説明

耐熱エアーホース

【課題】材料コストが安価で、外側からの熱に対する耐熱性に優れる耐熱エアーホースを提供する。
【解決手段】管状のゴム内層1と、上記ゴム内層1の外周に設けられる補強糸層2と、上記補強糸層2の外周に、接着剤層を介して設けられるゴム外層3とを備えた耐熱エアーホースであって、上記ゴム内層1がアクリロニトリル−ブタジエン系ゴム組成物からなり、上記補強糸層2が起毛糸の編組からなり、上記ゴム外層3がブチル系ゴム組成物からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱エアーホースに関するものであり、詳しくは、自動車等のエアー系ホース(ターボエアーホース、ブローバイガス用ホース、エミッションコントロールホース、バキュームブレーキホース等)として有用な耐熱エアーホースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の耐熱エアーホースにおいては、エンジンの高効率、高出力化に伴い、求められる耐熱性が上がる傾向にある。特に、エンジンの排気ガスのエネルギーを利用して圧縮機を作動させ、より多くの空気をシリンダー内に取り入れるターボチャージャーシステムを搭載したエンジンに用いられるホースには、高い耐熱性および耐圧性が要求される。従来、これらのホース形成材料には、アクリル系ゴムが主に用いられており、例えば、アクリル系ゴムからなるゴム内層の外周面に、芳香族ポリアミド繊維糸(アラミド糸)からなる補強糸層が形成され、さらにその外周面にアクリル系ゴムからなるゴム外層が形成されてなる3層構造(ゴム内層/補強糸層/ゴム外層)のホースが提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2008−163488公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、例えば、インタークーラー下流側に用いられるターボエアーホース(インタークーラーにより冷却された空気をエンジンへ送り込むのに使用されるホース)については、外面側については、輻射熱は減少しないことから、高い耐熱性が引き続き求められる一方で、インタークーラーの性能向上にともない、内面側に要求される耐熱性は下がる傾向にある。このような状況の中、耐熱エアーホースとしてコスト面を含め、適正な材質および構造体を検討する必要がでてきている。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、材料コストが安価で、外側からの熱に対する耐熱性に優れる耐熱エアーホースの提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明の耐熱エアーホースは、管状のゴム内層と、上記ゴム内層の外周に設けられる補強糸層と、上記補強糸層の外周に、接着剤層を介して設けられるゴム外層とを備えた耐熱エアーホースであって、上記ゴム内層がアクリロニトリル−ブタジエン系ゴム組成物からなり、上記補強糸層が起毛糸の編組からなり、上記ゴム外層がブチル系ゴム組成物からなるという構成をとる。
【0006】
すなわち、本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その研究の過程で、ホースの内層側を、安価で、かつ、エアーホース内を流通するエアーに混在するミスト状オイルの耐透過性に優れる、アクリロニトリル−ブタジエン系ゴム層とすることを想起した。そして、この内層の外周に形成する層について各種検討したところ、例えば、耐熱性を満足させるためにクロロスルホン化ポリエチレン(CSM)層を形成する場合、コスト面で満足できるものではなく、また、低コスト化のためクロロプレンゴム(CR)層を形成する場合、充分な耐熱性が得られないとの知見を得た。このような知見に基づき、さらに検討を重ねた結果、外層の材料にブチル系ゴムを用いると、低コスト化、軽量化、耐熱性の点で満足できるようになることを突き止めた。また、耐熱エアーホースとして要求される耐圧性を確保するため、上記アクリロニトリル−ブタジエン系ゴム内層とブチル系ゴム外層との間に補強糸層を形成し、さらに、層間接着性の確保のため、接着剤の使用とともに、上記補強糸層を起毛糸(毛羽立たせた糸)の編組からなるものとすると、その起毛による、いわば投錨効果が発揮され、層間接着性や糸抜け防止効果が向上するようになることを突き止め、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0007】
このように、本発明の耐熱エアーホースは、アクリロニトリル−ブタジエン系ゴム組成物からなるゴム内層と、上記ゴム内層の外周の、起毛糸の編組からなる補強糸層と、上記補強糸層の外周に接着剤層を介して設けられる、ブチル系ゴム組成物からなるゴム外層とを備えている。そのため、材料コストが安価で、外側からの熱に対する耐熱性や、耐圧性、層間接着性、糸抜け防止効果、軽量化に優れている。
【0008】
特に、上記ゴム外層を構成するブチル系ゴム組成物が、サルファードナー系加硫剤を含有すると、耐熱性、層間接着性により優れるようになる。
【0009】
また、上記ゴム外層を構成するブチル系ゴム組成物のゴムが、ブチル系ゴムとエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合ゴムとのブレンドゴムであると、耐熱性とともに耐候性(耐オゾン性)により優れるようになる。
【0010】
また、上記補強糸層が、アラミド糸の起毛糸を編組してなるものであると、耐圧性、層間接着性により優れるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0012】
本発明の耐熱エアーホースとしては、例えば、図1に示すように、アクリロニトリル−ブタジエン系ゴム組成物からなるゴム内層1と、起毛糸の編組からなる補強糸層2と、上記補強糸層2の外周に接着剤層(図示せず)を介して設けられる、ブチル系ゴム組成物からなるゴム外層3とを備えたホースがあげられる。
【0013】
上記ゴム内層1の形成材料としては、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)が用いられるが、必要に応じ、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)とポリ塩化ビニル(PVC)とのブレンドゴム(NBR−PVC)としてもよい。なお、上記ゴム内層1用材料(NBR系ゴム組成物)におけるNBR系ゴム(NBR−PVCまたはNBR単体)の含有量は、通常、ゴム内層1用材料(ゴム組成物)全体の30重量%以上である。
【0014】
上記NBRとしては、アクリロニトリル量(AN量)が低AN,中AN,中高AN,高AN,極高ANのものがあげられ、エアーホース内を流通するエアーに混在するミスト状オイルの耐透過性の点から、AN量=18〜43の範囲のものが好ましく、特に好ましくはAN量=20〜40の範囲である。
【0015】
また、上記NBR−PVCにおける、NBRとPVCとのブレンド比(重量比)は、耐オゾン性の点から、NBR/PVC=95/5〜65/35の範囲が好ましく、特に好ましくはNBR/PVC=90/10〜70/30の範囲である。
【0016】
なお、上記ゴム内層1用材料(NBR系ゴム組成物)には、上記NBR系ゴムに加えて、カーボンブラック、老化防止剤、硫黄等の加硫剤(架橋剤)、加硫促進剤(架橋促進剤)、加硫助剤(架橋助剤)、加工助剤、白色充填材、可塑剤、軟化剤、受酸剤、着色剤、スコーチ防止剤等を適宜添加しても差し支えない。
【0017】
上記ゴム内層1に積層される補強糸層2を形成するための補強糸としては、投錨効果を発現することから、起毛糸が用いられる。そして、この起毛糸としては、例えば、アラミド(芳香族ポリアミド)繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル繊維、ナイロン6,ナイロン66等のナイロン(ポリアミド)繊維、ポリビニルアルコール(ビニロン)繊維等からなる起毛糸があげられる。これらは単独であるいは二種以上併せて用いられる。なかでも、耐圧性、層間接着性の観点から、アラミド糸の起毛糸が好適に用いられる。
【0018】
上記補強糸の編組方法は、例えば、スパイラル巻き,ブレード編み,ニッティング編み等があげられる。
【0019】
上記ゴム内層1に積層した補強糸層2の外周面に塗布される接着剤としては、例えば、塩素化ポリオレフィン系接着剤、クロロスルホン化ポリエチレン系接着剤等が用いられる。なお、この接着剤をゴム内層1の外周面に塗布し、その後、上記補強糸層2を編組して、ゴム内層1/補強糸層2間の層間接着性を高めるようにしてもよい。
【0020】
上記補強糸層2の外周に形成されるゴム外層3の形成材料としては、ブチル系ゴムが用いられる。上記ブチル系ゴムとしては、イソブチレンとイソプレンとの共重合体があげられ、例えば、レギュラーブチルゴム(レギュラーIIR)、ハロゲン化ブチルゴム(ハロゲン化IIR)等があげられる。なお、上記ハロゲン化IIRとは、臭素化ブチルゴム,塩素化ブチルゴム等である。これらは単独であるいは二種以上併せて用いられる。
【0021】
また、耐オゾン性を高めるため、必要に応じ、上記ブチル系ゴムとともに、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合ゴム(EPDM)をブレンドすることもできる。
【0022】
そして、上記ゴム外層3用材料(ブチル系ゴム組成物)における上記ゴムの含有量は、ゴム外層3用材料(ゴム組成物)全体の10重量%以上が好ましい。
【0023】
また、上記ゴム外層3用材料には、その加硫剤として、耐熱性、層間接着性の点から、サルファードナー系加硫剤を含有することが好ましい。すなわち、上記ゴム外層3は、従来の硫黄加硫では、場合によっては熱により軟化劣化しやすく、そのことに起因し、クランプ切れなど、締結部の強度低下を招くおそれがあるが、上記のようにサルファードナー系加硫剤を含有することにより、この問題を解消することができる。また、適宜、上記サルファードナー系加硫剤とともに樹脂加硫剤を併用することも可能である。
【0024】
上記サルファードナー系加硫剤としては、具体的には、三新化学社製のバルノックR、サンセラーTT、サンセラーTET、大内新興化学工業社製のノクセラーTBT、ノクセラーTOT−N、ノクセラーTRA等があげられる。これらは単独であるいは二種以上併せて用いられる。
【0025】
なお、上記ゴム外層3用材料(ブチル系ゴム組成物)には、カーボンブラック、老化防止剤、加硫促進剤(架橋促進剤)、加硫助剤(架橋助剤)、加工助剤、白色充填材、可塑剤、軟化剤、受酸剤、着色剤、スコーチ防止剤等を適宜添加しても差し支えない。
【0026】
本発明の耐熱エアーホースは、例えば、つぎのようにして作製することができる。すなわち、まず、上記ゴム内層1用材料(NBR系ゴム組成物)、ゴム外層3用材料(ブチル系ゴム組成物)をそれぞれ調製する。つぎに、上記ゴム内層1用材料を管状(円筒状)に押出成形し、未加硫のゴム内層1を形成する。つぎに、このゴム内層1の外周面に対して、所定の引揃数および打込数で、補強糸(起毛糸)をブレード編み等して補強糸層2を形成する。続いて、上記補強糸層2の外周面に、所定の接着剤を、ディッピング法,スプレー法,ロールコート法,刷毛塗り等の方法により塗工し、上記ゴム外層3用材料を押出成形し、未加硫のゴム外層3を形成する。このようにして得られた未加硫状態のホース構造体に、マンドレルを内挿し、所定の条件(例えば、160℃で1時間)で蒸気にて加硫を行った後、マンドレルから抜き取ることにより、ゴム内層1の外周面に補強糸層2が形成され、さらにその外周面にゴム外層3が形成されてなるホース(図1参照)を作製することができる。
【0027】
なお、上記補強糸層2を形成する補強糸の編み組み密度が高く、上記接着剤がゴム内層1と補強糸層2との界面に達しない場合は、先にも述べたように、ゴム内層1外周面に上記接着剤を塗工した後、補強糸層2の形成を行うことが好ましい。なお、この塗工法は、上記と同様、ディッピング法,スプレー法,ロールコート法,刷毛塗り等の方法により行われる。
【0028】
また、本発明の耐熱エアーホースを得るには、上記の製法に限定されるものではなく、例えば、オーブン等の熱風炉のみにより加熱加硫を行うようにしてもよく、また、電子線加硫によりゴムの加硫を行うようにしてもよい。
【0029】
本発明の耐熱エアーホースは、自動車等のエアー系ホースとして有用であり、具体的には、ターボエアーホース、ブローバイガス用ホース、エミッションコントロールホース、バキュームブレーキホース等として用いられる。そして、図1に示した本発明の耐熱エアーホースにおいては、これらの用途に適したものとして使用するといった観点において、そのゴム内層1の厚みが1〜20mmであることが好ましく、特に好ましくは2〜10mmである。同様の観点から、ゴム外層3の厚みが0.5〜20mmであることが好ましく、特に好ましくは1〜10mmであり、また、ホース内径は20〜100mmの範囲内が好ましく、特に好ましくは30〜70mmの範囲内である。
【0030】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0031】
まず、実施例および比較例に先立ち、下記に示す材料を準備した。
【0032】
〔レギュラーIIR〕
EXXON社製、BUTYL365
【0033】
〔Cl−IIR(ハロゲン化IIR)〕
EXXON社製、CHLOROBUTYL1066
【0034】
〔EPDM〕
住友化学社製、エスプレン501A
【0035】
〔ステアリン酸〕
花王社製、ルナックS30
【0036】
〔カーボンブラック〕
東海カーボン社製、シーストSO
【0037】
〔ナフテンオイル〕
出光興産社製、ダイアナプロセスNM−300
【0038】
〔タルク(白色充填剤)〕
日本ミストロン社製、ミストロンベーパータルク
【0039】
〔酸化亜鉛〕
三井金属鉱業社製、酸化亜鉛2種
【0040】
〔樹脂加硫剤〕
田岡化学工業社製、タッキロール201
【0041】
〔サルファードナー系加硫剤(4, 4' −ジチオジモルホリン)〕
三新化学社製、バルノックR
【0042】
〔加硫促進剤〕
大内新興化学工業社製、ノクセラーDM
【0043】
〔硫黄〕
軽井沢精錬所社製、サルファックスT−10
【0044】
〔接着剤(i)〕
塩素化ポリオレフィン系接着剤(エスアンドエスジャパン社製、サンボンド180)
【0045】
〔接着剤(ii)〕
クロロスルホン化ポリエチレン系接着剤(ロード・ファー・イースト・インコーポレイテッド社製、ケムロック6100)
【実施例】
【0046】
〔実施例1〜8、比較例5〕
まず、上記準備した各成分材料を、下記の表1に示す割合でそれぞれ配合し、オープンロールあるいはニーダー、バンバリーミキサー等の密閉式混合機を用いて混練することにより、ゴム外層用材料(ゴム組成物)a〜hを調製した。
【0047】
【表1】

【0048】
また、下記に示すように、ゴム内層用材料(NBR系ゴム組成物)を調製した。
【0049】
〔ゴム内層用材料の調製〕
NBR(日本ゼオン社製、ニポールDN101)100重量部(以下、「部」と略す)と、カーボンブラック(東海カーボン社製、シーストS)50部と、可塑剤(旭電化社製、RS107)20部と、酸化亜鉛5部と、硫黄0.5部と、加硫促進剤であるノクセラーTET(大内新興社製)2.1部と、加硫促進剤であるノクセラーCZ(大内新興科学社製)1.5部とを加え、バンバリーとミキシングロールを用いて混練し、ゴム内層用材料を調製した。
【0050】
〔ホースの作製〕
上記ゴム内層用材料を、内径40mm、肉厚3mmで管状(円筒状)に押出成形した後、その外周面に対して、所定の引揃数および打込数(引揃数:1本、打込数:32本)で、アラミド糸の起毛糸(帝人社製、テクノーラT−400)を編組角(θ)55°でブレード編みして補強糸層を形成した。続いて、上記補強糸層の外周面に、接着剤(i)または(ii)を、ディッピングにより塗工した(使用した接着剤は、後記の表2および表3参照)。そして、上記塗工面が乾燥しないうちに、その外周面に、上記ゴム外層用材料a〜hのいずれかを肉厚2mmで押出成形し、未加硫状態のホースを作製した(使用したゴム外層用材料は、後記の表2および表3参照)。続いて、この未加硫状態のホースを長さ450mmにカットして、外径40mmのストレート金属マンドレルを内挿した。そして、160℃で1時間、蒸気にて加硫を行った後、金属マンドレルから抜き取ることにより、ゴム内層の外周面に補強糸層が形成され、さらにその外周面にゴム外層が形成されてなるホースを作製した(図1参照)。
【0051】
〔比較例1〜4〕
ゴム外層用材料のゴムとして、比較例1ではクロロプレンゴム(CR)、比較例2ではアクリルゴム(ACM)、比較例3ではヒドリンゴム(ECO)、比較例4ではクロロスルホン化ポリエチレン(CSM)を用いた。それ以外は、実施例1と同様にして、ホースを作製した。
【0052】
このようにして得られた各ホースを用い、下記の方法に従って各種特性を測定・評価した。これらの結果を、後記の表2および表3に併せて示した。
【0053】
〔コスト〕
材料コストを、実施例1のホースの材料コストを基準として比較評価した。すなわち、実施例1のホースの材料コストと略同程度であるものを○、実施例1に比べ1.1〜1.5倍の材料コストがかかるものを×、実施例1に比べ1.5倍を超える材料コストがかかるものを××と評価した。
【0054】
〔耐熱性〕
各ホースを、ストレート径40mmでJASO M101に準拠したバルジ形状のアルミニウム鋳造品パイプに組み付け、その後、JASO F207に準拠したウォームギアクランプで、3N・mの締付トルクにて締めつけた。そして、120℃環境下に500時間放置した。その後、ホースを室温まで冷却させた。このような処理を行った後、さらに、上記ホースを、二枚の平板間に挟み、ホース内径が1/2になるまで急激に圧縮した。そして、ホースの外層に、割れや亀裂等の異状がないかどうかを外観評価した結果、全く異状のないものを◎、殆ど全く異状のないものを○、顕著な異状のあるもの(割れ,亀裂等)を×、若干の異状のあるものを△として表示した。
【0055】
〔耐オゾン性〕
ゴム外層用材料からなるゴムシートから作製した加硫ゴムテストピースを、JIS K6259に準拠し、オゾン濃度50pphm,40℃雰囲気中で、0〜30%の伸張を繰り返し行い、耐オゾン性の評価(試験時間:168時間)を行った。そして、上記試験において、試験時間内に、テストピースに全く亀裂が生じなかったものを◎、テストピースに殆ど亀裂が生じなかったものを○、若干亀裂が生じたものを△と評価した。
【0056】
〔層間接着性〕
ホース外周面(ゴム外層)に、その周方向に沿うよう短冊状(幅2.5cm)に切れ目を入れた。そして、引張試験機(JIS B 7721)を用い、上記切れ目の端から、ゴム外層を、毎分50mmの速度で引き剥がし、層間の剥離状態を目視にて観察した。そして、剥離面が完全に材破していたものを◎、剥離面が殆ど材破していたものを○、剥離面が一部材破していたものを△、界面で剥離したものを×と評価した。
【0057】
〔耐スチーム加硫性〕
前述のように蒸気により加硫成形した実施例のホース外表面の硬さと、そのホースのゴム外層用材料を160℃で1時間プレス加硫したシートの硬さとを、アスカーゴム硬度計CL−150L(高分子計器株式会社製)により測定した。そして、上記シートの硬さに対する上記ホース外表面の硬さの低下率が10%以内のものを○、低下率が10%より大きくはあるが実使用上問題無いものを△と評価した。
【0058】
【表2】

【0059】
【表3】

【0060】
上記結果から、全実施例品は、材料コストの低減が図られており、また、耐熱エアーホースとして要求される耐熱性および耐オゾン性に優れるとともに、層間接着性においても優れた結果が得られた。
【0061】
これに対して、比較例1品は、耐熱エアーホース用途として要求される耐熱性に劣る結果となった。比較例2〜4品は、性能自体は、耐熱エアーホース用途として優れるものの、材料コストの面で課題が残る結果となった。比較例5品は、接着剤レスでホースを作製したものであるが、アラミド糸の起毛による投錨効果のみでは充分な層間接着性を確保することはできなかった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の耐熱エアーホースは、外側からの熱に対する耐熱性が要求される(ホースの内側からの熱に対する耐熱性はあまり要求されない)エアーホース全般に使用することができ、なかでも、自動車用のエアー系ホース、詳しくは、ターボエアーホース、ブローバイガス用ホース、エミッションコントロールホース、バキュームブレーキホース等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の耐熱エアーホースの一例を示す構成図である。
【符号の説明】
【0064】
1 ゴム内層
2 補強糸層
3 ゴム外層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状のゴム内層と、上記ゴム内層の外周に設けられる補強糸層と、上記補強糸層の外周に、接着剤層を介して設けられるゴム外層とを備えた耐熱エアーホースであって、上記ゴム内層がアクリロニトリル−ブタジエン系ゴム組成物からなり、上記補強糸層が起毛糸の編組からなり、上記ゴム外層がブチル系ゴム組成物からなることを特徴とする耐熱エアーホース。
【請求項2】
上記ゴム外層を構成するブチル系ゴム組成物が、サルファードナー系加硫剤を含有する請求項1記載の耐熱エアーホース。
【請求項3】
上記ゴム外層を構成するブチル系ゴム組成物のゴムが、ブチル系ゴムとエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合ゴムとのブレンドゴムである請求項1または2記載の耐熱エアーホース。
【請求項4】
上記補強糸層が、アラミド糸の起毛糸を編組してなる請求項1〜3のいずれか一項に記載の耐熱エアーホース。

【図1】
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【公開番号】特開2010−30260(P2010−30260A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−197826(P2008−197826)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】