説明

肥満関連ペプチドの微生物性腸送達

本発明は、肥満関連ペプチドの微生物性送達に関する。より具体的には、本発明は、食物摂取および/またはエネルギーホメオスタシスの刺激または阻害において役割を果たす神経ペプチドおよび/またはペプチドホルモンの送達のための遺伝子改変酵母および/または乳酸菌の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は肥満関連ペプチドの微生物性送達に関する。より具体的には、本発明は、食物摂取および/またはエネルギーホメオスタシスの刺激または阻害において役割を果たす神経ペプチドおよび/またはペプチドホルモンの送達のための遺伝子改変酵母および/または乳酸菌の使用に関する。
【0002】
神経性食欲不振、神経性過食症、および過食症などの摂食障害が人口のかなりの部分を冒している。肥満は最も一般的な代謝性疾患の1つであり、そして、肥満に関連する多数の合併症(例えば、糖尿病、高血圧および心血管疾患)のために、公衆衛生の最大の脅威の1つである。
【0003】
世界的な過体重の増加を考慮すると、食物摂取およびエネルギー消費の神経ホルモン制御は重要な医療問題になっている。近年、食物摂取に対して刺激効果または阻害効果のいずれかを有する肥満関連ペプチド、および体重制御におけるそれらの可能な使用に関する研究が公開されている(Broberger, 2005; Konturek et al., 2005; Stanley et al., 2005)。
【0004】
肥満関連ペプチドは、通常、中枢神経系において活性である。医療状況において、化合物は、通常非経口注射によって適用される。しかし、肥満関連ペプチドの効果は平衡の一時的な変化であり、そしてほとんどの場合、少なくとも毎日の注射が障害の安定化のために必要とされる。この適用形態は患者にとって非常に不便であり、そして経鼻、舌下、直腸または経口などの他の適用形態に向けて鋭意研究が実施されている。特に、経口適用はより容易であり、そして患者によってより良好に受け入れられる。しかし、経口適用の主な欠点は、肥満関連ペプチドが胃腸管を通過する必要があることである。胃腸管で、肥満関連ペプチドは、通常、胃の高い酸性度によって不活化され、そして胃腸管中に存在するタンパク質分解酵素によって消化される。これによって、腸送達のためにカプセル化されたタンパク質でさえかなり非効率的となり、そして高用量での送達が必要となっている。この問題を克服するために、吸収増強剤が提案されている。このような増強剤は、とりわけ、国際公開第02/28436号、国際公開第04/104018号、および国際公開第05/112633号に記載されており、そしてインスリン、グルカゴン様ペプチド1、およびペプチドYYなどの肥満関連ペプチドの経口送達について記載されている。
【0005】
送達増進剤は特定の場合において有用でありうるが、肥満関連ペプチドの安定化に必要な複合マイクロカプセル化(combined micro-encapsulation)、および肥満関連ペプチドの生物学的利用率を増加させるための増強剤の使用のために医薬の製剤が複雑になる。
【0006】
微生物性腸送達は当業者に公知であり、そしていくつかの出願において記載されている(とりわけ、国際公開第97/14806号、国際公開第00/23471号、国際公開第01/02570号)。しかし、現在までに、適用の成功は損傷した腸におけるペプチドの局所送達に限定されていた。当技術分野において、肥満関連ペプチドのような血液脳関門の通過が必要とされうる化合物の全身送達のために微生物性送達を使用できるとの指摘はなく、インタクトな腸におけるペプチドの取り込みに関するデータは入手可能でない。驚くべきことに、本発明者らは、細菌または酵母による微生物性送達を使用した場合に、腸送達のための古典的なマイクロカプセル化とは反対に、増強剤または送達補助物の使用は必要がないことを見出した。さらに驚くべきことに、インタクトな腸に微生物性送達されたタンパク質の生物学的利用率は、胃内注射によって送達されたタンパク質などの直接的に送達されたタンパク質の生物学的利用率よりも高いようである。
【0007】
本発明の第1の局面は、肥満関連ペプチドの腸送達のための遺伝子改変生物の使用である。
【0008】
一実施態様では、遺伝子改変生物は、細菌、好ましくは非病原性および非侵襲性の細菌、より好ましくはグラム陽性細菌、さらに好ましくは乳酸菌でありうる。別の実施態様では、遺伝子改変生物は、酵母、好ましくは非病原性および非侵襲性の酵母でありうる。従って、好ましくは、前記遺伝子改変生物は、乳酸菌および酵母からなる群より選択される。乳酸菌は、限定はされないが、ラクトバシラス属の種(Lactobacillus spp.)、カルノバクテリウム属の種(Carnobacterium spp.)、ラクトコッカス属の種(Lactococcus spp.)、ストレプトコッカス属の種(Streptococcus spp.)、ペディオコッカス属の種(Pediococcus spp.)、オエノコッカス属の種(Oenococcus spp.)、エンテロコッカス属の種(Enterococcus spp.)、およびロイコノストック属の種(Leuconostoc spp.)を含む。酵母は、限定はされないが、サッカロミセス属の種(Saccharomyces spp.)、ハンゼヌラ属の種(Hansenula spp.)、クルイベロミセス属の種(Kluyveromyces spp.)、シゾサッカロミセス属の種(Schizzosaccharomyces spp.)、ザイゴサッカロミセス属の種(Zygosaccharomyces spp.)、ピキア属の種(Pichia sp.)、モナスカス属の種(Monascus spp.)、ゲオトリクム属の種(Geotrichum spp.)、およびヤロウィア属の種(Yarrowia spp.)を含む。
【0009】
好ましい実施態様は、遺伝子改変生物の使用であって、ここで該遺伝子改変生物はラクトバシラス属の種、カルノバクテリウム属の種、ラクトコッカス属の種、ストレプトコッカス属の種、ペディオコッカス属の種、オエノコッカス属の種、エンテロコッカス属の種、およびロイコノストック属の種からなる群より選択され;より好ましくは、ラクトバシラス属の種およびラクトコッカス属の種からなる群より選択され;さらに好ましくは、ラクトコッカス属の種からなる群より選択され;最も好ましくはラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)である。別の好ましい実施態様は、遺伝子改変生物の使用であって、ここで該遺伝子改変生物はサッカロミセス属の種、ハンゼヌラ属の種、クルイベロミセス属の種、シゾサッカロミセス属の種、ザイゴサッカロミセス属の種、ピキア属の種、モナスカス属の種、ゲオトリクム属の種、およびヤロウィア属の種からなる群より選択され;より好ましくは、サッカロミセス属の種およびピキア属の種からなる群より選択され;さらに好ましくは、サッカロミセス属の種からなる群より選択され;最も好ましくはサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)である。
【0010】
肥満関連ペプチドは当業者には公知であり、限定はされないが、1)アグーチ関連ペプチド、2)アミリン、3)アノレクチン(Anorectin)、4)ボンベシン、5)脳由来神経因子、6)カルシトニン遺伝子関連ペプチド、7)コレシストキニン、8)コカインおよびアンフェタミン調節転写物ペプチド(cocaine- and amphetamine-regulated transcript peptide)、9)毛様体神経栄養因子、10)副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン、11)ダイノルフィン、12)βエンドルフィン、13)エンテロスタチン(enterostatin)、14)エキセンディン、15)ガラニン、16)ガラニン様ペプチド、17)胃抑制ペプチド、18)グレリン、19)グルカゴン様ペプチド1、20)成長ホルモン放出ホルモン、21)ヒポクレチン/オレキシン、22)インスリン、23)インスリン様増殖因子I、24)インスリン様増殖因子II、25)インターロイキン1、26)ペプチドYY、27)レプチン、28)メラニン凝集ホルモン、29)モチリン、30)ニューロメジンB、31)ニューロメジンU、32)神経ペプチドB、33)神経ペプチドK、34)神経ペプチドS、35)神経ペプチドW、36)神経ペプチドY、37)ニュ−ロテンシン、38)オキシトシン、39)プロラクチン放出ペプチド、40)プロオピオメラノコルチンおよびそれに由来するメラノコルチン、41)ソマトスタチン、42)チロトロピン放出ホルモン、43)ウロコルチン、44)VGF、45)26RFa、46)アポリポタンパク質A−IV、47)オキシントモジュリン、48)膵臓ポリペプチド、49)ガストリン放出ペプチド、50)ニューロメジン、51)グルコース依存性インスリン分泌促進ポリペプチド(glucose-dependent insulinotrophic polypeptide)、52)オベスタチン(obestatin)、および53)成長ホルモンフラグメント(hGH177−191)を含む。
【0011】
従って、肥満関連ペプチドの腸送達のための遺伝子改変生物の使用の実施態様では、肥満関連ペプチドは、上記の1)〜53)に列挙するペプチドからなる群より選択される。別の実施態様では、肥満関連ペプチドは、上記の1)〜45)に列挙するペプチドからなる群より選択される。
【0012】
さらなる実施態様では、肥満関連ペプチドは、上記の1)〜21)および23)〜53)に列挙するペプチドからなる群より選択されるか、または上記の1)〜21)および23)〜45)に列挙するペプチドからなる群より選択される。別の実施態様では、肥満関連ペプチドは、上記の1)〜24)および26)〜53)に列挙するペプチドからなる群より選択されるか、または上記の1)〜24)および26)〜45)に列挙するペプチドからなる群より選択される。さらなる実施態様では、肥満関連ペプチドは、上記の1)〜40)および42)〜53)に列挙するペプチドからなる群より選択されるか、または上記の1)〜40)および42)〜45)に列挙するペプチドからなる群より選択される。さらなる実施態様では、肥満関連ペプチドは、上記の1)〜21)、23)、24)、26)〜40)および42)〜53)に列挙するペプチドからなる群より選択されるか、または上記の1)〜21)、23)、24)、26)〜40)および42)〜45)に列挙するペプチドの群より選択される。
【0013】
上記で列挙する肥満関連ペプチドおよびそれらの生理学的効果は、一般的に当業者には公知であり、当業者は特定の状態における送達に適切なペプチドを選択することができる。具体例として、目的が、食物摂取を低下させる、および/または体重を減少させることである場合、食欲を低下させる、栄養吸収を低下させる、および/または栄養の異化作用を増加させるなどの肥満関連ペプチドを送達することができ;目的が、食物摂取を増強する、および/または体重を増加させることである場合、食欲を増加させる、栄養吸収を増加させる、および/または栄養貯蔵を増加させるなどの肥満関連ペプチドを送達することができる。
【0014】
例示的な、非限定的な実施態様では、食物摂取および/または体重を低下させることが目的である場合、送達される肥満関連ペプチドは、上記の2)〜10)、13)、14)、16)、17)、19)、22)〜27)、29)〜33)、35)、37)〜43)、46)、47)、49)〜53)に列挙するペプチドからなる群より選択されてもよく;または、別の実施態様では、上記の2)〜10)、13)、14)、16)、17)、19)、23)、24)、26)、27)、29)〜33)、35)、37)〜40)、42)、43)、46)、47)、49)〜53)に列挙するペプチドからなる群より選択されてもよい。これらの群からの肥満関連ペプチドが、本発明の遺伝子改変生物によって送達された場合に、かなりの食欲抑制効果を示しうることが分かっている。好ましくは、前記肥満関連ペプチドは、ペプチドYY(PYY)またはエキセンディンであり、さらに好ましくはPYYまたはエキセンディン−4である。
【0015】
別の例示的な、非限定的な実施態様では、食物摂取および/または体重を増加させることが目的である場合、送達される肥満関連ペプチドは、上記の1)、11)、12)、15)、18)、20)、21)、28)、36)、44)、45)、および48)に列挙するペプチドからなる群より選択されうる。この群からの肥満関連ペプチドが、本発明の遺伝子改変生物によって送達された場合に、かなりの食欲促進効果を示しうることが分かっている。
【0016】
既に示したように、上記の肥満関連ペプチドを遺伝子改変生物によって効率的に送達できることは驚くべきことである。実際、これらのペプチドの大部分は腸中で非常に不安定である。さらに、それらのペプチド性の性質のために、インタクトな腸(これには、例えば、上皮細胞内層、粘膜層、ならびに管腔および上皮の分解酵素などの物理的および生化学的なバリアが含まれ、これによって、とりわけ、タンパク性またはペプチド性の毒素、病原体または抗原の侵入に対して生物が防御される)を通った生物中へのこれらのペプチドの効率的な侵入は予想外であろう。また、微生物性送達の実証の成功は、これまでのところ主に、インタクトな腸を通った粘膜(下)送達ではなく損傷した腸中でのペプチドの局所送達に集中している。
【0017】
さらに驚くべきことに、送達されたペプチドの大部分は(神経)ペプチドであり、これらは、通常、中枢神経系もしくは末梢神経系、または神経内分泌組織において合成され、そして/またはその効果を発揮する。本発明の遺伝子改変生物によって腸送達された場合に、このような(神経)ペプチドが、関連組織においてその生理学的効果をなお発揮することができることは全く予想外である。例えば、通常、中枢神経系もしくは末梢神経系、または神経内分泌組織において合成され、そして/またはその効果を発揮する、上記リストからの好ましいペプチドとしては、限定はされないが、上記の1)〜3)、5)〜12)、14)〜16)、18)〜21)、26)〜28)、30)〜40)、42)〜45)、52)および53)に列挙するペプチドが挙げられる。
【0018】
一実施態様では、本発明の遺伝子改変生物は、1つの肥満関連ペプチドを送達してもよい。しかし、遺伝子改変生物が2個以上、例えば、2個、3個、4個またはそれ以上、好ましくは2個または3個、より好ましくは2個の上記で定義する異なる肥満関連ペプチドを送達してもよいことも意図される。例えば、一実施態様では、前記生物は上記で定義する2個以上の異なる食欲促進ペプチドを送達してもよい。別の実施態様では、生物は上記で定義する2個以上の異なる食欲抑制ペプチドを送達してもよい。
【0019】
2個以上の異なる肥満関連ペプチドが遺伝子改変生物によって送達される場合、前記ペプチドによって被験体において相加的または相乗的な生理学的効果、例えば、食物摂取および/または体重の相加的または相乗的な減少または増加が達成されうることが理解される。好ましい実施態様では、遺伝子改変生物は、被験体において相乗的な生理学的効果を達成する2個以上の肥満関連ペプチドを送達してもよい。好ましいが非限定的な例として、本発明の遺伝子改変生物は、PYYおよびエキセンディン、より好ましくはPYYおよびエキセンディン−4を送達してもよく、これらは一緒に相乗的に作用することができ、その結果一緒に送達された場合に達成される食欲抑制効果は、単独で送達された場合に観察される個々の効果の和よりも有意に大きい。
【0020】
本出願において使用されるペプチド、タンパク質、およびポリペプチドという用語は互換的である。ペプチドはアミノ酸のポリマーを指し、そして特定の長さの分子を指すわけではない。この用語には、グリコシル化、リン酸化、アミド化、およびアセチル化などのポリペプチドの翻訳後修飾も含まれる。
【0021】
グルカゴン様ペプチド1についてのように天然の肥満関連ペプチドがアミド化される場合、遺伝子改変生物によって産生されるペプチドは好ましくはアミド化されない。
【0022】
本発明のさらなる展開では、遺伝子改変生物は、本明細書で定義する肥満関連ペプチドに結合する結合分子を送達してもよい。有利なことに、内因性肥満関連ペプチドに結合することによって、結合分子は、被験体における前記内因性肥満関連ペプチドの生物学的効果または生理学的効果を増加させてもよく(アゴニスト)、またはは減少させてもよい(アンタゴニスト)。したがって、本発明の局面は、本明細書で開示する肥満関連ペプチドに結合できる結合分子の腸送達のための遺伝子改変生物の使用を提供する。好ましい実施態様では、被験体におけるこのように結合した肥満関連ペプチドの生物学的効果または生理学的効果は増加させられるか、または減少させられる。
【0023】
本発明のさらなる別の展開では、遺伝子改変生物は、本明細書で定義する肥満関連ペプチドの内因性受容体に結合する結合分子を送達してもよい。有利なことに、前記内因性受容体に結合することによって、結合分子は前記受容体の生物学的活性を増加させてもよく(アゴニスト)、または減少させてもよく(アンタゴニスト)、そしてこれによってコグネイトの肥満関連ペプチドの存在または非存在をそれぞれ模倣してもよい。したがって、本発明の局面は、本明細書で開示する肥満関連ペプチドの内因性受容体に結合できる結合分子の腸送達のための遺伝子改変生物の使用を提供する。好ましい実施態様では、被験体においてこのように結合した受容体の生物学的活性が増加させられるか、または減少させられる。
【0024】
「結合分子」という表現における「分子」という用語は、任意の化学的(例えば、無機または有機)、生化学的、または生物学的物質、分子または高分子(例えば、生物学的高分子)、またはこれらの組み合せまたは混合物を広く指す。好ましい結合分子は、限定はされないが、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質、ペプチド模倣物、抗体およびそのフラグメントおよび誘導体、アプタマー、化学物質、炭水化物、多糖類などを含みうる。
【0025】
本明細書で使用する「結合」という用語は、一般的に、分子物体間、例えば結合分子と肥満関連ペプチドとの間の、物理的結合、本明細書において好ましくは非共有結合性の物理的結合を指す。好ましい実施態様では、結合分子は、肥満関連ペプチドまたは肥満関連ペプチドの内因性受容体のネイティブなコンホメーションに結合することができる。
【0026】
好ましい実施態様では、結合分子は、高親和性で肥満関連ペプチドに結合することができる。本明細書で使用する場合、結合は、該結合の親和定数(K)が、K>1×10−1、好ましくは、K≧1×10−1、さらに好ましくはK≧1×10−1、たとえば、K≧1×10−1、さらに好ましくは、K≧1×10−1、さらに好ましくは、K≧1×10−1、例えば、K≧1×1010−1、そして最も好ましくは、K≧1×1011−1、例えば、K≧1×1012−1、K≧1×1013−1、K≧1×1014−1、K≧1×1015−1またはさらに高い(ここで、K=[結合パートナー1_結合パートナー2]/[結合パートナー1][結合パートナー2]である)場合に、「高親和性」であると見なすことができる。Kの測定は、例えば、平衡透析およびスキャッチャードプロット解析を使用して、当技術分野において公知の方法によって実施することができる。
【0027】
好ましい実施態様では、肥満関連ペプチド、または肥満関連ペプチドの内因性受容体への結合分子の結合は特異的である。「特異的に結合する」および「特異的結合」という用語は、結合分子が、別の生物学的物質などの無作為の無関係な物質に結合するよりも容易にそれぞれの肥満関連ペプチド、または肥満関連ペプチドの内因性受容体に結合する状況を反映する。例えば、所定の肥満関連ペプチド(「ペプチド1」)または所定の肥満関連ペプチドの内因性受容体(「受容体1」)に特異的に結合する結合分子は、好ましくは、それぞれ結合分子が高親和性で前記肥満関連ペプチド(「ペプチド1」)または所定の肥満関連ペプチドの前記内因性受容体(「受容体1」)に結合する条件下で、他の肥満関連ペプチドまたはその受容体を含む他のポリペプチドに対する結合をほとんどまたは全く示さない。ほとんどまたは全く結合しないとは、K≦1×10−1、好ましくは、K≦1×10−1、より好ましくは、K≦1×10−1、さらに好ましくは、K≦1×10−1、例えば、K≦1M−1、最も好ましくは、K≪1M−1、例えば、K≦1×10−1−1、K≦1×10−2−1、K≦1×10−3−1、K≦1×10−4−1、K≦1×10−5−1、K≦1×10−6−1またはそれよりも小さいことを意味する。
【0028】
肥満関連ペプチドの生物学的効果または生理学的効果を増加させることができるか、または肥満関連ペプチドの内因性受容体の生物学的活性を増加させることができる結合分子を、本明細書において「アクチベーター」または「アゴニスト」と称する。肥満関連ペプチドの生物学的効果または生理学的効果を部分的にまたは完全に低下させることができるか、または肥満関連ペプチドの内因性受容体の生物学的活性を部分的にまたは完全に低下させることができる結合分子は、本明細書において「インヒビター」または「アンタゴニスト」と称する。典型的には、本明細書で使用される肥満関連ペプチドの生物学的効果および生理学的効果は、被験体におけるその食欲促進効果または食欲抑制効果を示す。肥満関連ペプチドの受容体の生物学的活性は、例えば下流のシグナル伝達経路に対する活性化受容体の効果(例えば、その活性化または抑制)、または細胞膜電位などに対する活性化受容体の効果を示しうる。
【0029】
それによって肥満関連ペプチドへの結合分子の結合が被験体における該ペプチドの生理学的効果を増強しうるかまたは減少させうる任意のそして全ての機構が、本発明によって意図される。限定はされないが、例として、このようなアクチベーターまたはインヒビターは、それぞれ肥満関連ペプチドの安定性を増加させうるかまたは減少させうる;肥満関連ペプチドの分解または代謝回転を低下させうるかまたは促進させうる;肥満関連ペプチドのそのコグネイト受容体、標的細胞、または組織との相互作用を増加させうるかまたはは低下させうる、など。
【0030】
それによって肥満関連ペプチドの内因性受容体への結合分子の結合が被験体における該受容体の生物学的活性を増強しうるかまたは減少させうる任意のそして全ての機構が、本発明によって意図される。典型的には、アゴニストの結合は受容体を活性化する、すなわち、このようなアゴニストは肥満関連ペプチドのそのコグネイト受容体への結合を模倣しうる。典型的には、アンタゴニストは非生産的な方法で受容体に結合しうる、すなわち、このような結合は受容体を活性化せず、そして好ましくは、例えば、競合的なまたは非競合的な方法で、それぞれの肥満関連ペプチドのその受容体への結合および/または受容体の任意の同時の活性化を防止することができる。
【0031】
理解されうるように、食欲促進ペプチド(例えば、グレリン、メラニンなど)のアゴニストまたはそれらの受容体および/または食欲抑制ペプチド(例えば、GLP−1、PYY、およびオキシントモジュリン)のアンタゴニストまたはそれらの受容体の送達は、食物摂取および/または体重に対する刺激効果を有し、食欲促進ペプチドのアンタゴニストまたはそれらの受容体および/または食欲抑制ペプチドのアゴニストまたはそれらの受容体の送達は、食物摂取および/または体重を減少させる。
【0032】
特に好ましい実施態様では、本明細書で意図される結合分子は抗体であってもよい。
【0033】
本明細書で使用する「抗体」という用語は、天然であるにせよ部分的または全体的に加工されているにせよ、任意の免疫学的結合因子を広く指す。「特異的」という用語は、一価抗体および/または単一特異性抗体を含むインタクトな抗体、および少なくとも2つのインタクトな抗体から形成される多価(例えば、2価、3価またはそれ以上の価数)および/または多特異性抗体(例えば、二重またはそれ以上の特異性の抗体)を包含し、そして目的の抗原(すなわち、所定の肥満関連ペプチドまたはその受容体、または本明細書で開示する所定の酵素)に特異的に結合する能力を示す限り、抗体フラグメント、ならびにこのような抗体フラグメントの多価および/または多特異性複合体をさらに含む。「抗体」という用語には、目的の抗原上のエピトープに特異的に結合できる少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含むように作製された任意のポリペプチドがさらに含まれる。一実施態様では、抗体は、IgA、IgD、IgE、IgG、またはIgM免疫グロブリンアイソタイプクラスまたはそのサブクラス、好ましくはIgG免疫グロブリンクラスまたはそのサブクラスのいずれかであってもよい。
【0034】
いくつかの場合、例えば、ラクダ(camelid)種由来の、またはラクダ免疫グロブリンに基づいて加工された特定の免疫グロブリン分子において、完全な免疫グロブリン分子は、軽鎖なしで、重鎖のみからなりうる(例えば、Hamers-Casterman et al. 1993. Nature 363: 446-448; 国際公開第94/04678号参照)。これらの免疫グロブリンにおいて、VHHといわれる重鎖可変領域は、CDR全体を形成する。天然に軽鎖を欠くこのような重鎖免疫グロブリン分子、および本質的にVHHドメインまたはその機能的部分を含むかまたは本質的にそれらからなるその機能的フラグメントおよび/または誘導体も本明細書で使用される「抗体」という用語に含まれ、そしてその好ましい実施態様を構成する。二価または多価の単一ドメイン抗体、すなわち、VHHポリペプチド構築物を作製するための方法が、国際公開第96/34103号に開示されている。
【0035】
抗体のさらなる好ましい実施態様には、限定はされないが、キメラ抗体(例えば、参考のために米国特許第4,816,567号およびMorrison et al. 1984. PNAS 81: 6851-6855参照)、霊長類化(primatised)抗体およびヒト化抗体(例えば、参考のためにJones et al. 1986. Nature 321: 522-525; Riechmann et al. 1988. Nature 332: 323-329; およびPresta 1992. Curr Op Struct Biol 2: 593-596参照)が含まれる。
【0036】
さらなる実施態様では、本発明には、例えば、より小さなサイズ、より容易な送達、エフェクタードメインの非存在などの利点を示すことができる抗体フラグメントを用いてもよい。
【0037】
「抗体フラグメント」はインタクトな抗体の一部分を含み、その抗原結合領域または可変領域を含む。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、およびscFvフラグメント;ジアボディ(diabody);トリアボディ(triabody);単鎖抗体分子;ならびに、抗体フラグメントから形成される多価および/または多特異性抗体が挙げられる。Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、scFvなどの上記名称は、当技術分野で確立された意味を有することを意図している。
【0038】
さらに説明すると、抗体のパパイン消化によって、各々が1つの抗原結合部位を有する「Fab」フラグメントと呼ばれる2つの同一の抗原結合フラグメント、および残りの「Fc」フラグメントが生成される。ペプシン処理によって、2つの抗原結合部位を有するF(ab’)2フラグメントが生じる。典型的なFabフラグメントには、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第1定常ドメイン(CH1)も含まれる。Fab’フラグメントは、抗体ヒンジ領域からの1つ以上のCys残基を含む重鎖CH1ドメインのC末端での少数の残基の付加によりFabフラグメントとは異なる。
【0039】
「Fv」もまた好ましい実施態様を構成しており、これは完全な抗原認識および抗原結合部位を含む抗体フラグメントである。この領域は、強固に非共有結合している1つの重鎖と1つの軽鎖可変ドメインの二量体から本質的になる。各可変ドメインの3つの超可変領域が相互作用して、VH−VL二量体の表面上での抗原結合部位を規定するのはこの立体配置内においてである。集合的に、6つの超可変領域は抗体に抗原結合特異性を付与する。しかし、単一の可変ドメインであるVHまたはVL、すなわち、抗原に特異的な3つの超可変領域のみを含むFvの半分でさえ、結合部位全体よりも親和性は低いものの、抗原を識別して、そして結合する能力を有する(「単一ドメイン抗体」)。
【0040】
「単鎖Fv」または「scFv」抗体フラグメントは、さらなる好ましい実施態様を構成しており、抗体のVHドメインおよびVLドメインを含み、ここでこれらのドメインは単一のポリペプチド鎖中に存在する。好ましくは、Fvポリペプチドには、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーがさらに含まれ、これによりscFvが抗原結合のための所望の構造を形成できるようになる(例えば、参考のために、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., Springer-Verlag, New York, pp.269-315, 1994参照)。
【0041】
さらに、「Fv」という用語には、さらなる機能的な(すなわち、特異的に抗原結合する)そのフラグメントも含まれる。このようなフラグメントの例としては、限定はされないが、Fvのみの重鎖のフラグメントを含むミニボディ(minibody)、抗体重鎖可変領域の小部分ユニットを含むマイクロボディ(microbody)(PCT/IL99/00581参照)、軽鎖のフラグメントを有する類似のボディ、および軽鎖可変領域の機能ユニットを有する類似のボディが挙げられる。Fv分子のフラグメントが実質的に環状またはループ状のポリペプチドでありうることは理解される。
【0042】
scFv分子を含む二価および/または二重特異性抗体は、さらなる好ましい実施態様を構成し、例えば、ポリペプチドリンカーを介した両scFv分子の遺伝子結合によって構築できる(例えば、米国特許第5,091,513号および米国特許第5,637,481号参照)。このリンカーがヘテロ二量化らせんを含む場合、四価の二重特異性抗体が形成される。
【0043】
「ジアボディ」もまた、好ましい実施態様を示しており、これは2つの抗原結合部位を有する小さな抗体フラグメントを指し、そのフラグメントは、同じポリペプチド鎖において軽鎖の可変ドメイン(VL)に連結された重鎖の可変ドメイン(VH)(VH−VL)を含む。同じ鎖上での2つのドメイン間の対合を可能にするには短過ぎるリンカーを使用することによって、ドメインは別の鎖の相補的ドメインと対合し、そして2つの抗原結合部位を作ることを強いられる。二価ジアボディは、親scFv分子と比較して、解離速度(Koff)の劇的な低下を示す。ジアボディは、例えば、欧州特許出願公開第404,097号、国際公開第93/11161号、およびHollinger et al. 1993 (PNAS 90: 6444-6448)において、より十分に記載されている。二重またはそれ以上の特異性のジアボディの産生については、例えば、国際公開第02/02781号に記載されている。
【0044】
VHドメインとVLドメインとの間のリンカーを<1〜2オングストロームに短縮することにより、三量体分子、すなわちトリアボディの形成が促進され、これもまた好ましい実施態様を構成する。トリアボディ構造は、三価および/または三重特異性抗体フラグメントの設計および構築の青写真として使用しうる(例えば、3つの異なる抗体A、B、およびCの重鎖および軽鎖のVドメインを結合させて、2つの異なる鎖、VHA−VLB、VHB−VLC、およびVHC−VLAを形成することによる)。トリアボディは同じ分子上の3つの異なるかまたは同一のエピトープを結合させて、非常に高い見掛け上の親和性をもたらしうる。
【0045】
当業者は、変化によってそれぞれの抗原のその結合が保存される限り、抗体が、1個以上のアミノ酸の欠失、付加、および/または置換(例えば、保存的置換)を含むことができることを理解する。抗体は、その構成アミノ酸残基の1個以上のネイティブなまたは人工的な改変を含んでもよい(例えば、グリコシル化など)。
【0046】
さらなる好ましい実施態様では、本明細書で意図される結合分子は、肥満関連ペプチドのドミナントネガティブ変異体であってもよい。本明細書で使用される「ドミナントネガティブ変異体」は、対応する正常な野生型の肥満関連ペプチドの機能、およびそれにより生物学的効果または生理学的効果に悪影響を及ぼすペプチドまたはタンパク質を産生する変異を意味する。
【0047】
さらなる好ましい実施態様では、本明細書で意図される結合分子は、内因性肥満関連ペプチドの能動的分泌を誘発または抑制しうる。
【0048】
例えば、肥満関連ペプチドの抗体およびドミナントネガティブ変異体などの本発明の結合分子は、生産コストの大幅な削減の恩恵をともない、そして生産能の制限なしに本発明の微生物中で容易に発現させることができる。抗体の細菌性送達のための例示的な非限定的な方法が、例えば、国際公開第2007/025977号に開示されている。
【0049】
本発明の遺伝子改変生物は、1つの肥満関連ペプチドに(単一特異性)、または2個以上の異なる肥満関連ペプチドに(二重またはそれ以上の特異性)、例えば、好ましくは、1個の肥満関連ペプチドのみに特異的に結合できる1個の結合分子を送達してもよい。本発明の遺伝子改変生物は、肥満関連のペプチドの1個の内因性受容体に(単一特異性)、または同じかまたは異なる肥満関連ペプチドの2個以上の異なる内因性受容体に(二重またはそれ以上の特異性)、例えば、好ましくは、受容体のみに特異的に結合できる1個の結合分子を送達してもよい。
【0050】
あるいは、本発明の遺伝子改変生物は、2個以上、例えば、2個、3個、4個またはそれ以上、好ましくは、2個または3個、より好ましくは2個の異なる結合分子を送達してもよく、これらは同じ肥満関連ペプチドまたは受容体に結合できてもよく、または2個以上の異なる肥満関連ペプチドまたは受容体に結合してもよい。
【0051】
本発明のさらなる展開では、遺伝子改変生物は、被験体の胃腸(GI)管中での栄養の分解を触媒する内因性酵素のインヒビターを送達してもよい。したがって、本発明の局面は、被験体のGI管中での栄養の分解を触媒する酵素のインヒビターの腸送達のための遺伝子改変生物の使用を提供する。
【0052】
理解されうるように、栄養の分解を担うGI酵素のインヒビターの送達によって、被験体の腸中での栄養の利用率および取り込みを減少させ、これによって全カロリー摂取量を減少させることができる。有利なことに、これによって被験体の全体重を低下させることができる。
【0053】
好ましい実施態様では、前記酵素は、多糖類、オリゴ糖類、二糖類、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、および脂質からなる群より選択される栄養の分解を触媒する。さらなる好ましい実施態様では、前記酵素は、脂質、さらに好ましくはトリグリセリドの分解を触媒する。
【0054】
従って、好ましい実施態様では、前記酵素を、膵プロテアーゼ、好ましくは、トリプシンおよびキモトリプシン、膵リパーゼ、ならびに膵アミラーゼからなる群より選択してもよい。さらなる好ましい実施態様では、酵素は膵リパーゼである。
【0055】
例示的な実施態様では、インヒビターは、前記酵素、例えば、膵リパーゼに特異的に結合するアンタゴニスト抗体であってもよく、またはこのような酵素のドミナントネガティブ変異体であってもよい。さらなる例示的な実施態様では、膵リパーゼのインヒビターはリプスタチン(lipstatin)であってもよい(Weibel et al.1987. J Antibiot (Tokyo) 40: 1081-5)。
【0056】
本発明において、遺伝子改変生物は、a)肥満関連ペプチド、またはb)肥満関連ペプチドに結合できる結合分子、またはc)肥満関連ペプチドの内因性受容体に結合できる結合分子、またはd)胃腸(GI)管内での栄養の分解を触媒する酵素のインヒビターのいずれかを送達しうることが理解される。あるいは、遺伝子改変生物は、上記のa)、b)、c)、およびd)の任意の2つ、または全ての組み合わせを送達しうる。
【0057】
組み合わせで送達される場合、送達される物質は、相加効果または相乗効果、好ましくは相乗効果を生じうる。したがって、本発明の一局面は、a)肥満関連ペプチド、および/またはb)肥満関連ペプチドに結合できる結合分子、および/またはc)肥満関連ペプチドの内因性受容体に結合できる結合分子、および/またはd)胃腸(GI)管中での栄養の分解を触媒する酵素のインヒビターの腸送達のための遺伝子改変生物の使用を提供する。
【0058】
本発明の別の局面は、医薬としての、本明細書中上記で考察したような、a)肥満関連ペプチド、および/またはb)肥満関連ペプチドに結合できる結合分子、および/またはc)肥満関連ペプチドの内因性受容体に結合できる結合分子、および/またはd)GI管中での栄養の分解を触媒する酵素のインヒビターを産生する遺伝子改変生物の使用である。
【0059】
本明細書で使用する場合、上記段落に示すようなa)および/またはb)および/またはc)および/またはd)を産生する遺伝子改変生物は、宿主生物を、上記のa)および/またはb)および/またはc)および/またはd)をそれぞれコードするDNAで少なくとも形質転換し、その結果遺伝子改変生物が生じることを意味する。上記のa)および/またはb)および/またはc)および/またはd)の産生は、医薬として使用した場合に、遺伝子改変生物が上記のa)および/またはb)および/またはc)および/またはd)をそれぞれ産生する、すなわち、一旦遺伝子改変生物が腸中に送達されると、遺伝子改変生物が上記のa)および/またはb)および/またはc)および/またはd)を少なくとも産生することを意味する。前記産生は、例えば動物モデルにおいて、局所的な腸産物濃度を測定することによって、直接的に判断することができ、または、血液中の産物の増加によって、または身体に対する送達された上記のa)、b)、c)、またはd)の効果を測定することによってのいずれかで、間接的に測定することができる。
【0060】
さらに別の局面は、肥満および/または糖尿病および/または摂食障害、例えば神経性食欲不振、神経性過食症、または過食症を処置するための医薬の調製のための、本発明による、本明細書中上記で考察したような、a)肥満関連ペプチド、および/またはb)肥満関連ペプチドに結合できる結合分子、および/またはc)肥満関連ペプチドの内因性受容体に結合できる結合分子、および/またはc)GI管中での栄養の分解を触媒する酵素のインヒビターを産生する遺伝子改変生物の使用である。
【0061】
さらなる局面は、本明細書中上記で考察したような、a)肥満関連ペプチド、および/またはb)肥満関連ペプチドに結合できる結合分子、および/またはc)肥満関連ペプチドの内因性受容体に結合できる結合分子、および/またはd)GI管中での栄養の分解を触媒する酵素のインヒビターを産生する遺伝子改変生物の治療有効量を被験体に投与することを含む、肥満および/または糖尿病および/または摂食障害、例えば神経性食欲不振、神経性過食症、または過食症をこれらの処置を必要とする被験体において予防または処置する方法である。
【0062】
「被験体」という用語には、特にヒトおよび動物が含まれる。動物は、好ましくは哺乳動物、例えば家畜、農場動物、動物園動物、スポーツ動物、ペットおよび実験用動物、例えばイヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ウシ、雌ウシ;霊長類、例えば類人猿、サル、オランウータン、およびチンパンジー;イヌ科動物、例えばイヌおよびオオカミ;ネコ科動物、例えばネコ、ライオン、およびトラ;ウマ類、例えばウマ、ロバ、およびシマウマ;食用動物、例えば雌ウシ、豚、およびヒツジ;有蹄動物、例えばシカおよびキリン;齧歯類、例えばマウス、ラット、ハムスター、およびモルモット;などであってもよい。
【0063】
「治療有効量」という用語は、被験体、例えば、ヒトまたは動物において疾患または障害を処置する、すなわち、所望の局所または全身の効果および性能を得るために有効な治療用の物質または組成物の量を指す。本発明の各々および全ての実施態様について正確な投与量を規定することはできないが、一旦本発明を備えれば、これらは当業者には容易に明らかとなるであろう。投与量は、ELISAまたはBiacoreとして知られる方法のような周知の方法を使用して、所定の数の細胞の投与後に、送達されたタンパク質の血清レベル濃度を測定することによって、個別に決定されうる。送達される組換えタンパク質の動態プロファイルおよび半減期の分析によって、遺伝子改変生物に有効な投与量範囲の決定を可能にする十分な情報が提供される。
【0064】
本明細書中上記で考察したような、a)肥満関連ペプチド、および/またはb)肥満関連ペプチドに結合できる結合分子、および/またはc)肥満関連ペプチドの内因性受容体に結合できる結合分子、および/またはd)GI管中での栄養の分解を触媒する酵素のインヒビターを産生する微生物は、少なくとも10コロニー形成単位(cfu)〜1012cfu/日、好ましくは10cfu〜1012cfu/日、最も好ましくは10cfu〜1012cfu/日の単位用量当たりの有効量で送達されうる。Steidler et al. (2000)に記載のような方法に従って、またはELISAによって、例えば10cfuの送達された分子が、少なくとも1ng〜1μgで分泌され;当業者は、cfuの任意の他の用量に関して結合分子の範囲を算出することができる。
【0065】
好ましい実施態様では、微生物を上記のcfu用量で投与した場合、前記微生物によって送達された分子の発現レベルは、例えばSDS−PAGEおよびクーマシー染色または銀染色によって測定した場合、前記微生物の総細胞タンパク質の≧0.1%、例えば、前記微生物の総細胞タンパク質の≧0.5%、より好ましくは≧1%、例えば、≧2%、≧3%、または≧4%、さらに好ましくは≧5%、例えば、≧6%、≧7%、≧8%、または≧9%、さらにより好ましくは≧10%、例えば、≧15%または≧20%にさえなりうる。
【0066】
a)肥満関連ペプチド、および/またはb)肥満関連ペプチドに結合できる結合分子、および/またはc)肥満関連ペプチドの内因性受容体に結合できる結合分子、および/またはd)GI管中での栄養の分解を触媒する酵素のインヒビターは、少なくとも10fg〜100μg/日、好ましくは1pg〜100μg/日、最も好ましくは1ng〜100μg/日の用量で送達されうる。
【0067】
治療効果が観察されるまで、1日に3回または2回〜2週間に1回で、単位用量を投与しうる。しかし、より低いかまたはより高い投与量および他の投与計画を用いてもよいことが認識されるであろう。
【0068】
さらなる局面では、本発明は、従って、本明細書中上記で考察したような、a)肥満関連ペプチド、および/またはb)肥満関連ペプチドに特異的に結合できる結合分子、および/またはc)肥満関連ペプチドの内因性受容体に結合できる結合分子、および/またはd)GI管中での栄養の分解を触媒する酵素のインヒビターを産生する遺伝子改変生物を含む医薬組成物も提供する。
【0069】
好ましくは、このような製剤には、治療有効量の本発明の前記遺伝子改変生物および薬学的に許容できる担体、すなわち、1個以上の薬学的に許容できる担体物質および/または添加剤、例えば、緩衝剤、担体、賦形剤、安定剤などが含まれる。
【0070】
本明細書で使用される「薬学的に許容できる」という用語は、当技術分野と一致しており、そして医薬組成物の他の成分と適合性でありそしてそのレシピエントにとって有害ではないことを意味する。
【0071】
本発明の遺伝子改変生物は、処置しようとする疾患を有するヒトまたは動物への投与のために医薬製剤中に懸濁させることができる。このような医薬製剤としては、限定はされないが、生の本発明の遺伝子改変生物、および投与に適した媒質が挙げられる。遺伝子改変生物は、ラクトース、他の糖類、アルカリおよび/またはアルカリ土類ステアリン酸塩、炭酸塩および/または硫酸塩(例えば、ステアリン酸マグネシウム、炭酸ナトリウム、および硫酸ナトリウム)、カオリン、シリカ、風味剤、および芳香剤などの一般的な賦形剤の存在下で凍結乾燥されうる。
【0072】
このように凍結乾燥させた細胞を、カプセル、錠剤、顆粒および粉末の形態で調製してもよく、これらの各々を経口経路によって投与してもよい。
【0073】
あるいは、いくつかの遺伝子改変生物を適当な媒質中の水性懸濁剤として製剤してもよく、または凍結乾燥された遺伝子改変生物を使用直前に適当な媒質中に懸濁させてもよく、このような媒質には本明細書において言及する賦形剤ならびにグルコース、グリシン、およびサッカリンナトリウムなどの他の賦形剤が含まれる。
【0074】
経口投与のために、胃耐性の経口剤形を製剤してもよく、この剤形は宿主細胞の制御放出を提供する化合物も含み得、そしてこれによってそこにコードされる所望のタンパク質の制御放出を提供しうる。例えば、経口剤形(錠剤、ペレット、顆粒、粉末を含む)を、胃中での溶解または破壊に耐性であるが、腸中では耐性ではなく、これによって腸中での崩壊、溶解、および吸収に有利な、胃を通った移行を可能にする賦形剤(通常、ポリマー、セルロース誘導体、および/または親油性物質)の薄層でコーティングしてもよい。
【0075】
経口剤形を、例えば、制御放出、持続放出、延長放出、持続作用錠剤またはカプセルとして、宿主細胞およびその組換えタンパク質の徐放を可能にするように設計してもよい。これらの剤形には通常、親油性、ポリマー性、セルロース性、不溶性、膨潤性の賦形剤などの、従来の周知の賦形剤が含有される。制御放出製剤は、腸、結腸、生体接着または舌下送達(すなわち、歯粘膜送達)、および気管支送達を含む他の任意の送達部位のためにも使用しうる。本発明の組成物を直腸内または腟内に投与しようとする場合、医薬製剤には坐剤およびクリームが含まれうる。この場合、宿主細胞は、脂質も含む一般的な賦形剤の混合物中に懸濁される。前記の製剤の各々は、当技術分野において周知であり、そして例えば、以下の参考文献において記載されている:Hansel et al. (1990, Pharmaceutical dosage forms and drug delivery systems, 5th edition, William and Wilkins); Chien 1992, Novel drug delivery system, 2nd edition, M. Dekker); Prescott et al.(1989, Novel drug delivery, J.Wiley & Sons); Cazzaniga et al, (1994, Oral delayed release system for colonic specific delivery, Int. J. Pharm.i08:7')。
【0076】
上記の局面および実施態様は、以下の実施例によってさらに支持される。これはいかなる場合でも限定するものではない。
【0077】
実施例
実施例の材料および方法
動物
雌C57BI/6マウス(10〜12週齢、25〜30g)を1ケージ当たり5匹で収容し、ここで処理なしで最低1週間順応させた。これらに高脂肪マウス固形飼料および水道水を自由に与えた。実験前に、動物をそれらのケージ条件に1週間順応させ(1ケージ当たり1匹で収容)、そして試験日のストレスを最小限にするために胃内に生理食塩水を2回接種した。
【0078】
合成遺伝子PYY(ヒト)の組み立て
L・ラクチス用にコドンを最適化させた合成ヒトPYY(3−36)(アミノ酸配列:
【表1】



【表2】


のオリゴを使用して組み立てた。
組み立てたhPYY−SpeI PCRフラグメントは114bpの長さを有し、これをアガロースで精製し、そして制限酵素SpeIによって消化した。このPCRフラグメントをラクトコッカス構築物および酵母構築物に使用した。
【0079】
pYEST2−hPYY(3−36)の構築
pYES2において、GAL1プロモーターをTPIプロモーター+分泌シグナルppMF、NaeIおよびスタッファーとしてのAOXIターミネーターによって置換し、pYES2T−ppMFを得た(図1)。
pYEST2−ppMFをNaeIおよびXbaIによって消化した。DNAフラグメントを単離し、そしてhPYY−SpeI PCRフラグメントと連結させた。これによって、pYES2T−hPYYと命名され、そしてヒトPYY(3−36)をコードする遺伝子を含むプラスミドを得た(図2)。熱コンピテントMC1061 E・コリ細胞をpYES2T−hPYYライゲーション混合物で形質転換した。
【0080】
hPYY分泌サッカロミセス・セレビシエの構築
1μgのプラスミドpYES2T−hPYY(Qiagen midi plasmid kit, Hilden, Germanyによって調製;E・コリ株MC1061[pYES2T−hPYY]から)をエレクトロコンピテント サッカロミセス・セレビシエINV Sc1細胞(Invitrogen(商標)))にエレクトロポレーションした。
【0081】
サッカロミセス・セレビシエINV Sc1細胞(Invitrogen(商標))は遺伝子型が接合型α、his3Δ1、leu2−3、−112 trp1−289、およびura3−52の株である。形質転換酵母細胞をウラシル欠乏(選択)最少培地(SD+CSM−U;0,67% Yeast Nitrogen Base w/o Amino Acids (Difco, Detroit, MI)2%デキストロース(Merck, Darmstadt, Germany)および0.077% CSM−URA(Bio101 Systems, Morgan Irvine, CA))にプレーティングした。サッカロミセス株、サッカロミセス・セレビシエINV Sc1[pYES2T−hPYY]およびベクターコントロール、サッカロミセス・セレビシエINV Sc1[pYES2]の1個のコロニーを10mlの最少ウラシル欠乏培地(SD+CSM−U)にそれぞれ接種し、そして好気的条件下で30℃で増殖させた。16時間後、10mlの新鮮な最少ウラシル欠乏培地を添加し、そして32時間後に細胞を遠心分離(2,500tmpで5分間)によってペレット化し、そしてYPD培地(YPD培地:1%酵母エキス、Difco;2%デキストロース、Merck;2%ペプトン、Difco)中に再懸濁した。16時間後、細胞を遠心分離によってペレット化し、そして2mlのYP(デキストロース不含YPD)中に再懸濁した。処置のために、各マウスに胃内カテーテルによってこの懸濁液100μlを与えた。
【0082】
合成遺伝子エキセンディン−4の組み立て
L・ラクチス用にコドンを最適化させた合成エキセンディン−4(アミノ酸配列:
【表3】



【表4】


のオリゴを使用して組み立てた。
組み立てたEx4−SpeI PCRフラグメントは114bpの長さを有し、これをアガロースで精製し、そして制限酵素SpeIによって消化した。
【0083】
pT1Exendin−4およびpT1dmpPYY(3−36)の構築
pTREXにおいて、USPおよびspaXを挿入し、pT1NXを得る(図3)。
【0084】
pT1NXをNaeIおよびSpeIによって消化した。DNAフラグメントを単離し、そしてEx4−SpeIおよびPyy−Spei PCRフラグメントとそれぞれ連結させた。これによって、それぞれpT1dmpPYY(図4)およびpT1Exendin−4(図5)と命名したプラスミドを得た。コンピテントMG1363 L・ラクチス細胞をpT1Exendin−4ライゲーション混合物で形質転換した。
【0085】
胃内接種のために、ストック懸濁液を新鮮なGM17、すなわち、0.5%グルコースを補充したM17(Difco Laboratories, Detroit, MI)中で1,000倍希釈し、そして30℃でインキュベートした。16時間後、細胞が1ml当たり2×10コロニー形成単位(CFU)の飽和密度に達したときに、等量の新鮮なGM17を添加し、そして30℃でさらに1時間インキュベートした。細菌を遠心分離によって回収し、そしてグルコース不含BM9培地中で10倍濃縮した。処置のために、各マウスに胃内カテーテルによってこの懸濁液100μlを与えた。
【0086】
急性給餌研究
C57BI/6マウスを別々のケージ中で16〜18時間水に自由に接近させて絶食させた。実験当日、サッカロミセスPYY試験用のサッカロミセス・セレビシエYES2T(SC−YES2T、空ベクターコントロール)またはSC−hPYY;ラクトコッカスPYY試験用のラクトコッカス・ラクチスpTREX(空ベクター)またはL・ラクチスpT1dmpPYY;またはエキセディン試験用のラクトコッカス・ラクチスpTREX(空ベクター)またはL・ラクチスpT1exedin−4のいずれかの100μlをt=−2時間およびt=0時間に動物に胃内接種した。t=0時間の直後に、固形飼料を事前に秤量したマウスのケージ内に置き、そして事前に秤量した固形飼料と各時間間隔の終わりに残っていた固形飼料の重量との間の差を測定することによって1時間目、2時間目、3時間目および4時間目での食物摂取(FI)を測定した。
【0087】
実施例1:マウスによる食物摂取に対するヒトPYY(3−36)の腸酵母送達の効果
マウスにおける投与後食物摂取を測定することによって、S.c[pYES2T−hPYY]の生物有効性を評価した。投与後の最初の4時間の間、S.c[pYES2T−hPYY]で処置した動物における食物摂取は、プラセボS.c[pYES2T]を投与した動物におけるよりも16%低かった(図6)。この研究からの結果は、S.cによるPYY(3−36)の腸送達の実現可能性を実証しており、そして摂食障害および/または肥満の処置のためのPYY(3−36)の経口剤形を開発する機会を提示する。
【0088】
実施例2:マウスによる食物摂取に対する乳酸菌によるヒトPYY(3−36)およびエキセンディン−4の腸送達の効果
マウスにおける投与後食物摂取を測定することによって、LL−pT1−Exendin−4およびLL−pT1dmpPYY(3−36)の生物有効性を評価した。投与後の最初の4時間の間、LL−pT1−Exendin−4で処置した動物における食物摂取は、プラセボLL−pTREXを投与した動物におけるよりも31%低かった(図7)。24時間の研究において、体重増加に対する胃内接種したLL−pT1−Exendin−4の効果を評価した。研究の最初の4時間の間、Ex4を与えた群における体重増加は、プラセボ群におけるよりも約50%低く、そして研究終了時で18%であった(図8)。これらの研究からの結果は、Ex4の腸送達の実現可能性を実証しており、そして摂食障害および/または肥満の処置のためのEx4の経口剤形を開発する機会を提示する。
【0089】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】ベクターpYES2T−ppMFのプラスミドマップ。
【図2】pYES2T−hPYYのプラスミドマップ。
【図3】ベクターpT1NXのプラスミドマップ。
【図4】pT1dmpPYY(3−36)のプラスミドマップ。
【図5】pT1Exendin−4のプラスミドマップ。
【図6】pYES2T−hPYY形質転換サッカロミセス・セレビシエ(SC−hPYYとして示す)処置の4時間の食物摂取に対する効果。空ベクター(pYES2T、Invitrogen)で形質転換したS.セレビシエをSC−YES2Tとして示す。マウス(n=12 SC−hPYYおよびn=11 SC−YES2T)は10週齢であり、高脂肪食で6週であった。
【図7】pT1Exendin−4形質転換ラクトコッカス・ラクチス(LL−Ex4として示す)およびpT1dmpPYY(3−36)形質転換ラクトコッカス・ラクチス(LL−PYYとして示す)処置の4時間の食物摂取に対する効果。空ベクターで形質転換したL・ラクチスをLL−pTrexとして示す。マウスは8週齢であり、高脂肪食で4週であった。LL−pTREXと比較したP値(n=10)。
【図8】LL−Ex4およびLL−PYY処理の24時間の体重増加に対する効果。マウスは8週齢であり、高脂肪食で4週であった。プラスミドは図7に示したとおりである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)肥満関連ペプチド、および/またはb)肥満関連ペプチドに結合できる結合分子、および/またはc)肥満関連ペプチドの内因性受容体に結合できる結合分子、および/またはd)胃腸(GI)管中での栄養の分解を触媒する酵素のインヒビターの、腸送達のための遺伝子改変生物の使用。
【請求項2】
医薬としての、a)肥満関連ペプチド、および/またはb)肥満関連ペプチドに結合できる結合分子、および/またはc)肥満関連ペプチドの内因性受容体に結合できる結合分子、および/またはd)GI管中での栄養の分解を触媒する酵素のインヒビターを産生する遺伝子改変生物の使用。
【請求項3】
摂食障害または肥満を処置するための医薬の製造のための、a)肥満関連ペプチド、および/またはb)肥満関連ペプチドに結合できる結合分子、および/またはc)肥満関連ペプチドの内因性受容体に結合できる結合分子、および/またはd)GI管中での栄養の分解を触媒する酵素のインヒビターを産生する遺伝子改変生物の使用。
【請求項4】
遺伝子改変生物が酵母または乳酸菌である、請求項1〜3のいずれか一項記載の使用。
【請求項5】
遺伝子改変生物がサッカロミセス・セレビシエである、請求項4記載の使用。
【請求項6】
遺伝子改変生物がラクトコッカス・ラクチスである、請求項4記載の使用。
【請求項7】
肥満関連ペプチドが、アグーチ関連ペプチド、アミリン、アノレクチン、ボンベシン、脳由来神経因子、カルシトニン遺伝子関連ペプチド、コレシストキニン、コカインおよびアンフェタミン調節転写物ペプチド、毛様体神経栄養因子、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン、ダイノルフィン、βエンドルフィン、エンテロスタチン、エキセンディン、ガラニン、ガラニン様ペプチド、胃抑制ペプチド、グレリン、グルカゴン様ペプチド1、成長ホルモン放出ホルモン、ヒポクレチン/オレキシン、インスリン様増殖因子I、インスリン様増殖因子II、インターロイキン1、ペプチドYY(PYY)、レプチン、メラニン凝集ホルモン、モチリン、ニューロメジンB、ニューロメジンU、神経ペプチドB、神経ペプチドK、神経ペプチドS、神経ペプチドW、神経ペプチドY、ニュ−ロテンシン、オキシトシン、プロラクチン放出ペプチド、プロオピオメラノコルチンおよびそれに由来するメラノコルチン、ソマトスタチン、チロトロピン放出ホルモン、ウロコルチン、VGF、26RFa、アポリポタンパク質A−IV、オキシントモジュリン、膵臓ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、ニューロメジン、グルコース依存性インスリン分泌促進ポリペプチド、オベスタチン、および成長ホルモンフラグメント(hGH177−191)からなる群より選択される、請求項1〜6のいずれか一項記載の使用。
【請求項8】
遺伝子改変生物がPYY産生S・セレビシエ株である、請求項7記載の使用。
【請求項9】
遺伝子改変生物がエキセンディン−4産生L・ラクチス株である、請求項7記載の使用。
【請求項10】
肥満関連ペプチドへの結合分子の結合が、被験体における該肥満関連ペプチドの生物学的または生理学的効果を増強する、請求項1〜6のいずれか一項記載の使用。
【請求項11】
肥満関連ペプチドへの結合分子の結合が、被験体における該肥満関連ペプチドの生物学的または生理学的効果を低下させる、請求項1〜6のいずれか一項記載の使用。
【請求項12】
肥満関連ペプチドに結合できる結合分子が抗体である、請求項1〜6、10および11のいずれか一項記載の使用。
【請求項13】
肥満関連ペプチドに結合できる結合分子が該肥満関連ペプチドのドミナントネガティブ変異体である、請求項1〜6および11のいずれか一項記載の使用。
【請求項14】
肥満関連ペプチドの内因性受容体への結合分子の結合が、被験体における該受容体の生物学的活性を増強する、請求項1〜6のいずれか一項記載の使用。
【請求項15】
肥満関連ペプチドの内因性受容体への結合分子の結合が、被験体における該受容体の生物学的活性を低下させる、請求項1〜6のいずれか一項記載の使用。
【請求項16】
肥満関連ペプチドの内因性受容体に結合できる結合分子が抗体である、請求項14または15記載の使用。
【請求項17】
酵素が、多糖類、オリゴ糖類、二糖類、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、および脂質、好ましくは脂質、より好ましくはトリグリセリドからなる群より選択される栄養の分解を触媒する、請求項1〜6のいずれか一項記載の使用。
【請求項18】
酵素が、膵プロテアーゼ、好ましくはトリプシンまたはキモトリプシン、膵リパーゼ、および膵アミラーゼからなる群より選択され、より好ましくは酵素が膵リパーゼである、請求項1〜6または17のいずれか一項記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−535380(P2009−535380A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−508345(P2009−508345)
【出願日】平成19年5月2日(2007.5.2)
【国際出願番号】PCT/EP2007/054266
【国際公開番号】WO2007/128757
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(507055501)アクトジェニックス・エヌブイ (11)
【氏名又は名称原語表記】Actogenix NV
【Fターム(参考)】