説明

肝癌治療剤

【課題】 肝細胞癌を治療または予防するための新規医薬組成物および治療方法を提供すること。
【解決手段】 化学療法剤およびグリピカン3抗体を組み合わせてなる、肝癌を治療または予防するための医薬組成物が開示される。また、グリピカン3抗体を有効成分として含む、化学療法剤と併用して肝癌を治療または予防するための医薬組成物、ならびに化学療法剤を有効成分として含む、グリピカン3抗体と併用して肝癌を治療または予防するための医薬組成物も開示される。化学療法剤とグリピカン3抗体との併用により、化学療法剤が単独で処方されるよりも有効な治療効果を奏し、化学療法剤による肝癌治療の結果生じる副作用を低減させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願
本出願は,日本特許出願2008−98309(2008年4月4日出願)および国際出願PCT/JP2008/002690(2008年9月26日出願)に基づく優先権を主張しており,これらの内容は本明細書に参照として取り込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、肝癌治療に有効な、化学療法剤およびグリピカン3抗体を組み合わせてなる、肝癌を治療または予防するための医薬組成物または当該医薬組成物を用いる治療方法の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
肝細胞癌に起因する死亡は通年で60万に相当し、世界の癌による死亡のうちでは五番目に位置するといわれている(非特許文献1)。肝細胞癌の大半はその疾患であるとの診断後1年以内に死亡する。不幸にも、肝細胞癌は治癒可能な療法があまり奏功しない後期ステージで診断される例が頻繁である。こうした患者に対しての化学療法、化学塞栓術、焼灼や陽子ビーム療法を含む医療処置の効果は依然として不十分である。多くの患者が疾患の再発を示し、これは血管浸潤および多部位肝内転移を伴って進行ステージに急速に進行して、その5年生存率は7%に過ぎない(非特許文献2)。局部癌の切除術が可能な肝細胞癌の患者の予後は比較的よいが、その5年生存率は15%から39%に留まる(非特許文献3)。当該技術分野においては、このような悪性疾患である肝細胞癌に対する新規療法が求められている。
【0004】
肝細胞癌は日本における原発性肝癌の90%以上の原因を占めると言われている。こうした肝細胞癌に対する治療方法としては、化学療法剤を用いて、腫瘍への栄養供給経路となる肝動脈に油性造影剤(リピオドール)と抗癌剤、塞栓物質(ゼルフォーム)を混和したものを注入し、栄養動脈を閉塞することにより、選択的に肝細胞癌を壊死に導く治療法であるTAE(肝動脈塞栓療法)が用いられている。また、化学療法剤として、5−FU(フルオロウラシル)、UFT(ウラシルとテガフール)、MMC(マイトマイシンC)、DHAD(ミトキサントロン)、ADR(アドリアマイシン)、EPI(エピルビシン)、CDDP(シスプラチン)等が単独で、あるいはIFN(インターフェロン)との併用療法として、全身化学療法の臨床試験が行われている(非特許文献4)。しかし、なお肝癌の標準療法は確立されていない(非特許文献5)。
【0005】
近年、生育因子を標的とする複数の薬剤が、肝癌治療に適用する目的で調べられている。これらの研究により、ヒト肝癌細胞においては上皮因子受容体/ヒト上皮因子受容体1(EGFR/HER1)が活性型で発現していることが示唆された。上皮因子受容体/ヒト上皮因子受容体1に対する阻害剤であるエルロチニブ、および上皮因子受容体/ヒト上皮因子受容体1とErbB−2(Her2/neu)に対する二重チロシンキナーゼ阻害剤であるラパチニブが、肝癌患者に対する第二相臨床試験において検討された。エルロチニブが投与された患者の応答割合は4−9%で、無増悪期間は2.1ヶ月から3.2ヶ月であり、生存率は5.8−13ヶ月であった。その一方でラパチニブが投与された患者の応答割合は0%で、無増悪生存期間は1.8ヶ月であった(非特許文献6)。一方、キナーゼ阻害剤である経口活性型のソラフェニブ(Nexavar,BAY43−9006)は、Raf/MEK/ERKシグナル伝達をRafキナーゼの段階で阻害することによって癌細胞の増殖をブロックし、かつ、VEGFR−2,VEGFR−3およびPDGFR−βチロシンキナーゼを標的とすることによって抗血管形成効果を発揮し、上記の化学療法剤に比べて有利な効果を示した。非日本人および日本人を対象とした第二相臨床試験において、無増悪期間は4.2から4.9ヶ月で、応答割合は2から4%で、無増悪生存期間は9.2から15.6ヶ月であった(非特許文献7)。ソラフェニブ同様、複数のキナーゼを阻害する作用を有するマルチキナーゼ阻害剤であるスニチニブ(SU11248)(非特許文献8)は、肝細胞癌の臨床試験に用いられている。34人の進行肝細胞患者にスニチニブが投与された当該試験では、12週までに1人の患者で部分奏効が確認され、17人の患者で安定状態が認められた。全生存期間中央値は9.8カ月であった一方で、無増悪生存期間中央値は3.9カ月(95%信頼区間2.6-6.9)で、3カ月無増悪生存率は56%、6カ月無増悪生存率は32%だったことが示されスニチニブが肝細胞癌に対して抗腫瘍活性を奏することが示唆された(Zhu A, Sahani D, di Tomaso E et al.,; 99th AACR annual meeting. San Diego, CA, USA 12-16 April (2008))。一般的に、肝癌の進行に伴い肝機能障害を伴う、食欲不振、体重減少、全身倦怠感、右悸肋部腫瘤触知、右悸肋部痛、腹部膨満感、発熱、黄疸等の肝癌特有の症状が観察される。しかしながらソラフェニブ、ラパチニブ等の化学療法剤は、下痢または便秘、貧血、(致死的な重篤度の)感染や敗血症を引き起こすほどの免疫系の抑制、出血、心毒性、肝毒性、腎毒性、食欲不振、体重減少等の化学療法剤に固有の副作用も併発するという、克服すべき課題を有している。
【0006】
一般に、肝癌は初期には特別な初期症状は観察されないが、肝癌の進行に伴い肝機能障害を伴う、食欲不振、体重減少、全身倦怠感、右悸肋部腫瘤触知、右悸肋部痛、腹部膨満感、発熱、黄疸等の肝癌特有の症状が観察される。こうした症状は上記の化学療法剤の使用によって増幅されることが臨床上観察される。たとえば、肝癌細胞が検出される患者の食欲不振、および、それに伴うまたはそれとは独立して生じる体重減少等の症状は、当該患者に対する化学療法剤の投与によって、非投与に比較してより増幅されることがある。こうした症状が表れる場合には当該化学療法剤の使用を断念せざるを得なくなる場合もあり、上記の症状の増幅は化学療法剤による治療を妨げる要因となる。
【0007】
したがって、治療効果の向上や治療を受ける患者のQOLの改善等においてより優れた治療法の確立が求められていた。
【0008】
本明細書において引用される参考文献は以下のとおりである。これらの文献に記載される内容はすべて本明細書に参照として取り込まれる。これらの文献のいずれかが、本明細書に対する先行技術であると認めるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO2003/000883
【特許文献2】WO2006/006693
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Llovet JM, Burroughs A, Bruix J; Lancet (2003), 362, 1907-17
【非特許文献2】Bosch FX, Ribes J, Cleries R; Gastroenterology (2004), 127, S5-16
【非特許文献3】Takenaka K, Kawahara N, Yamamoto K, Kajiyama K, Maeda T, Itasaka H, Shirabe K, Nishizaki T, Yanaga K, Sugimachi K; Arch Surg (1996), 131, 71-6
【非特許文献4】Yeo W, Mok TS, Zee B, Leung TW, Lai PB, Lau WY, Koh J, Mo FK, Yu SC, Chan AT, Hui P, Ma B, Lam KC, Ho WM, Wong HT, Tang A, Johnson PJ; J Natl Cancer Inst (2005), 97, 1532-8
【非特許文献5】Furuse J, Ishii H, Nakachi K, Suzuki E, Shimizu S, Nakajima K; Cancer Sci (2007), Oct 22 (E-Pub)
【非特許文献6】Philip PA, Mahoney MR, Allmer C, Thomas J, Pitot HC, Kim G, Donehower RC, Fitch T, Picus J, Erlichman C; J Clin Oncol (2005), 23, 6657-63
【非特許文献7】Thomas MB, Dutta A, Brown T, Charnsangavej C, Rashid A, Hoff PM, Dancey J, Abbruzzese JL; J Clin Oncol (2005), 2005 ASCO Annual Meeting Proceedings. 23, 16S
【非特許文献8】Mendel DB, Laird AD, Xin X, Louie SG, Christensen JG, Li G, Schreck RE, Abrams TJ, Ngai TJ, Lee LB, Murray LJ, Carver J, Chan E, Moss KG, Haznedar JO, Sukbuntherng J, Blake RA, Sun L, Tang C, Miller T, Shirazian S, McMahon G, Cherrington JM; Clin Cancer Res (2003), 9, 327-37
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記の情況に鑑みてなされたものであり、癌の進行に伴う体重減少等の肝癌固有の症状が観察される患者に対して、キナーゼ阻害剤等の化学療法剤の投与に起因する、下痢または便秘、貧血、(致死的な重篤度の)感染や敗血症を引き起こすほどの免疫系の抑制、出血、心毒性、肝毒性、腎毒性、食欲不振、体重減少等の化学療法剤に固有の副作用を低減し、かつ肝癌に対する治療効果を増大することができる肝癌治療剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、肝癌細胞において高発現しているタンパク質に結合し、かつ当該細胞に対して細胞傷害活性を発揮する能力を奏する治療用抗体と、肝癌細胞に対して有効な化学療法剤を有効成分として含む肝癌治療剤とを組み合わせることにより、肝癌患者に対して当該化学療法剤が単独で処方されるよりも有効な治療効果を奏することを見出した。また、本発明の治療剤は、上述のような有効な効果を奏するのみならず、当該化学療法剤が単独で処方される際に認められる下痢または便秘、貧血、(致死的な重篤度の)感染や敗血症を引き起こすほどの免疫系の抑制、出血、心毒性、肝毒性、腎毒性、食欲不振、体重減少等の化学療法剤に固有の副作用を有意に低減させ、有効な治療効果を奏することが見出された。
【0013】
さらに、下記の実施例において示されるように、肝癌の進行に伴う食欲不振や体重減少等の症状のモデルとして、HepG2が移植された非ヒト動物肝癌モデルを用いた場合、その体重減少は化学療法剤、より具体的にはソラフェニブの投与によりさらに増幅されたが、本発明の治療剤を投与することにより、体重減少が抑制されることが実証された。
【0014】
即ち、本発明は以下の発明;
[1] キナーゼ阻害剤でおよび細胞傷害活性を有するグリピカン3抗体を組み合わせてなる、肝癌を治療または予防するための医薬組成物、
[2] 前記医薬組成物が配合剤であることを特徴とする、[1]に記載の医薬組成物、
[3] スニチニブおよびグリピカン3抗体が併用されることを特徴とする、[1]に記載の医薬組成物、
[4] スニチニブとグリピカン3抗体とが同時または順次に投与されることを特徴とする[3]に記載の医薬組成物、
[5] スニチニブとグリピカン3抗体とが別々に投与されることを特徴とする[3]に記載の医薬組成物、
[6] 細胞傷害活性を有するグリピカン3抗体を有効成分として含む、スニチニブと併用して肝癌を治療または予防するための医薬組成物、
[7] グリピカン3抗体がスニチニブと同時に投与されることを特徴とする、[6]に記載の医薬組成物、
[8] グリピカン3抗体がスニチニブの投与前または投与後に投与されることを特徴とする、[6]に記載の医薬組成物、
[9] スニチニブを有効成分として含む、細胞傷害活性を有するグリピカン3抗体と併用して肝癌を治療または予防するための医薬組成物、
[10] スニチニブがグリピカン3抗体と同時に投与されることを特徴とする、[9]に記載の医薬組成物、
[11] スニチニブがグリピカン3抗体の投与前または投与後に投与されることを特徴とする、[9]に記載の医薬組成物、
[12] グリピカン3抗体が;
配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するH鎖可変領域;
配列番号8に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[1]から[11]のいずれかに記載の医薬組成物、
[13] グリピカン3抗体が;
配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するH鎖可変領域;
配列番号9から23のいずれか一つに記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[1]から[11]のいずれかに記載の医薬組成物、
[14] グリピカン3抗体がヒト化抗体である[1]から[13]のいずれかに記載の医薬組成物、
[15] グリピカン3抗体が;
配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含むH鎖可変領域;
配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含むL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[14]に記載の医薬組成物、
[16] グリピカン3抗体が;
配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含むH鎖可変領域;
配列番号4に記載されるアミノ酸配列のうち、34番目のGlyが異なるアミノ酸に置換されているアミノ酸配列を含むL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[14]に記載の医薬組成物、
[17] 細胞傷害活性を有するグリピカン3抗体を有効成分として含有する、キナーゼ阻害剤による肝癌治療の結果生じる副作用の低減剤、
[18] 副作用が体重減少であることを特徴とする[17]に記載の副作用の低減剤、
[19] グリピカン3抗体が;
配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するH鎖可変領域;
配列番号8に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする[17]又は[18]に記載の副作用の低減剤、
[20] グリピカン3抗体が;
配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するH鎖可変領域;
配列番号9から23のいずれか一つに記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[17]又は[18]に記載の副作用の低減剤、
[21] グリピカン3抗体がヒト化抗体である[17]から[20]のいずれかに記載の副作用の低減剤、
[22] グリピカン3抗体が;
配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含むH鎖可変領域;
配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含むL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[21]に記載の副作用の低減剤、
[23] グリピカン3抗体が;
配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含むH鎖可変領域;
配列番号4に記載されるアミノ酸配列のうち、34番目のGlyが異なるアミノ酸に置換されているアミノ酸配列を含むL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[21]に記載の副作用の低減剤、
[24] 細胞傷害活性を有するグリピカン3抗体を有効成分として含む、キナーゼ阻害剤による肝癌治療の効果を増強させるための医薬組成物、
[25] グリピカン3抗体が化学療法剤と同時に投与されることを特徴とする、[24]に記載の医薬組成物、
[26] グリピカン3抗体が化学療法剤の投与前または投与後に投与されることを特徴とする、[24]に記載の医薬組成物、
[27] グリピカン3抗体が;
配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するH鎖可変領域;
配列番号8に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする[24]から[26]のいずれかに記載の医薬組成物、
[28] グリピカン3抗体が;
配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するH鎖可変領域;
配列番号9から23のいずれか一つに記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[24]から[26]のいずれかに記載の医薬組成物、
[29] グリピカン3抗体がヒト化抗体である[24]から[28]のいずれかに記載の医薬組成物、
[30] グリピカン3抗体が;
配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含むH鎖可変領域;
配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含むL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[29]に記載の医薬組成物、
[31] グリピカン3抗体が;
配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含むH鎖可変領域;
配列番号4に記載されるアミノ酸配列のうち、34番目のGlyが異なるアミノ酸に置換されているアミノ酸配列を含むL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[29]に記載の医薬組成物、
を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、ドキソルビシン(DOX)またはミトキサントロン(MX)とGC33抗体との併用投与による肝癌細胞の増殖抑制効果を表すグラフである。
【図2】図2は、ヒト肝癌細胞株Huh-7細胞移植マウスモデルに対するhGC33抗体およびソラフェニブの抗腫瘍効果が腫瘍体積の変化に基づいて示されたグラフである。
【図3】図3は、ヒト肝癌細胞株HepG2細胞移植マウスモデルに対するhGC33抗体およびソラフェニブの抗腫瘍効果が腫瘍体積の変化に基づいて示されたグラフである。
【図4】図4は、hGC33抗体およびソラフェニブによるヒト肝癌細胞株HepG2細胞移植マウスモデルの体重減少に対する効果がモデルの体重の推移によって示されたグラフである。
【図5】図5は、ヒト肝癌細胞株HepG2細胞移植マウスモデルに対するpH7pL16抗体およびソラフェニブの抗腫瘍効果が腫瘍体積の変化に基づいて示されたグラフである。
【図6】図6はpH7pL16抗体およびソラフェニブによるヒト肝癌細胞株HepG2細胞移植マウスモデルの体重減少に対する効果が当該モデルの体重の推移によって示されたグラフである。
【図7】図7は、ヒト肝癌細胞株HepG2細胞移植マウスモデルに対するhGC33抗体およびスニチニブの抗腫瘍効果が腫瘍体積の変化(平均+標準偏差)に基づいて示されたグラフである。
【図8】図8は、本発明において好適に用いられるヒト化抗体のH鎖可変領域およびL鎖可変領域のアミノ酸配列を示す。
【図9】図9は、本発明において好適に用いられるヒト化抗体のH鎖可変領域およびL鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、化学療法剤およびグリピカン3抗体を組み合わせてなる、肝癌を治療または予防するための医薬組成物を提供する。
【0017】
本発明において、「化学療法剤およびグリピカン3抗体を組み合わせてなる、肝癌を治療または予防するための医薬組成物」とは、化学療法剤およびグリピカン3抗体を、肝癌の治療または予防において同時に、別々に、または、順次に投与するために組み合わせた医薬組成物を意味する。本発明の医薬組成物は、化学療法剤およびグリピカン3抗体が共に含有される配合剤の形で提供することができる。また、化学療法剤を含有する薬剤とグリピカン3抗体を含有する薬剤とが別々に提供され、これらの薬剤が、同時に、別々に、または順次に使用されてもよい。さらに、化学療法剤を含有する薬剤とグリピカン3抗体を含有する薬剤から構成されるキットとして提供してもよい。
【0018】
上記の医薬組成物において、化学療法剤とグリピカン3抗体とが別々の薬剤に含有されて提供される場合には、これらの薬剤の剤型は、同じ剤型であっても異なる剤型であってもよい。例えば、双方が非経口製剤、注射剤、点滴剤、静脈内点滴剤のうちの一つであって互いに異なる剤型であってもよく、双方が非経口製剤、注射剤、点滴剤、静脈内点滴剤のうちの一つであって同種の剤型であってもよい。また、上記の医薬組成物には、さらに異なる一種以上の製剤を組み合わせてもよい。
【0019】
別の観点においては、本発明は、グリピカン3抗体を有効成分として含む、化学療法剤と併用して肝癌を治療または予防するための医薬組成物を提供する。グリピカン3抗体を有効成分として含む本発明の医薬組成物が化学療法剤と併用される際には、化学療法剤と同時に投与され得るし、化学療法剤の投与前または投与後に投与され得る。化学療法剤の投与前または投与後にグリピカン3抗体が投与される場合には、被験者における当該化学療法剤の残留濃度を測定することにより、その投与時期が最適化され得る。当該濃度は、被験者から採取された試料を各種のクロマトグラフィー等の分離装置を用いた当業者において公知の分析方法に基づいて決定され得る。
【0020】
別の観点においては、本発明は、化学療法剤を有効成分として含む、グリピカン3抗体と併用して肝癌を治療または予防するための医薬組成物を提供する。化学療法剤を有効成分として含む医薬組成物がグリピカン3抗体と併用される際には、グリピカン3抗体と同時に投与され得るし、グリピカン3抗体の投与前または投与後に投与され得る。グリピカン3抗体の投与前または投与後に化学療法剤が投与される場合には、被験者における当該グリピカン3抗体の残留濃度を測定することにより、その投与時期が最適化され得る。当該濃度は、被験者から採取された試料を当業者において公知の後述されるELISA等の免疫的測定法に基づいて決定され得る。
【0021】
化学療法剤
本発明に用いられる化学療法剤には、癌の化学療法に用いられているかまたは有用であることが示唆されているいずれの化学療法剤も含まれる。化学療法剤は、局所注入されるものであってもよいし、全身的に投与されるものであってもよい。局所注入は、当業者に公知の方法を用いて行うことができる。例えば、TAE(肝動脈塞栓療法)では、腫瘍への栄養供給経路となる肝動脈に油性造影剤(リピオドール)と抗癌剤、塞栓物質(ゼルフォーム)を混和したものが注入され、栄養動脈が閉塞されることにより、選択的に肝細胞癌を壊死に導く。一方、全身化学療法においては、5−FU(フルオロウラシル)、UFT(ウラシルとテガフール)、MMC(マイトマイシンC)、DHAD(ミトキサントロン)、ADR(アドリアマイシン)(別名としてDXR(ドキソルビシン)とも指称される。)、EPI(エピルビシン)、CDDP(シスプラチン)などが単独で使用されるほか、適宜IFN(インターフェロン)と併用される。さらに、ラパチニブ等のキナーゼを阻害する作用機序を有する化学療法剤も、本発明において化学療法剤として好適に使用される。さらに、キナーゼを阻害する作用機序を有するソラフェニブも、本発明の化学療法剤として好適に使用される。また、作用機序のいかんに関わらず、肝癌を有する被験者に投与された結果、当該被験者に下痢または便秘、貧血、(致死的な重篤度の)感染や敗血症を引き起こすほどの免疫系の抑制、出血、心毒性、肝毒性、腎毒性、食欲不振、体重減少等の化学療法剤に固有の副作用をもたらす化学療法剤は、本発明において化学療法剤として好適に用いられる。
【0022】
ソラフェニブ(4-[4-[[4-chloro-3-(trifluoromethyl)phenyl]carbamoylamino]phenoxy]-N-methylpyridine-2-carboxamide)は、分子量464.7のモル重量を有する経口で活性型の低分子化合物であり、そのトシル酸(トルエンスルホン酸)塩であるSorafenib tosylate(BAY43−9006)は肝癌の全身化学療法に用いられる治療剤として欧州および米国において承認されている。また、肝細胞癌の臨床試験において肝細胞癌に対して抗腫瘍活性を奏することが示されたスニチニブ(SU11248)もまた、本発明に用いられる化学療法剤としてソラフェニブ同様適宜採用され得る。ソラフェニブ又はスニチニブは薬学上許容しうるその塩としても好適に用いられる。塩としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩;メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸塩等のスルホン酸塩;ギ酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、コハク酸塩、マロン酸塩、グルコン酸塩、マンデル酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、フルオロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酒石酸塩、プロピオン酸塩、グルタル酸塩等のカルボン酸塩;リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、ルビジウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、トリアルキルアンモニウム塩、テトラアルキルアンモニウム塩等のアンモニウム塩等が好適に挙げられる。中でもトシル酸(トルエンスルホン酸)塩である、BAY43−9006もまた好適に用いられる。
【0023】
本発明で使用される化学療法剤の投与経路は、経口または非経口のいずれでも好適に使用されるが、好ましくは経口投与が好適に使用される。経口投与のために使用される剤型としては、例えば、液剤、散剤、顆粒剤、錠剤、腸溶剤およびカプセル剤等の任意の剤型から適宜選択され得る。こうした剤型を有する化学療法剤は当業者に公知の方法で製剤化される。例えば、薬理学上許容される担体もしくは媒体、具体的には、滅菌水や生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、結合剤などと適宜組み合わされ、一般に認められた製薬実施に要求される単位用量形態で混和された後に、凍結乾燥、打錠成型等の製剤化作業によって製剤化される。
【0024】
化学療法剤は、水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液または懸濁液剤等の注射剤の形で、非経口的にも使用され得る。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な用量を投与し得るように適宜選択される。注射のための無菌組成物は注射用蒸留水のようなベヒクルを用いて通常の製剤実施に従って処方され得る。注射用の水溶液としては、例えば生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液、例えばD−ソルビトール、D−マンノース、D−マンニトール、塩化ナトリウムが例示され、適当な溶解補助剤、例えばアルコール、具体的にはエタノール、ポリアルコール、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート80(TM) 、HCO−50と適宜併用され得る。油性液としてはゴマ油、大豆油が例示され、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールと併用してもよい。また、緩衝剤、例えばリン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液、無痛化剤、例えば、塩酸プロカイン、安定剤、例えばベンジルアルコール、フェノール、酸化防止剤と好適に配合され得る。
【0025】
治療用抗体
本発明の医薬組成物において用いられる治療用抗体は、肝癌細胞において発現するタンパク質に結合するものであって、当該細胞に対して細胞傷害活性を発揮することができる抗体であれば、いかなる抗体も好適に使用され得る。抗体の標的分子として好適なタンパク質は、肝癌細胞の細胞表面に発現しているタンパク質である。標的分子が細胞表面に発現している分子数が多いほうが抗体治療の効果が得られる上で好ましいが、当該効果は必ずしも分子数に依存するものではない。すなわち、正常細胞での発現との比較において癌細胞に特異的に発現している分子を標的として選択することが好ましい。そのようなタンパク質の例としてグリピカン3が好適に挙げられる。
【0026】
グリピカン3は細胞表面上に存在するヘパラン硫酸プロテオグリカンのファミリーの1つであり、発生における細胞分裂や、癌細胞の増殖に関与している可能性があることが示唆されているが、その機能はまだよく解明されていない。グリピカン3に結合するある種の抗体が、ADCC活性およびCDC活性により細胞増殖抑制作用を奏することが見いだされている(WO2003/000883:特許文献1)。また、特定のエピトープに結合するGC33抗体が肝癌細胞に対してより強いADCC活性およびCDC活性を発揮することが知られている(WO2006/006693:特許文献2)。本発明の肝癌治療剤においては、グリピカン3抗体が好適に使用され得る。GC33抗体(WO2006/006693)はこうした好適なグリピカン3抗体として例示され得る。GC33抗体の可変領域のH鎖およびL鎖のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号1および2に示す。
【0027】
グリピカン3抗体の作製方法は公知の方法に基づいてハイブリドーマから取得され得る(WO2006006693)。また、グリピカン3抗体は遺伝子工学的に作製され得る。すなわち、抗体遺伝子をハイブリドーマからクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し、遺伝子組換え技術を用いて産生させた組換え型の抗体を作製することも可能である( 例えば、Vandamme,A.M.et al.,Eur.J.Biochem.(1990), 192, 76 7- 75参照)。具体的には、抗グリピカン3 抗体を産生するハイブリドーマから、抗グリピカン3 抗体の可変(V)領域をコードするmRNAが単離される。mRNAの単離は、公知の方法、例えば、グアニジン超遠心法(Chirgwin, J. M. et al., Biochemistry(1979)18, 5294-5299)、AGPC法(Chomczynski, P.et al., Anal. Biochem.(1987)162, 156-159)等によって該ハイブリドーマ細胞から調製した後に、mRNA Purification Kit (Pharmacia製)等を使用して目的のmRNAが調製され得る。また、QuickPrep mRNA Purification Kit (Pharmacia製)を用いることによりmRNAが該ハイブリドーマから直接調製され得る。
【0028】
得られたmRNAから逆転写酵素を用いて抗体V領域のcDNAが合成される。cDNAの合成は、AMV Reverse Transcriptase First-strand cDNA Synthesis Kit(生化学工業)等を用いて実施され得る。また、cDNAの合成および増幅のために、5'-Ampli FINDER RACE Kit(Clontech製)およびPCRを用いた5’−RACE法(Frohman, M. A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA(1988)85, 8998-9002、Belyavsky, A.et al., Nucleic Acids Res.(1989)17, 2919-2932)等もまた好適に使用され、こうしたcDNAの合成の過程においてcDNAの両末端に後述する適切な制限酵素サイトが導入される。得られたcDNAの配列を確認した後、目的とするグリピカン3抗体のV領域をコードするcDNAが所望の抗体定常領域(C領域)をコードするDNAとインフレームで融合されるように、当該C領域を含んでなる発現ベクターに組み込まれる。
【0029】
本発明で使用されるグリピカン3抗体を製造するには、抗体遺伝子を発現制御領域、例えば、エンハンサー、プロモーターによる制御の下で発現するように発現ベクターに組み込む方法が好適に使用され得る。次いで、この発現ベクターを用いて好適に宿主細胞を形質転換することによって、グリピカン3抗体をコードするDNAを発現する組換え細胞が取得される。
【0030】
抗体遺伝子の発現は、抗体重鎖(H鎖)または軽鎖(L鎖)をコードするDNAを別々に発現ベクターに組み込んで宿主細胞を同時形質転換させてもよいし、あるいはH鎖およびL鎖をコードするDNAを単一の発現ベクターに組み込んで宿主細胞を形質転換させてもよい(WO1994011523)。
【0031】
抗体遺伝子を一旦単離し、適当な宿主に導入して抗体を作製する場合には、適当な宿主と発現ベクターの組み合わせが好適に使用され得る。真核細胞を宿主として使用する場合、動物細胞、植物細胞、真菌細胞が好適に使用される。動物細胞としては、(1)哺乳類細胞、例えば、CHO、COS、ミエローマ、BHK (baby hamster kidney )、Hela、Vero、(2)両生類細胞、例えば、アフリカツメガエル卵母細胞、または(3)昆虫細胞、例えば、sf9、sf21、Tn5等が好適に例示される。植物細胞としては、ニコティアナ(Nicotiana )属、例えばニコティアナ・タバカム(Nicotiana tabacum)由来の細胞が例示され、これらが例えばカルス培養される。真菌細胞としては、酵母、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces )属、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces serevisiae)、糸状菌、例えば、アスペルギルス(Aspergillus )属、例えばアスペスギルス・ニガー(Aspergillus niger )等が例示される。原核細胞を使用する場合、細菌細胞を用いる産生系が好適に使用される。細菌細胞としては、大腸菌(E. coli )、枯草菌が例示される。これらの細胞中に、目的とする抗体遺伝子を含んでなる発現ベクターを形質転換により導入し、形質転換された細胞をin vitroで培養することにより所望の抗体が、当該形質転換細胞の培養物から取得され得る。
【0032】
また、組換え型抗体の産生には上記宿主細胞だけではなく、トランスジェニック動物も好適に使用され得る。例えば、抗体遺伝子は、乳汁中に固有に産生されるタンパク質(ヤギβカゼインなど)をコードする遺伝子の内部にインフレームで挿入することによって融合遺伝子として構築され得る。抗体遺伝子が挿入された融合遺伝子を含むDNA断片はヤギの胚へ注入され、該注入胚が雌のヤギへ導入される。胚を受容したヤギから生まれるトランスジェニックヤギまたはその子孫が産生する乳汁から所望の抗体が取得され得る。また、トランスジェニックヤギから産生される所望の抗体を含む乳汁量を増加させるために、ホルモンがトランスジェニックヤギに適宜使用され得る(Ebert, K.M. et al., Bio/Technology(1994)12, 699-702)。
【0033】
本発明では、ヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変した遺伝子組換え型抗体、例えば、キメラ(Chimeric)抗体、ヒト化(Humanized)抗体等が使用され得る。これらの改変抗体は、公知の方法を用いて製造され得る。キメラ抗体は、ヒト以外の哺乳動物、例えば、マウス抗体の重鎖、軽鎖の可変領域とヒト抗体の重鎖、軽鎖の定常領域からなる抗体であり、マウス抗体の可変領域をコードするDNAをヒト抗体の定常領域をコードするDNAと連結させ、これを適当な宿主で発現させることにより、当該キメラ抗体が取得され得る。ヒト化抗体の好適な例は、hGC33抗体(WO2006/006693)である。hGC33抗体の可変領域のH鎖およびL鎖のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号3および4に示す。
【0034】
キメラ抗体およびヒト化抗体のC領域には、ヒト抗体のものが使用され、例えばH鎖としては、Cγ1、Cγ2、Cγ3、Cγ4が、L鎖としてはCκ、Cλが使用され得る。これらの配列は公知である。また、抗体またはその産生の安定性を改善するために、ヒト抗体C領域を修飾され得る。
【0035】
キメラ抗体は、ヒト以外の哺乳動物由来抗体のV領域とヒト抗体由来のC領域とから構成される。一方、ヒト化抗体は、ヒト以外の哺乳動物由来抗体の相補性決定領域(CDR;complementarity determining region)と、ヒト抗体由来のフレームワーク領域(FR;framework region)およびヒト抗体由来のC領域とから構成される。ヒト化抗体はヒト体内における抗原性が低下されているため、本発明の治療剤の有効成分として有用である。
【0036】
ヒト化抗体は、再構成(reshaped)ヒト抗体とも称され、ヒト以外の哺乳動物、たとえばマウス抗体のCDRをヒト抗体のCDRに換えて移植したものであり、その一般的な遺伝子組換え手法も知られている。具体的には、マウス抗体のCDRとヒト抗体のFRをインフレームで融合するように設計されたDNA配列が、末端部にオーバーラップする部分を有するように設計された数個のオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いたPCR法により合成される。上記のように得られたDNAとヒト抗体C領域をコードするDNAとをインフレームで融合するように発現ベクター中に挿入し、適当な宿主細胞で発現させることにより、ヒト化抗体を製造することができる(EP239400 、WO 96002576参照)。
【0037】
ヒト化抗体の作製において用いられるヒト抗体由来のFR領域は、CDRを介して連結されたときに当該CDRが良好な抗原結合部位を形成するように選択する。上記のように作製されたヒト化抗体の抗原への結合活性が定性的または定量的に測定され、評価されることによって、ヒト抗体のFRが好適に選択され得る。必要に応じ、再構成ヒト抗体のCDRが適切な抗原結合部位を形成するように、抗体のV領域中のFRのアミノ酸が置換され得る。上記のアミノ酸置換は慣用のPCR法により容易に導入される。アミノ酸を置換した変異型抗体の抗原への結合活性が測定され評価されることによって、所望の性質を有する変異FR配列が選択される(Sato, K.et al., Cancer Res, 1993, 53, 851-856)。
【0038】
また、ヒト抗体の取得方法も知られている。例えば、ヒトリンパ球をin vitroで所望の抗原または所望の抗原を発現する細胞で感作し、感作リンパ球がヒトミエローマ細胞、例えばU266と融合されることによって、抗原への結合活性を有する所望のヒト抗体が取得され得る(特公平1-59878参照)。また、ヒト抗体遺伝子の全てのレパートリーを有するトランスジェニック動物を所望の抗原で免疫することにより、所望のヒト抗体が取得され得る(国際公開WO1993012227、WO199203918、WO1994002602、WO1994025585、WO1996034096、WO1996033735参照)。さらに、ヒト抗体ライブラリーを用いて、パンニングによりヒト抗体を取得する技術も知られている。例えば、ヒト抗体のV領域を一本鎖抗体(scFv)としてファージディスプレイ法によりファージの表面に発現させ、抗原に結合するファージが選択され得る。選択されたファージの遺伝子を解析することにより、抗原に結合するヒト抗体のV領域をコードするDNA配列が決定され得る。抗原に結合するscFvのDNA配列が決定され、当該V領域配列が所望のヒト抗体C領域の配列とインフレームで融合された融合タンパク質を適当な細胞中で発現させることにより、ヒト抗体が取得される。これらの方法は既に公知であり、国際公開WO1992001047、WO1992020791、WO1993006213、WO1993011236、WO1993019172、WO1995001438、WO1995015388を参考に実施され得る。
【0039】
前記のように構築した抗体遺伝子は、公知の方法により発現され、取得され得る。哺乳類細胞が用いられる場合、常用される有用なプロモーター、発現される抗体遺伝子、およびその3’側下流にポリAシグナルが機能的に結合されることによって、当該抗体遺伝子が発現され得る。例えばプロモーター/エンハンサーとしては、ヒトサイトメガロウイルス前期プロモーター/エンハンサー(human cytomegalovirus immediate early promoter/enhancer)が好適に挙げられる。その他の有用なプロモーター/エンハンサーとしては、レトロウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、シミアンウイルス40(SV40)等のウイルスプロモーター/エンハンサー、あるいはヒトエロンゲーションファクター1α(HEF1α)などの哺乳類細胞由来のプロモーター/エンハンサー等が好適に挙げられる。
【0040】
SV40プロモーター/エンハンサーを使用する場合はMulliganらの方法(Nature(1979)277, 108)により、また、HEF1αプロモーター/エンハンサーを使用する場合はMizushimaらの方法(Nucleic Acids Res.(1990)18, 5322)により、容易に遺伝子発現が実施され得る。
【0041】
大腸菌が用いられる場合、常用される有用なプロモーター、抗体分泌のためのシグナル配列および発現させる抗体遺伝子が機能的に結合されることによって、当該遺伝子が発現され得る。プロモーターとしては、例えばlacZプロモーター、araBプロモーターが好適に挙げられる。lacZプロモーターを使用する場合はWardらの方法(Nature(1989)341, 544-546 ; FASEBJ.(1992)6, 2422-2427)により、あるいはaraBプロモーターを使用する場合はBetterらの方法(Science(1988)240, 1041-1043)により当該遺伝子が発現される。
【0042】
抗体分泌のためのシグナル配列としては、当該抗体が大腸菌のペリプラズムに産生される場合には、pelBシグナル配列(Lei, S. P. et al J. Bacteriol.(1987)169, 4379)が使用され得る。そして、ペリプラズムに産生された抗体が分離された後、尿素やグアニジン塩酸塩の様なタンパク質変性剤が使用されることによって所望の結合活性を有するように、抗体の構造が組み直される(refolded)。
【0043】
発現ベクターに挿入される複製起源としては、SV40、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、ウシパピローマウイルス(BPV)等の由来のものが好適に用いられ、さらに、宿主細胞系で遺伝子コピー数増幅のため、発現ベクター中に、選択マーカーとしてアミノグリコシドトランスフェラーゼ(APH)遺伝子、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、大腸菌キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Ecogpt)遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)遺伝子等が好適に挿入され得る。
【0044】
本発明で使用される抗体の製造のために、任意の発現系、例えば真核細胞または原核細胞系が使用され得る。真核細胞としては、例えば樹立された哺乳類細胞系、昆虫細胞系などの動物細胞等、ならびに真糸状菌細胞および酵母細胞が好適に挙げられ、原核細胞としては、例えば大腸菌細胞等の細菌細胞が好適に挙げられる。好ましくは、本発明で使用される抗体は、哺乳類細胞、例えばCHO、COS、ミエローマ、BHK、Vero、Hela細胞を用いて発現される。
【0045】
次に、形質転換された宿主細胞がin vitroまたはin vivoで培養されて目的とする抗体が産生される。宿主細胞の培養は公知の方法に従い行う。例えば、培養液として、DMEM、MEM、RPMI1640、IMDMが使用され、牛胎児血清(FCS)等の血清補液が併用され得る。
【0046】
上記のように発現、産生された抗体は、通常のタンパク質の精製で使用されている公知の方法が単独でまたは適宜組み合わせて使用されることによって精製され得る。例えば、プロテインAカラムなどのアフィニティーカラム、クロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、透析等が適宜選択、組み合わされることにより、抗体を分離、精製され得る(Antibodies A Laboratory Manual. Ed Harlow, David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988)。
【0047】
本発明において用いられる抗体として、糖鎖が改変された抗体も好適に使用され得る。抗体の糖鎖を改変することにより、後述する抗体のADCC活性が増強され得ることが知られている。すなわち、抗体が結合する抗原の肝癌細胞における発現がADCC活性を強力に発揮できる程度に高くない場合には、糖鎖が改変された抗体が好適に使用され得る。糖鎖が改変された抗体としては、例えば、グリコシル化が修飾された抗体(WO99/54342など)、糖鎖に付加するフコースが欠損した抗体(WO2000061739、WO2002031140など))、バイセクティングGlcNAcを有する糖鎖を有する抗体(WO2002079255など)などが知られている。
【0048】
抗体がその標的(すなわち、抗原)と結合するか否かは公知の方法を使用することによって好適に評価され得る。具体的には、抗原を発現している細胞に対する抗体の結合活性を測定する方法としては、Antibodies A Laboratory Manual.(Ed Harlow, David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988)中の359−420ページに記載されている方法が挙げられる。即ち、細胞を抗原とするELISAやFACS(fluorescence activated cell sorting)の原理によって好適に評価され得る。ELISAフォーマットにおいては、細胞への抗体の結合活性は、酵素反応によって生成するシグナルレベルを比較することによって定量的に評価される。すなわち、各強制発現細胞を固定化したELISAプレートに被験抗体を加え、細胞に結合した抗体が、被験抗体を認識する酵素標識第2抗体を利用して検出される。あるいはFACSにおいては、被験抗体の希釈系列を作成し、各強制発現細胞に対する抗体結合力価(titer)を決定することにより、細胞に対する結合活性が比較され得る。
【0049】
FACSフォーマットにおいては、ELISAプレート等の担体に結合していない、緩衝液等に懸濁した細胞表面上に発現している抗原と当該抗原に対する抗体との結合を測定する。FACSフォーマットによる測定に使用するフローサイトメーターとしては、例えば、FACSCanto(商標) II, FACSAria(商標), FACSArray(商標), FACSVantage(商標) SE, FACSCalibur(商標) (以上、BD Biosciences)や、EPICS ALTRA HyPerSort, Cytomics FC 500, EPICS XL-MCL ADC, EPICS XL ADC, Cell Lab Quanta / Cell Lab Quanta SC(以上、Beckman Coulter)などが挙げられる。
【0050】
被検抗体の抗原に対する結合活性の好適な測定方法の一例として、抗原を発現する細胞と被検抗体とを反応させ、次にこの細胞を被検抗体を認識するFITC標識した二次抗体で染色後、FACSCalibur(BD) により測定を行い、その蛍光強度をCELL QUEST Software (BD)を用いて解析する方法を挙げることができる。本方法によれば、被検抗体を用いて得られるGeometric Meanの値(被検Geo-Mean値)を、対照抗体を用いて得られる対照Geo-Mean値と比較することによって、被検抗体の結合活性を判定することが出来る。Geo-Mean値 (Geometric Mean) を求める計算式は、CELL QUEST Software User’s Guide (BD biosciences)に記載されている。
【0051】
本発明において用いられる抗体はGC33抗体が結合しうるエピトープに結合することができる抗体も好適に用いられる。本発明において用いられる抗体が当該エピトープに結合できるか否かは、前記記載のFACSやELISAによって試験され得る。試験される被験抗体が、GC33抗体が結合するエピトープと同じエピトープに結合するか、即ちGC33抗体とエピトープを共有か否かは、両者が同じエピトープに対して競合するか否かを測定することにより調べることができる。本発明において、抗体間の競合は、FACSや交叉ブロッキングアッセイなどによって検出することができる。FACSにおいては、まずGC33抗体をGPC3発現細胞に結合させて蛍光シグナルが測定される。次に、候補の競合抗体を反応後にGC33抗体が同じ細胞と反応され、同様にFACSにより解析される。あるいは、GC33抗体と被験競合抗体とが同時に同じ細胞に反応され得る。競合抗体の存在下でGC33抗体のFACSの解析パターンが変化すれば、競合抗体がGC33抗体と同じエピトープを認識することが確認できる。交叉ブロッキングアッセイは、本明細書で具体的に記載される方法の他、例えば、Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Harlow及びDavid Lane編(1988)等に記載されている公知の方法が適宜採用され得る。
【0052】
例えば競合ELISAアッセイは、好ましい交叉ブロッキングアッセイである。具体的には、交叉ブロッキングアッセイにおいては、マイクロタイタープレートのウェル上にGPC3タンパク質を発現した細胞が固定される。候補の競合抗体の存在下、または非存在下で当該ウェルがプレインキュベートされた後に、当該ウェルにGC33抗体が添加される。ウェル中のGPC3タンパク質発現細胞に結合したGC33抗体の量は、同じエピトープへの結合に対して競合する候補競合抗体(被験抗体)の結合能と逆相関している。すなわち同一エピトープに対する被験抗体の親和性が大きくなればなる程、GC33抗体のGPC3タンパク質発現細胞を固定したウェルへの結合量は低下する。あるいは逆に、同一エピトープに対する被験抗体の親和性が大きくなればなる程、被験抗体のGPC3タンパク質発現細胞を固定したウェルへの結合量は増加する。
【0053】
ウェルに結合した抗体量は、予め抗体を標識しておくことによって、容易に測定され得る。たとえば、ビオチン標識された抗体は、アビジンペルオキシダーゼコンジュゲートと適切な基質を使用することにより測定され得る。ペルオキシダーゼなどの酵素標識を利用した交叉ブロッキングアッセイを、特に競合ELISAアッセイという。抗体は、検出あるいは測定が可能な他の標識物質で好適に標識され得る。具体的には、放射標識あるいは蛍光標識などが公知である。
【0054】
更に被験抗体がGC33抗体と異なる種に由来する定常領域を有する場合には、いずれかの種に由来する定常領域を特異的に認識する標識抗体が用いられることによってウェルに結合したいずれかの抗体が測定され得る。あるいは同種由来の抗体であっても、クラスが相違する場合には、各クラスを特異的に識別する抗体によって、ウェルに結合した抗体が好適に測定され得る。
【0055】
候補の競合抗体非存在下で実施されるコントロール試験において得られる結合活性と比較して、候補抗体が、少なくとも20%、好ましくは少なくとも20-50%、さらに好ましくは少なくとも50%、GC33抗体の結合をブロックできるならば、該候補競合抗体はGC33抗体と実質的に同じエピトープに結合するか、又は同じエピトープへの結合に対して競合する抗体である。
【0056】
GC33抗体と実質的に同じエピトープに結合するか、又は同じエピトープへの結合に対して競合する抗体として、本発明の実施例において、
配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するH鎖可変領域;
配列番号9からから23のいずれか一つに記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するL鎖可変領域;
を含む抗体や
配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号26に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するH鎖可変領域;
配列番号28に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するL鎖可変領域;
を含む抗体、又は、
配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号30に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するH鎖可変領域;
配列番号32に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するL鎖可変領域;
を含む抗体等が好適に挙げられるが、これに限定されるものではなく、前記の交叉ブロッキングアッセイ等により適宜選択され得る。本発明において好適に用いられる例示的なヒト化抗体のH鎖可変領域およびL鎖可変領域ならびに各CDRのアミノ酸配列を図8および図9に示す。
【0057】
本発明において用いる抗体は細胞傷害活性を有する。細胞傷害活性とは、抗体がその対応する抗原を発現している標的細胞に対して傷害を与える活性を意味する。抗原がその性質上、抗原と抗体との間に形成される抗原抗体複合体が細胞内に内在化されない抗原である場合には、抗体が発揮する細胞傷害活性として、抗体依存性細胞傷害活性(Antibody−dependent cellular cytotoxicity。以下、「ADCC活性」と指称される。)または補体依存性細胞傷害活性(Complement−dependent cellular cytotoxicity。以下、「CDC活性」と指称される。)が好適に挙げられる。一方、抗原がその性質上、抗原と抗体との間に形成される抗原抗体複合体が細胞内に内在化される抗原である場合には、抗体に化学療法剤、放射性同位元素、または、毒性物質が結合されたコンジュゲート抗体が好適に用いられる。この場合において、抗体が発揮する細胞傷害活性は、コンジュゲート抗体に結合された化学療法剤、放射性同位元素、または、毒性物質が発揮する細胞傷害活性である。
【0058】
本発明において用いられる抗体がADCC活性を発揮するか否か、またはCDC活性を発揮するか否かは、公知の方法により適宜測定され得る(例えば、Current protocols in Immunology, Chapter7. Immunologic studies in humans, Editor, John E, Coligan et al., John Wiley & Sons, Inc.,(1993)等)。
【0059】
具体的には、まず、下記の要領に従って、エフェクター細胞、補体溶液、標的細胞の調製が実施される。
(1)エフェクター細胞の調製
CBA/Nマウスなどから脾臓を摘出し、RPMI1640培地(Invitrogen)中で脾臓細胞が分離される。10%ウシ胎児血清(FBS、HyClone)を含む同培地で洗浄後、細胞濃度を5×106/mlに調製することによって、エフェクター細胞が調製され得る。
(2)補体溶液の調製
Baby Rabbit Complement(CEDARLANE)を10% FBS含有培地(Invitrogen)にて10倍希釈し、補体溶液が調製され得る。
(3)標的細胞の調製
抗原を発現する細胞を、0.2 mCiの51Cr-クロム酸ナトリウム(GEヘルスケアバイオサイエンス)とともに、10% FBS含有DMEM培地中で37℃にて1時間培養することにより該標的細胞を放射性標識できる。抗原を発現する細胞としては、抗原をコードする遺伝子で形質転換された細胞、原発性肝細胞癌、転移性肝細胞癌等が好適に利用され得る。放射性標識後、細胞が10% FBS含有RPMI1640培地にて3回洗浄され、細胞濃度が2×105細胞/mlに調製されることによって、標的細胞が調製される。
【0060】
ADCC活性、またはCDC活性は下記に述べる方法により測定できる。ADCC活性の測定の場合は、96ウェルU底プレート(Becton Dickinson)に、標的細胞と本発明に係る抗体が1ウェル当たり50μlずつ加えられ、氷上にて15分間反応される。その後、エフェクター細胞が1ウェル当たり100 μlずつ加えられる。プレートは炭酸ガスインキュベーター内で4時間インキュベートされる。抗体の終濃度は0または10μg/mlと設定されるが、当該抗体の活性に基づいて適宜調整される。インキュベートの後、1ウェル当たり100μlの上清が回収され、ガンマカウンター(COBRAII AUTO-GAMMA、MODEL D5005、Packard Instrument Company)によって放射活性が測定される。細胞傷害活性(%)は得られた放射活性の値が使用され、(A-C) / (B-C) x 100の計算式に基づいて計算され得る。上記計算式において、Aは各試料における放射活性(cpm)、Bは1% NP-40(nacalai tesque)が加えられた試料における放射活性(cpm)、Cは標的細胞のみを含む試料の放射活性(cpm)を示す。
【0061】
CDC活性の測定の場合は、96ウェル平底プレート(Becton Dickinson)に、標的細胞と、本発明に係る抗体が1ウェル当たり50 μlずつ加えられ、氷上にて15分間反応される。その後、補体溶液が1ウェル当たり100 μlを加えられる。プレートは炭酸ガスインキュベーター内で4時間インキュベートされるが、当該抗体の活性に基づいて適宜調整される。抗体の終濃度は0または3 μg/mlと設定されるが、当該抗体の活性に従って適宜調整される。インキュベートの後、1ウェル当たり100 μlの上清が回収され、ガンマカウンターによって放射活性が測定される。細胞傷害活性はADCC活性の測定に使用された方法と同様に計算され得る。
【0062】
抗体コンジュゲートが発揮する細胞傷害活性は、抗体コンジュゲートに結合された化学療法剤、放射性同位元素、または、毒性物質が発揮する細胞傷害活性が測定されることにより好適に評価され得る。抗体コンジュゲートに結合された化学療法剤、放射性同位元素、または、毒性物質が発揮する細胞傷害活性を測定する場合には、96ウェル平底プレート(Becton Dickinson)に、標的細胞と、本発明に係る抗体コンジュゲートが1ウェル当たり50 μlずつ加えられ、氷上にて15分間反応される。その後、プレートが炭酸ガスインキュベーター内で1から4時間インキュベートされる。抗体の終濃度は0または3 μg/mlと設定されるが、当該抗体コンジュゲートの活性に基づいて適宜調整される。インキュベートの後、100 μlの上清が回収され、ガンマカウンターで放射活性が測定される。細胞傷害活性はADCC活性の測定に使用された方法と同様に計算され得る。
【0063】
本発明に係る抗体に結合させて細胞傷害活性を機能させる化学療法剤としては、たとえば次のような化学療法剤が例示できる。アザリビン(azaribine)、アナストロゾール(anastrozole)、アザシチジン(azacytidine)、ブレオマイシン(bleomycin)、ボルテゾニブ(bortezomib)、ブリスタチン−1(bryostatin-1)、ブスルファン(busulfan)、カンプトテシン(camptothecin)、10−ヒドロキシカンプトテシン(10-hydroxycamptothecin)、カルムスチン(carmustine)、セレブレックス(celebrex)、クロラムブシル(chlorambucil)、シスプラチン(cisplatin)、イリノテカン(irinotecan)、カルボプラチン(carboplatin)、クラドリビン(cladribine)、シクロホスファミド(cyclophosphamide)、シタラビン(cytarabine)、ダカルバジン(dacarbazine)、ドセタキセル(docetaxel)、ダクチノマイシン(dactinomycin)、ダウノマイシングルクロニド(daunomycin glucuronide)、ダウノルビシン(daunorubicin)、デキサメタゾン(dexamethasone)、ジエチルスチルベストロール(diethylstilbestrol)、ドキソルビシン(doxorubicin)、ドキソルビシングルクロニド(doxorubicin glucuronide)、エピルビシン(epirubicin)、エチニルエストラジオール(ethinyl estradiol)、エストラムスチン(estramustine)、エトポシド(etoposide)、エトポシドグルクロニド(etoposide glucuronide)、フロキシウリジン(floxuridine)、フルダラビン(fludarabine)、フルタミド(flutamide)、フルオロウラシル(fluorouracil)、フルオキシメステロン(fluoxymesterone)、ゲムシタビン(gemcitabine)、ヒドロキシプロゲステロンカプロエート(hydroxyprogesterone caproate)、ヒドロキシウレア(hydroxyurea)、イダルビシン(idarubicin)、イフォスファミド(ifosfamide)、ロイコボリン(leucovorin)、ロムスチン(lomustine)、メクロレタミン(mechlorethamine)、メドロキシプロゲステロンアセテート(medroxyprogesterone acetate)、メゲストロールアセテート(megestrol acetate)、メルファラン(melphalan)、メルカプトプリン(mercaptopurine)、メトトレキセート(methotrexate)、ミトキサントロン(mitoxantrone)、ミトラマイシン(mithramycin)、マイトマイシン(mitomycin)、ミトタン(mitotane)、フェニルブチレート(phenylbutyrate)、プレドニゾロン(prednisone)、プロカルバジン(procarbazine)、パクリタキセル(paclitaxel)、ペントスタチン(pentostatin)、セムスチン(semustine)、ストレプトゾシン(streptozocin)、タモキシフェン(tamoxifen)、タキサン類(taxanes)、タキソール(taxol)、テストステロンプロピオネート(testosterone propionate)、サリドマイド(thalidomide)、チオグアニン(thioguanine)、チオテパ(thiotepa)、テニポシド(teniposide)、トポテカン(topotecan)、ウラシルマスタード(uracil mustard)、ビンブラスチン(vinblastine)、ビノレルビン(vinorelbine)、ビンクリスチン(vincristine)。
【0064】
本発明において、好ましい化学療法剤は、低分子の化学療法剤である。低分子の化学療法剤は、抗体への結合の後も、抗体の機能に干渉する可能性が低い。本発明において、低分子の化学療法剤は、通常100〜2000、好ましくは200〜1000の分子量を有する。ここに例示した化学療法剤は、いずれも低分子の化学療法剤である。これらの本発明における化学療法剤には、生体内で活性な化学療法剤に変換されるプロドラッグが含まれる。プロドラッグは酵素的な変換によっても、非酵素的な変換によっても好適に活性化され得る。
【0065】
また、リシン(ricin)、アブリン(abrin)、リボヌクレアーゼ、オンコナーゼ(onconase)、DNase I、Staphylococcal エンテロトキシン-A、ヤマゴボウ(pokeweed )抗ウイルス蛋白質、ゲロニン(gelonin)、ジフテリア毒素、Pseudomonas 外毒素、Pseudomonas 内毒素、L-アスパラギナーゼ、PEG L-アスパラギナーゼなどの毒性ペプチドを用いて、抗体が好適に修飾され得る。また別の態様では、一または二以上の低分子化学療法剤と毒性ペプチドをそれぞれ組み合わせて抗体の修飾に使用され得る。本発明に係る抗体と上記の低分子化学療法剤との結合は共有結合または非共有結合が好適に利用され得る。これら化学療法剤を結合した抗体の作製方法は公知である。
【0066】
更に、タンパク質性の薬剤や毒素は、遺伝子工学的な手法によって好適に抗体と結合され得る。具体的には、たとえば上記毒性ペプチドをコードするDNAと本発明に係る抗体をコードするDNAをインフレームで融合させて、適切な宿主細胞で発現させることにより、毒性ペプチドを結合した本発明に係る抗体が融合タンパク質として好適に得られる。抗体との融合タンパク質を得る場合、一般に、抗体のC末端側にタンパク質性の薬剤や毒素が配置される。抗体と、タンパク質性の薬剤や毒素の間には、ペプチドリンカーが好適に介在され得る。
【0067】
医薬組成物
本発明において、肝癌治療に有効な、化学療法剤およびグリピカン3抗体を組み合わせてなる、肝癌を治療または予防するための医薬組成物または当該医薬組成物を用いる治療方法が提供される。また、本発明の別の態様においては、グリピカン3抗体を使用することにより、化学療法剤による肝癌患者に対する治療に際して、当該化学療法剤の治療効果を増強し、かつ、当該化学療法剤に起因する副作用を低減することを可能とする方法が提供される。ここで、治療効果の増強とは、治療の奏功率が上昇すること、治療のために投与される化学療法剤の量が低減すること、および/または、化学療法剤による治療期間が短くなることをいう。また、本発明の別の態様においては、化学療法剤およびグリピカン3抗体を有効成分として含む、肝癌を治療または予防するための医薬組成物を製造するためのグリピカン3抗体の使用方法が提供される。さらに、本発明は化学療法剤、および、グリピカン3抗体を用いることを特徴とする、肝癌患者に対する治療または予防の方法を提供する。
【0068】
本発明において、化学療法剤および/またはグリピカン3抗体を有効成分として含むとは、化学療法剤および/またはグリピカン3抗体を主要な活性成分として含むという意味であって、化学療法剤および/またはグリピカン3抗体の含有率を制限するものではない。また、「治療」という用語は本発明に係る医薬組成物が被験者に投与されることによって、肝癌細胞が死滅またはその細胞数が減少すること、肝癌細胞の増殖が抑制されること、肝癌に起因する様々な症状が改善されることを意味するものである。また、「予防」という語は、減少した肝癌細胞が再度増殖することによりその数の増加を防止すること、増殖が抑制された肝癌細胞の再増殖を防止することを意味する。
【0069】
本発明に係る治療用抗体の投与方法は、経口、非経口投与のいずれかによって実施され得る。特に好ましくは非経口投与による投与方法であり、係る投与方法としては具体的には、注射投与、経鼻投与、経肺投与、経皮投与などが好適に例示される。注射投与の例としては、例えば、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射などによって本発明の治療用抗体が全身または局部的に投与され得る。また、投与方法は、患者の年齢、症状により適宜選択され得る。投与量としては、例えば、一回の投与につき体重1 kgあたり0.0001mgから1000mgの範囲で投与量が選択され得る。あるいは、例えば、患者あたり0.001から100000mg/bodyの範囲で投与量が選択され得る。しかしながら、本発明の治療用抗体はこれらの投与量に制限されるものではない。
【0070】
本発明における化学療法剤とグリピカン3抗体との併用とは、化学療法剤とグリピカン3抗体とが共に投与または使用(以下、単に「投与」と指称される。)されることを意味するものであって、投与の順番や投与間隔等が限定されて解釈されるものでない。また、本発明の化学療法剤とグリピカン3抗体とが組み合わされたキットとしても使用され得る。さらに、本発明にしたがって、化学療法剤とグリピカン3抗体が併用される場合には、いずれか一方が単独で用いられる投与量よりも、所望により各々が少ない投与量で投与され得る。
【0071】
本発明に係る化学療法剤とグリピカン3抗体の投与の順番は、グリピカン3抗体の投与後に化学療法剤が投与され得るし、化学療法剤とグリピカン3抗体とが同時に投与され得るし、また、化学療法剤の投与後にグリピカン3抗体が投与され得る。
【0072】
本発明に係る化学療法剤とグリピカン3抗体がそれぞれ投与される場合には、化学療法剤とグリピカン3抗体の投与間隔は特に限定されず、投与経路や剤型等の要因が考慮されて設定され得る。例えば、0時間〜168時間であり、好ましくは0時間〜72時間であり、また好ましくは0〜24時間であり、さらに好ましくは0時間〜12時間である。また、投与経路や剤型等の要因のほか、本発明に係る化学療法剤とグリピカン3抗体の被験者におけるそれぞれの残留濃度も参酌され得る。すなわち、グリピカン3抗体の投与前に化学療法剤が投与される場合には、グリピカン3抗体による所望の効果が得られるような、被験者における当該化学療法剤の残留濃度が検出される時点で、グリピカン3抗体が投与され得る。当該濃度は、被験者から採取された試料を各種のクロマトグラフィー等の分離装置を用いた当業者において公知の分析方法で分析した結果に基づいて決定され得る。
【0073】
これとは逆に、化学療法剤の投与前にグリピカン3抗体が投与される場合には、化学療法剤による所望の効果が得られるような、被験者における当該グリピカン3抗体の残留濃度が検出される時点で、化学療法剤が投与され得る。当該濃度は、被験者から採取された試料を当業者において公知のELISA等の免疫的測定法で分析した結果に基づいて決定され得る。
【0074】
本発明の治療用抗体は、常法に従って製剤化され(例えば、Remington's Pharmaceutical Science, latest edition, Mack Publishing Company, Easton, U.S.A)、医薬的に許容される担体や添加物が共に含まれ得る。例えば界面活性剤、賦形剤、着色料、着香料、保存料、安定剤、緩衝剤、懸濁剤、等張化剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤等が挙げられるが、これらに制限されず、その他常用の担体が適宜使用され得る。具体的には、軽質無水ケイ酸、乳糖、結晶セルロース、マンニトール、デンプン、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、中鎖脂肪酸トリグリセライド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、白糖、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩類等が好適に挙げられる。
【0075】
本発明の種々の態様を以下に示す;
[1]化学療法剤およびグリピカン3抗体を組み合わせてなる、肝癌を治療または予防するための医薬組成物、
[2]前記医薬組成物が配合剤であることを特徴とする、[1]に記載の医薬組成物、
[3]化学療法剤およびグリピカン3抗体が併用されることを特徴とする、[1]に記載の医薬組成物、
[4]化学療法剤とグリピカン3抗体とが同時または順次に投与されることを特徴とする[3]に記載の医薬組成物、
[5]化学療法剤とグリピカン3抗体とが別々に投与されることを特徴とする[3]に記載の医薬組成物、
[6]グリピカン3抗体を有効成分として含む、化学療法剤と併用して肝癌を治療または予防するための医薬組成物、
[7]グリピカン3抗体が化学療法剤と同時に投与されることを特徴とする、[6]に記載の医薬組成物、
[8]グリピカン3抗体が化学療法剤の投与前または投与後に投与されることを特徴とする、[6]に記載の医薬組成物、
[9]化学療法剤を有効成分として含む、グリピカン3抗体と併用して肝癌を治療または予防するための医薬組成物、
[10]化学療法剤がグリピカン3抗体と同時に投与されることを特徴とする、[9]に記載の医薬組成物、
[11]化学療法剤がグリピカン3抗体の投与前または投与後に投与されることを特徴とする、[9]に記載の医薬組成物、
[12]化学療法剤がキナーゼ阻害剤であることを特徴とする、[1]から[11]のいずれかに記載の医薬組成物、
[13]化学療法剤がマルチキナーゼ阻害剤であることを特徴とする[12]に記載の医薬組成物、
[14]化学療法剤がソラフェニブ(BAY43−9006)であることを特徴とする[12]又は[13]に記載の医薬組成物、
[15]化学療法剤がスニチニブであることを特徴とする[12]又は[13]に記載の医薬組成物、
[16]グリピカン3抗体が細胞傷害活性を有する抗体であることを特徴とする[1]から[15]のいずれかに記載の医薬組成物、
[17]グリピカン3抗体が;
配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するH鎖可変領域;
配列番号8に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[1]から[16]のいずれかに記載の医薬組成物、
[18]グリピカン3抗体が、第2の抗体が結合しうるエピトープに結合することができる抗体であって、前記第2の抗体はそれぞれ配列番号5,6,および7に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,2,および3を有するH鎖可変領域,およびそれぞれ配列番号8,24,および25に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,2,および3を有するL鎖可変領域を含むことを特徴とする抗体である、[1]から[17]のいずれかに記載の医薬組成物、
[19]グリピカン3抗体が;
配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するH鎖可変領域;
配列番号9から23のいずれか一つに記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[1]から[16]又は[18]のいずれかに記載の医薬組成物、
[20]グリピカン3抗体が;
配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号26に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するH鎖可変領域;
配列番号28に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[1]から[16]又は[18]のいずれかに記載の医薬組成物、
[21]グリピカン3抗体が;
配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号30に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するH鎖可変領域;
配列番号32に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[1]から[16]又は[18]のいずれかに記載の医薬組成物、
[22]グリピカン3抗体がヒト化抗体である[1]から[21]のいずれかに記載の医薬組成物、
[23]グリピカン3抗体が;
配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含むH鎖可変領域;
配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含むL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[22]に記載の医薬組成物、
[24]グリピカン3抗体が;
配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含むH鎖可変領域;
配列番号4に記載されるアミノ酸配列のうち、34番目のGlyが異なるアミノ酸に置換されているアミノ酸配列を含むL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[22]に記載の医薬組成物、
[25]グリピカン3抗体が;
配列番号27に記載されるアミノ酸配列を含むH鎖可変領域;
配列番号29に記載されるアミノ酸配列を含むL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[22]に記載の医薬組成物、
[26]グリピカン3抗体が;
配列番号31に記載されるアミノ酸配列を含むH鎖可変領域;
配列番号33に記載されるアミノ酸配列を含むL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[22]に記載の医薬組成物、
[27]治療用抗体を有効成分として含有する、化学療法剤による肝癌治療の結果生じる副作用の低減剤、
[28]化学療法剤がキナーゼ阻害剤であることを特徴とする[27]に記載の副作用の低減剤、
[29]化学療法剤がマルチキナーゼ阻害剤であることを特徴とする[27]又は[28]に記載の副作用の低減剤、
[30]化学療法剤がソラフェニブ(BAY43−9006)であることを特徴とする[28]又は[29]に記載の副作用の低減剤、
[31]化学療法剤がスニチニブであることを特徴とする[28]又は[29]に記載の副作用の低減剤、
[32]副作用が体重減少であることを特徴とする[27]から[31]のいずれかに記載の副作用の低減剤、
[33]治療用抗体がグリピカン3抗体であることを特徴とする[27]から[32]のいずれかに記載の副作用の低減剤、
[34]グリピカン3抗体が細胞傷害活性を有する抗体であることを特徴とする[33]に記載の副作用の低減剤、
[35]グリピカン3抗体が;
配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するH鎖可変領域;
配列番号8に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする[33]又は[34]に記載の副作用の低減剤、
[36]グリピカン3抗体が、第2の抗体が結合しうるエピトープに結合することができる抗体であって、前記第2の抗体はそれぞれ配列番号5,6,および7に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,2,および3を有するH鎖可変領域,およびそれぞれ配列番号8,24,および25に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,2,および3を有するL鎖可変領域を含むことを特徴とする抗体である、[33]から[35]のいずれかに記載の副作用の低減剤、
[37]グリピカン3抗体が;
配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するH鎖可変領域;
配列番号9から23のいずれか一つに記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[33]、[34]又は[36]のいずれかに記載の副作用の低減剤、
[38]グリピカン3抗体が;
配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号26に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するH鎖可変領域;
配列番号28に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[33]、[34]又は[36]のいずれかに記載の副作用の低減剤、
[39]グリピカン3抗体が;
配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号30に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するH鎖可変領域;
配列番号32に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[33]、[34]又は[36]のいずれかに記載の副作用の低減剤、
[40]グリピカン3抗体がヒト化抗体である[33]から[39]のいずれかに記載の副作用の低減剤、
[41]グリピカン3抗体が;
配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含むH鎖可変領域;
配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含むL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[40]に記載の副作用の低減剤、
[42]グリピカン3抗体が;
配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含むH鎖可変領域;
配列番号4に記載されるアミノ酸配列のうち、34番目のGlyが異なるアミノ酸に置換されているアミノ酸配列を含むL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[40]に記載の副作用の低減剤、
[43]グリピカン3抗体が;
配列番号27に記載されるアミノ酸配列を含むH鎖可変領域;
配列番号29に記載されるアミノ酸配列を含むL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[40]に記載の副作用の低減剤、
[44]グリピカン3抗体が;
配列番号31に記載されるアミノ酸配列を含むH鎖可変領域;
配列番号33に記載されるアミノ酸配列を含むL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[40]に記載の副作用の低減剤、
[45]グリピカン3抗体を有効成分として含む、化学療法剤による肝癌治療の効果を増強させるための医薬組成物、
[46]グリピカン3抗体が化学療法剤と同時に投与されることを特徴とする、[45]に記載の医薬組成物、
[47]グリピカン3抗体が化学療法剤の投与前または投与後に投与されることを特徴とする、[45]に記載の医薬組成物、
[48]化学療法剤がキナーゼ阻害剤であることを特徴とする[45]から[47]のいずれかに記載の医薬組成物、
[49]化学療法剤がマルチキナーゼ阻害剤であることを特徴とする[48]に記載の医薬組成物、
[50]化学療法剤がソラフェニブ(BAY43−9006)であることを特徴とする[45]から[49]のいずれかに記載の医薬組成物、
[51]化学療法剤がスニチニブであることを特徴とする[45]から[49]のいずれかに記載の医薬組成物、
[52]グリピカン3抗体が細胞傷害活性を有する抗体であることを特徴とする[45]から[51]のいずれかに記載の医薬組成物、
[53]グリピカン3抗体が;
配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するH鎖可変領域;
配列番号8に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする[45]から[52]のいずれかに記載の医薬組成物、
[54]グリピカン3抗体が、第2の抗体が結合しうるエピトープに結合することができる抗体であって、前記第2の抗体はそれぞれ配列番号5,6,および7に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,2,および3を有するH鎖可変領域,およびそれぞれ配列番号8,24,および25に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,2,および3を有するL鎖可変領域を含むことを特徴とする抗体である、[45]から[53]のいずれかに記載の医薬組成物、
[55]グリピカン3抗体が;
配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するH鎖可変領域;
配列番号9から23のいずれか一つに記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[45]から[52]又は[54]のいずれかに記載の医薬組成物、
[56]グリピカン3抗体が;
配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号26に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するH鎖可変領域;
配列番号28に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[45]から[52]又は[54]のいずれかに記載の医薬組成物、
[57]グリピカン3抗体が;
配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号30に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するH鎖可変領域;
配列番号32に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[45]から[52]又は[54]のいずれかに記載の医薬組成物、
[58]グリピカン3抗体がヒト化抗体である[45]から[57]のいずれかに記載の医薬組成物、
[59]グリピカン3抗体が;
配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含むH鎖可変領域;
配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含むL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[58]に記載の医薬組成物、
[60]グリピカン3抗体が;
配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含むH鎖可変領域;
配列番号4に記載されるアミノ酸配列のうち、34番目のGlyが異なるアミノ酸に置換されているアミノ酸配列を含むL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[58]に記載の医薬組成物、
[61]グリピカン3抗体が;
配列番号27に記載されるアミノ酸配列を含むH鎖可変領域;
配列番号29に記載されるアミノ酸配列を含むL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[58]に記載の医薬組成物、
[62]グリピカン3抗体が;
配列番号31に記載されるアミノ酸配列を含むH鎖可変領域;
配列番号33に記載されるアミノ酸配列を含むL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[58]に記載の医薬組成物、
[63]被験者において肝癌を治療または予防する方法であって、被験者に有効量の化学療法剤および有効量のグリピカン3抗体を組み合わせて投与することを含む方法、
[64]化学療法剤とグリピカン3抗体とが同時または順次に投与されることを特徴とする[63]に記載の方法、
[65]化学療法剤とグリピカン3抗体とが別々に投与されることを特徴とする[63]に記載の方法、
[66]化学療法剤がキナーゼ阻害剤であることを特徴とする、[63]から[65]のいずれかに記載の方法、
[67]化学療法剤がマルチキナーゼ阻害剤であることを特徴とする[66]に記載の方法、
[68]化学療法剤がソラフェニブ(BAY43−9006)であることを特徴とする[66]又は[67]に記載の方法、
[69]化学療法剤がスニチニブであることを特徴とする[66]又は[67]に記載の方法、
[70]グリピカン3抗体が細胞傷害活性を有する抗体であることを特徴とする[63]から[69]のいずれかに記載の方法、
[71]グリピカン3抗体が;
配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するH鎖可変領域;
配列番号8に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[63]から[70]のいずれかに記載の方法、
[72]グリピカン3抗体が、第2の抗体が結合しうるエピトープに結合することができる抗体であって、前記第2の抗体はそれぞれ配列番号5,6,および7に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,2,および3を有するH鎖可変領域,およびそれぞれ配列番号8,24,および25に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,2,および3を有するL鎖可変領域を含むことを特徴とする抗体である、[63]から[71]のいずれかに記載の方法、
[73]グリピカン3抗体が;
配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するH鎖可変領域;
配列番号9から23のいずれか一つに記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[63]から[70]又は[72]のいずれかに記載の方法、
[74]グリピカン3抗体が;
配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号26に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するH鎖可変領域;
配列番号28に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[63]から[70]又は[72]のいずれかに記載の方法、
[75]グリピカン3抗体が;
配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号30に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するH鎖可変領域;
配列番号32に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[63]から[70]又は[72]のいずれかに記載の方法、
[76]グリピカン3抗体がヒト化抗体である[63]から[75]のいずれかに記載の方法、
[77]グリピカン3抗体が;
配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含むH鎖可変領域;
配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含むL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[76]に記載の方法、
[78]グリピカン3抗体が;
配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含むH鎖可変領域;
配列番号4に記載されるアミノ酸配列のうち、34番目のGlyが異なるアミノ酸に置換されているアミノ酸配列を含むL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[76]に記載の方法、
[79]グリピカン3抗体が;
配列番号27に記載されるアミノ酸配列を含むH鎖可変領域;
配列番号29に記載されるアミノ酸配列を含むL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[76]に記載の方法、
[80]グリピカン3抗体が;
配列番号31に記載されるアミノ酸配列を含むH鎖可変領域;
配列番号33に記載されるアミノ酸配列を含むL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[76]に記載の方法、
[81]被験者において化学療法剤による肝癌治療の結果生じる副作用を低減する方法であって、被験者に有効量の治療用抗体を投与することを含む方法、
[82]化学療法剤がキナーゼ阻害剤であることを特徴とする[81]に記載の方法、
[83]化学療法剤がマルチキナーゼ阻害剤であることを特徴とする[81]又は[82]に記載の方法、
[84]化学療法剤がソラフェニブ(BAY43−9006)であることを特徴とする[82]又は[83]に記載の方法、
[85]化学療法剤がスニチニブであることを特徴とする[82]又は[83]に記載の方法、
[86]副作用が体重減少であることを特徴とする[81]から[85]のいずれかに記載の方法、
[87]治療用抗体がグリピカン3抗体であることを特徴とする[81]から[86]のいずれかに記載の方法、
[88]グリピカン3抗体が細胞傷害活性を有する抗体であることを特徴とする[87]に記載の方法、
[89]グリピカン3抗体が;
配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するH鎖可変領域;
配列番号8に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする[87]又は[88]に記載の方法、
[90]グリピカン3抗体が、第2の抗体が結合しうるエピトープに結合することができる抗体であって、前記第2の抗体はそれぞれ配列番号5,6,および7に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,2,および3を有するH鎖可変領域,およびそれぞれ配列番号8,24,および25に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,2,および3を有するL鎖可変領域を含むことを特徴とする抗体である、[87]から[89]のいずれかに記載の方法、
[91]グリピカン3抗体が;
配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するH鎖可変領域;
配列番号9から23のいずれか一つに記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[87]、[88]又は[90]のいずれかに記載の方法、
[92]グリピカン3抗体が;
配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号26に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するH鎖可変領域;
配列番号28に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[87]、[88]又は[90]のいずれかに記載の方法、
[93]グリピカン3抗体が;
配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号30に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するH鎖可変領域;
配列番号32に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[87]、[88]又は[90]のいずれかに記載の方法、
[94]グリピカン3抗体がヒト化抗体である[87]から[93]のいずれかに記載の方法、
[95]グリピカン3抗体が;
配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含むH鎖可変領域;
配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含むL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[94]に記載の方法、
[96]グリピカン3抗体が;
配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含むH鎖可変領域;
配列番号4に記載されるアミノ酸配列のうち、34番目のGlyが異なるアミノ酸に置換されているアミノ酸配列を含むL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[94]に記載の方法、
[97]グリピカン3抗体が;
配列番号27に記載されるアミノ酸配列を含むH鎖可変領域;
配列番号29に記載されるアミノ酸配列を含むL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[94]に記載の方法、
[98]グリピカン3抗体が;
配列番号31に記載されるアミノ酸配列を含むH鎖可変領域;
配列番号33に記載されるアミノ酸配列を含むL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[94]に記載の方法、
[99]被験者において化学療法剤による肝癌治療の効果を増強させる方法であって、被験者に有効量のグリピカン3抗体を投与することを含む方法、
[100]グリピカン3抗体が化学療法剤と同時に投与されることを特徴とする、[99]に記載の方法、
[101]グリピカン3抗体が化学療法剤の投与前または投与後に投与されることを特徴とする、[99]に記載の方法、
[102]化学療法剤がキナーゼ阻害剤であることを特徴とする[99]から[101]のいずれかに記載の方法、
[103]化学療法剤がマルチキナーゼ阻害剤であることを特徴とする[102]に記載の方法、
[104]化学療法剤がソラフェニブ(BAY43−9006)であることを特徴とする[99]から[103]のいずれかに記載の方法、
[105]化学療法剤がスニチニブであることを特徴とする[99]から[103]のいずれかに記載の方法、
[106]グリピカン3抗体が細胞傷害活性を有する抗体であることを特徴とする[99]から[105]のいずれかに記載の方法、
[107]グリピカン3抗体が;
配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するH鎖可変領域;
配列番号8に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする[99]から[106]のいずれかに記載の方法、
[108]グリピカン3抗体が、第2の抗体が結合しうるエピトープに結合することができる抗体であって、前記第2の抗体はそれぞれ配列番号5,6,および7に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,2,および3を有するH鎖可変領域,およびそれぞれ配列番号8,24,および25に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,2,および3を有するL鎖可変領域を含むことを特徴とする抗体である、[99]から[107]のいずれかに記載の方法、
[109]グリピカン3抗体が;
配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するH鎖可変領域;
配列番号9から23のいずれか一つに記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[99]から[106]又は[108]のいずれかに記載の方法、
[110]グリピカン3抗体が;
配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号26に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するH鎖可変領域;
配列番号28に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[99]から[106]又は[108]のいずれかに記載の方法、
[111]グリピカン3抗体が;
配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号30に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するH鎖可変領域;
配列番号32に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[99]から[106]又は[108]のいずれかに記載の方法、
[112]グリピカン3抗体がヒト化抗体である[99]から[111]のいずれかに記載の方法、
[113]グリピカン3抗体が;
配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含むH鎖可変領域;
配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含むL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[112]に記載の方法、
[114]グリピカン3抗体が;
配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含むH鎖可変領域;
配列番号4に記載されるアミノ酸配列のうち、34番目のGlyが異なるアミノ酸に置換されているアミノ酸配列を含むL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[112]に記載の方法、
[115]グリピカン3抗体が;
配列番号27に記載されるアミノ酸配列を含むH鎖可変領域;
配列番号29に記載されるアミノ酸配列を含むL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[112]に記載の方法、
[116]グリピカン3抗体が;
配列番号31に記載されるアミノ酸配列を含むH鎖可変領域;
配列番号33に記載されるアミノ酸配列を含むL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、[112]に記載の方法。
【0076】
本明細書において明示的に引用される全ての特許および参考文献の内容は全て本明細書に参照として取り込まれる。
【0077】
以下、本発明を実施例の記載によって具体的に説明するが本発明は当該記載によって限定して解釈されるものではない。
【実施例】
【0078】
実施例1
グリピカン3を発現するヒト肝癌細胞株移植マウスモデルに対するグリピカン3抗体と化学療法剤(ミトキサントロンまたは塩酸ドキソルビシン)との併用効果
(1)細胞株
グリピカン3を発現するヒト肝癌細胞株としてHuH-7細胞(ヒューマンサイエンス研究資源バンク)およびHepG2細胞(ATCC)が用いられた。HuH-7細胞は10%FBS(BIONET)を含むDulbecco’s Modifid Eagle’s Medium培地(SIGMA)にて、HepG2細胞は10%FBS、1 mmol/l MEM Sodium Pyruvate(Invitrogen)、1 mmol/l MEM Non-Essential Amino Acid(Invitrogen)を含むMinimum Essential Medium Eagle培地(SIGMA)にて、それぞれ維持継代された。
【0079】
(2)ヒト肝癌細胞株移植マウスモデルの作製
各細胞が各継代用培地とMATRIGEL Matrix(BD Bioscience)を等量含む溶液にて1ml当たり5×107細胞になるように調製された。細胞の移植前日に、あらかじめ抗アシアロGM1抗体(和光純薬、1バイアル中の内容物が5mlに溶解されたもの)100μlが腹腔内へ投与されたSCIDマウス(オス、5週齢、日本クレア)の腹部皮下へ、細胞懸濁液100 μl(すなわち、マウス一頭当たり5×106細胞)が移植された。腫瘍体積は以下の式にて算出され、腫瘍体積の平均が237-298 mm3になった時点でモデルが成立されたものと判断された。
腫瘍体積=長径×短径×短径/2
【0080】
(3)抗体および化学療法剤の調製
マウス抗ヒトグリピカン3モノクローナル抗体(クローン名:GC33, WO2006006693に記載されたもの)はPBS(−)を用いて、0.5 mg/ml(5 mg/kg投与群)および0.1 mg/ml(1 mg/kg投与群)になるように調製された。塩酸ドキソルビシン(アドリアシン注、協和発酵)は注射用蒸留水(大塚製薬)にて10 mg/ml濃度となるように溶解された後に、PBS(−)を用いて0.5 mg/ml濃度となるように希釈された。塩酸ミトキサントロン(ノバントロン注、Wyeth)は生理食塩水(大塚製薬)にて10 mg/mlに溶解された後に、PBS(−)を用いて0.1 mg/mlとなるように希釈された。
【0081】
(4)化学療法剤の投与
(2)で作製されたヒト肝癌移植マウスモデルに対し、HuH-7細胞xenograftモデルは移植後11日目より、HepG2細胞xenograftモデルは移植後20日目より、それぞれ週に1回ずつ、三週間の間にわたって、上記(3)で調製された抗体試料が10 ml/kgの用量で、尾静脈より投与された。陰性対照として、濾過滅菌したPBS(−)(Vehicle)が同様に週に1回ずつ、三週間の間にわたって、10 ml/kgの用量で、尾静脈より投与された。また、HuH-7細胞xenograftモデルに対しては移植後10日目に1回、上記(3)で調製された塩酸ドキソルビシン(DOX)もしくは、陰性対照としてPBS(−)がそれぞれ10 ml/kgの用量で、尾静脈より投与された。またHep G2細胞xenograftモデルに対しては移植後20日目より、上記(3)で調製された塩酸ミトキサントロン(MX)もしくは、陰性対照としてPBS(−)がそれぞれ週に1回ずつ、三週間の間にわたって、10 ml/kgの用量で、尾静脈より投与された。いずれの群も、1群当たり6匹で構成された。また、化学療法剤の詳細な処置方法は表1および2に示されている。
【0082】
【表1】

【0083】
【表2】

【0084】
(5)抗腫瘍効果の評価
ヒト肝癌移植マウスモデルにおけるGC33抗体と化学療法剤との組み合わせによる抗腫瘍効果は、最終投与日より一週間後の腫瘍体積で評価された。統計解析は最終測定日の腫瘍体積を用いて、t検定にて実施された。統計解析のためにSAS前臨床パッケージ(SAS Institute Inc.)が用いられた。結果を図1に示す。
【0085】
図1Aは、ヒト肝癌細胞株HuH-7細胞株が移植されたマウスモデルにおける、GC33抗体とドキソルビシン(DOX)が併用投与された際の腫瘍体積の変化を示すグラフである。菱形はベヒクルが投与された群の腫瘍体積の推移が示されている。丸はGC33抗体のみが投与された群の腫瘍体積の推移が示されている。三角はドキソルビシン(DOX)のみが投与された群の腫瘍体積の推移が示されている。クロスはGC33抗体とドキソルビシン(DOX)が併用投与された群の腫瘍体積の推移が示されている。図1Bは、HepG2細胞株が移植されたマウスモデルにおける、GC33抗体とミトキサントロン(MX)が併用投与された際の腫瘍体積の変化を示すグラフである。菱形はベヒクルが投与された群の腫瘍体積の推移が示されている。丸はGC33抗体のみが投与された群の腫瘍体積の推移が示されている。三角はミトキサントロン(MX)のみが投与された群の腫瘍体積の推移が示されている。クロスはGC33抗体とミトキサントロン(MX)が併用投与された群の腫瘍体積の推移が示されている。
【0086】
図1に示されるように、GC33単独投与群での腫瘍増殖に比べて、GC33とドキソルビシン(DOX、図1A)もしくはミトキサントロン(MX、図1B)との併用投与群での腫瘍増殖は有意に抑制されたことが観察された。
【0087】
実施例2
グリピカン3を発現するヒト肝癌細胞株移植マウスモデルに対するヒト化グリピカン3抗体と化学療法剤(ソラフェニブ)との併用効果
6週齢のオスのCB-17 SCIDマウスはCLEA Japan Inc.より購入された。マウスには腫瘍移植直前に200μgの抗アシアロGM1抗体(WAKO)が腹腔内投与され、その後5×105細胞のHepG2細胞あるいはHuH-7細胞が50%マトリゲル(Becton Dickinson)に分散されたものが皮下移植された。腫瘍体積が250mm3に達した時点でマウスが群分けされ、投与が開始された。ヒト化抗グリピカン3抗体(hGC33、WO2006006693)は、PBS(-)にて適切な濃度に調製されたものが週1回、3週間静脈内投与された。ソラフェニブはOrganic Process Research & Development (2002) 6, 777-781に記載された方法に従って合成されたソラフェニブが、10% エタノール、10% Cremophor ELを含む純水に懸濁され、週5回、3週間経口投与された。ベヒクルコントロールとして、PBS(-)と、10% ethanol, 10% Cremophor ELを含む純水が用いられた。腫瘍体積V (mm3)は実施例1に記載された計算式によって算出された。結果を図2−4に示す。
【0088】
図2は、ヒト肝癌細胞株Huh-7細胞移植マウスモデルに対するhGC33抗体およびソラフェニブの抗腫瘍効果が腫瘍体積の変化(平均+標準偏差)に基づいて示されたグラフである。白丸はベヒクルが投与された群の腫瘍体積の推移が示されている。黒丸はhGC33抗体のみが5mg/kgの用量で投与された群の腫瘍体積の推移が示されている。白四角はソラフェニブのみが80mg/kgの用量で投与された群の腫瘍体積の推移が示されている。黒四角はhGC33抗体とソラフェニブがそれぞれ5mg/kgおよび80mg/kgの用量で併用投与された群の腫瘍体積の推移が示されている。図3は、ヒト肝癌細胞株HepG2細胞移植マウスモデルに対するhGC33抗体およびソラフェニブの抗腫瘍効果が腫瘍体積の変化(平均+標準偏差)に基づいて示されたグラフである。白丸はベヒクルが投与された群の腫瘍体積の推移が示されている。黒丸はhGC33抗体のみが1mg/kgの用量で投与された群の腫瘍体積の推移が示されている。白四角はソラフェニブのみが80mg/kgの用量で投与された群の腫瘍体積の推移が示されている。黒四角はhGC33抗体とソラフェニブがそれぞれ1mg/kgおよび80mg/kgの用量で併用投与された群の腫瘍体積の推移が示されている。図中の星印はDunnett’s testに基づいてP値がP<0.05であることが示されている。図4は、hGC33抗体およびソラフェニブによるヒト肝癌細胞株HepG2細胞移植マウスモデルの体重減少に対する効果が当該モデルの体重の推移(平均±標準偏差)によって示されたグラフである。白丸はベヒクルが投与された群の体重の推移が示されている。黒丸はhGC33抗体のみが5mg/kgの用量で投与された群の体重の推移が示されている。白四角はソラフェニブのみが80mg/kgの用量で投与された群の体重の推移が示されている。黒四角はhGC33抗体とソラフェニブがそれぞれ5mg/kgおよび80mg/kgの用量で併用投与された群の体重の推移が示されている。図中の星印はDunnett’s testに基づいてP値がP<0.05であることが示されている。
【0089】
その結果、HuH-7 xenograftモデルにおける5mg/kg用量でのhGC33、あるいは80mg/kg用量でのソラフェニブのそれぞれ単独の投与によって腫瘍増殖が抑制された。さらに、両者が併用投与されることによって、単独投与による腫瘍増殖抑制活性よりもその腫瘍増殖の抑制が強まることが観察された(図2)。
【0090】
HepG2 xenograftモデルに対して、ヒト化GC33 1mg/kgとソラフェニブの最大耐用量である80mg/kgとが併用投与された群における測定最終日(すなわちday 42の時点)の腫瘍体積で表した腫瘍増殖抑制効果は、それぞれが単独に投与された群におけるそれよりも有意に強かった。また、このモデルにおいては腫瘍の増殖に伴う体重減少が観察されるが、ソラフェニブ単独投与によってこの体重減少が亢進されることが観察された。一方、ソラフェニブとヒト化GC33との併用投与によって、ソラフェニブ単独投与群に比較して薬効が強まるのみならず、体重減少が有意に軽減されることが示された(特に、day 39および42の時点を参照(図3))。
【0091】
参考実施例3
(1)ヒト化H0L0抗体の点変異遺伝子の作製
ヒト化H0L0抗体のCDRを含むグリピカン3抗体をコードする遺伝子を出発材料として、各種の点変異遺伝子を作製した。改変部位を含む順鎖および逆鎖の配列に基づいて設計されたオリゴDNAが合成された。市販のQuikChange Site-Directed Mutagenesis Kit(Stratagene)を用いて複数の点変異遺伝子が作製された。点変異遺伝子の作製は以下の条件に従ってPCR法によって実施された。10 ngの鋳型プラスミドと、10 pmolの順鎖および逆鎖の合成オリゴDNA、キットに添付された10x Buffer、dNTP mixおよびPfu turbo DNA polymeraseからなる反応混合物を、95℃にて30秒間加熱した後、95 ℃にて30秒、55 ℃にて1分、68 ℃にて4分から構成されるPCR反応サイクルが18回実施された。キットに添付されたDpnIが反応混合物に添加された後に37℃にて1時間の制限酵素による制限消化反応が継続された。当該反応液によってDH5αコンピテント細胞(TOYOBO)が形質転換された結果、形質転換体が得られた。当該形質転換体から単離されたプラスミドDNAの塩基配列の決定に基づいて、点変異が導入されたことが確認された点変異遺伝子は、動物細胞において挿入遺伝子を発現可能ならしめる発現ベクター中にクローン化された。改変遺伝子は以下に示す構成を有する改変により取得された。
【0092】
ヒト化H0L0抗体およびその点変異改変抗体の一過性発現はPolyethyleneimine(Polysciences Inc.)を用いた一過性発現により実施された。Trypsin EDTA(Invitrogen)にて剥離されたHEK293細胞が、10cm2培養ディッシュに6 x 106 cells/10mLとなるように播種された。翌日、手順書に従い、H鎖発現プラスミドDNAおよびL鎖発現プラスミドDNAに、SFMII培地およびPolyetyleneimineが混合された後、当該混合液は室温にて10分間静置された。混合液の全量は、HEK293細胞が前記記載の通り播種された培養ディッシュに滴下された。その約72時間後に回収された培養上清から、発現したヒト化H0L0抗体およびその点変異改変抗体の精製がrProteinA sepharoseTM Fast Flow(GE Healthcare)を用いて、その手順書に従い実施された。
【0093】
(1−1)ヒト化H0L0抗体のTm値の改変
熱変性中間温度(Tm)は、一定のプログラムされた加熱速度で被検試料溶液を加熱した後に得られるサーモグラム(Cp対T)における変性ピークの頂点として把握される。DSC測定用試料溶液の調製を以下の様に実施することによって、ヒト化H0L0抗体のTm値が測定された。まず、150 mmol/lの塩化ナトリウムを含む20 mol/lの酢酸ナトリウム緩衝溶液(pH6.0)を透析外液に対して、透析膜に封入された50-100μg相当量の抗体溶液が一昼夜の間、透析に供された。その後、透析外液を用いてその抗体濃度が50-100μg/mlに調製された試料溶液がDSC測定用試料溶液として使用された。
【0094】
適切なDSC装置、例えばDSC-II(Calorimetry Sciences Corporation)が、この実験のために好適に使用される。前記方法により調製された試料溶液およびリファレンス溶液(透析外液)が十分に脱気された後に、それぞれの被験検体が熱量計セルに封入され40℃にて熱充分な平衡化が行われた。次にDSC走査が40℃〜100℃にて約1K/分の走査速度で行われた。当該測定の結果は、温度の関数としての変性ピークの頂点として表される。非特許文献(Rodolfoら、Immunology Letters (1999), 47-52)を参考にしたFabドメインのピークアサインが行われ、ヒト化H0L0抗体の熱変性中間温度が算出された。
【0095】
前記記載の方法による算出に基づいた配列番号3で表されるH鎖、および、配列番号4で表されるL鎖からなるヒト化H0L0抗体のTm値は76.6℃であるが、既存の抗体として例示されるSynagisおよびHerceptinのTm値はそれぞれ85.4℃および81.8℃と計測される。したがってヒト化H0L0抗体のTm値は既存の抗体のそれよりも低いことが示されたこととなる。
【0096】
そこで、そのTm値の向上を目的として、ヒト化H0L0抗体の改変抗体を作製した。配列番号3で表されるヒト化H0L0抗体のH鎖のFR2に対して、そのVH1bのサブクラスをVH4のサブクラスに改変するV37I、A40P、M48I、L51Iの改変が加えられたH15(配列番号34)が作製された。そのTm値は79.1℃に改善された。配列番号4で表されるヒト化H0L0抗体のL鎖のFR2をVK2からVK3のサブクラスに改変するL42Q、S48A、Q50Rの改変、および、FR1のV2を生殖細胞系列の配列であるIに置換するV2Iの改変が実施されたL4(配列番号35)が作製された。各抗体のTm値の測定は前記の記載の方法により実施された。その結果、H15L0及びH0L4のTm値はそれぞれ、79.2℃及び77.2℃と測定され、H0L0のTm値である76.6℃よりも改善された。この2つの改変体が組み合わされたH15L4抗体のTm値は80.5℃に改善された。
【0097】
(1−2)ヒト化H0L0抗体のpI値の改変
抗体が有するpI値が減少することにより、抗体の血漿中半減期が伸長する。そこで、pI値が減少したヒト化H0L0抗体の改変抗体を作製し、高い腫瘍抑制効果をもたらすか否かが検証された。
【0098】
各抗体のpI値は等電点電気泳動による分析に基づいて算出された。当該電気泳動は以下のとおり行われた。Phastsystem Cassette(AmerchamBioscience社製)を用いて以下の組成を有する膨潤液によって60分ほどPhast-Gel Dry IEF(AmerchamBioscience)ゲルが膨潤された。
(a)高pI用の膨潤液の組成:
1.5 mlの10% Glycerol
100μlのPharmalyte 8-10.5 for IEF(AmerchamBioscience)
(b)低pI用の膨潤液の組成:
1.5 mlの精製水
20μlのPharmalyte 8-10.5 for IEF(AmerchamBioscience)
80μlのPharmalyte 5-8 for IEF(AmerchamBioscience)
【0099】
約0.5μgの抗体が膨潤したゲルに供され、以下のプログラムにより制御されたPhastSystem(AmerchamBioscience)を用いることによって等電点電気泳動が行われた。サンプルは下記プログラムにおけるStep 2の段階でゲルに添加された。pIマーカーとして、Calibration Kit for pI(AmerchamBioscience)が使用された。
Step 1:2000 V、2.5 mA、3.5 W、15℃、75 Vh
Step 2:200 V、2.5 mA、3.5 W、15℃、15 Vh
Step 3:2000 V、2.5 mA、3.5 W、15℃、410 Vh
【0100】
泳動後のゲルが20 % TCAによって固定化された後、Silver staining Kit, protein(AmerchamBioscience)を用い、キットに添付されている手順書に従って銀染色が行われた。染色後、pIマーカーが有する既知の等電点を基準にして被験試料である各抗体の等電点が算出された。
【0101】
H15にK19T、Q43E、K63S、K65Q、G66Dの改変が更に施されたHspd1.8(Hd1.8)(配列番号27)が作製された。L4にQ27Eの改変が施され、L4を構成するFR3の79-84の配列であるKISRVEがTISSLQに改変され、S25Aの改変が施されたLspd1.6(Ld1.6)(配列番号29)が作製された。Hspd1.8(Hd1.8)およびLspd1.6(Ld1.6)からなる抗体であるHspd1.8Lspd1.6(Hd1.8Ld1.6)のpI値は7.4と計測された。ヒト化H0L0抗体のpI値は8.9であることからHspd1.8Lspd1.6(Hd1.8Ld1.6)抗体のpI値は1.5減少した。
【0102】
(2)競合ELISAによるヒト化H0L0抗体の点変異改変抗体の結合活性の評価
(1)で精製されたヒト化H0L0抗体およびその点変異改変抗体の競合ELISAによる評価が行われた。1μg/mlとなるように調製された可溶型GPC3コアポリペプチド(配列番号36)が96穴プレートに1ウエル当たり100μl加えられた。当該プレートは4℃にて終夜静置され、可溶型GPC3コアポリペプチドが当該プレートに固相化された。当該プレートに固相化された可溶型GPC3コアポリペプチドはSkan WASHER400(Molecular Devices)を用いて洗浄緩衝液にて3回洗浄され200μlのブロッキング緩衝液が加えられ4℃にて30分以上ブロックされた。当該可溶型GPC3コアポリペプチドが固相化されブロックされたプレートは次にSkan WASHER400を用いて洗浄緩衝液にて3回洗浄された。その後、種々の濃度のヒト化H0L0抗体またはその点変異改変抗体と終濃度0.3μg/mlのビオチン化されたヒト化H0L0抗体がそれぞれ100μl混合された混合液200μlがプレート1ウエル当たり加えられた。ヒト化H0L0抗体のビオチン化はBiotin Labelingキット(Roche)を用いてキットの手順書に従い実施された。当該プレートは室温にて1時間静置された後、Skan WASHER400(Molecular Devices)を用いて洗浄緩衝液にて5回洗浄された。その1ウエル当たり基質緩衝液によって20,000倍に希釈された100μlの Goat anti streptabidin Alkaline phosphatase(ZYMED)が加えられた当該プレートは、室温にて1時間静置された後Skan WASHER400を用いて洗浄緩衝液にて5回洗浄された。基質緩衝液を用いて1 mg/mlとなるようにPhosphatase Substrate(Sigma)が調製され、1ウエル当たり100μl加えられ1時間静置された。Benchmark Plus(BIO-RAD)を用いて655 nmの対照吸光度を用いて、各ウエル中の反応液の405 nmにおける吸光度が測定された。
【0103】
H15L4抗体及びHspd1.8Lspd1.6 (Hd1.8Ld1.6)抗体の抗原に対する結合活性は改変に供したヒト化H0L0抗体のそれとほぼ同等であることが示された。
【0104】
参考実施例4
(1)点変異pI改変抗体の作製に使用されるpI低下のための改変箇所の選定
Hd1.8Ld1.6抗体の腫瘍抑制効果をさらに向上するために、可変領域のpIの低下を可能とする改変箇所の検討が行われた。その結果、可変領域のpIの低下を可能とするアミノ酸残基が見出された。それらの改変のうちpI低下の具体例として、pH7pL16抗体が挙げられる。pH7pL16抗体の作製は以下のように実施された。
【0105】
改変部位の作製はPCRを用いたAssemble PCRを行うことによって行われた。改変部位を含む順鎖および逆鎖の配列に基づいて設計されたオリゴDNAが合成された。改変部位を含む逆鎖オリゴDNAと改変を行う遺伝子が挿入されているベクターの順鎖オリゴDNA、改変部位を含む順鎖オリゴDNAと改変を行う遺伝子が挿入されているベクターの逆鎖オリゴDNAをそれぞれ組み合わせ 、PrimeSTAR(TAKARA)を用いてPCRを行うことによって、改変部位を含む断片を5末端側と3末端側の2つが作製された。その2つの断片をAssemble PCRによりつなぎ合わせることによって、各変異体が作製された。
【0106】
作製された変異体を動物細胞において挿入遺伝子を発現可能ならしめる発現ベクターに挿入され、得られた発現ベクターの塩基配列は当業者公知の方法で決定された。プラスミドDNAの塩基配列の決定に基づいて、点変異が導入されたことが確認された点変異遺伝子は、動物細胞において挿入遺伝子を発現可能ならしめる発現ベクター中にクローン化された。抗体の発現、精製等の方法は、実施例1記載の方法又はそれに順ずる方法を用いて実施された。
【0107】
Hspd1.8(Hd1.8)を出発物質に用いてHspd1.8(Hd1.8)のCDR2に存在するkabatナンバリングに基づく61番目のグルタミン(Q)がグルタミン酸(E)に置換されたpH7(配列番号31)が作製された。Ld1.6を出発物質に用いてLd1.6のCDR1に存在するkabatナンバリングに基づく24番目のアルギニン(R)がグルタミン(Q)に、FR2及びFR3に存在する37番目のグルタミン(Q)がロイシン(L)、43番目のアラニン(A)がセリン(S)、45番目のアルギニン(R)がグルタミン(Q)、74番目のスレオニン(T)がリジン(K)、77番目のセリン(S)がアルギニン(R)、78番目のロイシン(L)がバリン(V)、79番目のグルタミン(Q)がグルタミン酸(E)にそれぞれ置換されたpL14が作製され、更にpL14のFR4に存在するkabatナンバリングに基づく104番目のロイシン(L)がバリン(V)、107番目のリジン(K)がグルタミン酸(E)にそれぞれ置換されたpL16(配列番号33)が作製された。
【0108】
(2)点変異pI改変抗体のpI値の測定
参考実施例3に記載あるいは参考実施例3に準じた方法によりPhastGel IEF 4-6.5(GE Healthcase)を用いた泳動によりHd1.8Ld1.6抗体及びpH7pL16抗体のpI値が測定された。Hd1.8Ld1.6抗体及びpH7pL16抗体のpI値は、それぞれ、7.47及び6.52と測定され、pH7pL16抗体のpI値はHd1.8Ld1.6抗体のpI値より0.95減少したことが示された。
【0109】
(3)点変異pI改変抗体のTm値の測定
Hd1.8Ld1.6抗体及びpH7pL16抗体から得られたFabのTm値が参考実施例3に記載の方法に準じて、VP-DSC(Micro Cal)を用いて測定された。この際、透析外液としてPBSが用いられた。また、DSC測定用試料溶液として抗体濃度が25-100μg/mlに調製された。20℃〜115℃にて約4K/分の走査速度となるよう設定されたDSC走査によって、リファレンス溶液(透析外液)およびDSC測定用試料溶液が測定された。Hd1.8Ld1.6抗体及びpH7pL16抗体の Fab熱変性中間温度は、それぞれ77.5及び74.7℃と測定された。
【0110】
(4)競合ELISAによる点変異pI改変抗体の抗原に対する結合活性の評価
参考実施例3に記載された方法を用いて、抗原であるグリピカン3に対する各点変異pI改変抗体の結合活性が測定された。pH7pL16抗体のグリピカン3に対する結合活性はヒト化H0L0抗体のそれとほぼ同等であることが示された。
【0111】
実施例5
(1)グリピカン3を発現するヒト肝癌細胞株移植マウスモデルに対するヒト化グリピカン3抗体と化学療法剤(ソラフェニブ)との併用試験
6週齢のオスのCB-17 SCIDマウスはCLEA Japan Inc.より購入された。マウスには腫瘍移植直前に200μgの抗アシアロGM1抗体(WAKO)が腹腔内投与され、その後5×105細胞のHepG2細胞が50%マトリゲル(Becton Dickinson)に分散されたものが皮下移植された。腫瘍体積が250mm3に達した時点でマウスが群分けされ、投与が開始された。pH7pL16抗体は、PBS(-)にて適切な濃度に調整されたものが週1回、3週間静脈内投与された。ソラフェニブはOrganic Process Research & Development (2002) 6, 777-781に記載された方法に従って合成されたソラフェニブが、10% エタノール、10% Cremophor ELを含む純水に懸濁され、週5回、3週間経口投与された。ベヒクルコントロールとして、PBS(-)と、10% ethanol, 10% CremophorELを含む純水が用いられた。腫瘍体積V (mm3)は実施例1に記載された計算式によって算出された。
【0112】
(2)グリピカン3を発現するヒト肝癌細胞株移植マウスモデルに対するヒト化グリピカン3抗体と化学療法剤(ソラフェニブ)との併用効果
図5は、ヒト肝癌細胞株HepG2細胞移植マウスモデルに対するpH7pL16抗体およびソラフェニブの抗腫瘍効果が腫瘍体積の変化(平均+標準偏差)に基づいて示されたグラフである。白丸はベヒクルが投与された群の腫瘍体積の推移が示されている。黒丸はpH7pL16抗体のみが1mg/kgの用量で投与された群の腫瘍体積の推移が示されている。白四角はソラフェニブのみが80mg/kgの用量で投与された群の腫瘍体積の推移が示されている。黒四角はpH7pL16抗体とソラフェニブがそれぞれ1mg/kgおよび80mg/kgの用量で併用投与された群の腫瘍体積の推移が示されている。図中の星印はDunnett’s testに基づいてP値がP<0.05であることが示されている。図6は、pH7pL16抗体およびソラフェニブによるヒト肝癌細胞株HepG2細胞移植マウスモデルの体重減少に対する効果が当該モデルの体重の推移(平均±標準偏差)によって示されたグラフである。白丸はベヒクルが投与された群の体重の推移が示されている。黒丸はpH7pL16抗体のみが1mg/kgの用量で投与された群の体重の推移が示されている。白四角はソラフェニブのみが80mg/kgの用量で投与された群の体重の推移が示されている。黒四角はpH7pL16抗体とソラフェニブがそれぞれ1mg/kgおよび80mg/kgの用量で併用投与された群の体重の推移が示されている。図中の星印はDunnett’s testに基づいてP値がP<0.05であることが示されている。
【0113】
その結果、HepG2 xenograftモデルに対して、pH7pL16抗体1mg/kgとソラフェニブの最大耐用量である80mg/kgとが併用投与された群における測定最終日(すなわちday 47の時点)の腫瘍体積で表した腫瘍増殖抑制効果は、それぞれが単独に投与された群におけるそれよりも有意に強かった(図5)。また、このモデルにおいては腫瘍の増殖に伴う体重減少が観察されるが、ソラフェニブ単独投与によってこの体重減少が亢進されることが観察された。一方、ソラフェニブとpH7pL16との併用投与によって、ソラフェニブ単独投与群に比較して薬効が強まるのみならず、体重減少が有意に軽減されることが示された(図6)。
【0114】
実施例6
(1)グリピカン3を発現するヒト肝癌細胞株移植マウスモデルに対するヒト化グリピカン3抗体と化学療法剤(スニチニブ)との併用試験
6週齢のオスのCB-17 SCIDマウスはCLEA Japan Inc.より購入された。マウスには腫瘍移植直前に200μgの抗アシアロGM1抗体(WAKO)が腹腔内投与され、その後5×105細胞のHepG2細胞が50%マトリゲル(Becton Dickinson)に分散されたものが皮下移植された。腫瘍体積が250mm3に達した時点でマウスが群分けされ、投与が開始された。ヒト化抗グリピカン3抗体(hGC33、WO2006006693)は、PBS(-)にて適切な濃度に調整されたものが週1回、3週間静脈内投与された。Sequoia Research Products(カタログナンバー:SRP01785S)より購入されたスニチニブは、10% エタノール、10% Cremophor ELを含む純水に懸濁され、週5回、3週間経口投与された。ベヒクルコントロールとして、PBS(-)と、10% ethanol, 10% CremophorELを含む純水が用いられた。腫瘍体積V (mm3)は実施例1に記載された計算式によって算出された。
【0115】
(2)グリピカン3を発現するヒト肝癌細胞株移植マウスモデルに対するヒト化グリピカン3抗体と化学療法剤(スニチニブ)との併用効果
図7は、ヒト肝癌細胞株HepG2細胞移植マウスモデルに対するhGC33抗体およびスニチニブの抗腫瘍効果が腫瘍体積の変化(平均+標準偏差)に基づいて示されたグラフである。白丸はベヒクルが投与された群の腫瘍体積の推移が示されている。黒丸はhGC33抗体のみが1mg/kgの用量で投与された群の腫瘍体積の推移が示されている。白四角はスニチニブのみが80mg/kgの用量で投与された群の腫瘍体積の推移が示されている。黒四角はhGC33抗体とスニチニブがそれぞれ1mg/kgおよび80mg/kgの用量で併用投与された群の腫瘍体積の推移が示されている。図中の星印はDunnett’s testに基づいてP値がP<0.05であることが示されている。
【0116】
その結果、HepG2 xenograftモデルに対して、hGC33抗体1mg/kgとスニチニブの最大耐用量である80mg/kgとが併用投与された群における測定最終日(すなわちday 53の時点)の腫瘍体積で表した腫瘍増殖抑制効果は、それぞれが単独に投与された群におけるそれよりも有意に強かった(図7)。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明は、肝癌に羅患した患者を治療するために、医療業、薬業等において使用される治療剤、治療方法、治療剤の製造方法、治療剤の使用方法を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キナーゼ阻害剤および細胞傷害活性を有するグリピカン3抗体を組み合わせてなる、肝癌を治療または予防するための医薬組成物。
【請求項2】
前記医薬組成物が配合剤であることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
スニチニブおよびグリピカン3抗体が併用されることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
スニチニブとグリピカン3抗体とが同時または順次に投与されることを特徴とする請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
スニチニブとグリピカン3抗体とが別々に投与されることを特徴とする請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項6】
細胞傷害活性を有するグリピカン3抗体を有効成分として含む、スニチニブと併用して肝癌を治療または予防するための医薬組成物。
【請求項7】
グリピカン3抗体がスニチニブと同時に投与されることを特徴とする、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
グリピカン3抗体がスニチニブの投与前または投与後に投与されることを特徴とする、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項9】
スニチニブを有効成分として含む、細胞傷害活性を有するグリピカン3抗体と併用して肝癌を治療または予防するための医薬組成物。
【請求項10】
スニチニブがグリピカン3抗体と同時に投与されることを特徴とする、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
スニチニブがグリピカン3抗体の投与前または投与後に投与されることを特徴とする、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項12】
グリピカン3抗体が;
配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するH鎖可変領域;
配列番号8に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、請求項1から11のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項13】
グリピカン3抗体が;
配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するH鎖可変領域;
配列番号9から23のいずれか一つに記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、請求項1から11のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項14】
グリピカン3抗体がヒト化抗体である請求項1から13のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項15】
グリピカン3抗体が;
配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含むH鎖可変領域;
配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含むL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
グリピカン3抗体が;
配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含むH鎖可変領域;
配列番号4に記載されるアミノ酸配列のうち、34番目のGlyが異なるアミノ酸に置換されているアミノ酸配列を含むL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項17】
細胞傷害活性を有するグリピカン3抗体を有効成分として含有する、キナーゼ阻害剤による肝癌治療の結果生じる副作用の低減剤。
【請求項18】
副作用が体重減少であることを特徴とする請求項17に記載の副作用の低減剤。
【請求項19】
グリピカン3抗体が;
配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するH鎖可変領域;
配列番号8に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする請求項17又は18に記載の副作用の低減剤。
【請求項20】
グリピカン3抗体が;
配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するH鎖可変領域;
配列番号9から23のいずれか一つに記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、請求項17又は18に記載の副作用の低減剤。
【請求項21】
グリピカン3抗体がヒト化抗体である請求項17から20のいずれかに記載の副作用の低減剤。
【請求項22】
グリピカン3抗体が;
配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含むH鎖可変領域;
配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含むL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、請求項21に記載の副作用の低減剤。
【請求項23】
グリピカン3抗体が;
配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含むH鎖可変領域;
配列番号4に記載されるアミノ酸配列のうち、34番目のGlyが異なるアミノ酸に置換されているアミノ酸配列を含むL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、請求項21に記載の副作用の低減剤。
【請求項24】
細胞傷害活性を有するグリピカン3抗体を有効成分として含む、キナーゼ阻害剤による肝癌治療の効果を増強させるための医薬組成物。
【請求項25】
グリピカン3抗体がスニチニブと同時に投与されることを特徴とする、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
グリピカン3抗体がスニチニブの投与前または投与後に投与されることを特徴とする、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項27】
グリピカン3抗体が;
配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するH鎖可変領域;
配列番号8に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする請求項24から26のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項28】
グリピカン3抗体が;
配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するH鎖可変領域;
配列番号9から23のいずれか一つに記載されるアミノ酸配列を含むCDR1,配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含むCDR2,および配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含むCDR3のCDR1,2および3を有するL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、請求項24から26のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項29】
グリピカン3抗体がヒト化抗体である請求項24から28のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項30】
グリピカン3抗体が;
配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含むH鎖可変領域;
配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含むL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
グリピカン3抗体が;
配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含むH鎖可変領域;
配列番号4に記載されるアミノ酸配列のうち、34番目のGlyが異なるアミノ酸に置換されているアミノ酸配列を含むL鎖可変領域;
を含む抗体であることを特徴とする、請求項29に記載の医薬組成物。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−68682(P2011−68682A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291590(P2010−291590)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【分割の表示】特願2010−505322(P2010−505322)の分割
【原出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000003311)中外製薬株式会社 (228)
【Fターム(参考)】