、尿素化合物には、尿素の他に、ポリメチロール化尿素その誘導体であるアルコキシ化メチル尿素、ウロン環を有するメチロール化ウロン及びアルコキシ化メチルウロンなどを例に挙げることができる。そして、尿素誘導体などの化合物に対しても、上記の文献に記載されている各種の樹脂形状物の使用が可能である。
【0061】
このような架橋性化合物の使用量は、含フッ素系共重合体100重量部に対して、70重量部以下であり、好ましくは、3〜50重量部、さらに好ましくは、5〜30重量ブイである。架橋性化合物の使用量が3重量部未満では、塗布・硬化により形成される薄膜の耐久性が不充分になる場合があり、70重量部を超えると、含フッ素系共重合体との反応においてゲル化を回避することが困り、また硬化膜が低屈折率のものにならないから硬化物が弱いものになる場合がある。
【0062】
また、前記低屈折層130には、耐擦過性を付与するためにシリカ微粒子、又は/及びシランカップリング剤、又は/及びアルコキシシリル基を有するフッ素樹脂を含有することが好ましい。
【0063】
前記シリカ微粒子成分は、乾式シリカ、湿式シリカ、コロイド状に分散されたシリカ微粒子などを含有させることが好ましく、またコロイド状に分散されたシリカ微粒子を含有させることが好ましい。前記シリカ微粒子の粒径は、平均1次粒径(球相当直径:BET法)が0.001〜0.2μmのものを一般に使用することができるが、好ましくは、0.005〜0.15μmの粒径のものが利用される。前記平均粒径が、このような好ましい範囲であれば、生成被膜(樹脂層)の透明性が低下することはなく、一方、表面の硬度を向上させ難いこともない。また、前記シリカ微粒子の形状は、球状、数珠状が好ましく利用される。前記シリカ粒子は、平均粒径が異なる2成分以上の粒子を使用することができる。また、前記シリカ微粒子は、表面処理を実施して使用することもできる。表面処理方法には、プラズマ放電処理やコロナ放電処理などの物理的表面処理とカップリング剤を使用した化学的表面処理があるが、化学的処理が好ましく利用される。化学的処理に利用されるカップリング剤には、シランカップリング剤が特に好ましく利用される。シリカ微粒子由来の成分は、固形分比で5〜50%、また5〜40%、特に5〜30%にすることが好ましい。シリカ微粒子由来の成分がこのような好ましい範囲内であると、得られる樹脂層130の表面硬度が充分であり、一方、透明性及び低反射率などの光学特性も優れたものにすることができる。
【0064】
前記シランカップリング剤の成分は、以下の化学式(1)で表される化合物又はその加水分解生成物である。
R(1)R(2)SiX4−(a+b)(1)
ここで、R(1)、R(2)は、それぞれアルキル基、アルケニル基、アリル基、又はハロゲン基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、メタクリルオキシ基、又はシアノ基などを有する炭化水素基である。Xは、アルコキシル基、アルコキシアルコキシル基、ハロゲン基又はアシルオキシ基の中から選択された加水分解可能な置換基である。前記化学式(1)においてa、bは、それぞれ0、1又は2であり、また(a+b)は、1、2又は3である。シランカップリング剤由来の成分は、固形分比で5〜70%、また15〜65%、特に20〜60%にすることが好ましい。シランカップリング剤由来の成分がこのような好ましい範囲であると、得られる樹脂層の表面硬度が充分で、かつ透明性及び低反射率などの光学特性も優れたものにすることができる。
【0065】
前記アルコキシシリル基を有するフッ素樹脂は、以下の化学式(2)で表される化合物又はその加水分解生成物である。
R(3)R(4)SiX4−(c+d) (2)
ここで、R(3)、R(4)は、それぞれフッ素置換されたアルキル基、アルケニル基、アリル基、メタクリルオキシ基、又はアクリロイル基を有する炭化水素基である。Xは、アルコキシル基、アルコキシアルコキシル基、ハロゲン基又はアシルオキシ基の中から選択された加水分解可能な置換基である。前記化学式(2)において、c、dは、それぞれ0、1、2又は3であり、また(c+d)は、1、2又は3である。アルコキシシリル基を有するフッ素樹脂由来の成分は、固形分比で20〜90%、また25〜80%、特に30〜70%にすることが好ましい。アルコキシシリル基を有するフッ素樹脂由来の成分がこのような好ましい範囲であると、得られる樹脂層の透明性及び低反射率の光学特性が良好であり、一方、樹脂層の表面硬度も良いものにすることができる。
【0066】
本発明において低屈折層130を形成するとき、塗布液の硬化を進めるために、硬化触媒を使用しても良い。硬化触媒には、シランカップリング剤の縮合反応を促進させることが好ましく、このようなものとして酸化合物を挙げることができる。これらのうち、ルイス酸化合物が好ましい。ルイス酸化合物の例として、アセトアセトキシアルミニウムなどの金属アルコキシド又は金属キレートを例に挙げることができる。この硬化触媒の量は、適切に決定できるが、例えば、シランカップリング剤100重量部に対して通常0.1〜10重量部である。
【0067】
本発明では、低屈折層130を形成するとき、また必要に応じて、例えば重合禁止剤、酸化防止剤、分散剤、レベリング剤などの各種添加剤を含有しても良い。
【0068】
本発明による耐擦傷性及び表面スリップ性に優れた反射防止フィルムが高透明性になるためには、積層フィルムのヘイズを3.0%未満にすることが良く、好ましくは、2.7%未満である。ヘイズが3.0%以上であると、透明性が不充分になりやすいためである。
【0069】
また、本発明における低屈折層130の表面が良好な耐擦過性になるためには、樹脂層の表面に微細な凹凸を有することが必要である。前記凹凸による表面粗度と耐擦過性との関係は、次のような作用機構によるものと考えられる。すなわち、微細凹凸面においては、この凹凸面をスチールウールなどでスライディングすると、スチールウール部分は、凸部分とのみ接してスライディングされるものになって、樹脂層の表面との接触面積が必要最小限に抑制され、その結果、特に耐擦過性が向上するようになる。前記樹脂層130の表面の前記凹凸の算術平均照度(Ra)値の範囲は、0.003μm〜0.025μmが必須である。さらに好ましくは、0.004μm〜0.022μm、さらに好ましくは、0.004μm〜0.020μmである。前記凹凸の平均算術照度(Ra)値がこの範囲を超過すると、樹脂層のヘイズが高まって透明性を低下させる。また、前記凹凸の算術平均照度(Ra)値が前記範囲未満では、耐擦過性を向上させ難くなる。本発明における樹脂層の表面に微細凹凸を形成するために、コロイドシリカ、乾式シリカ、湿式シリカ、酸化チタン、ガラスビーズ、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化けい素などの無機粒子、コロイド状に分散されたシリカ微粒子などを含有させることが好ましく、さらに好ましくは、コロイド状に分散されたシリカ微粒子を含有させる。特に好ましくは、シリカ微粒子が2成分以上の粒径分布を有することにより形成できる。例えば、シリカ微粒子の平均粒径が0.001〜0.02μmである粒子と平均粒径が0.02〜0.2μmである粒子とが混在することにより、微細な凹凸を形成することができる。
【0070】
本発明の低屈折層130側の前記積層フィルムの表面が低反射性になるためには、前記積層フィルムの最高反射率は4%未満で、かつ最低反射率は0.2%以上にならなければならない。反射率がこの範囲を超えると、外光が射すことが発生しやすくなり、その積層フィルムの表面が低反射性にはならない。
【0071】
本発明の低屈折層130側の前記積層フィルムの表面が低反射性になるためには、高屈折層120及び低屈折層130の屈折率と厚さとの積が対象光線(通常、可視光線)の波長の1/4になるようにすることが好ましい。したがって、高屈折層120及び低屈折層130においては、各層の厚さと屈折率nとの積の4倍が380〜780nmの範囲にあることが好ましい。すなわち、前記高屈折層120及び低屈折層130における屈折率nと厚さdとの関係は、下記の式(I)を満たす範囲内の厚さであることが好ましい。
n・d=λ/4 (I)
(ここで、λは、可視光線の波長範囲であり、通常、380nm≦λ≦780nmの範囲になる。)
【0072】
本発明の積層フィルムに低反射性が付与されるためには、高屈折層120の厚さは、0.01〜1.0μmであることが好ましく、さらに好ましくは、0.06〜0.12μmである。また、前記低屈折層130の好ましい厚さの範囲は、0.01〜1.0μmであり、さらに好ましくは、0.07〜0.12μmである。高屈折層120及び低屈折層130の厚さがこの範囲外になると、前記式(I)を満たすことができず、低屈折層130側の前記積層フィルムの表面が低反射性にならない。
【0073】
また、本発明の低屈折層130側の前記積層フィルムの表面が低反射性になるためには、低屈折層130の屈折率は、高屈折層120の屈折率より小さなこと、すなわち、低屈折層130/高屈折層120が1.0未満であることが好ましく、さらに好ましくは、0.6〜0.95である。また、低屈折層130の屈折率は、1.47以下であることが好ましく、さらに好ましくは、1.35〜1.45である。屈折率が1.35未満である樹脂は、形成されることが現状況では難しく、また、屈折率が1.47より高いと、反射率は高まる。
【0074】
以下、本発明による耐擦傷性及び表面スリップ性に優れた反射防止フィルムの製造方法について説明する。
【0075】
本発明による耐擦傷性及び表面スリップ性に優れた反射防止フィルムは、基材フィルム100の少なくとも一方の面に、(メタ)アクリレート化合物を含有するハードコート層110、導電性粒子を含有する高屈折層120、フッ素化合物を含有する低屈折層130を順に積層することにより製造できる。
【0076】
本発明において高屈折層120及び低屈折層130は、各構成成分を、好ましくは、溶媒で分散させた塗布液を調整し、その塗布液を基材フィルム上に塗布した後、乾燥・硬化させることによって形成できる。
【0077】
本発明の高屈折層120の形成において使用される溶剤には、本発明の組成物の塗布又は印刷作業性を改善し、また粒子の分散性を改善するために配合するものであり、バインダー成分を溶解するものであれば、従来から公知の各種有機溶媒を使用することができる。特に、本発明においては、組成物の粘度の安定性、乾燥性の観点で沸点が60〜180℃の有機溶媒が好ましく、また、その中で酸素原子を有する有機溶媒が金属粒子との親和性が良いので好ましい。このような有機溶媒には、具体的には、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン、酢酸ブチル、イソプロピルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセチルアセトン、アセチルアセトンなどを好ましく例に挙げることができる。これらは、単一で使用しても良く、2種以上を混合して使用しても良い。
【0078】
また、有機溶媒の量は、塗布手段、又は印刷手段によって作業性が良い状態の粘度の組成物になるように任意の配合量にしても良いが、通常、組成物の固形分の濃度が60重量%以下、好ましくは、50重量%以下にすることが適当である。通常、バインダー成分を有機溶媒で溶解させた溶液中に、粒子(B)を添加し、ペイントシェーカー、ボールミル、サンドミール、3個ロール、アットライター(atoritor)、ホモミキサーなどの分散器により分散させ、その後に、光重合開始剤を添加して均一に溶解させる方法が適当である。
【0079】
また、低屈折層130を形成する場合には、主にフッ素化合物からなる硬化性組成物をメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン、酢酸ブチル、イソプロピルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセチルアセトン、アセチルアセトンの中から選択される少なくとも1種以上の溶剤に分散させた液を塗布した後、乾燥・硬化させて低屈折層130を形成する方法を取ることが好ましい。この場合の溶剤の量も、必要とする組成物の粘度、目的とする硬化被膜の厚さ、乾燥温度条件などによって適宜に変更できる。
【0080】
本発明による積層フィルムの層構成は、基材フィルム100の少なくとも一方の面に、(メタ)アクリレート化合物を含有するハードコーティング層110、導電性粒子を含有する高屈折層120、フッ素化合物を含有する低屈折層130を形成することが好ましい。その他の層構成の具体例には、基材フィルム100の表面両方に高屈折層120を形成しても良いが、この場合に、両高屈折層120のうち、少なくとも一方の高屈折層120上に低屈折層130を形成することが好ましい。また、基材フィルム100の一方の面側に複数の高屈折層120を形成する場合には、基材フィルム100の同一面側の最外表面が低屈折層130になるようにして、複数の低屈折層130を形成することが好ましい。
【0081】
又は、基材フィルム100に対してハードコーティング層110とは反対側の面にプライマー層、透明導電層を形成しても良い。又は樹脂層の表面に、防湿層、保護層を形成しても良い。前記防湿層、前記保護層の厚さは、反射防止機能に影響を与えないようにするために、20nm以下であるものが好ましい。
【0082】
本発明のディスプレイ用フィルムは、前記積層フィルムの低屈折層130上に粘着層又は接着層を形成し、粘着層又は接着層面に保護フィルムを接着したものである。粘着層又は接着層には、粘着又は接着作用により接着させるものであれば特に限定されない。粘着層又は接着層を形成する粘着剤又は接着剤には、ゴム系、ビニール重合系、縮合重合系、熱硬化性樹脂系及びシリコーン系などを使用することができる。その中で、ゴム系の粘着剤又は接着剤には、ブタジエン−スチレン共重合体系(SBR)、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体系(NBR)、クロロプレン重合体系、イソブチレン−イソプレン共重合体系(ブチルゴム)などを例に挙げることができる。ビニール重合系の粘着剤又は接着剤には、アクリル樹脂系、スチレン樹脂系、酢酸ビニール−エチレン共重合体系及び塩化ビニル−酢酸ビニール共重合体系などを例に挙げることができる。縮合重合系の粘着剤又は接着剤には、ポリエステル樹脂系を例に挙げることができる。熱硬化樹脂系の粘着剤には、エポキシ樹脂系、ウレタン樹脂系、ホルマリン樹脂系などを例に挙げることができる。これらの樹脂は、単独に使用しても良く、また2種以上混合して使用しても良い。
【0083】
また、粘着剤又は接着剤は、溶剤型と無溶剤型のうちの何れかを使用することができる。粘着層又は接着層の形成は、前記のような粘着剤又は接着剤を使用して、塗布など通常行なわれている技術を使用して行われる。また、粘着層又は接着層に着色剤を含有させても良い。これは、粘着剤又は接着剤に、例えば、顔料や染料などの色素を含有した着色剤を混合して使用することにより容易に達成される。着色剤を含有している場合に、積層フィルムとして550nmでの光線透過率が40〜80%の範囲内であるものが好ましい。また、特にプラズマディスプレイ用として利用される場合に、透過光がニュートラルグレイ又はブルーグレイであるもの、ディスプレイの発光色の色純度及びコントラストの向上が要求されているので、色素を含有した粘着層又は接着層を使用することにより達成できる。
【0084】
保護フィルムを構成する樹脂素材は、特に限定されるものではなく、公知のプラスチック基材フィルムに利用される樹脂素材の中から適切に選択して使用することができる。このような保護フィルム用樹脂素材として、例えば、エステル、エチレン、プロピレン、ジアセテート、トリアセテート、スチレン、カーボネート、メチルペンテン、スルホン、エーテルエチルケトン、ナイロン、アクリレート、脂環族オレフィン系等から選択される1個を構成単位にするポリマー又は共重合ポリマーを例に挙げることができる。これらの樹脂素材のうち、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのエチレン、プロピレン系、ポリエチレンテレフタレートなどのエステル系から選択される1個を構成単位にするポリマー又は共重合ポリマーが好ましく利用される。特に、透明性、機械特性の点からエステル系を構成単位にするポリマーからなる基材フィルムが特に好ましい。
【0085】
本発明のディスプレイ用フィルタは、前記ディスプレイ用フィルムに粘着層又は接着層を介在して、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネセンスディスプレイ(ELD)、又は陰極線管表示装置(CRT)、ポータブルデジタルアシスタント(PDA)などのディスプレイ面の表示面及び/又はその前面板の表面に接着することにより得られる。
【0086】
また、本発明のディスプレイ用フィルムに粘着層又は接着層を介在して、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネセンスディスプレイ(ELD)、又は陰極線管表示装置(CRT)、ポータブルデジタルアシスタント(PDA)などのディスプレイ面の表示面に接着することによりディスプレイを得ることができる。
【0087】
上記のようにして製作された積層フィルムとディスプレイ表示面及び/又はその前面板の表面を密着させる手段は、特に限定されないが、例えば、ディスプレイ表示部材あるいは基材フィルム100に粘着層又は接着層を塗布乾燥させて、積層フィルムの低屈折層130が表層になるように圧着ローラなどで接合させ、粘着層又は接着層を介在してディスプレイ表示部材と基材フィルム100とを接着させることにより、積層フィルムからなるディスプレイ用フィルタ又はディスプレイを得ることができる。
【0088】
本発明による耐擦傷性及び表面スリップ性に優れた反射防止フィルムを使用することができるプラズマディスプレイパネル前面保護板(PDP前面板)の実施例について、図面に基づいて説明するが、これに限定されない。本発明による耐擦傷性及び表面スリップ性に優れた反射防止フィルムを基材フィルム100面側に粘着層又は接着層150を介在して、ガラス、アクリル、ポリカーボネートなどの材質を両面にラミネートしたものである。また、プラズマディスプレイパネル前面保護板の透明基板と粘着層150との間に電磁波遮蔽層、近赤外遮蔽層、紫外線遮蔽層などの層を形成することができる。
【0089】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。
【実施例1】
【0090】
ハードコート層110の形成
多官能アクリル系樹脂を含有する塗料(固形分50%)(JSR(株)製品、KZ7528)を厚さ100μmのポリエステルフィルム(東レ(株)製品、ルーミラー)からなる基材フィルム100の面上にマイクログラビアコッターを利用して塗布し、80℃で5分間乾燥した後、紫外線1.0J/cmを照射して塗布層を硬化させ、厚さ約10.0μmのハードコート層110を形成した。
【0091】
高屈折層120の形成
錫含有酸化インジウム粒子(ITO)を含有する塗料(固形分10%)(日本化薬(株)製品、HRA−196)をイソプロピルアルコールに溶解して、この混合物を攪拌して得た塗布液をハードコート層110の面上にマイクログラビアコッターを使用して塗布し、80℃で5分間乾燥した後、紫外線1.0J/cmを照射して塗布層を硬化させて、厚さ約0.1μm屈折率(n)=1.62の高屈折層120を形成した。
【0092】
低屈折層130の形成
含フッ素系共重合体(フルオロオレフィン/ビニルエーテル共重合体)を含有する塗料(固形分10%)(東レ(株)製品、LR−S3020、バインダー樹脂100重量対比中空シリカ15重量部)をイソプロピルアルコールに溶解して、この混合物を攪拌して得た塗布液を高屈折層120上にマイクログラビアコッターを使用して約112〜116nmの厚さに塗布し、80℃で5分間乾燥した後、紫外線1.0J/cmを照射して塗布層を硬化させて、厚さ約0.1μm、屈折率(n)=1.39の低屈折層130を形成した。
【実施例2】
【0093】
基材フィルム100、ハードコート層110、高屈折層120は、実施例1と同じ条件と方法で形成した。その後、含フッ素系共重合体(フルオロオレフィン/ビニルエーテル共重合体)を含有する塗料(固形分10%)(JSR(株)製品、TU−2207、バインダー樹脂100重量対比中空シリカ20重量部)をイソプロピルアルコールに溶解して、この混合物を攪拌して得た塗布液を高屈折層120上にマイクログラビアコッターを使用して約106〜110nmの厚さに塗布し、80℃で5分間乾燥した後、紫外線1.0J/cmを照射して塗布層を硬化させて、厚さ約0.1μm、屈折率(n)=1.39の低屈折層130を形成した。
【比較例1】
【0094】
積層フィルムにおいて基材フィルム100、ハードコート層110、及び高屈折層120は、実施例1と同じ方法で形成した。次に、含フッ素系共重合体(フルオロオレフィン/ビニルエーテル共重合体)を含有する塗料(固形分10%)(東レ(株)製品、LR−S3000、バインダー樹脂100重量対比中空シリカ40重量部)をイソプロピルアルコールに溶解して、この混合物を攪拌して得た塗布液を高屈折層120上にマイクログラビアコッターを使用して約112〜116nmの厚さに塗布し、80℃で5分間乾燥した後、紫外線1.0J/cmを照射して塗布層を硬化させて、厚さ約0.1μm、屈折率(n)=1.37の低屈折層130を形成した。
【表1】

【0095】
前記実施例1及び2において、低屈折層屈折率は1.39で、比較例の屈折率は1.37であるが、これは、従来の塗料(東レ(株)製品、LR−S3000)に比べて中空シリカの含有量の少ない改善された塗料(LR−S3020、TU−2207)を使用したためである。前記改善された塗料での中空シリカ含有量の場合に、従来の塗料での中空シリカ含有量に比べて約50%程度減少したので、表面粗度が低くなって表面スリップ性が向上し、また耐擦傷性が向上する効果を有するようになる。
【0096】
以下、本発明における評価方法及び測定方法について説明する。
【0097】
[実験例1:スチールウール硬度評価]
#0000のスチールウールを使用して、250gf/cmの荷重を加えて10回往復したときの傷の個数を観察した。傷のレベルに応じて硬度を以下の5段階に分類した(レベル5:傷無し、レベル4:1〜5個傷あり、レベル3:5〜10個傷あり、レベル2:10個以上の傷あり、レベル1:全体面に傷あり)。
【0098】
[実験例2:ヘイズ測定]
スガ試験機製の直読ヘイズコンピュータを使用して測定を行った。
【0099】
[実験例3:表面抵抗値(帯電防止性)評価]
三菱油化製のHIRESTAを使用して表面抵抗値の測定を行った。
【0100】
[実験例4:反射率の測定]
日立計測製の分光光度計U−3410を使用して測定を行った。サンプルフィルムは、320〜400の耐水サンドペーパーで裏面に均一に傷を付け、黒色塗料を塗布して、裏面からの反射を完全になくした状態にし、樹脂層側の表面に対して入射光角度6〜10゜に測定を行った。また、ここでの反射率は、波長領域380nm≦λ≦780nmにおける最小値を表す。
【0101】
[実験例5:摩擦係数の測定]
東洋精機製の摩擦係数測定機TRタイプを使用し、測定結果は、日本電子科学製のUnicoder U−228を使用して測定を行った。測定方法は、ASTM D 1894規格に基づいて測定した。上板と下板に測定フィルムを位置させ、重さ200±5g、測定速度152±30mmで摩擦させて、静摩擦係数と動摩擦係数とをそれぞれ測定した。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】反射防止フィルムの原理を示す図である。
【図2】反射防止フィルムの積層構造を模式的に示したフィルム断面図である。
【符号の説明】
【0103】
A,B,C…入射光
a,b,c…反射光
d…低屈折層の厚さ
100…基材フィルム
110…ハードコーティング層
120…高屈折層
130…低屈折層
140…保護フィルム
150…粘着層
160…離型フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルム100の少なくとも一方の面に、(メタ)アクリレート化合物を含有するハードコーティング層110、バインダー樹脂と導電性粒子とを含有する高屈折層120及びフッ素化合物を含有する低屈折層130が順に積層された反射防止フィルムであって、
前記低屈折層130の表面は、微細な凹凸を有し、前記低屈折層130側の表面摩擦係数のうち、静摩擦係数は0.5以下であり、動摩擦係数は0.7以下であることを特徴とする、耐擦傷性及び表面スリップ性に優れた反射防止フィルム。
【請求項2】
前記低屈折層130は、バインダー樹脂100重量対比15重量部〜25重量部の中空シリカを含むことを特徴とする、請求項1に記載の耐擦傷性及び表面スリップ性に優れた反射防止フィルム。
【請求項3】
前記反射防止フィルムは、ヘイズが3.0%未満であることを特徴とする、請求項1に記載の耐擦傷性及び表面スリップ性に優れた反射防止フィルム。
【請求項4】
前記反射防止フィルムは、380nmの波長領域で透過率が5%未満であることを特徴とする、請求項1に記載の耐擦傷性及び表面スリップ性に優れた反射防止フィルム。
【請求項5】
前記ハードコーティング層110の層厚さが1μm〜50μmの範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の耐擦傷性及び表面スリップ性に優れた反射防止フィルム。
【請求項6】
前記高屈折層120の層厚さは、0.01μm〜1.0μmの範囲であり、前記低屈折層130の層厚さは、0.01〜1.0μmの範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の耐擦傷性及び表面スリップ性に優れた反射防止フィルム。
【請求項7】
前記高屈折層120の導電性粒子は、金属酸化物微粒子であることを特徴とする、請求項1に記載の耐擦傷性及び表面スリップ性に優れた反射防止フィルム。
【請求項8】
前記高屈折層120の前記バインダー樹脂と導電性粒子の重量割合は、10/90〜30/70であることを特徴とする、請求項1に記載の耐擦傷性及び表面スリップ性に優れた反射防止フィルム。
【請求項9】
前記低屈折層130の前記フッ素化合物は、主鎖中にビニルエーテル構造を有する含フッ素系共重合体であることを特徴とする、請求項1に記載の耐擦傷性及び表面スリップ性に優れた反射防止フィルム。
【請求項10】
前記低屈折層130は、粒径0.001μm〜0.2μmの範囲のシリカ微粒子をさらに含有することを特徴とする、請求項1に記載の耐擦傷性及び表面スリップ性に優れた反射防止フィルム。
【請求項11】
前記シリカ微粒子は、2成分以上の粒径分布を有する微粒子であることを特徴とする、請求項10に記載の耐擦傷性及び表面スリップ性に優れた反射防止フィルム。
【請求項12】
前記低屈折層130は、次の化学式(1)
R(1)R(2)SiX4−(a+b) (1)
(式中、R(1)、R(2)は、それぞれアルキル基、アルケニル基、アリル基、又はハロゲン基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、メタクリルオキシ基、又はシアノ基を有する炭化水素基であり、Xは、アルコキシル基、アルコキシアルコキシル基、ハロゲン基、アシルオキシ基の中から選択された加水分解可能な置換基であり、aとbは、それぞれ0、1又は2であり、また(a+b)は、1、2又は3である。)
で表されるシランカップリング剤又はその加水分解物又はその反応物をさらに含有することを特徴とする、請求項1に記載の耐擦傷性及び表面スリップ性に優れた反射防止フィルム。
【請求項13】
前記低屈折層130のフッ素化合物は、次の化学式(2)
R(3)R(4)SiX4−(c+d) (2)
(式中、R(3)、R(4)は、それぞれフッ素置換されたアルキル基、アルケニル基、アリル基、メタクリルオキシ基、又は(メタ)アクリロイル基を有する炭化水素基であり、Xは、アルコキシル基、アルコキシアルコキシル基、ハロゲン基又はアシルオキシ基の中から選択された加水分解可能な置換基であり、cとdは、それぞれ0、1、2又は3であり、また(c+d)は、1、2又は3である。)
で表されるアルコキシシリル基を有するフッ素樹脂又はこの加水分解生成物をさらに含有することを特徴とする、請求項1〜12の何れか一項に記載の耐擦傷性及び表面スリップ性に優れた反射防止フィルム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−276738(P2009−276738A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−210800(P2008−210800)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(501380081)トウレ セハン インコーポレイテッド (22)
【Fターム(参考)】