説明

肌水分測定装置

【課題】外乱光が受光部に入射することを遮断することにより、測定精度を向上させた光学式の肌水分測定装置を提供する。
【解決手段】生体に向けて光を照射する照射部22、および生体内を伝播した光を受光する受光部23を含み、肌に接触して外乱光を遮断する測定部20と、前記測定部20の測定面20aが生体に接触した状態のときに前記照射部から光を照射させる制御部とを含むことを特徴とする肌水分測定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体の肌表面に向けて光の照射をする照射部と、照射された光のうち生体の内部で反射した反射光を受光する受光部とを備えた肌水分測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、肌水分測定装置として、近赤外線を生体内に照射するとともに透過光または反射光を受光し、その受光情報より生体内の水分量を演算するものが知られている。例えば、特許文献1の肌水分測定装置では、光を肌表面に照射して体内からの反射光を受光部において受光する。そして、受光した光の強度に基づいて水分量を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−81427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このため、測定時に外部からの光(外乱光)が受光部に入射すると、肌水分の測定精度が低下する。
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、外乱光に起因する測定精度の低下を抑制することのできる肌水分測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の肌水分測定装置は、生体に向けて光を照射する照射部、および生体内を伝播した光を受光する受光部を含み、肌に接触して外乱光を遮断する測定部と、前記測定部の測定面が生体に接触した状態のときに前記照射部から光を照射させる制御部とを含むことを特徴とする。
【0006】
この肌水分測定装置においては、記受光部の受光量に基づいて肌水分量を演算する演算部と、この演算部により演算された肌水分量に基づいて肌水分の量に関する情報を出力する出力部とを含むことが好ましい。
【0007】
この肌水分測定装置においては、前記照射部として発光素子が設けられ、前記受光部として受光素子が設けられ、前記発光素子の発光面および前記受光素子の受光面が前記測定部の測定面上に設けられることが好ましい。
【0008】
この肌水分測定装置においては、前記制御部は、前記測定部に所定の圧力よりも大きい圧力が加えられたときに前記照射部からの光の照射を開始させることが好ましい。
この肌水分測定装置においては、前記測定部内において前記照射部および前記受光部と前記測定面との間には透過部材が設けられることが好ましい。
【0009】
この肌水分測定装置においては、当該肌水分測定装置は、前記測定部を収容するための空間を内部に有する筐体を含むものであり、前記測定部は、その測定面が生体に接触しているときに同測定面が前記筐体内の空間に位置するように前記筐体に設けられるものであることが好ましい。
【0010】
この肌水分測定装置においては、前記測定部は、生体に向けて突出した半球状の部分を含み、同半球状の部分の表面が前記測定面として肌に接触することが好ましい。
この肌水分測定装置においては、電極間の電気伝導度に基づいて肌水分量を測定するための複数の電極を含むことが好ましい。
【0011】
この肌水分測定装置においては、前記測定部の測定面が肌に接触した状態で当該肌水分測定装置を測定者に固定するための固定部を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、外乱光に起因する測定精度の低下を抑制することのできる肌水分測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態の肌水分測定装置について、その構成を示すブロック図。
【図2】本発明の第1の実施形態の肌水分測定装置について、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は底面図。
【図3】同実施形態の肌水分測定装置の図2(c)のA−A断面図。
【図4】ろ紙水分と受光量レベルとの関係を示すグラフ。
【図5】本発明の第2の実施形態の肌水分測定装置の底面図。
【図6】同実施形態の肌水分測定装置の図5のA−A断面図。
【図7】ろ紙水分と受光量比率との関係を示すグラフ。
【図8】本発明の第3の実施形態の肌水分測定装置の断面図。
【図9】同実施形態の変形の肌水分測定装置の断面図。
【図10】本発明の第4の実施形態の肌水分測定装置の断面図。
【図11】同変形例の肌水分測定装置の図5のA−A断面図。
【図12】本発明の第5の実施形態の肌水分測定装置の断面図。
【図13】本発明の第6の実施形態の肌水分測定装置の底面図。
【図14】本発明の第7の実施形態の肌水分測定装置の断面図。
【図15】同実施形態の肌水分測定装置の変形例の底面図。
【図16】同変形例の肌水分測定装置の図15のA−A断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
図1〜図4を参照して、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1に、肌水分測定装置の回路構成を示す。
【0015】
肌水分測定装置は、生体に向けて光を照射する照射部である発光素子22、および生体内を伝播した光を受光する受光部である受光素子23を含み、肌に接触して外乱光を遮断する測定部20を備えている。
【0016】
発光素子22は、制御部31と電気的に接続されている。受光素子23は、演算部32と電気的に接続されている。演算部32は、制御部31と電気的に接続されている。制御部31には、演算部32の他に出力部13、電源スイッチ14および測定スイッチ33が電気的に接続されている。
【0017】
肌水分測定装置による肌水分測定は以下のように行われる。
電源スイッチ14が入れられた状態で測定スイッチ33が入れられると、制御部31は、発光素子22に光を照射させる。人体を伝播した光が受光素子23に伝達されると、受光量の測定データが演算部に送られる。演算部32は、入力された測定データに基づいて肌水分量を演算する。制御部31は、演算部32の演算結果に基づいて肌水分の量に関する情報を出力部13に出力する。
【0018】
図2を参照して、肌水分測定装置10の詳細な構成について説明する。
図2(a),(c)に示されるように、測定部20は、遮光性のABS樹脂からなる遮光部材21と、その内部に設けられた発光素子22および受光素子23を含む。遮光部材21は、略円柱形に形成されているとともに、その外側面が筐体11の内周面に摺接している。
【0019】
遮光部材21の底面には、2つの凹部が設けられている。各凹部には、発光面22aを下方に向けた発光素子22および受光面23aを下方に向けた受光素子23がそれぞれ埋設されている。この発光素子22は中心波長800nmの赤外線を照射する発光ダイオードである。受光素子23は同波長を検出することができるフォトダイオードである。遮光部材21の底面は、肌水分測定時に肌に押し付けられる測定面20aを構成している。発光素子22の発光面22aおよび、受光素子23の受光面23aは、測定面20a上に設けられている。
【0020】
図2(b)に示されるように、筐体11の外周面の上部には、液晶画面で構成された出力部13および電源スイッチ14が設けられている。この電源スイッチ14を入れた様態で測定面20aを肌表面に押し付けることによって水分測定をすることができる。
【0021】
図3(a)に示すように、筐体11内において測定部20の上部には、仕切板12が設けられている。測定部20と仕切板12との間には、測定スイッチ33およびばね34が設けられている。
【0022】
仕切板12は、筐体11に固定されている。ばね34の上方端は仕切板12に固定されている。ばね34の下方端は測定部20に固定されている。測定面20aが肌表面に押し付けられたとき、測定部20がばね34の弾性力に抗して仕切板12の方向に移動する。
【0023】
肌水分測定装置の使用形態について説明する。
図3(a)に示すように、測定者は、測定面20aを生体の皮膚の表面である肌表面に触れさせる。次に、図3(b)に示すように、筐体11を肌表面に押し付ける。このとき、測定面20aに肌表面が密着するため、受光素子23への外乱光の侵入が、遮光部材21によって遮断される。
【0024】
測定面20aが肌表面に押し当てられて測定部20に所定の圧力であるばね34の弾性力よりも大きな力がかけられたとき、測定部20が上方に移動する。これにより、ばね34が押し縮められるため、測定スイッチ33が仕切板12に押し付けられる。これにより、測定スイッチ33が入る。制御部31は、測定スイッチ33が入ることにより発光素子22に光(赤外線)を照射させる。発光素子22は、所定時間にわたり光を照射する。
【0025】
照射された光は、図に矢印で示したように、表皮層61、真皮層62および脂肪層63等において反射し、受光面23aに伝播する。演算部32は、受光素子23が所定時間内に受光した受光量に基づいて肌水分量を演算する。制御部31を介して肌水分の量に関する情報を出力部13に出力する。
【0026】
この肌水分測定装置10により肌水分量が測定できることを、発明者はモデル実験によって確認した。同モデル実験において、表皮層に換えてポリエチレンテレフタラートフィルム(以下、単に、「PETフィルム」とする)、真皮層に換えてろ紙、脂肪層に換えてポリエチレンブロックを使用した。その方法を説明する。
【0027】
まず、ろ紙の乾燥重量を測定する。次に、ろ紙に水分を含有させ湿潤状態とした後、湿潤重量を測定する。この湿潤重量および乾燥重量よりろ紙の水分含有量を算出する。
次に、ポリエチレンブロック、湿潤状態のろ紙、PETフィルムを下層から順に積層した肌モデルを作成する。つづいて肌モデルの上部層であるPETフィルムに測定面20aを押しつけて発光素子22の発光面22aより光を所定時間照射させ、受光面23aにおいて受光素子23が受光した光の受光量を測定する。湿潤重量の測定時および受光量の測定時においてろ紙の水分含有量が変化しないように、肌モデルの作成は湿潤重量の測定後すぐに行った。
【0028】
ろ紙に含有させる水分量を変えて上記測定を繰り返し測定し、ろ紙の水分含有量と受光量の関係をプロットした結果を、図4に示す。最小二乗法を取ると相関係数の自乗値(R)が0.9756となることからより判るように、ろ紙の水分含有量と受光量との間には有意な正の相関関係が見られる。従って、受光量に基づいて水分含有量が演算できることが確認できる。なお、ろ紙の水分含有量と受光量との間に正の相関関係が見られるのは、ろ紙が水分を多く含有するほどろ紙の透明度が増加するためであると考えられる。
【0029】
本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)肌水分測定装置10は、肌に接触して外乱光を遮断する測定部20と、測定部20の測定面20aが生体に接触した状態のときに照射部である発光素子22から光を照射させる制御部31とを含んでいる。従って、測定時において測定面20aが生体に接触することにより、測定部20が外乱光を遮断するため、外乱光に起因する測定精度の低下を抑制することができる。
【0030】
なお、外乱光の遮断には、次のものが含まれる。すなわち、肌表面に測定面20aが接触した状態において受光素子23に外乱光が入射しない状態が含まれる。また、同接触した状態において受光素子23に多少は外乱光が入射するものの、遮光部材21により形成された測定面20aが肌表面に接触する構造を含まない肌水分測定装置と比較して、上記接触した状態において受光素子23に入射する外乱光が少ない状態が含まれる。
【0031】
(2)肌水分測定装置10には、照射部として発光素子22が設けられている。また、受光部として受光素子23が設けられている。また、発光素子22の発光面22aおよび受光素子23の受光面23aが測定部20の測定面20a上に設けられている。従って、発光面22aおよび受光面23aも、肌に接触させることができる。
【0032】
(3)制御部31は、測定部20に所定の圧力よりも大きい圧力が加えられたときに照射部からの光の照射を開始させる。従って、測定者は測定面20aを肌に接触させることにより、測定を行うことができる。
【0033】
(第2の実施形態)
図5〜図7を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態の肌水分測定装置10は、第1の実施形態の構成に対して、測定部20に更に受光素子を加えたものに相当する。以下、この変更にともない生じる第1の実施形態の構成からの変更について説明する。なお、前記第1の実施形態と共通する構成については同一の符合を付してその説明を省略する。
【0034】
図5に示されるように、本実施形態の肌水分測定装置10の測定部20は、遮光部材21の内部に、発光素子22、受光素子23および受光素子24を含む。具体的には、遮光部材21の底面に形成された3つの凹部のそれぞれに発光素子22、受光素子23および受光素子24が設けられている。遮光部材21の底面が肌水分測定時に肌に押し付けられる測定面20aを構成している。測定面20a上には、発光素子22の発光面22aと、受光素子23の受光面23aと、受光素子24の受光面24aとが設けられている。測定面20a上において、発光面22aと受光面23aとの間に受光面24aが位置するように、受光素子24が設けられている。
【0035】
図6を参照して、肌水分測定装置10の使用形態について説明する。
本実施形態の肌水分測定装置10による肌水分の測定は、第1実施形態の肌水分測定装置10による肌水分の測定と同様の手順で行うことができる。すなわち、図6(a)に示すように、測定面20aを肌表面に接触させる。次に、図6(b)に示すように、肌水分測定装置10を肌表面に押し付ける。このとき、発光素子22から照射された光が生体を伝播して各受光素子23,24の受光面23a,24aに入射する。演算部32は、受光素子23,24が所定時間内に受光した受光量に基づいて肌水分量を演算する。
【0036】
発光面22aと受光面23a,24aとの距離が長くなるに従い、受光面に伝達される光のうち皮膚の深い部分にある脂肪層63において反射された光の割合が増加する。従って、受光面24aに伝播する光は、受光面23aに到達する光に比して、脂肪層63による影響が、小さくなる。逆に言うと、受光素子24によって受光された光は、受光素子23によって受光された光に比べ、真皮層62の影響を強く受けている。また、脂肪層63の水分含有量はほとんど変化しないため、受光素子24の受光量は受光素子23の受光量に比べ水分変化の影響を受けやすいと考えられる。従って、受光素子23の受光量と受光素子24の受光量の関係を利用することにより、脂肪層63による影響を排除して、真皮層62における水分量、即ち肌水分量を一層精確に測定することができると考えられる。
【0037】
この肌水分測定装置10により脂肪層63による影響を排除して、真皮層62における水分量、即ち肌水分量を一層精確に測定することができることを、発明者は、第1の実施形態と同様のモデル実験を行うことにより確認した。実験方法は第1の実施形態のときと同様であるため、具体的説明は割愛する。
【0038】
ろ紙に含有させる水分量を換えて上記測定を繰り返し測定し、ろ紙の水分含有量と受光量の関係をプロットし、図7に示した。図7においては図4と異なり、受光素子23が受光した受光量を、受光素子24が受光した受光量で割った値、即ち受光量の比率を縦軸に記している。最小二乗法を取ると相関係数の自乗値(R)が0.9803となることから判るように、ろ紙の水分含有量と受光量の比率との間には、有意な負の相関関係が見られる。つまり、水分量が増加することによる受光量の増加が、受光素子23に比して受光素子24において、一層大きく見られることを示している。従って、受光素子23の受光量と受光素子24の受光量とを用いることにより、脂肪層63の影響を排除できることが確認できた。
【0039】
本実施形態によれば、第1実施形態の効果(1)〜(3)に加えて、以下の効果を奏することができる。
(4)肌水分測定装置10は、受光素子23および受光素子24を備えている。また、発光面22aから受光素子24の受光面24aへの距離は、発光面22aから受光素子23の受光面23aへの距離とは異なっている。従って、受光素子24の受光量と受光素子23の受光量とでは、肌の深部である脂肪層63から受ける影響が異なっている。そのため、それぞれの受光量を比較することにより、脂肪層63の影響を排除して肌水分量を測定することができる。
【0040】
(第3の実施形態)
図8を参照して、本発明の第3の実施形態について説明する。なお以下では、第1の実施形態の構成からの変更点を中心に説明し、同実施形態と共通する構成については同一の符合を付してその説明を省略する。
【0041】
発光面22aと測定面20aとの間、および受光面23aと測定面20aとの間には、光を透過する透過部材40がそれぞれ埋設されている。透過部材40としては例えば透明のポリエチレン等の吸光係数や濃度が既知の物質が用いられる。ここで吸光係数をε、濃度をC、発光面22aまたは受光面23aから測定面20aまでの距離をdとすると、吸光度Aは、「A=εdC」で求められる。この吸光度Aを調節することにより、発光素子22から照射された光の到達深度を所望の深さに調節することができる。
【0042】
本実施形態によれば、第1の実施形態の効果(1)〜(3)に加えて、以下の効果を奏することができる。
(5)肌水分測定装置10において、発光素子22および受光素子23と測定面20aとの間には透過部材40が設けられている。このため、発光素子22から照射された光の到達深度を所望の深さに調節することができる。例えば、光の到達深度を真皮層62の厚みに合せて調節することにより、真皮層62の水分を一層正確に測定することができる。
【0043】
(第4の実施形態)
図10を参照して、本発明の第4の実施形態について説明する。なお以下では、第1の実施形態の構成からの変更点を中心に説明し、同実施形態と共通する構成については同一の符合を付してその説明を省略する。
【0044】
図10(a)に示されるように、有蓋円筒状の筐体11の下端部11eが測定面20aよりも下方に延びている。言い換えれば、図示したように、測定面20aが生体に接触しているときに測定面20aが筐体11内の空間に位置するように筐体11に設けられている。図10(b)に示すように、測定者が、ばね34の弾性に抗して、測定面20aを肌表面に押し当てることにより、肌表面は測定面20aに密着するとともに、筐体11の下端部11eが肌を押し込むように密着する。従って、遮光部材21によって遮断されるのみならず、筐体11の下端部11eによっても、受光素子23への外乱光の侵入が遮断される。
【0045】
本実施形態によれば、第1の実施形態の効果(1)〜(3)に加えて、以下の効果を奏することができる。
(6)肌水分測定装置10においては、測定面20aが生体に接触しているときに測定面20aが筐体11内の空間に位置するように筐体11に設けられる。このため、測定時において、外乱光は測定部20による遮断に加えて、筐体11によっても、遮断される。
【0046】
(第5の実施形態)
図12を参照して、本発明の第5の実施形態について説明する。なお以下では、前記第1の実施形態の構成からの変更点を中心に説明し、同実施形態と共通する構成については同一の符合を付してその説明を省略する。
【0047】
図12(a)に示されるように、測定部20は、生体に向けて突出した半球状の部分を含み、半球状の部分の表面が測定面20aとして肌に接触する。また、第1の実施形態に比して深く形成された2つの凹部に、発光素子22および受光素子23がそれぞれ埋設されている。従って、発光面22aと測定面20aとの間および受光面23aと測定面20aとの間には空間25が形成されている。
【0048】
図12(b)に示すように、測定時には、ばね34の弾性に抗して、測定者は測定面20aを肌表面に押し当てる。このとき肌表面は測定面20aに密着するため、受光素子23への外乱光の侵入が、遮光部材21によって遮断される。
【0049】
本実施形態によれば、第1の実施形態の効果(1)〜(3)に加えて、以下の効果を奏することができる。
(7)測定面20aが半球状であるため、肌への密着性が一層向上し、測定部20による外乱光の遮断効果が一層向上する。
【0050】
(8)また、滑らかな形状である半球状の測定面20aが肌に押し付けられるため、測定者が測定時に痛みを感じることも抑制される。
(第6の実施形態)
図13を参照して、本発明の第6の実施形態について説明する。なお以下では、前記第1の実施形態の構成からの変更点を中心に説明し、同実施形態と共通する構成については同一の符合を付してその説明を省略する。
【0051】
肌水分測定装置10は、電極間の電気伝導度に基づいて肌水分量を測定するための複数の電極を含んでいる。具体的には、図13に示されるように、遮光部材21の底面に4つの凹部が設けられている。各凹部には、発光素子22、受光素子23、電気伝導度測定用の2つの電極50がそれぞれ埋設されている。遮光部材21の底面が肌水分測定時に肌に押し付けられる測定面20aを構成している。測定面20a上には、発光素子22の発光面22aと、受光素子23の受光面23aと、2つの電極50の電極面50aとが設けられている。
【0052】
本実施形態によれば、第1の実施形態の効果(1)〜(3)に加えて、以下の効果を奏することができる。
(9)肌水分測定装置10は、電極間の電気伝導度に基づいて肌水分量を測定するための複数の電極を含んでいるため、光学式の肌水分測定と、電気伝導度による肌水分測定を同時に行うことができる。そのため、一層精確な肌水分測定が可能となる。一般に、電流は電極間の最短距離を通過しやすいため、電気伝導度による水分測定は肌表層部の水分測定に適応する。一方、照射部より照射された光は体内において反射して受光部に到達するため、肌内部の水分測定に適応する。両者を組み合わせることにより、一層精確な水分測定を成しうる。
【0053】
(第7の実施形態)
図14を参照して、本発明の第7の実施形態について説明する。なお以下では、前記第1の実施形態の構成からの変更点を中心に説明し、同実施形態と共通する構成については同一の符合を付してその説明を省略する。
【0054】
肌水分測定装置10は、測定部の測定面が肌に接触した状態で当該肌水分測定装置10を測定者に固定するための固定部を含む。具体的には、図14(a)に示されるように、筐体11の下端部11eに光を透過しない粘着テープ16が取り付けられている。また肌水分測定装置10も全体に小型化されている。
【0055】
図14(b)に示すように、肌水分測定時には、測定者が、ばね34の弾性に抗して、測定面20aを肌表面に押し当てる。その結果、肌表面は測定面20aに密着するため、受光素子23への外乱光の侵入が、遮光部材21によって遮断される。このとき粘着テープ16が肌に張り付くことにより、人体に固定される。
【0056】
本実施形態によれば、第1の実施形態の効果(1)〜(3)に加えて、以下の効果を奏することができる。
(10)本実施形態における肌水分測定装置10は、測定部の測定面20aが肌に接触した状態で当該肌水分測定装置10を測定者に固定するための固定部である粘着テープ16を含むため、測定者が手で保持することなく測定を行うことができ、測定が容易となる。
【0057】
(11)また、測定面を肌に密着させた状態を長期間維持できるため、長時間の連続測定や、断続測定が可能となる。従って、例えば、肌水分の日内変動や、週内変動を測定することも容易となる。
【0058】
なお、本発明の実施態様は上記実施形態に限られるものではなく、例えば以下に示す態様をもって実施することもできる。また以下の各変形例は、上記実施形態についてのみ適用されるものではなく、異なる変形例同士を互いに組み合わせて実施することもできる。
【0059】
・第3の実施形態において、遮光部材21の底面に、2つの深い凹部が設けられている。各凹部にはそれぞれ、発光素子22および受光素子23が埋設されている。更に発光素子22の発光面22aと測定面20aとの間、および、受光素子23の受光面23aと測定面20aとの間に透過部材40が埋設されていたが他の構成であっても良い。例えば、図9(a)に示すように、発光素子22および受光素子23をともに埋設できる凹部を1つ設けても良い。この場合には、発光素子22および受光素子23をともに下方から覆う1つの透過部材40を備えることにより、照射部および受光部と測定面20aとの間には透過部材40が設けられた構造とすることが可能となる。かかる構成であっても、図9(b)に示すように、発光素子22から照射された光の到達深度を所望の深さに調節することができる。また、凹部の構成を簡素化できるため製造が容易となりうる。
【0060】
・第4の実施形態において、筐体11の下端部11eを測定面20aよりも下方に延びているが、図11(a)に示すように、光を透過させないゴム15を下端部11eに固定しても良い。かかる構成によると、測定時においてゴム15が密着することにより、測定部20に加えて筐体11およびゴム15が外乱光を遮断する。図11(b)に示すように、測定面20aが押しつけられると、ゴム15が縮み、測定部20が上方に移動することにより測定スイッチ33が入れられ、測定が開始される。
【0061】
・第5の実施形態において、発光面22aと測定面20aとの間および受光面23aと測定面20aとの間には空間25が形成されていたが、例えば、第3の実施形態において用いられたような透過部材を空間25に換えて充填しても良い。発光素子22から照射された光の到達深度を所望の深さに調節することができる。
【0062】
・また、空間25に換えて凸レンズを埋設しても良い。かかる構成によると、発光素子22からの光を効率よく真皮層62に照射することができ、受光素子23に伝達される光の量も増大させることができるようになる。その結果、測定精度を向上させうる。
【0063】
・第7の実施形態において、固定部として粘着テープ16を用いたが、図15および図16に示すように、筐体11の外側面に金具17を備えるとともに、金具17に固定部としてのベルト18が取り付けられていても良い。
【0064】
・上記各実施形態において、肌水分測定装置10は一体的に構成されていたが、複数部分に分離された構成であっても良い。例えば、出力部13を本体から分離し、有線または無線により本体と通信する構成としてもよい。かかる構成によれば、本体部の大きさに制約されることなく出力部13を構成することができるため、例えば画面表示する場合には大きく見やすい画面を用いることができる。そのため、例えば、過去の測定履歴や、肌水分の変化を示すグラフなどを併せて表示する構成としてもよい。また、最低限の構成のみを本体部に残す構成とすれば、本体部を一層小型化することができるため、例えば、第7の実施形態のように本体を人体に固定する場合に特に有効となる。
【0065】
・上記各実施形態において、出力部13は液晶画面により構成し、数値を表示しているが、他の構成であっても良い。例えば、数値に変えて、グラフ等を表示しても良い。また、スピーカーを用いて音声出力しても良いし、LEDを用いて、点灯数や色により水分値に関する情報を出力しても良い。また振動装置を用いて、強度や長さを変えた振動により出力しても良い。
【0066】
・上記各実施形態において、測定部20に所定の圧力よりも大きい圧力が加えられたときに照射部からの光の照射を開始させる構成を、ばね34、測定スイッチ33および仕切板12を用いることにより実現しているが、他の構成であっても良い。例えば、圧力センサを用いた構成であっても良い。
【符号の説明】
【0067】
10…肌水分測定装置、11…筐体、11e…下端部、12…仕切板、13…出力部、14…電源スイッチ、15…ゴム、16…粘着テープ、17…金具、18…ベルト、20…測定部、20a…測定面、21…遮光部材、22…発光素子(照射部)、22a…発光面、23…受光素子(受光部)、23a…受光面、24…受光素子(受光部)、24a…受光面、25…空間、31…制御部、32…演算部、33…測定スイッチ、34…ばね、40…透過部材、50…電極、50a…電極面、61…表皮層、62…真皮層、63…脂肪層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体に向けて光を照射する照射部、および生体内を伝播した光を受光する受光部を含み、肌に接触して外乱光を遮断する測定部と、
前記測定部の測定面が生体に接触した状態のときに前記照射部から光を照射させる制御部とを含む
ことを特徴とする肌水分測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の肌水分測定装置において、
記受光部の受光量に基づいて肌水分量を演算する演算部と、この演算部により演算された肌水分量に基づいて肌水分の量に関する情報を出力する出力部とを含む
ことを特徴とする肌水分測定装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の肌水分測定装置において、
前記照射部として発光素子が設けられ、前記受光部として受光素子が設けられ、前記発光素子の発光面および前記受光素子の受光面が前記測定部の測定面上に設けられる
ことを特徴とする肌水分測定装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の肌水分測定装置において、
前記制御部は、前記測定部に所定の圧力よりも大きい圧力が加えられたときに前記照射部からの光の照射を開始させる
ことを特徴とする肌水分測定装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の肌水分測定装置において、
前記測定部内において前記照射部および前記受光部と前記測定面との間には透過部材が設けられる
ことを特徴とする肌水分測定装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の肌水分測定装置において、
当該肌水分測定装置は、前記測定部を収容するための空間を内部に有する筐体を含むものであり、
前記測定部は、その測定面が生体に接触しているときに同測定面が前記筐体内の空間に位置するように前記筐体に設けられるものである
ことを特徴とする肌水分測定装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の肌水分測定装置において、
前記測定部は、生体に向けて突出した半球状の部分を含み、同半球状の部分の表面が前記測定面として肌に接触する
ことを特徴とする肌水分測定装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の肌水分測定装置において、
電極間の電気伝導度に基づいて肌水分量を測定するための複数の電極を含む
ことを特徴とする肌水分測定装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の肌水分測定装置において、
前記測定部の測定面が肌に接触した状態で当該肌水分測定装置を測定者に固定するための固定部を含む
ことを特徴とする肌水分測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−200465(P2011−200465A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71141(P2010−71141)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】