肥満および他の胃腸状態を処置するためのシステムおよび方法
本発明のシステムおよび方法は、幽門括約筋の締めつけに影響を及ぼし、そして/または胃における筋肉の受容性弛緩を媒介もしくは緩和するように働いて、様々な生理学的状態(例えば、肥満症、胆汁反射、GERD、および/またはBarrett食道)などを治療または軽減する。本発明のシステムおよび方法は一次治療様式として使用することができ、または一次介入前、一次介入中、もしくは一次介入後の補充治療として適用することもできる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、それぞれが参照により本明細書に組み入れられる、現在、米国特許第6,009,877号となっている、1998年2月19に出願された米国特許出願第09/026,296号の一部継続出願である、1999年5月4日に出願された米国特許出願第09/304,750号の継続出願である「Systems and Methods for Forming Composite Lesions to Treat Dysfunctions in Sphincters and Adjoining Tissue」と題する、2002年5月24日に出願された同時係属米国特許出願第10/155,294号の恩典を主張するものである。
【0002】
発明の分野
一般的な意味において、本発明は、身体の内部組織領域を治療するためのシステムおよび方法に関するものである。より詳細には、本発明は、噴門および幽門括約筋を含む、胃の内部および周辺の組織を治療するためのシステムおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
A.肥満症
世界中に3億人を超える肥満した成人がいるものと見積もられている。肥満症は、各個人の年齢、身長、および性別を考慮に入れた推奨体重を20パーセントから25パーセント超えた体重を有する状態として定義されている。通常、肥満症は、過食および運動不足(言い換えれば、燃焼するカロリーより多くのカロリーを摂取すること)によりもたらされる。肥満した人のうち、代謝障害による肥満は小さな割合にすぎない。
【0004】
肥満症は事実上すべての年齢群および社会経済群を冒す。肥満症は数多くの身体的および精神的な健康上の成り行きを有している。肥満した人は、高血圧、2型(インスリン非依存型)糖尿病、冠状動脈心疾患、骨関節炎、痛風などの身体的疾患、ならびに子宮内膜癌、前立腺癌、結腸癌、および閉経後乳癌などの特定のタイプの癌に罹る危険性が高い。身体的な疾患に加え、肥満した人の場合、抑鬱症、自己尊重の念の低下、摂食障害、およびゆがんだボディーイメージなどの心理学的障害も起こり得る。
【0005】
肥満した状態であることの社会的な成り行きは重大である。肥満した人が仕事の世界、学校、および社会的な状況下で差別に遭うことは珍しくない。肥満症は、肥満者を個人的な嘲笑にさらし、更にはレクリエーション活動や衣服の選択に制限を加えることもある。早死にする危険性が高いことから始まって、全体的な生活の質を低下させる深刻な慢性的状態に至るまで、肥満症は、肥満症に冒されている人々にとって重大な問題である。
【0006】
肥満症における一貫した共通の特徴は、摂取するカロリーの量と消費するエネルギーの量の不均衡が繰り返されることである。肥満した人のうち小さな割合の肥満者は、エネルギー消費が低いため、僅かなカロリーしか摂取しないにもかかわらず過剰なボディー・マスを維持する。しかし、より一般的には、肥満した人は大量のカロリーを摂取しており、これがボディー・マスを維持または増大させている。
【0007】
何故個人が過食して肥満になるのかは多面的な問題である。この問題は心理学的、社会的、および身体的構成要素を含む。ある人は退屈、悲しみ、または怒りなどの好ましくない感情に応答して過食する可能性がある。代替的に、ある人は、高エネルギーの食物を大量に食することと体重増加および肥満症との関わり合いを理解していない可能性がある。より一般的には、人々は、空腹感、社会的な状況、および食物源に絶えずアクセス可能な状態のため、西洋的な生活様式で過食する。
【0008】
空腹感という用語は、食物源を得、摂取することに対する個人の動因の広範囲にわたる知覚作用を表す。空腹感の構成要素は、楽しむための食事や社会的な付き合いの中での食事などの心理学的な動因を含む。身体的な動因は、低血糖症、脱水症、または高レベルの身体的活動を含む。過食することに対する動因は、自己管理の問題;個人に食するよう告げる異常な信号;過食と肥満症との関わり合いについての充分な理解の不足;および他の多くのあり得る理由と密接に関係しているものと考えられる。
【0009】
空腹感および摂食へ導く身体的プロセスと心理学的プロセスは密接に関わり合っている。本明細書で更に検討される胃および十二指腸は、神経連結を介して、更には血流中に分泌されるホルモンにより脳と連絡している。各構造は、食することが必要であるという個人の知覚作用を導き得る信号を促進する。これの一例が、前回の食事から特定の時間が経過したことを指示するフェーズである「おなかがグーグー鳴る」状態である。人は、典型的には、この活動を空腹と解釈する。
【0010】
空腹感の反対は満腹感である。満腹感は、食事を摂った後に起こるおなかが満ちた感覚である。人は、食事後に充分に満足した感覚を持ったときに満腹であると言う。
【0011】
肥満症によりもたらされる重大な医学的および社会的合併症のため、様々な治療が一般的に行われている。これらの治療法は、肥満症のレベル、個人の全体的な健康状態、および体重を減らそうという個人の動機付けなどの様々な要因に基づいている。
【0012】
治療は食事の変更、運動、行動の変更、体重減少薬(例えばデクスフェンフルラミン、シブトラミン、オルリスタット)を含み得る。肥満症が個人の生命を脅かすサーブの場合には、胃腸の手術を行うこともあり得る。伝統的な手術技法は、典型的には、胃ステープル吻合術、胃バイパス形成術、または胃の上部周辺に膨張可能なバンドを移植する方法など、胃袋を小さくすることに焦点を当てている。より一般的には、これらの要因の組合せを利用した多面的な手法が用いられる。
【0013】
B.胃食道逆流病
胃腸逆流病(GERD)は、胃の内容物が食道へ逆流することによりもたらされる食道の炎症である。症候性患者の場合、逆流は、食道を胃の流れから遮断する筋肉線維のバンドである下部食道括約筋(LES)の不全と関係している。酸性またはアルカリ性の胃内容物がLESを通って食道へ戻り、症状を引き起こす。
【0014】
GERDは、食道内への酸性逆流の存在を増強する状態の組合せにより引き起こされるものと信じられている。これらの状態は、一過性のLES弛緩、LESの静止時緊張の低下、食道クリアランス異常、胃の空化遅延、唾液分泌減少、および組織抵抗性異常を含む。下部食道括約筋の静止時緊張は筋原性(筋肉)メカニズムと神経原性(神経)メカニズムの両者により維持されているため、ある者は、下部食道括約筋または胃の周辺領域(噴門と呼ばれている)における異常な電気信号がこの括約筋の自然発生的な弛緩を引き起こしていると信じている。
【0015】
GERDの最も一般的な症状は胸やけである。胸やけの不快感のほかに、逆流は、嚥下痛(飲み込む際の痛み)および嚥下困難(飲み込むのが困難な状態)などの食道炎症の症状をもたらす。また、酸性逆流は、咳、喘鳴、喘息、吸引性肺炎、および間質性線維症などの肺症状;エナメル質齲蝕、歯肉炎、口臭、および胃液の逆流か口中に生唾がたまる胸やけなどの口腔症状;ひりひりする痛み、喉頭炎、声のしゃがれ、および喉にボール状のものを感ずる息詰まり感などの咽喉症状;ならびに耳痛も引き起こし得る。
【0016】
GERDの合併症は食道糜爛、食道潰瘍、および食道狭窄;異常な(Barrett)上皮による正常な食道上皮の置換;ならびに肺吸引を含む。
【0017】
C.Barrett食道
Barrett食道は、食道の内層が胃食道逆流(GERD)によりもたらされた刺激に応答して細胞変化を起こす障害である。GERD患者のうち小さな割合の患者にBarrett食道が発現する。食道の内層を形成する正常な細胞、扁平上皮細胞が、特殊化円柱細胞と呼ばれる、ヒトでは通常見られないタイプの細胞に変わる。Barrett食道の診断は、典型的には、内視鏡を用いて食道を観察し、食道組織のサンプルを得ること(生検を伴う食道鏡検査)により行われる。
【0018】
Barrett食道は、酸の調節にもかかわらず胃内に酵素および胆汁が存在するGERD及び/又は胆汁逆流によりもたらされた損傷によって引き起こされるものと信じられている。ある人々の場合には、胃内への異常な胆汁の逆方向への流れ(逆流)が存在する。このねばねばした胆汁の逆流が原因となって、胃は、アルカリ性である胆汁を中和しようと多量の酸を分泌する。この過剰な酸は、鼓腸、およびLESへの圧力増加を引き起こし、その結果、GERDをもたらすことが多い。従って、症状はGERDの場合と同様であり、胸やけおよび嚥下困難を含む。
【0019】
胆汁の逆流がBarrett食道の病因論における一部を担っていることを示す証拠が増えつつある。胆汁による胃粘膜への損傷は、水腫および腸異形成が顕著な「化学性」胃炎をもたらす。
【0020】
重篤な合併症はBarrett食道と関連付けられている。これらの合併症は食道形成異常および食道癌のリスク増大を含む。
【0021】
伝統的な治療は、GERDを抑制するための一般的な処置、薬物適用、および前述の手術を含む。生検が癌のリスク増大と関連付けられる形成異常細胞の変化を指示している場合などのもっと重篤なケースでは、手術による食道の一部の除去(食道の切除)が実施される場合もある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0022】
発明の概要
本発明は、肥満症および胃腸管に影響を及ぼす他の状態を治療するシステムおよび方法を提供する。
【0023】
本発明の一つの側面は幽門括約筋の締めつけを達成する。幽門括約筋の締めつけは単独または複数の生理学的目的を果たすことができる。締めつけは、例えば、食事後の満腹感を長引かせ、これにより、肥満症および他の生理学的状態を導き得る過食の発生率を低減するため、幽門括約筋を通る胃からの物質の流出量を制限または規制することができる。幽門括約筋の締めつけは、例えば、酸、酵素、および胆汁、または他の流体と胃及び/又は食道との接触によりもたらされる影響を防止または媒介するため、幽門括約筋を通るこれらの物質の胃内への逆方向の流れを制限またはまたは規制することができる。本システムおよび方法は一次治療様式として使用することができ、または一次介入前、一次介入中、もしくは一次介入後の補充治療として適用することもできる。
【0024】
本発明のこの側面によれば、本システムおよび方法は、例えば幽門括約筋内の組織、幽門括約筋における組織、または幽門括約筋付近の組織を切除することにより幽門括約筋の締めつけに影響を及ぼすことができる。表面の組織を切除の標的とすることができ、または、代替的に、粘膜下組織、括約筋自体、もしくは括約筋の周辺領域を含め、表面の下側の組織を切除の標的とすることもできる。切除は望ましい組織応答を誘発し、この応答は、例えば、白血球および線維芽細胞の流入を含む限局的な治癒プロセスの開始、これに続くコラーゲンの堆積、ならびにその後に生じる組織のコンプライアンスの復元および締めつけを含むことができる。これらの効果は幽門括約筋のバリヤー機能の増強をもたらすであろう。切除は、組織を伝導組織加熱、電気抵抗組織加熱、もしくは切除剤、またはこれらの組合せに曝露することにより果たすことができる。
【0025】
本発明のこの側面によれば、本システムおよび方法は、例えば望ましい組織締めつけ応答を誘発する治療薬を注入することにより幽門括約筋の締めつけに影響を及ぼすこともできる。このような治療薬は、例えば少なくとも1つのサブタイプのサイトカイン(限局的な治癒プロセスを開始させることができる)、及び/又は少なくとも1つのサブタイプのバニロイド含有化合物(幽門括約筋に影響を及ぼす求心性神経インパルスの妨害を引き起こすことができる)を含むことができる。また、本システムおよび方法は、例えば組織充填剤を含み得る治療薬を注入することにより幽門括約筋の締めつけに影響を及ぼすこともできる。充填剤の存在は、付加的な組織のコンプライアンスの復元および締めつけをもたらし、これにより、括約筋のバリヤー機能が増強される。
【0026】
本発明のこの側面によれば、本システムおよび方法は、例えば磁気力を利用することにより、または収縮性のベルトもしくはバンドによって組織を取り囲むことにより、例えば幽門括約筋における組織または幽門括約筋付近の組織を密接に隣接した関係へ向けて物理的に駆り立てることにより幽門括約筋の締めつけに影響を及ぼすこともできる。
【0027】
本発明のこの側面によれば、本システムおよび方法は、組合せまたは種々の異なる治療様式により幽門括約筋の締めつけに影響を及ぼすことができる。例えば、本システムおよび方法は、治療薬または物理的な締めつけ装置の適用と協同して、少なくとも1つの病変を形成するように、組織領域へエネルギーを適用することができる。
【0028】
本発明の別の側面は、食物塊が胃内へ入ることによりもたらされる平滑筋の伸展により誘発される求心性神経信号に応じた胃の筋肉の受容性弛緩を媒介する。この神経学的事象の媒介は、食事中における胃の体積の増大を抑制または軽減するため、特にフォンダスにおける胃の筋肉の更なる弛緩および伸展を抑制することができる。食物の摂取中における胃の容量の制限は、食事中および食事後の満腹感を長引かせる。これは、延いては、肥満症および他の生理学的状態へ導き得る過食の発生率を低減または軽減するのに役立つ。本システムおよび方法は一次治療様式として使用することができ、または一次介入前、一次介入中、もしくは一次介入後の補充治療として適用することもできる。
【0029】
本発明のこの側面によれば、本システムおよび方法は、例えば噴門における受容性弛緩を誘発する求心性神経受容体が存在する胃の領域内の組織、求心性神経受容体が存在する胃の領域における組織、または求心性神経受容体が存在する胃の領域付近の組織を切除することにより、神経学的な活動を抑制する。これらの神経受容体は、食物の摂取による胃の筋肉の予備的な伸展によって刺激されると、神経信号を伝達し、この神経信号は、迷走神経との相互作用により、例えば基底部における胃の筋肉の更なる弛緩を命令し、これにより、胃は伸展し、更に大きな体積の嚥下物質を受け容れることができるように条件付けられる(このプロセスは受容性弛緩と呼ばれている)。これらの神経受容体内の組織、神経受容体における組織、または神経受容体付近の組織の切除は、神経信号の伝達を妨害する病変の形成を誘発し、これにより、受容性弛緩が抑制または緩和される。このようにして、胃の筋肉の更なる弛緩および伸展が媒介される。
【0030】
表面の組織を切除の標的とすることができ、または、代替的に、粘膜下組織を含め、表面の下側の組織を切除の標的とすることもできる。切除は、組織を伝導組織加熱、電気抵抗組織加熱、もしくは切除剤、またはこれらの組合せに曝露することにより果たすことができる。
【0031】
本発明のこの側面によれば、本システムおよび方法は、噴門などの求心性神経受容体が存在する胃の領域内に、求心性神経受容体が存在する胃の領域に、または求心性神経受容体が存在する胃の領域付近に神経治療薬を注入することにより、受容性弛緩応答の妨害または軽減に影響を及ぼすこともできる。この治療薬は受容性弛緩に影響を及ぼす求心性神経インパルスの妨害をもたらす。このような神経治療薬は、例えば少なくとも1つのサブタイプのバニロイド含有化合物を含むことができる。治療薬の注入は、組織の切除を伴って、または組織の切除を伴わずに行われてよい。
【0032】
本発明の更に別の側面は、食物の摂取中における胃の拡張を軽減することにより肥満症を治療するためのシステムおよび方法を提供する。本システムおよび方法は、胃のある領域に取り付けられた磁気ソースを含む。この磁気ソースは、胃の別の領域に取り付けられた材料を磁気力により引き寄せることができるような大きさおよび形状に為されている。この磁気引力が、食物の摂取中における胃の拡張を軽減する。
【0033】
本発明のこれらの側面および他の側面の特徴および利点が以下の「説明および図面」ならびに添付の特許請求項で明らかにされる。
【0034】
詳細な説明
本明細書の開示は詳細であり、当業者が本発明を実践できるように正確に為されているが、本明細書で開示されている物理的な実施態様は、他の特定の構造でも具体化され得る本発明を例証しているにすぎない。好適な実施態様が説明されているが、その詳細は、特許請求項で定義される本発明から逸脱することなく変更することができる。
【0035】
I.消化器系の解剖学
図1および2は、ヒト消化器系10を詳細に示している。消化器系10は、口12から肛門14まで長く曲がりくねった管の形態でつながっている一連の中空器官からなっている。消化は、食物を咀嚼して飲み込む口12から始まる。食物および飲み物を身体が利用できる栄養物に変換するためには、食物は、血流中に吸収され、身体の細胞に輸送される前に、もっと小さな分子に変換されなければならない。食物が小さな部分に分解されると、身体は、新たな細胞を構築するため、更にはエネルギーを供給するためにこれらの食物の小さな部分を使用することができる。
【0036】
消化は、食物の混合、消化管10を通じる食物の移動、および大きな断片から小さな分子への食物の分解を含む。食物は、消化器系10の中空器官が筋肉を含んでおり、これらの筋肉によって壁部が可動に為されているため、これらの中空器官を通じて移動する。器官の壁部の運動は、消化管10を通過するように食物および液体を押し進める。食道16、胃18、および小腸20のこの運動は蠕動と呼ばれている。蠕動は、輪状の収縮波に似ている。
【0037】
食物は口12を通じて消化器系10へ入り、飲み込まれる。飲み込まれた食物は食道16へ押し進められる。食道16は、喉22から胃18まで延びる筋肉の管である。この後、食物は、食道16を通過し、胃18へ入る。
【0038】
胃18は、平均的な成人で1.5リットルの容量を有する総体的にJ字形の嚢であるが、膨張し、4リットルまで持ちこたえることができる。食物は、下部食道括約筋(LES)24と呼ばれる開口を通じて胃の近位側端部から胃18に入る。LES24は食道16と胃18の間の通路を閉じている。しかし、食物がLES24に近付くと、周辺の筋肉が弛緩し、食物は胃18内へ入ることが可能になる。
【0039】
胃18は4つの部分を有している。第一の部分である噴門26はLES24を取り囲んでいる。第二の部分は基底部28であり、LES24のレベルよりも高い所に位置する小さな丸形の領域である。基底部28は、空気、流体、及び/又は食物が嚥下されることにより拡張され得る。胃18の第三の部分、本体30は、大きな中央部である。本体30は、基底部28と胃18の第四の部分との間にあり、この第四の部分は、幽門部または幽門領域32として知られている。
【0040】
胃18のこれらの4つの部分に加え、2つの湾曲部も存在する。胃18の小さい方の湾曲部34は短い凹面境界を形成しており、一方、大きい方の湾曲部36は胃18の長い凸面境界を形成している。
【0041】
従って、胃18は、噴門26、基底部28、および本体30の上方部分を含む近位側領域を有している。この近位側領域の役割は、食物を受け入れ、その後の消化のために貯めておくことである。胃18は、本体30の下方部分および幽門部32を含む遠位側領域も有している。この遠位側領域の役割は食物を粉砕することである。
【0042】
食物が胃18へ入った後に果たされねばならない3つの仕事がある。胃18は、小腸20に放出できるようになるまで、嚥下された食物および液体を貯蔵しておかなければならない。貯蔵を行えるようにするため、食物塊が胃の中へ入って来ると、胃18の基底部28の平滑筋は、伸展して、胃内部の圧力を高めることなく大きな体積の嚥下物質を受け入れることができるように弛緩する。この現象は、近位側の胃の受容性弛緩と呼ばれている。図33A/Bは食物摂取前の胃18を示しており、図34A/Bは、近位側の胃の受容性弛緩が生じた後の胃18を示している。
【0043】
受容性弛緩は、主として噴門における胃平滑筋の神経受容体の求心性刺激によって迷走神経により媒介される。胃の平滑筋は、広範囲の筋肉長さにわたって一定の張力を維持することができる柔軟性を有している。しかし、特定の伸展レベルを超えると、神経受容体が脱分極して求心性神経信号を迷走神経へ送り、次に、この迷走神経が、基底部28および近位側の胃における平滑筋の弛緩を導く遠心性神経信号を送る。この弛緩によって、基底部28は、伸展し、これにより、更に多くの体積の食物を収容することができるように条件付けられる。
【0044】
第二の仕事では、胃18は、摂取された栄養素を攪拌する。この攪拌により、摂取された栄養素は小さな粒子に細かく砕かれる。これらの小さな粒子が胃液と混合され、キームスと呼ばれる液体混合物を生成する。
【0045】
胃18の第三の仕事は、栄養素を吸収することができる小腸20へ胃の内容物をゆっくりと移すことである。
【0046】
食物が胃18に入るとすぐに、基底部28および胃本体30の特殊化された細胞で蠕動が始まる。これらの細胞は平滑筋ペースメーカー細胞として知られている。ペースメーカー細胞は、1分当たり3回から4回の割合で生じる、ゆっくりとした蠕動波をもたらす。このゆっくりとした蠕動波が胃18の内容物を混合する。これらの律動的な収縮は、胃18の基礎電気律動、またはBERとして知られている。これらの蠕動波は、遠位側の胃を通り、幽門括約筋44へ向けて下向きに伝わる。
【0047】
幽門領域32は漏斗形を為している。幽門洞38として知られている広い部分は幽門管40へと続いている。幽門管40は幽門領域32のうちで最も狭い部分である。幽門領域32の遠位側端部には幽門42がある。幽門42は厚くなっており、幽門括約筋44を形成するように、その遠位側端部に幽門括約筋を形成している。幽門括約筋44は、胃18の液化内容物(即ち、チャイム)の十二指腸46への放出を調節する。幽門括約筋44は、胃内の流体が十二指腸46内へ通れるようにするときを除き、通常は閉じている。胃18は十二指腸46とつながっている。十二指腸46は、小腸20の近位側端部におけるC字形の区域である。
【0048】
幽門領域32が満ち始めると、強い蠕動波がキームスを切り刻む。キームスは幽門管40を通じて押し進められる。各波毎に、少量のキームスが幽門括約筋44を通じてポンピングされる。キームスは、幽門ポンプとして知られているメカニズムにより、幽門括約筋44を通過するよう押しやられる。幽門括約筋44の狭さおよび強さにより、多量のキームスが幽門領域32へ戻される。戻されたキームスは、蠕動波により更に切り刻まれる。
【0049】
食物が胃18内に保持される時間は様々であるが、胃18は、通常、3時間から5時間で空になる。胃18は胃の内容物を十二指腸46に徐々に移す。空化の過程で、蠕動波は胃18の本体30を上へ動かす。そうすることにより、蠕動波は、すべてのキームスが幽門領域32内へ押しやられることを確実化する。
【0050】
胃18が食物と分泌液の混合物を小腸48に移した後、消化のプロセスを継続するように、他の2つの消化器の分泌液が食物と混ざる。これらの器官のうちの一つは膵臓50である。膵臓は、食物中の炭水化物、脂肪、およびタンパク質を分解するための広範囲にわたる一連の酵素を含む分泌液を産生する。消化プロセスにおいて活動する他の酵素は、腸20の壁部にある腺から、更にはこの壁部の一部からもたらされる。
【0051】
肝臓52は更に別の消化液(胆汁と呼ばれる)を産生する。胆汁は、食事してから次の食事までの間、胆嚢54内に貯えられる。胆汁は肝臓52により分泌され、消化プロセスで必要になるまで、肝臓から胆嚢管56および肝管58を介して胆嚢54へ送られる。胆嚢54は、正常に機能しているときには、蠕動および吸収を促進することにより消化を助け、腐敗を防ぎ、脂肪を乳化するため、胆管60を通じて胆汁を十二指腸46に移す。食事のときには、胆汁は、胆嚢54から胆管60内へ絞り出され、腸20に達し、食物中の脂肪と混ざる。胆汁酸は、フライパンから油を溶解する界面活性剤と非常によく似て、脂肪を腸20の水様内容物に分解する。脂肪は、溶解された後、膵臓50および腸20の内層からの酵素により消化される。
【0052】
食物の消化された分子、ならびに食事からもたらされた水および無機質は、上部小腸20の腔から吸収される。殆どの吸収された物質は粘膜を横断して血液に入り、貯蔵または更なる化学変化のため、血流に乗って身体の他の部分に運ばれる。残った食物の粒子は、小腸20を通じて大腸62内へ進められ、最終的に、肛門14を通じて排泄するため、直腸64へ送られる。
【0053】
II.幽門括約筋または幽門括約筋に隣接した組織領域を締めつけるためのシステムおよび方法
本明細書の一つの側面は、身体における括約筋および括約筋に隣接した組織領域内の組織、括約筋および括約筋に隣接した組織領域における組織、または括約筋および括約筋に隣接した組織領域付近の組織を締めつけるための様々なシステムおよび方法を開示する。本システムおよび方法は幽門括約筋44を締めつけるのに特に優れて適している。この理由から、本システムおよび方法はこの状況において説明される。とは言え、開示されているシステムおよび方法は、コンプライアンスを回復させるため、もしくは別な仕方で他の括約筋領域(例えば下部食道括約筋または肛門括約筋)、更には一般的に他の内部組織または筋肉領域を締めつけるためにも適用可能であることを認識すべきである。また、本発明の特徴を具体化するこれらのシステムおよび方法は、必ずしもカテーテルをベースとしないシステムおよび手術技法での使用にも適用可能である。
【0054】
幽門括約筋44の締めつけは、胃18の空化を遅延化または規制する。従って、幽門括約筋の締めつけは肥満症を治療するための方法を提供する。胃18の空化を遅延化または規制することにより、食事中及び/又は食事後の満腹感を長引かせることができる。それ故、少なめの食物を少なめの頻度で摂取することとなり、その結果、長い時間をかけた体重減少がもたらされる。
【0055】
また、幽門括約筋44の締めつけは、幽門42を通じる胃18内への胆汁逆流の発生率を低減することもできる。従って、幽門括約筋の締めつけは、例えば胸やけ、GERD、およびBarrett食道などの、胆汁が胃18及び/又は食道16の内層を形成する組織と接触することによりもたらされる影響を防止または媒介する方法を提供する。
【0056】
様々な治療様式を用いて幽門括約筋44の締めつけに影響を及ぼすことができる。幾つかの代表的な様式について説明する。
【0057】
A.組織治療装置
幽門括約筋44の締めつけに非常に適した組織治療装置66が図3に示されている。装置66は、例えば成形プラスチックでできたハンドル68を含んでいる。ハンドル68は可撓性のカテーテルチューブ70を担持している。カテーテルチューブ70は、例えば、ビニル、ナイロン、ポリ(エチレン)、イオノマー、ポリ(ウレタン)、ポリ(アミド)、およびポリ(エチレンテレフタラート)の如き、標準的な可撓性の医療用グレードのプラスチック材料を用いて構成することができる。ハンドル68は、カテーテルチューブ70を幽門括約筋44の領域へ導入するように、医師が把持するのに都合のよい大きさに為されている。カテーテルチューブ70は、ガイドワイヤー72の使用を伴って、またはガイドワイヤー72の使用を伴わずに展開されてよい(図12も参照のこと)。
【0058】
カテーテルチューブ70は、遠位側端部に作動エレメント74を担持している。
【0059】
作動エレメント74は1つまたはそれ以上の組織穿通メンバー76を含んでいる。図4Aに示されているように、単一の組織穿通メンバー76が使用されてよい。メンバー76の伸長は、図4Bに見られるように、このメンバーによる隣接組織の穿通をもたらす。代替的に、図5Aおよび5Bに示されているように、作動エレメント74は様々な形態の多数の組織穿通メンバー76を担持することもできる。望ましくは、以降でもっと詳細に説明されているように、これらの多数の組織穿通メンバー76は間隔を空けてアレイ状に配列される。
【0060】
一つの治療様式では、作動エレメント74は、選択的な仕方で、組織穿通メンバー76を通じて、幽門括約筋44における組織、幽門括約筋44内の組織、または幽門括約筋44付近の組織へ切除エネルギーを加える役割を果たす。切除エネルギーの適用は、粘膜表面の下側に1つもしくはそれ以上の病変、または予め定められたパターンの病変を創出する。エネルギーの選択的な適用による病変の形成は創傷事象を引き起こす。これらの病変の自然な治癒は、標的とした隣接組織を締めつける。治癒プロセスは、病変の周辺組織の収縮をもたらし、病変周辺組織の体積を減少させ、または別な仕方で病変周辺組織の生体力学的な特性を変える。治癒プロセスは、幽門42内の平滑筋組織を自然に締めつける。これらの影響は、幽門括約筋44のバリヤー機能の増強をもたらすであろう。
【0061】
病変の形成は単独で行われてもよいし、または治療薬の適用と組み合わせて実施されてもよい。作動エレメント74は、様々な仕方で治療薬を適用できるように構成することができる。例えば、作動エレメント74は、括約筋44を覆っている粘膜組織へ治療薬を直接的に適用することができる。代替的に、作動エレメント74は、括約筋44を覆っている粘膜組織を通じて治療薬を括約筋44へ外部から適用することができる。更に代替的に、作動エレメント74は、図4Bおよび5A/Bに矢印で表されているように、治療薬を組織穿通エレメント76を通じて括約筋44に注入することもできる。病変形成と治療薬適用との生理学的な合同効果は、望ましい生理学的な結果を達成するように相互作用することができる。
【0062】
例えば、治療薬は、例えばサイトカインサブタイプまたは組織充填剤など、幽門括約筋44の物理的な締めつけをもたらす一群の物質から選択することができる。
【0063】
本明細書で使用する場合、「サイトカインサブタイプ」という用語は、他の細胞の機能に影響を及ぼすあらゆるポリペプチドを意味し、免疫応答または炎症性反応における細胞間の相互作用を変調する分子である。サイトカインサブタイプは、これらに限定するものではないが、どの細胞が産生するかにかかわらず、モノカインおよびリンホカインを含む。サイトカイン含有治療薬は括約筋内に注入されてよく、または括約筋44の外側へ外部から加えることもできる。サイトカインは、局所領域内における治癒プロセスを開始させる役割を果たすことができる。このプロセスは、これらに限定するものではないが、白血球およびマクロファージの流入、線維芽細胞の刺激および平滑筋の分裂ならびにコラーゲンの分泌、新たな血管の成長、傷の収縮および締めつけ、新たなコラーゲンフレームワークまたは現存するコラーゲンフレームワークの成熟、および組織コンプライアンスの低減を含む。これらの組織効果は幽門括約筋44のバリヤー機能を改善することができよう。使用され得るサイトカイン物質の例は、組換えヒトPDGF−BBである、商業的に入手可能なRegranexを含む。サイトカイン含有物質は一次療法として適用もしくは注入されてよく、または一次介入前、一次介入中、もしくは一次介入後の補充治療として適用されてもよい。傷の治癒プロセスを誘発するために切除エネルギーが用いられてよく、この後、サイトカインを適用することにより、一層活発な傷の治癒を促進することができる。
【0064】
使用され得る組織充填剤の例はコラーゲン、真皮、死体の同種異系移植片材料、またはePTFE(発泡ポリ−テトラフルオロエチレン)ペレットを含む。組織充填治療物質は括約筋内に注入されてよく、または括約筋44の外側に外部から加えることもできる。組織充填治療物質は一次療法として適用もしくは注入されてよく、または一次介入前、一次介入中、もしくは一次介入後の補充治療として適用されてもよい。所望の効果を達成するように、充填剤の物理的な特性を変えるため、例えば充填材料を膨張または硬化させるため、注入された充填剤に切除エネルギーを加えることができる。
【0065】
別の例として、治療薬は、例えばバニロイド化合物など、一過性の括約筋の関係を誘発する求心性神経インパルスを妨害する一群の物質から選択することができる。本明細書で使用する場合、「バニロイド化合物」という用語は、生物学的に活性なバニリル基を有する化合物または化合物の混合物を意味する。バニロイド化合物は、天然に生じるバニロイドと合成バニロイドの両方を含み、(天然か合成かにかかわらず)バニロイド化合物の薬剤学的に許容可能な塩、ならびに(天然か合成かにかかわらず)これらの化合物の薬剤学的に許容可能な誘導体及び/又は類似体も含む。天然バニロイド化合物の例は、トウガラシ、カイエン胡椒、黒胡椒、パプリカ、シナモン、チョウジ、メース、カラシ、ショウガ、ターメリック、パパイヤ種子、およびサボテン様植物Euphorbia resininifera:からの活性バニロイド化合物の粗製抽出物と精製抽出物の両方を含む。合成カプサイシンなどの合成バニロイド化合物は、参照により本明細書に組み入れられるWO第96/40079号に開示されている。使用され得るバニロイド材料の一例がAfferonにより製造されており、RTXと呼ばれている。バニロイド含有治療薬の使用は、一過性の括約筋の弛緩を誘発する求心性インパルスを妨害する役割を果たすことができ、これにより、括約筋のバリヤー機能が増強される。バニロイド含有治療薬は粘膜内層に加えることができ、または括約筋44の外側に外部から加えることもできる。バニロイド含有治療薬は一次療法として適用もしくは注入されてよく、または一次介入前、一次介入中、もしくは一次介入後の補充治療として適用されてもよい。傷を誘発するために切除エネルギーが使用されてよく、この後、バニロイド含有治療薬を適用することにより、活発な傷の治癒が促進される。
【0066】
従って、これらの治療様式は、単独で、または組み合わせて、幽門括約筋のバリヤー機能を増強することができる。
【0067】
図3に示されているように、治療装置66はシステム78の一部として運転することができる。システム78は外部治療薬送給装置80を含んでいる。ハンドル68に設けられたルアーフィッティング82は、放出用の治療薬を作動エレメント74まで、または作動エレメント74の近くまで送給するように、治療装置66を治療薬送給装置80へ接続するための配管84につながっている。病変の形成が所望の場合には、代替的に、または組み合わせて、システム78は、作動エレメント74にエネルギーを供給するための発生器86を含むことができる。ハンドル68につながれたケーブル88が、発生されたエネルギーを作動エレメント74へ運ぶ。
【0068】
図示されている実施態様では、発生器86は、例えば約400kHzから約10mHzまでの範囲の周波数を有する無線周波数エネルギーを供給する。例えば干渉性もしくは非干渉性の光;加熱もしくは冷却された流体;抵抗加熱;マイクロ波;超音波;組織切除流体;または低温流体などの他の形態の組織切除エネルギーも、勿論、適用することができる。
【0069】
また、システム78は、望ましくは、制御装置90も含んでいる。制御装置90は、発生器86および治療薬送給装置80へつながれている。好適には搭載中央処理装置を含む制御装置90は、所望の治療目的を達するのに適したパワーレベルを達成および維持するため、無線周波数エネルギーが作動エレメント74に分配されるパワーレベル、サイクル、および持続時間を管理する。同時に、制御装置90は治療薬の送給も管理することができる。
【0070】
制御装置90は、望ましくは、入力/出力(I/O)装置92を含んでいる。I/O装置92は、医師が制御変数および処理変数を入力することを可能にし、また、制御装置90が適切な命令信号を発生するのを可能にする。
【0071】
治療部位を直接的に視覚化することができないため、治療装置66は、図6に示されているように、口12を通じ、食道16を下って通る管腔96を有する内視鏡94を用いて導入することができる。この実施形態の場合、カテーテルチューブ70は、内視鏡の管腔96を通じて、幽門括約筋44における標的部位まで、または幽門括約筋44付近の標的部位まで通される。望ましい場合には、内視鏡94および治療装置66の標的部位への展開を容易化するため、ガイドワイヤー72を使用することができる。
【0072】
図7に示されているように、作動エレメント74は膨張可能な構造98を含むことができる。膨張可能な構造98は、選択的に膨張および収縮させることができるバスケットを形成する、アレイ状を為すチューブ状の背100を含む。膨張可能な構造98は、バスケット内で膨張可能な本体102(例えばバルーン)を更に含むことができる。膨張可能な本体102の目的は、幽門42内でバスケットを膨張および収縮させることである。膨らまされたバルーン構造102は、標的とする組織を一時的に拡張させ、これにより、粘膜表面に通常は存在する襞を幾分か、またはすべて取り除く役割を果たす。図7は、収縮させた、または萎ませた状態の膨張可能な構造98を示している。図8は、膨らませた状態の膨張可能な構造98を示している。
【0073】
この実施形態の場合、組織穿通エレメント76は、背100内に担持され、前の場合と同様に伸長および退縮させることができる。エレメント76は、2つの位置の間で選択的に移動することができる。第一の位置は、図7に描かれている、退縮させた位置であり、この位置では、エレメント76は背100内に引き込まれている。第二の位置は、図8に描かれている、伸長させた位置であり、この位置では、エレメント76は、背100の穴を通じて背100から外側へ伸びている。組織穿通エレメント76は電極としての役割を果たし、これらの電極は、双極性の対で配列されてよく、または単極性操作に適した単独の離間した関係で配列することもできる。
【0074】
一つの好適な実施態様が図9に示されている。ここでは、膨張可能な構造98の背100のうちの1つがガイドワイヤー72を通すための管腔104を提供している。この通路は、ガイドワイヤー72上を通過する際の膨張可能な構造98に対する安定性および支持を提供する。管腔104は、膨張可能な構造98の遠位側端部を越えた位置に設けられた遠位側開口106を有している。開口106は、ガイドアセンブリ108を通じて通されたガイドワイヤー72のための出口としての役割を果たす。また、管腔104は、膨張可能な構造98の近位側端部の更に近位側へ延びる近位側開口110も有している。近位側開口110は、ガイドワイヤー72の妨害されない通路を提供するように、カテーテルチューブ70の外面に設けられている。
【0075】
図10を参照しながら説明すると、膨張可能な構造98を展開するため、患者がリクライニング位または半リクライニング位で覚醒した状態で横たわっているときに、バイトブロック112が患者の口に入れられ、適正に位置付けられる。バイトブロック112は、装置66を患者の口腔内へ挿入している間、患者の口を開けておくために使用される。望ましくは、バイトブロック112は把持用ツール114を担持している。把持用ツール114は、装置66を適切な位置に保持しておくために使用される。装置66の外側表面を接触させることにより、把持用ツール114は、装置66をバイトブロック112内の固定位置に維持する。バイトブロック112と把持用ツール114の両者は、参照により本明細書に組み入れられる、「Systems and Methods Employing a Guidewire for Positioning and Stabilizing External Instruments Deployed Within the Body」と題する、2001年12月14日に出願された同時係属米国特許出願第10/017,906号に開示されている。
【0076】
図10に描かれているように、この後、医師は、小さな直径のガイドワイヤー72を患者の口12および咽頭116に通す。ガイドワイヤー72は、食道16を通じて患者の胃18内へ差し向けられる。ガイドワイヤー72の遠位側端部が幽門42内の標的とする部位に位置付けられる。肥満症およびGERDを治療することが目的の場合、標的とする部位は、図2に最良の状態で示されているように、幽門括約筋44および幽門括約筋に隣接した領域である。
【0077】
望ましくは、医師は、標的とする部位を視覚化するため、ガイドワイヤー72と協同する形態で内視鏡94を使用する。内視鏡94の使用が図11に示されている。しかし、標的とする部位を視覚化するため、医師が代わりにX線透視検査を行ってもよいことを認識すべきである。内視鏡94は、ガイドワイヤー72と横並びの関係で別々に用いられてもよいし、または、図11に示されているように、ガイドワイヤー72自体上へ内視鏡94を導入してもよい。
【0078】
内視鏡94の本体は、その長さ方向に沿った実測マーキング118を含んでいる。マーキング118は、本体に沿ったある与えられた位置と内視鏡94との間の距離を指示する。マーキング118をバイトブロック112と整列するように関連付けることにより、医師は、相対的な見地または絶対的な見地のいずれかで、患者の口12と幽門領域32内の内視鏡94との間の距離を測ることができる。医師が内視鏡94を用いて標的部位、例えば幽門括約筋44を視覚化すると、医師は、バイトブロック112と整列したマーキング118を記録し、ガイドワイヤー72をそこに残したまま、内視鏡96を取り除く。
【0079】
描かれている実施態様では、カテーテルチューブ70は、その長さ方向に沿った実測マーキング120を含んでいる。この実測マーキング120は、カテーテルチューブ70にそったある与えられた位置と作動エレメント74との間の距離を指示する。カテーテルチューブ70に設けられたマーキング120は、間隔および目盛りが、内視鏡94のチューブ状本体に沿ったマーキング118と一致している。
【0080】
治療が始まると、図12に描かれている如く、ガイドワイヤー72が近位側開口110を通じて管腔104を出るように、ガイドワイヤー72の自由な近位側端部が、遠位側開口を通じて、膨張可能な構造98のガイドワイヤー用管腔104に通される。この後、装置66が、ガイドワイヤー72上を、患者の口12および咽頭116を通じて幽門領域32の所望の位置、例えば幽門括約筋44まで導入される。ガイドワイヤー72上を装置66が通過している間、膨張可能な構造98は萎まされた状態にあり、電極74は退縮された位置にある。幽門括約筋44内における装置66の位置付けが図13Aおよび13Bに示されている。
【0081】
この後、組織の切除が実施される。先ず、図14に示されているように、把持用ツール114の把持エレメントを閉じることにより、装置66が所望の位置に保持される。
【0082】
次に、図15に描かれているように、流体またはエアーを膨張可能なメンバー102内に注入することにより、膨張可能な構造98が膨らまされ、例えば、無菌の水またはエアーが、装置66のハンドル68に設けられたポートを通じてバルーンに注入され、これにより、バルーンが膨らまされる。膨張可能なメンバー102の膨張は、膨張可能な構造98の膨張を引き起こし、これにより、幽門括約筋44の粘膜表面との密接な接触がもたらされる。膨らまされた構造98は、粘膜表面に通常は存在する襞の幾分か、またはすべてを取り除くべく、幽門括約筋44を一時的に拡張させる役割を果たす。また、膨らまされた構造98は、背100を粘膜表面と密接に接触した状態に置く機能も果たす。
【0083】
次に、例えば、図16に描かれているように、装置66のハンドル68に設けられたプッシュプルレバーを操作することにより、電極76が伸長位置へ動かされる。電極76は、粘膜組織を穿通して通過し、幽門括約筋42の平滑筋組織に入る。
【0084】
次に、医師は、無線周波数エネルギーなどのエネルギーを所望の時間加え、例えば約400kHzから約10mHzまでのエネルギーを約90秒間加える。望ましい場合には、この切除シーケンスで冷却用液体を導入することもできる(例えば、それぞれの背100が、標的組織部位の粘膜表面と接触するように滅菌水などの冷却用液体を運ぶためのポートを有する内腔を含んでいてよい(図示せず))。
【0085】
無線周波数エネルギーは、電気抵抗を利用して平滑筋組織を加熱する。温度は、電極内に担持されているセンサー60(図示せず)により電極32で検知される。望ましくは、幽門括約筋44の領域の場合、55℃から95℃までの範囲の平滑筋組織における組織温度を達成するようにエネルギーが加えられる。このようにして、病変は、典型的には、粘膜表面の下側1ミリメートルから4ミリメートルまでの範囲の深さで創出することができる。
【0086】
図17を参照しながら説明すると、所望量の無線周波数エネルギーを加えた後、例えば装置66のハンドル68に設けられたプッシュプルレバーを操作することにより、電極76が引っ込められる。把持用ツール114が開放位置へ動かされ、これにより、所望に応じて、装置66の位置付け再設定または除去が可能になる。
【0087】
このようにして、カテーテルに設けられた電極76の個数および位置に応じた単一の一連の病変が形成される。切除が幽門括約筋44の筋肉の力を弱める神経に影響を及ぼし、これにより、結果として幽門括約筋44の物理的な収縮及び/又は神経伝導経路の変調がもたらされることが考えられる。ある与えられた標的組織領域内において更に高い密度の病変を創出するため、例えば幽門括約筋44内の標的治療部位に沿った環状の病変など、あるパターンを為す多数の病変を創出することが望ましい場合がある。
【0088】
幽門括約筋44内に様々な病変パターンを達成することができる。切除の実施後、1回またはそれ以上の回数、装置66を位置付け再設定することにより創出される、あるパターンの多数の病変は、幽門括約筋44に沿って間隔を空けられていてよい。例えば、図18を参照しながら説明すると、電極76が引っ込められ、膨張可能な構造98が膨らまされている状態で、装置66を回転し、この後、電極76が再度伸長され、第二の一連の病変を生成するように、RFエネルギーが加えられる。
【0089】
代替的に、電極76が引っ込められ、膨張可能な構造98が膨らまされている状態で、図19に示されているように、装置66を軸方向(即ち、進行する方向または引っ込める方向)に動かし、この後、電極76が再度伸長され、第二の一連の病変を生成するように、RFエネルギーが加えられる。所望の病変パターンを生成するために、あらゆる回数および組合せの回転移動および軸方向移動が実施されてよいことを理解すべきである。
【0090】
すべての所望の切除シーケンスが完了すると、電極76が引っ込められる。この後、膨張可能なメンバー102が収縮され、同様に、膨張可能な構造98が萎まされる。把持用ツール114が開放位置へ動かされ、装置66およびバイトブロック112が取り除かれる。
【0091】
B.相補的なマグネットシステム
図20〜21は、磁性を利用して幽門括約筋44を締めつけるための代替的なシステムを示している。より詳細には、このシステムは、幽門括約筋44における組織の好適な位置および形をもたらし、且つ、維持する役割を果たす相補的な第一マグネット122と第二マグネット124を使用する。図20は、幽門42の互いに対向する側の組織内に埋め込まれた1対の第一マグネット122と第二マグネット124を示している。図21は、埋め込まれたマグネット122と124との間の磁気引力によって引き起こされる組織の動きを示している。所望の位置および形に組織を動かし、且つ、安定化させることにより、このシステムは、幽門括約筋44を締めつけることができ、従って、肥満症、GERD、及び/又はBarrett食道を治療するのに役立つ。
【0092】
磁気特性(磁性)を呈する物体はマグネットと呼ばれている。磁性は、結局は電荷の動きによる、様々な物質間、特に鉄および特定の他の金属でできた物質間の引力または反発力である。すべてのマグネットが磁場を有しており、磁場は、磁気効果が観測されるマグネット周囲の領域である。図示されている実施態様では、マグネット122および124は望ましくは永久磁石であり、すなわち、マグネット122および124は長期間にわたって本質的に一定の磁場を維持する。
【0093】
マグネット122および124は反対の極性の極を有している。これらの極は、磁気引力が最も強い中心の区域である。マグネット122または124が自由に回転できる場合、一つの極は北側を指し、それ故、北極と呼ばれ、反対側の極は、同様に、南極と呼ばれる。物理的な法則により、同じ極性(北−北または南−南)の極は磁力で互いに反発する。逆に、異なる極性(北−南または南−北)の極は磁力で互いに引き付け合う。磁気引力または磁気反発力は、マグネット122および124の強さ、ならびに両極間の距離に依存する。
【0094】
図示されている実施態様では、第一マグネット122と第二マグネット124は、磁気引力が第一および第二マグネット122および124を互いに引き付け合うように相互に配向されている。即ち、第一マグネット122は第二マグネット124と反対の極性であり、例えば、第一マグネット122が北の極性であり、第二マグネット124が南の極性であるか、またはそれの逆である。本明細書では、このような磁極の配向を「相補的」と呼ぶ。
【0095】
マグネット122または124のいずれかが、磁化されていない物質に磁力を及ぼし得ることを認識すべきである。従って、マグネット122または124のうちの一方は、残りのマグネット122または124が磁気引力を及ぼすことができる材料、例えば鉄のプレートで置き換えることができる。
【0096】
マグネット122および124が互いに引き付けられるように相補的な仕方で配列すると、幽門括約筋44の組織も共に引き付けられ、これにより、図21の矢印で表されているように、括約筋44が締めつけられる。
【0097】
当業者にとって明らかなように、第一および第二マグネット122および124は、組織の望ましい位置付けを果たすため、大きさ、構成、および位置を様々な配列に為すことができる。
【0098】
図示されている実施態様では、マグネット122および124は、幽門42の表面の輪郭に近づけるべく、凹状または扇形の形状に為されている。
【0099】
図22および23に描かれている別の実施態様では、マグネット122および124を生体適合性の織物または他の適切なマトリックス130内に適用し、この後、図22に描かれているように、前述のマトリックス130を、幽門42の互いに対向する側の外面に縫合糸131を用いて取り付けることができる。図23は、矢印で表されているように、埋め込まれたマグネット122と124との間の磁気引力によって引き起こされる組織の動きを示している。
【0100】
代替的に、マグネット122および124を生体適合性の織物または他の適切なマトリックス130内に適用し、この後、図25に矢印で表されている如き組織の動きをもたらするように、図24に描かれているように、前述のマトリックス130を、幽門42の互いに対向する側の内面に縫合することもできる。
【0101】
埋め込みおよび取り付けは共に、通常の腹腔鏡検査手順により果たすことができる。望ましくは、マグネット122および124は不活性な形態で、即ち、磁化されていない形態で埋め込まれ、または取り付けられる。次いで、マグネット122および124は、この手順の後、所望の磁性を付与するように磁場に曝露することにより活性化することができる。磁気特性を有する物質が磁場(マグネットを取り囲む領域)におかれると、この磁場の強さが物質内に磁化力Hを引き起こし、物質は、このHに応じて、およびこの物質の磁化率I/Hに応じて、特定の磁化Iを獲得する。
【0102】
望ましい場合には、マグネット122および124は、その後の外科的な手順により、例えば腹腔鏡検査手順により取り除くことができる。一つの好適な実施態様では、マグネット122および124は、埋め込み後、または取り付け後、これらのマグネットを選択的に不活性化、即ち、脱磁化することができるように構成される。脱磁化は磁気特性の消失をもたらす。
【0103】
不活性な状態の場合、マグネット122および124はもはや幽門42の締めつけを果たすことができない。このような実施形態は、マグネット122および124を取り除くための以降の外科的手順の必要性を排除する。
【0104】
当業者にとって明らかなように、不活性化されたマグネット122および124は、前述の如く磁場に曝露することにより、選択的に再活性化、即ち、「再磁化」することができる。
【0105】
C.幽門バンド
幽門42を締めつけるための更なる別のシステムでは、胃の空化を遅延化するため及び/又は胆汁逆流を低減させるため、締結機構を有する締めつけメンバーを幽門42の外周に巻き付けることができる。更に、このメンバーは、胃の最大容量を低減することにより過食を防止する。これらの締めつけメンバーおよび締結機構は様々に構成され得ることを理解すべきである。
【0106】
図26〜28はこのようなシステムの一つの実施態様を示しており、この実施態様では、締めつけメンバーはケーブルタイ形態のバンド132であり、これにより、医師は、患者の個々の解剖学に合わせてバンド132の直径を調節することができる。バンド132はヘッド部分134、ストラップ136、およびタブ138を含む。
【0107】
タブ138は、望ましくは、鋸歯状の刻み目が付けられており、ヘッド134に設けられたスロット140を通過できるように構成されている。タブ138を引っ張ることによってタブ138をスロット140を通じて進めることにより、バンド132の直径が減少する。逆に、スロット140を通じてタブ138を逆方向に移動させることにより、バンド132の直径が増大する。ヘッド134は、バンド132を所望の直径で固定および安定化させるためのロック/解放用のツメ142を含むことができる。
【0108】
一つの好適な実施態様では、ストラップ部分136は、縫合糸取り付け用部位144、例えば穴を含んでいる。これらの縫合糸取り付け用部位144により、バンド132を組織に確保するように、縫合糸131を通すことが可能になる。
【0109】
使用に際し、医師は、通常の腹腔鏡検査手順により、幽門42の周りにバンド132を外科的に埋め込む。幽門42の所望の締めつけをもたらす直径を得るべく、タブ138がスロット140に通される。ロック用のツメ142を活動化させることにより、例えばタブ138を上向き方向に操作することにより、この所望の位置が確保される。望ましい場合には、縫合糸取り付け部位144を利用して、バンド132が適所に縫合される。
【0110】
図29〜31は、このようなシステムの別の実施態様を示しており、この実施態様では、締めつけメンバーはベルト様の形態のバンド148であり、これにより、医師は、患者の個々の解剖学に合わせてバンド148の直径を調節することができる。バンド148は本体部分150、タブ152、およびバックル154を含む。
【0111】
タブ152は、バックル154に設けられたスロット156を通過できるように構成されている。タブ152は、望ましくは、スロット156を容易に通過できるようにするためのテーパー付き端部領域158を含んでいる。タブ152を引っ張ることによって本体部分150をスロット156を通じて進めることにより、バンド148の直径が減少する。逆に、スロット156を通じて本体150を逆方向に移動させることにより、バンド148の直径が増大する。本体150は、バンド148を所望の直径に確保するためにバックル154と契合する一連の穴159を含んでいる。
【0112】
一つの好適な実施態様では、本体部分150は、縫合糸取り付け用部位160、例えば穴を含んでいる。これらの縫合糸取り付け用部位により、バンド148を組織に確保するように、縫合糸131を通すことが可能になる。
【0113】
使用に際し、医師は、通常の腹腔鏡検査手順により、幽門42の周りにバンド148を外科的に埋め込む。幽門42の所望の締めつけをもたらす直径を得るべく、タブ152がスロット156に通される。バックル154を閉じることにより、この所望の位置が確保される。望ましい場合には、縫合糸取り付け部位160を利用して、バンド148が適所に縫合される。
【0114】
どちらの実施態様においても、バンド132または148は、望ましくは、腹腔鏡検査手順によって除去可能であり、これにより、幽門42の長期間にわたる収縮に関連する問題を回避することができる。バンド132または148が除去可能であるため、これらは、一時的な使用、例えば病的肥満症の初期治療に非常に適している。
【0115】
使用される装置の如何にかかわらず、幽門括約筋44の締めつけは、幽門括約筋44を通じるチャイムの流出量を制限または規制し、これにより、胃18の内容物の保持時間が延長される。これは、食することに対する物理的なバリヤーを創出するだけでなく、過食する衝動を媒介する満腹感も誘発する。また、幽門括約筋44の制限は、胆汁逆流の発生を低減または防止し、これにより、Barrett食道を含み得る、胆汁を胃18または食道16内の組織に曝露することによる影響を防止または媒介する役割も果たすことができる。
【0116】
III.受容性弛緩を抑制するためのシステムおよび方法
別の技術的な特徴は、近位側の胃の筋肉における受容性弛緩を媒介するためのシステムおよび方法を含む。この神経学的事象の媒介は、胃の広がり、およびこれに付随する胃の体積の増大を抑制するように、胃の筋肉の弛緩、特に基底部および近位側の胃における筋肉の弛緩を抑制する。
【0117】
食物の摂取中における胃の容量の制限は、食事中および食事後の満腹感を長引かせ、これにより、肥満症および他の生理学的状態を導き得る過食の発生率を低減することができる。
【0118】
A.組織治療装置
図32は、神経受容体が存在する胃の領域、例えば噴門26内に展開された、図3に示されているタイプの組織治療装置66を示している(共通の参照番号が使用される)。治療装置66は、可撓性カテーテルチューブ70の端部に担持された作動エレメント74を含んでいる。胃内への治療装置の展開についての詳細は以前に説明されている。医師は、先述の如く、ガイドワイヤーの使用を伴って、またはガイドワイヤーの使用を伴わずに、食道16を通じて、カテーテルチューブ70および作動エレメント74を噴門26に導入することができる。
【0119】
図32の作動エレメント74は1つまたはそれ以上の組織穿通メンバー76を含む。図32に示されているように、作動エレメントは多数の組織穿通メンバー76を担持している。
【0120】
一つの治療様式では、作動エレメント74は、噴門26における組織、噴門26内の組織、または噴門26付近の組織へ、組織穿通メンバー76を通じて選択的な仕方で切除エネルギーを加える役割を果たす。切除エネルギーの適用は、粘膜表面の下側に1つもしくはそれ以上の病変、または予め定められたパターンの病変を創出する。これらの病変は、求心性神経受容体と迷走神経との神経学的な相互作用を、胃に入る食物がこれらの受容体により神経支配された平滑筋を伸展させるときに創出される求心性神経信号を妨害または軽減することにより抑制する。これにより、これらの病変は、受容性弛緩の結果として生じる胃内の更なる筋肉の弛緩および伸展の発生率を抑制または軽減する。表面の組織を切除の標的とすることができ、または、代替的に、粘膜下組織を含め、表面の下側の組織を切除の標的とすることもできる。切除は、組織を伝導組織加熱、電気抵抗組織加熱、もしくは切除剤、またはこれらの組合せに曝露することにより果たすことができる。
【0121】
また、本システムおよび方法は、噴門などの求心性神経受容体が存在する胃の領域内に、求心性神経受容体が存在する胃の領域に、または求心性神経受容体が存在する領域付近に、1つまたはそれ以上の組織穿通エレメント74を通じて神経治療薬を注入することにより、受容性弛緩の妨害または低減に影響を及ぼすこともできる。この神経性物質は、受容性弛緩に影響を及ぼす求心性神経インパルスの妨害または低減を引き起こすように選択される。神経治療薬は、先述の如く、例えば少なくとも1つのサブタイプのバニロイドを含有する化合物を含むことができる。治療薬の注入は、組織の切除を伴って、または組織の切除を伴わずに行われてよい。バニロイド含有治療薬は粘膜の内層へ加えることができ、または噴門26の外側へ外部から加えることもできる。バニロイド含有治療薬は一次療法として適用もしくは注入されてよく、または一次介入前、一次介入中、もしくは一次介入後の補充治療として適用することもできる。傷を誘発するために切除エネルギーが使用されてよく、この後、バニロイド含有治療薬を適用することにより、活発な傷の治癒が促進される。
【0122】
従って、これらの治療様式は、単独で、または組み合わせて、肥満症を導き得る過食の発生を防止または低減するように、受容性弛緩応答を媒介することができる。
【0123】
B.相補的な磁気マトリックス
図35Aおよび35Bは、受容性弛緩の結果を緩和するための代替的なシステム500を描いている。システム500は、近位側の胃506のそれぞれ前壁および後壁に取り付けられた第一および第二のマトリックス502および504を含んでいる。第一および第二マトリックスは、それぞれが、アレイ状を為すマグネット、それぞれ508および510を担持している。第一マトリックス502のマグネット508および第二マトリックス504のマグネット510は異なる極性の極(即ち、北−南または南−北)を有している。従って、これらのアレイ状を為すマグネット508および510は、図35Bの矢印で示されているように、引き付け合う。磁気作用および磁気引力の原理については以前に検討されている。
【0124】
2つのマトリックス502と504との間の磁気引力は、近位側の胃506における前壁と後壁の互いに離れる方向の拡張または伸展を抑制または軽減する。その結果、たとえ近位側の胃の平滑筋が受容性弛緩により食物を受け入れるべく拡張および伸展するように条件付けられたとしても、マトリックス502および504により発生された磁気引力が拡張を物理的に抑制または軽減する。その結果、これらのマトリックスは、受容性弛緩の結果として生じる近位側の胃における筋肉の更なる弛緩および伸展の発生率を抑制または軽減する。図34Aおよび34Bは、受容性弛緩および食物の摂取の結果として生じる通常の伸展の程度を示している。図35Aおよび35Bは、磁気引力の結果としての軽減された伸展の程度を示している。マトリックス502および504は、受容性弛緩にもかかわらず、胃の容量を低減する役割を果たす。
【0125】
食物の摂取中における胃の容量の制限は、食事中および食事後の満腹感を長引かせ、これにより、肥満症および他の生理学的状態を導き得る過食の発生率を低減することができる。
【0126】
マトリックス502および504は、例えば、縫合糸512などによって近位側の胃の前壁および後壁に取り付けることができる、弾力性のある生体適合性織物または他の適切な材料を含むことができる。
【0127】
いずれかのマグネットアレイ508および510が、磁化されていない材料に磁力を及ぼし得ることを認識すべきである。従って、マグネットアレイ508または510のうちの一方は、残りのマグネットアレイが磁気引力を及ぼすことができる材料、例えば鉄のプレートで置き換えることができる。
【0128】
埋め込みおよび取り付けは共に、通常の腹腔鏡検査手順により果たすことができる。マグネットアレイ508および510は、不活性な形態で、即ち、磁化されていない形態で取り付けられてよい。次いで、マグネットアレイ508および510は、この手順の後、所望の磁性を付与するように磁場に曝露することにより活性化することができる。
【0129】
望ましい場合には、マグネットアレイ508および510は、その後の外科的な手順により、例えば腹腔鏡検査手順により取り除くことができる。
【0130】
先行する説明は、本発明の原理を例証することのみを考慮したものである。その上、当業者であれば、数多くの修飾および変更を容易に為し得るため、本発明を、ここで示され、説明されている構造および操作そのものに限定することは望ましくない。好適な実施態様が記述されているが、詳細は、特許請求の範囲で定義される本発明から逸脱することなく、変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】図1は、ヒト消化器系の解剖図である。
【図2】図2は、ヒト胃の解剖学的断面図である。
【図3】図3は、胃の組織領域を治療するための治療提供システムの概略図である。
【図4】図4Aおよび4Bは、組織穿通メンバーを伴った治療装置を含む、胃の組織領域を治療するためのシステムの概略図であり、図4Aは幽門括約筋組織領域に展開された治療装置を示しており、図4Bは、括約筋のバリヤー機能を増強する目的で、括約筋に治療薬を注入するため及び/又は組織領域を切除するため、組織領域に穿通している治療装置を示している。
【図5】図5Aおよび5Bは、多数の組織穿通メンバーを伴った治療装置を含む、胃の組織領域を治療するためのシステムの概略図であり、図5Aは幽門括約筋組織領域に展開された治療装置を示しており、図5Bは、括約筋のバリヤー機能を増強する目的で、括約筋に治療薬を注入するため及び/又は組織領域を切除するため、組織領域に穿通している治療装置を示している。
【図6】図6は、内視鏡を通じて幽門括約筋組織領域に展開された、図4Aに示されているタイプの組織治療装置の概略図である。
【図7】図7は、標的とする組織領域へ展開するために萎まされた状態で示されている本装置により担持されたバスケットエレメントを伴う、治療薬を注入するための、及び/又は幽門括約筋領域内および幽門括約筋領域の周辺に病変を形成するための治療装置の透視図である。
【図8】図8は、標的とする組織領域において使用する準備が整ったときのように膨らまされた状態で示されている本装置により担持されたバスケットエレメントを伴う、図7に示されている治療装置の透視図である。
【図9】図9は、標的とする組織領域へ本装置を展開するのを助けるガイドワイヤーの通路を示す、図8に示されている治療装置の遠位側端部の側面図である。
【図10】図10から19は、括約筋のバリヤー機能を増強する目的で、括約筋に治療薬を注入するため、及び/又は組織領域を切除するため、胃内への、特には胃の幽門括約筋組織領域への、図7から9に示されている治療装置の展開を示す概略図である。
【図11】図10から19は、括約筋のバリヤー機能を増強する目的で、括約筋に治療薬を注入するため、及び/又は組織領域を切除するため、胃内への、特には胃の幽門括約筋組織領域への、図7から9に示されている治療装置の展開を示す概略図である。
【図12】図10から19は、括約筋のバリヤー機能を増強する目的で、括約筋に治療薬を注入するため、及び/又は組織領域を切除するため、胃内への、特には胃の幽門括約筋組織領域への、図7から9に示されている治療装置の展開を示す概略図である。
【図13】図10から19は、括約筋のバリヤー機能を増強する目的で、括約筋に治療薬を注入するため、及び/又は組織領域を切除するため、胃内への、特には胃の幽門括約筋組織領域への、図7から9に示されている治療装置の展開を示す概略図である。
【図14】図10から19は、括約筋のバリヤー機能を増強する目的で、括約筋に治療薬を注入するため、及び/又は組織領域を切除するため、胃内への、特には胃の幽門括約筋組織領域への、図7から9に示されている治療装置の展開を示す概略図である。
【図15】図10から19は、括約筋のバリヤー機能を増強する目的で、括約筋に治療薬を注入するため、及び/又は組織領域を切除するため、胃内への、特には胃の幽門括約筋組織領域への、図7から9に示されている治療装置の展開を示す概略図である。
【図16】図10から19は、括約筋のバリヤー機能を増強する目的で、括約筋に治療薬を注入するため、及び/又は組織領域を切除するため、胃内への、特には胃の幽門括約筋組織領域への、図7から9に示されている治療装置の展開を示す概略図である。
【図17】図10から19は、括約筋のバリヤー機能を増強する目的で、括約筋に治療薬を注入するため、及び/又は組織領域を切除するため、胃内への、特には胃の幽門括約筋組織領域への、図7から9に示されている治療装置の展開を示す概略図である。
【図18】図10から19は、括約筋のバリヤー機能を増強する目的で、括約筋に治療薬を注入するため、及び/又は組織領域を切除するため、胃内への、特には胃の幽門括約筋組織領域への、図7から9に示されている治療装置の展開を示す概略図である。
【図19】図10から19は、括約筋のバリヤー機能を増強する目的で、括約筋に治療薬を注入するため、及び/又は組織領域を切除するため、胃内への、特には胃の幽門括約筋組織領域への、図7から9に示されている治療装置の展開を示す概略図である。
【図20】図20および21は、括約筋領域に埋め込まれた磁気ソースを示す幽門括約筋領域の概略的な解剖図であり、この磁気ソースは、括約筋のバリヤー機能を増強する目的で、幽門括約筋の別の領域に埋め込まれた材料を磁気力により引き寄せることができるような大きさおよび形状に為されている。
【図21】図20および21は、括約筋領域に埋め込まれた磁気ソースを示す幽門括約筋領域の概略的な解剖図であり、この磁気ソースは、括約筋のバリヤー機能を増強する目的で、幽門括約筋の別の領域に埋め込まれた材料を磁気力により引き寄せることができるような大きさおよび形状に為されている。
【図22】図22および23は、括約筋領域の外面の周りに取り付けられた磁気ソースを示す幽門括約筋領域の概略的な解剖図であり、この磁気ソースは、括約筋のバリヤー機能を増強する目的で、幽門括約筋の別な領域の外面の周りに取り付けられた材料を磁気力により引き寄せることができるような大きさおよび形状に為されている。
【図23】図22および23は、括約筋領域の外面の周りに取り付けられた磁気ソースを示す幽門括約筋領域の概略的な解剖図であり、この磁気ソースは、括約筋のバリヤー機能を増強する目的で、幽門括約筋の別な領域の外面の周りに取り付けられた材料を磁気力により引き寄せることができるような大きさおよび形状に為されている。
【図24】図24および25は、括約筋領域の内面の周りに取り付けられた磁気ソースを示す幽門括約筋領域の概略的な解剖図であり、この磁気ソースは、括約筋のバリヤー機能を増強する目的で、幽門括約筋の別な領域の内面の周りに取り付けられた材料を磁気力により引き寄せることができるような大きさおよび形状に為されている。
【図25】図24および25は、括約筋領域の内面の周りに取り付けられた磁気ソースを示す幽門括約筋領域の概略的な解剖図であり、この磁気ソースは、括約筋のバリヤー機能を増強する目的で、幽門括約筋の別な領域の内面の周りに取り付けられた材料を磁気力により引き寄せることができるような大きさおよび形状に為されている。
【図26】図26は、括約筋のバリヤー機能を増強する目的で幽門括約筋の外面の周りに取り付けることができるような大きさおよび形状に為されたバンドの一つの実施態様の透視図である。
【図27】図27および28は、幽門括約筋の周りに図26に示されているバンドを取り付ける様子を示した解剖学的な透視図である。
【図28】図27および28は、幽門括約筋の周りに図26に示されているバンドを取り付ける様子を示した解剖学的な透視図である。
【図29】図29は、括約筋のバリヤー機能を増強する目的で幽門括約筋の外面の周りに取り付けることができるような大きさおよび形状に為されたバンドの別な実施態様の透視図である。
【図30】図30および31は、幽門括約筋の周りに図29に示されているバンドを取り付ける様子を示した解剖学的な透視図である。
【図31】図30および31は、幽門括約筋の周りに図29に示されているバンドを取り付ける様子を示した解剖学的な透視図である。
【図32】図32は、胃の噴門における組織領域を治療するための治療装置の概略的な解剖図であり、胃の平滑筋の応答性弛緩を媒介する目的で組織領域に治療薬を注入するための、及び/又は組織領域を切除するための組織穿通メンバーを伴った治療装置を含んでいる。
【図33A】図33Aは、食物の摂取によりもたらされる応答性弛緩前の胃の概略的な解剖学的側面図である。
【図33B】図33Bは、応答性弛緩前の図33Aに示されている胃の概略的な解剖学的上面図である。
【図34A】図34Aは、食物の摂取中における応答性弛緩および伸展後の胃の概略的な解剖学的側面図である。
【図34B】図34Bは、食物の摂取中における応答性弛緩および伸展後の図34Aに示されている胃の概略的な解剖学的上面図である。
【図35A】図35Aは、食物の摂取中における応答性弛緩および伸展後の胃の概略的な解剖学的側面図であり、食物の摂取中における伸展および拡張の程度を抑制または軽減するための磁気マトリックスの存在を示している。
【図35B】図35Bは、図35Aに示されている胃の概略的な解剖学的上面図であり、(図34Bとの比較において)食物の摂取中における伸展および拡張の程度を抑制または軽減するのに役立っている磁気マトリックスの存在を示している。
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、それぞれが参照により本明細書に組み入れられる、現在、米国特許第6,009,877号となっている、1998年2月19に出願された米国特許出願第09/026,296号の一部継続出願である、1999年5月4日に出願された米国特許出願第09/304,750号の継続出願である「Systems and Methods for Forming Composite Lesions to Treat Dysfunctions in Sphincters and Adjoining Tissue」と題する、2002年5月24日に出願された同時係属米国特許出願第10/155,294号の恩典を主張するものである。
【0002】
発明の分野
一般的な意味において、本発明は、身体の内部組織領域を治療するためのシステムおよび方法に関するものである。より詳細には、本発明は、噴門および幽門括約筋を含む、胃の内部および周辺の組織を治療するためのシステムおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
A.肥満症
世界中に3億人を超える肥満した成人がいるものと見積もられている。肥満症は、各個人の年齢、身長、および性別を考慮に入れた推奨体重を20パーセントから25パーセント超えた体重を有する状態として定義されている。通常、肥満症は、過食および運動不足(言い換えれば、燃焼するカロリーより多くのカロリーを摂取すること)によりもたらされる。肥満した人のうち、代謝障害による肥満は小さな割合にすぎない。
【0004】
肥満症は事実上すべての年齢群および社会経済群を冒す。肥満症は数多くの身体的および精神的な健康上の成り行きを有している。肥満した人は、高血圧、2型(インスリン非依存型)糖尿病、冠状動脈心疾患、骨関節炎、痛風などの身体的疾患、ならびに子宮内膜癌、前立腺癌、結腸癌、および閉経後乳癌などの特定のタイプの癌に罹る危険性が高い。身体的な疾患に加え、肥満した人の場合、抑鬱症、自己尊重の念の低下、摂食障害、およびゆがんだボディーイメージなどの心理学的障害も起こり得る。
【0005】
肥満した状態であることの社会的な成り行きは重大である。肥満した人が仕事の世界、学校、および社会的な状況下で差別に遭うことは珍しくない。肥満症は、肥満者を個人的な嘲笑にさらし、更にはレクリエーション活動や衣服の選択に制限を加えることもある。早死にする危険性が高いことから始まって、全体的な生活の質を低下させる深刻な慢性的状態に至るまで、肥満症は、肥満症に冒されている人々にとって重大な問題である。
【0006】
肥満症における一貫した共通の特徴は、摂取するカロリーの量と消費するエネルギーの量の不均衡が繰り返されることである。肥満した人のうち小さな割合の肥満者は、エネルギー消費が低いため、僅かなカロリーしか摂取しないにもかかわらず過剰なボディー・マスを維持する。しかし、より一般的には、肥満した人は大量のカロリーを摂取しており、これがボディー・マスを維持または増大させている。
【0007】
何故個人が過食して肥満になるのかは多面的な問題である。この問題は心理学的、社会的、および身体的構成要素を含む。ある人は退屈、悲しみ、または怒りなどの好ましくない感情に応答して過食する可能性がある。代替的に、ある人は、高エネルギーの食物を大量に食することと体重増加および肥満症との関わり合いを理解していない可能性がある。より一般的には、人々は、空腹感、社会的な状況、および食物源に絶えずアクセス可能な状態のため、西洋的な生活様式で過食する。
【0008】
空腹感という用語は、食物源を得、摂取することに対する個人の動因の広範囲にわたる知覚作用を表す。空腹感の構成要素は、楽しむための食事や社会的な付き合いの中での食事などの心理学的な動因を含む。身体的な動因は、低血糖症、脱水症、または高レベルの身体的活動を含む。過食することに対する動因は、自己管理の問題;個人に食するよう告げる異常な信号;過食と肥満症との関わり合いについての充分な理解の不足;および他の多くのあり得る理由と密接に関係しているものと考えられる。
【0009】
空腹感および摂食へ導く身体的プロセスと心理学的プロセスは密接に関わり合っている。本明細書で更に検討される胃および十二指腸は、神経連結を介して、更には血流中に分泌されるホルモンにより脳と連絡している。各構造は、食することが必要であるという個人の知覚作用を導き得る信号を促進する。これの一例が、前回の食事から特定の時間が経過したことを指示するフェーズである「おなかがグーグー鳴る」状態である。人は、典型的には、この活動を空腹と解釈する。
【0010】
空腹感の反対は満腹感である。満腹感は、食事を摂った後に起こるおなかが満ちた感覚である。人は、食事後に充分に満足した感覚を持ったときに満腹であると言う。
【0011】
肥満症によりもたらされる重大な医学的および社会的合併症のため、様々な治療が一般的に行われている。これらの治療法は、肥満症のレベル、個人の全体的な健康状態、および体重を減らそうという個人の動機付けなどの様々な要因に基づいている。
【0012】
治療は食事の変更、運動、行動の変更、体重減少薬(例えばデクスフェンフルラミン、シブトラミン、オルリスタット)を含み得る。肥満症が個人の生命を脅かすサーブの場合には、胃腸の手術を行うこともあり得る。伝統的な手術技法は、典型的には、胃ステープル吻合術、胃バイパス形成術、または胃の上部周辺に膨張可能なバンドを移植する方法など、胃袋を小さくすることに焦点を当てている。より一般的には、これらの要因の組合せを利用した多面的な手法が用いられる。
【0013】
B.胃食道逆流病
胃腸逆流病(GERD)は、胃の内容物が食道へ逆流することによりもたらされる食道の炎症である。症候性患者の場合、逆流は、食道を胃の流れから遮断する筋肉線維のバンドである下部食道括約筋(LES)の不全と関係している。酸性またはアルカリ性の胃内容物がLESを通って食道へ戻り、症状を引き起こす。
【0014】
GERDは、食道内への酸性逆流の存在を増強する状態の組合せにより引き起こされるものと信じられている。これらの状態は、一過性のLES弛緩、LESの静止時緊張の低下、食道クリアランス異常、胃の空化遅延、唾液分泌減少、および組織抵抗性異常を含む。下部食道括約筋の静止時緊張は筋原性(筋肉)メカニズムと神経原性(神経)メカニズムの両者により維持されているため、ある者は、下部食道括約筋または胃の周辺領域(噴門と呼ばれている)における異常な電気信号がこの括約筋の自然発生的な弛緩を引き起こしていると信じている。
【0015】
GERDの最も一般的な症状は胸やけである。胸やけの不快感のほかに、逆流は、嚥下痛(飲み込む際の痛み)および嚥下困難(飲み込むのが困難な状態)などの食道炎症の症状をもたらす。また、酸性逆流は、咳、喘鳴、喘息、吸引性肺炎、および間質性線維症などの肺症状;エナメル質齲蝕、歯肉炎、口臭、および胃液の逆流か口中に生唾がたまる胸やけなどの口腔症状;ひりひりする痛み、喉頭炎、声のしゃがれ、および喉にボール状のものを感ずる息詰まり感などの咽喉症状;ならびに耳痛も引き起こし得る。
【0016】
GERDの合併症は食道糜爛、食道潰瘍、および食道狭窄;異常な(Barrett)上皮による正常な食道上皮の置換;ならびに肺吸引を含む。
【0017】
C.Barrett食道
Barrett食道は、食道の内層が胃食道逆流(GERD)によりもたらされた刺激に応答して細胞変化を起こす障害である。GERD患者のうち小さな割合の患者にBarrett食道が発現する。食道の内層を形成する正常な細胞、扁平上皮細胞が、特殊化円柱細胞と呼ばれる、ヒトでは通常見られないタイプの細胞に変わる。Barrett食道の診断は、典型的には、内視鏡を用いて食道を観察し、食道組織のサンプルを得ること(生検を伴う食道鏡検査)により行われる。
【0018】
Barrett食道は、酸の調節にもかかわらず胃内に酵素および胆汁が存在するGERD及び/又は胆汁逆流によりもたらされた損傷によって引き起こされるものと信じられている。ある人々の場合には、胃内への異常な胆汁の逆方向への流れ(逆流)が存在する。このねばねばした胆汁の逆流が原因となって、胃は、アルカリ性である胆汁を中和しようと多量の酸を分泌する。この過剰な酸は、鼓腸、およびLESへの圧力増加を引き起こし、その結果、GERDをもたらすことが多い。従って、症状はGERDの場合と同様であり、胸やけおよび嚥下困難を含む。
【0019】
胆汁の逆流がBarrett食道の病因論における一部を担っていることを示す証拠が増えつつある。胆汁による胃粘膜への損傷は、水腫および腸異形成が顕著な「化学性」胃炎をもたらす。
【0020】
重篤な合併症はBarrett食道と関連付けられている。これらの合併症は食道形成異常および食道癌のリスク増大を含む。
【0021】
伝統的な治療は、GERDを抑制するための一般的な処置、薬物適用、および前述の手術を含む。生検が癌のリスク増大と関連付けられる形成異常細胞の変化を指示している場合などのもっと重篤なケースでは、手術による食道の一部の除去(食道の切除)が実施される場合もある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0022】
発明の概要
本発明は、肥満症および胃腸管に影響を及ぼす他の状態を治療するシステムおよび方法を提供する。
【0023】
本発明の一つの側面は幽門括約筋の締めつけを達成する。幽門括約筋の締めつけは単独または複数の生理学的目的を果たすことができる。締めつけは、例えば、食事後の満腹感を長引かせ、これにより、肥満症および他の生理学的状態を導き得る過食の発生率を低減するため、幽門括約筋を通る胃からの物質の流出量を制限または規制することができる。幽門括約筋の締めつけは、例えば、酸、酵素、および胆汁、または他の流体と胃及び/又は食道との接触によりもたらされる影響を防止または媒介するため、幽門括約筋を通るこれらの物質の胃内への逆方向の流れを制限またはまたは規制することができる。本システムおよび方法は一次治療様式として使用することができ、または一次介入前、一次介入中、もしくは一次介入後の補充治療として適用することもできる。
【0024】
本発明のこの側面によれば、本システムおよび方法は、例えば幽門括約筋内の組織、幽門括約筋における組織、または幽門括約筋付近の組織を切除することにより幽門括約筋の締めつけに影響を及ぼすことができる。表面の組織を切除の標的とすることができ、または、代替的に、粘膜下組織、括約筋自体、もしくは括約筋の周辺領域を含め、表面の下側の組織を切除の標的とすることもできる。切除は望ましい組織応答を誘発し、この応答は、例えば、白血球および線維芽細胞の流入を含む限局的な治癒プロセスの開始、これに続くコラーゲンの堆積、ならびにその後に生じる組織のコンプライアンスの復元および締めつけを含むことができる。これらの効果は幽門括約筋のバリヤー機能の増強をもたらすであろう。切除は、組織を伝導組織加熱、電気抵抗組織加熱、もしくは切除剤、またはこれらの組合せに曝露することにより果たすことができる。
【0025】
本発明のこの側面によれば、本システムおよび方法は、例えば望ましい組織締めつけ応答を誘発する治療薬を注入することにより幽門括約筋の締めつけに影響を及ぼすこともできる。このような治療薬は、例えば少なくとも1つのサブタイプのサイトカイン(限局的な治癒プロセスを開始させることができる)、及び/又は少なくとも1つのサブタイプのバニロイド含有化合物(幽門括約筋に影響を及ぼす求心性神経インパルスの妨害を引き起こすことができる)を含むことができる。また、本システムおよび方法は、例えば組織充填剤を含み得る治療薬を注入することにより幽門括約筋の締めつけに影響を及ぼすこともできる。充填剤の存在は、付加的な組織のコンプライアンスの復元および締めつけをもたらし、これにより、括約筋のバリヤー機能が増強される。
【0026】
本発明のこの側面によれば、本システムおよび方法は、例えば磁気力を利用することにより、または収縮性のベルトもしくはバンドによって組織を取り囲むことにより、例えば幽門括約筋における組織または幽門括約筋付近の組織を密接に隣接した関係へ向けて物理的に駆り立てることにより幽門括約筋の締めつけに影響を及ぼすこともできる。
【0027】
本発明のこの側面によれば、本システムおよび方法は、組合せまたは種々の異なる治療様式により幽門括約筋の締めつけに影響を及ぼすことができる。例えば、本システムおよび方法は、治療薬または物理的な締めつけ装置の適用と協同して、少なくとも1つの病変を形成するように、組織領域へエネルギーを適用することができる。
【0028】
本発明の別の側面は、食物塊が胃内へ入ることによりもたらされる平滑筋の伸展により誘発される求心性神経信号に応じた胃の筋肉の受容性弛緩を媒介する。この神経学的事象の媒介は、食事中における胃の体積の増大を抑制または軽減するため、特にフォンダスにおける胃の筋肉の更なる弛緩および伸展を抑制することができる。食物の摂取中における胃の容量の制限は、食事中および食事後の満腹感を長引かせる。これは、延いては、肥満症および他の生理学的状態へ導き得る過食の発生率を低減または軽減するのに役立つ。本システムおよび方法は一次治療様式として使用することができ、または一次介入前、一次介入中、もしくは一次介入後の補充治療として適用することもできる。
【0029】
本発明のこの側面によれば、本システムおよび方法は、例えば噴門における受容性弛緩を誘発する求心性神経受容体が存在する胃の領域内の組織、求心性神経受容体が存在する胃の領域における組織、または求心性神経受容体が存在する胃の領域付近の組織を切除することにより、神経学的な活動を抑制する。これらの神経受容体は、食物の摂取による胃の筋肉の予備的な伸展によって刺激されると、神経信号を伝達し、この神経信号は、迷走神経との相互作用により、例えば基底部における胃の筋肉の更なる弛緩を命令し、これにより、胃は伸展し、更に大きな体積の嚥下物質を受け容れることができるように条件付けられる(このプロセスは受容性弛緩と呼ばれている)。これらの神経受容体内の組織、神経受容体における組織、または神経受容体付近の組織の切除は、神経信号の伝達を妨害する病変の形成を誘発し、これにより、受容性弛緩が抑制または緩和される。このようにして、胃の筋肉の更なる弛緩および伸展が媒介される。
【0030】
表面の組織を切除の標的とすることができ、または、代替的に、粘膜下組織を含め、表面の下側の組織を切除の標的とすることもできる。切除は、組織を伝導組織加熱、電気抵抗組織加熱、もしくは切除剤、またはこれらの組合せに曝露することにより果たすことができる。
【0031】
本発明のこの側面によれば、本システムおよび方法は、噴門などの求心性神経受容体が存在する胃の領域内に、求心性神経受容体が存在する胃の領域に、または求心性神経受容体が存在する胃の領域付近に神経治療薬を注入することにより、受容性弛緩応答の妨害または軽減に影響を及ぼすこともできる。この治療薬は受容性弛緩に影響を及ぼす求心性神経インパルスの妨害をもたらす。このような神経治療薬は、例えば少なくとも1つのサブタイプのバニロイド含有化合物を含むことができる。治療薬の注入は、組織の切除を伴って、または組織の切除を伴わずに行われてよい。
【0032】
本発明の更に別の側面は、食物の摂取中における胃の拡張を軽減することにより肥満症を治療するためのシステムおよび方法を提供する。本システムおよび方法は、胃のある領域に取り付けられた磁気ソースを含む。この磁気ソースは、胃の別の領域に取り付けられた材料を磁気力により引き寄せることができるような大きさおよび形状に為されている。この磁気引力が、食物の摂取中における胃の拡張を軽減する。
【0033】
本発明のこれらの側面および他の側面の特徴および利点が以下の「説明および図面」ならびに添付の特許請求項で明らかにされる。
【0034】
詳細な説明
本明細書の開示は詳細であり、当業者が本発明を実践できるように正確に為されているが、本明細書で開示されている物理的な実施態様は、他の特定の構造でも具体化され得る本発明を例証しているにすぎない。好適な実施態様が説明されているが、その詳細は、特許請求項で定義される本発明から逸脱することなく変更することができる。
【0035】
I.消化器系の解剖学
図1および2は、ヒト消化器系10を詳細に示している。消化器系10は、口12から肛門14まで長く曲がりくねった管の形態でつながっている一連の中空器官からなっている。消化は、食物を咀嚼して飲み込む口12から始まる。食物および飲み物を身体が利用できる栄養物に変換するためには、食物は、血流中に吸収され、身体の細胞に輸送される前に、もっと小さな分子に変換されなければならない。食物が小さな部分に分解されると、身体は、新たな細胞を構築するため、更にはエネルギーを供給するためにこれらの食物の小さな部分を使用することができる。
【0036】
消化は、食物の混合、消化管10を通じる食物の移動、および大きな断片から小さな分子への食物の分解を含む。食物は、消化器系10の中空器官が筋肉を含んでおり、これらの筋肉によって壁部が可動に為されているため、これらの中空器官を通じて移動する。器官の壁部の運動は、消化管10を通過するように食物および液体を押し進める。食道16、胃18、および小腸20のこの運動は蠕動と呼ばれている。蠕動は、輪状の収縮波に似ている。
【0037】
食物は口12を通じて消化器系10へ入り、飲み込まれる。飲み込まれた食物は食道16へ押し進められる。食道16は、喉22から胃18まで延びる筋肉の管である。この後、食物は、食道16を通過し、胃18へ入る。
【0038】
胃18は、平均的な成人で1.5リットルの容量を有する総体的にJ字形の嚢であるが、膨張し、4リットルまで持ちこたえることができる。食物は、下部食道括約筋(LES)24と呼ばれる開口を通じて胃の近位側端部から胃18に入る。LES24は食道16と胃18の間の通路を閉じている。しかし、食物がLES24に近付くと、周辺の筋肉が弛緩し、食物は胃18内へ入ることが可能になる。
【0039】
胃18は4つの部分を有している。第一の部分である噴門26はLES24を取り囲んでいる。第二の部分は基底部28であり、LES24のレベルよりも高い所に位置する小さな丸形の領域である。基底部28は、空気、流体、及び/又は食物が嚥下されることにより拡張され得る。胃18の第三の部分、本体30は、大きな中央部である。本体30は、基底部28と胃18の第四の部分との間にあり、この第四の部分は、幽門部または幽門領域32として知られている。
【0040】
胃18のこれらの4つの部分に加え、2つの湾曲部も存在する。胃18の小さい方の湾曲部34は短い凹面境界を形成しており、一方、大きい方の湾曲部36は胃18の長い凸面境界を形成している。
【0041】
従って、胃18は、噴門26、基底部28、および本体30の上方部分を含む近位側領域を有している。この近位側領域の役割は、食物を受け入れ、その後の消化のために貯めておくことである。胃18は、本体30の下方部分および幽門部32を含む遠位側領域も有している。この遠位側領域の役割は食物を粉砕することである。
【0042】
食物が胃18へ入った後に果たされねばならない3つの仕事がある。胃18は、小腸20に放出できるようになるまで、嚥下された食物および液体を貯蔵しておかなければならない。貯蔵を行えるようにするため、食物塊が胃の中へ入って来ると、胃18の基底部28の平滑筋は、伸展して、胃内部の圧力を高めることなく大きな体積の嚥下物質を受け入れることができるように弛緩する。この現象は、近位側の胃の受容性弛緩と呼ばれている。図33A/Bは食物摂取前の胃18を示しており、図34A/Bは、近位側の胃の受容性弛緩が生じた後の胃18を示している。
【0043】
受容性弛緩は、主として噴門における胃平滑筋の神経受容体の求心性刺激によって迷走神経により媒介される。胃の平滑筋は、広範囲の筋肉長さにわたって一定の張力を維持することができる柔軟性を有している。しかし、特定の伸展レベルを超えると、神経受容体が脱分極して求心性神経信号を迷走神経へ送り、次に、この迷走神経が、基底部28および近位側の胃における平滑筋の弛緩を導く遠心性神経信号を送る。この弛緩によって、基底部28は、伸展し、これにより、更に多くの体積の食物を収容することができるように条件付けられる。
【0044】
第二の仕事では、胃18は、摂取された栄養素を攪拌する。この攪拌により、摂取された栄養素は小さな粒子に細かく砕かれる。これらの小さな粒子が胃液と混合され、キームスと呼ばれる液体混合物を生成する。
【0045】
胃18の第三の仕事は、栄養素を吸収することができる小腸20へ胃の内容物をゆっくりと移すことである。
【0046】
食物が胃18に入るとすぐに、基底部28および胃本体30の特殊化された細胞で蠕動が始まる。これらの細胞は平滑筋ペースメーカー細胞として知られている。ペースメーカー細胞は、1分当たり3回から4回の割合で生じる、ゆっくりとした蠕動波をもたらす。このゆっくりとした蠕動波が胃18の内容物を混合する。これらの律動的な収縮は、胃18の基礎電気律動、またはBERとして知られている。これらの蠕動波は、遠位側の胃を通り、幽門括約筋44へ向けて下向きに伝わる。
【0047】
幽門領域32は漏斗形を為している。幽門洞38として知られている広い部分は幽門管40へと続いている。幽門管40は幽門領域32のうちで最も狭い部分である。幽門領域32の遠位側端部には幽門42がある。幽門42は厚くなっており、幽門括約筋44を形成するように、その遠位側端部に幽門括約筋を形成している。幽門括約筋44は、胃18の液化内容物(即ち、チャイム)の十二指腸46への放出を調節する。幽門括約筋44は、胃内の流体が十二指腸46内へ通れるようにするときを除き、通常は閉じている。胃18は十二指腸46とつながっている。十二指腸46は、小腸20の近位側端部におけるC字形の区域である。
【0048】
幽門領域32が満ち始めると、強い蠕動波がキームスを切り刻む。キームスは幽門管40を通じて押し進められる。各波毎に、少量のキームスが幽門括約筋44を通じてポンピングされる。キームスは、幽門ポンプとして知られているメカニズムにより、幽門括約筋44を通過するよう押しやられる。幽門括約筋44の狭さおよび強さにより、多量のキームスが幽門領域32へ戻される。戻されたキームスは、蠕動波により更に切り刻まれる。
【0049】
食物が胃18内に保持される時間は様々であるが、胃18は、通常、3時間から5時間で空になる。胃18は胃の内容物を十二指腸46に徐々に移す。空化の過程で、蠕動波は胃18の本体30を上へ動かす。そうすることにより、蠕動波は、すべてのキームスが幽門領域32内へ押しやられることを確実化する。
【0050】
胃18が食物と分泌液の混合物を小腸48に移した後、消化のプロセスを継続するように、他の2つの消化器の分泌液が食物と混ざる。これらの器官のうちの一つは膵臓50である。膵臓は、食物中の炭水化物、脂肪、およびタンパク質を分解するための広範囲にわたる一連の酵素を含む分泌液を産生する。消化プロセスにおいて活動する他の酵素は、腸20の壁部にある腺から、更にはこの壁部の一部からもたらされる。
【0051】
肝臓52は更に別の消化液(胆汁と呼ばれる)を産生する。胆汁は、食事してから次の食事までの間、胆嚢54内に貯えられる。胆汁は肝臓52により分泌され、消化プロセスで必要になるまで、肝臓から胆嚢管56および肝管58を介して胆嚢54へ送られる。胆嚢54は、正常に機能しているときには、蠕動および吸収を促進することにより消化を助け、腐敗を防ぎ、脂肪を乳化するため、胆管60を通じて胆汁を十二指腸46に移す。食事のときには、胆汁は、胆嚢54から胆管60内へ絞り出され、腸20に達し、食物中の脂肪と混ざる。胆汁酸は、フライパンから油を溶解する界面活性剤と非常によく似て、脂肪を腸20の水様内容物に分解する。脂肪は、溶解された後、膵臓50および腸20の内層からの酵素により消化される。
【0052】
食物の消化された分子、ならびに食事からもたらされた水および無機質は、上部小腸20の腔から吸収される。殆どの吸収された物質は粘膜を横断して血液に入り、貯蔵または更なる化学変化のため、血流に乗って身体の他の部分に運ばれる。残った食物の粒子は、小腸20を通じて大腸62内へ進められ、最終的に、肛門14を通じて排泄するため、直腸64へ送られる。
【0053】
II.幽門括約筋または幽門括約筋に隣接した組織領域を締めつけるためのシステムおよび方法
本明細書の一つの側面は、身体における括約筋および括約筋に隣接した組織領域内の組織、括約筋および括約筋に隣接した組織領域における組織、または括約筋および括約筋に隣接した組織領域付近の組織を締めつけるための様々なシステムおよび方法を開示する。本システムおよび方法は幽門括約筋44を締めつけるのに特に優れて適している。この理由から、本システムおよび方法はこの状況において説明される。とは言え、開示されているシステムおよび方法は、コンプライアンスを回復させるため、もしくは別な仕方で他の括約筋領域(例えば下部食道括約筋または肛門括約筋)、更には一般的に他の内部組織または筋肉領域を締めつけるためにも適用可能であることを認識すべきである。また、本発明の特徴を具体化するこれらのシステムおよび方法は、必ずしもカテーテルをベースとしないシステムおよび手術技法での使用にも適用可能である。
【0054】
幽門括約筋44の締めつけは、胃18の空化を遅延化または規制する。従って、幽門括約筋の締めつけは肥満症を治療するための方法を提供する。胃18の空化を遅延化または規制することにより、食事中及び/又は食事後の満腹感を長引かせることができる。それ故、少なめの食物を少なめの頻度で摂取することとなり、その結果、長い時間をかけた体重減少がもたらされる。
【0055】
また、幽門括約筋44の締めつけは、幽門42を通じる胃18内への胆汁逆流の発生率を低減することもできる。従って、幽門括約筋の締めつけは、例えば胸やけ、GERD、およびBarrett食道などの、胆汁が胃18及び/又は食道16の内層を形成する組織と接触することによりもたらされる影響を防止または媒介する方法を提供する。
【0056】
様々な治療様式を用いて幽門括約筋44の締めつけに影響を及ぼすことができる。幾つかの代表的な様式について説明する。
【0057】
A.組織治療装置
幽門括約筋44の締めつけに非常に適した組織治療装置66が図3に示されている。装置66は、例えば成形プラスチックでできたハンドル68を含んでいる。ハンドル68は可撓性のカテーテルチューブ70を担持している。カテーテルチューブ70は、例えば、ビニル、ナイロン、ポリ(エチレン)、イオノマー、ポリ(ウレタン)、ポリ(アミド)、およびポリ(エチレンテレフタラート)の如き、標準的な可撓性の医療用グレードのプラスチック材料を用いて構成することができる。ハンドル68は、カテーテルチューブ70を幽門括約筋44の領域へ導入するように、医師が把持するのに都合のよい大きさに為されている。カテーテルチューブ70は、ガイドワイヤー72の使用を伴って、またはガイドワイヤー72の使用を伴わずに展開されてよい(図12も参照のこと)。
【0058】
カテーテルチューブ70は、遠位側端部に作動エレメント74を担持している。
【0059】
作動エレメント74は1つまたはそれ以上の組織穿通メンバー76を含んでいる。図4Aに示されているように、単一の組織穿通メンバー76が使用されてよい。メンバー76の伸長は、図4Bに見られるように、このメンバーによる隣接組織の穿通をもたらす。代替的に、図5Aおよび5Bに示されているように、作動エレメント74は様々な形態の多数の組織穿通メンバー76を担持することもできる。望ましくは、以降でもっと詳細に説明されているように、これらの多数の組織穿通メンバー76は間隔を空けてアレイ状に配列される。
【0060】
一つの治療様式では、作動エレメント74は、選択的な仕方で、組織穿通メンバー76を通じて、幽門括約筋44における組織、幽門括約筋44内の組織、または幽門括約筋44付近の組織へ切除エネルギーを加える役割を果たす。切除エネルギーの適用は、粘膜表面の下側に1つもしくはそれ以上の病変、または予め定められたパターンの病変を創出する。エネルギーの選択的な適用による病変の形成は創傷事象を引き起こす。これらの病変の自然な治癒は、標的とした隣接組織を締めつける。治癒プロセスは、病変の周辺組織の収縮をもたらし、病変周辺組織の体積を減少させ、または別な仕方で病変周辺組織の生体力学的な特性を変える。治癒プロセスは、幽門42内の平滑筋組織を自然に締めつける。これらの影響は、幽門括約筋44のバリヤー機能の増強をもたらすであろう。
【0061】
病変の形成は単独で行われてもよいし、または治療薬の適用と組み合わせて実施されてもよい。作動エレメント74は、様々な仕方で治療薬を適用できるように構成することができる。例えば、作動エレメント74は、括約筋44を覆っている粘膜組織へ治療薬を直接的に適用することができる。代替的に、作動エレメント74は、括約筋44を覆っている粘膜組織を通じて治療薬を括約筋44へ外部から適用することができる。更に代替的に、作動エレメント74は、図4Bおよび5A/Bに矢印で表されているように、治療薬を組織穿通エレメント76を通じて括約筋44に注入することもできる。病変形成と治療薬適用との生理学的な合同効果は、望ましい生理学的な結果を達成するように相互作用することができる。
【0062】
例えば、治療薬は、例えばサイトカインサブタイプまたは組織充填剤など、幽門括約筋44の物理的な締めつけをもたらす一群の物質から選択することができる。
【0063】
本明細書で使用する場合、「サイトカインサブタイプ」という用語は、他の細胞の機能に影響を及ぼすあらゆるポリペプチドを意味し、免疫応答または炎症性反応における細胞間の相互作用を変調する分子である。サイトカインサブタイプは、これらに限定するものではないが、どの細胞が産生するかにかかわらず、モノカインおよびリンホカインを含む。サイトカイン含有治療薬は括約筋内に注入されてよく、または括約筋44の外側へ外部から加えることもできる。サイトカインは、局所領域内における治癒プロセスを開始させる役割を果たすことができる。このプロセスは、これらに限定するものではないが、白血球およびマクロファージの流入、線維芽細胞の刺激および平滑筋の分裂ならびにコラーゲンの分泌、新たな血管の成長、傷の収縮および締めつけ、新たなコラーゲンフレームワークまたは現存するコラーゲンフレームワークの成熟、および組織コンプライアンスの低減を含む。これらの組織効果は幽門括約筋44のバリヤー機能を改善することができよう。使用され得るサイトカイン物質の例は、組換えヒトPDGF−BBである、商業的に入手可能なRegranexを含む。サイトカイン含有物質は一次療法として適用もしくは注入されてよく、または一次介入前、一次介入中、もしくは一次介入後の補充治療として適用されてもよい。傷の治癒プロセスを誘発するために切除エネルギーが用いられてよく、この後、サイトカインを適用することにより、一層活発な傷の治癒を促進することができる。
【0064】
使用され得る組織充填剤の例はコラーゲン、真皮、死体の同種異系移植片材料、またはePTFE(発泡ポリ−テトラフルオロエチレン)ペレットを含む。組織充填治療物質は括約筋内に注入されてよく、または括約筋44の外側に外部から加えることもできる。組織充填治療物質は一次療法として適用もしくは注入されてよく、または一次介入前、一次介入中、もしくは一次介入後の補充治療として適用されてもよい。所望の効果を達成するように、充填剤の物理的な特性を変えるため、例えば充填材料を膨張または硬化させるため、注入された充填剤に切除エネルギーを加えることができる。
【0065】
別の例として、治療薬は、例えばバニロイド化合物など、一過性の括約筋の関係を誘発する求心性神経インパルスを妨害する一群の物質から選択することができる。本明細書で使用する場合、「バニロイド化合物」という用語は、生物学的に活性なバニリル基を有する化合物または化合物の混合物を意味する。バニロイド化合物は、天然に生じるバニロイドと合成バニロイドの両方を含み、(天然か合成かにかかわらず)バニロイド化合物の薬剤学的に許容可能な塩、ならびに(天然か合成かにかかわらず)これらの化合物の薬剤学的に許容可能な誘導体及び/又は類似体も含む。天然バニロイド化合物の例は、トウガラシ、カイエン胡椒、黒胡椒、パプリカ、シナモン、チョウジ、メース、カラシ、ショウガ、ターメリック、パパイヤ種子、およびサボテン様植物Euphorbia resininifera:からの活性バニロイド化合物の粗製抽出物と精製抽出物の両方を含む。合成カプサイシンなどの合成バニロイド化合物は、参照により本明細書に組み入れられるWO第96/40079号に開示されている。使用され得るバニロイド材料の一例がAfferonにより製造されており、RTXと呼ばれている。バニロイド含有治療薬の使用は、一過性の括約筋の弛緩を誘発する求心性インパルスを妨害する役割を果たすことができ、これにより、括約筋のバリヤー機能が増強される。バニロイド含有治療薬は粘膜内層に加えることができ、または括約筋44の外側に外部から加えることもできる。バニロイド含有治療薬は一次療法として適用もしくは注入されてよく、または一次介入前、一次介入中、もしくは一次介入後の補充治療として適用されてもよい。傷を誘発するために切除エネルギーが使用されてよく、この後、バニロイド含有治療薬を適用することにより、活発な傷の治癒が促進される。
【0066】
従って、これらの治療様式は、単独で、または組み合わせて、幽門括約筋のバリヤー機能を増強することができる。
【0067】
図3に示されているように、治療装置66はシステム78の一部として運転することができる。システム78は外部治療薬送給装置80を含んでいる。ハンドル68に設けられたルアーフィッティング82は、放出用の治療薬を作動エレメント74まで、または作動エレメント74の近くまで送給するように、治療装置66を治療薬送給装置80へ接続するための配管84につながっている。病変の形成が所望の場合には、代替的に、または組み合わせて、システム78は、作動エレメント74にエネルギーを供給するための発生器86を含むことができる。ハンドル68につながれたケーブル88が、発生されたエネルギーを作動エレメント74へ運ぶ。
【0068】
図示されている実施態様では、発生器86は、例えば約400kHzから約10mHzまでの範囲の周波数を有する無線周波数エネルギーを供給する。例えば干渉性もしくは非干渉性の光;加熱もしくは冷却された流体;抵抗加熱;マイクロ波;超音波;組織切除流体;または低温流体などの他の形態の組織切除エネルギーも、勿論、適用することができる。
【0069】
また、システム78は、望ましくは、制御装置90も含んでいる。制御装置90は、発生器86および治療薬送給装置80へつながれている。好適には搭載中央処理装置を含む制御装置90は、所望の治療目的を達するのに適したパワーレベルを達成および維持するため、無線周波数エネルギーが作動エレメント74に分配されるパワーレベル、サイクル、および持続時間を管理する。同時に、制御装置90は治療薬の送給も管理することができる。
【0070】
制御装置90は、望ましくは、入力/出力(I/O)装置92を含んでいる。I/O装置92は、医師が制御変数および処理変数を入力することを可能にし、また、制御装置90が適切な命令信号を発生するのを可能にする。
【0071】
治療部位を直接的に視覚化することができないため、治療装置66は、図6に示されているように、口12を通じ、食道16を下って通る管腔96を有する内視鏡94を用いて導入することができる。この実施形態の場合、カテーテルチューブ70は、内視鏡の管腔96を通じて、幽門括約筋44における標的部位まで、または幽門括約筋44付近の標的部位まで通される。望ましい場合には、内視鏡94および治療装置66の標的部位への展開を容易化するため、ガイドワイヤー72を使用することができる。
【0072】
図7に示されているように、作動エレメント74は膨張可能な構造98を含むことができる。膨張可能な構造98は、選択的に膨張および収縮させることができるバスケットを形成する、アレイ状を為すチューブ状の背100を含む。膨張可能な構造98は、バスケット内で膨張可能な本体102(例えばバルーン)を更に含むことができる。膨張可能な本体102の目的は、幽門42内でバスケットを膨張および収縮させることである。膨らまされたバルーン構造102は、標的とする組織を一時的に拡張させ、これにより、粘膜表面に通常は存在する襞を幾分か、またはすべて取り除く役割を果たす。図7は、収縮させた、または萎ませた状態の膨張可能な構造98を示している。図8は、膨らませた状態の膨張可能な構造98を示している。
【0073】
この実施形態の場合、組織穿通エレメント76は、背100内に担持され、前の場合と同様に伸長および退縮させることができる。エレメント76は、2つの位置の間で選択的に移動することができる。第一の位置は、図7に描かれている、退縮させた位置であり、この位置では、エレメント76は背100内に引き込まれている。第二の位置は、図8に描かれている、伸長させた位置であり、この位置では、エレメント76は、背100の穴を通じて背100から外側へ伸びている。組織穿通エレメント76は電極としての役割を果たし、これらの電極は、双極性の対で配列されてよく、または単極性操作に適した単独の離間した関係で配列することもできる。
【0074】
一つの好適な実施態様が図9に示されている。ここでは、膨張可能な構造98の背100のうちの1つがガイドワイヤー72を通すための管腔104を提供している。この通路は、ガイドワイヤー72上を通過する際の膨張可能な構造98に対する安定性および支持を提供する。管腔104は、膨張可能な構造98の遠位側端部を越えた位置に設けられた遠位側開口106を有している。開口106は、ガイドアセンブリ108を通じて通されたガイドワイヤー72のための出口としての役割を果たす。また、管腔104は、膨張可能な構造98の近位側端部の更に近位側へ延びる近位側開口110も有している。近位側開口110は、ガイドワイヤー72の妨害されない通路を提供するように、カテーテルチューブ70の外面に設けられている。
【0075】
図10を参照しながら説明すると、膨張可能な構造98を展開するため、患者がリクライニング位または半リクライニング位で覚醒した状態で横たわっているときに、バイトブロック112が患者の口に入れられ、適正に位置付けられる。バイトブロック112は、装置66を患者の口腔内へ挿入している間、患者の口を開けておくために使用される。望ましくは、バイトブロック112は把持用ツール114を担持している。把持用ツール114は、装置66を適切な位置に保持しておくために使用される。装置66の外側表面を接触させることにより、把持用ツール114は、装置66をバイトブロック112内の固定位置に維持する。バイトブロック112と把持用ツール114の両者は、参照により本明細書に組み入れられる、「Systems and Methods Employing a Guidewire for Positioning and Stabilizing External Instruments Deployed Within the Body」と題する、2001年12月14日に出願された同時係属米国特許出願第10/017,906号に開示されている。
【0076】
図10に描かれているように、この後、医師は、小さな直径のガイドワイヤー72を患者の口12および咽頭116に通す。ガイドワイヤー72は、食道16を通じて患者の胃18内へ差し向けられる。ガイドワイヤー72の遠位側端部が幽門42内の標的とする部位に位置付けられる。肥満症およびGERDを治療することが目的の場合、標的とする部位は、図2に最良の状態で示されているように、幽門括約筋44および幽門括約筋に隣接した領域である。
【0077】
望ましくは、医師は、標的とする部位を視覚化するため、ガイドワイヤー72と協同する形態で内視鏡94を使用する。内視鏡94の使用が図11に示されている。しかし、標的とする部位を視覚化するため、医師が代わりにX線透視検査を行ってもよいことを認識すべきである。内視鏡94は、ガイドワイヤー72と横並びの関係で別々に用いられてもよいし、または、図11に示されているように、ガイドワイヤー72自体上へ内視鏡94を導入してもよい。
【0078】
内視鏡94の本体は、その長さ方向に沿った実測マーキング118を含んでいる。マーキング118は、本体に沿ったある与えられた位置と内視鏡94との間の距離を指示する。マーキング118をバイトブロック112と整列するように関連付けることにより、医師は、相対的な見地または絶対的な見地のいずれかで、患者の口12と幽門領域32内の内視鏡94との間の距離を測ることができる。医師が内視鏡94を用いて標的部位、例えば幽門括約筋44を視覚化すると、医師は、バイトブロック112と整列したマーキング118を記録し、ガイドワイヤー72をそこに残したまま、内視鏡96を取り除く。
【0079】
描かれている実施態様では、カテーテルチューブ70は、その長さ方向に沿った実測マーキング120を含んでいる。この実測マーキング120は、カテーテルチューブ70にそったある与えられた位置と作動エレメント74との間の距離を指示する。カテーテルチューブ70に設けられたマーキング120は、間隔および目盛りが、内視鏡94のチューブ状本体に沿ったマーキング118と一致している。
【0080】
治療が始まると、図12に描かれている如く、ガイドワイヤー72が近位側開口110を通じて管腔104を出るように、ガイドワイヤー72の自由な近位側端部が、遠位側開口を通じて、膨張可能な構造98のガイドワイヤー用管腔104に通される。この後、装置66が、ガイドワイヤー72上を、患者の口12および咽頭116を通じて幽門領域32の所望の位置、例えば幽門括約筋44まで導入される。ガイドワイヤー72上を装置66が通過している間、膨張可能な構造98は萎まされた状態にあり、電極74は退縮された位置にある。幽門括約筋44内における装置66の位置付けが図13Aおよび13Bに示されている。
【0081】
この後、組織の切除が実施される。先ず、図14に示されているように、把持用ツール114の把持エレメントを閉じることにより、装置66が所望の位置に保持される。
【0082】
次に、図15に描かれているように、流体またはエアーを膨張可能なメンバー102内に注入することにより、膨張可能な構造98が膨らまされ、例えば、無菌の水またはエアーが、装置66のハンドル68に設けられたポートを通じてバルーンに注入され、これにより、バルーンが膨らまされる。膨張可能なメンバー102の膨張は、膨張可能な構造98の膨張を引き起こし、これにより、幽門括約筋44の粘膜表面との密接な接触がもたらされる。膨らまされた構造98は、粘膜表面に通常は存在する襞の幾分か、またはすべてを取り除くべく、幽門括約筋44を一時的に拡張させる役割を果たす。また、膨らまされた構造98は、背100を粘膜表面と密接に接触した状態に置く機能も果たす。
【0083】
次に、例えば、図16に描かれているように、装置66のハンドル68に設けられたプッシュプルレバーを操作することにより、電極76が伸長位置へ動かされる。電極76は、粘膜組織を穿通して通過し、幽門括約筋42の平滑筋組織に入る。
【0084】
次に、医師は、無線周波数エネルギーなどのエネルギーを所望の時間加え、例えば約400kHzから約10mHzまでのエネルギーを約90秒間加える。望ましい場合には、この切除シーケンスで冷却用液体を導入することもできる(例えば、それぞれの背100が、標的組織部位の粘膜表面と接触するように滅菌水などの冷却用液体を運ぶためのポートを有する内腔を含んでいてよい(図示せず))。
【0085】
無線周波数エネルギーは、電気抵抗を利用して平滑筋組織を加熱する。温度は、電極内に担持されているセンサー60(図示せず)により電極32で検知される。望ましくは、幽門括約筋44の領域の場合、55℃から95℃までの範囲の平滑筋組織における組織温度を達成するようにエネルギーが加えられる。このようにして、病変は、典型的には、粘膜表面の下側1ミリメートルから4ミリメートルまでの範囲の深さで創出することができる。
【0086】
図17を参照しながら説明すると、所望量の無線周波数エネルギーを加えた後、例えば装置66のハンドル68に設けられたプッシュプルレバーを操作することにより、電極76が引っ込められる。把持用ツール114が開放位置へ動かされ、これにより、所望に応じて、装置66の位置付け再設定または除去が可能になる。
【0087】
このようにして、カテーテルに設けられた電極76の個数および位置に応じた単一の一連の病変が形成される。切除が幽門括約筋44の筋肉の力を弱める神経に影響を及ぼし、これにより、結果として幽門括約筋44の物理的な収縮及び/又は神経伝導経路の変調がもたらされることが考えられる。ある与えられた標的組織領域内において更に高い密度の病変を創出するため、例えば幽門括約筋44内の標的治療部位に沿った環状の病変など、あるパターンを為す多数の病変を創出することが望ましい場合がある。
【0088】
幽門括約筋44内に様々な病変パターンを達成することができる。切除の実施後、1回またはそれ以上の回数、装置66を位置付け再設定することにより創出される、あるパターンの多数の病変は、幽門括約筋44に沿って間隔を空けられていてよい。例えば、図18を参照しながら説明すると、電極76が引っ込められ、膨張可能な構造98が膨らまされている状態で、装置66を回転し、この後、電極76が再度伸長され、第二の一連の病変を生成するように、RFエネルギーが加えられる。
【0089】
代替的に、電極76が引っ込められ、膨張可能な構造98が膨らまされている状態で、図19に示されているように、装置66を軸方向(即ち、進行する方向または引っ込める方向)に動かし、この後、電極76が再度伸長され、第二の一連の病変を生成するように、RFエネルギーが加えられる。所望の病変パターンを生成するために、あらゆる回数および組合せの回転移動および軸方向移動が実施されてよいことを理解すべきである。
【0090】
すべての所望の切除シーケンスが完了すると、電極76が引っ込められる。この後、膨張可能なメンバー102が収縮され、同様に、膨張可能な構造98が萎まされる。把持用ツール114が開放位置へ動かされ、装置66およびバイトブロック112が取り除かれる。
【0091】
B.相補的なマグネットシステム
図20〜21は、磁性を利用して幽門括約筋44を締めつけるための代替的なシステムを示している。より詳細には、このシステムは、幽門括約筋44における組織の好適な位置および形をもたらし、且つ、維持する役割を果たす相補的な第一マグネット122と第二マグネット124を使用する。図20は、幽門42の互いに対向する側の組織内に埋め込まれた1対の第一マグネット122と第二マグネット124を示している。図21は、埋め込まれたマグネット122と124との間の磁気引力によって引き起こされる組織の動きを示している。所望の位置および形に組織を動かし、且つ、安定化させることにより、このシステムは、幽門括約筋44を締めつけることができ、従って、肥満症、GERD、及び/又はBarrett食道を治療するのに役立つ。
【0092】
磁気特性(磁性)を呈する物体はマグネットと呼ばれている。磁性は、結局は電荷の動きによる、様々な物質間、特に鉄および特定の他の金属でできた物質間の引力または反発力である。すべてのマグネットが磁場を有しており、磁場は、磁気効果が観測されるマグネット周囲の領域である。図示されている実施態様では、マグネット122および124は望ましくは永久磁石であり、すなわち、マグネット122および124は長期間にわたって本質的に一定の磁場を維持する。
【0093】
マグネット122および124は反対の極性の極を有している。これらの極は、磁気引力が最も強い中心の区域である。マグネット122または124が自由に回転できる場合、一つの極は北側を指し、それ故、北極と呼ばれ、反対側の極は、同様に、南極と呼ばれる。物理的な法則により、同じ極性(北−北または南−南)の極は磁力で互いに反発する。逆に、異なる極性(北−南または南−北)の極は磁力で互いに引き付け合う。磁気引力または磁気反発力は、マグネット122および124の強さ、ならびに両極間の距離に依存する。
【0094】
図示されている実施態様では、第一マグネット122と第二マグネット124は、磁気引力が第一および第二マグネット122および124を互いに引き付け合うように相互に配向されている。即ち、第一マグネット122は第二マグネット124と反対の極性であり、例えば、第一マグネット122が北の極性であり、第二マグネット124が南の極性であるか、またはそれの逆である。本明細書では、このような磁極の配向を「相補的」と呼ぶ。
【0095】
マグネット122または124のいずれかが、磁化されていない物質に磁力を及ぼし得ることを認識すべきである。従って、マグネット122または124のうちの一方は、残りのマグネット122または124が磁気引力を及ぼすことができる材料、例えば鉄のプレートで置き換えることができる。
【0096】
マグネット122および124が互いに引き付けられるように相補的な仕方で配列すると、幽門括約筋44の組織も共に引き付けられ、これにより、図21の矢印で表されているように、括約筋44が締めつけられる。
【0097】
当業者にとって明らかなように、第一および第二マグネット122および124は、組織の望ましい位置付けを果たすため、大きさ、構成、および位置を様々な配列に為すことができる。
【0098】
図示されている実施態様では、マグネット122および124は、幽門42の表面の輪郭に近づけるべく、凹状または扇形の形状に為されている。
【0099】
図22および23に描かれている別の実施態様では、マグネット122および124を生体適合性の織物または他の適切なマトリックス130内に適用し、この後、図22に描かれているように、前述のマトリックス130を、幽門42の互いに対向する側の外面に縫合糸131を用いて取り付けることができる。図23は、矢印で表されているように、埋め込まれたマグネット122と124との間の磁気引力によって引き起こされる組織の動きを示している。
【0100】
代替的に、マグネット122および124を生体適合性の織物または他の適切なマトリックス130内に適用し、この後、図25に矢印で表されている如き組織の動きをもたらするように、図24に描かれているように、前述のマトリックス130を、幽門42の互いに対向する側の内面に縫合することもできる。
【0101】
埋め込みおよび取り付けは共に、通常の腹腔鏡検査手順により果たすことができる。望ましくは、マグネット122および124は不活性な形態で、即ち、磁化されていない形態で埋め込まれ、または取り付けられる。次いで、マグネット122および124は、この手順の後、所望の磁性を付与するように磁場に曝露することにより活性化することができる。磁気特性を有する物質が磁場(マグネットを取り囲む領域)におかれると、この磁場の強さが物質内に磁化力Hを引き起こし、物質は、このHに応じて、およびこの物質の磁化率I/Hに応じて、特定の磁化Iを獲得する。
【0102】
望ましい場合には、マグネット122および124は、その後の外科的な手順により、例えば腹腔鏡検査手順により取り除くことができる。一つの好適な実施態様では、マグネット122および124は、埋め込み後、または取り付け後、これらのマグネットを選択的に不活性化、即ち、脱磁化することができるように構成される。脱磁化は磁気特性の消失をもたらす。
【0103】
不活性な状態の場合、マグネット122および124はもはや幽門42の締めつけを果たすことができない。このような実施形態は、マグネット122および124を取り除くための以降の外科的手順の必要性を排除する。
【0104】
当業者にとって明らかなように、不活性化されたマグネット122および124は、前述の如く磁場に曝露することにより、選択的に再活性化、即ち、「再磁化」することができる。
【0105】
C.幽門バンド
幽門42を締めつけるための更なる別のシステムでは、胃の空化を遅延化するため及び/又は胆汁逆流を低減させるため、締結機構を有する締めつけメンバーを幽門42の外周に巻き付けることができる。更に、このメンバーは、胃の最大容量を低減することにより過食を防止する。これらの締めつけメンバーおよび締結機構は様々に構成され得ることを理解すべきである。
【0106】
図26〜28はこのようなシステムの一つの実施態様を示しており、この実施態様では、締めつけメンバーはケーブルタイ形態のバンド132であり、これにより、医師は、患者の個々の解剖学に合わせてバンド132の直径を調節することができる。バンド132はヘッド部分134、ストラップ136、およびタブ138を含む。
【0107】
タブ138は、望ましくは、鋸歯状の刻み目が付けられており、ヘッド134に設けられたスロット140を通過できるように構成されている。タブ138を引っ張ることによってタブ138をスロット140を通じて進めることにより、バンド132の直径が減少する。逆に、スロット140を通じてタブ138を逆方向に移動させることにより、バンド132の直径が増大する。ヘッド134は、バンド132を所望の直径で固定および安定化させるためのロック/解放用のツメ142を含むことができる。
【0108】
一つの好適な実施態様では、ストラップ部分136は、縫合糸取り付け用部位144、例えば穴を含んでいる。これらの縫合糸取り付け用部位144により、バンド132を組織に確保するように、縫合糸131を通すことが可能になる。
【0109】
使用に際し、医師は、通常の腹腔鏡検査手順により、幽門42の周りにバンド132を外科的に埋め込む。幽門42の所望の締めつけをもたらす直径を得るべく、タブ138がスロット140に通される。ロック用のツメ142を活動化させることにより、例えばタブ138を上向き方向に操作することにより、この所望の位置が確保される。望ましい場合には、縫合糸取り付け部位144を利用して、バンド132が適所に縫合される。
【0110】
図29〜31は、このようなシステムの別の実施態様を示しており、この実施態様では、締めつけメンバーはベルト様の形態のバンド148であり、これにより、医師は、患者の個々の解剖学に合わせてバンド148の直径を調節することができる。バンド148は本体部分150、タブ152、およびバックル154を含む。
【0111】
タブ152は、バックル154に設けられたスロット156を通過できるように構成されている。タブ152は、望ましくは、スロット156を容易に通過できるようにするためのテーパー付き端部領域158を含んでいる。タブ152を引っ張ることによって本体部分150をスロット156を通じて進めることにより、バンド148の直径が減少する。逆に、スロット156を通じて本体150を逆方向に移動させることにより、バンド148の直径が増大する。本体150は、バンド148を所望の直径に確保するためにバックル154と契合する一連の穴159を含んでいる。
【0112】
一つの好適な実施態様では、本体部分150は、縫合糸取り付け用部位160、例えば穴を含んでいる。これらの縫合糸取り付け用部位により、バンド148を組織に確保するように、縫合糸131を通すことが可能になる。
【0113】
使用に際し、医師は、通常の腹腔鏡検査手順により、幽門42の周りにバンド148を外科的に埋め込む。幽門42の所望の締めつけをもたらす直径を得るべく、タブ152がスロット156に通される。バックル154を閉じることにより、この所望の位置が確保される。望ましい場合には、縫合糸取り付け部位160を利用して、バンド148が適所に縫合される。
【0114】
どちらの実施態様においても、バンド132または148は、望ましくは、腹腔鏡検査手順によって除去可能であり、これにより、幽門42の長期間にわたる収縮に関連する問題を回避することができる。バンド132または148が除去可能であるため、これらは、一時的な使用、例えば病的肥満症の初期治療に非常に適している。
【0115】
使用される装置の如何にかかわらず、幽門括約筋44の締めつけは、幽門括約筋44を通じるチャイムの流出量を制限または規制し、これにより、胃18の内容物の保持時間が延長される。これは、食することに対する物理的なバリヤーを創出するだけでなく、過食する衝動を媒介する満腹感も誘発する。また、幽門括約筋44の制限は、胆汁逆流の発生を低減または防止し、これにより、Barrett食道を含み得る、胆汁を胃18または食道16内の組織に曝露することによる影響を防止または媒介する役割も果たすことができる。
【0116】
III.受容性弛緩を抑制するためのシステムおよび方法
別の技術的な特徴は、近位側の胃の筋肉における受容性弛緩を媒介するためのシステムおよび方法を含む。この神経学的事象の媒介は、胃の広がり、およびこれに付随する胃の体積の増大を抑制するように、胃の筋肉の弛緩、特に基底部および近位側の胃における筋肉の弛緩を抑制する。
【0117】
食物の摂取中における胃の容量の制限は、食事中および食事後の満腹感を長引かせ、これにより、肥満症および他の生理学的状態を導き得る過食の発生率を低減することができる。
【0118】
A.組織治療装置
図32は、神経受容体が存在する胃の領域、例えば噴門26内に展開された、図3に示されているタイプの組織治療装置66を示している(共通の参照番号が使用される)。治療装置66は、可撓性カテーテルチューブ70の端部に担持された作動エレメント74を含んでいる。胃内への治療装置の展開についての詳細は以前に説明されている。医師は、先述の如く、ガイドワイヤーの使用を伴って、またはガイドワイヤーの使用を伴わずに、食道16を通じて、カテーテルチューブ70および作動エレメント74を噴門26に導入することができる。
【0119】
図32の作動エレメント74は1つまたはそれ以上の組織穿通メンバー76を含む。図32に示されているように、作動エレメントは多数の組織穿通メンバー76を担持している。
【0120】
一つの治療様式では、作動エレメント74は、噴門26における組織、噴門26内の組織、または噴門26付近の組織へ、組織穿通メンバー76を通じて選択的な仕方で切除エネルギーを加える役割を果たす。切除エネルギーの適用は、粘膜表面の下側に1つもしくはそれ以上の病変、または予め定められたパターンの病変を創出する。これらの病変は、求心性神経受容体と迷走神経との神経学的な相互作用を、胃に入る食物がこれらの受容体により神経支配された平滑筋を伸展させるときに創出される求心性神経信号を妨害または軽減することにより抑制する。これにより、これらの病変は、受容性弛緩の結果として生じる胃内の更なる筋肉の弛緩および伸展の発生率を抑制または軽減する。表面の組織を切除の標的とすることができ、または、代替的に、粘膜下組織を含め、表面の下側の組織を切除の標的とすることもできる。切除は、組織を伝導組織加熱、電気抵抗組織加熱、もしくは切除剤、またはこれらの組合せに曝露することにより果たすことができる。
【0121】
また、本システムおよび方法は、噴門などの求心性神経受容体が存在する胃の領域内に、求心性神経受容体が存在する胃の領域に、または求心性神経受容体が存在する領域付近に、1つまたはそれ以上の組織穿通エレメント74を通じて神経治療薬を注入することにより、受容性弛緩の妨害または低減に影響を及ぼすこともできる。この神経性物質は、受容性弛緩に影響を及ぼす求心性神経インパルスの妨害または低減を引き起こすように選択される。神経治療薬は、先述の如く、例えば少なくとも1つのサブタイプのバニロイドを含有する化合物を含むことができる。治療薬の注入は、組織の切除を伴って、または組織の切除を伴わずに行われてよい。バニロイド含有治療薬は粘膜の内層へ加えることができ、または噴門26の外側へ外部から加えることもできる。バニロイド含有治療薬は一次療法として適用もしくは注入されてよく、または一次介入前、一次介入中、もしくは一次介入後の補充治療として適用することもできる。傷を誘発するために切除エネルギーが使用されてよく、この後、バニロイド含有治療薬を適用することにより、活発な傷の治癒が促進される。
【0122】
従って、これらの治療様式は、単独で、または組み合わせて、肥満症を導き得る過食の発生を防止または低減するように、受容性弛緩応答を媒介することができる。
【0123】
B.相補的な磁気マトリックス
図35Aおよび35Bは、受容性弛緩の結果を緩和するための代替的なシステム500を描いている。システム500は、近位側の胃506のそれぞれ前壁および後壁に取り付けられた第一および第二のマトリックス502および504を含んでいる。第一および第二マトリックスは、それぞれが、アレイ状を為すマグネット、それぞれ508および510を担持している。第一マトリックス502のマグネット508および第二マトリックス504のマグネット510は異なる極性の極(即ち、北−南または南−北)を有している。従って、これらのアレイ状を為すマグネット508および510は、図35Bの矢印で示されているように、引き付け合う。磁気作用および磁気引力の原理については以前に検討されている。
【0124】
2つのマトリックス502と504との間の磁気引力は、近位側の胃506における前壁と後壁の互いに離れる方向の拡張または伸展を抑制または軽減する。その結果、たとえ近位側の胃の平滑筋が受容性弛緩により食物を受け入れるべく拡張および伸展するように条件付けられたとしても、マトリックス502および504により発生された磁気引力が拡張を物理的に抑制または軽減する。その結果、これらのマトリックスは、受容性弛緩の結果として生じる近位側の胃における筋肉の更なる弛緩および伸展の発生率を抑制または軽減する。図34Aおよび34Bは、受容性弛緩および食物の摂取の結果として生じる通常の伸展の程度を示している。図35Aおよび35Bは、磁気引力の結果としての軽減された伸展の程度を示している。マトリックス502および504は、受容性弛緩にもかかわらず、胃の容量を低減する役割を果たす。
【0125】
食物の摂取中における胃の容量の制限は、食事中および食事後の満腹感を長引かせ、これにより、肥満症および他の生理学的状態を導き得る過食の発生率を低減することができる。
【0126】
マトリックス502および504は、例えば、縫合糸512などによって近位側の胃の前壁および後壁に取り付けることができる、弾力性のある生体適合性織物または他の適切な材料を含むことができる。
【0127】
いずれかのマグネットアレイ508および510が、磁化されていない材料に磁力を及ぼし得ることを認識すべきである。従って、マグネットアレイ508または510のうちの一方は、残りのマグネットアレイが磁気引力を及ぼすことができる材料、例えば鉄のプレートで置き換えることができる。
【0128】
埋め込みおよび取り付けは共に、通常の腹腔鏡検査手順により果たすことができる。マグネットアレイ508および510は、不活性な形態で、即ち、磁化されていない形態で取り付けられてよい。次いで、マグネットアレイ508および510は、この手順の後、所望の磁性を付与するように磁場に曝露することにより活性化することができる。
【0129】
望ましい場合には、マグネットアレイ508および510は、その後の外科的な手順により、例えば腹腔鏡検査手順により取り除くことができる。
【0130】
先行する説明は、本発明の原理を例証することのみを考慮したものである。その上、当業者であれば、数多くの修飾および変更を容易に為し得るため、本発明を、ここで示され、説明されている構造および操作そのものに限定することは望ましくない。好適な実施態様が記述されているが、詳細は、特許請求の範囲で定義される本発明から逸脱することなく、変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】図1は、ヒト消化器系の解剖図である。
【図2】図2は、ヒト胃の解剖学的断面図である。
【図3】図3は、胃の組織領域を治療するための治療提供システムの概略図である。
【図4】図4Aおよび4Bは、組織穿通メンバーを伴った治療装置を含む、胃の組織領域を治療するためのシステムの概略図であり、図4Aは幽門括約筋組織領域に展開された治療装置を示しており、図4Bは、括約筋のバリヤー機能を増強する目的で、括約筋に治療薬を注入するため及び/又は組織領域を切除するため、組織領域に穿通している治療装置を示している。
【図5】図5Aおよび5Bは、多数の組織穿通メンバーを伴った治療装置を含む、胃の組織領域を治療するためのシステムの概略図であり、図5Aは幽門括約筋組織領域に展開された治療装置を示しており、図5Bは、括約筋のバリヤー機能を増強する目的で、括約筋に治療薬を注入するため及び/又は組織領域を切除するため、組織領域に穿通している治療装置を示している。
【図6】図6は、内視鏡を通じて幽門括約筋組織領域に展開された、図4Aに示されているタイプの組織治療装置の概略図である。
【図7】図7は、標的とする組織領域へ展開するために萎まされた状態で示されている本装置により担持されたバスケットエレメントを伴う、治療薬を注入するための、及び/又は幽門括約筋領域内および幽門括約筋領域の周辺に病変を形成するための治療装置の透視図である。
【図8】図8は、標的とする組織領域において使用する準備が整ったときのように膨らまされた状態で示されている本装置により担持されたバスケットエレメントを伴う、図7に示されている治療装置の透視図である。
【図9】図9は、標的とする組織領域へ本装置を展開するのを助けるガイドワイヤーの通路を示す、図8に示されている治療装置の遠位側端部の側面図である。
【図10】図10から19は、括約筋のバリヤー機能を増強する目的で、括約筋に治療薬を注入するため、及び/又は組織領域を切除するため、胃内への、特には胃の幽門括約筋組織領域への、図7から9に示されている治療装置の展開を示す概略図である。
【図11】図10から19は、括約筋のバリヤー機能を増強する目的で、括約筋に治療薬を注入するため、及び/又は組織領域を切除するため、胃内への、特には胃の幽門括約筋組織領域への、図7から9に示されている治療装置の展開を示す概略図である。
【図12】図10から19は、括約筋のバリヤー機能を増強する目的で、括約筋に治療薬を注入するため、及び/又は組織領域を切除するため、胃内への、特には胃の幽門括約筋組織領域への、図7から9に示されている治療装置の展開を示す概略図である。
【図13】図10から19は、括約筋のバリヤー機能を増強する目的で、括約筋に治療薬を注入するため、及び/又は組織領域を切除するため、胃内への、特には胃の幽門括約筋組織領域への、図7から9に示されている治療装置の展開を示す概略図である。
【図14】図10から19は、括約筋のバリヤー機能を増強する目的で、括約筋に治療薬を注入するため、及び/又は組織領域を切除するため、胃内への、特には胃の幽門括約筋組織領域への、図7から9に示されている治療装置の展開を示す概略図である。
【図15】図10から19は、括約筋のバリヤー機能を増強する目的で、括約筋に治療薬を注入するため、及び/又は組織領域を切除するため、胃内への、特には胃の幽門括約筋組織領域への、図7から9に示されている治療装置の展開を示す概略図である。
【図16】図10から19は、括約筋のバリヤー機能を増強する目的で、括約筋に治療薬を注入するため、及び/又は組織領域を切除するため、胃内への、特には胃の幽門括約筋組織領域への、図7から9に示されている治療装置の展開を示す概略図である。
【図17】図10から19は、括約筋のバリヤー機能を増強する目的で、括約筋に治療薬を注入するため、及び/又は組織領域を切除するため、胃内への、特には胃の幽門括約筋組織領域への、図7から9に示されている治療装置の展開を示す概略図である。
【図18】図10から19は、括約筋のバリヤー機能を増強する目的で、括約筋に治療薬を注入するため、及び/又は組織領域を切除するため、胃内への、特には胃の幽門括約筋組織領域への、図7から9に示されている治療装置の展開を示す概略図である。
【図19】図10から19は、括約筋のバリヤー機能を増強する目的で、括約筋に治療薬を注入するため、及び/又は組織領域を切除するため、胃内への、特には胃の幽門括約筋組織領域への、図7から9に示されている治療装置の展開を示す概略図である。
【図20】図20および21は、括約筋領域に埋め込まれた磁気ソースを示す幽門括約筋領域の概略的な解剖図であり、この磁気ソースは、括約筋のバリヤー機能を増強する目的で、幽門括約筋の別の領域に埋め込まれた材料を磁気力により引き寄せることができるような大きさおよび形状に為されている。
【図21】図20および21は、括約筋領域に埋め込まれた磁気ソースを示す幽門括約筋領域の概略的な解剖図であり、この磁気ソースは、括約筋のバリヤー機能を増強する目的で、幽門括約筋の別の領域に埋め込まれた材料を磁気力により引き寄せることができるような大きさおよび形状に為されている。
【図22】図22および23は、括約筋領域の外面の周りに取り付けられた磁気ソースを示す幽門括約筋領域の概略的な解剖図であり、この磁気ソースは、括約筋のバリヤー機能を増強する目的で、幽門括約筋の別な領域の外面の周りに取り付けられた材料を磁気力により引き寄せることができるような大きさおよび形状に為されている。
【図23】図22および23は、括約筋領域の外面の周りに取り付けられた磁気ソースを示す幽門括約筋領域の概略的な解剖図であり、この磁気ソースは、括約筋のバリヤー機能を増強する目的で、幽門括約筋の別な領域の外面の周りに取り付けられた材料を磁気力により引き寄せることができるような大きさおよび形状に為されている。
【図24】図24および25は、括約筋領域の内面の周りに取り付けられた磁気ソースを示す幽門括約筋領域の概略的な解剖図であり、この磁気ソースは、括約筋のバリヤー機能を増強する目的で、幽門括約筋の別な領域の内面の周りに取り付けられた材料を磁気力により引き寄せることができるような大きさおよび形状に為されている。
【図25】図24および25は、括約筋領域の内面の周りに取り付けられた磁気ソースを示す幽門括約筋領域の概略的な解剖図であり、この磁気ソースは、括約筋のバリヤー機能を増強する目的で、幽門括約筋の別な領域の内面の周りに取り付けられた材料を磁気力により引き寄せることができるような大きさおよび形状に為されている。
【図26】図26は、括約筋のバリヤー機能を増強する目的で幽門括約筋の外面の周りに取り付けることができるような大きさおよび形状に為されたバンドの一つの実施態様の透視図である。
【図27】図27および28は、幽門括約筋の周りに図26に示されているバンドを取り付ける様子を示した解剖学的な透視図である。
【図28】図27および28は、幽門括約筋の周りに図26に示されているバンドを取り付ける様子を示した解剖学的な透視図である。
【図29】図29は、括約筋のバリヤー機能を増強する目的で幽門括約筋の外面の周りに取り付けることができるような大きさおよび形状に為されたバンドの別な実施態様の透視図である。
【図30】図30および31は、幽門括約筋の周りに図29に示されているバンドを取り付ける様子を示した解剖学的な透視図である。
【図31】図30および31は、幽門括約筋の周りに図29に示されているバンドを取り付ける様子を示した解剖学的な透視図である。
【図32】図32は、胃の噴門における組織領域を治療するための治療装置の概略的な解剖図であり、胃の平滑筋の応答性弛緩を媒介する目的で組織領域に治療薬を注入するための、及び/又は組織領域を切除するための組織穿通メンバーを伴った治療装置を含んでいる。
【図33A】図33Aは、食物の摂取によりもたらされる応答性弛緩前の胃の概略的な解剖学的側面図である。
【図33B】図33Bは、応答性弛緩前の図33Aに示されている胃の概略的な解剖学的上面図である。
【図34A】図34Aは、食物の摂取中における応答性弛緩および伸展後の胃の概略的な解剖学的側面図である。
【図34B】図34Bは、食物の摂取中における応答性弛緩および伸展後の図34Aに示されている胃の概略的な解剖学的上面図である。
【図35A】図35Aは、食物の摂取中における応答性弛緩および伸展後の胃の概略的な解剖学的側面図であり、食物の摂取中における伸展および拡張の程度を抑制または軽減するための磁気マトリックスの存在を示している。
【図35B】図35Bは、図35Aに示されている胃の概略的な解剖学的上面図であり、(図34Bとの比較において)食物の摂取中における伸展および拡張の程度を抑制または軽減するのに役立っている磁気マトリックスの存在を示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
幽門括約筋を締めつけることにより肥満症を治療するためのシステムであって、該幽門括約筋内の組織、該幽門括約筋における組織、または該幽門括約筋付近の組織を切除することができるように採用され、且つ、構成された作動装置を含むシステム。
【請求項2】
肥満症を治療するための方法であって、幽門括約筋の締めつけに影響を及ぼすように、該幽門括約筋内の組織、該幽門括約筋における組織、または該幽門括約筋付近の組織を切除するステップを含む方法。
【請求項3】
幽門括約筋を締めつけることにより胆汁逆流を治療するためのシステムであって、該幽門括約筋内の組織、該幽門括約筋における組織、または該幽門括約筋付近の組織を切除することができるように採用され、且つ、構成された作動装置を含むシステム。
【請求項4】
胆汁逆流を治療するための方法であって、幽門括約筋の締めつけに影響を及ぼするように、該幽門括約筋内の組織、該幽門括約筋における組織、または該幽門括約筋付近の組織を切除するステップを含む方法。
【請求項5】
幽門括約筋を締めつけることにより肥満症を治療するためのシステムであって、使用に際し、該幽門括約筋における組織領域、または該幽門括約筋付近の組織領域に隣接して展開することができるように採用され、且つ、構成された作動装置、および該組織領域と接触するように治療薬を適用するように該作動エレメントに結合された治療薬のソースを含むシステム。
【請求項6】
前記治療薬が少なくとも1つのサイトカイン及び/又はバニロイド化合物及び/又は組織充填剤を含む、請求項5記載のシステム。
【請求項7】
幽門括約筋を締めつけることにより肥満症を治療するための方法であって、該幽門括約筋における組織領域、または該幽門括約筋付近の組織領域に隣接して作動エレメントを展開するステップ、および該組織領域と接触するように該作動エレメントを通じて治療薬を適用するステップを含む方法。
【請求項8】
前記治療薬が少なくとも1つのサイトカイン及び/又はバニロイド化合物及び/又は組織充填剤を含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
幽門括約筋を締めつけることにより胆汁逆流を治療するためのシステムであって、使用に際し、該幽門括約筋における組織領域、または該幽門括約筋付近の組織領域に隣接して展開することができるように採用され、且つ、構成された作動装置、および該組織領域と接触するように治療薬を適用するように該作動エレメントに結合された治療薬のソースを含むシステム。
【請求項10】
前記治療薬が少なくとも1つのサイトカイン及び/又はバニロイド化合物及び/又は組織充填剤を含む、請求項7記載のシステム。
【請求項11】
幽門括約筋を締めつけることにより胆汁逆流を治療するための方法であって、該幽門括約筋における組織領域、または該幽門括約筋付近の組織領域に隣接して作動エレメントを展開するステップ、および該組織領域と接触するように該作動エレメントを通じて治療薬を適用するステップを含む方法。
【請求項12】
前記治療薬が少なくとも1つのサイトカイン及び/又はバニロイド化合物及び/又は組織充填剤を含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
幽門括約筋を締めつけることにより肥満症を治療するためのシステムであって、該幽門括約筋のある領域内に、該幽門括約筋のある領域に、または該幽門括約筋のある領域付近に取り付けられた磁気ソースを含み、前記磁気ソースが、該幽門括約筋の別の領域内に、該幽門括約筋の別の領域に、または該幽門括約筋の別の領域付近に取り付けられる材料を磁気力により引き付けることができるような大きさおよび形状に為されているシステム。
【請求項14】
肥満症を治療するための方法であって、幽門括約筋のある領域内に、幽門括約筋のある領域に、または幽門括約筋のある領域付近に磁気ソースを取り付けるステップを含み、該磁気ソースが、該幽門括約筋の別の領域内に、該幽門括約筋の別の領域に、または該幽門括約筋の別の領域付近に取り付けられる材料を磁気力により引き付けることができるような大きさおよび形状に為されている方法。
【請求項15】
幽門括約筋を締めつけることにより胆汁逆流を治療するためのシステムであって、該幽門括約筋のある領域内に、該幽門括約筋のある領域に、または該幽門括約筋のある領域付近に取り付けられる磁気ソースを含み、該磁気ソースが、該幽門括約筋の別の領域内に、該幽門括約筋の別の領域に、または該幽門括約筋の別の領域付近に取り付けられる材料を磁気力により引き付けることができるような大きさおよび形状に為されているシステム。
【請求項16】
胆汁逆流を治療するための方法であって、幽門括約筋のある領域内に、幽門括約筋のある領域に、または幽門括約筋のある領域付近に磁気ソースを取り付けるステップを含み、該磁気ソースが、該幽門括約筋の別の領域内に、該幽門括約筋の別の領域に、または該幽門括約筋の別の領域付近に取り付けられる材料を磁気力により引き付けることができるような大きさおよび形状に為されている方法。
【請求項17】
幽門括約筋を締めつけることにより肥満症を治療するためのシステムであって、該幽門括約筋内に、該幽門括約筋に、または該幽門括約筋付近に展開される組織収縮用バンドを含むシステム。
【請求項18】
肥満症を治療するための方法であって、幽門括約筋内に、幽門括約筋に、または幽門括約筋付近に組織収縮用バンドを展開するステップを含む方法。
【請求項19】
幽門括約筋を締めつけることにより胆汁逆流を治療するためのシステムであって、該幽門括約筋内に、該幽門括約筋に、または該幽門括約筋付近に展開された組織収縮用バンドを含むシステム。
【請求項20】
胆汁逆流を治療するための方法であって、幽門括約筋内に、幽門括約筋に、または幽門括約筋付近に組織収縮用バンドを展開するステップを含む方法。
【請求項21】
胃の筋肉の受容性弛緩を媒介することにより肥満症を治療するためのシステムであって、ある胃の領域内の組織、ある胃の領域における組織、またはある胃の領域付近の組織を切除することができるように採用され、且つ、構成された作動装置を含むシステム。
【請求項22】
肥満症を治療するための方法であって、胃の筋肉の受容性弛緩を媒介するように、ある胃の領域内の組織、ある胃の領域における組織、またはある胃の領域付近の組織を切除するステップを含む方法。
【請求項23】
胃の筋肉の受容性弛緩を媒介することにより肥満症を治療するためのシステムであって、使用に際し、ある胃の領域内の組織、ある胃の領域における組織、またはある胃の領域付近の組織に隣接して展開することができるように採用され、且つ、構成された作動装置、および該組織と接触するように治療薬を適用するように該作動エレメントに結合された治療薬のソースを含むシステム。
【請求項24】
前記治療薬が少なくともバニロイド化合物を含む、請求項23記載のシステム。
【請求項25】
肥満症を治療するための方法であって、ある胃の領域内の組織、ある胃の領域における組織、またはある胃の領域付近の組織に隣接して作動エレメントを展開するステップ、および胃の筋肉の受容性弛緩を媒介するように該組織と接触するように該作動エレメントを通じて治療薬を適用するステップを含む方法。
【請求項26】
前記治療薬が少なくとも1つのバニロイド化合物を含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
食物の摂取中における胃の拡張を軽減することにより肥満症を治療するためのシステムであって、胃のある領域に取り付けられる磁気ソースを含み、前記磁気ソースが、胃の別の領域に取り付けられた材料を磁気力により引き付けることができるような大きさおよび形状に為されており、これにより、食物の摂取中における胃の拡張を軽減するシステム。
【請求項28】
前記磁気ソースがアレイ状のマグネットを含む、請求項27記載のシステム。
【請求項29】
前記アレイ状のマグネットが生体適合性織物により担持されている、請求項28記載のシステム。
【請求項30】
肥満症を治療するための方法であって、胃のある領域に磁気ソースを取り付けるステップを含み、該磁気ソースが、胃の別の領域に取り付けられる材料を磁気力により引き付けることができるような大きさおよび形状に為されており、これにより、食物の摂取中における胃の拡張を軽減する方法。
【請求項1】
幽門括約筋を締めつけることにより肥満症を治療するためのシステムであって、該幽門括約筋内の組織、該幽門括約筋における組織、または該幽門括約筋付近の組織を切除することができるように採用され、且つ、構成された作動装置を含むシステム。
【請求項2】
肥満症を治療するための方法であって、幽門括約筋の締めつけに影響を及ぼすように、該幽門括約筋内の組織、該幽門括約筋における組織、または該幽門括約筋付近の組織を切除するステップを含む方法。
【請求項3】
幽門括約筋を締めつけることにより胆汁逆流を治療するためのシステムであって、該幽門括約筋内の組織、該幽門括約筋における組織、または該幽門括約筋付近の組織を切除することができるように採用され、且つ、構成された作動装置を含むシステム。
【請求項4】
胆汁逆流を治療するための方法であって、幽門括約筋の締めつけに影響を及ぼするように、該幽門括約筋内の組織、該幽門括約筋における組織、または該幽門括約筋付近の組織を切除するステップを含む方法。
【請求項5】
幽門括約筋を締めつけることにより肥満症を治療するためのシステムであって、使用に際し、該幽門括約筋における組織領域、または該幽門括約筋付近の組織領域に隣接して展開することができるように採用され、且つ、構成された作動装置、および該組織領域と接触するように治療薬を適用するように該作動エレメントに結合された治療薬のソースを含むシステム。
【請求項6】
前記治療薬が少なくとも1つのサイトカイン及び/又はバニロイド化合物及び/又は組織充填剤を含む、請求項5記載のシステム。
【請求項7】
幽門括約筋を締めつけることにより肥満症を治療するための方法であって、該幽門括約筋における組織領域、または該幽門括約筋付近の組織領域に隣接して作動エレメントを展開するステップ、および該組織領域と接触するように該作動エレメントを通じて治療薬を適用するステップを含む方法。
【請求項8】
前記治療薬が少なくとも1つのサイトカイン及び/又はバニロイド化合物及び/又は組織充填剤を含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
幽門括約筋を締めつけることにより胆汁逆流を治療するためのシステムであって、使用に際し、該幽門括約筋における組織領域、または該幽門括約筋付近の組織領域に隣接して展開することができるように採用され、且つ、構成された作動装置、および該組織領域と接触するように治療薬を適用するように該作動エレメントに結合された治療薬のソースを含むシステム。
【請求項10】
前記治療薬が少なくとも1つのサイトカイン及び/又はバニロイド化合物及び/又は組織充填剤を含む、請求項7記載のシステム。
【請求項11】
幽門括約筋を締めつけることにより胆汁逆流を治療するための方法であって、該幽門括約筋における組織領域、または該幽門括約筋付近の組織領域に隣接して作動エレメントを展開するステップ、および該組織領域と接触するように該作動エレメントを通じて治療薬を適用するステップを含む方法。
【請求項12】
前記治療薬が少なくとも1つのサイトカイン及び/又はバニロイド化合物及び/又は組織充填剤を含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
幽門括約筋を締めつけることにより肥満症を治療するためのシステムであって、該幽門括約筋のある領域内に、該幽門括約筋のある領域に、または該幽門括約筋のある領域付近に取り付けられた磁気ソースを含み、前記磁気ソースが、該幽門括約筋の別の領域内に、該幽門括約筋の別の領域に、または該幽門括約筋の別の領域付近に取り付けられる材料を磁気力により引き付けることができるような大きさおよび形状に為されているシステム。
【請求項14】
肥満症を治療するための方法であって、幽門括約筋のある領域内に、幽門括約筋のある領域に、または幽門括約筋のある領域付近に磁気ソースを取り付けるステップを含み、該磁気ソースが、該幽門括約筋の別の領域内に、該幽門括約筋の別の領域に、または該幽門括約筋の別の領域付近に取り付けられる材料を磁気力により引き付けることができるような大きさおよび形状に為されている方法。
【請求項15】
幽門括約筋を締めつけることにより胆汁逆流を治療するためのシステムであって、該幽門括約筋のある領域内に、該幽門括約筋のある領域に、または該幽門括約筋のある領域付近に取り付けられる磁気ソースを含み、該磁気ソースが、該幽門括約筋の別の領域内に、該幽門括約筋の別の領域に、または該幽門括約筋の別の領域付近に取り付けられる材料を磁気力により引き付けることができるような大きさおよび形状に為されているシステム。
【請求項16】
胆汁逆流を治療するための方法であって、幽門括約筋のある領域内に、幽門括約筋のある領域に、または幽門括約筋のある領域付近に磁気ソースを取り付けるステップを含み、該磁気ソースが、該幽門括約筋の別の領域内に、該幽門括約筋の別の領域に、または該幽門括約筋の別の領域付近に取り付けられる材料を磁気力により引き付けることができるような大きさおよび形状に為されている方法。
【請求項17】
幽門括約筋を締めつけることにより肥満症を治療するためのシステムであって、該幽門括約筋内に、該幽門括約筋に、または該幽門括約筋付近に展開される組織収縮用バンドを含むシステム。
【請求項18】
肥満症を治療するための方法であって、幽門括約筋内に、幽門括約筋に、または幽門括約筋付近に組織収縮用バンドを展開するステップを含む方法。
【請求項19】
幽門括約筋を締めつけることにより胆汁逆流を治療するためのシステムであって、該幽門括約筋内に、該幽門括約筋に、または該幽門括約筋付近に展開された組織収縮用バンドを含むシステム。
【請求項20】
胆汁逆流を治療するための方法であって、幽門括約筋内に、幽門括約筋に、または幽門括約筋付近に組織収縮用バンドを展開するステップを含む方法。
【請求項21】
胃の筋肉の受容性弛緩を媒介することにより肥満症を治療するためのシステムであって、ある胃の領域内の組織、ある胃の領域における組織、またはある胃の領域付近の組織を切除することができるように採用され、且つ、構成された作動装置を含むシステム。
【請求項22】
肥満症を治療するための方法であって、胃の筋肉の受容性弛緩を媒介するように、ある胃の領域内の組織、ある胃の領域における組織、またはある胃の領域付近の組織を切除するステップを含む方法。
【請求項23】
胃の筋肉の受容性弛緩を媒介することにより肥満症を治療するためのシステムであって、使用に際し、ある胃の領域内の組織、ある胃の領域における組織、またはある胃の領域付近の組織に隣接して展開することができるように採用され、且つ、構成された作動装置、および該組織と接触するように治療薬を適用するように該作動エレメントに結合された治療薬のソースを含むシステム。
【請求項24】
前記治療薬が少なくともバニロイド化合物を含む、請求項23記載のシステム。
【請求項25】
肥満症を治療するための方法であって、ある胃の領域内の組織、ある胃の領域における組織、またはある胃の領域付近の組織に隣接して作動エレメントを展開するステップ、および胃の筋肉の受容性弛緩を媒介するように該組織と接触するように該作動エレメントを通じて治療薬を適用するステップを含む方法。
【請求項26】
前記治療薬が少なくとも1つのバニロイド化合物を含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
食物の摂取中における胃の拡張を軽減することにより肥満症を治療するためのシステムであって、胃のある領域に取り付けられる磁気ソースを含み、前記磁気ソースが、胃の別の領域に取り付けられた材料を磁気力により引き付けることができるような大きさおよび形状に為されており、これにより、食物の摂取中における胃の拡張を軽減するシステム。
【請求項28】
前記磁気ソースがアレイ状のマグネットを含む、請求項27記載のシステム。
【請求項29】
前記アレイ状のマグネットが生体適合性織物により担持されている、請求項28記載のシステム。
【請求項30】
肥満症を治療するための方法であって、胃のある領域に磁気ソースを取り付けるステップを含み、該磁気ソースが、胃の別の領域に取り付けられる材料を磁気力により引き付けることができるような大きさおよび形状に為されており、これにより、食物の摂取中における胃の拡張を軽減する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図2】
【図3】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【公表番号】特表2006−509536(P2006−509536A)
【公表日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−551481(P2004−551481)
【出願日】平成15年9月26日(2003.9.26)
【国際出願番号】PCT/US2003/030687
【国際公開番号】WO2004/043280
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(500333730)キューロン メディカル,インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年9月26日(2003.9.26)
【国際出願番号】PCT/US2003/030687
【国際公開番号】WO2004/043280
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(500333730)キューロン メディカル,インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]