説明

耐硫黄排出物質触媒

式(1):Ax1-y-zyzn (1)に示す組成式を有する1種または複数の複合酸化物を含む触媒であり、式中、Aは、ランタニド元素を含む1種または複数のIII族元素、あるいは1種または複数の二価または一価陽イオンから選択され、Bは、原子番号22から24、40から42、および72から75を有する1種または複数の元素から選択され、Mは、原子番号25から30を有する1種または複数の元素から選択され、Pは、原子番号44から50、および76から83を有する1種または複数の元素から選択され、xは、0<x≦1の数と定義され、yは、0≦y<0.5の数と定義され、zは、0<z<0.2の数と定義される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に排出物質制御触媒に関し、特に車両排気ガス触媒に関する。もっとも一般的に用いられる排出物質触媒は「三元触媒」(TWC)であり、そう呼ばれるのは3種の有害な排出物質を同時に処理する、すなわちCOを酸化、NOxをN2に還元、および未燃炭化水素を酸化するためである。好ましい実施形態において、本発明は、硫黄被毒に対して改善された耐性を有する、ディーゼルエンジンおよびガソリンエンジン両方のTWCに関する。
【背景技術】
【0002】
次第に厳しくなる排出物質基準のため、改善された触媒処方および層状構造を用いることによって、改良された三元触媒が開発されている。熱安定性および耐久性の改善も、1100℃までの温度で加速エージング試験を耐えることのできる触媒をもたらしている。
【0003】
触媒性能を改善する1つのアプローチは、触媒処方において白金族金属(PGM)の量を増大することであった。しかしながら、これは許容できないコストの増大も意味する。この問題を克服するために、いくつかの方法が用いられてきた。コストを低減するために、白金ではなくパラジウムを用いるPd単独TWC触媒が開発されている(Reference1)。この考えをさらに改善し、ペロブスカイト型酸化物にPdを取り込むことによって、Pdの量が低減される(Reference2)。パラジウムはPtに比べて粒成長を起こす傾向が強く、したがって高温作動中に活性が低くなる。エンジン作動の酸化サイクル時にPdをペロブスカイト型構造に取り込み、次いで還元サイクル時に触媒の表面でPdを金属に還元することにより、Pdの過度な粒成長が回避される。ペロブスカイト型酸化物を用いるさらなる利点は、良好なTWC性能に不可欠な特性である、それらの高い酸素貯蔵能(OSC)である。ある種のペロブスカイトのOSCは、OSC成分としてTWCにもっとも一般的に用いられている材料であるCeO2よりさらに高いことが示されている。
【0004】
ペロブスカイト型酸化物は、1970年代初めから、自動車の排出ガスの制御に関連した触媒酸化および還元反応に関して研究されてきた[References6〜15]。様々な量のPGMを組み込んだペロブスカイト型触媒が、Stephensの米国特許第3865923号、Remeika等の米国特許第3884837号および第4001371号、Lauderの米国特許第3897367号、第4049583号、および第4126580号、Donohueの米国特許第4107163号、Harrisonの米国特許第4127510号、McCann,IIIの米国特許第4151123号、Ozawa等の米国特許第4921829号、Jovanovic等の米国特許第5318937号、Nakatsuji等の米国特許第5380692号、ならびにGoldenの米国特許第5939354号、第5977017号、第6352955号、第6372686号、および第6351425号に開示されている。
【0005】
最近の研究は、低排出車(LEV)および超低排出車(ULEV)型基準に合い、低減された濃度のPGMを含有するように設計された触媒が、燃料の硫黄によって著しく阻害されることを示している(Reference3)。様々な要因が硫黄による触媒性能の損失に影響を与える。これらの要因には、燃料の硫黄濃度、触媒設計、触媒位置、および触媒組成が含まれる。TWC触媒の個々の成分は、触媒PGM、OSC成分、および担体である。これらの3種の成分はすべて硫黄に影響を受け得る。
【0006】
特に、TWC材料のPGMおよびOSC成分に対する硫黄の影響を最小限に抑えるための努力がなされている。パラジウムはコストを下げるが、PtおよびRhより硫黄被毒の影響を受けやすい。研究は、金属−金属結合がこれらの金属のSO2への親和性を著しく低減できることを示している(Reference4)。たとえば、Pd/Rhは、純Pd触媒と比べて、燃料中の硫黄含有分子の存在により耐性である。
【0007】
SO2は、セリア含有成分を有するTWCと相互作用し、これらの触媒の硫黄阻害に関連した主たる問題と思われるのはこのセリアの被毒である(Reference5)。耐硫黄性を改善し、熱安定性を向上させるために、セリアは一般にジルコニアの固溶体に混合される。セリア−ジルコニアの組み合わせは、高い作動温度でOSCを増大することもできる。
【0008】
ペロブスカイト型酸化物は、それらの構造に有益にPGMを組み込むことができるが、多くのペロブスカイト型組成は硫黄被毒の影響を受けやすい。ペロブスカイト型組成は典型的に、銅、コバルト、およびマンガンなどの遷移金属を、ABO3ペロブスカイト式のBサイトに組み込む。これらの遷移金属の多くは、SO2と安定な硫酸塩を形成する。
【0009】
Takeuchiの米国特許第6569803号は、Bサイトイオンの相当の部分がMn、CoおよびFeからなる群の元素を常に含む、一般式ABO3のペロブスカイトを含む排出ガスを浄化する触媒を特許請求している。しかしながら、これらの触媒のSO2に対する耐性は評価されていない。
【0010】
触媒作用のペロブスカイトに関する総説において、L.G.Tejuca、J.L.J.Fierro、およびJ.M.D.Tasconは(Reference16)、ペロブスカイトのBサイトにMn、Co、およびFeを用いるペロブスカイトの広範な触媒作用試験を報告しており、「これらの結果は、これらのペロブスカイトのSO2による被毒作用がBサイトでのこの分子の吸着を介して起こることを示している・・・・・・。SO2はまた、位置Aの陽イオンと相互作用をする可能性があるが、このプロセスは触媒の失活をもたらさない」と結論づけた。Tejuca等は次に以下のように結論づけている。「その構造に貴金属(PtおよびRu)を組み込むことによって、COおよび炭化水素の酸化、ならびにNOの還元に極めて活性なペロブスカイトの調製において、いくらかの進歩が達成されているが、SO2被毒の問題は基本的に未解決のままである。
【0011】
ペロブスカイト型酸化物をTWC処方に組み込むときのさらなる問題には、複合ペロブスカイトの相純度を維持すること、熱安定性を得ること、および高い作動温度での良好なTWC性能に必要とされる高表面積を有する材料を生成することが含まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、ペロブスカイト成分を含有する触媒を提供することである。この触媒は、高表面積、熱安定性で、低減されたPGM成分を有し、硫黄阻害に対して改善された耐性を示す可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の態様において、本発明は、式(1)に示す組成式を有する1種または複数の複合酸化物を含む触媒を提供し、
x1-y-zyzn (1)
式中、
Aは、ランタニド元素を含む1種または複数のIII族元素、あるいは1種または複数の二価または一価陽イオンから選択され、
Bは、原子番号22から24、40から42、および72から75を有する1種または複数の元素から選択され、
Mは、原子番号25から30を有する1種または複数の元素から選択され、
Pは、原子番号44から50、および76から83を有する1種または複数の元素から選択され、
xは、0<x≦1の数と定義され、
yは、0≦y<0.5の数と定義され、
zは、0<z<0.2の数と定義される。
【0014】
一実施形態において、1種または複数の複合酸化物は、式(2)に示す一般組成を有し、
xA'w1-y-zyzn (2)
式中、
Aは、ランタニド元素を含む1種または複数のIII族元素であり、
A’は、1種または複数の二価または一価陽イオンであり、
wは、0≦w≦1の数と定義され、
0.5<x+w≦1であり、
B、M、P、x、y、およびzは、式(1)に示したとおりである。
【0015】
好ましい実施形態において、Aは、La、Ce、Sm、およびNdから選択され、A’は、Sr、Ba、およびCaから選択され、Bは、Ti、V、W、およびMoから選択され、Mは、CuおよびNiから選択され、Pは、Pt、Pd、Rh、およびRuから選択される。
【0016】
より好ましい実施形態において、Aは、Laおよび/またはCeであり、A’は、Srであり、Bは、Tiであり、Mは、Cuおよび/またはNiであり、Pは、PtおよびRh、またはPt、Pd、Rh、およびRuの少なくとも2種から選択される。この実施形態において、複合酸化物は、式(3)に示す一般式を有し、
(La,Ce)xSrwTi1-y-zyzn (3)
式中、Pは、Pt、Rh、またはPt、Pd、Rh、およびRuの少なくとも2種から選択される。
【0017】
さらなる好ましい実施形態において、複合酸化物相の少なくとも1つは、一般式(4)、
xA'w1-y-zyz3 (4)
より好ましくは式(5)を有するペロブスカイトであり、
(La,Ce)xSrwTi1-y-zy(Pt,Rh,Pd/Rh)z3 (5)
式中、(4)および(5)の項は上記の(1)および(2)に定義したとおりである。
この式のペロブスカイト成分は実質的に均質かつ相純組成を適切に示すことができる。
【0018】
複合酸化物材料は、初期表面積約15m2/g超、好ましくは約20m2/g超、より好ましくは約30m2/g超、空気中において1000℃で2時間エージングした後の表面積約5m2/g超、好ましくは約10m2/g超、より好ましくは約15m2/g超を有することができる。
【0019】
複合酸化物材料は一般に、平均粒径約2nmから約150nm、好ましくは約2から100nmを示すことができ、径範囲約7nmから約250nm、より好ましくは約10nmから約150nmの細孔を有することができる。しかしながら、複合酸化物材料の平均粒径および細孔径は、選択された特定の複合酸化物に応じて多様であってよい。
【0020】
より好ましくは、複合酸化物材料は、実質的に分散した細孔径範囲を示すことができる。
本発明の複合酸化物材料は、一般式(1)に上記した元素の前駆体を混合し、その後、適切に熱処理して標的相を形成することによって形成することができる。前駆体は、用いられる元素の塩、酸化物、または金属などの、任意の適切な形態であることができる。前駆体混合物は、固体、溶液、または固体と溶液の組み合わせの混合物の形態であることができる。この溶液は、塩を水、酸、アルカリ、またはアルコールなどの溶媒に溶解することによって形成することができる。塩は、これに限定されるものではないが、硝酸塩、炭酸塩、酸化物、酢酸塩、シュウ酸塩、および塩化物であることができる。アルコキシドなど、元素の有機金属形態も用いることができる。
【0021】
適切な前駆体材料として、固体分散体も用いることができる。
複合酸化物を生成するために前駆体を混合する種々の方法は、これに限定されるものではないが、混合および粉砕、共沈、熱蒸発および噴霧熱分解、ポリマーと界面活性剤の複合混合およびゾル−ゲル法などの技術を含むことができる。必要であれば、最終相組成は、混合後の熱処理によって得ることができる。この加熱段階は、任意の適切な加熱装置を用いて行うことができ、これに限定されるものではないが、ホットプレートまたは噴霧熱分解に用いられるような他の加熱基板、オーブン、固定台炉、回転炉、誘導炉、流動床炉、浴炉、自溶炉、真空炉、回転ドライヤー、噴霧ドライヤー、スピンフラッシュドライヤーを含むことができる。
【0022】
好ましい実施形態において、その内容全体を相互参照により本明細書の一部とする米国特許第6752679号「Production of Fine−Grained Particles」に概説された方法によって、均質複合酸化物が形成される。
さらなる好ましい実施形態において、それらの内容全体を相互参照により本明細書の一部とする米国特許第6752679号および米国特許出願第60/538867号に概説された方法を用いることによって、均質複合酸化物が形成され、指示された粒径範囲のナノサイズ粒子および指示された孔径範囲のナノスケール細孔を有する。
【0023】
より好ましい実施形態において、それらの内容全体を相互参照により本明細書の一部とする米国特許第6752679号、および米国特許出願第60/538867号、および米国特許出願第60/582905号に概説された方法を用いることによって、均質複合酸化物が形成され、指示された粒径範囲のナノサイズ粒子および指示された孔径範囲のナノスケール細孔を有し、前駆体元素の1つとしてナノスケール粒子の水性コロイド分散体を用いる。
【0024】
第2の態様において、本発明は、本発明の第1の態様に関して記載した触媒を組み込む三元触媒を提供する。
【0025】
第3の態様において、本発明は、排出ガスを本発明の第1の態様による触媒と接触させることによって、排出ガスを処理する方法を提供する。適切には、触媒は、排出ガスのCOおよび炭化水素の酸化、ならびに排出ガスの窒素酸化物のN2への還元をもたらした。
【0026】
本発明はまた、本発明の第1の態様による触媒を含む、自動車触媒コンバータを提供する。
【実施例】
【0027】
触媒調製
実施例1
組成式La0.8Sr0.2Ti0.9762Pd0.0117Rh0.0121Onおよび10%CeO2の複合金属酸化物を以下のとおり生成した。
水45ml、硝酸10g、硝酸ランタン六水和物46g、硝酸ストロンチウム5.62g、硝酸pd10%溶液1.65g、および硝酸ロジウム0.53gを混合することによって、Tiを除くすべての必要な元素を含有する溶液を製造した。
チタンをベースとするナノ粒子をその溶液に添加し、粒子が分散して、透明な溶液が形成されるまで、50℃の温度で攪拌した。
次いで、溶液をカーボンブラック16gに添加し、高速スターラーで混合した。得られた混合物を陰イオン界面活性剤70gに添加し、再び高速スターラーで混合した。
最終混合物をゆっくりと650℃に熱処理し、次いで800℃で2時間、さらに1000℃で2時間処理した。XRD分析は、ペロブスカイト相LaSr0.5Ti26および(Ce,La)2Ti27が実施例1に存在する主な種類の相であることを示した。
【0028】
実施例2
組成式La0.5Sr0.25Ti0.942Pd0.018Ni0.04Onの複合金属酸化物を、実施例1に類似の方法を用いて生成した。XRD分析は、ペロブスカイト相LaSr0.5Ti26および(Ce,La)2Ti27が存在する主な種類の相であることを示した。
【0029】
実施例3
組成式La0.8Sr0.2Ti0.936Pd0.024Ni0.04Onおよび10%CeO2の複合金属酸化物を、実施例1に類似の方法を用いて生成した。XRD分析は、ペロブスカイト相LaSr0.5Ti26および(Ce,La)2Ti27が存在する主な種類の相であることを示した。
【0030】
実施例4
組成式La0.8Sr0.2Ti0.9Pd0.03Ni0.04Cu0.03Onおよび10%CeO2の複合金属酸化物を、実施例1に類似の方法を用いて生成した。XRD分析は、ペロブスカイト相LaSr0.5Ti26および(Ce,La)2Ti27が存在する主な種類の相であることを示した。
【0031】
触媒特性および試験
X線回折(XRD)、透過電子顕微鏡法(TEM)、および走査電子顕微鏡法を用いて、サンプル相の同一性および形態を特性化した。Micromeritics Tristar表面積分析装置を用いて、表面積および細孔径分布データを得た。
実施例1に示したサンプル組成に関して、以下のデータを集めた。様々な温度で測定した表面積は以下のとおりである。
【0032】
【表1】

【0033】
三元触媒活性の試験
サンプル調製
原料触媒粉末を2000psiで液圧プレスを用いてペレット化する。ペレットを粉砕し、ふるいにかける。0.5〜1mm(名目)の範囲の粒径画分をサンプルとして取っておく。重量0.25g±0.02gの触媒サンプルを1/4インチステンレス鋼反応管に挿入して、床高20mmを得て、石英ウールで適所に保持する。熱電対先端を床に貫通させ、温度をモニターする。
【0034】
サンプルのエージング
サンプルの試験に先立って、周波数0.33Hzで還元から酸化組成に振動する下記の供給ガス混合物において1000℃で6時間エージングする。
【0035】
供給ガス組成および分布
指示されたベッド体積に基づいて、ガス空間速度(GHSV)63000h-1でガスを供給する。2ppmのSO2を含有するガス組成を用いて、ガソリン中約30ppmの硫黄濃度をシミュレートした。これらの硫黄濃度はまた、2007低硫黄規制案(reference 17) によるディーゼル燃料中の濃度でもある。
これらの試験では2つの特定のR+値が得られるように、ガス比を調節した。
R=0.86、酸化条件
R=1.17、還元条件
ガスの組成は以下のとおりである。
【0036】
【表2】

【0037】
供給ガスの所望の組成、ガス空間速度(GHSV)、およびシリンダガス組成を考慮して、各化学種の必要とされる流量を算出する。水蒸気を除いて、マスフローコントローラ(MFCs)(MKS Instruments,Inc)を用いて、各化学種の所望の流量を得る。
【0038】
液体水を正確にポンプ(Gilson Model 307)で加熱領域に送り、そこで液体水は気化され、MFC制御窒素気流に同伴される。それぞれのMFCを出た後、ガスはマニホールドで混合され、3つのリアクタに分配される。各リアクタを通る流量は、確実にすべてのリアクタを通る流量が等しくなるように、各リアクタの排気口でニードルバルブを用いて調節される。
【0039】
排出ガス分析
所望のリアクタ条件を安定させた後、リアクタからの排出ガスを分析する。Perma Pureドライヤーを用いて、ガス流を調節する。マルチポートバルブで排出ガスを各リアクタから計器に向け、Shimadzu 17Aガスクロマトグラフを用いて、NO、N2O、CO、CO2、O2、およびHCを測定する。NOおよびCOの濃度は、化学発光NO検出器および赤外線CO検出器を用いて同時にモニターした。対照として、ブランクのリアクタも並行して作動させる。サンプルは実験を開始する前にR=1.17、650℃で1時間、前処理する。
【0040】
触媒性能
NOx転換
実施例5
実施例1の組成を有するサンプルを、エンジン活動の還元サイクル時の排出ガス組成を近似してシミュレートする条件下で、三元触媒活性に関して試験した。図1は、ガス空間速度(GHSV)流量300000h-1で試験を行った上記組成の触媒0.25gのNOx転換率を示す。ガス組成は、NO 1500ppm、CO 13500ppm、CO2 210000ppm、HC 750ppm、H2O 125000ppm、O2 5981ppm、N2ガスの残量であった。この試験では、SO2は用いなかった。このデータは、この触媒が200℃の低温で活性となることを示している。250℃までに、触媒は実質的に完全な転換98〜100%を達成する。完全転換は最高試験温度650℃まで維持された。
【0041】
実施例6
酸化排出条件をシミュレートして、実施例5のサンプルをNOx転換に関して再び試験した。図2は、ガス空間速度(GHSV)流量300000h-1で試験を行った上記組成の触媒0.25gのNOx転換率を示す。ガス組成は、NO 1500ppm、CO 13500ppm、CO2 210000ppm、HC 750ppm、H2O 125000ppm、O2 8407ppm、N2ガスの残量であった。この試験では、SO2は用いなかった。このデータは、この触媒が250℃〜300℃の温度で活性となることを示している。300℃までに、触媒はNOx完全転換を達成し、それは最高試験温度650℃まで維持される。
【0042】
実施例7
SO2を含有する還元排出条件をシミュレートして、実施例5のサンプルをNOx転換に関して再び試験した。図3は、ガス空間速度(GHSV)流量300000h-1で試験を行った上記組成の触媒0.25gのNOx転換率を示す。ガス組成は、NO 1500ppm、CO 13500ppm、CO2 210000ppm、HC 750ppm、H2O 125000ppm、O2 5981ppm、SO2 2ppm、N2ガスの残量であった。このデータは、この触媒が200℃〜250℃の温度で活性となることを示している。250℃までに、触媒は86%のNOx転換率を達成した。完全転換(98%〜100%)は300℃までに達成され、最高試験温度650℃まで維持される。
【0043】
実施例8
SO2を含有する酸化排出条件をシミュレートして、実施例5のサンプルをNOx転換に関して再び試験した。図4は、ガス空間速度(GHSV)流量300000h-1で試験を行った上記組成の触媒0.25gのNOx転換率を示す。ガス組成は、NO 1500ppm、CO 13500ppm、CO2 210000ppm、HC 750ppm、H2O 125000ppm、O2 8407ppm、SO2 2ppm、N2ガスの残量であった。このデータは、この触媒が150℃〜200℃の非常に低い温度で活性となることを示している。250℃までに、触媒は完全なNOx転換を達成した。完全転換(98%〜100%)は550℃まで維持される。550℃から650℃の温度で、転換率95%へのわずかな低下が認められた。
これらの4つの結果は、ガス流のSO2によって性能がほとんど阻害されない、この触媒の優れた性能を示している。
【0044】
CO酸化
実施例9
実施例1の組成を、エンジン活動の還元サイクル時の排出ガス組成を近似してシミュレートする条件下で、三元触媒活性に関して試験した。図5は、ガス空間速度(GHSV)流量300000h-1で試験を行った上記組成の触媒0.25gのCO転換率を示す。ガス組成は、NO 1500ppm、CO 13500ppm、CO2 210000ppm、HC 750ppm、H2O 125000ppm、O2 5981ppm、N2ガスの残量であった。この試験では、SO2は用いなかった。このデータは、この触媒が150℃から200℃で活性となることを示している。250℃までに、最大転換率85%が得られる。温度が450℃に上昇すると、CO酸化は66%に低下する。転換率は550℃で再び74%に上昇するが、650℃で62%に低下する。
【0045】
実施例10
酸化排出条件をシミュレートして、実施例9のサンプルをCO転換に関して再び試験した。図6は、ガス空間速度(GHSV)流量300000h-1で試験を行った上記組成の触媒0.25gのCO転換率を示す。ガス組成は、NO 1500ppm、CO 13500ppm、CO2 210000ppm、HC 750ppm、H2O 125000ppm、O2 8407ppm、N2ガスの残量であった。この試験では、SO2は用いなかった。このデータは、この触媒が250℃〜300℃の温度で活性となることを示している。300℃までに、触媒は100%のCO酸化率を有し、それは最高試験温度650℃まで維持される。
【0046】
実施例11
SO2を含有する還元排出条件をシミュレートして、実施例9のサンプルをCO酸化に関して再び試験した。図7は、ガス空間速度(GHSV)流量300000h-1で試験を行った上記組成の触媒0.25gのCO酸化率を示す。ガス組成は、NO 1500ppm、CO 13500ppm、CO2 210000ppm、HC 750ppm、H2O 125000ppm、O2 5981ppm、SO2 2ppm、N2ガスの残量であった。このデータは、この触媒が150℃〜200℃の温度で34%までの転換率を有し、極めて低い温度で活性となることを示している。250℃までに、触媒は82%のCO酸化率を達成した。温度が350℃に上昇すると、CO酸化率は62%に低下する。転換率は350℃から650℃の71%の値まで徐々に上昇する。
【0047】
実施例12
SO2を含有する酸化排出条件をシミュレートして、実施例9のサンプルをCO酸化に関して再び試験した。図8は、ガス空間速度(GHSV)流量300000h-1で試験を行った上記組成の触媒0.25gのCO酸化率を示す。ガス組成は、NO 1500ppm、CO 13500ppm、CO2 210000ppm、HC 750ppm、H2O 125000ppm、O2 8407ppm、SO2 2ppm、N2ガスの残量であった。このデータは、この触媒が150℃から200℃の非常に低い温度で活性となることを示している。200℃までに、触媒は47%のCO酸化率を達成した。300℃までに、最大97%のCO酸化率が達成される。300℃から650℃で、転換率86%への段階的低下が認められた。
【0048】
これらのデータによって、この触媒がSO2を含有する排出ガス流においてCO酸化に関して良好な性能を示すことが確認される。
【0049】
HC酸化
実施例13
実施例1の組成を、エンジン活動の還元サイクル時の排出ガス組成を近似してシミュレートする条件下で、三元触媒活性に関して試験した。図9は、ガス空間速度(GHSV)流量300000h-1で試験を行った上記組成の触媒0.25gのHC酸化率を示す。ガス組成は、NO 1500ppm、CO 13500ppm、CO2 210000ppm、HC 750ppm、H2O 125000ppm、O2 5981ppm、N2ガスの残量であった。この試験では、SO2は用いなかった。このデータは、この触媒が200℃から250℃で活性となることを示している。250℃までに、45%のHC酸化率が得られる。300℃までに100%の酸化が達成され、最高試験温度650℃まで維持される。
【0050】
実施例14
酸化排出条件をシミュレートして、実施例13のサンプルをHC酸化に関して再び試験した。図10は、ガス空間速度(GHSV)流量300000h-1で試験を行った上記組成の触媒0.25gのHC酸化率を示す。ガス組成は、NO 1500ppm、CO 13500ppm、CO2 210000ppm、HC 750ppm、H2O 125000ppm、O2 8407ppm、N2ガスの残量であった。この試験では、SO2は用いなかった。このデータは、この触媒が250℃〜300℃の温度で活性となることを示している。300℃までに、触媒は100%CO酸化率を有し、それは最高試験温度650℃まで維持される。
【0051】
実施例15
SO2を含有する還元排出条件をシミュレートして、実施例13のサンプルをHC酸化に関して再び試験した。図11は、ガス空間速度(GHSV)流量300000h-1で試験を行った上記組成の触媒0.25gのHC酸化率を示す。ガス組成は、NO 1500ppm、CO 13500ppm、CO2 210000ppm、HC 750ppm、H2O 125000ppm、O2 5981ppm、SO2 2ppm、N2ガスの残量であった。このデータは、この触媒が200℃〜250℃で活性となることを示している。250℃までに、触媒は95%のHC酸化を達成した。この値は98%〜100%に上昇し、試験を行った温度範囲にわたって維持される。
【0052】
実施例16
SO2を含有する酸化排出条件をシミュレートして、実施例13のサンプルをHC酸化に関して再び試験した。図12は、ガス空間速度(GHSV)流量300000h-1で試験を行った上記組成の触媒0.25gのCO酸化率を示す。ガス組成は、NO 1500ppm、CO 13500ppm、CO2 210000ppm、HC 750ppm、H2O 125000ppm、O2 8407ppm、SO2 2ppm、N2ガスの残量であった。このデータは、この触媒が250℃までに100%のHC酸化率を示しており、この値は試験温度範囲にわたって維持される。
【0053】
これらのデータは、この触媒がガス流においてSO2に優れた性能を示すだけでなく、開始(light−off)温度が50℃まで低下することを示唆している。
【0054】
本発明は、窒素酸化物、一酸化炭素、および未燃炭化水素を含有する排出ガスの酸化還元反応を促進する触媒を提供する。この触媒は、硫黄被毒に対して増大した耐性を示すことができる。いくつかの実施形態において、本発明の触媒は、自動車用途に用いる三元触媒としての使用に特に適している。この触媒は、適切には高い作動温度で比表面積の低下に耐性である、複合酸化物およびPGMを含有する高耐熱触媒を提供する。もっとも適切には、本発明の実施形態は、排出ガス流のSO2による阻害に耐性である、複合酸化物およびPGMを含有する高耐熱触媒を提供する。
【0055】
参照文献
【表3】

【表4】

【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】実施例5で得られた、温度に対するNOx転換率を示すグラフである。
【図2】実施例6で得られた、温度に対するNOx転換率を示すグラフである。
【図3】実施例7で得られた、温度に対するNOx転換率を示すグラフである。
【図4】実施例8で得られた、温度に対するNOx転換率を示すグラフである。
【図5】実施例9で得られた、温度に対するCO転換率を示すグラフである。
【図6】実施例10で得られた、温度に対するCO転換率を示すグラフである。
【図7】実施例11で得られた、温度に対するCO転換率を示すグラフである。
【図8】実施例12で得られた、温度に対するCO転換率を示すグラフである。
【図9】実施例13で得られた、温度に対する炭化水素(HC)転換率を示すグラフである。
【図10】実施例14で得られた、温度に対する炭化水素(HC)転換率を示すグラフである。
【図11】実施例15で得られた、温度に対する炭化水素(HC)転換率を示すグラフである。
【図12】実施例16で得られた、温度に対する炭化水素(HC)転換率を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)に示す組成式を有する1種または複数の複合酸化物を含む触媒であって、
x1-y-zyzn (1)
式中、
Aは、ランタニド元素を含む1種または複数のIII族元素、あるいは1種または複数の二価または一価陽イオンから選択され、
Bは、原子番号22から24、40から42、および72から75を有する1種または複数の元素から選択され、
Mは、原子番号25から30を有する1種または複数の元素から選択され、
Pは、原子番号44から50、および76から83を有する1種または複数の元素から選択され、
xは、0<x≦1の数と定義され、
yは、0≦y<0.5の数と定義され、
zは、0<z<0.2の数と定義される触媒。
【請求項2】
1種または複数の複合酸化物が、式(2)に示す一般組成を有し、
xA'w1-y-zyzn (2)
式中、
Aは、ランタニド元素を含む1種または複数のIII族元素であり、
A' は、1種または複数の二価または一価陽イオンであり、
wは、0≦w≦1の数と定義され、
0.5<x+w≦1であり、
B、M、P、x、y、およびzは、式(1)に示したとおりである、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
Aが、La、Ce、Sm、およびNdから選択され、A' は、Sr、Ba、およびCaから選択され、Bは、Ti、V、W、およびMoから選択され、Mは、CuおよびNiから選択され、Pは、Pt、Pd、Rh、およびRuから選択される、請求項2に記載の触媒。
【請求項4】
Aが、Laおよび/またはCeであり、A' は、Srであり、Bは、Tiであり、Mは、Cuおよび/またはNiであり、Pは、PtおよびRh、またはPt、Pd、Rh、およびRuの少なくとも2種から選択され、複合酸化物は、式(3)に示す一般式を有し、
(La,Ce)xSrwTi1-y-zyzn (3)
式中、Pは、Pt、Rh、またはPt、Pd、Rh、およびRuの少なくとも2種から選択される、請求項3に記載の触媒。
【請求項5】
複合酸化物相の少なくとも1つが、一般式(4)を有するペロブスカイトである、
xA'w1-y-zyz3 (4)
請求項1に記載の触媒。
【請求項6】
複合酸化物相の少なくとも1つが、一般式(5)を有するペロブスカイトである、
(La,Ce)xSrwTi1-y-zy(Pt,Rh,Pd/Rh)z3 (5)
請求項5に記載の触媒。
【請求項7】
前記式のペロブスカイト成分が、実質的に均質かつ相純組成を示す、請求項5に記載の触媒。
【請求項8】
複合酸化物材料が、初期表面積約15m2/g超を有する、請求項1に記載の触媒。
【請求項9】
複合酸化物材料が、空気中において1000℃で2時間エージングした後の表面積約5m2/g超を有する、請求項8に記載の触媒。
【請求項10】
複合酸化物材料が、平均粒径約2nmから約150nmを示す、請求項1に記載の触媒。
【請求項11】
複合酸化物材料が、径範囲約7nmから約250nmの細孔を有する、請求項1に記載の触媒。
【請求項12】
複合酸化物材料が、実質的に分散した細孔径範囲を示す、請求項1に記載の触媒。
【請求項13】
請求項1に記載の触媒を組み込む三元触媒。
【請求項14】
排出ガスを請求項1に記載の触媒と接触させることによって、排出ガスを処理する方法。
【請求項15】
請求項1に記載の触媒を含む、自動車触媒コンバータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2009−533206(P2009−533206A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504529(P2009−504529)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際出願番号】PCT/AU2007/000488
【国際公開番号】WO2007/115380
【国際公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(506250033)ベリー スモール パーティクル コンパニー リミテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】VERY SMALL PARTICLE COMPANY LTD
【住所又は居所原語表記】31 Westgate Street, Wacol, QLD 4076 (AU)
【Fターム(参考)】