説明

耐衝撃性ポリオレフィン組成物

(A) 5.2〜10の多分散度指数値、および97.5モル%より高いアイソタクッチクペンタッド(mmmm)含量を有する結晶性プロピレンポリマーを50〜80重量%;該ポリマーはプロピレン由来の繰返し単位を少なくとも95重量%含む;
(B) エチレンと少なくとも一つのC3-C8 α-オレフィン コモノマーとの第一の弾性コポリマーを5〜20重量%;該第一の弾性コポリマーはエチレンを25重量%〜40重量%未満含み、室温で85より高く95重量%までの量でキシレンに可溶であり、そのキシレン可溶のフラクションの極限粘度[η]は2.5〜4.5 dL/gの範囲にある;および
(C) エチレンと少なくとも一つのC3-C8 α-オレフィン コモノマーとの、第二の弾性コポリマーを10〜40重量%;該第二の弾性コポリマーはエチレンを50〜75重量%まで含み、50〜85重量%の量で室温でキシレンに可溶で、そのキシレン可溶のフラクションの極限粘度[η]は1.8〜4.0 dL/gの範囲にある;
を含むヘテロ相ポリオレフィン組成物
[ここで、成分(A)〜(C)の全量に基づいて、コポリマー(B)およびコポリマー(C)の量の和は20〜50重量%の範囲であり、成分(A)〜(C)の全量に基づいてエチレンの全量は23重量%までであり、室温でキシレンに不溶なフラクションの重量%(%XIF)を掛けた、室温でキシレンに不溶なフラクションのエチレン含量(C2xif)と、室温でキシレンに可溶なフラクションの重量%(%SXF)を掛けた、室温でキシレンに可溶なフラクションのエチレン含量(C2xsf)との比、すなわち、(C2xif×%XIF)/(C2xsf×%SXF)は、次の関係(I):


(ここで、xはエチレンの全量である)
を満たす]。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剛性と耐衝撃性の良好なバランスおよび高い伸び率をもったポリオレフィン組成物および該組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
公知のように、アイソタクチックポリプロピレンは良好な剛性を有するが、乏しい耐衝撃性および伸び率の値を有する。低温での耐衝撃性は、ゴムをアイソタクチックポリプロピレンに添加することにより改善され得る。このようにして得られるポリマー組成物が有する欠点は、アイソタクチックポリプロピレンだけものと比較して、剛性の激しい減少である。
【0003】
日本公開特許公報No.162621/1983は、高結晶性プロピレンポリマーを20〜70重量部、エチレンを8〜30重量%未満含むプロピレン-エチレン ランダムコポリマーを5〜30重量部、および30〜85重量部のエチレン含量を有するプロピレン-エチレン ランダムコポリマーを10〜75重量部からなるオレフィン ブロックコポリマーを記載している。そのコポリマー組成物は、低温で良好な耐衝撃性および非常に高い柔軟性を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、室温および低温の両方で高い剛性と良好な耐衝撃性およびその上に高い伸び率の値を維持した剛性ポリオレフィン組成物に対する必要性が、それゆえにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本出願人は、特性、具体的には耐衝撃性を減少しないで、より高い剛性、特に低温での衝撃強さ、および弾力性の有利なバランスを有するヘテロ相ポリオレフィン組成物をここに見出した。
【0006】
本発明の組成物は、高い引張強さおよび破断点伸びも有する。
本発明の組成物において、結晶性フラクションは、典型的に幅広い分子量分布を有する。
【0007】
前記の特性をもった組成物は、少なくとも三つの重合段階における操作により得られる。第一段階において、プロピレンが少量のコモノマーと重合または共重合され、そして第二および第三段階において、エチレン/α-オレフィン混合物が、前の工程で得られたプロピレンポリマーの存在下に共重合される。
【0008】
したがって、本発明はヘテロ相ポリオレフィン組成物に関し、それは、
(A) 5.2〜10の多分散度指数値、および25℃におけるキシレン不溶フラクションの13C-NMRによる測定で97.5モル%より高いアイソタクッチクペンタッド(mmmm)含量を有する結晶プロピレンポリマーを50〜80重量%;該ポリマーはプロピレンホモポリマーならびにプロピレン由来の繰返し単位を少なくとも95重量%含む、プロピレンと、エチレンおよび式H2C=CHR(ここで、RはC2-6の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基である)のα-オレフィンから選択される少なくとも一つのコモノマーとのコポリマーから選択される;
【0009】
(B) エチレンと、プロピレンおよび式H2C=CHR(ここで、RはC2-6の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基である)のもう一つのα-オレフィンから選択される少なくとも一つのコモノマーとの、第一の弾性コポリマーを5〜20重量%;該第一の弾性コポリマーはエチレンを25重量%〜40重量%未満、好ましくは25〜38重量%含み、室温で85より高く95重量%までの量でキシレンに可溶であり、そのキシレン可溶のフラクションの極限粘度[η]は2.5〜4.5 dL/gの範囲にある;および
【0010】
(C) エチレンと、プロピレンおよび式H2C=CHR(ここで、RはC2-6の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基である)のもう一つのα-オレフィンから選択される少なくとも一つのコモノマーとの、第二の弾性コポリマーを10〜40重量%;該第二の弾性コポリマーはエチレンを50〜75重量%まで、好ましくは55〜70重量%含み、50〜85重量%、好ましくは55〜85重量%の量で室温でキシレンに可溶で、そのキシレン可溶のフラクションの極限粘度[η]は1.8〜4.0 dL/gの範囲にある;
を含む。
【0011】
上記のヘテロ相ポリオレフィン組成物において、成分(A)〜(C)の全量を基にした、コポリマー(B)およびコポリマー(C)の量の和は20〜45重量%、好ましくは22〜45重量%の範囲であり、成分(A)〜(C)の全量を基にしたエチレンの全量は23重量%までであり、室温でキシレンに不溶なフラクションの重量%(%XIF)を掛けた、室温でキシレンに不溶なフラクションのエチレン含量(C2xif)と、室温でキシレンに可溶なフラクションの重量%(%SXF)を掛けた、室温でキシレンに可溶なフラクションのエチレン含量(C2xsf)との比、すなわち、(C2xif×%XIF)/(C2xsf×%SXF)は、次の関係(I):
【数1】

(ここで、xはエチレンの全量である)
を満たす。
【0012】
典型的に、本発明の組成物は、GPCで測定して、重量平均分子量と数平均分子量との比、すなわち、
【数2】

で表わして、9以上、特に9.5〜20の成分(A)における分子量分布を示す。
【0013】
典型的に、本発明の組成物は、GPCで測定して、成分(A)における重量平均分子量に対するz平均分子量の比の値、すなわち、
【数3】

が少なくとも4.5、好ましくは5、例えば5〜10の値を示す。
【0014】
典型的に、本発明の組成物は、2〜30 g/10分の溶融流量(MFR)値を示す。
好ましくは、前記コポリマーは、エチレンおよび/もしくは、例えばブテン-1、ペンテン-1、4-メチルペンテン-1、ヘキセン-1およびオクテン-1、またはそれらの組合せのような一以上のC4-C8 α-オレフィン由来の繰返し単位を含み得る。好ましいコモノマーはエチレンである。
【0015】
弾性コポリマー(B)の極限粘度[η]は、弾性コポリマー(C)の極限粘度と同じであるか、または異なり得る。
結晶性ポリマー(A)は、典型的には10〜200 g/10分の範囲のMFR値を有する。
弾性コポリマー(B)および(C)は、ブタジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエンおよびエチリデン-ノルボルネン-1のような共役または非共役のジエン由来の繰返し単位を任意に含み得る。存在するときは、典型的には、ジエンはコポリマーの重量に対して、0.5〜10重量%の量である。
【0016】
典型的には、本発明の組成物は、600〜1400 MPaまでのような、少なくとも600 MPa、好ましくは700〜1300 MPaの曲げ弾性率値および典型的には11 kJ/m2より高い、好ましくは19 kJ/m2より高い、23℃で測定された耐衝撃性値を有する。典型的には、-20℃で測定された耐衝撃性値は、少なくとも6 kJ/m2、好ましくは少なくとも7 kJ/m2である。
典型的には、破断点伸びは少なくとも100%、好ましくは少なくとも150%である。典型的には、エネルギー値は10 Jより高く、好ましくは12より高い。典型的には、延性/脆性転移温度は-50℃より低い。
【0017】
それゆえ、本発明は、上記のようなポリオレフィン組成物の製造方法にさらに向けられ、該方法は、次の各重合が直前の重合反応で形成された重合物質の存在下に行われる、少なくとも三つの連続重合段階を含む。ここで、結晶性ポリマーフラクション(A)は少なくとも一番目の段階で製造され、弾性フラクション(B)および(C)はそれ以降の段階で製造される。重合段階はチーグラー-ナッタ触媒の存在下に行われ得る。
【0018】
好ましい態様によれば、全ての重合段階は、トリアルキルアルミニウム化合物、任意に電子供与体、および無水マグネシウムクロライドに担持されたTiのハライドまたはハロゲン-アルコラートおよび電子供与性化合物を含む固形触媒成分を含む触媒の存在下に行われる。上記の特性を有する触媒は、特許文献においてよく知られており、USP 4,399,054およびEP-A-45 977に記載された触媒が特に有利である。他の例は、USP 4,472,524に見出し得る。
【0019】
好ましくは、重合触媒は、
a) Mg、Tiおよびハロゲンならびにスクシネート、好ましくは、次の式(I):
【化1】

(式中、
基R1およびR2は互いに同一または異なって、任意にヘテロ原子を含んでいてもよい、C1-C20の直鎖状または分枝鎖状のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルもしくはアルキルアリール基であり;
基R3〜R6は互いに同一または異なって、水素、あるいは任意にヘテロ原子を含んでいてもよい、C1-C20の直鎖状または分枝鎖状のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルもしくはアルキルアリール基であり、同一の炭素原子に結合した基R3〜R6は一緒になって環を形成し得る;
但し、R3〜R5が同時に水素のとき、R6は3〜20の炭素原子を有する、一級の分枝状の、二級のまたは三級のアルキル基、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルまたはアルキルアリール基である);
【0020】
または、次の式(II):
【化2】

(式中、
基R1およびR2は互いに同一または異なって、任意にヘテロ原子を含んでいてもよい、C1-C20の直鎖状または分枝鎖状のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルもしくはアルキルアリール基であり、
基R3は任意にヘテロ原子を含んでいてもよい、少なくとも四つの炭素原子を有する直鎖状アルキル基である)
のスクシネートから選択される電子供与体;
b) アルキルアルミニウム化合物および、任意に(しかし好ましくは)
c) 一以上の電子供与性化合物(外部供与体)
を含む固形触媒成分を含むチーグラー-ナッタ触媒である。
【0021】
助触媒として用いられるAl-アルキル化合物は、Al-トリエチル、Al-トリイソブチル、Al-トリ-n-ブチルのようなAl-トリアルキル化合物、およびOもしくはN原子、またはSO4もしくはSO3基により互いに結合した二以上のAl原子を含む、直鎖状または環状のAl-アルキル化合物を含む。Al-アルキル化合物は、一般的に、Al/Ti比が1〜1000であるような量で用いられる。
【0022】
外部供与体(c)は、同じタイプであり得るか、または式(I)もしくは(II)のスクシネートと異なり得る。好適な外部電子供与性化合物は、シリコン化合物、エーテル、フタレート、ベンゾエート、式(I)または(II)のそれらとは異なる構造も有するスクシネートのようなエステル、アミン、ヘテロ環式化合物および特に2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、ケトンならびに一般式(III):
【化3】

(式中、
RIおよびRIIは同一または異なって、C1-C18アルキル、C3-C18シクロアルキルまたはC7-C18アリール基であり;
RIIIおよびRIVは同一または異なって、C1-C4アルキル基である)
の1,3-ジエーテル;または2位の炭素原子が5、6もしくは7の炭素原子から形成される環状またはポリ環状の構造に属し、2または3の不飽和を含む1,3-ジエーテルを含む。
【0023】
このタイプのエーテルは、ヨーロッパ特許出願公開361493および728769に記載されている。
外部供与体として用いることができる電子供与性化合物は、アルキルベンゾエートのような芳香族酸エステルおよび特に、少なくとも一つのSi-OR結合(ここで、Rは炭化水素基である)を有するシリコン化合物も含む。特に好ましい外部供与性化合物のクラスは、式Ra7Rb8Si(OR9)c(ここで、aおよびbは0〜2の整数、cは1〜3の整数であり、和(a+b+c)は4であり;R7、R8およびR9は、任意にヘテロ原子を含んでいてもよいC1-C18の炭化水素基である)のシリコン化合物のクラスである。aが1であり、bが1であり、cが2であり、R7およびR8の少なくとも一つが、任意にヘテロ原子を含んでいてもよい3〜10の炭素原子を有する、分枝鎖状アルキル、アルケニル、アルキレン、シクロアルキルまたはアリール基から選択され、そしてR9がC1-C10アルキル基、特にメチルであるシリコン化合物が特に好ましい。
【0024】
そのような好ましいシリコン化合物の例は、シクロヘキシルトリメトキシシラン、t-ブチルトリメトキシシラン、t-ヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピル-2-エチルピペリジル-ジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチル-t-ブチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、2-エチルピペリジニル-2-t-ブチルジメトキシシラン、(1,1,1-トリフルオロ-2-プロピル)-メチルジメトキシシランおよび(1,1,1-トリフルオロ-2-プロピル)-2-エチルピペリジニルジメトキシシランである。
【0025】
さらに、aが1であり、cが3であり、R8が任意にヘテロ原子を含んでいてもよい分枝鎖状アルキルまたはシクロアルキル基であり、そしてR9がメチルであるシリコン化合物も好ましい。シリコン化合物の特に好ましい具体例は、(tert-ブチル)2Si(OCH3)2、(シクロヘキシル)(メチル)Si(OCH3)2、(フェニル)2Si(OCH3)2および(シクロペンチル)2Si(OCH3)2である。
【0026】
好ましくは、電子供与性化合物(c)は、0.1〜500、より好ましくは1〜300そして特に3〜100の有機アルミニウム化合物と該電子供与性化合物(c)とのモル比を与えるような量で用いられる。
【0027】
前記のように、固形触媒成分は、上記電子供与体に加えて、Ti、Mgおよびハロゲンを含む。特に、その触媒成分は、Mgハライドに担持された、少なくとも一つのTi-ハロゲン結合を有するチタン化合物および上記の電子供与性化合物を含む。好ましくは、マグネシウムハライドは、チーグラー-ナッタ触媒の担持体として特許文献から広く知られている活性型のMgCl2である。特許USP 4,298,718およびUSP 4,495,338が、チーグラー-ナッタ触媒においてこれらの化合物の使用を記述した最初のものである。
【0028】
オレフィン重合用触媒成分中に担持体またはコ-担持体として用いられる活性型のマグネシウムジハライドは、非活性ハライドのスペクトルに現れる最も強い回折線が、その強度において消えること、およびその最大強度がより強い線のそれに比較して、より低い角度の方へ移動させられるハロによって置き換わる、X線スペクトルによって特徴付けられることが、これらの特許から知られている。
【0029】
好ましいチタン化合物はTiCl4およびTiCl3である。さらに、式Ti(OR)n-yXy(ここで、nはチタンの原子価であり、yは1〜nの間の数であり、Xはハロゲンであり、そしてRは1〜10の炭素原子を有する炭化水素基である)のTi-ハロアルコラートも用いられ得る。
【0030】
固形触媒成分の製造は、当該技術分野でよく知られ、記述されているいくつかの方法により行われ得る。
好ましい方法によれば、固形触媒成分は、式Ti(OR)n-yXy(ここで、nはチタンの原子価であり、yは1〜nの間の数である)のチタン化合物、好ましくはTiCl4を式MgCl2・pROH(ここで、pは0.1〜6の間の数、好ましくは2〜3.5であり、そしてRは1〜18の炭素原子を有する炭化水素基である)の付加物に由来するマグネシウムクロライドと反応させることにより製造され得る。その付加物は、好適には、付加物と不混和性の不活性炭化水素の存在下に、アルコールとマグネシウムクロライドとを混合し、付加物の溶融温度(100〜130℃)での撹拌条件下に操作することにより、球状の形態で製造され得る。次いで、懸濁液を速やかにクエンチ(quenched)し、それにより、球状粒子の形態で付加物の固化が起こる。
【0031】
この方法により製造される球状付加物の例は、USP 4,399,054およびUSP 4,469,648に記載されている。そのようにして得られた付加物は、直接Ti化合物と反応させ得るか、またはアルコールのモル数が一般的に3より低く、好ましくは0.1〜2.5の間にある付加物を得るように、前もって、熱的に制御された脱アルコール化(80〜130℃)に付され得る。Ti化合物との反応は、(脱アルコール化された、またはそのままの)付加物を冷(一般的に0℃の)TiCl4中に懸濁することにより行われ得る。その混合物は80〜130℃まで加熱され、この温度で0.5〜2時間保持される。TiCl4との処理は、1回以上行われ得る。電子供与性化合物は、TiCl4との処理の間に添加され得る。
【0032】
用いられる製造方法にかかわらず、電子供与性化合物の最終量は、好ましくはMgCl2に対してモル比が0.01〜1、より好ましくは0.05〜0.5であるような量である。
該触媒成分および触媒は、WO 00/63261、WO 01/57099およびWO 02/30998に記載されている。
【0033】
本発明による方法で用いられ得る他の触媒は、USP 5,324,800およびEP-A-0 129 368に記載されているようなメタロセン タイプの触媒である。例えば、USP 5,145,819およびEP-A-0 485 823に記載されているような架橋されたビス-インデニル メタロセンが、特に有利である。好適な触媒の別のクラスは、EP-A-0 416 815 (Dow)、EP-A-0 420 436 (Exxon)、EP-A-0 671 404、EP-A-0 643 066およびWO 91/04257に記載されているような、いわゆる拘束幾何学触媒である。
【0034】
その触媒は、少量のオレフィンと予備接触(予備重合)され、炭化水素溶媒中に懸濁状態で触媒を維持し、室温〜60℃の温度で重合し、このようにして、触媒重量の0.5〜3倍のポリマー量を生成し得る。操作は液体モノマー中でも行われ得る。この場合、触媒重量の1000倍のポリマー量を生成し得る。
【0035】
上記の触媒を用いることにより、ポリオレフィン組成物は、回転楕円状の粒子形で得られ、その粒子は、約250〜7,000ミクロンの平均径、30秒より低い流動性および0.4 g/mlより大きい(詰められた(compacted))嵩密度を有する。
【0036】
重合段階は液相、気相または液-気相中で起こり得る。結晶性ポリマーフラクション(A)の重合は、好ましくは、液体モノマー中(例えば、希釈剤として液体プロピレンを用いて)で行われる。一方、弾性コポリマー(B)および(C)の共重合段階は、プロピレンの部分ガス抜きを除いて中間段階を用いずに、気相中で行われる。最も好ましい態様の一つによれば、三つの逐次重合段階全てが、気相中で行われる。
【0037】
結晶性ポリマーフラクション(A)の製造のための重合段階ならびに弾性コポリマー(B)および(C)の製造の反応温度は、同じかまたは異なり得、そして好ましくは40〜100℃である。より好ましくは、反応温度は、フラクション(A)の製造では50〜80℃の範囲、成分(B)および(C)の製造に対しては50〜90℃の範囲である。
【0038】
もし液体モノマー中で行われるなら、フラクション(A)を製造するための重合段階の圧力は、用いられる操作温度での液体プロピレンの蒸気圧と競合する圧力であり、それは、触媒混合物を供給するために用いられる少量の不活性希釈剤の蒸気圧、任意のモノマーの過圧および分子量調節剤として用いられる水素により変更され得る。
【0039】
重合圧力は、もし液相中で行われるなら33〜43バールの範囲で、気相中で行われるなら5〜30バールの範囲が好ましい。二つの段階に関連する滞留時間は、フラクション(A)および(B)および(C)の間の所期比に依存し、通常、15分〜8時間の範囲であり得る。連鎖移動剤(例えば、水素またはZnEt2)のような当該技術分野で既知の通常の分子量調節剤が用いられ得る。
【0040】
オレフィン ポリマーで一般的に用いられる、例えば成核剤、増量油(extension oils)、無機充填剤ならびに他の有機および無機顔料のような通常の添加剤、充填剤および顔料が添加され得る。特に、タルク、炭酸カルシウムおよび無機質繊維のような無機充填剤の添加は、曲げ弾性率およびHDTのようないくつかの機械的性質の改善も引き起こす。タルクは成核効果も有し得る。
【0041】
成核剤は、全重量に対して、好ましくは0.05〜2重量%、より好ましくは0.1〜1重量%の範囲の量で本発明の組成物に添加される。
【0042】
詳細は以下の実施例に示され、それは本発明を限定するためのものではなく、説明するためのものである。
以下の分析方法は、詳細な説明および実施例中に示された性質を測定するために用いられた。
【実施例】
【0043】
エチレン:IR分光法による。
25℃でのキシレン可溶および不溶フラクション:ポリマー(2.5 g)を、撹拌下135℃でキシレン(250 mL)に溶解する。20分後、さらに撹拌下、溶液を25℃まで冷却し、次いで30分間沈降させる。ろ紙を用いて沈殿物を濾過し、溶液を窒素気流で蒸発させ、一定の重量になるまで、残渣を80℃で真空下に乾燥する。このようにして、室温(25℃)で可溶および不溶なポリマーの重量百分率を計算する。
【0044】
極限粘度[η]:テトラヒドロナフタレン中135℃で測定
分子量
【数4】

1,2,4-トリクロロベンゼン中、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)で測定
【0045】
アイソタクチック ペンタッド含量の測定:各キシレン不溶フラクション(50 mg)が、C2D2Cl4(0.5 mL)中に溶解された。
13C NMRスペクトルは、Bruker DPX-400 (100.61 Mhz、90°パルス、パルス間の遅れ12秒)により得られた。約3000トランジェントが各スペクトルに対して蓄積され、mmmmペンタッドピーク(21.8 ppm)が基準として用いられた。
微構造分析は、文献(Polymer, 1984, 25, 1640, Inoue Y.らによる、およびPolymer, 1994, 35, 339, Chujo R.らによる)に記載されているように行われた。
【0046】
多分散度指数
RHEOMETRICS(米国)により販売されている平行板レオメーター モデル RMS-800を使って、0.1 rad/秒〜100 rad/秒まで増加する振動周波数で操作することにより、200℃の温度で測定された。交差モジュラスから、次の式によりP.I.を得ることができる。
P.I.= 105/Gc
[ここで、Gcは、G'=G"(ここで、G'は貯蔵弾性率であり、G"は損失弾性率である)での(Paで表わされる)値として定義される交差モジュラスである]
この方法は、20 g/10分以下のMFR値を有するポリマーに対して用いられる。
【0047】
多分散度指数:ポリマーの分子量分布の測定。PI値を決定するため、損失弾性率値、例えば500 Paでのモジュラス分離が、RHEOMETRICS(米国)により販売されている平行板レオメーター モデル RMS-800を使って、0.01 rad/秒〜100 rad/秒まで増加する振動周波数で操作することにより、200℃の温度で測定された。そのモジュラス分離値から、次の式を用いてPIを得ることができる。
PI = 54.6×(モジュラス分離)-1.76
ここで、モジュラス分離(MS)は次のように定義される。
MS = (G'=500 Paでの周波数)/(G"=500 Paでの周波数)
(ここで、G'は貯蔵弾性率であり、G"は損失弾性率である)
この方法は、20 g/10分より上のMFR値を有するポリマーに対して用いられる。
【0048】
溶融流量:ISO法1133(230℃、2.16 kg)により測定。
曲げ弾性率:ISO法178により測定。
アイゾッド衝撃抵抗性:ISO法180/1Aにより測定。
【0049】
破断エネルギー:内部(internal)MA17324法により測定。延性/脆性転移温度(以下に記載)に関しては、同じ試験片および同じ試験方法が用いられるが、本件の場合は、-20℃で試料を破断するのに要するエネルギーが測定される。
【0050】
延性/脆性転移温度:要求に応じて利用可能な、内部法MA17324により測定。
この方法により、二軸衝撃抵抗性が、自動的、コンピューター化された打撃ハンマーによる衝撃により測定される。
円形の試験片が、円形ハンド パンチを用いて切断することにより得られる(直径38 mm)。それらは、少なくとも12時間、23℃、50 RHの状態に置かれ、次いで、1時間、試験温度で恒温浴中に置かれる。
【0051】
リング支持体の上に載っている円形試験片上への打撃ハンマー(直径1.27 mmをもった半球のパンチ、5.3 kg)の衝撃の間に、力-時間曲線が検出される。使用される機械は、CEAST 6758/000タイプ no. 2モデルである。
D/B転移温度は、上記の衝撃試験に付されたとき、試料の50%が脆い破断を受ける温度を意味する。127×127×1.5 mmの寸法を有するD/B測定のためのプラックは、次の方法により製造される。
射出成形機は、90トンの型締力をもったNegri Bossiタイプ(NB 90)である。その金型は長方形のプラック(127×127×1.5 mm)である。
【0052】
主要工程のパラメータは次に示される。
背圧(バール) 20
射出時間(秒) 3
最大射出圧力(MPa) 14
油圧射出圧力(MPa) 6-3
第一保持油圧力(MPa) 4±2
第一保持時間(秒) 7
第二保持油圧力(MPa) 3±2
第二保持時間(秒) 7
冷却時間(秒) 20
金型温度(℃) 60
溶融温度は220〜280℃の間である。
【0053】
降伏点および破断点引張応力:ISO法527により測定。
降伏点および破断点伸び:ISO法527により測定。
ビカー軟化点:ASTM標準D法1525により測定。
【0054】
実施例1
固形触媒成分の製造
窒素で置換された四頸丸型フラスコ(500 mL)に、TiCl4(250 mL)を0℃で導入する。撹拌しながら、微小回転楕円状のMgCl2・1.9C2H5OH(10.0 g)(10000 rpmの代わりに3000 rpmで操作する以外は、USP 4,399,054の実施例2に記載された方法により製造)とジエチル 2,3-(ジイソプロピル)スクシネート(9.1 mmol)を加える。温度を100℃に上げ、120分間維持する。次いで、撹拌を中止し、固形生成物を沈殿させ、上澄み液をサイフォンで吸い出す。次いで新鮮なTiCl4(250 mL)を加える。混合物を120℃で60分間反応させ、次いで、上澄み液をサイフォンで吸い出す。固体を60℃で、無水ヘキサンで6回(6×100 mL)洗浄する。
【0055】
触媒系および予備重合処理
重合反応器に導入する以前に、上記の固形触媒成分をトリエチル アルミニウム(AlEt3)およびジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)と、固形触媒成分に対するAlEt3の重量比が11に等しく、そしてAlEt3/DCPMSの重量比が4.4に等しいような量で、12℃で24分間接触させる。
次いで、その触媒系を、最初の重合器に導入する以前に、液体プロピレン中、20℃で約5分間の懸濁状態を維持することにより、予備重合に付す。
【0056】
重合
重合作業は、ある一つの反応器からすぐその次の反応器に生成物を移すための装置を備えた一連の四つの反応器中、連続的に行われる。最初の二つの反応器は液相反応器であり、三番目と四番目の反応器は流動床気相反応器である。成分(A)は一番目および二番目の反応器中で製造され、一方、成分(B)および(C)は三番目および四番目の反応器中でそれぞれ製造される。
温度および圧力は、反応の過程を通して一定に維持される。水素は分子量調節剤として用いられる。
気相(プロピレン、エチレンおよび水素)は、ガスクロマトグラフィーを経て連続的に分析される。
【0057】
作業の最後に、粉末が排出され、窒素気流下に乾燥される。
次いで、そのポリマー粒子が押出し成形に導入され、そこで、有核組成物を得るために、タルク(8000 ppm)、Irganox B 215(1500 ppm)(1部のIrganox 1010と2部のIrgafosより作られる)およびCaステアレート(500 ppm)と混合される。前記のIrganox 1010は、ペンタエリトリチル テトラキス 3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパノエートであり、一方Irgafos 168はトリス (2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトであり、両方、Ciba-Geigyより販売されている。ポリマー粒子は、窒素雰囲気下、250 rpmの回転スピードおよび200〜250℃の溶融温度で、二軸スクリュー押出機で押出される。
【0058】
実施例2
重合作業が一連の三つの反応器中で行われ、第一番目の反応器のみが液相反応器であることを除いては、実施例1が繰り返される。
主要な重合条件および反応器中で製造されたポリマーに関する分析データが表1に示される。
表2および3は、ポリオレフィン組成物中の単一成分、それらの量および性質ならびにポリオレフィン組成物全体としての性質を示す。
【0059】
比較例1
二番目の気相反応器において、一番目の気相反応器で製造されるものと同じタイプの弾性ポリオレフィンが製造されることを除いて、実施例1が繰り返される。
【0060】
比較例2および3(2cおよび3c)
一番目の気相反応器中で製造されるものと同じタイプの弾性ポリオレフィンが、二番目の気相反応器において製造され、そしてその触媒成分が、ジエチル 2,3-(ジイソプロピル)スクシネートに代わってジイソブチルフタレートを含むこと以外は上記と同じ触媒成分で置き換えられることを除いて、実施例1が繰り返される。
【0061】
表1−重合工程
【表1】

注:H2容積 = 液体モノマー中の水素濃度;C2- = エチレン;C3- =
プロピレン
【0062】
表2−組成物分析
【表2−1】

【0063】
表2−続き
【表2−2】

【0064】
表3−組成物全体の性質
【表3】

1)N.B.:非破断

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A) 5.2〜10の多分散度指数値、および25℃におけるキシレン不溶フラクションの13C-NMRによる測定で97.5モル%より高いアイソタクッチクペンタッド(mmmm)含量を有する結晶性プロピレンポリマーを50〜80重量%;該ポリマーはプロピレンホモポリマーならびにプロピレン由来の繰返し単位を少なくとも95重量%含む、プロピレンと、エチレンおよび式H2C=CHR(ここで、RはC2-6の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基である)のα-オレフィンから選択される少なくとも一つのコモノマーとのコポリマーから選択される;
(B) エチレンと、プロピレンおよび式H2C=CHR(ここで、RはC2-6の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基である)のもう一つのα-オレフィンから選択される少なくとも一つのコモノマーとの、第一の弾性コポリマーを5〜20重量%;該第一の弾性コポリマーはエチレンを25重量%〜40重量%未満含み、室温で85より高く95重量%までの量でキシレンに可溶であり、そのキシレン可溶のフラクションの極限粘度[η]は2.5〜4.5 dL/gの範囲にある;および
(C) エチレンと、プロピレンおよび式H2C=CHR(ここで、RはC2-6の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基である)のもう一つのα-オレフィンから選択される少なくとも一つのコモノマーとの、第二の弾性コポリマーを10〜40重量%;該第二の弾性コポリマーはエチレンを50〜75重量%まで含み、50〜85重量%の量で室温でキシレンに可溶で、そのキシレン可溶のフラクションの極限粘度[η]は1.8〜4.0 dL/gの範囲にある;
を含むヘテロ相ポリオレフィン組成物
[ここで、成分(A)〜(C)の全量に基づいて、コポリマー(B)およびコポリマー(C)の量の和は20〜45重量%の範囲であり、成分(A)〜(C)の全量に基づいてエチレンの全量は23重量%までであり、室温でキシレンに不溶なフラクションの重量%(%XIF)を掛けた、室温でキシレンに不溶なフラクションのエチレン含量(C2xif)と、室温でキシレンに可溶なフラクションの重量%(%SXF)を掛けた、室温でキシレンに可溶なフラクションのエチレン含量(C2xsf)との比、すなわち、(C2xif×%XIF)/(C2xsf×%SXF)は、次の関係(I):
【数1】

(ここで、xはエチレンの全量である)
を満たす]。
【請求項2】
成分(A)が、GPCで測定して、重量平均分子量と数平均分子量との比、すなわち、
【数2】

で表わして、9以上の成分(A)における分子量分布、およびGPCで測定して、重量平均分子量に対するz平均分子量の比の値、すなわち、
【数3】

が少なくとも4.5の値を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
最初の工程以外の各工程において、形成されたポリマーおよび先の工程で用いられる触媒の存在下に操作され、成分(A)、(B)および(C)が別々の連続した工程で製造される、少なくとも三つの連続工程を含む、請求項1に記載のオレフィンポリマー組成物を製造するための重合方法。
【請求項4】
重合触媒が、
a) Mg、Tiおよびハロゲンならびにスクシネート、好ましくは、次の式(I):
【化1】

(式中、
基R1およびR2は、互いに同一または異なって、任意にヘテロ原子を含んでいてもよい、C1-C20の直鎖状または分枝鎖状のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルもしくアルキルアリール基であり;
基R3〜R6は、互いに同一または異なって、水素、あるいは任意にヘテロ原子を含んでいてもよい、C1-C20の直鎖状または分枝鎖状のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルもしくはアルキルアリール基であり、同一の炭素原子に結合した基R3〜R6は一緒になって環を形成し得る;
但し、R3〜R5が同時に水素であるとき、R6は3〜20の炭素原子を有する、一級の分枝状の、二級のまたは三級のアルキル基、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルまたはアルキルアリール基、または任意にヘテロ原子を含んでいてもよい、少なくとも四つの炭素原子を有する直鎖状アルキル基から選択される基である);または、次の式(II):
【化2】

(式中、
基R1およびR2は、互いに同一または異なって、任意にヘテロ原子を含んでいてもよい、C1-C20の直鎖状または分枝鎖状のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルもしくはアルキルアリール基であり、
基R3は任意にヘテロ原子を含んでいてもよい、少なくとも四つの炭素原子を有する直鎖状アルキル基である)
のスクシネートから選択される電子供与体;
b) アルキルアルミニウム化合物および、任意に
c) 一以上の電子供与性化合物(外部供与体)
を含む、固形触媒成分を含むチーグラー-ナッタ触媒である、請求項3に記載の重合方法。

【公表番号】特表2007−538119(P2007−538119A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−517021(P2007−517021)
【出願日】平成17年5月4日(2005.5.4)
【国際出願番号】PCT/EP2005/004957
【国際公開番号】WO2005/113672
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(501468046)バセル ポリオレフィン イタリア エス.アール.エル. (33)
【住所又は居所原語表記】Via Pergolesi 25,20124 Milano,Italy
【Fターム(参考)】