説明

耐熱性光拡散板

【課題】冷陰極線管を点灯したときの熱による変形がより少ない耐熱性の光拡散板の開発。
【解決手段】耐熱性光拡散板(11)は、スチレン系単量体−無水マレイン酸共重合体に光拡散剤が分散されてなることを特徴とする。スチレン系単量体−無水マレイン酸共重合体のスチレン系単量体単位含有量は通常80〜95モル%である。厚みは1〜3mmである。耐熱性光拡散板(11)に、紫外線吸収剤を含む透明樹脂からなる紫外線吸収層(12)が積層された多層光拡散板(10)としても用いられる。上記耐熱性光拡散板(11)または上記多層光拡散板(10)を用いたバックライト装置は、液晶セルと共に直下型液晶ディスプレイに備えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性光拡散板に関し、詳しくは直下型液晶ディスプレイ装置などを構成する
バックライト装置に好適に用いられ、耐熱性の光拡散板に関する。
【背景技術】
【0002】
直下型液晶ディスプレイ装置(2)は、図2に示すように、液晶セル(3)と、その直下に配置
されたバックライト装置(4)とを備えたディスプレイ装置であり、バックライト装置(4)と
しては、冷陰極線管(5)を光源とし、その前面側に光拡散板(1)を配置したものが広く用い
られている。このようなバックライト装置(4)に使用しうる光拡散板(1)としては、特許文
献1〔特開2004−170937号公報〕に、ポリスチレンに光拡散剤が分散されたも
のが開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−170937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなバックライト装置(4)は、液晶ディスプレイ装置(2)の画面サイズの大型化に伴
い、大型の冷陰極線管(5)が使用されるようになっており、これに伴い、バックライト装
置(4)の内部は、高温となる傾向にある。このため、光拡散板(1)としては、高温に耐える
耐熱性のものが求められている。
【0005】
そこで出願人は、冷陰極線管(5)を点灯したときの熱による変形がより少ない耐熱性の光
拡散板を開発するべく鋭意検討した結果、本発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、スチレン系単量体−無水マレイン酸共重合体に光拡散剤が分散されてなることを特徴とする耐熱性光拡散板(11)を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の耐熱性光拡散板(11)は、熱変形のおそれが少ないので、図2に示すように、光源
として冷陰極線管(5)を用いたバックライト装置(4)、特に画面サイズ32型(縦428m
m、横702mm)以上の大型の液晶ディスプレイ(2)などに用いられるバックライト装
置(4)を構成すると光拡散板(1)として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の耐熱性光拡散板を構成するスチレン系単量体−無水マレイン酸共重合体は、スチレン系単量体と無水マレイン酸との共重合体であって、そのスチレン系単量体単位含有量は通常70モル%〜95モル%、好ましくは80モル%〜93モル%であり、無水マレイン酸単位含有量は通常30モル%〜5モル%、好ましくは20モル%〜7モル%である。
【0009】
スチレン系単量体としては、スチレンの他、置換スチレン類を用いることもできる。該置換スチレン類としては、例えばクロロスチレン、ブロモスチレンのようなハロゲン化スチレン類、ビニルトルエン、α−メチルスチレンのようなアルキルスチレン類などが挙げられる。スチレン系単量体は、それぞれ単独で用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0010】
スチレン系単量体−無水マレイン酸共重合体は、スチレン系単量体および無水マレイン酸以外の単量体単位を含んでいてもよい。他の単量体単位を構成する単量体としては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸オクタデシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸アダマンチル、メタクリル酸トリシクロデシル、メタクリル酸フェンチル、メタクリル酸ノルボルニル、メタクリル酸ノルボルニルメチルなどのようなメタクリル酸エステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸トリシクロデシルなどのようなアクリル酸エステル類、メタクリル酸、アクリル酸のような不飽和酸類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、無水グルタル酸、グルタルイミドなどが挙げられ、これらの単量体は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0011】
光拡散剤とは、透明樹脂と屈折率が異なる粒子であって、透過する光を拡散しうるもので
あり、例えばガラスビーズ、シリカ粒子、水酸化アルミニウム粒子、炭酸カルシウム粒子
、硫酸バリウム粒子、酸化チタン粒子、タルクなどの無機粒子であってもよいし、スチレ
ン系重合体粒子、アクリル系重合体粒子、シロキサン系重合体粒子などの有機粒子であっ
てもよい。
【0012】
光拡散剤の粒子径は、重量平均粒子径で1μm以上、好ましくは2μm以上、さらに好ま
しくは3μm以上であり、光拡散剤に起因する細かな凹凸が表面に生じにくい点で、通常
25μm以下、好ましくは20μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。
【0013】
本発明の耐熱性光拡散板(11)における光拡散剤の含有量は特に限定されないが、例えばスチレン系単量体−無水マレイン酸共重合体100質量部あたり0.1質量部〜20質量部である。
【0014】
本発明の耐熱性光拡散板(11)は、紫外線吸収剤、熱安定剤、他の透明樹脂、酸化防止剤、耐候剤、光安定剤、蛍光増白剤、加工安定剤、グラスファイバーなどの補強剤などの添加剤を含有していてもよい。
【0015】
本発明の耐熱性光拡散板(11)の厚みは、通常1mm〜3mm程度である。
【0016】
本発明の耐熱性光拡散板(11)は、例えばスチレン系単量体−無水マレイン酸共重合体および光拡散剤を含む樹脂組成物を、押出成形法、射出成形法などの通常の成形方法によりすることで製造することができる。
【0017】
本発明の耐熱性光拡散板(11)は、その片面または両面に、紫外線吸収層(12)が積層された多層光拡散板(10)として用いてもよい。紫外線吸収層(12)は、紫外線吸収剤を含む透明樹脂からなる層である。
【0018】
紫外線吸収層(12)を構成する透明樹脂としては、例えばメタクリル酸メチル系樹脂、スチレン系樹脂などが挙げられる。
【0019】
メタクリル酸メチル系樹脂とは、単量体単位としてメタクリル酸メチルを50重量%以上含む重合体であり、実質的にメタクリル酸メチル単独の重合体であってもよいし、メタクリル酸メチル50重量%以上およびこれと共重合可能な単量体50重量%以下の共重合体であってもよい。
【0020】
メタクリル酸メチルと共重合可能な単量体としては、例えばメタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸オクタデシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸オクタデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸アダマンチル、メタクリル酸トリシクロデシル、メタクリル酸フェンチル、メタクリル酸ノルボルニル、メタクリル酸ノルボルニルメチルなどのようなメタクリル酸エステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸トリシクロデシルなどのようなアクリル酸エステル類、メタクリル酸、アクリル酸のような不飽和酸類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、無水マレイン酸、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、無水グルタル酸、グルタルイミド、スチレン系単量体などが挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上が含まれていてもよい。スチレン系単量体としては、スチレンの他、上記の置換スチレン類を用いることもできる。またメタクリル酸メチル樹脂には、無水グルタル酸単位やグルタルイミド単位が含まれていてもよい。
【0021】
スチレン系樹脂とは、単量体単位としてスチレン系単量体を50重量%以上含む重合体であり、実質的にスチレン系単量体単独の重合体であってもよいし、スチレン系単量体50重量%以上およびこれと共重合可能な単量体50重量%以下の共重合体であってもよい。
【0022】
スチレン系単量体としては、スチレンの他、上記の置換スチレン類を用いることもでき、これらはそれぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0023】
スチレン系単量体と共重合可能な単量体としては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸オクタデシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸オクタデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸アダマンチル、メタクリル酸トリシクロデシル、メタクリル酸フェンチル、メタクリル酸ノルボルニル、メタクリル酸ノルボルニルメチルなどのようなメタクリル酸エステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸トリシクロデシルなどのようなアクリル酸エステル類、メタクリル酸、アクリル酸のような不飽和酸類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、無水マレイン酸、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、無水グルタル酸、グルタルイミドなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0024】
メタクリル酸メチル系樹脂およびスチレン系樹脂の中でも、スチレン止めた栗留酸メチルとの共重合体であるスチレン−メタクリル酸メチル共重合体が好ましく用いられる。スチレン−メタクリル酸メチル共重合体としては、通常、スチレン単位含有量20質量%〜95質量%、メタクリル酸メチル単位含有量80質量%〜5質量%、好ましくはスチレン単位含有量70質量%以上、メタクリル酸メチル単位含有量30質量%以下のものが用いられる。
【0025】
紫外線吸収剤としては、例えばトリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線
吸収剤などが挙げられる。
【0026】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば
4,6−ジフェニル−2−(4−ヘキシルオキシ−2−ヒドロキシフェニル)−s−トリ
アジン、
4,6−ビス(ビフェニル−4−イル)−2−(4−ヘキシルオキシ−2−ヒドロキシフ
ェニル)−s−トリアジン、
4,6−ビス(4−tert−ブチルフェニル)−2−(4−ヘキシルオキシ−2−ヒド
ロキシフェニル)−s−トリアジン、
4,6−ビス(4−tert−オクチルフェニル)−2−(4−ヘキシルオキシ−2−ヒ
ドロキシフェニル)−s−トリアジン、
4,6−ビス(ビフェニル−4−イル)−2−[(4−エチルヘキシルオキシ)−2−ヒ
ドロキシフェニル]−s−トリアジン、
4,6−ビス(4−tert−ブチルフェニル)−2−[(4−エチルヘキシルオキシ)
−2−ヒドロキシフェニル]−s−トリアジン、
4,6−ビス(4−tert−オクチルフェニル)−2−[(4−エチルヘキシルオキシ
)−2−ヒドロキシフェニル]−s−トリアジン
2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)
オキシ]フェノール〔チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製「チヌビン1577FF
」〕などが挙げられる。
【0027】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば2−(2−ヒドロキシ−5−t−オ
クチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、
2−(3,5−ビス−α−クミル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾー
ル〔チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製「チヌビン234」〕、
2,2'−メチレン−ビス(4−t−オクチル−(6−2H−ベンゾトリアゾール−2−
イル)フェノール)〔旭電化社製「アデカスタブLA−31」〕、
2−(2−ヒドロキシ−3−α−クミル−5−t−オクチルフェニル)−2H−ベンゾト
リアゾール、
2−(2−ヒドロキシ−3−t−オクチル−5−α−クミル−フェニル)−2H−ベンゾ
トリアゾール、
N−[3−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジ
ル]−4,5,6,7−テトラヒドロフタルイミド〔共同薬品社製「バイオソーブ590
」〕、
2−(2−ヒドロキシ−5−メチル−フェニル)−ベンゾトリアゾール〔住友化学社製「
スミソーブ200」〕
などが挙げられる。
【0028】
また、これらの他にもマロン酸エステル系紫外線吸収剤、オキサルアニリド系紫外線吸収
剤などが挙げられる。さらに耐久性を向上させるために、ヒンダードアミン類を含有させ
てもよい。
【0029】
これらの紫外線吸収剤は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用い
てもよい。
【0030】
紫外線吸収層(12)における紫外線吸収剤の含有量は、紫外線による光拡散板(11)の劣化を
十分に防止しうる点で、通常0.05質量部以上、好ましくは0.5質量部以上であり、
紫外線吸収剤に起因する着色が少ない点で通常10質量部以下、好ましくは3質量部以下
である。
【0031】
紫外線吸収層(12)は、光拡散剤、熱安定剤、酸化防止剤、耐候剤、光安定剤、蛍光増白剤
、加工安定剤、グラスファイバーなどの補強剤などの添加剤を含有していてもよい。
【0032】
また、紫外線吸収層(12)の厚みは、紫外線による劣化をより防止できる点で通常30μm
以上であり、紫外線吸収剤による着色が少ない点で通常100μm以下である。
【0033】
図1に、多層光拡散板(10)の断面図を模式的に示す。図1(a)は、光拡散板(11)の片面に
紫外線吸収層(12)が積層された多層光拡散板(10)の例を、図1(b)は光拡散板(11)の両面
に紫外線吸収層(12)が積層された多層光拡散板(10)の例を、それぞれ示すものである。
【0034】
このような多層光拡散板(10)は、例えば
(1)スチレン系単量体−無水マレイン酸共重合体および光拡散剤を含む樹脂組成物と、透明樹脂および紫外線吸収剤を含む樹脂組成物とを共押出しする方法、
(2)スチレン系単量体−無水マレイン酸共重合体および光拡散剤を含む樹脂組成物を成形して本発明の光拡散板(11)を得、これに透明樹脂および紫外線吸収剤が溶剤に溶解された溶液を塗布し、溶剤を揮発させて、紫外線吸収層(12)をを形成する方法、
(3)スチレン系単量体−無水マレイン酸共重合体および光拡散剤を含む樹脂組成物を成形して本発明の光拡散板(11)を得、これに、透明樹脂および紫外線吸収剤を含む樹脂組成物をフィルム状に成形したフィルム状成形体(12)を熱融着により貼合する方法
などが挙げられ、経済的に製造しうる点で、共押出しによる方法が好ましい。
【0035】
本発明の耐熱性光拡散板(11)および上記多層光拡散板(10)は、熱による変形が少ないので
、例えば図2に示すようなバックライト装置(4)を構成する光拡散板(1)として有用である

【0036】
このバックライト装置(4)は、光拡散板(1)と、冷陰極線管(5)とを備えており、この光拡
散板(1)は、本発明の耐熱性光拡散板(11)であるか、または上記多層光拡散板(10)である
。このバックライト装置(4)を構成する光拡散板(1)として、上記多層光拡散板(10)を用い
る場合、紫外線吸収層(12)が光拡散板(11)と冷陰極線管(5)との間に位置するように、多
層光拡散板(10)が配置される。例えば図1(a)に示すように、光拡散板(11)の片面に紫外
線吸収層(12)が積層された多層光拡散板(10)を用いる場合には、この紫外線吸収層(12)が
冷陰極線管(5)側になるように配置される。
【0037】
このようなバックライト装置(4)は、例えば図2に示すような直下型液晶ディスプレイ装
置(2)に好適に用いられる。この直下型液晶ディスプレイ装置(2)は、上記バックライト装
置(4)と液晶セル(3)とを備えている。液晶セル(3)はカラー画像を表示可能なものが好ま
しい。この直下型液晶ディスプレイ装置(2)は、液晶セル(3)と冷陰極線管(5)との間に光
拡散板(1)が位置するように配置されている。そして、この光拡散板(1)は、本発明の光拡
散板(11)であるか、あるいは上記多層光拡散板(10)であるので、冷陰極線管(5)を点灯し
ても、その熱により光拡散板(1)が熱変形するおそれが少ない。
【実施例】
【0038】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例によって
限定されるものではない。
【0039】
なお、各実施例における評価方法は以下のとおりである。
(1)光学特性評価(全光線透過率、拡散光透過率、ヘーズおよび分光透過率)
全光線透過率は、JIS7361に、拡散光透過率およびヘーズはJIS K 7136
に、それぞれ従って測定した。
また、分光透過率は、積分球を備えた自記分光光度計〔日立製作所社製「UV−4000
」〕を用いて300nm〜800nmの分光透過率を測定し、黄色度YI、色度xおよび
色度yを求めた。
【0040】
(2)輝度
得られた光拡散板(1)をTD方向200mm、MD方向300mmに切り出し、冷陰極線管(7)を備えた20型直下型バックライト装置(6)に光拡散板(1)として装着し、冷陰極線管(7)を点灯した状態でマルチポイント輝度計により900点で輝度を測定し、その平均値を求めた。
【0041】
(3)加熱自重撓み試験
得られた光拡散板(11)または多層光拡散板(10)をTD方向25mm、MD方向150mm
に切り出し、長辺側の末端から20mmの地点までを、光拡散板面が地面と水平になるよ
うに固定した。この状態で、90℃または95℃での環境下に放置した。20時間経過した後取り出し、水平方向からの撓み量を測定した。
撓み量が小さいほど、光拡散板(1)を装着したバックライト装置(4)が高温環境下に置かれ、冷陰極線管(5)を点灯させた場合に、その内部に装着された光拡散板(1)が変形する恐れが少ないといえる。
【0042】
実施例1
〔紫外線吸収剤コンパウンドの製造〕
スチレンとメタクリル酸メチルとの共重合体〔新日鐵化学社製「エスチレンMS200NT」、スチレン単位80質量%、メタクリル酸メチル単位20質量%〕79.0質量部、架橋アクリル系樹脂粒子〔住友化学社製「スミペックスXC1A」〕20質量部、紫外線吸収剤〔住友化学社製「スミソーブ200」〕1.0質量部および加工安定剤〔丸菱油化工業社製「バルーHSP311」〕0.25重量部をドライブレンドした後、200℃〜230℃で40mm単軸押出機によりペレット化して、ペレット状の紫外線吸収剤コンパウンドを得た。
【0043】
〔多層光拡散板の製造〕
スチレン-無水マレイン酸共重合体樹脂〔ノバケミカル社製「ダイラーク232」(スチレン:92モル%、無水マレイン酸:8モル%)〕100質量部、架橋アクリル系樹脂粒子〔屈折率:1.495、重量平均粒子径:5μm〕0.50質量部、シリコーンゴム粒子〔東レ・ダウコーニング社製「DY33−719」〕0.12質量部、紫外線吸収剤〔住友化学社製「スミソーブ200」〕0.10重量部の混合物をドライブレンドした後、スクリュー径40mmの押出機に供給し、200〜240℃で溶融混練し、一方、上記で得た紫外線吸収剤コンパウンドを、スクリュー径20mmの補助押出機に供給し、押出機温度190〜250℃で溶融混練し、フィードブロックおよびTダイを経由してTダイ温度230〜250℃で共押出して、光拡散板〔厚み1.7mm〕(11)の両面に紫外線吸収層〔厚み0.05mm〕(12)が積層された3層構成で、幅約22mmの多層光拡散板(10)を得た。
【0044】
〔評価〕
得られた光拡散板(11)を65mm×65mmに切り出し、光学特性評価(全光線透過率、拡散光透過率、ヘーズおよび分光透過率)を求め、初期光学特性とした。
また、上記の方法で輝度測定および加熱自重撓み試験を行った。
結果を第1表に示す。
【0045】
実施例2
実施例1のスクリュー径40mmの押出機に供給する組成物を、スチレン-無水マレイン酸共重合体樹脂〔ノバケミカル社製「ダイラーク232」(スチレン:92モル%、無水マレイン酸:8モル%)〕100質量部、架橋アクリル系樹脂粒子〔屈折率:1.495、重量平均粒子径:5μm〕0.75質量部、シリコーンゴム粒子〔東レ・ダウコーニング社製「DY33−719」〕0.18質量部、紫外線吸収剤〔住友化学社製「スミソーブ200」〕0.10重量部の混合物とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、光拡散板〔厚み1.8mm〕(11)の両面に紫外線吸収層〔厚み0.05mm〕(12)が積層された3層構成で、幅約22mmの多層光拡散板(10)を得た。そして同様の評価を行った。結果を第1表に示す。
【0046】
実施例3
実施例1のスクリュー径40mmの押出機に供給する組成物を、スチレン-無水マレイン酸共重合体樹脂〔ノバケミカル社製「ダイラーク232」(スチレン:92モル%、無水マレイン酸:8モル%)〕100質量部、架橋アクリル系樹脂粒子〔屈折率:1.495、重量平均粒子径:5μm〕0.75質量部、シリコーンゴム粒子〔東レ・ダウコーニング社製「DY33−719」〕0.18質量部、紫外線吸収剤〔住友化学社製「スミソーブ200」〕0.10重量部、オキサゾール系蛍光漂白剤〔住化カラー社製「ホワイトフローPSN conc」〕0.0015重量部の混合物とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、光拡散板〔厚み1.7mm〕(11)の両面に紫外線吸収層〔厚み0.05mm〕(12)が積層された3層構成で、幅約22mmの多層光拡散板(10)を得た。そして同様の評価を行った。結果を第1表に示す。
【0047】
実施例4
実施例1のスクリュー径40mmの押出機に供給する組成物を、スチレン-無水マレイン酸共重合体樹脂〔ノバケミカル社製「ダイラーク232」(スチレン:92モル%、無水マレイン酸:8モル%)〕100質量部、架橋アクリル系樹脂粒子〔屈折率:1.495、重量平均粒子径:5μm〕1.33質量部、シリコーンゴム粒子〔東レ・ダウコーニング社製「DY33−719」〕0.32質量部、紫外線吸収剤〔住友化学社製「スミソーブ200」〕0.10重量部の混合物とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、光拡散板〔厚み1.8mm〕(11)の両面に紫外線吸収層〔厚み0.05mm〕(12)が積層された3層構成で、幅約22mmの多層光拡散板(10)を得た。そして同様の評価を行った。結果を第1表に示す。
【0048】
第 1 表
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
実施例
1 2 3 4
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
板厚(mm) 1.8 1.9 1.8 1.9
────────────────────────
全光線透過率(%) 69.7 62.4 63.8 55.2
拡散光線透過率(%)68.6 61.9 63.2 54.6
曇価(%) 98.4 99.2 99.1 98.9
────────────────────────
YI 5.04 4.74 4.94 1.34
x 0.3148 0.3147 0.3148 0.3114
y 0.3202 0.3197 0.3200 0.3165
────────────────────────
平均輝度(cd/m2) 5620 5472 5527 5214
色度 x 0.2921 0.2918 0.2910 0.2917
y 0.2787 0.2786 0.2773 0.2785
────────────────────────
自重加圧撓み試験
90℃ (mm)
95℃ (mm)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の光拡散板の層構成を模式的に示す断面図である。
【図2】直下型液晶ディスプレイ装置の構成を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0050】
10:多層光拡散板
11:耐熱性光拡散板 12:紫外線吸収層
2:直下型液晶ディスプレイ装置
1:光拡散板 3:液晶セル 4:バックライト装置 5:冷陰極線管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系単量体−無水マレイン酸共重合体に光拡散剤が分散されてなることを特徴とする耐熱性光拡散板。
【請求項2】
スチレン系単量体−無水マレイン酸共重合体のスチレン系単量体単位含有量が80モル%〜95モル%であり、無水マレイン酸単位含有量が20モル%〜5モル%である請求項1に記載の耐熱性光拡散板。
【請求項3】
厚みが1mm〜3mmである請求項1または請求項2に記載の耐熱性光拡散板。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の光拡散板に、紫外線吸収剤を含む透明樹脂からなる紫外線吸収層が積層されてなる多層光拡散板。
【請求項5】
紫外線吸収層の厚みが10μm〜100μmである請求項4に記載の多層光拡散板。
【請求項6】
光拡散板と冷陰極線管とを備え、前記光拡散板が請求項1〜請求項3のいずれかに記載の耐熱性光拡散板であることを特徴とするバックライト装置。
【請求項7】
光拡散板と冷陰極線管とを備え、前記光拡散板が請求項4または請求項5に記載の多層光拡散板であり、該多層光拡散板の紫外線吸収層が光拡散板と前記冷陰極線管との間に位置するように、前記多層光拡散板が配置されてなることを特徴とするバックライト装置。
【請求項8】
請求項6に記載のバックライト装置と液晶セルとを備え、該液晶セルと前記冷陰極線管との間に前記光拡散板が位置するように配置されてなることを特徴とする直下型液晶ディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−206663(P2007−206663A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−57627(P2006−57627)
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】