説明

耐熱容器の加熱成形装置

【課題】既存の成形装置を利用してPET樹脂製の耐熱容器を比較的安価に製造することができる耐熱容器の加熱成形装置を提供する。
【解決手段】テーブル211を上昇させて一次ブロー成形品30のネック部開口に位置出しピンを嵌合させ、ネック部の外周部を把持手段で把持することで、直線移動可能に設けられた搬送手段250に一次ブロー成形品30を装着する装着部210と、一次ブロー成形品30を加熱処理成形して中間成形品を得る熱処理部220と、中間成形品を最終ブロー成形して所定形状の耐熱容器10を得る最終ブロー成形部230と、耐熱容器10を搬送手段250から取り外して回収する回収部240と、を備えるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂からなるプリフォームを一次ブロー成形することによって得られた一次ブロー成形品を、熱処理すると共に成形して耐熱容器を形成する耐熱容器の加熱成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、ミネラルウォータ用のリターナブル容器等として、耐熱性を有する耐熱容器が採用されている。ミネラルウォータ用等のリターナブル容器は、通常、使用後に消費者から回収され、65℃程度の温度に加熱した洗浄液によって洗浄(温水洗浄)されて複数回再利用される。このため、耐熱性に優れたポリカーボネート樹脂等からなる耐熱容器が、リターナブル容器として好適に用いられている。なお、このようなミネラルウォータ用のリターナブル容器としては、例えば、3ガロンから5ガロン(約12リットルから20リットル)の比較的大型のものが世界中で多く採用されている。
【0003】
ところで、近年、ポリカーボネート樹脂製の容器から環境ホルモンが溶出することが確認されている。このことは世界中において問題視されてきており、上記のようなリターナブル容器等の耐熱容器の材料としても、環境ホルモンの溶出の虞がない樹脂材料を用いることが望まれている。例えば、飲料用の小型容器等の材料として用いられているPET樹脂は、環境ホルモンの問題がない。このため、耐熱容器の材料としてもPET樹脂を用いることが検討されている。
【0004】
しかしながら、PET樹脂製の容器は、一般的に耐熱性が低く、例えば、上述したような温水洗浄によっても容器が変形(収縮)してしまうという虞がある。このため、PET樹脂は、リターナブル容器等の耐熱容器の材料として採用されるに至っていない。
【0005】
これに対し、近年、PET樹脂性の容器の耐熱性を向上させる方法が提案されてきている。例えば、熱処理ブローと、最終ブローとを別々の金型で行う、いわゆる2ブロー若しくは3ブロー方式の成形装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3760045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のような成形装置では、耐熱性を向上したPET樹脂製の耐熱容器を製造することができる。しかしながら、上記成形装置は、一連の工程でプリフォームから最終製品である耐熱容器を製造するものであるため、非常に大型であり、また非常に高価である。また容器が大型なものになると、それに伴って成形装置も大型になり価格もより高くなってしまう。
【0008】
このため、耐熱容器の材料としては、ポリカーボネート樹脂等の耐熱性に優れた材料が一般的に用いられており、PET樹脂製の耐熱容器の普及は進んでいない。特に大型の耐熱容器については普及が進んでいない。つまり耐熱容器の製造装置としては、いわゆる1ブロー方式の成形装置が一般的に多く採用されている。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、既存の成形装置を利用してPET樹脂製の耐熱容器を比較的安価に製造することができる耐熱容器の加熱成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、ポリエチレンテレフタレート樹脂からなるプリフォームを一次ブロー成形することによって得られた一次ブロー成形品を、熱処理すると共に成形して耐熱容器を形成する耐熱容器の加熱成形装置であって、前記一次ブロー成形品が載置されたテーブルを上昇させて当該一次ブロー成形品のネック部開口に位置出しピンを嵌合させ、当該一次ブロー成形品を位置決めした状態で前記ネック部の外周部を把持手段で把持することで、直線移動可能に設けられた搬送手段に当該一次ブロー成形品を装着する装着部と、該装着部から前記搬送手段によって搬送された前記一次ブロー成形品を、加熱した熱処理用金型に接触させることで加熱処理成形して中間成形品を得る熱処理部と、該熱処理部から前記搬送手段によって搬送された前記中間成形品を、加熱した最終ブロー金型に接触させた状態で最終ブロー成形して所定形状の耐熱容器を得る最終ブロー成形部と、該最終ブロー成形部から前記搬送手段によって搬送された耐熱容器を前記搬送手段から取り外して回収する回収部と、を備えることを特徴とする耐熱容器の加熱成形装置にある。
【0011】
かかる本発明の第1の態様では、既存の射出延伸ブロー成形装置によって形成したPET樹脂製の一次ブロー成形品から比較的安価に耐熱容器を製造することができる。
【0012】
本発明の第2の態様は、前記熱処理用金型と前記最終ブロー金型とは、これらの型締め方向に対して略直交する方向で並設されていることを特徴とする第1の態様の耐熱容器の加熱成形装置にある。
【0013】
かかる第2の態様では、加熱成形装置のコンパクト化を図ることができ、比較的狭いスペースにも設置することが可能となる。
【0014】
本発明の第3の態様は、前記把持手段は、ガイド部材に前記装着部側から所定間隔で固定された第1〜第3の3つの把持部材を備え、前記第1の把持部材が前記装着部と前記熱処理部との間を往復移動する際に、前記第2の把持部材が前記熱処理部と前記最終ブロー成形部との間を往復移動し且つ前記第3の把持部材が前記最終ブロー成形部と前記回収部との間を往復移動するように構成されていることを特徴とする第1又は2の態様の耐熱容器の加熱成形装置にある。
【0015】
かかる第3の態様では、加熱成形装置をよりコンパクト化することができ、比較的狭いスペースにも設置することが可能となる。
【0016】
本発明の第4の態様は、前記把持手段は、一端側を支点として回動可能な一対のアームを備え、この一対のアーム間に前記ネック部の外周部を把持することを特徴とする第1〜3の何れか一つの態様の耐熱容器の加熱成形装置にある。
【0017】
かかる第4の態様では、把持手段を含む搬送手段の構造を簡略化することができ、加熱成形装置をコンパクト化できると共に、コストの削減を図ることができる。
【0018】
本発明の第5の態様は、前記搬送手段が、前記ネック部を把持した一対のアームの外側に係合されて当該一対のアームの開きを規制する規制手段をさらに備えることを特徴とする第4の態様の耐熱容器の加熱成形装置にある。
【0019】
かかる第5の態様では、アームによってネック部をより確実に把持することができ、落下もしくは位置ずれ現象等の発生を抑制することができる。
【0020】
本発明の第6の態様は、前記熱処理部及び前記最終ブロー成形部は、前記熱処理用金型又は前記最終ブロー金型を構成する一対の割型のそれぞれを、両者を当接させた状態で加圧する第1及び第2の加圧手段を備え、前記第1の加圧手段が固定された第1のフレームと、前記第2の加圧手段が固定された第2のフレームとが、これら第1及び第2のフレームの上端部に設けられた連結フレームを介して一体化されていることを特徴とする第1〜5の何れか一つの態様の耐熱容器の加熱成型装置にある。
【0021】
かかる第6の態様では、第1及び第2のフレームの剛性が高められる。したがって、第1及び第2の加圧手段によって熱処理用金型及び最終ブロー用金型を比較的高い圧力で加圧し、強固に型締めすることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように本発明の加熱成形装置によれば、既存の成形装置を利用しPET樹脂製の耐熱容器を比較的安価に製造することができる。つまり、加熱成形装置は、既存の成形装置によって成形された一次ブロー成形品から耐熱容器を成形することができるため、設備投資を最小限に抑えることができる。また加熱成形装置は、コンパクトであるため比較的狭いスペースであっても設置することができる。
【0023】
特に本発明の加熱成形装置は、例えば、容量が3ガロンから5ガロン(約12リットルから20リットル)程度の大型のミネラルウォータ用リターナブルボトル等としても好適に用いられる耐熱容器の製造に用いて好適なものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】耐熱容器の一例を示す一部断面図である。
【図2】耐熱容器の製造方法の各工程において得られる成形品を示す図である。
【図3】耐熱容器の製造装置の概略構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る加熱成形装置を示す概略図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る搬送手段を説明する矢視図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る加熱成形装置を構成するチャックを説明する平面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る装着部を説明する概略図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る熱処理部の構成を説明する概略断面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係るブローコア型の構成を説明する一部断面図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る熱処理部のフレーム構造を説明する矢視図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る最終ブロー成形部の構成を説明する概略断面図である。
【図12】本発明の一実施形態に係る搬送手段の変形例を説明する平面図である。
【図13】本発明の一実施形態に係る搬送手段の変形例を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0026】
図1に示す耐熱容器10は、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂で形成され、例えば、容量が3ガロンから5ガロン(約12リットルから20リットル)程度のミネラルウォータ用リターナブルボトルとして使用されるものである。このような大型のリターナブル容器である耐熱容器10は、例えば、外径が40mm〜60mm程度であり上端に開口部11を有するネック部12と、例えば、最大径が270mm〜300mm程度の筒状の胴部13と、ネック部12と胴部13とを繋ぎネック部12側から徐々に拡開する肩部14と、胴部13の一端を密封する底部15と、胴部13と底部15とを繋ぐヒール部16と、で構成されている。
【0027】
胴部13には、複数の環状の傾斜部17から構成される補強部18が形成されている。また底部15には、容器内方に突出する上底部19が形成されている。これら補強部18及び上底部19によって耐熱容器10の剛性(座屈強度)が高められ、耐熱容器10内にミネラルウォータ等の内容物を入れた際に、胴部13或いは底部15の変形が生じることを防止している。さらに本実施形態では、耐熱容器10の肩部14は、胴部13の肉厚よりも厚く形成されており、このことによっても耐熱容器10の剛性が高められている。
【0028】
このような耐熱容器10は、図2に示すように、大型容器用プリフォーム(以下、単にプリフォームという)20、一次ブロー成形品30、中間成形品40を経由して最終形状に成形される。
【0029】
プリフォーム20及び一次ブロー成形品30は、既存の射出延伸ブロー成形装置を用いて形成することができる。その装置構成は特に限定されないが、例えば、図3に示すように、射出延伸ブロー成形装置100は、射出装置110が連結される射出成形部120と、温調部130と、一次ブロー成形部140と、取出し部150とを有する。この射出延伸ブロー成形装置100にて射出成形されたプリフォーム20又は一次ブロー成形された一次ブロー成形品30は、それらのネック部が保持された状態で、例えば回転盤(図示せず)により90度間隔で回転搬送されるようになっている。なお、この射出延伸ブロー成形装置100は、上述のように周知の成形装置を採用すればよいため、各部の詳細な説明は省略する。
【0030】
射出延伸ブロー成形装置100の取出し部150より取り出された一次ブロー成形品30は、例えば、一旦プールされ、常温まで冷却された状態でベルトコンベアー等の移動手段300(図4参照)によって本発明の加熱成形装置200に供給される。
【0031】
加熱成形装置200は、図3及び図4に示すように、装着部210と、熱処理部220と、最終ブロー成形部230と、回収部240と、で構成されている。加熱成形装置200に供給された一次ブロー成形品30は、詳しくは後述するが、熱処理部220で熱処理されて中間成形品40となり、この中間成形品40が最終ブロー成形部230で成形されて耐熱容器10が形成される。これら一次ブロー成形品30、中間成形品40及び最終成形品である耐熱容器10は、直線移動可能に設けられた搬送手段(搬送装置)250によって、装着部210、熱処理部220、最終ブロー成形部230及び回収部240の間を順次搬送されるようになっている。
【0032】
ここで搬送手段250は、一次ブロー成形品30等のネック部を把持する把持手段を構成する複数のチャック(把持部材)251が所定間隔で固定された固定部材252を備える。図4のA−A′矢視図である図5に示すように、固定部材252は、フレーム253に固定されたガイドレール254に係合保持され、モータ等の駆動手段255によって直線往復移動可能に構成されている。すなわち固定部材252にはラック256が設けられ、このラック256にはピニオンギヤ257が噛合されている。ピニオンギヤ257は駆動手段255の回転軸(図示なし)に固定されている。そして駆動手段255の駆動力が、これらラック256及びピニオンギヤ257等を介して固定部材252に伝達されることで、固定部材252がガイドレール254に沿って直線往復移動可能となっている。
【0033】
本実施形態では、固定部材252には、第1〜第3の3つのチャック251a〜251cが、装着部210側から所定間隔で固定されている(図4参照)。具体的には、装着部210、熱処理部220、最終ブロー成形部230及び回収部240が一定の間隔で配置されており、第1〜第3のチャック251a〜251cは、これらの各部間と同一の間隔で、固定部材252に固定されている。なお図4中には、回収部240に対応する位置にもチャックが示されているが、これは第3のチャック251cが回収部240に移動された状態を併せて示したものである。
【0034】
このような本実施形態の構成では、第1のチャック251aが装着部210と熱処理部220との間を往復移動する際に、第2のチャック251bは熱処理部220と最終ブロー成形部230との間を往復移動し且つ第3のチャック251cは最終ブロー成形部230と回収部240との間を往復移動することになる。したがって、このような搬送手段250を採用することで、第1のチャック251aが装着部210と熱処理部220の間を移動する距離だけ固定部材252を往復移動させるだけで、一次ブロー成形品30や中間成形品40等を装着部210から回収部240まで順次搬送することができる。
【0035】
これにより各チャック251を直線移動させる距離は極めて短くなる。したがって、加熱成形装置200の小型化を図ることができ、比較的狭いスペースであっても加熱成形装置200を設置することができる。
【0036】
また各チャック251は、図6に示すように、一対のアーム258を備える。各アーム258は、それぞれ一端側が支持ピン259によって固定部材252に支持されている。そして、これらのアーム258は、図示しないモータ等の回動手段によって支持ピン259を支点として回動可能となっている。アーム258は、図6(a)に示すように、一次ブロー成形品30等を把持しない状態では、ガイドレール254に沿った状態(180度開いた状態)となっている。図6(b)に示すようにアーム258が閉じられることで、一次ブロー成形品30等がこれらアーム258によって把持される。
【0037】
把持手段としてこのようなチャック251を採用することで、搬送手段250としての無駄な動きが最小限に抑えられる。したがって、搬送手段250の構造を極めて簡略化することができ、加熱成形装置200の小型化を図ることができる。
【0038】
以下、本発明の加熱成形装置200を構成する装着部210、熱処理部220、最終ブロー成形部230及び回収部240について説明する。
【0039】
装着部210では、移動手段300によって供給された一次ブロー成形品30を搬送手段250に装着させる。図4及び図7に示すように、装着部210は、テーブル211及び位置決めピン212を備えている。テーブル211は、図示しないアクチュエータ等の昇降手段によって昇降可能となっている。テーブル211に隣接して移動手段300が設けられており、この移動手段300によって供給された一次ブロー成形品30がテーブル211上に載置される。
【0040】
位置決めピン212は、テーブル211上に載置された一次ブロー成形品30の開口部31に略対向して設けられている。一次ブロー成形品30を搬送手段250に装着させる際、一次ブロー成形品30は、この位置決めピン212によって位置決めされる。具体的には、テーブル211上に一次ブロー成形品30が載置されると、図7(a)に示すように、位置決めピン212がホームポジションから所定位置まで下降する。なお位置決めピン212のホームポジションは、搬送手段250による一次ブロー成形品30等の移動を阻害しない位置に設定されている。その後、一次ブロー成形品30の上昇(テーブルの上昇)が開始され、図7(b)に示すように、一次ブロー成形品30の開口部31に位置決めピン212が嵌合された時点で、一次ブロー成形品30の上昇(テーブルの上昇)が停止する。これにより、一次ブロー成形品30が所望の位置に高精度に位置決めされる。
【0041】
ここで、位置決めピン212の先端部には、その先端側に向かって径が漸小する漸小部213が設けられている。これにより、一次ブロー成形品30がテーブル211上に載置された状態で、一次ブロー成形品30の開口部31と位置決めピン212との中心位置とに、若干のズレが生じていたとしても、開口部31に位置決めピン212が嵌合されることで、そのズレは修正される。すなわち、一次ブロー成形品30の開口部31に位置決めピン212が嵌合されることで、一次ブロー成形品30は、左右方向(面内方向)において高精度に位置決めされる。
【0042】
また位置決めピン212には、一次ブロー成形品30の先端面30aが当接する段差部214が設けられている。そして、一次ブロー成形品30の開口部31に位置決めピン212が嵌合され、位置決めピン212の段差部214に一次ブロー成形品30の先端面30aが当接した時点で、テーブル211の上昇が停止するようになっている。つまり一次ブロー成形品30の開口部31に位置決めピン212が嵌合されることで、一次ブロー成形品30は上下方向においても高精度に位置決めされる。
【0043】
このように一次ブロー成形品30が高精度に位置決めされた状態で、第1のチャック251aを構成するアーム258を閉じる。これにより一次ブロー成形品30のネック部32の外周部が第1のチャック251aによって把持される。すなわち、一次ブロー成形品30が搬送手段250に装着される。
【0044】
その後、位置決めピン212をホームポジションまで移動(上昇)させ、一次ブロー成形品30から離脱させる。そしてこの状態で、駆動手段255によって固定部材252をガイドレール254に沿って移動させることで、一次ブロー成形品30が装着部210から熱処理部220に搬送される。
【0045】
本発明の加熱成形装置200は、このような装着部210を備えているため、既存の射出延伸ブロー成形装置で製造した一次ブロー成形品30を比較的高精度に位置決めして搬送手段250に装着することができる。したがって、一次ブロー成形品30を装着部210から熱処理部220に良好に搬送することができる。
【0046】
なお第2及び第3のチャック251b,251cは、第1のチャック251aに同期して開閉動作する。したがって、熱処理部220に熱処理された中間成形品40が存在する場合、第1のチャック251aによって一次ブロー成形品30が把持されると共に、第2のチャック251bによって中間成形品40が把持される。さらに最終ブロー成形部230に最終ブローされた耐熱容器10が存在する場合、第3のチャック251cによって耐熱容器10が把持される。そして、各チャック251に把持された一次ブロー成形品30、中間成形品40及び耐熱容器10が同時に良好に搬送される。
【0047】
熱処理部220は、加熱された熱処理用金型内にて一次ブロー成形品30を熱処理することで、その後に熱収縮された中間成形品40を得る。まず一次ブロー成形品30が搬送手段250によって熱処理部220に搬送されると、第1のチャック251aが開かれ、一次ブロー成形品30が熱処理用金型221内に収容される。
【0048】
図8に示すように、熱処理部220を構成する熱処理用金型221は、一次ブロー成形品30が収容される熱処理割型222と、一次ブロー成形品30の先端面(天面)に当接するブローコア型223と、一次ブロー成形品30の底部35に対応する上底加熱型224と、で構成されている。この熱処理用金型221の成形空間は、一次ブロー成形品30の外形とほぼ同一形状に形成されている。熱処理部220は、一次ブロー成形品30に生じている歪みを除去することが目的であるから、熱処理によって一次ブロー成形品30を延伸配向しないことが好ましい。また熱処理割型222には、一次ブロー成形品30の胴部33に対応する部分に、複数、例えば、12本の棒状のヒータ225が設けられている。これらのヒータ225は、熱処理割型222の成形空間の周囲に略均等な間隔で内蔵されており、これらのヒータ225によって一次ブロー成形品30の胴部33が所定温度に加熱されるようになっている。
【0049】
また熱処理割型222には、一次ブロー成形品30の肩部34に対応する部分に、例えば、加熱されたオイル等の温調媒体が供給される供給路226が形成されている。これにより、熱処理割型222によって、一次ブロー成形品30の胴部33と肩部34とを異なる温度に加熱することができるようになっている。また上底加熱型224にも温調媒体が供給される供給路227が設けられている。
【0050】
このような熱処理用金型221は予め所定温度に加熱されている。一次ブロー成形品30を熱処理する際には、一次ブロー成形品30の内部に高圧エアを送り込み、熱処理用金型221内の内壁面221aに一次ブロー成形品30を所定時間接触させて加熱処理(ヒートセット処理)する。その後一次ブロー成形品30内の気体を排気すると共に一次ブロー成形品30を熱処理用金型221から取り出すことで中間成形品40が形成される。すなわち、一次ブロー成形品30内の気体を排気すると共に熱処理用金型221から一次ブロー成形品30を取り出す際に、一次ブロー成形品30が収縮して縦軸長さL2が最終成形品である耐熱容器10の縦軸長さL3よりも短い中間成形品40となる(図2参照)。
【0051】
ブローコア型223は、一次ブロー成形品30の開口部を塞ぐと共に一次ブロー成形品30内に高圧エアを導入するエア導入路260を備え、一次ブロー成形品30内に高圧エアを導入するためのノズルとして機能する。また熱処理終了後には、一次ブロー成形品30内部の気体が、ブローコア型223のエア導入路260を介して外部に排気される。
【0052】
本実施形態では、ブローコア型223は、図9に示すように、コア型本体261とコア型本体261の外周面に装着された摺動部材262とを備える。コア型本体261は、大径部263と、大径部263よりも小径の小径部264とで構成されている。大径部263には、エア導入路260と共に、このエア導入路260に連通するエア供給口265及びエア排出口266が形成されている。エア供給口265には、図示しないエアタンクが接続され、このエアタンクから供給される高圧エアがエア供給口265及びエア導入路260を介して一次ブロー成形品30内に導入される。エア排出口266には図示しないバルブが設けられており、熱処理終了後にこのバルブが開弁されることで、一次ブロー成形品30内の気体がこのエア排出口266から外部に排出される。
【0053】
またコア型本体261の小径部264には、この小径部264よりも直径が大きいフランジ部267が形成されている。一方、摺動部材262には、このフランジ部267と略同一径の空間部268が形成されている。この空間部268は、フランジ部267によって第1の空間部268aと第2の空間部268bとに区画されている。また摺動部材262には、第1の空間部268aに連通する第1のエア給排口269aと、第2の空間部268bに連通する第2のエア給排口269bとが設けられている。
【0054】
そして、摺動部材262は、第1のエア給排口269a又は第2のエア給排口269bを介して第1の空間部268a又は第2の空間部268bにエアが供給されることで、コア型本体261の小径部264の外周面を摺動するようになっている。
【0055】
具体的には、一次ブロー成形品30が装着部210から熱処理部220に搬送されると、第1のエア給排口269aから第1の空間部268a内にエアが供給される。そのエア圧によって摺動部材262が下降して一次ブロー成形品30の先端面(天面)30aに当接する(図9(a))。なおこのとき、第2の空間部268b内のエアは第2のエア給排口269bから外部に排出される。そしてこの状態で、エア供給口265及びエア導入路260を介して一次ブロー成形品30内に高圧エアが導入される。
【0056】
また一次ブロー成形品30の熱処理が終了して一次ブロー成形品30内のエアがエア導入路260及びエア排出口266を介して外部に排出されると、第2のエア給排口269bから第1の空間部268b内にエアが供給されると共に第1の空間部268a内のエアが第1のエア給排口269aから外部に排出される。これにより摺動部材262は上昇して一次ブロー成形品30から離脱される(図9(b))。
【0057】
ところで、熱処理用金型221を構成する熱処理割型222のそれぞれは、一次ブロー成形品30を熱処理する際、両者を当接させた状態で加圧されて密封されている。本実施形態では、図4のB−B′矢視図である図10に示すように、熱処理割型222を構成する第1の割型222aを加圧する2つの第1の加圧手段228Aと、第2の割型222bを加圧する2つの第2の加圧手段228Bとを備える。これら第1及び第2の加圧手段228A,228Bは、例えば、油圧により熱処理割型222(222a,222b)を加圧するものであり、各割型222a,222bの外側に設けられた第1のフレーム229A及び第2のフレーム229Bにそれぞれ内蔵されている。
【0058】
上述したように一次ブロー成形品30を熱処理する際には一次ブロー成形品30の内部に高圧エアを送り込む。熱処理割型222は、この圧力によって開かないように強固に型締めされている必要がある。
【0059】
本実施形態では、第1の加圧手段228Aが内蔵された第1のフレーム229Aと、第2の加圧手段228Bが内蔵された第2のフレーム229Bとが、これら第1及び第2のフレーム229A,229Bの上端部に設けられた連結フレーム229Cによって一体化されている。これにより、第1及び第2のフレーム229A,229Bの剛性が高められている。したがって、第1及び第2の加圧手段228A,228Bによって熱処理割型222を比較的高い圧力で加圧したとしても、第1及び第2のフレーム229A,229Bが変形することがない。したがって、熱処理割型222を強固に型締めすることができる。なお本実施形態では、最終ブロー成形部230においても、同様のフレーム構造を採用している。
【0060】
熱処理用金型221から取り出された中間成形品40は、第2のチャック251bによって把持されて、最終ブロー成形部230に搬送される。最終ブロー成形部230は、図11に示すように、最終ブロー成形型231を備える。この最終ブロー成形型231は、所定温度に加熱されており、この最終ブロー成形型231内で中間成形品40をブロー成形することにより、最終成形品である耐熱容器10が得られる。
【0061】
最終ブロー成形型231は、上述した熱処理用金型221と同様に、中間成形品40が収容される最終ブロー割型232と、中間成形品40の先端面(天面)に当接するブローコア型233と、中間成形品40の底部45に対応する上底型234とを備えると共に、ブローコア型233のエア導入路233aを通して上下移動可能な延伸ロッド235を備える。最終ブロー割型232の成形空間の周囲には、温調媒体が供給される供給路236が縦軸方向に沿って複数設けられている。また上底型234にも温調媒体が供給される供給路237が設けられている。これら複数の供給路236内を循環する温調媒体によって成形空間内の中間成形品40が所定温度に加熱されるようになっている。
【0062】
最終ブロー成形型231内に配置された中間成形品40が、その内部に供給される高圧エアと延伸ロッド235とにより縦軸方向及び横軸方向に延伸され、最終ブロー成形型231の内壁面231aに押圧されて熱処理され、最終成形品である耐熱容器10が成形される(図1参照)。
【0063】
また本実施形態では、最終ブロー成形型231によって耐熱容器10が成形されると、その後、冷却用のエアが延伸ロッド235の先端部や途中に設けたエア孔から耐熱容器10内に供給されるようになっている。この際、耐熱容器10内のエアは、ブローコア型233に設けられたエア導入路233aを介して外部に排出される。これにより、延伸ロッド235から供給された冷却用のエアが耐熱容器10内を循環するため、耐熱容器10全体が比較的均一に且つ効率的に冷却される。
【0064】
また本実施形態では、このような最終ブロー成形部230を構成する最終ブロー割型232と、熱処理部220を構成する熱処理割型222とは、これらの型締め方向に対して直交する方向に並設されている。これにより両者が干渉することがなく、最終ブロー割型232と熱処理割型222とを近接して配置することができる。したがって、加熱成形装置200を小型化することが可能となる。
【0065】
最終ブロー成形型231から取り出された最終成形品である耐熱容器10は、その後、第3のチャック251cによって把持されて、回収部240に搬送される。そして、この回収部240で第3のチャック251cが開かれ搬送手段250から取り外される。図示は省略するが、回収部240は、装着部210の位置決めピン212と同様に、耐熱容器10の開口部11に嵌合される位置決めピンを備える。耐熱容器10が回収部240に搬送されると、この位置決めピンをホームポジションから下降させて耐熱容器10の開口部11に嵌合させる。この状態で、第3のチャック251cを開いて耐熱容器10が搬送手段250から取り外される。このように回収部240において耐熱容器10の開口部11に位置決めピンを嵌合させることで、耐熱容器10を傾かせることなく効率的に回収することができる。このように加熱成形装置200から取り出された耐熱容器10は、その後は、例えば、ベルトコンベアー等の移動手段(図示なし)によって、所定の保管場所まで搬送される。
【0066】
なお一次ブロー成形品30は熱処理用金型221内で高温に加熱されるため、また中間成形品40は最終ブロー成形型231で高温に加熱されるため、熱処理用金型221や最終ブロー成形型231の内壁面にこれらの成形品(一次ブロー成形品30,中間成形品40)が密着してしまい、型開き時にうまく離型できなくなる虞がある。この時、一対のアーム258で構成されるチャック251だけでは中間成形品40や最終成形品である耐熱容器10を適切に把持できず、落下もしくは位置ずれ現象が起こり、良好に把持もしくは搬送できない事態が生じてしまう。
【0067】
この対策としては、搬送手段250がチャック251の保持力を補強するための機構を備えるようにするのが好ましい。すなわち、搬送手段250は成形品(ネック部)を把持した一対のアーム258の外側に係合されて一対のアーム258の開きを規制する機構(規制手段)を備えていることが好ましい。
【0068】
具体的には、例えば、図12に示すように、チャック251を構成する一対のアーム258に対向する位置に、略コ状のチャック補強部材271を含む補強機構270を設ける。この補強機構270は、チャック補強部材271と共にエアシリンダ272を備えており、チャック補強部材271はエアシリンダ272によってチャック251に対して接離する方向に移動可能に支持されている。
【0069】
このような補強機構270を設けることにより、成形品をより確実に把持することができる。例えば、チャック251で成形品を把持した後、図13に示すように、待機位置にあるチャック補強部材271を前進させて一対のアーム258に係合させる。このように一対のアーム258が開かないように固定した状態で型開きして成形品を離型した後、チャック補強部材271を後退させて元の待機位置に戻す。その後は、上述したようにチャック251により成形品を最終ブロー成形部230或いは回収部240に搬送させる。これにより、仮に成形品が離型しづらい状態にあったとしても、確実に成形品をチャック251によって把持して搬送処理を実施できるようになる。
【0070】
以上説明した本発明の加熱成形装置によれば、既存の射出延伸ブロー成形装置によって形成したPET樹脂製の一次ブロー成形品から耐熱容器を製造することができる。すなわち本発明の加熱成形装置を導入することで、既存の装置を利用することができる。したがって、設備投資を最小限に抑えて、比較的安価にPET樹脂製の耐熱容器を製造することができる。
【0071】
また以上本発明の一実施形態について説明したが、勿論、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲であれば、種々の変更が可能である。
【0072】
例えば、上述の実施形態で例示したように、本発明の加熱成形装置は、大型の耐熱容器の製造に用いて好適なものであるが、勿論、本発明の加熱成形装置は、小型の耐熱容器の製造にも適用することができる。
【符号の説明】
【0073】
10 耐熱容器
20 プリフォーム
30 一次ブロー成形品
40 中間成形品
200 加熱成形装置
210 装着部
211 テーブル
212 位置決めピン
220 熱処理部
228A 第1の加圧手段
228B 第2の加圧手段
229A 第1のフレーム
229B 第2のフレーム
229C 連結フレーム
250 搬送手段
251 チャック
258 アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテレフタレート樹脂からなるプリフォームを一次ブロー成形することによって得られた一次ブロー成形品を、熱処理すると共に成形して耐熱容器を形成する耐熱容器の加熱成形装置であって、
前記一次ブロー成形品が載置されたテーブルを上昇させて当該一次ブロー成形品のネック部開口に位置出しピンを嵌合させ、当該一次ブロー成形品を位置決めした状態で前記ネック部の外周部を把持手段で把持することで、直線移動可能に設けられた搬送手段に当該一次ブロー成形品を装着する装着部と、
該装着部から前記搬送手段によって搬送された前記一次ブロー成形品を、加熱した熱処理用金型に接触させることで加熱処理成形して中間成形品を得る熱処理部と、
該熱処理部から前記搬送手段によって搬送された前記中間成形品を、加熱した最終ブロー金型に接触させた状態で最終ブロー成形して所定形状の耐熱容器を得る最終ブロー成形部と、
該最終ブロー成形部から前記搬送手段によって搬送された耐熱容器を前記搬送手段から取り外して回収する回収部と、を備えることを特徴とする耐熱容器の加熱成形装置。
【請求項2】
前記熱処理用金型と前記最終ブロー金型とは、これらの型締め方向に対して略直交する方向で並設されていることを特徴とする請求項1に記載の耐熱容器の加熱成形装置。
【請求項3】
前記把持手段は、ガイド部材に前記装着部側から所定間隔で固定された第1〜第3の3つの把持部材を備え、前記第1の把持部材が前記装着部と前記熱処理部との間を往復移動する際に、前記第2の把持部材が前記熱処理部と前記最終ブロー成形部との間を往復移動し且つ前記第3の把持部材が前記最終ブロー成形部と前記回収部との間を往復移動するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の耐熱容器の加熱成形装置。
【請求項4】
前記把持手段は、一端側を支点として回動可能な一対のアームを備え、この一対のアーム間に前記ネック部の外周部を把持することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の耐熱容器の加熱成形装置。
【請求項5】
前記搬送手段が、前記ネック部を把持した一対のアームの外側に係合されて当該一対のアームの開きを規制する規制手段をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の耐熱容器の加熱成形装置。
【請求項6】
前記熱処理部及び前記最終ブロー成形部は、前記熱処理用金型又は前記最終ブロー金型を構成する一対の割型のそれぞれを、両者を当接させた状態で加圧する第1及び第2の加圧手段を備え、
前記第1の加圧手段が固定された第1のフレームと、前記第2の加圧手段が固定された第2のフレームとが、これら第1及び第2のフレームの上端部に設けられた連結フレームを介して一体化されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の耐熱容器の加熱成型装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−45928(P2012−45928A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157153(P2011−157153)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000227032)日精エー・エス・ビー機械株式会社 (35)
【Fターム(参考)】