説明

耐油紙およびそれを用いた紙容器

【課題】 刃型による打ち抜き適性に優れ、折り曲げ部の耐油性に優れた耐油紙が得られ、チョコレートやスナック菓子などのような固形油性食品、あるいは、粉末洗剤のような油性固形物品を包装するための紙容器(紙箱)を容易に得る。
【解決手段】 基材紙の少なくとも片面にポリプロピレン系樹脂層を設けた耐油紙において、該ポリプロピレン樹脂が、JIS Z−1707に規定されるフィルムの衝撃強さにおける50%破断時のダート荷重(mN)をフィルム厚み(μm)で除した値が、28mN/μm以下であり、かつ、該樹脂層は米坪10g/m2以上の厚さで形成されている耐油紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐油性が要求される紙容器に使用する耐油紙に関するものであり、詳しくは油分を大量に含む固形物あるいは半固形物の包装に使用される耐油紙容器、およびそれに使用する耐油紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に油分を多量に含む素材を収納する紙器用紙には耐油性が求められており、紙に多量の耐油剤を含有させることにより所望の耐油性を付与した製品が好ましく使用されている。
耐油性を付与する方法として、従来は耐油剤としてフッ素系樹脂等の耐油剤を基材紙に塗布あるいは含浸処理等を施した耐油紙を使用してきた。しかしながら、当該樹脂は高温の油分と接触すると分解し、有害ガスを発生する可能性があり、かつ焼却時あるいは燃焼時に毒性の高いフッ化水素ガスを発生する恐れもある。従って、安全性の観点からその代替品が求められてきている。
【0003】
フッ素系樹脂を用いない耐油紙に関して、例えば、食品用の耐油紙として特許文献1が、また、粉末洗剤用の耐油紙として特許文献2などが提案されている。
【特許文献1】特開2001−303475号公報、特許請求の範囲
【特許文献2】実用新案登録第2508165号公報、実用新案登録請求の範囲
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1他に記載されている合成樹脂エマルジョンを基材紙に塗工して耐油層を形成する方法は、古紙回収して再利用する際の易離解性という観点からは優れるが、ブロッキングと耐油性の両立という面で問題を残しており、また、折り曲げ部の耐油性が弱いという問題がある。
特許文献2に記載のようなポリプロピレン樹脂を耐油層として形成する方法は、易離解性という面での問題はあるが、ブロッキング、折り曲げ部の耐油性という観点からは優れたものである。
基材紙を板紙とし、それにポリプロピレン樹脂を積層した耐油紙を紙器箱に形成する際には、刃型により板紙ブランクとして打ち抜く工程が入る場合が多い。このような場合、ポリプロピレンは打ち抜き適性が悪く、フィルムの一部が伸びて千切れた状態になり、容器の外観を損ねたり、サック貼りの障害になったりするという問題がある。
なお、サック貼りとは、「糊代」に接着剤を塗布して板紙ブランクの両端を接着し、筒状胴部を形成する工程である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の第1は以下の構成を採用する。
即ち、本発明は、「基材紙の少なくとも片面にポリプロピレン系樹脂層を設けた耐油紙において、該ポリプロピレン樹脂が、JIS Z−1707に規定されるフィルムの衝撃強さにおける50%破断時のダート荷重(mN)をフィルム厚み(μm)で除した値が、28mN/μm以下であり、かつ、該樹脂層は米坪10g/m2以上の厚さで形成されていることを特徴とする、耐油紙」である。
【0006】
また、本発明の第2は、「上記本発明の第1に記載された耐油紙を使用し、基材紙は米坪100g/m2以上の板紙であって、容器の内側表面にポリプロピレン系樹脂層を配置したことを特徴とする油性固形物用紙容器」である。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、刃型による打ち抜き適性に優れ、折り曲げ部の耐油性に優れた耐油紙が得られ、チョコレートやスナック菓子などのような固形油性食品、あるいは、粉末洗剤のような油性固形物品を包装するための紙容器(紙箱)が容易に得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の基材紙として使用する紙には、未晒クラフト紙、晒クラフト紙、段ボール用ライナー、白板紙など各種の紙・板紙が特に制限なく使用できるが、紙容器に用いる場合は、基材紙の米坪は100g/m2以上のいわゆる板紙である必要がある。
特に、食品を直接に包装する比較的小さな板紙箱の場合には、米坪100g/m2〜200g/m2程度の板紙で、パルプとしては古紙パルプを含まない晒クラフトパルプを使用することが好ましい。
【0009】
食品に直接接触しない場合、あるいは食品以外の油性固形物(例えば粉末洗剤など)の場合には、基材紙は、米坪200g/m2〜500g/m2程度の白板紙が好ましい。白板紙とは、少なくとも表層、中層、裏層の3層以上の多層抄きされた板紙で、好ましくは5〜11層抄きのものである。中層には古紙パルプが使用され、表層には、白色度の高いパルプまたは脱墨した古紙パルプを使用する。裏層は、両面を白色にしたい場合には、表層と同様とし、その必要がない時には、古紙パルプを用いる。通常は、中層の色を隠蔽するために、表層の直ぐ下に表下層と呼ばれる、中間の白色度のパルプ層を形成する。
【0010】
上記のような白板紙であれば本発明の基材として使用できるが、紙容器には、美粧性が求められる場合が多く、好ましくは、前記白板紙の表層の上に、顔料とバインダーを主成分とする塗料を塗布したコートボール紙が使用される。塗料に使用する顔料としては、クレー、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、硫酸バリウムなどが使用できる。
【0011】
バインダーとしては、カゼイン、澱粉、ポリビニルアルコールなどの水溶性高分子、または、アクリル酸エステル、酢酸ビニル、スチレン、ブタジエンなどのビニルモノマーを単独重合または共重合した重合体の水分散液が使用できる。
【0012】
次に、本発明に使用するポリプロピレン系樹脂について説明する。
ここでポリプロピレン系樹脂とは、ポリプロピレン樹脂と他のポリオレフィン樹脂の混合物であり、ポリプロピレン樹脂が80質量%以上のものを言う。また、プロピレンと他のα−オレフィンの共重合体であり、プロピレン成分が80質量%以上のポリプロピレン系共重合体でも良い。あるいは、ポリプロピレン系共重合体と他のポリオレフィン樹脂の混合体であって、トータルのプロピレン成分が80質量%以上であるものでも良い。
【0013】
前記したように、容器用ブランクシートを刃型により打ち抜く際に、伸びて千切れた状態にならないようにするために、使用するポリプロピレン系樹脂は以下の性質を有する必要がある。
即ち、JIS Z−1707に規定されるフィルムの衝撃強さにおける50%破断時のダート荷重(mN)をフィルム厚み(μm)で除した値が、28mN/μm以下である必要がある。好ましくは25mN/μm以下、さらに好ましくは23mN/μm以下である。28mN/μmを超えて大きくなるとフィルム断裁時の打ち抜き性が劣る。
【0014】
上記のような衝撃特性のポリプロピレン系樹脂を得るためには、プロピレンに対して他のα−オレフィンを共重合するか、もしくは、ポリプロピレンに対して、ポリエチレン、エチレン・α−オレフィン共重合体などのポリオレフィン樹脂を混合することにより、切れやすさを向上する必要がある。
ポリプピレンにポリオレフィンを混合して切れやすさを向上させる方法としては、混合する樹脂の結晶性を高くする方法(例えば高密度ポリエチレンなど)、あるいは、例えばポリ−4−メチルペンテンのような軟化点が高いポリオレフィンを混合する方法などが挙げられる。
また、プロピレンに他のα−オレフィンを共重合することにより切れやすくする方法としては、エチレン・プロピレン共重合体において、ブロック共重合体にする方法、プロピレンとα−オレフィンの共重合体において、軟化点を高めるα−オレフィンモノマーを使用する方法などが挙げられる。
上記した方法のいずれの場合も、トータルのプロピレン成分の量が95〜88質量%の範囲で調整することが好ましい。
さらには、酸化チタン、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、クレーなどの填料をポリプロピレン系樹脂に混合する方法も有効である。この場合填料は、樹脂に対して0.5〜10質量%の範囲が好ましい。
【0015】
ポリプロピレン系樹脂層は該樹脂のフィルムを接着剤により紙に積層しても良いし、押出しラミネート法で積層しても良い。
接着剤によりポリプロピレン系樹脂フィルムを紙に積層する場合、フィルムとしては、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルム、無延伸フィルムのいずれでも良いが、切れやすさの観点から、無延伸フィルムが好ましい。接着剤としては、溶剤系接着剤、無溶剤系接着剤(紫外線硬化型接着剤)、水分散液系接着剤、ホットメルト系接着剤などのいずれでも良い。
また、押出しラミネート法においては、ポリプロピレン系樹脂との接着性を考慮して塩素化ポリプロピレン系のインキなどのアンカーコーティングを行うことが好ましい。
【0016】
ポリプロピレン系樹脂層の米坪量は10g/m2以上である必要があり、25g/m2以下が好ましい。さらに好ましくは12g/m2以上、20g/m2以下である。米坪量が10g/m2未満ではピンホールのないシートを安定して製造することが困難である。
25g/m2を超えて多く配合した場合には耐油性能の向上が頭打ちとなる上に、後工程に打ち抜き処理を行う場合には、樹脂断裁時にかかる打ち抜き刃への応力が大きくなり、場合によっては断裁不良となる場合がある。
【0017】
ポリプロピレン系樹脂層は、容器の内側になる面、外側になる面のいずれかまたは両方に形成して良いが、油性固形物食品用の容器においては、少なくとも容器の内側表面に本発明のポリプロピレン系樹脂層を形成する必要がある。
【0018】
本発明の耐油紙を紙容器に用いる場合には、在庫期間を考慮してJIS K−6768記載の濡れ試験方法における濡れ指数を、コロナ処理後1ケ月保管サンプルで38mN/m以上に保持する必要がある。紙器製品は水系樹脂やホットメルト樹脂等の接着剤で紙器成型される場合が多く、接着剤と接触するポリプロピレン層の濡れ指数が38mN/m未満では接着剤と貼合したい界面同士の接着性が劣るので、実使用に耐えない。紙器の生産機は多品種小ロットであるため、樹脂積層機よりも紙器生産機の方が圧倒的に多く存在する。そのため紙器生産機に表面張力を付与する装置は設置されていない場合が多く、樹脂加工機に設置されていることが常である。表面張力を付与する方法としては、通常好ましく使用されているコロナ処理装置の他に、プラズマ処理装置等を使用しても良く、表面張力を向上させる樹脂等の薬品や界面活性剤を使用しても良いが食品用途には好ましくない。
【0019】
表面張力は使用するポリプロピレン中に添加する安定剤等の添加剤に大きく影響される。例えば、コロナ処理等により、フィルムまたはラミ表面を活性化した場合、表面に−OH基が配列するためにJIS K−6768記載の濡れ指数を向上させることができる。しかし、この−OH基はさほど安定ではなく、ワインダー工程や断裁、印刷、打ち抜き等各種工程を経る場合はロール等との接触により、濡れ指数が低下することは良く知られており、通常は各種工程を経ない場合でも数週間程度で大幅に低下し、選定した樹脂の添加剤によっては38mN/mを下回る場合もある。また、表面張力の低下は数週間程度で平衡化してくるが、その後も表面に添加剤がブリードアウトしてくることにより、徐々に表面張力は低下していく。このような場合には、予め添加剤の配合量の少ないレジンを選定するか、プラズマ処理装置の如き表面を活性化するエネルギーの大きい装置で処理することが好ましい。
【実施例】
【0020】
以下に実施例、比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の内容は本実施例で使用する原材料・薬品に限定されるものではない。
【0021】
<実施例1>
ASTM D-1238に規定するメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重、10分)が8.0であるポリプロピレン樹脂91質量部に、メルトフローレート(190℃、2.16kg荷重、10分)が1.0で、密度が0.95g/cm3の高密度ポリエチレンを9質量部混合したポリプロピレン系樹脂(樹脂A)のペレットを作成し、溶融押出しして厚さ70μmの無延伸フィルムを作成した。
該フィルムのJIS Z−1707記載のフィルムの衝撃強さにおける50%破断時のダート荷重(mN)をフィルム厚み(μm)で除した値は21mN/μmであった。
上記ポリプロピレン系樹脂Aを晒クラフトパルプからなる米坪量210g/m2の顔料コート紙の片面(非コート面)に、押出し法で12g/m2積層した。その後、コロナ処理を施し、巻き取った後、枚葉に断裁して本発明の耐油紙を得た。23℃、相対湿度50%の部屋で1箇月間放置した後、罫線掛けと断裁を行い、紙容器用ブランクシートを製造した。
なお、打抜きは、飯島製作所製の自動平盤打ち抜き機を用いて、図1に示す刃型にて打抜き、その際に罫線掛けも同時に行った。罫線は1本で、凹部幅を2mm、凸部幅を1mm、深さを0.3mmとした。
【0022】
評価方法
濡れ指数:
耐油紙製造時に、ポリプロピレン樹脂層表面にコロナ処理を行う際に、その直後の濡れ指数が40mN/mであるように調整した。23℃、相対湿度50%の部屋で1箇月放置した後の濡れ指数を評価した。
濡れ指数は、JIS K−6768に記載のポリエチレンおよびポリプロピレンフィルムの「ぬれ試験方法」に基づき測定した。
打ち抜き性:
飯島製作所製の自動平盤打ち抜き機を用いて、図1に示す型にて打抜く際に目視で打ち抜き性を評価した。打ち抜き性の評価は、何ら問題が発生しなかったものを○、切れ不良によるヒゲの発生等の打ち抜き不良が発生したものを×と評価した。
耐油性:
上記した罫線入りブランクシートの罫線部を180度で1回折り曲げた後、広げて、JAPAN TAPPI「紙パルプ試験方法」No.41に規定されるキット法にて罫線部の耐油性を評価した。10級以上のものを○、10級未満のものを×として評価を行った。
接着性:
図1に示す形状のブランクシートの糊代部に、エチレン・酢酸ビニル共重合体エマルジョン接着剤(固形分濃度50質量%、ガラス転移温度0℃)を固形分で10g/m2となるように塗布し、鉄板で荷重をかけながら、100℃の恒温槽中で1分間で接着させ、筒状容器を形成した。
次いで、23℃×50%RHの環境下で24時間放置後に接着部分を剥がし評価を行った。剥がした部分を観察し原紙の層間破壊が発生しているものを○、原紙と接着剤層あるいはポリプロピレン層と接着剤層の界面破壊となったものや、全く接着していないものを×として評価した。
以上の評価結果は、他の実施例と共に表1に記載した。
【0023】
<実施例2>
ポリプロピレン系樹脂Aを押出し法で23g/m2積層した以外は、実施例1と同様の方法で耐油紙を得た。得られた耐油紙は実施例1と同様の方法でブランクシートを作製し、同様に評価を行った。
【0024】
<実施例3>
エチレン成分含有量が12質量%であるエチレン・プロピレンブロック共重合体(メルトフローレート6.5)に、平均粒子径3μmの炭酸カルシウムを5質量%混合したポリプロピレン系樹脂(樹脂B)を作成した。
この樹脂のJIS Z−1707記載のフィルムの衝撃強さにおける50%破断時のダート荷重(mN)をフィルム厚み(μm)で除した値は、12mN/μmであった。
この樹脂を使用した以外は、実施例1と同様の方法でブランクシートを作製し、同様に評価を行った。
【0025】
<実施例4>
ポリプロピレン樹脂が95質量部、高密度ポリエチレン樹脂が5質量部であること以外は、実施例1と同様に混合してポリプロピレン系樹脂(樹脂C)を作成した。
この樹脂のJIS Z−1707記載のフィルムの衝撃強さにおける50%破断時のダート荷重(mN)をフィルム厚み(μm)で除した値は、26mN/μmであった。
この樹脂を使用した以外は、実施例1と同様の方法でブランクシートを作製し、同様に評価を行った。
【0026】
<実施例5>
実施例1に使用したポリプロピレン系樹脂を溶融押出しし、冷却ロールに挟んで厚さ約16.5μm(坪量15g/m2)の無延伸フィルムを作成した。
該ポリプロピレン系樹脂フィルムをウェットラミネーション法で積層した以外は実施例1と同様の方法で耐油紙を得た。貼合の際に使用した接着剤は大同化成株式会社製ポリゾール1412改を用い10g/m2塗布した。以下は、実施例1と同様の方法でブランクシートを作製し、同様に評価を行った。
【0027】
<比較例1>
実施例1で作成したポリプロピレン系樹脂を押出し法で8g/m2積層した以外は、実施例1と同様の方法でブランクシートを作製し、同様に評価を行った。
【0028】
<比較例2>
実施例1で作成したポリプロピレン系樹脂を押出し法で27g/m2積層した以外は、実施例1と同様の方法でブランクシートを作製し、同様に評価を行った。
【0029】
<比較例3>
実施例1で使用したポリプロピレン樹脂を単独に使用した以外は、実施例1と同様に耐油紙を作成した。
即ち、ASTM D-1238に規定するメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重、10分)が8.0であるポリプロピレン樹脂(樹脂D)を溶融押出しして厚さ70μmの無延伸フィルムを作成した。該フィルムのJIS Z−1707記載のフィルムの衝撃強さにおける50%破断時のダート荷重(mN)をフィルム厚み(μm)で除した値は30mN/μmであった。
以下、上記ポリプロピレン樹脂を晒クラフトパルプからなる米坪量210g/m2の顔料コート紙の片面(非コート面)に、押出し法で12g/m2積層し、以後は実施例1と同様の方法でブランクシートを作製し、同様に評価を行った。
【0030】
<参考例>
参考までに米坪量260g/m2で、フッ素系耐油剤を浸透させた市販の耐油紙(王子製紙製、耐油カード)についても実施例1と同様に評価を行った。
【0031】
【表1】

【0032】
実施例1〜実施例5に示すように、本発明の耐油紙はポリプロピレン層が油分を遮断するために、良好な耐油性能を付与することができる。また、参考例に示す如く市販されている耐油紙と比較して、耐油性能も良好なものとなる。なお、参考例のキット耐油度は8級であり、用途によっては使用可能な範囲であるが、本発明の高耐油紙と比較すると劣る。
【0033】
実施例1〜実施例2と比較例1の比較より、樹脂量は10g/m2以上確保しないと所望の耐油性能が得られない。また、比較例2より、樹脂量が25g/m2を超えて多い場合耐油紙としての性能は満足するものの、後工程に打ち抜き工程が必要な場合には適用が困難であることがわかる。
【0034】
実施例3〜実施例4と比較例3の比較より、後工程で、打ち抜き加工を施される場合には、ダート荷重を樹脂層の厚みで除した数値が適性範囲内に入っていないと、打ち抜き性が劣ることがわかる。
【0035】
実施例5より、ウェットラミネーションでポリプロピレンを貼合する場合でも、本発明の請求範囲内であるポリプロピレン系樹脂を使用すれば良好に使用することができることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の耐油紙は、チョコレートなどの油性個体食品、粉洗剤などの個体油性製品の包装用箱に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の油性固形物用紙容器のブランクシート及びそれを打抜く刃型を示す図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材紙の少なくとも片面にポリプロピレン系樹脂層を設けた耐油紙において、該ポリプロピレン樹脂が、JIS Z−1707に規定されるフィルムの衝撃強さにおける50%破断時のダート荷重(mN)をフィルム厚み(μm)で除した値が、28mN/μm以下であり、かつ、該樹脂層は米坪10g/m2以上の厚さで形成されていることを特徴とする耐油紙。
【請求項2】
請求項1に記載された耐油紙を使用し、基材紙は米坪100g/m2以上の板紙であって、容器の内側表面にポリプロピレン系樹脂層を配置したことを特徴とする油性固形物用紙容器。


【図1】
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【公開番号】特開2006−56127(P2006−56127A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−240082(P2004−240082)
【出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【出願人】(500104059)王子パッケージング株式会社 (21)
【Fターム(参考)】