説明

肥満の治療方法

【課題】肥満或いはそれに関連する摂食障害及び/又は摂食量低下の治療に効果的なMTP阻害剤の提供。
【解決手段】肥満、或いはそれに関連する摂食障害及び/又は摂食量低下の症状を示す対象を治療する場合、治療有効量のMTP阻害剤、例えばディルロタピド((S)−N−{2−[ベンジル(メチル)アミノ]−2−オキソ−1−フェニルエチル}−1−メチル−5−[4’−トリフルオロメチル)[1,1’−ビフェニル]−2−カルボキシアミド]−1H−インドール−2−カルボキサミド)を高脂肪食と共に該対象に与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高脂肪食と共にMTP阻害剤を用いた、肥満或いはそれに関連する摂食障害及び/又は摂食量低下の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
肥満はその患者数の増加や健康上のリスクから大きな社会的関心事となっている。肥満患者は社会的な学業上や仕事上の差別を受けるだけでなく、運動能力が限られ身体的耐久力が低下するなど、肥満は人や動物の生活の質に悪影響を及ぼす。
【0003】
ミクロソームトリグリセリド転移タンパク質(MTP)の阻害剤、及び/又はアポB(Apo
B)分泌物は、哺乳類の摂食量の低減(特許文献1)、腸内での脂肪吸収の低減(特許文献2)、並びに肥満及びその関連疾患の治療(例えば特許文献3〜6)に有用である。
【0004】
しかしながら、特許文献7には、MTP阻害剤は肝毒性等の副作用を示すことがあると報告されている。
【0005】
また、本発明者らは、従来の治療投薬計画に従って特許文献3に開示のMTP阻害剤ディルロタピドを投与すると、嘔吐を引き起こす場合があることを発見した。
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1,099,438A2号
【特許文献2】欧州特許出願公開第1,099,439A2号
【特許文献3】WO2003/002533号
【特許文献4】WO2005/046644号
【特許文献5】WO2005/080373号
【特許文献6】米国特許第6,066,653号
【特許文献7】WO2005/087234号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、肥満或いはそれに関連する摂食障害及び/又は摂食量低下の、MTP阻害剤を用いたより効果的な治療方法の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、肥満、或いはそれに関連する摂食障害及び/又は摂食量低下の症状を示す対象を治療する方法であって、治療有効量のMTP阻害剤を高脂肪食と共に該対象に与える方法を提供する。
【0009】
また本発明は、肥満、或いはそれに関連する摂食障害及び/又は摂食量低下の症状を示す対象を治療するための薬剤の製造にMTP阻害剤を使用する方法であって、治療有効量のMTP阻害剤を高脂肪食と共に該対象に与える方法を提供する。
【0010】
更に本発明は、肥満、或いはそれに関連する摂食障害及び/又は摂食量低下の症状を示す対象を治療する方法であって、治療有効量のMTP阻害剤を高脂肪食と共に該対象に投与した後、任意により多量のMTP阻害剤を少なくとも一度投与し、更にその後に任意に体重維持/管理又は再訓練を行う方法を提供する。
【0011】
更に本発明は、肥満、或いはそれに関連する摂食障害及び/又は摂食量低下の症状を示す対象を治療するための薬剤の製造におけるMTP阻害剤の使用であって、治療有効量のMTP阻害剤を高脂肪食と共に該対象に投与した後、任意により多量のMTP阻害剤を少なくとも一度投与し、更にその後に任意に体重維持/管理又は再訓練を行う方法を提供する。
【0012】
更に本発明は、肥満、或いはそれに関連する摂食障害及び/又は摂食量低下の症状を示す対象を治療する方法であって、治療有効量のMTP阻害剤を高脂肪食と共に該対象に与え、該MTP阻害剤の治療有効量が従来の治療投薬計画よりも少量である方法を提供する。
【0013】
更に本発明は、肥満又はそれに関連する摂食障害の症状を示す対象の減量率を向上する方法であって、治療有効量のMTP阻害剤を高脂肪食と共に該対象に与える方法を提供する。
【0014】
更に本発明は、肥満、或いはそれに関連する摂食障害及び/又は摂食量低下の症状を示す対象を治療する方法であって、初期量のMTP阻害剤を高脂肪食と共に該対象に与え、ここで初期量とは肥満や障害を改善するのに効果的な量であり、且つ該MTP阻害剤の投与による副作用を低減する観点で十分に少ない量であり、この投与の後、任意により多量のMTP阻害剤を少なくとも一度投与し、更にその後に任意に体重維持/管理又は再訓練を行う方法を提供する。
【0015】
更に本発明は、肥満、或いはそれに関連する摂食障害及び/又は摂食量低下の症状を示す対象を治療する方法であって、初期量のMTP阻害剤を高脂肪食と共に該対象に与え、ここで初期量は0.025〜0.30mg/kg/dayであり、この投与の後、任意により多量のMTP阻害剤を少なくとも一度投与し、更にその後に任意に体重維持/管理又は再訓練を行う方法を提供する。
【0016】
更に本発明は、MTP阻害を必要とする対象のMTPを阻害する方法であって、治療有効量のMTP阻害剤を高脂肪食と共に該対象に与える方法を提供する。
【0017】
更に本発明は、肥満、或いはそれに関連する摂食障害及び/又は摂食量低下の症状を示す対象を治療する方法、或いはMTP阻害を必要とする対象のMTPを阻害する方法であって、治療有効量のMTP阻害剤を高脂肪食と共に該対象に与え、ここでMTP阻害剤は少なくとも一種の追加薬剤(抗肥満薬等)と組み合わせて投与する方法を提供する。
【0018】
更に本発明は、対象の体重を管理する方法であって、体重管理に有効な量のMTP阻害剤を高脂肪食と共に該対象に与える方法を提供する。MTP阻害剤は単独で、又は少なくとも一種の追加薬剤、好ましくは抗肥満薬と組み合わせて使用してよい。
【0019】
ある実施態様においては、MTP阻害剤はディルロタピド((S)−N−{2−[ベンジル(メチル)アミノ]−2−オキソ−1−フェニルエチル}−1−メチル−5−[4’−トリフルオロメチル)[1,1’−ビフェニル]−2−カルボキシアミド]−1H−インドール−2−カルボキサミド)である。
【0020】
定義
通常、人間の肥満(obesity)及び過体重(overweight)は肥満度指数(BMI)で定義される。BMIは全ての体脂肪に関する指数で、疾患の危険性を計る一つの指標として用いられる。体重(キログラム)を身長(m)の二乗で割ることでBMI(kg/m)が得られる。典型的には、BMIが25〜29.9kg/mの場合を過体重、BMIが30kg/m以上の場合を肥満と定義する。犬や猫の肥満は通常ボディ・コンディション・スコア(BCS)で定義され、ピュリナ(Purina)の9段階評価では8以上を肥満、6以上を過体重とし、またヒルズ(Hill's)の5段階評価では5以上を肥満、4以上を過体重とする。ピュリナの9段階評価は、ラフレイム(Laflamme DP),ボディ・コンディション・スコアリング・アンド・ウェイト・メンテナンス(Body Condition Scoring and Weight Maintenance),プロシーディングス・オブ・ノース・アメリカン・ヴェテリナリー・カンファレンス(Proceedings of North American Veterinary Conference),1月,16−21,1993年,フロリダ州オーランド,290−291頁、及びラフレイム(Laflamme DP),キーリー(Kealy RD),シュミット(Schmidt DA),エスティメーション・オブ・ボディ・ファット・バイ・ボディ・コンポジション・スコア(Estimation of Body Fat by Body Composition Score),ジャーナル・オブ・ヴェテリナリー・インターナル・メディシン(Journal of Veterinary Internal Medicine),1994年,vol.8,154頁に記載されている。
【0021】
以上及び以下に記す肥満の治療は、過体重の治療も包含すると解されるべきである。
【0022】
「薬学的に許容可能」とは、ある物質又は組成物が、処方中の他の成分及び/又は該処方により治療される哺乳類に対して、化学的及び/又は毒性学的に適合可能であることを示す。
【0023】
「治療有効量」とは、(i)特定の疾患、病気、又は障害を治療又は予防する、(ii)特定の疾患、病気、又は障害の一以上の症状を軽減、改善、又は解消する、或いは(iii)特定の疾患、病気、又は障害の一以上の症状の発現を予防又は遅らせる(例えば摂食量又は食欲を減少させる)ような、化合物の量を意味する。
【0024】
「対象」又は「動物」は、人間、並びに動物界の恒常性維持機構を有するいかなる温血動物であってもよく、哺乳類(愛玩動物、動物園の動物、食用動物等)や鳥類が挙げられる。愛玩動物としては犬科動物(犬等)、猫科動物(猫等)、馬等が挙げられ、食用動物としては豚、牛、羊、家禽等が挙げられる。この動物は好ましくは哺乳類である。該哺乳類は好ましくは人間、愛玩動物、又は食用動物であり、より好ましくは人間又は犬科動物(猫、犬等)である。犬科動物としては例えば猫であり、好ましくは犬である。
【0025】
「治療」は予防処置及び緩和処置の両方を包含する。
【0026】
本発明の方法を実施する際には、MTP阻害剤は腸内で作用するのが好ましく、腸選択性であるのが好ましい。本発明においては、「選択性」という語は、第二分析での化合物の効果よりも、第一分析での該化合物のより大きな効果について用いる。本実施態様では、化合物の腸内脂肪吸収阻害能に関して第一分析を行い、血清トリグリセリド低減能に関して第二分析を行う。好ましい一実施態様では、腸内脂肪吸収分析において、該化合物が25%の脂肪吸収阻害を示す投与量(ED25)を調べ、これにより上記腸内脂肪吸収阻害能を測定する。該化合物がより大きな効果を有する場合、より低い絶対値(数値)のED25が得られる。好ましい他の実施態様では、血清トリグリセリド分析において、該化合物のED25を調べ、化合物の血清トリグリセリド低減能を測定する。この場合も、該化合物がより大きな血清トリグリセリド低減効果を有する場合、より低い絶対値(数値)のED25が得られる。本発明は、化合物の腸内脂肪吸収阻害能又は血清トリグリセリド低減能を測定するためのいかなる分析も包含すると理解すべきである。適当な分析の例としては、WO03/002533に記載のものが挙げられる。
【0027】
腸管内での阻害剤の溶解度及び/又は製剤からの阻害剤の遊離を制御することによって、或いは腸管内の脂質(脂肪)の量を増加させる(即ち共に与える食品の脂肪量を増加させる)ことによって、上記腸選択性が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本出願人は、MTP阻害剤はいかなる食事と共に摂取しても抗肥満薬として効果的ではあるが、高脂肪食と共に摂取した場合にその抗肥満薬としての有効性が著しく向上することを発見した。即ち、対象に低脂肪食ではなく逆に高脂肪食を与えると、少量のMTP阻害剤で体重減少が可能であることを発見した。MTP阻害剤を高脂肪食と共に与えると、体重減少の速度が向上する。更に、MTP阻害剤を高脂肪食と共に与えると、摂食量が有意に減少する。
【0029】
本発明で用いる「高脂肪食」やそれに類似の語は、空気乾燥物の量に基づく脂肪含有量が約10%以上の食事を意味する。
【0030】
「空気乾燥物の量」は空気乾燥した状態での上記食品の量を示し、通常は乾燥ドッグフードは約10%の水分を含有する。従って、例えば「空気乾燥物の量に基づく脂肪含有量が10%」とは「乾燥物の量に基づく脂肪含有量が約11%」であることと等価であり、「空気乾燥物の量に基づく脂肪含有量が15%」とは「乾燥物の量に基づく脂肪含有量が約16.7%」であることと等価であろう。
【0031】
従って、本発明で用いる高脂肪食は、通常脂肪食又は管理食(例えば空気乾燥物の量に基づく脂肪含有量が10〜17%)、或いは高脂肪食、活性食、又は機能食(例えば空気乾燥物の量に基づく脂肪含有量が18%以上)として市販されている従来のペットフード(ドッグフード等)等であってよい。
【0032】
或いは、総代謝エネルギー(Kcal)に対する脂肪によるエネルギーの割合によって高脂肪食を定義してもよい。例えば、本発明で用いる「高脂肪食」やそれに類似の語は、総カロリーに対する脂肪によるカロリーの割合が約24%以上(例えば約34%以上、約45%以上等)である食事を意味する。従って、本発明で用いる高脂肪食は、通常脂肪食又は管理食(例えば総カロリーに対する脂肪によるカロリーの割合が約24〜33%)、或いは高脂肪食、活性食、又は機能食(例えば総カロリーに対する脂肪によるカロリーの割合が約34〜50%)として市販されている従来のペットフード(ドッグフード等)等であってよい。
【0033】
特定の一例においては、本発明で用いる「高脂肪食」やそれに類似の語は、空気乾燥物の量に基づく脂肪含有量が約15%以上の食事を意味する。他の一例においては、本発明で用いる「高脂肪食」やそれに類似の語は、総カロリーに対する脂肪由来のカロリーの割合が約45%以上の食事を意味する。
【0034】
本発明で用いるMTP阻害剤は当該技術分野で公知である。適当なMTP阻害剤としては、米国特許第4,453,913号、同第4,473,425号、同第4,491,589号、同第4,540,458号、同第4,962,115号、同第5,057,525号、同第5,137,896号、同第5,286,647号、同第5,521,186号、同第5,595,872号、同第5,646,162号、同第5,684,014号、同第5,693,650号、同第5,712,279号、同第5,714,494号、同第5,721,279号、同第5,739,135号、同第5,747,505号、同第5,750,783号、同第5,760,246号、同第5,789,197号、同第5,811,429号、同第5,827,875号、同第5,837,733号、同第5,849,751号、同第5,883,099号、同第5,883,109号、同第5,885,983号、同第5,892,114号、同第5,919,795号、同第5,922,718号、同第5,925,646号、同第5,929,075号、同第5,929,091号、同第5,935,984号、同第5,952,498号、同第5,962,440号、同第5,965,577号、同第5,968,950号、同第5,998,623号、同第6,025,378号、同第6,034,098号、同第6,034,115号、同第6,051,229号、同第6,051,387号、同第6,051,693号、同第6,057,339号、同第6,066,650号、同第6,066,653号、同第6,114,341号、同第6,121,283号、同第6,191,157号、同第6,194,424号、同第6,197,798号、同第6,197,972号、同第6,200,971号、同第6,235,730号、同第6,235,770号、同第6,245,775号、同第6,255,330号、同第6,265,431号、同第6,281,228号、同第6,288,234号、同第6,329,360号、同第6,342,245号、同第6,369,075号、同第6,417,362号、同第6,451,802号、同第6,479,503号、同第6,492,365号、同第6,583,144号、同第6,617,325号、同第6,713,489号、同第6,720,351号、同第6,774,236号、同第6,777,414号、及び同第6,878,724号:
米国特許公開第2002/028940号、同第2002/032238号、同第2002/055635号、同第2002/132806号、同第2002/147209号、同第2003/149073号、同第2003/073836号、同第2003/105093号、同第2003/114442号、同第2003/0162788号、同第2003/166590号、同第2003/166637号、同第2003/181714号、同第2004/009988号、同第2004/014971号、同第2004/024215号、同第2004/034028号、同第2004/044008号、同第2004/058903号、同第2004/102490号、同第2004/157866号、及び同第2005/234099号:
国際公開WO96/262205号、WO98/016526号、WO98/031366号、WO99/55313号、WO00/005201号、WO01/000183号、WO01/000184号、WO01/000189号、WO01/005767号、WO01/012601号、WO01/014355号、WO01/021604号、WO01/053260号、WO01/074817号、WO01/077077号、WO02/014276号、WO02/014277号、WO02/081460号、WO02/083658号、WO04/017969号、及びWO05/080373号:
並びに特開2002−212179号(14212179号)及び同2002−220345号(14220345号)に記載の化合物が挙げられる。
【0035】
アポB/MTP阻害剤の概説としては、ウィリアムス(Williams, S. J.)及びベスト(J. D. Best),エキスパート・オピニオン・オン・セラピューティック・パテンツ(Expert
Opinion Therapeutic Patents),13(4),479−488(2003年)が挙げられる。活性MTP阻害剤の同定方法については、チャン(Chang, G.)ら,「ミクロソーマル・トリグリセリド・トランスファー・プロテイン(MTP)・インヒビターズ:ディスカバリー・オブ・クリニカリー・アクティブ・インヒビターズ・ユージング・ハイ・スループット・スクリーニング・アンド・パラレル・シンセシス・パラダイムス(Microsomal triglyceride transfer protein (MTP) inhibitors: Discovery
of clinically active inhibitors using high-throughput screening and parallel
synthesis paradigms)」,カレント・オピニオン・イン・ドラッグ・ディスカバリー・アンド・ディベロップメント(Current Opinion in Drug Discovery & Development),5(4),562−570(2002年)に記載されている。上記特許、特許出願、及び文献は全て参照により開示に含まれる。
【0036】
本発明で使用する好ましい腸内作用MTP阻害剤の例としては、米国特許第6,720,351号に記載の方法により調製できる((S)−N−{2−[ベンジル(メチル)アミノ]−2−オキソ−1−フェニルエチル}−1−メチル−5−[4’−トリフルオロメチル)[1,1’−ビフェニル]−2−カルボキシアミド]−1H−インドール−2−カルボキサミド)及び1−メチル−5−[(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−1H−インドール−2−カルボン酸(カルバモイル−フェニル−メチル)−アミド;米国特許公開第2005/0234099号に記載の方法により調製できる(S)−2−[(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−キノリン−6−カルボン酸(ペンチルカルバモイル−フェニル−メチル)−アミド、(S)−2−[(4’−tert−ブチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−キノリン−6−カルボン酸{[(4−フルオロ−ベンジル)−メチル−カルバモイル]−フェニル−メチル}−アミド、(S)−2−[(4’−tert−ブチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−キノリン−6−カルボン酸[(4−フルオロ−ベンジルカルバモイル)−フェニル−メチル]−アミド、及び(S)−2−[(4’−イソプロポキシ−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−キノリン−6−カルボン酸{[(4−フルオロ−ベンジル)−メチル−カルバモイル]−フェニル−メチル}−アミド;米国特許第5,521,186号及び同第5,929,075号に記載の方法により調製できる、ミトラタピド又はR103757として知られる(−)−4−[4−[4−[4−[[(2S,4R)−2−(4−クロロフェニル)−2−[[(4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)スルファニル]メチル−1,3−ジオキソラン−4−イル]メトキシ]フェニル]ピペラジン−1−イル]フェニル]−2−(1R)−1−メチルプロピル]−2,4−ジヒドロ−3H−1,2,4−トリアゾール−3−オン;米国特許第6,265,431号に記載の方法により調製できるインプリタピド(BAY13−9952);米国特許第6,878,724号に記載の方法により調製でき、下記式:
【0037】
【化1】

【0038】
により表されるR256918;並びに(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−2−カルボン酸[2−(2H−[1,2,4]トリアゾール−3−イルメチル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−イソキノリン−6−イル]アミド)が挙げられる。より好ましいMTP阻害剤は、ディルロタピド、ミトラタピド、(S)−2−[(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−キノリン−6−カルボン酸(ペンチルカルバモイル−フェニル−メチル)−アミド、(S)−2−[(4’−tert−ブチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−キノリン−6−カルボン酸{[(4−フルオロ−ベンジル)−メチル−カルバモイル]−フェニル−メチル}−アミド、(S)−2−[(4’−tert−ブチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−キノリン−6−カルボン酸[(4−フルオロ−ベンジルカルバモイル)−フェニル−メチル]−アミド、(S)−2−[(4’−イソプロポキシ−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−キノリン−6−カルボン酸{[(4−フルオロ−ベンジル)−メチル−カルバモイル]−フェニル−メチル}−アミド、R256918、及び(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−2−カルボン酸[2−(2H−[1,2,4]トリアゾール−3−イルメチル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−イソキノリン−6−イル]アミド)である。
【0039】
本発明の方法で用いるMTP阻害剤は、好ましくは(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−2−カルボン酸[2−(2H−[1,2,4]トリアゾール−3−イルメチル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−イソキノリン−6−イル]アミドであり、より好ましくはディルロタピドである。
【0040】
従来、上記腸内作用MTPiを人間に用いる場合、その日用量は通常約0.05mg〜約50mg、好ましくは約0.5mg〜約30mg、より好ましくは約0.5mg〜約20mg、最も好ましくは約1.0mg〜約15mgである。人間以外の動物に用いる場合、当業者は動物の体重に応じて投与量を調整することができる。状態によってはMTPiを肝脂肪低減薬剤(フィブレート、PPAR−アルファ作動薬等)と組み合わせて投与してもよい(特開2002−220345号(特願第2001−015602号、発明の名称「脂肪肝改善剤」)、Kersten, S.,「ペルオキシソーム・プロリフェレーター・アクティベーテッド・レセプターズ・アンド・オベシティ(Peroxisome Proliferator Activated Receptors and Obesity)」,ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・ファーマシューティカル・サイエンス(European Journal of Pharmaceutical Sciences),440,223−234(2002年)等参照)。
【0041】
ある実施態様においては、MTP阻害剤の投与量を増加させる。第一の投与レベル(初期投与レベル)及び第二の投与レベルを用いたり、第一、第二、及び第三の投与レベルを用いたり、第一、第二、第三、及び第四の投与レベルを用いたり、第一、第二、第三、第四、及び第五の投与レベルを用いたり、加えて第六の投与レベルや更なる投与レベルを用いて投与量を増加させてよい。
【0042】
初期投与レベルから次の投与レベルへ、その10%、20%、25%、50%、100%、又は300%増加させてよい。初期投与レベルから100%増加させる場合、次の投与レベルは初期投与レベルの2倍となる。初期投与レベルから300%増加させる場合、次の投与レベルは初期投与レベルの4倍となる。初期投与レベルを25%、50%、又は100%増加させてよく、好ましくは50%又は100%(例えば100%)増加させる。
【0043】
第一の投与レベルは0.025〜0.30mg/kg/dayであってよく、例えば0.025〜0.10mg/kg/day(約0.05又は0.10mg/kg/day等)であり、好ましくは約0.05 mg/kg/dayである。
【0044】
第二の投与レベルは第一の投与レベルより100%大きい値(0.05〜0.6mg/kg/day)であってよく、例えば0.05〜0.2mg/kg/day(約0.10又は0.2mg/kg/day等)であり、好ましくは約0.10mg/kg/dayである。
【0045】
第三の投与レベルは第二の投与レベルより100%大きい値(0.10〜1.2mg/kg/day)であってよく、例えば0.10〜0.4mg/kg/day(約0.2又は0.4mg/kg/day等)であり、好ましくは約0.2mg/kg/dayである。
【0046】
第四の投与レベルは第三の投与レベルより50%大きい値(0.15〜0.9mg/kg/day)であってよく、例えば0.15〜0.6mg/kg/day(約0.3又は0.6mg/kg/day等)であり、好ましくは約0.3mg/kg/dayである。
【0047】
その後、第四の投与レベルから第五、第六、及び更なる投与レベルへと、50%ずつ増加させるのが好ましい。
【0048】
MTP阻害剤がディルロタピドである場合、第一の投与レベルは0.025〜0.10mg/kg/dayであってよく、例えば約0.05又は0.10mg/kg/dayであり、好ましくは約0.05 mg/kg/dayである。第二の投与レベルは第一の投与レベルより100%大きい値(0.05〜0.2mg/kg/day)であってよく、例えば約0.10又は0.2mg/kg/dayであり、好ましくは約0.10mg/kg/dayである。第三の投与レベルは第二の投与レベルより100%大きい値(0.10〜0.4mg/kg/day)であってよく、例えば約0.2又は0.4mg/kg/dayであり、好ましくは約0.2mg/kg/dayである。第四の投与レベルは第三の投与レベルより50%大きい値(0.15〜0.6mg/kg/day)であってよく、例えば約0.3又は0.6mg/kg/dayであり、好ましくは約0.3mg/kg/dayである。その後、第四の投与レベルから第五、第六、及び更なる投与レベルへと、50%ずつ増加させるのが好ましい。ある実施態様においては、対象に各投与レベルで約1〜4週間投与し、例えば1週間毎、2週間毎、又は1月毎に投与レベルを増加させる。例えば、第一の投与レベル(0.05mg/kg/day等)で約14日間投与し、第二の投与レベル(0.01mg/kg/day等)で約14日間投与し、第三の投与レベル(0.2mg/kg/day等)で1月間投与し、それ以降は1月毎に投与量を増加させる。
【0049】
例えばMTP阻害剤としてディルロタピドを用い、犬を対象として投与する場合、初期投与量を0.05mg/kg/dayとしてよい。2週間治療を行った後、初期投与量の2倍の投与レベル(0.10mg/kg/day)で更に2週間投与してよい。この4週間の初期治療に続いて、例えば以下の指針に従って毎月犬を計量し、且つ投与量を調整する。毎月の治療の最後に体重減少率を決定する。前月の計量時よりも体重が3%以上減少していた場合(一日あたり0.1%以上減少していた場合)、その投与レベルを維持する。前月の計量時からの体重減少率が3%未満であった場合、その時の犬の体重に関わらず、投与レベルを増加させる。1回目のレベル増加の際には投与レベルを100%増加させてよく(2倍にしてよく)、その後のレベル増加の際には投与レベルを50%ずつ最大投与レベル(1mg/kg体重)まで増加させてよい。このような投与レベルの調整を、治療開始時の目標体重が得られるまで続ければよい。
【0050】
前月からの体重減少率が12%以上であった場合は、投与レベルを25%減らしてよい。
【0051】
6ヶ月間の減量治療によって、平均で約18〜20%の体重減少が期待できる。
【0052】
この初期減量段階を数ヶ月間、例えば約4ヶ月間(16週間)〜6ヶ月間、又は約112〜196日間行ってよい。或いは、初期減量段階を目標体重が得られるまで、又は特定のボディ・コンディション・スコア(BCS)、例えば5に達するまで行ってよい。
【0053】
体重維持/管理又は再訓練の段階を数ヶ月間、例えば約3ヶ月間(即ち約12週間)又は84日間行ってよい。この段階の開始時に比べて患者の体重が減少又は増加しすぎた場合(例えば5%超)、再訓練段階において投与量を50%減少させたり、100%増加させたりしてよい。
【0054】
上記のとおり、目標体重に達した際には、体重維持/管理又は再訓練の段階を開始することができる。この体重維持/管理又は再訓練段階において、最適な摂食量及び身体活動を確立する。目標体重を安定化するに必要な摂食量及び身体活動が確立されるまで、体重維持/管理又は再訓練段階でもMTP阻害剤の投与を続けるべきである。
【0055】
例えばMTP阻害剤としてディルロタピドを用い、犬を対象として投与する場合、体重維持/管理又は再訓練の段階において以下のように投与量を調整してよい。
【0056】
第一の投与量調整
減量段階の最後の1ヶ月の間、犬の体重が1週あたり1%以上減少した場合、投与量を50%減少させる。
犬の体重が0〜1%減少した場合、投与量をそのまま同量に保つ。
犬の体重が増加した場合、投与量を50%増加させる。
【0057】
その後の投与量調整
その後の数ヶ月間、体重を一定に保つために投与量を25%増加又は減少させる。
犬の体重が減量段階の最後の体重の−5%〜+5%の範囲内である場合、投与量をそのまま同量に保つ。
犬の体重が5%以上減少した場合、投与量を25%減少させる。
犬の体重が5%以上増加した場合、投与量を25%増加させる。犬の最新の体重に基づいて日用量を1mg/kgを超える量とするべきではない。
【0058】
投与を中断した場合、体重維持/管理又は再訓練の段階で確立された日常摂食及び身体活動を続けるべきである。
【0059】
「MTP阻害剤の投与による副作用の低減」又はこれに類似の語は、従来の治療投薬計画により(例えば高い初期投与量で、投与量を徐々に増加させることなく、また共に高脂肪食を与えることなく)、MTP阻害剤を投与した結果生じる望ましくない副作用の改善又は解消を意味する。副作用の例としては、嘔吐、下痢、無気力、食欲不振、拒食等が挙げられる。副作用は例えば嘔吐、下痢、無気力等であり、特に嘔吐である。
【0060】
本発明の方法では、更に少なくとも一種の追加薬剤を投与してよい。適当な追加薬剤の例としては、他の抗肥満薬、例えばカンナビノイド1(CB−1)拮抗薬(リモナバント等)、11β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ1(11β−HSD タイプ1)阻害剤、ペプチドYY(PYY)及びPYY作動薬(PYY3−36、その類似体、誘導体等)、MCR−4作動薬、コレシストキニンA(CCK−A)作動薬、モノアミン再摂取阻害剤(シブトラミン等)、交感神経様作用薬、βアドレナリン受容体作動薬、ドーパミン受容体作動薬(ブロモクリプチン等)、メラニン細胞刺激ホルモン受容体類似体、5HT2c受容体作動薬、メラニン凝集ホルモン拮抗薬、レプチン(OBタンパク)、レプチン類似体、レプチン受容体作動薬、ガラニン拮抗薬、リパーゼ阻害剤(テトラヒドロリプスタチン、即ちオルリスタット等)、食欲抑制剤(ボンベシン作動薬等)、神経ペプチドY受容体拮抗薬(NPY−Y5受容体拮抗薬等)、甲状腺ホルモン剤、デヒドロエピアンドロステロン及びその類似体、グルココルチコイド受容体の作動薬及び拮抗薬、オレキシン受容体拮抗薬、グルカゴン様ペプチド1受容体作動薬、毛様体神経栄養因子(リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インク(Regeneron Pharmaceuticals, Inc.、ニューヨーク州タリタウン)及びプロクター・アンド・ギャンブル・カンパニー(Procter & Gamble Company、オハイオ州シンシナティ)製アキソキン(Axokine、登録商標)等)、ヒト−アグチタンパク(AGRP)阻害剤、グレリン受容体拮抗薬、ヒスタミン3受容体の拮抗薬及び逆作動薬、ニューロメジンU受容体作動薬等が挙げられる。
【0061】
適当な追加薬剤の他の例としては、脂質修飾化合物、例えばHMG−CoAレダクターゼ阻害剤、コレステロール吸収阻害剤、エゼチミド(ezetimide)、スクアレンシンセターゼ阻害剤、フィブレート、胆汁酸抑制剤、スタチン、プロブコール及びその誘導体、ナイアシン、ナイアシン誘導体、PPARアルファ作動薬、PPARガンマ作動薬、チアゾリジンジオン、コレステロールエステル輸送タンパク(CETP)阻害剤等が挙げられる。
【0062】
適当な追加薬剤の他の例としては、LDL−コレステロール降下薬、トリグリセリド降下薬、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、HMG−CoAシンターゼ阻害剤、HMG−CoAレダクターゼ遺伝子発現阻害剤、スクアレンシンセターゼ阻害剤、スクアリンエポキシダーゼ阻害剤、スクアリンシクラーゼ阻害剤、スクアリンエポキシダーゼ/シクラーゼ複合阻害剤、コレステロール合成阻害剤、コレステロール吸収阻害剤(ゼチーア(Zetia、登録商標)(エゼチミブ)等)、CETP阻害剤、PPAR修飾剤、他のコレステロール降下薬(フィブレート等)、イオン交換樹脂、酸化防止剤、ACAT阻害剤、胆汁酸抑制剤等が挙げられる。更に、本発明に組み合わせて用いることができる他の医薬としては、胆汁酸再摂取阻害剤、回腸胆汁酸輸送体阻害剤、ACC阻害剤、血圧降下薬(ノルバスク(Norvasc、商標)等)、利尿剤、ニンニク抽出物、胆汁酸抑制剤、抗生物質、抗糖尿病薬、並びに抗炎症薬(アスピリン等)が挙げられる。抗炎症薬としては、シクロオキシゲナーゼ1(Cox−1)よりもシクロオキシゲナーゼ2(Cox−2)を阻害するものが好ましく、例えばセレコキシブ(米国特許第5,466,823号)、バルデコキシブ(米国特許第5,633,272号)、パレコキシブ(米国特許第5,932,598号)、デラコキシブ(CAS RN 169590−41−4)、レフェコキシブ(CAS RN 162011−90−7)、エトリコキシブ(CAS RN 202409−33−4)、ルミラコキシブ(CAS RN 220991−20−8)、及びカルプロフェン(CAS RN 53716−49−7)が挙げられる。
【0063】
適当な追加薬剤の更なる例としては、血漿コレステロール値を低減可能な天然物が挙げられる。このような天然物は、通常栄養補助食品と称され、その例としてはニンニク抽出物、ホーディア抽出物、及びナイアシンが挙げられる。
【0064】
通常、追加薬剤の投与量は、治療される対象の健康、望ましい治療の程度、もし同時に他の治療を行うならその特性及び種類、治療の頻度、望ましい治療の効果等の複数の要素に応じて決定する。追加薬剤の投与量は、通常は1日に体重1kgあたり約0.001mg〜約100mgであり、好ましくは約0.1mg〜約10mgである。しかしながら、治療対象の年齢や体重、投与経路、投与する特定の抗肥満薬等に応じて、上記通常の投与量範囲を変える必要がある。当業者は本発明を実施することである患者に対する投与量範囲及び最適投与量を決定することができる。
【0065】
上記追加活性薬剤を従来の治療投薬計画に基づいて投与してもよい。また、追加活性薬剤の投与量を徐々に増やしてもよい。
【0066】
本発明の治療方法では、好ましくは調合薬の形態で、MTP阻害剤及び追加薬剤(「複合剤」と称する)を治療が必要な対象に投与してよい。MTP阻害剤及び他の医薬(他の抗肥満薬等)をそれぞれ別々に又は両方を含む調合薬の形態で投与してよい。通常、これらを経口投与するのが好ましい。MTP阻害剤と他の医薬を投与する場合、これらは逐次的に投与しても同時に投与してもよく、通常は逐次的に投与するのが好ましい。逐次的に投与する際は各薬剤をいかなる順序で投与してもよい。通常は各薬剤を経口投与するのが好ましい。これら薬剤を同時に経口投与するのが特に好ましい。逐次的に投与する場合、MTP阻害剤及び追加薬剤を投与する方法は同じであっても異なっていてもよい。
【0067】
本発明の方法では、MTP阻害剤又は複合剤を調合薬の形態で投与するのが好ましい。各薬剤は別々に又は一緒に、従来のいかなる方法で投与してもよい。投与方法としては、経口投与、直腸投与、経皮投与、非経口投与(静脈投与、筋内投与、皮下投与等)、嚢内投与、膣内投与、腹腔内投与、局所投与(粉末、軟膏、クリーム、スプレー、ローション等の形態)、口腔投与、鼻腔投与(スプレー、ドロップ、吸入剤等の形態)等が挙げられる。
【0068】
MTP阻害剤又は複合剤を単独で投与することもできるが、一般的には、当該技術分野で公知の医薬品賦形剤、補助薬、希釈剤、及び担体から投与経路や薬務に応じて選択した一種以上の適当な薬剤との混合物の形態で投与する。治療に適した投与経路及び放出特異性に応じて、MTP阻害剤又は複合剤を即効型製剤、遅延放出製剤、放出調節製剤、遅延放出製剤、パルス放出製剤、又は放出制御製剤の形態に処方してもよい。
【0069】
上記調合薬中のMTP阻害剤又は上記複合剤の量は、約1%から約75%、80%、85%、90%、更には95%(重量比)の範囲であってよく、一般的には約1%、2%、又は3%から約50%、60%、又は70%の範囲であり、より一般的には約1%、2%、又は3%から50%未満の範囲(約25%、30%、35%等)である。
【0070】
特定量の活性化合物を用いた様々な調合薬を調製する方法は当業者に公知である(レミントン(Remington),「ザ・プラクティス・オブ・ファーマシー(The Practice
of Pharmacy)」,リッピンコット・ウィリアムス・アンド・ウィルキンス(Lippincott Williams
and Wilkins),メリーランド州ボルティモア,第20版,2000年等参照)。
【0071】
適当な処方の例については、WO03/002533号、WO2005/046644号、及びWO2005/080373号等に記載されている。
【0072】
液体製剤を用いた経口投与の場合、該液体製剤は薬学的に許容可能な乳剤、溶液、懸濁液、シロップ、エリキシル等であってよい。液体製剤は、MTP阻害剤又は複合剤に加えて当該技術分野で一般的な不活性希釈剤を含有してよい。不活性希釈剤は水、その他の溶媒、可溶化剤、乳化剤等であってよく、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、オイル(綿実油、落花生油、トウモロコシ胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、ゴマ油等)、ミグリオール(Miglyol、商標)(コンデア・ビスタ・カンパニー製、ニュージャージー州クランフォード)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、ソルビタン脂肪酸エステル、これらの混合物等が挙げられる。
【0073】
上記製剤は、不活性希釈剤に加えて湿潤剤等の賦形剤、乳化剤、懸濁化剤、甘味剤、香料、及び芳香剤を含有してよい。
【0074】
MTP阻害剤又は複合剤の経口液体製剤は、活性化合物が完全に溶解した溶液を含有する。その溶媒としては薬学分野で先例のある全ての経口投与用溶媒、特に本発明の化合物が良好な溶解度を示すものが使用できる。溶媒の例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、食用油、グリセリル系及びグリセリド系溶媒等が挙げられる。グリセリル系及びグリセリド系溶媒としては、キャプテックス(Captex、登録商標)355EP(グリセリルトリカプリレート/カプリレート、アビテック(Abitec)製、オハイオ州コロンバス)、クロダモル(Crodamol、登録商標)GTC/C(中鎖トリグリセリド、クロダ(Croda)製、英国カウィクホール(Cowick Hall))、ラブラファク(Labrafac、登録商標)CC(中鎖トリグリド、ガテフォッセ(Gattefosse)製)、キャプテックス(Captex、登録商標)500P(グリセリルトリアセテート、即ちトリアセチン、アビテック(Abitec)製)、キャプマル(Capmul、登録商標)MCM(中鎖モノ及びジグリセリド、アビテック(Abitec)製)、ミグヨール(Migyol、登録商標)812(カプリリック/カプリックトリグリセリド、コンデア(Condea)製、ニュージャージー州クランフォード)、ミグヨール(Migyol、登録商標)829(カプリリック/カプリック/サクシニックトリグリセリド、コンデア(Condea)製)、ミグヨール(Migyol、登録商標)840(プロピレングリコールジカプリレート/ジカプリレート、コンデア(Condea)製)、ラブラフィル(Labrafil、登録商標)M1944CS(オレオイルマクロゴール−6グリセリド、ガテフォッセ(Gattefosse)製)、ペセオール(Peceol、登録商標)(グリセリルモノオレエート、ガテフォッセ(Gattefosse)製)、マイシン(Maisine、登録商標)35−1(グリセリルモノオレエート、ガテフォッセ(Gattefosse)製)等の商標登録された商品(及び類似の後発品)が挙げられる。特に中鎖(C〜C10)トリグリセリドオイルが関心を集めている。溶媒はしばしば製剤の主成分となり、即ちその含量は約50%超、通常は約80%超(例えば約95%又は99%)である。補助薬及び添加剤を溶媒とともに加えてもよく、それらは主として消味剤、風味剤、香料、酸化防止剤、安定化剤、質感調整剤、粘度調整剤、及び可溶化剤として利用される。
【0075】
上記懸濁液は、MTP阻害剤又は複合剤に加えて懸濁化剤等の担体を含有してよい。懸濁化剤の例としては、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール、ソルビタンエステル、微晶質セルロ−ス、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天、トラガカント、これらの混合物等が挙げられる。
【0076】
人間以外の動物に投与する場合、MTP阻害剤(又は複合剤)を飲用水中に含有させ、日々の給水時に治療用量の該化合物を簡便に摂取させることができる。該化合物を飲用水中に直接測り取ることができ、好ましくは液体状の水溶性濃縮物(水溶性塩の水溶液等)の形態で使用する。
【0077】
また、MTP阻害剤(又は複合剤)それ自体を、又は補足飼料の形態で、簡便に直接食品に加えてもよい。
【0078】
本発明は幾つかの有利な獣医学的特性を有する。動物を痩せさせ、且つ/或いは不要な脂肪を落とすことを望む飼い主や獣医は、本発明の方法を用いて望みを達成することができる。家禽、牛、豚の畜産家は、本発明の方法を用いて低脂肪動物を飼育し、食肉業界でより高価な商品を提供できる。
【0079】
本発明の実施態様を実施例を用いて以下に説明するが、本発明の実施態様は実施例の細部に限定されず、本明細書の開示により当業者は様々な改良に想到し得るであろう。
【実施例1】
【0080】
処方:1mLあたりの組成−ディルロタピド5mg、中鎖トリグリセリドオイル1mL以下
飼料:空気乾燥物に対する脂肪含有量が約5%、10%、又は15%のギルパトリンケッツ(Gilpa Trinkets)完全乾燥食品(ギルバートソン・アンド・ペイジ(Gilbertson
& Page)、英国ウェリンガーデンシティー)を、維持エネルギー要求量1.2で、減量段階及び再訓練段階を通して犬に与えた。後治療の前の再訓練段階の終盤、飼料消費記録の最終期間では、その90%を摂食した。
【0081】
ディルロタピドの初期投与量を0.1mg/kgとし、脂肪含有量の異なる食事を最大で52週間与えて過体重ラブラドール犬の治療を行い、ラブラドール犬におけるこの量でのディルロタピドの有効性及び安全性を調べた(更なる詳細は、ゴセリン(J. GOSSELLIN)、ピーチー(S. PEACHY)、シェリントン(J. SHERINGTON)、ローワン(T. G. ROWAN)、サンダーランド(S. J、SUNDERLAND),2007年,「エバリュエーション・オブ・ディルロタピド・フォー・サステインド・ウェイト・ロス・イン・オーバーウェイト・ラブラドール・レトリバーズ(Evaluation of dirlotapide for sustained weight loss in overweight Labrador retrievers)」,ジャーナル・オブ・ヴェテリナリー・ファーマコロジー・アンド・セラピューティックス(Journal
of Veterinary Pharmacology and Therapeutics),30(s1),55−65参照、該文献はこの参照により開示に含まれる)。本研究では連続した3段階の治療を行った。減量段階は最大で168日間行い、1週間で約1〜3%体重が減少するよう投与量を調整した。再訓練段階は最大で196日間行い、減量段階の終盤での体重に対して±5%の体重を維持するよう投与量を調整した。更に、後治療段階は被検物質は与えず最大で31日間行った。
【0082】
72匹の犬をボディ・コンディション・スコア及び体重に応じて分け、無作為に9種の治療、即ち168日間偽薬投与(T1、T2、及びT3、治療開始月の初期日用量0.02mL/kg)、最大168日間ディルロタピド投与・その後最大196日間偽薬投与(T4、T5、及びT6)、並びに最大364日間ディルロタピド投与(T7、T8、及びT9)に用いた。治療投与開始日(0日目)の前に、最大で39日間、犬を研究用住居、飼料、及び環境に慣れさせた。空気乾燥量に基づく脂肪含有量を変えた食事を犬に与えた。即ち、T1、T4、及びT7では脂肪含有量5%の食事、T2、T5、及びT8では脂肪含有量10%の食事、T3、T6、及びT9では脂肪含有量15%の食事を与えた。減量段階、再訓練段階、及び後治療段階を通して28日毎に犬を計量し、体調を評価し、採血し、糞密度を評価し、臨床検査を行った。更に、減量段階の24日目又は25日目に犬から血清を採取し、0〜14日目に臨床観察を行い、0〜7日目、13日目、及び14日目に糞密度を評価した。T7、T8、及びT9では、再訓練段階の−2日目及び112日目、後治療段階の28日目に犬の身体組成を評価した。再訓練段階の194日目には、眼科医が残る犬(T4〜T9)のビタミン欠乏特異的臨床徴候を調べた。また、再訓練段階の最終日に残る犬(T4〜T9)から皮下脂肪組織を採取し、更に研究の最終日にも採取した(T7〜T9)。再訓練段階の最終日には、獣医が全ての残る犬(T4〜T9)のビタミン欠乏特異的臨床徴候について調べた。全生化学的側面について血液を分析し、減量段階24/25日目、再訓練段階最終日、及び後治療段階最終日のサンプルを、ビタミンA、ビタミンE、及びプロトロンビンの凝固時間について分析した(減量段階24/25日目のサンプルについてはプロトロンビンは評価しなかった)。
【0083】
ディルロタピドを過体重犬の治療のために最大52週間投与したが、該薬剤は安全且つ有効であった。ディルロタピド治療した全ての犬の体重が有意に減少(P=0.0001)し、偽薬投与した犬の1週あたり平均減量は0.02%であったのに対し、ディルロタピド治療した犬の減量段階での1週あたり平均減量は0.86%であった。ディルロタピド治療した犬の体重減少は、速度は低下したものの再訓練段階でも継続され、再訓練段階での1週あたり平均減量は0.2%であった(偽薬投与した犬の体重は1週あたり平均0.65%増えた)。
【0084】
順応期間の摂食量に比較して、ディルロタピド治療した犬の減量段階での摂食量は有意に減少(P=0.0001)した。偽薬治療した犬の平均減少は17.1vs0.9%であった。
【0085】
減量段階及び再訓練段階の間の、ディルロタピド治療した犬の1週あたり平均脂肪減少量(体重基準)は、0.385〜0.442%であった。一方、1週あたりの除脂肪体重の変化は平均で−0.0196〜+0.0021%であり、除脂肪体重はあまり変化しないことを確認した。ディルロタピド治療した犬には、減量段階又は再訓練段階でボディ・コンディション・スコアが上がったものは見られなかった。一方、偽薬治療した犬のボディ・コンディション・スコアはそのままか、より高い値となった。
【0086】
本研究の各期間において、重大な副作用と疑わしい現象は見られなかった。
【0087】
投薬
偽薬投与犬への初期投与量は0.02mL/kgであり、これはディルロタピド量0.1mg/kgに等価である。
【0088】
図1及び図2は、ラブラドール犬の過体重の治療(ディルロタピド初期投与量を0.1mg/kgとし、脂肪含有量の異なる飼料を最大で52週間与える)において、ディルロタピドの有効性及び安全性を示すための研究に関するものである。
【0089】
ディルロタピド治療した群では、減量段階の間に投与量が増加し(図1)、最終投与量は平均で0.2〜0.6mg/kgであった。偽薬投与した群(T1〜T3)の最終投与量は平均で0.19〜0.20mL/kgと、最大許容投与量に達した。脂肪含有量15%の食事を与えた犬に比較して、脂肪含有量5%の食事を与えた犬では、減量段階の最後には投与量が著しく高くなった(P=0.0020、即ち更なる投与量増が必要)。減量段階での最終投与量は脂肪含有量5%、10%、及び15%でそれぞれ平均0.50、0.40、及び0.22mg/kg初期体重であった。
【0090】
体重
減量段階中、ディルロタピド治療した犬及び偽薬投与した犬では、概して有意な治療効果(P=0.0001、表1)が見られた(1週あたり平均体重減少はそれぞれ0.86%及び0.02%)。治療と飼料の間には有意な相互作用(P=0.0066)が認められ、各飼料で有意な治療効果が見られた(3種の脂肪含有飼料でP=0.001)。
【0091】
減量段階中、ディルロタピド治療した犬の平均累積体重減少は時間に対して一貫しており、18.4〜22.3%であった(3種の脂肪含有飼料、図2)。偽薬投与した犬の場合、脂肪含有率10%の飼料及び15%の飼料を用いると体重はほぼ一定のままで(+1.5%)、脂肪含有率5%の飼料を用いると168日間で4.2%の累積減少が見られた。
【0092】
再訓練段階中、ディルロタピド治療した犬、及び減量段階でディルロタピド治療した後に偽薬投与した犬では、概して有意な治療効果(P=0.0001、表2)が見られた(1週あたり平均体重減少はそれぞれ0.20%及び0.65%)。治療と飼料の間には有意な相互作用(P=0.0004)が認められ、各飼料で有意な治療効果が見られた(3種の脂肪含有飼料でP=0.0001)。
【0093】
飼料摂取
減量段階、再訓練段階、及び後治療段階中の飼料摂取を、順応期間と比較した。
【0094】
減量段階中、偽薬投与した犬に比較して、ディルロタピド治療した犬は有意に大きい平均日常飼料摂取量の減少(P=0.0001)を示した(表2、それぞれ17.1%及び0.9%)。治療と飼料(P=0.3253)の相互作用は認められなかった。
【0095】
減量段階中の週間体重変化(%)の概要を表1に示し、減量段階中の1日飼料摂取変化(%)の概要を順応段階中の摂取量に対するパーセントで表2に示し、研究期間中の投与量の概要を図1に示し、減量段階中の平均累積体重変化(%)の概要を図2に示す。
【0096】
【表1】

【0097】
【表2】

【実施例2】
【0098】
雄スプラーグダウレイラット(Sprague-Dawley Rat)への(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−2−カルボン酸[2−(2H−[1,2,4]トリアゾール−3−イルメチル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−イソキノリン−6−イル]アミド)の亜慢性投与の効果
動物:複数の雄スプラーグダウレイラット(215〜225g、チャールズ・リバー・ラボラトリーズ(Charles River Laboratories)、デラウエア州ウィルミントン)をそれぞれ21±2℃で吊りワイヤ網ケージに収容し、周囲の明:暗サイクルを12時間:12時間とした。これらラットに、総カロリーに対する脂肪由来のカロリーの割合が10%又は45%の精製粉末飼料(D01060501M、D01060502M、リサーチ・ダイエッツ(Research Diets)、ニュージャージー州ニューブランズウィック)をほぼ同じカロリー密度で与え、任意に水を与えた。実験に先立ち、全てのラットを実験用飼料及び日常サイクルに8日間慣れさせた。これら全ての手順は、インスティチューショナル・アニマル・ケア・アンド・ユース・コミッティー(Institutional Animal Care and Use Committee)の指針及び規定に従って行った。
【0099】
研究デザイン:本研究では計56匹のラットを使用した。www.randomization.comによる無作為化計画に従って、28匹のラットを低脂肪飼料の治療群に、他の28匹のラットを高脂肪飼料の治療群に、ランダムに割り当てた。漏出を最小化するために、金属の蓋及び飼料スクリーンをガラスの食品カップに取り付けた。化合物投与に先立って、24時間基準摂食量を4日間測定し、基準摂食量が治療群間で著しく異なることは無いと確認した。化合物投与3日目まで摂食量測定を続けた。−1日目、また1〜3日目のほぼ同時刻に体重を測定した。0.5%メチルセルロ−ス賦形剤、又は(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−2−カルボン酸[2−(2H−[1,2,4]トリアゾール−3−イルメチル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−イソキノリン−6−イル]アミド)の0.5%メチルセルロ−ス懸濁液をラットに与えた。連続する3日の間、投与量は0、10、30、又は100mg/kg(10mL/kg)とし、投与経路は通常の経口投与とし、投与時刻は暗所サイクルの約90分前とした。
【0100】
【表3】

【実施例3】
【0101】
高脂肪又は低脂肪の飼料を与えたラットにおける、10mg/kgのディルロタピド投与に対する摂食量及び血漿内分泌メディエーターの変化
動物:雄スプラーグダウレイラット(初期体重125〜135g、チャールズ・リバー・ラボラトリーズ(Charles River Laboratories)、マサチューセッツ州ウィルミントン)をそれぞれ21±2℃で吊りワイヤ網ケージに収容し、周囲の明:暗サイクルを12時間:12時間とした。これらラットに、総カロリーに対する脂肪由来のカロリーの割合が10%又は45%の精製粉末飼料(低脂肪飼料及び高脂肪飼料、D01060501M、D01060502M、リサーチ・ダイエッツ(Research Diets)、ニュージャージー州ニューブランズウィック)をほぼ同じカロリー密度で与え、任意に水を与えた。摂食量測定を容易に行うために、金属の蓋及び飼料スクリーンをガラスの食品瓶に取り付け、これを各ケージの前方に金属バネ又はリングで固定した。実験に先立ち、全てのラットを飼料及び手順に5日間慣れさせた。これら全ての手順は、インスティチューショナル・アニマル・ケア・アンド・ユース・コミッティー(Institutional Animal Care and Use Committee)の指針及び規定に従って行った。
【0102】
デザイン:本実験では計40匹の雄ラットを使用した。低脂肪飼料を与える群及び高脂肪飼料を与える群に、それぞれ20匹のラットをランダムに割り当てた。24時間摂食量を化合物投与(基準)に先立って3日間続けて測定し、またラットに化合物又は賦形剤を経口投与して3日間、摂食量測定を続けた。治療期間中、各飼料群のラットのうち10匹ずつを、更にランダムにポリエチレングリコール400(PEG400):生理食塩水=80:20の賦形剤を与える群、又は該賦形剤に10mg/kgディルロタピドを加えたものを与える群に割り当てた。投与量は体重1kgあたり1mLとした。投与経路は通常の経口投与とし、投与時刻は暗所サイクルの約90分前とした。連続する4日間ディルロタピド又は賦形剤を投与し、最初の3日に24時間摂食量を測定し、4日目に化合物による効果及び血漿内分泌メディエーターを分析するための血液サンプルを採取した。
【0103】
血液採取:4回目の賦形剤又はディルロタピドの投与から約16時間後、二酸化炭素吸入によりラットを死亡させ、心穿刺により血液サンプルを採取した。血液をEDTA及びアプロチニンを含有する管(0.6TIU/mL、フェニックス・ファーマシューティカルズ(Phoenix
Pharmaceuticals)、カリフォルニア州ベルモント)に入れ、その酵素的タンパク質分解を阻害した。血漿サンプルは約−20℃で冷凍保管した。
【0104】
血漿ペプチドYY、コレスシストキニン、ウロコルチン、グレリン、及び膵内ポリペプチドの分析:血漿ペプチドYY(PYY1−36及びPYY3−36)の総濃度を、市販キットを用いたラジオイムノアッセイ(RIA)により、メーカーの使用説明(フェニックス・ファーマシューティカルズ・インク(Phoenix Pharmaceuticals, Inc.)、カリフォルニア州ベルモント、#RK−059−03)に従って決定した。血漿コレスシストキニン(CCK)、ウロコルチン、及びグレリンの濃度を、市販キットを用いた酵素結合イムノアッセイ(ELISA)により、メーカーの使用説明(フェニックス・ファーマシューティカルズ(Phoenix Pharmaceuticals)、カリフォルニア州ベルモント、#EK−069−04、EK−019−15、EK−069−04)に従って決定した。膵内ポリペプチド(PP)の濃度をRIA法(リンコ・リサーチ・インク(Linco Research Inc.)、ミズーリ州セントチャールズ)により決定した。
【0105】
結果:連続する3日間、10mg/kgのディルロタピドを投与した結果、高脂肪飼料を与えた場合、1日摂食量阻害は平均43%と強く、また賦形剤投与したラットと比較して体重増加は56%減少した(図4)。賦形剤のみの基準に比べて、低脂肪飼料を与えディルロタピド治療を施したラットでは、小さいが有意な摂食量の減少(13%)が得られた。4日間の賦形剤又はディルロタピドの投与による、幾つかの公知満腹因子の血漿内濃度の変化を表4に示す。高脂肪飼料を与えたラットのみ、血漿内の体液性内分泌メディエーターを測定した。ディルロタピドを与えたラットの血漿PYY濃度は著しく高く、賦形剤の場合より370%高かった。
【0106】
【表4】

【実施例4】
【0107】
獣医患者である肥満犬にディルロタピドを1日に1回投与し、それによる減量の有効性及び安全性を2段階の無作為調査によって評価した。第1段階では偽薬を基準として用い、28匹の肥満犬(ボディ・コンディション・スコア(BCS)が9段階評価で7以上)を用いた。10匹(雄6匹・雌4匹)の偽薬投与犬に初期投与量0.036mL/lbの中鎖トリグリセリド(MCT)オイル賦形剤を1日に1回与え(T1)、且つ18匹(雄6匹・雌12匹)のディルロタピド治療犬に初期投与量0.4mg/kg(0.18mg/lb)のディルロタピドを1日に1回与えた(T2)。14日目及び28日目に投与量を10%又は20%調整し、56日間の治療で1週あたり1%〜3%の減量を行った。第2段階では、T2治療犬のうち8匹は84日まで治療を続け(T2延長)、偽薬投与犬のうち8匹にディルロタピドを初期投与量0.2mg/kg(0.09mg/lb)で、投与量を毎月調整しながら84日間与えた(T3)。第2段階では基準動物は用いなかった。0日目及び14日目に体重及びBCSを記録し、更にその後は毎月記録した。各治療において、0日目からの体重変化(%)と犬に与えた食物脂肪(%)との間の関係を計算した。
【0108】
調査中、犬には完全なバランスのとれた市販の飼料を与えたが、プロトコルには食物脂肪は規定されていなかった。食物脂肪の量を代謝エネルギー百分率で示すと、T1は16%〜45%、T2は22%〜51%、T3は16%〜45%であった。T3では、28日目(r=0.8)、56日目(r=0.8)、及び84日目(r=0.9)において、食物脂肪と減量有効性との間に良好な関係(飼料の脂肪含有量がキロカロリー%単位で高いと、体重減少量が増加)があった。T2では28日目(r=0.1)に多くの犬が週3%以上体重を落としたがこの効果は見られず、しかしながら56日目(r=0.4)にはこの効果が示唆された。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】研究期間中の投与量の概要を示す図である。
【図2】減量段階中の平均累積体重変化(%)の概要を示す図である。
【図3】総カロリーに対する脂肪のカロリーの割合が45%(A)又は10%(B)である飼料を与え、(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−2−カルボン酸[2−(2H−[1,2,4]トリアゾール−3−イルメチル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−イソキノリン−6−イル]アミド)(10、30、又は100mg/kg)又は賦形剤を投与して治療したラットの平均1日摂食量の概要を示す図である。
【図4】高脂肪又は低脂肪の飼料を与え、ディルロタピド(10mg/kg)又は賦形剤を投与して治療したラットの平均1日摂食量の概要を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肥満、或いはそれに関連する摂食障害及び/又は摂食量低下の症状を示す対象を治療する方法であって、治療有効量のMTP阻害剤を高脂肪食と共に前記対象に与えることを特徴とする治療方法。
【請求項2】
肥満、或いはそれに関連する摂食障害及び/又は摂食量低下の症状を示す対象を治療するための薬剤の製造におけるMTP阻害剤の使用であって、治療有効量のMTP阻害剤を高脂肪食と共に前記対象に与えることを特徴とする使用。
【請求項3】
前記高脂肪食の脂肪含有量が、空気乾燥物の量に基づき、約10%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法又は使用。
【請求項4】
前記高脂肪食の脂肪含有量が、空気乾燥物の量に基づき、約15%以上であることを特徴とする請求項3に記載の方法又は使用。
【請求項5】
前記高脂肪食の総カロリーに対する前記高脂肪食中の脂肪によるカロリーの割合が約24%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法又は使用。
【請求項6】
前記高脂肪食の総カロリーに対する前記高脂肪食中の脂肪によるカロリーの割合が約34%以上であることを特徴とする請求項5に記載の方法又は使用。
【請求項7】
前記MTP阻害剤が腸内で作用することを特徴とする先行する請求項のいずれかに記載の方法又は使用。
【請求項8】
前記MTP阻害剤が、ディルロタピド(dirlotapide)、ミトラタピド(mitratapide)、(S)−2−[(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−キノリン−6−カルボン酸(ペンチルカルバモイル−フェニル−メチル)−アミド、(S)−2−[(4’−tert−ブチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−キノリン−6−カルボン酸{[(4−フルオロ−ベンジル)−メチル−カルバモイル]−フェニル−メチル}−アミド、(S)−2−[(4’−tert−ブチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−キノリン−6−カルボン酸[(4−フルオロ−ベンジルカルバモイル)−フェニル−メチル]−アミド、(S)−2−[(4’−イソプロポキシ−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−キノリン−6−カルボン酸{[(4−フルオロ−ベンジル)−メチル−カルバモイル]−フェニル−メチル}−アミド、下記式:
【化1】

により表されるR256918、または(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−2−カルボン酸[2−(2H−[1,2,4]トリアゾール−3−イルメチル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−イソキノリン−6−イル]アミド)、並びにこれらの薬学的に許容可能な塩、水和物、及び溶媒和物からなる群から選ばれることを特徴とする先行する請求項のいずれかに記載の方法又は使用。
【請求項9】
前記MTP阻害剤がディルロタピドであることを特徴とする請求項8に記載の方法又は使用。
【請求項10】
前記MTP阻害剤を投与した後、任意により多量の前記MTP阻害剤を少なくとも一度投与し、更にその後、任意に体重維持/管理又は再訓練(retraining)を行うことを特徴とする先行する請求項のいずれかに記載の方法又は使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−179612(P2008−179612A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−319342(P2007−319342)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【出願人】(397067152)ファイザー・プロダクツ・インク (504)
【Fターム(参考)】