説明

耐熱断熱材の製造方法

【課題】
電気蓄熱暖房器用などの耐熱性断熱部材で、やや複雑な形状をし、製造コストが安価で、軽く、熱風にさらされたとき、焦げて不快な臭いを出さず、高温域(700℃から800℃付近)での断熱性に優れて、粉っぽくなく、外観が平滑である耐熱断熱材の開発

【解決手段】
非晶質含水シリカ50〜95重量部と、無機粉体5〜40重量部からなる無機微粉体組成物100重量部に対して無機繊維チョップ1〜10重量%と、無機結合剤2〜10重量%、及び水を系全体に対して10〜30重量%とを混合した硬化性含水組成物を形成する工程と、硬化性含水組成物と接する表面を陽極酸化した上に、フッ素系共重合体樹脂のコーテイング膜を形成した成形金型を用いて、含水組成物をプレス成形工程と、を含むことを特徴とする耐熱断熱部の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧成形された耐熱性断熱部材の製造方法、それによって製造された電機蓄熱暖房機用や調理用電熱器などの耐熱性断熱部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特に乾式法により製造される微粒子無水シリカを主体にうる断熱材は保形性に難があるため有機弾性体を配合したり、無機繊維を多く配合し高価な断熱材を提案している。(特開2003−202099、特開平7−23795、特開平6−219812、特開平6−279089、特開平5−9083)
一方超微粒子合成含水シリカに酸化チタン、セラミック繊維など混合して板状成形金型で乾式成形して断熱材を製造している。(特開平05−194008)が金型中の流動性が悪く金型枠からの離形成が難しく平滑性に劣り、複雑な形をした断熱材の製造には不向きで工業的な生産に劣る。
【0003】
本耐熱断熱材は蓄熱式暖房機などに利用され、深夜の余剰電力を利用して電気ヒーターにより熱を発生させ、この熱で蓄熱体(レンガ)を温めて、そこに熱を蓄えておき、昼間、その蓄熱体で室内から取り込んだ空気を温め、この温められた空気(熱風)を室内に放出することにより、室内を暖房しようとするものである。(例えば、特開平11−51488)蓄熱体の周囲には、空気の通路空間を開けて断熱部材が配置されており、蓄熱体に蓄えられた熱が逃げないように工夫されている。断熱部材はやや複雑な形状をしており、当然のことながら、耐熱性が要求され、800℃程度の熱を受けても優れた断熱性を有し、形が崩れないこと、高熱により有機物の燃焼によって室内に異臭が発生しない事が要求される。
【特許文献1】特開2003−202099
【特許文献2】特開平7−23795
【特許文献3】特開平6−219812
【特許文献4】特開平6−279089
【特許文献5】特開平5−9083
【特許文献6】特開平5−194008
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、電気蓄熱暖房器の開発者から要請を受け、電気蓄熱暖房器用の耐熱性断熱部材の研究開発に着手した。このとき、課題は、
(イ)断熱部材はやや複雑な形状をしているが、より多くの市場性を持つように、製造コスト(材料費、加工費)が安価であること。(ロ)軽いこと。(ハ)有機繊維や有機弾性体など有機物を含まないこと(有機繊維は800℃程度の熱風にさらされたとき、焦げて不快な臭いを出す)。(ニ)高温域(700℃から800℃付近)での断熱性に優れること。(ホ)表面性状が滑らかで、粉っぽくなく、外観が平滑で良いこと。
【課題を解決するための手段】
【0005】
鋭意研究の結果、本発明者らは、以下に説明する本発明に到達した。
(1)非晶質含水シリカ50〜95重量部と、無機粉体5〜40重量部からなる無機微粉体組成物100重量部に対して無機繊維チョップ1〜10重量%と、無機結合剤2〜10重量%、及び水を系全体に対して10〜30重量%とを混合した硬化性含水組成物を形成する工程と、(2)硬化性含水組成物と接する表面を陽極酸化した上に、フッ素系共重合体樹脂のコーテイング膜を形成した成形金型を用いて、含水組成物を成形圧20〜80kgf/平方センチメートル程度で成形する工程と、を含むことを特徴とする耐熱断熱部材からなることを特徴として、比重が0.3〜0.8で、かつ有機繊維や有機弾性体などの有機物を含まない成形された耐熱性断熱部材の製造方法。
【0006】
本発明は、原料と組成を工夫すること及び成形金型枠を使った成形(機械加工が不要)し断熱部材を製造することにより、課題(イ)製造コストと(ロ)表面性状を解決し、原料と組成を工夫することで、課題(ハ)軽さ=小さな比重と(ニ)加熱時に有機繊維や有機弾性体及び金型の塗布する離形剤などの燃焼した場合の臭いがしない(ホ)高温域での断熱性を解決し、有機繊維や有機弾性体を使用せずとも強度が得られるように原料と組成を工夫することで、課題(へ)臭いを解決したものである。
【発明の効果】
【0007】
以上、本発明によれば、比重が0.2〜0.85と軽く、それでいて有機繊維や有機弾性体を含まないでも曲げ強度があり、高温域(800℃付近)での断熱性が良好で、800℃の熱風に長時間さらされても変化がない優れた耐熱性を示し、表面性状も平滑で外観が美しく、しかも所定の形状をした耐熱断熱部材が安価に製造される。本発明の部材は、電気蓄熱暖房器用などの断熱部材として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明を構成要件ごとに更に詳しく説明する。
非晶質含水シリカ50〜95重量部と、無機微粉末5〜40重量部からなる無機軽量骨材組成物粉体に対して無機繊維チョップ1〜10重量%と、無機結合剤2〜10重量%、及び水を系全体に対して10〜30重量%とを混合した硬化性含水組成物における合成非晶質シリカは湿式法で製造される含水シリカで吸油性が200cm/100gr以上、 好ましくは250cm/100gr以上、更に平均粒径50μm以下である、非晶質含水シリカである。
非晶質含水シリカはシリカ分子表面にシラノール基が乾式法で製造する無水珪酸と(例えばアエロジル)とは異なり、より多く分布しているため水系との親和性が富み、加圧下の流動性が良く、更に無定形の構造性と微粒子であることによって、粒子中に大量の空気を包含するため、大変に嵩の高い粉体あり断熱性に優れる原料であった。
【0009】
無機微粉体としては、例えば、珪酸カルシウム、パーライト、バームキュライト、膨張頁岩、軽石、シラスバルーン、スラグの造粒発泡物、アルミナ中空骨材、けいそう土、酸化チタン、ムライトなどが挙げられる。何れも微粉末を原料として使用する。
【0010】
硬化性含水組成物における無機繊維チョップは特に耐熱性に優れる無機繊維チョップとして例えば、ガラス繊維、セラミック繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維等の添加が好ましい。
【0011】
硬化性含水組成物において、無機結合剤としてはコロイダルシリカ、合成マイカ、などコロイダル系無機バインダーが良く、無機微粉体組成物に対して2〜10重量%添加で成形物の曲げ強度や乾燥時の収縮を防ぎ、寸法精度の良好な耐熱断熱材を作る事ができる。
【0012】
硬化性含水組成物に於ける水の添加量は、無機微粉体組成物100重量部当たり、10〜30重量%を添加する。そして均一に混ぜれば、硬化性含水組成物が得られる。水が30重量%以上になると硬性生含水組成物はスラリー状になり金型枠外側面に開けた6から10mmの微細な穴(10個)から水や無機結合剤などが流れ出し均一な成形物がえられず、また成形圧力が充分かからず実用的な強度の製品が得られない。10重量%以下の場合は水硬性組成物、は粉状でパサパサであり金型枠中での加圧成形物の流動性が悪く、特に複雑な形状の断熱材の製造には不利であり、更に表面平滑にならないばかりか寸法精度がでない。
【0013】
硬化性含水組成物をプレス成形金型枠を使ってプレス成形することによって未乾燥成形物を製造する方法において、陽極酸化された金属に、フッ素樹脂系共重合体が陽極酸化皮膜中に形成された微小な孔に入り込むこと、金型表面にフッ素系共重合体樹脂が露出する(例えば旭テクノプロデュース(株)テクノマイト、アルバックテクノ(株)タフラム、三菱マテリアル(株)タフラム)。従って、フッ素系共重合体樹脂による耐久性に優れ、成形品の耐熱断熱材に付着して高温、時焼けて臭いの発生する低分子離型剤を塗布することなく、金型枠から製品の取り出しが容易で、表面平滑性が優れる、高い離型性の維持が可能となる。発明の目的の一つである耐熱断熱材が800℃になっても離型剤による異臭の発生も無く室内で使われる電気蓄熱暖房器には有効である。
【0014】
通常のプレス成形であり、その成形圧が20〜80kgf/平方センチメートルであることを特徴とし、得られた予備成形物は型から外したり、次の養生乾燥工程に運ぶと言った取扱いをしても、型が崩れることはない。金型枠を使う予備成形はできるだけ短い方が生産性が高い。
【0015】
そのためプレス成形のとき、硬化反応をある程度促進し、金型からの剥離し易さや形状保持するため、硬化性含水組成物を30〜120℃程度好ましくは30〜90℃に加熱してもよい。予備成形の時間は、一般に3〜60分である。プレス成形時のプレス圧力は、20〜80kgf/平方センチメートルが適当である。余り高くすると、目的とする軽い比重の部材が得られなくなる恐れがある。逆に余り低くすると、成形物の表面性状が粗くなり粉ぽくなるほか、曲げ強度が小くなる。
【0016】
予備成形物が金型を長く占拠することは生産性を悪くする。硬化性含水組成物の予備成形物が得られたなら、それを型から外して養生乾燥させる。これにより成形物は強度を増し、最終目的物として使用可能となる。養生乾燥工程は、予備成形物を50〜200℃で5〜30時間程度放置する。
【0017】
こうして、目的とする比重が0.2〜0.8で、かつ有機繊維や有機弾性体を含まないでも曲げ強度のある、成形された耐熱性断熱部材が得られる。この後、場合により多少の機械加工を施すことにより形状を修正しても良い。
【0018】
以下、実施例及び比較例により本発明をより具体的に説明する。但し、下記例における部及び%はそれぞれ重量部及び重量%を示し、また各種物性はそれぞれ次の様な方法で測定したものである。
(ア)外観:加圧プレスで成形した含水成形物を恒量になるまで乾燥した後の成形物表面の平滑性、割れ破損の発生などを観察して記録
(イ)断熱性:200mm×200mm×厚さ20mmの板状の耐熱断熱材試験版を接電気炉の口(縦150mm×横150mm)に当て耐熱断熱材の炉温度非接触側(外側)の中心に熱電対を銅版で押さえ固定し、外から蓋で固定した。750℃で60分放置後の温度を測定した。値が低いほど断熱性が良好と判断した。
(ウ)曲げ強度(曲げ歪量):試験片 縦30mm×横30mm×長さ358mm、中心から左右125mmの位置を支え、中心に10kgの荷重(分銅)を置き30分放置後の歪量(mm)を測定する。
【実施例1】
【0019】
合成非晶質シリカ(吸油量260cm/100g、平均粒径11μm)685gr(74.5%)珪酸カルシウム235gr(25.5%)、の無機微粉体920grに対して無機結合剤としてコロイダルシリカ(SiOが30〜31重量%、PH9〜9.5の液体)半透明200gr(2.2%)、ガラス繊維チョップ 80gr(8.7%)、に更にイオン交換水240gr(20.0%)を高速回転ミキサーで均一混合した硬化性水混合組成物を得た、しかる後側面に5個の微細な穴を開け陽極酸化フッ素樹脂共重合体をコートした(アルバックテクノ(株)タフラム)縦220mm×横358mm×深さ115mm試験用金型に硬化性水混合組成物投入し油圧式プレスで80℃、50kgf/平方センチメートルの圧力を7分間保ちながら成形した。しかる後開圧して常圧に戻し金型から含水した成形物を取り出し、更に120℃15時間熱風養生乾燥し耐熱断熱材成形物を得た。
耐熱断熱材の外観は平滑で、比重が0.55、曲げ歪量は破断することなく1.7mm、養生乾燥後の成形物各辺の寸法変化は認められず、断熱性は115℃であった。
【実施例2】
【0020】
実施例1において珪酸カルシウムをルチル型酸化チタンに置き換えた以外は全く同様に実験を行った。得た耐熱断熱材の曲げ強度(曲げ歪量)1.3mm、養生乾燥後の成形物各辺の寸法変化は認められず、断熱性は110℃であった。
【実施例3】
【0021】
実施例2の配合でガラス繊維チョップをアルミナシリカ繊維(イソライト工業)に置き換えた以外は同様に陽極酸化フッ素樹脂コートした金型で加圧成形した
耐熱断熱材の外観は平滑で曲げの歪量は1.3mm、成形物各辺の寸法変化は認められず、断熱性は105℃であった。
【0022】
〔比較例〕
比較例1)実施例1において陽極酸化フッ素樹脂コートしてない金型を用いた以外、他はすべて同じ条件下での製造では耐熱断熱材は金型に付着して離形ができなかった。
比較例2)実施例1の配合で合成非晶質シリカの平均粒径を130μmに変えた以外は全て同一条件で成形した耐熱断熱材は断熱性は140℃と悪化し品質的に不利である。
比較例3)実施例1の配合で水量を750gr(62.0%)配合した以外は全て同一条件で成形した硬化性水系組成物が金型に付けた孔からスラリーが流れ出て、成形に必要な加圧が出来ず目的の断熱材が得られない。
比較例4)実施例2)の配合で非晶質含水シリカの吸油量180cm/100g、平均粒径14μm以外は全く同一条件で配合、成形、乾燥した、耐熱断熱材の断熱性は150℃であり実用性に乏しい。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶質含水シリカ50〜95重量部と、無機粉体5〜40重量部からなる無機微粉体組成物100重量部に対して無機繊維チョップ1〜10重量%と、無機結合剤2〜10重量%、及び水を系全体に対して10〜30重量%とを混合した硬化性含水組成物を形成する工程と、かつその少なくとも硬化性含水組成物と接する表面を陽極酸化した上に、フッ素系共重合体樹脂を硬化させてコーテイング膜を形成した成形金型枠を用いて、上記硬化性含水組成物を成形する工程と、を含むことを特徴とする耐熱断熱部材の製造方法。
【請求項2】
非晶質含水シリカは吸油性が200cm/100gr以上、好ましくは250cm/100gr以上、更に平均粒径50μm以下である、非晶質含水シリカ50〜95重量部と、無機微粉体5〜40重量部、無機繊維チョップ1〜10重量部と、無機結合剤2〜10重量部と、水を系に対して10〜30重量%とを混合した硬化性含水組成物
【請求項3】
請求項1記載の硬化性含水組成物を成形する工程における成形金型枠は、金型枠の、少なくとも硬化性含水組成物と接する表面を陽極酸化した上に、フッ素系共重合体樹脂を塗布して、当該樹脂組成物の一部を陽極酸化膜の微細な孔に入り込ませた状態で硬化させてコーティング膜を形成した成形金型枠。






【公開番号】特開2007−15111(P2007−15111A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−195663(P2005−195663)
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(500458011)
【出願人】(391015889)大阪電研工業株式会社 (2)
【出願人】(392036267)
【Fターム(参考)】